JP2005040005A - 組換えdna及びその用途 - Google Patents

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Ikuo Toyama
育夫 遠山
Katsunori Oshima
桂典 大島
Katsuya Egawa
克哉 江川
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Abstract

【課題】核内作用ペプチド遺伝子を細胞質で発現したペプチドを細胞核内に移行させてそこで機能発現させる手段を提供すること及びALSのような運動ニューロン疾患の治療手段を提供すること。
【解決手段】細胞核内で作用するペプチドをコードするDNAとアデノウイルスベクターとが機能的に連結してなり、細胞核内へ前記ペプチドを移行可能な組換えDNA及び細胞核内で作用するペプチドをコードするDNAとアデノウイルスベクターとが機能的に連結してなり、生体内で発現した前記ペプチドを細胞核内に移行可能な組換えDNAであって、前記ペプチドが神経栄養因子である組換えDNAを有効成分として含有する運動ニューロン疾患治療剤を提供した。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞核内で所望のペプチドを発現させるための組換えDNA及びそれを利用した、筋萎縮性側索硬化症(以下、「ASL」と言うことがある)などの運動ニューロン疾患の治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ALSをはじめとする運動ニューロン疾患は運動ニューロンが徐々に変性していくために全身の筋肉の萎縮と筋力の低下を引き起こす原因不明の神経難病である。ALS患者は、徐々に筋力が衰え、歩行不能、嚥下困難、発語不能となり、呼吸筋の障害により人工呼吸器を必要とするに至る。この間、感覚機能や知的機能は正常に保たれることから、極めて悲惨な病気であり、治療用材料や治療法の開発が強く望まれている。
【0003】
ALSの原因は不明であるものの、ALSの本質は、脊髄から脳幹部にかけて分布する運動ニューロンが徐々に死んでいくことにある(非特許文献2)。本来、運動ニューロンを含むニューロンは、生後は分裂せずにほぼ一生にわたって長期生存すると一般に考えられている。これには生存を維持する神経栄養因子が重要な役割を果たしていると考えられており(非特許文献3)、ALS患者の運動ニューロンの生存を助ける目的で、各種の神経栄養因子や神経栄養因子効果を持つペプチドおよび/もしくはタンパク質(例えば、神経成長因子NGF(Nerve Growth Factor)、脳由来神経栄養因子BDNF(Brain Derived Neurotrophic Factor)、毛様体神経栄養因子CNTF(Ciliary Neurotrophic Factor)、グリア由来神経栄養因子GDNF(Glial Derived Neutrophic Factor)、エリスロポエチン、トロンポエチンなど)を利用しようとする試みが為されている(非特許文献4,5)。すなわち、これらのペプチドやタンパク質を中枢神経系や脳脊髄液中に投与することが試みられているが、所期の効果は得られていない。効果が認められない原因の一つは、中枢神経系の神経細胞(ニューロン)が均一ではないことがあるのではないかと推測される。すなわち、特定のニューロンは特定の神経栄養因子に対する受容体をもち、特定の神経栄養因子にのみ反応する(非特許文献2)。従って、ALSの運動ニューロンの細胞死を防ぐには、ヒトの運動ニューロンが生存維持に利用している神経栄養因子ないしその誘導体を使用することが、有効ではないかと期待される。本発明者らは、正常のヒト運動ニューロンの生存を維持している神経栄養因子を見いだすべく鋭意努力し、ヒト運動ニューロンが、神経栄養因子のひとつである酸性線維芽細胞成長因子(aFGF;FGF−1)を産生していることを見いだした(非特許文献6)。ALS患者では、aFGFの産生が有意に減少している(非特許文献6)。また、aFGFをもっとも豊富に産生する運動ニューロンは動眼神経系の運動ニューロンであり、この運動ニューロンはALSで最も障害を受けにくい運動ニューロンとしても知られている。
【0004】
aFGF(FGF−1)はこれまでにも中枢神経系に豊富に存在する神経栄養因子・グリア増殖因子として知られていた(非特許文献7)。aFGFの特徴は、分泌シグナルを持たず分子のN端に核移行シグナルを有することである。こうした構造から、aFGFは細胞内(基本的には細胞質内)で産生された後、核膜に存在するaFGF受容体を介したりして核内に侵入して効果を発揮していると考えられる(非特許文献7)。
【0005】
このように、神経栄養因子たるaFGFは細胞外に分泌されずに主として細胞核内に入って核膜に存在する受容体に作用したり、細胞質から核内に入って、栄養因子としての作用を発揮することが知られている(非特許文献8)。また転写制御因子は、細胞の核内に入って転写制御を行う。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らはaFGFを補うことにより、ALSにおける運動ニューロン死を防止し、ALSの治療を行うことが可能であるかもしれないと考えた。しかし、核内で作用するこうした物質は、細胞外から投与しても無効なことが多い。そこで、細胞質でaFGF遺伝子から発現したaFGFを核内に移行させる遺伝子治療によってALSの治療が可能であるかもしれないと考えた。しかしながら、遺伝子治療は、培養細胞や末梢の組織では一般的に行われているが、運動ニューロンのような中枢神経系内の特定の神経細胞の核内にaFGFのような核内作用ペプチドを送り込む方法は未だ開発されていない。
【0007】
従って、本発明の目的は、核内作用ペプチド遺伝子を細胞質で発現したペプチドを細胞核内に移行させてそこで機能発現させる手段を提供することである。また、本発明の目的は、ALSのような運動ニューロン疾患の治療手段を提供することである。
【0008】
【非特許文献1】Merritt’s Textbook of Neurology, edited by Lewis P. Rowland Nineth Edition, Williams & Wilkins Publisher, Baltimore, 1995.
