JP2005035077A - 熱硬化性樹脂成形方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱硬化性樹脂製成形品の生産時間を短縮するとともに、寸法精度がよい成形品が成形でき、成形品表面に金属粉、金属繊維が露出しない熱硬化性樹脂成形方法を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂材料と、少なくとも金属粉、金属繊維のいずれかが含まれた材料を混合した予備混合体1を作製する予備混合体作製工程と、予備混合体1を成形型20のキャビティ23に入れる供給工程と、キャビティ23内に入れられた材料に高周波を照射し誘導加熱する高周波誘導加熱工程が設けられていることを特徴とする熱硬化性樹脂成形方法。
【選択図】 図2
【解決手段】熱硬化性樹脂材料と、少なくとも金属粉、金属繊維のいずれかが含まれた材料を混合した予備混合体1を作製する予備混合体作製工程と、予備混合体1を成形型20のキャビティ23に入れる供給工程と、キャビティ23内に入れられた材料に高周波を照射し誘導加熱する高周波誘導加熱工程が設けられていることを特徴とする熱硬化性樹脂成形方法。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱硬化性樹脂成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱硬化性樹脂成形方法の一つに圧縮成形法がある。圧縮成形法はプレス装置にセットされた成形型内に成形材料を挟み込み、熱と圧力を加え形状付与と硬化反応および形状安定化をはかるために通常3〜7分程度、成形型を閉じた状態で保持する必要があり、生産性が劣る問題点がある。
【0003】
この問題を解決するため、特許文献1には、熱硬化性樹脂の硬化特性に基づく硬化時間範囲のみ成形型をプレス装置にセットし、その後成形型をプレス機より脱型したのちプレス機系外で成形型を加熱する熱硬化性樹脂の圧縮成形法が開示されている。これは脱型したのち寸法の安定化・硬化反応が100%完了までに必要な時間はプレス機から金型を取出し金型のみを別の工程で加熱しているので、生産性が向上できるとされている。
【0004】
特許文献2では、金属芯材を配合樹脂材層で被覆して全体形を一体成形した後、金属芯材を誘導加熱して配合樹脂材層を硬化させる熱硬化性樹脂成形体の製造方法が開示されている。短時間で歪の生じない樹脂成形体の製造できるとされている。
【0005】
特許文献3では、連続繊維として、微細な磁性材料を含む未硬化の熱硬化性樹脂を含浸したものか、または未硬化の熱硬化性樹脂を含浸した連続繊維に微細な磁性材料を付着したものを使用して巻回体を作製し、この巻回体を高周波誘導加熱装置を使用して加熱する繊維強化樹脂積層体の製造方法が開示されている。加熱硬化に要する時間が大幅に短縮できるとされている。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−27604号公報(請求項1など)
【0007】
【特許文献2】
特開平10−264177号公報(請求項1など)
【0008】
【特許文献3】
特開平6−335973号公報(請求項1など)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の方法では、プレス機から成形型を脱型できるまでに熱硬化性樹脂が90〜95%硬化している必要がある。そのために必要な時間は成形品の中心部が反応に必要な温度に達する時間で律される。特に厚肉の製品にあっては、熱の供給は、金型からの伝達によるため硬化に必要な時間が長くなる問題点がある。また圧力のないもしくは低い脱型した状態で100%の硬化反応をさせるため、製品の寸法バラツキを生じ易く、寸法精度の要求が高い製品においては品質上問題となる。さらに成形型の数が増加し、生産のための初期投資費用が増加すること、成形型を着脱する工数が増大すること、脱型した成形型を加熱する設備などが必要であることなど、生産上の問題点がある。しかも一成形品に着目すれば成形時間が短縮されることはない。
【0010】
特許文献2の方法では、金属芯材を被覆するように配合樹脂材層を形成して全体を成形したあとに、誘導加熱によって金属芯材を加熱させて熱硬化させるため、工程数が多くなり、必要な投資費用が増加する問題点がある。また金属芯材が製品内に残るため、適用できる製品が限定される問題点がある。しかも肉厚が厚い製品の場合、金属芯材から遠い部分は、硬化に必要な時間が長くなる問題点がある。
【0011】
特許文献3の方法では、芯型に巻回して得られた巻回体を、一度装置からはずし、別に設置されている高周波誘導加熱装置へ移動させてセットしなくてはならないため、得られた巻回体そのものがセットされるまでに、破損、変形する可能性がある。また巻回体を高周波誘導加熱する時に、巻回体はフリーの状態で加熱されるため、巻回体自身の膨張率の違い、金属繊維の繊維方向性の違い等の要因から、得られる巻回体の外径寸法精度が悪くなる可能性がある。しかも含芯によって得られた巻回体の表面には、誘導加熱のための金属繊維等が露出したままとなっており、一般的な製品には使用できない。特に摺動部品では相手材を傷つけるため使用できない。
【0012】
