以下、本発明に係る半導体/電極のコンタクト構造及びこれを用いた半導体素子の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
本発明による半導体素子の第1の実施形態として、図1に示す光が基板側から入射するスーパーストレート型の薄膜Si太陽電池を取り上げて説明する。
図1中、1はガラスからなる透光性の基板、2は表電極である透明導電膜からなる第1の電極、3はSi系材料からなる半導体多層膜、31はSi系材料からなる第1の半導体接合層、32はSi系材料からなる第2の半導体接合層、31aはSi系材料からなる第1の半導体接合層中のp型半導体層、31bはSi系材料からなる第1の半導体接合層中の光活性層、31cはSi系材料からなる第1の半導体接合層中のn型半導体層、32aはSi系材料からなる第2の半導体接合層中のp型半導体層、32bはSi系材料からなる第2の半導体接合層中の光活性層、32cはSi系材料からなる第2の半導体接合層中のn型半導体層、4は金属からなる裏電極である第2の電極である。
また、図7は、図1に示した薄膜Si太陽電池の、真空レベルで統一したバンド図(各層が接触する前の状態)である。そして、図8は、フェルミレベルEfで統一したバンド図(各層が接触した後の状態)である。Ecは伝導帯(Conduction Band)のエッジ、Evは価電子帯(Valence Band)のエッジ、Egはバンドギャップ、Edは半導体/電極の界面準位を示す。各図中、「μc−Si:H」は微結晶シリコン、「a−Si:H」は水素化アモルファスシリコン、「a−SiC:H」は水素化アモルファス炭化珪素を示す。各図において、各層ごとにこれらの材質を表記しているが、これは一つの典型例に過ぎず、後述するように、各層の材質は必ずしもこれらの例に限定されるものではない。
そして、本発明においては、第1の電極2と第1の半導体接合層中のp型半導体層31aとの間に逆導電型の半導体層であるSi系材料からなるn型半導体層31dが設けられ、第2の電極4と第2の半導体接合層中のn型半導体層32cとの間に逆導電型の半導体層であるSi系材料からなるp型半導体層32dが設けられたことを特徴としている。これらの逆導電型の半導体層は、いずれもドーピング元素濃度が1×1018〜5×1021/cm3であり、それぞれが接する半導体層とトンネル接合あるいはそれに準じた特性を有する接合を形成している。
この本発明の半導体/電極のコンタクト構造により、第1の電極2と第1の半導体接合層中のp型半導体層31aとの電気特性、並びに、第2の電極4と第2の半導体接合層中のn型半導体層32cとの電気特性が、上述の本発明の作用効果により大幅に改善される。
すなわち、図8に示すように、第1の電極2と第1の半導体接合層中のp型半導体層31aとの間に設けられたn型半導体層31d、並びに第2の電極4と第2の半導体接合層中のn型半導体層32cとの間に設けられたp型半導体層32dによって、半導体/電極界面での欠陥準位EdがフェルミレベルEfに対して多数キャリア側に位置するようになる。その結果、これらの欠陥準位のほとんどが再結合中心として機能しなくなるので、これらの半導体/金属界面において、少数キャリアの再結合量を格段に低減することができ、良好なV−I特性を有する半導体装置を実現することができる。そのため、太陽電池特性で言えば、課題の部分で述べた問題が解決され、開放電圧Vocの向上や、短絡電流密度Jscの向上を実現することができる。またそれに応じて、歩留まりも大幅に向上することができる。
以下、本発明の薄膜Si太陽電池素子を形成するプロセスについて説明する。
まず、基板1として透光性基板を用意する。具体的には、ガラス、プラスチック、樹脂などを材料とした板材あるいはフィルム材などを用いることができる。例えば、ガラスの場合は、厚さ数mm程度のいわゆる青板ガラス(ソーダ石灰ガラス)や白板ガラス(ホウケイ酸ガラス)を用いることができる。また、プラスチックや樹脂では、後のプロセスにおいて耐熱性や脱ガス性に問題がない範囲で材料を選択することができる。
次に、表電極である第1の電極2を形成する。電極の材料としては導電抵抗が低く、長期間その特性が変化しない材料を選択することができる。特に、薄膜太陽電池に形成する表電極である第1の電極2の場合、透光性の観点から透明導電膜とする。
透明導電膜の材料としては、SnO2、ITO、ZnOなど公知の材料を用いることができる。なお、透明導電膜は、後にこの膜上にSi膜を形成するときに、SiH4とH2を使用することに起因した水素ガス雰囲気に曝されることになるので、耐還元性に優れるZnO膜を少なくとも最終表面として形成するのが望ましい。
製膜方法としては、CVD法、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、スプレー法、及びゾルゲル法など公知の技術を用いることができ、中でも生産性、大面積製膜特性、及び高品質のものが得られるという理由からCVD法やスパッタ法とすることが望ましい。
透明導電膜の膜厚は、反射防止効果と低抵抗化を考慮して60〜600nm程度の範囲で調節する。低抵抗化の目安としてはシート抵抗を約10Ω/□程度以下とするのが望ましい。
次に、シリコン系膜からなる半導体多層膜3を形成する。半導体多層膜3は第1の半導体接合層31と第2の半導体接合層32とが積層された構造を有する。ここでシリコン系膜の製膜方法としては、従来から知られているPECVD法(Plasma Enhanced CVD法)やCat−CVD法(Catalytic CVD法)を用いることができるが、本発明者らが既に特許文献3、特許文献4などにおいて開示しているCat−PECVD法を用いれば高品質な膜を高速で形成することができる。またCat−PECVD法を用いれば、結晶化を非常に促進できるので、以下に述べる膜のうち結晶質膜の形成についてはとりわけ効果的である。
