JP2005034472A - 急性増悪の発生予測方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 在宅で療養を続ける呼吸器疾患患者の急性増悪発生を前もって確実且つ再現性良く予測し、且つ、予測作業において専門の医療従事者を必要としない急性増悪の発生予測方法を提供する。
【解決手段】 階段の昇降運動など予め定めた所定運動負荷を受けた後の患者の動脈血酸素飽和度の推移から、動脈血酸素飽和度が低下した極小値が予め定めた閾値を下回ることなどを検出して、急性増悪発生の予測を行う判定手段(管理センタサーバ6)を設ける。
【選択図】 図1

Description

本発明は、急性増悪の発生予測方法に係り、特に、在宅で療養を続ける呼吸器疾患患者の急性増悪発生を事前に予測するための構成に関する。
従来、呼吸器疾患の患者に対して空気中の酸素を分離濃縮して酸素富化気体を得るための呼吸用気体供給装置(以下、酸素濃縮装置ともいう)が開発され、それを用いた酸素療法が次第に普及するようになってきた。
斯かる酸素療法は患者が医療機関に入院しつつ実施される場合もあるが、患者の呼吸器疾患が慢性症状を呈し、長期に渡ってこの酸素療法を実行して症状の平静化、安定化を図る必要がある場合には、患者の自宅に上記の酸素濃縮装置を設置し、この酸素濃縮装置が供給する酸素富化された気体をカニューラと呼ぶ管部材を用いて患者の鼻腔付近まで導いて、患者が吸引を行う治療方法も行われている。この種の治療方法を特に、在宅酸素療法あるいはHOT(Home Oxygen Therapy)とも称する。
上記のような在宅酸素療法(HOT)導入後、慢性呼吸不全患者等の呼吸器疾患患者の在宅療養が可能となる一方、患者数の増加と共に医療上の管理が重要な課題になってきた。しかしHOT患者の在宅中の医療情報は殆ど把握されていなかった。従来から外来診療において月1,2回の動脈血液ガスや経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の測定が実施されているが、それのみでは十分な情報が得られないという問題があった。
すなわち慢性呼吸不全患者等の呼吸器疾患患者の急性増悪を早期に検出し、適切な治療を行うためには、在宅中の患者の呼吸に関する情報が不可欠であるにもかかわらず、それら情報の収集が十分には行われてはおらず、情報収集が不十分で急性増悪を早期に検出できないことから予測困難な病態悪化に伴う入院が避けられず、QOL(生活の質)向上という在宅酸素療法の大きな目標が達成できていなかった。
そこで、久保田らは、下記する非特許文献1において、パルスオキシメーター(上記のSpO2 を非侵襲的、連続的に監視する装置)を用いて在宅酸素療法(HOT)中の慢性呼吸不全患者の動脈血酸素飽和度(SpO2)を増悪期から安定期まで連続的に監視し、HOTにおけるSpO2のモニタリングの有用性を検討した結果を開示している。
すなわち非特許文献1においては、増悪期には患者の夜間におけるSpO2の低下が著しく、昼と夜とのSpO2の平均値の差(ΔSpO2)が大きくなったこと、状態の改善と共にΔSpO2は小さくなり、ΔSpO2と夜間のSpO2の平均値との間には有意な逆相関があり、従って夜間のSpO2はHOT中の慢性呼吸不全患者にとって臨床上有用な指標であり、夜間のSpO2のモニタリングにより呼吸不全の増悪を早期に検出できる可能性があることが示されている。
久保田 勝、阿部 直、矢那瀬 信雄、冨田 友幸:「在宅酸素療法における夜間動脈血酸素飽和度のモニタリングの有用性」(日呼吸会誌、37(9),1999、688〜693ページ)
しかしながら、上記のように夜間の患者のSpO2を検出(モニタリング)することによりHOT患者の在宅中の呼吸についての情報を把握しようとすると、以下のような種々の問題があった。
問題の第1は、夜間のSpO2をモニタリングしたのでは、急性増悪の発生を予測すること、換言すれば、患者が現在、急性増悪が起こり得る状態にあるか否かを再現性良く、確実に判定することが困難である点である。
