JP2004181865A - 印刷版材料とそれを用いた印刷方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従って本発明の目的は、多数枚印刷しても色ズレがなく、耐刷性に優れた、プラスチックフィルム支持体を用いた印刷版材料を得ることにある。
【解決手段】プラスチックフィルム支持体の一方の面に少なくとも1層の熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有し、かつ23℃、48%RHにおけるスティフネス(ST)が、30g≦ST≦120gであることを特徴とする印刷版材料。
【選択図】 なし
【解決手段】プラスチックフィルム支持体の一方の面に少なくとも1層の熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有し、かつ23℃、48%RHにおけるスティフネス(ST)が、30g≦ST≦120gであることを特徴とする印刷版材料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱による画像形成機能を有する印刷版材料とそれを用いた印刷方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
印刷データのデジタル化に伴い、安価で、取扱いが容易で、PS版と同等の印刷適性を有したCTP(コンピューター・トゥー・プレート)技術が求められている。
【0003】
近年、地球環境への負荷の低減のために、特別な薬剤による現像液処理が不要な、いわゆるプロセスレスCTP印刷版への期待が高まっている。
【0004】
プロセスレス印刷版の画像形成方式のひとつとして有力なのが、赤外線レーザー記録であり、大きく分けて、後述するアブレーションタイプと熱融着画像層機上現像タイプ及び熱溶融転写タイプの三種の記録方法が存在する。
【0005】
赤外線レーザー記録では、高解像度画像を短時間で記録することが可能となるが、露光系の装置価格が高いという問題を有している。
【0006】
アブレーションタイプとしては、例えば、下記特許文献1〜5に記載されているものがある。これらは、例えば、支持体上に親水性層と親油性層とを有し、いずれかの層を表層として積層したものである。
【0007】
表層が親水性層であれば、画像様に露光し、親水性層をアブレートさせて画像様に除去して親油性層を露出することで画像部を形成することができる。ただし、アブレートした表層の飛散物による露光装置内部の汚染が問題となるため、親水性層上にさらに水溶性の保護層を設けて、アブレートした表層の飛散を防止し、印刷機上で保護層とともにアブレートした表層を除去する方式も提案されている。
【0008】
熱融着画像層機上現像タイプとしては、支持体上に熱可塑性微粒子を含む画像形成層を用いた構成で、高出力の赤外レーザーで露光加熱することで画像を形成させ、その後、現像液などの化学処理することなしに印刷機上でインキ及び湿し水をつけて不要部分を除去することで印刷可能になる、いわゆるプロセスレス印刷版の技術が知られている(特許文献6及び7に記載)。
【0009】
また、熱溶融転写タイプとしては、例えば、マンローランド社のDICOwebのような熱転写リボンを用いて、アルミニウム砂目ではなく、繰り返し使用可能な親水性表面を有する金属スリーブに熱溶融素材を画像様に転写した後、加熱して画像を定着させる方法が挙げられる。
【0010】
一方、CTP印刷版材料の支持体は従来、アルミニウムのような金属版を用いていたが、最近、ハンドリングや印刷版の持ち運びに便利なようにプラスチックフィルム支持体を用いた印刷版の技術が知られるようになった。機上現像タイプとしても特許文献8及び9に記載されているような技術が知られている。
【0011】
しかしながら、これらのプラスチック支持体を用いたプロセスレス印刷版は、カラー印刷のように複数の版を用いて多数枚を印刷する場合に色ズレなどの寸法安定性が悪く、かつ印刷適性、特に刷り出し時のインク着肉性や耐刷性が不十分な性能であった。
【0012】
【特許文献1】
特表平8−507727号公報
【0013】
【特許文献2】
特開平6−186750号公報
【0014】
【特許文献3】
特開平6−199064号公報
【0015】
【特許文献4】
特開平7−314934号公報
【0016】
【特許文献5】
特開平10−244773号公報
【0017】
【特許文献6】
特開平9−123387号公報
【0018】
【特許文献7】
特開平9−123388号公報
【0019】
【特許文献8】
特開2002−79772号公報
【0020】
【特許文献9】
特開2002−79773号公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、多数枚印刷しても色ズレがなく、耐刷性に優れた、プラスチックフィルム支持体を用いた印刷版材料を得ることにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は以下の手段によって達成される。
【0023】
1.プラスチックフィルム支持体の一方の面に少なくとも1層の熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有し、かつ23℃、48%RHにおけるスティフネス(ST)が、30g≦ST≦120gであることを特徴とする印刷版材料。
【0024】
2.支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を有することを特徴とする前記1に記載の印刷版材料。
【0025】
3.支持体の平均膜厚が150μm〜300μmの範囲であることを特徴とする前記1または2に記載の印刷版材料。
【0026】
4.親水性層の少なくとも1層が、多孔質構造を有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0027】
5.支持体上のいずれか1層が光熱変換素材を含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0028】
6.支持体の少なくとも一方の面が、ポリ塩化ビニリデン樹脂を含有する少なくとも1層を有することを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0029】
7.支持体の含水率が0.5質量%以下であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0030】
8.前記1〜7のいずれか1項に記載の印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像を形成した後に、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去する工程を含む印刷方法。
【0031】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る印刷版材料においては、23℃、48%RHにおけるスティフネス(ST)が、30g≦ST≦120gである。
【0032】
〈スティフネス(ST)〉
本発明において、スティフネスは、フィルムスティフネステスター(例えば、東洋精機(株)製、UT−200GR)を用いて、平坦な台に置いた20cm×10cmの試料の長辺側の両端を台に沿って近づけて、両端各5cmは台への固定しろとし、中央部10cmを台から1cm上方にたわませて、頂上部を針で押して3mm押し下げた時の荷重で評価したものとする。
【0033】
印刷版材料において、本発明のスティフネスの範囲は、下記に示す技術手段を適宜選択し、組み合わせることで達成される。
【0034】
(1)印刷版材料の支持体として、120℃での弾性率(E120)が1000〜6000N/mm2であるプラスチックフィルム支持体を用いる。
【0035】
(2)印刷版材料の支持体の平均膜厚が150〜300μmとする。
(3)印刷版材料の支持体の製造における延伸条件を調整する。
【0036】
(4)印刷版材料の支持体の含水率を0.5質量%以下とする。
(5)印刷版材料の支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を配置し、かつ該親水層を多孔質構造とする。
【0037】
(6)印刷版材料の支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を配置し、かつ親水層の乾燥固形分量を1m2あたり0.5g〜5gとする。
【0038】
(7)該支持体の少なくとも一方の面に、ポリ塩化ビニリデン樹脂を含有する少なくとも1層を有すること。
【0039】
以下に各技術手段について説明する。
(1)印刷版材料の支持体として、120℃での弾性率(E120)が1000〜6000N/mm2であるプラスチックフィルム支持体を用いることが好ましい。
【0040】
〈プラスチックフィルム支持体〉
(支持体の構成材料)
本発明に係るプラスチックフィルム支持体の構成材料としては、プラスチックフィルムが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。
【0041】
本発明に係る支持体は、本発明の印刷版材料に上記のハンドリング適性を付与する観点から、120℃での弾性率(E120)が100kg/mm2〜600kg/mm2であることが好ましく、より好ましくは120kg/mm2〜500kg/mm2である。具体的にはポリエチレンナフタレート(E120=410kg/mm2)、ポリエチレンテレフタレート(E120=150kg/mm2)、ポリブチレナフタレート(E120=160kg/mm2)、ポリカーボネイト(E120=170kg/mm2)、シンジオタクチックポリスチレン(E120=220kg/mm2)、ポリエーテルイミド(E120=190kg/mm2)、ポリアリレート(E120=170kg/mm2)、ポリスルホン(E120=180kg/mm2)、ポリエーテルスルホン(E120=170kg/mm2)等が挙げられる。これらは単独で用いても良く積層あるいは混合して用いても良い。中でも、特に好ましいプラスチックフィルムとしてはポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0042】
ここで、弾性率とは、引張試験機を用い、JIS C2318に準拠したサンプルの標線が示すひずみと、それに対応する応力が直線的な関係を示す領域において、ひずみ量に対する応力の傾きを求めたものである。これがヤング率と呼ばれる値であり、本発明では、前記ヤング率を弾性率と定義する。
【0043】
(2)印刷版材料の支持体の平均膜厚が150〜300μmとする。
さらに本発明に係る支持体は、本発明の印刷版材料が本発明に記載の効果を奏するためには、前記印刷版材料を印刷機へ設置する際のハンドリング適性向上の観点から、平均膜厚が150μm〜300μmの範囲であり、且つ、厚み分布が10%以下であることが好ましい。
【0044】
支持体の平均膜厚は、上記のように150μm〜300μmの範囲が好ましいが、さらに好ましくは、160μm〜280μmの範囲であり、特に好ましくは、170μm〜250μmの範囲である。
【0045】
本発明に係る支持体の厚み分布(厚みの最大値と最小値の差を平均厚みで割り百分率で表した値)は、上記のように10%以下であることが好ましいが、さらに好ましくは8%以下であり、特に好ましくは6%以下である。
【0046】
ここで、支持体の厚み分布の測定方法は、一辺が60cmの正方形に切り出した支持体を縦、横10cm間隔で碁盤目状に線を引き、この36点の厚みを測定し平均値と最大値、最小値を求める。
【0047】
(3)印刷版材料の支持体の製造における延伸条件を調整する。
印刷版材料の支持体の製造における延伸条件を調整し、印刷版材料としてのスティフネスが本発明の範囲になるように調整することが好ましい。
【0048】
スティフネスは、延伸倍率を上げれば大きく、下げれば小さくなる。縦、横いずれの延伸倍率もスティフネスを変化させるが、特に縦方向の延伸の影響が大きい。また、延伸温度は下げると配向が進んで大きくなり、上げれば逆に小さくなる。また、重合度もスティフネスに影響を与え、重合度が大きくなるとスティフネスも大きくなる。
【0049】
(支持体の作製方法)
本発明に係る支持体の平均膜厚および厚み分布を上記範囲に調整するためには、製膜条件を適正にしたり、製膜後に再加熱しながら平滑ローラーなどで調整をする方法があるが、本発明においては下記に記載の製膜処理で製造されることが好ましい。
【0050】
即ち、支持体の製膜手段としては、熱可塑性樹脂を融点(Tm)〜Tm+50℃の間で熔融後、焼結フィルタ等で濾過された後、T−ダイから押出し、ガラス転位温度(Tg)−50℃〜Tgに温調したキャスティングドラム上で未延伸シートを形成する。この時、厚み分布を上記の範囲にするには、静電印加法等を用いるのが好ましい。
【0051】
前記の未延伸シートをTg〜Tg+50℃の間で2倍〜4倍に縦延伸する。また、厚み分布を上記の範囲に調整するもう一つの方法としては、縦延伸を多段延伸するのが好ましい。この時、前段延伸より後段延伸の温度を1℃〜30℃の範囲で高く調整することが好ましく、更に好ましくは、2℃〜15℃の範囲で高く調整しながら延伸するのが好ましい。
【0052】
前段延伸の倍率は後段延伸の倍率の0.25倍〜0.7倍が好ましく、更に好ましくは、0.3倍〜0.5倍である。この後、Tg−30℃〜Tgの温度範囲で、5秒〜60秒、より好ましくは10秒〜40秒間保持した後、横方向にTg〜Tg+50℃の間で2.5倍〜5倍に延伸することが好ましい。
【0053】
この後、(Tm−50℃)〜(Tm−5℃)で5秒〜120秒、チャックで把持した状態で熱固定を行う。この時、幅方向に0%〜10%チャック間隔を狭めること(熱緩和)も好ましい。これを冷却後、端部に10μm〜100μmのナーリングを付けた(ナーリング高さを設けるともいう)後、巻取り、多軸延伸フィルムを得る等の方法が好ましい。
【0054】
(支持体への易接着処理、下引き層塗布)
本発明に係る支持体は、塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下引き層塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。
【0055】
下引き層としては、ゼラチンや後述するラテックスを含む層等を支持体上に設けること等が好ましい。また特開平7−20596号段落(0031)〜(0073)に記載の導電性ポリマー含有層や特開平7−20596号段落(0074)〜(0081)に記載の金属酸化物含有層のような導電性層を設けることが好ましい。導電性層はプラスチックフィルム支持体上であればいずれの側に塗設されてもよいが、好ましくは支持体に対し画像形成機能層の反対側に塗設するのが好ましい。この導電性層を設けると帯電性が改良されてゴミなどの付着が減少し、印刷時の白抜け故障などが大幅に減少する。
【0056】
また、本発明に係る支持体としては、プラスチックフィルム支持体が用いられるが、プラスチックフィルムと金属板(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウムなど)やポリエチレンで被覆した紙などの材料(複合基材ともいう)を適宜貼り合わせた複合支持体を用いることもできる。これらの複合基材は、塗布層を形成する前に貼り合わせても良く、また、塗布層を形成した後に貼り合わせても良く、印刷機に取り付ける直前に貼り合わせても良い。
【0057】
(微粒子)
また、上記の支持体中にはハンドリング性向上のため0.01μm〜10μmの微粒子を1ppm〜1000ppm添加することが好ましい。
【0058】
ここで、微粒子としては、有機物及び無機物のいずれでもよい。例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号明細書等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号明細書等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号明細書等に記載のアルカリ土類金属又はカドミウム、亜鉛等の炭酸塩、等を用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号明細書等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号明細書や英国特許第981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号公報等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号明細書等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートの様な有機微粒子を用いることができる。微粒子の形状は、定形、不定形どちらでもよい。
【0059】
(4)印刷版材料の支持体の含水率を0.5質量%以下とする。
本発明において支持体の含水率とは、下記式で表されるD′である。
【0060】
D′(質量%)=(w′/W′)×100
(式中、W′は25℃、60%RHの雰囲気下で調湿平衡にある支持体の質量、w′は25℃、60%RHの雰囲気下で調湿平衡にある該支持体の水分含量を表す。)
支持体の含水率は0.5質量%以下であることが好ましく、0.01〜0.5質量%であることが更に好ましく、特に好ましくは0.01〜0.3質量%である。
【0061】
支持体の含水率を0.5質量%以下に制御する手段としては、(a)画像形成機能層及びその他の層の塗布液を塗布する直前に支持体を100℃以上で熱処理する、(b)画像形成機能層及びその他の層の塗布液を塗布する工程の相対湿度を制御する、(c)画像形成機能層及びその他の層の塗布液を塗布する前に支持体を100℃以上で熱処理し、防湿シートでカバーして保管し、開封後直ちに塗布する、等が挙げられる。これらを2以上組み合わせて行っても良い。
【0062】
(5)印刷版材料の支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を配置し、かつ親水性層を多孔質構造とする。
【0063】
(6)印刷版材料の支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を配置し、かつ親水性層の乾燥固形分量を1m2あたり0.5g〜5gとする。
【0064】
〈親水性層〉
本発明の印刷版材料は、画像形成機能層を有し、かつ支持体と該画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を有する構成をとっているが、ここで、本発明に係る、支持体と該画像形成機能層の間に設けられる親水性層について説明する。親水性層とは、本発明の印刷版材料を印刷版として用いる際に、インクに対する親和性が低く、且つ、水に対する親和性の高い層として定義される。
【0065】
請求項4に記載のように、本発明の印刷版材料は、支持体上に設けられた親水性層の少なくとも1層が、多孔質構造を有することが好ましい。前記多孔質構造を有する親水性層を形成するためには、下記に記載の親水性マトリクスを形成する素材が好ましく用いられる。
【0066】
(金属酸化物)
親水性マトリクスを形成する素材としては、金属酸化物が好ましい。金属酸化物としては、金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良く、平均粒径としては、3〜100nmの範囲が好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。また、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0067】
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0068】
(コロイダルシリカ)
中でも、コロイダルシリカが特に好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。コロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、更に、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0069】
ネックレス状コロイダルシリカとは、一次粒子径がnmのオーダーである球状シリカの水分散系の総称であり、一次粒粒子径が10〜50nmの球状コロイダルシリカが50〜400nmの長さに結合した「パールネックレス状」のコロイダルシリカを意味する。
【0070】
パールネックレス状(即ち真珠ネックレス状)とは、コロイダルシリカのシリカ粒子が連なって結合した状態のイメージが、真珠ネックレスの様な形状をしていることを意味している。
【0071】
ネックレス状コロイダルシリカを構成するシリカ粒子同士の結合は、シリカ粒子表面に存在する−SiOH基が脱水結合した−Si−O−Si−と推定される。ネックレス状のコロイダルシリカとしては、具体的には日産化学工業社製の「スノーテックス−PS」シリーズなどが挙げられ、製品名としては「スノーテックス−PS−S(連結した状態の平均粒子径は110nm程度)」、「スノーテックス−PS−M(連結した状態の平均粒子径は120nm程度)」及び「スノーテックス−PS−L(連結した状態の平均粒子径は170nm程度)」があり、これらに各々対応する酸性の製品が「スノーテックス−PS−S−O」、「スノーテックス−PS−M−O」及び「スノーテックス−PS−L−O」である。
【0072】
ネックレス状コロイダルシリカを添加することにより、層の多孔性を確保しつつ、強度を維持することが可能となり、親水性層マトリクスの多孔質化材として好ましく使用できる。これらの中でも、アルカリ性である「スノーテックスPS−S」、「スノーテックスPS−M」、「スノーテックスPS−L」を用いると、親水性層の強度が向上し、また、印刷枚数が多い場合でも地汚れの発生が抑制され、特に好ましい。
【0073】
また、コロイダルシリカは、粒子径が小さいほど結合力が強くなることが知られており、本発明では平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカを用いることが好ましく、更に好ましくは、3〜15nmのものである。
【0074】