まず、光が最初に入射するトップセルとして、水素化アモルファスシリコン膜を光活性層に含む第1の半導体接合層31を形成する。具体的には、基板側からn型層31d/p型層31a/光活性層31b/n型層31cの順に積層された構造とし、光活性層31bはi型(真性半導体)とするのが望ましい。
次に、ボトムセルとして、結晶質シリコン膜を光活性層に含む第2の半導体接合層32を形成する。具体的には基板側からp型層32a/光活性層32b/n型層32c/p型層32dの順に形成された構造とし、光活性層32bはi型とするのが望ましい。
このように半導体多層膜3を、水素化アモルファスシリコン膜を光活性層に含む第1の半導体接合層31と、結晶質シリコン膜を光活性層に含む第2の半導体接合層32とを組み合わせて用いる理由は、水素化アモルファスシリコンが特に短波長光に対して高い光吸収特性を有し、結晶質シリコン膜が長波長光にまで高い光吸収特性を有することを利用して、トップセルとなる第1の半導体接合層31で短波長光を、ボトムセルとなる第2の半導体接合層32で長波長光を効率的に光電変換するためである。
なお、本明細書において「結晶質シリコン」は、微結晶シリコン(μc−Si:H…microcrystalline silicon)や、ナノ(結晶)シリコン(nc−Si:H…nanocrystalline silicon)を含む概念である。これらの微結晶シリコンやナノシリコンには、シリコンの結晶相と非晶質相が含まれ、結晶含有相となっている。そして、ラマン散乱スペクトルによって定義される結晶化率(結晶相ピーク強度/(結晶相ピーク強度+非晶質相ピーク強度))において、50〜100%の範囲となり、特に高品質のものでは、60〜80%の範囲となる。なお、シリコンの場合、結晶相ピーク強度は、500〜510cm−1でのピーク強度+520cm−1でのピーク強度とし、また、非晶質相ピーク強度は480cm−1でのピーク強度とすれば良い。
次に、第1の半導体接合層31の製造プロセスについて説明する。なお、第1の半導体接合層31において、本発明の半導体/電極のコンタクト構造は、n型層31dを第1の電極2とp型層31aとの間に作製することによって得られる。
本発明の半導体/電極のコンタクト構造にかかるn型層31dは、水素化アモルファスシリコン膜や、上述した結晶シリコン相を含んだ結晶質シリコン膜(微結晶シリコン膜やナノシリコン膜)を用いることができる。ここで、水素化アモルファスシリコンは直接遷移型の高光吸収特性を示すのに対して、結晶シリコンは間接遷移型の比較的低い光吸収特性を示すため、光吸収ロスを低減するためには結晶シリコン相を含んだ結晶質シリコン膜を用いるのがより好ましい。
また、水素化アモルファスシリコンよりも結晶質シリコンの方が狭いバンドギャップを有しているため、後述するp型層31aとの間でトンネル接合あるいはそれに準じた特性を有する接合を形成するには結晶質シリコン膜を用いるのがより好ましい。なお、n型層31d全域にわたって結晶質シリコン相とする必要はなく、後述するp型層31aとの界面近傍だけでもよい場合がある。このようにすれば、狭バンドギャップ領域での光吸収ロスを極力低減することができる。
ここで、n型とするため、不純物をドーピングする。なお、シリコン半導体において、n型を得るためには、ドーピング元素としてはP、As、Sbなどを用いることができるが、その中でもPが望ましい。
そして、ドーピング元素濃度については1×1018〜5×1021/cm3以上として実質的なn+型とすることによって、後に形成するp型層31aとの間にトンネル接合あるいはそれに準じた特性を有する接合を形成することができる。このドーピング濃度はn型層31d全域にわたって実現されている必要はなく、少なくともp型層31aと接する領域に形成されていればよい。具体的には、このn+とした箇所の膜厚d1は図6の本発明のpin接合型半導体素子において示したように、少なくとも一原子層以上、膜厚以下の範囲で実現されていればよい。
このn型層31dの膜厚は20nm程度以下、より好ましくは10nm以下として、この層での光吸収ロス及び抵抗ロスをできるだけ低減する。さらに好ましくは5nm以下とすることで、n型層31d自体をキャリアがトンネルできるようにさせれば、n型層31dに起因する抵抗ロスをほとんどゼロにすることができ、オーミック特性の低下がほとんどない半導体/電極コンタクトを得ることができる。
このn型層31dを作製する原料としては、SiH4、H2、及びドーピング用ガスであるPH3などのガスを用いて形成することができる。ここで、Pは、PH3ガスとSiH4ガスの分圧比にほぼ比例して膜中に取り込まれるため、目的のドーピング濃度に相当する分圧比(具体的にはガス流量比)を調節することで所望のドーピング濃度を実現することができる。また、膜厚は製膜速度に応じて製膜時間を調整すればよい。さらに特に結晶化させるには、製膜表面の水素被覆が実現できている100〜400℃程度の基板温度範囲において、プラズマ励起周波数を例えば40MHz程度以上のVHF領域としたり、ガス加熱を積極的に行ったりすることによって容易に実現することができる。
さらにこれらのガスに加えてCH4などのC(炭素)を含むガスを適量混合すればSixC1−x膜が得られ、バンドギャップ拡大によって光吸収ロスが少なくなるので、いわゆる窓層の形成に非常に有効であるとともに、開放電圧向上のための暗電流成分低減にも有効である。このとき、Cの含有量を5〜20%程度とすれば、バンドギャップ拡大量を0.1〜0.3eV程度とすることができる。なお膜中のC含有量は、製膜中のCH4ガス/SiH4ガス分圧比(すなわちガス流量比)、及び、CH4とSiH4とでは分解効率が異なることを考慮してプラズマパワーを調節すれば、所望の値にすることができる。また、C以外にもO(酸素)を含むガスやN(窒素)を含むガスを適量混合させてもよく、SixO1−x膜やSixN1−x膜を得ることができ、同様の効果を得ることができる。これらを混在させてもよい。
