JP2005028903A - パンタグラフ支障物検出方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車両1の屋根にITVカメラ3を設置し、パンタグラフ近傍を撮影する。ITVカメラ3の映像出力を画像処理部5で画像処理して、パンタグラフ支障物を検出する。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行する電車等の車両に設置したITVカメラでパンタグラフ舟体付近の映像を取得し、複数の連続画像から画像処理によって、パンタグラフに接近する支障物(以下、パンタグラフ支障物あるいは単に支障物と呼ぶ)を検出する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、電車線設備の構造物は所定の位置に設置されている。しかし、強風や振り子式車両などにおけるパンタグラフの動的な傾斜等によって、パンタグラフに接近又は接触するものをパンタグラフ支障物と呼ぶ。例えばトロリ線を固定する曲線引き金具等の支持物が車両に異常接近したり、自車両とは関係ないトロリ線が近接すると、これらが支障物となり、車両の走行に支障をきたす。
【0003】
従来より、これら支障物の検出手段として、検測車や車両限界測定車などと呼ばれる専用の測定車(以降、測定車と呼ぶ)が知られており、営業運転の合間を縫って一定周期毎に運用されている。
【0004】
これら測定車には、車体の傾きやレールの変位等、各種状態を測定するセンサが多数取り付けられており、そのセンサの1つとして、パンタグラフ支障物の検出センサがある。
【0005】
パンタグラフ支障物のセンサには、接触センサ、レーザセンサ、光切断センサなどがあり、それぞれ以下の特徴がある。
(1) 接触センサは、耐電圧の高いセンサを直接パンタグラフに取り付け、支障物がパンタグラフに接触したかどうかを測定するセンサである。測定車の一種には、金属棒を測定車の周囲に針ネズミのように取り付け、物理的な接触を測定するものもある。
(2) レーザセンサは、レーザの照射形状によりスポット式レーザ、スキャン式レーザ、レンズ型レーザ(扇形に照射)などがあり、反射波の位相差や照射したレーザ形状の変形により測定対象までの絶対的な距離を測定するセンサである。
(3) 光切断センサは、縞状の光を測定対象に投光し、測定対象の凹凸に沿った縞の変形を受光して、測定対象面の3次元的な形状を測定するセンサである。
【0006】
【特許文献1】
特開平6‐27312号公報
【特許文献2】
特願平6‐149246号
【特許文献3】
特願平11‐32223号
【特許文献4】
特願2000‐332841号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
測定車は本来、経済的且つ効率的な運用が要求されているために、必要最低限の測定頻度で運用され、且つ、測定車台数の余裕がない。従って、緊急以外、あるいは、当初予定のスケジュール以外では測定車を使用できず、測定車による支障物検出は制限が多い。
【0008】
接触センサを用いた支障物検出は信頼性が極めて高いが、下記の問題点がある。
・接触センサが接触するまで支障物の存在が分からない。
・測定車が高速走行で測定すると、支障物と接触センサが高速で衝突する。従って、2次障害を発生させないためにも、測定車は高速で走行できない。
【0009】
レーザセンサを用いた支障物検出には、下記の問題点がある。
・スポット式レーザとスキャン式レーザは、測定点までの距離を1点だけ測定するセンサであるので、高速走行する測定車からはパンタグラフの近傍を広範囲に測定することができない。
・レンズ型レーザ(扇形照射)は、通常 CLASS−C以上(JIS−C−6802規格)の強いレーザなので、人が立ち入る場所では、安全上使用できない。
【0010】
光切断センサの使用は、センサから投光された光が直射日光下では見えないため、夜間に限られる。従って、支障物の発生が予測される熱膨張の著しい真夏の日中に、使用できない。
【0011】
従って、本発明の課題は、上記問題点を解消するパンタグラフ支障物検出技術を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
第1の発明はパンタグラフ支障物検出方法であり、車両に設置したITVカメラでパンタグラフ近傍の映像を取得し、この映像を車両に設置した画像処理装置で画像処理することでパンタグラフ支障物を検知することを特徴とする。
