JP2005043208A - ガスセンサとそれを用いた燃料電池システムおよび自動車 - Google Patents

ガスセンサとそれを用いた燃料電池システムおよび自動車 Download PDF

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Abstract

【課題】 高精度なガスセンサを提供することを目的とする。
【解決手段】 ヒーター11に電流をステップ状に規定時間連続して流し、それぞれの電流値に対するヒーター11および焦電素子の規定時間内の両端電圧を演算部に取り込み最も電流の少ない時のヒーター11の両端電圧から温度を求め、その温度でその他の電流を流した時の焦電素子の両端電圧の値を補正することで被検出ガスの濃度を求める工程を1サイクルとして繰り返すことで被検出ガスの濃度を出力するものである。
【選択図】 図2

Description

本発明は被検出ガスの濃度を検出するためのガスセンサとそれを用いた燃料電池システムおよび自動車に関するものである。
エネルギー、環境問題の解決の切り札として期待されている燃料電池が、近年、盛んに開発されてきている。特に、固体高分子膜を電解質に用いた燃料電池は動作温度が80℃程度と低く扱いやすいため、現在燃料電池開発の主流をなしている。しかし、これは燃料に水素を用いるため、その漏洩に対する安全対策として水素検出用のガスセンサが必要になってくる。
このような水素検出用のガスセンサとして、従来、水素の熱伝導率が他のガスに比べ極めて大きいことを利用し、水素の存在による熱伝導率の変化を発熱素子の温度変化として検出する原理のものが提案されていた。これは、例えば空気中の水素が存在すると、発熱素子から奪われる熱量が空気のみの時より多くなり、これにより発熱素子の温度が水素濃度に応じて変化する。この温度変化を温度検出素子の抵抗値の変化として電気的に検出するものである。
この水素検出用のガスセンサに使用される発熱素子(温度検出素子と兼用)として、白金薄膜抵抗体が用いられている。これは薄膜であるがゆえに半導体微細加工技術(マイクロマシン技術)を応用して製造することが可能であり、極微小な発熱素子を形成できるため、高速応答、低消費電力化が図れるという特徴を有している。
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
特開平8−101156号公報
このような水素検出用のガスセンサを水素漏洩検知に適用する場合、被検出ガス(水素)の爆発下限は空気に対し4%であるから、安全に対するマージンを考慮すると少なくともその半分以下(2%以下)の薄い水素濃度を検知しなければならない。このような低濃度域で水素を精度よく検知できるかどうかを調べるにあたり、従来例の発熱素子を用いて2%までの様々な水素濃度に対して測定を行った結果を図21に示す。図21において横軸は時間、縦軸は水素濃度に換算したガスセンサの出力を示す。水素濃度を0%(空気)から経時的に0.5、1、2%と濃くした後、1、0.5、0%と薄くしてガスセンサに供給した。図21より、確かに水素濃度に応じた出力は得られているものの出力ノイズが認められることがわかる。この出力ノイズ幅は水素濃度換算で0.15〜0.2%H2程度であり、ガスセンサのフルスケール(2%H2)に対し10%近い誤差になることがわかった。これにより、誤動作(水素濃度が薄いのに濃いと判断)や非動作(水素濃度が濃いのに薄いと判断)が発生する確率が大きくなり燃料電池システム全体の信頼性が低減してしまうという課題があった。
以上のことから、本発明は被検出ガスを高精度に検出することができるガスセンサを提供することを目的とするものである。
この目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものであり、その特徴部分について列挙する。
本発明の請求項1に記載の発明は、一部を窪ませたシリコン台座と、この窪み部の表面に形成した第1絶縁層と、この第1絶縁層の上に形成したヒーターと、このヒーターの上に形成した第2絶縁層と、この第2絶縁層の上に形成した第1電極と、この第1電極の上に形成した焦電効果を有する焦電素子と、この焦電素子の上に形成した第2電極とからなる検出素子と、前記ヒーターに電流を流す電源装置と、前記ヒーターの両端電圧を測定する第1電圧計と、前記焦電素子の起電圧を測定するために前記第1電極および前記第2電極に接続された第2電圧計と、前記第1電圧計および前記第2電圧計の出力電圧から被検出ガスの濃度を演算出力する演算部を有し、前記ヒーターに電流をステップ状に規定時間連続して流し、それぞれの電流値に対する前記ヒーターおよび前記焦電素子の規定時間内の両端電圧を前記演算部へ取り込み最も電流の少ない時の前記ヒーターの両端電圧から温度を求め、前記温度でその他の電流を流した時の前記焦電素子の両端電圧の値を補正することで被検出ガスの濃度を求める工程を1サイクルとして繰り返すことで被検出ガスの濃度を出力するものである。これにより、ガス濃度の検知に1万分の1℃までの温度分解能を持つ焦電素子を用いているため、被検出ガスの存在による僅かな熱伝導の変化を敏感に検知できるようになり、高感度すなわち高精度に被検出ガスを検出することができるという作用を有するものである。
本発明の請求項2に記載の発明は、ヒーターに少なくとも3段階以上の電流をステップ状に規定時間連続して流し、それぞれの電流値に対する前記ヒーターおよび前記焦電素子の規定時間内の両端電圧を前記演算部へ取り込み最も電流の少ない時の前記ヒーターの両端電圧から温度を求め、前記温度と濃度既知の被検出ガスであらかじめ求めた0点および感度の補正式とからその他の電流を流した時の前記焦電素子の両端電圧の値を補正することで規格化出力をそれぞれ求め、この規格化出力の差から湿度を求め、この湿度と濃度既知の被検出ガスであらかじめ求めた湿度補正式で前記規格化出力を補正することで被検出ガスの濃度を求める工程を1サイクルとして繰り返すことで湿度および被検出ガスの濃度を出力するものである。これにより、被検出ガス中に湿気が含まれていても補正演算を行うことにより、湿度と被検出ガスの濃度を個別に求めることができるという作用を有するものである。