すなわち既出の非特許文献1の691ページ右欄7行目〜18行目にも記載があるように、慢性呼吸不全患者は安定期に睡眠時低酸素血症がない症例においてもFRC(機能的残気量)の低下、肺・胸郭コンプライアンスの低下などがあり、もともとの予備能力が少なく、そのため僅かな負荷が加わっても容易に代償不全となり、肺胞低換気に陥りやすく、増悪期には換気血流比の不均等の増加も加わり応じ睡眠時低酸素血症を呈しやすいと考えられる。換言すれば少ない予備能力に対する負荷の有無にて症状の変化が有り得るため、夜間の動脈血酸素飽和度の低下だけに着目して急性増悪の予測を行ったのでは、予測の再現性、確実性が乏しいおそれがあった。
問題の第2は、在宅患者自身あるいは患者家族が容易に操作してSpO2を測定し、且つ測定されたデータを効率的に収集、計算処理して患者の急性増悪を事前に予測するための構成が、従来提案されていなかった点である。
本発明は上記の状況に鑑みなされたものであって、在宅で療養を続ける呼吸器疾患患者の急性増悪発生を前もって確実且つ再現性良く予測し、且つ、予測を行うための作業において専門の医療従事者を必要としない急性増悪の発生予測方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明は、下記する1)〜4)に記載の各構成を有する急性増悪の発生予測方法を提供する。
1) 予め定めた所定の運動負荷を受ける最中及び受けた後の被験者の動脈血酸素飽和度を、パルスオキシメーターを用いて連続的に記録することによって得られた、動脈血酸素飽和度の推移データにおける、(a)極小値、(b)平常値に回復するまでの時間、及び(c)平常値に回復する際の時間変化率、の内の少なくともいずれかに基づき、予測手段がこの被験者の急性増悪発生可能性を予測するステップを有する、急性増悪の発生予測方法。
2) 予め定めた所定の運動負荷を受ける最中及び受けた後の被験者の動脈血酸素飽和度を、パルスオキシメーターを用いて連続的に、且つ異なる測定日に亘って複数回記録することによって得られた、複数の測定日に亘る動脈血酸素飽和度の推移データにおける、(a)極小値、(b)平常値に回復するまでの時間、及び(c)平常値に回復する際の時間変化率、の内の少なくともいずれかについての測定日間の変化に基づき、予測手段がこの被験者の急性増悪発生可能性を予測するステップを有する、急性増悪の発生予測方法。
3) 予め定めた所定の運動負荷を受ける最中及び受けた後の被験者の心拍数を、心拍数測定記録手段を用いて連続的に記録することによって得られた、心拍数の推移データにおける、(a)極大値、(b)平常値に回復するまでの時間、及び(c)平常値に回復する際の時間変化率、の内の少なくともいずれかに基づき、予測手段がこの被験者の急性増悪発生可能性を予測するステップを有する、急性増悪の発生予測方法。
4) 予め定めた所定の運動負荷を受ける最中及び受けた後の被験者の心拍数を、心拍数測定記録手段を用いて連続的に、且つ異なる測定日に亘って複数回記録することによって得られた、複数の測定日に亘る心拍数の推移データにおける、(a)極大値、(b)平常値に回復するまでの時間、及び(c)平常値に回復する際の時間変化率、の内の少なくともいずれかについての測定日間の変化に基づき、予測手段がこの被験者の急性増悪発生可能性を予測するステップを有する、急性増悪の発生予測方法。
本発明は、在宅で療養を続ける呼吸器疾患患者の急性増悪発生を前もって確実且つ再現性良く予測し、且つ、予測を行うための作業において専門の医療従事者を必要としない急性増悪の発生予測方法を提供することが出来る。
以下、各図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る好ましい実施例である急性増悪予測システムの説明を行う。
図1は本実施例の急性増悪予測システムが予測(急性増悪期にあるかどうかの判定)に用いる動脈血酸素飽和度(SpO2)の推移図の一例、図2は本実施例の急性増悪予測システムの構成図、図3は図2の急性増悪予測システムが有するパルスオキシメーターの構成図、図4は図2の急性増悪予測システムが有する管理センタサーバの構成図である。
〔急性増悪予測システムの構成〕
最初に、図2を用いて本実施例システム1の構成を説明する。
本実施例システム1は、呼吸器疾患患者、特に慢性呼吸不全患者が自宅で療養を続ける際に、急性増悪の発生を事前に予測し、換言すれば、患者が現在急性増悪期にあるか否かを判定する為のシステムであって、在宅酸素療法を受ける患者の急性増悪を事前に把握して適切な治療を行い、入院を防止するに好適な構成としている。