前述のようにコロイダルシリカの中ではアルカリ性のものが、地汚れ発生を抑制する効果が高く特に好ましい。平均粒径がこの範囲にあるアルカリ性のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学社製の「スノーテックス−20(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−30(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−40(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−N(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−S(粒子径8〜11nm)」、「スノーテックス−XS(粒子径4〜6nm)」が挙げられる。
【0075】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカは、前述のネックレス状コロイダルシリカと併用することで、形成する層の多孔質性を維持しながら、強度をさらに向上させることが可能となり、特に好ましい。
【0076】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカ/ネックレス状コロイダルシリカの比率は95/5〜5/95の範囲が好ましく、更に好ましくは、70/30〜20/80の範囲がより好ましく、60/40〜30/70の範囲が更に好ましい。
【0077】
(多孔質金属酸化物粒子)
本発明において、親水性層マトリクス構造の多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を含有することができる。多孔質金属酸化物粒子としては、以下に記載の多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子または、ゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0078】
(多孔質シリカ多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子)
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法または、乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0079】
多孔質アルミノシリケート粒子は、例えば、特開平10−71764号公報に記載されている方法により製造される。即ち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。また、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0080】
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。細孔容積は、塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。逆に、細孔容積が0.5ml/g未満の場合には、印刷性能がやや不十分となる場合がある。
【0081】
(細孔容積の測定方法)
ここで、上記の細孔容積の測定は、オートソーブ−1(カンタクローム社製)を使用し、定容法を用いた窒素吸着測定により、粉体の空隙が窒素により、充填されていると仮定して相対圧力が0.998における窒素吸着量から算出されるものである。
【0082】
(ゼオライト粒子)
ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3nm〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
【0083】
(M1、(M2)0.5)m(AlmSinO2)(m+n)・xH2O
ここで、M1、M2は交換性のカチオンであって、M1はLi+、Na+、K+、Tl+、Me4N+(TMA)、Et4N+(TEA)、Pr4N+(TPA)、C7H15N2+、C8H16N+等であり、M2はCa2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、C8H18N2 2+等である。また、n≧mであり、m/nの値つまりはAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、従って親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、更に好ましくは0.8〜1.0である。xは整数を表す。
【0084】
本発明で使用するゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、又粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、例えばゼオライトA:Na12(Al12Si12O48)・27H2O;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106O384)・264H2O;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136O384)・250H2O;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
【0085】
Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで、親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。また、指紋跡の汚れも大きく改善される。Al/Si比率が0.4未満では親水性が不充分であり、上記性能の改善効果が小さくなる。
【0086】
また、親水層を構成する親水性層マトリクス構造は、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。該層状鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。また、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性のものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0087】
また、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0088】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。また、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。また、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不充分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
【0089】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0090】
親水層を構成する親水性層マトリクスにはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0091】
また、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0092】
また、本発明では、水溶性樹脂を含有してもよい。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
【0093】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
【0094】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜20μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層マトリクスに適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷適性を有する構造を得ることができ、好ましい。
【0095】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、アルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0096】
本発明において、親水性マトリクス構造部に添加される水溶性樹脂は、少なくともその一部が水溶性の状態のまま、水に溶出可能な状態で存在することが好ましい。水溶性の素材であっても、架橋剤等によって架橋し、水に不溶の状態になると、その親水性は低下して印刷適性を劣化させる懸念があるためである。また、さらにカチオン性樹脂を含有しても良く、カチオン性樹脂としては、例えば、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。カチオン性樹脂は、微粒子状の形態で添加しても良く、例えば、特開平6−161101号公報に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
【0097】
また、本発明に係る親水性層を塗設する為に用いられる塗布液には、塗布性改善等の目的で水溶性の界面活性剤を含有させることができ、Si系または、F系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は、親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。
【0098】
また、親水性層には、リン酸塩を含むことができる。本発明では、親水性層の塗布液がアルカリ性であることが好ましいため、リン酸塩としてはリン酸三ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムとして添加することが好ましい。リン酸塩を添加することで、印刷時の網の目開きを改善する効果が得られる。リン酸塩の添加量としては、水和物を除いた有効量として、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%が更に好ましい。
【0099】
また、後述する光熱変換素材を含有することもできる。本発明においては、親水性層は支持体と画像形成機能層の間に配置され、かつ、親水性層の乾燥固形分量が1m2あたり0.5〜5gであることが好ましい。親水性層は1層でも複数層でもよく、複数層の場合は、各層の固形分の合計量が上記の範囲になる。
【0100】
(7)該支持体の少なくとも一方の面が、ポリ塩化ビニリデン樹脂を含有する層を少なくとも1層を有することが好ましい。
【0101】
(ポリ塩化ビニリデン樹脂)
本発明に係るポリ塩化ビニリデン樹脂としては、共重合体を用いるのが好ましく、前記共重合体の繰り返し単位中に占める塩化ビニリデン単量体の重合成分の量は、70〜99.9質量%が好ましく、更に好ましくは、85〜99質量%であり、特に好ましくは、90〜99質量%である。
【0102】
前記共重合体中の塩化ビニリデン単量体以外の共重合成分としては、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸およびこれらのエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルアセテート、アクリルアミド、スチレン等を挙げることができる。
【0103】
これらの共重合体の重量平均分子量としては、5000〜10万の範囲が好ましく、更に好ましくは、8000〜8万であり、特に好ましくは、1万〜4.5万の範囲である。ここで、重量平均分子量は、市販のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置により測定できる。
【0104】
これらの共重合体の単量体単位の配列については限定されず、ランダム、ブロック等のいずれであってもよい。
【0105】
ポリ塩化ビニリデン樹脂が水分散物の場合、均一構造のポリマー粒子のラテックスであってもコア部とシェル部で組成の異なったいわゆるコア−シェル構造のポリマー粒子のラテックスでもよい。塩化ビニリデン共重合体の具体例として以下のものを挙げることができる。但し、共重合比を示す数値は質量比であり、また、Mwは重量平均分子量を表す。
【0106】
(A)塩化ビニリデン:メチルアクリレート:アクリル酸(90:9:1)のラテックス(Mw=42000)
(B)塩化ビニリデン:メチルアクリレート:メチルメタクリレート:アクリロニトリル:メタクリル酸(87:4:4:4:1)のラテックス(Mw=40000)
(C)塩化ビニリデン:メチルメタクリレート:グリシジルメタクリレート:メタクリル酸(90:6:2:2)のラテックス(Mw=38000)
(D)塩化ビニリデン:エチルメタクリレート:2−ヒドロキシエチルメタクリレート:アクリル酸(90:8:1.5:0.5)のラテックス(Mw=44000)
(E)コアシェルタイプのラテックス(コア部90質量%、シェル部10質量%)
コア部 ;塩化ビニリデン:メチルアクリレート:メチルメタクリレート:アクリロニトリル:アクリル酸(93:3:3:0.9:0.1)
シェル部;塩化ビニリデン:メチルアクリレート:メチルメタクリレート:アクリロニトリル:アクリル酸(88:3:3:3:3)(Mw=38000)
(F)コアシェルタイプのラテックス(コア部70質量%、シェル部30質量%)
コア部 ;塩化ビニリデン:メチルアクリレート:メチルメタクリレート:アクリロニトリル:メタクリル酸(92.5:3:3:1:0.5)
シェル部;塩化ビニリデン:メチルアクリレート:メチルメタクリレート:アクリロニトリル:メタクリル酸(90:3:3:1:3)(Mw=20000)
(ポリ塩化ビニリデン樹脂の含有層)
本発明に係るポリ塩化ビニリデン樹脂は、支持体上に画像形成機能層が塗設されている側であれば、下引き層、後述する親水性層、画像形成機能層、その他の層などのいずれの層に含有されてもよいが、下引き層に含有されることが好ましい。下引き層は単層であっても複数層でもよい。これらの層の厚みは支持体の少なくとも片側に0.5〜10μmの範囲の膜厚で設けるのが好ましく、更に好ましくは、支持体両側に各々0.8〜5μmの範囲の膜厚の層を設けることであり、特に好ましくは、両側に各々1.0〜3μmである。
【0107】
(熱処理)
本発明においては、印刷版材料を露光装置などにおける搬送を良好に行うためには、延伸及び熱固定後のプラスチックフィルムの熱処理をすることが好ましい。本発明に係わる熱処理は、熱固定終了後冷却して巻き取った後に、別工程で巻きほぐしてから、以下のような手段で達成するのが良い。
【0108】
本発明に係わる熱処理する方法としては、テンターのようなフィルムの両端をピンやクリップで把持する搬送方法、複数のロール群によるロール搬送方法、空気をフィルムに吹き付けて浮揚させるエアー搬送などにより搬送させる方法(複数のスリットから加熱空気をフィルム面の片面あるいは両面に吹き付ける方法)、赤外線ヒーターなどによる輻射熱を利用する方法、加熱した複数のロールと接触させる方法などを単独または複数組み合わせて熱処理する方法、またフィルムを自重で垂れ下がらせ、下方で巻きとる等、単独あるいは複数の搬送方法等を組み合わせて用いることが好ましい。
【0109】
熱処理の張力調整は、巻き取りロール及び/または送り出しロールのトルクを調整すること、及び/または工程内にダンサーロールを設置し、これに加える荷重を調整することで達成出来る。熱処理中及び/または熱処理後の冷却時に張力を変化させる場合、これらの工程前後及び/または工程内にダンサーロールを設置し、それらの荷重を調整することで所望の張力状態を設定しても良い。また振動的に搬送張力を変化させるには熱処理ロール間スパンを小さくすることで有効に行うことが出来る。
【0110】
本発明に係わる熱処理は、熱収縮の進行を妨げずに、その後の寸法変化を小さくする上で、出来るだけ搬送張力を低くし、熱処理時間を長くすることが望ましい。処理温度としてはプラスチックフィルムのガラス転移点Tg+50〜Tg+150℃の温度範囲が好ましく、その温度範囲で、搬送張力としては5Pa〜1MPaが好ましく、より好ましくは5Pa〜500kPa、更に好ましくは5Pa〜200kPaであり、処理時間としては30秒〜30分が好ましく、より好ましくは30秒〜15分である。上記の温度範囲、搬送張力範囲及び処理時間にすることにより、熱処理時における支持体の熱収縮の部分的な差に起因する支持体の平面性の劣化もなく、搬送ロールとの摩擦等による細かいキズ等の発生も抑えることが出来る。
【0111】
本発明において、熱処理は所望の寸法変化率を得るために、少なくとも1回は必要であり、必要に応じて2回以上実施することも可能である。
【0112】
本発明においては、熱処理したプラスチックフィルムをTg付近の温度から常温まで冷却してから巻き取り、この時の冷却による平面性の劣化を防ぐために、Tgを跨いで常温まで下げるまでに、少なくとも−5℃/秒以上の速度で冷却するのが好ましい。
【0113】
本発明において、熱処理は、上述の下引層を塗設後に行うのが良い。例えば、押し出し〜熱固定〜冷却の間でインラインで下引層を塗設し、一旦巻き取ってから、別工程で熱処理するのが好ましい。また熱固定後一旦巻き取った後、別工程で下引を塗布・乾燥した後に下引済みプラスチックフィルム支持体を連続して平坦に保持したままの状態で熱処理を行っても良い。更には、バック層、導電層、易滑性層、下引き層などの各種の機能性層を塗布・乾燥した後に上記と同様な熱処理を行っても良い。
【0114】
〈画像形成機能層〉
本発明に係る画像形成機能層は、熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有することが好ましい。具体的には、以下のような素材を含有させることができることが好ましい。
【0115】
(熱溶融性微粒子)
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上150℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が150℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0116】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800〜10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0117】
これらの中でも、ポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。又、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0118】
又、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な構造を有する親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0119】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0120】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0121】
(熱融着性微粒子)
本発明に係わる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
【0122】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0123】
高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法又は気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水又は水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。又、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0124】
又、熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱融着性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した場合には、熱融着性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱融着性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0125】
又、熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0126】
構成層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0127】
また本発明に係る画像形成機能層は、後述する光熱変換素材を含有させることも好ましい実施態様である。
【0128】
画像形成機能層の乾燥塗布質量は好ましくは0.10〜1.50g/m2、より好ましくは0.15〜1.00g/m2である。
【0129】
(水溶性素材)
本発明に係る熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層には、さらに水溶性素材を含有することができる。水溶性素材を含有することにより、印刷機上で湿し水やインクを用いて未露光部の画像形成機能層を除去する際に、その除去性を向上させることができる。
【0130】
水溶性素材としては、親水性層に含有可能な素材として挙げた水溶性樹脂を用いることもできるが、本発明の画像形成機能層としては、糖類を用いることが好ましく、特にオリゴ糖を用いることが好ましい。オリゴ糖は水に速やかに溶解するため、印刷装置上での未露光部の画像形成機能層の除去も非常に速やかとなり、特別な除去操作を意識することなく、通常のPS版の刷出し操作と同様の操作で刷出すことで除去可能であり、刷出しの損紙が増加することもない。また、オリゴ糖は親水性層の親水性を低下させる懸念もなく、親水性層の良好な印刷適性を維持することができる。オリゴ糖は水に可溶の一般に甘みを有する結晶性物質で、数個の単糖がグリコシド結合によって脱水縮合したものである。オリゴ糖は糖をアグリコンとする一種のo−グリコシドであるから、酸で容易に加水分解されて単糖を生じ、生成する単糖の分子数によって二糖、三糖、四糖、五糖などに分類される。本発明におけるオリゴ糖とは、二糖〜十糖までのものをいう。