本発明の請求項3に記載の発明は、被検出ガスが濃度4%までの水素とするもので、水素濃度の出力感度が湿度の出力感度と同レベルの範囲とし、かつ、爆発限界以下の水素濃度範囲とすることで補正計算による精度を向上させつつ安全な濃度範囲内で水素漏洩を検知できるという作用を有するものである。
本発明の請求項4に記載の発明は、検出素子に流す最も電流の少ない時の電流値は検出素子がほとんど発熱しない範囲内で与えるようにしたもので、ガスに対する感度がほとんどなく検出素子の温度のみを高精度に検出できるという作用を有するものである。
本発明の請求項5に記載の発明は、検出素子に流す少なくとも3段階以上の電流値は低い電流から高い電流に順次与えるようにしたもので、これにより検出素子の発熱温度を低温から高温に順次加熱でき、急激に加熱することによる熱衝撃に起因した素子破壊の可能性を低減できるという作用を有するものである。
本発明の請求項6に記載の発明は、検出素子の表面に保護層を形成したもので、被検出ガス中に含まれる不純物が検出素子の表面に直接付着するのを防ぐことができるため、検出素子の信頼性が向上するという作用を有するものである。
本発明の請求項7に記載の発明は、絶縁層および保護層をシリカで構成したもので、シリコン台座との密着性がよいため繰り返し加熱を行っても検出素子が破壊する可能性を低減できるという作用を有するものである。
本発明の請求項8に記載の発明は、窪み部の厚みを10マイクロメートル以下としたもので、検出素子の温度に対する安定時間をサブ秒オーダーに低減できるという作用を有するものである。
本発明の請求項9に記載の発明は、検出素子の窪み部の一部に貫通部を設けたもので検出素子からシリコン台座への熱引けを低減できるため、検出素子の温度に対する安定時間を短縮でき、繰り返し加熱による再現性が優れるという作用を有するものである。
本発明の請求項10に記載の発明は、ヒーターを白金薄膜で構成したもので検出素子の配線パターンとヒーターを一体で形成できるため、製造プロセスが簡略化できるという作用を有するものである。
本発明の請求項11に記載の発明は、第1電極および第2電極を金属膜で構成したもので検出素子の出力を低ノイズで検出できるという作用を有するものである。
本発明の請求項12に記載の発明は、焦電素子が鉛、ランタン、チタニウムの複合酸化物からなるもので、この複合酸化物が他の焦電材料に比べガスセンサに必要な僅かな温度変化を高感度に検出できることから高精度化を達成できるという作用を有するものである。
本発明の請求項13に記載の発明は、ヒーターに流す電流値を最も電流の少ない時を除いて焦電素子の温度が100℃以上から200℃以下になるように制御するようにしたものであり、ガスセンサとして十分な感度を確保し、かつ焦電素子のキュリー点を下回る温度範囲で焦電素子の出力を検知できるため、ガスセンサの高精度化を達成できるという作用を有するものである。
本発明の請求項14に記載の発明は、第2電圧計から演算部が取り込む電圧は、各電流値をヒーターに流している間の最大値をそれぞれ取り込むようにしたものであり、焦電素子のガスに対する最大感度点を検知することになるためガスセンサの高精度化を達成できるという作用を有するものである。
本発明の請求項15に記載の発明は、検出素子の窪み部の形状をつづら折れの構成としたもので、検出素子の表面積を大きくとれるのでその分感度が向上するという作用を有するものである。
本発明の請求項16に記載の発明は、検出素子が有孔キャンを二重に重ねた中に配置されそれぞれのキャンの孔の位置が互いに対向しないように配置したもので、これにより直接被検出ガスが検出素子に到らず、被検出ガスの流量によるガスセンサ出力への影響を低減できるという作用を有するものである。
本発明の請求項17に記載の発明は、孔にはそれぞれ金属網を形成したもので、万一ガスセンサ内で水素のような被検出ガスが燃焼しても網で熱が吸収され網から外に火炎が伝播しないという作用を有するものである。
本発明の請求項18に記載の発明は、有孔キャンおよび金属網を黒色としたもので、検出素子や外部からの輻射熱を有孔キャンおよび金属網が吸収するため有孔キャンおよび金属網での熱の乱反射による検出素子の発熱温度への影響が低減されるという作用を有するものである。
本発明の請求項19に記載の発明は、請求項1から18のいずれか1つに記載のガスセンサが搭載された燃料電池であって、前記ガスセンサの水素に対する出力が既定値を超えた時換気するとともに前記燃料電池を停止するように制御する構成とした燃料電池システムで、湿気を含む被検出ガス中でも水素濃度のみを精度よく検出できるので水素漏洩に対する安全性が高い燃料電池システムを構成することができるという作用を有するものである。
本発明の請求項20に記載の発明は、請求項1から18のいずれか1つに記載のガスセンサを乗車空間の上部に配置し、このガスセンサの湿度出力および温度出力をもとに前記乗車空間が最適な温湿度になるように前記乗車空間の一部に設けたエアコンを制御するとともに、前記ガスセンサの水素濃度出力から前記乗車空間内の水素濃度が既定値以上であれば警報を発し、前記乗車空間内の換気を行うとともに水素供給源を遮断するように制御する構成とした自動車であり、乗車空間内の1つのガスセンサのみで水素漏洩検知だけでなく湿度のデータも得られるので、通常はエアコン制御を行い水素漏洩時には換気し水素供給源を遮断するように制御を行うことで、自動車の安全性、快適性を同時に向上できるという作用を有するものである。
本発明の請求項21に記載の発明は、ガスセンサを常時動作させるようにしたもので、ガスセンサが低消費電力であるがゆえ自動車の非使用時においても水素漏洩を検知できるのでさらに安全性を向上できるという作用を有するものである。
