JP2005029707A - ポリケトン - Google Patents

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Abstract

【解決手段】 少なくとも一つの末端が化学式(1)で示されるイソプロピル基(末端基A)を有するポリケトンであって、(末端基A/全末端基)の当量比が0.30〜1.00であることを特徴とするポリケトン。
【化1】
Figure 2005029707

【効果】 本発明のポリケトンは、高強度フィルムや膜、高強度繊維等、産業資材用途に利用可能な、優れた熱安定性、耐アルカリ性及び耐酸性を有し、無機塩溶剤中での高いドープ安定性を有する。
【選択図】 選択図なし。

Description

本発明は、優れた熱安定性、耐アルカリ性及び耐酸性を有し、無機塩溶剤中においてドープの安定性に優れた、高結晶性ポリケトン及びその製造方法に関する。
一酸化炭素由来の繰り返し単位とエチレン性不飽和化合物由来の繰り返し単位が実質的に交互に連結した構造のポリケトンは、機械的特性及び熱的性質に優れ、耐摩耗性、耐薬品性及びガスバリア性も高く、さまざまな分野への展開に有用な材料である。例えば、ポリケトンは、高強度、高耐熱性の樹脂、繊維及びフィルムとして有効な材料であり、特に高分子量のポリケトンを繊維に用いた場合、高倍率の延伸が可能となり、極めて高い強度及び弾性率を有する繊維を得ることが可能となる。この繊維は,ベルト、ホース、タイヤコード等のゴム補強材、コンクリート補強材等の建築材料、産業資材用途等に適した材料である。
樹脂としては、エチレンと一酸化炭素の交互共重合体のエチレン単位の数モル%を、プロピレンのような置換基を有するエチレン性不飽和化合物で置き換え、融点を下げて溶融成型性を向上させた3元共重合ポリケトンが用いられ、耐熱性、耐磨耗性等に優れた樹脂として成型材料やフィルム等の用途に適した材料である。
一般に、ポリケトンを繊維用途に用いる場合、溶融状態での紡糸、又は有機溶剤若しくは金属塩の水溶液等に溶解した湿式(乾式)紡糸が行われる。溶融可能なポリマーの紡糸には、通常、工業的に安価な溶融紡糸が行われる。しかし、ポリケトンは200℃以上の高い融点を有し、溶融成型時の長時間の加熱によって三次元架橋等の熱変性が起こり、流動性を損なう為、金属塩水溶液にポリケトンを溶解させた紡糸原液(以下、ドープ、という)を用いて紡糸を行なわなければならなかった。ポリケトンを塩化亜鉛等の無機溶媒に溶解して湿式紡糸を行った場合、例えば、特許文献1、2等に記載されるように、無機金属塩とポリケトンが溶解したドープを長時間加温することによってポリケトンの変性が起こる。そのため、ドープの流動性及び紡糸性の低下といった加工性の悪化、及び得られる繊維、フィルム等の機械的特性の低下、という問題があった。
このようなポリケトンドープの劣化は、ポリマーの末端の加水分解によるドープのpH変動が原因とされる。特許文献3に記載されているように、これらの劣化の原因はポリマー構造に依存し、末端構造に依存しないと考えられてきた。
ポリケトンの末端構造は、重合に用いる反応媒体又は添加剤の種類によって変化することが知られている。非特許文献1には、メタノール中でのポリケトンの重合反応において、以下の化学式(4)〜(9)に示す機構が提唱されている。この機構によると、アルキルエステル末端(化学式(4)及び(8))、及びアルキルケトン末端(化学式(5)及び(9))が生成することが示されている。なお、化学式中、Lnはリン二座配位子を、Polはポリケトン重合体分子鎖を表す。
(開始反応)
Figure 2005029707
Figure 2005029707
(成長反応)
Figure 2005029707
Figure 2005029707
(停止反応)
Figure 2005029707
Figure 2005029707
特許文献5には、各種の重合溶媒を用いた場合の末端構造及びその比率が記載されている。例えば,メタノールを用いる場合には、メタノール由来のメチルエステル末端及びアルキルケトン末端を有するポリケトンが、エチレングリコール等のグリコール類を用いる場合にはアルコール末端及びアルキルケトン末端が、また、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の非プロトン性極性溶媒を用いる場合には、アルキルケトン末端のみが生成することが記載されている。
この文献に記載の末端基を有するポリケトンは、加熱及び薬品による変性を受け易く、安定性に乏しい。例えば、塩化亜鉛等の無機溶媒溶解時において、加温により変性し、溶液(ドープ)の粘度が経時的に上昇する。
この文献のみならず、ポリケトンの製造技術は多数開示されている。それらの文献中には、ポリケトンの末端構造について、何ら言及されていない。またその多くがメタノールを重合溶媒として用いた技術であり、本発明者らの追試でも、それによって得られるポリケトンは不安定なメトキシ末端を過剰に有する。特に、メタノールに由来するメトキシ末端は過熱・酸・アルカリに対して不安定であり、メタノールを用いた技術によるポリケトンは耐湿熱性・耐薬品に劣るものである。
以上のように、従来、優れた熱安定性、耐アルカリ性及び耐酸性末端を有するポリケトンは見出されていなかつた。
国際公開第99/18143号パンフレット 国際公開第00/09611号パンフレット 特開平2―16155号公報 特開昭59−197427号公報 Chem.Rev.(1996),96,663−681
本発明の目的は、優れた熱安定性、耐アルカリ性及び耐酸性を有し、無機塩溶剤中でのドープの安定性に優れた、高結晶性ポリケトン及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を達成するために、ポリケトンの製造条件及び得られるポリケトンの構造の制御による耐アルカリ及び耐酸性の改善について研究を重ねた。その結果、イソプロパノールを末端停止剤として用いることにより、ポリケトンの末端構造を安定末端であるイソプロポキシカルボニル末端とすることにより、従来のポリマーをはるかにしのぐ耐アルカリ性及び耐酸性を備え、更に高結晶性のポリケトンが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1) 少なくとも一つの末端が化学式(1)で示されるイソプロピル基(末端基A)を有するポリケトンであって、(末端基A/全末端基)の当量比が0.30〜1.00であることを特徴とするポリケトン。