次に、上記n型層31d上にp型層31aを形成する。p型層31aについては、水素化アモルファスシリコン膜や、微結晶シリコン膜に代表されるような結晶シリコン相を含む結晶質シリコン膜などを用いることができる。ここでn型層31dとの間にトンネル接合あるいはそれに準じた特性を有する接合を形成するためには、バンドギャップの小さい結晶質シリコン膜を用いるのがより好ましい。もちろんp型層31a全域にわたって結晶質シリコン相とする必要はなく、n型層31dとの界面近傍だけでもよい場合がある。このようにすれば、狭バンドギャップ領域での光吸収ロスを極力低減することができる。
ここで、p型とするため、不純物をドーピングする。なお、シリコン半導体において、p型を得るためには、ドーピング元素としてはB、Al、Gaなどを用いることができるが、その中でもBが望ましい。
ドーピング元素濃度については1×1018〜5×1021/cm3程度として、実質的にはp+型とする。このドーピング濃度はp型層31a全域にわたって実現されている必要はなく、少なくともn型層31dと接する領域に形成されていればよい。具体的には、このp+とした箇所の膜厚d2は図6の本発明のpin接合型半導体素子において示したように、少なくとも一原子層以上、膜厚以下の範囲で実現されていればよい。
このp型層31aの膜厚は材料に応じて2〜100nm程度の範囲で調節する。例えば水素化アモルファスシリコン材料を用いる場合は、特に光吸収ロスの低減を考慮して2〜20nm程度の範囲とし、結晶質シリコン材料を用いる場合は接合形成能力の低下を考慮して、10〜100nm程度の範囲とする。
なお製膜時に用いるSiH4、H2及びドーピング用ガスであるB2H6などのガスに加えてCH4などのC(炭素)を含むガスを適量混合すればSixC1−x膜が得られ、光吸収ロスの少ない窓層形成に非常に有効であるとともに、開放電圧向上のための暗電流成分低減にも有効である。また、C以外にもO(酸素)を含むガスやN(窒素)を含むガスを適量混合させることでも同様な効果を得ることができる。ここで好ましいC含有量やその実現方法については、前記n型半導体層31dの場合とほぼ同じであるので省略する。
次に、上記p型層31a上にドーピングを行わないノンドープ層である光活性層31bを形成する。光活性層31bについては水素化アモルファスシリコン膜を用いる。実際にはノンドープ膜はわずかにn型特性を示すのが通例であるので、この場合はp型化ドーピング元素をわずかに含ませて実質的にi型となるように調整することができる。
なお、入射光を効率的に光電変換すると同時に、トップセル(第1の半導体接合層31)と後述のボトムセル(第2の半導体接合層32)との間で電流をマッチングさせるために、膜厚は0.1〜0.5μm程度の範囲に調節する。
ここで水素化アモルファスシリコン膜の製膜方法としては、従来から知られているPECVD法やCat−CVD法を用いることもできるが、Cat−PECVD法を用いれば、高品質な水素化アモルファスシリコン膜を高速かつ大面積で、しかも高い生産性をもって製膜することができるので、高効率・低コスト薄膜Si太陽電池の製造にはとりわけ効果的である。
また、Cat−PECVD法によれば、原子状水素生成促進効果、あるいはガス加熱効果によって、膜中水素濃度を15atomic%以下にすることができるが、より好ましくは、従来のPECVD法では実現困難な10atomic%以下、さらに好ましくは5atomic%以下の低水素濃度の膜が得られるので、水素化アモルファスシリコン膜利用素子が長年抱えていた課題である光劣化の程度を低減することができる。
次に、上記光活性層31b上に、n型層31cを形成する。n型層31cについては、水素化アモルファスシリコン膜や、結晶質シリコン膜(微結晶シリコン膜やナノシリコン膜)を用いることができ、膜厚は材料に応じて2〜100nm程度の範囲で調節する。例えば、水素化アモルファスシリコン材料を用いる場合は、特に光吸収ロスの低減を考慮して2〜20nm程度の範囲とし、結晶質シリコン材料を用いる場合は接合形成能力の低下を考慮して、10〜100nm程度の範囲とする。
ドーピング元素濃度については1×1018〜5×1021/cm3程度として、実質的にはn+型とする。
なお製膜時に用いるSiH4、H2、及びドーピング用ガスであるPH3などのガスに加えてCH4などのC(炭素)を含むガスを適量混合すればSixC1−x膜が得られ、光吸収ロスの少ない膜形成ができるとともに、開放電圧向上のための暗電流成分の低減にも有効である。また、C以外にもO(酸素)を含むガスやN(窒素)を含むガスを適量混合させることでも同様な効果を得ることができる。
なお、接合特性をより改善するために、p型層31aと光活性層31bとの間や光活性層31bとn型層31cとの間に実質的にi型の非単結晶Si層や非単結晶SixC1−x層をバッファ層として挿入してもよい。このときの挿入層の厚さは0.5〜50nm程度とする。このとき膜中水素濃度やC濃度に傾斜をつけていわゆるグレーデッド層とするとこの領域での再結合量が低減できるので、特性向上の上でより好ましい。
ここで上述の第1の半導体接合層31と後述する第2の半導体接合層32の接合部であるn型層31cとp型層32aについても、良好なオーミック特性を実現するために、トンネル接合あるいはそれに準じた特性を有する接合とする。実現方法は、既に述べたn型層31dとp型層31aの間で実現した方法と同様である。さらに、この接触部については、これもn型層31dとp型層31aの部分で既述したように、それぞれの層が結晶質シリコン相となっているのが望ましい。
