JP2005032326A - 磁気記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】より高密度記録に適した磁性層を形成できる磁気記録媒体の製造方法と、磁性層表面の平滑化と磁性粒子の微細化により記録密度が向上された磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】走行する非磁性支持体に対し、金属蒸気の入射角を高入射角から低入射角に連続的に変化させながら、斜方蒸着により磁性層を形成する工程を有し、斜方蒸着において、低入射側に酸素ガスを導入するとともに、高入射側にガスを導入し、高入射側におけるガス導入位置と金属蒸気の入射位置との間隔を、磁性層の表面が平滑化し、かつ磁性層を構成する磁性粒子が微細化する所定の間隔に調整する磁気記録媒体の製造方法と、それにより製造される磁気記録媒体。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体およびその製造方法に関し、特に、斜方蒸着により磁性層が形成される磁気記録媒体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、ビデオ用やデータストレージ用などの各種の磁気記録テープにおいては、高密度記録化が要求されている。これに対応する磁気記録媒体として、金属、あるいは金属合金からなる強磁性材料を真空斜方蒸着法によってポリエステルフィルムやポリアミド、ポリイミドフィルム等の非磁性支持体上に直接被着させて磁性層を形成する、いわゆる斜方蒸着テープが提案され、注目を集めている。
【0003】
この斜方蒸着テープは、保磁力や角形比等に優れて電磁変換特性が高いだけでなく、磁性層の厚みを極めて薄くできるために記録減磁や再生時の厚み損失が著しく小さい。したがって、短波長での電磁変換特性に優れている。また、磁性層中に非磁性材であるバインダーを混入する必要がないため、磁性材料の充填密度を高めることができる等、数々の利点を有している。
【0004】
蒸着テープは生産効率も高く特性も安定していることから、既に、ハイバンド8ミリ用テープ、民生用デジタルビデオ用テープ(例えば、DVCやマイクロMV)、業務用デジタルビデオテープ、また、コンピューターデータ記録用テープ(例えば、AITやMammoth)として実用化されている。
【0005】
真空斜方蒸着においては、真空中で円柱状のキャンの周面に沿って非磁性支持体を走行させながら、非磁性支持体に金属蒸気を入射させて、磁性膜を堆積させる。金属蒸気は強磁性材料を電子銃等で加熱し、蒸発させて発生させる。非磁性支持体の走行に伴い、金属蒸気の非磁性支持体に対する入射角は高入射角から低入射角に連続的に変化する。
【0006】
蒸着雰囲気に酸素ガスを適当な条件で導入し、金属蒸気の一部を酸化させながら磁性膜を形成することにより、磁性膜の保磁力や角形比等の磁気特性が向上することが知られている。これを利用して、磁気テープの磁気特性が調整される。例えば、特許文献1には、蒸着雰囲気に高入射側および低入射側の両方から例えば酸素ガスのような酸化性ガスを導入し、真空斜方蒸着を行うことが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、下層磁性膜の蒸着時には低入射側、高入射側の両方に酸化性ガスを導入し、上層磁性膜の蒸着時には低入射側にのみ酸化性ガスを導入し、多層構造の磁性膜を形成する方法が記載されている。
特許文献3には、真空斜方蒸着において、高入射側と低入射側の両方に酸素ガスを吹き付け、高入射側への酸素導入量をF1、低入射側への酸素導入量をF2としたとき、0.1<F1/F2<1とすることが記載されている。
【0008】
特許文献4には、真空斜方蒸着において、低入射側に酸素ガス導入口を配置し、高入射側に排気口を配置して、酸素ガスを導入しながら磁性層を堆積させ、磁性層の表面近傍および非磁性支持体界面近傍を除く領域の酸化度分布の振幅を規定する方法が記載されている。
特許文献5にも、所定量の酸素ガスを導入しながら真空斜方蒸着を行うことが記載されている。
【0009】
また、蒸着雰囲気に酸素ガス以外のガスを導入しながら、磁性膜を形成することについては、特許文献6に開示されている。特許文献6記載の方法によれば、酸素ガスをアルゴンガスや窒素ガスといった不活性ガスと混合して、低入射側に導入する。
【0010】
【特許文献1】
特開昭62−102427号公報
【特許文献2】
