JP2005037762A - 光学素子、波長可変光フィルタ、光アドドロップモジュールおよび波長可変光源 - Google Patents

光学素子、波長可変光フィルタ、光アドドロップモジュールおよび波長可変光源 Download PDF

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Abstract

【課題】波長を任意に変化させることができ、しかもその応答速度の更なる向上が可能な光学素子、波長可変光フィルタ、光アドドロップモジュールおよび波長可変光源を得ること。
【解決手段】光学素子201は、基板202上に第1ミラースタック層203を形成し、その上に第1の透明導電膜204と、導電バッファ層205と、1次あるいは2次の電気光学効果を有する誘電体薄膜としての電気光学膜206と、導電バッファ層207ならびに第2の透明導電膜208を順に積層し、更にその上に第2ミラースタック層209を配置している。第1の透明導電膜204と第2の透明導電膜208の間には電圧が印加される。光学素子201は単一キャビティ型バンドパスフィルタ等に使用され、印加電圧に応じてこれを透過あるいは反射する波長が変化する。多重キャビティ型バンドパスフィルタ等も構成可能である。
【選択図】図1

Description

本発明は光学素子、その一形態としての波長可変光フィルタ、この波長可変光フィルタを使用した光アドドロップモジュールおよび波長可変光源に係わり、特に特定の周波数の光を選択的に透過あるいは反射することのできる光学素子や、バンドパスフィルタとして特定の周波数を選択することができるだけでなく、選択する周波数自体を任意に変更することのできる波長可変光フィルタ、ならびに波長可変光フィルタをモジュール化した光アドドロップモジュールおよび出力する波長を任意に変更することのできる波長可変光源に関する。
入力された光の中から特定の波長の光を選択するフィルタとして光学的なバンドパスフィルタが存在する。このようなバンドパスフィルタの中で選択する波長を可変とした波長可変光フィルタは、たとえばマルチチャネルアナライザの構成部品として物質の特性を測定する際の波長を変化させるデバイスとして使用される。その代表的なものが、物理膜厚を可変とすることで波長可変性を実現した波長可変光フィルタとして提案されている(たとえば特許文献1参照)。
図22は、この第1の提案による波長可変光フィルタを示したものである。この波長可変光フィルタ101は、誘電体多層膜フィルタ素子102を移動ステージ103上に取り付けた構造となっている。移動ステージ103は、矢印104方向に移動自在に配置されている。移動ステージ103には透明な基板106の片面に厚さを連続的に変化させた互いに異なる屈折率の第1の誘電体膜107および第2の誘電体膜108を積層した誘電体多層膜フィルタ109が矢印104方向を長手方向にして取り付けられている。誘電体多層膜フィルタ素子102の中心波長は、その光学膜厚長nLに比例する。ここで値nは誘電体多層膜フィルタを構成する媒質の実効的屈折率であり、値Lはその物理膜厚を表わしている。バンドパスフィルタ特性を有する誘電体多層膜フィルタ素子102を1次元方向(矢印104方向)に沿って蒸着膜厚に勾配を持たせて成膜することにより、膜厚が薄いところでは短波長に透過ピークを持たせ、また膜厚が厚いところでは長波長に透過ピークを持たせることができる。
この波長可変光フィルタ101を使用する際には、フォトダイオード(PD)111を定位置に固定しておく。そして入射光112を誘電体多層膜フィルタ109を介してこのフォトダイオード111に入射するようにしておく。この配置状態で誘電体多層膜フィルタ109を矢印104方向に移動する。誘電体多層膜フィルタ109が矢印104方向に移動するのに伴って、ピークとなる透過波長が変化して、フォトダイオード111の受光する光の波長を連続的に変化させることができる。
図23は、この図22に示した波長可変光フィルタを図22の矢印104方向(X方向)に移動させた際の選択する波長範囲と光の透過率との関係を表わしたものである。この図に示すように図22に示した移動ステージ103を矢印104方向に第1の位置X1から第2の位置X2にまで移動させると、これに伴って透過する光の波長が第1の波長λ1からたとえば第2の波長λ2へと連続的に変化する。この図23では、第1の位置X1と第2の位置X2の間に、例示的に2つの波長を示している。
ところで次世代大容量光通信方式として波長多重化方式(WDM:Wavelength Division Multiplexing)による光通信システムが注目されている。波長多重化方式の光通信システムでは、1本の光ファイバ中をそれぞれ波長の異なった光信号(λ1、λ2、……、λn)が伝搬する。このため、各ノードでは単数ないし複数の波長の光信号をアド(挿入)あるいはドロップ(抜き出し)する処理をオンデマンドにこなす能力が求められている。この要求に応じるために光アドドロップモジュール(OADM:Optical Add Drop Module, Optical Add-Drop Multiplexer)が使用される。光アドドロップモジュールは光通信を用いたリング上ネットワークに挿入され、高速通信路から情報を取り出したり、情報を通信路に導入するための光分離結合装置である。
現状の光アドドロップモジュールは、アドあるいはドロップする波長が1波長に固定されている。すなわち、1本の光ファイバ中を伝搬する多波長信号成分から特定の信号チャンネルに対応した1波長の光信号のみを取り出し(ドロップ)、同じ波長の光信号を導入(アド)している。更に柔軟な信号処理を可能にするためには、任意の信号チャンネルをダイナミックに選択してその波長の光信号をアドあるいはドロップできる光アドドロップモジュールが求められる。このような装置では1波長のみに機能するバンドパスフィルタではなく波長可変性を有するバンドパスフィルタが必要である。
図22に示した波長可変光フィルタ101は移動ステージ103を機械的に移動させて波長の選択を行う。したがって、この光アドドロップモジュールに図22に示した波長可変光フィルタ101を使用しようとしても、アドあるいはドロップする波長を変更する際の応答速度に限界がある。このため、あらかじめ定められた時間帯に特定の通信路を特定の顧客に割り当てるといった限定的な要求に対応することはできても、波長のアドあるいはドロップの選択を時間的にダイナミックに行うことはできない。そこで、誘電体多層膜フィルタの入射角を変えることで任意の波長を得るようにする提案が行われている(たとえば特許文献2参照)。
図24は波長可変光フィルタとしての第2の提案を示したものである。第2の提案の波長可変光フィルタ114は基板115の一方の面に誘電体多層膜フィルタ116を形成したもので、誘電体多層膜フィルタ116の側から入射角θで光線117を入射させるようにしている。この波長可変光フィルタ114では、波長可変光フィルタ114の法線ベクトル118に対する入射角θに応じた波長の光が透過する。したがって、波長可変光フィルタ114を紙面と平行な面で回転させることで透過光の波長を変化させることができる。
図25は図24に示した波長可変光フィルタの中心波長の変化の様子を示したものである。この図で横軸は図24に示した波長可変光フィルタ114の入射角θを示し、縦軸は反射光の中心波長λを示している。入射角θが大きくなると共に中心波長λが小さくなる。
図26は、図24に示した波長可変光フィルタとその駆動系を表わしたものである。波長可変光フィルタ114を載置した回転台121は、減速ギア122を介してDC(直流)モータ123から回転力を受けて所定の減速比で所定の方向あるいはこれと逆方向に回転したり所望の角度で停止するようになっている。DCモータ123にはエンコーダ124が取り付けられているので、回転角度が検出される。したがって、図示しない操作部を用いて回転台121の回転角度を制御すると共に、波長可変光フィルタ114に固定された所定の方向から光線117を入射させると、透過光125の波長を任意に変化させることができる。波長可変光フィルタ114は、たとえば波長可変範囲を20nm〜100nmまで広い波長範囲で波長可変できる特徴を持っている。
しかしながら、この波長可変光フィルタ114もDCモータ123や減速ギア122等の機構を使用するので、高速応答を行おうとすると機構的な限界がある。したがって、波長可変スピードは最大でも0.1秒あたりの可変範囲が10nmと遅く、高速波長可変機能を必要とする分光分析、リモートセンシング、ガス分析、光メモリ、光医療診断等の光計測分野への適用を制限していた。
そこで、応答速度を更に高速化した波長可変光フィルタの研究が行われている。すなわち、電圧の制御によって液晶の屈折率を変化させることで選択される波長を可変とする波長可変光フィルタが、第3の提案として提案されている(たとえば特許文献3参照)。
図27は、この第3の提案による波長可変光フィルタの構造を表わしたものである。この波長可変光フィルタ131は、第1の層132とこれに対して光の入射側に配置された第2の層133と、第1の層132に対して光の出射側に配置された第3の層134を備えている。第2の層133および第3の層134における第1の層132に近い側には光学ミラー(誘電体ミラー)膜135A、135Bが配置されている。また、第2の層133および第3の層134におけるこれら以外の層は透明電極136A、136Bを構成している。これら第2の層133および第3の層134の外側には透明基板137A、137Bが配置され、更にそれらの外側にはARコート膜(無反射コート膜)138A、138Bが形成されている。
この第3の提案による波長可変光フィルタ131では、第1の層132が、電場により屈折率が変化する材料によって構成されている。これは、ポリマ(高分子)あるいは石英ガラス等の光透過性媒体中に直径が150nm(ナノメータ)以下の液晶ドロップレットが分散されてなる材料である。第2の層133は、使用波長帯で透明である。この第2の層133は電圧の印加の有無にかかわらその屈折率の変化に偏波依存性がない。このため波長可変光フィルタ131の特性にも偏波依存性は生じない。
この波長可変光フィルタ131は、マトリクス媒体として高分子を使用し、微小な液晶ドロップレット分散ポリマを、そのキャビティの中に挟んだファブリペローエタロン型の波長可変フィルタとなっている。透明電極136A、136Bに電圧を印加しない場合には、第1の層132を構成する液晶ドロップレット内の液晶分子はランダムな方向を向き、微小な液晶ドロップレット分散ポリマ層に入射した光の感じる屈折率は、ネマチック液晶の屈折率(ne、no)の平均の屈折率となる。図示しない交流電源を使用して電圧を印加すると、印加電界方向に液晶分子が揃い、屈折率はnoに近づいていく。このような屈折率の変化に伴って、波長可変光フィルタ131に入射した入射光141に対する透過スペクトルが変化する結果、透過光142の波長が変化する。
ところが、この図27に示した波長可変光フィルタ131では、印加電圧として100ボルト以上の高電圧を必要とする。また、波長の透過ピークが波長軸に対して周期的に幾つも発生する。したがって本来必要とする波長帯以外で発生する透過ピークを遮蔽するための他のフィルタを更に必要とすることになる。また、フィルタ特性が湿度や温度といった環境の影響を受けやすい。このため、高出力の入射光に対して良好な特性を得ることが難しい。
更にこの図27に示した波長可変光フィルタ131では、液晶を駆動するために駆動がAC(交流)でなければならず、DC(直流)で駆動することはできない。仮にDC駆動を行おうとすると、絶縁破壊を生じてしまう。したがって、この波長可変光フィルタ131は波長自体を変化させていくことが可能であっても、所望のフィルタ波長に固定することができないという大きな問題がある。そこで第4の提案として単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタが提案されている(たとえば特許文献4参照)。
図28は、第4の提案の単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタを示したものである。単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151は、基板152上に第1ミラースタック層153を形成し、その上に第1の透明導電膜(mC)154を介して2次の電気光学効果を有する常誘電体層(sM)155を形成し、更にその上に第2の透明導電膜(mC)156を介して第2ミラースタック層157を形成した基本構成となっている。
第1ミラースタック層153および第2ミラースタック層157は、共に4分の1波長膜厚の2種類の異なる誘電体物質Hおよび誘電体物質Lを複数組積層したもので構成されている。2種類の異なる誘電体物質の屈折率をそれぞれnH、nLと表わすものとする。また、屈折率の大きい方を屈折率nHとして、この誘電体物質(膜)を本明細書では高屈折率誘電体薄膜Hと呼ぶことにする。屈折率の小さい方の誘電体物質(膜)を本明細書では低屈折率誘電体薄膜Lと呼び、その屈折率は屈折率nLで表わすことにする。光フィルタの膜設計では、ある設計波長λ0を中心に高反射率を有する誘電体多層膜ミラーを実現する膜構造を次の表現構造(1)で表わすことができる。
基板/ H L H L ……H L / 媒質 ……(1)
ここで高屈折率誘電体薄膜Hおよび低屈折率誘電体薄膜Lは共に4分の1波長膜厚となっており、ある設計波長λ0と屈折率nH、nLとの間には、次の(2)式および(3)式が成立する。
H=λ0/4nH ……(2)
L=λ0/4nL ……(3)
第2ミラースタック層157の上には図示しないが結合層(最上層の低屈折率誘電体薄膜L)を設ける。この結合層は媒質と接している。一般的に媒質は空気、樹脂溶剤、固形基板等のいずれかである。
表現構造(1)はある基板152の上に2種類の高屈折率誘電体薄膜Hおよび低屈折率誘電体薄膜Lからなる誘電体薄膜を交互に積層することを表わしている。したがって、この表現構造(1)は次の表現構造(4)のように簡便に表わすことができる。
基板 / (H L)N / 媒質 ……(4)
表現構造(4)は、高屈折率誘電体薄膜Hおよび低屈折率誘電体薄膜Lのペアの層をN回繰り返し積層することを意味している。たとえば、次の表現構造(5)は表現構造(6)と等価である。
基板 / H L H L H L /媒質 ……(5)
基板 /(H L)3/ 媒質 ……(6)
ところで、ある特定の光波長成分のみを分離して取り出す場合には、バンドパスフィルタを用いることが多い。誘電体多層膜によるバンドパスフィルタの共振器の一般的な構造は次の表現構造(7)で表わすことでできる。
A=[(HL)N H sL H(LH)N L] ……(7)
ここで、符号Nは“0”を含む整数(0、1、2、3、……)を表わしている。また符号sは正の偶数(2、4、6、8、……)を表わしている。“(HL)N H”と“H (LH)N”はそれぞれ第1ミラースタック層153あるいは第2ミラースタック層157と呼ばれる層を表わしている。“sL”はスペーサ層である。最後のL層は結合層である。
この表現構造(7)は単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151の基本共振器構造を表わしている。m重共振器構造の場合は、結合層を介してこの表現構造(7)がm組順次図28に示す基板152の上側の面に積層された構造となっている。基本共振器構造をこのようにm重共振器構造として複数積層するように使用することで、たとえばバンドパスフィルタとしてのフィルタ特性をシャープにすることができる。結合層は低屈折率材の4分の1膜厚の層であり、基本共振器構造の間に配置される。
図28に示した単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151では、波長可変性を備えるために、次の表現構造(8)で表わされるファブリ・ペロー共振器構造をとっている。
B=[(HL)N mC sM mC (LH)N L] ……(8)
ここで、符号Cと符号Mは、それぞれ導電性膜と電気光学効果を有する常誘電体を表わしている。これら常誘電体C、Mは4分の1物理膜厚となっている。係数mとsは、それぞれ奇数(1、3、5、……)と偶数(2、4、6、……)である。すなわち、表現構造(8)では表現構造(7)における第1および第2ミラースタック層のスペーサ層と接する誘電体物質Hの層が、導電性薄膜(mC)、すなわち第1の透明導電膜154および第2の透明導電膜156に置き換わり、スペーサ層が電気光学効果を有する常誘電体(sM)としての常誘電体層155に置き換わっていることが分かる。
この図28に示した単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151では、第1の透明導電膜154と第2の透明導電膜156の間に駆動電源159を接続しており、これらの間に印加する電圧Vを変化させることで波長可変性を実現するようになっている。この場合における周波数応答について次に説明する。
単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151では、第1および第2ミラースタック層153、157と接する導電性薄膜154、156が有限の電気抵抗値Rを持ち、またスペーサ層を構成する2次の電気光学係数をもつ常誘電体層155が静電容量Cを持っている。これらの値の積で時間応答が制限される。今、第1および第2の透明導電膜154、156の抵抗率をρ[Ωcm]、これらの表面積をSとする。この場合、抵抗値Rと静電容量Cはそれぞれ次の(9)あるいは(10)式で表わすことができる。