上述の方法により、トップセルとして、第1の半導体接合層31を形成することができる。さらに、この上にボトムセルとして第2の半導体接合層32を積層するが、第1の半導体接合層31と同様の方法で形成できる箇所は説明を省略し、特徴的な箇所について述べる。
なお、この第2の半導体接合層32において、n型層32c/p型層32dの箇所を本発明の半導体/電極のコンタクト構造とする。
第2の半導体接合層32として、まず、p型層32aを第1の半導体接合層31上に形成する。この層は、上述の第1の半導体接合層中のp型層31aと同様に水素化アモルファスシリコン膜や、結晶質シリコン膜(微結晶シリコン膜やナノシリコン膜)を用いることができる。膜厚、ドーピング濃度など詳細な条件についても、同じであるため省略する。
次に、上記p型層32a上にドーピングを行わないノンドープ層である光活性層32bを形成する。なお、第1の半導体接合層31においては、光活性層31bは水素化アモルファスシリコン膜によって形成したが、第2の半導体接合層32における光活性層32bは、微結晶シリコン膜に代表される結晶質シリコン膜となるようにする。
実際にはノンドープ膜はわずかにn型特性を示すのが通例であるので、この場合はp型化ドーピング元素をわずかに含ませて実質的にi型となるように調整することができる。
なお、入射光を効率的に光電変換すると同時に、前記トップセルとこのボトムセルとの間で電流をマッチングさせるために、膜厚は1〜3μm程度の範囲で調節する。
さらに、膜構造としては、結晶面のうち(110)面が優先的に成長した結果として生ずる(110)面配向の柱状結晶粒の集合体として製膜後の表面形状が光閉じ込めに適した自生的な凹凸構造となるようにするのが望ましいが、PECVD法あるいはCat−PECVD法を用いれば、この構造を自生的に(自然に)形成することができるメリットがある。
ここで結晶質シリコン膜の製膜方法としては、従来から知られているPECVD法やCat−CVD法を用いることもできるが、Cat−PECVD法を用いれば、特に高品質な結晶質シリコン膜を高速かつ大面積で、しかも高い生産性をもって製膜することができるので、高効率・低コスト薄膜Si太陽電池の製造にはとりわけ効果的である。
このCat−PECVD法によれば、原子状水素生成促進効果、あるいはガス加熱効果によって、膜中水素濃度が10atomic%以下の結晶質シリコン膜を得ることができるが、より好ましくは5atomic%以下、さらに好ましくは3.5atomic%以下の低水素濃度の膜を得ることができる。
なお、低水素濃度の膜が好ましい理由は以下の通りである。結晶質シリコン膜の場合、大部分の水素は結晶粒界部分に存在しており、水素のSiとの結合状態とその密度が結晶粒界の品質(結晶粒界でのキャリア再結合速度の逆数に比例)を決定づける。すなわち、結晶粒界に存在するSi原子1つにH原子が2つと他のSi原子が2つ結合した状態であるSiH2結合の密度が大きいほど、いわゆるポスト酸化現象(製膜後に膜が大気雰囲気に曝されると、大気中のO2、CO2、H2Oなどの酸素を含んだガス成分が膜中結晶粒界に拡散・吸着・酸化して結晶粒界の結合状態に変化をもたらす)が生じやすく、結晶粒界の品質劣化に起因した膜全体としての膜品質の経時劣化(すなわち特性の経時劣化)を招来してしまう。ここで、膜中水素濃度が低くなると、それに応じて結晶粒界のSiH2結合密度も低減するので、上述したポスト酸化現象に起因した経時劣化現象を低減することができる。
具体的には、膜中水素濃度を5atomic%以下にすると経時劣化率は数%程度以下に抑えることができ、さらに膜中水素濃度を3.5atomic%以下にすれば経時劣化率はほとんどゼロにすることができる。この結果、より高効率な太陽電池を製造することができる。
次に、上記光活性層32b上に、n型層32cを形成する。この層は、上述の第1の半導体接合層中のn型層31cと同様に水素化アモルファスシリコン膜や、結晶質シリコン膜(微結晶シリコン膜やナノシリコン膜)を用いることができる。膜厚、ドーピング濃度など詳細な条件についても、同じであるため省略する。
なお、接合特性をより改善するために、p型層32aと光活性層32bの間や光活性層32bとn型層32cの間に実質的にi型の非単結晶Si層を挿入してもよい。このときの挿入層の厚さは0.5〜50nm程度とする。
第2の半導体接合層32として、本発明にかかるp型層32dを形成する。この層は、上述の第1の半導体接合層中のn型層31dと同様に、水素化アモルファスシリコン膜や、結晶質シリコン膜(微結晶シリコン膜やナノシリコン膜)を用いることができる。n型層31dと異なる点は、ドーピング元素のみ、p型の導電性を示すB、Al、Gaなどを用いる点であり、その他については、膜厚、ドーピング濃度など詳細な条件についても、同じである。
最後に、裏面電極である第2の電極4として、金属膜を形成する。金属膜材料としては、導電特性及び光反射特性に優れるAlやAgなどを主成分にしたものを用いるのが望ましい。これらの金属材料を用いることで裏面電極に到達した長波長光を高い反射率で反射させて前記半導体層に有効に再入射させることができる。
製膜方法としては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スクリーン印刷法などの公知の技術を使用でき、生産性、大面積製膜特性、及び高品質のものが得られるという理由からスパッタリング法を用いることが望ましい。さらに、膜厚は、電気抵抗を充分に下げるために0.1μm以上とし、コストアップを避けるために1μm以下とすることが望ましい。