【非特許文献2】日下博文 運動ニューロン疾患 In: 神経内科学テキスト(江藤文夫、飯島節編集) p. 170−182, 2000年 南江堂
【非特許文献3】古川美子、古川昭栄 神経細胞死を防ぐ生存栄養因子 Dementia 9: 351−359, 1995.
【非特許文献4】DW Cleaveland, JD Rothstein: From Charcot to Lou Gehric: Decifering selective motor neuron death in ALS. Nature Review Neurossicence 2: 806−919, 2001.
【非特許文献5】M Dib: Amyotrophic lateral sclerosis: progress and prospective for treatments. Drugs 63: 289−310, 2003.
【非特許文献6】Kage et al., Acidic fibroblast growth factor (FGF−1) in the anterior horn cells of ALS and control cases. Neuroreport 12: 3799−3803, 2001)
【非特許文献7】Baird, A. and Bohlen, P. (1990) Fibroblast growth factors. In: Sporn MB, Roberts AB (ed) Peptide growth factors and their receptors I. Springer−Verlag, Berlin, pp 369−418
【非特許文献8】Szebenyi G, Fallon JF. Fibroblast growth factors as multifunctional signaling factors. Int Rev Cytol.;185:45−106, 1999.
【非特許文献9】T Imamura, K Engleka, X Zhan et al.: Recovery of mitogenic activity of a growth factor mutant with a nuclear translocation sequence. Science 249: 1567− 1570, 1990.
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、核内作用ペプチド遺伝子をアデノウイルスベクターに組み込んで投与することにより、細胞質内で発現したペプチドを細胞核内に移行させることが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、細胞核内で作用するペプチドをコードするDNAとアデノウイルスベクターとが機能的に連結してなり、細胞質内でDNAからRNAへの転写、RNAからの翻訳により発現した前記ペプチドを細胞核内に移行可能な組換えDNAを提供する。
【0011】
また、本発明者らは、上記本発明の組換えDNAにおいて、細胞核内で作用するペプチドをコードするDNAとして、aFGFのような神経栄養因子をコードするDNAを組み込み、これを投与することにより、ALSのような運動ニューロン疾患を治療できることに想到し、かつ、これを実験的に確認し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、細胞核内で作用するペプチドをコードするDNAとアデノウイルスベクターとが機能的に連結してなり、生体内で発現した前記ペプチドを細胞核内に移行可能な組換えDNAであって、前記ペプチドが神経栄養因子である組換えDNAを有効成分として含有する運動ニューロン疾患治療剤を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本明細書において、「ペプチド」とは、複数のアミノ酸がペプチド結合により結合したものを意味し、オリゴペプチド及びポリペプチドが包含され、ポリペプチドにはタンパク質が包含される。
【0014】
「細胞核内で作用するペプチド」は、多くの場合に主たる構成成分が核内に存在するペプチドのことであり、細胞質内での存在傾向が少ないもののことである。「細胞核内で作用するペプチド」としては神経栄養因子が好ましく、神経成長因子(Nerve growth factor(NGF))、脳由来神経栄養因子(Brain derived neurotrophic factor(BDNF))、NT−3あるいはNT−4などを含むいわゆるニューロトロフィン(Neurotrophin)やFGF−1(aFGF)、FGF−2(bFGF)、FGF−3など多くのFGFファミリー(各種線(繊)維芽細胞成長因子類)、毛様体神経栄養因子(Ciliary neurotrophic factor(CNTF))、グリア細胞由来神経栄養因子(Glial cell line−derived neurotrophic factor(GDNF))、血小板由来増殖因子(Platelet derived growth factor(PDGF))などのことであるが、これらのうち酸性線(繊)維芽細胞増殖因子(FGF−1(aFGF))が特に有効である。なお、2種以上のペプチドを組み込むことも可能である。