そのために本システム1は、患者宅10にパルスオキシメーター4と患者端末2を配置し、管理センター11に管理センタサーバ6を配置し、医療機関12に医療機関端末8を配置し、且つ、患者端末2と管理センタサーバ6と医療機関端末8とはインターネット通信網7を介して相互に通信可能に構成されている。
尚、医療機関端末8を設けることなく、医療機関12と管理センタ11や患者宅10との間の通信は電話やファクシミリ通信などで行うよう構成してもよい。
上記のパルスオキシメーター4は、被験者である患者の動脈血飽和濃度を経皮的に測定し、測定結果を内部のメモリに記録保持して、操作に応じて外部へ出力して解析に供するための検査装置であって、例えば、本出願人が先に市販を行っている「プリンタ対応携帯用パルスオキシメーター」(商品名:PULSOX−SP)や、同じく「メモリ付き腕時計型パルスオキシメーター」(商品名:PULSOX−M24)と同様な構成、あるいはこれらの構成を基礎として必要な変更を行った構成とすることも考えられる。
例えば、上記のPULSOX−SPは、公知資料たるその販売用パンフレット「プリンタ対応携帯用パルスオキシメーター PULSOX−SP」(帝人株式会社 在宅医療事業部門発行)にも記載されているように、動脈血の酸素化レベルと脈拍数を、非侵襲的に、連続的に計るための装置である。すなわち測定に際しては洗濯バサミ状のセンサ部を患者の指先に挟んで指先に光をあてるだけで測定ができるので、採血の必要が無く、操作も簡単ですぐに結果が判明し、又、校正の必用もないものである。その測定原理は、波長の異なる2種類の光を指に当てて透過した光の量を測定することにより動脈血酸素飽和度を算出するものであって、動脈血の識別は脈拍に一致して変化する成分に着目することにより行われ、酸素飽和度の算出は、酸素ヘモグロビンの、2種類の光に対する透過度が異なることを利用している。
図3はパルスオキシメーター4の構成を図示したものであって、被験者はパルスオキシメーター本体部4bに接続するセンサ部4aを指にはめて測定を行う。
センサ部4aにより検出された動脈血酸素飽和度(SpO2)、および心拍などの測定データはケーブルを介してパルスオキシメーター本体部4bへ送られ、本体部4bが内蔵するメモリ(図示しない)に記録保持される。
パルスオキシメーター本体部4bには、測定値を表示する表示部と所定の操作ボタンなどが設けられている。また本体部4bには、上記の患者端末2などのパーソナルコンピュータに測定データを転送するためのインターフェイス装置5を接続することが出来、本体4b内部のメモリに記録保持された測定データはこのインターフェイス装置5を介して患者端末2などのパーソナルコンピュータへ転送が可能である。なお、パルスオキシメーター本体部4bがインターフェイス装置5の機能を兼ね備えて直接に接続する形態であっても勿論よい。
患者端末2は汎用パーソナルコンピュータにデータ送信用プラグラムが組みつけられることにより実現されるものであって、パルスオキシメーター4から送信された動脈血酸素飽和度のデータをインターネット通信網7経由で管理センタサーバ6へ送信する機能を有する。尚、動脈血酸素飽和度のデータの送信は、後に説明するように、連続的に測定した複数時点のデータを一括して送信しても良いし、あるいは、測定した時点でその都度送信しても良い。
上記の管理センタサーバ6は、同じく汎用パーソナルコンピュータやサーバ用コンピュータに専用の制御プログラム等が組み付けられることにより実現されるものであって、その構成は、以下の説明に関連するところを中心として機能ブロックとして示す図4の構成図にあるように、インターネット通信網7を介して患者端末2を含む種々の端末との間で情報の送受をおこうなためのインターフェイス手段である入力インターフェイス部6-1、患者端末2から受信した動脈血酸素飽和度のデータを用いた急性増悪の予測を含む種々の制御を実行する制御部6-2、制御部6-2の制御に従い表示を行うべき情報の処理を行う画像インターフェイス手段であるビデオインターフェイス部6-3、ビデオインターフェイス部6-3の出力信号を受けて情報の表示を行うモニタ6-4、及び、上記の患者端末2を含む単数又は複数の患者側の端末から送信されたデータを蓄積し、制御部6-2からの読み出しに応じるデータ蓄積手段である生体情報蓄積部6-5を有している。