以上のように本発明は一部を窪ませたシリコン台座と、この窪み部の表面に形成した第1絶縁層と、この第1絶縁層の上に形成したヒーターと、このヒーターの上に形成した第2絶縁層と、この第2絶縁層の上に形成した第1電極と、この第1電極の上に形成した焦電効果を有する焦電素子と、この焦電素子の上に形成した第2電極とからなる検出素子と、前記ヒーターに電流を流す電源装置と、前記ヒーターの両端電圧を測定する第1電圧計と、前記焦電素子の起電圧を測定するために前記第1電極および前記第2電極に接続された第2電圧計と、前記第1電圧計および前記第2電圧計の出力電圧から被検出ガスの濃度を演算出力する演算部を有し、前記ヒーターに電流をステップ状に規定時間連続して流し、それぞれの電流値に対する前記ヒーターおよび前記焦電素子の規定時間内の両端電圧を前記演算部へ取り込み最も電流の少ない時の前記ヒーターの両端電圧から温度を求め、前記温度でその他の電流を流した時の前記焦電素子の両端電圧の値を補正することで被検出ガスの濃度を求める工程を1サイクルとして繰り返すことで被検出ガスの濃度を出力するものである。これにより、ガス濃度の検知に焦電素子を用いているため、被検出ガスの存在による僅かな熱伝導の変化を敏感に検知できるようになり、高感度すなわち高精度に被検出ガスを検出することができるガスセンサを実現できる。
以下、本発明の一実施の形態を添付図面に従って説明する。なお、ここでは被検出ガスが水素であるとして、以下、説明する。
図1は本発明の実施の形態におけるガスセンサのガス検出部の分解斜視図である。図2は本発明の実施の形態におけるガスセンサの検出素子の概略斜視図である。図3は本発明の実施の形態におけるガスセンサの検出素子における電極パターンの概略斜視図であり、図3(a)はヒーターのパターンを、図3(b)は第1電極のパターンを、図3(c)は第2電極のパターンをそれぞれ示す。図4は本発明の実施の形態におけるガスセンサの検出素子の拡大断面図である。図5(a)〜(i)は本発明の実施の形態におけるガスセンサの検出素子の概略製造プロセス図である。図6は本発明の実施の形態におけるガスセンサの概略断面図である。
図1において、検出素子1はベース2上に固定されている。ベース2には、それを貫通するように4本のピン3が設けられており、各ピン3の頂面と検出素子1とは金製のワイヤー4でそれぞれ2本ずつ接続されている。2本ずつワイヤー4を接続したのは、万一1本のワイヤー4が断線してももう1本が接続されているのでガスセンサを使い続けられ信頼性が向上するからである。ベース2には4ヶ所の内孔5を有する内キャン6が被せられ、さらにその上から1ヶ所の外孔7を有する外キャン8が被せられて二重のキャン構成としてある。内孔5および外孔7はベース2に被せる際に互いに対向しない位置になるように形成してある。ベース2、内キャン6および外キャン8はいずれも抵抗溶接により互いに固定されている。なお、内孔5および外孔7にはステンレス製の網9が固定されている。また、内キャン6と外キャン8および網9は黒色のクロムメッキにより着色されている。
検出素子1は図2に示すように、シリコンからなる台座10の上にマイクロマシン加工技術により白金薄膜からなるヒーター11、金属膜からなる第1電極12および第2電極13、図示していないが鉛、ランタン、チタニウムの複合酸化物からなる焦電素子、シリカからなる絶縁層および保護層を積層して形成したものであり、ヒーターの形状に従って台座10もつづら折れ状に加工してある。この台座10上に形成した薄膜の層構造の詳細は後述する。ヒーター11の両端および第1電極12、第2電極13の一端にはワイヤー4をボンディングするためのランド14が設けられている。なお、ランド14の下面にも図示してないがシリカからなる絶縁層が形成されている。
次に、ヒーター11、第1電極12および第2電極13の概略パターンを図3に示す。図3(a)に示すように、ヒーター11は両端にランド14が配置された構造であり、一方、第1電極12および第2電極13は図3(b)、図3(c)に示すようにランド14は互いに重ならないように電極パターンの中心に対し180°点対称の位置に配置されている。このようにヒーター11は両端に、第1電極12および第2電極13は片端にそれぞれランド14が配置されているのは、それぞれの電気信号の扱いが異なるためである。すなわち、ヒーター11は発熱させるために積極的に電流を流す必要があることから両端にランド14が必要であるが、第1電極12および第2電極13は両者の間に挟み込む焦電素子の温度変化に対応した起電圧を測定するためのもので、ヒーター11のように電流を積極的に流す必要はないため、片側のみのランド14でよい。
検出素子1のつづら折れ部分の拡大断面を図4に示す。つづら折れ状に加工した部分は図2における台座10の下側の面を窪ませて窪み部15を形成することで、厚み約10マイクロメートルまで薄くしてある。これによりつづら折れ部分の熱容量を極めて低減することができる。
このつづら折れ状に加工したシリコンからなる台座10の上面にはシリカからなる第1絶縁層16aが形成されており、その上面に図3(a)のパターンで白金薄膜のヒーター11が、さらにその上面にシリカからなる第2絶縁層16bが形成される。ここまででヒーター部が構成される。
さらに、その上面には図3(b)のパターンで金薄膜の第1電極12が、その上面には焦電素子17が、その上面には図3(c)のパターンで金薄膜の第2電極13が、最後に全体を保護するシリカからなる保護層18が形成される。この順番で各層がそれぞれ積層された構造となっている。
このような検出素子1のマイクロマシン加工技術による概略製造プロセスを図5(a)〜(i)に示す。なお、わかりやすくするためにヒーター11、第1電極12、第2電極13、第1絶縁層16a、第2絶縁層16b、焦電素子17、保護層18および台座10のつづら折れ部分の厚みは実際よりも誇張して示した。
まず、図5(a)に示すように、シリコン台座10上にスパッタによりシリカの第1絶縁層16aを全面に形成する。次に、図5(b)に示すように、第1絶縁層16aの上面に図3(a)のパターンを用いて白金をスパッタすることによりヒーター11を形成する。次に、図5(c)に示すように、ヒーター11のランド14部分以外が露出したマスクパターンを用いてスパッタによりシリカの第2絶縁層16bを形成する。次に、図5(d)に示すように、第2絶縁層16bの上面に図3(b)のパターンを用いて金をスパッタすることにより第1電極12を形成する。次に、図5(e)に示すように、第1電極12のつづら折れに対応する部分のみが露出したマスクパターンを用いて鉛、ランタン、チタニウムの複合酸化物のスパッタにより焦電素子17を形成する。次に、図5(f)に示すように、焦電素子17の上面に図3(c)のパターンを用いて金をスパッタすることにより第2電極13を形成する。次に、図5(g)に示すように、図5(c)と同様のマスク、手法、材料を用いて保護層18を形成する。このプロセスまでで膜形成は完了する。
