JP2005040964A - 印刷版固定シートとそれを用いた版掛け方法および印刷方法 - Google Patents

印刷版固定シートとそれを用いた版掛け方法および印刷方法 Download PDF

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武司 三瓶
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Abstract

【課題】印刷版材料を印刷版固定シートにより印刷機の版胴に設置して印刷する場合において、多数枚の印刷を行っても印刷位置安定性がよく、インク着肉性や耐刷性にも優れた印刷版固定シートの提供と、それを用いた版掛け方法および印刷方法を提供することにある。
【解決手段】ポリエステル支持体上に少なくとも親水性層、画像形成機能層および裏塗り層を有する印刷版材料と、印刷機の版胴の間に設置する、印刷版固定シートであって、23℃、48%RHにおけるスティフネス(ST)が、30g≦ST≦120gであることを特徴とする印刷版固定シート。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷版固定シートとそれを用いた版掛け方法および印刷方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、印刷版の支持体はアルミニウムのような金属版を用いていた。しかし、最近、ハンドリング性や印刷版の持ち運びに便利なように、ポリエステルフィルム支持体を用いた印刷版の技術が知られるようになった(例えば、特許文献1、2および3参照)。
【0003】
これらのポリエステル支持体を用いた印刷版では、版掛け時の伸びによる歪みが生じるという問題があり、これらを改善するために印刷版と印刷機版胴の間に印刷版を固定するシートを介在させる方法が知られている(特許文献4参照)。
【0004】
しかしながら、これらの技術では、いぜんとして印刷中に印刷機の版胴上で印刷版が移動してしまい、印刷物の長さが変動するいわゆる印刷位置安定性が悪いという問題があった。また、これに伴い刷り出し時のインク着肉性や耐刷性等、印刷性能が大きく劣化するという問題も生じていた。特に印刷版を長期に保存した場合にはその傾向が顕著にあらわれた。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−257287号公報
【0006】
【特許文献2】
特開2000−258899号公報
【0007】
【特許文献3】
特開2002−79773号公報
【0008】
【特許文献4】
特開平10−193828号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。
【0010】
即ち、本発明の目的は、印刷版材料を印刷版固定シートにより印刷機の版胴に設置して印刷する場合において、多数枚の印刷を行っても印刷位置安定性がよく、インク着肉性や耐刷性にも優れた印刷版固定シートの提供と、それを用いた版掛け方法および印刷方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記構成の何れかを採ることにより達成される。
【0012】
〔1〕 ポリエステル支持体上に少なくとも親水性層、画像形成機能層および裏塗り層を有する印刷版材料と、印刷機の版胴の間に設置する、印刷版固定シートであって、23℃、48%RHにおけるスティフネス(ST)が、30g≦ST≦120gであることを特徴とする印刷版固定シート。
【0013】
〔2〕 前記印刷版固定シートの基材に、厚み分布が10%以下のプラスチックフィルムを用いたことを特徴とする〔1〕記載の印刷版固定シート。
【0014】
〔3〕 ポリエステル支持体上に少なくとも親水性層、画像形成機能層および裏塗り層を有する印刷版材料と、印刷機の版胴の間に、印刷版固定シートを介在させる版掛け方法において、該印刷版固定シートの23℃、48%RHにおけるスティフネス(ST)が、30g≦ST≦120gであることを特徴とする版掛け方法。
【0015】
〔4〕 前記印刷版固定シートの基材に、厚み分布が10%以下のプラスチックフィルムを用いていることを特徴とする〔3〕記載の版掛け方法。
【0016】
〔5〕 ポリエステル支持体上に少なくとも親水性層、画像形成機能層および裏塗り層を有する印刷版材料と、印刷機の版胴の間に、印刷版固定シートを介在させて印刷する印刷方法であって、該印刷版固定シートの23℃、48%RHにおけるスティフネス(ST)が、30g≦ST≦120gであることを特徴とする印刷方法。
【0017】
〔6〕 ポリエステル支持体上に少なくとも親水性層、画像形成機能層および裏塗り層を有する印刷版材料上に、レーザーを用いて画像を形成した後、湿式現像処理を施すことなく、印刷版材料と印刷機の版胴の間に、印刷版固定シートを介在させて印刷機に印刷版材料を取り付け、印刷用紙へ印刷する印刷方法において、該印刷版固定シートの23℃、48%RHにおけるスティフネス(ST)が、30g≦ST≦120gであることを特徴とする印刷方法。
【0018】
本発明におけるスティフネスとは、市販のフィルムスティフネステスター(例えば(株)東洋精機製作所社製の「スティフネステスター UT−100−230」や「スティフネステスター UT−200GR」など)を用いて測定することが出来る。
【0019】
具体的には平坦な台に置いた20cm×10cmの試料の長辺側の両端を台に沿って近づけ、その中央部を台から1cm上方にたわませてから、両端各5cmを台へ固定する。頂上部を針で押して3mm押し下げた時の荷重を測定したものである。
【0020】
印刷版固定シートにおいて、本発明のスティフネスの範囲は、下記に示す技術手段を複数適宜選択し、組み合わせることで達成される。これらの詳細に関しては後段の関連する技術項目の箇所にて説明する。
【0021】
(1)印刷版固定シートのプラスチックフィルム基材の弾性率(E120)を調整する
(2)印刷版固定シートのプラスチックフィルム基材の厚み分布を調整する
(3)印刷版固定シートのプラスチックフィルム基材の製造における延伸条件を調整する
(4)印刷版固定シートの表面層に微粒径の粒子を含有させる
(5)プラスチックフィルム基材に表面層として微粒径の粒子を結着樹脂に分散させて塗布するまたは結着樹脂膜を表面に形成した後、粒子を押し込む
詳しくは後段に記載するが、厚み分布が10%以下であることが好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明における構成要件、関連技術について、さらに説明を加える。
【0023】
〔印刷版固定シート〕
本発明に係る印刷版固定シートの基材の構成材料としては、各種のプラスチックフィルムを用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。
【0024】
(1)印刷版固定シートのプラスチックフィルム基材の弾性率
印刷版固定シートの基材として、120℃での弾性率(E120)が1000〜6000N/mmであるプラスチックフィルム基材を用いることが好ましい。
【0025】
本発明に係る基材は、本発明の印刷版固定シート自体の特性上からもハンドリング適性を付与する観点からも、120℃での弾性率(E120)が1000〜6000N/mmであることが好ましく、より好ましくは1200〜5000N/mmである。具体的にはポリエチレンナフタレート(E120=4100N/mm)、ポリエチレンテレフタレート(E120=15000N/mm)、ポリブチレンナフタレート(E120=1600N/mm)、ポリカーボネート(E120=1700N/mm)、シンジオタクチックポリスチレン(E120=2200N/mm)、ポリエーテルイミド(E120=1900N/mm)、ポリアリレート(E120=1700N/mm)、ポリスルホン(E120=1800N/mm)、ポリエーテルスルホン(E120=1700N/mm)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく積層あるいは混合して用いてもよい。中でも、特に好ましいプラスチックフィルムとしてはポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0026】
ここで、弾性率とは、引張試験機を用い、JIS C2318に準拠したサンプルの標線が示すひずみと、それに対応する応力が直線的な関係を示す領域において、ひずみ量に対する応力の傾きを求めたものである。これがヤング率と呼ばれる値であり、本発明では、前記ヤング率を弾性率と定義する。
【0027】
(2)印刷版固定シートのプラスチックフィルム基材の厚み分布
さらに本発明に係る基材は、スティフネスの点から、あるいは前記印刷版固定シートを印刷機へ設置する際のハンドリング適性向上の観点から、平均膜厚が50〜300μmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、50〜300μmの範囲である。
【0028】
本発明に係る基材の厚み分布(厚みの最大値と最小値の差を平均厚みで割り百分率で表した値)は、10%以下であることが好ましいが、さらに好ましくは8%以下であり、特に好ましくは6%以下である。
【0029】
ここで、基材の厚み分布の測定方法は、一辺が60cmの正方形に切り出した基材を縦、横10cm間隔で碁盤目状に線を引き、この25点の厚みを測定し平均値と最大値、最小値を求める。
【0030】
本発明に係る基材の厚み分布を上記範囲に調整するためには、製膜条件を適正にしたり、製膜後に再加熱しながら平滑ローラーなどで調整をする方法があるが、本発明においては下記に記載の製膜処理で製造されることが好ましい。
【0031】
(3)印刷版固定シートのプラスチックフィルム基材の延伸条件
印刷版固定シートの基材の製造における延伸条件を調整し、印刷版固定シートとしてのスティフネスが本発明の範囲になるように調整することが好ましい。
【0032】
スティフネスは、延伸倍率を上げれば大きく、下げれば小さくなる。縦、横いずれの延伸倍率もスティフネスを変化させるが、特に縦方向の延伸の影響が大きい。また、延伸温度は下げると配向が進んで大きくなり、上げれば逆に小さくなる。また、重合度もスティフネスに影響を与え、重合度が大きくなるとスティフネスも大きくなる。
【0033】
基材の製膜手段としては、熱可塑性樹脂を融点(Tm)〜Tm+50℃の間で熔融後、焼結フィルタ等で濾過された後、T−ダイから押出し、ガラス転位温度(Tg)−50℃〜Tgに温調したキャスティングドラム上で未延伸シートを形成する。この時、厚み分布を上記の範囲にするには、静電印加法等を用いるのが好ましい。
【0034】
前記の未延伸シートをTg〜Tg+50℃の間で2倍〜4倍に縦延伸する。また、厚み分布を上記の範囲に調整するもう一つの方法としては、縦延伸を多段延伸するのが好ましい。この時、前段延伸より後段延伸の温度を1〜30℃の範囲で高く調整することが好ましく、更に好ましくは、2〜15℃の範囲で高く調整しながら延伸するのが好ましい。
【0035】
前段延伸の倍率は後段延伸の倍率の0.25〜0.7倍が好ましく、更に好ましくは、0.3〜0.5倍である。この後、Tg−30℃〜Tgの温度範囲で、5〜60秒、より好ましくは10〜40秒間保持した後、横方向にTg〜Tg+50℃の間で2.5〜5倍に延伸することが好ましい。
【0036】
この後、(Tm−50℃)〜(Tm−5℃)で5〜120秒、チャックで把持した状態で熱固定を行う。この時、幅方向に0〜10%チャック間隔を狭めること(熱緩和)も好ましい。これを冷却後、端部に10〜100μmのナーリングを付けた(ナーリング高さを設けるともいう)後、巻取り、多軸延伸フィルムを得る等の方法が好ましい。
【0037】
本発明に係る基材は、塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下引き層塗布を行ってもよい。
【0038】
また、本発明に係る基材としては、プラスチックフィルム基材が用いられるが、プラスチックフィルムと金属板(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウムなど)やポリエチレンで被覆した紙などの材料(複合基材ともいう)を適宜貼り合わせた複合基材を用いることもできる。これらの複合基材は、塗布層を形成する前に貼り合わせても良く、また、塗布層を形成した後に貼り合わせても良く、印刷機に取り付ける直前に貼り合わせても良い。
【0039】
前記した(4)、(5)の如く、印刷版固定シートの表面層に微粒の粒子を含有させる場合においては、平均粒径1〜100μmの粒子を含有させるのがよい。
【0040】
本発明において、印刷版固定シートの表面とは、印刷機の版胴に印刷版固定シートを巻き付けたときに、印刷版材料の裏塗り層側と接する面をいう。
【0041】
用いられる粒子は、粒径1〜100μmの粒子であることが好ましい。より好ましくは平均粒径1〜80μmであり、特に好ましくは平均粒径1〜50μmである。
【0042】
粒子の素材は特に限定されず、無機材料、有機材料、有機無機複合材料等よりなる粒子である。平版印刷版の支持体の裏面より硬度の大きな粒子が好ましく用いられる。
【0043】
無機粒子としては、例えば金属粉体、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属炭化物及びこれらの複合金属化合物等が挙げられ、好ましくはガラス、SiO、TiO、ZnO、Fe、ZrO、SnO等の酸化物及びZnS、CuS等の硫化物である。
【0044】
有機粒子としては、例えば合成樹脂粒子、天然高分子粒子等が挙げられ、好ましくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、デンプン、キチン、キトサン等であり、より好ましくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂粒子である。
【0045】
有機無機複合粒子としては、例えば、上記の無機粒子及び有機粒子を形成する材料の少なくとも2種以上の複合物等が挙げられ、好ましくは、ガラス、SiO、TiO、ZnO、Fe、ZrO、SnO等の酸化物及び/又はZnS、CuS等の硫化物とアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、デンプン、キチン、キトサン等の複合物等であり、より好ましくは、SiO、TiO、ZnO、Fe、ZrO、SnO等の酸化物と水素結合性の官能基を有するアクリル樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、デンプン、キチン、キトサン等の複合物等である。
【0046】
本発明では、このような粒子を分散、結着する結着樹脂として、一般的に用いられる有機樹脂(親油性樹脂、水溶性樹脂等)、有機樹脂エマルジョン、無機樹脂、有機無機ハイブリッド樹脂等、天然、半合成、合成樹脂の全てが利用でき、必要に応じて硬化して用いることができる。
【0047】
親油性有機樹脂としては、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、各種アルキル、アラルキルまたはアリールアクリレート共重合体、各種アルキル、アラルキルまたはアリールメタクリレート共重合体等)、アルキッド樹脂(メラミン樹脂、フェノール樹脂等)、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアルキレン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0048】
