JP2005035360A - 車両の操舵制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】出力軸に入力された過度な反力トルクに起因する入力軸と出力軸との回転位相差を補正して、ステアリングホイールの回転操舵を適正なものにする。
【解決手段】操舵角センサ7と実転舵角センサ8から出力された各情報信号に基づいて、操舵手段5と位相差調整機構17を作動させる電子コントローラ9とを備えている。入力された過度な反力トルクによって出力軸4がトルクリミッター33を介して回転摺動したことを操舵角センサと実転舵角センサからの相対的な舵角差信号によって位相差検出回路が検出し、これに基づいて補正回路が各モータ13、27を駆動制御させて操舵軸2と出力軸の回転位相差のずれをほぼ零に補正するようにした。
【選択図】 図1
【解決手段】操舵角センサ7と実転舵角センサ8から出力された各情報信号に基づいて、操舵手段5と位相差調整機構17を作動させる電子コントローラ9とを備えている。入力された過度な反力トルクによって出力軸4がトルクリミッター33を介して回転摺動したことを操舵角センサと実転舵角センサからの相対的な舵角差信号によって位相差検出回路が検出し、これに基づいて補正回路が各モータ13、27を駆動制御させて操舵軸2と出力軸の回転位相差のずれをほぼ零に補正するようにした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の操舵制御装置に関し、例えば、ステアリングホイールと前輪操舵用駆動機構とを分離してなるステアバイワイヤ式の車両の操舵制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の車両の操舵制御装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られており、この車両の操舵制御装置にあっては、ステアリングホイールから左右の転舵輪までが、ステアリングシャフトやラック・ピニオンギアを介して直結された状態になっている。
【0003】
このため、ステアリングホイールと転舵輪との間に回転位相差をもたせて、ステアリングホイールの回転とは異なる転舵角を転舵輪に付与することはできなかった。すなわち、例えば、車庫入れ時には、ステアリングホイールの回転操作に対して転舵輪の転舵量を大きくしたり、車両の旋回時などにはステアリングホイールの回転操作とは関係無く転舵輪の転舵角を制御して危険を回避する等といった制御ができない。
【0004】
そこで、ステアリングホイール側の入力軸に対する転舵輪側の出力軸の出力に自由度をもたせるために、以下の特許文献2に記載された従来技術も提供されている。
【0005】
これは、入力軸と出力軸との間に遊星歯車機構を介在させて、この遊星歯車機構によって入力軸の減速比を制御することによって入力軸と出力軸との間の位相差を調整可能とするようになっている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−79951公報(図1)
【0007】
【特許文献2】
特公昭54−34212号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記後者の車両の操舵制御装置にあっては、例えば車両の事故などによって転舵輪が道路の縁石に乗り上げた際に、該転舵輪からギアなどを介して出力軸に大きな回転反力トルクが発生して、入力軸との間に大きな回転位相差、つまり回転位置の大きなずれが発生してしまうおそれがある。
【0009】
したがって、入力軸と出力軸との回転位相差を解消して同一位相にしなければ、ステアリングホイールの中立軸と転舵輪の中立軸にズレが生じて、ステアリングホイールの回転操作に違和感が発生するおそれがある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来の車両の操舵制御装置の技術的課題に鑑みて案出されたもので、請求項1記載の発明は、とりわけ、電子コントローラは、出力軸から入力軸に入力された反力トルクが所定以上になって、両軸間に過度な回転位相差が発生したことを、前記操舵角検出手段と実転舵角検出手段からの相対的な舵角差信号によって検出する位相差検出回路と、該位相差検出回路からの指令信号に基づいて前記操舵手段あるいは位相差調整機構の少なくともいずれか一方を作動させて入力軸と出力軸の回転位相差を補正する補正回路とを備えたことを特徴としている。
【0011】
したがって、この発明によれば、例えば転舵輪が道路の縁石に乗り上げるなどによって、転舵輪から出力軸に過度な反力トルクが発生して、入力軸との過度に大きな回転位相差が発生した場合には、これを検出した位相差検出回路からの指令信号によって補正回路が、操舵手段の駆動モータあるいは位相差調整機構の電動モータを回転制御して入力軸や出力軸を相対的に回転させ、これによって両軸の回転位相差がほぼ零となるように制御する。
【0012】
このため、その後のステアリングホイールによる適正な回転操舵が可能になる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記入力軸と出力軸間のトルク伝達経路に、出力軸から入力軸に入力された反力トルクが所定以上になった際に、該反力トルクを吸収するトルクリミッターを設け、該トルクリミッターが作動した際に、前記位相差検出回路と補正回路によって前記過度な回転位相差を補正するようにしたことを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、出力軸に過度に大きな反力トルクが作用すると、トルクリミッターが作動して、該過度な反力トルクを吸収する。
【0015】
したがって、位相差調整機構や減速機構などの歯車などに対する大きな荷重負荷の発生を回避することができるので、ステアリングホイールの適正な回転操作が可能になると共に、前記各機構の耐久性の向上が図れる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記位相差検出回路からの指令信号に基づいて前記操舵手段と位相差調整機構の両方を作動させることを特徴としている。
【0017】