次に、図5(h)に示すように、つづら折れ形状のパターンを用いてヒーター11の周辺のシリコンをエッチングにより掘り下げる。最後に、図5(i)に示すように、台座10の裏面すなわちヒーター11を形成しなかった面からエッチングによりシリコンを削り窪み部15を形成していく。これにより、窪み部15が先に掘り下げたつづら折れパターンに到ることで、図2に示すようなヒーター11がつづら折れ形状で宙に浮いた検出素子1が形成できる。
このようにして作製した検出素子1は図1に示したベース2、内キャン6、外キャン8からなるケースに実装されて検出部を形成する。検出部19は図6に示すようにピン3を検出回路20に挿入しはんだ付けすることにより電気的、機械的に接続される。容器21には検出回路20が挿入されるとともに、検出回路20に接続された取出しケーブル22をあらかじめ通した容器フタ23がはめ込まれ、耐湿樹脂24を容器フタ23に設けた注入口(図示せず)から検出回路20と容器フタ23の間の空間全体に注入し硬化させた後、容器21と容器フタ23をかしめて固定する。
容器21の底面にはガス取込口25が開けられており、また、側面にはセンサ取付用のネジ部26が加工されている。このようにして、ガスセンサ27が完成する。
次に、ガスセンサの取り付け例について図7、図8を用いて説明する。
図7は本発明の実施の形態におけるガスセンサを定置型燃料電池システムに取り付けた際の概略ブロック図である。図8は本発明の実施の形態におけるガスセンサを用いた燃料電池自動車の概略構造を示す説明図である。
まず、定置型燃料電池システムについて固体高分子膜電解質型を例に説明する。図7において、水素タンク51は改質型の燃料電池システムの場合には改質器と置き換えられる。水素タンク51内の水素は遮断弁52を通って水素加湿器53に導入される。ここで、燃料電池内の固体高分子膜が乾燥するのを防ぐための湿気が与えられる。加湿された水素は燃料電池スタック54の水素極側に導入される。一方、燃料電池スタック54には発電に必要な空気もコンプレッサ55により空気加湿器56で加湿されて空気極側に導入される。これにより燃料電池スタック54は発電を行い太線で示したように燃料電池制御回路57を経て外部に電力を供給する。また、燃料電池スタック54からは発電の結果生成した水が空気と一緒に外部へ排出される。
このような燃料電池システムは全体が筐体58内に収納されている。筐体58内には、図7中に黒丸で示したように、水素タンク51の近傍、燃料電池スタック54の近傍、燃料電池スタック54の空気極側の出口配管の一部などに水素漏洩を検知するためのガスセンサが配置される。これにより、もしいずれかのガスセンサが水素漏洩を検知すれば、燃料電池制御回路57は遮断弁52を閉じ警報器59と換気扇60を動作させ燃料電池を停止するように制御する。
次に、燃料電池自動車について説明する。図8において、自動車の本体101は乗車空間102と、水素タンク収納空間103と、駆動手段収納空間104と、床下空間105がそれぞれ空間として分離された状態で形成されている。水素タンク収納空間103には水素を貯蔵するタンク106が設けられている。タンク106は、特に衝突時における水素漏洩に対する安全性を確保するために、外側タンク107と内側タンク108からなる二重構造となっており、内側タンク108内に水素が貯蔵されている。また、駆動手段収納空間104には本体101を駆動するためのモーター109が設けられている。床下空間105には燃料電池スタック110が設けられている。
タンク106から供給された水素は床下空間105に設けられた燃料電池スタック110で電気エネルギーに変換され、その電気エネルギーがモーター109に伝達されてタイヤ111を駆動するようになっている。なお、タイヤ111の操舵方向は乗車空間102内からハンドル112で行うようになっている。
このような自動車において、それぞれの空間にはガスセンサ113が設けられている。具体的には、乗車空間102に設けたガスセンサ113は乗車空間102の中で最も上部にあたる天井115前部に、水素タンク収納空間103に設けたガスセンサ113はタンク106が二重構造であるため外側タンク107の最上部に、駆動手段格納空間104に設けたガスセンサ113は駆動手段格納空間104の中で最も上部にあたるボンネット後端部に、床下空間105に設けたガスセンサ113は床下空間105の最上部にそれぞれ配置してある。さらに、図示していないが図7と同様に燃料電池スタック110の空気極側出口配管の一部にもガスセンサを配置している。
これらのガスセンサ113のうちいずれかが水素漏洩を検知すると、図7で説明したように水素供給源を遮断し警報および換気を行う。それに加えて、乗車空間102内に設けたガスセンサ113は湿気も検知できるので、通常は乗車空間102内が最適な湿度になるように乗車空間102の一部に設けたエアコンを制御している。なお、自動車の非使用時においてもいつ水素が漏れるかわからないためガスセンサ113は常時動作させてあり、いずれかが水素漏洩を検知すると自動的に換気を行い水素が充満しないようにしている。この場合、検出素子1は極小の形状であることから消費電力が非常に小さいという特徴を有するので、自動車の非使用時でも十分駆動可能である。
次に、ガスセンサの動作について説明する。
