JP2004268498A - 印刷版画像の修正方法、消去方法及び印刷方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】汚れ回復性と耐刷性に優れた印刷版画像の修正方法と消去方法を提供する。
【解決手段】支持体上に少なくとも1層の熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正する際、画像部分にシリコーンゴム溶液を塗布して修正することを特徴とする印刷版画像の修正方法と消去方法。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に少なくとも1層の熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正する際、画像部分にシリコーンゴム溶液を塗布して修正することを特徴とする印刷版画像の修正方法と消去方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷版画像の修正方法、消去方法及び印刷方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷データのデジタル化に伴い、安価で、取扱いが容易で、PS版と同等の印刷適性を有したCTP(コンピューター・トゥー・プレート)技術が求められている。
【0003】
近年、地球環境への負荷の低減のために、特別な薬剤による現像液処理が不要な、いわゆるプロセスレスCTP印刷版への期待が高まっている。
【0004】
プロセスレス印刷版の画像形成方式のひとつとして有力なのが、赤外線レーザー記録であり、その中で熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有する印刷版材料を機上現像するタイプが知られている。
【0005】
熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有する印刷版材料を機上現像するタイプとしては、支持体上に熱可塑性微粒子を含む画像形成機能層を用いた構成で、高出力の赤外レーザーで露光加熱することで画像を形成させ、その後、現像液などの化学処理することなしに印刷機上でインキ及び湿し水をつけて不要部分を除去することで印刷可能になる、いわゆるプロセスレス印刷版の技術(例えば、特許文献1、2参照。)が知られている。
【0006】
これらの印刷版を用いて印刷を行う場合には、製版時に生じたスクラッチ傷やピンホールを消去修正する事が必要であり、また場合によっては画像の一部を消去修正することが必要な場合もある。
【0007】
このような目的のために従来からPS版などの印刷版の修正液として様々な技術が提案されてきた。その中でも印刷版材料を機上現像するタイプとして用いることができるものとしては、ゾルゲル反応性を有する結合剤を含有する修正液を用いた方法(例えば、特許文献3参照。)が知られている。
【0008】
しかしながら、これらの修正方法では、インキと水のバランスが崩れてインキ着肉汚れが発生した場合に水を増やしても汚れが回復しない、いわゆる汚れ回復性が遅いという問題があり、修正部分の耐刷性は不十分という性能であった。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−123387号公報 (特許請求の範囲)
【0010】
【特許文献2】
特開平9−123388号公報 (特許請求の範囲)
【0011】
【特許文献3】
特開2001−350274号公報 (特許請求の範囲)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、汚れ回復性と耐刷性に優れた印刷版画像の修正方法と消去方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0014】
1.支持体上に少なくとも1層の熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正する際、画像部分にシリコーンゴム溶液を塗布して修正することを特徴とする印刷版画像の修正方法。
【0015】
2.支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正することを特徴とする前記1記載の印刷版画像の修正方法。
【0016】
3.親水性層の少なくとも1層が多孔質構造を有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正することを特徴とする前記2記載の印刷版画像の修正方法。
【0017】
4.支持体上のいずれか1層に光熱変換素材を含有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項記載の印刷版画像の修正方法。
【0018】
5.印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の印刷版画像の修正方法。
【0019】
6.印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像形成した後に湿式現像処理をせずに印刷版を作製し、形成した画像を修正することを特徴とする前記5記載の印刷版画像の修正方法。
【0020】
7.印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像を形成した後に、画像形成機能層の非画像部を印刷機上で除去し、さらに該画像部分にシリコーンゴム溶液を塗布して修正した後印刷することを特徴とする印刷方法。
【0021】
8.支持体上に少なくとも1層の熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像の一部を消去する際、画像部分にシリコーンゴム溶液を塗布して消去することを特徴とする印刷版画像の消去方法。
【0022】
本発明を更に詳しく説明する。
《シリコーンゴム溶液》
本発明で修正液又は消去液として使用されるシリコーンゴム溶液は線状ジオルガノポリシロキサンに必要に応じて架橋剤および触媒を添加したシリコーンゴム組成物を適当な溶媒で希釈したものである。
【0023】
ここで言う線状ジオルガノポリシロキサンは下記一般式(I)で示されるような繰り返し単位を有するポリマーでR1およびR2は炭素数1〜10のアルキル、ビニル、アリール基であり、適当な置換基を有していても良い。R1およびR2は同一でも異なっていても良く、またポリマー主鎖に沿って繰り返し単位が異なっていても良い。一般的には、R1およびR2は全体の60%以上がメチル基であり、40%以下がビニル基、フェニル基、あるいはハロゲン化ビニル基、ハロゲン化フェニル基などであるものが好ましい。
【0024】
【化1】
【0025】
架橋剤としては、線状ジオルガノポリシロキサンの有する官能基に依存するが、縮合あるいは付加反応を起こしうる官能基を有する化合物、また過酸化物などが挙げられる。触媒は必要に応じて金属の有機カルボン酸塩などが使用される。
【0026】
このシリコーンゴム溶液は次のような構成が接着性、耐久性の点から好ましい。
(a)両末端に各1個以上の官能基を有する線状ジオルガノポリシロキサン
(b)官能基を有しないか、あるいは片末端のみに1個以上の官能基を有する線状ジオルガノポリシロキサン
(c)前記官能基と縮合あるいは付加反応を起こしうる官能基を複数個有する架橋剤
(d)前記架橋反応に対する触媒
ここで(a)成分または(b)成分として用いられる線状ジオルガノポリシロキサンとは、下記一般式(II)で表される物質である。
【0027】
【化2】
【0028】
ここで、R′およびR″は炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アリール基であり、適当な置換基を有してもよい。X11、X12、X13、X21、X22およびX23は、ハロゲン、H、OH、NR3R4、OCOR5、OR6(R3〜R6はアルキル基または置換アルキル基)の官能基またはR′、R″を表す。
【0029】
nは50〜10000を表す。
そして(a)成分に言う両末端に各1個以上の官能基を有する線状ジオルガノポリシロキサンとは、上記一般式(II)においてX11、X12およびX13とX21、X22およびX23とが同時にR′またはR″でない場合である。(b)成分に言う官能基を有しないか、あるいは片末端のみに1個以上の官能基を有する線状ジオルガノポリシロキサンとは、X11、X12、X13、X21、X22およびX23が同時にR′またはR″の場合、あるいはX11、X12およびX13が同時にR′またはR″でX21、X22およびX23が前記官能基を表す場合、X11、X12およびX13が前記官能基でX21、X22およびX23が同時にR′またはR″である場合である。
【0030】
これらに於いてR′、R″は同一でも異なっていてもよく、またポリマー鎖に沿って繰り返し単位が異なっていても良い。一般的にはR′、R″の60%以上がメチル基であり、40%以下がビニル基、フェニル基であるものが望ましい。X11、X12、X13、X21、X22、X23は同一でも異なっていても良い。(a)(b)成分のジオルガノポリシロキサンはそれぞれ1種でも、また異なった2種以上を混合しても良い。
【0031】
(c)成分の架橋剤は、一般式(II)における官能基X11、X12、X13、X21、X22、X23(あるいはこれらが加水分解等の変化を起こして新たに生ずる官能基)と縮合あるいは付加反応を起こしうる官能基を複数個、好ましくは3個以上有する珪素化合物である。これらのうちでも特に一般式(III)で表されるような構造のもの、あるいはその縮合物が好ましい。
【0032】
一般式(III) XmSiR4−m
ただし、mは2≦m≦4の整数
ここでXおよびRは、一般式(II)において説明した、R′、R″と同じく炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アリール基であり適当な置換基を有していても良い。この架橋剤は1種を使用してもよいし、また異なった2種以上を混合して用いても良い。
【0033】
(d)成分の触媒とは、(a)および(b)成分の物質に含まれる官能基と(c)成分の物質に含まれる官能基との縮合、あるいは付加反応を促進する物質であり、具体的には錫、亜鉛、鉛などの金属の有機カルボン酸塩、たとえば酢酸ジブチル錫、ラウリン酸ジブチル錫、オクテン酸錫、オクテン酸亜鉛、ナフテン酸鉛など、あるいは塩化白金酸の如き物質が用いられる。
【0034】
本発明において用いられる修正液又は消去液の好ましい組成比は次の如くである。
(1)ジオルガノポリシロキサン 100質量部
(2)架橋剤 3〜100質量部
(3)触媒 0.1〜50質量部
ここにいうジオルガノポリシロキサン成分とは、(a)成分から選ばれる1種以上と、(b)成分から選ばれる1種以上の混合物である。(a)成分(b)成分との比率は質量比で(95:5)〜(10:90)の範囲で、特に(80:20)〜(20:80)の範囲が好ましい。更に、シリコーンゴム薄膜の強度を向上させるために、シリコーンゴムに各種の充填材を混合することができる。また塗膜を着色して見やすくするために、染料、顔料などの着色剤、さらには他の種種の添加剤を混合しても良い。
【0035】
上記の修正液又は消去液を形成する際の溶媒としては、パラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、シクロパラフィン系炭化水素、芳香族炭化水素、カルボン酸アルキルエステル類、エーテル類、ケトン類、ハロゲン化炭化水素等、さらにはこれらの混合物などが有利に用いられるが、塗工性等の点よりパラフィン系あるいはイソパラフィン系炭化水素を主成分とするのが特に好ましい。このような炭化水素類の代表的な例としては石油の分留品及びその改質品などがある。
【0036】
このような修正液又は消去液の中でも特にジオルガノポリシロキサン(a)成分として実質的に両末端が水酸基の線状ジオルガノポリシロキサン、及び(b)成分として実質的に官能基を有しない線状ジオルガノポリシロキサン(いずれも数平均分子量5,000〜1,000,000)の混合物、(c)成分の架橋剤として下記一般式(IV)で示されるようなトリアセトキシシランもしくはテトラアセトキシシランあるいはそれらの縮合物を用いたものが好ましく、良好な硬化性、接着性および溶液の保存安定性を示す。
【0037】
一般式(IV) R4−pSi(OCOCH3)p
ただし、pは3または4
ここにRは一般式(III)説明したものと同様、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アリール基であり適当な置換基を有していても良い。かかる組成を用いた場合、(d)成分の触媒としては酢酸ジブチル錫、ラウリン酸ジブチル錫、オクテン酸錫などの錫化合物を用いることが特に好ましい。
【0038】
上記の実質的に官能基を有しない線状ジオルガノポリシロキサンとしては、例えばSH−200(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株))、KF−96H(信越化学(株))等の市販品があり、それぞれ各種の粘度の製品が市販されているが、特に粘度1,000〜100,000センチストークス(1,000〜100,000×10−6平方メートル毎秒)の比較的高粘度のものを用いるのが好ましい。
【0039】
これらの好ましい混合割合は、ジオルガノポリシロキサン成分100質量部(水酸基を有する成分と有しない成分の質量比95:5〜10:90、好ましくは80:20〜20:80)に対し一般式(IV)で示されるトリアセトキシシランもしくはテトラアセトキシシラン(あるいはその縮合物)5〜100質量部、更に好ましくは10〜50質量部、触媒0.1〜50質量部、更に好ましくは0.2〜20質量部である。トリアセトキシシランもしくはテトラアセトキシシランの添加量が少なすぎると十分な接着力が得られず、かつ溶液の保存安定性が低下し、多すぎると十分なインキ反発性が得られない弊害が生ずる。また触媒は少なすぎると硬化が遅くなり、多すぎるとインキ反発性が低下したり、また版を長時間保存するとき塗膜が経時的に劣化する場合がある。
【0040】
溶液の濃度は用いるジオルガノポリシロキサンの分子量、溶媒の種類、塗布方法にもよるが一般に5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%である。うすすぎても濃すぎても塗布しにくく、適当な膜厚のシリコーンゴム塗膜が得られない。
【0041】
シリコーンゴム溶液の溶媒としては、パラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、シクロパラフィン系炭化水素および芳香族炭化水素溶媒およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。このような炭化水素溶媒の代表的な例としては、石油の分留品およびその改質品などがあり、具体的には、アイソパ−E、アイソパ−G、アイソパ−H(イソパラフィン系炭化水素、エクソン化学(株)製)などが挙げられる。
【0042】
これらのシリコーン溶液の組成は特開2001−324820号にも記載があるが、これは直描型水なし平版印刷版に用いられる修正液又は消去液であって、熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有する印刷版材料を画像形成して作製した印刷版の修正液又は消去液として顕著な効果が得られることは当業者にとっては全く予想ができないことであった。
【0043】
《画像形成機能層》
本発明に係る画像形成機能層は、熱溶融性または熱融着性微粒子を含有する。具体的には、以下のような素材を含有させることができることが好ましい。
【0044】
(熱溶融性微粒子)
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上150℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が150℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0045】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800〜10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0046】
これらの中でも、ポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。又、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0047】
又、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な構造を有する親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0048】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0049】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0050】
(熱融着性微粒子)
本発明に係わる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、高分子重合体の質量平均分子量(Mw)は10,000〜1,000,000の範囲であることが好ましい。
【0051】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0052】
高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法又は気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水又は水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。又、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0053】
又、熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱融着性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した場合には、熱融着性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱融着性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0054】
又、熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0055】
構成層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0056】
また本発明に係る画像形成機能層は、後述する光熱変換素材を含有させることも好ましい実施態様である。
【0057】
画像形成機能層の乾燥塗布質量は好ましくは0.10〜1.50g/m2、より好ましくは0.15〜1.00g/m2である。
【0058】
(水溶性樹脂)
本発明において画像形成機能層は水溶性樹脂を含有することが特徴である。
【0059】
かかる水溶性樹脂は、親水性の天然高分子及び合成高分子から選ばれる。本発明に好ましく用いられる水溶性樹脂の具体例としては、天然高分子では、アラビアガム、水溶性大豆多糖類、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ等)、その変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等、合成高分子では、ポリビニルアルコール(好ましくは鹸化度70モル%以上のもの)、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリアクリル酸共重合体、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリアクリルアミド、その共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、その共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩またはアミン塩等を挙げることができる。また、目的に応じて、これらを二種以上混合して用いることもできる。しかし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0060】
(架橋剤)
本発明において、印刷時の傷つき防止および画像強度を向上させるために、画像形成機能層に前記水溶性樹脂に加え水溶性樹脂を熱架橋しうる架橋剤を含有することが好ましい。