本発明は上記課題を解決したもので、熱硬化性樹脂製成形品の生産時間を短縮するとともに、寸法精度がよい成形品が成形でき、成形品表面に金属粉、金属繊維が露出しない熱硬化性樹脂成形方法を提供する。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するために、本発明の請求項1において講じた技術的手段(以下、第1の技術的手段と称する。)は、熱硬化性樹脂材料と、少なくとも金属粉、金属繊維のいずれかが含まれた材料を混合した予備混合体を作製する予備混合体作製工程と、前記予備混合体を成形型のキャビティに入れる供給工程と、前記キャビティ内に入れられた前記予備混合体に高周波を照射し誘導加熱する高周波誘導加熱工程が設けられていることを特徴とする熱硬化性樹脂成形方法である。
【0014】
上記第1の技術的手段による効果は、以下のようである。
【0015】
すなわち、熱硬化性樹脂材料と少なくとも金属粉、金属繊維のいずれかが含まれた材料をキャビティ内で高周波誘導加熱して成形するので、金属粉や金属繊維が発熱して材料を内部から急速に、かつ均一に加熱し、熱硬化性樹脂の硬化時間を短縮でき、成形品の生産時間を短縮できる。また成形型を閉じたまま高周波誘導加熱するので、寸法精度がよい成形品が成形でき、成形品の表面を熱硬化性樹脂が覆い、金属粉、金属繊維が表面に露出しない成形品ができる。
【0016】
上記技術的課題を解決するために、本発明の請求項2において講じた技術的手段(以下、第2の技術的手段と称する。)は、前記予備混合体が、前記熱硬化性樹脂材料と、少なくとも前記金属粉、前記金属繊維のいずれかを混合し、加圧して作製された予備成形体であることを特徴とする請求項1記載の熱硬化性樹脂成形方法である。
【0017】
上記第2の技術的手段による効果は、以下のようである。
【0018】
すなわち、予備成形体を作製しているので、取り扱い性に優れるとともに、金属粉、金属繊維が均一に分布された状態のまま、キャビティに入れることができる。
【0019】
上記技術的課題を解決するために、本発明の請求項3において講じた技術的手段(以下、第3の技術的手段と称する。)は、前記供給工程で前記予備成形体をキャビティ内に投入し、前記高周波誘導加熱工程で前記予備成形体を圧縮成形しながら高周波を照射することを特徴とする請求項2記載の熱硬化性樹脂成形方法である。
【0020】
上記第3の技術的手段による効果は、以下のようである。
【0021】
すなわち、直接キャビティ内に予備成形体を投入し成形するため、成形品内の金属繊維が配向することなく均一に分散させることができ、成形品の強度を均一にできる。
【0022】
上記技術的課題を解決するために、本発明の請求項4において講じた技術的手段(以下、第4の技術的手段と称する。)は、前記供給工程で前記予備成形体をトランスファーポットに投入し加熱可塑化後、前記キャビティに圧送することを特徴とする請求項2記載の熱硬化性樹脂成形方法である。
【0023】
上記第4の技術的手段による効果は、以下のようである。
【0024】
すなわち、予備成形体が加熱可塑化後キャビティに圧送されて成形されるので、複雑形状の成形品にも適用できる。しかも圧縮成形に比べてバリが少ない成形品ができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
成形型のキャビティ内に熱硬化性樹脂を供給し加熱硬化する方法では、成型型からの熱移動により成形型に近い部分から順番に硬化する。そのため肉厚が厚いものは中心まで温度が上がるのに時間がかかる。これは成形時間が長くかかるとともに製品内部の歪が残留する問題点を生ずる。
【0026】
本発明者は熱硬化性樹脂材料に、少なくとも金属粉、金属繊維のいずれかを混合し、高周波を照射することにより材料内部から加熱すれば上記の問題点が解決できることを見いだした。しかも成形型のキャビティ内に供給した状態で、高周波誘導加熱すると硬化後の成形品の表面に金属粉や金属繊維が露出しないことを見い出した。
【0027】
はじめに熱硬化性樹脂材料中に金属粉または金属繊維またはその両方を分散させた予備混合体を作製する。混合する金属粉や金属繊維の材質や大きさ、量、分散状態は対象製品の目標加熱時間、形状などにより適宜選択する。金属粉としては鉄粉、アルミ粉、炭素鋼粉などが例示できる。金属繊維としては鉄系繊維、アルミ系繊維、炭素鋼繊維などが例示できる。金属粉や金属繊維の含有量としては1〜30wt%、のぞましくは2〜20wt%、さらに望ましくは3〜10wt%がよい。金属粉や金属繊維の含有量が1wt%より少ないと高周波誘導加熱の効果が小さく、望ましくない。高周波誘導加熱によりキャビティ内の材料の内部を均一に加熱するためには、金属粉や金属繊維の含有量が2wt%以上が望ましく、さらに望ましくは3wt%以上がよい。金属粉や金属繊維の含有量が30wt%以上含まれると、成形性が低下すること、成形品の重量が重くなること、成形品の外観が低下することにより望ましくない。これらの問題点を避けるためには、できれば金属粉や金属繊維の含有量が20wt%以下が望ましく、さらに望ましくは10wt%以下がよい。
【0028】
次に作製した予備混合体を成形型のキャビティに入れる。入れる方法は成形方法によって異なる。本発明を適用できる成形方法として圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法が例示できるが、成形型を有する成形方法であれば何でも適用できる。成形型は一般的に金型を使用する。しかし金属以外の材質の成形型でも使用できる。高周波によって影響を受けない材質の方がより望ましい。圧縮成形法、トランスファー成形法では、予備混合体として、材料を加圧して作製した予備成形体いわゆるタブレットを使用する。この予備成形体を作製するとき、必要に応じて熱硬化性樹脂が硬化しない範囲で熱を加えてもよい。
【0029】
圧縮成形法ではキャビティに投入し、上型で圧縮して成形しながら高周波を照射する。圧縮成形法では直接キャビティ内に予備成形体を投入し成形するため、成形品内の金属繊維が配向することなく均一に分散させることができ、成形品の強度を均一にできる。