特開平6−111315号公報
【特許文献3】
特開平7−254129号公報
【特許文献4】
特開平11−25440号公報
【特許文献5】
特開2000−251238号公報
【特許文献6】
特開平8−102060号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ハードディスクドライブ等も含む磁気記録媒体全般において、高密度記録化および大容量化が一層強く要求されており、データストレージ用テープやビデオ用テープにおいても、さらに高密度記録に適した磁性膜の成膜が必要とされている。特に、従来の磁性膜に対してさらなる高C/N比が求められており、高C/N化を図るための磁性膜の成膜方法を検討する必要がある。
【0012】
上記の特許文献1〜6のうち、高入射側にガスを導入することは特許文献1、特許文献2(但し、下層磁性膜の蒸着時のみ)および特許文献3に記載されているが、いずれも酸素ガスまたは酸化性ガスが導入される。これらの方法では、高入射側における酸素ガスまたは酸化性ガスの導入により、金属蒸気の酸化を制御し、磁気特性の改善を図っている。
【0013】
したがって、これらの方法では、高入射側に酸化性ガス以外のガスを導入した場合の効果については示されていない。また、これらの特許文献1〜3では、高入射側における酸素ガスまたは酸化性ガスの導入位置と非磁性支持体との間隔に応じて、磁性膜の特性が変化することについては特に記載されていない。
【0014】
磁性膜の特性は、磁性膜の酸化状態だけでなく、磁性膜表面の平滑性や磁性膜を構成する磁性粒子の平均粒径等によっても変化する。磁性膜の表面粗さが大きいと、スペーシングロスが増大し、再生出力等の電磁変換特性が悪化する。また、磁性粒子の粒径の微細化は、媒体ノイズを低減する上で重要である。上記の特許文献1〜6では、蒸着雰囲気へのガスの導入位置に依存した磁性膜の表面性や粒径の変化については、検討されていない。
【0015】
特許文献6では、不活性ガスを酸素ガスと混合して導入するが、不活性ガスは磁性層表面の酸化を制御する目的で導入される。磁性層表面の酸化層が厚すぎると、スペーシングロスが生じ、再生出力が低下する。これを抑制するために酸素ガスと不活性ガスの混合ガスが導入される。特許文献6記載の方法では、磁性層表面の酸化を制御する目的から、混合ガスは低入射側に導入され、高入射側には導入されない。
【0016】
以上のように、蒸着雰囲気にガスを導入しながら磁性膜を成膜する方法は、従来、様々なものが提案されているが、いずれも磁性層の酸化を制御するものである。上記の従来の方法では、高入射側のガス導入条件が、磁性膜の成長初期における磁性粒子の蒸着状態に影響を及ぼすことに着目していない。
【0017】
磁性膜の成長初期の蒸着状態は、その上に堆積する磁性膜の構造に大きく影響する。高入射側のガス導入を積極的に利用することにより、磁性膜の表面性や磁性粒子の粒径を制御して、より高密度記録に適した磁性膜を形成する方法は、従来、知られていない。
【0018】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、したがって本発明は、より高密度記録に適した磁性層を形成できる磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、磁性層表面の平滑化と磁性粒子の微細化により、記録密度が向上された磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の磁気記録媒体の製造方法は、走行する非磁性支持体に対し、金属蒸気の入射角を高入射角から低入射角に連続的に変化させながら、斜方蒸着により磁性層を形成する工程を有し、前記斜方蒸着において、低入射側に酸素ガスを導入するとともに、高入射側にガスを導入し、高入射側における前記ガスの導入位置と前記金属蒸気の入射位置との間隔を、前記磁性層の表面が平滑化し、かつ前記磁性層を構成する磁性粒子が微細化する所定の間隔に調整することを特徴とする。
【0020】
これにより、磁性層の成長初期の段階で、金属蒸気が適度に拡散すると考えられ、その上に形成される磁性層の構造が、より高密度記録に適したものとなる。高入射側に導入するガスは酸化性ガスに限定されず、高入射側に前記金属蒸気と化学的に反応しない不活性ガスを導入した場合にも、磁性層の表面が平滑化し、かつ磁性粒子が微細化する効果が得られる。また、高入射側に酸素ガスを導入した場合には、さらに磁性層の酸化状態にも影響が及ぼされるため、これによっても磁性層の特性が改善される。したがって、高入射側に導入するガス種によっても、前記所定の間隔は変化する。