【0061】
水溶性樹脂を熱架橋しうる架橋剤としては、架橋性を有する多官能性化合物が挙げられ、エポキシ化合物、ポリアミン化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、シラン化合物、チタネート化合物、アルデヒド化合物、多価金属塩化合物、ヒドラジン等が挙げられる。
【0062】
エポキシ化合物の具体例としては、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール類またはそれらの水素添加物とエピハロヒドリンとのポリ縮合物等が挙げられる。また上記のうち水溶性エポキシ化合物は水溶性樹脂としても用いることができる。この場合の架橋剤は、架橋剤ハンドブック(大成社 昭和56年10月20日 初版第1刷)の352〜376頁に記載の化合物が好ましく用いることができる。
【0063】
ポリアミン化合物の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン等が挙げられる。
【0064】
イソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、液状ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、またポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物等が挙げられる。
【0065】
シラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。
【0066】
チタネート化合物としては、テトラエチルオルトシリケート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリアクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピル(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルトリインステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリジシルホスファイト)チタネート、テトラ(2、2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。
【0067】
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。
【0068】
多価金属塩化合物としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、コバルト、マンガン、ニッケル等の金属の水溶性塩が挙げられる。
【0069】
上記で挙げた架橋剤の中でも、特に、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、シラン化合物、アルデヒド化合物、多価金属塩化合物が好ましく用いられる。
【0070】
これらの架橋剤は単独または2種以上を混合して使用することが可能である。これらの架橋剤のうち特に好ましい架橋剤は、水溶性の架橋剤であるが、非水溶性のものは分散剤によって水に分散して使用することができる。
【0071】
特に好ましい水溶性樹脂と架橋剤の組み合わせとしては、カルボン酸含有水溶性樹脂/カルボジイミド化合物、カルボン酸含有水溶性樹脂/エポキシ化合物、水酸基含有樹脂/ジアルデヒド類、水酸基含有樹脂/イソシアネート化合物が挙げられる。架橋剤の好適な添加量は、水溶性樹脂の1〜20質量%である。
【0072】
〈親水性層〉
本発明の印刷版材料は、画像形成機能層を有し、かつ支持体と該画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を有する構成をとっているが、ここで、本発明に係る、支持体と該画像形成機能層の間に設けられる親水性層について説明する。親水性層とは、本発明の印刷版材料を印刷版として用いる際に、インクに対する親和性が低く、且つ、水に対する親和性の高い層として定義される。
【0073】
請求項3に記載のように、本発明の印刷版材料は、支持体上に設けられた親水性層の少なくとも1層が、多孔質構造を有することが好ましい。前記多孔質構造を有する親水性層を形成するためには、下記に記載の親水性マトリクスを形成する素材が好ましく用いられる。
【0074】
(金属酸化物)
親水性マトリクスを形成する素材としては、金属酸化物が好ましい。金属酸化物としては、金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良く、平均粒径としては、3〜100nmの範囲が好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。また、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0075】
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0076】
(コロイダルシリカ)
中でも、コロイダルシリカが特に好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。コロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、更に、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0077】
ネックレス状コロイダルシリカとは、一次粒子径がnmのオーダーである球状シリカの水分散系の総称であり、一次粒粒子径が10〜50nmの球状コロイダルシリカが50〜400nmの長さに結合した「パールネックレス状」のコロイダルシリカを意味する。
【0078】
パールネックレス状(即ち真珠ネックレス状)とは、コロイダルシリカのシリカ粒子が連なって結合した状態のイメージが、真珠ネックレスの様な形状をしていることを意味している。
【0079】
ネックレス状コロイダルシリカを構成するシリカ粒子同士の結合は、シリカ粒子表面に存在する−SiOH基が脱水結合した−Si−O−Si−と推定される。ネックレス状のコロイダルシリカとしては、具体的には日産化学工業社製の「スノーテックス−PS」シリーズなどが挙げられ、製品名としては「スノーテックス−PS−S(連結した状態の平均粒子径は110nm程度)」、「スノーテックス−PS−M(連結した状態の平均粒子径は120nm程度)」及び「スノーテックス−PS−L(連結した状態の平均粒子径は170nm程度)」があり、これらに各々対応する酸性の製品が「スノーテックス−PS−S−O」、「スノーテックス−PS−M−O」及び「スノーテックス−PS−L−O」である。
【0080】
ネックレス状コロイダルシリカを添加することにより、層の多孔性を確保しつつ、強度を維持することが可能となり、親水性層マトリクスの多孔質化材として好ましく使用できる。これらの中でも、アルカリ性である「スノーテックスPS−S」、「スノーテックスPS−M」、「スノーテックスPS−L」を用いると、親水性層の強度が向上し、また、印刷枚数が多い場合でも地汚れの発生が抑制され、特に好ましい。
【0081】
また、コロイダルシリカは、粒子径が小さいほど結合力が強くなることが知られており、本発明では平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカを用いることが好ましく、更に好ましくは、3〜15nmのものである。
【0082】
前述のようにコロイダルシリカの中ではアルカリ性のものが、地汚れ発生を抑制する効果が高く特に好ましい。平均粒径がこの範囲にあるアルカリ性のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学社製の「スノーテックス−20(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−30(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−40(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−N(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−S(粒子径8〜11nm)」、「スノーテックス−XS(粒子径4〜6nm)」が挙げられる。
【0083】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカは、前述のネックレス状コロイダルシリカと併用することで、形成する層の多孔質性を維持しながら、強度をさらに向上させることが可能となり、特に好ましい。
【0084】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカ/ネックレス状コロイダルシリカの比率は95/5〜5/95の範囲が好ましく、更に好ましくは、70/30〜20/80の範囲がより好ましく、60/40〜30/70の範囲が更に好ましい。
【0085】
(多孔質金属酸化物粒子)
本発明において、親水性層マトリクス構造の多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を含有することができる。多孔質金属酸化物粒子としては、以下に記載の多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子または、ゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0086】
(多孔質シリカ多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子)
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法または、乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0087】
多孔質アルミノシリケート粒子は、例えば、特開平10−71764号公報に記載されている方法により製造される。即ち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。また、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0088】
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。細孔容積は、塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。逆に、細孔容積が0.5ml/g未満の場合には、印刷性能がやや不十分となる場合がある。
【0089】
(細孔容積の測定方法)
ここで、上記の細孔容積の測定は、オートソーブ−1(カンタクローム社製)を使用し、定容法を用いた窒素吸着測定により、粉体の空隙が窒素により、充填されていると仮定して相対圧力が0.998における窒素吸着量から算出されるものである。
【0090】
(ゼオライト粒子)
ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3nm〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
【0091】
(M1、(M2)0.5)m(AlmSinO2)(m+n)・xH2O
ここで、M1、M2は交換性のカチオンであって、M1はLi+、Na+、K+、Tl+、Me4N+(TMA)、Et4N+(TEA)、Pr4N+(TPA)、C7H15N2+、C8H16N+等であり、M2はCa2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、C8H18N2 2+等である。また、n≧mであり、m/nの値つまりはAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、従って親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、更に好ましくは0.8〜1.0である。xは整数を表す。
【0092】
本発明で使用するゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、又粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、例えばゼオライトA:Na12(Al12Si12O48)・27H2O;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106O384)・264H2O;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136O384)・250H2O;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
【0093】
Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで、親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。また、指紋跡の汚れも大きく改善される。Al/Si比率が0.4未満では親水性が不充分であり、上記性能の改善効果が小さくなる。
【0094】
また、親水層を構成する親水性層マトリクス構造は、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。該層状鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。また、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性のものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0095】
また、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0096】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。また、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。また、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不充分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
【0097】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0098】
親水層を構成する親水性層マトリクスにはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0099】
また、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0100】
また、本発明では、水溶性樹脂を含有してもよい。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
【0101】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
【0102】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜20μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層マトリクスに適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷適性を有する構造を得ることができ、好ましい。
【0103】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、アルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0104】
本発明において、親水性マトリクス構造部に添加される水溶性樹脂は、少なくともその一部が水溶性の状態のまま、水に溶出可能な状態で存在することが好ましい。水溶性の素材であっても、架橋剤等によって架橋し、水に不溶の状態になると、その親水性は低下して印刷適性を劣化させる懸念があるためである。また、さらにカチオン性樹脂を含有しても良く、カチオン性樹脂としては、例えば、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。カチオン性樹脂は、微粒子状の形態で添加しても良く、例えば、特開平6−161101号公報に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
【0105】
また、本発明に係る親水性層を塗設する為に用いられる塗布液には、塗布性改善等の目的で水溶性の界面活性剤を含有させることができ、Si系または、F系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は、親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。
【0106】
また、親水性層には、リン酸塩を含むことができる。本発明では、親水性層の塗布液がアルカリ性であることが好ましいため、リン酸塩としてはリン酸三ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムとして添加することが好ましい。リン酸塩を添加することで、印刷時の網の目開きを改善する効果が得られる。リン酸塩の添加量としては、水和物を除いた有効量として、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%が更に好ましい。
【0107】
また、後述する光熱変換素材を含有することもできる。光熱変換素材としては、粒子状素材の場合は粒径が1μm未満であることが好ましい。
【0108】
(粒径が1μm以上の無機粒子もしくは無機素材で被覆された粒子)
本発明で用いることのできる無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができるが、塗布液中での沈降を抑制するために、多孔質な金属酸化物粒子を用いることが好ましい。多孔質な金属酸化物粒子としては、前述の多孔質シリカ粒子や多孔質アルミノシリケート粒子を好ましく用いることができる。
【0109】
また、無機素材で被覆された粒子としては、例えば、ポリメチルメタアクリレートやポリスチレンといった有機粒子を芯材とし、芯材粒子よりも粒径の小さな無機粒子で被覆した粒子が挙げられる。無機粒子の粒径としては、芯材粒子の1/10〜1/100程度であることが好ましい。また、無機粒子としては、同様にシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができる。被覆方法としては、種々の公知の方法を用いることができるが、ハイブリダイザのような空気中で芯材粒子と被覆材粒子とを高速に衝突させて芯材粒子表面に被覆材粒子を食い込ませて固定、被覆する乾式の被覆方法を好ましく用いることができる。
【0110】
また、有機粒子の芯材を金属メッキした粒子も用いることができる。このような粒子としては、例えば、樹脂粒子に金メッキを施した積水化学工業社製の「ミクロパールAU」等が挙げられる。
【0111】
粒径は、1〜10μmが好ましく、更に好ましくは、1.5〜8μmであり、特に好ましくは、2〜6μmである。
【0112】
本発明では、粒径が1μm以上の粒子の添加量としては、親水性層全体の1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。親水性層全体としては、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0113】
《親水性オーバーコート層》
本発明において、取り扱い時の傷つき防止のために、画像形成機能層の上層に親水性オーバーコート層を有することが好ましい。親水性オーバーコート層は画像形成機能層のすぐ上の層であってもよいし、また画像形成機能層と親水性オーバーコート層の間に中間層が設けられてもよい。親水性オーバーコート層は印刷機上で除去可能であることが好ましい。
【0114】
本発明において親水性オーバーコート層は、水溶性樹脂又は水溶性樹脂を部分的に架橋した水膨潤性樹脂を含有することが好ましい。かかる水溶性樹脂は、画像形成機能層に含有されるものが用いられる。
【0115】
本発明においては、親水性オーバーコート層は、後述する光熱変換素材を含有することができる。