【0131】
これらのオリゴ糖は、還元基の有無によって、還元性オリゴ糖と非還元性オリゴ糖とに大別され、又単一の単糖から構成されているホモオリゴ糖と、2種類以上の単糖から構成されているヘテロオリゴ糖にも分類される。オリゴ糖は、遊離状又は配糖類として天然に存在し、又多糖の酸又は酵素による部分加水分解によっても得られる。この他酵素によるグリコシル転移によっても種々のオリゴ糖が生成する。
【0132】
オリゴ糖は通常雰囲気中では水和物として存在することが多い。又、水和物と無水物とでは融点が異なり、例を挙げると表1に示す通りである。
【0133】
【表1】
【0134】
本発明では、糖類を含有する層を水溶液で塗布形成することが好ましいため、水溶液から形成された場合は、層中に存在するオリゴ糖が水和物を形成するオリゴ糖である場合は、その融点は水和物の融点であると考えられる。このように、比較的低融点を有しているため、熱溶融微粒子が溶融する温度範囲や熱融着微粒子が融着する温度範囲でオリゴ糖も溶融し、熱溶融微粒子の多孔質な構造を有する親水性層への溶融浸透や熱融着微粒子の融着といった画像形成を妨げることがない。
【0135】
オリゴ糖の中でもトレハロースは、比較的純度の高い状態のものが工業的に安価に入手可能であり、水への溶解度が高いにもかかわらず、吸湿性は非常に低く、機上現像性及び保存性共に非常に良好である。
【0136】
又、オリゴ糖水和物を熱溶融させて水和水を除去した後に凝固させると(凝固後短時間のうちは)無水物の結晶となるが、トレハロースは水和物よりも無水物の融点が100℃以上も高いことが特徴的である。これは赤外線露光で熱溶融し、再凝固した直後は露光された部分は高融点で溶融しにくい状態となることを意味し、バンディング等の露光時の画像欠陥を起こしにくくする効果がある。本発明の目的を達成するには、オリゴ糖の中でも特にトレハロースが好ましい。
【0137】
構成層中のオリゴ糖の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がさらに好ましい。
【0138】
また本発明に係る画像形成機能層は、後述する光熱変換素材を含有させることが好ましい。
【0139】
画像形成機能層の乾燥塗布質量は好ましくは0.10〜0.75g/m2、より好ましくは0.15〜0.50g/m2である。
【0140】
〈親水性オーバーコート層〉
本発明において、取り扱い時の傷つき防止のために、画像形成機能層の上層に親水性オーバーコート層を有することが好ましい。親水性オーバーコート層は画像形成機能層のすぐ上の層であってもよいし、また画像形成機能層と親水性オーバーコート層の間に中間層が設けられてもよい。親水性オーバーコート層は印刷機上で除去可能であることが好ましい。
【0141】
本発明において親水性オーバーコート層は、水溶性樹脂又は水溶性樹脂を部分的に架橋した水膨潤性樹脂を含有することが好ましい。かかる水溶性樹脂は、画像形成機能層に含有されるものが用いられる。
【0142】
本発明においては、親水性オーバーコート層は、後述する光熱変換素材を含有することができる。
【0143】
またレーザー記録装置あるいは印刷機に本発明の印刷版を装着するときの傷つき防止のために、本発明においてオーバーコート層に平均粒径1μm以上20μm未満のマット剤を含有させることが好ましい。
【0144】
好ましく用いられるマット剤としては新モース硬度5以上の無機微粒子や有機マット剤があげられる。新モース硬度5以上の無機微粒子としては、例えば金属酸化物粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化クロム等)や金属炭化物粒子(炭化珪素等)、窒化ホウ素粒子、ダイアモンド粒子等が挙げられる。有機マット剤としては、例えば米国特許第2,322,037号明細書等に記載の澱粉、BE625,451号やGB981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、CH330,158号明細書等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等明細書に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートがあげられる。
【0145】
これらマット剤の添加量は1m2あたり0.1g以上10g未満であることが好ましい。
【0146】
その他、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。この様な非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることができる。上記非イオン界面活性剤のオーバーコート層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
【0147】
本発明において、オーバーコート層の乾燥塗布量は、0.05〜1.5g/m2が好ましく、更に好ましい範囲は0.1〜0.7g/m2である。この範囲内で、印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、良好な汚れ防止、傷付き防止、指紋跡付着防止およびアブレーションカスの発生低減ができる。
【0148】
〈光熱変換素材〉
本発明に係る画像形成機能層、親水性層、親水性オーバーコート層及びその他に設けられる層には、光熱変換素材を含有することが好ましい。
【0149】
光熱変換素材としては赤外吸収色素または顔料を添加することができる。
(赤外吸収色素)
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号、特開平7−43851号、特開平7−102179号、特開2001−117201の各公報等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0150】
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0151】
グラファイトとしては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0152】
金属としては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0153】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。可視光域で黒色を呈している素材しては、黒色酸化鉄(Fe3O4)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号公報、特開平9−25126号公報、特開平9−237570号公報、特開平9−241529号公報、特開平10−231441号公報等に開示されている方法により製造することができる。本発明に用いることができる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号公報に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。これらの複合金属酸化物は平均1次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均1次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。従って、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均1次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。分散剤の種類は特に限定しないが、Si元素を含むSi系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0154】
素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材としては、例えばSbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0155】
特に好ましい光熱変換素材の態様としては、前記の赤外吸収色素および金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。
【0156】
これらの光熱変換素材の添加量としては、各層に対して0.1〜50質量%であり、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
【0157】
〈可視画性の付与〉
通常、印刷業界においては、印刷材料に画像形成した印刷版を印刷する前に、正しく画像が形成されているかを検査する検版という作業がある。検版をするためには、印刷前に形成された画像が版面上で見える性能、つまり可視画性が良いことが好ましい。本発明の印刷版材料は、現像処理なしに印刷可能なプロセスレス印刷版材料なので、露光することによる光または熱によって露光部分または未露光部分の光学濃度が変化することが好ましい。
【0158】
本発明において好ましく用いられる方法としては、露光することにより光学濃度が変化するシアニン系赤外線吸収色素を含有する方法、光酸発生剤とその酸により変色する化合物を用いる方法、ロイコ色素のような発色剤と顕色剤を組み合わせて用いる方法などがある。
【0159】
本発明において、光酸発生剤とは、露光によってルイス酸やブレンステッド酸を生成する化合物を意味する。
【0160】
光酸発生剤の具体例としては、ジアゾ化合物、オルトキノンジアジド化合物、ポリハロゲン化合物、オニウム塩化合物などが挙げられる。またこれらの構造をポリマーに組み込んだ化合物を用いることもできる。
【0161】
ジアゾ化合物としては、例えば、米国特許2,063,631号明細書、米国特許2,667,415号明細書などに開示されているジアゾニウム塩とアルドールやアセタールなどの反応性カルボニル基を含有する有機結合剤との反応生成物であるジフェニルアミン−p−ジアゾニウム塩とフォルムアルデヒド縮合生成物、またこれらの水溶性ジアゾニウム塩化合物を特開昭54−98613号公報に開示された方法により、BF4−、PF6−などのアニオン成分などで置換したハロゲン化ルイス酸塩、アリルジアゾニウム塩化合物などが挙げられる。
【0162】
オルトキノンジアジド化合物としては、1分子中に少なくともひとつのオルトキノンジアジド基を有する化合物で、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−エチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−イソブチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−α−ナフチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−ベンジルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−エチルアミド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルアミドなどが挙げられる。
【0163】
ポリハロゲン化合物としては、ポリハロゲンを含むアセトフェノン、例えばトリブロモアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、o−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、p−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ブロモ−トリブロモアセトフェノン、p−ブロモ−トリブロモアセトフェノンなど、また、ポリハロゲンを含むスルフォキサイド、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォキサイド、ジブロモメチル−トリブロモメチルスルフォキサイド、トリブロモメチル−フェニルスルフォキサイドなど、またポリハロゲンを含むスルフォン、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォン、トリクロロメチル−フェニルスルフォン、トリブロモメチル−フェニルスルフォン、トリクロロメチル−p−クロロフェニルスルフォン、トリブロモメチル−p−ニトロフェニルスルフォン2−トリクロロメチルベンゾチアゾールスルフォン、2,4−ジクロロフェニル−トリクロロメチルスルフォンなど、その他ポリハロゲンを含むピロン化合物、トリアジン化合物、オキサジアゾール化合物などが挙げられる。
【0164】
オニウム塩化合物およびその他の光酸発生剤としては、S.P.Papas,et al.,Polym.Photochem.,5,1,p104〜115(1984)に記載されているオニウム塩化合物、また色材、66(2)、p104〜115(1993)に紹介されている、Ph2I+/SbF6−等のジアリルヨードニウム塩化合物に代表される光酸発生剤、トリアリルスルフォニウム塩化合物、トリアリルセレノニウム塩化合物、ジアルキルフェナシルスルフォニウム塩化合物、ジアルキル−4−フェナシルスルフォニウム塩化合物、α−ヒドロキシメチルベンゾインスルフォン酸エステル、N−ヒドロキシイミノスルフォネート、α−スルフォニロキシケトン、β−スルフォニロキシケトン、鉄−アレーン錯体化合物(ベンゼン−シクロペンタジエニル−鉄(II)ヘキサフルオロフォスフェートなど)、o−ニトロベンジルシリルエーテル化合物、ベンゾイントシレート、トリ(ニトロベンジル)フォスフェートなどが挙げられる。
【0165】
その他に、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩、有機ハロゲン化合物、o−ニトロベンジル誘導体、イミノスルホネート及びジスルホン化合物等を挙げることができる。
【0166】
さらに具体的には、例えば、特開平9−244226号公報の化7〜化9に記載のT−1〜T−15の式で示される化合物を挙げることができる。
【0167】
これらの中、より好ましいものはトリハロメチル基を2個以上有するs−トリアジン化合物であり、特に好ましくはトリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。これら光酸発生剤の含有量は、印刷版材料の全固形分に対し、0.01〜40質量%、好ましくは0.1〜30質量%である。
【0168】
本発明において、酸によって変色する化合物としては、例えばジフェニルメタン、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0169】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH(保土ケ谷化学社製)、オイルブルー#603(オリエント化学工業社製)、オイルピンク#312(オリエント化学工業社製)、オイルレッド5B(オリエント化学工業社製)、オイルスカーレット#308(オリエント化学工業社製)、オイルレッドOG(オリエント化学工業社製)、オイルレッドRR(オリエント化学工業社製)、オイルグリーン#502(オリエント化学工業社製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土ケ谷化学社製)、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボステアリルアミノ−4−p−ジヒドロオキシエチルアミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等が挙げられる。
【0170】
また、酸で発色する化合物としてアリールアミン類の有機染料を用いることができる。この目的に適するアリールアミン類としては、第一級、第二級芳香族アミンのような単なるアリールアミンのほかにいわゆるロイコ色素も含まれ、これらの例としては次のようなものが挙げられる。
【0171】
ジフェニルアミン、ジベンジルアニリン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、p−トルイジン、4,4′−ビフェニルジアミン、o−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、o−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、アニリン、2,5−ジクロロアニリン、N−メチルジフェニルアミン、o−トルイジン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメタン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、1,2−ジアニリノエチレン、p,p′,p″ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、p,p′−テトラメチルジアミノトリフェニルメタン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメチルイミン、p,p′,p″−トリアミノ−o−メチルトリフェニルメタン、p,p′,p″−トリアミノトリフェニルカルビノール、p,p′−テトラメチルアミノジフェニル−4−アニリノナフチルメタン、p,p′,p″−トリアミノフェニルメタン、p,p′,p″−ヘキサプロピルトリアミノトリフェニルメタン等。
【0172】
本発明において、顕色剤としては、感熱記録体において電子受容体として使用される酸性物質がいずれも使用でき、例えば酸性白土カオリン、ゼオライト等の無機酸、芳香族カルボン酸、その無水物又はその金属塩類、有機スルホン酸、その他の有機酸、フェノール系化合物、該フェノール系化合物のメチロール化物、該フェノール系化合物の塩又は錯体等の有機系顕色剤などが挙げられ、なかでもフェノール系化合物のメチロール化物およびフェノール系化合物の塩(以下、特に断りのないかぎり錯塩も含む)が好ましい。
【0173】
これら顕色剤のうち、有機系顕色剤の具体例としては、フェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシアセトフェノン、2,2′−ジヒドロキシジフェニル、2,2′−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−イソプロピリデンジフェノール(別名ビスフェノールA)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4′エチレンビス(2−メチルフェノール)、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ヘプタン、4,4′−シクロヘキシリデンビス(2−イソプロピルフェノール)、4,4′−スルホニルジフェノール等のフェノール系化合物、該フェノール系化合物のメチロール化物、該フェノール系化合物の塩サリチル酸アニリド、ノボラック型フェノール樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
【0174】
本発明においては、顕色剤とともに用いられる発色剤としては、トリフェニルメタンラクトン型などのロイコ色素を用いることができる。
【0175】
このようなロイコ色素としては、例えば、クリスタルバイオレットラクトン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノフルオラン、マラカイトグリーンラクトン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルドール−3−イル)フタリド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなどが挙げられる。
【0176】
上記発色剤と顕色剤は、顕色剤/発色剤の質量比が0.1/1〜5/1となる範囲で通常用いるが、なかでも該質量比が0.5/1〜3/1となる範囲が好ましい。
【0177】
〈画像形成機能層の反対側の構成層〉
本発明においては、取り扱い性及び保管時の物性変化防止のために、支持体の画像形成機能層の反対側に少なくとも1層の構成層を有することが好ましい。好ましい構成層としては、下引き層、親水性結合剤含有層または疎水性結合剤含有層であり、結合剤含有層は下引き層の上に塗設されてもよい。
【0178】
下引き層としては、前述の支持体の下引き層が好ましい。
親水性結合剤としては、親水性のものなら特に限定はされないが、親水性構造単位としてヒドロキシル基を有する樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂(メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、キチン類、及びデンプン;エーテル結合を有する樹脂であるポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリビニルエーテル(PVE);アミド基又はアミド結合を有する樹脂であるポリアクリルアミド(PAAM)及びポリビニルピロリドン(PVP)等を挙げることができる。また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩及びゼラチン類;スルホン基を有するポリスチレンスルホン酸塩;アミノ基、イミノ基、第3アミン及び第4級アンモニウム塩を有するポリアリルアミン(PAA)、ポリエチレンイミン(PEI)、エポキシ化ポリアミド(EPAm)、ポリビニルピリジン及びゼラチン類を挙げることができる。
【0179】
疎水性結合剤は、結合剤として疎水性のものなら特に限定されないが、例えばα,β−エチレン性不飽和化合物に由来するポリマー、例えばポリ塩化ビニル、後−塩素化ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと塩化ビニリデンのコポリマー、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、ポリ酢酸ビニル及び部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、出発材料としてポリビニルアルコールから作られ、繰り返しビニルアルコール単位の一部のみがアルデヒドと反応していることができるポリビニルアセタール、好ましくはポリビニルブチラール、アクリロニトリルとアクリルアミドのコポリマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン及びポリエチレン又はそれらの混合物等が挙げられる。