【0030】
トランスファー成形法では予備成形体をトランスファーポットに投入し加熱可塑化後、トランスファーポットからキャビティに圧送することにより予備成形体の材料をキャビティに供給したのちキャビティに高周波を照射する。トランスファー成形法では予備成形体が加熱可塑化後キャビティに圧送されて成形されるので、複雑形状の成形品にも適用できる。しかも圧縮成形に比べてバリが少ない成形品ができる。
【0031】
射出成形法では材料を硬化しない範囲で加熱混練してペレット(予備混合体)を作製し、射出成形機を用い、加熱可塑化後、成形型のキャビティに予備混合体の材料を供給したのちキャビティに高周波を照射する。
【0032】
高周波誘導加熱用のコイルは成形型内に内蔵させてもよいし、成形型の外部に設けてもよい。しかし成形型内に内蔵させる方が成形装置を小型化できるとともに誘導加熱効果を向上できる。高周波の照射は成形型を閉じたまま行う。これによって成形品の寸法精度を満足できる。また成形品の表面を熱硬化性樹脂が覆うので、金属粉や金属繊維が表面に露出することがなくなる。高周波誘導加熱条件としては、出力500W〜30kW、周波数50kHz〜3MHzが使用される。高周波誘導加熱は熱硬化性樹脂部分の到達温度が150〜200℃(樹脂により異なる)を目標に制御される。高周波誘導時間は10〜30秒を目標に制御される。これらの条件は成形品の肉厚や形状によって適宜選択する。
【0033】
キャビティに高周波を照射を行うことにより材料中に含まれている金属粉または金属繊維が発熱する。この熱が金属粉や金属繊維の周囲に存在する熱硬化性樹脂に伝達され、熱硬化性樹脂の温度を瞬時に硬化に必要な温度まで昇温させることができる。成形型は一般的に加熱されている。この場合には、成形型からも熱硬化性樹脂に伝熱される。成形型の温度は適宜選択できるが、一般的には150〜180℃に設定される。圧縮成形方法の場合、成形型が加熱されていても予備成形体をキャビティに入れた瞬間に予備成形体の表面温度が下がる。キャビティに高周波を照射すれば、上記したように、予備成形体中に含まれている金属粉または金属繊維が発熱し、瞬時にもとの設定温度まで上昇させることができるとともに、予備成形体の内部も同じ温度にすることができる。高周波は、その発信を適宜ON・OFFすることにより金属粉または金属繊維の周囲の樹脂温度を、熱硬化性樹脂の硬化反応に必要な温度に維持するとともに、型表面温度を調整することができる。これにより成形品が厚肉であっても成形時間を短縮できるとともに、精度の高い成形品を製造できる。また内部から加熱された熱硬化性樹脂が型表面に流れ、成形品の表面を覆うので、金属粉または金属繊維が表面に露出しない成形品が成形できる。
【0034】
熱硬化性樹脂材料と金属粉や金属繊維以外にも必要に応じて他の材料を含有させることができる。例えば、成形品の強度を向上する目的でガラス繊維を含有させることができる。この場合にも、本発明の成形方法ではガラス繊維が成形体の表面に露出しない効果を奏する。
【0035】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1は実施形態で用いた自動車用ディスクブレーキに使用するフェノール樹脂製ピストンの断面図である。ピストン10はブレーキパッドを取り付けるためのブレーキパッド取り付け面部11、油圧シリンダに接して摺動する摺動部12、それらの間に設けられたダストブーツ溝13などから構成されている。摺動部12の外周面12aは油圧シリンダに接している摺動面である。ピストン10の概略外径は50mm、長さ40mmである。
【0036】
熱硬化性樹脂として粉末状のレゾール型フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製:スミコン PM3088)を用いる。金属繊維としてS15Cの金属繊維(虹技株式会社製:KCメタルファイバー)を用いる。金属繊維の平均形状は径40μm、長さ3mmである。
【0037】
はじめに熱硬化性樹脂と金属繊維を、金属繊維が全体の重量に対して5wt%になるように配合し、均一に分散させる。この配合材料を用いてタブレットマシンで円柱形状のタブレット(予備成形体)を製造する。こうして製造されたタブレットを第1実施形態および第2実施形態に使用する。
【0038】
図2は第1実施形態の圧縮成形装置の成形前の状態を説明する説明断面図である。図3は第1実施形態の圧縮成形装置の成形時の状態を説明する説明断面図である。図2、図3は簡略的に記載されている。成形型としての金型20は下型21と上型22で構成され、下型21と上型22によりキャビティ23が形成される。下型21内にはキャビティ23を取り囲むように高周波誘導加熱用のコイル24が設けられている。コイル24は図示しない高周波誘導加熱制御部に連結され、流れる電流が制御される。下型21内には図示されていないが成形品を突き出すイジェクトピンが内蔵されている。
【0039】
タブレット1を別に設けられた高周波加熱装置(誘電加熱)により100℃前後に予備加熱した後、キャビティ23内にセットされる(供給工程)。金型20は160℃前後に加熱されている。
【0040】
次に上型22を下方に動かし型閉じ動作とともにコイル24に高周波電流を流す。これにより予備混合体が所定の形状に加工されるとともに金属繊維に誘導電流が流れ、材料内部から加熱され全体に均一な温度となる。キャビティ23内にセットしたとき、予備成形体1の温度は金型20の温度より低いので、金型20のキャビティ23の型表面温度が低下するが、高周波誘導加熱により素早く回復される。こうしてキャビティ23内の材料は内外部が均一に、かつ素早く昇温され、熱硬化性樹脂の硬化反応を短時間で完了させることができる。高周波誘導加熱を使用しない場合に比べて硬化時間が三分の一から二分の一に短縮でき、生産性を大幅に向上させることができる。こうして成形された成形品10を、上型22を上方に動かし型開きしたのち図示しないイジェクトピンにより突出し、金型20より取り出す。