【0116】
またレーザー記録装置あるいは印刷機に本発明の印刷版を装着するときの傷つき防止のために、本発明においてオーバーコート層に平均粒径1μm以上20μm未満のマット剤を含有させることが好ましい。
【0117】
好ましく用いられるマット剤としては新モース硬度5以上の無機微粒子や有機マット剤があげられる。新モース硬度5以上の無機微粒子としては、例えば金属酸化物粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化クロム等)や金属炭化物粒子(炭化珪素等)、窒化ホウ素粒子、ダイアモンド粒子等が挙げられる。有機マット剤としては、例えば米国特許第2,322,037号明細書等に記載の澱粉、BE625,451号やGB981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、CH330,158号明細書等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等明細書に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートがあげられる。
【0118】
これらマット剤の添加量は1m2あたり0.1g以上10g未満であることが好ましい。
【0119】
その他、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。この様な非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることができる。上記非イオン界面活性剤のオーバーコート層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
【0120】
本発明において、オーバーコート層の乾燥塗布量は、0.05〜1.5g/m2が好ましく、更に好ましい範囲は0.1〜0.7g/m2である。この範囲内で、印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、良好な汚れ防止、傷付き防止、指紋跡付着防止およびアブレーションカスの発生低減ができる。
【0121】
《光熱変換素材》
本発明に係る画像形成機能層、親水性層、親水性オーバーコート層及びその他に設けられる層には、光熱変換素材を含有することが好ましい。
【0122】
光熱変換素材としては赤外吸収色素または顔料を添加することができる。
(赤外吸収色素)
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号、特開平7−43851号、特開平7−102179号、特開2001−117201の各公報等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0123】
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0124】
グラファイトとしては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0125】
金属としては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0126】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。可視光域で黒色を呈している素材しては、黒色酸化鉄(Fe3O4)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号公報、特開平9−25126号公報、特開平9−237570号公報、特開平9−241529号公報、特開平10−231441号公報等に開示されている方法により製造することができる。本発明に用いることができる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号公報に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。これらの複合金属酸化物は平均1次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均1次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。従って、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均1次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。分散剤の種類は特に限定しないが、Si元素を含むSi系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0127】
素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材としては、例えばSbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0128】
特に好ましい光熱変換素材の態様としては、前記の赤外吸収色素および金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。
【0129】
これらの光熱変換素材の添加量としては、各層に対して0.1〜50質量%であり、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
【0130】
《可視画性の付与》
通常、印刷業界においては、印刷材料に画像形成した印刷版を印刷する前に、正しく画像が形成されているかを検査する検版という作業がある。検版をするためには、印刷前に形成された画像が版面上で見える性能、つまり可視画性が良いことが好ましい。本発明の印刷版材料は、現像処理なしに印刷可能なプロセスレス印刷版材料なので、露光することによる光または熱によって露光部分または未露光部分の光学濃度が変化することが好ましい。
【0131】
本発明において好ましく用いられる方法としては、露光することにより光学濃度が変化するシアニン系赤外線吸収色素を含有する方法、光酸発生剤とその酸により変色する化合物を用いる方法、ロイコ色素のような発色剤と顕色剤を組み合わせて用いる方法などがある。
【0132】
本発明において、光酸発生剤とは、露光によってルイス酸やブレンステッド酸を生成する化合物を意味する。
【0133】
光酸発生剤の具体例としては、ジアゾ化合物、オルトキノンジアジド化合物、ポリハロゲン化合物、オニウム塩化合物などが挙げられる。またこれらの構造をポリマーに組み込んだ化合物を用いることもできる。
【0134】
ジアゾ化合物としては、例えば、米国特許2,063,631号明細書、米国特許2,667,415号明細書などに開示されているジアゾニウム塩とアルドールやアセタールなどの反応性カルボニル基を含有する有機結合剤との反応生成物であるジフェニルアミン−p−ジアゾニウム塩とフォルムアルデヒド縮合生成物、またこれらの水溶性ジアゾニウム塩化合物を特開昭54−98613号公報に開示された方法により、BF4−、PF6−などのアニオン成分などで置換したハロゲン化ルイス酸塩、アリルジアゾニウム塩化合物などが挙げられる。
【0135】
オルトキノンジアジド化合物としては、1分子中に少なくともひとつのオルトキノンジアジド基を有する化合物で、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−エチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−イソブチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−α−ナフチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−ベンジルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−エチルアミド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルアミドなどが挙げられる。
【0136】
ポリハロゲン化合物としては、ポリハロゲンを含むアセトフェノン、例えばトリブロモアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、o−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、p−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ブロモ−トリブロモアセトフェノン、p−ブロモ−トリブロモアセトフェノンなど、また、ポリハロゲンを含むスルフォキサイド、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォキサイド、ジブロモメチル−トリブロモメチルスルフォキサイド、トリブロモメチル−フェニルスルフォキサイドなど、またポリハロゲンを含むスルフォン、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォン、トリクロロメチル−フェニルスルフォン、トリブロモメチル−フェニルスルフォン、トリクロロメチル−p−クロロフェニルスルフォン、トリブロモメチル−p−ニトロフェニルスルフォン2−トリクロロメチルベンゾチアゾールスルフォン、2,4−ジクロロフェニル−トリクロロメチルスルフォンなど、その他ポリハロゲンを含むピロン化合物、トリアジン化合物、オキサジアゾール化合物などが挙げられる。
【0137】
オニウム塩化合物およびその他の光酸発生剤としては、S.P.Papas,et al.,Polym.Photochem.,5,1,p104〜115(1984)に記載されているオニウム塩化合物、また色材、66(2)、p104〜115(1993)に紹介されている、Ph2I+/SbF6−等のジアリルヨードニウム塩化合物に代表される光酸発生剤、トリアリルスルフォニウム塩化合物、トリアリルセレノニウム塩化合物、ジアルキルフェナシルスルフォニウム塩化合物、ジアルキル−4−フェナシルスルフォニウム塩化合物、α−ヒドロキシメチルベンゾインスルフォン酸エステル、N−ヒドロキシイミノスルフォネート、α−スルフォニロキシケトン、β−スルフォニロキシケトン、鉄−アレーン錯体化合物(ベンゼン−シクロペンタジエニル−鉄(II)ヘキサフルオロフォスフェートなど)、o−ニトロベンジルシリルエーテル化合物、ベンゾイントシレート、トリ(ニトロベンジル)フォスフェートなどが挙げられる。
【0138】
その他に、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩、有機ハロゲン化合物、o−ニトロベンジル誘導体、イミノスルホネート及びジスルホン化合物等を挙げることができる。
【0139】
さらに具体的には、例えば、特開平9−244226号公報の化7〜化9に記載のT−1〜T−15の式で示される化合物を挙げることができる。
【0140】
これらの中、より好ましいものはトリハロメチル基を2個以上有するs−トリアジン化合物であり、特に好ましくはトリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。これら光酸発生剤の含有量は、印刷版材料の全固形分に対し、0.01〜40質量%、好ましくは0.1〜30質量%である。
【0141】
本発明において、酸によって変色する化合物としては、例えばジフェニルメタン、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0142】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH(保土ケ谷化学社製)、オイルブルー#603(オリエント化学工業社製)、オイルピンク#312(オリエント化学工業社製)、オイルレッド5B(オリエント化学工業社製)、オイルスカーレット#308(オリエント化学工業社製)、オイルレッドOG(オリエント化学工業社製)、オイルレッドRR(オリエント化学工業社製)、オイルグリーン#502(オリエント化学工業社製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土ケ谷化学社製)、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボステアリルアミノ−4−p−ジヒドロオキシエチルアミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等が挙げられる。
【0143】
また、酸で発色する化合物としてアリールアミン類の有機染料を用いることができる。この目的に適するアリールアミン類としては、第一級、第二級芳香族アミンのような単なるアリールアミンのほかにいわゆるロイコ色素も含まれ、これらの例としては次のようなものが挙げられる。
【0144】
ジフェニルアミン、ジベンジルアニリン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、p−トルイジン、4,4′−ビフェニルジアミン、o−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、o−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、アニリン、2,5−ジクロロアニリン、N−メチルジフェニルアミン、o−トルイジン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメタン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、1,2−ジアニリノエチレン、p,p′,p″ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、p,p′−テトラメチルジアミノトリフェニルメタン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメチルイミン、p,p′,p″−トリアミノ−o−メチルトリフェニルメタン、p,p′,p″−トリアミノトリフェニルカルビノール、p,p′−テトラメチルアミノジフェニル−4−アニリノナフチルメタン、p,p′,p″−トリアミノフェニルメタン、p,p′,p″−ヘキサプロピルトリアミノトリフェニルメタン等。
【0145】
本発明において、顕色剤としては、感熱記録体において電子受容体として使用される酸性物質がいずれも使用でき、例えば酸性白土カオリン、ゼオライト等の無機酸、芳香族カルボン酸、その無水物又はその金属塩類、有機スルホン酸、その他の有機酸、フェノール系化合物、該フェノール系化合物のメチロール化物、該フェノール系化合物の塩又は錯体等の有機系顕色剤などが挙げられ、なかでもフェノール系化合物のメチロール化物およびフェノール系化合物の塩(以下、特に断りのないかぎり錯塩も含む)が好ましい。
【0146】
これら顕色剤のうち、有機系顕色剤の具体例としては、フェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシアセトフェノン、2,2′−ジヒドロキシジフェニル、2,2′−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−イソプロピリデンジフェノール(別名ビスフェノールA)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4′エチレンビス(2−メチルフェノール)、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ヘプタン、4,4′−シクロヘキシリデンビス(2−イソプロピルフェノール)、4,4′−スルホニルジフェノール等のフェノール系化合物、該フェノール系化合物のメチロール化物、該フェノール系化合物の塩サリチル酸アニリド、ノボラック型フェノール樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
【0147】
本発明においては、顕色剤とともに用いられる発色剤としては、トリフェニルメタンラクトン型などのロイコ色素を用いることができる。
【0148】
このようなロイコ色素としては、例えば、クリスタルバイオレットラクトン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノフルオラン、マラカイトグリーンラクトン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルドール−3−イル)フタリド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなどが挙げられる。
【0149】
上記発色剤と顕色剤は、顕色剤/発色剤の質量比が0.1/1〜5/1となる範囲で通常用いるが、なかでも該質量比が0.5/1〜3/1となる範囲が好ましい。
【0150】
《画像形成機能層の反対側の構成層》
本発明においては、取り扱い性及び保管時の物性変化防止のために、支持体の画像形成機能層の反対側に少なくとも1層の構成層を有することが好ましい。好ましい構成層としては、下引き層、親水性結合剤含有層または疎水性結合剤含有層であり、結合剤含有層は下引き層の上に塗設されてもよい。
【0151】
下引き層としては、前述の支持体の下引き層が好ましい。
親水性結合剤としては、親水性のものなら特に限定はされないが、親水性構造単位としてヒドロキシル基を有する樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂(メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、キチン類、及びデンプン;エーテル結合を有する樹脂であるポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリビニルエーテル(PVE);アミド基又はアミド結合を有する樹脂であるポリアクリルアミド(PAAM)及びポリビニルピロリドン(PVP)等を挙げることができる。また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩及びゼラチン類;スルホン基を有するポリスチレンスルホン酸塩;アミノ基、イミノ基、第3アミン及び第4級アンモニウム塩を有するポリアリルアミン(PAA)、ポリエチレンイミン(PEI)、エポキシ化ポリアミド(EPAm)、ポリビニルピリジン及びゼラチン類を挙げることができる。
【0152】
疎水性結合剤は、結合剤として疎水性のものなら特に限定されないが、例えばα,β−エチレン性不飽和化合物に由来するポリマー、例えばポリ塩化ビニル、後−塩素化ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと塩化ビニリデンのコポリマー、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、ポリ酢酸ビニル及び部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、出発材料としてポリビニルアルコールから作られ、繰り返しビニルアルコール単位の一部のみがアルデヒドと反応していることができるポリビニルアセタール、好ましくはポリビニルブチラール、アクリロニトリルとアクリルアミドのコポリマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン及びポリエチレン又はそれらの混合物等が挙げられる。
【0153】
また疎水性結合剤は仕上がり印刷版材料表面が疎水性であれば、特開2002−258469号公報の段落0033〜0038に記載されている水分散系樹脂(ポリマーラテックス)から得られたものでもよい。
【0154】
また印刷機の版胴への取り付けやすさ、および、印刷中における印刷版の位置ずれによるカラー印刷での色ずれを防止するために、本発明において該構成層のうちの最表面層に平均粒径1μm以上20μm未満のマット剤を含有させることが好ましい。
【0155】
好ましく用いられるマット剤としては新モース硬度5以上の無機微粒子や有機マット剤があげられる。新モース硬度5以上の無機微粒子としては、例えば金属酸化物粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化クロム等)や金属炭化物粒子(炭化珪素等)、窒化ホウ素粒子、ダイアモンド粒子等が挙げられる。有機マット剤としては、例えばUSP2,322,037号明細書等に記載の澱粉、BEP625,451号やGBP981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、CHP330,158号明細書等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、USP3,079,257号等明細書に記載のポリアクリロニトリル、USP3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートがあげられる。