この発明によれば、回転位相差をなくすために操舵手段の駆動モータと位相差調整機構の電動モータの両方を作動させるようにしたことから、回転位相差のずれを零方向へ容易に制御できると共に、ステアリングホイールの操作違和感を解消することが可能になる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る車両の操舵制御装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0019】
図1は一実施形態における車両の操舵制御装置の概略を示し、ステアリングホィール1に連結された操舵軸2(入力軸)と、前側左右の転舵輪FL、FRの操舵用のラック・ピニオン機構3と、該操舵軸2の操舵角に応じて出力軸4を介して前記ラック・ピニオン機構3を駆動させる操舵手段5と、該操舵手段5と独立して設けられて、前記操舵軸2の操舵角に応じて前記ラック・ピニオン機構3を駆動するバックアップ手段6と、前記操舵軸2の操舵角や操舵トルクを検出する操舵角検出手段である操舵角センサ7と、前記ラック・ピニオン機構3のラックバーの摺動位置の応じて両転舵輪FL、FRの実際の転舵角を検出する実転舵角検出手段である実転舵角センサ8と、該操舵角センサ7と実転舵角センサ8からの情報信号によって前記操舵手段5とバックアップ手段6を制御する電子コントローラ9とから構成されている。
【0020】
前記操舵軸2は、図1に示すように、先端部2aが前記バックアップ手段6の後述する遊星歯車機構のハウジング14にボールベアリング23によって回転自在に支持されつつ連係している。
【0021】
前記ラック・ピニオン機構3は、タイロッド10に固定されたラックバー11と、該ラックバー11に噛合する図外ピニオンギアとから構成され、前記ラックバー11は、タイロッド10の両端部に連結されたナックルアーム10a,10aを介して両転舵輪FL、FRに連係している。
【0022】
前記出力軸4は、図1に示すように、前記操舵軸2に遊星歯車を介して連係されたアッパー軸4aと、該アッパー軸4aに中間軸4bや自在継手を介して連結されて、前記ラック・ピニオン機構3のピニオンギアに連結されたロアー軸4cとから構成されている。前記アッパー軸4aは、ハウジングの他端開口の内周面に固定されたボールベアリング30によって回転自在に支持されている。
【0023】
前記操舵手段5は、前記ロアー軸4cを介してピニオンギアに連係した減速用のギア機構12と、該ギア機構12を介してピニオンギアを回転駆動する正逆回転可能な電動式の駆動モータ13とから構成されており、前記ギア機構12には、ラックバー11に摺動位置を検出して現在の実転舵角を検出する前記実転舵角センサ8が設けられている。
【0024】
前記バックアップ手段6は、ハウジング14内に直列に配置された2つの遊星歯車機構によって構成され、前記操舵軸2の操舵角に応じて前記ラック・ピニオン機構3を同期して駆動させる減速機構である第1遊星歯車機構15と、該第1遊星歯車機構15に直列に配置されて、第1遊星歯車機構15で減速された回転数を増速して出力軸4に伝達する増速機構である第2遊星歯車機構16と、該第2遊星歯車機構16を回転制御して操舵軸2と出力軸4との回転位相差を調整する位相差調整機構17とから構成されている。
【0025】
前記両遊星歯車機構15,16は、図1に示すように、1つのハウジング14内に前後に直列状態に配置されており、第1遊星歯車機構15は、ハウジング14のほぼ中央から内部へ挿通された前記操舵軸2に一体に結合された第1サンギア18と、該第1サンギア18の外周歯部に噛合しつつ該外周をプラネタリキャリア19の複数の支軸19aを介して公転する複数(例えば4個)の第1プラネタリギア20と、該第1プラネタリギア20の外周歯部に噛合した第1リングギア21とから構成されている。
【0026】
この第1リングギア21は、ボルト22によってハウジング14の内端部に非回転状態に固定されている。
【0027】
一方、前記第2遊星歯車機構16は、図2にも示すように、中央に前記出力軸4のアッパー軸4aに後述するトルクリミッター33を介して結合された第2サンギア24と、該第2サンギア24の外周歯部に噛合して第2サンギア24の外周を公転する4つの第2プラネタリギア25と、内周部に第2プラネタリギア25の外周歯部に噛合する内歯を有する第2リングギア26とから構成されている。また、前記第2プラネタリギア25は、第1プラネタリギア20とプラネタリキャリア19の同じ各支軸19aに同軸上に設けられている。
【0028】
この第2遊星歯車機構16は、第1遊星歯車機構15による減速比とほぼ反対の増速比をもって出力軸4を回転させるようになっており、例えば操舵軸2の1回転に対して、一旦、第1遊星歯車機構15で減速された回転比を第2遊星歯車機構16において、出力軸4をほぼ同じ回転比で増速するようになっている。
【0029】
前記位相差調整機構17は、図1及び図2に示すように、前記第2遊星歯車機構16の第2リングギア26と、ハウジング14の外端部に第2遊星歯車機構16の軸方向に対して直角方向に設けられた可逆式の電動モータ27と、該電動モータ27と前記第2リングギア26との間に設けられた伝達ギア機構であるウォーム歯車機構とから構成されている。
【0030】
前記ウォーム歯車機構は、図2に示すように、前記電動モータ27の回転軸に結合されたウォームシャフト28と、第2リングギア26の外周面に一体に形成されて前記ウォームシャフト28に噛合するウォームホイール29とから構成されて、電動モータ27から伝達された回転力を第2リングギア26に伝達し、この第2リングギア26の回転により第2プラネタリギア25や第2サンギア24を介して増速比を可変制御するようになっている。
【0031】
なお、前記ウォームシャフト28は、軸部の両端部がハウジング14の内部に固定されたボールベアリング31,32によって回転自在に支持されている。
【0032】
そして、前記出力軸4のアッパー軸4aと第2サンギア24との間には、トルクリミッター33が設けられている。
【0033】