図9は本発明の実施の形態におけるガスセンサの回路構成を説明するための概略回路図である。図10は本発明の実施の形態におけるガスセンサのヒーターに加える印加電流の概略波形図である。図11は本発明の実施の形態におけるガスセンサの検出素子の経時下での出力波形図である。図12は本発明の実施の形態におけるガスセンサの検出素子が高温発熱時の加湿下における水素濃度出力特性図である。図13は本発明の実施の形態におけるガスセンサの検出素子が低温発熱時および高温発熱時の0点温度特性図である。図14は本発明の実施の形態におけるガスセンサの検出素子が低温発熱時および高温発熱時の温度による感度補正特性図である。図15は本発明の実施の形態におけるガスセンサの検出素子が低温発熱時および高温発熱時の補正後の出力差と80℃における相対湿度との相関図である。図16は本発明の実施の形態におけるガスセンサの湿度に対する0点および感度補正後出力の相関図である。図17は本発明の実施の形態におけるガスセンサの検出素子が低温発熱時および高温発熱時の補正後の出力差とオフセットとの相関図である。図18は本発明の実施の形態におけるガスセンサの湿度補正後の加湿下での水素濃度出力特性図である。図19は本発明の実施の形態におけるガスセンサの各種水素濃度に対する経時下でのセンサ出力特性図である。図20は本発明の実施の形態におけるガスセンサの水素濃度と湿度を計算する手順を示すフローチャートである。
図9において、検出素子1のヒーター11には電源装置として定電流源28が接続され、さらにヒーター11の両端電圧を測定する第1電圧計29が定電流源28と並列に接続されている。一方、検出素子1の焦電素子17の両面に設けた第1電極12および第2電極13には焦電素子17の起電圧を測定する第2電圧計30が接続されている。定電流源28、第1電圧計29および第2電圧計30はさらに演算部としてのマイクロコンピュータ31に接続されている。マイクロコンピュータ31は定電流源28を制御するとともに、第1電圧計29および第2電圧計30の出力から所定の演算を行い水素濃度や湿度を出力する。
ヒーター11に印加される電流は図10に示すようにマイクロコンピュータ31の指示に従って定電流源28から3段階にステップ状に規定時間(本実施の形態では用いた焦電素子の温度変化周波数に対する出力感度の関係から、大きな感度が得られる10Hzすなわち0.1秒とした)ずつ連続して流されている。流すべき各ステップの電流値はヒーター11の抵抗温度特性によって必要な発熱温度が得られるようにあらかじめ決めておけばよい。本実施の形態における必要なヒーター11の発熱温度は、第1ステップでは発熱させない、第2ステップでは約150℃、第3ステップでは約200℃になるように設定した。この温度を設定した根拠は、まず第1ステップでは検出素子1の付近の周囲温度を検知するため発熱させてはならないためである。第3ステップではガス感度を高めるためにできるだけ高い温度、かつ焦電効果を得るために焦電素子17のキュリー点(本実施の形態の場合、約350℃)以下でなければならないこと、さらにキュリー点付近では焦電素子17のガス感度が極めて小さくなるため実用上必要な温度に抑える必要があることから、実用感度が得られる最適な最高温度を求めたところ約200℃であった。第2ステップでは検出素子1への結露を防ぐため低くとも水の沸点(100℃)以上で、かつ第3ステップ以下の温度でなければならないことから両者の中間である150℃とした。ここで第2ステップの温度が第3ステップの温度に近すぎると両者の出力差が小さくなり後述する補正計算の精度が悪くなってしまう。一方、第2ステップの温度が低すぎると第2ステップでの焦電素子17の出力が第3ステップのそれに比べ小さくなるため、相対的にノイズの大きい出力になりやはり後述する補正計算の精度が悪くなる。このため第2ステップの温度を中間である150℃としている。
第3ステップの電流を流し終えると、ヒーター11への電流をオフにし1.7秒待つ。この間に検出素子1を周囲温度まで冷却している。従って、1サイクル2秒の間隔でこれを繰り返して電流を印加している。なお、これらの電流値や時間は本実施の形態の検出素子1で得られた条件の一例であり、これらの数値に何ら限定されるものではない。
マイクロコンピュータ31は上記の電流制御を行いながら、ヒーター11および焦電素子17の電圧を第1電圧計29および第2電圧計30からそれぞれ読み込む。ここで、各電圧値を読み込むタイミングを説明する。
まず、第1ステップで周囲温度を測定する際には、第1ステップの電流をヒーター11に流して次に第2ステップに切替える直前のヒーター11の両端電圧を第1電圧計29より読み込みこの電圧をTとする。
次に、第2ステップに切替えると同時にマイクロコンピュータ31は第2電圧計30の出力を読み込み続ける。この際の読み込み周期は0.01秒とした。従って、第2ステップの電流が流れている間(0.1秒)、マイクロコンピュータ31は焦電素子17の起電圧の変化を10ポイント取り込むことになる。ここで読み込み周期を0.01秒としたのは、あまり多くのポイントを取り込みすぎると後述のピーク抽出演算に時間がかかるうえマイクロコンピュータ31内に多くのメモリーが必要になることと、さらに実験の結果0.01秒間隔でも十分精度の高いデータが得られたためである。
マイクロコンピュータ31は10ポイントのデータを読み込み終わると同時に、それらの中の最大値(ピーク)を抽出する。最大値の抽出は得られたデータを順次比較することにより決定している。この最大値を第2ステップでの出力とする。ここで、最大値を選ぶ理由について説明する。焦電素子17は第2ステップでヒーター11が150℃まで加熱される時の急峻な温度変化(微分値)を敏感に起電圧として出力するため、ヒーター11の温度は最初は急激に上昇するが後半は安定に向かうので、その温度変化カーブ(すなわち、焦電素子の出力)は図11に示すようにステップ中に必ず最大値を持つことになる。この最大値(図11のL)が焦電素子17の最も大きな感度に相当しセンサ出力の高精度化に有利になるので最大値を選ぶようにしている。
次の第3ステップも第2ステップと同様、マイクロコンピュータ31は電流を切替えると同時に10ポイントの起電圧変化を読み込み最大値(図11のH)を抽出する。
なお、第1ステップで焦電素子17の出力の最大値を取り込まない理由であるが、確かに図11に示すようにヒーター11に発熱しないとはいえ僅かでも電流を流せばヒーター11には微小な温度変化が発生し、それに応じて焦電素子17の起電圧が敏感に変化する。それを検知することは可能であるがヒーター11が周囲環境との熱平衡で実用上無視できるレベルの温度変化であった場合、焦電素子17の出力はヒーター11の発熱時に比べ著しく小さくなる。このため検出時のノイズを考慮すると後述の補正計算で誤差が大きくなってしまう。そこで温度の絶対値としての検出を行うことができるヒーター11の両端電圧(=抵抗値)を読むことで、温度データを得るようにした。