【0156】
これらマット剤の添加量は1m2あたり0.1g以上10g未満であることが好ましい。
【0157】
本発明においては、前記のマット剤の粒径、添加量および結合剤の量を調整することで、画像形成機能層の反対側の表面の表面粗さは、Ra値で、0.1μm以上2μm未満であることが好ましい。0.1μm未満では摩擦係数が高い等の理由で印刷版材料の搬送性に問題を生じる懸念があったり、印刷版材料の印刷機への取付に不具合を生じたり場合もある。また、2μm以上の粗い表面では、印刷版材料の製造時その他でロールに巻かれる際に反対面に形成された塗布層を傷つける懸念や、印刷版材料を版胴上に固定した際に、裏面側からの突き上げで印刷版材料表面が部分的に突出し、その部分に印圧が集中するために耐刷不良を生じる懸念もある。
【0158】
さらに、レーザー記録装置あるいはプロセスレス印刷機には、装置内部において印刷版の搬送を制御するためのセンサーを有しており、これらの制御を滞りなく行うために、本発明において、該構成層には、色素および顔料を含有させることが好ましい。色素及び顔料としては、前述の光熱変換素材に用いられる赤外吸収色素及び顔料が好ましく用いられる。また、更に、該構成層には公知の界面活性剤を含有させることができる。
【0159】
(支持体)
支持体としては、印刷版の基板として使用される公知の材料を使用することができる。例えば、金属板、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、上記材料を適宜貼り合わせた複合支持体等が挙げられる。支持体の厚さとしては、印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、通常50〜500μmのものが一般的に取り扱いやすい。
【0160】
金属板としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられるが、比重と剛性との関係から特にアルミニウムまたはアルミニウム合金(以下アルミニウムとする)が好ましい。アルミニウム板は、通常その表面に存在する圧延・巻取り時に使用されたオイルを除去するためにアルカリ、酸、溶剤等で脱脂した後に使用される。脱脂処理としては特にアルカリ水溶液による脱脂が好ましい。また、塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行うことが好ましい。例えば、ケイ酸塩やシランカップリング剤等のカップリング剤を含有する液に浸漬するか、液を塗布した後、十分な乾燥を行う方法が挙げられる。陽極酸化処理も易接着処理の一種と考えられ、使用することができる。また、陽極酸化処理と上記浸漬または塗布処理を組み合わせて使用することもできる。
【0161】
また、公知の方法で粗面化されたアルミニウム板や、それに上記の易接着処理を組み合わせた支持体も使用することができ、公知の方法で粗面化し陽極酸化処理を行い、必要に応じて表面処理を行った、いわゆるアルミ砂目を支持体として用いることもできる。
【0162】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。さらに特開平10−10676号に記載の方法で得られた120℃30秒での熱寸法変化率が0.001%以上0.04%以下の支持体を用いることが好ましい。
【0163】
これらプラスチックフィルムは塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。また、下塗り層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等が挙げられ、その中でも特開平7−191433号段落番号0044〜0116に記載の帯電防止下塗り層が好ましく用いられる。
【0164】
プラスチックフィルムの表面を粗面化した支持体も用いることができる。
また、複合支持体としては、上記材料を適宜貼り合わせて使用するが、塗布層を形成する前に貼り合わせても良く、また、塗布層を形成した後に貼り合わせても良く、印刷機に取り付ける直前に貼り合わせても良い。
【0165】
(包装材料)上記のように製造された印刷版材料は、所望のサイズに断裁した後に、後述する露光を行うまでの保管をするために包装される。長期の保管に耐えるためには、包装材料として、特開2000−206653号に記載の酸素透過度50ml/atm・m2・30℃・day以下の包装材料で包装されることが好ましい。またもう一つの好ましい形態として、特開2000−206653号に記載の水分透過度10g/atm・m2・25℃・day以下の包装材料で包装されることが好ましい。
【0166】
《露光》
本発明は、また印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像を形成した後に、画像形成機能層の非画像部を印刷機上で除去する工程を含む印刷方法も提供するものである。
【0167】
本発明の印刷版材料の画像形成は熱により行うことができるため、感熱プリンタで用いられるようなサーマルヘッドによっても画像形成が可能であるが、特にサーマルレーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0168】
本発明に関する露光に関し、より具体的には、赤外および/または近赤外領域で発光する、すなわち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0169】
本発明の走査露光に好適な装置としては、該半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0170】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式があげられる。
【0171】
本発明に関しては特に(3)の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)の露光方式が用いられる。
【0172】
このようにして画像形成がなされた印刷版材料は、現像処理を行うことなく印刷を行うことができる。画像形成後の印刷版材料をそのまま印刷機の版胴に取り付けるか、あるいは印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けた後に画像形成を行い、版胴を回転させながら水供給ローラーおよびまたはインク供給ローラーを印刷版材料に接触させることで画像形成機能層の非画像部を除去することが可能である。
【0173】
本発明の印刷版材料における上記の画像形成機能層非画像部の除去工程は、PS版を使用した通常の印刷シークエンスで行うことができるため、いわゆる機上現像処理による作業時間の延長の必要がないため、コストダウンにも有効である。
【0174】
さらに、本発明の印刷方法において、画像形成後から、印刷機上で印刷版材料表面と水供給ローラーまたはインク供給ローラーとが接触するまでに印刷版材料の表面を乾燥させる工程を有することが好ましい。本発明の印刷方法においては画像形成直後から画像強度が徐々に向上していくと考えられる。サーマルレーザーで一般的な外面ドラム方式(前述の(3)の方式)では、一般に露光開始から終了までに3分程度かかるため、露光終了時での露光開始部と終了部とでは画像強度が異なる懸念がある。乾燥工程を設けることで画像強度の差を問題ないレベルにまで縮めることができる。
【0175】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0176】
実施例1
《支持体の作製》
(支持体1:ポリエチレンテレフタレート支持体)
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い、固有粘度=0.66(dl/g)(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定後の平均膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、延伸温度は前段延伸が102℃で1.3倍に、後段延伸は110℃で2.6倍に縦延伸した。ついでテンターで120℃で4.5倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後4.8kg/mで巻き取った。このようにして厚さ190μmの二軸延伸PETフィルムを得た。この二軸延伸PETフィルムのTgは79℃であった。得られたPETフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。また、得られた支持体1の厚み分布は3%であった。
【0177】
《下引き済み支持体1の作製》
上記で得られた支持体1のフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、次いで、一方の面に下記下引き塗布液aを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液bを乾燥膜厚0.1μmになるように塗布し、各々180℃、4分間乾燥させた(下引き面A)。また反対側の面に下記下引き塗布液cを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液dを乾燥膜厚1.0μmになるように塗布し、それぞれ180℃、4分間乾燥させた(下引き面B)。塗布後の25℃、25%RHでの表面電気抵抗は108Ωであった。また、下引き面B側の表面の表面粗さを測定したところRa値で0.8μmであった。ついで、各々の下引き層表面に下記プラズマ処理条件でプラズマ処理を施した。
【0178】
成分d−1;スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重
合体からなるアニオン性高分子化合物
成分d−2;スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=4
0/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
成分d−3;スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からな
る高分子活性剤
【0179】
【化3】
【0180】
《プラズマ処理条件》
バッチ式の大気圧プラズマ処理装置(イーシー化学(株)製、AP−I−H−340)を用いて、高周波出力が4.5kW、周波数が5kHz、処理時間が5秒及びガス条件としてアルゴン、窒素及び水素の体積比をそれぞれ90%及び5%で、プラズマ処理を行った。
【0181】
《熱処理条件》
1.25m幅にスリットした後の支持体に対し、張力2hPaで180℃、1分間の低張力熱処理を実施した。
【0182】
《印刷版材料の作製》
親水性層を塗設する直前に、下引き済み支持体1に対し、100℃で30秒間熱処理を加えて乾燥させ、防湿シートでカバーをして空気中の湿度が入らないようにした。支持体試料の一部をサンプリングして水分率測定をしたところ、支持体1は0.2%であった。カバーをしたものについてはシートを除去後、すぐに塗布を行った。
【0183】
表1に示す親水性層1用塗布液(調製方法は下記に示す)、表2に示す親水性層2用塗布液(調製方法は下記に示す)を用いて下引き済み支持体1のA面上に順番にワイヤーバーを用いてそれぞれ乾燥付量が2.5g/m2、0.6g/m2になるように塗布し、120℃で3分間乾燥したのちに60℃で36時間の加熱処理を施した。その後、表3に示す画像形成機能層塗布液を、ワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.6g/m2になるように塗布して50℃で3分間乾燥した。その後に50℃で72時間のシーズニング処理を施した。
【0184】
《親水性層1用塗布液の調製》
表1に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表1に記載の組成で混合、濾過して親水性層1用塗布液を調製した。
【0185】
なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0186】
【表1】
【0187】
《親水性層2用塗布液の調製》
表2に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表2に記載の組成で混合、濾過して親水性層2用塗布液を調製した。なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0188】
【表2】
【0189】
《画像形成機能層塗布液の調製》
【0190】
【表3】
【0191】
【化4】
【0192】
上記で作製した印刷版材料を、73cm幅で32mの長さに切断して直径7.5cmのボール紙でできたコアに巻き付けロール形状の試料を作製した。さらに試料をAl203PET(12μm)/Ny(15μm)/CPP(70μm)の材料でできた150cm×2mの包装材料で巻き、端面をヒートシールして外気と遮断した。作製した包装された印刷版材料試料を、強制劣化条件として50℃、80%RHで7日間加温した。
【0193】
なお包装材料の酸素透過度は1.7ml/atm・m2・30℃・day、水分透過度は1.8g/atm・m2・25℃・dayであった。
【0194】
(a)赤外線レーザー方式による画像形成
上記の試料を露光サイズに合わせて切断した後に露光ドラムに巻付け固定した。露光には、波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、露光エネルギーを100〜350mJ/cm2まで50mJ毎に段階的に露光エネルギーを変化させ、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成し、印刷版試料を作製した。この試料を4枚準備した。
【0195】
《印刷版の評価》
この印刷版の画線部の特定部分に次のような組成の修正液を毛筆に含ませて被膜厚さが1.0〜5.0μmになるように塗布し、ドライヤーで乾燥した。次いで下記に示す印刷テストを実施した。
【0196】
下記の印刷方法により、印刷版としての諸特性を評価した。
【0197】
《印刷方法》
印刷装置として、ハイデルベルグ社スピードマスターSM74を用いて、コート紙と、湿し水としてアストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量%溶液、インクとして、東洋インク社製のトーヨーキングハイエコーM紅を使用して印刷を行った。印刷開始のシークエンスはPS版の印刷シークエンスで行い、特別な機上現像操作は行わなかった。印刷後に版面を観察したところ、本発明に係る材料の非画像部は除去されていた。
【0198】
《汚れ回復性の評価》
1000枚印刷後に、水の供給を止めてインクのみ1分間供給して全面にインクをつけた。その後水の供給を再開し、画像を修正液で修正した部分に着目し、何枚目に正常な印刷物が得られるかを評価した。枚数が少ないほど汚れ回復性が優れている。
【0199】
《耐刷性の評価》
画像を修正液で修正した部分にインク汚れが発生する印刷枚数を求めた(印刷は2万枚まで行った)。印刷枚数の多いほど優れている。
【0200】
以上により得られた結果を表4に示す。
【0201】
【表4】
【0202】
表4から本発明の修正液は、汚れ回復性と耐刷性が優れていることがわかる。
実施例2
《印刷版材料の作製》
実施例1で作製した印刷版材料と同様にして画像形成機能層を塗布した。さらに画像形成機能層の上に下記オーバーコート層をワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.4g/m2となるように塗布し、50℃で3分間乾燥した。そしてさらに画像形成機能層の反対側に書きバック層をワイヤーバーを用いて乾燥付量が1.5g/m2になるように塗布し、50℃で20分間乾燥して印刷版材料試料201を作製した。さらに50℃で24時間のシーズニング処理を施し、その後23℃相対湿度20%で24時間調湿した。
【0203】
またバック層の表面の表面粗さを測定したところ、Ra値で0.9μmであった。
【0204】
実施例1と同様にして評価を行った。なお実施例2での耐刷性の評価は、ベタ部にかすれが出る印刷枚数を求めた(印刷は5万枚まで行った)。以上により得られた結果を表5に示す。
【0205】
【表5】
【0206】
表5から本発明の修正液は、印刷版材料が異なっても汚れ回復性と耐刷性が優れていることがわかる。
【0207】
実施例3
(アルミ支持体2の作製)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を、50℃の1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/m2になるように溶解処理を行い水洗した後、25℃の0.1質量%塩酸水溶液中に30秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。
【0208】
次いで、このアルミニウム板を塩酸10g/L、アルミを0.5g/L含有する電解液により、正弦波の交流を用いて、ピーク電流密度が50A/dm2の条件で電解粗面化処理を行なった。この際、電極とアルミニウム板表面との距離は10mmとした。電解粗面化処理は12回に分割して行い、一回の処理電気量(陽極時)を40C/dm2とし、合計で480C/dm2の処理電気量(陽極時)とした。また、各回の粗面化処理の間に4秒間の休止時間を設けた。
【0209】
電解粗面化した後、50℃に保たれた1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、粗面化された面のスマットを含めた溶解量が2g/m2になるようにエッチング、次いで水洗した後、25℃に保たれた10%硫酸水溶液中に10秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。次いで、20%硫酸水溶液中で、20Vの定電圧条件で電気量が150C/dm2となるように陽極酸化処理を行い、さらに水洗した。
【0210】
次いで、水洗後の表面水をスクイーズした後、70℃に保たれた0.5質量%の3号ケイ酸ナトリウム水溶液に30秒間浸漬し、水洗を行った後に80℃で5分間乾燥し、アルミ支持体2を得た。
【0211】
《印刷版材料の作製》
〔塗布液の調製〕
(熱融着層1塗布液の調製)
下記の各添加剤を順次混合して、熱融着層1塗布液を調製した。
【0212】
上記熱融着層1塗布液の固形分濃度は、7.0質量%である。
【0213】
〔アルミ支持体を有する印刷版材料の作製〕
前記アルミ支持体2上に、上記調製した熱融着層1塗布液を、乾燥付量0.7g/m2となるように塗布してを作製した。なお、各熱融着層の乾燥条件は55℃で3分間行い、次いで40℃で72時間のエイジング処理を行った。
【0214】
実施例1と同様にして評価を行った。耐刷性の評価は10万枚まで印刷した。以上により得られた結果を表6に示す。
【0215】
【表6】
【0216】
表6から本発明の修正液は、アルミ支持体を有する印刷版材料でも汚れ回復性と耐刷性が優れていることがわかる。
【0217】
実施例4
実施例2で作製した印刷版材料試料201を用い、実施例1の方法で画像を作製し印刷版試料401を得た。得られた試料401の画像に実施例1の修正液4を毛筆に含ませて被膜厚さが1.0〜5.0μmになるように塗布し、ドライヤーで乾燥したところ、印刷版表面の画像は完全に消去された。画像を消去した試料401を用い実施例1と同様に印刷テストを実施し、実施例1と同様に評価し、得られた結果を表7に示す。
【0218】
【表7】
【0219】
表7から本発明の修正液は、画像を完全に消去でき、その後に印刷しても汚れ回復性と耐刷性が優れていることがわかる。
【0220】
【発明の効果】
本発明により、汚れ回復性と耐刷性に優れた印刷版画像の修正液と消去液が得られた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷版画像の修正方法、消去方法及び印刷方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷データのデジタル化に伴い、安価で、取扱いが容易で、PS版と同等の印刷適性を有したCTP(コンピューター・トゥー・プレート)技術が求められている。
【0003】
近年、地球環境への負荷の低減のために、特別な薬剤による現像液処理が不要な、いわゆるプロセスレスCTP印刷版への期待が高まっている。
【0004】
