JP2005029686A - 光ゲル化組成物および光ゲル化方法 - Google Patents

光ゲル化組成物および光ゲル化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】含水率が極めて高く、粒状物質を含む場合はそれらを組成中に均一に配合することができ、揮散性物質を含む場合はそれらへの加熱による影響を全く与えることがない、光ゲル化組成物を提供する。
【解決手段】水溶性/有機溶剤可溶性揮発性物質、または水不溶性/有機溶剤不溶性の粒状物のいずれか1種以上と、ゲル化剤を含有し、光照射によってゲル化する光ゲル化組成物であって、上記ゲル化剤が、ポリアクリル酸のホモポリマーあるいはコポリマーのカルボキシル基とN−メチロールアクリルアミドまたはN−アルコキシメチルアクリルアミドとを縮合反応させることによってエチレン性二重結合を導入したアクリル酸系ポリマー、の中から選ばれる少なくとも1種である光ゲル化組成物。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光照射により高含水ゲルを形成するゲル化組成物に関する。さらに詳しくは、芳香剤、消臭剤、冷却剤、電気治療器の導電性パッド、蓄電池のセパレーター、および光、熱、電気等の刺激により体積率変化をする調光材料の固定化等の広い分野に応用可能なゲル化組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、含水ゲルを形成する水性ゲル化剤として、寒天、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カラギーナン、ローカストビーンガム、アラビアガム、ジェランガム、ゼラチン、アミノ酸、カルボキシメチルセルロースおよびその金属塩、キチン・キトサン、アルギン酸ナトリウムなど、種々の物質が使用されている。
【0003】
特開2002−187978号公報(特許文献1)では、ポリアクリル酸やポリアクリル酸塩等のゲル化剤を用いた場合、ゲルの自己保形性等の点から含水率の上限が80〜85質量%程度であるという問題を解消するために、ゲル化剤としてカラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム等を用い、これらゲル化剤とガラクトキシグルカン(粘着剤)とを配合した水性ゲル状組成物を開示している。
【0004】
特開平10−127743号公報(特許文献2)では、ゲル化剤としてカラギーナン、ローカストビーンガム、グアガム等を用い、これらゲル化剤と芳香成分(揮散性有効成分)とを配合し、芳香成分の含有率が異なる複数のゲル状域を有するゲル状組成物を開示している。
【0005】
特開2001−96145号公報(特許文献3)では、ゾルを冷却してゲル化してゲル層を形成し、これを多層構造として多層ゲル状組成物を製造する方法において、1つのゲル層の表面温度がゲル化温度より5〜15℃低下した時点で次のゾルを添加する方法を開示している。
【0006】
しかしながら上記特許文献1〜3に示される技術はいずれも、ゲル化工程中、加熱溶解・冷却工程を必要とするため、配合成分(揮散性有効成分など)に加熱による影響を与えるおそれがある。
【0007】
また加熱溶解・冷却によるゲル化においては、瞬時にゲル化することはできず、通常、ゲル化に少なくとも数十分程度の時間を要する。このため、水や有機溶媒に不溶の粒状物等を配合した組成物では、これら粒状物が沈降してゲル状物中に均一に配合させることが難しい。
【0008】
これに対し、加熱溶融工程を必要としないゲル化方法として、特開平1−315402号公報(特許文献4)では、光エネルギーにより重合可能なモノマーおよび/またはオリゴマーを重合したものと、揮散性物質とを含有した組成物を光照射によりゲル化する方法を開示している。また特開平5−39334号公報(特許文献5)、特開平5−39335号公報(特許文献6)でも、揮散性物質を配合した、紫外線硬化型ゲル基材およびゲル組成物を開示している。
【0009】
しかしながら、特許文献4に示す方法では、短時間照射では未反応モノマーが組成中に残存しており、残留モノマーの毒性を考慮すると安全上好ましくない。なお、感光性樹脂版の分野においては、製版工程において、1回の短時間露光では未反応モノマーが残留する場合があることが知られており、通常、後露光工程によって残留モノマーを十分に反応させることが行われている。特許文献5では特定のエチルセルロースを(メタ)アクリル化したアクリル化合物をゲル化剤として用い、特許文献6ではポリビニルブチラールの残水酸基を(メタ)アクリル化したアクリル化合物をゲル化剤として用いているが、これらはいずれも本願発明で用いるゲル化剤と異なる。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−187978号公報