【0041】
成形品10はキャビティ23内で硬化完了するので、寸法精度の高いものが得られる。また成形品10の表面は熱硬化性樹脂で覆われ、金属繊維は露出することはない。これにより金属繊維が表面に露出することにより生ずる問題点を解決できる。特に、ディスクブレーキ用ピストンの場合、摺動部12の外周面12aに金属繊維が露出していないことにより、その摺動相手の油圧シリンダを傷つけることがなく、ブレーキの信頼性が確保できる効果を奏する。
【0042】
図4は第2実施形態のトランスファー成形装置の成形前の状態を説明する説明断面図である。図5は第2実施形態のトランスファー成形装置の成形時の状態を説明する説明断面図である。図4、図5は簡略的に記載されている。成形型としての金型30は下型31と上型32で構成され、下型31と上型32によりキャビティ33が形成される。下型31内にはキャビティ33を取り囲むように高周波誘導加熱用のコイル34が設けられている。コイル34は図示しない高周波誘導加熱制御部に連結され、流れる電流が制御される。下型31内には図示されていないが成形品を突き出すイジェクトピンが内蔵されている。上型32にはトランスファーポット36が設けられ、トランスファーポット36は下型31に設けられたゲート35を介してキャビティ33に連結されている。トランスファーポット36はタブレット2が投入される部分である。トランスファーポット36にはトランスファーポット36からキャビティ33にタブレット2を圧送するためにタブレット2を加圧する加圧ピストン37が挿入されるようになっている。
【0043】
成形開始前に上型32を下方に動かし、下型31に当接させてキャビティ33が形成されている。図4のようにトランスファーポット36にタブレット2を投入する。金型30は160℃前後に加熱されている。
【0044】
次に加圧ピストン37をトランスファーポット36に挿入しタブレット2を加圧する。タブレット2は金型30の温度により硬化しない程度に加熱可塑化しており、加圧ピストン37の加圧力により流動状態となりゲート35を介してキャビティ33に圧送される。キャビティ33にタブレット2の材料が圧送されると同時にコイル34高周波電流を流す。タブレット2の材料はキャビティ33の形状により所定の形状にされるとともに金属繊維に誘導電流が流れ、材料内部から加熱され全体に均一な温度となる。こうしてキャビティ33内の材料は内外部が均一に、かつ素早く昇温され、熱硬化性樹脂の硬化反応を短時間で完了させることができる。高周波誘導加熱を使用しない場合に比べて硬化時間が三分の一から二分の一に短縮でき、生産性を大幅に向上させることができる。こうして成形された成形品10を、上型32を上方に動かし型開きしたのち図示しないイジェクトピンにより突出し、金型30より取り出す。
【0045】
成形品10はキャビティ33内で硬化完了するので、寸法精度の高いものが得られる。また成形品10の表面は熱硬化性樹脂で覆われ、金属繊維は露出することはない。これにより金属繊維が表面に露出することにより生ずる問題点を解決できる。特に、ディスクブレーキ用ピストンの場合、摺動部12の外周面12aに金属繊維が露出していないことにより、その摺動相手の油圧シリンダを傷つけることがなく、ブレーキの信頼性が確保できる効果を奏する。
【0046】
実施形態では高周波誘導加熱のために金属繊維を用いたが、金属粉でもかまわない。また実施形態では熱硬化性樹脂として粉末状のレゾール型フェノール樹脂を用いたが、フェノール樹脂以外の熱硬化性樹脂でもよいし、粉末状以外の形状、例えばフレーク状でもよい。
【0047】
第1実施形態では型閉じ動作とともに高周波を照射しているが、型閉じ動作前から高周波を照射してもよいし、型閉じ後に高周波を照射してもよい。第2実施形態ではキャビティに予備成形体の材料が圧送されると同時に高周波を照射しているが、材料が圧送される前からキャビティに高周波照射を開始してもよいし、材料の圧送が完了したあとで高周波照射を開始してもよい。
【0048】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、熱硬化性樹脂材料と、少なくとも金属粉、金属繊維のいずれかが含まれた材料を混合した予備混合体を作製する予備混合体作製工程と、前記予備混合体を成形型のキャビティに入れる供給工程と、前記キャビティ内に入れられた前記予備混合体に高周波を照射し誘導加熱する高周波誘導加熱工程が設けられていることを特徴とする熱硬化性樹脂成形方法であるので、熱硬化性樹脂製成形品の生産時間を短縮するとともに、寸法精度がよい成形品が成形でき、成形品表面に金属粉、金属繊維が露出しない熱硬化性樹脂成形方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態で製造した自動車用ディスクブレーキに使用するフェノール樹脂製ピストンの断面図
【図2】第1実施形態の圧縮成形装置の成形前の状態を説明する説明断面図
【図3】第1実施形態の圧縮成形装置の成形時の状態を説明する説明断面図
【図4】第2実施形態のトランスファー成形装置の成形前の状態を説明する説明断面図
【図5】第2実施形態のトランスファー成形装置の成形時の状態を説明する説明断面図
【符号の説明】
1、2…予備成形体(予備混合体)
20、30…金型(成形型)