Figure 2005029707
(2) 化学式(1)で示されるイソプロピル基(末端基A)以外の末端基が、化学式(2)で示されるアルキルケトン基であることを特徴とする(1)に記載のポリケトン
Figure 2005029707
(式中、Rは、H、OH、炭素数が2〜10の有機基、または炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基を示す)
(3) 結晶化度が60〜95%であることを特徴とする(1)に記載のポリケトン。
(4) アルキルケトン基が化学式(3)で示されるエチルケトン基であることを特徴とする(2)に記載のポリケトン
Figure 2005029707
(5) 一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物を共重合させてポリケトンを製造する方法において、パラジウム化合物と、第15族元素の原子を有する二座配位子と、pKaが4以下の酸の陰イオンとを混合することによって得られる金属錯体触媒の存在下で、反応溶媒または添加剤としてイソプロパノールを用い、一酸化炭素とエチレン性不飽和炭素とを、温度が70〜200℃の条件下で反応させることを特徴とする(1)に記載のポリケトンの製造方法。
(6) (1)に記載のポリケトンからなる繊維。
(7) (6)に記載のポリケトン繊維からなるゴム補強材。
(8) (6)に記載のポリケトン繊維からなるコンクリート補強材。
本発明のポリケトンは、高強度フィルムや膜、高強度繊維等、産業資材用途に利用可能な、優れた熱安定性、耐アルカリ性及び耐酸性を有し、無機塩溶剤中での高いドープ安定性を有する。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリケトンは、少なくとも1つの末端が、化学式(1)で示されるイソプロピル末端構造を有する点に一つの特徴がある。その結果、本発明のポリケトンは、従来ポリマーをはるかにしのぐ高い熱安定性、耐アルカリ性及び耐酸性を有する。
Figure 2005029707
ポリケトンが、化学式(4)〜(9)の反応により、メチル基、エチル基等の1級炭素構造を末端に有する場合は、耐アルカリ性及び耐酸性に乏しく、容易にカルボキシル基末端となって、重合体の安定性低下、着色等の物性面の低下をもたらす。ポリケトンが、同様の反応中でターシャリーブチル基等の3級炭素構造を末端に有する場合は、耐アルカリ性、耐酸性等が向上するが、耐熱性が大幅に低下する(分解後、イソブチレンが生成する)。ポリケトンが本発明の末端基を有することによって、上記の効果が得られる理由は明らかではないが、1級炭素末端は立体障害が小さい為にエステル結合が弱く、3級炭素末端は、熱により安定オレフィンが分解脱離し易く、この両方の性能を持つ2級炭素末端が特異的な性能を有するものと考えられる。
本発明のポリケトンのもう一つの特徴は、ポリケトンをさまざまな構造の集合体(すなわち、一般的に合成高分子であるために分子量、分岐、共重合組成、末端基構造等に分布が存在する)としたときに、イソプロピル基以外の末端基とイソプロピル基(末端基A)の当量比である、(末端基A/全末端基)(以下、末端基比、という)が0.30〜1.00である点にある。末端基比は、ポリマー合成時の使用溶媒の極性、種類等により制御可能である。極性が低下すると末端基比は低下する。末端基比が小さいとイソプロピル基の効果が低下するが、末端基比が0.30〜1.00の範囲にある場合、ポリケトンは、優れた熱安定性、耐アルカリ性及び耐酸性を示し、無機塩溶剤中でのドープの安定性に優れ、高結晶性を発現する。
ポリケトンの末端基の比率は、後で詳しく述べるように、公知の方法(H−NMR)によって観察されるイソプロピル末端由来のピーク及び他の末端基由来ピークの面積比率より求めることができる。
本発明におけるイソプロピル基以外の末端としては、例えば、化学式(2)で示すアルキルケトン構造、カルボン酸末端基、アルコール末端基等が挙げられ、化学式(2)のアルキルケトン構造が好ましい。イソプロピル基以外の末端が、化学式(2)のアルキルケトン構造以外の場合は、これらの末端基含量が増加するとポリケトンの耐熱性が低下し、成形時や使用時の熱劣化が起こり易くなるため、好ましくは5モル%以下、より好ましくは1モル%以下である。
Figure 2005029707
(式中、Rは、H、OH、炭素数が2〜10の有機基又は炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基を示す)
炭素数2〜10の有機基としては、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘプチル基、フェニル基、ベンジル基等の炭化水素が挙げられ、これらの炭化水素の一部若しくは全部、又は水素原子の一部若しくは全部が、エステル基、エーテル基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基のアルキル残基としては、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘプチレン基、フェニレル基等の炭化水素が挙げられ、これらの炭化水素の一部若しくは全部、又は水素原子の一部若しくは全部が、エステル基、エーテル基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
これらの置換基は単独又は複数種の混合物であってもよい。有機基の炭素数が10を越える場合、得られるポリケトンの結晶性の低下が起こって、耐熱性が低下する場合がある。このため、Rの炭素数は、好ましくは2〜6、より好ましくは2〜3であり、最も好ましいRは炭素数2のエチルケトン基である。