【特許文献2】
特開平10−127743号公報
【特許文献3】
特開2001−96145号公報
【特許文献4】
特開平1−315402号公報
【特許文献5】
特開平5−39334号公報
【特許文献6】
特開平5−39335号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の問題点を解決し、製造工程の簡略化を図り、短時間で含水率のきわめて高いゲル化組成物を得ることができ、しかも、粒状物質を含む場合はそれらを組成中に均一に配合することができ、また、揮散性物質を含む場合はそれらへの加熱による影響を全く与えることがない、光ゲル化組成物を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、(A−1)水溶性揮発性物質または有機溶剤可溶性揮発性物質と、(B)ゲル化剤を含有し、光未照射では流動性のある溶液をなし、光照射によってゲル化する光ゲル化組成物であって、上記(B)成分が、ポリアクリル酸のカルボキシル基とN−メチロールアクリルアミドまたはN−アルコキシメチルアクリルアミドとを縮合反応させることによってエチレン性二重結合を導入したアクリル酸系ポリマー、およびアクリル酸を含有する共重合体中のカルボキシル基とN−メチロールアクリルアミドまたはN−アルコキシメチルアクリルアミドとを縮合反応させることによってエチレン性二重結合を導入したアクリル酸系ポリマー、の中から選ばれる少なくとも1種である、光ゲル化組成物を提供する。
【0013】
また本発明は、(A−2)水不溶性または有機溶剤不溶性の粒状物と、(B)ゲル化剤を含有し、光未照射では流動性のある溶液をなし、光照射によってゲル化する光ゲル化組成物であって、上記(B)成分が、ポリアクリル酸のカルボキシル基とN−メチロールアクリルアミドまたはN−アルコキシメチルアクリルアミドとを縮合反応させることによってエチレン性二重結合を導入したアクリル酸系ポリマー、およびアクリル酸を含有する共重合体中のカルボキシル基とN−メチロールアクリルアミドまたはN−アルコキシメチルアクリルアミドとを縮合反応させることによってエチレン性二重結合を導入したアクリル酸系ポリマー、の中から選ばれる少なくとも1種である、光ゲル化組成物を提供する。
【0014】
また本発明は、さらに(C)光重合開始剤を含有する、上記光ゲル化組成物を提供する。
【0015】
また本発明は、上記の光ゲル化組成物に活性光線を照射して、架橋反応を生起させ、(A−1)成分を含んだ状態のままゲル化させる光ゲル化方法を提供する。
【0016】
また本発明は、上記の光ゲル化組成物に活性光線を照射して、架橋反応を生起させ、(A−2)成分を含んだ状態のままゲル化させる光ゲル化方法を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
【0018】
本発明では、光ゲル化剤((B)成分)として、ポリアクリル酸のカルボキシル基と、N−メチロールアクリルアミドまたはN−アルコキシメチルアクリルアミドとを縮合反応させることによってエチレン性二重結合を導入したアクリル酸系ポリマー、およびアクリル酸を含有する共重合体中のカルボキシル基とN−メチロールアクリルアミドまたはN−アルコキシメチルアクリルアミドとを縮合反応させることによってエチレン性二重結合を導入したアクリル酸系ポリマー、の中から選ばれる少なくとも1種を用いる。
【0019】
カルボキシル基と、N−メチロールアクリルアミドあるいはN−アルコキシメチルアクリルアミドとの縮合反応は、下記式(I)のように示される。
【0020】
Figure 2005029686
【0021】
本願発明は、上記式(I)で示される反応を、下記に示すようにホモポリマー、コポリマーへ応用したものである。
【0022】
ポリアクリル酸(PA)のカルボキシル基とN−メチロールアクリルアミド(NMA)との縮合反応により、エチレン性二重結合を導入したアクリル酸のホモポリマーの製造は以下の式(II)で示すことができる。
【0023】
Figure 2005029686
【0024】