水溶性有機樹脂としては、セルロース、セルロース誘導体(セルロースエステル類;硝酸セルロース、硫酸セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、コハク酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース等、セルロースエーテル類;メチルセルロース、エチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等)、デンプン、デンプン誘導体(酸化デンプン、エステル化デンプン類;硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸等のエステル化体、エーテル化デンプン類;メチル化、エチル化、シアノエチル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシメチル化等のエーテル化体)、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、タマリンドガム、天然ガム類(アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、キサンタンガム等)、プルラン、デキストラン、カゼイン、ゼラチン、キチン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール〔ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、(エチレン/プロピレングリコール)共重合体等〕、アリルアルコール共重合体、アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体、ポリアミノ酸、ポリアミド(アクリルアミドもしくはメタクリルアミドのN−置換体の重合体又は共重合体〔N−置換基として、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、フェニル、モノメチロール、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシペンチル基等〕等)、ポリアミン(ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン等)、ポリウレア(尿素樹脂等)等が挙げられる。
【0049】
有機樹脂エマルジョンとしては、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、各種アルキル、アラルキルまたはアリールアクリレート共重合体、各種アルキル、アラルキルまたはアリールメタクリレート共重合体等)エマルジョン、アルキッド樹脂(メラミン樹脂、フェノール樹脂等)エマルジョン、スチレン樹脂エマルジョン、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、アルキレン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)エマルジョン、エステル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン等が挙げられる。
【0050】
無機樹脂としては、金属原子が酸素原子または窒素原子を介して繋がった結合含有の樹脂(以下、金属含有樹脂とも称する)が挙げられる。金属含有樹脂は、「酸素原子(窒素原子)−金属原子−酸素原子(窒素原子)」から成る結合を主として含有するポリマーを示す。
【0051】
金属含有樹脂の中で、酸素原子−金属原子−酸素原子の結合を有する樹脂は、下記一般式(I)で示される金属化合物の加水分解重縮合によって得られるポリマーであることが好ましい。ここで、加水分解重縮合とは、反応性基が酸性ないし塩基性条件下で加水分解、縮合を繰り返し、重合していく反応である。
【0052】
一般式(I) (RM(Y)x−n
〔一般式(I)中、Rは水素原子、炭化水素基またはヘテロ環基を表し、Yは反応性基を表し、Mは3〜6価の金属を表し、xは金属Mの価数を表し、nは0、1、2、3又は4を表す。但しx−nは2以上である。〕
次に、一般式(I)で示される金属化合物について詳しく説明する。
【0053】
一般式(I)中のRは、好ましくは、炭素数1〜12の置換されてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基{例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等;これらの基に置換され得る基としては、ハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、チオール基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、エポキシ基、−OR′基(R′は炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、2−ヒドロキシエチル基、3−クロロプロピル基、2−シアノエチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、2−ブロモエチル基、2−(2−メトキシエチル)オキシエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−カルボキシプロピル基、ベンジル基等を示す)、−OCOR′基、−COOR′基、−COR′基、−N(R″)(R″)(R″は、水素原子又は前記R′と同一の内容を表し、各々同じでも異なってもよい)、−NHCONHR′基、−NHCOOR′基、−Si(R′)基、−CONHR″基、−NHCOR′基等が挙げられる。これらの置換基はアルキル基中に複数置換されてもよい}、炭素数2〜12の置換されてもよい直鎖状又は分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等、これらの基に置換され得る基としては、前記アルキル基に置換され得る基と同一の内容のものが挙げられ、また複数置換されていてもよい)、炭素数7〜14の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基等;これらの基に置換され得る基としては、前記アルキル基に置換され得る基と同一の内容のものが挙げられ、また複数置換されてもよい)、炭素数5〜10の置換されてもよい脂環式基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基、ノルボニル基、アダマンチル基等、これらの基に置換され得る基としては、前記アルキル基の置換基と同一の内容のものが挙げられ、また複数置換されてもよい)、炭素数6〜12の置換されてもよいアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基で、置換基としては前記アルキル基に置換され得る基と同一の内容のものが挙げられ、また複数置換されてもよい)、又は、窒素原子、酸素原子及びイオウ原子から選ばれる少なくとも1種の原子を合有する縮環してもよいヘテロ環基(例えばヘテロ環としては、ピラン環、フラン環、チオフェン環、モルホリン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリドン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、テトラヒドロフラン環等で、置換基を含有してもよい。置換基としては、前記アルキル基中の置換基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)を表す。
【0054】
反応性基Yは、好ましくは、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す)、−OR基、−OCOR基、−CH(COR)(COR)基、−CH(COR)(COOR)基又は−N(R)(R)基を表す。
【0055】
−OR基において、Rは炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、2−(メトキシエチルオキシ)エチル基、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル基、2−メトキシプロピル基、2−シアノエチル基、3−メチルオキシプロピル基、2−クロロエチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、クロロシクロヘキシル基、メトキシシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、ジメトキシベンジル基、メチルベンジル基、ブロモベンジル基等が挙げられる)を表す。
【0056】
−OCOR基において、好ましくはRは、Rと同一の内容を表し、好ましくは脂肪族基又は炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(芳香族基としては、前記R中のアリール基で例示したと同様のものが挙げられる)を表す。
【0057】
−CH(COR)(COR)基及び−CH(COR)(COOR)基において、Rは炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)又はアリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基等)を表し、Rは炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、炭素数7〜12のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基、メトキシベンジル基、カルボキシベンジル基、クロロベンジル基等)又はアリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、メトキシフェニル基、クロロフェニル基、カルボキシフェニル基、ジエトキシフェニル基等)を表す。
【0058】
また−N(R)(R)基において、R及びRは、互いに同じでも異なってもよく、各々、好ましくは水素原子又は炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、前記の−OR基のRと同様の内容のものが挙げられる)を表す。より好ましくは、RとRの炭素数の総和が12ヶ以内である。
【0059】
金属Mは、好ましくは、遷移金属、希土類金属、周期表III〜V族の金属が挙げられる。より好ましくはAl、Si、Sn、Ge、Ti、Zr等が挙げられ、更に好ましくは、Al、Si、Ti、Zr等が挙げられる。特にSiが好ましい。
【0060】
一般式(I)で示される金属化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0061】
メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン、n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン、n−ヘキシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−へキシルトリイソプロポキシシラン、n−ヘキシルトリt−ブトキシシラン、n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン、n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン、テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、イソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン、トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシンラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、Ti(OR)(Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、TiCl、Zn(OR)、Zn(CHCOCHCOCH、Sn(OR)、Sn(CHCOCHCOCH、Sn(OCOR)、SnCl、Zr(OR)、Zr(CHCOCHCOCH、Al(OR)がある。
【0062】
上記金属化合物は、単独乃至組み合わせて金属含有樹脂の製造に用いられる。窒素原子−金属原子−窒素原子の結合を有する金属含有樹脂は、例えばポリシラザンが挙げられる。
【0063】
本発明では更に、結着樹脂として、上記金属含有樹脂と、該樹脂と水素結合を形成し得る基を含有する有機ポリマーとの複合体を用いることが好ましい。金属含有樹脂と有機ポリマーとの複合体とは、ゾル状物質及びゲル状物質を含む意味に用いる。
【0064】
上記有機ポリマーは、金属含有樹脂と水素結合を形成し得る基(以下、特定の結合基ともいう)を含有する。特定の結合基としては、好ましくは、アミド結合(カルボン酸アミド結合及びスルホンアミド結合を含む)、ウレタン結合及びウレイド結合から選ばれる少なくとも一種の結合及び水酸基を挙げることができる。
【0065】
有機ポリマーは、繰り返し単位成分として、本発明の特定の結合基をポリマーの主鎖及び/又は側鎖に含有するものが挙げられる。好ましくは、繰り返し単位成分として、−N(R11)CO−、−N(R11)SO−、−NHCONH−及び−NHCOO−から選ばれる少なくとも1種の結合がポリマーの主鎖及び/又は側鎖に存在する成分、及び/又は−OH基を含有する成分が挙げられる。上記アミド結合中のR11は、水素原子又は有機残基を表し、有機残基としては、一般式(I)中のRにおける炭化水素基及びヘテロ環基と同一の内容のものが挙げられる。
【0066】
ポリマー主鎖に本発明の特定の結合基を含有するポリマーとしては、−N(R11)CO−結合または−N(R11)SO−結合を有するアミド樹脂、−NHCONH−結合を有するウレイド樹脂、−NHCOO−結合を含有するウレタン樹脂が挙げられる。
【0067】
アミド樹脂製造に供されるジアミン類とジカルボン酸類又はジスルホン酸類、ウレイド樹脂に用いられるジイソシアナート類、ウレタン樹脂に用いられるジオール類としては、例えば高分子学会編「高分子データハンドブック−基礎編−」第I章(株)培風舘刊(1986年)、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)等に記載されている化合物を用いることができる。
【0068】
その他に用いることができる化合物としては、特開2002−19322号公報段落番号0048〜0057に記載されている化合物を好ましく用いることができる。
【0069】
一方、水酸基含有の有機ポリマーとしては、天然水溶性高分子、半合成水溶性高分子、合成高分子のいずれでもよく、具体的には小竹無二雄監修「大有機化学19、天然高分子化合物I」朝倉書店刊(1960年)、経営開発センター出版部編「水溶性高分子・水分散型樹脂総合技術資料集」経営開発センター出版部刊(1981年)、長友新治「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(株)シーエムシー社刊(1988年)、「機能性セルロースの開発」(株)シーエムシー社刊(1985年)等に記載のものが挙げられる。
【0070】
例えば、天然及び半合成の高分子としては、セルロース、セルロース誘導体(セルロースエステル類;硝酸セルロース、硫酸セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、コハク酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース等、セルロースエーテル類;メチルセルロース、エチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等)、デンプン、デンプン誘導体(酸化デンプン、エステル化デンプン類;硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸等のエステル化体、エーテル化デンプン類;メチル化、エチル化、シアノエチル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシメチル化等の誘導体)、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、タマリンドガム、天然ガム類(アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、キサンタンガム等)、プルラン、デキストラン、カゼイン、ゼラチン、キチン、キトサン等が挙げられる。