【0180】
また疎水性結合剤は仕上がり印刷版材料表面が疎水性であれば、特開2002−258469号公報の段落0033〜0038に記載されている水分散系樹脂(ポリマーラテックス)から得られたものでもよい。
【0181】
また印刷機の版胴への取り付けやすさ、および、印刷中における印刷版の位置ずれによるカラー印刷での色ずれを防止するために、本発明において該構成層のうちの最表面層に平均粒径1μm以上20μm未満のマット剤を含有させることが好ましい。
【0182】
好ましく用いられるマット剤としては新モース硬度5以上の無機微粒子や有機マット剤があげられる。新モース硬度5以上の無機微粒子としては、例えば金属酸化物粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化クロム等)や金属炭化物粒子(炭化珪素等)、窒化ホウ素粒子、ダイアモンド粒子等が挙げられる。有機マット剤としては、例えばUSP2,322,037号明細書等に記載の澱粉、BEP625,451号やGBP981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、CHP330,158号明細書等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、USP3,079,257号等明細書に記載のポリアクリロニトリル、USP3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートがあげられる。
【0183】
これらマット剤の添加量は1m2あたり0.1g以上10g未満であることが好ましい。
【0184】
本発明においては、前記のマット剤の粒径、添加量および結合剤の量を調整することで、画像形成層の反対側の表面の表面粗さは、Ra値で、0.1μm以上2μm未満であることが好ましい。0.1μm未満では摩擦係数が高い等の理由で印刷版材料の搬送性に問題を生じる懸念があったり、印刷版材料の印刷機への取付に不具合を生じたり場合もある。また、2μm以上の粗い表面では、印刷版材料の製造時その他でロールに巻かれる際に反対面に形成された塗布層を傷つける懸念や、印刷版材料を版胴上に固定した際に、裏面側からの突き上げで印刷版材料表面が部分的に突出し、その部分に印圧が集中するために耐刷不良を生じる懸念もある。
【0185】
さらに、レーザー記録装置あるいはプロセスレス印刷機には、装置内部において印刷版の搬送を制御するためのセンサーを有しており、これらの制御を滞りなく行うために、本発明において、該構成層には、色素および顔料を含有させることが好ましい。色素及び顔料としては、前述の光熱変換素材に用いられる赤外吸収色素及び顔料が好ましく用いられる。また、更に、該構成層には公知の界面活性剤を含有させることができる。
【0186】
〈露光〉
本発明は、また印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像を形成した後に、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去する工程を含む印刷方法も提供するものである。
【0187】
本発明の印刷版材料の画像形成は熱により行うことができるため、感熱プリンタで用いられるようなサーマルヘッドによっても画像形成が可能であるが、特にサーマルレーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0188】
本発明に関する露光に関し、より具体的には、赤外および/または近赤外領域で発光する、すなわち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0189】
本発明の走査露光に好適な装置としては、該半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0190】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式があげられる。
【0191】
本発明に関しては特に(3)の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)の露光方式が用いられる。
【0192】
このようにして画像形成がなされた印刷版材料は、現像処理を行うことなく印刷を行うことができる。画像形成後の印刷版材料をそのまま印刷機の版胴に取り付けるか、あるいは印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けた後に画像形成を行い、版胴を回転させながら水供給ローラーおよびまたはインク供給ローラーを印刷版材料に接触させることで画像形成層の非画像部を除去することが可能である。
【0193】
本発明の印刷版材料における上記の画像形成層非画像部の除去工程は、PS版を使用した通常の印刷シークエンスで行うことができるため、いわゆる機上現像処理による作業時間の延長の必要がないため、コストダウンにも有効である。
【0194】
さらに、本発明の印刷方法において、画像形成後から、印刷機上で印刷版材料表面と水供給ローラーまたはインク供給ローラーとが接触するまでに印刷版材料の表面を乾燥させる工程を有することが好ましい。本発明の印刷方法においては画像形成直後から画像強度が徐々に向上していくと考えられる。サーマルレーザーで一般的な外面ドラム方式(前述の(3)の方式)では、一般に露光開始から終了までに3分程度かかるため、露光終了時での露光開始部と終了部とでは画像強度が異なる懸念がある。乾燥工程を設けることで画像強度の差を問題ないレベルにまで縮めることができる。
【0195】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0196】
実施例1
《支持体の作製》:ポリエステルフィルムの作製
(支持体1:ポリエチレンテレフタレート支持体)
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定後の平均膜厚が190μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、前段延伸の延伸温度を102℃とし1.1倍に、後段延伸は110℃で2.6倍に縦延伸した。ついでテンターで120℃で1.8倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後83.3N/mで巻き取った。このようにして得たポリエチレンテレフタレートフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。
【0197】
(支持体2:ポリエチレンテレフタレート支持体)
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定後の平均膜厚が190μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、前段延伸を102℃で1.3倍に、後段延伸は110℃で2.6倍に縦延伸した。ついでテンターで120℃で4.5倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後4.8kg/mで巻き取った。このようにして得たポリエチレンテレフタレートフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。
【0198】
(支持体3:ポリエチレン−2,6−ナフタレート支持体)
2,6−ナフタレンジカルボン酸メチルとエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.55(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPENを得た。これをペレット化した後150℃で4時間乾燥し、310℃で溶融後T型ダイから押し出し、80℃の冷却ドラム上で急冷し未延伸フィルムを作製した。これを前段延伸を132℃で1.2倍に、後段延伸は140℃で2.7倍に縦延伸した。ついでテンターで145℃で4.0倍に横延伸した。この後、250℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、40℃に冷却後4.8kg/mで巻き取った。このようにして得たポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。また、支持体3の平均膜厚(μm)は190μmであった。
【0199】
(支持体4:ポリエチレンテレフタレート支持体)
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定後の平均膜厚が350μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、延伸温度は前段延伸が102℃で1.5倍に、後段延伸は110℃で4.0倍に縦延伸した。ついでテンターで120℃で5.0倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後8.5kg/mで巻き取った。このようにして得たポリエチレンテレフタレートフィルムの幅(製膜幅)は1.2mであった。
【0200】
《下引き済み支持体の作製》
上記で得られた支持体1、2、3および4の各々のフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、次いで、一方の面に下記下引き塗布液a−1またはa−2を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後に下引き塗布液bを塗布し、各々180℃、4分間乾燥させた(下引き面A)。また反対側の面に下記導電層と中間層を順次塗布し180℃、4分間で乾燥させ、これらの層の上に下記下引き塗布液c−1またはc−2を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設しそれぞれ180℃、4分間乾燥させた(下引き面B)。塗布後の25℃、25%RHでの表面電気抵抗は109Ωであった。また、下引き面B側の表面の表面粗さを測定したところRa値で0.8μmであった。表5に記載のような下引き済み支持体を用意した。
【0201】
尚、各層塗布液については、塗布後の付量比で組成を示した。ついで、各々の下引き層表面に、さらに、下記プラズマ処理条件でプラズマ処理を施した。
【0202】
《下引き塗布液a−1》;ポリ塩化ビニリデン無し
SBRポリマーラテックス
スチレン/ブタジエン/ヒドロキシエチルメタクリレート/ジビニルベンゼ
ン=67/30/2.5/0.5(質量%) 160質量部
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 4質量部
マット剤(ポリスチレン、平均粒径2.4μm) 3質量部
《下引き塗布液a−2》;ポリ塩化ビニリデン有り
PVdCポリマーラテックス
コア部90質量%、シェル部10質量%のコアシェルタイプのラテックス
コア部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/アクリル酸=93/3/3/0.9/0.1(質量%)
シェル部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/アクリル酸=88/3/3/3/3(質量%)
(重量平均分子量38000) 3000質量部
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 23質量部
マット剤(ポリスチレン、平均粒径2.4μm) 1.5質量部
下記染料A 1質量部
【0203】
【化1】
【0204】
《下引き塗布液b》
アルカリ処理ゼラチン
(Ca2+含量30ppm、ゼリー強度230g) 50mg/m2
《導電層》
ジュリマーET−410(日本純薬(株)製)
:Tg=52℃ 38mg/m2
SnO2/Sb(9/1質量比、平均粒子径0.25μm) 120mg/m2
マット剤(ポリメチルメタクリレート、平均粒子径5μm) 7mg/m2
デナコールEX−614B(ナガセ化成工業(株)製) 13mg/m2
《中間層》
ジュリマーET−410(日本純薬(株)製)
:Tg=52℃ 38mg/m2
《下引き塗布液c−1》;(ポリ塩化ビニリデン無し)
SBRポリマーラテックス:
スチレン/ブタジエン/ヒドロキシエチルメタクリレート/ジビニルベンゼ
ン=67/30/2.5/0.5(質量%) 160質量部
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 4質量部
マット剤(ポリスチレン、平均粒径2.4μm) 3質量部
《下引き塗布液c−2》;(ポリ塩化ビニリデン有り)
PVdCポリマーラテックス:コア部90質量%、シェル部10質量%
(コアシェルタイプのラテックス)
コア部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/アクリル酸=93/3/3/0.9/0.1(質量%)
シェル部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/アクリル酸=88/3/3/3/3(質量%)
(重量平均分子量38000) 3000質量部
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 23質量部
マット剤(ポリスチレン、平均粒径2.4μm) 1.5質量部
《プラズマ処理条件》
バッチ式の大気圧プラズマ処理装置(イーシー化学(株)製、AP−I−H−340)を用いて、高周波出力が4.5kW、周波数が5kHz、処理時間が5秒及びガス条件としてアルゴン、窒素及び水素の体積比をそれぞれ90%及び5%で、プラズマ処理を行った。
【0205】
《熱処理条件》
1.25m幅にスリットした後の支持体1、2および支持体3に対し、それぞれ張力2hPaで180℃、1分間の低張力熱処理を実施した。
【0206】
《印刷版材料101〜104の作製》
親水性層を塗設する直前に、下引き済み支持体に対し、100℃で30秒間熱処理を加えて乾燥させ、防湿シートでカバーをして空気中の湿度が入らないようにした。支持体試料の一部をサンプリングして水分率測定をしたところ、支持体1は1.2%、支持体2は0.2%、支持体3は0.2%、支持体4は2.5%であった。カバーをしたものについてはシートを除去後、すぐに塗布を行った。
【0207】
表2に示す親水性層1用塗布液(調製方法は下記に示す)、表3に示す親水性層2用塗布液(調製方法は下記に示す)、および表4に示す画像形成機能層塗布液を用いて下引き済み支持体の各々のA面上にワイヤーバーを用いて塗布した。それぞれ、表5に示す下引き済み支持体1、支持体2および支持体3上に、親水性層1、親水性層2の順番でワイヤーバーを用いてそれぞれ乾燥付量が2.5g/m2、0.6g/m2になるように塗布し、120℃で3分間乾燥したのちに60℃で24時間の加熱処理を施した。支持体4上には親水性層1、親水性層2の順番でワイヤーバーを用いてそれぞれ乾燥付量が5g/m2、2g/m2になるように塗布し、120℃で3分間乾燥したのちに60℃で24時間の加熱処理を施した。その後、表4に示す画像形成機能層塗布液を、それぞれ、ワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.6g/m2になるように塗布して50℃で3分間乾燥したのちに、50℃で72時間のシーズニング処理を施した。
【0208】
《親水性層1用塗布液の調製》
親水性層1用塗布液は、表2に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表2に記載の組成で混合、濾過して調製した。
【0209】
なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0210】
【表2】
【0211】
《親水性層2用塗布液の調製》
親水性層2用塗布液は、表3に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表3に記載の組成で混合、濾過して調製した。
【0212】
なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0213】
【表3】
【0214】
(※1)アクリル樹脂a:下記の製造方法で作成。
撹拌装置、温度調節器、還流管を備えた反応装置に酢酸n−ブチル65部を仕込み110℃に加温し、以下のモノマー組成の混合物を3時間かけて滴下した。
メチルメタクリレート 60部
i−ブチルメタクリレート 15部
i−ブチルアクリレート 7.5部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 10部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 2.5部
アクリル酸 5部
アゾビスイソブチロニトリル 2.5部
滴下後1時間保温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.5部と酢酸n−ブチル10部との混合溶液を1時間かけて滴下し、ついで1時間保温した。その後N,N−ジメチルエタノールアミンで0.7当量中和し、脱イオン水を加え、樹脂濃度が30質量%となるまで希釈し、水性アクリル樹脂aを得た。得られた樹脂aの水酸基価は59、酸価は39であった。
【0215】
《画像形成機能層塗布液の調製》
【0216】
【表4】
【0217】
《スティフネスの測定》
20cm×10cmにサンプルを切り出し、フィルムスティフネステスターUT−200GR(東洋精機(株)製)を用いて、サンプルを平坦な台に置き、長辺側の両端を台に沿って近づけて、両端各5cmは台への固定しろとし、中央部10cmを台から1cm上方にたわませて、頂上部を針で押して3mm押し下げた時の荷重を評価した。
【0218】
《印刷版材料101〜104の評価》
(a)赤外線レーザ方式による画像形成
上記で作成した印刷版材料101〜104の試料を、保存性の代用条件として50℃80%のサーモ条件で3日間保管した。その試料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には、波長830nm、スポット径約18μmのレーザビームを用い、露光エネルギーを300mJ/cm2とした条件で、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成し、印刷版試料101〜104を各々作製した。
【0219】
(b)上記で画像形成した印刷版試料101〜104について、下記の印刷方法により、印刷版としての諸特性を評価した。
【0220】
《印刷方法》
印刷装置として、三菱重工業社製のDAIYA1F−1を用いて、コート紙と、湿し水としてアストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量%溶液、インクとして、東洋インク社製のトーヨーキングハイエコーM紅を使用して印刷を行った。印刷開始のシークエンスはPS版の印刷シークエンスで行い、特別な機上現像操作は行わなかった。印刷後に版面を観察したところ、本発明に係る材料の非画像部は除去されていた。
【0221】
《インク着肉性の評価》
1000枚印刷後に、インクの供給を止めて水のみ5分間供給した。その後インクの供給を再開しインクを着肉させて何枚目に正常なインク濃度になる印刷物が得られるかを評価した。枚数が少ないほどインク着肉性が優れている。
【0222】
《寸法安定性の評価》
印刷前に版面に50μm幅のキズを2カ所50cm離してつけた。100枚印刷後の印刷紙面と3000枚印刷後の印刷紙面で2カ所のキズの距離がどのくらい変化したかで寸法変化を測定した。変化が少ないほど優れている。
【0223】
《耐刷性の評価》
3%網点画像の点が半分以上欠落する印刷枚数を求めた(印刷は2万枚まで行った)。印刷枚数の多いほど優れている。
【0224】
以上により得られた結果を表5に示す。
【0225】
【表5】
【0226】
表5から、比較の試料と比べて、本発明の印刷版試料は、インク着肉性、寸法安定性が良好であり、且つ、耐刷性にも優れていることが明らかである。
【0227】
実施例2
《印刷版材料201の作製》
実施例1で作製した印刷版材料104と同様にして画像形成機能層を塗布した。さらに画像形成機能層の上に下記オーバーコート層をワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.4g/m2となるように塗布し、50℃で3分間乾燥した。そしてさらに画像形成機能層の反対側に下記バックコート層をワイヤーバーを用いて乾燥付量が1.5g/m2になるように塗布し、50℃で20分間乾燥して印刷版材料201を作製した。さらに50℃で24時間のシーズニング処理を施し、その後23℃相対湿度20%で24時間調湿した。
【0228】
《オーバーコート層塗布液》
98%加水分解されたポリ酢酸ビニル(重量平均分子量20万) 15質量部
ヘキサメチレンジイソシアネート 1質量部
マット剤(不定形シリカ、平均粒径2μm) 2質量部
水 82質量部
《バックコート層塗布液》
ポリアクリル酸(商品名:ジュリマーAC−10H、日本純薬、平均分子量2
0万 水溶性樹脂) 16質量部
カルボジイミド(架橋剤) 2質量部
マット剤(不定形シリカ、平均粒径3.5μm) 2質量部
水 80質量部
またバック層の表面の表面粗さを測定したところ、Ra値で0.9μmであった。
【0229】
実施例1と同様にして評価を行った。なお実施例2での耐刷性の評価は、ベタ部にかすれが出る印刷枚数を求めた(印刷は5万枚まで行った)。
【0230】
以上により得られた結果を表6に示す。
【0231】
【表6】
【0232】
表6から、オーバーコート層を設けた本発明の印刷版材料201は、インク着肉性が良好であり、かつ耐刷性に優れていることが明らかである。
【0233】
【発明の効果】
多数枚印刷しても色ズレがなく、耐刷性に優れ、熱により画像形成する、プラスチックフィルム支持体を用いた印刷版材料を得ることができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱による画像形成機能を有する印刷版材料とそれを用いた印刷方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
印刷データのデジタル化に伴い、安価で、取扱いが容易で、PS版と同等の印刷適性を有したCTP(コンピューター・トゥー・プレート)技術が求められている。