R=ρ(mC/S) ……(9)
C=εr・ε0・(S/sM) ……(10)
ここで、符号εrはスペーサ層を構成する常誘電体層155の比誘電率を表わしており、符号ε0は真空の誘電率を表わしている。
なお、本明細書では、次のように各用語を定義する。
「多結晶膜」とはθ−2θX線回折パターンによって、単相ではあるが色々な面指数が混在する膜状態をいう。すなわち、結晶方位に対応する回折強度が全体の回折強度の1%以上であると同定されるものを意味する。
「配向膜」とは、多結晶膜で更に、θ−2θX線回折パターンによって一つの面指数とその高次ピークが現われる場合をいう。
「エピタキシャル膜」とは配向膜において、更にX線ポールフィギャやRHEED(反射高速電子線回折)、LEED(低速電子線回折)等によって、面内の結晶方位が各結晶粒でバラバラな「面内ランダム配向膜」と2種類以上の特定の方向に配向した結晶粒が混在する「面内選択配向膜」と完全に一つの方向に配向した「面内配向膜」を含む。面内配向膜の場合はバルクの電気光学係数を薄膜においてほぼ実現することができるが、それ以外の配向膜や多結晶膜においては、電気光学係数が減じて実現する。
図28に示した単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151では、その結合層158(最上層の低屈折率誘電体薄膜L)側から入射光線161を入射させ、BK7ガラス基板152の側から透過する透過光線162を得る。この単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151に対して外部よりランダム偏光光線を垂直入射させて、スペーサ層としての常誘電体層155の厚さ方向に直流電圧を印加する。すると透過光線162として、単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151の中心波長の光線分のみが透過することになる。
特開平8−227014号公報(第0025段落、図1) 特開平5−241083号公報(第0016段落、図1)、特開平9−325287号公報(第0009段落、図1) 特開平11−119186号公報(第0007、第0014段落、図1) 特願2003−165377号(第0071〜第0088段落、図1)
この図28に示した第4の提案の単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタでは、波長を変化させるために機械部品を使用していないので、図22あるいは図24に示した装置と比べると桁違いに応答速度が速くなる。しかしながら、光アドドロップモジュール等の光部品の飛躍的な発展が今後も期待される中で、波長可変光フィルタに要求される応答速度は今後もますます高速化してくることは必須である。
また、単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタと異なり2重、3重とキャビティ数を増加させた多層膜フィルタも提案されているが、このようにキャビティ数が増加するほど多層膜フィルタを構成する各層の膜厚制御が厳しくなるという問題がある。光通信技術において使用されている波長可変フィルタ装置では、基板の寸法は50mm×4mm程度の物が一般に使用されている。このように50mmにわたる1次元方向に膜厚勾配を有する大きな基板形状全面に、およそ100層以上にもなる誘電体多層膜フィルタを所望の膜厚分布で実現するのは困難である。またこのような誘電体多層膜フィルタを歩留り良く生産することは困難であり、この結果として誘電体多層膜フィルタの価格が非常に高額となる。光通信分野で使用されている透過バンド幅が1nm以下の狭帯域の波長可変バンドパスフィルタを実現するには、誘電体多層膜フィルタを構成する各層を0.01%以下の誤差で所望の膜厚まで成膜することが要求される。この精度を満足する良品領域は、成膜装置の成膜中の膜厚分布変動、成膜状態の経時変化等のため一般的におよそ3〜10mmの範囲でしかない。したがって、新たな波長可変バンドパスフィルタの登場が望まれている。
以上、波長可変光フィルタについての課題を説明したが、特定の波長成分を選択的に吸収したり反射する波長可変光フィルタ以外の光学素子についても従来から同様であった。また、波長可変光フィルタを使用して光信号をアドドロップする光アドドロップモジュールならびに出力する波長を任意に変更することのできる波長可変光源についても同様の課題があった。
そこで本発明の目的は、波長を任意に変化させることができ、しかもその応答速度の更なる向上が可能な光学素子、波長可変光フィルタ、光アドドロップモジュールおよび波長可変光源を得ることにある。
そこで、本発明では波長選択機能の設計や製造が容易な薄膜型の光学素子に着目した。これを誘電体多層膜フィルタを例に説明する。誘電体多層膜フィルタは膜設計により長波長通過フィルタ、短波長通過フィルタ、バンドパスフィルタ、ノッチフィルタ等、種々のフィルタ特性を実現することができる。また、昨今の光通信用フィルタとして使用されており、その対環境性等の信頼性の高さが実証されている。
従来の誘電体多層膜フィルタは受動素子(パッシブデバイス)であり、薄膜の屈折率や消衰係数は温度、湿度、光照射、電圧印加等に対して大きな変化を示さず安定であった。これに対して、これらの外部要因のいずれかの方法で誘電体多層膜フィルタを構成する薄膜の光学膜厚を制御することが可能であればよい。
そこで本発明では物質の電気光学効果に着目した。電気光学効果とは外部印加電圧により屈折率が変化する効果である。印加電圧に対して線形に屈折率変化する効果を1次の電気光学効果という。これはポッケルス効果とも呼ばれており、強誘電体で発現する。1次の電気光学効果における屈折率の変化量と印加電圧の間には次の(11)式が成立する。
Δnij=−(1/2)nM 3ij(V/d) ……(11)
ここで、符号nMは電気光学効果を有する媒質の屈折率、符号rijは1次の電気光学係数、符号Vとdはそれぞれ印加電圧と媒質の電極間の厚さである。1次の電気光学係数rijは結晶構造の対称性により、係数が0となる要素や相等しい要素などがある。例えば、正方晶系の4mmに属するBaTiO3の場合は、以下のようになる。
13=r23、r51=r42、r33≠0、それ以外の係数は“0”となる。
また、印加電圧の自乗に比例する屈折率変化を2次の電気光学効果と呼びカー効果とも呼ばれている。これは常誘電体において発現する。2次の電気光学効果における屈折率の変化量と印加電圧の間には次の(12)式が成立する。
Δnij=−(1/2)nM 3ij(V/d)2 ……(12)
ここで、Rijは2次の電気光学係数である。常誘電相の場合等方媒質であるので、対称性より、R11=R22=R33、R12=R13=R23=R31=R32、R44=R55=R66の関係が成立する。また、これら以外の係数は“0”となる。
いずれの効果においても屈折率が変化することに伴い誘電体多層膜フィルタの光学膜厚は屈折率に比例するため、バンドパスフィルタの中心波長は波長シフトを起こすことができる。
ところで、光通信用に適した電気光学効果を有する薄膜として下記の条件を満足することが必要である。
(1)電気光学係数が大きいこと。
(2)温度、湿度等に対する対環境性に優れていること。
(3)薄膜自体の損失が少ないこと。
(4)長期間安定動作すること。
(5)成膜条件に再現性があり安定であること。
(6)希少金属物質を大量に必要としないこと。
このような条件を満足するものとして、本発明では1次あるいは2次の電気光学効果を利用することを見出した。これを説明する。電圧を0Vに落としても、印加状態を維持するメモリ機能は1次の電気光学効果で利用することができる。この機能は、停電等の電源供給が停止した場合にも、印加状態を維持する機能である。
図29は電束密度と電場についてのヒステリシスを表わしたD−Eヒステリシス曲線を表わしたものである。強誘電相の1次の電気光学効果を用いてメモリ機能を使用したい場合は、このP−Eヒステリシス曲線において、印加電場として図中のOAからABC、CBDの経路を順に経ることで、永続分極(Pr: remanent polarization)を形成することができる。点Dでは印加電圧が0Vの場合であるが永続分極を有しており、電気光学膜中に分極による電界が維持される。このため、電気光学効果による屈折率変化が維持され、これをメモリ機能として利用することができる。メモリ機能は、膜の相状態が変化しない限り、すなわち周囲温度が変化して、相変化(phase transition)が生じない限り持続する。メモリ機能を消去する方法としては、図29に示すように一つには負の印加電場を加えてDFの経路を経ることにより分極をゼロにすればよい。
一方で強誘電相では使用材料にも依るが、比誘電率は概ね1000以上となるため、高速応答特性に制限を与える。その場合には2次の電気光学効果を利用するとよい。常誘電相の2次の電気光学効果を用いると、高速応答特性を得ることができる。メモリ機能を極力廃止したい場合には2次の電気光学効果を利用するとよい。常誘電相では、使用材料にも依るが、比誘電率は概ね1000以下とすることができるので、高速応答特性の利点がある。
BST(チタン酸バリウム・ストロンチウム)系電気光学材料の場合、X=1なるSrTiO3は、室温付近において、常誘電相をとる。したがって2次の電気光学効果を利用することができ、比誘電率は約300と小さいので高速応答特性に優れている。メモリ機能を利用したい場合はBa/Srの比率を増加し、強誘電相として利用することもできる。PLZT系やKTN系電気光学材料の場合も同様にその成分比を調整することで、強誘電相、常誘電相、さらには比誘電率や分極の大きさを調整することができる。
請求項1記載の発明では、(イ)屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第1ミラースタック層とその第1ミラースタック層上に形成された導電性の第1の導電性膜とを備えた第1の複合スタック層と、(ロ)屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第2ミラースタック層とその第2ミラースタック層上に形成された導電性の第2の導電性膜とを備えた第2の複合スタック層と、(ハ)これら第1および第2の複合スタック層の間に配置され、1次あるいは2次の電気光学効果を有する平板状の誘電体からなるスペーサ層と、(ニ)第1の複合スタック層および第2の複合スタック層の少なくとも一方とスペーサ層の間に形成された導電バッファ層と、(ホ)第1および第2の導電性膜に印加する電圧を変更することで第1の複合スタック層側あるいは第2の複合スタック層側からこれらの層を透過または反射する光線のスペクトル特性を制御する特性制御手段とを光学素子に具備させる。
すなわち請求項1記載の発明では、屈折率の異なる少なくとも2つ以上の誘電体薄膜から構成される第1ミラースタック層とその上に形成される導電性膜からなる第1の導電性膜とを備えた第1の複合スタック層と、同様の構成の第2の複合スタック層とをスペーサ層を挟むように配置し、1次あるいは2次の電気光学効果を有する酸化物誘電体からなるファブリ・ペロー共振器構造を基本構造にもつ波長可変光フィルタ等の光学素子を構成する。特性制御手段は、第1および第2の導電性膜に印加する電圧を変更することで第1の複合スタック層側あるいは第2の複合スタック層側からこれらの層を透過または反射する光線のスペクトル特性を制御することになる。一例としては、波長可変光フィルタ等の光学素子の光学長を変化させることになる。この請求項1記載の発明では、1次あるいは2次の電気光学効果を利用するので、1次の電気光学効果を利用すると電圧をオフにしても状態を保持できる自己保持機能を使用することができる。また、2次の電気光学効果を利用すると、1次の電気光学効果で生じるヒステリシス効果がほとんど発生しない。このため、印加電圧に対して波長可変光フィルタ等の光学素子の中心波長を高精度に設定制御することが可能になる。
なお、請求項1記載の発明では、他の請求項でも共通するが、第1の複合スタック層および第2の複合スタック層の少なくとも一方とスペーサ層の間に導電バッファ層を形成することにしている。すなわち、導電バッファ層は電気光学膜の一方の面に存在しても両方の面に存在してもよい。導電バッファ層の導入には、一長一短があり、主な長所は高速応答および電気光学膜のエピタキシャル成長が容易になることである。そのためには、下地導電層にのみ導電バッファ層を形成してもよい。その場合には波長可変時の挿入損失の増加が半分に改善される利点がある。
ところが、透明導電膜の抵抗率が大きく、その抵抗値が高速応答性に制限を与える場合には、スペーサ層を形成する電気光学膜の上に接して導電バッファ層を形成すると高速応答性を向上することができる。透明導電膜自体は第1ミラースタック層に接する第1の複合導電層と、第2ミラースタック層に接する第2の複合導電層で同一材料を基本的に用いるが、それに制限されるものではない。異なる材料からなる透明導電膜をそれぞれの複合導電層に使用してもよい。
導電バッファ層の導入自体は以上の他に電気光学膜で生じるリーク電流の低減・改善や、電気光学膜を構成するイオン(例えば酸素イオン)の抜けを低減、改善することを重視する場合には、特に導入することが望ましい。以上のように、波長可変範囲、応答速度、繰り返しサイクル特性、リーク電流、温度特性等を総合的に検討し、導電バッファ層の導入およびその材料選定が行なわれることが望ましい。
請求項2記載の発明では、(イ)4分の1波長膜厚を有する高屈折率材からなる第1の誘電体薄膜とこの高屈折率材よりも低い屈折率で4分の1波長膜厚を有する低屈折率材からなる第2の誘電体薄膜とを正の整数nだけ繰り返し積層してなる第1および第2ミラースタック層と、(ロ)これら第1および第2ミラースタック層の間に配置され4分の1波長の膜厚の正の偶数倍の膜厚を有する1次あるいは2次の電気光学効果を有する誘電体薄膜からなるスペーサ層と、(ハ)このスペーサ層における第1ミラースタック層側の面と第2ミラースタック層側の面の少なくとも一方に形成された導電バッファ層と、(ニ)第1ミラースタック層と一面を接し、スペーサ層あるいは導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第1の導電性膜と、(ホ)第2ミラースタック層と一面を接し、スペーサ層あるいは導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第2の導電性膜と、(へ)これら第1および第2の導電性膜に印加する電圧を変更することで第1ミラースタック層側あるいは第2ミラースタック層側からこれらの層を透過または反射する光線の通過帯域を変更する通過帯域制御手段とを光学素子に具備させる。
すなわち請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明と同様の光学素子を異なる技術思想として表現している。
請求項3記載の発明の光学素子では、(イ)屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第1ミラースタック層とその第1ミラースタック層上に形成された導電性の第1の導電性膜とを備えた第1の複合スタック層と、屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第2ミラースタック層とその第2ミラースタック層上に形成された導電性の第2の導電性膜とを備えた第2の複合スタック層と、これら第1および第2の複合スタック層の間に配置され、1次あるいは2次の電気光学効果を有する平板状の誘電体からなるスペーサ層と、第1の複合スタック層および第2の複合スタック層の少なくとも一方とスペーサ層の間に形成された導電バッファ層と、第1および第2の導電性膜に印加する電圧を変更することで第1の複合スタック層側あるいは第2の複合スタック層側からこれらの層を透過または反射する光線のスペクトル特性を制御する特性制御手段とを備えたキャビティを、(ロ)複数層積層したことを特徴としている。
すなわち請求項3記載の発明では、請求項1記載の発明が単一キャビティ型であるのに対して、このキャビティを複数積層したm重キャビティ型光学素子を規定している。ここでmは2以上の整数である。それぞれのキャビティごとに特性制御手段が設けられているので、キャビティごとに印加電圧を制御して光線の透過等の特性制御を行うことができる。
請求項4記載の発明の光学素子では、(イ)4分の1波長膜厚を有する高屈折率材からなる第1の誘電体薄膜とこの高屈折率材よりも低い屈折率で4分の1波長膜厚を有する低屈折率材からなる第2の誘電体薄膜とを正の整数nだけ繰り返し積層してなる第1および第2ミラースタック層と、これら第1および第2ミラースタック層の間に配置され4分の1波長の膜厚の正の偶数倍の膜厚を有する1次あるいは2次の電気光学効果を有する誘電体薄膜からなるスペーサ層と、このスペーサ層における第1ミラースタック層側の面と第2ミラースタック層側の面の少なくとも一方に形成された導電バッファ層と、第1ミラースタック層と一面を接し、スペーサ層あるいは導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第1の導電性膜と、第2ミラースタック層と一面を接し、スペーサ層あるいは導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第2の導電性膜と、これら第1および第2の導電性膜に印加する電圧を変更することで第1ミラースタック層側あるいは第2ミラースタック層側からこれらの層を透過または反射する光線の通過帯域を変更する通過帯域制御手段とを備えたキャビティを、(ロ)複数層積層したことを特徴としている。