なお、第2の電極は、半導体層に接する面側から透明導電膜/金属膜の順に積層された構造とすることがより好ましい。このように、半導体層と金属膜の間に透明導電膜を挿入することによって金属膜成分が半導体層中に拡散して素子特性を劣化させる現象を抑えることができるからである。
また、透明導電膜形成表面に適当な凹凸構造をもたせれば光が有効に散乱されるようになるので太陽電池の効率向上に有効な光閉じ込め効果を増進させることができる。このような凹凸構造は、膜形成時の条件や製膜後のエッチング処理により形成することができ、透明導電膜と金属膜との界面の凹凸の最大高さRmaxが0.05μm以上となるように調節する。
ここで透明導電膜材料としては、SnO2、ITO、ZnOなどを用いることができるが、低温形成の容易さ、安定性、凹凸構造の実現し易さなどの理由からZnOが望ましい。さらにこのとき、積層する金属膜はAgとすることが望ましい。
また、製膜方法としては、CVD法、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、スプレー法、及びゾルゲル法など公知の技術を用いることができるが、 生産性、大面積製膜特性、及び高品質のものが得られるという理由からスパッタリング法が望ましい。
上述の方法により、本発明を適用した薄膜Si太陽電池を実現することができる。
なお、以上の説明では、半導体多層膜の第1の電極側、及び第2の電極側の両側に本発明の半導体/電極のコンタクト構造を適用した太陽電池について説明したが、第1の電極側のみ、あるいは第2の電極側のみに適用した場合でも、本発明の効果が得られることは言うまでもない。
また、半導体多層膜中に半導体接合が2つあるタンデム型の太陽電池について説明したが、半導体接合が1つであるシングル接合型の太陽電池(不図示)や、半導体接合が3つあるトリプル接合型の太陽電池(不図示)、さらにはそれ以上の数の半導体接合を有する多接合型の太陽電池(不図示)においても同様の効果が得られる。
さらに、異なる半導体接合層(第1の半導体接合層と第2の半導体接合層)が直接接触した構造の太陽電池について説明したが、これに限るものではなく、異なる半導体接合層間に透明導電膜や非常に薄い金属膜あるいはSiとの合金膜を中間層として挿入した構造を有する太陽電池(不図示)についても同様の効果が得られる。
また、半導体接合層pinが受光面側からpinの順で形成した太陽電池について説明したが、受光面側からnipの順で形成した太陽電池についても同様の効果が得られる。
そして、光が基板側から入射するスーパーストレート型太陽電池について説明したが、光が半導体膜側から入射するサブストレート型太陽電池(不図示)に対しても同様の効果が得られる。なお、サブストレート型とした場合は、基板は透光性基板に限定されるものではなくステンレスなどの不透光性基板を用いてもよい。この場合、第1の電極は金属材料とし、第2の電極は透光性材料とすることが望ましい。
次に、図5に本発明を適用した第2の実施形態としてバルク型Si太陽電池を示す。図中、501は表電極、502は反射防止膜、503はp型Si領域、504はn型Si領域、505はp型Si光活性領域、506はp型Si−BSF領域、507はn型Si領域、508は裏電極である。
そして、本発明の構造として、表電極501とn型Si領域504との間に逆導電型の半導体であるp型Si領域503が設けられ、裏電極508とp型Si−BSF領域506との間に逆導電型の半導体であるn型Si領域507が設けられたことを特徴としている。これらの逆導電型の半導体は、いずれもドーピング元素濃度が1×1018〜5×1021/cm3であり、それぞれが接する半導体領域とトンネル接合あるいはそれに準じた特性を有する接合を形成している。
ここで光は反射防止膜502側から入射し、Si領域にて吸収・光電変換されて電子−正孔対が生成されるが、本説明例のようなpn接合型の場合は、特に光活性層として働くp型Si光活性領域505で吸収・光電変換されて生成した電子−正孔対が主な光起電力の起源となる。以下光起電力が生ずるまでの原理は上述した薄膜Si太陽電池の場合と同様であるので省略する。
以下、図5に示した本発明にかかるバルク型Si太陽電池を形成するプロセスを説明する。
まずp型Si基板を用意する。図5中、少なくともp型Si光活性領域505は基板に含まれる。このときp型化ドーピング元素としてはBを用いることが望ましく、濃度は1×1016〜1×1017/cm3程度とする(このとき基板の比抵抗値は0.2〜2Ω・cm程度となる)。
基板厚は500μm以下にし、より好ましくは350μm以下にする。基板種としてはCZ法やFZ法といった製法で作られた単結晶Siインゴットをスライスして基板にした単結晶Si基板や、キャスト法で鋳造された多結晶Siインゴットをスライスして基板にした多結晶Si基板などを用いることができる。なおドーピングはドーピング元素単体を適量Siインゴット製造時に含ませてもよいし、既にドープ濃度の分かっているB含有Si塊を適量含ませてもよい。
次にn型Si領域504を形成する。n型化ドーピング元素としてはPを用いることが望ましく、ドーピング濃度は1×1018〜5×1021/cm3程度とする(つまり特にn+型とする)。これによって上述のp型Si領域505との間にpn接合が形成される。
製法としてはPOCl3(オキシ塩化リン)を拡散源とした熱拡散法を用いて温度700〜1000℃程度で、前記p型Si基板の表面にドーピング元素を拡散させることによって形成する。このとき拡散層厚は0.2〜0.5μm程度とするが、これは拡散温度と拡散時間を調節することで、所望の厚さとすることができる。