【0071】
合成高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、(エチレングリコール/プロピレングリコール)共重合体等)、アリルアルコール共重合体、水酸基を少なくとも1種含有のアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体もしくは共重合体(エステル置換基として、例えば2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピル基、3−ヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)プロピル基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、等)、アクリルアミド又はメタクリルアミドのN−置換体の重合体もしくは共重合体(N−置換基として、例えば、モノメチロール基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル基、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシペンチル基、等)等が挙げられる。但し、合成高分子としては、繰り返し単位の側鎖置換基中に少なくとも1個の水酸基を含有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0072】
本発明に供される有機ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10〜10、より好ましくは5×10〜4×10である。
【0073】
本発明の金属含有樹脂と有機ポリマーとの複合体において、金属含有樹脂と有機ポリマーの割合は広い範囲で選択できるが、金属含有樹脂/有機ポリマーの質量比で10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜80/20である。
【0074】
上記複合体を含有する結着樹脂は、例えば、前記金属化合物の加水分解重縮合により生成した金属含有樹脂の場合、そのヒドロキシル基と、有機ポリマー中の前記特定の結合基とが水素結合作用により均一な有機、無機ハイブリッドを形成し、相分離することなくミクロ的に均質となる。金属含有樹脂に炭化水素基が存在する場合にはその炭化水素基に起因して、有機ポリマーとの親和性がさらに向上するものと推定される。上記複合体は、有機無機の両特性を有するため、無機系および有機系粒子のいずれに対しても強い相互作用を有し、結着樹脂が粒子に強く吸着する。また、この複合体は成膜性に優れている。
【0075】
金属含有樹脂と有機ポリマーとの複合体は、前記金属化合物を加水分解重縮合し、有機ポリマーと混合することにより製造するか、または有機ポリマーの存在下、前記金属化合物を加水分解重縮合することにより製造される。好ましくは、有機ポリマーの存在下、前記金属化合物をゾル−ゲル法により加水分解重縮合することにより有機・無機ポリマー複合体を得ることができる。生成した有機・無機ポリマー複合体において、有機ポリマーは、金属化合物の加水分解重縮合により生成したゲルのマトリックス(すなわち無機金属酸化物の三次元微細ネットワーク構造体)中に均一に分散している。
【0076】
上記好ましい方法としてのゾル−ゲル法は、従来公知のゾル−ゲル法を用いて行なうことができる。具体的には、「ゾル−ゲル法による薄膜コーティング技術」(株)技術情報協会刊(1995年)、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社刊(1988年)、平島碩「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター刊(1992年)等の成書に詳細に記載の方法に従って実施できる。
【0077】
用いられる溶媒は水、有機溶媒等から適宜選択される。有機溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロピラン、等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン等)、エステル類(酢酸メチル、エチレングリコールモノメチルモノアセテート等)、アミド類(ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等)等が挙げられる。溶媒は1種あるいは2種以上を併用してもよい。
【0078】
更に上記複合体を用いる場合には、一般式(I)で示される前記の金属化合物の加水分解及び重縮合反応を促進するために、酸性触媒又は塩基性触媒を併用することが好ましい。触媒は、酸または塩基性化合物をそのままか、あるいは水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒という)を用いる。そのときの濃度については特に限定しないが、濃度が濃い場合は加水分解及び重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の濃い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒の濃度は1mol/L以下が望ましい。
【0079】
酸性触媒または塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には、焼結後に触媒結晶粒中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、構造式RCOOHのRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸など、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0080】
結着樹脂は、粒子100に対して、一般に8〜50質量部、好ましくは10〜30質量部の割合で用いられる。この範囲において、本発明の効果が有効に発現する。
【0081】
また、架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、通常架橋剤として用いられる化合物を挙げることができる。具体的には、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)、高分子学会編「高分子データハンドブック、基礎編」培風舘(1986年)等に記載されている化合物を用いることができる。
【0082】
例えば、塩化アンモニウム、金属イオン、有機過酸化物、ポリイソシアナート系化合物(例えばトルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、ポリメチレンフェニルイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、高分子ポリイソシアナート等)、ポリオール系化合物(例えば、1,4−ブタンジオール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、1,1,1−トリメチロールプロパン等)、ポリアミン系化合物(例えば、エチレンジアミン、γ−ヒドロキシプロピル化エチレンジアミン、フェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、変性脂肪族ポリアミン類等)、ポリエポキシ基含有化合物及びエポキシ樹脂(例えば、垣内弘編著「新エポキシ樹脂」昭晃堂1985年刊)、橋本邦之編著「エポキシ樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類、メラミン樹脂(例えば、三輪一郎、松永英夫編著「ユリア・メラミン樹脂」日刊工業新聞社(1969年刊)等に記載された化合物類)、ポリ(メタ)クリレート系化合物(例えば、大河原信、三枝武夫、東村敏延編「オリゴマー」講談社(1976年刊)、大森英三「機能性アクリル系樹脂」テクノシステム(1985年刊)等に記載された化合物類)が挙げられる。
【0083】
本発明では、上記マット剤を添加した面の上に更にオーバーコート層を設けてもよい。オーバーコート層は成膜性樹脂からなり、上記マット剤を添加した面を形成する結着樹脂に関して記載したものと同様のものが用いられる。好ましくは、マット剤を添加した面との密着性が良好なように、親水性結着樹脂を含むマット剤を添加した面には親水性オーバーコート層、疎水性結着樹脂を含む凹凸面には疎水性オーバーコート層が用いられる。
【0084】
オーバーコート層は、上記成膜性樹脂及び溶媒を含む塗布液を上記マット剤を添加した面上に、従来公知の塗布方法を用いて塗布、乾燥し、成膜することにより得ることができる。溶媒としては、前記の溶媒を適宜使用することができる。塗布方法としては、コータ塗布(エアドクター、ブレード、ロッド、スクイズ、グラビア等)、スプレー塗布(エアスプレイ、静電スプレイ等)等が挙げられる。
【0085】
本発明の印刷版固定シートを版胴に固定するには、従来公知の方法が用いられる。例えば、印刷版固定シートの支持体の裏面に、スプレー糊、両面テープ等の接着剤若しくは粘着剤を付与する方法、あるいは、印刷版固定シートの先端及び後端を版胴に設けた爪部によって係止する方法等が挙げられる。また、これらを組み合わせた方法を用いることもできる。
【0086】
また、上記のように作製された版下シート材料表面のスムースター値は1.2kPa〜20kPaであることが好ましい。
【0087】
本発明において版下シート材料の表面とは、印刷版材料の裏塗り層側表面と接する側の面を言う。本発明においては、スムースター値とはJ.TAPPI紙パルプ試験法No.5に記載されている物性値であり、表面の凹凸度、マット度を示すバロメーターである。本発明で用いられるスムースター値とは、下記の条件で測定された吸引圧の値(kPa)で定義する。
【0088】
《スムースター値の測定》
測定は東栄電気工業社製スムースターSM−6Bを用いて行う。真空型の空気マイクロメーターを利用したこの装置では、測定ヘッドに吸着された被測定面の粗さに応じ流入する空気量を圧力(kPa)の変化として測定する。数値が大きいことは、表面の凹凸が大きいか、または凹凸の数が多いことに対応する。測定すべき試料の表面上に測定ヘッドを置き一定の開口面積を持つ絞りを通してヘッド内の空気を真空ポンプで排気し、ヘッド内の気圧P(kPa)を読み取り、スムースター値として表示する。尚、測定する前に23℃、50%RH(相対湿度)で2時間調湿し、同じ環境下で測定する。
【0089】
〔印刷版材料〕
〈ポリエステルフィルム支持体〉
本発明におけるポリエステルフィルム支持体に使用されるポリエステルは、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするもので、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以降、略してPETという場合がある)、ポリエチレンナフタレート(以降、PENと略すことがある)等のポリエステルである。好ましくはPET、又は、PETからなる部分を主要な構成成分として、ポリエステル全体に占める構成要素の質量比率が50質量%以上を有する共重合体又はブレンドされたポリエステルである。
【0090】
PETはテレフタル酸とエチレングリコール、又PENはナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールを構成成分として重合されたものである。PET又はPENを構成するジカルボン酸又はジオールを他の適当な1種、又は2種以上の第3成分を混合して重合したものでも良く、適当な第3成分としては、2価のエステル形成官能基を有する化合物で、例えば、ジカルボン酸の例として次のようなものを挙げることが出来る。テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることが出来る。又、グリコールの例としては、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることが出来る。第3成分としては多官能性カルボン酸や多価アルコールも混合することが出来るが、これらは全ポリエステル構成成分に対して0.001〜5質量%程度混合することが出来る。
【0091】
本発明のポリエステルの固有粘度は0.5〜0.8MPaであることが好ましい。又固有粘度の異なるものを混合して使用しても良い。
【0092】
本発明のポリエステルの重合方法は、特に限定があるわけではなく、従来公知のポリエステルの重合方法に従って製造出来る。例えば、ジカルボン酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させ、ジオールの片方の水酸基をジカルボン酸にジエステル化し、更に一方のジオールを減圧下加熱して余剰のジオールを留去することにより重合させる直接エステル化法、又、ジカルボン酸成分としてジアルキルエステル(例えばジメチルエステル)を用いて、これとジオール成分とでエステル交換反応させてアルキルアルコール(例えばメタノール)を留出させてジオールの片方の水酸基をジカルボン酸にエステル化し、更に、余剰のジオール成分を減圧下で加熱して留去することにより重合させるエステル交換法を用いることが出来る。
【0093】
触媒としては、通常のポリエステルの合成に使用するエステル交換触媒、重合反応触媒及び耐熱安定剤を用いることが出来る。例えば、エステル交換触媒としてはCa(OAc)・HO、Zn(OAc)・2HO、Mn(OAc)・4HO、Mg(OAc)・4HO等を挙げることが出来、重合触媒としては、Sb、GeOを挙げることが出来る。又、耐熱安定剤としては、リン酸、亜リン酸、PO(OH)(CH、PO(OC、P(OC等を挙げることが出来る。又、合成時の各過程で着色防止剤、結晶核剤、すべり剤、安定剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、粘度調節剤、透明化剤、帯電防止剤、pH調整剤、染料、顔料などを添加させてもよい。
【0094】
本発明に用いられるポリエステルフィルム支持体の膜厚は、80〜300μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは120〜200μmである。80μmより薄いと支持体としての腰が弱く、印刷には適さない。又、300μmを越えると厚すぎて取り扱いが不便となる等の欠点が生じる。
【0095】
(支持体の作製方法)
本発明に係る支持体は下記に記載のような製膜処理が施されることが好ましい。
【0096】
支持体の製膜手段としては、熱可塑性樹脂を融点(Tm)〜Tm+50℃の間で熔融後、焼結フィルタ等で濾過された後、T−ダイから押出し、ガラス転位温度(Tg)−50℃〜Tgに温調したキャスティングドラム上で未延伸シートを形成する。このとき、厚み分布を上記の範囲にするには、静電印加法等を用いるのが好ましい。未延伸シートをTg〜Tg+50℃の間で2倍〜4倍に縦延伸する。又、厚み分布を上記の範囲に調整するもう一つの方法としては、縦延伸を多段延伸するのが好ましい。このとき、前段延伸より後段延伸の温度を1〜30℃の範囲で高く調整することが好ましく、更に好ましくは、2〜15℃の範囲で高く調整しながら延伸するのが好ましい。
【0097】