プロセスレス印刷版の画像形成方式のひとつとして有力なのが、赤外線レーザー記録であり、その中で熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有する印刷版材料を機上現像するタイプが知られている。
【0005】
熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有する印刷版材料を機上現像するタイプとしては、支持体上に熱可塑性微粒子を含む画像形成機能層を用いた構成で、高出力の赤外レーザーで露光加熱することで画像を形成させ、その後、現像液などの化学処理することなしに印刷機上でインキ及び湿し水をつけて不要部分を除去することで印刷可能になる、いわゆるプロセスレス印刷版の技術(例えば、特許文献1、2参照。)が知られている。
【0006】
これらの印刷版を用いて印刷を行う場合には、製版時に生じたスクラッチ傷やピンホールを消去修正する事が必要であり、また場合によっては画像の一部を消去修正することが必要な場合もある。
【0007】
このような目的のために従来からPS版などの印刷版の修正液として様々な技術が提案されてきた。その中でも印刷版材料を機上現像するタイプとして用いることができるものとしては、ゾルゲル反応性を有する結合剤を含有する修正液を用いた方法(例えば、特許文献3参照。)が知られている。
【0008】
しかしながら、これらの修正方法では、インキと水のバランスが崩れてインキ着肉汚れが発生した場合に水を増やしても汚れが回復しない、いわゆる汚れ回復性が遅いという問題があり、修正部分の耐刷性は不十分という性能であった。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−123387号公報 (特許請求の範囲)
【0010】
【特許文献2】
特開平9−123388号公報 (特許請求の範囲)
【0011】
【特許文献3】
特開2001−350274号公報 (特許請求の範囲)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、汚れ回復性と耐刷性に優れた印刷版画像の修正方法と消去方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0014】
1.支持体上に少なくとも1層の熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正する際、画像部分にシリコーンゴム溶液を塗布して修正することを特徴とする印刷版画像の修正方法。
【0015】
2.支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正することを特徴とする前記1記載の印刷版画像の修正方法。
【0016】
3.親水性層の少なくとも1層が多孔質構造を有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正することを特徴とする前記2記載の印刷版画像の修正方法。
【0017】
4.支持体上のいずれか1層に光熱変換素材を含有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項記載の印刷版画像の修正方法。
【0018】
5.印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の印刷版画像の修正方法。
【0019】
6.印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像形成した後に湿式現像処理をせずに印刷版を作製し、形成した画像を修正することを特徴とする前記5記載の印刷版画像の修正方法。
【0020】
7.印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像を形成した後に、画像形成機能層の非画像部を印刷機上で除去し、さらに該画像部分にシリコーンゴム溶液を塗布して修正した後印刷することを特徴とする印刷方法。
【0021】
8.支持体上に少なくとも1層の熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像の一部を消去する際、画像部分にシリコーンゴム溶液を塗布して消去することを特徴とする印刷版画像の消去方法。
【0022】
本発明を更に詳しく説明する。
《シリコーンゴム溶液》
本発明で修正液又は消去液として使用されるシリコーンゴム溶液は線状ジオルガノポリシロキサンに必要に応じて架橋剤および触媒を添加したシリコーンゴム組成物を適当な溶媒で希釈したものである。
【0023】
ここで言う線状ジオルガノポリシロキサンは下記一般式(I)で示されるような繰り返し単位を有するポリマーでR1およびR2は炭素数1〜10のアルキル、ビニル、アリール基であり、適当な置換基を有していても良い。R1およびR2は同一でも異なっていても良く、またポリマー主鎖に沿って繰り返し単位が異なっていても良い。一般的には、R1およびR2は全体の60%以上がメチル基であり、40%以下がビニル基、フェニル基、あるいはハロゲン化ビニル基、ハロゲン化フェニル基などであるものが好ましい。
【0024】
【化1】
【0025】
架橋剤としては、線状ジオルガノポリシロキサンの有する官能基に依存するが、縮合あるいは付加反応を起こしうる官能基を有する化合物、また過酸化物などが挙げられる。触媒は必要に応じて金属の有機カルボン酸塩などが使用される。
【0026】
このシリコーンゴム溶液は次のような構成が接着性、耐久性の点から好ましい。
(a)両末端に各1個以上の官能基を有する線状ジオルガノポリシロキサン
(b)官能基を有しないか、あるいは片末端のみに1個以上の官能基を有する線状ジオルガノポリシロキサン
(c)前記官能基と縮合あるいは付加反応を起こしうる官能基を複数個有する架橋剤
(d)前記架橋反応に対する触媒
ここで(a)成分または(b)成分として用いられる線状ジオルガノポリシロキサンとは、下記一般式(II)で表される物質である。
【0027】
【化2】
【0028】
ここで、R′およびR″は炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アリール基であり、適当な置換基を有してもよい。X11、X12、X13、X21、X22およびX23は、ハロゲン、H、OH、NR3R4、OCOR5、OR6(R3〜R6はアルキル基または置換アルキル基)の官能基またはR′、R″を表す。
【0029】
nは50〜10000を表す。
そして(a)成分に言う両末端に各1個以上の官能基を有する線状ジオルガノポリシロキサンとは、上記一般式(II)においてX11、X12およびX13とX21、X22およびX23とが同時にR′またはR″でない場合である。(b)成分に言う官能基を有しないか、あるいは片末端のみに1個以上の官能基を有する線状ジオルガノポリシロキサンとは、X11、X12、X13、X21、X22およびX23が同時にR′またはR″の場合、あるいはX11、X12およびX13が同時にR′またはR″でX21、X22およびX23が前記官能基を表す場合、X11、X12およびX13が前記官能基でX21、X22およびX23が同時にR′またはR″である場合である。
【0030】
これらに於いてR′、R″は同一でも異なっていてもよく、またポリマー鎖に沿って繰り返し単位が異なっていても良い。一般的にはR′、R″の60%以上がメチル基であり、40%以下がビニル基、フェニル基であるものが望ましい。X11、X12、X13、X21、X22、X23は同一でも異なっていても良い。(a)(b)成分のジオルガノポリシロキサンはそれぞれ1種でも、また異なった2種以上を混合しても良い。
【0031】
(c)成分の架橋剤は、一般式(II)における官能基X11、X12、X13、X21、X22、X23(あるいはこれらが加水分解等の変化を起こして新たに生ずる官能基)と縮合あるいは付加反応を起こしうる官能基を複数個、好ましくは3個以上有する珪素化合物である。これらのうちでも特に一般式(III)で表されるような構造のもの、あるいはその縮合物が好ましい。
【0032】
一般式(III) XmSiR4−m
ただし、mは2≦m≦4の整数
ここでXおよびRは、一般式(II)において説明した、R′、R″と同じく炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アリール基であり適当な置換基を有していても良い。この架橋剤は1種を使用してもよいし、また異なった2種以上を混合して用いても良い。
【0033】
(d)成分の触媒とは、(a)および(b)成分の物質に含まれる官能基と(c)成分の物質に含まれる官能基との縮合、あるいは付加反応を促進する物質であり、具体的には錫、亜鉛、鉛などの金属の有機カルボン酸塩、たとえば酢酸ジブチル錫、ラウリン酸ジブチル錫、オクテン酸錫、オクテン酸亜鉛、ナフテン酸鉛など、あるいは塩化白金酸の如き物質が用いられる。
【0034】
本発明において用いられる修正液又は消去液の好ましい組成比は次の如くである。
(1)ジオルガノポリシロキサン 100質量部
(2)架橋剤 3〜100質量部
(3)触媒 0.1〜50質量部
ここにいうジオルガノポリシロキサン成分とは、(a)成分から選ばれる1種以上と、(b)成分から選ばれる1種以上の混合物である。(a)成分(b)成分との比率は質量比で(95:5)〜(10:90)の範囲で、特に(80:20)〜(20:80)の範囲が好ましい。更に、シリコーンゴム薄膜の強度を向上させるために、シリコーンゴムに各種の充填材を混合することができる。また塗膜を着色して見やすくするために、染料、顔料などの着色剤、さらには他の種種の添加剤を混合しても良い。
【0035】
上記の修正液又は消去液を形成する際の溶媒としては、パラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、シクロパラフィン系炭化水素、芳香族炭化水素、カルボン酸アルキルエステル類、エーテル類、ケトン類、ハロゲン化炭化水素等、さらにはこれらの混合物などが有利に用いられるが、塗工性等の点よりパラフィン系あるいはイソパラフィン系炭化水素を主成分とするのが特に好ましい。このような炭化水素類の代表的な例としては石油の分留品及びその改質品などがある。
【0036】
このような修正液又は消去液の中でも特にジオルガノポリシロキサン(a)成分として実質的に両末端が水酸基の線状ジオルガノポリシロキサン、及び(b)成分として実質的に官能基を有しない線状ジオルガノポリシロキサン(いずれも数平均分子量5,000〜1,000,000)の混合物、(c)成分の架橋剤として下記一般式(IV)で示されるようなトリアセトキシシランもしくはテトラアセトキシシランあるいはそれらの縮合物を用いたものが好ましく、良好な硬化性、接着性および溶液の保存安定性を示す。
【0037】
一般式(IV) R4−pSi(OCOCH3)p
ただし、pは3または4
ここにRは一般式(III)説明したものと同様、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アリール基であり適当な置換基を有していても良い。かかる組成を用いた場合、(d)成分の触媒としては酢酸ジブチル錫、ラウリン酸ジブチル錫、オクテン酸錫などの錫化合物を用いることが特に好ましい。
【0038】
上記の実質的に官能基を有しない線状ジオルガノポリシロキサンとしては、例えばSH−200(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株))、KF−96H(信越化学(株))等の市販品があり、それぞれ各種の粘度の製品が市販されているが、特に粘度1,000〜100,000センチストークス(1,000〜100,000×10−6平方メートル毎秒)の比較的高粘度のものを用いるのが好ましい。
【0039】
これらの好ましい混合割合は、ジオルガノポリシロキサン成分100質量部(水酸基を有する成分と有しない成分の質量比95:5〜10:90、好ましくは80:20〜20:80)に対し一般式(IV)で示されるトリアセトキシシランもしくはテトラアセトキシシラン(あるいはその縮合物)5〜100質量部、更に好ましくは10〜50質量部、触媒0.1〜50質量部、更に好ましくは0.2〜20質量部である。トリアセトキシシランもしくはテトラアセトキシシランの添加量が少なすぎると十分な接着力が得られず、かつ溶液の保存安定性が低下し、多すぎると十分なインキ反発性が得られない弊害が生ずる。また触媒は少なすぎると硬化が遅くなり、多すぎるとインキ反発性が低下したり、また版を長時間保存するとき塗膜が経時的に劣化する場合がある。
【0040】
溶液の濃度は用いるジオルガノポリシロキサンの分子量、溶媒の種類、塗布方法にもよるが一般に5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%である。うすすぎても濃すぎても塗布しにくく、適当な膜厚のシリコーンゴム塗膜が得られない。
【0041】
シリコーンゴム溶液の溶媒としては、パラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、シクロパラフィン系炭化水素および芳香族炭化水素溶媒およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。このような炭化水素溶媒の代表的な例としては、石油の分留品およびその改質品などがあり、具体的には、アイソパ−E、アイソパ−G、アイソパ−H(イソパラフィン系炭化水素、エクソン化学(株)製)などが挙げられる。
【0042】
これらのシリコーン溶液の組成は特開2001−324820号にも記載があるが、これは直描型水なし平版印刷版に用いられる修正液又は消去液であって、熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有する印刷版材料を画像形成して作製した印刷版の修正液又は消去液として顕著な効果が得られることは当業者にとっては全く予想ができないことであった。
【0043】
《画像形成機能層》
本発明に係る画像形成機能層は、熱溶融性または熱融着性微粒子を含有する。具体的には、以下のような素材を含有させることができることが好ましい。
【0044】
(熱溶融性微粒子)
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上150℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が150℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0045】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800〜10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0046】
これらの中でも、ポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。又、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0047】
又、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な構造を有する親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0048】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0049】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0050】
(熱融着性微粒子)
本発明に係わる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、高分子重合体の質量平均分子量(Mw)は10,000〜1,000,000の範囲であることが好ましい。
【0051】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0052】
高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法又は気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水又は水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。又、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0053】
又、熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱融着性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した場合には、熱融着性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱融着性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0054】
又、熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0055】
構成層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0056】
また本発明に係る画像形成機能層は、後述する光熱変換素材を含有させることも好ましい実施態様である。
【0057】
画像形成機能層の乾燥塗布質量は好ましくは0.10〜1.50g/m2、より好ましくは0.15〜1.00g/m2である。
【0058】
(水溶性樹脂)
本発明において画像形成機能層は水溶性樹脂を含有することが特徴である。
【0059】
かかる水溶性樹脂は、親水性の天然高分子及び合成高分子から選ばれる。本発明に好ましく用いられる水溶性樹脂の具体例としては、天然高分子では、アラビアガム、水溶性大豆多糖類、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ等)、その変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等、合成高分子では、ポリビニルアルコール(好ましくは鹸化度70モル%以上のもの)、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリアクリル酸共重合体、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリアクリルアミド、その共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、その共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩またはアミン塩等を挙げることができる。また、目的に応じて、これらを二種以上混合して用いることもできる。しかし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0060】
(架橋剤)
本発明において、印刷時の傷つき防止および画像強度を向上させるために、画像形成機能層に前記水溶性樹脂に加え水溶性樹脂を熱架橋しうる架橋剤を含有することが好ましい。
【0061】
水溶性樹脂を熱架橋しうる架橋剤としては、架橋性を有する多官能性化合物が挙げられ、エポキシ化合物、ポリアミン化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、シラン化合物、チタネート化合物、アルデヒド化合物、多価金属塩化合物、ヒドラジン等が挙げられる。
【0062】
エポキシ化合物の具体例としては、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール類またはそれらの水素添加物とエピハロヒドリンとのポリ縮合物等が挙げられる。また上記のうち水溶性エポキシ化合物は水溶性樹脂としても用いることができる。この場合の架橋剤は、架橋剤ハンドブック(大成社 昭和56年10月20日 初版第1刷)の352〜376頁に記載の化合物が好ましく用いることができる。
【0063】
ポリアミン化合物の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン等が挙げられる。
【0064】
イソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、液状ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、またポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物等が挙げられる。
【0065】
シラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。
【0066】
チタネート化合物としては、テトラエチルオルトシリケート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリアクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピル(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルトリインステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリジシルホスファイト)チタネート、テトラ(2、2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。
【0067】
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。
【0068】
多価金属塩化合物としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、コバルト、マンガン、ニッケル等の金属の水溶性塩が挙げられる。
【0069】
上記で挙げた架橋剤の中でも、特に、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、シラン化合物、アルデヒド化合物、多価金属塩化合物が好ましく用いられる。
【0070】
これらの架橋剤は単独または2種以上を混合して使用することが可能である。これらの架橋剤のうち特に好ましい架橋剤は、水溶性の架橋剤であるが、非水溶性のものは分散剤によって水に分散して使用することができる。
【0071】
特に好ましい水溶性樹脂と架橋剤の組み合わせとしては、カルボン酸含有水溶性樹脂/カルボジイミド化合物、カルボン酸含有水溶性樹脂/エポキシ化合物、水酸基含有樹脂/ジアルデヒド類、水酸基含有樹脂/イソシアネート化合物が挙げられる。架橋剤の好適な添加量は、水溶性樹脂の1〜20質量%である。
【0072】
〈親水性層〉
本発明の印刷版材料は、画像形成機能層を有し、かつ支持体と該画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を有する構成をとっているが、ここで、本発明に係る、支持体と該画像形成機能層の間に設けられる親水性層について説明する。親水性層とは、本発明の印刷版材料を印刷版として用いる際に、インクに対する親和性が低く、且つ、水に対する親和性の高い層として定義される。
【0073】
請求項3に記載のように、本発明の印刷版材料は、支持体上に設けられた親水性層の少なくとも1層が、多孔質構造を有することが好ましい。前記多孔質構造を有する親水性層を形成するためには、下記に記載の親水性マトリクスを形成する素材が好ましく用いられる。
【0074】
(金属酸化物)
親水性マトリクスを形成する素材としては、金属酸化物が好ましい。金属酸化物としては、金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良く、平均粒径としては、3〜100nmの範囲が好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。また、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0075】
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0076】
(コロイダルシリカ)
中でも、コロイダルシリカが特に好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。コロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、更に、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0077】
ネックレス状コロイダルシリカとは、一次粒子径がnmのオーダーである球状シリカの水分散系の総称であり、一次粒粒子径が10〜50nmの球状コロイダルシリカが50〜400nmの長さに結合した「パールネックレス状」のコロイダルシリカを意味する。
【0078】
パールネックレス状(即ち真珠ネックレス状)とは、コロイダルシリカのシリカ粒子が連なって結合した状態のイメージが、真珠ネックレスの様な形状をしていることを意味している。
【0079】
ネックレス状コロイダルシリカを構成するシリカ粒子同士の結合は、シリカ粒子表面に存在する−SiOH基が脱水結合した−Si−O−Si−と推定される。ネックレス状のコロイダルシリカとしては、具体的には日産化学工業社製の「スノーテックス−PS」シリーズなどが挙げられ、製品名としては「スノーテックス−PS−S(連結した状態の平均粒子径は110nm程度)」、「スノーテックス−PS−M(連結した状態の平均粒子径は120nm程度)」及び「スノーテックス−PS−L(連結した状態の平均粒子径は170nm程度)」があり、これらに各々対応する酸性の製品が「スノーテックス−PS−S−O」、「スノーテックス−PS−M−O」及び「スノーテックス−PS−L−O」である。
【0080】
ネックレス状コロイダルシリカを添加することにより、層の多孔性を確保しつつ、強度を維持することが可能となり、親水性層マトリクスの多孔質化材として好ましく使用できる。これらの中でも、アルカリ性である「スノーテックスPS−S」、「スノーテックスPS−M」、「スノーテックスPS−L」を用いると、親水性層の強度が向上し、また、印刷枚数が多い場合でも地汚れの発生が抑制され、特に好ましい。
【0081】
また、コロイダルシリカは、粒子径が小さいほど結合力が強くなることが知られており、本発明では平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカを用いることが好ましく、更に好ましくは、3〜15nmのものである。
【0082】
前述のようにコロイダルシリカの中ではアルカリ性のものが、地汚れ発生を抑制する効果が高く特に好ましい。平均粒径がこの範囲にあるアルカリ性のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学社製の「スノーテックス−20(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−30(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−40(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−N(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−S(粒子径8〜11nm)」、「スノーテックス−XS(粒子径4〜6nm)」が挙げられる。
【0083】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカは、前述のネックレス状コロイダルシリカと併用することで、形成する層の多孔質性を維持しながら、強度をさらに向上させることが可能となり、特に好ましい。
【0084】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカ/ネックレス状コロイダルシリカの比率は95/5〜5/95の範囲が好ましく、更に好ましくは、70/30〜20/80の範囲がより好ましく、60/40〜30/70の範囲が更に好ましい。
【0085】
(多孔質金属酸化物粒子)
本発明において、親水性層マトリクス構造の多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を含有することができる。多孔質金属酸化物粒子としては、以下に記載の多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子または、ゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0086】
(多孔質シリカ多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子)
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法または、乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0087】
多孔質アルミノシリケート粒子は、例えば、特開平10−71764号公報に記載されている方法により製造される。即ち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。また、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0088】
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。細孔容積は、塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。逆に、細孔容積が0.5ml/g未満の場合には、印刷性能がやや不十分となる場合がある。
【0089】
(細孔容積の測定方法)
ここで、上記の細孔容積の測定は、オートソーブ−1(カンタクローム社製)を使用し、定容法を用いた窒素吸着測定により、粉体の空隙が窒素により、充填されていると仮定して相対圧力が0.998における窒素吸着量から算出されるものである。
【0090】
(ゼオライト粒子)
ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3nm〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
【0091】
(M1、(M2)0.5)m(AlmSinO2)(m+n)・xH2O
ここで、M1、M2は交換性のカチオンであって、M1はLi+、Na+、K+、Tl+、Me4N+(TMA)、Et4N+(TEA)、Pr4N+(TPA)、C7H15N2+、C8H16N+等であり、M2はCa2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、C8H18N2 2+等である。また、n≧mであり、m/nの値つまりはAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、従って親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、更に好ましくは0.8〜1.0である。xは整数を表す。
【0092】
本発明で使用するゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、又粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、例えばゼオライトA:Na12(Al12Si12O48)・27H2O;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106O384)・264H2O;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136O384)・250H2O;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
【0093】
Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで、親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。また、指紋跡の汚れも大きく改善される。Al/Si比率が0.4未満では親水性が不充分であり、上記性能の改善効果が小さくなる。
【0094】
また、親水層を構成する親水性層マトリクス構造は、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。該層状鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。また、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性のものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0095】
また、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0096】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。また、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。また、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不充分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
【0097】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0098】
親水層を構成する親水性層マトリクスにはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0099】
また、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0100】
また、本発明では、水溶性樹脂を含有してもよい。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
【0101】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
【0102】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜20μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層マトリクスに適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷適性を有する構造を得ることができ、好ましい。
【0103】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、アルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0104】
本発明において、親水性マトリクス構造部に添加される水溶性樹脂は、少なくともその一部が水溶性の状態のまま、水に溶出可能な状態で存在することが好ましい。水溶性の素材であっても、架橋剤等によって架橋し、水に不溶の状態になると、その親水性は低下して印刷適性を劣化させる懸念があるためである。また、さらにカチオン性樹脂を含有しても良く、カチオン性樹脂としては、例えば、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。カチオン性樹脂は、微粒子状の形態で添加しても良く、例えば、特開平6−161101号公報に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
【0105】
また、本発明に係る親水性層を塗設する為に用いられる塗布液には、塗布性改善等の目的で水溶性の界面活性剤を含有させることができ、Si系または、F系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は、親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。
【0106】
また、親水性層には、リン酸塩を含むことができる。本発明では、親水性層の塗布液がアルカリ性であることが好ましいため、リン酸塩としてはリン酸三ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムとして添加することが好ましい。リン酸塩を添加することで、印刷時の網の目開きを改善する効果が得られる。リン酸塩の添加量としては、水和物を除いた有効量として、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%が更に好ましい。
【0107】
また、後述する光熱変換素材を含有することもできる。光熱変換素材としては、粒子状素材の場合は粒径が1μm未満であることが好ましい。
【0108】
(粒径が1μm以上の無機粒子もしくは無機素材で被覆された粒子)
本発明で用いることのできる無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができるが、塗布液中での沈降を抑制するために、多孔質な金属酸化物粒子を用いることが好ましい。多孔質な金属酸化物粒子としては、前述の多孔質シリカ粒子や多孔質アルミノシリケート粒子を好ましく用いることができる。
【0109】
また、無機素材で被覆された粒子としては、例えば、ポリメチルメタアクリレートやポリスチレンといった有機粒子を芯材とし、芯材粒子よりも粒径の小さな無機粒子で被覆した粒子が挙げられる。無機粒子の粒径としては、芯材粒子の1/10〜1/100程度であることが好ましい。また、無機粒子としては、同様にシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができる。被覆方法としては、種々の公知の方法を用いることができるが、ハイブリダイザのような空気中で芯材粒子と被覆材粒子とを高速に衝突させて芯材粒子表面に被覆材粒子を食い込ませて固定、被覆する乾式の被覆方法を好ましく用いることができる。
【0110】
また、有機粒子の芯材を金属メッキした粒子も用いることができる。このような粒子としては、例えば、樹脂粒子に金メッキを施した積水化学工業社製の「ミクロパールAU」等が挙げられる。
【0111】
粒径は、1〜10μmが好ましく、更に好ましくは、1.5〜8μmであり、特に好ましくは、2〜6μmである。
【0112】
本発明では、粒径が1μm以上の粒子の添加量としては、親水性層全体の1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。親水性層全体としては、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0113】
《親水性オーバーコート層》
本発明において、取り扱い時の傷つき防止のために、画像形成機能層の上層に親水性オーバーコート層を有することが好ましい。親水性オーバーコート層は画像形成機能層のすぐ上の層であってもよいし、また画像形成機能層と親水性オーバーコート層の間に中間層が設けられてもよい。親水性オーバーコート層は印刷機上で除去可能であることが好ましい。
【0114】
本発明において親水性オーバーコート層は、水溶性樹脂又は水溶性樹脂を部分的に架橋した水膨潤性樹脂を含有することが好ましい。かかる水溶性樹脂は、画像形成機能層に含有されるものが用いられる。
【0115】
本発明においては、親水性オーバーコート層は、後述する光熱変換素材を含有することができる。
【0116】
またレーザー記録装置あるいは印刷機に本発明の印刷版を装着するときの傷つき防止のために、本発明においてオーバーコート層に平均粒径1μm以上20μm未満のマット剤を含有させることが好ましい。
【0117】
好ましく用いられるマット剤としては新モース硬度5以上の無機微粒子や有機マット剤があげられる。新モース硬度5以上の無機微粒子としては、例えば金属酸化物粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化クロム等)や金属炭化物粒子(炭化珪素等)、窒化ホウ素粒子、ダイアモンド粒子等が挙げられる。有機マット剤としては、例えば米国特許第2,322,037号明細書等に記載の澱粉、BE625,451号やGB981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、CH330,158号明細書等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等明細書に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートがあげられる。
【0118】
これらマット剤の添加量は1m2あたり0.1g以上10g未満であることが好ましい。
【0119】
その他、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。この様な非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることができる。上記非イオン界面活性剤のオーバーコート層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