また、ポリアクリル酸(PA)のカルボキシル基とN−アルコキシメチルアクリルアミド(NAMA)との縮合反応により、エチレン性二重結合を導入したアクリル酸のホモポリマーの製造は、以下の式(III)で示すことができる。
【0025】
Figure 2005029686
【0026】
上記式(III)中、Rはアルキル基を示す。本発明ではRは炭素原子数1〜6、特には炭素原子数1〜4の低級アルキル基が好ましい。上記N−アルコキシメチルアクリルアミドとして、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−プロポキシメチルアクリルアミド等が例示される。
【0027】
本発明では、アクリル酸のホモポリマー中のカルボキシル基のみならず、アクリル酸と、該アクリル酸と共重合し得るモノマー(コモノマー)との共重合体(コポリマー)中のカルボキシル基も、上記縮合反応に用いることができる。該モノマー(コモノマー)は、水溶性を損わない限りにおいて任意に用いることができる。
【0028】
このようなモノマーとしては、オレフィン系不飽和カルボン酸およびその塩(例えば、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、およびこれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩、等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、等)、エーテル結合を有する(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、等)、ヒドロキシ基含有単量体(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、等)、グリシジル(メタ)アクリレート、等が例示される。また(メタ)アクリルアミド類(例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、等)も例示される。さらには、スチレン、アルキルビニルエーテル、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、ビニルピロリドンや、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのエステル類等も例示されるが、これら例示に限定されるものでない。本発明ではアクリル酸−メタクリル酸共重合体が、市場にて容易かつ安価に入手可能で、安定な材料である、等の点から好ましい。
【0029】
本発明において、ポリアクリル酸はポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,500,000程度、あるいはそれ以上のものが好ましく用いられる。またアクリル酸とモノマーとの共重合体を用いる場合、Mwが100,000〜1,000,000で、アクリル酸のモル比が75モル%以上のものが好ましく用いられる。
【0030】
上記縮合反応は、常法により行うことができ、通常、強酸触媒下で行われる。具体的には、水若しくは有機溶媒に溶解したアクリル酸のホモポリマーあるいはコポリマーと、N−メチロールアクリルアミドあるいはN−アルコキシメチルアクリルアミド、強酸触媒、および熱重合禁止剤とを混合し、50〜100℃で、1.5〜3時間程度加熱、撹拌することにより行うことができる。
【0031】
強酸触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、塩化アンモニウム等が好適に用いられる。中でもp−トルエンスルホン酸が好ましい。強酸触媒は1種または2種以上を用いることができる。強酸触媒の使用量は、系中に3〜5質量%となるような範囲で用いるのが好ましい。強酸触媒はそのまま添加してもよく、あるいは水、アルコール以外の溶媒に溶解して用いてもよい。
【0032】
熱重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、t−ブチルカテコール、クペロン、ピロガロール等が挙げられる。熱重合禁止剤の使用量は、全反応原料混合物に対して0.05〜0.5質量%程度が好ましい。
【0033】