すなわち請求項4記載の発明では、請求項2記載の発明が単一キャビティ型であるのに対して、このキャビティを複数積層したm重キャビティ型光学素子を規定している。ここでmは2以上の整数である。それぞれのキャビティごとに特性制御手段が設けられているので、キャビティごとに印加電圧を制御して光線の透過等の特性制御を行うことができる。
請求項5記載の発明では、請求項1〜請求項4いずれかに記載の光学素子で、導電バッファ層は、金属材料、酸化物材料、窒化物材料、合金材料の少なくとも1つ以上からなり、その抵抗率が10-2Ωcm以下であり、その厚さが0.1nmから100nmの間であることを特徴としている。
この請求項5記載の発明で金属材料の場合は、例えば、Au(金)(格子定数4.078Å)、Ag(銀)(格子定数4.086Å)、Pt(プラチナ)(格子定数3.924Å)、Ir(イリジウム)(格子定数3.939Å)、Al(アルミニウム)(格子定数4.050Å)、Ni(ニッケル)(格子定数3.524Å)、Cu(銅)(格子定数3.615Å)、Nb(ニオブ)(格子定数3.301Å)、V(バナジウム)(格子定数3.027Å)、Si(シリコン)(格子定数5.431Å)、Ge(ゲルマニウム)(格子定数5.658Å)、W(タングステン)(格子定数3.1652Å)、Mo(モリブデン)(格子定数3.147Å)、Bi(ビスマス)(格子定数4.546Å、11.860Å)、Be(ベリリウム)(格子定数2.268Å、3.5942Å)、Mg(マグネシウム)(格子定数3.209Å、5.210Å)、Sb(アンチモン)(格子定数4.307Å、11.273Å)、In(インジウム)(格子定数3.252Å、4.946Å)、Ta(タンタル)(格子定数 α型3.306Å、β型10.194Å、5.313Å)、Ti(チタン)(格子定数 α型2.950Å、4.6833Å、β型3.307Å)、Sn(錫)(格子定数 α型6.504Å、β型5.831Å、3.181Å)、Fe(鉄)(格子定数 α型2.866Å、γ型3.647Å、δ型2.9315Å)、Mn(マンガン)(格子定数 α型8.9122Å、β型6.470Å、γ型3.863Å)等がある。
酸化物材料の場合は、例えば、結晶構造別に記すと、ペロブスカイト構造ARO3である(A=Ca、Sr、Ba)、(R=Ru、V、Mo、Co、Ir、Cr)、LaRO3、(R=Ti、Ni)、LaXSr1-XCoO3、ReO3など、NaCl構造のNbO、NdO、SmO、LaO、TiO、VO、EuOなど、ルチル構造のRuO2、IrO2、OsO2、RhO2、ReO2、MoO2、CrO2、WO2、SnO2、MnO2など、コランダム構造のV23、Ti23など、スピネル構造のLiTi24、LiV24、Fe34、パイロクロア構造のPb227(R=Ir、Os、Ru)、Tl227(R=Ir、Os、Mn)、Bi227(R=Ru、Ir、Rh)など、その他(LaXSr1-X2CuO4、YBa2Cu37-X、Bi2Sr2Can-1Cun2n+4などがある。これらの酸化物材料の格子定数は2〜15Åの範囲内にある。その他、窒化物材料では、AN(A=Ti、Nb、Ta)などがある。その他、合金材料の導電性薄膜であるNb3R(R=Ge、Sn、Si)、ACr(A=Ni、Cr、Ti)なども適用できる。
なお、導電バッファ層は、スペーサ層として使用する電気光学膜がエピタキシャル成長できるように、その格子定数の近傍のものを適用するとよい。格子定数はそのハイオーダーで整合を取ることもできるが、望ましくは基本次数での整合がよい。基本次数での整合とは、下地となる導電バッファ層と、その上に形成される電気光学膜が、同じ面方位(例えば、(001)など)で接していて、その格子定数が整合している場合である。ハイオーダー整合の場合は、例えば面方位(002)なる下地導電バッファ層の上に(110)面のエピタキシャル成長を形成する場合で、面方位(002)なる下地薄膜の格子定数と、その上に形成される電気光学膜の面方位(110)の格子定数が整合する場合である。
格子定数が大きく異なると、格子歪みによる点欠陥や転移等が生じて膜質を劣化させる要因となる。導電バッファ層の条件には、以上の他に、更には高速応答性を向上するために、室温での抵抗率が10-2Ωcm以下の導電性薄膜が望ましい。この場合、スペーサ層を構成する電気光学薄膜の静電容量や素子の形状大きさにも依るが、1kHz以上の高速性が実現する。更に酸化物導電膜であるRuO2、IrO2、SrRuO3、(LaXSr1-X2CuO4、YBa2Cu37-X、Bi2Sr2Can-1Cun2n+4などは、繰返し電圧サイクルに対する疲労耐性に優れており、スペーサ層を構成する電気光学膜の酸素イオンの欠損“抜け”を改善し、1012回以上の繰返し数にも耐え得る利点がある。
低い挿入損失で広波長可変範囲を得るためには、導電バッファ層の選択が重要である。導電バッファ層の膜厚tbが厚いと、その上に積層される電気光学膜のエピタキシャル成長を容易にするが、反対に導電バッファ層での吸収損失が増加し、フィルタ挿入損失が増加してしまう。そこで低損失とするためには、導電バッファ層には金属材料や酸化物あるいは窒化物の導電材料が使用されるが、例えば、導電バッファ層内での光電界強度振幅が十分小さく、波の“節”の部分となるようにすればよく、その光学長が小さいことが望ましい。それは、複素屈折率をnC=n−ikとおく(ただし、iは虚数。)と、複素屈折率の実部n=Re[nC]が小さいことに相当する。また虚数部k=Im[nC]は消衰係数であって、膜内の損失に比例するので、これも小さいことが望ましい。ペロブスカイト構造ABO3型電気光学膜材料には、導電バッファ層として、例えばAg(銀)がその例に入る。代表的な導電薄膜であるAg、Au、Pt薄膜の複素屈折率は波長1〜2μmにおいて、それぞれ0.129−i6.83、0.54−i11.2、3.5−i5.8である。まさにAg薄膜がその例に入ることが分かる。
エピタキシャル膜形成には成膜温度が400℃以上の高温での成膜となるが、成膜中あるいは成膜後の冷却過程において、基板と多層膜間、あるいは多層膜間での膜応力のためにクラックは割れなどの破損が生じる危険がある。その場合には、熱膨張係数の近い導電バッファ層の適用、あるいは多層膜と熱膨張係数の近い基板の選定を行うことで回避することが可能である。また、環境雰囲気において一定電圧下でのフィルタ中心波長の温度シフトを最小化するためにも熱膨張係数の最適な基板を選定することも可能で、温度安定性の優れた波長可変光フィルタ等の光学素子を実現することができる。
請求項6記載の発明では、請求項1〜請求項4いずれかに記載の光学素子で、スペーサ層は、所定の層上に蒸着形成された1次あるいは2次の電気光学効果を有する酸化物誘電体薄膜であって、その膜構造は多結晶膜、配向膜、エピタキシャル膜のいずれかであって、その厚さは10nmから50μmの間に設定されていることを特徴としている。
すなわち請求項6記載の発明では、この厚み範囲であれば、波長400nmの紫外域から、赤外域までの波長可変光フィルタ等の光学素子として使用することができる。単結晶と同等の電気光学係数を得るにはエピタキシャル膜が望ましいが、多結晶膜や配向膜であっても電気光学効果を発現することができる。
請求項7記載の発明では、請求項6記載の光学素子で、1次あるいは2次の電気光学効果を有する酸化物誘電体は、Pb1-XLaX(Zr1-YTiY1-X/43、(0≦X<1.0、0≦Y≦1.0)であることを特徴としている。
すなわち請求項7記載の発明では、1次あるいは2次の電気光学効果を有する酸化物誘電体が、Pb1-XLaX(Zr1-YTiY1-X/43、(0≦X<1.0、0≦Y≦1.0)となっている。Pb1-XLaX(Zr1-YTiY1-X/43は上記した括弧内に示す条件を満足すると、La添加量とZr/Ti比を調整することによりキュリー温度を調整できるので、室温を含む−40℃から+85℃の温度範囲において1次の電気光学効果を有する強誘電相や、2次の電気光学効果を有する常誘電相を示すことができる。
更に、異なるイオンを添加することで温度特性やP(誘電分極)−E(電場)ヒステリシス特性の改善、誘電率や誘電損失などの電気光学特性を調整することが可能で、その他、膜中のグレインサイズを調整することも可能で、そのためにPbの一部をCa、Sr、Ba、Mg、K、Naなどイオン半径の同等のイオンや異なるイオンを故意に添加したり、BサイトのZrやTiの一部をMg、Nb、Mn、W、Bi、Ce、Fe、Cr、Ta、Sc、Co、Zr、Sb、Zn、Cd、Y、Ni、Te、Al、Inの単数あるいは複数の組合せで置換することで特性を改善することができる。
請求項8記載の発明では、請求項6記載の光学素子で、1次あるいは2次の電気光学効果を有する酸化物誘電体は、SrXBa1-XTiO3、(0≦X≦1.0)であることを特徴としている。
すなわち請求項8記載の発明では、1次あるいは2次の電気光学効果を有する酸化物誘電体が、SrXBa1-XTiO3(0≦X≦1.0)であることを特徴としている。SrXBa1-XTiO3は上記した括弧内に示す条件を満足すると、室温を含む−40℃から+85℃の温度範囲において、Ba/Sr比を調整することでキュリー温度を調整できるので、1次の電気光学効果を有する強誘電相や、2次の電気光学効果を有する常誘電相を示すことができる。本材料系においても上述の通り、異なるイオン添加により温度特性や誘電率や誘電損失などの電気光学物性を調整することが可能で、膜内のグレインサイズを調整することも可能である。
請求項9記載の発明では、請求項6記載の光学素子で、1次あるいは2次の電気光学効果を有する酸化物誘電体は、KTaXNb1-X3、(0≦X≦1.0)であることを特徴としている。
すなわち請求項9記載の発明では、1次あるいは2次の電気光学効果を有する酸化物誘電体が、KTaXNb1-X3 (0≦X≦1.0)であることを特徴としている。KTaXNb1-X3は上記した括弧内に示す条件を満足すると、室温を含む−40℃から+85℃の温度範囲において、Ta/Nb比を調整することでキュリー温度を調整できるので、1次の電気光学効果を有する強誘電相や、2次の電気光学効果を有する常誘電相を示すことができる。本材料系においても上述の通り、異なるイオン添加により温度特性や誘電率や誘電損失などの電気光学物性を調整することが可能で、膜内のグレインサイズを調整することも可能である。
以上の他に電気光学膜として、1次の電気光学効果が発現する擬イルメナイト構造であるLiNbO3(電気光学係数r=31pm/V、格子定数:5.148Å、13.863Å)、LiTaO3(電気光学係数r=30pm/V、格子定数:5.154Å、13.784Å)、タングステンブロンズ構造のBaNaNbO15(BNN)(電気光学係数r=570pm/V、格子定数:17.626Å、17.592Å、7.995Å)、Sr1-XBaXNb26(SBN)(電気光学係数r=1340pm/V、格子定数:12.49Å、3.95Å)などを適用することもできる。
請求項10記載の発明では、(イ)屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第1ミラースタック層とその第1ミラースタック層上に形成された導電性の第1の透明導電性膜とを備えた第1の複合スタック層と、(ロ)屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第2ミラースタック層とその第2ミラースタック層上に形成された導電性の第2の透明導電性膜とを備えた第2の複合スタック層と、(ハ)これら第1および第2の複合スタック層の間に配置され、1次あるいは2次の電気光学効果を有する平板状の誘電体からなるスペーサ層と、(ニ)第1の複合スタック層および第2の複合スタック層の少なくとも一方とスペーサ層の間に形成された導電バッファ層と、(ホ)第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を変更することで第1の複合スタック層側あるいは第2の複合スタック層側からこれらの層を透過または反射する光線のスペクトル特性を制御する特性制御手段とを波長可変光フィルタに具備させる。
すなわち請求項10記載の発明では、請求項1記載の発明の1つの形としての単一キャビティ型の波長可変光フィルタを示している。
請求項11記載の発明では、(イ)4分の1波長膜厚を有する高屈折率材からなる第1の誘電体薄膜とこの高屈折率材よりも低い屈折率で4分の1波長膜厚を有する低屈折率材からなる第2の誘電体薄膜とを正の整数nだけ繰り返し積層してなる第1および第2ミラースタック層と、(ロ)これら第1および第2ミラースタック層の間に配置され4分の1波長の膜厚の正の偶数倍の膜厚を有する1次あるいは2次の電気光学効果を有する誘電体薄膜からなるスペーサ層と、(ハ)このスペーサ層における第1ミラースタック層側の面と第2ミラースタック層側の面の少なくとも一方に形成された導電バッファ層と、(ニ)第1ミラースタック層と一面を接し、スペーサ層あるいは導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第1の透明導電性膜と、(ホ)第2ミラースタック層と一面を接し、スペーサ層あるいは導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第2の透明導電性膜と、(へ)これら第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を変更することで第1ミラースタック層側あるいは第2ミラースタック層側からこれらの層を透過または反射する光線の通過帯域を変更する通過帯域制御手段とを波長可変光フィルタに具備させる。
すなわち請求項11記載の発明では、請求項2記載の発明の1つの形としての単一キャビティ型の波長可変光フィルタを示している。
請求項12記載の発明の波長可変光フィルタでは、(イ)屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第1ミラースタック層とその第1ミラースタック層上に形成された導電性の第1の透明導電性膜とを備えた第1の複合スタック層と、屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第2ミラースタック層とその第2ミラースタック層上に形成された導電性の第2の透明導電性膜とを備えた第2の複合スタック層と、これら第1および第2の複合スタック層の間に配置され、1次あるいは2次の電気光学効果を有する平板状の誘電体からなるスペーサ層と、第1の複合スタック層および第2の複合スタック層の少なくとも一方とスペーサ層の間に形成された導電バッファ層と、第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を変更することで第1の複合スタック層側あるいは第2の複合スタック層側からこれらの層を透過または反射する光線のスペクトル特性を制御する特性制御手段とを備えたキャビティを、(ロ)複数層積層したことを特徴としている。
すなわち請求項12記載の発明では、請求項3記載の発明の1つの形としてのm重キャビティ型の波長可変光フィルタを示している。
請求項13記載の発明の波長可変光フィルタでは、(イ)4分の1波長膜厚を有する高屈折率材からなる第1の誘電体薄膜とこの高屈折率材よりも低い屈折率で4分の1波長膜厚を有する低屈折率材からなる第2の誘電体薄膜とを正の整数nだけ繰り返し積層してなる第1および第2ミラースタック層と、これら第1および第2ミラースタック層の間に配置され4分の1波長の膜厚の正の偶数倍の膜厚を有する1次あるいは2次の電気光学効果を有する誘電体薄膜からなるスペーサ層と、このスペーサ層における第1ミラースタック層側の面と第2ミラースタック層側の面の少なくとも一方に形成された導電バッファ層と、第1ミラースタック層と一面を接し、スペーサ層あるいは導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第1の透明導電性膜と、第2ミラースタック層と一面を接し、スペーサ層あるいは導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第2の透明導電性膜と、これら第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を変更することで第1ミラースタック層側あるいは第2ミラースタック層側からこれらの層を透過または反射する光線の通過帯域を変更する通過帯域制御手段とを備えたキャビティを、(ロ)複数層積層したことを特徴としている。
すなわち請求項13記載の発明では、請求項4記載の発明の1つの形としてのm重キャビティ型の波長可変光フィルタを示している。