通常の拡散法では、目的とする面とは反対側の面にも拡散領域が形成されるが、その部分は後からエッチングして除去すればよい。あるいは、後述するように、裏面のBSF層をAlペーストによって形成する場合は、P型ドープ剤であるAlを充分な濃度で充分な深さまで拡散させることができるので、既に拡散してあった浅い領域のn型拡散層の影響は無視できるようにすることができる。
なお、n型Si領域504の形成方法は熱拡散法に限定されるものではなく、例えば上述の第1の実施形態で述べたような薄膜技術及び条件を用いて水素化アモルファスシリコン膜や、結晶質シリコン膜(微結晶シリコン膜やナノシリコン膜)などを基板温度400℃程度以下で形成してもよい。
ここで水素化アモルファスシリコン膜を用いてn型Si領域を形成する場合はその厚さは50nm以下、好ましくは20nm以下とし、結晶質シリコン膜を用いて形成する場合はその厚さは500nm以下、好ましくは200nm以下とする。
このとき、p型Si領域505とn型Si領域504との間にi型Si領域(不図示)を厚さ20nm以下で形成すると特性向上に有効である。ただし薄膜技術を用いて形成する場合は、以下に述べる各プロセスの温度を考慮して後段プロセス程低いプロセス温度となるようにその形成順序を決めることが必要である。
次にp型Si−BSF(Back Surface Field)領域506を形成する。p型化ドーピング元素としてはBやAlを用いることができ、ドーピング元素濃度は1×1018〜5×1021/cm3程度とする(つまり特にp+型とする)。これによってp型Si光活性領域505とp型Si−BSF領域との間にLow−High接合を形成することができる。
製法としてはBBr3を拡散源とした熱拡散法を用いて温度800〜1100℃程度で形成することができるが、特にAlの場合はAl粉末とガラスフリット、有機溶剤、バインダーなどからなるAlペーストを印刷法で塗布したのち温度700〜850℃程度で熱処理(焼成)してAlを拡散する方法を用いることができ(本明細書ではペースト印刷焼成法と称する)、低コスト化に非常に有利である。なお、このp型Si−BSF領域506(裏面側)を熱拡散法で形成する場合は、既に形成してあるn型Si領域504(表面側)には酸化膜等の拡散バリアをあらかじめ形成しておく。またペースト印刷焼成法を用いる場合は、印刷面だけに所望の拡散層を形成することができるだけではなく、既に述べたようにn型Si領域504領域形成時に同時に裏面側にも形成されているn型層を除去する必要もなくすことができる。
なおp型Si領域506の形成方法は、熱拡散法やペースト印刷焼成法に限定されるものではなく、例えば第1の実施形態で述べたような薄膜技術及び条件を用いて水素化アモルファスシリコン膜や、結晶質シリコン膜(微結晶シリコン膜やナノシリコン膜)などを基板温度400℃程度以下で形成してもよい。このとき膜厚は10〜200nm程度とする。このとき、p型Si領域505とn型Si領域504との間にi型Si領域(不図示)を厚さ20nm以下で形成すると特性向上に有効である。ただし薄膜技術を用いて形成する場合は、以下に述べる各プロセスの温度を考慮して後段プロセス程低いプロセス温度となるようにその形成順序を決めることが必要である。
次に、表側における本発明の半導体/電極のコンタクト構造を、上述のn型Si領域504上に、表電極501を形成する前に、これらの領域の間に、p型Si領域503を介在させて形成する。このとき、以下に述べる条件によってトンネル接合あるいはそれに準じた接合特性を有する接合を形成し、作製する。
p型Si領域503におけるp型化ドーピング元素としてはBを用いることが望ましく、濃度は1×1018〜5×1021/cm3程度とする(つまり特にp+型とする)。このように高濃度にドープされることで、同じく高濃度にドープされたn型Si領域504との間にトンネル接合特性あるいはそれに準じた特性を有した接合が形成される。
このとき、上記のドーピング濃度はp型Si領域503全域にわたって実現されている必要はなく、少なくとも上述のn型Si領域504と接する領域、具体的には、少なくとも一原子層以上、p型Si領域503の厚み以下の範囲で実現されていればよい。
ここでp型Si領域503の厚さは50nm程度以下、より好ましくは20nm以下として、この層での光吸収ロス及び抵抗ロスをできるだけ低減する。さらに好ましくは5nm以下とすることで、p型Si領域503自体をキャリアがトンネルできるようにすれば、p型Si領域503に起因する抵抗ロスをほとんどゼロにすることができ、オーミック特性の低下がほとんどない半導体/電極コンタクトを得ることができる。
p型Si領域503の製法としてはBBr3を拡散源とした熱拡散法を用いて温度800〜1000℃程度で形成することもできるが、この工程以前に形成した接合特性を損なわないために、本工程は特に第1の実施形態で述べたような薄膜技術及び条件を用いて水素化アモルファスシリコン膜や、微結晶Si相を含む結晶質シリコン膜を基板温度400℃程度以下で形成することが好ましい。なお、もしn型Si領域504を薄膜技術で形成した場合、本工程も同様に薄膜技術を利用して形成する必要がある。
なお、図5ではp型Si領域503がn型Si領域504上全面に形成された場合を示したが、より好ましくは、p型Si領域503が後述する表電極501の直下を最小形成領域とし、できるだけ小さい面積として、p型Si領域503での入射光吸収ロスを低減する(後述する実施例2の結果はこの条件で得たものである)。パターニングは適当なマスクを用いて実現することもできるし、エッチング法を用いて形成することもできる。
次に、裏側における本発明の半導体/電極のコンタクト構造を、上述のp型Si−BSF領域506上に、裏電極508を形成する前に、これらの領域の間に、n型Si領域507を介在させて形成する。このとき、以下に述べる条件によってトンネル接合あるいはそれに準じた接合特性を有する接合を形成し、作製する。