前段延伸の倍率は後段延伸の倍率の0.25〜0.7倍が好ましく、更に好ましくは、0.3〜0.5倍である。この後、Tg−30℃〜Tgの温度範囲で、5秒〜60秒、より好ましくは10秒〜40秒間保持した後、横方向にTg〜Tg+50℃の間で2.5〜5倍に延伸することが好ましい。この後、(Tm−50℃)〜(Tm−5℃)で5〜120秒、チャックで把持した状態で熱固定を行なう。このとき、幅方向に0〜10%チャック間隔を狭めること(熱緩和)も好ましい。これを冷却後、端部に10〜100μmのナーリングを付けた(ナーリング高さを設けるともいう)後、巻取り、多軸延伸フィルムを得る等の方法が好ましい。
【0098】
(支持体の熱処理)
本発明においては、印刷時の寸法を安定化させカラー印刷時の色ズレを防ぐために、延伸及び熱固定後のポリエステルフィルムの熱処理をすることが好ましい。本発明に係わる熱処理は、熱固定終了後冷却して巻き取った後に、別工程で巻きほぐしてから、以下のような手段で達成するのが良い。本発明に係わる熱処理する方法としては、テンターのようなフィルムの両端をピンやクリップで把持する搬送方法、複数のロール群によるロール搬送方法、空気をフィルムに吹き付けて浮揚させるエアー搬送などにより搬送させる方法(複数のスリットから加熱空気をフィルム面の片面あるいは両面に吹き付ける方法)、赤外線ヒーターなどによる輻射熱を利用する方法、加熱した複数のロールと接触させる方法などを単独又は複数組み合わせて熱処理する方法、又フィルムを自重で垂れ下がらせ、下方で巻き等搬送方法等を単独あるいは複数組み合わせて用いることが好ましい。
【0099】
熱処理の張力調整は、巻き取りロール及び/又は送り出しロールのトルクを調整すること、及び/又は工程内にダンサーロールを設置し、これに加える荷重を調整することで達成出来る。熱処理中及び/又は熱処理後の冷却時に張力を変化させる場合、これらの工程前後及び/又は工程内にダンサーロールを設置し、それらの荷重を調整することで所望の張力状態を設定しても良い。又振動的に搬送張力を変化させるには熱処理ロール間スパンを小さくすることにより有効に行うことが出来る。
【0100】
本発明に係わる熱処理は、熱収縮の進行を妨げずに、寸法変化を小さくする上で、出来るだけ搬送張力を低くし、熱処理時間を長くすることが望ましい。処理温度としてはポリエステルフィルムのTg+50〜Tg+150℃の温度範囲が好ましく、その温度範囲で、搬送張力としては5Pa〜1MPaが好ましく、より好ましくは5Pa〜500kPa、更に好ましくは5Pa〜200kPaであり、処理時間としては30秒〜30分が好ましく、より好ましくは30秒〜15分である。上記の温度範囲、搬送張力範囲及び処理時間にすることにより、熱処理時に支持体の熱収縮の部分的な差により支持体の平面性が劣化することもなく、搬送ロールとの摩擦等により細かいキズ等の発生も押さえることが出来る。
【0101】
本発明において、熱処理は所望の寸法変化率を得るために、少なくとも1回は行うことが好ましく、必要に応じて2回以上実施することも可能である。
【0102】
本発明においては、熱処理したポリエステルフィルムをTg付近の温度から常温まで冷却してから巻き取り、この時の冷却による平面性の劣化を防ぐために、Tgを跨いで常温まで下げるまでに、少なくとも−5℃/秒以上の速度で冷却するのが好ましい。
【0103】
本発明において、熱処理は、上述の下引層を塗設後に行うのが良い。例えば、押し出し〜熱固定〜冷却の間でインラインで下引層を塗設し、一旦巻き取ってから、別工程で熱処理するのが好ましい。又、熱固定後一旦巻き取った後、別工程で下引を塗布・乾燥した後に下引済みポリエステルフィルム支持体を連続して平坦に保持したままの状態で熱処理を行っても良い。更には、バック層、導電層、易滑性層、下引き層などの各種の機能性層を塗布・乾燥した後に上記と同様な熱処理を行っても良い。
【0104】
(支持体への易接着処理、下引き層塗布)
本発明に係る支持体は、塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下引き層塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。
【0105】
下引き層としては、ゼラチンやラテックスや塩化ビニリデン樹脂を含む層等を支持体上に設けること等が好ましい。又特開平7−20596号公報段落番号0031〜0073に記載の導電性ポリマー含有層や特開平7−20596号公報段落番号0074〜0081に記載の金属酸化物含有層のような導電性層を設けることが好ましい。導電性層はポリエステルフィルム支持体上であればいずれの側に塗設されてもよいが、好ましくは支持体に対し画像形成機能層の反対側に塗設するのが好ましい。この導電性層を設けると帯電性が改良されてゴミなどの付着が減少し、印刷時の白抜け故障などが大幅に減少する。
【0106】
又、本発明に係る支持体としては、ポリエステルフィルム支持体が用いられるが、ポリエステルフィルムと金属板(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウムなど)やポリエチレンで被覆した紙などの材料(複合基材ともいう)を適宜貼り合わせた複合支持体を用いることもできる。これらの複合基材は、塗布層を形成する前に貼り合わせても良く、又、塗布層を形成した後に貼り合わせても良く、印刷機に取り付ける直前に貼り合わせても良い。
【0107】
(微粒子)
又、上記の支持体中にはハンドリング性向上のため0.0〜10μmの微粒子を1〜1000ppm添加することが好ましい。
【0108】
ここで、微粒子としては、有機物及び無機物のいずれでもよい。例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号明細書等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号明細書等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号明細書等に記載のアルカリ土類金属又はカドミウム、亜鉛等の炭酸塩、等を用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号明細書等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号明細書や英国特許第981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号公報等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号明細書等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートの様な有機微粒子を用いることができる。微粒子の形状は、定形、不定形どちらでもよい。
【0109】
本発明における印刷版材料は、ポリエステル支持体上に露光後又は露光現像処理後に印刷可能な画像を形成可能な層を有するものである。好ましくは、特開平4−261539号公報に記載されているような銀塩拡散転写法を利用した平版印刷版、又はサーマルレーザー記録又はサーマルヘッド記録される特表平8−507727号公報や特開平6−186750号公報に記載のようなアブレーションタイプと特開平9−123387号公報に記載のような熱融着画像層機上現像タイプ及び熱溶融転写タイプの印刷版材料である。その中でも特別な薬剤による現像液処理が不要な、いわゆるプロセスレスCTP印刷版である、アブレーションタイプ、熱融着画像層機上現像タイプ及び熱溶融転写タイプの印刷版材料が、地球環境への負荷が低減されるために好ましい。更に好ましくはポリエステルフィルム支持体の上に熱溶融性微粒子又は熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有する印刷版材料がよい。
【0110】
〔画像形成機能層〕
本発明に係る画像形成機能層は、熱溶融性及び又は熱融着性微粒子を含有することが好ましい。
【0111】
(熱溶融性微粒子)
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上150℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が150℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0112】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800〜10000程度のものであり、又乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0113】
これらの中でも、ポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。又、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0114】
又、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な構造を有する親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0115】
又、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0116】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0117】
(熱融着性微粒子)
本発明に係わる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。又、高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
【0118】
熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0119】
熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法又は気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水又は水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。又、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。又、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0120】
又、熱融着性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱融着性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した場合には、熱融着性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱融着性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0121】
又、熱融着性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0122】
構成層中の熱融着性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0123】
又本発明に係る画像形成機能層は、後述する光熱変換素材を含有させることも好ましい実施態様である。
【0124】
画像形成機能層の乾燥塗布質量は好ましくは0.10〜1.50g/m、より好ましくは0.15〜1.00g/mである。
【0125】
〔親水性層〕
本発明の印刷版材料は、画像形成機能層を有し、かつ支持体と該画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を有する構成をとっている。ここにおいて、本発明に係る、支持体と該画像形成機能層の間に設けられる親水性層とは、本発明の印刷版材料を印刷版として用いる際に、インクに対する親和性が低く、且つ、水に対する親和性の高い層として定義される。
【0126】
さらにまた、本発明の印刷版材料は、支持体上に設けられた親水性層の少なくとも1層が、多孔質構造を有することが好ましい。前記多孔質構造を有する親水性層を形成するためには、下記に記載の親水性マトリクスを形成する素材が好ましく用いられる。
【0127】
(金属酸化物)
親水性マトリクスを形成する素材としては、金属酸化物が好ましい。金属酸化物としては、金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良く、平均粒径としては、3〜100nmの範囲が好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。又、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0128】
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0129】
(コロイダルシリカ)
中でも、コロイダルシリカが特に好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。コロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、更に、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0130】
ネックレス状コロイダルシリカとは、一次粒子径がnmのオーダーである球状シリカの水分散系の総称であり、一次粒粒子径が10〜50nmの球状コロイダルシリカが50〜400nmの長さに結合した「パールネックレス状」のコロイダルシリカを意味する。
【0131】
パールネックレス状(即ち真珠ネックレス状)とは、コロイダルシリカのシリカ粒子が連なって結合した状態のイメージが、真珠ネックレスの様な形状をしていることを意味している。
【0132】
ネックレス状コロイダルシリカを構成するシリカ粒子同士の結合は、シリカ粒子表面に存在する−SiOH基が脱水結合した−Si−O−Si−と推定される。ネックレス状のコロイダルシリカとしては、具体的には日産化学工業社製の「スノーテックス−PS」シリーズなどが挙げられ、製品名としては「スノーテックス−PS−S(連結した状態の平均粒子径は110nm程度)」、「スノーテックス−PS−M(連結した状態の平均粒子径は120nm程度)」及び「スノーテックス−PS−L(連結した状態の平均粒子径は170nm程度)」があり、これらに各々対応する酸性の製品が「スノーテックス−PS−S−O」、「スノーテックス−PS−M−O」及び「スノーテックス−PS−L−O」である。
【0133】
ネックレス状コロイダルシリカを添加することにより、層の多孔性を確保しつつ、強度を維持することが可能となり、親水性層マトリクスの多孔質化材として好ましく使用できる。これらの中でも、アルカリ性である「スノーテックスPS−S」、「スノーテックスPS−M」、「スノーテックスPS−L」を用いると、親水性層の強度が向上し、又、印刷枚数が多い場合でも地汚れの発生が抑制され、特に好ましい。
【0134】
又、コロイダルシリカは、粒子径が小さいほど結合力が強くなることが知られており、本発明では平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカを用いることが好ましく、更に好ましくは、3〜15nmのものである。
【0135】