上記のようにして得られたT、L、Hについて、Tはほとんど発熱しない状態でのヒーター11の電圧に相当する。この場合、ヒーター11は白金測温体に相当するのでその両端電圧Tはほぼ検出素子1の周囲温度のみを表すことになり、ガスの種類による熱伝導の変化は検出していない。
LおよびHはヒーター11が発熱した時の焦電素子17の起電圧になる。この場合はガスの種類や濃度および周囲温度によって素子から奪われる熱と自らの発熱との平衡が取れた温度に応じた起電圧が得られる。従って、LとHは周囲温度とガスの種類や濃度というパラメータが合成された電圧となる。
ここで、代表値としてHを用いた時の80℃における加湿雰囲気下での水素濃度依存性を求めた。非加湿(0%RH:RHは相対湿度)下で空気のみをガスセンサに流した時の出力Hが0に、水素を1%混合した空気をガスセンサに流した時の出力Hが1になるように、各水素濃度や湿度条件下で得られた出力Hを規格化した。結果を図12に示す。横軸はガスセンサに流した水素の濃度(%)、縦軸は規格化したセンサ出力(%H2)を示す。
図12より、雰囲気中に湿度が含まれるとセンサ出力が無視できないほど大きく動き、水素検出、湿度検出ともに同レベルの感度を有することがわかった。出力Lについても同様の効果であった。従って、LやH単独では両者を区別して検出できない。そこで、以下に示す演算を行うことで両者の濃度を出力している。
一般に気体の熱伝導率は温度依存性を有するため、まず周囲温度Tに対する補正をL、Hに対して行う。具体的には、最初に0点(乾燥空気だけが存在する場合の出力)の補正を行う。これは、まず、乾燥空気をガスセンサに流した状態で温度を変え各温度における出力TとL、TとHのプロットから両者の相関関係を求める。実際の相関例を図13に示す。図13において、周囲温度が−40,20,50,80,95℃の場合の出力T,L,Hを、T(周囲温度に相当)を横軸にL,Hを縦軸(任意単位)にそれぞれプロットした。L,Hとも周囲温度Tによって変化し0点が温度依存性を持つことがわかる。図13よりL,Hに対する0点補正式を最小二乗法で二次近似して求めると、以下のようになった。
L0=0.4954×T^2+2.2594×T+0.5716 (1)
H0=0.6367×T^2+2.2269×T+0.746 (2)
これより、ある任意の湿度および水素環境下での出力L,Hのうち、0点の温度依存による影響分L0,H0は周囲温度Tを(1)、(2)式に代入することで得られる。従って、任意環境下の出力L,Hを0点補正した値ZL,ZHは次式で求められる。
ZL=L−L0 (3)
ZH=H−H0 (4)
なお、(1)、(2)式で二次近似としたのは、一次近似では補正誤差が大きかったからである。
次に、周囲温度による感度補正を行う。これは、一般に気体の熱伝導率は同じ濃度のガスが存在していても周囲温度に応じて変化する、すなわち、熱伝導率のガス感度が温度特性を有するためである。このため、乾燥空気に水素を一定濃度(ここでは1%とした)混合したガスをガスセンサに流した状態で温度を変え、各温度における出力T,L,Hから補正式を用いて補正する。ここで、前記したように温度を変えると0点も変化するので、L,Hの値は(3)、(4)式によりあらかじめ0点補正した値(ZL,ZH)に対して感度補正を行う。
1%水素を含む乾燥空気に対する出力ZL,ZH(=1%水素感度)の実際の温度依存性を図14に示す。周囲温度は0点補正の時と同様に変化させた。また、横軸にはT(周囲温度に相当)を、縦軸にはZL,ZH(任意単位)をそれぞれプロットした。図14より、1%水素感度も温度依存性を持つことがわかる。ZL,ZHに対する感度補正式を最小二乗法で二次近似して求めると、以下のようになった。
ZL1=−1.6373×T^2−1.1066×T+1.2336 (5)
ZH1=−2.6011×T^2−1.4769×T+1.6269 (6)
ここで、ZL1,ZH1は温度による感度補正係数である。これより、任意環境下の出力ZL,ZHを感度補正して水素濃度に規格化した値KL,KHは次式で求められる。
KL=ZL/ZL1 (7)
KH=ZH/ZH1 (8)
(7)、(8)式により、KL,KHの単位は水素濃度の%(以下、%H2)に規格化されたことになる。なお、(5)、(6)式で二次近似としたのは、0点補正時と同様、一次近似では補正誤差が大きかったからである。
次に、湿度出力を求める。(7)、(8)式は水素濃度で規格化した出力であるので、両者の差は任意環境における出力のうち水素濃度の影響を差し引いた値、すなわち、湿度に相当する。これは、水素が4%程度までの範囲であれば、水素と水蒸気が混合した空気の場合、両者の熱伝導率への影響が単純に和として近似できることに基づく。さらに、水素感度と湿度感度は異なることから、水素濃度に対する感度が等しくなるように計算された規格化出力KL,KHの差は水素感度のみを差し引くことになり、残った値は湿度を示すことになる。実際に両者の差を求めて湿度との相関をプロットしたものを図15に示す。横軸はKLとKHの差Hum(=KH−KL)を、縦軸は80℃での相対湿度RHをそれぞれを示す。図15より、Humに対するRHの相関は従来例で述べたピークを持つ非線形特性ではなく、一義的に湿度を決定できる略線形特性であることがわかる。
この相関を最小二乗法で二次近似した計算式を次式に示す。
RH=243.65×Hum^2+132.57×Hum
+0.1011 (9)
従って、規格化出力差Humを(9)式に代入すれば、RHを求めることができる。なお、本実施の形態ではRHを80℃での相対湿度の単位で求めたが、周囲温度Tが変わった場合は、Tに応じてRHを既知公式などを用いて絶対湿度に変換するなり、Tにおける相対湿度に換算することで、任意の温度下での湿度を求めることができる。