【0003】
近年、地球環境への負荷の低減のために、特別な薬剤による現像液処理が不要な、いわゆるプロセスレスCTP印刷版への期待が高まっている。
【0004】
プロセスレス印刷版の画像形成方式のひとつとして有力なのが、赤外線レーザー記録であり、大きく分けて、後述するアブレーションタイプと熱融着画像層機上現像タイプ及び熱溶融転写タイプの三種の記録方法が存在する。
【0005】
赤外線レーザー記録では、高解像度画像を短時間で記録することが可能となるが、露光系の装置価格が高いという問題を有している。
【0006】
アブレーションタイプとしては、例えば、下記特許文献1〜5に記載されているものがある。これらは、例えば、支持体上に親水性層と親油性層とを有し、いずれかの層を表層として積層したものである。
【0007】
表層が親水性層であれば、画像様に露光し、親水性層をアブレートさせて画像様に除去して親油性層を露出することで画像部を形成することができる。ただし、アブレートした表層の飛散物による露光装置内部の汚染が問題となるため、親水性層上にさらに水溶性の保護層を設けて、アブレートした表層の飛散を防止し、印刷機上で保護層とともにアブレートした表層を除去する方式も提案されている。
【0008】
熱融着画像層機上現像タイプとしては、支持体上に熱可塑性微粒子を含む画像形成層を用いた構成で、高出力の赤外レーザーで露光加熱することで画像を形成させ、その後、現像液などの化学処理することなしに印刷機上でインキ及び湿し水をつけて不要部分を除去することで印刷可能になる、いわゆるプロセスレス印刷版の技術が知られている(特許文献6及び7に記載)。
【0009】
また、熱溶融転写タイプとしては、例えば、マンローランド社のDICOwebのような熱転写リボンを用いて、アルミニウム砂目ではなく、繰り返し使用可能な親水性表面を有する金属スリーブに熱溶融素材を画像様に転写した後、加熱して画像を定着させる方法が挙げられる。
【0010】
一方、CTP印刷版材料の支持体は従来、アルミニウムのような金属版を用いていたが、最近、ハンドリングや印刷版の持ち運びに便利なようにプラスチックフィルム支持体を用いた印刷版の技術が知られるようになった。機上現像タイプとしても特許文献8及び9に記載されているような技術が知られている。
【0011】
しかしながら、これらのプラスチック支持体を用いたプロセスレス印刷版は、カラー印刷のように複数の版を用いて多数枚を印刷する場合に色ズレなどの寸法安定性が悪く、かつ印刷適性、特に刷り出し時のインク着肉性や耐刷性が不十分な性能であった。
【0012】
【特許文献1】
特表平8−507727号公報
【0013】
【特許文献2】
特開平6−186750号公報
【0014】
【特許文献3】
特開平6−199064号公報
【0015】
【特許文献4】
特開平7−314934号公報
【0016】
【特許文献5】
特開平10−244773号公報
【0017】
【特許文献6】
特開平9−123387号公報
【0018】
【特許文献7】
特開平9−123388号公報
【0019】
【特許文献8】
特開2002−79772号公報
【0020】
【特許文献9】
特開2002−79773号公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、多数枚印刷しても色ズレがなく、耐刷性に優れた、プラスチックフィルム支持体を用いた印刷版材料を得ることにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は以下の手段によって達成される。
【0023】
1.プラスチックフィルム支持体の一方の面に少なくとも1層の熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有し、かつ23℃、48%RHにおけるスティフネス(ST)が、30g≦ST≦120gであることを特徴とする印刷版材料。
【0024】
2.支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を有することを特徴とする前記1に記載の印刷版材料。
【0025】
3.支持体の平均膜厚が150μm〜300μmの範囲であることを特徴とする前記1または2に記載の印刷版材料。
【0026】
4.親水性層の少なくとも1層が、多孔質構造を有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0027】
5.支持体上のいずれか1層が光熱変換素材を含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0028】
6.支持体の少なくとも一方の面が、ポリ塩化ビニリデン樹脂を含有する少なくとも1層を有することを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0029】
7.支持体の含水率が0.5質量%以下であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0030】
8.前記1〜7のいずれか1項に記載の印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像を形成した後に、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去する工程を含む印刷方法。
【0031】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る印刷版材料においては、23℃、48%RHにおけるスティフネス(ST)が、30g≦ST≦120gである。
【0032】
〈スティフネス(ST)〉
本発明において、スティフネスは、フィルムスティフネステスター(例えば、東洋精機(株)製、UT−200GR)を用いて、平坦な台に置いた20cm×10cmの試料の長辺側の両端を台に沿って近づけて、両端各5cmは台への固定しろとし、中央部10cmを台から1cm上方にたわませて、頂上部を針で押して3mm押し下げた時の荷重で評価したものとする。
【0033】
印刷版材料において、本発明のスティフネスの範囲は、下記に示す技術手段を適宜選択し、組み合わせることで達成される。
【0034】
(1)印刷版材料の支持体として、120℃での弾性率(E120)が1000〜6000N/mm2であるプラスチックフィルム支持体を用いる。
【0035】
(2)印刷版材料の支持体の平均膜厚が150〜300μmとする。
(3)印刷版材料の支持体の製造における延伸条件を調整する。
【0036】
(4)印刷版材料の支持体の含水率を0.5質量%以下とする。
(5)印刷版材料の支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を配置し、かつ該親水層を多孔質構造とする。
【0037】
(6)印刷版材料の支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を配置し、かつ親水層の乾燥固形分量を1m2あたり0.5g〜5gとする。
【0038】
(7)該支持体の少なくとも一方の面に、ポリ塩化ビニリデン樹脂を含有する少なくとも1層を有すること。
【0039】
以下に各技術手段について説明する。
(1)印刷版材料の支持体として、120℃での弾性率(E120)が1000〜6000N/mm2であるプラスチックフィルム支持体を用いることが好ましい。
【0040】
〈プラスチックフィルム支持体〉
(支持体の構成材料)
本発明に係るプラスチックフィルム支持体の構成材料としては、プラスチックフィルムが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。
【0041】
本発明に係る支持体は、本発明の印刷版材料に上記のハンドリング適性を付与する観点から、120℃での弾性率(E120)が100kg/mm2〜600kg/mm2であることが好ましく、より好ましくは120kg/mm2〜500kg/mm2である。具体的にはポリエチレンナフタレート(E120=410kg/mm2)、ポリエチレンテレフタレート(E120=150kg/mm2)、ポリブチレナフタレート(E120=160kg/mm2)、ポリカーボネイト(E120=170kg/mm2)、シンジオタクチックポリスチレン(E120=220kg/mm2)、ポリエーテルイミド(E120=190kg/mm2)、ポリアリレート(E120=170kg/mm2)、ポリスルホン(E120=180kg/mm2)、ポリエーテルスルホン(E120=170kg/mm2)等が挙げられる。これらは単独で用いても良く積層あるいは混合して用いても良い。中でも、特に好ましいプラスチックフィルムとしてはポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0042】
ここで、弾性率とは、引張試験機を用い、JIS C2318に準拠したサンプルの標線が示すひずみと、それに対応する応力が直線的な関係を示す領域において、ひずみ量に対する応力の傾きを求めたものである。これがヤング率と呼ばれる値であり、本発明では、前記ヤング率を弾性率と定義する。
【0043】
(2)印刷版材料の支持体の平均膜厚が150〜300μmとする。
さらに本発明に係る支持体は、本発明の印刷版材料が本発明に記載の効果を奏するためには、前記印刷版材料を印刷機へ設置する際のハンドリング適性向上の観点から、平均膜厚が150μm〜300μmの範囲であり、且つ、厚み分布が10%以下であることが好ましい。
【0044】
支持体の平均膜厚は、上記のように150μm〜300μmの範囲が好ましいが、さらに好ましくは、160μm〜280μmの範囲であり、特に好ましくは、170μm〜250μmの範囲である。
【0045】
本発明に係る支持体の厚み分布(厚みの最大値と最小値の差を平均厚みで割り百分率で表した値)は、上記のように10%以下であることが好ましいが、さらに好ましくは8%以下であり、特に好ましくは6%以下である。
【0046】
ここで、支持体の厚み分布の測定方法は、一辺が60cmの正方形に切り出した支持体を縦、横10cm間隔で碁盤目状に線を引き、この36点の厚みを測定し平均値と最大値、最小値を求める。
【0047】
(3)印刷版材料の支持体の製造における延伸条件を調整する。
印刷版材料の支持体の製造における延伸条件を調整し、印刷版材料としてのスティフネスが本発明の範囲になるように調整することが好ましい。
【0048】
スティフネスは、延伸倍率を上げれば大きく、下げれば小さくなる。縦、横いずれの延伸倍率もスティフネスを変化させるが、特に縦方向の延伸の影響が大きい。また、延伸温度は下げると配向が進んで大きくなり、上げれば逆に小さくなる。また、重合度もスティフネスに影響を与え、重合度が大きくなるとスティフネスも大きくなる。
【0049】
(支持体の作製方法)
本発明に係る支持体の平均膜厚および厚み分布を上記範囲に調整するためには、製膜条件を適正にしたり、製膜後に再加熱しながら平滑ローラーなどで調整をする方法があるが、本発明においては下記に記載の製膜処理で製造されることが好ましい。
【0050】
即ち、支持体の製膜手段としては、熱可塑性樹脂を融点(Tm)〜Tm+50℃の間で熔融後、焼結フィルタ等で濾過された後、T−ダイから押出し、ガラス転位温度(Tg)−50℃〜Tgに温調したキャスティングドラム上で未延伸シートを形成する。この時、厚み分布を上記の範囲にするには、静電印加法等を用いるのが好ましい。
【0051】
前記の未延伸シートをTg〜Tg+50℃の間で2倍〜4倍に縦延伸する。また、厚み分布を上記の範囲に調整するもう一つの方法としては、縦延伸を多段延伸するのが好ましい。この時、前段延伸より後段延伸の温度を1℃〜30℃の範囲で高く調整することが好ましく、更に好ましくは、2℃〜15℃の範囲で高く調整しながら延伸するのが好ましい。
【0052】
前段延伸の倍率は後段延伸の倍率の0.25倍〜0.7倍が好ましく、更に好ましくは、0.3倍〜0.5倍である。この後、Tg−30℃〜Tgの温度範囲で、5秒〜60秒、より好ましくは10秒〜40秒間保持した後、横方向にTg〜Tg+50℃の間で2.5倍〜5倍に延伸することが好ましい。
【0053】
この後、(Tm−50℃)〜(Tm−5℃)で5秒〜120秒、チャックで把持した状態で熱固定を行う。この時、幅方向に0%〜10%チャック間隔を狭めること(熱緩和)も好ましい。これを冷却後、端部に10μm〜100μmのナーリングを付けた(ナーリング高さを設けるともいう)後、巻取り、多軸延伸フィルムを得る等の方法が好ましい。
【0054】
(支持体への易接着処理、下引き層塗布)
本発明に係る支持体は、塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下引き層塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。
【0055】
下引き層としては、ゼラチンや後述するラテックスを含む層等を支持体上に設けること等が好ましい。また特開平7−20596号段落(0031)〜(0073)に記載の導電性ポリマー含有層や特開平7−20596号段落(0074)〜(0081)に記載の金属酸化物含有層のような導電性層を設けることが好ましい。導電性層はプラスチックフィルム支持体上であればいずれの側に塗設されてもよいが、好ましくは支持体に対し画像形成機能層の反対側に塗設するのが好ましい。この導電性層を設けると帯電性が改良されてゴミなどの付着が減少し、印刷時の白抜け故障などが大幅に減少する。
【0056】
また、本発明に係る支持体としては、プラスチックフィルム支持体が用いられるが、プラスチックフィルムと金属板(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウムなど)やポリエチレンで被覆した紙などの材料(複合基材ともいう)を適宜貼り合わせた複合支持体を用いることもできる。これらの複合基材は、塗布層を形成する前に貼り合わせても良く、また、塗布層を形成した後に貼り合わせても良く、印刷機に取り付ける直前に貼り合わせても良い。
【0057】
(微粒子)
また、上記の支持体中にはハンドリング性向上のため0.01μm〜10μmの微粒子を1ppm〜1000ppm添加することが好ましい。
【0058】
ここで、微粒子としては、有機物及び無機物のいずれでもよい。例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号明細書等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号明細書等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号明細書等に記載のアルカリ土類金属又はカドミウム、亜鉛等の炭酸塩、等を用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号明細書等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号明細書や英国特許第981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号公報等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号明細書等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートの様な有機微粒子を用いることができる。微粒子の形状は、定形、不定形どちらでもよい。
【0059】
(4)印刷版材料の支持体の含水率を0.5質量%以下とする。
本発明において支持体の含水率とは、下記式で表されるD′である。
【0060】
D′(質量%)=(w′/W′)×100
(式中、W′は25℃、60%RHの雰囲気下で調湿平衡にある支持体の質量、w′は25℃、60%RHの雰囲気下で調湿平衡にある該支持体の水分含量を表す。)
支持体の含水率は0.5質量%以下であることが好ましく、0.01〜0.5質量%であることが更に好ましく、特に好ましくは0.01〜0.3質量%である。
【0061】
支持体の含水率を0.5質量%以下に制御する手段としては、(a)画像形成機能層及びその他の層の塗布液を塗布する直前に支持体を100℃以上で熱処理する、(b)画像形成機能層及びその他の層の塗布液を塗布する工程の相対湿度を制御する、(c)画像形成機能層及びその他の層の塗布液を塗布する前に支持体を100℃以上で熱処理し、防湿シートでカバーして保管し、開封後直ちに塗布する、等が挙げられる。これらを2以上組み合わせて行っても良い。
【0062】
(5)印刷版材料の支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を配置し、かつ親水性層を多孔質構造とする。
【0063】
(6)印刷版材料の支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を配置し、かつ親水性層の乾燥固形分量を1m2あたり0.5g〜5gとする。
【0064】
〈親水性層〉
本発明の印刷版材料は、画像形成機能層を有し、かつ支持体と該画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を有する構成をとっているが、ここで、本発明に係る、支持体と該画像形成機能層の間に設けられる親水性層について説明する。親水性層とは、本発明の印刷版材料を印刷版として用いる際に、インクに対する親和性が低く、且つ、水に対する親和性の高い層として定義される。
【0065】
請求項4に記載のように、本発明の印刷版材料は、支持体上に設けられた親水性層の少なくとも1層が、多孔質構造を有することが好ましい。前記多孔質構造を有する親水性層を形成するためには、下記に記載の親水性マトリクスを形成する素材が好ましく用いられる。
【0066】
(金属酸化物)
親水性マトリクスを形成する素材としては、金属酸化物が好ましい。金属酸化物としては、金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良く、平均粒径としては、3〜100nmの範囲が好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。また、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0067】
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0068】
(コロイダルシリカ)
中でも、コロイダルシリカが特に好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。コロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、更に、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0069】
ネックレス状コロイダルシリカとは、一次粒子径がnmのオーダーである球状シリカの水分散系の総称であり、一次粒粒子径が10〜50nmの球状コロイダルシリカが50〜400nmの長さに結合した「パールネックレス状」のコロイダルシリカを意味する。
【0070】
パールネックレス状(即ち真珠ネックレス状)とは、コロイダルシリカのシリカ粒子が連なって結合した状態のイメージが、真珠ネックレスの様な形状をしていることを意味している。
【0071】
ネックレス状コロイダルシリカを構成するシリカ粒子同士の結合は、シリカ粒子表面に存在する−SiOH基が脱水結合した−Si−O−Si−と推定される。ネックレス状のコロイダルシリカとしては、具体的には日産化学工業社製の「スノーテックス−PS」シリーズなどが挙げられ、製品名としては「スノーテックス−PS−S(連結した状態の平均粒子径は110nm程度)」、「スノーテックス−PS−M(連結した状態の平均粒子径は120nm程度)」及び「スノーテックス−PS−L(連結した状態の平均粒子径は170nm程度)」があり、これらに各々対応する酸性の製品が「スノーテックス−PS−S−O」、「スノーテックス−PS−M−O」及び「スノーテックス−PS−L−O」である。
【0072】
ネックレス状コロイダルシリカを添加することにより、層の多孔性を確保しつつ、強度を維持することが可能となり、親水性層マトリクスの多孔質化材として好ましく使用できる。これらの中でも、アルカリ性である「スノーテックスPS−S」、「スノーテックスPS−M」、「スノーテックスPS−L」を用いると、親水性層の強度が向上し、また、印刷枚数が多い場合でも地汚れの発生が抑制され、特に好ましい。
【0073】
また、コロイダルシリカは、粒子径が小さいほど結合力が強くなることが知られており、本発明では平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカを用いることが好ましく、更に好ましくは、3〜15nmのものである。
【0074】
前述のようにコロイダルシリカの中ではアルカリ性のものが、地汚れ発生を抑制する効果が高く特に好ましい。平均粒径がこの範囲にあるアルカリ性のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学社製の「スノーテックス−20(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−30(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−40(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−N(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−S(粒子径8〜11nm)」、「スノーテックス−XS(粒子径4〜6nm)」が挙げられる。
【0075】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカは、前述のネックレス状コロイダルシリカと併用することで、形成する層の多孔質性を維持しながら、強度をさらに向上させることが可能となり、特に好ましい。
【0076】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカ/ネックレス状コロイダルシリカの比率は95/5〜5/95の範囲が好ましく、更に好ましくは、70/30〜20/80の範囲がより好ましく、60/40〜30/70の範囲が更に好ましい。
【0077】
(多孔質金属酸化物粒子)