前述のようにコロイダルシリカの中ではアルカリ性のものが、地汚れ発生を抑制する効果が高く特に好ましい。平均粒径がこの範囲にあるアルカリ性のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学社製の「スノーテックス−20(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−30(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−40(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−N(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−S(粒子径8〜11nm)」、「スノーテックス−XS(粒子径4〜6nm)」が挙げられる。
【0136】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカは、前述のネックレス状コロイダルシリカと併用することで、形成する層の多孔質性を維持しながら、強度をさらに向上させることが可能となり、特に好ましい。
【0137】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカ/ネックレス状コロイダルシリカの比率は95/5〜5/95の範囲が好ましく、更に好ましくは、70/30〜20/80の範囲がより好ましく、60/40〜30/70の範囲が更に好ましい。
【0138】
(多孔質金属酸化物粒子)
本発明において、親水性層マトリクス構造の多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を含有することができる。多孔質金属酸化物粒子としては、以下に記載の多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子又は、ゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0139】
(多孔質シリカ多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子)
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法又は、乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0140】
多孔質アルミノシリケート粒子は、例えば、特開平10−71764号公報に記載されている方法により製造される。即ち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。又、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0141】
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。細孔容積は、塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。逆に、細孔容積が0.5ml/g未満の場合には、印刷性能がやや不十分となる場合がある。
【0142】
(細孔容積の測定方法)
ここで、上記の細孔容積の測定は、オートソーブ−1(カンタクローム社製)を使用し、定容法を用いた窒素吸着測定により、粉体の空隙が窒素により、充填されていると仮定して相対圧力が0.998における窒素吸着量から算出されるものである。
【0143】
(ゼオライト粒子)
ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3nm〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
【0144】
(M、(M0.5(AlSi(m+n)・xH
ここで、M、Mは交換性のカチオンであって、MはLi、Na、K、Tl、Me(TMA)、Et(TEA)、Pr(TPA)、C152+、C16等であり、MはCa2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、C18 2+等である。又、n≧mであり、m/nの値つまりはAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、従って親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、更に好ましくは0.8〜1.0である。xは整数を表す。
【0145】
本発明で使用するゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、又粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、例えばゼオライトA:Na12(Al12Si1248)・27HO;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106384)・264HO;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136384)・250HO;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
【0146】
Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで、親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。又、指紋跡の汚れも大きく改善される。Al/Si比率が0.4未満では親水性が不充分であり、上記性能の改善効果が小さくなる。
【0147】
又、親水層を構成する親水性層マトリクス構造は、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。該層状鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。又、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性のものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0148】
又、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0149】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。又、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。又、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不充分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
【0150】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0151】
親水層を構成する親水性層マトリクスにはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO/MO比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0152】
又、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0153】
又、本発明では、水溶性樹脂を含有してもよい。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
【0154】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
【0155】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜20μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層マトリクスに適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷適性を有する構造を得ることができ、好ましい。
【0156】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、アルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0157】
本発明において、親水性マトリクス構造部に添加される水溶性樹脂は、少なくともその一部が水溶性の状態のまま、水に溶出可能な状態で存在することが好ましい。水溶性の素材であっても、架橋剤等によって架橋し、水に不溶の状態になると、その親水性は低下して印刷適性を劣化させる懸念があるためである。又、さらにカチオン性樹脂を含有しても良く、カチオン性樹脂としては、例えば、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。カチオン性樹脂は、微粒子状の形態で添加しても良く、例えば、特開平6−161101号公報に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
【0158】
又、本発明に係る親水性層を塗設する為に用いられる塗布液には、塗布性改善等の目的で水溶性の界面活性剤を含有させることができ、Si系又は、F系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は、親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。
【0159】
又、親水性層には、リン酸塩を含むことができる。本発明では、親水性層の塗布液がアルカリ性であることが好ましいため、リン酸塩としてはリン酸三ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムとして添加することが好ましい。リン酸塩を添加することで、印刷時の網の目開きを改善する効果が得られる。リン酸塩の添加量としては、水和物を除いた有効量として、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%が更に好ましい。
【0160】
又、後述する光熱変換素材を含有することもできる。光熱変換素材としては、粒子状素材の場合は粒径が1μm未満であることが好ましい。
【0161】
(粒径が1μm以上の無機粒子もしくは無機素材で被覆された粒子)
本発明で用いることのできる無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができるが、塗布液中での沈降を抑制するために、多孔質な金属酸化物粒子を用いることが好ましい。多孔質な金属酸化物粒子としては、前述の多孔質シリカ粒子や多孔質アルミノシリケート粒子を好ましく用いることができる。
【0162】
又、無機素材で被覆された粒子としては、例えば、ポリメチルメタアクリレートやポリスチレンといった有機粒子を芯材とし、芯材粒子よりも粒径の小さな無機粒子で被覆した粒子が挙げられる。無機粒子の粒径としては、芯材粒子の1/10〜1/100程度であることが好ましい。又、無機粒子としては、同様にシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができる。被覆方法としては、種々の公知の方法を用いることができるが、ハイブリダイザのような空気中で芯材粒子と被覆材粒子とを高速に衝突させて芯材粒子表面に被覆材粒子を食い込ませて固定、被覆する乾式の被覆方法を好ましく用いることができる。
【0163】
又、有機粒子の芯材を金属メッキした粒子も用いることができる。このような粒子としては、例えば、樹脂粒子に金メッキを施した積水化学工業社製の「ミクロパールAU」等が挙げられる。
【0164】
粒径は、1〜10μmが好ましく、更に好ましくは、1.5〜8μmであり、特に好ましくは、2〜6μmである。
【0165】
本発明では、粒径が1μm以上の粒子の添加量としては、親水性層全体の1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。親水性層全体としては、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0166】
〔親水性オーバーコート層〕
本発明において、取り扱い時の傷つき防止のために、画像形成機能層の上層に親水性オーバーコート層を有することが好ましい。親水性オーバーコート層は画像形成機能層のすぐ上の層であってもよいし、又画像形成機能層と親水性オーバーコート層の間に中間層が設けられてもよい。親水性オーバーコート層は印刷機上で除去可能であることが好ましい。
【0167】
本発明において親水性オーバーコート層は、水溶性樹脂又は水溶性樹脂を部分的に架橋した水膨潤性樹脂を含有することが好ましい。かかる水溶性樹脂は、画像形成機能層に含有されるものが用いられる。
【0168】
本発明においては、親水性オーバーコート層は、後述する光熱変換素材を含有することができる。
【0169】
又レーザー記録装置あるいは印刷機に本発明の印刷版を装着するときの傷つき防止のために、本発明においてオーバーコート層に平均粒径1μm以上20μm未満のマット剤を含有させることが好ましい。
【0170】
好ましく用いられるマット剤としては新モース硬度5以上の無機微粒子や有機マット剤があげられる。新モース硬度5以上の無機微粒子としては、例えば金属酸化物粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化クロム等)や金属炭化物粒子(炭化珪素等)、窒化ホウ素粒子、ダイアモンド粒子等が挙げられる。有機マット剤としては、例えば米国特許第2,322,037号明細書等に記載の澱粉、BE625,451号やGB981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、CH330,158号明細書等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等明細書に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートがあげられる。
【0171】
これらマット剤の添加量は1mあたり0.1g以上10g未満であることが好ましい。
【0172】
その他、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。この様な非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることができる。上記非イオン界面活性剤のオーバーコート層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
【0173】
本発明において、オーバーコート層の乾燥塗布量は、0.05〜1.5g/mが好ましく、更に好ましい範囲は0.1〜0.7g/mである。この範囲内で、印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、良好な汚れ防止、傷付き防止、指紋跡付着防止及びアブレーションカスの発生低減ができる。
【0174】
〔光熱変換素材〕
本発明に係る画像形成機能層、親水性層、親水性オーバーコート層及びその他に設けられる層には、光熱変換素材を含有することが好ましい。
【0175】
光熱変換素材としては赤外吸収色素又は顔料を添加することができる。
(赤外吸収色素)
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号、特開平7−43851号、特開平7−102179号、特開2001−117201の各公報等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0176】
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。