本発明のポリケトンの結晶化度は、好ましくは60%〜95%であり、高い結晶化度を有する。従来のポリケトンが50%程度しか持ち得なかったのと比べると、請求項1に係る本発明の条件を充足することによって、結晶化度が60%〜95%という非常に大きな結晶化度を有するポリケトンが達成可能である。そのため、このようなポリケトンは、耐熱性及び機械特性に、一層優れた性能を示す。結晶化度とイソプロピル基末端の因果関係は明らかではないが、イソプロパノールを用いて反応を行う場合、ポリケトンの微結晶が反応初期に生成する為、これが種結晶となり、結晶化が促進するものと考えられる。
本発明のポリケトンの製造法は限定されないが、簡易なプロセスで工業的効率的に製造するという観点から、高い重合活性であることが望まれる。以下に好ましい製造方法について説明する。
本発明のポリケトンは、一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物を共重合させ、ポリケトンを製造する方法において、パラジウム化合物と、第15族元素の原子を有する二座配位子と、pKaが4以下の酸の陰イオンとを加えることによって得られる金属錯体触媒の存在下で、反応溶媒又は添加剤としてイソプロパノールを用い、一酸化炭素とエチレン性不飽和炭素とを、温度が70〜200℃の条件下で反応させることによって製造できる。
本発明において最も重要な点は、反応溶媒又は添加剤としてイソプロパノールを用いることである。すなわち、メタノール等の直鎖アルコールは、その大きな親和性により、化学式(8)に示す停止反応速度が大きく、ターシャリーブチルアルコールのような立体障害の大きいアルコールは、親和性が極端に低い為、停止反応が低すぎて活性がでない。ところが、驚くべきことに、イソプロパノールのみが特異的に高分子量ポリマーを高収量で得ることを可能とし、しかも化学式(1)で示す安定な末端を有するポリケトンを与える。
この効果を生じさせる為のイソプロパノールの使用量には制限はなく、通常、工業的に使用できる範囲が用いられる。その親和性を制御する成分として、プロトン性化合物及び/又は非プロトン性化合物を使用することができる。
プロトン性の化合物としては、水、炭素数1〜10のヒドロキシル基含有化合物等が挙げられ、触媒およびポリマーに親和性があれば制限はない。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類;m−クレゾール等のフェノール類を挙げることができ、好ましくは水である。これらプロトン性化合物の添加量には制限はないが、イソプロパノールに対して、通常、50容量%以下、好ましくは30容量%以下、より好ましくは20容量%以下の割合である。
非プロトン性化合物としては、炭素数3〜20の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジグライム等のエーテル類;アセトニトリル等のニトリル類;酢酸メチル等のエステル類、γ―ブチロラクトン、N−メチルピロリドン等を挙げることができ好ましくは、ヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、γ―ブチロラクトン、N−メチルピロリドンである。非プロトン性化合物の添加量には制限はないが、イソプロパノールに対して、通常、50容量%以下、好ましくは30容量%以下、より好ましくは20容量%以下の割合である。
プロトン性及び非プロトン性化合物は単独で用いてもよいが、これらの化合物の中から選ばれた2種以上の化合物を同時に用いてもよい。
本発明において、ポリケトンの重合に用いられる金属錯体触媒は、周期律表(無機化学命名法(1993)東京化学同人)の第10族元素のパラジウムを含む化合物と、第15族元素の原子を有する二座配位子と、pKaが4以下の酸の陰イオンとを混合することによって得られる金属錯体からなる触媒である。
パラジウム化合物の例としては、カルボン酸塩、リン酸塩、カルバミン酸塩、スルホン酸塩等を挙げることができ、その具体例としては、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトネート、塩化パラジウム、ビス(N,N−ジエチルカーバメート)ビス(ジエチルアミノ)パラジウム、硫酸パラジウム等を挙げることができる。これらは単独又は数種類を混合して用いることもできる。
本発明において、配位子とは、化学大辞典7縮刷版第16刷(1974)共立出版 p.4で定義されているように、錯体中で中心原子に直接結合している原子を含む原子団のことである。本発明においては、周期律表第15族の原子を有する二座配位子を用いることが必要である。その例として、2,2’−ビピリジル、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジル、2,2’−ビ−4−ピコリン、2,2’−ビキノリン等の窒素ニ座配位子;1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,3−ビス{ジ(2−メチル)ホスフィノ}プロパン、1,3−ビス{ジ(2−イソプロピル)ホスフィノ}プロパン、1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン、1,3−ビス{ジ(2−メトキシ−4−スルホン酸ナトリウム−フェニル)ホスフィノ}プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)シクロヘキサン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,2−ビス{(ジフェニルホスフィノ)メチル}ベンゼン、1,2−ビス[{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}メチル]ベンゼン、1,2−ビス[{ジ(2−メトキシ−4−スルホン酸ナトリウム−フェニル)ホスフィノ}メチル]ベンゼン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、2−ヒドロキシ−1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン、2,2−ジメチル− 1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン等のリン二座配位子等を挙げることができる。