上記縮合反応により得られるアクリル酸系ポリマーにおいて、該ポリマー中に導入されるエチレン性二重結合の割合は、該アクリル酸系ポリマー中の全カルボキシル基に対して、導入されるエチレン性二重結合を含む構成単位、すなわちN−メチロールアクリルアミド、N−アルコキシメチルアクリルアミド、が20〜60モル%程度となるように導入するのが好ましく、特に好ましくは30〜50モル%程度である。導入されるエチレン性二重結合を含む構成単位が20モル%未満ではゲル化効率が良好でなく、一方、60モル%超としてもゲル化の度合いは変らないので、コストの点から考えると60モル%超とする必要はない。なおゲル化含水率(%)とN−メチロールアクリルアミド(モル%)との関係(実験結果)を示すグラフを図1に示す。
【0034】
上記の縮合方法によりエチレン性二重結合を導入したアクリル酸系ポリマーを光ゲル化剤として用いることにより、従来のアクリル酸塩からなる吸水性ポリマー(含水率:80〜85質量%程度)に比べて含水率を高めることができる。
【0035】
本発明において、(B)成分の配合量(ポリマー濃度)は、本発明光ゲル化組成物中、2〜10質量%程度、特には2.5〜5質量%程度に抑えることができる。本発明ではゲル化剤として(B)成分を用いることにより、該ゲル化剤を極めて低配合量としても、光ゲル化が可能となった。そのため組成中、残部としての水の配合量をそれだけ高めることができ、したがってゲル組成物中の含水率を極めて高くすることができる。また安全性の高い官能基付与ポリマーのみでゲル化することができ、安全で、かつ短時間で含水率が高い組成物を提供することができる。なお、水の代りに他の溶媒(例えば有機溶剤)を用いた場合にも同様の効果を奏する。
【0036】
本発明では、上記(B)成分と組み合せて、(A−1)水溶性揮発性物質または有機溶剤可溶性揮発性物質、あるいは(A−2)水不溶性または有機溶剤不溶性の粒状物のいずれか1種以上を用いる。
【0037】
上記(A−1)成分としての水溶性揮発性物質または有機溶剤可溶性揮発性物質は、特に限定されるものでなく、本発明の光ゲル化組成物の用途に応じて適宜、選択して用いることができる。例えば大気中に放置することにより、大気中に徐々に揮散して芳香・消臭等の所望の有効成分としての効果を発揮するもので、芳香剤としての香料、消臭剤、防虫剤、忌避剤、誘引剤、殺虫剤、殺菌剤、燻蒸剤等が挙げられるが、これら例示に限定されるものではない。
【0038】
香料としては、シトロネロール、ゲラニオール、タービネオール、ネンジルアルコール、ジヒドロミルセノール、ジベンジルエーテル、ベンズアルデヒド、シクラメンアルデヒド、リリアール、ベンジルアセテート、リモネン、ベンジルベンゾエート、タービニルアセテート等のテルペン系、アルコール系、アルデヒド系、ケトン系、エステル系、フェノール系の天然および合成香料とそれらの混合物である調合香料等が例示される。
【0039】
消臭剤としては、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸等のα−、β−不飽和カルボン酸およびそのエステル、またはアセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン酸等の活性メチレン化合物等が例示される。
【0040】
防虫剤としては、ナフタリン、ショウ脳、p−ジクロロベンゼン等が例示される。
【0041】
忌避剤としては、ニーム抽出物、1,8−シネオール、フタル酸エステル等が例示される。
【0042】
誘引剤としては、アルケニルアルコール類、アルケニルアルデヒド系のフェロモン類およびフラノン誘導体等が例示される。
【0043】
上記(A−2)成分としての水不溶性または有機溶剤不溶性の粒状物としては、特に限定されるものでなく、本発明の光ゲル化組成物の用途に応じて適宜、選択して用いることができる。例えば、液晶分子、顔料、染料、あるいはpH変化、溶媒の添加、または光、熱、電流若しくは電界等の刺激の付与によって体積変化(膨潤、収縮等)を生じる高分子材料、等が例示されるが、これら例示に限定されるものでない。
【0044】
(A−1)成分、(A−2)成分の配合量は、特に限定されるものでなく、得られる光ゲル化組成物の目的、効果を達成することができ、かつ光ゲル化に影響を及ぼさない範囲で適宜調整されるが、組成物中に概ね10〜30質量%程度であるが、これに限定されるものでない。
【0045】