【0013】
第2の発明は別のパンタグラフ支障物検出方法であり、車両に設置したITVカメラでパンタグラフ近傍の映像を取得して録画しておき、この映像を車両外に設置した画像処理装置で画像処理することでパンタグラフ支障物を検知することを特徴とする。
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明において、画像処理装置では、ITVカメラからパンタグラフ付近の連続画像を取得し、前記連続画像の数フレーム隔てた画像間において構造物の特徴点の対応付けにより、ITVカメラの姿勢を求め、更に、前記特徴点の位置を求め、この位置とパンタグラフの位置からパンタグラフ支障物を検知することを特徴とするパンタグラフ支障物検出方法である。
【0015】
第4の発明は、第1または第2の発明において、画像処理装置では、オプティカルフローにより車両進行方向に合った移動体の領域についてパンタグラフ支障物を検知することを特徴とするパンタグラフ支障物検出方法である。
【0016】
第5の発明は、第1または第2の発明において、ITVカメラに近接レンズを入れ、画像処理装置ではパンタグラフ付近だけに存在する物体のエッジ得ることにより、パンタグラフ支障物を検知することを特徴とするパンタグラフ支障物検出方法である。
【0017】
第6の発明はパンタグラフ支障物検出装置であり、パンタグラフ近傍の映像を取得する車両に設置したITVカメラと、このITVカメラで取得した映像を録画する車両に設置した映像記録部と、映像を画像処理することでパンタグラフ支障物を検知する車両に設置した画像処理装置を備えることを特徴とする。
【0018】
第7の発明は別のパンタグラフ支障物検出装置であり、パンタグラフ近傍の映像を取得する車両に設置したITVカメラと、このITVカメラで取得した映像を画像処理することでパンタグラフ支障物を検知する車両外に設置した画像処理装置を備えることを特徴とする。
【0019】
第8の発明は、第6または第7の発明において、前記画像処理装置は、パンタグラフ付近の連続画像を取得し、前記連続画像の数フレーム隔てた画像間において構造物の特徴点の対応付けにより、ITVカメラの姿勢を求め、更に、前記特徴点の位置を求め、この位置とパンタグラフの位置からパンタグラフ支障物を検知する機能を有することを特徴とするパンタグラフ支障物検出装置である。
【0020】
第9発明は、第6または第7の発明において、前記画像処理装置は、オプティカルフローにより車両進行方向に合った移動体の領域についてパンタグラフ支障物を検知する機能を有することを特徴とするパンタグラフ支障物検出装置である。
【0021】
第10の発明は、第6または第7の発明において、ITVカメラに入れた近接レンズを備え、前記画像処理装置はパンタグラフ付近だけに存在する物体のエッジ得ることにより、パンタグラフ支障物を検知する機能を有することを特徴とするパンタグラフ支障物検出装置である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図9を参照して、本発明を説明する。
【0023】
[発明の基本的な考え方]
本発明の基本的な考え方は、図1に示すように、測定車に限らず任意の車両1、例えば営業車の屋根2にITVカメラ3を設置し、このITVカメラ3でパンタフラフ4付近の映像を取得し、この映像を車両1に設置した画像処理部5(あるいは車両外に設置した画像処理部)で画像処理することにより、パンタグラフ支障物を検知することである。
【0024】
[実施形態例1:オンライン処理対応]
図2に本発明の実施形態例1に係るパンタグラフ支障物検出装置の構成を示し、図3にその画像処理のフローチャートを示す。
【0025】
図2に示すパンタグラフ支障物検出装置は、1台のITVカメラ3と、画像処理部2から構成される。ITVカメラ3は、パンタグラフ付近を撮影するために例えば営業車の屋根2に設置されている。画像処理部5は、ITVカメラ3の映像出力をオンラインで画像処理することによりパンタグラフ支障物を検知する。画像処理部5は検知結果を結果記録部6に出力し、記録する。画像処理部5及び結果記録部6はオンライン処理のため、車両内に設置されている。
【0026】
画像処理部5における画像処理の流れ(初期設定、画像入力、対象点検出、連続点検出、カメラ姿勢計算、ステレオ計測、支障物判定、画像終了)を、図3を参照して以下に説明する。
【0027】