すなわち、前記アッパー軸4aの先端部4dが小径状に形成されている一方、前記第2サンギア24は、中央軸部24aの内部に前記アッパー軸4aの先端部4dが挿通する円筒溝34が軸心方向に沿って形成されており、この円筒溝34の内周面とアッパー軸先端部4dの外周面との間に、トルクリミッター33が圧入されている。なお、前記中央軸部24aの先端部は、操舵軸2の先端部に形成された軸孔2aの内部にプレーンベアリング40を介して回転自在に支持されている。
【0034】
このトルクリミッター33は、図1〜図4に示すように、板材をプレス成形によって横断面ギア歯車状に折曲形成され、ギア歯車状に形成された中央部位33aの凸部33b外面が前記円筒溝34の内周面に圧入されていると共に、円筒状の前後部位33c、33dが縮径状に形成されて各内周面が前記先端部4dの外周面に圧入されている。
【0035】
そして、該トルクリミッター33の中央部位33aと前後部位33c、33dとの前記内外周面への圧入力によって、前記アッパー軸先端部4dに第2サンギア24が連結されており、出力軸4に所定以上(例えば200Nm以上)の回転反力トルクが作用すると、トルクリミッター33を介してアッパー軸4aが第2サンギア24に対して回転摺動するようになっている。
【0036】
前記電子コントローラ9は、マイクロコンピュータが内蔵され、図1に示すように、前記操舵角センサ7と実操舵角センサ8からのそれぞれの操舵角θ1、θ2を入力して前記駆動モータ13と電動モータ27に制御電流を出力するようになっている。
【0037】
また、この電子コントローラ9は、図5に示すように、前記出力軸4から操舵軸2に入力された転舵輪FL、FRからの反力トルクが所定以上(200Nm以上)になって、トルクリミッター33により出力軸4が第2サンギア24に対して回転摺動し、両軸2,4間に過度の回転位相差が発生したことを、前記操舵角センサ7と実転舵角センサ8からの相対的な舵角差信号によって検出する位相差検出回路35と、該位相差検出回路35からの指令信号に基づいて前記駆動モータ13と電動モータ27をそれぞれ回転駆動させて操舵軸2と出力軸4の回転位相差を補正する補正回路36とを備えている。
【0038】
さらに、この電子コントローラ9は、前記操舵手段5の駆動モータ13などの故障を検出する図外の故障検出回路を有し、該故障検出回路からの故障検出信号が入力されると、前記駆動モータ13への通電を遮断するようになっている。
【0039】
以下、駆動モータ13などの故障時における電子コントローラ9による駆動モータ13と電動モータ27の具体的な制御を図6のフローチャート図に基づいて説明する。
【0040】
まず、ステップ1において、操舵角センサ7から操舵軸2の操舵角θ1を読み込むと共に、実転舵角センサ8からラックバー11の摺動位置に基づいて実際の転舵角θ2を読み込む。
【0041】
続いて、ステップ2で前記故障検出回路から故障検出信号を読み込み、次に、ステップ3では、前記故障検出回路からの故障検出信号が入力されていないか否かを判定する。つまり、駆動モータ13などが故障してロック等がされていないか否かのフェールセーフを判定する。
【0042】
ここで、YES、つまり正常に駆動していると判定された場合は、ステップ4に進み、ここでは、前記操舵角センサ7と実転舵角センサ8から入力された操舵角情報に基づいてテーブルマップあるいは演算によって目標操舵角を生成する。
【0043】
次に、ステップ5に進んで、ここでは操舵反力目標トルクを生成する。すなわち、運転者は、ステアリングホイール1の回転操作時にある程度の操舵反力がないと良好な操舵フィーリングが得られないことから、本実施形態では、ラック・ピニオン機構3の駆動によって操舵輪FL、FRから伝達される操舵反力をギア機構11を介して遊星歯車機構から操舵軸2に反力トルクを伝達するようになっている。したがって、前記目標操舵角に基づいて、このステップ5において操舵反力目標トルクを決定する。
【0044】
続いて、ステップ6では、前記ステップ4で生成した目標操舵角に合わせてラック・ピニオン機構3を作動するために、駆動モータ13に制御電流を出力する。
【0045】
次に、ステップ7において、前記演算された実操舵角の値と前記目標操舵角の値の差分値を演算して、ステップ6に戻って、その差分値から適正な操舵角となるように駆動モータ13に制御電流を出力する。これによって、ラック・ピニオン機構3に左あるいは右方向の回転力を付与して、操舵輪FL、FRに対する通常の操舵制御が行われる。
【0046】
また、前記ステップ5において操舵反力目標トルクを生成した後は、同時にステップ8に移行し、ここで、操舵軸2と出力軸4との間に発生した位相差を相殺するために電動モータ27に制御電流を出力する。これによって、第2遊星歯車機構16により所定の増速比が生成されて、適正な操舵トルク反力を得ることが可能になる。
【0047】
その後、ステップ9に移行し、ここでは、操舵角センサ7から入力した操舵角と、実転舵角センサ8から入力した実転舵角と、前記生成した目標トルク値とを考慮して、再びステップ8に戻って常に目標トルクに合った反力トルクを得るために電動モータ27に制御電流を出力する。
【0048】
一方、前記ステップ3において、NOと判定した場合、つまり操舵手段5の駆動モータ13が故障してロックなどが発生してしまった場合には、ステップ10に移行する。
【0049】
ここでは、駆動モータ13への通電を遮断して操舵手段5の駆動を停止させる。
【0050】
続いて、ステップ11では電動モータ27への通電を遮断して操舵軸2と出力軸4との間の増速比の可変制御を停止する。
【0051】
したがって、運転者がステアリングホイール1を回転操作すると、操舵軸2の回転トルクは、第1サンギア18から第1プラネタリギア20に伝達され、さらにプラネタリキャリア19を介して第2プラネタリギア25に伝達され、ここから第2サンギア24及び出力軸4に伝達される。これによって、ラック・ピニオン機構3が手動によって作動されて操舵輪FL、FRを手動によって操舵制御、つまりバックアップ制御することが可能になる。
【0052】
この故障時には、電動モータ27への通電が遮断されていることから、第1,第2遊星歯車機構15,16による減速比、増速比によって、操舵軸2と出力軸4との回転比は固定比としてほぼ1:1の関係になる。
【0053】