本発明において、親水性層マトリクス構造の多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を含有することができる。多孔質金属酸化物粒子としては、以下に記載の多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子または、ゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0078】
(多孔質シリカ多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子)
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法または、乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0079】
多孔質アルミノシリケート粒子は、例えば、特開平10−71764号公報に記載されている方法により製造される。即ち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。また、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0080】
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。細孔容積は、塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。逆に、細孔容積が0.5ml/g未満の場合には、印刷性能がやや不十分となる場合がある。
【0081】
(細孔容積の測定方法)
ここで、上記の細孔容積の測定は、オートソーブ−1(カンタクローム社製)を使用し、定容法を用いた窒素吸着測定により、粉体の空隙が窒素により、充填されていると仮定して相対圧力が0.998における窒素吸着量から算出されるものである。
【0082】
(ゼオライト粒子)
ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3nm〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
【0083】
(M1、(M2)0.5)m(AlmSinO2)(m+n)・xH2O
ここで、M1、M2は交換性のカチオンであって、M1はLi+、Na+、K+、Tl+、Me4N+(TMA)、Et4N+(TEA)、Pr4N+(TPA)、C7H15N2+、C8H16N+等であり、M2はCa2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、C8H18N2 2+等である。また、n≧mであり、m/nの値つまりはAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、従って親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、更に好ましくは0.8〜1.0である。xは整数を表す。
【0084】
本発明で使用するゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、又粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、例えばゼオライトA:Na12(Al12Si12O48)・27H2O;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106O384)・264H2O;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136O384)・250H2O;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
【0085】
Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで、親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。また、指紋跡の汚れも大きく改善される。Al/Si比率が0.4未満では親水性が不充分であり、上記性能の改善効果が小さくなる。
【0086】
また、親水層を構成する親水性層マトリクス構造は、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。該層状鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。また、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性のものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0087】
また、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0088】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。また、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。また、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不充分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
【0089】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0090】
親水層を構成する親水性層マトリクスにはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0091】
また、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0092】
また、本発明では、水溶性樹脂を含有してもよい。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
【0093】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
【0094】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜20μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層マトリクスに適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷適性を有する構造を得ることができ、好ましい。
【0095】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、アルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0096】
本発明において、親水性マトリクス構造部に添加される水溶性樹脂は、少なくともその一部が水溶性の状態のまま、水に溶出可能な状態で存在することが好ましい。水溶性の素材であっても、架橋剤等によって架橋し、水に不溶の状態になると、その親水性は低下して印刷適性を劣化させる懸念があるためである。また、さらにカチオン性樹脂を含有しても良く、カチオン性樹脂としては、例えば、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。カチオン性樹脂は、微粒子状の形態で添加しても良く、例えば、特開平6−161101号公報に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
【0097】
また、本発明に係る親水性層を塗設する為に用いられる塗布液には、塗布性改善等の目的で水溶性の界面活性剤を含有させることができ、Si系または、F系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は、親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。
【0098】
また、親水性層には、リン酸塩を含むことができる。本発明では、親水性層の塗布液がアルカリ性であることが好ましいため、リン酸塩としてはリン酸三ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムとして添加することが好ましい。リン酸塩を添加することで、印刷時の網の目開きを改善する効果が得られる。リン酸塩の添加量としては、水和物を除いた有効量として、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%が更に好ましい。
【0099】
また、後述する光熱変換素材を含有することもできる。本発明においては、親水性層は支持体と画像形成機能層の間に配置され、かつ、親水性層の乾燥固形分量が1m2あたり0.5〜5gであることが好ましい。親水性層は1層でも複数層でもよく、複数層の場合は、各層の固形分の合計量が上記の範囲になる。
【0100】
(7)該支持体の少なくとも一方の面が、ポリ塩化ビニリデン樹脂を含有する層を少なくとも1層を有することが好ましい。
【0101】
(ポリ塩化ビニリデン樹脂)
本発明に係るポリ塩化ビニリデン樹脂としては、共重合体を用いるのが好ましく、前記共重合体の繰り返し単位中に占める塩化ビニリデン単量体の重合成分の量は、70〜99.9質量%が好ましく、更に好ましくは、85〜99質量%であり、特に好ましくは、90〜99質量%である。
【0102】
前記共重合体中の塩化ビニリデン単量体以外の共重合成分としては、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸およびこれらのエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルアセテート、アクリルアミド、スチレン等を挙げることができる。
【0103】
これらの共重合体の重量平均分子量としては、5000〜10万の範囲が好ましく、更に好ましくは、8000〜8万であり、特に好ましくは、1万〜4.5万の範囲である。ここで、重量平均分子量は、市販のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置により測定できる。
【0104】
これらの共重合体の単量体単位の配列については限定されず、ランダム、ブロック等のいずれであってもよい。
【0105】
ポリ塩化ビニリデン樹脂が水分散物の場合、均一構造のポリマー粒子のラテックスであってもコア部とシェル部で組成の異なったいわゆるコア−シェル構造のポリマー粒子のラテックスでもよい。塩化ビニリデン共重合体の具体例として以下のものを挙げることができる。但し、共重合比を示す数値は質量比であり、また、Mwは重量平均分子量を表す。
【0106】
(A)塩化ビニリデン:メチルアクリレート:アクリル酸(90:9:1)のラテックス(Mw=42000)
(B)塩化ビニリデン:メチルアクリレート:メチルメタクリレート:アクリロニトリル:メタクリル酸(87:4:4:4:1)のラテックス(Mw=40000)
(C)塩化ビニリデン:メチルメタクリレート:グリシジルメタクリレート:メタクリル酸(90:6:2:2)のラテックス(Mw=38000)
(D)塩化ビニリデン:エチルメタクリレート:2−ヒドロキシエチルメタクリレート:アクリル酸(90:8:1.5:0.5)のラテックス(Mw=44000)
(E)コアシェルタイプのラテックス(コア部90質量%、シェル部10質量%)
コア部 ;塩化ビニリデン:メチルアクリレート:メチルメタクリレート:アクリロニトリル:アクリル酸(93:3:3:0.9:0.1)
シェル部;塩化ビニリデン:メチルアクリレート:メチルメタクリレート:アクリロニトリル:アクリル酸(88:3:3:3:3)(Mw=38000)
(F)コアシェルタイプのラテックス(コア部70質量%、シェル部30質量%)
コア部 ;塩化ビニリデン:メチルアクリレート:メチルメタクリレート:アクリロニトリル:メタクリル酸(92.5:3:3:1:0.5)
シェル部;塩化ビニリデン:メチルアクリレート:メチルメタクリレート:アクリロニトリル:メタクリル酸(90:3:3:1:3)(Mw=20000)
(ポリ塩化ビニリデン樹脂の含有層)
本発明に係るポリ塩化ビニリデン樹脂は、支持体上に画像形成機能層が塗設されている側であれば、下引き層、後述する親水性層、画像形成機能層、その他の層などのいずれの層に含有されてもよいが、下引き層に含有されることが好ましい。下引き層は単層であっても複数層でもよい。これらの層の厚みは支持体の少なくとも片側に0.5〜10μmの範囲の膜厚で設けるのが好ましく、更に好ましくは、支持体両側に各々0.8〜5μmの範囲の膜厚の層を設けることであり、特に好ましくは、両側に各々1.0〜3μmである。
【0107】
(熱処理)
本発明においては、印刷版材料を露光装置などにおける搬送を良好に行うためには、延伸及び熱固定後のプラスチックフィルムの熱処理をすることが好ましい。本発明に係わる熱処理は、熱固定終了後冷却して巻き取った後に、別工程で巻きほぐしてから、以下のような手段で達成するのが良い。
【0108】
本発明に係わる熱処理する方法としては、テンターのようなフィルムの両端をピンやクリップで把持する搬送方法、複数のロール群によるロール搬送方法、空気をフィルムに吹き付けて浮揚させるエアー搬送などにより搬送させる方法(複数のスリットから加熱空気をフィルム面の片面あるいは両面に吹き付ける方法)、赤外線ヒーターなどによる輻射熱を利用する方法、加熱した複数のロールと接触させる方法などを単独または複数組み合わせて熱処理する方法、またフィルムを自重で垂れ下がらせ、下方で巻きとる等、単独あるいは複数の搬送方法等を組み合わせて用いることが好ましい。
【0109】
熱処理の張力調整は、巻き取りロール及び/または送り出しロールのトルクを調整すること、及び/または工程内にダンサーロールを設置し、これに加える荷重を調整することで達成出来る。熱処理中及び/または熱処理後の冷却時に張力を変化させる場合、これらの工程前後及び/または工程内にダンサーロールを設置し、それらの荷重を調整することで所望の張力状態を設定しても良い。また振動的に搬送張力を変化させるには熱処理ロール間スパンを小さくすることで有効に行うことが出来る。
【0110】
本発明に係わる熱処理は、熱収縮の進行を妨げずに、その後の寸法変化を小さくする上で、出来るだけ搬送張力を低くし、熱処理時間を長くすることが望ましい。処理温度としてはプラスチックフィルムのガラス転移点Tg+50〜Tg+150℃の温度範囲が好ましく、その温度範囲で、搬送張力としては5Pa〜1MPaが好ましく、より好ましくは5Pa〜500kPa、更に好ましくは5Pa〜200kPaであり、処理時間としては30秒〜30分が好ましく、より好ましくは30秒〜15分である。上記の温度範囲、搬送張力範囲及び処理時間にすることにより、熱処理時における支持体の熱収縮の部分的な差に起因する支持体の平面性の劣化もなく、搬送ロールとの摩擦等による細かいキズ等の発生も抑えることが出来る。
【0111】
本発明において、熱処理は所望の寸法変化率を得るために、少なくとも1回は必要であり、必要に応じて2回以上実施することも可能である。
【0112】
本発明においては、熱処理したプラスチックフィルムをTg付近の温度から常温まで冷却してから巻き取り、この時の冷却による平面性の劣化を防ぐために、Tgを跨いで常温まで下げるまでに、少なくとも−5℃/秒以上の速度で冷却するのが好ましい。
【0113】
本発明において、熱処理は、上述の下引層を塗設後に行うのが良い。例えば、押し出し〜熱固定〜冷却の間でインラインで下引層を塗設し、一旦巻き取ってから、別工程で熱処理するのが好ましい。また熱固定後一旦巻き取った後、別工程で下引を塗布・乾燥した後に下引済みプラスチックフィルム支持体を連続して平坦に保持したままの状態で熱処理を行っても良い。更には、バック層、導電層、易滑性層、下引き層などの各種の機能性層を塗布・乾燥した後に上記と同様な熱処理を行っても良い。
【0114】
〈画像形成機能層〉
本発明に係る画像形成機能層は、熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有することが好ましい。具体的には、以下のような素材を含有させることができることが好ましい。
【0115】
(熱溶融性微粒子)
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上150℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が150℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0116】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800〜10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0117】
これらの中でも、ポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。又、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0118】
又、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な構造を有する親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0119】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0120】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0121】
(熱融着性微粒子)
本発明に係わる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
【0122】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0123】
高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法又は気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水又は水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。又、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0124】
又、熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱融着性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した場合には、熱融着性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱融着性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0125】
又、熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0126】
構成層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0127】
また本発明に係る画像形成機能層は、後述する光熱変換素材を含有させることも好ましい実施態様である。
【0128】
画像形成機能層の乾燥塗布質量は好ましくは0.10〜1.50g/m2、より好ましくは0.15〜1.00g/m2である。
【0129】
(水溶性素材)
本発明に係る熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層には、さらに水溶性素材を含有することができる。水溶性素材を含有することにより、印刷機上で湿し水やインクを用いて未露光部の画像形成機能層を除去する際に、その除去性を向上させることができる。
【0130】
水溶性素材としては、親水性層に含有可能な素材として挙げた水溶性樹脂を用いることもできるが、本発明の画像形成機能層としては、糖類を用いることが好ましく、特にオリゴ糖を用いることが好ましい。オリゴ糖は水に速やかに溶解するため、印刷装置上での未露光部の画像形成機能層の除去も非常に速やかとなり、特別な除去操作を意識することなく、通常のPS版の刷出し操作と同様の操作で刷出すことで除去可能であり、刷出しの損紙が増加することもない。また、オリゴ糖は親水性層の親水性を低下させる懸念もなく、親水性層の良好な印刷適性を維持することができる。オリゴ糖は水に可溶の一般に甘みを有する結晶性物質で、数個の単糖がグリコシド結合によって脱水縮合したものである。オリゴ糖は糖をアグリコンとする一種のo−グリコシドであるから、酸で容易に加水分解されて単糖を生じ、生成する単糖の分子数によって二糖、三糖、四糖、五糖などに分類される。本発明におけるオリゴ糖とは、二糖〜十糖までのものをいう。
【0131】
これらのオリゴ糖は、還元基の有無によって、還元性オリゴ糖と非還元性オリゴ糖とに大別され、又単一の単糖から構成されているホモオリゴ糖と、2種類以上の単糖から構成されているヘテロオリゴ糖にも分類される。オリゴ糖は、遊離状又は配糖類として天然に存在し、又多糖の酸又は酵素による部分加水分解によっても得られる。この他酵素によるグリコシル転移によっても種々のオリゴ糖が生成する。
【0132】
オリゴ糖は通常雰囲気中では水和物として存在することが多い。又、水和物と無水物とでは融点が異なり、例を挙げると表1に示す通りである。
【0133】
【表1】
【0134】
本発明では、糖類を含有する層を水溶液で塗布形成することが好ましいため、水溶液から形成された場合は、層中に存在するオリゴ糖が水和物を形成するオリゴ糖である場合は、その融点は水和物の融点であると考えられる。このように、比較的低融点を有しているため、熱溶融微粒子が溶融する温度範囲や熱融着微粒子が融着する温度範囲でオリゴ糖も溶融し、熱溶融微粒子の多孔質な構造を有する親水性層への溶融浸透や熱融着微粒子の融着といった画像形成を妨げることがない。
【0135】
オリゴ糖の中でもトレハロースは、比較的純度の高い状態のものが工業的に安価に入手可能であり、水への溶解度が高いにもかかわらず、吸湿性は非常に低く、機上現像性及び保存性共に非常に良好である。
【0136】