本発明では、上記(A−1)成分あるいは(A−2)成分、(B)成分に加えてさらに(C)成分として光重合開始剤を配合するのが好ましい。該(C)成分としては、従来より公知のものを任意に用いることができ、例えば、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アルコキシベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン〔=ミヒラーズケトン〕、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾイン誘導体;ベンジル、ジベンジル、ベンジルジフェニルジスルフィド、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン等のキサントン誘導体;アセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、2,2’−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−カルボキシアントラキノン、アントラキノン−2−スルホン酸ソーダ、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸ソーダ、アントラキノン−2,7−ジスルホン酸ソーダ等のアントラキノン誘導体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;フェナントレンキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4,−トリメチル−ペンチルホスフィンオキシド、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル―1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(以下、「α−ヒドロキシケトン」とも記す)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1−オン等が挙げられる。(C)成分は1種または2種以上を用いることができる。本発明光ゲル化組成物では、(B)成分等の固形分配合量が2質量%以下程度で、残部が水のみの場合などは、水溶性の光重合開始剤が好ましく用いられる。
【0046】
(C)成分を配合する場合、その配合量は、本発明光ゲル化組成物中、0.005〜0.7質量%程度が好ましく、特には0.01〜0.3質量%程度が好ましい。
【0047】
また光重合促進剤等を添加することも可能で、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0048】
本発明ではゲル化組成物中の含水率を高めることが目的の1つであることから、本発明光ゲル化組成物は、(A−1)あるいは(A−2)成分、(B)成分、(C)成分を除く残部は水であるのが好ましい。
【0049】
なお所望により有機溶剤等の溶媒を配合してもよい。有機溶剤としては、前述の(A−1)成分、(B)成分、(C)成分を溶解可能で、(A−2)成分に対しては不溶性の各種溶剤を用いることができる。具体的には、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ヘキシレンングリコール、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチルアルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が好適なものとして例示されるが、これら例示に限定されるものでない。
【0050】
上記(A−1)成分あるいは(A−2)成分と(B)成分、さらには所望により(C)成分を含有する本発明光ゲル化組成物は、光未照射状態では流動性のある溶液をなすが、光照射により(B)成分が光ゲル化剤として作用し、ごく短時間の光照射によって溶液をゲル化することができる。ゲル化時間は、露光機の出力、ランプからの距離や、(C)成分の種類、量にもよるが、例えば4kW超高圧水銀灯約80cm下、照度30mWで、約30秒間でゲル化することができる。
【0051】
光照射に用いられる活性光線は、ゲル化し得るものであれば特に限定されるものでなく、例えば超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライト、アーク灯など、任意の手段で行うことができる。(C)成分を配合する場合は該成分の吸収波長と一致する波長を出す露光ランプを選択するのが好ましい。
【0052】
従来、加熱・溶解工程を経てゲル化する方法では、例えば100mlビーカーに85℃の熱水を100mlとり、ポリ塩化ビニリデンフィルムでカバーをして25℃室温中で放置冷却した場合、液温が85℃から45℃に低下するのに20分間程度かかり、さらに25℃となるためには2時間以上を要するといった効率の悪さが問題であり、また加熱雰囲気下において、配合成分である揮発性物質が組成物から揮発し、臭気による作業環境の悪さも問題であった。