(1) 初期設定(ステップS1)として、あらかじめ、車両の進行方向、構造物7の直径D(図1参照)、曲線引き金具8の長さW(図1参照)、据付時のITVカメラ3のパラメータ(焦点距離、回転角αβγ、位置xyz、カメラ画素数、カメラ受光素子寸法)を設定する。また、図4に示すようなITVカメラ3からパンタグラフ4までの距離テーブルfを設定する。図4に関し、vを画像上での車両1とパンタグラフ4との間の距離とすると、ITVカメラ3とパンタグラフ4との実際の距離ZはZ=f(v)で与えられるので、これをテーブル化して、距離テーブルfを設定する。また、カメラパラメータで決まるパンタグラフ付近に画像中で見える構造物7の直径dや曲線引き金具8の長さwを求めておく。更に、カメラパラメータと車両進行方向とで決まる種々の物体移動方向を図5に示す矢印9のように求めておく。図5に関し、物体移動方向9はエピポーラ線と呼ばれ、図では5本であるが、画像中には無数あり、例えば8本設定される。ここで、回転角α、β、γと位置x、y、zはITVカメラ3のカメラ姿勢であり、これらの初期値は据付時に決まるが、車両が走行することによって変化する可能性があり、車両走行時のカメラ姿勢は後述するように計算される。構造物7の直径Dや曲線引き金具8の長さWは実際の寸法(単位:mやmmなど)であり、dやwは画像上での寸法(単位:ドットや画素数など)である。画像上の直径dは、例えば図6に示すように原画像10から構造物の輪郭線10Aを抽出し、上下の輪郭線間の画素数11をカウントするなど、従来手法で求めることができる。
【0028】
(2) 画像入力(ステップS2)として、ITVカメラ3から所定の周期で画像を入力する。
【0029】
(3) 対象点検出(ステップS3)として、1枚の画像に対してエッジ検出を行い、図7に示すように、一辺が2d(dは構造物の画像上の直径として設定した値)の正方形12内に縦横エッジが所定の閾値以上存在するかどうか、画像中で探索する。画像全体を探索した結果、縦横エッジが所定の閾値以上存在する正方形をn個(n≧8)取得し、それぞれの中心座標(ui,vi) を取得する。縦横エッジが所定の閾値以上存在する正方形の数が8未満であれば、ステップS2に戻り次の画像を入力する。ここで、正方形内に縦横エッジが所定の閾値以上存在するかどうかの判定例を図8に示す。輪郭線13では縦横のエッジが閾値以上存在し、他の輪郭線14、15、16、17では縦横のエッジが閾値以上存在しないと判定されている。
【0030】
(4) 連続点検出(ステップS4)として、画像中のn個(n≧8)の正方形をパターンマッチングにより、前後の数フレームのエピポーラ線(図5の矢印9参照)上で対応点を探索する。そして、最もフレームが離れた対応点の対(ui,vi) ,(ui’,vi’)を得る。iは1からpとする。なお、対応点の対(ui,vi) ,(ui’,vi’)を水平面に投影し、対応する点の長さの中央値からある程度離れた対応点は削除する。これは、図9に示すように、点(ui,vi)と点(ui’,vi’)間の距離tの偏差が極端に大きいものは除外し、検出誤差を減らすためである。いずれのフレーム間でも得られた対応点の対の数が8未満(n<8)ならば、ステップS2に戻る。
【0031】
(5) カメラ姿勢計算 (ステップS5) として、n個(n≧8)の対応点の対(ui,vi) ,(ui’,vi’)で、ITVカメラ3の姿勢を計算する。複数の点からカメラ姿勢を求める方法は各種知られているが、本実施形態例では、一般的な次の式(1)を使用してカメラ姿勢を計算する。
【0032】
【数1】
【0033】
(6) ステレオ測定(ステップS6)として、ステップS5で得られたカメラ姿勢から、ステップS3で得た正方形領域の位置をステレオ計測する。これにより得られる位置は標準化されていて単位がないため、曲線引き金具8の長さWから単位を計算する。
【0034】
(7) 支障物判定 (ステップS7)として、ステップS6でステレオ計測結果と連結するステップS3のエッジとパンタグラフ4の形状と距離テーブルfで、図10の平面18に投影し、構造物7等とパンタグラフ4との相対的な離間距離を測定し、所定の管理値より接近している場合は、支障物と判定でき、このときの画像と離間距離と時刻を結果記録部6に記録する。なお、投影平面18の法線は車両進行方向としている。
【0035】
(8) 画像終了 (ステップS8)として、画像が終了したらステップS2の画像入力処理に戻る。
【0036】
パンタグラフ4の画像中の位置は、例えば以下の手法により検出することができる。