カーボンとしては特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0177】
グラファイトとしては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0178】
金属としては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0179】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、又は素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。可視光域で黒色を呈している素材しては、黒色酸化鉄(Fe)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号公報、特開平9−25126号公報、特開平9−237570号公報、特開平9−241529号公報、特開平10−231441号公報等に開示されている方法により製造することができる。本発明に用いることができる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系又はCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号公報に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。これらの複合金属酸化物は平均1次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均1次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。従って、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均1次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。分散剤の種類は特に限定しないが、Si元素を含むSi系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0180】
素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材としては、例えばSbをドープしたSnO(ATO)、Snを添加したIn(ITO)、TiO2、TiOを還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。又、これらの金属酸化物で芯材(BaSO、TiO、9Al・2BO、KO・nTiO等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0181】
特に好ましい光熱変換素材の態様としては、前記の赤外吸収色素及び金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。
【0182】
これらの光熱変換素材の添加量としては、各層に対して0.1〜50質量%であり、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
【0183】
〔可視画性の付与〕
通常、印刷業界においては、印刷材料に画像形成した印刷版を印刷する前に、正しく画像が形成されているかを検査する検版という作業がある。検版をするためには、印刷前に形成された画像が版面上で見える性能、つまり可視画性が良いことが好ましい。本発明の印刷版材料は、現像処理なしに印刷可能なプロセスレス印刷版材料なので、露光することによる光又は熱によって露光部分又は未露光部分の光学濃度が変化することが好ましい。
【0184】
本発明において好ましく用いられる方法としては、露光することにより光学濃度が変化するシアニン系赤外線吸収色素を含有する方法、光酸発生剤とその酸により変色する化合物を用いる方法、ロイコ色素のような発色剤と顕色剤を組み合わせて用いる方法などがある。
【0185】
本発明において、光酸発生剤とは、露光によってルイス酸やブレンステッド酸を生成する化合物を意味する。
【0186】
光酸発生剤の具体例としては、ジアゾ化合物、オルトキノンジアジド化合物、ポリハロゲン化合物、オニウム塩化合物などが挙げられる。又これらの構造をポリマーに組み込んだ化合物を用いることもできる。
【0187】
ジアゾ化合物としては、例えば、米国特許2,063,631号明細書、米国特許2,667,415号明細書などに開示されているジアゾニウム塩とアルドールやアセタールなどの反応性カルボニル基を含有する有機結合剤との反応生成物であるジフェニルアミン−p−ジアゾニウム塩とフォルムアルデヒド縮合生成物、又これらの水溶性ジアゾニウム塩化合物を特開昭54−98613号公報に開示された方法により、BF4−、PF6−などのアニオン成分などで置換したハロゲン化ルイス酸塩、アリルジアゾニウム塩化合物などが挙げられる。
【0188】
オルトキノンジアジド化合物としては、1分子中に少なくともひとつのオルトキノンジアジド基を有する化合物で、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−エチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−イソブチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−α−ナフチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−ベンジルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−エチルアミド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルアミドなどが挙げられる。
【0189】
ポリハロゲン化合物としては、ポリハロゲンを含むアセトフェノン、例えばトリブロモアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、o−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、p−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ブロモ−トリブロモアセトフェノン、p−ブロモ−トリブロモアセトフェノンなど、又、ポリハロゲンを含むスルフォキサイド、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォキサイド、ジブロモメチル−トリブロモメチルスルフォキサイド、トリブロモメチル−フェニルスルフォキサイドなど、又ポリハロゲンを含むスルフォン、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォン、トリクロロメチル−フェニルスルフォン、トリブロモメチル−フェニルスルフォン、トリクロロメチル−p−クロロフェニルスルフォン、トリブロモメチル−p−ニトロフェニルスルフォン2−トリクロロメチルベンゾチアゾールスルフォン、2,4−ジクロロフェニル−トリクロロメチルスルフォンなど、その他ポリハロゲンを含むピロン化合物、トリアジン化合物、オキサジアゾール化合物などが挙げられる。
【0190】
オニウム塩化合物及びその他の光酸発生剤としては、S.P.Papas,et al.,Polym.Photochem.,5,1,p104〜115(1984)に記載されているオニウム塩化合物、又色材、66(2)、p104〜115(1993)に紹介されている、Ph/SbF6−等のジアリルヨードニウム塩化合物に代表される光酸発生剤、トリアリルスルフォニウム塩化合物、トリアリルセレノニウム塩化合物、ジアルキルフェナシルスルフォニウム塩化合物、ジアルキル−4−フェナシルスルフォニウム塩化合物、α−ヒドロキシメチルベンゾインスルフォン酸エステル、N−ヒドロキシイミノスルフォネート、α−スルフォニロキシケトン、β−スルフォニロキシケトン、鉄−アレーン錯体化合物(ベンゼン−シクロペンタジエニル−鉄(II)ヘキサフルオロフォスフェートなど)、o−ニトロベンジルシリルエーテル化合物、ベンゾイントシレート、トリ(ニトロベンジル)フォスフェートなどが挙げられる。
【0191】
その他に、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩、有機ハロゲン化合物、o−ニトロベンジル誘導体、イミノスルホネート及びジスルホン化合物等を挙げることができる。
【0192】
さらに具体的には、例えば、特開平9−244226号公報の化7〜化9に記載のT−1〜T−15の式で示される化合物を挙げることができる。
【0193】
これらの中、より好ましいものはトリハロメチル基を2個以上有するs−トリアジン化合物であり、特に好ましくはトリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。これら光酸発生剤の含有量は、印刷版材料の全固形分に対し、0.01〜40質量%、好ましくは0.1〜30質量%である。
【0194】
本発明において、酸によって変色する化合物としては、例えばジフェニルメタン、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0195】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH(保土ケ谷化学社製)、オイルブルー#603(オリエント化学工業社製)、オイルピンク#312(オリエント化学工業社製)、オイルレッド5B(オリエント化学工業社製)、オイルスカーレット#308(オリエント化学工業社製)、オイルレッドOG(オリエント化学工業社製)、オイルレッドRR(オリエント化学工業社製)、オイルグリーン#502(オリエント化学工業社製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土ケ谷化学社製)、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボステアリルアミノ−4−p−ジヒドロオキシエチルアミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等が挙げられる。
【0196】
又、酸で発色する化合物としてアリールアミン類の有機染料を用いることができる。この目的に適するアリールアミン類としては、第一級、第二級芳香族アミンのような単なるアリールアミンのほかにいわゆるロイコ色素も含まれ、これらの例としては次のようなものが挙げられる。
【0197】
ジフェニルアミン、ジベンジルアニリン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、p−トルイジン、4,4′−ビフェニルジアミン、o−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、o−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、アニリン、2,5−ジクロロアニリン、N−メチルジフェニルアミン、o−トルイジン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメタン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、1,2−ジアニリノエチレン、p,p′,p″ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、p,p′−テトラメチルジアミノトリフェニルメタン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメチルイミン、p,p′,p″−トリアミノ−o−メチルトリフェニルメタン、p,p′,p″−トリアミノトリフェニルカルビノール、p,p′−テトラメチルアミノジフェニル−4−アニリノナフチルメタン、p,p′,p″−トリアミノフェニルメタン、p,p′,p″−ヘキサプロピルトリアミノトリフェニルメタン等。
【0198】
本発明において、顕色剤としては、感熱記録体において電子受容体として使用される酸性物質がいずれも使用でき、例えば酸性白土カオリン、ゼオライト等の無機酸、芳香族カルボン酸、その無水物又はその金属塩類、有機スルホン酸、その他の有機酸、フェノール系化合物、該フェノール系化合物のメチロール化物、該フェノール系化合物の塩又は錯体等の有機系顕色剤などが挙げられ、なかでもフェノール系化合物のメチロール化物及びフェノール系化合物の塩(以下、特に断りのないかぎり錯塩も含む)が好ましい。
【0199】
これら顕色剤のうち、有機系顕色剤の具体例としては、フェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシアセトフェノン、2,2′−ジヒドロキシジフェニル、2,2′−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−イソプロピリデンジフェノール(別名ビスフェノールA)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4′エチレンビス(2−メチルフェノール)、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ヘプタン、4,4′−シクロヘキシリデンビス(2−イソプロピルフェノール)、4,4′−スルホニルジフェノール等のフェノール系化合物、該フェノール系化合物のメチロール化物、該フェノール系化合物の塩サリチル酸アニリド、ノボラック型フェノール樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
【0200】
本発明においては、顕色剤とともに用いられる発色剤としては、トリフェニルメタンラクトン型などのロイコ色素を用いることができる。
【0201】
このようなロイコ色素としては、例えば、クリスタルバイオレットラクトン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノフルオラン、マラカイトグリーンラクトン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルドール−3−イル)フタリド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなどが挙げられる。
【0202】
上記発色剤と顕色剤は、顕色剤/発色剤の質量比が0.1/1〜5/1となる範囲で通常用いるが、なかでも該質量比が0.5/1〜3/1となる範囲が好ましい。
【0203】
〔画像形成機能層の反対側の構成層〕
本発明においては、取り扱い性及び保管時の物性変化防止のために、支持体の画像形成機能層の反対側に少なくとも1層の構成層(裏塗り層)を有する。好ましい構成層としては、下引き層、親水性結合剤含有層又は疎水性結合剤含有層であり、結合剤含有層は下引き層の上に塗設されてもよい。
【0204】
下引き層としては、前述の支持体の下引き層が好ましい。
親水性結合剤としては、親水性のものなら特に限定はされないが、親水性構造単位としてヒドロキシル基を有する樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂(メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、キチン類、及びデンプン;エーテル結合を有する樹脂であるポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリビニルエーテル(PVE);アミド基又はアミド結合を有する樹脂であるポリアクリルアミド(PAAM)及びポリビニルピロリドン(PVP)等を挙げることができる。又、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩及びゼラチン類;スルホン基を有するポリスチレンスルホン酸塩;アミノ基、イミノ基、第3アミン及び第4級アンモニウム塩を有するポリアリルアミン(PAA)、ポリエチレンイミン(PEI)、エポキシ化ポリアミド(EPAm)、ポリビニルピリジン及びゼラチン類を挙げることができる。