これらの中で好ましい配位子は、リン二座配位子である。特にポリケトンの収量の面から好ましいリンニ座配位子は1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン、及び1,2−ビス[{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}メチル]ベンゼンであり、ポリケトンの分子量という面からは、2−ヒドロキシ−1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン、及び2,2−ジメチル−1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパンである。有機溶剤を必要とせず安全であるという面からは水溶性の1,3−ビス{ジ(2−メトキシ−4−スルホン酸ナトリウム−フェニル)ホスフィノ}プロパン、及び1,2−ビス[{ジ(2−メトキシ−4−スルホン酸ナトリウム−フェニル)ホスフィノ}メチル]ベンゼンが好ましい。合成が容易で大量に入手が可能であり、経済面において好ましいものは1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン及び1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンである。
酸の陰イオンの例としては、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のpKaが4以下の有機酸の陰イオン;過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸、テトロフルオロ硼酸、ヘキサフルオロリン酸、フルオロ硅酸等のpKaが4以下の無機酸の陰イオン;トリスペンタフルオロフェニルボラン、トリスフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の硼素化合物の陰イオンを挙げることができる。これらは単独又は複数種を混合しても使用できる。これらの中で好ましい酸の陰イオンは、ポリマーの収量と分子量の両方の観点から、硫酸、メタンスルホン酸およびトリフルオロメタンスルホン酸である。pKaとは、酸の解離定数をKaとしたときのpKa=−log10Kaで定義される数値で、値が小さいほど酸として強い。
触媒として用いるパラジウム化合物の使用量は、選ばれるエチレン性不飽和化合物の種類や他の重合条件によってその好適な値が異なるため、一概にその範囲を定めることはできないが、好ましくは、反応帯域の容量1リットル当り0.01〜10000マイクロモル、より好ましくは0.1〜1000マイクロモルである。反応帯域の容量とは、反応器の液相の容量をいう。
配位子の使用量も制限されるものではないが、パラジウム化合物1モル当たり、好ましくは0.1〜10モル、より好ましくは1〜5モルである。
酸の陰イオンの使用量は、パラジウム化合物1モル当たり、好ましくは0.1〜1000モル、より好ましくは1〜100モル、最も好ましくは3〜10である。
本発明の触媒は、パラジウム化合物、周期律表第15族元素の原子を有する二座配位子及びpKaが4以下の酸の陰イオンを混合することによって生成する。触媒組成物の使用法についての制限はないが、予め、3成分の混合物からなる触媒組成物を調製してから反応容器内に添加することが好ましい。触媒組成物を調製する場合には、先ずパラジウム化合物及びリン二座配位子を混合し、次いで酸を混合することが好ましい。触媒組成物の調製に用いる溶媒は、アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等の非プロトン性有機溶媒であってもよい。また、上記3成分からなる触媒に、ベンゾキノン、ナフトキノン等の酸化剤を添加してもよい。これらキノン類の添加量は、パラジウム1モル当たり、好ましくは1〜1000モル、より好ましくは10〜200モルである。キノン類の添加は、触媒組成物に添加してから反応容器に添加する方法、重合溶剤に添加する方法のいずれであってもよく、必要に応じて、反応中に反応容器内に連続的に添加してもよい。
先に述べた触媒組成物及びイソプロパノール溶媒を、オートクレーブ等の反応容器の中で、エチレン性不飽和化合物と一酸化炭素の存在下で下記の条件で重合を行う。
重合温度は70〜200℃である。重合温度が70℃未満では、末端基比が0.30〜1.00のポリケトンが得られない。重合温度が200℃を越えると、重合活性が高く、生産性は高くなるが、得られるポリケトンの分子量が極端に低くなり、機械的・熱的特性を発揮することができない。
一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物の反応容器内での割合は、末端基比が0.30〜1.00の範囲のポリケトンを得る上で、(一酸化炭素/エチレン性不飽和化合物)のモル比が1/1〜1/10であることが好ましい。重合活性を向上させ、末端基比を増加させる上で、一酸化炭素/エチレン性不飽和化合物のモル比は1/2〜1/5であることが好ましい。一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物の添加方法には制限はなく、予め、両者を混合してから添加してもよく、それぞれ別の供給ラインから添加してもよい。