(1) 予め、パンタグラフ4のモデルを登録しておく。
(2) ITVカメラ3の出力映像から、静止画像を取得する。
(3) 周知のモデルマッチング法により画像中のパンタグラフを検出し、検出したパンタグラフの位置を求める。
【0037】
あるいは、パンタグラフ4の画像中の位置は、モデルマッチング法の代わりに、パターンマッチング法を使用して、以下のように検出することもできる。
(1) 予め、パンタグラフの濃淡値をパターンとして登録しておく。
(2) カメラの出力映像から、静止画像を取得する。
(3) 周知のパターンマッチング法、例えば正規化相関から上記(2) の静止画像と上記(1) のパターンとがマッチングする座標と角度を求める。この際、パターンマッチングで得られる複数の座標と角度を候補として保存する。
(4) 上記(2) へ戻り、次の静止画像を取得し、上記(3) を実行する。このような処理(4) →(2)(3)を映像出力が終了するまで繰り返す。
(5) 上記(3) で得られた座標のうち、時系列的な統計から特異点を削除したり、あるいは、位置の連続性が取れない座標を削除して、連続した位置を求め出力する。これにより、パンタグラフの位置が測定できる。
【0038】
以上説明した本発明の実施形態例1では、ITVカメラ3と支障物までの距離を非接触で測定することができる。また、車両が通常の運転速度で走行していても支障物を検知できるため、振り子式車両など車両の動的な挙動での支障物を検知することができる。また、画像処理を使用するので、レーザセンサのような危険がない。また、画像処理を使用するので、昼夜両方で測定でき、これにより、支障物の発生が予想される熱膨張の著しい真夏の日中でも支障物を検出できる。更に、支障物発生時の画像も同時に記録するので、画像から目視により支障物発生時の状態や支障物発生の原因を推測することができる。
【0039】
[実施形態例2:オフライン処理対応]
次に、図11に本発明の実施形態例2に係るパンタグラフ支障物検出装置の構成を示す。本実施形態例2は、上記実施形態例1と目的及びフローチャート (図3) は同じであるが、オフラインで支障物を検出する点が異なる。つまり、図11に示すように、本実施形態例2のパンタグラフ支障物検出装置は、1台のITVカメラ3と、画像処理部5と、映像記録部19から構成される。ITVカメラ3は、パンタグラフ付近を撮影するために例えば営業車の屋根2に設置されている。映像記録部19は車両に設置され、ITVカメラ3の映像出力を録画する。画像処理部5は車両外に設置され、映像再生部20を備えている。つまり、画像処理部5は、映像記憶部19で録画されたITVカメラ3の映像出力を映像再生部20で再生して取得し、オフラインで画像処理することによりパンタグラフ支障物を検知する。画像処理部5は検知結果を結果記録部6に出力し、記録する。ITVカメラ3と映像記録部19は車載部を構成し、画像処理部5、映像再生部20及び結果記録部6は測定部を構成している。
【0040】
画像処理部5における画像処理の流れは、図3を参照して説明した実施形態例1と基本的に同じである、要点を示せば、以下の通りである。
(1) 初期設定(ステップS1)として、予め、車両の進行方向、構造物7の直径D、曲線引き金具8の長さW、据付時のITVカメラ3のパラメータを設定する。また、図4に示すような距離テーブルfを設定する。また、カメラパラメータで決まるパンタグラフ付近に画像中で見える構造物7の直径dや曲線引き金具8の長さwを求めておく。更に、カメラパラメータと車両進行方向とで決まる種々の物体移動方向を図5に示す矢印9のように求めておく。
(2) 画像入力(ステップS2)として、映像再生部20から映像記録部19で記録したITVカメラ3による画像を所定の周期で入力する。
(3) 対象点検出(ステップS3)として、1枚の画像に対してエッジ検出を行い、図7に示すように、一辺が2d(dは構造物の画像上の直径として設定した値)の正方形12内に縦横エッジが所定の閾値以上存在するかどうか、画像中で探索する。画像全体を探索した結果、縦横エッジが所定の閾値以上存在する正方形をn個(n≧8)取得し、それぞれの中心座標(ui,vi) を取得する。縦横エッジが所定の閾値以上存在する正方形の数が8未満であれば、ステップS2に戻り次の画像を入力する。