請求項14記載の発明では、(イ)屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第1ミラースタック層とその第1ミラースタック層上に形成された導電性の第1の透明導電性膜とを備えた第1の複合スタック層と、屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第2ミラースタック層とその第2ミラースタック層上に形成された導電性の第2の透明導電性膜とを備えた第2の複合スタック層と、これら第1および第2の複合スタック層の間に配置され、1次あるいは2次の電気光学効果を有する平板状の誘電体からなるスペーサ層と、第1の複合スタック層および第2の複合スタック層の少なくとも一方とスペーサ層の間に形成された導電バッファ層と、第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を変更することで第1の複合スタック層側あるいは第2の複合スタック層側からこれらの層を透過または反射する光線のスペクトル特性を制御する特性制御手段とを具備する波長可変光フィルタと、(ロ)第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を制御することでこの波長可変光フィルタを通過する光信号の波長を動的に変化させる波長選択手段とを光アドドロップモジュールに具備させる。
すなわち請求項14記載の発明では、単一キャビティ型の波長可変光フィルタを使用して光アドドロップモジュールを構成している。高速応答性により光アドドロップモジュールの実現が可能になる。
請求項15記載の発明では、(イ)4分の1波長膜厚を有する高屈折率材からなる第1の誘電体薄膜とこの高屈折率材よりも低い屈折率で4分の1波長膜厚を有する低屈折率材からなる第2の誘電体薄膜とを正の整数nだけ繰り返し積層してなる第1および第2ミラースタック層と、これら第1および第2ミラースタック層の間に配置され4分の1波長の膜厚の正の偶数倍の膜厚を有する1次あるいは2次の電気光学効果を有する誘電体薄膜からなるスペーサ層と、このスペーサ層における第1ミラースタック層側の面と第2ミラースタック層側の面の少なくとも一方に形成された導電バッファ層と、第1ミラースタック層と一面を接し、スペーサ層あるいは導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第1の透明導電性膜と、第2ミラースタック層と一面を接し、スペーサ層あるいは導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第2の透明導電性膜と、これら第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を変更することで第1ミラースタック層側あるいは第2ミラースタック層側からこれらの層を透過または反射する光線の通過帯域を変更する通過帯域制御手段とを具備する波長可変光フィルタと、(ロ)第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を制御することでこの波長可変光フィルタを通過する光信号の波長を動的に変化させる波長選択手段とを光アドドロップモジュールに具備させる。
すなわち請求項15記載の発明では、単一キャビティ型の波長可変光フィルタを使用して光アドドロップモジュールを構成している。高速応答性により光アドドロップモジュールの実現が可能になる。
請求項16記載の発明では、(イ)屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第1ミラースタック層とその第1ミラースタック層上に形成された導電性の第1の透明導電性膜とを備えた第1の複合スタック層と、屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第2ミラースタック層とその第2ミラースタック層上に形成された導電性の第2の透明導電性膜とを備えた第2の複合スタック層と、これら第1および第2の複合スタック層の間に配置され、1次あるいは2次の電気光学効果を有する平板状の誘電体からなるスペーサ層と、第1の複合スタック層および第2の複合スタック層の少なくとも一方とスペーサ層の間に形成された導電バッファ層と、第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を変更することで第1の複合スタック層側あるいは第2の複合スタック層側からこれらの層を透過または反射する光線のスペクトル特性を制御する特性制御手段とを備えたキャビティを複数層積層した波長可変光フィルタと、(ロ)第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を制御することでこの波長可変光フィルタを通過する光信号の波長を動的に変化させる波長選択手段とを光アドドロップモジュールに具備させる。
すなわち請求項16記載の発明では、m重キャビティ型の波長可変光フィルタを使用して光アドドロップモジュールを構成している。高速応答性により光アドドロップモジュールの実現が可能になる。
請求項17記載の発明では、(イ)4分の1波長膜厚を有する高屈折率材からなる第1の誘電体薄膜とこの高屈折率材よりも低い屈折率で4分の1波長膜厚を有する低屈折率材からなる第2の誘電体薄膜とを正の整数nだけ繰り返し積層してなる第1および第2ミラースタック層と、これら第1および第2ミラースタック層の間に配置され4分の1波長の膜厚の正の偶数倍の膜厚を有する1次あるいは2次の電気光学効果を有する誘電体薄膜からなるスペーサ層と、このスペーサ層における第1ミラースタック層側の面と第2ミラースタック層側の面の少なくとも一方に形成された導電バッファ層と、第1ミラースタック層と一面を接し、スペーサ層あるいは導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第1の透明導電性膜と、第2ミラースタック層と一面を接し、スペーサ層あるいは導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第2の透明導電性膜と、これら第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を変更することで第1ミラースタック層側あるいは第2ミラースタック層側からこれらの層を透過または反射する光線の通過帯域を変更する通過帯域制御手段とを備えたキャビティを複数層積層した波長可変光フィルタと、(ロ)第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を制御することでこの波長可変光フィルタを通過する光信号の波長を動的に変化させる波長選択手段とを光アドドロップモジュールに具備させる。
すなわち請求項17記載の発明では、m重キャビティ型の波長可変光フィルタを使用して光アドドロップモジュールを構成している。高速応答性により光アドドロップモジュールの実現が可能になる。
請求項18記載の発明では、波長可変光源において、波長選択素子として請求項1〜請求項13いずれかに記載の波長可変光フィルタを用いていることを特徴としている。
すなわち請求項18記載の発明では、波長選択素子として請求項1〜請求項13いずれかに記載の波長可変光フィルタを用いることで反射光あるいは透過光を使用した高速応答性の波長可変光源を実現することができる。
このように本発明では、1次あるいは2次の電気光学効果を利用するので、1次の電気光学効果を利用すると電圧をオフにしても状態を保持できる自己保持機能を使用することができる。また、2次の電気光学効果を利用すると、1次の電気光学効果で生じるヒステリシス効果がほとんど発生しない。このため、印加電圧に対して波長可変光フィルタ等の光学素子の中心波長を高精度に設定制御可能である。また、本発明では電気光学膜の一方または双方の面に導電バッファ層を配置される構造なので、高速応答が可能になる。また、電気光学膜のエピタキシャル成長が容易になるという効果がある。
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態による光学素子の断面構造の概略を表わしたものである。この光学素子201は、基板202上に第1ミラースタック層203を形成している。その上に第1の透明導電膜(mC)204と、導電バッファ層205と、1次あるいは2次の電気光学効果を有する誘電体薄膜(sM)としての電気光学膜206と、導電バッファ層207ならびに第2の透明導電膜(mC)208を順に積層し、更にその上に第2ミラースタック層209を配置した構造となっている。第2ミラースタック層209の上には結合層210が配置されている。第1の透明導電膜204と第2の透明導電膜208の間にはこれらに電圧を印加するための電源211が取り付けられている。この第1の実施の形態の光学素子201は、たとえば単一キャビティ型バンドパスフィルタとして使用される。
第1ミラースタック層203および第2ミラースタック層209は、共に4分の1波長膜厚の2種類の異なる誘電体物質Hおよび誘電体物質Lを複数組積層したもので構成されている。2種類の異なる誘電体物質の屈折率をそれぞれnH、nLと表わすものとする。また、屈折率の大きい方を屈折率nHとして、この誘電体物質(膜)を本明細書では高屈折率誘電体薄膜Hと呼ぶことにする。屈折率の小さい方の誘電体物質(膜)を本明細書では低屈折率誘電体薄膜Lと呼び、その屈折率は屈折率nLで表わすことにする。光フィルタの膜設計では、ある設計波長λ0を中心に高反射率を有する誘電体多層膜ミラーを実現する膜構造を次の表現構造(13)で表わすことができる。
基板/ H L H L ……H L / 媒質 ……(13)
ここで高屈折率誘電体薄膜Hおよび低屈折率誘電体薄膜Lは共に4分の1波長膜厚となっており、ある設計波長λ0と屈折率nH、nLとの間には、次の(14)式および(15)式が成立する。
H=λ0/4nH ……(14)
L=λ0/4nL ……(15)
第2ミラースタック層209の上に存在する結合層210(最上層の低屈折率誘電体薄膜L)は媒質と接している。一般的に媒質は空気、樹脂溶剤、固形基板等のいずれかである。
表現構造(13)はある基板202の上に2種類の高屈折率誘電体薄膜Hおよび低屈折率誘電体薄膜Lからなる誘電体薄膜を交互に積層することを表わしている。したがって、この表現構造(13)は次の表現構造(16)のように簡便に表わすことができる。
基板 / (H L)N / 媒質 ……(16)
表現構造(16)は、高屈折率誘電体薄膜Hおよび低屈折率誘電体薄膜Lのペアの層をN回繰り返し積層することを意味している。たとえば、次の表現構造(17)は表現構造(18)と等価である。
基板 / H L H L H L /媒質 ……(17)
基板 /(H L)3/ 媒質 ……(18)
ところで、ある特定の光波長成分のみを分離して取り出す場合には、バンドパスフィルタを用いることが多い。誘電体多層膜によるバンドパスフィルタの共振器の一般的な構造は次の表現構造(19)で表わすことでできる。
A=[(HL)N H sL H(LH)N L] ……(19)
ここで、符号Nは“0”を含む整数(0、1、2、3、……)を表わしている。また符号sは正の偶数(2、4、6、8、……)を表わしている。“(HL)N H”と“H (LH)N”はそれぞれ第1ミラースタック層203あるいは第2ミラースタック層209と呼ばれる層を表わしている。“sL”はスペーサ層である。最後のL層は結合層210である。
この表現構造(19)は光学素子201の基本共振器構造を表わしている。m重共振器構造の場合は、結合層210を介してこの表現構造(19)がm組順次図1に示す基板202の上側の面に積層された構造となっている。基本共振器構造をこのようにm重共振器構造として複数積層するように使用することで、たとえばバンドパスフィルタとしてのフィルタ特性をシャープにすることができる。結合層210は低屈折率材の4分の1膜厚の層であり、基本共振器構造の間に配置される。
(19)式は一般的に用いられている誘電体多層膜バンドパスフィルタの基本共振器構造である。図1に示した本発明の実施の形態による光学素子201では、波長可変性を備えるために、次の表現構造(20)で表わされるファブリ・ペロー共振器構造をとっている。
B=[(HL)N mC sM mC (LH)N L] ……(20)
ここで、符号Cと符号Mは、それぞれ導電性膜と電気光学効果を有する常誘電体を表わしている。これら常誘電体C、Mは4分の1物理膜厚となっている。係数mとsは、それぞれ奇数(1、3、5、……)と偶数(2、4、6、……)である。すなわち、表現構造(20)では表現構造(19)における第1および第2ミラースタック層のスペーサ層と接する誘電体物質Hの層が、導電性薄膜(mC)、すなわち第1の透明導電膜204および第2の透明導電膜208に置き換わり、スペーサ層が電気光学効果を有する常誘電体(sM)としての電気光学膜206に置き換わっていることが分かる。
以上の構造は特許文献4と共通している。本発明の実施の形態では図6に示すように、導電性膜を複合層として扱っている。これを表現構造(20)と対比して表現構造(21)として表わす。
B=[(HL)N(mC E)sM(E mC)(LH)N L] ……(21)
すなわちこの実施の形態の波長可変光フィルタ等の光学素子201では、導電性薄膜が透明導電膜(mC)204、208と導電バッファ層(E)205、207からなる少なくとも2層以上の複合導電層となっており、導電バッファ層205、207はスペーサ層(sM)206に接していて、その厚さが0.1nmから100nmの間となっている。
このような光学素子201における導電バッファ層205、207に必要とされる条件は次のようなものである。
(1)室温での抵抗率が10-2Ωcm以下であり、望ましくは10-4Ωcm以下であること。
(2)格子定数がスペーサ層を構成する電気光学膜の格子定数に近く、望ましくは格子不整合率が±20%以下であること。ここで、格子不整合率(M)は以下の式(22)で定義される。
格子不整合率M = (dE―dS)/dS ……(22)
ここで、符号dEおよびdSは、それぞれ導電バッファ層とスペーサ層を構成する電気光学膜の格子定数を表わしている。格子定数はそのハイオーダで整合を取ることもできるが、望ましくは基本次数での整合が更によい。
スペーサ層を構成する電気光学薄膜の形成において成膜される膜質は、アモルファス膜と多相膜を除く多結晶膜造を含む膜構造であればよい。ただし、より大きな電気光学係数を得るためには、配向膜が望ましい。更には、単結晶と同等の電気光学係数が得られるエピタキシャル膜であることが望ましい。スペーサ層を構成する電気光学薄膜は、電子ビーム蒸着法、イオンアシスト蒸着法、DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタ法、分子線エピタキシ(MBE)法、化学気相蒸着(CVD)、ディップコーティング法、パルスレーザ蒸着法等のいずれの成膜法を用いても製造することができる。これらいずれの成膜方法でも、形成される膜の組成比制御に使用するガス(酸素ガス等)の供給流量、添加濃度の調整、成膜中のビーム電流・電圧量、および真空度の調整等を行う場合、これらの制御が比較的容易である。更に成膜温度の最適化により、結晶性制御や薄膜界面を滑らかに形成することができるという利点もある。
この図1に示した実施の形態による光学素子201では、第1の透明導電膜204と第2の透明導電膜208の間に電源211を接続しており、これらの間に印加する電圧Vを変化させることで波長可変性を実現するようになっている。この場合における周波数応答について次に説明する。
光学素子201では、ミラースタック層203、209と接する導電性薄膜204、208が有限の電気抵抗値Rを持ち、またスペーサ層を構成する1次あるいは2次の電気光学係数をもつ常誘電体206が静電容量Cを持っている。これらの値の積で時間応答が制限される。
図2は、図1に示した光学素子を電極の接続された箇所で切断した断面構造を表わしたものである。なお、この図では図1に示した結合層210および電源211は図示していない。波長可変光フィルタに用いる直方体状の光学素子201におけるこの紙面に垂直方向に切断した矩形部分の寸法をa×bとする。第2ミラースタック層209には、それぞれ第1の透明導電膜204あるいは第2の透明導電膜208に達する穴221、222がイオンミリングやエッチング工程等により形成されており、これらの底部には第1あるいは第2の金属電極223、224が形成されている。これら第1および第2の金属電極223、224の2辺をd×eの正方形とする。第1および第2の金属電極223、224には図1に示した電源211に接続するリード線225、226のそれぞれ一端が接続されている。
このような光学素子201における透明導電膜204、208と導電バッファ層205、207の抵抗率を、それぞれρC、ρb[Ωcm]とする。また金属電極223、224の部分における透明導電膜204、208の厚さは、ほぼ成膜膜厚と同じと近似してtCとする。また、導電バッファ層205、207の厚さをtbとし、電気光学膜206の膜厚をtMとする。
以上の場合、図で上側の第2の透明導電膜208と上部の導電バッファ層207で生じる各抵抗値は、それぞれ次の式(23)および式(24)で与えられる。
上部透明導電膜の抵抗値;RC=ρC(tC/d・e) ……(23)
上部導電バッファ層の抵抗値;Rb=ρb・a/(b・tb) ……(24)
また、スペーサ層を構成する電気光学膜で生じる静電容量は、次の式(25)で与えられる。
静電容量;C=εr・ε0・(a・b/tM) ……(25)
ここで、符号εrはスペーサ層を構成する誘電体の比誘電率を表わしており、符号ε0は真空の誘電率を表わしている。
図で下側の第1の透明導電膜204の抵抗値は、第2の透明導電膜208の抵抗値とほぼ同じであると近似する。導電バッファ層205、207は電気光学膜206の両面に接しているので、同じ物性値であると近似すると、合成抵抗値Rは、次の式(26)で与えられる。
R=2(RC+Rb) ……(26)
したがって、集中定数型の周波数応答帯域fCは、次の式(27)で与えられる。
C=1/(πRC) ……(27)