【0015】
これらの神経栄養因子のアミノ酸配列及びそれらをコードする遺伝子の塩基配列はいずれも公知である。したがって、これらの公知の配列を有するDNAをアデノウイルスベクターに組み込むことができる。
【0016】
なお、一般に、生理活性を有するペプチドでは、該ペプチドのアミノ酸配列において少数のアミノ酸が置換し、欠失し、挿入され又は付加された場合であっても、その生理活性が維持される場合があることは当業者によって認められているところである。従って、天然の神経栄養因子のアミノ酸配列において、少数のアミノ酸が置換し、欠失し、挿入され又は付加されたペプチドあって、その生理活性を維持するものは、天然の神経栄養因子と同様に利用することができ、本明細書において、これらのものも「神経栄養因子」という語に含めて解釈する。ここで、「少数」とは、1個ないし数個であることが好ましく、又は天然の神経栄養因子のアミノ酸配列と90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するものが好ましい。なお、アミノ酸配列の相同性は、FASTAのような周知のコンピューターソフトを用いて容易に算出することができ、このようなソフトはインターネットによっても利用に供されている。
【0017】
特に好ましい神経栄養因子であるヒトaFGFのアミノ酸配列を配列番号1に示す。上記の通り、配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、少数のアミノ酸が置換し、欠失し、挿入され又は付加されたペプチドあって、aFGFの生理活性を有するもの、好ましくは、配列番号1に示すアミノ酸配列のうち1個ないし数個のアミノ酸が置換し、欠失し、挿入され又は付加されたペプチドあって、aFGFの生理活性を有するもの、及び配列番号1に示すアミノ酸配列と90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するペプチドであって、aFGFの生理活性を有するものも本明細書における「ヒト酸性線維芽細胞成長因子」に包含される。
【0018】
本発明に用いられるアデノウイルスベクターは、アデノウィルスを利用した遺伝子導入用ベクターであって、遺伝子機能の評価や遺伝子治療用の検討に一般に用いられているものでよい。アデノウイルスベクターは、アデノウイルスの増殖に必要なE1領域を欠損させ、感染はしても増殖できなくしたアデノウイルスを基本としている。このウイルスベクターは恒常的にE1タンパクを発現している293細胞(ヒトの胎児の腎臓由来の細胞株)でのみ増殖可能である。アデノウイルスベクターに所望の遺伝子を組み込んで組換えDNAを作成するためのキットは市販されているので(例えばタカラバイオ株式会社製Adenovirus Expression Vector Kit及びAdenovirus Cre/loxP Kit)、このような市販の組換えアデノウイルス作製キットを用いることもできる。
【0019】
アデノウイルスベクターに組み込む上記ペプチドをコードする遺伝子の上流又は内部には、核移行シグナルをコードするDNA領域が存在することが好ましい。核移行シグナルとはNuclear localization signal(NLS)と通称されているオリゴペプチドであって、アミノ酸配列としては、AsnTyrLysLysProLysLeu(各アミノ酸3文字略号)が特に有効であるが、リジン(Lys)、ヒスチジン(HIS)、アルギニンン(Arg)で代表される塩基性アミノ酸を多く含むものが有効である。
【0020】
アデノウイルスベクターに組み込む上記ペプチドをコードする遺伝子の上流もしくは下流には、転写(制御)因子をコードする領域が存在してもよい。転写因子ないしは転写制御因子とは、基本的にはいわゆるRNAポリメラーゼI、II、IIIの作用を助けてDNAから正しいRNAを形成(転写)作用を有するものであって、種々のものが多様的に作用するが、たとえば、Stat1、Stat2、P53、cyclin、SL I, UBF, TFIIA, IIB, IID, IIE, IIF, IIH, IIJ, IIK, TFIIIA, IIIB, IIIC等が挙げられる。 これらはいずれも公知であり、そのアミノ酸配列及び遺伝子の塩基配列も公知である。
【0021】