【0053】
これに対し本願発明では、加熱・溶融工程がなく、室温で作業することができるのみならず、数十秒間という極めて短時間にゲル化させることができるので、従来の効率の悪さの問題や、臭気による作業環境の問題も解決される。本発明により、含水率、含揮発性物質含有率の高いゲル組成物を提供することができ、作業工程の簡略化を図ることができる。
【0054】
なお、上述の特許文献1にも示すように、通常、ポリアクリル酸塩からなる吸水性ポリマーでは含水率が80〜85質量%程度にしかならなかったが、本発明ではアクリル酸のホモポリマーあるいはコポリマーにエチレン性ニ重結合を導入し、これをゲル化剤として用いることにより、含水率を95質量%程度以上とすることが可能となり、またゲル化効率を向上させることが可能となった。このように95質量%程度以上という極めて高い含水率とすることにより、吸水性ポリマーの量を従来の1/2〜1/4程度に減らすことができ、原料コストの低減化が達成される。
【0055】
さらに、沈降性の不溶粒状物を混合した組成を塗布または容器に入れた直後に光照射することで、数秒間でゲル化固定化することを可能とし、沈降性不溶物を組成系中に浮遊状態のまま、均一に固定化し配合することが可能となった。
【0056】
また、例えば上述の特許文献3に記載の多層構造ゲル作成方法は下層ゲルが5〜15度低下した時点で上層ゲル溶液を添加しているが、本発明では下層を瞬時にゲル化し、さらに上層液を注入しこれも瞬時にゲル化することが可能となる。
【0057】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、配合量は特記しない限り質量%で示す。
【0058】
(合成例1)
500mlのセパラブルフラスコに20質量%ポリアクリル酸(「ジュリマーAC10S」(Mw=11,900)、あるいは「ジュリマーAC10H」(Mw=1,482,800)使用;いずれも日本純薬(株)製)水溶液150gを仕込み、オイルバスにセットした。内温が100℃になったところで、N−メチロールアクリルアミドを表1に記載のとおり配合し、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.08gを加えた。5分間程で溶解したので、p−トルエンスルホン酸0.6g/水5g液をスポイトで滴下し、100℃で2.5時間反応した後、冷却し、ポリマー固形分20質量%の水溶液を得た。
【0059】
(合成例2)
合成例1において、20質量%ポリアクリル酸水溶液の代りに、20質量%アクリル酸−メタクリル酸コポリマー(「ジュリマーAC20L」(Mw=159,700)、あるいは「ジュリマーAC20H」(Mw=564,000)使用;いずれも日本純薬(株)製)水溶液150gを用い、N−メチロールアクリルアミドの添加量を表1に記載のとおりとした以外は、合成例1と同様にして反応させ、水を加えポリマー固形分20質量%の水溶液とした。
【0060】
(比較合成例1)
合成例1において、20質量%ポリアクリル酸水溶液の代りに、20質量%ポリメタクリル酸(「ジュリマーAC30H」(Mw=85,700);日本純薬(株)製)水溶液150gを用い、N−メチロールアクリルアミドの添加量を表1に記載のとおりとした以外は、合成例1と同様にして反応させ、水を加えポリマー固形分20質量%の水溶液とした。
【0061】
(実施例1)
合成例1、2および比較合成例1で得たポリマー水溶液を、それぞれ含水率90、95、96および97%とし、各5g採取して、これに光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ―2―メチル―1―プロパン―1−オン(「α−ヒドロキシケトン」)の10%メタノール溶液0.5gを添加して直径15cmの時計皿にとり、これを4kW超高圧水銀灯80cm下にて30秒照射してゲル化させた後、時計皿を横向きにして机上に垂直に立て、ゲルの流動性を目視にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
○: 変形せず、流動性なし
●: 流れ落ちることはないものの変形する
△: 流れかかる寸前の状態
×:ゲル化せず液状のまま
【0062】