n型Si領域507におけるn型化ドーピング元素としてはPを用いることが望ましく、ドープ濃度は1×1018〜5×1021/cm3程度とする(つまり特にn+型とする)。このように高濃度にドープされることで、同じく高濃度にドープされたp型Si−BSF領域506との間にトンネル接合特性あるいはそれに準じた特性を有した接合が形成される。
このとき、上記のドーピング濃度はn型Si領域507全域にわたって実現されている必要はなく、少なくとも上述のp型Si−BSF領域506と接する領域、具体的には、少なくとも一原子層以上、n型Si領域507の領域厚以下の範囲で実現されていればよい。
ここでn型Si領域507の厚さは50nm程度以下、より好ましくは20nm以下として、この層での光吸収ロス及び抵抗ロスをできるだけ低減する。さらに好ましくは5nm以下とすることで、n型Si領域507自体をキャリアがトンネルできるようにすれば、n型Si領域507に起因する抵抗ロスをほとんどゼロにすることができ、オーミック特性の低下がほとんどない半導体/電極コンタクトを得ることができる。
n型Si領域507の製法としてはPOCl3を拡散源とした熱拡散法を用いて温度700〜1000℃程度で形成することもできるが、この工程以前に形成した接合特性を損なわないために、本工程は特に第1の実施例で述べたような薄膜技術を用いて水素化アモルファスシリコン膜や、結晶質シリコン膜(微結晶シリコン膜やナノシリコン膜)を基板温度400℃程度以下で形成することが好ましい。なお、もしp型Si−BSF領域506を薄膜技術で形成した場合、本工程も同様に薄膜技術を利用して形成する必要がある。
次に反射防止膜502を形成する。反射防止膜材料としては、Si3N4膜、TiO2膜、SiO2膜、MgO膜、ITO膜、SnO2膜、ZnO膜などを用いることができる。厚さは材料によって適宜選択され入射光に対する無反射条件を実現する(材料の屈折率をnとし、無反射にしたいスペクトル領域の波長をλとすれば、(λ/n)/4=dを満たすdが反射防止膜の最適膜厚となる)。例えば、一般的に用いられるSi3N4膜(n=約2)の場合は、無反射目的波長を600nmとすれば、膜厚を75nm程度とすればよい。
製法としては、PECVD法、蒸着法、スパッタ法などを用い、温度400〜500℃程度で形成する。なお反射防止膜502は後述する表電極501を形成するために所定のパターンでパターニングしておく。パターニング法としてはレジストなどマスクに用いたエッチング法(ウェットあるいはドライ)や、反射防止膜形成時にマスクをあらかじめ形成しておき、反射防止膜形成後にこれを除去する方法を用いることができる。
次に表電極501を形成する。表電極材料としては、Ag、Cu、Alといった低抵抗金属を少なくとも1種含む材料を用いることが望ましい。製法としてはこれら金属を含んだペーストを用いた印刷法や、スパッタ法、蒸着法などの真空製膜法を用いることができる。
なお表電極501とSi半導体との接着強度を特に高めるため、印刷法ではTiO2などの酸化物成分をペースト中にわずかに含ませ、また真空製膜法では表電極501とSi半導体との界面にTiを主成分とした金属層を挿入するとよい。また表電極501の形状は一般的な櫛形パターンとすればよい。
次に裏電極508を形成する。裏電極材料としては、Siに対して反射率の高いAgを主成分に含む金属を用いることが望ましいが、Siに対しての反射率がAgよりもいくらか劣るAlを主成分に含む金属であっても、特に高効率を望まない限り有効に用いることができる。
製法としてはこれら金属を含んだペーストを用いた印刷法や、スパッタ法、蒸着法などの真空製膜法を用いることができる。なお裏電極508とSi半導体との接着強度を特に高めたい場合は、印刷法ではTiO2などの酸化物成分をペースト中にわずかに含ませ、また真空製膜法では裏電極508とSi半導体との界面にTiを主成分とした金属層を挿入するとよい。後者の場合、Ti主成分金属層の厚さは5nm以下として金属層が挿入されることによる反射率低減を抑制することが望ましい。なお、裏電極508は基板裏面全面に形成することが裏面に到達した長波長光の反射率を高めるために望ましい。
以上によって本発明を適用したバルク型Si太陽電池が実現される。
なお、上記各工程の順序は上記順序に限られるものではなく、後段プロセスの温度が前段プロセスの温度よりも低い条件を満たすならば、いかなる順序であってもよい。
上述の説明では、表電極501側、及び裏電極508側の両側に本発明の半導体/電極のコンタクト構造を適用した太陽電池について説明したが、もちろん表電極側のみ、あるいは裏電極側のみに適用した場合でも本発明の効果が得られることは言うまでもない。
次に、本発明に係る太陽電池モジュールについて説明する。
通常、太陽電池素子一枚では発生する電気出力が小さいため、一般的に複数の太陽電池素子を直並列に電気的に接続して配列した太陽電池モジュールとして用いられる。そして、さらにこの太陽電池モジュールを複数枚組み合わせることによって、実用的な電気出力が取り出せるように構成される。
既に説明したように、本発明の半導体/電極のコンタクト構造を用いた太陽電池素子は、高い変換効率を有する。したがって、この本発明の太陽電池素子を含んで構成された太陽電池モジュールも高効率となる。以下、本発明の太陽電池モジュールの実施形態について、図9を参照しながら説明する。
なお、以下の説明では、本発明の太陽電池素子10としては、第2の実施形態において説明した図5に示すバルク型Si太陽電池を用いた例によって説明するが、この例に限定されるものではない。