上記の生体情報蓄積部6-5は単数又は複数の患者の情報を患者ごとに識別可能かつ経時的に順次蓄積を行うものであって、図4の図示例では第1の患者のデータ部6-5aと第2の患者のデータ部6-5bとが示されている。
第1の患者のデータ部6-5aを例とすると、ここには患者の識別のための患者ID(6-5a1)、予め設定されて入力されるかあるいは後記するように測定された患者データから生成された動脈血酸素飽和度のこの患者における平時の値である平常値6-5a2、それぞれが一日のこの患者の動脈血酸素飽和度を連続的に測定したデータ群である測定データ6-5a3、6-5a4が蓄積されている。蓄積されたデータの内容は第2の患者のデータ部6-5bにおいても同様である。
尚、管理センタサーバ6の、より詳細な動作については、後記するシステム1の動作の説明において補足する。
〔急性増悪予測システムの動作〕
次に、上記に説明した構成を有する急性増悪予測システム1の動作を、本システム1を用いた具体的な急性増悪の予測を行う過程をたどることにより説明する。
まず、患者宅10で日常生活を行う呼吸器疾患患者特に慢性呼吸不全患者は、事前に医療機関12の医療従事者などから行われた指導に従い、毎日、望ましくは同じ時刻に、例えば午前10時から、予め定めた運動負荷の受容とパルスオキシメーター4を用いた動脈血酸素飽和度の連続的な測定とを行う。
すなわち患者は、以下に示すような予め定めた所定の運動負荷を受けることと、この運動負荷中及び運動負荷後所定の安静時間に亘ってパルスオキシメーター4を用いて動脈血酸素飽和度の測定を行うこととを、前もって指導されている。所定の運動負荷の内容は各患者の症状内容、生活環境などを考慮して医療従事者が決定するもので、例えば、寝室からトイレに行って用を足し寝室へ戻る動作、階段の昇降動作、内容の決められた体操、などである。
所定運動負荷中および運動終了後の所定安静時間中の、患者の動脈血酸素飽和度を連続的に測定したデータは、パルスオキシメーター4から患者端末2、インターネット通信網7を介して最終的に管理センタサーバ6内の生体情報蓄積部6-5に蓄積される。動脈血酸素飽和度のデータの送信にあたっては、連続的に測定しつつあるデータを逐次送信する方法、あるいは一連の測定が完了した後のデータをまとめて送信する方法など種々の方法によってもよい。更に、パルスオキシメーター4で連続的に測定された動脈血酸素飽和度のデータが生体情報蓄積部6-5に蓄積されるためにインターネット通信網7を経由しない他のいかなる方法によってもよい。例えば所定のインターフェイス手段を用いて電話回線でデータを送信する方法、ファクシミリを用いてデータシート印面を送信し受信した管理センタ側ではキイ入力作業者が送信印面に従い手作業でデータをサーバ6に入力する方法、携帯電話のデータ送信機能を利用する方法、患者または患者家族が電話で口頭によりデータを管理センタ側の担当者に知らせてキーボード等の入力手段を用いて入力を行う方法などである。
蓄積された動脈血酸素飽和度のデータは図1の推移図に示すように、時間軸(図1における横軸)に沿って動脈血酸素飽和度(SpO2)(図1における縦軸)が変化するラインSで示されるものであって、図1図示例では運動負荷を受ける前に平常値SA(生体情報蓄積部6-5内の蓄積データである平常値6-5a2、6-5b2に相当)であったものが負荷後低下を続け、時刻T2において、平常値SAから差分ΔSだけ低下した値である最小値(極小値)SLとなった後、上昇回復に転じ、時刻T2から時間tRを経た時刻T3において上記の平常値SAに復帰している。尚、図1の図示例では所定運動負荷は時刻T1からT2に亘る期間中に患者に加えられている。
次に、管理センタサーバ6内の制御部6-2は、生体情報蓄積部6-5内に蓄積された上記の動脈血酸素飽和度のデータの推移を調べて、下記する事象(A)、事象(B)、事象(C)の内の少なくともいずれかの発生の有無を検出する。
事象(A):低下した動脈血酸素飽和度の極小値(図1図示例におけるSL)が、第1の閾値を下回っている。