ここで、Humの湿度に対する特性がピークを持つ非線形特性にならない理由について図16を用いて説明する。図16は水素を含まない湿り空気における湿度RHに対するKL,KH,Humの相関図であり、横軸はRHを、左縦軸はKL,KHを、右縦軸はHumをそれぞれ示す。図16より、規格化出力KL,KHのRHに対する特性はいずれもピークを持つ非線形特性であることがわかる。これは湿り空気の持つ熱伝導特性を直接表していることになる。従って、湿度に対するKL,KHの近似式は必ず二次以上の方程式で表さなければならないので、従来例に比べられているようにこの近似式(推定式)を用いて連立方程式を解くと解が複数存在することになり、一義的に湿度を、ひいては水素濃度を決定できないわけである。
しかし、湿り空気のような混合ガスの熱伝導率をSutherland−Wassiljewa型理論式から計算すると、式中の結合係数や構成ガスの純成分の熱伝導率が温度特性を持つことから、たとえ同濃度の混合ガスでも温度が変わると熱伝導率が変化することがわかる。従って、検出素子の発熱温度を違えると、同湿度下であっても湿度感度が互いに異なることになる。これは図16でKLとKHのプロットが異なることからも裏付けられる。この点に着目し、異なる発熱温度における検出素子の出力(ここでKL,KHに相当)の差を上記理論式から計算すると、ガスセンサの使用湿度範囲では略線形特性になることを発見した。実際にKLとKHの差(=Hum)を求めた結果を図16に示す(縦軸は右側を参照のこと)。図16よりRHに対するHumは略線形特性を示しこれも理論計算を裏付ける結果となった。これらのことから、従来、湿度を一義的に決定できなかったものが、本発明の演算手法により(9)式を用いて決定できるようになった。
次に、水素濃度を求める手法について説明する。
図12より湿度に応じたオフセットを差し引けば湿度補正を行えることがわかる。従って、湿度とオフセットの相関を求めれば湿度補正が可能となる。ここで、図15でHumが湿度を表すことを明確にしたので、HumとオフセットOffとの相関を求めた。結果を図17に示す。横軸はHumを、縦軸は図12から求めたOffをそれぞれ示す。図17よりHumから差し引くべきオフセット量Offを一義的に決定できることがわかる。両者の相関を最小二乗法で三次近似した計算式を次式に示す。
Off=11.247×Hum^3−27.502×Hum^2
+17.242×Hum−0.0351 (10)
従って、湿度補正後の水素出力Outは次式より得られる。
Out=KH−Off (11)
なお、(10)式で三次近似としたのは低次の近似では補正誤差が大きかったからである。
以上の補正手段を用いて、実際に図12の出力を湿度補正した結果を図18に示す。横軸は非検出ガス中の水素濃度、縦軸は水素出力Outである。図18より明らかなように、図12と比べ湿度補正が極めて良好になされていることがわかる。
なお、従来例で説明した図21と同様にセンサ出力を経時的に表した結果を図19に示す。水素濃度の切り替え条件は従来例と同一である。図19を図21と比較すると、ノイズ幅が従来例に比べ約1/5、すなわち精度が5倍という極めて良好な結果が得られることがわかった。
また、(11)式までに示した計算はいずれも簡単な四則演算であるため、従来例に述べられているような連立方程式を二次以上の次数で計算するのに比べ複数の解が存在することなく正確に、さらに計算速度が極めて速く、応答性のよいガスセンサが実現できる。従って、湿度が影響する系のような場合には本実施の形態の計算方法が極めて有利であることがわかる。
以上の計算手法はマイクロコンピュータ31にプログラムされており、ガスセンサ動作時に得られる検出素子の出力T,L,Hが入力されると、上記(1)式から(11)式の計算を行い、水素濃度、湿度を出力するようになっている。この計算手順サブルーチンを図20のフローチャートに示す。
まず、ヒーターに最初の電流(第1ステップ)を流す(S1)。次に既定時間(0.1秒)待つ(S2)。既定時間経過後のヒーターの両端電圧Tを読み込む(S3)。次に検出素子に2回目の電流(第2ステップ)を流し(S4)、すぐに焦電素子の両端電圧の読み込みを開始する(S5)。これを既定時間(0.1秒)が経過するまで続ける(S6のno)。既定時間が経過すると(S6のyes)、読み込んだ電圧値の中から最大電圧値Lを抽出する(S7)。同様に、ヒーターに3回目の電流(第3ステップ)を流し(S8)、すぐに焦電素子の両端電圧の読み込みを開始する(S9)。これを既定時間(0.1秒)が経過するまで続ける(S10のno)。既定時間が経過すると(S10のyes)、読み込んだ電圧値の中から最大電圧値Hを抽出する(S11)。次に、(1)式から(4)式を用いて温度による0点補正計算を行い(S12)、その結果を用いて(5)式から(8)式により温度による感度補正計算を行う(S13)。次に、(9)式より湿度計算を行い(S14)、(10)、(11)式より湿度補正による水素濃度を計算する(S15)。最後に水素濃度と湿度を出力する(S16)。以上の動作を1サイクルとして繰り返し、水素濃度と湿度を出力し続ける。
なお、本実施の形態では水素濃度と湿度のみを出力しているが、必要に応じてTの値から周囲温度を出力するようにしてもよい。
以上の構成、動作により、水素と水蒸気が共存した環境下において水素濃度と湿度を区別して高精度に検出することができるガスセンサが得られた。
本発明の実施の形態におけるガスセンサのガス検出部の分解斜視図 同センサの検出素子の概略斜視図 (a)〜(c)同センサの検出素子における電極パターンの概略斜視図 同センサの検出素子の拡大断面図 (a)〜(i)同センサの検出素子の概略製造プロセス図 同センサの概略断面図 同センサを定置型燃料電池システムに取り付けた際の概略ブロック図 同センサを用いた燃料電池自動車の概略構造を示す説明図 同センサの回路構成を説明するための概略回路図 同センサのヒーターに加える印加電流の概略波形図 同センサの検出素子の経時下での出力波形図 同センサの検出素子が高温発熱時の加湿下における水素濃度出力特性図 同センサの検出素子が低温発熱時および高温発熱時の0点温度特性図 同センサの検出素子が低温発熱時および高温発熱時の温度による感度補正特性図 同センサの検出素子が低温発熱時および高温発熱時の補正後の出力差と80℃における相対湿度との相関図 同センサの湿度に対する0点および感度補正後出力の相関図 同センサの検出素子が低温発熱時および高温発熱時の補正後の出力差とオフセットとの相関図 同センサの湿度補正後の加湿下での水素濃度出力特性図 同センサの各種水素濃度に対する経時下でのセンサ出力特性図 同センサの水素濃度と湿度を計算する手順を示すフローチャート 従来例のガスセンサの各種水素濃度に対する経時下でのセンサ出力特性図