(4) 連続点検出(ステップS4)として、画像中のn個(n≧8)の正方形をパターンマッチングにより、前後の数フレームのエピポーラ線上で対応点を探索する。そして、最もフレームが離れた対応点の対(ui,vi) ,(ui’,vi’)を得る。対応点の対(ui,vi) ,(ui’,vi’)を水平面に投影し、対応する点の長さの中央値からある程度離れた対応点は削除する。
(5) カメラ姿勢計算 (ステップS5) として、n個(n≧8)の対応点の対(ui,vi) ,(ui’,vi’)で、ITVカメラ3の姿勢を計算する。
(6) ステレオ測定(ステップS6)として、ステップS5で得られたカメラ姿勢から、ステップS3で得た正方形領域の位置をステレオ計測する。
(7) 支障物判定 (ステップS7)として、ステップS6でステレオ計測結果と連結するステップS3のエッジとパンタグラフ4の形状と距離テーブルfで、図10の投影平面18に投影し、構造物7等とパンタグラフ4との相対的な離間距離を測定し、所定の管理値より接近している場合は、支障物と判定し、このときの画像と離間距離と時刻を結果記録部6に記録する。
(8) 画像終了 (ステップS8)として、画像が終了したらステップS2の画像入力処理に戻る。
【0041】
以上説明した本発明の実施形態例2では、画像処理装置5が車両外に設置されるので、車両側の装置設置面積が小さいという利点がある。
【0042】
[実施形態例3:オプティカルフロー処理の追加)]
本実施形態例3は、実施形態例1及び実施形態例2と比較すると、装置構成及び目的は同じであるが、図12のフローチャートに示すように、画像処理にオプティカルフロー処理を追加した点が異なる。装置構成自体はオンライン処理のもの (図2)でも、オフライン処理のもの (図11)でもよい。
【0043】
図2または図11における画像処理部5での画像処理の流れを、図12を参照して説明する。図3とした実施形態例1と同じで処理については説明を簡略化する。
(1) 初期設定(ステップS11)として、図3のステップS1と同様、予め、車両の進行方向、構造物7の直径D、曲線引き金具8の長さW、据付時のITVカメラ3のパラメータを設定する。また、図4に示すような距離テーブルfを設定する。また、カメラパラメータで決まるパンタグラフ付近に画像中で見える構造物7の直径dや曲線引き金具8の長さwを求めておく。更に、カメラパラメータと車両進行方向とで決まる種々の物体移動方向を図5に示す矢印9のように求めておく。
(2) 画像入力(ステップS12)として、図3のステップS2と同様、ITVカメラ3による画像を所定の周期で入力する。
(3) オプティカルフロー処理 (ステップS13)として、画像中で移動体が存在する領域を検出し、この動きのある領域に、次のステップS14の処理で対象点検出を行わせる。なお、動きのある領域を検出するに際し、先ず画像中でオプティカルフローを計算し、実験的に求めた所定の長さのオプティカルフローを抽出し、抽出されたオプティカルフローの発生箇所を移動体の存在領域つまり動きのある領域とする。例えば図5の画像からオプティカルフローを求めると、空や雲の部分はオプティカルフローは発生しないし、遠方に存在する電力線柱やき電線は短い長さのオプティカルフローが発生する。但し、車両上方を通過する構造物は、所定の車両速度に見合った長さのオプティカルフローが発生するので、オプティカルフローを所定の長さで選択し、この箇所を移動体の存在領域とする。なお、得られたオプティカルフローはこれを水平面に投影し、長さの中央値から離れた長さのオプティカルフローは削除する。これは、実空間のオプティカルフローの長さで評価するためであり、画像上ではほぼ同じ長さのオプティカルフローであっても、実空間の水平面に投影すると画像上方のオプティカルフローは短く、画像下方のオプティカルフローは長く投影されるので、投影しないと実空間の物体の動く速度で評価できないという不具合が生じる。
(4) 対象点検出(ステップS14)として、図3のステップS3と同様であるが、1枚の画像に対して、オプティカルフロー処理で検出した動きのある領域に限定してエッジ検出を行い、図7に示すように、一辺が2d(dは構造物の画像上の直径として設定した値)の正方形12内に縦横エッジが所定の閾値以上存在するかどうか、動きのある領域中で探索する。この領域全体を探索した結果、縦横エッジが所定の閾値以上存在する正方形をn個(n≧8)取得し、それぞれの中心座標(ui,vi) を取得する。縦横エッジが所定の閾値以上存在する正方形の数が8未満であれば、ステップS12に戻り次の画像を入力する。