【0120】
本発明において、オーバーコート層の乾燥塗布量は、0.05〜1.5g/m2が好ましく、更に好ましい範囲は0.1〜0.7g/m2である。この範囲内で、印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、良好な汚れ防止、傷付き防止、指紋跡付着防止およびアブレーションカスの発生低減ができる。
【0121】
《光熱変換素材》
本発明に係る画像形成機能層、親水性層、親水性オーバーコート層及びその他に設けられる層には、光熱変換素材を含有することが好ましい。
【0122】
光熱変換素材としては赤外吸収色素または顔料を添加することができる。
(赤外吸収色素)
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号、特開平7−43851号、特開平7−102179号、特開2001−117201の各公報等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0123】
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0124】
グラファイトとしては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0125】
金属としては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0126】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。可視光域で黒色を呈している素材しては、黒色酸化鉄(Fe3O4)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号公報、特開平9−25126号公報、特開平9−237570号公報、特開平9−241529号公報、特開平10−231441号公報等に開示されている方法により製造することができる。本発明に用いることができる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号公報に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。これらの複合金属酸化物は平均1次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均1次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。従って、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均1次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。分散剤の種類は特に限定しないが、Si元素を含むSi系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0127】
素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材としては、例えばSbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0128】
特に好ましい光熱変換素材の態様としては、前記の赤外吸収色素および金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。
【0129】
これらの光熱変換素材の添加量としては、各層に対して0.1〜50質量%であり、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
【0130】
《可視画性の付与》
通常、印刷業界においては、印刷材料に画像形成した印刷版を印刷する前に、正しく画像が形成されているかを検査する検版という作業がある。検版をするためには、印刷前に形成された画像が版面上で見える性能、つまり可視画性が良いことが好ましい。本発明の印刷版材料は、現像処理なしに印刷可能なプロセスレス印刷版材料なので、露光することによる光または熱によって露光部分または未露光部分の光学濃度が変化することが好ましい。
【0131】
本発明において好ましく用いられる方法としては、露光することにより光学濃度が変化するシアニン系赤外線吸収色素を含有する方法、光酸発生剤とその酸により変色する化合物を用いる方法、ロイコ色素のような発色剤と顕色剤を組み合わせて用いる方法などがある。
【0132】
本発明において、光酸発生剤とは、露光によってルイス酸やブレンステッド酸を生成する化合物を意味する。
【0133】
光酸発生剤の具体例としては、ジアゾ化合物、オルトキノンジアジド化合物、ポリハロゲン化合物、オニウム塩化合物などが挙げられる。またこれらの構造をポリマーに組み込んだ化合物を用いることもできる。
【0134】
ジアゾ化合物としては、例えば、米国特許2,063,631号明細書、米国特許2,667,415号明細書などに開示されているジアゾニウム塩とアルドールやアセタールなどの反応性カルボニル基を含有する有機結合剤との反応生成物であるジフェニルアミン−p−ジアゾニウム塩とフォルムアルデヒド縮合生成物、またこれらの水溶性ジアゾニウム塩化合物を特開昭54−98613号公報に開示された方法により、BF4−、PF6−などのアニオン成分などで置換したハロゲン化ルイス酸塩、アリルジアゾニウム塩化合物などが挙げられる。
【0135】
オルトキノンジアジド化合物としては、1分子中に少なくともひとつのオルトキノンジアジド基を有する化合物で、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−エチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−イソブチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−α−ナフチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−ベンジルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−エチルアミド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルアミドなどが挙げられる。
【0136】
ポリハロゲン化合物としては、ポリハロゲンを含むアセトフェノン、例えばトリブロモアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、o−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、p−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ブロモ−トリブロモアセトフェノン、p−ブロモ−トリブロモアセトフェノンなど、また、ポリハロゲンを含むスルフォキサイド、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォキサイド、ジブロモメチル−トリブロモメチルスルフォキサイド、トリブロモメチル−フェニルスルフォキサイドなど、またポリハロゲンを含むスルフォン、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォン、トリクロロメチル−フェニルスルフォン、トリブロモメチル−フェニルスルフォン、トリクロロメチル−p−クロロフェニルスルフォン、トリブロモメチル−p−ニトロフェニルスルフォン2−トリクロロメチルベンゾチアゾールスルフォン、2,4−ジクロロフェニル−トリクロロメチルスルフォンなど、その他ポリハロゲンを含むピロン化合物、トリアジン化合物、オキサジアゾール化合物などが挙げられる。
【0137】
オニウム塩化合物およびその他の光酸発生剤としては、S.P.Papas,et al.,Polym.Photochem.,5,1,p104〜115(1984)に記載されているオニウム塩化合物、また色材、66(2)、p104〜115(1993)に紹介されている、Ph2I+/SbF6−等のジアリルヨードニウム塩化合物に代表される光酸発生剤、トリアリルスルフォニウム塩化合物、トリアリルセレノニウム塩化合物、ジアルキルフェナシルスルフォニウム塩化合物、ジアルキル−4−フェナシルスルフォニウム塩化合物、α−ヒドロキシメチルベンゾインスルフォン酸エステル、N−ヒドロキシイミノスルフォネート、α−スルフォニロキシケトン、β−スルフォニロキシケトン、鉄−アレーン錯体化合物(ベンゼン−シクロペンタジエニル−鉄(II)ヘキサフルオロフォスフェートなど)、o−ニトロベンジルシリルエーテル化合物、ベンゾイントシレート、トリ(ニトロベンジル)フォスフェートなどが挙げられる。
【0138】
その他に、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩、有機ハロゲン化合物、o−ニトロベンジル誘導体、イミノスルホネート及びジスルホン化合物等を挙げることができる。
【0139】
さらに具体的には、例えば、特開平9−244226号公報の化7〜化9に記載のT−1〜T−15の式で示される化合物を挙げることができる。
【0140】
これらの中、より好ましいものはトリハロメチル基を2個以上有するs−トリアジン化合物であり、特に好ましくはトリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。これら光酸発生剤の含有量は、印刷版材料の全固形分に対し、0.01〜40質量%、好ましくは0.1〜30質量%である。
【0141】
本発明において、酸によって変色する化合物としては、例えばジフェニルメタン、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0142】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH(保土ケ谷化学社製)、オイルブルー#603(オリエント化学工業社製)、オイルピンク#312(オリエント化学工業社製)、オイルレッド5B(オリエント化学工業社製)、オイルスカーレット#308(オリエント化学工業社製)、オイルレッドOG(オリエント化学工業社製)、オイルレッドRR(オリエント化学工業社製)、オイルグリーン#502(オリエント化学工業社製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土ケ谷化学社製)、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボステアリルアミノ−4−p−ジヒドロオキシエチルアミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等が挙げられる。
【0143】
また、酸で発色する化合物としてアリールアミン類の有機染料を用いることができる。この目的に適するアリールアミン類としては、第一級、第二級芳香族アミンのような単なるアリールアミンのほかにいわゆるロイコ色素も含まれ、これらの例としては次のようなものが挙げられる。
【0144】
ジフェニルアミン、ジベンジルアニリン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、p−トルイジン、4,4′−ビフェニルジアミン、o−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、o−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、アニリン、2,5−ジクロロアニリン、N−メチルジフェニルアミン、o−トルイジン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメタン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、1,2−ジアニリノエチレン、p,p′,p″ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、p,p′−テトラメチルジアミノトリフェニルメタン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメチルイミン、p,p′,p″−トリアミノ−o−メチルトリフェニルメタン、p,p′,p″−トリアミノトリフェニルカルビノール、p,p′−テトラメチルアミノジフェニル−4−アニリノナフチルメタン、p,p′,p″−トリアミノフェニルメタン、p,p′,p″−ヘキサプロピルトリアミノトリフェニルメタン等。
【0145】
本発明において、顕色剤としては、感熱記録体において電子受容体として使用される酸性物質がいずれも使用でき、例えば酸性白土カオリン、ゼオライト等の無機酸、芳香族カルボン酸、その無水物又はその金属塩類、有機スルホン酸、その他の有機酸、フェノール系化合物、該フェノール系化合物のメチロール化物、該フェノール系化合物の塩又は錯体等の有機系顕色剤などが挙げられ、なかでもフェノール系化合物のメチロール化物およびフェノール系化合物の塩(以下、特に断りのないかぎり錯塩も含む)が好ましい。
【0146】
これら顕色剤のうち、有機系顕色剤の具体例としては、フェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシアセトフェノン、2,2′−ジヒドロキシジフェニル、2,2′−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−イソプロピリデンジフェノール(別名ビスフェノールA)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4′エチレンビス(2−メチルフェノール)、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ヘプタン、4,4′−シクロヘキシリデンビス(2−イソプロピルフェノール)、4,4′−スルホニルジフェノール等のフェノール系化合物、該フェノール系化合物のメチロール化物、該フェノール系化合物の塩サリチル酸アニリド、ノボラック型フェノール樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
【0147】
本発明においては、顕色剤とともに用いられる発色剤としては、トリフェニルメタンラクトン型などのロイコ色素を用いることができる。
【0148】
このようなロイコ色素としては、例えば、クリスタルバイオレットラクトン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノフルオラン、マラカイトグリーンラクトン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルドール−3−イル)フタリド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなどが挙げられる。
【0149】
上記発色剤と顕色剤は、顕色剤/発色剤の質量比が0.1/1〜5/1となる範囲で通常用いるが、なかでも該質量比が0.5/1〜3/1となる範囲が好ましい。
【0150】
《画像形成機能層の反対側の構成層》
本発明においては、取り扱い性及び保管時の物性変化防止のために、支持体の画像形成機能層の反対側に少なくとも1層の構成層を有することが好ましい。好ましい構成層としては、下引き層、親水性結合剤含有層または疎水性結合剤含有層であり、結合剤含有層は下引き層の上に塗設されてもよい。
【0151】
下引き層としては、前述の支持体の下引き層が好ましい。
親水性結合剤としては、親水性のものなら特に限定はされないが、親水性構造単位としてヒドロキシル基を有する樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂(メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、キチン類、及びデンプン;エーテル結合を有する樹脂であるポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリビニルエーテル(PVE);アミド基又はアミド結合を有する樹脂であるポリアクリルアミド(PAAM)及びポリビニルピロリドン(PVP)等を挙げることができる。また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩及びゼラチン類;スルホン基を有するポリスチレンスルホン酸塩;アミノ基、イミノ基、第3アミン及び第4級アンモニウム塩を有するポリアリルアミン(PAA)、ポリエチレンイミン(PEI)、エポキシ化ポリアミド(EPAm)、ポリビニルピリジン及びゼラチン類を挙げることができる。
【0152】
疎水性結合剤は、結合剤として疎水性のものなら特に限定されないが、例えばα,β−エチレン性不飽和化合物に由来するポリマー、例えばポリ塩化ビニル、後−塩素化ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと塩化ビニリデンのコポリマー、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、ポリ酢酸ビニル及び部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、出発材料としてポリビニルアルコールから作られ、繰り返しビニルアルコール単位の一部のみがアルデヒドと反応していることができるポリビニルアセタール、好ましくはポリビニルブチラール、アクリロニトリルとアクリルアミドのコポリマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン及びポリエチレン又はそれらの混合物等が挙げられる。
【0153】
また疎水性結合剤は仕上がり印刷版材料表面が疎水性であれば、特開2002−258469号公報の段落0033〜0038に記載されている水分散系樹脂(ポリマーラテックス)から得られたものでもよい。
【0154】
また印刷機の版胴への取り付けやすさ、および、印刷中における印刷版の位置ずれによるカラー印刷での色ずれを防止するために、本発明において該構成層のうちの最表面層に平均粒径1μm以上20μm未満のマット剤を含有させることが好ましい。
【0155】
好ましく用いられるマット剤としては新モース硬度5以上の無機微粒子や有機マット剤があげられる。新モース硬度5以上の無機微粒子としては、例えば金属酸化物粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化クロム等)や金属炭化物粒子(炭化珪素等)、窒化ホウ素粒子、ダイアモンド粒子等が挙げられる。有機マット剤としては、例えばUSP2,322,037号明細書等に記載の澱粉、BEP625,451号やGBP981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、CHP330,158号明細書等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、USP3,079,257号等明細書に記載のポリアクリロニトリル、USP3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートがあげられる。
【0156】
これらマット剤の添加量は1m2あたり0.1g以上10g未満であることが好ましい。
【0157】
本発明においては、前記のマット剤の粒径、添加量および結合剤の量を調整することで、画像形成機能層の反対側の表面の表面粗さは、Ra値で、0.1μm以上2μm未満であることが好ましい。0.1μm未満では摩擦係数が高い等の理由で印刷版材料の搬送性に問題を生じる懸念があったり、印刷版材料の印刷機への取付に不具合を生じたり場合もある。また、2μm以上の粗い表面では、印刷版材料の製造時その他でロールに巻かれる際に反対面に形成された塗布層を傷つける懸念や、印刷版材料を版胴上に固定した際に、裏面側からの突き上げで印刷版材料表面が部分的に突出し、その部分に印圧が集中するために耐刷不良を生じる懸念もある。
【0158】
さらに、レーザー記録装置あるいはプロセスレス印刷機には、装置内部において印刷版の搬送を制御するためのセンサーを有しており、これらの制御を滞りなく行うために、本発明において、該構成層には、色素および顔料を含有させることが好ましい。色素及び顔料としては、前述の光熱変換素材に用いられる赤外吸収色素及び顔料が好ましく用いられる。また、更に、該構成層には公知の界面活性剤を含有させることができる。
【0159】
(支持体)