このように、本実施形態によれば、操舵手段5が何等かの原因で故障して例えばロックしてしまった場合は、ステアリングホイール1の手動による回転操舵力を遊星歯車機構がラック・ピニオン機構3を作動させるため、操舵手段5のいずれの機器が故障したとしても、バックアップ手段6は何らの影響を受けずに、遊星歯車機構が、操舵手段5とは関係なく独自に駆動してラック・ピニオン機構3を作動させ、いわゆるマニュアルステアの状態で操舵輪FL、FRをフェールセーフ制御することが可能になる。
【0054】
したがって、ステアリングホイール1の通常の回転操作により操舵輪FL、FRの制御を何ら支障無く確実に行うことができ、安全性が向上する。
【0055】
また、操舵手段5が正常に駆動している場合は、前述のようのに、電動モータ27が回転駆動して遊星歯車機構により、操舵軸2に操舵反力が付与されるため、ステアリングホイール1の操舵フィーリングが良好になる。
【0056】
次に、例えば、転舵輪FL、FRが道路の縁石などに乗り上げて、出力軸4に過度な反力トルクが入力された場合における電子コントローラ9の制御フローチャートを図7に基づいて説明する。
【0057】
まず、ステップ21では、前記操舵角センサ7からの情報信号を読み込んで、現在の操舵角θ1が中立位置にあるか否かを判別する。ここでNO、つまり中立位置にないと判別した場合はそのままスタートに戻るが、中立位置にあると判別した場合は、ステップ22に移行し、ここでは前記実転舵角センサ8から各転舵輪FL、FRの現在の転舵角を入力し、ステップ23に移行する。
【0058】
このステップ23では、前記位相差検出回路35からの信号を読み取って、前記操舵軸2と出力軸4との回転位相差が所定以上である否かを判別し、所定以下であると判別した場合はスタートに戻るが、所定以上であると判別した場合は、トルクリミッター33によって出力軸4が円筒溝34を回転摺動したものと判断し、ステップ24に移行する。
【0059】
このステップ24では、前記補正回路36によって駆動モータ13と電動モータ27にそれぞれ制御電流を出力して、操舵軸2と出力軸4との回転位相差を互いに中立位置(零)に近づけるように制御する。
【0060】
このため、その後のステアリングホイール1による適正な回転操舵が可能になる。
【0061】
また、前述のように、出力軸4に過度な反力トルクが作用すると、トルクリミッター33により出力軸4のアッパー軸4aが回転摺動して、該過度な反力トルクを吸収するため、第1、第2遊星歯車機構15,16などの各ギアなどに対する大きな荷重負荷の発生を回避することができる。この結果、ステアリングホイール1のさらに適正な回転操作が可能になると共に、前記各遊星歯車機構15,16などの耐久性の向上が図れる。
【0062】
また、各遊星歯車機構15,16は、トルクリミッター33によって過度な反力トルクを受けないことから、各ギア歯車等の強度を下げることが可能になる。この結果、各遊星歯車機構15,16の小型化が図れると共に、製造コストの低減化が図れ、さらにギア歯車に安価な成形材料を用いることができるので、この点でもコストの低減化が図れる。
【0063】
またギア歯車の小型化によって、該ギア歯車に発生するイナーシャが低減され、この結果、電動モータ27の駆動トルクも小さなもので対応することができる。
【0064】
さらに、各軸2,4の回転位相差の零調整を操舵手段5と位相差調整機構17との両方を作動させて行うことにしたので、回転位相差のずれを零方向へ容易に制御できると共に、ステアリングホイール1の操作違和感を解消することが可能になる。
【0065】
さらに、位相差調整機構17の電動モータ27が故障した場合には、前述のように、操舵軸2の回転角度が遊星歯車機構によって減速、増速されて、両転舵輪FL、FRはステアリングホイール1の操舵角度とほぼ同一比の転舵角度で操舵制御されることになる。したがって、車両の運転者に対する操舵違和感の発生を十分に抑制することが可能になる。
【0066】
さらに、電動モータ27と第2リングギア26をウォーム歯車機構によって連係させたため、前述のように、電動モータ27が故障した場合に、第1遊星歯車機構15から第2遊星歯車機構16に減速された回転力が伝達された際に、第2リングギア26の自由な回転がウォーム歯車機構によって阻止されることから、第1遊星歯車機構15の回転力を第2遊星歯車機構16に効率よく伝達させることが可能になる。
【0067】
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、各軸2,4の回転位相差のずれを零方向へ調整する場合には、駆動モータ13あるいは電動モータ27のいずれか一方を作動させることによって行うことも可能である。また、減速機構や増速機構を遊星歯車機構に替えて、衛星歯車機構や、特開2002−255046号公報に開示されているようなボール螺子機構などとすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に供される遊星歯車機構を断面して示す車両の操舵制御装置の概略図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本実施形態に供されるトルクリミッターを示す斜視図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】本実施形態における電子コントローラの制御ブロック図である。
【図6】同電子コントローラの制御フローチャート図である。
【図7】同電子コントローラの制御フローチャート図である。
【符号の説明】
1…ステアリングホイール
2…操舵軸(入力軸)
3…ラック・ピニオン機構
4…出力軸
5…操舵手段
6…バックアップ手段
7…操舵角センサ(操舵角検出手段)
8…実転舵角センサ(実転舵角検出手段)
9…電子コントローラ
13…駆動モータ
15…第1遊星歯車機構
16…第2遊星歯車機構
17…位相調整機構
33…トルクリミッター
35…位相差検出回路
36…補正回路
FL・FR…転舵輪
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の操舵制御装置に関し、例えば、ステアリングホイールと前輪操舵用駆動機構とを分離してなるステアバイワイヤ式の車両の操舵制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の車両の操舵制御装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られており、この車両の操舵制御装置にあっては、ステアリングホイールから左右の転舵輪までが、ステアリングシャフトやラック・ピニオンギアを介して直結された状態になっている。