結果を表1に示す。なお表1中、「PA」はポリアクリル酸を、「PMA」はポリメタクリル酸を、それぞれ示す。また、「NMA(*1)(モル%)」(添加量)は、ポリマー中の全カルボキシル基(100モル%)に対する割合を示す。「凝集(*2)」は、ポリマーのみが光硬化し、水分を含んだゲル化物を生成できなかったことを示す。
【0063】
【表1】
Figure 2005029686
【0064】
(実施例2)
合成例2で合成した20質量%ポリマー水溶液(コポリマーとして「ジュリマーAC20H」(Mw=564,000)使用)13.65gを水78.13gに溶解し、これに果実系の香りの揮発性物質イソ吉草酸エチル5.6g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.2g、α−ヒドロキシケトン0.071gを5.0gの3−メチル−3−メトキシブタノールに溶解した溶液を添加して、芳香剤ゲル用溶液を調製した。この溶液を容器に入れ、室温にて実施例1と同じ条件にて光照射したところ、30秒間程度で全体がゲル化し、芳香剤ゲル化物が得られた。
【0065】
(比較例1)
20質量%ポリアクリル酸(「ジュリマーAC10H」;日本純薬(株)製)水溶液5g、純水16gの溶液(固形分4.76質量%)を調製した。これに実施例1と同様に光重合開始剤を配合し、実施例1と同様の条件にて光照射したところ、液状のままでゲル化しなかった。
【0066】
(比較例2)
20質量%ポリアクリル酸(「ジュリマーAC10H」;日本純薬(株)製)水溶液10g、N−メチロールアクリルアミド1.07g、純水50.4gを混合して溶液を調製した。該溶液5g(固形分濃度5質量%)をとり、ここにα−ヒドロキシケトン20%メタノール溶液0.25gを添加攪拌して溶液を調製した。これを実施例1と同様の条件にて光照射したところ、液状のままでゲル化しなかった。
【0067】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、製造工程の簡略化を図り、短時間で含水率のきわめて高いゲル化組成物を得ることができ、しかも、粒状物質を含む場合はそれらを組成中に均一に配合することができ、また、揮散性物質を含む場合はそれらへの加熱による影響を全く与えることがない、光ゲル化組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明組成物におけるゲル化含水率(%)とN−メチロールアクリルアミド(モル%)との関係を示すグラフである。

Claims (5)

  1. (A−1)水溶性揮発性物質または有機溶剤可溶性揮発性物質と、(B)ゲル化剤を含有し、光未照射では流動性のある溶液をなし、光照射によってゲル化する光ゲル化組成物であって、上記(B)成分が、ポリアクリル酸のカルボキシル基とN−メチロールアクリルアミドまたはN−アルコキシメチルアクリルアミドとを縮合反応させることによってエチレン性二重結合を導入したアクリル酸系ポリマー、およびアクリル酸を含有する共重合体中のカルボキシル基とN−メチロールアクリルアミドまたはN−アルコキシメチルアクリルアミドとを縮合反応させることによってエチレン性二重結合を導入したアクリル酸系ポリマー、の中から選ばれる少なくとも1種である、光ゲル化組成物。
  2. (A−2)水不溶性または有機溶剤不溶性の粒状物と、(B)ゲル化剤を含有し、光未照射では流動性のある溶液をなし、光照射によってゲル化する光ゲル化組成物であって、上記(B)成分が、ポリアクリル酸のカルボキシル基とN−メチロールアクリルアミドまたはN−アルコキシメチルアクリルアミドとを縮合反応させることによってエチレン性二重結合を導入したアクリル酸系ポリマー、およびアクリル酸を含有する共重合体中のカルボキシル基とN−メチロールアクリルアミドまたはN−アルコキシメチルアクリルアミドとを縮合反応させることによってエチレン性二重結合を導入したアクリル酸系ポリマー、の中から選ばれる少なくとも1種である、光ゲル化組成物。
  3. さらに(C)光重合開始剤を含有する、請求項1または2記載の光ゲル化組成物。
  4. 請求項1または3記載の光ゲル化組成物に活性光線を照射して、架橋反応を生起させ、(A−1)成分を含んだ状態のままゲル化させる、光ゲル化方法。
  5. 請求項2または3記載の光ゲル化組成物に活性光線を照射して、架橋反応を生起させ、(A−2)成分を含んだ状態のままゲル化させる光ゲル化方法。
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