23、33…キャビティ
24、34…高周波誘導加熱用コイル
36…トランスファーポット
【発明の属する技術分野】
本発明は熱硬化性樹脂成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱硬化性樹脂成形方法の一つに圧縮成形法がある。圧縮成形法はプレス装置にセットされた成形型内に成形材料を挟み込み、熱と圧力を加え形状付与と硬化反応および形状安定化をはかるために通常3〜7分程度、成形型を閉じた状態で保持する必要があり、生産性が劣る問題点がある。
【0003】
この問題を解決するため、特許文献1には、熱硬化性樹脂の硬化特性に基づく硬化時間範囲のみ成形型をプレス装置にセットし、その後成形型をプレス機より脱型したのちプレス機系外で成形型を加熱する熱硬化性樹脂の圧縮成形法が開示されている。これは脱型したのち寸法の安定化・硬化反応が100%完了までに必要な時間はプレス機から金型を取出し金型のみを別の工程で加熱しているので、生産性が向上できるとされている。
【0004】
特許文献2では、金属芯材を配合樹脂材層で被覆して全体形を一体成形した後、金属芯材を誘導加熱して配合樹脂材層を硬化させる熱硬化性樹脂成形体の製造方法が開示されている。短時間で歪の生じない樹脂成形体の製造できるとされている。
【0005】
特許文献3では、連続繊維として、微細な磁性材料を含む未硬化の熱硬化性樹脂を含浸したものか、または未硬化の熱硬化性樹脂を含浸した連続繊維に微細な磁性材料を付着したものを使用して巻回体を作製し、この巻回体を高周波誘導加熱装置を使用して加熱する繊維強化樹脂積層体の製造方法が開示されている。加熱硬化に要する時間が大幅に短縮できるとされている。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−27604号公報(請求項1など)
【0007】
【特許文献2】
特開平10−264177号公報(請求項1など)
【0008】
【特許文献3】
特開平6−335973号公報(請求項1など)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の方法では、プレス機から成形型を脱型できるまでに熱硬化性樹脂が90〜95%硬化している必要がある。そのために必要な時間は成形品の中心部が反応に必要な温度に達する時間で律される。特に厚肉の製品にあっては、熱の供給は、金型からの伝達によるため硬化に必要な時間が長くなる問題点がある。また圧力のないもしくは低い脱型した状態で100%の硬化反応をさせるため、製品の寸法バラツキを生じ易く、寸法精度の要求が高い製品においては品質上問題となる。さらに成形型の数が増加し、生産のための初期投資費用が増加すること、成形型を着脱する工数が増大すること、脱型した成形型を加熱する設備などが必要であることなど、生産上の問題点がある。しかも一成形品に着目すれば成形時間が短縮されることはない。
【0010】
特許文献2の方法では、金属芯材を被覆するように配合樹脂材層を形成して全体を成形したあとに、誘導加熱によって金属芯材を加熱させて熱硬化させるため、工程数が多くなり、必要な投資費用が増加する問題点がある。また金属芯材が製品内に残るため、適用できる製品が限定される問題点がある。しかも肉厚が厚い製品の場合、金属芯材から遠い部分は、硬化に必要な時間が長くなる問題点がある。
【0011】
特許文献3の方法では、芯型に巻回して得られた巻回体を、一度装置からはずし、別に設置されている高周波誘導加熱装置へ移動させてセットしなくてはならないため、得られた巻回体そのものがセットされるまでに、破損、変形する可能性がある。また巻回体を高周波誘導加熱する時に、巻回体はフリーの状態で加熱されるため、巻回体自身の膨張率の違い、金属繊維の繊維方向性の違い等の要因から、得られる巻回体の外径寸法精度が悪くなる可能性がある。しかも含芯によって得られた巻回体の表面には、誘導加熱のための金属繊維等が露出したままとなっており、一般的な製品には使用できない。特に摺動部品では相手材を傷つけるため使用できない。
【0012】
本発明は上記課題を解決したもので、熱硬化性樹脂製成形品の生産時間を短縮するとともに、寸法精度がよい成形品が成形でき、成形品表面に金属粉、金属繊維が露出しない熱硬化性樹脂成形方法を提供する。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するために、本発明の請求項1において講じた技術的手段(以下、第1の技術的手段と称する。)は、熱硬化性樹脂材料と、少なくとも金属粉、金属繊維のいずれかが含まれた材料を混合した予備混合体を作製する予備混合体作製工程と、前記予備混合体を成形型のキャビティに入れる供給工程と、前記キャビティ内に入れられた前記予備混合体に高周波を照射し誘導加熱する高周波誘導加熱工程が設けられていることを特徴とする熱硬化性樹脂成形方法である。
【0014】
上記第1の技術的手段による効果は、以下のようである。
【0015】
すなわち、熱硬化性樹脂材料と少なくとも金属粉、金属繊維のいずれかが含まれた材料をキャビティ内で高周波誘導加熱して成形するので、金属粉や金属繊維が発熱して材料を内部から急速に、かつ均一に加熱し、熱硬化性樹脂の硬化時間を短縮でき、成形品の生産時間を短縮できる。また成形型を閉じたまま高周波誘導加熱するので、寸法精度がよい成形品が成形でき、成形品の表面を熱硬化性樹脂が覆い、金属粉、金属繊維が表面に露出しない成形品ができる。
【0016】
上記技術的課題を解決するために、本発明の請求項2において講じた技術的手段(以下、第2の技術的手段と称する。)は、前記予備混合体が、前記熱硬化性樹脂材料と、少なくとも前記金属粉、前記金属繊維のいずれかを混合し、加圧して作製された予備成形体であることを特徴とする請求項1記載の熱硬化性樹脂成形方法である。