ポリケトンの重合時間は1〜24時間が好ましく、より好ましくは1.5〜10時間、最も好ましくは2〜6時間である。重合時間が1時間未満では、ポリケトン中のパラジウム(Pd)量が多くなり、特別な触媒除去工程が必要となる。一方、重合時間が24時間を越えると、得られるポリケトンの分子量分散度が広がり、優れた機械的・熱的特性を発揮できなくなる場合がある。本発明において、重合時間とは、上記の触媒組成物、添加剤及び重合溶剤が存在し、上記の重合条件にある反応容器中に、一酸化炭素及びエチレン性不飽和化合物を投入した時点から、温度を下げる、又は内圧を開放する等の実質的に重合反応が起こらない状態にする時点までの時間を意味する。一酸化炭素及びエチレン性不飽和化合物を反応容器内に連続的に投入し、重合生成物を連続的に抜き出す連続的に抜き出す連続重合法においては、投入から抜き出しまでの平均の滞留時間を重合時間とする。
本発明のポリケトンの製造法は、ポリケトンを工業的なコストで製造するという観点から、重合活性が高いことが望ましい。重合活性とは、下記式で計算される数値であり、この値が大きいほど単位Pd量及び単位重合時間あたりに得られるポリケトンの量が多いこと、すなわち、同一量のポリケトンを得るために必要なPd量が少ないこと及び重合に要する時間が短いことを意味する。
重合活性(kg/g−Pd・hr)=
ポリケトンの収量(kg)/[Pd量(g)×重合時間(hr)]
重合活性が低くても重合時間を長くすればポリケトン中のPd元素量を少なくすることもできるが、重合時間を長くした場合には、触媒の失活を抑制するために多量の酸化剤を必要とし、得られるポリケトンの分子量分散度が広がる等の問題が生じる。また、同一量のポリケトンを製造した場合、重合活性が低い場合には、末端基比が0.30未満になる。そのため、重合活性は15kg/g−Pd・hr以上であることが好ましい。生産性及び得られる原料に用いるPdのコストの観点から、重合活性は、より好ましくは20kg/g−Pd・hr以上、最も好ましく30kg/g−Pd・hr以上である。
また、触媒の洗浄、除去等の工程を経ることなく、重合工程のみでPd元素量が少ないポリケトンを製造することが好ましく、その場合、重合活性(kg/g−Pd・hr)及び重合時間(hr)の積で表される触媒効率(kg/g−Pd)が40kg/g−Pd以上であることが好ましい。触媒効率が高ければ高いほどポリケトン中のPd元素量が少なくなるため、触媒効率は、より好ましくは100以上、最も好ましくは200以上である。
本発明のポリケトンの重合方式には制限はなく、公知の重合方式、製造プロセスを用いることができる。例えば、重合方式として、液状媒体を使用する懸濁重合法、少量のポリマーに高濃度の触媒溶液を含浸させる気相重合法等が用いられ、プロセスとしては、回分式プロセス及び連続式プロセスのいずれであってもよい。
一酸化炭素及びエチレンは反応容器の気相部分及び液相部分のいずれの相に供給してもよいが、重合の均一性及び重合溶剤への溶解性の観点から液相内に供給することが好ましい。反応容器は、オートクレーブ型、チューブラー型等、いずれであってもよい。反応容器内壁はグラスライニング、テフロン(登録商標)ライニング、電解研磨等の表面処理を施したものが好ましい。オートクレーブ型の反応容器を用いる場合には、複数の反応容器を直列に連結して、2段階以上の多段で重合を行ってもよい。
触媒組成物は、予め、触媒調製器内で調製し、反応容器内に重合開始時又は重合時間中に連続的に供給する。
本発明のポリケトンには、種々のエチレン性不飽和化合物を使用できるが、実質上、エチレンのみを用いることが好ましい。すなわち、エチレンと一酸化炭素の完全交互共重合構造(化学式(10)に示す1−オキソトリメチレン構造)であることが好ましい。
Figure 2005029707
プロピレン等の置換基を有するエチレン性不飽和化合物はポリケトンの結晶系を乱し、機械的特性、熱的特性及び耐熱性を低下させる傾向がある。そのため、ポリケトン中の1−オキソトリメチレン構造は、好ましく90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、最も好ましくは実質的に100%である。
1−オキソトリメチレン以外の繰り返し単位には制限はなく、例えば、一酸化炭素とエチレン以外のエチレン性不飽和化合物を用いることができる。エチレン性不飽和化合物としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等のα−オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン等のアルケニル芳香族化合物、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、テトラシクロドデセン、トリシクロデセン、ペンタシクロペンタデセン、ペンタシクロヘキサデセン等の環状オレフィン、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;エチルアクリレート、メチルメタクリレート等のアクリル酸エステル等を挙げることができる。これらの一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物由来の繰り返し単位は、単独又は複数種の混合物であってもよい。
ポリケトン中には、重合触媒に用いたパラジウムやリン化合物や酸が残存する。これら化合物の残存量が多い場合、ポリケトンの保管時の劣化や着色等の問題が起こるばかりか、成形加工時や成形体の耐熱性の低下や着色の問題が生じやすくなる。このため、ポリケトン中のパラジウム量は、好ましくは20ppm以下、より好ましくは10ppm以下、最も好ましくは0ppm以下である。リン元素の量は、好ましくは20ppm以下、より好ましくは10ppm、さらに好ましくは5ppm以下、最も好ましくは0ppmである。酸として硫酸やメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のイオウ元素を含む場合には、ポリケトン中のイオウ元素の量は、好ましくは20ppm以下、より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下、最も好ましくは0ppmである。
ポリケトンの分子量分散度(Mw/Mn)は3.5以下が好ましい。Mw(重量平均分子量)は極限粘度から計算され、Mn(数平均分子量)はH−NMR測定によって求められる。