【0205】
疎水性結合剤は、結合剤として疎水性のものなら特に限定されないが、例えばα,β−エチレン性不飽和化合物に由来するポリマー、例えばポリ塩化ビニル、後−塩素化ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと塩化ビニリデンのコポリマー、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、ポリ酢酸ビニル及び部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、出発材料としてポリビニルアルコールから作られ、繰り返しビニルアルコール単位の一部のみがアルデヒドと反応していることができるポリビニルアセタール、好ましくはポリビニルブチラール、アクリロニトリルとアクリルアミドのコポリマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン及びポリエチレン又はそれらの混合物等が挙げられる。
【0206】
又疎水性結合剤は仕上がり印刷版材料表面が疎水性であれば、特開2002−258469号公報の段落0033〜0038に記載されている水分散系樹脂(ポリマーラテックス)から得られたものでもよい。
【0207】
又印刷機の版胴への取り付けやすさ、及び、印刷中における印刷版の位置ずれによるカラー印刷での色ずれを防止するために、本発明において該構成層のうちの最表面層に平均粒径1μm以上20μm未満のマット剤を含有させることが好ましい。
【0208】
好ましく用いられるマット剤としては新モース硬度5以上の無機微粒子や有機マット剤があげられる。新モース硬度5以上の無機微粒子としては、例えば金属酸化物粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化クロム等)や金属炭化物粒子(炭化珪素等)、窒化ホウ素粒子、ダイアモンド粒子等が挙げられる。有機マット剤としては、例えばUSP2,322,037号明細書等に記載の澱粉、BEP625,451号やGBP981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、CHP330,158号明細書等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、USP3,079,257号等明細書に記載のポリアクリロニトリル、USP3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートがあげられる。
【0209】
これらマット剤の添加量は1mあたり0.1g以上10g未満であることが好ましい。
【0210】
本発明においては、前記のマット剤の粒径、添加量及び結合剤の量を調整することで、画像形成層の反対側の表面の表面粗さは、Ra値で、0.1μm以上2μm未満であることが好ましい。0.1μm未満では摩擦係数が高い等の理由で印刷版材料の搬送性に問題を生じる懸念があったり、印刷版材料の印刷機への取付に不具合を生じたり場合もある。又、2μm以上の粗い表面では、印刷版材料の製造時その他でロールに巻かれる際に反対面に形成された塗布層を傷つける懸念や、印刷版材料を版胴上に固定した際に、裏面側からの突き上げで印刷版材料表面が部分的に突出し、その部分に印圧が集中するために耐刷不良を生じる懸念もある。
【0211】
さらに、レーザー記録装置あるいはプロセスレス印刷機には、装置内部において印刷版の搬送を制御するためのセンサーを有しており、これらの制御を滞りなく行うために、本発明において、該構成層には、色素及び顔料を含有させることが好ましい。色素及び顔料としては、前述の光熱変換素材に用いられる赤外吸収色素及びカーボンブラック等の黒色顔料が好ましく用いられる。又、更に、該構成層には公知の界面活性剤を含有させることができる。
【0212】
〔包装材料〕
上記のように製造された印刷版材料は、所望のサイズに断裁した後に、後述する露光を行うまでの保管するために包装される。長期の保管に耐えるためには、包装材料として、特開2000−206653号公報に記載の酸素透過度50ml/atm・m・30℃・day以下の包装材料で包装されることが好ましい。又、もう一つの好ましい形態として、特開2000−206653号公報に記載の水分透過度10g/atm・m・25℃・day以下の包装材料で包装されることが好ましい。
【0213】
〔露光〕
本発明は、又印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像を形成した後に、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去する工程を含む印刷方法も提供するものである。
【0214】
本発明の印刷版材料の画像形成は熱により行うことができるため、感熱プリンタで用いられるようなサーマルヘッドによっても画像形成が可能であるが、特にサーマルレーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0215】
本発明に関する露光に関し、より具体的には、赤外及び/又は近赤外領域で発光する、すなわち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0216】
本発明の走査露光に好適な装置としては、該半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0217】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式があげられる。
【0218】
本発明に関しては特に(3)の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)の露光方式が用いられる。
【0219】
上記により画像形成がなされた印刷版材料は、湿式現像処理を行うことなく印刷を行うことができる。画像形成後の印刷版材料をそのまま印刷機の版胴に取り付けるか、あるいは印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けた後に画像形成を行い、版胴を回転させながら水供給ローラー及び又はインク供給ローラーを印刷版材料に接触させることで画像形成層の非画像部を除去することが可能である。
【0220】
本発明の印刷版材料における上記の画像形成層非画像部の除去工程は、PS版を使用した通常の印刷シークエンスで行うことができるため、いわゆる機上現像処理による作業時間の延長の必要がないため、コストダウンにも有効である。
【0221】
さらに、本発明の印刷方法において、画像形成後から、印刷機上で印刷版材料表面と水供給ローラー又はインク供給ローラーとが接触するまでに印刷版材料の表面を乾燥させる工程を有することが好ましい。本発明の印刷方法においては画像形成直後から画像強度が徐々に向上していくと考えられる。サーマルレーザーで一般的な外面ドラム方式(前述の(3)の方式)では、一般に露光開始から終了までに3分程度かかるため、露光終了時での露光開始部と終了部とでは画像強度が異なる懸念がある。乾燥工程を設けることで画像強度の差を問題ないレベルにまで縮めることができる。
【0222】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、無論、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
【0223】
実施例1
〔ポリエチレンテレフタレート支持体の作製〕
《支持体の作製》
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66dl/g(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0224】
これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定後の平均膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、延伸温度は前段延伸が102℃で1.3倍に、後段延伸は110℃で2.6倍に縦延伸した。次いで、テンターで120℃で4.5倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後、テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後47.1N/mで巻き取った。
【0225】
このようにして厚さ190μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。この二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのガラス転移温度(Tg)は79℃であった。得られたポリエチレンテレフタレートフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。なお、得られた支持体の厚み分布は3%であった。
【0226】
《下引き済み支持体の作製》
上記で得られた支持体のフィルムの両面に、8W/m・分のコロナ放電処理を施し、次いで、一方の面に下記下引き塗布液aを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後にコロナ放電処理(8W/m・分)を行いながら下引き塗布液bを乾燥膜厚0.1μmになるように塗布し、各々180℃、4分間乾燥させた(下引き面A)。また反対側の面に下記下引き塗布液c−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後にコロナ放電処理(8W/m・分)を行いながら下引き塗布液d−1を乾燥膜厚1.0μmになるように塗布し、それぞれ180℃、4分間乾燥させた(下引き面B)。ついで、各々の下引き層表面に下記プラズマ処理条件でプラズマ処理を施した。
【0227】
《下引き塗布液a》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=60/39/1
の3元系共重合ラテックス(Tg=75℃) 6.3%(固形分基準)
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/4
0の3元系共重合ラテックス 1.6%
アニオン系界面活性剤S−1 0.1%
水 92.0%
《下引き塗布液b》
ゼラチン 1.0%
アニオン系界面活性剤S−1 0.05%
硬膜剤H−1 0.02%
マット剤(シリカ,平均粒径3.5μm) 0.02%
防黴剤F−1 0.01%
水 98.9%
【0228】
【化1】
Figure 2005040964
【0229】
Figure 2005040964
成分d−11
スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重合体からなるアニオン性高分子化合物
成分d−12
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=40/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
成分d−13
スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からなる高分子活性剤
【0230】
【化2】
Figure 2005040964
【0231】
《プラズマ処理条件》
バッチ式の大気圧プラズマ処理装置(イーシー化学(株)製、AP−I−H−340)を用いて、高周波出力が4.5kW、周波数が5kHz、処理時間が5秒及びガス条件としてアルゴン、窒素及び水素の体積比をそれぞれ90%及び5%で、プラズマ処理を行った。
【0232】
《熱処理条件》
1.25m幅にスリットした後の支持体に対し、張力2hPaで180℃、1分間の低張力熱処理を実施した。
【0233】
《印刷版材料の作製》
表1に示す裏塗り層用塗布液(調製方法は下記に示す)を用いて下引き済み支体の下引き面Bの上にワイヤーバーを用いて乾燥付量が4g/mになるように塗布して、100℃で1分間乾燥した。なおスムースター値を測定したところ65kPaであった。
【0234】
《裏塗り用塗布液の調製》
表1に記載の各素材を、ホモジナイザーを用いて十分に攪拌混合した後、表1に記載の組成で混合、濾過して親水性層1用塗布液を調製した。なお、各素材の詳細は、表1に記載の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0235】
【表1】
Figure 2005040964
【0236】
さらに表2に示す親水性層1用塗布液(調製方法は下記に示す)及び表3に示す親水性層2用塗布液(調製方法は下記に示す)を用いて下引き済み支体の下引き面Aの上にワイヤーバーを用いて塗布した。それぞれ、下引き済み支持体上に親水性層1、親水性層2の順番でワーヤーバーを用いてそれぞれ乾燥付量が2.5g/m、0.6g/mになるように塗布し、120℃で3分間乾燥した後に60℃で24時間の加熱処理を施した。その後、表3に示す画像形成機能層塗布液を、ワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.6g/mになるように塗布して50℃で3分間乾燥し印刷版材料を作製した。その後に各印刷版材料を50℃で72時間のシーズニング処理を施した。
【0237】
《親水性層1用塗布液の調製》
表2に記載の各素材を、ホモジナイザーを用いて十分に攪拌混合した後、表2に記載の組成で混合、濾過して親水性層1用塗布液を調製した。なお、各素材の詳細は、表2に記載の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0238】
【表2】
Figure 2005040964
【0239】
《親水性層2用塗布液の調製》
表3に記載の各素材を、ホモジナイザーを用いて十分に攪拌混合した後、表3に記載の組成で混合、濾過して親水性層2用塗布液を調製した。なお、各素材の詳細は、表3に記載の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0240】
【表3】
Figure 2005040964
【0241】
《画像形成機能層塗布液の調製》
表4に画像形成機能層塗布液の素材の詳細を示す。表中の数値は質量部を表す。
【0242】
【表4】
Figure 2005040964
【0243】
【化3】
Figure 2005040964
【0244】
《印刷版試料の作製》
上記で作製した印刷版材料を、73cm幅で32mの長さに切断して直径7.5cmのボール紙でできたコアに巻き付けロール形状の印刷版試料を作製した。さらに、印刷版試料をAl203PET(12μm)/Ny(15μm)/CPP(70μm)の材料でできた150cm×2mの包装材料で巻いた。作製した包装された印刷版試料を、長期保存の経時代用の強制劣化条件として50℃、60%RHで7日間加温した。包装材料の酸素透過度は1.7ml/atm・m・30℃・day、水分透過度は1.8g/atm・m・25℃・dayであった。
【0245】
〔印刷版固定シートの作製〕
《印刷版固定シートU−1の作製》
厚さ0.20mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を、50℃の1%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/mになるように溶解処理を行い水洗した後、25℃の0.1%塩酸水溶液中に30秒間浸漬し、中和処理した後、水洗処理した。得られた基材の厚み分布は20%であった。