支持体としては、印刷版の基板として使用される公知の材料を使用することができる。例えば、金属板、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、上記材料を適宜貼り合わせた複合支持体等が挙げられる。支持体の厚さとしては、印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、通常50〜500μmのものが一般的に取り扱いやすい。
【0160】
金属板としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられるが、比重と剛性との関係から特にアルミニウムまたはアルミニウム合金(以下アルミニウムとする)が好ましい。アルミニウム板は、通常その表面に存在する圧延・巻取り時に使用されたオイルを除去するためにアルカリ、酸、溶剤等で脱脂した後に使用される。脱脂処理としては特にアルカリ水溶液による脱脂が好ましい。また、塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行うことが好ましい。例えば、ケイ酸塩やシランカップリング剤等のカップリング剤を含有する液に浸漬するか、液を塗布した後、十分な乾燥を行う方法が挙げられる。陽極酸化処理も易接着処理の一種と考えられ、使用することができる。また、陽極酸化処理と上記浸漬または塗布処理を組み合わせて使用することもできる。
【0161】
また、公知の方法で粗面化されたアルミニウム板や、それに上記の易接着処理を組み合わせた支持体も使用することができ、公知の方法で粗面化し陽極酸化処理を行い、必要に応じて表面処理を行った、いわゆるアルミ砂目を支持体として用いることもできる。
【0162】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。さらに特開平10−10676号に記載の方法で得られた120℃30秒での熱寸法変化率が0.001%以上0.04%以下の支持体を用いることが好ましい。
【0163】
これらプラスチックフィルムは塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。また、下塗り層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等が挙げられ、その中でも特開平7−191433号段落番号0044〜0116に記載の帯電防止下塗り層が好ましく用いられる。
【0164】
プラスチックフィルムの表面を粗面化した支持体も用いることができる。
また、複合支持体としては、上記材料を適宜貼り合わせて使用するが、塗布層を形成する前に貼り合わせても良く、また、塗布層を形成した後に貼り合わせても良く、印刷機に取り付ける直前に貼り合わせても良い。
【0165】
(包装材料)上記のように製造された印刷版材料は、所望のサイズに断裁した後に、後述する露光を行うまでの保管をするために包装される。長期の保管に耐えるためには、包装材料として、特開2000−206653号に記載の酸素透過度50ml/atm・m2・30℃・day以下の包装材料で包装されることが好ましい。またもう一つの好ましい形態として、特開2000−206653号に記載の水分透過度10g/atm・m2・25℃・day以下の包装材料で包装されることが好ましい。
【0166】
《露光》
本発明は、また印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像を形成した後に、画像形成機能層の非画像部を印刷機上で除去する工程を含む印刷方法も提供するものである。
【0167】
本発明の印刷版材料の画像形成は熱により行うことができるため、感熱プリンタで用いられるようなサーマルヘッドによっても画像形成が可能であるが、特にサーマルレーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0168】
本発明に関する露光に関し、より具体的には、赤外および/または近赤外領域で発光する、すなわち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0169】
本発明の走査露光に好適な装置としては、該半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0170】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式があげられる。
【0171】
本発明に関しては特に(3)の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)の露光方式が用いられる。
【0172】
このようにして画像形成がなされた印刷版材料は、現像処理を行うことなく印刷を行うことができる。画像形成後の印刷版材料をそのまま印刷機の版胴に取り付けるか、あるいは印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けた後に画像形成を行い、版胴を回転させながら水供給ローラーおよびまたはインク供給ローラーを印刷版材料に接触させることで画像形成機能層の非画像部を除去することが可能である。
【0173】
本発明の印刷版材料における上記の画像形成機能層非画像部の除去工程は、PS版を使用した通常の印刷シークエンスで行うことができるため、いわゆる機上現像処理による作業時間の延長の必要がないため、コストダウンにも有効である。
【0174】
さらに、本発明の印刷方法において、画像形成後から、印刷機上で印刷版材料表面と水供給ローラーまたはインク供給ローラーとが接触するまでに印刷版材料の表面を乾燥させる工程を有することが好ましい。本発明の印刷方法においては画像形成直後から画像強度が徐々に向上していくと考えられる。サーマルレーザーで一般的な外面ドラム方式(前述の(3)の方式)では、一般に露光開始から終了までに3分程度かかるため、露光終了時での露光開始部と終了部とでは画像強度が異なる懸念がある。乾燥工程を設けることで画像強度の差を問題ないレベルにまで縮めることができる。
【0175】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0176】
実施例1
《支持体の作製》
(支持体1:ポリエチレンテレフタレート支持体)
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い、固有粘度=0.66(dl/g)(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定後の平均膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、延伸温度は前段延伸が102℃で1.3倍に、後段延伸は110℃で2.6倍に縦延伸した。ついでテンターで120℃で4.5倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後4.8kg/mで巻き取った。このようにして厚さ190μmの二軸延伸PETフィルムを得た。この二軸延伸PETフィルムのTgは79℃であった。得られたPETフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。また、得られた支持体1の厚み分布は3%であった。
【0177】
《下引き済み支持体1の作製》
上記で得られた支持体1のフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、次いで、一方の面に下記下引き塗布液aを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液bを乾燥膜厚0.1μmになるように塗布し、各々180℃、4分間乾燥させた(下引き面A)。また反対側の面に下記下引き塗布液cを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液dを乾燥膜厚1.0μmになるように塗布し、それぞれ180℃、4分間乾燥させた(下引き面B)。塗布後の25℃、25%RHでの表面電気抵抗は108Ωであった。また、下引き面B側の表面の表面粗さを測定したところRa値で0.8μmであった。ついで、各々の下引き層表面に下記プラズマ処理条件でプラズマ処理を施した。
【0178】
成分d−1;スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重
合体からなるアニオン性高分子化合物
成分d−2;スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=4
0/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
成分d−3;スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からな
る高分子活性剤
【0179】
【化3】
【0180】
《プラズマ処理条件》
バッチ式の大気圧プラズマ処理装置(イーシー化学(株)製、AP−I−H−340)を用いて、高周波出力が4.5kW、周波数が5kHz、処理時間が5秒及びガス条件としてアルゴン、窒素及び水素の体積比をそれぞれ90%及び5%で、プラズマ処理を行った。
【0181】
《熱処理条件》
1.25m幅にスリットした後の支持体に対し、張力2hPaで180℃、1分間の低張力熱処理を実施した。
【0182】
《印刷版材料の作製》
親水性層を塗設する直前に、下引き済み支持体1に対し、100℃で30秒間熱処理を加えて乾燥させ、防湿シートでカバーをして空気中の湿度が入らないようにした。支持体試料の一部をサンプリングして水分率測定をしたところ、支持体1は0.2%であった。カバーをしたものについてはシートを除去後、すぐに塗布を行った。
【0183】
表1に示す親水性層1用塗布液(調製方法は下記に示す)、表2に示す親水性層2用塗布液(調製方法は下記に示す)を用いて下引き済み支持体1のA面上に順番にワイヤーバーを用いてそれぞれ乾燥付量が2.5g/m2、0.6g/m2になるように塗布し、120℃で3分間乾燥したのちに60℃で36時間の加熱処理を施した。その後、表3に示す画像形成機能層塗布液を、ワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.6g/m2になるように塗布して50℃で3分間乾燥した。その後に50℃で72時間のシーズニング処理を施した。
【0184】
《親水性層1用塗布液の調製》
表1に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表1に記載の組成で混合、濾過して親水性層1用塗布液を調製した。
【0185】
なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0186】
【表1】
【0187】
《親水性層2用塗布液の調製》
表2に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表2に記載の組成で混合、濾過して親水性層2用塗布液を調製した。なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0188】
【表2】
【0189】
《画像形成機能層塗布液の調製》
【0190】
【表3】
【0191】
【化4】
【0192】
上記で作製した印刷版材料を、73cm幅で32mの長さに切断して直径7.5cmのボール紙でできたコアに巻き付けロール形状の試料を作製した。さらに試料をAl203PET(12μm)/Ny(15μm)/CPP(70μm)の材料でできた150cm×2mの包装材料で巻き、端面をヒートシールして外気と遮断した。作製した包装された印刷版材料試料を、強制劣化条件として50℃、80%RHで7日間加温した。
【0193】
なお包装材料の酸素透過度は1.7ml/atm・m2・30℃・day、水分透過度は1.8g/atm・m2・25℃・dayであった。
【0194】
(a)赤外線レーザー方式による画像形成
上記の試料を露光サイズに合わせて切断した後に露光ドラムに巻付け固定した。露光には、波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、露光エネルギーを100〜350mJ/cm2まで50mJ毎に段階的に露光エネルギーを変化させ、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成し、印刷版試料を作製した。この試料を4枚準備した。
【0195】
《印刷版の評価》
この印刷版の画線部の特定部分に次のような組成の修正液を毛筆に含ませて被膜厚さが1.0〜5.0μmになるように塗布し、ドライヤーで乾燥した。次いで下記に示す印刷テストを実施した。
【0196】
下記の印刷方法により、印刷版としての諸特性を評価した。
【0197】
《印刷方法》
印刷装置として、ハイデルベルグ社スピードマスターSM74を用いて、コート紙と、湿し水としてアストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量%溶液、インクとして、東洋インク社製のトーヨーキングハイエコーM紅を使用して印刷を行った。印刷開始のシークエンスはPS版の印刷シークエンスで行い、特別な機上現像操作は行わなかった。印刷後に版面を観察したところ、本発明に係る材料の非画像部は除去されていた。
【0198】
《汚れ回復性の評価》
1000枚印刷後に、水の供給を止めてインクのみ1分間供給して全面にインクをつけた。その後水の供給を再開し、画像を修正液で修正した部分に着目し、何枚目に正常な印刷物が得られるかを評価した。枚数が少ないほど汚れ回復性が優れている。
【0199】
《耐刷性の評価》
画像を修正液で修正した部分にインク汚れが発生する印刷枚数を求めた(印刷は2万枚まで行った)。印刷枚数の多いほど優れている。
【0200】
以上により得られた結果を表4に示す。
【0201】
【表4】
【0202】
表4から本発明の修正液は、汚れ回復性と耐刷性が優れていることがわかる。
実施例2
《印刷版材料の作製》
実施例1で作製した印刷版材料と同様にして画像形成機能層を塗布した。さらに画像形成機能層の上に下記オーバーコート層をワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.4g/m2となるように塗布し、50℃で3分間乾燥した。そしてさらに画像形成機能層の反対側に書きバック層をワイヤーバーを用いて乾燥付量が1.5g/m2になるように塗布し、50℃で20分間乾燥して印刷版材料試料201を作製した。さらに50℃で24時間のシーズニング処理を施し、その後23℃相対湿度20%で24時間調湿した。
【0203】
またバック層の表面の表面粗さを測定したところ、Ra値で0.9μmであった。
【0204】
実施例1と同様にして評価を行った。なお実施例2での耐刷性の評価は、ベタ部にかすれが出る印刷枚数を求めた(印刷は5万枚まで行った)。以上により得られた結果を表5に示す。
【0205】
【表5】
【0206】
表5から本発明の修正液は、印刷版材料が異なっても汚れ回復性と耐刷性が優れていることがわかる。
【0207】
実施例3
(アルミ支持体2の作製)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を、50℃の1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/m2になるように溶解処理を行い水洗した後、25℃の0.1質量%塩酸水溶液中に30秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。
【0208】
次いで、このアルミニウム板を塩酸10g/L、アルミを0.5g/L含有する電解液により、正弦波の交流を用いて、ピーク電流密度が50A/dm2の条件で電解粗面化処理を行なった。この際、電極とアルミニウム板表面との距離は10mmとした。電解粗面化処理は12回に分割して行い、一回の処理電気量(陽極時)を40C/dm2とし、合計で480C/dm2の処理電気量(陽極時)とした。また、各回の粗面化処理の間に4秒間の休止時間を設けた。
【0209】
電解粗面化した後、50℃に保たれた1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、粗面化された面のスマットを含めた溶解量が2g/m2になるようにエッチング、次いで水洗した後、25℃に保たれた10%硫酸水溶液中に10秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。次いで、20%硫酸水溶液中で、20Vの定電圧条件で電気量が150C/dm2となるように陽極酸化処理を行い、さらに水洗した。
【0210】
次いで、水洗後の表面水をスクイーズした後、70℃に保たれた0.5質量%の3号ケイ酸ナトリウム水溶液に30秒間浸漬し、水洗を行った後に80℃で5分間乾燥し、アルミ支持体2を得た。
【0211】
《印刷版材料の作製》
〔塗布液の調製〕
(熱融着層1塗布液の調製)
下記の各添加剤を順次混合して、熱融着層1塗布液を調製した。
【0212】
上記熱融着層1塗布液の固形分濃度は、7.0質量%である。
【0213】
〔アルミ支持体を有する印刷版材料の作製〕
前記アルミ支持体2上に、上記調製した熱融着層1塗布液を、乾燥付量0.7g/m2となるように塗布してを作製した。なお、各熱融着層の乾燥条件は55℃で3分間行い、次いで40℃で72時間のエイジング処理を行った。
【0214】
実施例1と同様にして評価を行った。耐刷性の評価は10万枚まで印刷した。以上により得られた結果を表6に示す。
【0215】
【表6】
【0216】
表6から本発明の修正液は、アルミ支持体を有する印刷版材料でも汚れ回復性と耐刷性が優れていることがわかる。
【0217】
実施例4
実施例2で作製した印刷版材料試料201を用い、実施例1の方法で画像を作製し印刷版試料401を得た。得られた試料401の画像に実施例1の修正液4を毛筆に含ませて被膜厚さが1.0〜5.0μmになるように塗布し、ドライヤーで乾燥したところ、印刷版表面の画像は完全に消去された。画像を消去した試料401を用い実施例1と同様に印刷テストを実施し、実施例1と同様に評価し、得られた結果を表7に示す。
【0218】
【表7】
【0219】
表7から本発明の修正液は、画像を完全に消去でき、その後に印刷しても汚れ回復性と耐刷性が優れていることがわかる。
【0220】
【発明の効果】
本発明により、汚れ回復性と耐刷性に優れた印刷版画像の修正液と消去液が得られた。
Claims (8)
- 支持体上に少なくとも1層の熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正する際、画像部分にシリコーンゴム溶液を塗布して修正することを特徴とする印刷版画像の修正方法。
- 支持体と画像形成機能層の間に少なくとも1層の親水性層を有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正することを特徴とする請求項1記載の印刷版画像の修正方法。
- 親水性層の少なくとも1層が多孔質構造を有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正することを特徴とする請求項2記載の印刷版画像の修正方法。
- 支持体上のいずれか1層に光熱変換素材を含有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の印刷版画像の修正方法。
- 印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像を修正することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の印刷版画像の修正方法。
- 印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像形成した後に湿式現像処理をせずに印刷版を作製し、形成した画像を修正することを特徴とする請求項5記載の印刷版画像の修正方法。
- 印刷版材料をサーマルヘッドもしくはサーマルレーザーを用いて画像を形成した後に、画像形成機能層の非画像部を印刷機上で除去し、さらに該画像部分にシリコーンゴム溶液を塗布して修正した後印刷することを特徴とする印刷方法。
- 支持体上に少なくとも1層の熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層を有する印刷版材料に画像形成して印刷版を作製した後に形成した画像の一部を消去する際、画像部分にシリコーンゴム溶液を塗布して消去することを特徴とする印刷版画像の消去方法。
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