【0021】
上記の目的を達成するため、本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体と、走行する前記非磁性支持体に対し、金属蒸気の入射角を高入射角から低入射角に連続的に変化させながら、斜方蒸着により形成された磁性層とを有する磁気記録媒体であって、前記斜方蒸着において、低入射側に酸素ガスを導入するとともに、高入射側にガスを導入し、高入射側における前記ガスの導入位置と前記金属蒸気の入射位置との間隔を調整することにより、前記磁性層の表面が平滑化され、かつ前記磁性層を構成する磁性粒子が微細化されていることを特徴とする。
【0022】
これにより、特に磁気記録媒体の電磁変換特性が改善される。具体的には、磁性層表面の平滑化によりスペーシングロスが低減し、再生出力が増大する。また、磁性粒子の微細化により、媒体に起因するノイズが低減される。さらに、前記斜方蒸着において、高入射側に酸素ガスを導入することによっても、前記磁性層の磁気特性が改善される。これは、低入射側のみでなく、高入射側にも酸素ガスを導入することにより、磁性層がさらに酸化され、磁性層の保磁力や角形比といった磁気特性が向上することによる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の磁気記録媒体およびその製造方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の磁気記録媒体の断面図である。図1に示すように、非磁性支持体1上に磁性層2が形成され、その上層に保護膜3が形成されている。磁性層2は真空斜方蒸着によって形成され、磁性粒子または磁性粒子と非磁性粒子が連なったカラム4を含む構造(斜方柱状構造)となっている。
【0024】
非磁性支持体1には、例えばポリエステル類、ポリオレフィン類、セルロース誘導体、ビニル系樹脂、ポリイミド類、ポリアミド類、ポリカーボネート等の高分子フィルムが用いられる。
【0025】
磁性層2を構成する金属磁性材料としては、Fe、Co、Ni等の強磁性金属、Co−Ni系合金、Fe−Co系合金、Fe−Ni系合金、Co−Pt系合金、Co−Ni−Pt系合金、Fe−Co−Ni系合金、Fe−Ni−B系合金、Fe−Co−B系合金、Fe−Co−Ni−B系合金、Co−Cr系合金等の合金およびそれらの強磁性金属または合金の酸化物等が挙げられる。
【0026】
保護膜3としては、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜等が用いられる。保護膜3は、例えばスパッタリングや化学気相成長(CVD)によって形成できる。
【0027】
図2は、磁性層の形成に用いられる蒸着装置の概略図である。図2に示す真空槽11内は、真空ポンプ(不図示)により例えば1×10−1〜1×10−3Pa程度に減圧される。真空槽11内において、巻き出しロール12から非磁性支持体1が巻き出される。キャンロール13上で非磁性支持体1に磁性層が形成される。キャンロール13は例えば−20℃程度に冷却され、これにより非磁性支持体1の熱変形が防止されている。
【0028】
磁性層が蒸着された非磁性支持体1は、巻き取りロール14に巻き取られる。電子銃15からるつぼ16内の蒸着源17に電子線18を照射して、金属蒸気を発生させる。蒸着源17には、上記の各種金属磁性材料が用いられる。非磁性支持体1が円滑に走行するように、ガイドロール19、20によって非磁性支持体1の張力が調整される。
【0029】
キャンロール13上の非磁性支持体1に入射する金属蒸気の入射角は、入射角規制マスク21によって制限される。図2に示すように、金属蒸気の入射位置および蒸着源17の中心を通る直線と、その入射位置でのキャンロール13の半径とのなす角を入射角とする。本実施形態の磁気記録媒体の製造方法によれば、図2に示すように、入射角が大きい高入射側に入射角規制マスクを設けずに、入射角が小さい低入射側に入射角規制マスク21を設ける。
【0030】
高入射側にはキャンロール13と所定の間隔dをあけて、ガス導入管22が設けられる。入射角が最大となる位置と所定の間隔dをあけた位置に、ガス導入管22から酸素ガスまたは他のガスが導入される。ガス導入管22のガス導入口とキャンロール13の間に所定の距離dを設けることにより、蒸着源17から蒸発した金属蒸気が、非磁性支持体1近傍で十分に拡散する。この拡散により、磁性層の表面性や粒径が改善する。なお、この距離dは装置やその他の条件、例えば磁性層の材料、ガス導入量、ガス種、あるいは非磁性支持体近傍の温度分布等によって適宜変更されるものであり、限定されるものではない。