また、応答時間τは、次の式(28)で与えられる。
τ=1/fC ……(28)
高速応答のためには、抵抗値と静電容量の低減が必要となる。
本発明における電気光学膜には、アモルファス膜と多相膜を除く多結晶膜、配向膜、あるいはエピタキシャル膜が適用できる。
なお、本実施の形態の光学素子201では、基板202として使用波長域で透明な広範囲な材料(例えば、光学結晶、光学ガラス、石英、透明プラスチック)あるいはポリマ材等を使用することができる。第1および第2ミラースタック層203、209を構成する誘電体薄膜には適用波長域で透明であり、現在一般的に使用されている材料より屈折率の範囲が1.23から5.67までの範囲のものを選択することができる。例えば、フッ化カルシウムCaF2(屈折率1.23)、フッ化マグネシウムMgF2(屈折率1.38)、二酸化シリコンSiO2(屈折率1.46)、酸化マグネシウムMgO(屈折率1.80)、五酸化タンタルTa25(屈折率2.15)、五酸化ニオブNb25(屈折率2.24)、二酸化チタンTiO2(屈折率2.45)、セレン化亜鉛ZnSe(屈折率屈折率2.40)、テルル化鉛PbTe(屈折率5.67)、窒化アルミニウムAlN(屈折率1.94)、窒化シリコンSi34(屈折率1.95)、シリコンSi(屈折率3.4)、ゲルマニウムGe(屈折率4.0)等の光学材料の中から選択することができる。これらの光学薄膜を形成する場合には、すでに説明した各種成膜法を適用することができる。
フィルタを構成する多層膜設計には、現在市販されている膜設計ソフトウエアを使用することができる。例えばTFCalc(Software Spectra, Inc.)、Essential Macleod(Thin−Film Center, Inc.)等の名称のソフトウェアは光通信業界において主に使用されているソフトウェアであり、本発明にも同様に使用可能である。
本実施の形態の光学素子201の利点をまとめると次のようになる。
(1)膜設計を変更することにより任意のパスバンド幅や他波長信号除去特性を有する波長可変光フィルタを実現することができる。
(2)屈折率制御による波長可変方式を採用するので、機械的駆動部がなく信頼性が優れている。
(3)たとえば波長可変光フィルタを機械駆動によって実現すると、応答速度が0.1秒〜1秒程度となるが、本実施の形態の光学素子201の場合にはこれよりも100万倍以上高速であり、たとえばμs(マイクロ秒)以下で波長を可変可能である。
(4)従来の膜厚勾配を利用した波長可変バンドパスフィルタは、その装置全体のサイズが一般的には30×30×80mm3程度である。本実施の形態の光学素子201ではフィルタチップ自体の大きさは2mm2以下と小さくすることができる。したがって装置全体のサイズはは10×10×10mm3程度とすることができ、小型化が可能である。体積率は約70分の1となる。
(5)従来の膜厚勾配を利用した波長可変バンドパスフィルタでは移動ステージ等の機械的な駆動部分を必要としたが、本実施の形態の光学素子201では電圧を印加する電極端子があればよいので装置全体を安価に構成することができる。
(6)従来の液晶を使用した波長可変光フィルタではその駆動のための電源が交流なので、所望のフィルタ波長に固定することができないが、本実施の形態の光学素子201では直流駆動なのでフィルタ波長を任意に固定することができる。
次に以上説明した光学素子201を単一キャビティ型バンドパスフィルタに具体化した例を本発明の実施例として説明する。もちろん、本発明はバンドパスフィルタにその用途を限定されるものではなく、減反射コーティングや、高反射ミラー、長波長透過フィルタ、短波長透過フィルタ、バンドエリミネーションフィルタ(ルゲートフィルタ)等、誘電体多層膜構成において使用されているあらゆる光学素子に適用することが可能である。
図3は本発明の第1の実施例における単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの構成を示したものである。本実施例の単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301は、基板302上に第1ミラースタック層303を形成し、その上に第1の透明導電膜304と、導電バッファ層305と、電気光学膜306と、導電バッファ層307ならびに第2の透明導電膜308を順に積層し、更にその上に第2ミラースタック層309を配置した構造となっている。第2ミラースタック層309の上には結合層310が配置されている。結合層310には、第1の透明導電膜304と第2の透明導電膜308に達する穴321、322がイオンミリングやエッチング工程等により空けられており、第1の透明導電膜304上に第1の金属電極323が形成されている。第2の透明導電膜308上には第2の金属電極324が形成されている。第1の金属電極323に一端を接続したリード線325の他端は接地され、第2の金属電極324に一端を接続したリード線326の他端は駆動電源311のプラス側出力端子に接続されている。このような単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301は、たとえばその結合層310側から光線331を入射させると、基板302側から透過する波長を変化させた透過光線332が得られるようになっている。
この単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301の、設計波長λ0は1550nmとした。基板302は、合成石英基板(屈折率1.45)で構成されている。第1ミラースタック層303および第2ミラースタック層309を構成する高屈折率誘電体薄膜Hは誘電体薄膜Nb25膜(屈折nH=2.22)を使用し、低屈折率誘電体薄膜Lには、SiO2膜(屈折率nL=1.48)を使用した。また、複合導電層には、透明導電膜304、308としてAgSbO3膜(以下、ASO、屈折率nC=2.0)を用いている。このASO膜は波長1550nm付近で透明な導電膜として動作し抵抗率は10Ω・cmが得られる。導電バッファ層305、307にはAg膜を用いた。Ag膜の抵抗率は1.6×10-6Ω・cmが得られる。
電気光学膜306としてのスペーサ層には1次の電気光学効果を有するPb1-XLaX(Zr1-YTiY1-X/43(X=0.088、Y=0.35)(以下、PLZT)薄膜を用いる。このPLZT薄膜の屈折率(nM)は2.5である。外部媒質は屈折率1.0の空気とする。Ag膜とPLZT膜の格子定数は、それぞれ4.086Åと4.1Åであり、格子不整合率Mは0.34%と良好なエピタキシャル膜が形成できる条件を有している。
図3に示す単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301の膜構造をBとすると、これは次の表現構造(29)で表わすことができる。
Bはの構成を以下に示す。
B=(HL)7(C E)8M (E C)(LH)7 ……(29)
ここで、導電バッファ層305、307の膜厚はそれぞれ14nmである。
図4は、本実施例の単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの製造方法を示したものである。まず、第1の工程として同図(a)に示すように清浄な表面を持つBK7ガラス基板からなる基板302を用意する。この基板サイズは10mm×10mmである。
第1の工程が終了したら、続いて同図(b)に示す第2の工程を行う。第2の工程では、マグネトロンスパッタ法を用いて、十分に真空排気された真空チャンバで成膜温度を600℃に設定する。そして、10×10×t2mm3のサイズの基板302の片方の面に高屈折率誘電体薄膜Hとして誘電体薄膜Nb25膜を形成し、その上に低屈折率誘電体薄膜LとしてSiO2膜を形成する。これら誘電体薄膜Nb25膜およびSiO2膜は交互に続けて積層し第1ミラースタック層303を7層「(HL)7」積層する。L層の4分の1物理膜厚は、それぞれH=175nm、L=262nmである。
同図(c)は第3の工程を表わしている。第1ミラースタック層303の上に、透明導電膜304となるASO膜を1C(tC=194nm)の厚さで蒸着する。その後、導電バッファ層305としてAg膜を14nmだけ形成する。続いて、電気光学膜306としてのPLZT膜を8M(tM=1.24μm)だけ積層する。以下同様に、上面に同じく導電バッファ層307としてAg膜を14nm積層し、その上に透明導電膜308となるZSO膜を1Cの厚さで蒸着する。続けて、第2ミラースタック層309を7層「(LH)7」成膜する。最後に、結合層310としての低屈折率誘電体薄膜Lを同じく4分の1物理膜厚262nm蒸着する。
このようにして作成された膜はθ−2θX線回折パターンによって評価したところ、単相でかつ単一の面指数(002)が確認されており、エピタキシャル薄膜と確認された。なお、膜厚モニタの制御には波長15500nmの単一波長レーザを基板302に垂直入射し、成膜中の透過率を光学膜厚モニタ監視する。成膜中の膜厚が4分の1物理膜厚の場合に透過率は極大値あるいは極小値を示すので高精度な成膜制御を行うことができる。レーザのスペクトル線幅が0.01nm以下であれば、膜厚精度は0.1nmを得ることができる。
なお、図4の第3の工程以降では、第1および第2ミラースタック層303、309を低屈折率誘電体薄膜Lと高屈折率誘電体薄膜Hの繰り返しを4層分ずつしか示していない。これは図の複雑さを避けるためで、実際には合計14層「(HL)7×2」を積層することになる。
図5は、第4の工程から第6の工程までを表わしている。同図(d)に示す第4の工程では、電極を形成する工程に移る。ドライエッチングにより、第2の透明導電膜308の上面までエッチングする。更に、同図(e)の第5の工程では対となるエッチング面の他方に更に第1の透明導電膜304の上面までエッチングする。エッチングの場合にも、先の光学膜厚モニタ監視の制御により高精度にエッチング量を制御することができる。
同図(f)に示す第6の工程では、第1の透明導電膜304および第2の透明導電膜308の上に金属電極323、324を形成する。金属電極323、324の材料には、付着強度が高いTi/Au、あるいはTi/Pt金属薄膜を形成する。Tiは厚さ50nm蒸着し、その上にAuあるいはPt薄膜を200nmだけ積層する。
図6は、第7の工程と第8の工程を表わしたものである。同図(g)は単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301をその上方から結合層310を見下ろすようにしたもので、第7の工程では、個々のチップに切断する処理を行う。この切断処理では、図のX、Y両方向にそれぞれ10mmの長さを有するこの単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301をそれぞれの長さ方向に3分割する。すなわち矢印341〜344で示す各位置でY方向あるいはX方向に切断後が3mmずつの幅となるように切断する。このようにして9個の単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタチップ301Aが切り出される。
図6(h)は、第8の工程を表わしたものである。第7の工程で得られた単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタチップ301Aの1つに対してリード線325、326をそれぞれ対応する金属電極323、324にワイヤボンディングする。リード線325、326の他端は、この図に示していない駆動源に接続される。
図7は、この第1の実施例における単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの波長可変特性を表わしたものである。図3に示したように単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301の上面に垂直に外部よりランダム偏光光線を光線331として入射させる。この状態で駆動電源311の出力電圧を変化させると、単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301の透過スペクトル特性が波長可変することが分かる。透過波長における挿入損失は1dB以下と良好な損失特性を示している。印加電圧20Vの場合、波長シフト量は−24nmであった。これは屈折率がΔn=−0.076だけ変化していることに相当する。本特性より、印加電圧の1次に比例して変化しており、(11)式を用いると1次の電気光学係数r13(または1次の電気光学係数r23)として600pm/Vを得た。これは単結晶基板で報告されている係数とほぼ同等の特性に相当する。本実施例の単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301の場合、サンプルの応答速度はRC時定数により制限されるが、複合導電層の抵抗値(R)およびスペーサ層を構成するPLZT誘電体の静電容量(C)により与えられ、(28)式を用いると、本実施例では応答時間は84nsであった。
一方、図8は、図28に示した従来提案された波長可変光フィルタの波長可変特性を表わしたものである。図28に示した単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151の場合も、入射光線161として外部よりランダム偏光光線を単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151の上面に対して垂直入射する。この状態で図28に示した駆動電源159を用いて単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151の厚さ方向に0V(ボルト)から20Vの4段階で直流電圧を印加する。この場合にも印加電圧が切り替わると単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151の透過スペクトル特性が波長可変することが分かる。
図8より、透過波長における挿入損失は1dB以下と良好な損失特性を示していることが分かる。印加電圧20Vの場合、波長シフト量は−24nmである。これは屈折率がΔn=−0.076だけ変化していることに相当する。これは印加電圧の1次に比例して変化するものである。(11)式を用いると1次の電気光学係数r13(または1次の電気光学係数r23)として600pm/Vを得た。これは単結晶基板で報告されている係数とほぼ同等の特性に相当する。この図28に示した単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151ではサンプルの応答速度はRC時定数により制限されるが、ASO導電膜の抵抗値(R)およびスペーサ層を構成するPLZT誘電体の静電容量(C)により与えられ(27)式を用いると、図28に示した単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151では応答時間は0.14sであった。このように応答時間が大きいのは導電膜の抵抗値が1MΩと大きいために制限されている。
図8に示した従来の単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151と第1の実施例の単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301を比較すると、本実施例の場合にはAg膜を用いた導電バッファ層305、307が存在するにもかかわらず、従来の単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151と同等なフィルタ特性を実現している。しかも本実施例の単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301の場合には従来の単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151と比較して格段に周波数応答特性の優れた波長可変バンドパスフィルタを実現している。これは本実施例の場合、複合導電層の抵抗値が0.59Ωと大幅に低減されているためである。
このため、本実施例の場合には高額な高速応答可能な高電圧アンプを用いる必要がない。したがって、パーソナルコンピュータあるいは電子機器の24V基準の高速ICチップを用いて単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301を直接駆動することができ、安価かつ小型な波長可変バンドパスフィルタを構成することができる。この結果、約24nmの波長可変範囲内において、機械的駆動部のない信頼性の高い、安価な波長可変バンドパスフィルタが実現することになる。
図9および図10は、本実施例の単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの多層膜内部の光電界強度分布を表わしたものである。このうち図9は、本実施例の表現構造(29)で示される多層膜内部の光電界強度分布を多層膜全体にわたって示したものである。図3の基板302に接する層がこの図の横軸で数字“1”で表わした第1層である。この図で縦軸は多層膜内部の光電界強度分布を表わしているが、入射光強度を“1”に規格化している。