符号の説明
1 検出素子
2 ベース
3 ピン
4 ワイヤー
5 内孔
6 内キャン
7 外孔
8 外キャン
9 網
10 台座
11 ヒーター
12 第1電極
13 第2電極
14 ランド
15 窪み部
16a 第1絶縁層
16b 第2絶縁層
17 焦電素子
18 保護層
19 検出部
20 検出回路
21 容器
22 取出しケーブル
23 容器フタ
24 耐湿樹脂
25 ガス取込口
26 ネジ部
27 ガスセンサ
28 定電流源
29 第1電圧計
30 第2電圧計
31 マイクロコンピュータ
51 水素タンク
52 遮断弁
53 水素加湿器
54 燃料電池スタック
55 コンプレッサ
56 空気加湿器
57 燃料電池制御回路
58 筐体
59 警報器
60 換気扇
101 本体
102 乗車空間
103 水素タンク収納空間
104 駆動手段収納空間
105 床下空間
106 タンク
107 外側タンク
108 内側タンク
109 モーター
110 燃料電池スタック
111 タイヤ
112 ハンドル
113 ガスセンサ

Claims (21)

  1. 一部を窪ませたシリコン台座と、この窪み部の表面に形成した第1絶縁層と、この第1絶縁層の上に形成したヒーターと、このヒーターの上に形成した第2絶縁層と、この第2絶縁層の上に形成した第1電極と、この第1電極の上に形成した焦電効果を有する焦電素子と、この焦電素子の上に形成した第2電極とからなる検出素子と、前記ヒーターに電流を流す電源装置と、前記ヒーターの両端電圧を測定する第1電圧計と、前記焦電素子の起電圧を測定するために前記第1電極および前記第2電極に接続された第2電圧計と、前記第1電圧計および前記第2電圧計の出力電圧から被検出ガスの濃度を演算出力する演算部を有し、前記ヒーターに電流をステップ状に規定時間連続して流し、それぞれの電流値に対する前記ヒーターおよび前記焦電素子の規定時間内の両端電圧を前記演算部へ取り込み最も電流の少ない時の前記ヒーターの両端電圧から温度を求め、前記温度でその他の電流を流した時の前記焦電素子の両端電圧の値を補正することで被検出ガスの濃度を求める工程を1サイクルとして繰り返すことで被検出ガスの濃度を出力するガスセンサ。
  2. ヒーターに少なくとも3段階以上の電流をステップ状に規定時間連続して流し、それぞれの電流値に対する前記ヒーターおよび前記焦電素子の規定時間内の両端電圧を前記演算部へ取り込み最も電流の少ない時の前記ヒーターの両端電圧から温度を求め、前記温度と濃度既知の被検出ガスであらかじめ求めた0点および感度の補正式とからその他の電流を流した時の前記焦電素子の両端電圧の値を補正することで規格化出力をそれぞれ求め、この規格化出力の差から湿度を求め、湿度と濃度既知の被検出ガスであらかじめ求めた湿度補正式で前記規格化出力を補正することで被検出ガスの濃度を求める工程を1サイクルとして繰り返すことで湿度および被検出ガスの濃度を出力する請求項1に記載のガスセンサ。
  3. 被検出ガスが濃度4%までの水素である請求項2に記載のガスセンサ。
  4. 検出素子に流す最も電流の少ない時の電流値は検出素子がほとんど発熱しない範囲内で与えるようにした請求項1に記載のガスセンサ。
  5. 検出素子に流す少なくとも3段階以上の電流値は低い電流から高い電流に順次与えるようにした請求項2に記載のガスセンサ。
  6. 検出素子の表面に保護層を形成した請求項1に記載のガスセンサ。
  7. 絶縁層および保護層をシリカで構成した請求項6に記載のガスセンサ。
  8. 窪み部の厚みを10マイクロメートル以下とした請求項1に記載のガスセンサ。
  9. 窪み部の一部に貫通部を設けた請求項1に記載のガスセンサ。
  10. ヒーターを白金薄膜で構成した請求項1に記載のガスセンサ。
  11. 第1電極および第2電極を金属膜で構成した請求項1に記載のガスセンサ。
  12. 焦電素子は鉛、ランタン、チタニウムの複合酸化物からなる請求項1に記載のガスセンサ。
  13. ヒーターに流す電流値を最も電流の少ない時を除いて焦電素子の温度が100℃以上から200℃以下になるように制御するようにした請求項1に記載のガスセンサ。
  14. 第2電圧計から演算部が取り込む電圧は、各電流値をヒーターに流している間の最大値をそれぞれ取り込むようにした請求項1に記載のガスセンサ。
  15. 窪み部の形状がつづら折れの構成である請求項1に記載のガスセンサ。
  16. 検出素子は二重の有孔キャンの中に配置され、それぞれの孔の位置が互いに対向しない位置にある請求項1に記載のガスセンサ。
  17. 孔にはそれぞれ金属網を形成した請求項16に記載のガスセンサ。
  18. 有孔キャンおよび金属網を黒色とした請求項17に記載のガスセンサ。
  19. 請求項1から18のいずれか1つに記載のガスセンサが搭載された燃料電池であって、前記ガスセンサの水素に対する出力が既定値を超えた時、換気するとともに前記燃料電池を停止するように制御する構成とした燃料電池システム。
  20. 請求項1から18のいずれか1つに記載のガスセンサを乗車空間の上部に配置し、このガスセンサの湿度出力および温度出力をもとに前記乗車空間が最適な温湿度になるように前記乗車空間の一部に設けたエアコンを制御するとともに、前記ガスセンサの水素濃度出力から前記乗車空間内の水素濃度が既定値以上であれば警報を発し、前記乗車空間内の換気を行うとともに水素供給源を遮断するように制御する構成とした自動車。
  21. ガスセンサを常時動作させるようにした請求項20に記載の自動車。
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