【0017】
上記第2の技術的手段による効果は、以下のようである。
【0018】
すなわち、予備成形体を作製しているので、取り扱い性に優れるとともに、金属粉、金属繊維が均一に分布された状態のまま、キャビティに入れることができる。
【0019】
上記技術的課題を解決するために、本発明の請求項3において講じた技術的手段(以下、第3の技術的手段と称する。)は、前記供給工程で前記予備成形体をキャビティ内に投入し、前記高周波誘導加熱工程で前記予備成形体を圧縮成形しながら高周波を照射することを特徴とする請求項2記載の熱硬化性樹脂成形方法である。
【0020】
上記第3の技術的手段による効果は、以下のようである。
【0021】
すなわち、直接キャビティ内に予備成形体を投入し成形するため、成形品内の金属繊維が配向することなく均一に分散させることができ、成形品の強度を均一にできる。
【0022】
上記技術的課題を解決するために、本発明の請求項4において講じた技術的手段(以下、第4の技術的手段と称する。)は、前記供給工程で前記予備成形体をトランスファーポットに投入し加熱可塑化後、前記キャビティに圧送することを特徴とする請求項2記載の熱硬化性樹脂成形方法である。
【0023】
上記第4の技術的手段による効果は、以下のようである。
【0024】
すなわち、予備成形体が加熱可塑化後キャビティに圧送されて成形されるので、複雑形状の成形品にも適用できる。しかも圧縮成形に比べてバリが少ない成形品ができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
成形型のキャビティ内に熱硬化性樹脂を供給し加熱硬化する方法では、成型型からの熱移動により成形型に近い部分から順番に硬化する。そのため肉厚が厚いものは中心まで温度が上がるのに時間がかかる。これは成形時間が長くかかるとともに製品内部の歪が残留する問題点を生ずる。
【0026】
本発明者は熱硬化性樹脂材料に、少なくとも金属粉、金属繊維のいずれかを混合し、高周波を照射することにより材料内部から加熱すれば上記の問題点が解決できることを見いだした。しかも成形型のキャビティ内に供給した状態で、高周波誘導加熱すると硬化後の成形品の表面に金属粉や金属繊維が露出しないことを見い出した。
【0027】
はじめに熱硬化性樹脂材料中に金属粉または金属繊維またはその両方を分散させた予備混合体を作製する。混合する金属粉や金属繊維の材質や大きさ、量、分散状態は対象製品の目標加熱時間、形状などにより適宜選択する。金属粉としては鉄粉、アルミ粉、炭素鋼粉などが例示できる。金属繊維としては鉄系繊維、アルミ系繊維、炭素鋼繊維などが例示できる。金属粉や金属繊維の含有量としては1〜30wt%、のぞましくは2〜20wt%、さらに望ましくは3〜10wt%がよい。金属粉や金属繊維の含有量が1wt%より少ないと高周波誘導加熱の効果が小さく、望ましくない。高周波誘導加熱によりキャビティ内の材料の内部を均一に加熱するためには、金属粉や金属繊維の含有量が2wt%以上が望ましく、さらに望ましくは3wt%以上がよい。金属粉や金属繊維の含有量が30wt%以上含まれると、成形性が低下すること、成形品の重量が重くなること、成形品の外観が低下することにより望ましくない。これらの問題点を避けるためには、できれば金属粉や金属繊維の含有量が20wt%以下が望ましく、さらに望ましくは10wt%以下がよい。
【0028】
次に作製した予備混合体を成形型のキャビティに入れる。入れる方法は成形方法によって異なる。本発明を適用できる成形方法として圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法が例示できるが、成形型を有する成形方法であれば何でも適用できる。成形型は一般的に金型を使用する。しかし金属以外の材質の成形型でも使用できる。高周波によって影響を受けない材質の方がより望ましい。圧縮成形法、トランスファー成形法では、予備混合体として、材料を加圧して作製した予備成形体いわゆるタブレットを使用する。この予備成形体を作製するとき、必要に応じて熱硬化性樹脂が硬化しない範囲で熱を加えてもよい。
【0029】
圧縮成形法ではキャビティに投入し、上型で圧縮して成形しながら高周波を照射する。圧縮成形法では直接キャビティ内に予備成形体を投入し成形するため、成形品内の金属繊維が配向することなく均一に分散させることができ、成形品の強度を均一にできる。
【0030】
トランスファー成形法では予備成形体をトランスファーポットに投入し加熱可塑化後、トランスファーポットからキャビティに圧送することにより予備成形体の材料をキャビティに供給したのちキャビティに高周波を照射する。トランスファー成形法では予備成形体が加熱可塑化後キャビティに圧送されて成形されるので、複雑形状の成形品にも適用できる。しかも圧縮成形に比べてバリが少ない成形品ができる。
【0031】
射出成形法では材料を硬化しない範囲で加熱混練してペレット(予備混合体)を作製し、射出成形機を用い、加熱可塑化後、成形型のキャビティに予備混合体の材料を供給したのちキャビティに高周波を照射する。
【0032】
高周波誘導加熱用のコイルは成形型内に内蔵させてもよいし、成形型の外部に設けてもよい。しかし成形型内に内蔵させる方が成形装置を小型化できるとともに誘導加熱効果を向上できる。高周波の照射は成形型を閉じたまま行う。これによって成形品の寸法精度を満足できる。また成形品の表面を熱硬化性樹脂が覆うので、金属粉や金属繊維が表面に露出することがなくなる。高周波誘導加熱条件としては、出力500W〜30kW、周波数50kHz〜3MHzが使用される。高周波誘導加熱は熱硬化性樹脂部分の到達温度が150〜200℃(樹脂により異なる)を目標に制御される。高周波誘導時間は10〜30秒を目標に制御される。これらの条件は成形品の肉厚や形状によって適宜選択する。