【0246】
得られた金属基材を印刷版固定シートU−1とした。
《印刷版固定シートU−2の作製》
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66dl/g(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定後の平均膜厚が190μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、前段延伸の延伸温度を102℃とし1.1倍に、後段延伸は110℃で2.6倍に縦延伸した。ついでテンターで120℃で1.8倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後、これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後、83.3N/mで巻き取った。このようにして得たポリエチレンテレフタレートフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。得られた基材の厚み分布は12%であった。
【0247】
得られた基材表面に、ゼラチンを水に添加し加熱溶解した後にワイヤーバーにて4g/mになるように塗布し冷却セットした後に30℃で1分乾燥し、印刷版固定シートU−2を得た。スムースター値を測定したところ0.8kPaであった。
【0248】
《印刷版固定シートU−3の作製》
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66dl/g(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定後の平均膜厚が350μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、延伸温度は前段延伸が102℃で1.5倍に、後段延伸は110℃で4.0倍に縦延伸した。ついでテンターで120℃で5.0倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後83.3N/mで巻き取った。このようにして得たポリエチレンテレフタレートフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。得られた基材の厚み分布は12%であった。
【0249】
得られた基材表面に、ゼラチンを水に添加し加熱溶解した後にワイヤーバーにて2g/mになるように塗布し冷却セットした後に30℃で1分乾燥し、印刷版固定シートU−3を得た。スムースター値を測定したところ0.8kPaであった。
【0250】
《印刷版固定シートU−4の作製》
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66dl/g(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定後の平均膜厚が190μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、前段延伸を102℃で1.3倍に、後段延伸は110℃で2.6倍に縦延伸した。ついでテンターで120℃で4.5倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後47.04N/mで巻き取った。このようにして得たポリエチレンテレフタレートフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。得られた基材の厚み分布は3%であった。
【0251】
ポリビニルアルコールPVA405(クラレ(株)製)の5gを水50gに攪拌しながら加え、そのまま30分攪拌した。この溶液にテトラメトキシシラン(信越化学(株)製)3gを加えて、30分間攪拌後、濃塩酸1mlを加えて、2時間攪拌し、さらに平均粒径2μmのガラス粒子を加え、ガラスビーズとともに、ペイントシェーカー(東洋精機(株)製)に入れ、15分間分散した後、ガラスビーズを濾別し、分散物を得た。この分散物を前記で得られた基材表面に、ワイヤーバーにて4g/mになるように塗布し、110℃で3分乾燥し、印刷版固定シートU−4を得た。スムースター値を測定したところ10kPaであった。
【0252】
《印刷版固定シートU−5の作製》
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66dl/g(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定後の平均膜厚が200μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、前段延伸を110℃で1.5倍に、後段延伸は110℃で2.2倍に縦延伸した。ついでテンターで120℃で4倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に3%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後47.04N/mで巻き取った。このようにして得たポリエチレンテレフタレートフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。得られた基材の厚み分布は4%であった。
【0253】
ポリビニルアルコールPVA405(クラレ(株)製)の5gを水50gに攪拌しながら加え、そのまま30分攪拌した。この溶液にテトラメトキシシラン(信越化学(株)製)3gを加えて、30分間攪拌後、濃塩酸1mlを加えて、2時間攪拌し、さらに平均粒径5μmのシリカ粒子を加え、シリカとともに、ペイントシェーカー(東洋精機(株)製)に入れ、1分間分散した後、分散物を得た。この分散物を前記で得られた基材表面に、ワイヤーバーにて5g/mになるように塗布し、110℃で3分乾燥し、印刷版固定シートU−5を得た。スムースター値を測定したところ15kPaであった。
【0254】
《スティフネスの測定》
20cm×10cmに印刷版固定シートを切り出し、フィルムスティフネステスターUT−200GR(東洋精機(株)製)を用いて、サンプルを平坦な台に置き、長辺側の両端を台に沿って近づけて、両端各5cmは台への固定しろとし、中央部10cmを台から1cm上方にたわませて、頂上部を針で押して3mm押し下げた時の荷重を評価した。
【0255】
《印刷版試料の評価》
(a)赤外線レーザー方式による画像形成
印刷版試料を露光サイズに合わせて切断した後に露光ドラムに巻付け固定した。露光には、波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、露光エネルギーを100〜350mJ/cmまで50mJ毎に段階的に変化させ、2,400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成し、画像形成した印刷版試料を作製した。
【0256】
(b)印刷版としての諸特性の評価
《印刷方法》
印刷装置として、小森コーポレーション社製のLithrone26Pを用いて、得られた印刷版固定シートを所定の大きさにカットして版胴に接着した。コート紙と、湿し水としてアストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量%溶液、インクとして、東洋インク社製のトーヨーキングハイエコーM紅を使用して、折り曲げた印刷版試料を適用して印刷を行った。印刷開始のシークエンスはPS版の印刷シークエンスで行い、特別な機上現像操作は行わなかった。印刷後に版面を観察したところ、本発明に係る印刷版試料は非画像部が除去されていた。
【0257】
《印刷位置安定性の評価》
印刷前に版面に50μm幅のキズを2カ所50cm離してつけた。それを4枚用意した。その後に印刷を行った。ただし、インクは東洋インク社製のトーヨーキングハイエコーM黄、M藍、M紅、M墨の4色のインクを使用して印刷を行った。100枚目の紙面で十文字の画像の3色がずれていないのを確認した後に、引き続き2,000枚印刷した。2,000枚印刷終了時の印刷紙面で十文字の各色のズレがどのくらい発生しているかをルーペで測定した。値が少ないほど優れている。
【0258】
《インク着肉性の評価》
2,000枚印刷後に、インクの供給を止めて水のみ5分間供給した。その後、インクの供給を再開しインクを着肉させて何枚目に正常なインク濃度になる印刷物が得られるかを評価した。枚数が少ないほどインク着肉性が優れている。
【0259】
《耐刷性の評価》
3%網点画像の点が半分以上欠落する印刷枚数を求めた(印刷は20,000枚まで行った)。印刷枚数の多いほど優れている。
【0260】
以上により得られた結果を表5に示す。
【0261】
【表5】
Figure 2005040964
【0262】
表5から、比較の印刷版試料と比べて、本発明の印刷版試料は寸法安定性に優れ、インク着肉性が良好であり、且つ、耐刷性にも優れていることが明らかである。
【0263】
実施例2
〔印刷版材料の作製〕
実施例1で作製した印刷版材料と同様にして、下引き面Bの上に裏塗り層B−2を、下引き面Aの上に親水性層1、親水性層2及び画像形成機能層を塗布した。次いで、画像形成機能層の上に下記組成のオーバーコート層塗布液をワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.4g/mとなるように塗布し、50℃で3分間乾燥して印刷版材料を作製した。印刷版材料に50℃で24時間のシーズニング処理を施し、その後23℃相対湿度20%で24時間調湿した。
【0264】
《オーバーコート層塗布液》
98%加水分解されたポリ酢酸ビニル(重量平均分子量20万)15質量部
ヘキサメチレンジイソシアネート 1質量部
マット剤(不定形シリカ、平均粒径2μm) 2質量部
水 82質量部
上記で作製した印刷版材料を実施例1と同様に、73cm幅で32mの長さに切断して直径7.5cmのボール紙でできたコアに巻き付けロール形状の印刷版試料を作製した。さらに、印刷版試料をAl203PET(12μm)/Ny(15μm)/CPP(70μm)の材料でできた150cm×2mの包装材料で巻いた。
【0265】
作製した包装された印刷版試料を、強制劣化条件として50℃、60%RHで7日間加温した。包装材料の酸素透過度は1.7ml/atm・m・30℃・day、水分透過度は1.8g/atm・m・25℃・dayであった。
【0266】
実施例1と同様にして画像形成を行い、印刷版試料(試料No.204という)を作製した。実施例1と同じ条件で印刷を行い、実施例1と同様な評価を行った。なお、耐刷性の評価はベタ部にかすれが出る印刷枚数を求めた(印刷は5万枚まで行った)。
【0267】
以上により得られた結果を表6に示す。
【0268】
【表6】
Figure 2005040964
【0269】
表6から、オーバーコート層を設けた本発明の印刷版試料である試料No.203は、印刷位置安定性に優れ、インク着肉性が良好であり、且つ、耐刷性にも優れていることが明らかである。
【0270】
実施例3
実施例1で作製した支持体の片面(裏面)に、導電性カーボンを含む帯電防止層(ゼラチン0.8g/m)を設け、その上に平均粒径4μmのシリカ粉末(富士シリシア化学株式会社製SY378)0.2g/mを含む裏塗り層(ゼラチン2g/m)を設けた。
【0271】
次いで、支持体の反対側の面(表面)をコロナ放電加工後、カーボンブラックと平均粒径4μmのシリカ粉末(富士シリシア化学(株)製SY378)を含む下塗り層(ゼラチン3.5g/m)及び下塗り層の上に赤色増感された高感度塩化銀乳剤(ゼラチン0.8g/m含む)を硝酸銀として1.0g/mになるように、二層同時塗布し乾燥した。更に、40℃、7日間加温後、特開昭53−21602号公報の実施例2に記載の物理現像核を含む塗布液(ポリマーとしてはNo.3のアクリルアミドとビニルイミダゾールとの共重合体を含み、現像主薬としてハイドロキノンを0.8g/mの割合で含む。)に特開平8−211614号公報に記載のP−2のポリマーを5mg/mを加えた物理現像核層の塗布液を塗布し乾燥して走査型露光用の平版印刷版材料を作製した。
【0272】
上記で作製した平版印刷版材料を実施例1と同様に、73cm幅で32mの長さに切断して直径7.5cmのボール紙でできたコアに巻き付けロール形状の平版印刷版試料を作製した。さらに、平版印刷版試料をAl203PET(12μm)/Ny(15μm)/CPP(70μm)の材料でできた150cm×2mの包装材料で巻いた。作製した包装された平版印刷版試料を、強制劣化条件として50℃、60%RHで7日間加温した。包装材料の酸素透過度は1.7ml/atm・m・30℃・day、水分透過度は1.8g/atm・m・25℃・dayであった。なお、支持体1由来の印刷版試料は2ロット作製した。
【0273】
これらの平版印刷版試料を走査露光装置(イメージセッター)として三菱製紙(株)社製のヘリウム・ネオンレーザー及び現像処理プロセッサー搭載のSDP−Eco1630IIを用いて1,200dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で走査露光及び現像処理し画像形成した平版印刷版試料を作製した。なお、現像処理液は三菱製紙(株)社製の現像液SLM−EAC、安定液SLM−ESTを用いた。
【0274】
画像形成した平版印刷版試料について、実施例1と同条件で印刷を行い、実施例1と同じ評価を行った。結果を表7に示す。
【0275】
【表7】
Figure 2005040964
【0276】
この場合においても、実施例1同様の本発明内のものは良好な結果を示すことがわかる。
【0277】
【発明の効果】
本発明により、印刷版材料を印刷版固定シートにより印刷機の版胴に設置して印刷する場合において、多数枚の印刷を行っても印刷位置安定性がよく、インク着肉性や耐刷性にも優れた印刷版固定シートの提供と、それを用いた版掛け方法および印刷方法を提供することが出来る。

Claims (6)

  1. ポリエステル支持体上に少なくとも親水性層、画像形成機能層および裏塗り層を有する印刷版材料と、印刷機の版胴の間に設置する、印刷版固定シートであって、23℃、48%RHにおけるスティフネス(ST)が、30g≦ST≦120gであることを特徴とする印刷版固定シート。
  2. 前記印刷版固定シートの基材に、厚み分布が10%以下のプラスチックフィルムを用いたことを特徴とする請求項1記載の印刷版固定シート。
  3. ポリエステル支持体上に少なくとも親水性層、画像形成機能層および裏塗り層を有する印刷版材料と、印刷機の版胴の間に、印刷版固定シートを介在させる版掛け方法において、該印刷版固定シートの23℃、48%RHにおけるスティフネス(ST)が、30g≦ST≦120gであることを特徴とする版掛け方法。
  4. 前記印刷版固定シートの基材に、厚み分布が10%以下のプラスチックフィルムを用いていることを特徴とする請求項3記載の版掛け方法。
  5. ポリエステル支持体上に少なくとも親水性層、画像形成機能層および裏塗り層を有する印刷版材料と、印刷機の版胴の間に、印刷版固定シートを介在させて印刷する印刷方法であって、該印刷版固定シートの23℃、48%RHにおけるスティフネス(ST)が、30g≦ST≦120gであることを特徴とする印刷方法。
  6. ポリエステル支持体上に少なくとも親水性層、画像形成機能層および裏塗り層を有する印刷版材料上に、レーザーを用いて画像を形成した後、湿式現像処理を施すことなく、印刷版材料と印刷機の版胴の間に、印刷版固定シートを介在させて印刷機に印刷版材料を取り付け、印刷用紙へ印刷する印刷方法において、該印刷版固定シートの23℃、48%RHにおけるスティフネス(ST)が、30g≦ST≦120gであることを特徴とする印刷方法。
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