本発明のポリケトンの形状は、通常の液相重合では、平均粒径0.01〜2mmのポリマーが得られ、気相又は固相重合では、更に大きな粒径のポリマーを得ることができる。本発明のポリケトンの嵩密度は、通常、0.05〜0.30g/cmの範囲であり、用途により、反応溶媒の極性等変えることにより制御が可能である。本発明のポリケトンの比表面積は、使用する溶媒により異なるが、一般に10〜30m/gの範囲のポリマーを得ることができる。
本発明のポリケトンには、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、界面活性剤等が含まれていてもよい。
本発明のポリケトンを、公知の方法によって、無機塩系溶剤、例えば、塩化カルシウム/塩化亜鉛/塩化リチウム系の溶剤に溶解し、湿式紡糸法により、繊維の製造に用いることができる。紡口から一旦、空気中に吐出されたポリケトン溶液を、無機塩系凝固剤、例えば、塩化カルシウム/塩化亜鉛/塩酸系の希薄水溶液中に導いて繊維状に凝固させ、洗浄、乾燥を行った後、延伸することによって高強度の繊維を製造することができる。
ポリケトン繊維は、撚糸を行い、必要に応じて接着剤を付着させ、ゴム補強材及びコンクリート補強材として使用することができる。
本発明のポリケトンを溶融成形又は湿式成形によってフィルム、膜を製造することもできる。
本発明に用いられる各測定値の測定方法は次のとおりである。
(1)極限粘度([η])
極限粘度[η]は、数式(1)により求められる値である。
Figure 2005029707
式中、t及びTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノール及びヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流下時間、Cは上記溶液100ml中のグラム単位による溶質質量値である。
(2)末端基比
0.03質量%のテトラメチルシランを含有するd化クロロホルム0.125mlとd化−ヘキサフルオロイソプロパノール0.875mlの混合溶液にポリケトン12mgを溶解し、日本電子社製FT−NMR(商品名:α−400)を用いて、H−NMRの測定を行う。テトラメチルシランを基準ピーク(0ppm)として以下の方法で求める。
1.25ppm付近に観察されるピーク:−COO(CH(末端基Aに対応するピーク)の面積Aと、他の末端基のピーク(例えば、他の末端基が−COCHCHのみならば1.08ppm付近に観測されるピーク)の面積をBとして、1末端基に存在するHの数を考慮して、この場合、A/6/(A/6+B/3)を末端基比とする。
(3)分子量分散度(Mw/Mn)
重量平均分子量(Mw)を以下の方法で求める。
(1)で求めた極限粘度[η]から、特開平4−228613公報に記載のm−クレゾールによる換算式を、ヘキサフルオロイソプロパノールによる補正を加えて、換算式、[η]=0.5×Mw0.85×10−4 を用いて求める。
数平均分子量(Mn)を以下の方法で求める。
(2)と同様の手法でH−NMRの測定を行い、全末端量(1.25ppm付近のピーク面積A及び他の末端基のピークの面積B)とポリケトンの主鎖部のピーク面積Cとそれぞれの水素数から数式(2)により求める。
Figure 2005029707
a:イソプロピル末端基1つ当りの末端部の水素数(6)
b:アルキルケトン末端基1つ当りの末端部の水素数
c:エチレン性不飽和化合物1分子当りの水素数
d:エチレン性不飽和化合物の分子量
例えば、末端基Aを有し、エチレンと一酸化炭素のみからなるポリケトンの場合、アルキルケトン末端基Bはエチル末端(−COCHCH)となり、1.08ppm付近に観測される。このポリケトンの主鎖Cは、ポリ(1−オキソトリメチレン)構造となり、2.5〜2.8ppm付近に観測される。この場合、a=6、b=3、c=4となる。
以上のようにして、MwとMn値を求め、分子量分散度(Mw/Mn)を算出する。
(4)結晶化度
試料5mgを窒素雰囲気下でアルミニウムパンに封入し、パーキンエルマー社製示差熱測定装置Pyris1(商標)を用いて下記条件で測定を行う。
サンプル質量: 5mg
雰囲気 : 窒素、流量=200mL/分
温度条件 :(a)20℃で1分間保持
(b)20℃→300℃ (昇温速度=20℃/分)
温度条件(b)で観察される吸発熱曲線において、200℃〜300℃の範囲に観測される最大の吸熱ピークの面積から計算される熱量ΔH(J/g)より下記式により算出する。
結晶化度 = ΔH/225 × 100 (%)
(5)溶剤安定性
ポリケトンを塩化亜鉛65g、水35gからなる塩化亜鉛水溶液に添加混合し、80℃で2時間攪拌しドープとする。塩化亜鉛水溶液で溶解するポリケトンの濃度は、ドープの粘度が300〜500(N・sec/m)となるようにポリケトンの極限粘度に応じて変更する。
さらに、このドープを80℃に保温したまま24時間保持し、24時間保持前後のドープについて、東京計器(株)社製B8H型粘度計を用いて80℃における溶液粘度を測定する。ドープ調製直後の溶液粘度をη、24時間保温後の溶液粘度をη24とした時に、下記式により求められる溶液粘度増加率を溶剤安定性の指標とする。
溶液粘度増加率=(η24−η)/η × 100 (%)
この溶液粘度増加率が小さいほど、金属塩溶剤中での変性が少なく溶剤安定性に優れる。
溶液粘度増加率≦50% : 良好
溶液粘度増加率≧50〜100%: 不良
溶液粘度増加率≧100% : 極めて不良
(6)繊維の強度、弾性率
JIS−L−1013に基づいて測定する。
本発明を実施例により具体的に説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。
[実施例1]
酢酸パラジウム2.5マイクロモル、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン3.0マイクロモル、硫酸12.5マイクロモル、1,4−ベンゾキノン25マイクロモル及びイソプロパノール250ミリリットルを、窒素置換したステンレス製500ml容のオートクレーブに投入した。オートクレーブを密閉後、25℃、2.0MPaで3回窒素置換を行った。