事象(B):低下した動脈血酸素飽和度が極小値(SL)から予め定めた平常値(SA)に上昇回復するまでの時間(図1図示例におけるtR)が、第2の閾値を上回っている。
事象(C):低下した動脈血酸素飽和度が上昇回復する際の時間変化率(例えば、図1図示例において、ΔS/tR)が、第3の閾値を下回っている。
上記の第1の閾値、第2の閾値、及び第3の閾値は、全部の患者に一律の値が予め決められていても良いし、あるいは患者ごとに最適な値が設定されるか又は生体情報蓄積部6-5に蓄積された各患者のSpO2の推移のデータに基づき予め制御部6-2が自動生成して、生体情報蓄積部6-5に患者ごとに格納されていても良い。
制御部6-2は上記の各事象の発生の有無に応じて、例えばどれかひとつの事象が発生した場合、あるいは全ての事象が発生した場合、あるいは特定の事象の組み合わせが発生した場合、あるいはいずれか単数又は複数の事象と説明を行わない他の組み合わせが発生した場合など、予め定めた規則に従ってこの患者の急性増悪発生の予測、換言すればこの患者が現在、増悪期にあるか否かの判定を行う。
本システム1においては上記の判定が、連日一定時刻に、一定の運動負荷が患者に加わった後の動脈血酸素飽和度の推移に基づいて行われるので負荷が一定であることから、再現性、確実性が良好に予測が行えると共に、患者自身の健康管理への関心を高めることが出来、また急性増悪が予測された場合の医療機関等による対処も、データ測定や予測が夜間に限らず日中でも可能なので迅速に行える。
急性増悪が予測された場合、すなわちこの患者が急性増悪期にあることが判定された場合には、管理センタサーバ6のモニタ6-4の表示を見た管理センタ11の担当者が電話やファクシミリ通信で医療機関12へ通知し、あるいは管理センタサーバ6からインターネット通信網7を経由して医療機関端末8へ電子メールなどで通知されるなどして、必要な対応が行われる。更に、患者端末2へ電子メールで通知されるなど患者側への連絡がなされるようにしても勿論よい。
また上記した動脈血酸素飽和度の平常値、第1の閾値、第2の閾値、及び第3の閾値の少なくともいずれかを、管理センタサーバ6内の生体情報蓄積部6-5に蓄積された連日に亘る患者の動脈血酸素飽和度のデータに基づいて、例えばそれぞれの平均値や、最大値、最小値、あるいは測定データに基づく統計的推定値などを用いて制御部6-2が自動生成するように構成しても良い。
〔変形例(その1)〜スタンドアローン構成〕
上記した本実施例の急性増悪予測システム1の構成は、種々の変形を行うことによってその効果を向上させたりあるいはその使用環境によりよく適合させることが出来る。
例えば、蓄積された動脈血酸素飽和度を用いた急性増悪の予測を、遠隔にある管理センタサーバ6ではなく、図4に示した如くの構成を具備した患者宅の患者端末2が行うことによって通信網や管理センタの設備負担を軽減する構成、さらにはパルスオキシメーター4自身が同じく予測実行に必要な各構成を備えて急性増悪の予測を行う、いわゆるスタンドアローンに構成した急性増悪予測手段を有するパルスオキシメーターなどである。これらの構成もまた先に説明した本実施例の急性増悪予測システム1の構成から容易に導かれるものであって、本発明が包含するものである。
〔変形例(その2)〜心拍数の推移を用いた急性増悪の予測〕
所定動作負荷を受けた患者の生体情報を測定してこの患者の急性増悪を予測する方法において、測定及び予測に用いる生体情報は上記に説明した動脈血酸素飽和度に限らず、他の生体情報の測定結果を利用することも考えられる。
一方、高崎らは、木田厚瑞 研究班:公害健康被害補償予防協会委託業務報告書 1999年度「高齢・重症の患者の日常生活、保険指導のあり方に関する研究」報告書(II−1−(2)地域の医師会及び開業医との連携による、高齢、重症慢性閉塞性肺疾患の包括ケアに関する研究、P31〜P43)において、一方向送受信システムとテレビ電話を具備する双方向送受信システムを用いた重症慢性閉塞性肺疾患患者を対象とした遠隔医療の有効性を検討している。この検討結果において、急性増悪をきたし入院となった患者の各種生体情報パラメーターを在宅療法日誌から読み取った結果、(1)動脈血酸素飽和度(SaO2)は入院10日前から有意な低下を示したこと、(2)心拍数(HR)の増加、呼吸数(RR)の増加、体温(BT)の増加、体重(BW)の変動、はそれぞれ入院約3週間前から有意な変化を示したことが明らかにされている。