図10は、この図9のスペーサ層としての電気光学膜306の近傍を拡大したものである。17層目であるスペーサ層の両端部では電界強度振幅が“節”にあたり、電界の大きさはゼロであることが分かる。この部分に16層、18層目である導電バッファ層を構成するAg膜を導入している。これにより、Ag膜が14nmもの膜厚で導入されているにも係わらず、挿入損失の劣化の少ないフィルタ特性が実現している。
図11および図12は参考のため図28に示した波長可変光フィルタの多層膜内部の光電界強度分布を表わしたものである。ここで図11は表現構造(8)を本実施例における導電バッファ層305、307を除いたものと同一の次の表現構造(30)で表わした多層膜内部の光電界強度分布を多層膜全体にわたって示したものである。ここで図28の基板152に接する層が、図11の横軸で数字“1”で表わした第1層である。
B=(HL)7 C 8M C (LH)7L ……(30)
図12は図28に示した波長可変光フィルタにおけるスペーサ層近傍の拡大図を示す。16層目であるスペーサ層とその両側の15層、17層目の透明導電膜の界面部では電界強度振幅は“節”にあたり電界の大きさはほぼゼロである。
このように本実施例の単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301と図28に示した従来提案された単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ151を図9〜図12を用いて比較すると、本実施例の場合には従来例に比べて挿入損失の増加がわずかに0.4dBに過ぎない。ただし、本実施例の構造では、波長可変範囲を増加していくと図に示すように挿入損失が増加する傾向にある。これは、導電バッファ層における光電界強度が“節”の部分から少しずつ“腹”の方向にずれてくるためである。したがって、導電バッファ層をできるだけ薄く設定して挿入損失の増加量を低下させることで波長可変範囲を拡大することができる。
なお、本実施例では図6(g)に示したように単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301から9個の単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタチップ301Aを切り出すことにしたが、これに限るものではない。たとえば直径50mm以上の大きな基板上に一括成膜を行い数100個の波長可変バンドパスフィルタチップを製造することも可能である。
また、第1の実施例では導電バッファ層にAg(銀)を使用したが、その代わりにRu(ルテニウム)を膜厚1nm形成し、電気光学膜にPLZT薄膜の替わりにSrXBa1-XTiO3(X=0.3)を形成してもよい。その場合、面方位(002)なるRu配向膜に対して、面方位(110)のSBT膜が形成され、室温付近において1次の電気光学効果が発現し、メモリ効果を有する波長可変バンドパスフィルタが実現する。
図13は本発明の第2の実施例における2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの外観を表わしたものである。この2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ401は、屈折率1.72のMgO単結晶基板402上に第1のキャビティ403を形成し、更にその上に第2のキャビティ404を形成した構造となっている。第2のキャビティ404の最上層には結合層405が配置されている。結合層405の上面には、下層の図示しない電極にまで達する深さの第1〜第4の穴4061〜4064が形成されている。このうちの第1および第2の穴4061、4062には第1のキャビティ用ワイヤ4071、4072の一端が差し込まれており、それぞれ図示しない電極にボンディングされている。これら第1のキャビティ用ワイヤ4071、4072の他端は、第1のキャビティ403用の第1の駆動電源4081に接続されている。また、第3および第4の穴4063、4064には第2のキャビティ用ワイヤ4073、4074の一端が差し込まれており、それぞれ図示しない電極にボンディングされている。これら第2のキャビティ用ワイヤ4073、4074の他端は、第2のキャビティ404用の第2の駆動電源4082に接続されている。
この2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ401は、入射光線421を第2のキャビティ404の結合層405側から入射させ、第1および第2の駆動電源4081、4082を適宜駆動することで透過光線422として任意の波長の光線を出力させることができる。本実施例の2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ401の設計波長λ0は1550nmとしている。
この2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ401で第1のキャビティ403と第2のキャビティ404は、結合層405の構成が若干異なることを除けば構造的には同一となっている。そこで、第1のキャビティ403を中心にその構成を説明し、第2のキャビティ404の説明については適宜省略する。
図14は、図13に示した2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの構造を表わしたものである。第1のキャビティ403はMgO単結晶基板402上に高屈折率誘電体薄膜(H)411として誘電体薄膜Ta25膜(屈折nH=2.13)と低屈折率誘電体薄膜(L)412としてSiO2膜(屈折率nL=1.48)を使用している。透明導電膜4131、4132にはZnO膜を用いる。屈折率nCは1.94である。透明導電膜4131、4132は波長1550nm付近において透明な導電膜として動作し、抵抗率は3Ω・cmが得られる。導電バッファ層4141、4142にはPt膜を用いた。Pt膜の抵抗率は1.1×10-5Ω・cmが得られる。電気光学膜415には2次電気光学効果を有するSrXBa1-XTiO3(X=0.9)(以下、SBTという。)薄膜を用いる。ここで、屈折率(nM)は2.3である。Pt膜とSBT膜の格子定数は、それぞれ3.924Åと3.91Åであり、格子不整合率Mは0.36%と良好なエピタキシャル膜が形成できる条件を有している。
外部媒質は屈折率1.0の空気とする。この2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ401の膜は以下の表現構造(31)で表わすことができる。
B=[(HL)7 (CE)10M (EC)(LH)7 L]2 ……(31)
ここで、導電バッファ層(E)の膜厚は4nmである。
この第2の実施例の2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ401は第1の実施例の単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301と同様の方法で製造することができる。そこで、図4〜図6に記された符号を図14に示したものに適宜置き換えてその製造方法を説明する。
まず、図4に示した第1の工程に示すように清浄な表面をもつMgO単結晶基板402を用意する。続いて、図4の第2の工程で示すように、イオンアシスト蒸着法を用いて、十分に真空排気された真空チャンバで成膜温度650℃に設定し、10×10×t2mm3のMgO単結晶基板の(100)面に高屈折率薄膜(H)411としてTa25膜を、また低屈折率薄膜(L)412としてSiO2膜を交互に積層する。続けて積層し、第1ミラースタック層431を7層「(HL)7」積層する。L層の4分の1物理膜厚は、それぞれH=181nm、L=261nmである。
続いて、第3の工程で示すように、第1ミラースタック層431の上に第1の透明導電膜4131となるZnO膜(C)を199nmの厚さで蒸着する。ZnO膜は導電性が酸素欠損に起因して生じる真性半導体であるので、酸素ガス流量を調節し、抵抗率が3Ωcmとなるように成膜する。このとき、消衰係数は10-4以下の良好な透明導電膜として機能する。続いて、電気光学膜415としてのSBT膜を10M(1.68μm)だけ積層する。以下同様に、上面に同じく導電バッファ層4142としてPt膜を4nm積層し、その上に透明導電膜4132となるZnO膜を第1の透明導電膜4131の厚さで蒸着する。続けて、第2ミラースタック層432を7層「(HL)7」積層する。最後に、調整層Lを同じく4分の1物理膜厚261nm蒸着する。以上を繰り返すことで、2重キャビティ型バンドパスフィルタを構成することができる。
このようにして作製された膜はθ−2θX線回折パターンによって評価したところ、単相でかつ単一の面指数(002)が確認されており、エピタキシャル薄膜と確認された。また、本実施例の構成では基板材料であるMgO基板402の熱膨張係数が+14×10-7/℃であって、多層膜部分の実効的な熱応力とのバランスがよく、成膜基板上に渡ってクラックのない平坦な膜を形成することができた。
続いて、第1の実施例と同様に電極を形成する工程に移る。第2の実施例の場合は第1の実施例と異なり2重キャビティ構造となっている。したがって、図13に示すように、切断処理された1つの波長可変バンドパスフィルタチップには計4つの電極が形成されることになる。これら図示しない4つの電極は、それぞれ、第1キャビティ403と第2キャビティ404の導電バッファ層4141、4142と接する第1の透明導電膜4131と第2の透明導電膜4132に対して形成される。2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ401は、外部の第1の駆動電源4081と第2の駆動電源4082に接続されている。第1キャビティ403および第2キャビティ404はこれらにより独立して駆動されるようになっている。
図15は、この第2の実施例の2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタを使用した光ドロップモジュールを示したものである。光ドロップモジュール451は、複数の入射光信号成分(λ1,λ2,……,λn)を伝播する入射側光ファイバ452と、この入射側光ファイバ452から入射した光信号の一部を反射する反射側光ファイバ453と、これら2本の光ファイバ452、453の端部側を保持する二芯キャピラリ454と、この二芯キャピラリ454の端部と2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ401の入射側との間に配置された光を平行光にする働きを持つレンズとしての第1のGRIN(GRaded-INdex)レンズ455と、入射側光ファイバ452から入射した光信号の一部を透過する透過側光ファイバ457と、この透過側光ファイバ457を保持する一芯キャピラリ458と、この一芯キャピラリ458と2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ401の透過側との間に配置された第2のGRINレンズ459とを備えている。
この光ドロップモジュール451で、入射側光ファイバ452中を伝搬する複数の入射光信号成分(λ1,λ2,……,λn)は、第1のGRINレンズ455を介して、空間平行ビームとして2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ401に入射する。2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ401には図13に示したように各キャビティ403、404に対応して外部駆動電源としての第1および第2の駆動電源4081、4082が接続されているので、波長可変範囲内において任意の波長λiを選択することができる。ドロップされた透過波長成分λiは、第2のGRINレンズ459を介して一芯キャピラリ458に一端部を保持された透過側光ファイバ457に結合され、入射側光ファイバ452とは別系統の図示しない光信号網に伝達される。それ以外の波長成分は反射光信号として、2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ401で反射され、反射側光ファイバ453に結合される。
図16はこの光ドロップモジュールで透過光の波長が変化する様子を表わしたものである。図13の第1および第2の駆動電源4081、4082から共に同一の電圧を出力して2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ401の前記した電極に印加したところ、図16に示したように印加電圧によって透過側光ファイバ457から出力される光信号の透過波長が変化する。透過波長における挿入損失は波長可変幅10nmの場合、5dB以下と良好な損失特性を示している。
印加電圧が2Vの場合、波長シフト量は−11nmであった。これは屈折率がΔn=−0.0073だけ変化していることに相当する。本特性より、式(12)を用いると、2次の電気光学係数R13(=R23)として3.4×10-152/V2を得た。これは単結晶基板で報告されている係数のほぼ同等の値に相当する。駆動電圧自体は、電気光学膜415としてのSBT薄膜が薄いためにわずか3Vという低電圧での駆動が可能である。
また、本実施例のサンプルの応答速度はRC時定数により制限されるが、複合導電層の抵抗値(R)およびスペーサ層を構成するSBT常誘電体の静電容量(C)により与えられ、式(27)を用いると本実施例では応答時間は39nsであった。このため、高額な高速応答可能な高電圧アンプを用いる必要がない。したがって、パーソナルコンピュータあるいは電子機器の3.3V基準の高速ICチップで直接駆動でき、安価かつ小型な波長可変バンドパスフィルタおよびこれを使用した光ドロップモジュール451を構成することができる。この結果、約11nmの波長可変範囲内において、機械的駆動部のない信頼性の高い、安価な急峻なフィルタ特性を有する波長可変バンドパスフィルタおよびこれを使用した光ドロップモジュール451が実現する。
なお、本実施例でも基板402の大きさに制限はなく、直径50mm以上の大きな基板上に一括成膜を行い数100個の波長可変バンドパスフィルタチップを製造することも可能である。また、より高速応答を得るためには静電容量を低減する必要があるが、これには2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタチップの面積を2.5mm四方からたとえば0.5mm四方あるいはこれ以下へ小型化することで対応することができ、応答時間を3ns以下に高速化することができる。
図17は第3の実施例としてのm重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの構成を示したものである。ここでは駆動電源の図示を省略している。m重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ(ただし数値mは正の整数)501は、基板502の上に第1キャビティ5031から順に第mキャビティ503mまでキャビティをm重したものである。このようにキャビティを2段、3段と重ねていくほど、m重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ501の波長選択特性をシャープにすることができる。
ここでは第2の実施例よりもキャビティが1段多い数値mが“3”の場合を例にとって第3の実施例を説明する。m重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ501の設計波長λ0を1550nmとした。WMS−15ガラス基板((株)オハラ製、屈折率1.51)上に高屈折率薄膜(H)用に誘電体薄膜Nb25膜(屈折nH=2.22)を、また低屈折率薄膜(L)用にSiO2膜(屈折率nL=1.48)を用いる。また、透明導電膜にはCdSnO4(以下、CTO)膜を用いる。屈折率nCは1.9である。透明導電膜は波長1550nm付近において透明な導電膜として動作し抵抗率は4.4×10-3Ω・cmが得られる。導電バッファ層にはSrRuO3膜(以下、SRO)を用いた。SRO膜の抵抗率は1.1×10-4Ω・cmが得られる。
スペーサ層には2次電気光学効果を有するSrXBa1-XTiO3(X=0.9)(SBT)薄膜を用いる。ここで、屈折率(nM)は2.3である。外部媒質は屈折率1.0の空気とする。この膜は以下の表現構造(32)で表わすことができる。
B=[(HL)7(CE)10M(EC)(LH)7L]3 ……(32)
ここで、導電バッファ層(E)の膜厚は8nmである。
この第3の実施例における3重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ501の製造方法は先の第1あるいは第2の実施例と同様である。そこで、図4〜図6を適宜使用して説明を行う。まず、図4の第1の工程として示すように清浄な表面をもつガラス基板を用意する。続いて、この図の第2の工程として示すように、イオンビームスパッタ法を用いて、十分に真空排気された真空チャンバにおいて成膜温度600℃に設定し、10×10×t2mm3のWMS−15ガラス基板に高屈折率薄膜(H)としてNb25膜を、また低屈折率薄膜(L)としてSiO2膜を交互に積層する。続けて積層し、第1ミラースタック層をを7層「(HL)7」積層する。L層の4分の1物理膜厚は、それぞれH=175nm、L=262nmである。