内容物を撹拌しながら加温し、内温が100℃に達した時点で一酸化炭素とエチレンの等モル混合気体を8.0MPaになるまで加えた。その後、エチレンと一酸化炭素の等モル混合気体を連続的に供給して内圧と内温を保ちながら、2時間撹拌を続けた。冷却後、オートクレーブ内気体をパージし、内容物を取り出した。反応溶液を濾過し、水で3回、イソプロパノールで3回洗浄後、減圧乾燥し、重合体8.9gを得た。
13C−NMR及びIRの測定結果から、この重合体は、実質的に一酸化炭素由来の繰り返し単位とエチレン由来の繰り返し単位からなるポリケトンであることが確かめられた。重合活性は16.7kg/g−Pd・hr、[η]は2.9dl/gであった。このポリケトンは、イソプロピル末端(末端基A)とエチル末端を有しており、その末端基比は0.45であった。
このポリケトンを解析した結果、結晶化度は62%、嵩密度は0.03g/ml、Mnは5.3、分子量分散度は3.30であった。このポリケトンのドープは、溶液粘度増加率が45.0%であり、良好な特性を有していた。
[実施例2]
実施例1において、一酸化炭素とエチレンの等モル混合気体の投入を内温が90℃に達した時点で行ったことを除いて、実施例1と同様の操作を行ったところ、4.6gのポリケトンを得た。重合活性は8.7kg/g−Pd・hr、[η]は5.4dl/gであった。このポリケトンはイソプロピル末端(末端基A)とエチル末端を有しており、その末端基比は0.68であった。
このポリケトンを解析した結果、結晶化度は60%、嵩密度は0.04g/ml、Mnは11.5、分子量分散度は3.17であった。このポリケトンのドープは、溶液粘度増加率が42.0%であり、良好な特性を有していた。
[実施例3]
実施例1において、一酸化炭素とエチレンの等モル混合気体の投入方法を内温が75℃に達した時点で5.5MPaになるまで加えたことを除いて、実施例1と同様の操作を行ったところ、1.9gのポリケトンを得た。重合活性は3.6kg/g−Pd・hr、[η]は7.5dl/gという高い値であった。このポリケトンはイソプロピル末端(末端基A)とエチル末端を有しており、その末端基比は0.89であった。
このポリケトンを解析した結果、結晶化度は59%、嵩密度は0.15g/ml、Mnは18.9、分子量分散度は2.83であった。このポリケトンのドープは、溶液粘度増加率が41.0%であり、良好な特性を有していた。
[比較例1]
実施例1において、イソプロパノール250mlをメタノール250mlに替えたことを除いて、実施例1と同様の操作を行ったところ、6.6gのポリケトンを得た。重合活性は12.5kg/g−Pd・hr、[η]は1.2dl/gであった。このポリケトンはメトキシ末端とエチル末端を有しており、イソプロピル末端基Aは存在していなかった。
このポリケトンを解析した結果、結晶化度は54%、嵩密度は0.18g/ml、Mnは1.22、分子量分散度は5.08であった。このポリケトンのドープは、溶液粘度増加率が105.5%と不安定なドープであった。
[比較例2]
実施例1において、イソプロパノール250mlをターシャリーブタノール250mlに替えたことを除いて、実施例1と同様の操作を行ったところ、2.4gのポリケトンを得た。重合活性は4.6kg/g−Pd・hr、[η]は6.7dl/gであった。このポリケトンはターシャリーブチル末端とエチル末端を有しており、イソプロピル末端基Aは存在していなかった。
このポリケトンを解析した結果、結晶化度は68%、嵩密度は0.04g/ml、Mnは14.3、分子量分散度は3.28であった。このポリケトンのドープは、溶液粘度増加率が98%と不安定なドープであった。
[実施例4]
実施例1において、酢酸パラジウムを1.25マイクロモル、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンを1.5マイクロモルに代え、一酸化炭素とエチレンの等モル混合気体の投入を内温が120℃に達した時点で15.0MPaになるまで加え、反応時間を2時間から4時間に替えたことを除いて、実施例1と同様の操作を行ったところ、35.1gのポリケトンを得た。重合活性は66.1kg/g−Pd・hr、[η]は2.6dl/gであった。このポリケトンはイソプロピル末端(末端基A)とエチル末端を有しており、その末端基比は0.35であった。
このポリケトンを解析した結果、結晶化度は78%、嵩密度は0.05g/ml、Mnは4.7、分子量分散度は3.28であった。このポリケトンのドープは、溶液粘度増加率が44.0%であり、良好な特性を有していた。
[実施例5]
実施例1において、一酸化炭素とエチレンの等モル混合気体の投入を内温が90℃に達した時点で15.0MPaになるまで加え、反応時間を2時間から4時間に替えたことを除いて、実施例1と同様の操作を行ったところ、31.6gのポリケトンを得た。重合活性は29.8kg/g−Pd・hr、[η]は5.6dl/gという高い値であった。このポリケトンはイソプロピル末端(末端基A)とエチル末端を有しており、その末端基比は0.71であった。
このポリケトンを解析した結果、結晶化度は83%、嵩密度は0.14g/ml、Mnは15.0、分子量分散度は2.53であった。このポリケトンのドープは、溶液粘度増加率が28.0%であり、良好な特性を有していた。
[比較例3]
実施例5において、イソプロパノール250mlをメタノール250mlに変え、硫酸の使用量を125マイクロモル及び、1,4−ベンゾキノンの使用量を250マイクロモルに代え、一酸化炭素とエチレンの等モル混合気体の投入を内温が80℃に達した時点で行ったことを除いて、実施例5と同様の操作を行ったところ、22.5gのポリケトンを得た。重合活性は21.2kg/g−Pd・hr、[η]は5.1dl/gであった。このポリケトンはメトキシ末端とエチル末端を有しており、イソプロピル末端基Aは存在していなかった。
このポリケトンを解析した結果、結晶化度は52%、嵩密度は0.24g/ml、Mnは8.78、分子量分散度は3.87であった。このポリケトンのドープは、溶液粘度増加率が95%であり、不安定なドープであった。
[比較例4]