【0003】
このため、ステアリングホイールと転舵輪との間に回転位相差をもたせて、ステアリングホイールの回転とは異なる転舵角を転舵輪に付与することはできなかった。すなわち、例えば、車庫入れ時には、ステアリングホイールの回転操作に対して転舵輪の転舵量を大きくしたり、車両の旋回時などにはステアリングホイールの回転操作とは関係無く転舵輪の転舵角を制御して危険を回避する等といった制御ができない。
【0004】
そこで、ステアリングホイール側の入力軸に対する転舵輪側の出力軸の出力に自由度をもたせるために、以下の特許文献2に記載された従来技術も提供されている。
【0005】
これは、入力軸と出力軸との間に遊星歯車機構を介在させて、この遊星歯車機構によって入力軸の減速比を制御することによって入力軸と出力軸との間の位相差を調整可能とするようになっている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−79951公報(図1)
【0007】
【特許文献2】
特公昭54−34212号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記後者の車両の操舵制御装置にあっては、例えば車両の事故などによって転舵輪が道路の縁石に乗り上げた際に、該転舵輪からギアなどを介して出力軸に大きな回転反力トルクが発生して、入力軸との間に大きな回転位相差、つまり回転位置の大きなずれが発生してしまうおそれがある。
【0009】
したがって、入力軸と出力軸との回転位相差を解消して同一位相にしなければ、ステアリングホイールの中立軸と転舵輪の中立軸にズレが生じて、ステアリングホイールの回転操作に違和感が発生するおそれがある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来の車両の操舵制御装置の技術的課題に鑑みて案出されたもので、請求項1記載の発明は、とりわけ、電子コントローラは、出力軸から入力軸に入力された反力トルクが所定以上になって、両軸間に過度な回転位相差が発生したことを、前記操舵角検出手段と実転舵角検出手段からの相対的な舵角差信号によって検出する位相差検出回路と、該位相差検出回路からの指令信号に基づいて前記操舵手段あるいは位相差調整機構の少なくともいずれか一方を作動させて入力軸と出力軸の回転位相差を補正する補正回路とを備えたことを特徴としている。
【0011】
したがって、この発明によれば、例えば転舵輪が道路の縁石に乗り上げるなどによって、転舵輪から出力軸に過度な反力トルクが発生して、入力軸との過度に大きな回転位相差が発生した場合には、これを検出した位相差検出回路からの指令信号によって補正回路が、操舵手段の駆動モータあるいは位相差調整機構の電動モータを回転制御して入力軸や出力軸を相対的に回転させ、これによって両軸の回転位相差がほぼ零となるように制御する。
【0012】
このため、その後のステアリングホイールによる適正な回転操舵が可能になる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記入力軸と出力軸間のトルク伝達経路に、出力軸から入力軸に入力された反力トルクが所定以上になった際に、該反力トルクを吸収するトルクリミッターを設け、該トルクリミッターが作動した際に、前記位相差検出回路と補正回路によって前記過度な回転位相差を補正するようにしたことを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、出力軸に過度に大きな反力トルクが作用すると、トルクリミッターが作動して、該過度な反力トルクを吸収する。
【0015】
したがって、位相差調整機構や減速機構などの歯車などに対する大きな荷重負荷の発生を回避することができるので、ステアリングホイールの適正な回転操作が可能になると共に、前記各機構の耐久性の向上が図れる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記位相差検出回路からの指令信号に基づいて前記操舵手段と位相差調整機構の両方を作動させることを特徴としている。
【0017】
この発明によれば、回転位相差をなくすために操舵手段の駆動モータと位相差調整機構の電動モータの両方を作動させるようにしたことから、回転位相差のずれを零方向へ容易に制御できると共に、ステアリングホイールの操作違和感を解消することが可能になる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る車両の操舵制御装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0019】
図1は一実施形態における車両の操舵制御装置の概略を示し、ステアリングホィール1に連結された操舵軸2(入力軸)と、前側左右の転舵輪FL、FRの操舵用のラック・ピニオン機構3と、該操舵軸2の操舵角に応じて出力軸4を介して前記ラック・ピニオン機構3を駆動させる操舵手段5と、該操舵手段5と独立して設けられて、前記操舵軸2の操舵角に応じて前記ラック・ピニオン機構3を駆動するバックアップ手段6と、前記操舵軸2の操舵角や操舵トルクを検出する操舵角検出手段である操舵角センサ7と、前記ラック・ピニオン機構3のラックバーの摺動位置の応じて両転舵輪FL、FRの実際の転舵角を検出する実転舵角検出手段である実転舵角センサ8と、該操舵角センサ7と実転舵角センサ8からの情報信号によって前記操舵手段5とバックアップ手段6を制御する電子コントローラ9とから構成されている。
【0020】
前記操舵軸2は、図1に示すように、先端部2aが前記バックアップ手段6の後述する遊星歯車機構のハウジング14にボールベアリング23によって回転自在に支持されつつ連係している。
【0021】