図9に示されるように、透光性パネル12としては、ガラスやポリカーボネート樹脂などが用いられる。ガラスとしては青板ガラス(ソーダ石灰ガラス)白板ガラス(ホウケイ酸ガラス)、強化ガラス、倍強化ガラス、熱線反射ガラスなどが用いられるが、一般的には厚さ3mm〜5mm程度の白板強化ガラスが多く使用される。ポリカーボネート樹脂の場合、厚みが5mm程度のものが多く使用される。
充填材13としては、透光性、耐熱性、電気絶縁性を有する素材が好適に用いられ、酢酸ビニル含有量20〜40%のエチレンビニルアセテート共重合体(EVA)のほか、ポリビニルブチラール(PVB)などを主成分とする、厚さ0.4〜1mm程度のシート状形態のものが用いられる。充填材13は、太陽電池モジュール17の作製に当たっては、太陽電池素子の表側と裏側の双方に配されることが多く、これらは減圧下でのラミネート工程において、熱架橋融着して他の部材と一体化する。
裏面保護材14は、水分を透過しないようにアルミ箔を挟持した耐候性を有するフッ素系樹脂シートやアルミナまたはシリカを蒸着したポリエチレンテレフタレ−ト(PET)シートなどが用いられる。
タブ11は、例えば、銅箔を主体としその表面に半田がコートされた導電性の材質からなる。これを所定の長さに切断し、太陽電池素子10の出力を取り出すための表電極501及び裏電極508に半田付けして用いる。
なお、太陽電池素子10の表電極501、裏電極508の表面には、あらかじめ必要に応じて半田に浸漬する半田ディップ処理によって電極上に半田領域を形成しておいても構わない。なお、半田材料を用いない半田レス電極とする場合は半田ディップ処理を省略する。
実際にタブ11を配線するには、まず、タブ11の一端を太陽電池素子10の表電極501にホットエアーやホットプレートなどにより半田付けで接着する。続いて、このタブ11の他端をモジュールにしたときに隣接する太陽電池素子10の裏側の裏電極508に同様にして半田付け接着する。なお、並列接続の場合は隣接する太陽電池素子10の表電極501同士を接着すればよい。これを繰り返して複数の太陽電池素子10を接続した太陽電池素子群を作製する。
なお、太陽電池素子群の中に、本発明の太陽電池素子10が少なくとも1つ含まれていれば効果を奏するが、発明の効果を良好に奏するためには、太陽電池素子群を構成する太陽電池素子全てが本発明の太陽電池素子10であることがより望ましい。
出力配線15は、タブ11によって接続された太陽電池素子10の群からの電気出力を端子ボックス16のターミナルに伝えるもので、通常厚さ0.1mm〜0.5mm程度、幅6mm程度の銅箔の表面全体に20〜70μm程度の半田を被覆したものを、所定の長さに切断し、太陽電池素子10の電極に半田付けされている。
ここで、上述のような透光性パネル12、表側の充填材13、複数の太陽電池素子10にタブ11や出力配線15が接続された太陽電池素子群、裏側の充填材13、裏面保護材14の積層体を接着一体化する。すなわち、各部材の積層体をラミネータと呼ばれる減圧状態で加熱しながら加圧する装置にセットした後、太陽電池モジュール17の内部の空気を除去するために50〜150Pa程度に減圧し、100〜200℃の温度で15分〜1時間加熱しながら加圧する。これによって、表側と裏側にそれぞれ配された充填材13が軟化し架橋融着するため、各部材を接着し一体化し、太陽電池モジュール17のパネル部を作製することができる。
さらに、上述の方法によって作製された太陽電池モジュール17のパネル部の裏面に端子ボックス16を接着剤により取り付ける。端子ボックス16は、太陽電池素子10からの出力配線15と外部回路に接続するためのケーブル(不図示)の接続を行うものであり、変性PPE樹脂などで紫外線などに対する耐光性を考慮して通常黒色に造られる。また端子ボックス16の概略の大きさは、出力約160W程度の一般的な太陽電池モジュールでは100×60×20mm程度のものが多い。
また、通常、太陽電池モジュール17のパネル部の各辺部に対してモジュール枠(不図示)が設けられることが多い。モジュール枠は、アルミニウムの押し出し成形で造られることが多く、その表面にはアルマイト処理などが施される。そしてこのモジュール枠を太陽電池のパネル部の外周各辺に嵌め込み、各コーナー部をビスなどにより固定する。このようなモジュール枠を設けることによって、機械的強度や耐候性能を付与し、さらに、太陽電池モジュールを設置する場合などに取り扱いやすくすることができる。
以上によって、本発明の太陽電池モジュールが実現される。この本発明の太陽電池モジュールは、本発明の半導体/電極のコンタクト構造を有する本発明の太陽電池素子を含んで構成されているため、高い変換効率を有する。
なお、本発明の実施形態は上述の例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはもちろんである。
例えば、上述の説明では、p型Si基板を用いた太陽電池について説明したが、n型Si基板を用いた場合にも、上記説明中の極性を逆にすれば同様のプロセスによって本発明の効果が得ることができる。さらに、シングル接合の場合について説明したが、第1の実施形態のところで述べたような半導体多層膜からなる薄膜接合層をバルク基板使用接合素子に積層して形成した多接合型であっても、本発明は適用できる。
以上、本発明の実施形態については、薄膜型Si太陽電池及びバルク型Si太陽電池を例にとって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、発明の原理・目的を逸脱しない限り任意の形態とすることができる。
また、本発明はSi系太陽電池に限定されるものではなく、化合物系や有機物系の太陽電池にも適用できる。さらに、本発明は太陽電池以外の光電変換装置にも適用できる。そして、本発明は光電変換装置以外の、例えば、ダイオード、トランジスタ、サイリスタ、などの半導体/電極構造を有した半導体素子一般にも適用可能である。