実施例5において、イソプロパノール250mlをイソプロパノール125mlとメタノール125mlの混合溶媒に変えたことを除いて、実施例5と同様の操作を行ったところ、32.1gのポリケトンを得た。重合活性は30.3kg/g−Pd・hr、[η]は2.6dl/gであった。このポリケトンはイソプロピル末端(末端基A)とメトキシ末端とエチル末端を有しており、その末端基比は0.13であった。
このポリケトンを解析した結果、結晶化度は53%、嵩密度は0.10g/ml、Mnは5.10、分子量分散度は3.02であった。このポリケトンのドープは、溶液粘度増加率が87%であり、不安定なドープであった。
[実施例6]
実施例2において、一酸化炭素とエチレンの等モル混合気体の投入を、先に1MPaまでプロペンを投入してから行ったことを除いて、実施例2と同様の操作を行ったところ、7.6gのポリケトンを得た。重合活性は14.3kg/g−Pd・hr、[η]は2.7dl/gであった。このポリケトンはイソプロピル末端(末端基A)とエチル末端及びプロピル末端を有しており、その末端基比は0.47であった。
このポリケトンを解析した結果、結晶化度は61%、嵩密度は0.08g/ml、Mnは4.4、分子量分散度は3.66であった。このポリケトンのドープは、溶液粘度増加率が47.0%であり、良好な特性を有していた。
以上の実施例及び比較例で得られたポリケトンの特性値を表1に示す。
[実施例7]
実施例2で重合したポリケトンを、塩化カルシウム30質量%/塩化亜鉛22質量%/塩化リチウム10質量%を含有する水溶液に溶解して、ポリケトン濃度6.5質量%のドープを得た。得られたドープを80℃に加温し、紡口径0.15mmφ、ホール数50の紡口より10mmのエアーギャップを通した後に、2質量%の塩化カルシウム、1.1質量%の塩化亜鉛、0.5質量%の塩化リチウム及び0.1質量%の塩酸を含有する−2℃の水溶液からなる凝固浴中に押し出した。紡糸性は良好で、紡糸中に押出圧力の上昇、紡口詰まり、糸切れ等のトラブルは一度も生じなかった。
引き続き、糸条を40℃の0.1質量%の塩酸水溶液で1分間、さらに、40℃の水で1分間洗浄した後に、IRGANOX(登録商標)1098(Ciba Specialty Chemicals社製)、IRGANOX(登録商標)(1076Ciba Specialty Chemicals社製)をそれぞれ0.05質量%ずつ(対ポリケトン)付与した後に、225℃にて定長乾燥した。
乾燥した繊維に、ステアリルホスフェートカリウム塩水分散液を給油し、引き続き225℃/240℃/250℃/257℃でそれぞれ6.5倍/1.5倍/1.3倍/1.2倍の、トータル15.2倍の4段延伸を行い、ポリケトン繊維を得た。この繊維は、強度17.6cN/dtex、伸度5.1%、弾性率420cN/dtexであり、産業資材として極めて優れた熱的、機械的特性を有していた。
[実施例8]
実施例5で重合したポリケトンを、実施例7と同じ条件、方法で紡糸、洗浄、乾燥、延伸を行った。紡糸性は良好で紡糸中に押出圧力の上昇や紡口詰まり、糸切れ等のトラブルは一度も生じなかった。

得られた繊維は、強度18.2cN/dtex、伸度5.3%、弾性率440cN/dtexであり、産業資材として極めて優れた熱的、機械的特性を有していた。
[比較例5]
比較例3で重合したポリケトンを、実施例7と同じ条件、方法で紡糸、洗浄、乾燥、延伸を行った。紡糸の過程で、紡口詰まりや糸切れ等は観察されなかったが、紡糸途中で30%の押出圧力の上昇が観察され、紡糸終了時に紡口から押し出されたドープは薄い黄色に着色していた。
得られた繊維は、強度16.9cN/dtex、伸度4.6%、弾性率380cN/dtexであった。
実施例7、8及び比較例5で得られた繊維の物性を表2に示す。
Figure 2005029707
Figure 2005029707
本発明のポリケトンは、種々の分野に応用が可能である。例えば、ベルト、ホース、タイヤコード等のゴム補強材、コンクリート補強材等の建築材料、産業資材用途、包装用途、容器用途、電気電子、自動車用途、ギヤ、摺動部品、熱硬化性樹脂のコンポジット、ブレンド用途、接着剤用途、不織布や耐熱繊維等の繊維用途、フィルム、膜等の用途に利用することができる。

Claims (8)

  1. 少なくとも一つの末端が化学式(1)で示されるイソプロピル基(末端基A)を有するポリケトンであって、(末端基A/全末端基)の当量比が0.30〜1.00であることを特徴とするポリケトン。
    Figure 2005029707
  2. 化学式(1)で示されるイソプロピル基(末端基A)以外の末端基が、化学式(2)で示されるアルキルケトン基であることを特徴とする請求項1記載のポリケトン
    Figure 2005029707
    (式中、Rは、H、OH、炭素数が2〜10の有機基、または炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基を示す)
  3. 結晶化度が60〜95%であることを特徴とする請求項1記載のポリケトン。
  4. アルキルケトン基が化学式(3)で示されるエチルケトン基であることを特徴とする請求項2記載のポリケトン
    Figure 2005029707
  5. 一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物を共重合させてポリケトンを製造する方法において、パラジウム化合物と、第15族元素の原子を有する二座配位子と、pKaが4以下の酸の陰イオンとを混合することによって得られる金属錯体触媒の存在下で、反応溶媒または添加剤としてイソプロパノールを用い、一酸化炭素とエチレン性不飽和炭素とを、温度が70〜200℃の条件下で反応させることを特徴とする請求項1記載のポリケトンの製造方法。
  6. 請求項1記載のポリケトンからなる繊維。
  7. 請求項6項記載のポリケトン繊維からなるゴム補強材。
  8. 請求項6項記載のポリケトン繊維からなるコンクリート補強材。
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