上記した本発明の組換えDNAにおいて、細胞核内作用ペプチドとして神経栄養因子を用いたものは、運動ニューロン疾患治療剤として用いることができる。好ましい態様では、上記の通り、細胞核内作用ペプチドがaFGFであり、これはALSの治療に用いることができる。投与経路は、筋肉内注射のような非経口投与が好ましく、例えば、生理リン酸緩衝液等の緩衝液中に上記アデノウイルスベクターを溶解したものを注射剤として好ましく用いることができる。
【0022】
投与の部位は、運動ニューロン疾患で冒される骨格筋であることがよい。また、投与量は、疾患の種類及び症状に基づいて適宜設定されるが、通常、成人1回当たりベクターのプラーク形成単位(pfu)として10 〜 1011 pfu程度が適当であり、好ましくは 1x 10 〜 5 x 10 pfu 程度である。また、投与の頻度は、理論的にはひとつの運動ニューロンが支配する領域に1回でよいが、効果をみながら1ヶ月〜 1年に1回程度でよい。
【0023】
【実施例】
実施例1
aFGF遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターの作製
ヒトaFGFのcDNAは、インフォームドコンセントを得ている患者さんのヒト剖検脳から、本発明者の一人がクローニングしたものを用いた。クローニングは、具体的には次のようにして行った。
【0024】
ヒト中脳をTrizol試薬(Life Technologies)でホモジネートした後、クロロホルムを加え、遠心分離機(12000 g, 15分)で水相とクロロホルム相に分離した。水相を回収し、エエタノールを加えて、総RNAを沈殿させた。回収した沈殿をRNase free, DNase freeの滅菌水で500 ng/mlの濃度に溶解した。ついで、5 μgのRNAをoligo dT12−18 (Pharmacia)、dNTPs (Liefe Technologies)と逆転写酵素(SuperScript II; Life Technologies)の入ったバッファー中で反応させて、cDNAを作製した。
【0025】
このcDNAを鋳型とし、ヒトaFGFの全コード領域を増幅可能なプライマー(Upper primer; atggctgaaggggaaatcaccacc, Lower primer; ttaatcagaagagactggcagggg)とAmpliTaq Gold(パーキンエルマー社)を用いて、PCR装置(PE2000; パーキンエルマー社)で32 回のPCR反応を行い、ヒトaFGF遺伝子を増幅させた。増幅したaFGF遺伝子は、TAクローニングキット(Invitrogen)を用いてpCR2.1 vectorにクローニングされた。
【0026】
なお、クローニングしたcDNAの塩基配列及びそれがコードするアミノ酸配列を配列表の配列番号2に示す。配列番号1にはそのアミノ酸配列を取り出して示す。配列番号1に示すアミノ酸配列中、第22番目〜第28番目の領域が核移行ペプチドである。
【0027】
アデノウイルスベクターの作製方法はすでに公知であり、教科書(羊土社、島田隆、斉藤泉、小澤敬也編、バイオマニュアルUPシリーズ、遺伝子治療の基礎技術)に載っている方法で行った。すなわち、E1領域を欠損させたアデノウイルスベクターとヒトaFGFのcDNAを入れた発現カセットを組み込んだプラスミドを同時に293細胞に投与した。投与には、Superfect(キアゲン社)を用いた。これらの操作は具体的には次のようにして行った。広く使われている第一世代のアデノウイルスベクターに属し、滋賀医科大学内科学講座所有のアデノウイルスベクターJM17−based vectorからなるAd5 プラスミドとシャトルベクタープラスミドpACCMV.PLPASR(+)を用いた。ヒトaFGF遺伝子の5’端にXba1 site を3’端にHind III siteを挿入し、制限酵素Xba1とHindIIIを用いて、シャトルベクタープラスミドのマルチプルクローニングサイトにaFGF遺伝子を挿入した。Ad5 プラスミドとaFGF遺伝子を入れたシャトルベクタープラスミドを各5μgをSuperfect試薬に混和させ、60 mm dishに培養した293細胞に添加した。
【0028】
投与後、相同組換えを起こした非増殖性アデノウイルスベクターをaFGFプライマーを用いたPCR法をマーカーにしながら、上記教科書の方法に従って単離した。この操作は具体的には次のようにして行った。
【0029】
SuperfectでCo−transfectionした293細胞を3日ごとに培養液を交換しながら10−14日間、培養器で培養する。293細胞が変性したら、293細胞を含めて培養液ごと回収する。回収液の一部(0.5 ml)を用いて、DNAを回収し、aFGFプライマーを用いたPCR法を行った。aFGF遺伝子の存在することを確認したら、この回収液を一次ウイルスベクター液とする。