又、オリゴ糖水和物を熱溶融させて水和水を除去した後に凝固させると(凝固後短時間のうちは)無水物の結晶となるが、トレハロースは水和物よりも無水物の融点が100℃以上も高いことが特徴的である。これは赤外線露光で熱溶融し、再凝固した直後は露光された部分は高融点で溶融しにくい状態となることを意味し、バンディング等の露光時の画像欠陥を起こしにくくする効果がある。本発明の目的を達成するには、オリゴ糖の中でも特にトレハロースが好ましい。
【0137】
構成層中のオリゴ糖の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がさらに好ましい。
【0138】
また本発明に係る画像形成機能層は、後述する光熱変換素材を含有させることが好ましい。
【0139】
画像形成機能層の乾燥塗布質量は好ましくは0.10〜0.75g/m2、より好ましくは0.15〜0.50g/m2である。
【0140】
〈親水性オーバーコート層〉
本発明において、取り扱い時の傷つき防止のために、画像形成機能層の上層に親水性オーバーコート層を有することが好ましい。親水性オーバーコート層は画像形成機能層のすぐ上の層であってもよいし、また画像形成機能層と親水性オーバーコート層の間に中間層が設けられてもよい。親水性オーバーコート層は印刷機上で除去可能であることが好ましい。
【0141】
本発明において親水性オーバーコート層は、水溶性樹脂又は水溶性樹脂を部分的に架橋した水膨潤性樹脂を含有することが好ましい。かかる水溶性樹脂は、画像形成機能層に含有されるものが用いられる。
【0142】
本発明においては、親水性オーバーコート層は、後述する光熱変換素材を含有することができる。
【0143】
またレーザー記録装置あるいは印刷機に本発明の印刷版を装着するときの傷つき防止のために、本発明においてオーバーコート層に平均粒径1μm以上20μm未満のマット剤を含有させることが好ましい。
【0144】
好ましく用いられるマット剤としては新モース硬度5以上の無機微粒子や有機マット剤があげられる。新モース硬度5以上の無機微粒子としては、例えば金属酸化物粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化クロム等)や金属炭化物粒子(炭化珪素等)、窒化ホウ素粒子、ダイアモンド粒子等が挙げられる。有機マット剤としては、例えば米国特許第2,322,037号明細書等に記載の澱粉、BE625,451号やGB981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、CH330,158号明細書等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等明細書に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートがあげられる。
【0145】
これらマット剤の添加量は1m2あたり0.1g以上10g未満であることが好ましい。
【0146】
その他、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。この様な非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることができる。上記非イオン界面活性剤のオーバーコート層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
【0147】
本発明において、オーバーコート層の乾燥塗布量は、0.05〜1.5g/m2が好ましく、更に好ましい範囲は0.1〜0.7g/m2である。この範囲内で、印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、良好な汚れ防止、傷付き防止、指紋跡付着防止およびアブレーションカスの発生低減ができる。
【0148】
〈光熱変換素材〉
本発明に係る画像形成機能層、親水性層、親水性オーバーコート層及びその他に設けられる層には、光熱変換素材を含有することが好ましい。
【0149】
光熱変換素材としては赤外吸収色素または顔料を添加することができる。
(赤外吸収色素)
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号、特開平7−43851号、特開平7−102179号、特開2001−117201の各公報等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0150】
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0151】
グラファイトとしては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0152】
金属としては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0153】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。可視光域で黒色を呈している素材しては、黒色酸化鉄(Fe3O4)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号公報、特開平9−25126号公報、特開平9−237570号公報、特開平9−241529号公報、特開平10−231441号公報等に開示されている方法により製造することができる。本発明に用いることができる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号公報に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。これらの複合金属酸化物は平均1次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均1次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。従って、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均1次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。分散剤の種類は特に限定しないが、Si元素を含むSi系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0154】
素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材としては、例えばSbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0155】
特に好ましい光熱変換素材の態様としては、前記の赤外吸収色素および金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。
【0156】
これらの光熱変換素材の添加量としては、各層に対して0.1〜50質量%であり、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
【0157】
〈可視画性の付与〉
通常、印刷業界においては、印刷材料に画像形成した印刷版を印刷する前に、正しく画像が形成されているかを検査する検版という作業がある。検版をするためには、印刷前に形成された画像が版面上で見える性能、つまり可視画性が良いことが好ましい。本発明の印刷版材料は、現像処理なしに印刷可能なプロセスレス印刷版材料なので、露光することによる光または熱によって露光部分または未露光部分の光学濃度が変化することが好ましい。
【0158】
本発明において好ましく用いられる方法としては、露光することにより光学濃度が変化するシアニン系赤外線吸収色素を含有する方法、光酸発生剤とその酸により変色する化合物を用いる方法、ロイコ色素のような発色剤と顕色剤を組み合わせて用いる方法などがある。
【0159】
本発明において、光酸発生剤とは、露光によってルイス酸やブレンステッド酸を生成する化合物を意味する。
【0160】
光酸発生剤の具体例としては、ジアゾ化合物、オルトキノンジアジド化合物、ポリハロゲン化合物、オニウム塩化合物などが挙げられる。またこれらの構造をポリマーに組み込んだ化合物を用いることもできる。
【0161】
ジアゾ化合物としては、例えば、米国特許2,063,631号明細書、米国特許2,667,415号明細書などに開示されているジアゾニウム塩とアルドールやアセタールなどの反応性カルボニル基を含有する有機結合剤との反応生成物であるジフェニルアミン−p−ジアゾニウム塩とフォルムアルデヒド縮合生成物、またこれらの水溶性ジアゾニウム塩化合物を特開昭54−98613号公報に開示された方法により、BF4−、PF6−などのアニオン成分などで置換したハロゲン化ルイス酸塩、アリルジアゾニウム塩化合物などが挙げられる。
【0162】
オルトキノンジアジド化合物としては、1分子中に少なくともひとつのオルトキノンジアジド基を有する化合物で、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−エチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−イソブチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−α−ナフチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−ベンジルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−エチルアミド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルアミドなどが挙げられる。
【0163】
ポリハロゲン化合物としては、ポリハロゲンを含むアセトフェノン、例えばトリブロモアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、o−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、p−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ブロモ−トリブロモアセトフェノン、p−ブロモ−トリブロモアセトフェノンなど、また、ポリハロゲンを含むスルフォキサイド、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォキサイド、ジブロモメチル−トリブロモメチルスルフォキサイド、トリブロモメチル−フェニルスルフォキサイドなど、またポリハロゲンを含むスルフォン、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォン、トリクロロメチル−フェニルスルフォン、トリブロモメチル−フェニルスルフォン、トリクロロメチル−p−クロロフェニルスルフォン、トリブロモメチル−p−ニトロフェニルスルフォン2−トリクロロメチルベンゾチアゾールスルフォン、2,4−ジクロロフェニル−トリクロロメチルスルフォンなど、その他ポリハロゲンを含むピロン化合物、トリアジン化合物、オキサジアゾール化合物などが挙げられる。
【0164】
オニウム塩化合物およびその他の光酸発生剤としては、S.P.Papas,et al.,Polym.Photochem.,5,1,p104〜115(1984)に記載されているオニウム塩化合物、また色材、66(2)、p104〜115(1993)に紹介されている、Ph2I+/SbF6−等のジアリルヨードニウム塩化合物に代表される光酸発生剤、トリアリルスルフォニウム塩化合物、トリアリルセレノニウム塩化合物、ジアルキルフェナシルスルフォニウム塩化合物、ジアルキル−4−フェナシルスルフォニウム塩化合物、α−ヒドロキシメチルベンゾインスルフォン酸エステル、N−ヒドロキシイミノスルフォネート、α−スルフォニロキシケトン、β−スルフォニロキシケトン、鉄−アレーン錯体化合物(ベンゼン−シクロペンタジエニル−鉄(II)ヘキサフルオロフォスフェートなど)、o−ニトロベンジルシリルエーテル化合物、ベンゾイントシレート、トリ(ニトロベンジル)フォスフェートなどが挙げられる。
【0165】
その他に、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩、有機ハロゲン化合物、o−ニトロベンジル誘導体、イミノスルホネート及びジスルホン化合物等を挙げることができる。
【0166】
さらに具体的には、例えば、特開平9−244226号公報の化7〜化9に記載のT−1〜T−15の式で示される化合物を挙げることができる。
【0167】
これらの中、より好ましいものはトリハロメチル基を2個以上有するs−トリアジン化合物であり、特に好ましくはトリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。これら光酸発生剤の含有量は、印刷版材料の全固形分に対し、0.01〜40質量%、好ましくは0.1〜30質量%である。
【0168】
本発明において、酸によって変色する化合物としては、例えばジフェニルメタン、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0169】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH(保土ケ谷化学社製)、オイルブルー#603(オリエント化学工業社製)、オイルピンク#312(オリエント化学工業社製)、オイルレッド5B(オリエント化学工業社製)、オイルスカーレット#308(オリエント化学工業社製)、オイルレッドOG(オリエント化学工業社製)、オイルレッドRR(オリエント化学工業社製)、オイルグリーン#502(オリエント化学工業社製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土ケ谷化学社製)、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボステアリルアミノ−4−p−ジヒドロオキシエチルアミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等が挙げられる。
【0170】
また、酸で発色する化合物としてアリールアミン類の有機染料を用いることができる。この目的に適するアリールアミン類としては、第一級、第二級芳香族アミンのような単なるアリールアミンのほかにいわゆるロイコ色素も含まれ、これらの例としては次のようなものが挙げられる。
【0171】
ジフェニルアミン、ジベンジルアニリン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、p−トルイジン、4,4′−ビフェニルジアミン、o−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、o−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、アニリン、2,5−ジクロロアニリン、N−メチルジフェニルアミン、o−トルイジン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメタン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、1,2−ジアニリノエチレン、p,p′,p″ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、p,p′−テトラメチルジアミノトリフェニルメタン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメチルイミン、p,p′,p″−トリアミノ−o−メチルトリフェニルメタン、p,p′,p″−トリアミノトリフェニルカルビノール、p,p′−テトラメチルアミノジフェニル−4−アニリノナフチルメタン、p,p′,p″−トリアミノフェニルメタン、p,p′,p″−ヘキサプロピルトリアミノトリフェニルメタン等。
【0172】
本発明において、顕色剤としては、感熱記録体において電子受容体として使用される酸性物質がいずれも使用でき、例えば酸性白土カオリン、ゼオライト等の無機酸、芳香族カルボン酸、その無水物又はその金属塩類、有機スルホン酸、その他の有機酸、フェノール系化合物、該フェノール系化合物のメチロール化物、該フェノール系化合物の塩又は錯体等の有機系顕色剤などが挙げられ、なかでもフェノール系化合物のメチロール化物およびフェノール系化合物の塩(以下、特に断りのないかぎり錯塩も含む)が好ましい。
【0173】
これら顕色剤のうち、有機系顕色剤の具体例としては、フェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシアセトフェノン、2,2′−ジヒドロキシジフェニル、2,2′−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−イソプロピリデンジフェノール(別名ビスフェノールA)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4′エチレンビス(2−メチルフェノール)、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ヘプタン、4,4′−シクロヘキシリデンビス(2−イソプロピルフェノール)、4,4′−スルホニルジフェノール等のフェノール系化合物、該フェノール系化合物のメチロール化物、該フェノール系化合物の塩サリチル酸アニリド、ノボラック型フェノール樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
【0174】
本発明においては、顕色剤とともに用いられる発色剤としては、トリフェニルメタンラクトン型などのロイコ色素を用いることができる。
【0175】
このようなロイコ色素としては、例えば、クリスタルバイオレットラクトン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノフルオラン、マラカイトグリーンラクトン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルドール−3−イル)フタリド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなどが挙げられる。
【0176】
上記発色剤と顕色剤は、顕色剤/発色剤の質量比が0.1/1〜5/1となる範囲で通常用いるが、なかでも該質量比が0.5/1〜3/1となる範囲が好ましい。
【0177】
〈画像形成機能層の反対側の構成層〉
本発明においては、取り扱い性及び保管時の物性変化防止のために、支持体の画像形成機能層の反対側に少なくとも1層の構成層を有することが好ましい。好ましい構成層としては、下引き層、親水性結合剤含有層または疎水性結合剤含有層であり、結合剤含有層は下引き層の上に塗設されてもよい。
【0178】
下引き層としては、前述の支持体の下引き層が好ましい。
親水性結合剤としては、親水性のものなら特に限定はされないが、親水性構造単位としてヒドロキシル基を有する樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂(メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、キチン類、及びデンプン;エーテル結合を有する樹脂であるポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリビニルエーテル(PVE);アミド基又はアミド結合を有する樹脂であるポリアクリルアミド(PAAM)及びポリビニルピロリドン(PVP)等を挙げることができる。また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩及びゼラチン類;スルホン基を有するポリスチレンスルホン酸塩;アミノ基、イミノ基、第3アミン及び第4級アンモニウム塩を有するポリアリルアミン(PAA)、ポリエチレンイミン(PEI)、エポキシ化ポリアミド(EPAm)、ポリビニルピリジン及びゼラチン類を挙げることができる。
【0179】
疎水性結合剤は、結合剤として疎水性のものなら特に限定されないが、例えばα,β−エチレン性不飽和化合物に由来するポリマー、例えばポリ塩化ビニル、後−塩素化ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと塩化ビニリデンのコポリマー、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、ポリ酢酸ビニル及び部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、出発材料としてポリビニルアルコールから作られ、繰り返しビニルアルコール単位の一部のみがアルデヒドと反応していることができるポリビニルアセタール、好ましくはポリビニルブチラール、アクリロニトリルとアクリルアミドのコポリマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン及びポリエチレン又はそれらの混合物等が挙げられる。
【0180】
また疎水性結合剤は仕上がり印刷版材料表面が疎水性であれば、特開2002−258469号公報の段落0033〜0038に記載されている水分散系樹脂(ポリマーラテックス)から得られたものでもよい。
【0181】
また印刷機の版胴への取り付けやすさ、および、印刷中における印刷版の位置ずれによるカラー印刷での色ずれを防止するために、本発明において該構成層のうちの最表面層に平均粒径1μm以上20μm未満のマット剤を含有させることが好ましい。
【0182】
好ましく用いられるマット剤としては新モース硬度5以上の無機微粒子や有機マット剤があげられる。新モース硬度5以上の無機微粒子としては、例えば金属酸化物粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化クロム等)や金属炭化物粒子(炭化珪素等)、窒化ホウ素粒子、ダイアモンド粒子等が挙げられる。有機マット剤としては、例えばUSP2,322,037号明細書等に記載の澱粉、BEP625,451号やGBP981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、CHP330,158号明細書等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、USP3,079,257号等明細書に記載のポリアクリロニトリル、USP3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートがあげられる。