【0031】
低入射側には、キャンロール13と入射角規制マスク21との間に酸素ガス導入管23が設けられる。酸素ガス導入管23のガス導入口とキャンロール13の間隔は、ガス導入管22とキャンロールの間隔より小さい。入射角が最小となる位置の極めて近傍に、酸素ガス導入管23から所定量の酸素ガスが導入される。
【0032】
本実施形態の磁気記録媒体の製造方法によれば、磁性層の形成時に、低入射側から酸素ガスを導入するとともに、高入射側から酸素ガスやその他のガスを導入する。これにより、磁性層の成長初期の蒸着状態が制御され、磁性層の表面性や、磁性層を構成する磁性粒子の粒径が改善されるため、電磁変換特性が向上する。また、高入射側へのガス導入により、磁性層の保磁力、残留磁束密度等を改善し、磁気記録媒体の磁気特性を向上させることもできる。
【0033】
【実施例】
上記の本発明に係る磁気記録媒体の製造方法を用いて、以下の実施例に示す蒸着テープを作製した。一方、従来の製造方法を用いて、比較例としての蒸着テープを作製し、実施例と比較例の特性を比較した。
【0034】
(実施例1)
まず、非磁性支持体となる高分子フィルム上に真空斜方蒸着法により、酸素ガスを導入しながらCo−O系磁性層を厚さ170nmで形成した。この真空斜方蒸着において、図2に示すように、最小入射角θminは45度、最大入射角θmaxは90度とした。低入射側の酸素導入位置は、図2の入射角規制マスク21とキャンロール13の間とした。
【0035】
一方、高入射側の酸素導入位置は、図2に示す蒸発源17の中心を通るキャンロール13の接線とキャンロール13との接点からの距離dが約80mmの位置とした。すなわち、入射角が最大となる位置から約80mm離れた位置とした。他の条件については、テープライン速度を30m/分、低入射側酸素導入量を400sccm、高入射側酸素導入量を100sccm、蒸着時真空度を5×10−3Paとした。
【0036】
(実施例2)
実施例1と同様に高入射側および低入射側の双方から酸素ガスを導入しながら、Co−O系磁性層を形成した。高入射側の酸素導入位置以外の条件は、実施例1と同じとした。高入射側の酸素導入位置は、図2に示す距離dが約10mmの位置とした。
【0037】
(比較例)
高入射側からの酸素ガス導入を行わず、低入射側からのみ酸素ガスを導入しながら、Co−O系磁性層を形成した。高入射側から酸素を導入しないことを除き、実施例1と同じ条件で磁性層を形成した。
【0038】
上記の実施例および比較例の特性を、以下のように評価した。磁気特性については、振動型磁力計(VSM)を用いて測定した。電磁変換特性については、市販のDVCデッキを改造して測定した。表面性および粒径については、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面観察を行った。実施例と比較例の磁気特性、電磁変換特性、磁性層の表面性および磁性粒子の粒径を表1に示す。
【0039】
【表1】
Figure 2005032326
【0040】
表1に示すように、実施例1および2では、比較例に対して、磁気特性における保磁力と角形比、電磁変換特性における出力とC/Nが大きく向上しており、表面性や粒径も改善されている。したがって、低入射側から酸素ガスを導入するとともに、高入射側からも酸素ガスを導入することにより、磁気テープの特性が改善されることがわかる。
【0041】
さらに、実施例1、2を比較すると、磁気特性がほぼ同じであるのに対して、電磁変換特性は実施例1のほうが出力、C/Nとも実施例2より高い。磁気特性がほぼ同じであることから、磁性層の組成、酸化度はほぼ同じと考えられ、両者の差は磁性層の表面性および粒径の差に起因していると考えられる。
【0042】
実施例1では、高入射側からの酸素導入位置をキャンロールから約80mm離れた位置としたことにより、非磁性支持体近傍で金属蒸気が拡散して、磁性粒子の粒径が微細化し、磁性層の表面性が改善されたことが考えられる。つまり、磁性層の表面性の改善により、スペーシングロスが小さくなり、再生出力が増大したと考えられる。また、磁性粒子の粒径の微細化により、媒体ノイズが低減され、C/Nが改善したと考えられる。
【0043】