前記ラック・ピニオン機構3は、タイロッド10に固定されたラックバー11と、該ラックバー11に噛合する図外ピニオンギアとから構成され、前記ラックバー11は、タイロッド10の両端部に連結されたナックルアーム10a,10aを介して両転舵輪FL、FRに連係している。
【0022】
前記出力軸4は、図1に示すように、前記操舵軸2に遊星歯車を介して連係されたアッパー軸4aと、該アッパー軸4aに中間軸4bや自在継手を介して連結されて、前記ラック・ピニオン機構3のピニオンギアに連結されたロアー軸4cとから構成されている。前記アッパー軸4aは、ハウジングの他端開口の内周面に固定されたボールベアリング30によって回転自在に支持されている。
【0023】
前記操舵手段5は、前記ロアー軸4cを介してピニオンギアに連係した減速用のギア機構12と、該ギア機構12を介してピニオンギアを回転駆動する正逆回転可能な電動式の駆動モータ13とから構成されており、前記ギア機構12には、ラックバー11に摺動位置を検出して現在の実転舵角を検出する前記実転舵角センサ8が設けられている。
【0024】
前記バックアップ手段6は、ハウジング14内に直列に配置された2つの遊星歯車機構によって構成され、前記操舵軸2の操舵角に応じて前記ラック・ピニオン機構3を同期して駆動させる減速機構である第1遊星歯車機構15と、該第1遊星歯車機構15に直列に配置されて、第1遊星歯車機構15で減速された回転数を増速して出力軸4に伝達する増速機構である第2遊星歯車機構16と、該第2遊星歯車機構16を回転制御して操舵軸2と出力軸4との回転位相差を調整する位相差調整機構17とから構成されている。
【0025】
前記両遊星歯車機構15,16は、図1に示すように、1つのハウジング14内に前後に直列状態に配置されており、第1遊星歯車機構15は、ハウジング14のほぼ中央から内部へ挿通された前記操舵軸2に一体に結合された第1サンギア18と、該第1サンギア18の外周歯部に噛合しつつ該外周をプラネタリキャリア19の複数の支軸19aを介して公転する複数(例えば4個)の第1プラネタリギア20と、該第1プラネタリギア20の外周歯部に噛合した第1リングギア21とから構成されている。
【0026】
この第1リングギア21は、ボルト22によってハウジング14の内端部に非回転状態に固定されている。
【0027】
一方、前記第2遊星歯車機構16は、図2にも示すように、中央に前記出力軸4のアッパー軸4aに後述するトルクリミッター33を介して結合された第2サンギア24と、該第2サンギア24の外周歯部に噛合して第2サンギア24の外周を公転する4つの第2プラネタリギア25と、内周部に第2プラネタリギア25の外周歯部に噛合する内歯を有する第2リングギア26とから構成されている。また、前記第2プラネタリギア25は、第1プラネタリギア20とプラネタリキャリア19の同じ各支軸19aに同軸上に設けられている。
【0028】
この第2遊星歯車機構16は、第1遊星歯車機構15による減速比とほぼ反対の増速比をもって出力軸4を回転させるようになっており、例えば操舵軸2の1回転に対して、一旦、第1遊星歯車機構15で減速された回転比を第2遊星歯車機構16において、出力軸4をほぼ同じ回転比で増速するようになっている。
【0029】
前記位相差調整機構17は、図1及び図2に示すように、前記第2遊星歯車機構16の第2リングギア26と、ハウジング14の外端部に第2遊星歯車機構16の軸方向に対して直角方向に設けられた可逆式の電動モータ27と、該電動モータ27と前記第2リングギア26との間に設けられた伝達ギア機構であるウォーム歯車機構とから構成されている。
【0030】
前記ウォーム歯車機構は、図2に示すように、前記電動モータ27の回転軸に結合されたウォームシャフト28と、第2リングギア26の外周面に一体に形成されて前記ウォームシャフト28に噛合するウォームホイール29とから構成されて、電動モータ27から伝達された回転力を第2リングギア26に伝達し、この第2リングギア26の回転により第2プラネタリギア25や第2サンギア24を介して増速比を可変制御するようになっている。
【0031】
なお、前記ウォームシャフト28は、軸部の両端部がハウジング14の内部に固定されたボールベアリング31,32によって回転自在に支持されている。
【0032】
そして、前記出力軸4のアッパー軸4aと第2サンギア24との間には、トルクリミッター33が設けられている。
【0033】
すなわち、前記アッパー軸4aの先端部4dが小径状に形成されている一方、前記第2サンギア24は、中央軸部24aの内部に前記アッパー軸4aの先端部4dが挿通する円筒溝34が軸心方向に沿って形成されており、この円筒溝34の内周面とアッパー軸先端部4dの外周面との間に、トルクリミッター33が圧入されている。なお、前記中央軸部24aの先端部は、操舵軸2の先端部に形成された軸孔2aの内部にプレーンベアリング40を介して回転自在に支持されている。
【0034】
このトルクリミッター33は、図1〜図4に示すように、板材をプレス成形によって横断面ギア歯車状に折曲形成され、ギア歯車状に形成された中央部位33aの凸部33b外面が前記円筒溝34の内周面に圧入されていると共に、円筒状の前後部位33c、33dが縮径状に形成されて各内周面が前記先端部4dの外周面に圧入されている。
【0035】
そして、該トルクリミッター33の中央部位33aと前後部位33c、33dとの前記内外周面への圧入力によって、前記アッパー軸先端部4dに第2サンギア24が連結されており、出力軸4に所定以上(例えば200Nm以上)の回転反力トルクが作用すると、トルクリミッター33を介してアッパー軸4aが第2サンギア24に対して回転摺動するようになっている。
【0036】
前記電子コントローラ9は、マイクロコンピュータが内蔵され、図1に示すように、前記操舵角センサ7と実操舵角センサ8からのそれぞれの操舵角θ1、θ2を入力して前記駆動モータ13と電動モータ27に制御電流を出力するようになっている。
【0037】
また、この電子コントローラ9は、図5に示すように、前記出力軸4から操舵軸2に入力された転舵輪FL、FRからの反力トルクが所定以上(200Nm以上)になって、トルクリミッター33により出力軸4が第2サンギア24に対して回転摺動し、両軸2,4間に過度の回転位相差が発生したことを、前記操舵角センサ7と実転舵角センサ8からの相対的な舵角差信号によって検出する位相差検出回路35と、該位相差検出回路35からの指令信号に基づいて前記駆動モータ13と電動モータ27をそれぞれ回転駆動させて操舵軸2と出力軸4の回転位相差を補正する補正回路36とを備えている。