続いて、第3の工程に示すように、第1ミラースタック層の上に透明導電膜となるCTOO膜を1C=194nmの厚さで蒸着する。CTO膜は導電性が酸素欠損に起因して生じる真性半導体である。そこで酸素ガス流量を調節し、抵抗率が4.4×10-3Ωcmとなるように成膜する。このとき、消衰係数は1×10-4以下の良好な透明導電膜として機能する。次に導電バッファ層SRO膜を8nm積層し、続いて、SBT膜を10M(1.68μm)だけ積層する。以下同様に、上面に同じく導電バッファ層SrRuO3膜を8nm積層し、上面透明導電膜となるCTO膜を1Cの厚さで蒸着する。続けて、第2ミラースタック層(LH)7を成膜する。最後に、調整層Lを同じく4分の1物理膜厚262nm蒸着する。以上を繰り返すことで、3重キャビティ型バンドパスフィルタ501を構成することができる。
作製された膜はθ−2θX線回折パターンによって評価したところ、単相でかつ単一の面指数(002)が確認されており、エピタキシャル薄膜と確認された。
この第3の本実施例の3重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ501は第2の実施例の2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ401とその概観が似ているが、3つのキャビティから構成されている。したがって、独立な電源が第1および第2の駆動電源4081、4082の他に1つ必要である。また、これら3つの駆動電源で駆動する各キャビティ用電極が同様に増加して全部で6つとなる。3重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ501は外部の駆動電源に接続されている。外部より、入射光線が入射し、フィルタの中心波長の光線分のみが透過する。
3重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ501の電極形成の工程では、3重キャビティ構造のために、切断処理された1つの波長可変バンドパスフィルタチップには計6つの電極が形成される。6つの電極は、それぞれ、第1キャビティと第2キャビティと第3キャビティの、それぞれのスペーサ層の上面と下面の透明導電薄膜に対して形成される。
図18は、この第3の実施例における3重キャビティ波長可変バンドパスフィルタの波長可変特性を表わしたものである。本実施例の3重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ501に、外部よりランダム偏光光線を垂直入射して、厚さ方向に直流電圧を印加したところ、この図に示すようにバンドパスフィルタの透過スペクトル特性が波長可変していることが分かる。透過波長における挿入損失は5dB程度を示している。印加電圧2Vの場合、波長シフト量は−11nmであった。これは屈折率がΔn=−0.0073だけ変化していることに相当する。
この特性より、(12)式を用いると2次の電気光学係数R13(=R23)として3.4×10-152/V2を得た。これは単結晶基板で報告されている係数とほぼ同等の値に相当する。駆動電圧自体はSBT薄膜が薄いために、わずか3Vという低電圧での駆動が可能である。また、本実施例のサンプルの応答速度はRC時定数により制限されるが、複合導電層の抵抗値(R)およびスペーサ層を構成するSBT常誘電体の静電容量(C)により与えられ、(28)式を用いると本実施例では応答時間は350nsであった。このため、高額な高速応答可能な高電圧アンプを用いる必要がない。したがって、パーソナルコンピュータあるいは電子機器の3.3V基準の高速ICチップで直接駆動でき、安価にかつ小型な波長可変バンドパスフィルタを構成することができる。この結果、約11nmの広帯域な波長可変範囲内において、機械的駆動部のない信頼性の高い、安価な急峻なフィルタ特性を有する波長可変バンドパスフィルタが実現することになる。
なお、本実施例ではSBTを使用したが、この代わりに同じペロブスカイト結晶構造{KTaXNb1-X3 (0≦X≦1.0)}を使用しても同等の電気光学係数(3.9×10-152/V2)を得ることができる。格子定数も3.99ÅとSrRuO3に近い。本材料はPLZTやSBTのようにPbやBa等の毒物や劇物を含まない材料で構成されている特徴がある。また、CTO膜の代わりにペロブスカイト結晶構造のZnSnO3を用いても同等の特性を得ることができる。ZnSnO3は毒性のない物質から構成されている特長がある。
また、基板の大きさに制限はなく、たとえば直径50mm以上の大きな基板上に一括成膜を行い数100個の波長可変バンドパスフィルタチップを製造することも可能である。
図19は本発明の第4の実施例におけるヒットレス光アドドロップモジュールの構成の概要を表わしたものである。本実施例のヒットレス光アドドロップモジュール601は、第2の実施例における図15で示した光ドロップモジュール451を第1の光ドロップモジュール4511と、第2の光ドロップモジュール4512として組に使用した構成となっているが、波長可変バンドパスフィルタには、第3の実施例の3重キャビティ波長可変バンドパスフィルタを用いている。そこで、第1の光ドロップモジュール4511については図15で使用した部品の符号に添え字“1”を付加し、第2の光ドロップモジュール4512については添え字“2”を付加している。また、図15に示した二芯キャピラリ454と一芯キャピラリ458の図示は省略している。
ヒットレス光アドドロップモジュール601は第1の光ドロップモジュール4511の入射側光ファイバ4521に図示しない他のノードから送られてきた複数の入射光信号成分(λ1,λ2,……,λn)を入射し、透過側光ファイバ4571から所望の波長λiの光信号をドロップ信号602として取り出すようにしている。また、ドロップ信号602として取り出さなかった残りの波長の光信号は、反射側光ファイバ4531から第2の光ドロップモジュール4512の入射側光ファイバ4522に伝達されるようになっている。
第2の光ドロップモジュール4512では、第1のGRINレンズ4552に波長λiの光信号を除いた残りの波長の光信号を入射させ、2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ4012の入射面でこれを全反射させる。一方、第2のGRINレンズ4592はドロップした波長λiと同一波長λiのアド信号604を光ファイバ4572によって入射し、これを2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ4012を透過させて反射側光ファイバ4532に結合させる。この結果、反射側光ファイバ4532は波長λiの光信号を入れ替えた形で入射光信号成分(λ1,λ2,……,λn)を次の図示しないノードに送出することになる。
このような図19に示したヒットレス光アドドロップモジュール601では、第1および第2の光ドロップモジュール4511、4512の図示しない駆動電源の出力電圧を任意に選択することによって、アド、ドロップする波長λiを自在に切り替えることができる。しかも、本実施例のヒットレス光アドドロップモジュール601は波長λiを変化させる際にその途中に存在する波長の光信号に影響を与えることがない。
図20は、このヒットレス光アドドロップモジュールを用いた波長の切り替えの様子の一例を示したものである。第1〜3のキャビティに対する図示しない駆動電源の出力電圧(印加電圧)をV1〜V3とする。図20(a)はこれら出力電圧V1〜V3が共に0Vの場合を示している。この場合には3つのキャビティは同一の波長1550nmに共振波長をもつ。
同図(b)は出力電圧V1、V3が共に0Vで出力電圧V2が2Vの場合を示している。この場合には、第1、3キャビティと第2キャビティの共鳴波長は、それぞれ1550nmと1539nmなる共鳴波長をもつ。このとき、本実施例のヒットレス光アドドロップモジュール601は波長可変範囲内において、ほぼ高反射特性を示すのでミラーとしての機能のみを有し、特定の波長チャンネルの信号強度を劣化させる要因を発生しない。
同図(c)は出力電圧V1〜V3が共に2Vの場合を示している。この場合、3つのキャビティは同一の波長1539nmに共振波長をもち、透過損失の少ない透過フィルタ特性をもつ。
従来の波長可変バンドパスフィルタでは、ある波長λiから別の波長λjへ移動する際に、途中の波長域を横切って波長可変するために、波長多重光通信を行なっている場合には、多チャンネルへの障害を引き起こす。これに対して、本実施例で示したように、ある波長λiから別の波長λjへ移動する際に、一旦多重キャビティのそれぞれの共鳴波長をずらし、その後、波長λjなる同一の共鳴波長をもつように電圧制御を行うことで、ヒットレス機能をもつOADM装置が実現する。しかも、このヒットレス光アドドロップモジュール601は、350nsという高速応答特性をもち、低電圧動作が可能で、かつ小型で機械運動部品がなく信頼性が高く、しかも、任意の信号チャンネルを指定しその波長成分をアドドロップすることができる。
なお、本発明のヒットレス光アドドロップモジュール601は、2重キャビティ以上の多重共振器構造に対しても適用することができる。また、m重共振器の各キャビティの共鳴波長のうち少なくとも2つ以上をずらすことにより、本実施例で示したように高反射ミラー状態に切り替えることができる。
図21は本発明の第5の実施例における高速波長可変光源の構成の概要を表わしたものである。本実施例の高速波長可変光源701は、光源として半導体レーザ素子702を備えている。半導体レーザ素子702の出力側で出力結合コーティング(OC)が施されている端面にはレーザビームをコリメートする出力レンズ703と、この出力レンズ703を経て出力されるレーザ光を出力ビーム704として所定の進路に送り出すと共に戻り光を阻止するための光アイソレータ705が備えられている。
一方、半導体レーザ素子702の減反射コーティング(AR)が施されている端面と、これに対向して配置された反射ミラー707の間には半導体レーザ素子702から出力されるレーザ光をコリメートする内部レンズ708と、第1の実施例で説明した単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301が配置されている。単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301は、図3にも示したように一端を接地した駆動電源311と接続されている。
ところで単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301は、内部レンズ708の光軸709に対してわずかに傾斜しており入射角が2度になるように設定されている。本実施例では半導体レーザ素子702を利得媒質に用いている。減反射コーティング(AR)の反射率は波長1550nm近傍にて、0.1%であり、出力結合コーティング(OC)の方は同一波長で30%である。レーザ共振器はこの半導体レーザ素子702の出力結合コーティング部と反射ミラーで構成される。半導体レーザの出射ビームは内部レンズ708により平行ビームに変換されて反射ミラー707に伝搬される。このとき、単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301が任意の波長のレーザ光のみを通過させ、反射ミラー707で反射させる。レーザ共振器長はわずか10mmである。
このようにして本実施例の高速波長可変光源701では、単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301の透過光の波長の出力ビーム704が得られる。駆動電源311による単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301の印加電圧を0Vから20Vに増加したところ、レーザ動作波長を1550nmから1523nmの範囲で変化させることができた。このように波長可変幅27nmが確認された。しかも駆動電源311の出力電圧の変更による波長の変更の応答特性がよく、第1の実施例と同じ84nsの応答時間を得ることができた。
以上説明した本実施例では、図3に示す導電バッファ層305、307を使用した単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ301を採用している。これにより、従来のこの種の波長可変光源に対して100倍以上高速で、波長可変スピードが100ns(ナノ秒 10-9秒)当たり10nm以上の高速波長可変光源701を実現することができる。
第1の実施の形態による光学素子の断面構造の概略を表わした概略構成図である。 第1の実施の形態で図1に示した光学素子を電極の接続された箇所で切断した断面図である。 第1の実施例における単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの断面図である。 第1の実施例における単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの製造方法の第1〜第3工程までを示した説明図である。 第1の実施例における単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの製造方法の第4〜第6工程までを示した説明図である。 第1の実施例における単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの製造方法の第7および第8工程までを示した説明図である。 第1の実施例における単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの波長可変特性を表わした特性図である。 図28に示した従来提案された波長可変光フィルタの波長可変特性を表わした特性図である。 第1の実施例における単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの多層膜内部の光電界強度分布全体を表わした特性図である。 第1の実施例における単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの多層膜内部のスペーサ層近傍での光電界強度分布を表わした特性図である。 図28に示した従来提案された波長可変光フィルタの多層膜内部の光電界強度分布全体を表わした特性図である。 図28に示した従来提案された波長可変光フィルタの多層膜内部のスペーサ層近傍での光電界強度分布を表わした特性図である。 本発明の第2の実施例における2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの斜視図である。 図13に示した2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの構造を表わした説明図である。 第2の実施例の2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタを使用した光ドロップモジュールの概略構成図である。 第2の実施例で使用する光ドロップモジュールで透過光の波長が変化する様子を表わした特性図である。 m重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタの構成を示した説明図である。 第3の実施例における3重キャビティ波長可変バンドパスフィルタの波長可変特性を表わした特性図である。 本発明の第4の実施例におけるヒットレス光アドドロップモジュールの概略構成図である。 第4の実施例のヒットレス光アドドロップモジュールを用いた波長の切り替えの様子を示した特性図である。 本発明の第5の実施例における高速波長可変光源の概略構成図である。 第1の提案による波長可変光フィルタを示す概略構成図である。 図22に示した波長可変光フィルタの選択する波長範囲と光の透過率との関係を表わした説明図である。 第2の提案の波長可変光フィルタの概略構成図である。 図24に示す波長可変光フィルタの中心波長の変化を示した特性図である。 図24に示す波長可変光フィルタとその駆動系を表わした概略構成図である。 第3の提案による波長可変光フィルタの構造を表わした断面図である。 第4の提案の単一キャビティ型波長可変バンドパスフィルタを示した概略構成図である。 電束密度と電場についてのヒステリシスを表わした特性図である。
符号の説明
201 光学素子
202、302、402、502 基板
203、303、403 第1ミラースタック層
204、304 第1の透明導電膜
205、207、305、307、414 導電バッファ層
206、306、415 電気光学膜
208、308 第2の透明導電膜
209、309、404 第2ミラースタック層
311 駆動電源
323、324 金属電極
401 2重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ
4081 第1の駆動電源
4082 第2の駆動電源
411 高屈折率誘電体薄膜(H)
412 低屈折率誘電体薄膜(L)
413 透明導電膜
501 m重キャビティ型波長可変バンドパスフィルタ
5031 第1キャビティ
5032 第2キャビティ
503m 第mキャビティ
601 ヒットレス光アドドロップモジュール
701 高速波長可変光源
702 半導体レーザ素子

Claims (18)

  1. 屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第1ミラースタック層とその第1ミラースタック層上に形成された導電性の第1の導電性膜とを備えた第1の複合スタック層と、
    屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第2ミラースタック層とその第2ミラースタック層上に形成された導電性の第2の導電性膜とを備えた第2の複合スタック層と、
    これら第1および第2の複合スタック層の間に配置され、1次あるいは2次の電気光学効果を有する平板状の誘電体からなるスペーサ層と、
    前記第1の複合スタック層および第2の複合スタック層の少なくとも一方と前記スペーサ層の間に形成された導電バッファ層と、
    前記第1および第2の導電性膜に印加する電圧を変更することで前記第1の複合スタック層側あるいは第2の複合スタック層側からこれらの層を透過または反射する光線のスペクトル特性を制御する特性制御手段
    とを具備することを特徴とする光学素子。
  2. 4分の1波長膜厚を有する高屈折率材からなる第1の誘電体薄膜とこの高屈折率材よりも低い屈折率で4分の1波長膜厚を有する低屈折率材からなる第2の誘電体薄膜とを正の整数nだけ繰り返し積層してなる第1および第2ミラースタック層と、
    これら第1および第2ミラースタック層の間に配置され4分の1波長の膜厚の正の偶数倍の膜厚を有する1次あるいは2次の電気光学効果を有する誘電体薄膜からなるスペーサ層と、
    このスペーサ層における第1ミラースタック層側の面と第2ミラースタック層側の面の少なくとも一方に形成された導電バッファ層と、
    前記第1ミラースタック層と一面を接し、前記スペーサ層あるいは前記導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第1の導電性膜と、
    前記第2ミラースタック層と一面を接し、前記スペーサ層あるいは前記導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第2の導電性膜と、
    これら第1および第2の導電性膜に印加する電圧を変更することで前記第1ミラースタック層側あるいは第2ミラースタック層側からこれらの層を透過または反射する光線の通過帯域を変更する通過帯域制御手段
    とを具備することを特徴とする光学素子。
  3. 屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第1ミラースタック層とその第1ミラースタック層上に形成された導電性の第1の導電性膜とを備えた第1の複合スタック層と、屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第2ミラースタック層とその第2ミラースタック層上に形成された導電性の第2の導電性膜とを備えた第2の複合スタック層と、これら第1および第2の複合スタック層の間に配置され、1次あるいは2次の電気光学効果を有する平板状の誘電体からなるスペーサ層と、前記第1の複合スタック層および第2の複合スタック層の少なくとも一方と前記スペーサ層の間に形成された導電バッファ層と、前記第1および第2の導電性膜に印加する電圧を変更することで前記第1の複合スタック層側あるいは第2の複合スタック層側からこれらの層を透過または反射する光線のスペクトル特性を制御する特性制御手段とを備えたキャビティを、
    複数層積層したことを特徴とする光学素子。
  4. 4分の1波長膜厚を有する高屈折率材からなる第1の誘電体薄膜とこの高屈折率材よりも低い屈折率で4分の1波長膜厚を有する低屈折率材からなる第2の誘電体薄膜とを正の整数nだけ繰り返し積層してなる第1および第2ミラースタック層と、これら第1および第2ミラースタック層の間に配置され4分の1波長の膜厚の正の偶数倍の膜厚を有する1次あるいは2次の電気光学効果を有する誘電体薄膜からなるスペーサ層と、このスペーサ層における第1ミラースタック層側の面と第2ミラースタック層側の面の少なくとも一方に形成された導電バッファ層と、前記第1ミラースタック層と一面を接し、前記スペーサ層あるいは前記導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第1の導電性膜と、前記第2ミラースタック層と一面を接し、前記スペーサ層あるいは前記導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第2の導電性膜と、これら第1および第2の導電性膜に印加する電圧を変更することで前記第1ミラースタック層側あるいは第2ミラースタック層側からこれらの層を透過または反射する光線の通過帯域を変更する通過帯域制御手段とを備えたキャビティを、
    複数層積層したことを特徴とする光学素子。
  5. 前記導電バッファ層は、金属材料、酸化物材料、窒化物材料、合金材料の少なくとも1つ以上からなり、その抵抗率が10-2Ωcm以下であり、その厚さが0.1nmから100nmの間である請求項1〜請求項4いずれかに記載の光学素子。
  6. 前記スペーサ層は、所定の層上に蒸着形成された1次あるいは2次の電気光学効果を有する酸化物誘電体薄膜であって、その膜構造は多結晶膜、配向膜、エピタキシャル膜のいずれかであって、その厚さは10nmから50μmの間に設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかに記載の光学素子。
  7. 前記1次あるいは2次の電気光学効果を有する酸化物誘電体は、Pb1-XLaX(Zr1-YTiY1-X/43、(0≦X<1.0、0≦Y≦1.0)であることを特徴とする請求項6記載の光学素子。
  8. 前記1次あるいは2次の電気光学効果を有する酸化物誘電体は、SrXBa1-XTiO3、(0≦X≦1.0)であることを特徴とする請求項6記載の光学素子。
  9. 前記1次あるいは2次の電気光学効果を有する酸化物誘電体は、KTaXNb1-X3、(0≦X≦1.0)であることを特徴とする請求項6記載の光学素子。
  10. 屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第1ミラースタック層とその第1ミラースタック層上に形成された導電性の第1の透明導電性膜とを備えた第1の複合スタック層と、
    屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第2ミラースタック層とその第2ミラースタック層上に形成された導電性の第2の透明導電性膜とを備えた第2の複合スタック層と、
    これら第1および第2の複合スタック層の間に配置され、1次あるいは2次の電気光学効果を有する平板状の誘電体からなるスペーサ層と、
    前記第1の複合スタック層および第2の複合スタック層の少なくとも一方と前記スペーサ層の間に形成された導電バッファ層と、
    前記第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を変更することで前記第1の複合スタック層側あるいは第2の複合スタック層側からこれらの層を透過または反射する光線のスペクトル特性を制御する特性制御手段
    とを具備することを特徴とする波長可変光フィルタ。
  11. 4分の1波長膜厚を有する高屈折率材からなる第1の誘電体薄膜とこの高屈折率材よりも低い屈折率で4分の1波長膜厚を有する低屈折率材からなる第2の誘電体薄膜とを正の整数nだけ繰り返し積層してなる第1および第2ミラースタック層と、
    これら第1および第2ミラースタック層の間に配置され4分の1波長の膜厚の正の偶数倍の膜厚を有する1次あるいは2次の電気光学効果を有する誘電体薄膜からなるスペーサ層と、
    このスペーサ層における第1ミラースタック層側の面と第2ミラースタック層側の面の少なくとも一方に形成された導電バッファ層と、
    前記第1ミラースタック層と一面を接し、前記スペーサ層あるいは前記導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第1の透明導電性膜と、
    前記第2ミラースタック層と一面を接し、前記スペーサ層あるいは前記導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第2の透明導電性膜と、
    これら第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を変更することで前記第1ミラースタック層側あるいは第2ミラースタック層側からこれらの層を透過または反射する光線の通過帯域を変更する通過帯域制御手段
    とを具備することを特徴とする波長可変光フィルタ。
  12. 屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第1ミラースタック層とその第1ミラースタック層上に形成された導電性の第1の透明導電性膜とを備えた第1の複合スタック層と、屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第2ミラースタック層とその第2ミラースタック層上に形成された導電性の第2の透明導電性膜とを備えた第2の複合スタック層と、これら第1および第2の複合スタック層の間に配置され、1次あるいは2次の電気光学効果を有する平板状の誘電体からなるスペーサ層と、前記第1の複合スタック層および第2の複合スタック層の少なくとも一方と前記スペーサ層の間に形成された導電バッファ層と、前記第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を変更することで前記第1の複合スタック層側あるいは第2の複合スタック層側からこれらの層を透過または反射する光線のスペクトル特性を制御する特性制御手段とを備えたキャビティを、
    複数層積層したことを特徴とする波長可変光フィルタ。
  13. 4分の1波長膜厚を有する高屈折率材からなる第1の誘電体薄膜とこの高屈折率材よりも低い屈折率で4分の1波長膜厚を有する低屈折率材からなる第2の誘電体薄膜とを正の整数nだけ繰り返し積層してなる第1および第2ミラースタック層と、これら第1および第2ミラースタック層の間に配置され4分の1波長の膜厚の正の偶数倍の膜厚を有する1次あるいは2次の電気光学効果を有する誘電体薄膜からなるスペーサ層と、このスペーサ層における第1ミラースタック層側の面と第2ミラースタック層側の面の少なくとも一方に形成された導電バッファ層と、前記第1ミラースタック層と一面を接し、前記スペーサ層あるいは前記導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第1の透明導電性膜と、前記第2ミラースタック層と一面を接し、前記スペーサ層あるいは前記導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第2の透明導電性膜と、これら第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を変更することで前記第1ミラースタック層側あるいは第2ミラースタック層側からこれらの層を透過または反射する光線の通過帯域を変更する通過帯域制御手段とを備えたキャビティを、
    複数層積層したことを特徴とする波長可変光フィルタ。
  14. 屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第1ミラースタック層とその第1ミラースタック層上に形成された導電性の第1の透明導電性膜とを備えた第1の複合スタック層と、屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第2ミラースタック層とその第2ミラースタック層上に形成された導電性の第2の透明導電性膜とを備えた第2の複合スタック層と、これら第1および第2の複合スタック層の間に配置され、1次あるいは2次の電気光学効果を有する平板状の誘電体からなるスペーサ層と、前記第1の複合スタック層および第2の複合スタック層の少なくとも一方と前記スペーサ層の間に形成された導電バッファ層と、前記第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を変更することで前記第1の複合スタック層側あるいは第2の複合スタック層側からこれらの層を透過または反射する光線のスペクトル特性を制御する特性制御手段とを具備する波長可変光フィルタと、
    前記第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を制御することでこの波長可変光フィルタを通過する光信号の波長を動的に変化させる波長選択手段
    とを具備することを特徴とする光アドドロップモジュール。
  15. 4分の1波長膜厚を有する高屈折率材からなる第1の誘電体薄膜とこの高屈折率材よりも低い屈折率で4分の1波長膜厚を有する低屈折率材からなる第2の誘電体薄膜とを正の整数nだけ繰り返し積層してなる第1および第2ミラースタック層と、これら第1および第2ミラースタック層の間に配置され4分の1波長の膜厚の正の偶数倍の膜厚を有する1次あるいは2次の電気光学効果を有する誘電体薄膜からなるスペーサ層と、このスペーサ層における第1ミラースタック層側の面と第2ミラースタック層側の面の少なくとも一方に形成された導電バッファ層と、前記第1ミラースタック層と一面を接し、前記スペーサ層あるいは前記導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第1の透明導電性膜と、前記第2ミラースタック層と一面を接し、前記スペーサ層あるいは前記導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第2の透明導電性膜と、これら第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を変更することで前記第1ミラースタック層側あるいは第2ミラースタック層側からこれらの層を透過または反射する光線の通過帯域を変更する通過帯域制御手段とを具備する波長可変光フィルタと、
    前記第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を制御することでこの波長可変光フィルタを通過する光信号の波長を動的に変化させる波長選択手段
    とを具備することを特徴とする光アドドロップモジュール。
  16. 屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第1ミラースタック層とその第1ミラースタック層上に形成された導電性の第1の透明導電性膜とを備えた第1の複合スタック層と、屈折率の互いに異なる第1および第2の誘電体薄膜を1または複数組積層して構成した第2ミラースタック層とその第2ミラースタック層上に形成された導電性の第2の透明導電性膜とを備えた第2の複合スタック層と、これら第1および第2の複合スタック層の間に配置され、1次あるいは2次の電気光学効果を有する平板状の誘電体からなるスペーサ層と、前記第1の複合スタック層および第2の複合スタック層の少なくとも一方と前記スペーサ層の間に形成された導電バッファ層と、前記第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を変更することで前記第1の複合スタック層側あるいは第2の複合スタック層側からこれらの層を透過または反射する光線のスペクトル特性を制御する特性制御手段とを備えたキャビティを複数層積層した波長可変光フィルタと、
    前記第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を制御することでこの波長可変光フィルタを通過する光信号の波長を動的に変化させる波長選択手段
    とを具備することを特徴とする光アドドロップモジュール。
  17. 4分の1波長膜厚を有する高屈折率材からなる第1の誘電体薄膜とこの高屈折率材よりも低い屈折率で4分の1波長膜厚を有する低屈折率材からなる第2の誘電体薄膜とを正の整数nだけ繰り返し積層してなる第1および第2ミラースタック層と、これら第1および第2ミラースタック層の間に配置され4分の1波長の膜厚の正の偶数倍の膜厚を有する1次あるいは2次の電気光学効果を有する誘電体薄膜からなるスペーサ層と、このスペーサ層における第1ミラースタック層側の面と第2ミラースタック層側の面の少なくとも一方に形成された導電バッファ層と、前記第1ミラースタック層と一面を接し、前記スペーサ層あるいは前記導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第1の透明導電性膜と、前記第2ミラースタック層と一面を接し、前記スペーサ層あるいは前記導電バッファ層と他面を接するように形成され4分の1波長の膜厚の正の奇数倍の膜厚を有する導電性材料からなる第2の透明導電性膜と、これら第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を変更することで前記第1ミラースタック層側あるいは第2ミラースタック層側からこれらの層を透過または反射する光線の通過帯域を変更する通過帯域制御手段とを備えたキャビティを複数層積層した波長可変光フィルタと、
    前記第1および第2の透明導電性膜に印加する電圧を制御することでこの波長可変光フィルタを通過する光信号の波長を動的に変化させる波長選択手段
    とを具備することを特徴とする光アドドロップモジュール。
  18. 波長可変光源において、波長選択素子として請求項1〜請求項13いずれかに記載の波長可変光フィルタを用いた波長可変光源。
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