【0030】
ついで50 μLの一次ウイルスベクター液をコンフルエントになった293細胞の培養液中に添加し、37 Cで1時間反応させて感染させる。ついで、培養液で0.65%に薄めた0アガロースを手添加して固める。この状態で培養器で培養する。目に見えるプラークが出現したら、プラークをパスツールピペットで吸引して、0.5 mlの培養液の入ったエッペンドルッフチューブに回収する(二次ウイルスベクター液)。回収した二次ウイルスベクター液をさらにンフルエントになった293細胞の培養液中に添加し、37 Cで1時間反応させて感染させて培養。細胞が変性したら回収して、PCR法を行い、aFGF遺伝子の入ったプラークを選ぶ。この操作を繰り返すことによって、aFGF遺伝子が組み込まれたアデノウイルスベクターを単離した。
【0031】
PCR産物を電気泳動した結果、NO.2のサンプルにヒトaFGF遺伝子のバンドが認めらた。すなわち、このサンプルが、ヒトaFGF遺伝子が組み込まれたアデノウイルスベクターであることを示している。
【0032】
実施例2
aFGF遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターの哺乳動物細胞(293細胞)への導入とaFGF遺伝子の発現
DMEM 培地(GIBCO社 BRL)に10% 胎児馬血清(FBS)とペニシリンとストレプトマイシンからなる抗生物質を加えた培養液を作製した。60 mm dishに培養液4 mlを加え、その中で293細胞(ヒトの胎児の腎臓由来の細胞株)を培養した。そこに、1 x10pfu/mlアデノウイルスベクター液を0.1 ml加えて感染させ、37℃で培養した。4日後に細胞を回収した。アデノウイルスベクター液を加えなかった細胞をコントロールにした。
【0033】
上記細胞をタンパク分解阻害剤入りのトリス塩酸バッファーで再溶解し、ウエスタンブロット法に供した。すなわち、50 μgのタンパクを15%ポリアクリルアミドゲルに電気泳動した後、ニトロセルロース膜に電気的に転写した。転写したニトロセルロース膜を10% スキムミルクと反応させ、タンパクの非特的結合をブロックした。ついで、抗ヒトaFGFマウスモノクローナル抗体(Wako純薬、AF1−114)、ペルオキシダーゼラベル抗マウスIgG抗体(ニチレイ社、ヒストファイン)と順次反応させ、化学的発光で検出した。
【0034】
その結果、FGF−1遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターを投与した293 細胞では、約17 kDaの分子量のaFGF を検出した。また、二量体と思われる約34 kDaの分子量のバンドも検出された。一方、ベクターを加えなかったコントロールサンプルでは、何も検出されなかった。すなわち、このaFGF遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターは、ヒトの細胞の中でaFGFを産生することが明らかとなった。
【0035】
実施例3
aFGF遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターのマウス舌への投与と舌下神経核の運動ニューロンでのヒトaFGFの発現
6カ月齢のC57Blackマウスを用いた。マウスを麻酔した後、1 x10pfu/ml の濃度のaFGF遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターをマウスの舌に約30 μl投与した。翌日、3日後、7日後、1カ月後にマウスを大量の麻酔で安楽死させた後、マウスの心臓から 10 mM リン酸緩衝液を加えた生理食塩水と流して脱血し、その後固定液を流して固定した。その後、脳幹部と舌を取り出し、さらに24時間浸潤固定した。ついで、15%蔗糖液の入ったリン酸緩衝液に48時間以上浸して組織の水分を抜いた後、ドライアイスで凍結させ、クリオスタット装置で20 μmの厚さの連続切片を作製した。
【0036】
aFGFの発現は、抗ヒトaFGFマウスモノクローナル抗体(Wako純薬社、AF1−114)を用いた免疫組織化学法で検定した。
【0037】
その結果、舌を支配する運動神経の神経細胞体の存在する舌下神経核の運動ニューロンにaFGFを検出した。すなわち、aFGF遺伝子は舌の運動ニューロン末端(神経筋接合部など)から取り込まれ、運動ニューロンまで逆行性に運ばれて、運動ニューロン内でaFGF遺伝子を発現しているものと考えられた。また、舌での発現は、1週間以内に消失するが、運動ニューロンでの発現は1カ月後も続いていた。
【0038】
aFGFは、運動ニューロンの細胞質のみならず核にも染色された。これは、aFGFのN端側に存在する核以行シグナルによって、aFGFが細胞質から核内へと移動したと考えられる。