【0033】
キャビティに高周波を照射を行うことにより材料中に含まれている金属粉または金属繊維が発熱する。この熱が金属粉や金属繊維の周囲に存在する熱硬化性樹脂に伝達され、熱硬化性樹脂の温度を瞬時に硬化に必要な温度まで昇温させることができる。成形型は一般的に加熱されている。この場合には、成形型からも熱硬化性樹脂に伝熱される。成形型の温度は適宜選択できるが、一般的には150〜180℃に設定される。圧縮成形方法の場合、成形型が加熱されていても予備成形体をキャビティに入れた瞬間に予備成形体の表面温度が下がる。キャビティに高周波を照射すれば、上記したように、予備成形体中に含まれている金属粉または金属繊維が発熱し、瞬時にもとの設定温度まで上昇させることができるとともに、予備成形体の内部も同じ温度にすることができる。高周波は、その発信を適宜ON・OFFすることにより金属粉または金属繊維の周囲の樹脂温度を、熱硬化性樹脂の硬化反応に必要な温度に維持するとともに、型表面温度を調整することができる。これにより成形品が厚肉であっても成形時間を短縮できるとともに、精度の高い成形品を製造できる。また内部から加熱された熱硬化性樹脂が型表面に流れ、成形品の表面を覆うので、金属粉または金属繊維が表面に露出しない成形品が成形できる。
【0034】
熱硬化性樹脂材料と金属粉や金属繊維以外にも必要に応じて他の材料を含有させることができる。例えば、成形品の強度を向上する目的でガラス繊維を含有させることができる。この場合にも、本発明の成形方法ではガラス繊維が成形体の表面に露出しない効果を奏する。
【0035】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1は実施形態で用いた自動車用ディスクブレーキに使用するフェノール樹脂製ピストンの断面図である。ピストン10はブレーキパッドを取り付けるためのブレーキパッド取り付け面部11、油圧シリンダに接して摺動する摺動部12、それらの間に設けられたダストブーツ溝13などから構成されている。摺動部12の外周面12aは油圧シリンダに接している摺動面である。ピストン10の概略外径は50mm、長さ40mmである。
【0036】
熱硬化性樹脂として粉末状のレゾール型フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製:スミコン PM3088)を用いる。金属繊維としてS15Cの金属繊維(虹技株式会社製:KCメタルファイバー)を用いる。金属繊維の平均形状は径40μm、長さ3mmである。
【0037】
はじめに熱硬化性樹脂と金属繊維を、金属繊維が全体の重量に対して5wt%になるように配合し、均一に分散させる。この配合材料を用いてタブレットマシンで円柱形状のタブレット(予備成形体)を製造する。こうして製造されたタブレットを第1実施形態および第2実施形態に使用する。
【0038】
図2は第1実施形態の圧縮成形装置の成形前の状態を説明する説明断面図である。図3は第1実施形態の圧縮成形装置の成形時の状態を説明する説明断面図である。図2、図3は簡略的に記載されている。成形型としての金型20は下型21と上型22で構成され、下型21と上型22によりキャビティ23が形成される。下型21内にはキャビティ23を取り囲むように高周波誘導加熱用のコイル24が設けられている。コイル24は図示しない高周波誘導加熱制御部に連結され、流れる電流が制御される。下型21内には図示されていないが成形品を突き出すイジェクトピンが内蔵されている。
【0039】
タブレット1を別に設けられた高周波加熱装置(誘電加熱)により100℃前後に予備加熱した後、キャビティ23内にセットされる(供給工程)。金型20は160℃前後に加熱されている。
【0040】
次に上型22を下方に動かし型閉じ動作とともにコイル24に高周波電流を流す。これにより予備混合体が所定の形状に加工されるとともに金属繊維に誘導電流が流れ、材料内部から加熱され全体に均一な温度となる。キャビティ23内にセットしたとき、予備成形体1の温度は金型20の温度より低いので、金型20のキャビティ23の型表面温度が低下するが、高周波誘導加熱により素早く回復される。こうしてキャビティ23内の材料は内外部が均一に、かつ素早く昇温され、熱硬化性樹脂の硬化反応を短時間で完了させることができる。高周波誘導加熱を使用しない場合に比べて硬化時間が三分の一から二分の一に短縮でき、生産性を大幅に向上させることができる。こうして成形された成形品10を、上型22を上方に動かし型開きしたのち図示しないイジェクトピンにより突出し、金型20より取り出す。
【0041】
成形品10はキャビティ23内で硬化完了するので、寸法精度の高いものが得られる。また成形品10の表面は熱硬化性樹脂で覆われ、金属繊維は露出することはない。これにより金属繊維が表面に露出することにより生ずる問題点を解決できる。特に、ディスクブレーキ用ピストンの場合、摺動部12の外周面12aに金属繊維が露出していないことにより、その摺動相手の油圧シリンダを傷つけることがなく、ブレーキの信頼性が確保できる効果を奏する。
【0042】