【0038】
さらに、この電子コントローラ9は、前記操舵手段5の駆動モータ13などの故障を検出する図外の故障検出回路を有し、該故障検出回路からの故障検出信号が入力されると、前記駆動モータ13への通電を遮断するようになっている。
【0039】
以下、駆動モータ13などの故障時における電子コントローラ9による駆動モータ13と電動モータ27の具体的な制御を図6のフローチャート図に基づいて説明する。
【0040】
まず、ステップ1において、操舵角センサ7から操舵軸2の操舵角θ1を読み込むと共に、実転舵角センサ8からラックバー11の摺動位置に基づいて実際の転舵角θ2を読み込む。
【0041】
続いて、ステップ2で前記故障検出回路から故障検出信号を読み込み、次に、ステップ3では、前記故障検出回路からの故障検出信号が入力されていないか否かを判定する。つまり、駆動モータ13などが故障してロック等がされていないか否かのフェールセーフを判定する。
【0042】
ここで、YES、つまり正常に駆動していると判定された場合は、ステップ4に進み、ここでは、前記操舵角センサ7と実転舵角センサ8から入力された操舵角情報に基づいてテーブルマップあるいは演算によって目標操舵角を生成する。
【0043】
次に、ステップ5に進んで、ここでは操舵反力目標トルクを生成する。すなわち、運転者は、ステアリングホイール1の回転操作時にある程度の操舵反力がないと良好な操舵フィーリングが得られないことから、本実施形態では、ラック・ピニオン機構3の駆動によって操舵輪FL、FRから伝達される操舵反力をギア機構11を介して遊星歯車機構から操舵軸2に反力トルクを伝達するようになっている。したがって、前記目標操舵角に基づいて、このステップ5において操舵反力目標トルクを決定する。
【0044】
続いて、ステップ6では、前記ステップ4で生成した目標操舵角に合わせてラック・ピニオン機構3を作動するために、駆動モータ13に制御電流を出力する。
【0045】
次に、ステップ7において、前記演算された実操舵角の値と前記目標操舵角の値の差分値を演算して、ステップ6に戻って、その差分値から適正な操舵角となるように駆動モータ13に制御電流を出力する。これによって、ラック・ピニオン機構3に左あるいは右方向の回転力を付与して、操舵輪FL、FRに対する通常の操舵制御が行われる。
【0046】
また、前記ステップ5において操舵反力目標トルクを生成した後は、同時にステップ8に移行し、ここで、操舵軸2と出力軸4との間に発生した位相差を相殺するために電動モータ27に制御電流を出力する。これによって、第2遊星歯車機構16により所定の増速比が生成されて、適正な操舵トルク反力を得ることが可能になる。
【0047】
その後、ステップ9に移行し、ここでは、操舵角センサ7から入力した操舵角と、実転舵角センサ8から入力した実転舵角と、前記生成した目標トルク値とを考慮して、再びステップ8に戻って常に目標トルクに合った反力トルクを得るために電動モータ27に制御電流を出力する。
【0048】
一方、前記ステップ3において、NOと判定した場合、つまり操舵手段5の駆動モータ13が故障してロックなどが発生してしまった場合には、ステップ10に移行する。
【0049】
ここでは、駆動モータ13への通電を遮断して操舵手段5の駆動を停止させる。
【0050】
続いて、ステップ11では電動モータ27への通電を遮断して操舵軸2と出力軸4との間の増速比の可変制御を停止する。
【0051】
したがって、運転者がステアリングホイール1を回転操作すると、操舵軸2の回転トルクは、第1サンギア18から第1プラネタリギア20に伝達され、さらにプラネタリキャリア19を介して第2プラネタリギア25に伝達され、ここから第2サンギア24及び出力軸4に伝達される。これによって、ラック・ピニオン機構3が手動によって作動されて操舵輪FL、FRを手動によって操舵制御、つまりバックアップ制御することが可能になる。
【0052】
この故障時には、電動モータ27への通電が遮断されていることから、第1,第2遊星歯車機構15,16による減速比、増速比によって、操舵軸2と出力軸4との回転比は固定比としてほぼ1:1の関係になる。
【0053】
このように、本実施形態によれば、操舵手段5が何等かの原因で故障して例えばロックしてしまった場合は、ステアリングホイール1の手動による回転操舵力を遊星歯車機構がラック・ピニオン機構3を作動させるため、操舵手段5のいずれの機器が故障したとしても、バックアップ手段6は何らの影響を受けずに、遊星歯車機構が、操舵手段5とは関係なく独自に駆動してラック・ピニオン機構3を作動させ、いわゆるマニュアルステアの状態で操舵輪FL、FRをフェールセーフ制御することが可能になる。
【0054】
したがって、ステアリングホイール1の通常の回転操作により操舵輪FL、FRの制御を何ら支障無く確実に行うことができ、安全性が向上する。
【0055】
また、操舵手段5が正常に駆動している場合は、前述のようのに、電動モータ27が回転駆動して遊星歯車機構により、操舵軸2に操舵反力が付与されるため、ステアリングホイール1の操舵フィーリングが良好になる。
【0056】
次に、例えば、転舵輪FL、FRが道路の縁石などに乗り上げて、出力軸4に過度な反力トルクが入力された場合における電子コントローラ9の制御フローチャートを図7に基づいて説明する。
【0057】
まず、ステップ21では、前記操舵角センサ7からの情報信号を読み込んで、現在の操舵角θ1が中立位置にあるか否かを判別する。ここでNO、つまり中立位置にないと判別した場合はそのままスタートに戻るが、中立位置にあると判別した場合は、ステップ22に移行し、ここでは前記実転舵角センサ8から各転舵輪FL、FRの現在の転舵角を入力し、ステップ23に移行する。
【0058】
このステップ23では、前記位相差検出回路35からの信号を読み取って、前記操舵軸2と出力軸4との回転位相差が所定以上である否かを判別し、所定以下であると判別した場合はスタートに戻るが、所定以上であると判別した場合は、トルクリミッター33によって出力軸4が円筒溝34を回転摺動したものと判断し、ステップ24に移行する。