【0039】
比較例1
aFGF遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターとHVJ−E(センダイウイルスエンベロープ)との比較実験
アデノウイルスベクターではなく、センダイウイルスエンベロープを用いて、マウス舌への投与実験を行った。センダイウイルスベクターエンベロープは、動物個体へ遺伝子導入が可能な試薬として市販されている(石原産業株式会社、GenomeOne)。
【0040】
方法は、哺乳動物細胞での発現用のプラスミド(インビトロジェン社、pCMS−EGFP)にヒトaFGF 遺伝子を組み込んだ。このプラスミドをHVJ−E(石原産業株式会社、GenomeOne)で包み込み、293細胞に投与した。投与後、実施例2に従って、細胞を回収しウエスタンブロット法でヒトaFGFの発現を検討した。その結果、ヒトaFGFの発現を認めた。
【0041】
次に、実施例3にしたがって、マウス個体への投与実験を行った。
すなわち、ヒトaFGF 遺伝子を組み込んだプラスミドをHVJ−E(石原産業株式会社、GenomeOne)で包み込み、C57Blackマウスの舌に投与した。投与方法は、GenomeOneに添付されているプロトコールに従った。3日後、7日後に脳と舌を取り出した。ついで、aFGF の発現を抗ヒトaFGFマウスモノクローナル抗体(和光純薬、AF1−114)を用いた免疫組織化学法で検定した。
【0042】
その結果、舌下神経核の運動ニューロンに、ヒトaFGF の発現は認めなかった。すなわち、培養細胞ではいずれもaFGFの発現を認めたが、個体への投与では、HVJ−Eに比較してアデノウイルスベクターの優位性が示された。
【0043】
【発明の効果】
本発明により、核内作用ペプチド遺伝子を細胞核内へ移行させ作用させる手段が初めて提供された。また、本発明により、ALSのような運動ニューロン疾患の治療剤が初めて提供された。本発明のヒト酸性線維芽細胞成長因子をコードするDNAとアデノウイルスベクターとが機能的に連結した遺伝子複合体を筋肉内に注射することによって、ヒト運動ニューロンが産生している神経栄養因子aFGFの産生量を長期にわたって増加させることができ、運動ニューロンの細胞死を防いでALSの治療に貢献できる。また、本発明によれば、脳内に神経関連物質を投与するのではなく、末梢の筋肉に投与することで目的が達成され、安全、簡潔かつ大きな効果、有意な改善をもたらす。
【0044】
【配列表】
Figure 2005040005
【0045】
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【0046】
Figure 2005040005
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Claims (10)

  1. 細胞核内で作用するペプチドをコードするDNAとアデノウイルスベクターとが機能的に連結してなり、細胞核内へ前記ペプチドを移行可能な組換えDNA。
  2. 前記細胞が、運動神経細胞(運動ニューロン)である請求項1記載の組換えDNA。
  3. 前記ペプチドが神経栄養因子である請求項1又は2記載の組換えDNA。
  4. 核移行ペプチドをコードするDNAが組み込まれ、その下流に細胞核内で作用するペプチドをコードするDNAが組み込まれたものである請求項1、2または3記載の組換えDNA。
  5. 核移行ペプチドがAsnThrLysLysProLysLeuのアミノ酸構成である請求項4記載の組換えDNA。
  6. 前記神経栄養因子がヒト酸性線維芽細胞成長因子である請求項3記載の組換えDNA。
  7. 請求項3記載の組換えDNAを有効成分として含有する運動ニューロン疾患治療剤。
  8. 請求項4記載の組換えDNAを有効成分として含有する筋萎縮性側索硬化症の遺伝子治療剤。
  9. 注射剤の形態にある請求項5又は6記載の遺伝子治療剤。
  10. 筋内への注射剤の形態にある請求項9の遺伝子治療剤。
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JP2003199628A Pending JP2005040005A (ja) 2003-07-22 2003-07-22 組換えdna及びその用途

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007161704A (ja) * 2005-12-09 2007-06-28 Koshi Tei 神経損傷を処置するためのまたは神経細胞を再生するための組成物

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