図4は第2実施形態のトランスファー成形装置の成形前の状態を説明する説明断面図である。図5は第2実施形態のトランスファー成形装置の成形時の状態を説明する説明断面図である。図4、図5は簡略的に記載されている。成形型としての金型30は下型31と上型32で構成され、下型31と上型32によりキャビティ33が形成される。下型31内にはキャビティ33を取り囲むように高周波誘導加熱用のコイル34が設けられている。コイル34は図示しない高周波誘導加熱制御部に連結され、流れる電流が制御される。下型31内には図示されていないが成形品を突き出すイジェクトピンが内蔵されている。上型32にはトランスファーポット36が設けられ、トランスファーポット36は下型31に設けられたゲート35を介してキャビティ33に連結されている。トランスファーポット36はタブレット2が投入される部分である。トランスファーポット36にはトランスファーポット36からキャビティ33にタブレット2を圧送するためにタブレット2を加圧する加圧ピストン37が挿入されるようになっている。
【0043】
成形開始前に上型32を下方に動かし、下型31に当接させてキャビティ33が形成されている。図4のようにトランスファーポット36にタブレット2を投入する。金型30は160℃前後に加熱されている。
【0044】
次に加圧ピストン37をトランスファーポット36に挿入しタブレット2を加圧する。タブレット2は金型30の温度により硬化しない程度に加熱可塑化しており、加圧ピストン37の加圧力により流動状態となりゲート35を介してキャビティ33に圧送される。キャビティ33にタブレット2の材料が圧送されると同時にコイル34高周波電流を流す。タブレット2の材料はキャビティ33の形状により所定の形状にされるとともに金属繊維に誘導電流が流れ、材料内部から加熱され全体に均一な温度となる。こうしてキャビティ33内の材料は内外部が均一に、かつ素早く昇温され、熱硬化性樹脂の硬化反応を短時間で完了させることができる。高周波誘導加熱を使用しない場合に比べて硬化時間が三分の一から二分の一に短縮でき、生産性を大幅に向上させることができる。こうして成形された成形品10を、上型32を上方に動かし型開きしたのち図示しないイジェクトピンにより突出し、金型30より取り出す。
【0045】
成形品10はキャビティ33内で硬化完了するので、寸法精度の高いものが得られる。また成形品10の表面は熱硬化性樹脂で覆われ、金属繊維は露出することはない。これにより金属繊維が表面に露出することにより生ずる問題点を解決できる。特に、ディスクブレーキ用ピストンの場合、摺動部12の外周面12aに金属繊維が露出していないことにより、その摺動相手の油圧シリンダを傷つけることがなく、ブレーキの信頼性が確保できる効果を奏する。
【0046】
実施形態では高周波誘導加熱のために金属繊維を用いたが、金属粉でもかまわない。また実施形態では熱硬化性樹脂として粉末状のレゾール型フェノール樹脂を用いたが、フェノール樹脂以外の熱硬化性樹脂でもよいし、粉末状以外の形状、例えばフレーク状でもよい。
【0047】
第1実施形態では型閉じ動作とともに高周波を照射しているが、型閉じ動作前から高周波を照射してもよいし、型閉じ後に高周波を照射してもよい。第2実施形態ではキャビティに予備成形体の材料が圧送されると同時に高周波を照射しているが、材料が圧送される前からキャビティに高周波照射を開始してもよいし、材料の圧送が完了したあとで高周波照射を開始してもよい。
【0048】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、熱硬化性樹脂材料と、少なくとも金属粉、金属繊維のいずれかが含まれた材料を混合した予備混合体を作製する予備混合体作製工程と、前記予備混合体を成形型のキャビティに入れる供給工程と、前記キャビティ内に入れられた前記予備混合体に高周波を照射し誘導加熱する高周波誘導加熱工程が設けられていることを特徴とする熱硬化性樹脂成形方法であるので、熱硬化性樹脂製成形品の生産時間を短縮するとともに、寸法精度がよい成形品が成形でき、成形品表面に金属粉、金属繊維が露出しない熱硬化性樹脂成形方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態で製造した自動車用ディスクブレーキに使用するフェノール樹脂製ピストンの断面図
【図2】第1実施形態の圧縮成形装置の成形前の状態を説明する説明断面図
【図3】第1実施形態の圧縮成形装置の成形時の状態を説明する説明断面図
【図4】第2実施形態のトランスファー成形装置の成形前の状態を説明する説明断面図
【図5】第2実施形態のトランスファー成形装置の成形時の状態を説明する説明断面図
【符号の説明】
1、2…予備成形体(予備混合体)
20、30…金型(成形型)
23、33…キャビティ
24、34…高周波誘導加熱用コイル
36…トランスファーポット
Claims (4)
- 熱硬化性樹脂材料と、少なくとも金属粉、金属繊維のいずれかが含まれた材料を混合した予備混合体を作製する予備混合体作製工程と、
前記予備混合体を成形型のキャビティに入れる供給工程と、
前記キャビティ内に入れられた前記予備混合体に高周波を照射し誘導加熱する高周波誘導加熱工程が設けられていることを特徴とする熱硬化性樹脂成形方法。 - 前記予備混合体が、前記熱硬化性樹脂材料と、少なくとも前記金属粉、前記金属繊維のいずれかを混合し、加圧して作製された予備成形体であることを特徴とする請求項1記載の熱硬化性樹脂成形方法。
- 前記供給工程で前記予備成形体をキャビティ内に投入し、前記高周波誘導加熱工程で前記予備成形体を圧縮成形しながら高周波を照射することを特徴とする請求項2記載の熱硬化性樹脂成形方法。
- 前記供給工程で前記予備成形体をトランスファーポットに投入し加熱可塑化後、前記キャビティに圧送することを特徴とする請求項2記載の熱硬化性樹脂成形方法。
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