そこで、心拍数が急性増悪を予測するための生体情報として利用可能であることを示す上記の研究報告結果を利用して、先に説明した本発明の実施例である急性増悪予測システム1に適宜適用することによって、独立した心拍数計測装置、あるいは心拍数計測機能を有するよう構成した上記のパルスオキシメーターを用いて、所定動作負荷を受けた際の患者の心拍数を連続的に計測し、得られた心拍数の推移を用いて急性増悪の予測を行うように構成しても良い。
心拍数を用いた予測にあたっては先に説明した急性増悪予測システム1の構成において動脈血酸素飽和度の計測にかかわる構成を心拍数の計測に置き換えると共に、動作負荷の最中及びその後の患者の心拍数は動脈血酸素飽和度とは逆に、一旦上昇して極大値に達した後、下降回復して平常値に戻ることに留意して、在宅で療養する呼吸器疾患患者が予め定めた所定運動負荷を受けた際のこの患者の心拍数の推移を調べて、この患者が現在、急性増悪が起こり得る状態にあるか否か、を判定するために用いる生体情報モニタリングシステムであって、(1)患者側で、心拍数を連続的に検出する心拍数計測手段、(2)検出された心拍数のデータを患者側からモニタリングセンタ側へ送信する送信手段、(3)モニタリングセンタ側で、心拍数のデータを受信する受信手段、及び、(4)受信された心拍数のデータの推移から、下記する事象(A’)、事象(B’)、及び事象(C’)の内の少なくともいずれかの発生を検知した結果に基づき前記判定を行う判定手段を備える生体情報モニタリングシステムが、先に説明した本発明の実施例の説明から容易に導かれる。
事象(A’):上昇した心拍数の極大値が、第1の閾値を上回っている。
事象(B’):上昇した心拍数が極大値から予め定めた平常値に下降回復するまでの時間が、第2の閾値を上回っている。
事象(C’):上昇した心拍数が極大値から下降回復する際の時間変化率が、第3の閾値を下回っている。
更に、上記の受信手段が受信した心拍数のデータを複数日に亘って蓄積する蓄積手段と、蓄積されたデータを用いて、第1の閾値、第2の閾値、第3の閾値、及び平常値の内の少なくともいずれかを算出する算出手段を有する上記の生体情報モニタリングシステムへ到達することも容易である。
上記の各構成を他の視点からみれば、(1)心拍数計測手段が、患者の心拍数を連続的に検出する工程、及び、(2)判定手段が、検出された心拍数の推移から、事象(A’)、事象(B’)、及び事象(C’)の内の少なくともいずれかの発生を検知した結果に基づいて、当該患者が現在、急性増悪が起こり得る状態にあるか否か、を判定する工程を有することにより、呼吸器疾患患者が予め定めた所定運動負荷を受けた際のこの患者の心拍数の推移から、この患者が急性増悪を起こし得る状態にあるか否かを判定可能とした生体情報モニタリング方法でもある。
所定運動負荷を受けた後の患者の身体状況を見るための生体情報として、心拍数は、動脈血酸素飽和度よりも、よりセンシティブすなわち感受性が高いので、より小さな兆候も見逃すことなくより高感度な予測が可能となる。
あるいはまた、感受性が高い上記の心拍数の平常範囲外への変動の検知と、比較的感受性は低いもののより確実に患者の身体状況の変動を知ることが出来る動脈血酸素飽和度の平常範囲外への変動の検知とを組み合わせることによって、急性増悪の予測をより高感度且つ確実に実行することが可能となる。
すなわち、(1)心拍数計測手段が、患者の心拍数を連続的に検出する工程、(2)パルスオキシメーターが、患者の動脈血酸素飽和度を非侵襲的且つ連続的に検出する工程、及び、(3)判定手段が、検出された心拍数の推移から下記する事象(A’)、事象(B’)、及び事象(C’)の内の少なくともいずれかの発生を検知し、且つ、検出された動脈血酸素飽和度の推移から下記する事象(D’)、事象(E’)、及び事象(F’)の内の少なくともいずれかの発生を検知した結果に基づいて、当該患者が現在、急性増悪が起こり得る状態にあるか否か、を判定する工程を有することにより、呼吸器疾患患者が予め定めた所定運動負荷を受けた際のこの患者の心拍数及び動脈血酸素飽和度の推移を調べて、この患者が現在、急性増悪が起こり得る状態にあるか否か、を判定可能とした生体情報モニタリング方法として構成しても良い。