(実施例3)
次に、高入射側からのガス導入の効果を確認するため、高入射側から、酸素ガスの代わりにアルゴンガスを導入し、磁性層を形成した。その結果、アルゴンガスの導入によっても、表面性の改善と粒径の微細化が確認された。つまり、酸素ガス以外のガスを高入射側に導入しても、表面性の改善と粒径の微細化が可能である。
【0044】
一方、磁気特性については、比較例を基準としたとき、高入射側から酸素ガスを導入した実施例1および2で保磁力、角形比が明らかに上昇したのに対し、高入射側からアルゴンガスを導入した実施例3では、保磁力と角形比が上昇しなかった。
【0045】
このことから、酸素ガスを高入射側に導入した場合には、磁性層の成長初期の段階で磁性層中の酸素比率が高くなり、非磁性支持体と磁性層の界面に酸化コバルト層が形成されていることが考えられる。このような酸素比率が高い層を下地として磁性層が堆積することにより、保磁力や角形比の上昇が起こることが考えられる。
【0046】
上記の本発明の実施形態の磁気記録媒体の製造方法によれば、表面が平滑化され、かつ磁性粒子の平均粒径が微細化された磁性層を形成できる。したがって、上記の製造方法によって得られる本発明の実施形態の磁気記録媒体によれば、磁気特性および電磁変換特性が向上し、より高記録密度で記録・再生を行うことが可能となる。
【0047】
本発明の磁気記録媒体およびその製造方法の実施形態は、上記の説明に限定されない。磁性層の厚さを変更した場合にも、本発明の磁気記録媒体の製造方法を適用できる。例えば、磁気抵抗効果型磁気ヘッド(MRヘッド)や巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッド(GMRヘッド)等を用いて再生が行われる、より薄い磁性層の形成にも本発明を適用できる。また、不活性ガスとして例えば窒素ガス等、他のガスを導入してもよい。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0048】
【発明の効果】
本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、より高密度記録に適した磁性層を形成できる。本発明の磁気記録媒体によれば、磁性層表面の平滑化と磁性粒子の微細化により、記録密度の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の磁気記録媒体の一例を示す断面図である。
【図2】図2は本発明の磁気記録媒体の製造方法において、磁性層の形成に用いられる蒸着装置の概略図である。
【符号の説明】
1…非磁性支持体、2…磁性層、3…保護膜、4…カラム、11…真空槽、12…巻き出しロール、13…キャンロール、14…巻き取りロール、15…電子銃、16…るつぼ、17…蒸着源、18…電子線、19、20…ガイドロール、21…入射角規制マスク、22…ガス導入管、23…酸素ガス導入管。

Claims (5)

  1. 走行する非磁性支持体に対し、金属蒸気の入射角を高入射角から低入射角に連続的に変化させながら、斜方蒸着により磁性層を形成する工程を有し、
    前記斜方蒸着において、低入射側に酸素ガスを導入するとともに、高入射側にガスを導入し、高入射側における前記ガスの導入位置と前記金属蒸気の入射位置との間隔を、前記磁性層の表面が平滑化し、かつ前記磁性層を構成する磁性粒子が微細化する所定の間隔に調整する
    磁気記録媒体の製造方法。
  2. 高入射側に酸素ガスを導入する
    請求項1記載の磁気記録媒体の製造方法。
  3. 高入射側に前記金属蒸気と化学的に反応しない不活性ガスを導入する
    請求項1記載の磁気記録媒体の製造方法。
  4. 非磁性支持体と、走行する前記非磁性支持体に対し、金属蒸気の入射角を高入射角から低入射角に連続的に変化させながら、斜方蒸着により形成された磁性層とを有する磁気記録媒体であって、
    前記斜方蒸着において、低入射側に酸素ガスを導入するとともに、高入射側にガスを導入し、高入射側における前記ガスの導入位置と前記金属蒸気の入射位置との間隔を調整することにより、前記磁性層の表面が平滑化され、かつ前記磁性層を構成する磁性粒子が微細化されている
    磁気記録媒体。
  5. 高入射側に酸素ガスを導入することにより、前記磁性層の磁気特性が改善されている
    請求項4記載の磁気記録媒体。
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