【0059】
このステップ24では、前記補正回路36によって駆動モータ13と電動モータ27にそれぞれ制御電流を出力して、操舵軸2と出力軸4との回転位相差を互いに中立位置(零)に近づけるように制御する。
【0060】
このため、その後のステアリングホイール1による適正な回転操舵が可能になる。
【0061】
また、前述のように、出力軸4に過度な反力トルクが作用すると、トルクリミッター33により出力軸4のアッパー軸4aが回転摺動して、該過度な反力トルクを吸収するため、第1、第2遊星歯車機構15,16などの各ギアなどに対する大きな荷重負荷の発生を回避することができる。この結果、ステアリングホイール1のさらに適正な回転操作が可能になると共に、前記各遊星歯車機構15,16などの耐久性の向上が図れる。
【0062】
また、各遊星歯車機構15,16は、トルクリミッター33によって過度な反力トルクを受けないことから、各ギア歯車等の強度を下げることが可能になる。この結果、各遊星歯車機構15,16の小型化が図れると共に、製造コストの低減化が図れ、さらにギア歯車に安価な成形材料を用いることができるので、この点でもコストの低減化が図れる。
【0063】
またギア歯車の小型化によって、該ギア歯車に発生するイナーシャが低減され、この結果、電動モータ27の駆動トルクも小さなもので対応することができる。
【0064】
さらに、各軸2,4の回転位相差の零調整を操舵手段5と位相差調整機構17との両方を作動させて行うことにしたので、回転位相差のずれを零方向へ容易に制御できると共に、ステアリングホイール1の操作違和感を解消することが可能になる。
【0065】
さらに、位相差調整機構17の電動モータ27が故障した場合には、前述のように、操舵軸2の回転角度が遊星歯車機構によって減速、増速されて、両転舵輪FL、FRはステアリングホイール1の操舵角度とほぼ同一比の転舵角度で操舵制御されることになる。したがって、車両の運転者に対する操舵違和感の発生を十分に抑制することが可能になる。
【0066】
さらに、電動モータ27と第2リングギア26をウォーム歯車機構によって連係させたため、前述のように、電動モータ27が故障した場合に、第1遊星歯車機構15から第2遊星歯車機構16に減速された回転力が伝達された際に、第2リングギア26の自由な回転がウォーム歯車機構によって阻止されることから、第1遊星歯車機構15の回転力を第2遊星歯車機構16に効率よく伝達させることが可能になる。
【0067】
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、各軸2,4の回転位相差のずれを零方向へ調整する場合には、駆動モータ13あるいは電動モータ27のいずれか一方を作動させることによって行うことも可能である。また、減速機構や増速機構を遊星歯車機構に替えて、衛星歯車機構や、特開2002−255046号公報に開示されているようなボール螺子機構などとすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に供される遊星歯車機構を断面して示す車両の操舵制御装置の概略図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本実施形態に供されるトルクリミッターを示す斜視図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】本実施形態における電子コントローラの制御ブロック図である。
【図6】同電子コントローラの制御フローチャート図である。
【図7】同電子コントローラの制御フローチャート図である。
【符号の説明】
1…ステアリングホイール
2…操舵軸(入力軸)
3…ラック・ピニオン機構
4…出力軸
5…操舵手段
6…バックアップ手段
7…操舵角センサ(操舵角検出手段)
8…実転舵角センサ(実転舵角検出手段)
9…電子コントローラ
13…駆動モータ
15…第1遊星歯車機構
16…第2遊星歯車機構
17…位相調整機構
33…トルクリミッター
35…位相差検出回路
36…補正回路
FL・FR…転舵輪
Claims (3)
- ステアリングホイールに連結された入力軸と、
該入力軸の操舵角を検出する操舵角検出手段と、
転舵輪に連係された出力軸と、
前記転舵輪の転舵角を検出する実転舵角検出手段と、
前記操舵角検出手段と実転舵角検出手段からのそれぞれの角度情報信号に基づいて、前記転舵輪に前記出力軸を介して転舵力を付与する操舵手段と、
前記入力軸と出力軸との間に設けられて、入力軸から出力軸に伝達される回転力を所定の減速比に変換制御する減速機構と、
前記入力軸と出力軸との間に回転位相差が発生した際に、該位相差を調整する位相差調整機構と、
前記操舵角検出手段と実転舵角検出手段から出力された舵角情報信号に基づいて、前記操舵手段と位相差調整機構を作動させる電子コントローラとを備えた車両の操舵制御装置であって、
前記電子コントローラは、前記出力軸から入力軸に入力された反力トルクが所定以上になって、両軸間に過度の回転位相差が発生したことを、前記操舵角検出手段と実転舵角検出手段からの相対的な舵角差信号によって検出する位相差検出回路と、
該位相差検出回路からの指令信号に基づいて前記操舵手段あるいは位相差調整機構の少なくともいずれか一方を作動させて入力軸と出力軸の回転位相差を補正する補正回路とを備えたことを特徴とする車両の操舵制御装置。 - 前記入力軸と出力軸間のトルク伝達経路に、出力軸から入力軸に入力された反力トルクが所定以上になった際に、該反力トルクを吸収するトルクリミッターを設け、該トルクリミッターが作動した際に、前記位相差検出回路と補正回路によって前記過度な回転位相差を補正するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の車両の操舵制御装置。
- 前記位相差検出回路からの指令信号に基づいて前記操舵手段と位相差調整機構の両方を作動させることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の操舵制御装置。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20041217 |