事象(A’):上昇した心拍数の極大値が、第1の閾値を上回っている。
事象(B’):上昇した心拍数が極大値から予め定めた平常値に下降回復するまでの時間が、第2の閾値を上回っている。
事象(C’):上昇した心拍数が極大値から下降回復する際の時間変化率が、第3の閾値を下回っている。
事象(D’):低下した動脈血酸素飽和度の極小値が、第4の閾値を下回っている。
事象(E’):低下した動脈血酸素飽和度が極小値から予め定めた平常値に上昇回復するまでの時間が、第5の閾値を上回っている。
事象(F’):動脈血酸素飽和度が上昇回復する際の時間変化率が、第6の閾値を下回っている。
〔変形例(その3)〜複数の測定日の変化を利用〕
更に本実施例の変形例として、上記したような一回の測定結果を用いて急性増悪の発生予測を行うのではなく、異なる複数の日に亘って上記したような所定運動負荷時及びその後の動脈血酸素飽和度や心拍数、あるいはその他の生体情報を連続的に測定し、それら生体情報の推移から上記のような極小値、極大値、平常値までの回復時間、平常値まで回復する際の時間変化率などを算出し、これら算出した値が次第に増加あるいは減少したり、ある時期まではほぼ一定範囲であったものがその後明らかに異なる傾向の数値を示したり、あるいは毎日の数値を見る限りでは変動が大きいが例えば3日間の平均で見ると増加等の傾向が見られるなど、各測定日のデータの変化に基づいて急性増悪の発生を予測するよう構成することも考えられる。
本本発明の実施の形態に係る好ましい実施例である急性増悪予測システムが予測に用いる動脈血酸素飽和度(SpO2)の推移図の一例である。 本発明の実施の形態に係る好ましい実施例である急性増悪予測システムの構成図である。 図2の急性増悪予測システムが有するパルスオキシメーターの構成図である。 図2の急性増悪予測システムが有する管理センタサーバの構成図である。
符号の説明
4 パルスオキシメーター
6 管理センタサーバ(予測手段)

Claims (4)

  1. 予め定めた所定の運動負荷を受ける最中及び受けた後の被験者の動脈血酸素飽和度を、パルスオキシメーターを用いて連続的に記録することによって得られた動脈血酸素飽和度の推移データにおける、(a)極小値、(b)平常値に回復するまでの時間、及び(c)平常値に回復する際の時間変化率、の内の少なくともいずれかに基づき、予測手段がこの被験者の急性増悪発生可能性を予測するステップを有する、急性増悪の発生予測方法。
  2. 予め定めた所定の運動負荷を受ける最中及び受けた後の被験者の動脈血酸素飽和度を、パルスオキシメーターを用いて連続的に、且つ異なる測定日に亘って複数回記録することによって得られた、複数の測定日に亘る動脈血酸素飽和度の推移データにおける、(a)極小値、(b)平常値に回復するまでの時間、及び(c)平常値に回復する際の時間変化率、の内の少なくともいずれかについての測定日間の変化に基づき、予測手段がこの被験者の急性増悪発生可能性を予測するステップを有する、急性増悪の発生予測方法。
  3. 予め定めた所定の運動負荷を受ける最中及び受けた後の被験者の心拍数を、心拍数測定記録手段を用いて連続的に記録することによって得られた心拍数の推移データにおける、(a)極大値、(b)平常値に回復するまでの時間、及び(c)平常値に回復する際の時間変化率、の内の少なくともいずれかに基づき、予測手段がこの被験者の急性増悪発生可能性を予測するステップを有する、急性増悪の発生予測方法。
  4. 予め定めた所定の運動負荷を受ける最中及び受けた後の被験者の心拍数を、心拍数測定記録手段を用いて連続的に、且つ異なる測定日に亘って複数回記録することによって得られた、複数の測定日に亘る心拍数の推移データにおける、(a)極大値、(b)平常値に回復するまでの時間、及び(c)平常値に回復する際の時間変化率、の内の少なくともいずれかについての測定日間の変化に基づき、予測手段がこの被験者の急性増悪発生可能性を予測するステップを有する、急性増悪の発生予測方法。
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