【0183】
これらマット剤の添加量は1m2あたり0.1g以上10g未満であることが好ましい。
【0184】
本発明においては、前記のマット剤の粒径、添加量および結合剤の量を調整することで、画像形成層の反対側の表面の表面粗さは、Ra値で、0.1μm以上2μm未満であることが好ましい。0.1μm未満では摩擦係数が高い等の理由で印刷版材料の搬送性に問題を生じる懸念があったり、印刷版材料の印刷機への取付に不具合を生じたり場合もある。また、2μm以上の粗い表面では、印刷版材料の製造時その他でロールに巻かれる際に反対面に形成された塗布層を傷つける懸念や、印刷版材料を版胴上に固定した際に、裏面側からの突き上げで印刷版材料表面が部分的に突出し、その部分に印圧が集中するために耐刷不良を生じる懸念もある。
【0185】
さらに、レーザー記録装置あるいはプロセスレス印刷機には、装置内部において印刷版の搬送を制御するためのセンサーを有しており、これらの制御を滞りなく行うために、本発明において、該構成層には、色素および顔料を含有させることが好ましい。色素及び顔料としては、前述の光熱変換素材に用いられる赤外吸収色素及び顔料が好ましく用いられる。また、更に、該構成層には公知の界面活性剤を含有させることができる。
【0186】
〈露光〉
本発明は、また印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像を形成した後に、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去する工程を含む印刷方法も提供するものである。
【0187】
本発明の印刷版材料の画像形成は熱により行うことができるため、感熱プリンタで用いられるようなサーマルヘッドによっても画像形成が可能であるが、特にサーマルレーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0188】
本発明に関する露光に関し、より具体的には、赤外および/または近赤外領域で発光する、すなわち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0189】
本発明の走査露光に好適な装置としては、該半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0190】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式があげられる。
【0191】
本発明に関しては特に(3)の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)の露光方式が用いられる。
【0192】
このようにして画像形成がなされた印刷版材料は、現像処理を行うことなく印刷を行うことができる。画像形成後の印刷版材料をそのまま印刷機の版胴に取り付けるか、あるいは印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けた後に画像形成を行い、版胴を回転させながら水供給ローラーおよびまたはインク供給ローラーを印刷版材料に接触させることで画像形成層の非画像部を除去することが可能である。
【0193】
本発明の印刷版材料における上記の画像形成層非画像部の除去工程は、PS版を使用した通常の印刷シークエンスで行うことができるため、いわゆる機上現像処理による作業時間の延長の必要がないため、コストダウンにも有効である。
【0194】
さらに、本発明の印刷方法において、画像形成後から、印刷機上で印刷版材料表面と水供給ローラーまたはインク供給ローラーとが接触するまでに印刷版材料の表面を乾燥させる工程を有することが好ましい。本発明の印刷方法においては画像形成直後から画像強度が徐々に向上していくと考えられる。サーマルレーザーで一般的な外面ドラム方式(前述の(3)の方式)では、一般に露光開始から終了までに3分程度かかるため、露光終了時での露光開始部と終了部とでは画像強度が異なる懸念がある。乾燥工程を設けることで画像強度の差を問題ないレベルにまで縮めることができる。
【0195】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0196】
実施例1
《支持体の作製》:ポリエステルフィルムの作製
(支持体1:ポリエチレンテレフタレート支持体)
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定後の平均膜厚が190μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、前段延伸の延伸温度を102℃とし1.1倍に、後段延伸は110℃で2.6倍に縦延伸した。ついでテンターで120℃で1.8倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後83.3N/mで巻き取った。このようにして得たポリエチレンテレフタレートフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。
【0197】
(支持体2:ポリエチレンテレフタレート支持体)
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定後の平均膜厚が190μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、前段延伸を102℃で1.3倍に、後段延伸は110℃で2.6倍に縦延伸した。ついでテンターで120℃で4.5倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後4.8kg/mで巻き取った。このようにして得たポリエチレンテレフタレートフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。
【0198】
(支持体3:ポリエチレン−2,6−ナフタレート支持体)
2,6−ナフタレンジカルボン酸メチルとエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.55(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPENを得た。これをペレット化した後150℃で4時間乾燥し、310℃で溶融後T型ダイから押し出し、80℃の冷却ドラム上で急冷し未延伸フィルムを作製した。これを前段延伸を132℃で1.2倍に、後段延伸は140℃で2.7倍に縦延伸した。ついでテンターで145℃で4.0倍に横延伸した。この後、250℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、40℃に冷却後4.8kg/mで巻き取った。このようにして得たポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。また、支持体3の平均膜厚(μm)は190μmであった。
【0199】
(支持体4:ポリエチレンテレフタレート支持体)
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定後の平均膜厚が350μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、延伸温度は前段延伸が102℃で1.5倍に、後段延伸は110℃で4.0倍に縦延伸した。ついでテンターで120℃で5.0倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後8.5kg/mで巻き取った。このようにして得たポリエチレンテレフタレートフィルムの幅(製膜幅)は1.2mであった。
【0200】
《下引き済み支持体の作製》
上記で得られた支持体1、2、3および4の各々のフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、次いで、一方の面に下記下引き塗布液a−1またはa−2を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後に下引き塗布液bを塗布し、各々180℃、4分間乾燥させた(下引き面A)。また反対側の面に下記導電層と中間層を順次塗布し180℃、4分間で乾燥させ、これらの層の上に下記下引き塗布液c−1またはc−2を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設しそれぞれ180℃、4分間乾燥させた(下引き面B)。塗布後の25℃、25%RHでの表面電気抵抗は109Ωであった。また、下引き面B側の表面の表面粗さを測定したところRa値で0.8μmであった。表5に記載のような下引き済み支持体を用意した。
【0201】
尚、各層塗布液については、塗布後の付量比で組成を示した。ついで、各々の下引き層表面に、さらに、下記プラズマ処理条件でプラズマ処理を施した。
【0202】
《下引き塗布液a−1》;ポリ塩化ビニリデン無し
SBRポリマーラテックス
スチレン/ブタジエン/ヒドロキシエチルメタクリレート/ジビニルベンゼ
ン=67/30/2.5/0.5(質量%) 160質量部
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 4質量部
マット剤(ポリスチレン、平均粒径2.4μm) 3質量部
《下引き塗布液a−2》;ポリ塩化ビニリデン有り
PVdCポリマーラテックス
コア部90質量%、シェル部10質量%のコアシェルタイプのラテックス
コア部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/アクリル酸=93/3/3/0.9/0.1(質量%)
シェル部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/アクリル酸=88/3/3/3/3(質量%)
(重量平均分子量38000) 3000質量部
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 23質量部
マット剤(ポリスチレン、平均粒径2.4μm) 1.5質量部
下記染料A 1質量部
【0203】
【化1】
【0204】
《下引き塗布液b》
アルカリ処理ゼラチン
(Ca2+含量30ppm、ゼリー強度230g) 50mg/m2
《導電層》
ジュリマーET−410(日本純薬(株)製)
:Tg=52℃ 38mg/m2
SnO2/Sb(9/1質量比、平均粒子径0.25μm) 120mg/m2
マット剤(ポリメチルメタクリレート、平均粒子径5μm) 7mg/m2
デナコールEX−614B(ナガセ化成工業(株)製) 13mg/m2
《中間層》
ジュリマーET−410(日本純薬(株)製)
:Tg=52℃ 38mg/m2
《下引き塗布液c−1》;(ポリ塩化ビニリデン無し)
SBRポリマーラテックス:
スチレン/ブタジエン/ヒドロキシエチルメタクリレート/ジビニルベンゼ
ン=67/30/2.5/0.5(質量%) 160質量部
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 4質量部
マット剤(ポリスチレン、平均粒径2.4μm) 3質量部
《下引き塗布液c−2》;(ポリ塩化ビニリデン有り)
PVdCポリマーラテックス:コア部90質量%、シェル部10質量%
(コアシェルタイプのラテックス)
コア部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/アクリル酸=93/3/3/0.9/0.1(質量%)
シェル部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/アクリル酸=88/3/3/3/3(質量%)
(重量平均分子量38000) 3000質量部
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 23質量部
マット剤(ポリスチレン、平均粒径2.4μm) 1.5質量部
《プラズマ処理条件》
バッチ式の大気圧プラズマ処理装置(イーシー化学(株)製、AP−I−H−340)を用いて、高周波出力が4.5kW、周波数が5kHz、処理時間が5秒及びガス条件としてアルゴン、窒素及び水素の体積比をそれぞれ90%及び5%で、プラズマ処理を行った。
【0205】
《熱処理条件》
1.25m幅にスリットした後の支持体1、2および支持体3に対し、それぞれ張力2hPaで180℃、1分間の低張力熱処理を実施した。
【0206】
《印刷版材料101〜104の作製》
親水性層を塗設する直前に、下引き済み支持体に対し、100℃で30秒間熱処理を加えて乾燥させ、防湿シートでカバーをして空気中の湿度が入らないようにした。支持体試料の一部をサンプリングして水分率測定をしたところ、支持体1は1.2%、支持体2は0.2%、支持体3は0.2%、支持体4は2.5%であった。カバーをしたものについてはシートを除去後、すぐに塗布を行った。
【0207】
表2に示す親水性層1用塗布液(調製方法は下記に示す)、表3に示す親水性層2用塗布液(調製方法は下記に示す)、および表4に示す画像形成機能層塗布液を用いて下引き済み支持体の各々のA面上にワイヤーバーを用いて塗布した。それぞれ、表5に示す下引き済み支持体1、支持体2および支持体3上に、親水性層1、親水性層2の順番でワイヤーバーを用いてそれぞれ乾燥付量が2.5g/m2、0.6g/m2になるように塗布し、120℃で3分間乾燥したのちに60℃で24時間の加熱処理を施した。支持体4上には親水性層1、親水性層2の順番でワイヤーバーを用いてそれぞれ乾燥付量が5g/m2、2g/m2になるように塗布し、120℃で3分間乾燥したのちに60℃で24時間の加熱処理を施した。その後、表4に示す画像形成機能層塗布液を、それぞれ、ワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.6g/m2になるように塗布して50℃で3分間乾燥したのちに、50℃で72時間のシーズニング処理を施した。
【0208】
《親水性層1用塗布液の調製》
親水性層1用塗布液は、表2に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表2に記載の組成で混合、濾過して調製した。
【0209】
なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0210】
【表2】
【0211】
《親水性層2用塗布液の調製》
親水性層2用塗布液は、表3に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表3に記載の組成で混合、濾過して調製した。
【0212】
なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0213】
【表3】
【0214】
(※1)アクリル樹脂a:下記の製造方法で作成。
撹拌装置、温度調節器、還流管を備えた反応装置に酢酸n−ブチル65部を仕込み110℃に加温し、以下のモノマー組成の混合物を3時間かけて滴下した。
メチルメタクリレート 60部
i−ブチルメタクリレート 15部
i−ブチルアクリレート 7.5部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 10部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 2.5部
アクリル酸 5部
アゾビスイソブチロニトリル 2.5部
滴下後1時間保温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.5部と酢酸n−ブチル10部との混合溶液を1時間かけて滴下し、ついで1時間保温した。その後N,N−ジメチルエタノールアミンで0.7当量中和し、脱イオン水を加え、樹脂濃度が30質量%となるまで希釈し、水性アクリル樹脂aを得た。得られた樹脂aの水酸基価は59、酸価は39であった。
【0215】
《画像形成機能層塗布液の調製》
【0216】
【表4】
【0217】
《スティフネスの測定》
20cm×10cmにサンプルを切り出し、フィルムスティフネステスターUT−200GR(東洋精機(株)製)を用いて、サンプルを平坦な台に置き、長辺側の両端を台に沿って近づけて、両端各5cmは台への固定しろとし、中央部10cmを台から1cm上方にたわませて、頂上部を針で押して3mm押し下げた時の荷重を評価した。
【0218】
《印刷版材料101〜104の評価》
(a)赤外線レーザ方式による画像形成
上記で作成した印刷版材料101〜104の試料を、保存性の代用条件として50℃80%のサーモ条件で3日間保管した。その試料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には、波長830nm、スポット径約18μmのレーザビームを用い、露光エネルギーを300mJ/cm2とした条件で、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成し、印刷版試料101〜104を各々作製した。
【0219】
(b)上記で画像形成した印刷版試料101〜104について、下記の印刷方法により、印刷版としての諸特性を評価した。
【0220】
《印刷方法》
印刷装置として、三菱重工業社製のDAIYA1F−1を用いて、コート紙と、湿し水としてアストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量%溶液、インクとして、東洋インク社製のトーヨーキングハイエコーM紅を使用して印刷を行った。印刷開始のシークエンスはPS版の印刷シークエンスで行い、特別な機上現像操作は行わなかった。印刷後に版面を観察したところ、本発明に係る材料の非画像部は除去されていた。
【0221】
《インク着肉性の評価》
1000枚印刷後に、インクの供給を止めて水のみ5分間供給した。その後インクの供給を再開しインクを着肉させて何枚目に正常なインク濃度になる印刷物が得られるかを評価した。枚数が少ないほどインク着肉性が優れている。
【0222】
《寸法安定性の評価》
印刷前に版面に50μm幅のキズを2カ所50cm離してつけた。100枚印刷後の印刷紙面と3000枚印刷後の印刷紙面で2カ所のキズの距離がどのくらい変化したかで寸法変化を測定した。変化が少ないほど優れている。
【0223】
《耐刷性の評価》
3%網点画像の点が半分以上欠落する印刷枚数を求めた(印刷は2万枚まで行った)。印刷枚数の多いほど優れている。
【0224】
以上により得られた結果を表5に示す。
【0225】
【表5】
【0226】
表5から、比較の試料と比べて、本発明の印刷版試料は、インク着肉性、寸法安定性が良好であり、且つ、耐刷性にも優れていることが明らかである。
【0227】
実施例2
《印刷版材料201の作製》
実施例1で作製した印刷版材料104と同様にして画像形成機能層を塗布した。さらに画像形成機能層の上に下記オーバーコート層をワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.4g/m2となるように塗布し、50℃で3分間乾燥した。そしてさらに画像形成機能層の反対側に下記バックコート層をワイヤーバーを用いて乾燥付量が1.5g/m2になるように塗布し、50℃で20分間乾燥して印刷版材料201を作製した。さらに50℃で24時間のシーズニング処理を施し、その後23℃相対湿度20%で24時間調湿した。
【0228】
《オーバーコート層塗布液》
98%加水分解されたポリ酢酸ビニル(重量平均分子量20万) 15質量部
ヘキサメチレンジイソシアネート 1質量部
マット剤(不定形シリカ、平均粒径2μm) 2質量部
水 82質量部
《バックコート層塗布液》
ポリアクリル酸(商品名:ジュリマーAC−10H、日本純薬、平均分子量2
0万 水溶性樹脂) 16質量部
カルボジイミド(架橋剤) 2質量部
マット剤(不定形シリカ、平均粒径3.5μm) 2質量部
水 80質量部
またバック層の表面の表面粗さを測定したところ、Ra値で0.9μmであった。
【0229】
実施例1と同様にして評価を行った。なお実施例2での耐刷性の評価は、ベタ部にかすれが出る印刷枚数を求めた(印刷は5万枚まで行った)。
【0230】
以上により得られた結果を表6に示す。
【0231】
【表6】
【0232】
表6から、オーバーコート層を設けた本発明の印刷版材料201は、インク着肉性が良好であり、かつ耐刷性に優れていることが明らかである。
【0233】
【発明の効果】
多数枚印刷しても色ズレがなく、耐刷性に優れ、熱により画像形成する、プラスチックフィルム支持体を用いた印刷版材料を得ることができた。
Claims (8)
- プラスチックフィルム支持体の一方の面に少なくとも1層の熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有し、かつ23℃、48%RHにおけるスティフネス(ST)が、30g≦ST≦120gであることを特徴とする印刷版材料。
- 支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を有することを特徴とする請求項1に記載の印刷版材料。
- 支持体の平均膜厚が150μm〜300μmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版材料。
- 親水性層の少なくとも1層が、多孔質構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
- 支持体上のいずれか1層が光熱変換素材を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷版材料。
- 支持体の少なくとも一方の面が、ポリ塩化ビニリデン樹脂を含有する少なくとも1層を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷版材料。
- 支持体の含水率が0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の印刷版材料。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像を形成した後に、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去する工程を含む印刷方法。
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