(5) 連続点検出(ステップS15)として、図3のステップS4と同様であるが、動きのある領域中のn個(n≧8)の正方形をパターンマッチングにより、前後の数フレームのエピポーラ線上で対応点を探索する。そして、最もフレームが離れた対応点の対(ui,vi) ,(ui’,vi’)を得る。対応点の対(ui,vi) ,(ui’,vi’)を水平面に投影し、対応する点の長さの中央値からある程度離れた対応点は削除する。
(6) カメラ姿勢計算 (ステップS16) として、図3のステップS5と同様、n個(n≧8)の対応点の対(ui,vi) ,(ui’,vi’)で、ITVカメラ3の姿勢を計算する。
(7) ステレオ測定(ステップS17)として、図3のステップS6と同様、ステップS16で得られたカメラ姿勢から、ステップS14で得た正方形領域の位置をステレオ計測する。
(8) 支障物判定 (ステップS18)として、図3のステップS7と同様、ステップS6でステレオ計測結果と連結するステップS14のエッジとパンタグラフ4の形状と距離テーブルfで、図10の平面18に投影し、構造物7等とパンタグラフ4との相対的な離間距離を測定し、所定の管理値より接近している場合は、支障物と判定でき、このときの画像と離間距離と時刻を結果記録部6に記録する。
(9) 画像終了 (ステップS19)として、図3のステップS8と同様、画像が終了したらステップS12の画像入力処理に戻る。
【0044】
本実施形態例3ではオプティカルフロー処理の追加によって対象点検出の領域を限定したので、パンタグラフ支障物検出の処理が簡素化するう。通常オプティカルフローを求める計算量は多いが、本実施形態例3では図5のエピポーラ線9上にオプティカルフロー探索を制約できるため、少ない計算量でオプティカルフローが得られる。また、得られるオプティカルフローに誤りが少ない。また、本実施形態例3では、支障物以外の移動体、例えば電車線柱、き電線などを取り除くことができ、図3に示した処理に比べてロバストに支障物を検知できる。
【0045】
[実施形態例4:近接レンズの追加)]
本実施形態例4では、実施形態例1、実施形態例2及び実施形態例3と比較すると、目的及びフローチャート (図3、図12) は同じであるが、ITVカメラ3に近接レンズ (図示省略)を入れた点が異なる。詳しくは、ITVカメラとそのレンズとの間に近接リング (近接レンズ)を入れている。装置構成自体はオンライン処理のもの (図2)でも、オフライン処理のもの (図11)でもよい。
【0046】
ITVカメラ3に被写界深度が浅くなる近接リングを入れて使用すると、パンタグラフ4付近に存在する物体だけに焦点が合い、それ以外は焦点がぼけるので、このときの画像をエッジ検出するとパンタグラフ4付近だけに存在するエッジが得られる。従って、本実施形態例4は、ITVカメラ3からパンタグラフ4までの距離が短いときに有効で、パンタグラフ4付近だけに存在する支障物を検出できるという利点がある。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、下記の効果がある。
・画像処理を使用するので、非接触でパンタグラフ支障物を検出できる。
・通常の運転速度で支障物を検出できるため、振り子式車両など動的にな挙動条件でも支障物検出ができる。
・画像処理を使用するので、レーザセンサのような危険がない。
・画像処理を使用するので、昼夜両方で支障物を検出できる。これにより、支障物の発生が予想される熱膨張の著しい真夏の日中でも支障物を検出できる。
・画像処理部を車両外に設置する場合は、車両側の装置設置面積が小さい。
・オプティカルフォロー処理を行う場合は、ロバストに支障物を検出できる。
・ITVカメラに近接レンズを入れる場合は、パンタグラフ付近にだけに存在する支障物を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の全体図。
【図2】本発明の実施形態例1に係る装置構成を示す図。
【図3】本発明の実施形態例1に係る画像処理のフローを示す図。
【図4】距離テーブルの説明図。
【図5】エピポーラ線の例を示す面。
【図6】構造物の画像上の直径を求める説明図。
【図7】正方形探索の説明図。
【図8】正方形内に縦横エッジが閾値以上存在するかどうかの判定例を示す図。
【図9】距離偏差が大きい点の除外を説明する図。
【図10】支障物とパンタグラフとの離間距離を測定するための投影平面を示す図。
【図11】本発明の実施形態例2に係る装置構成を示す図。
【図12】本発明の実施形態例3に係る画像処理のフローを示す図。
【符号の説明】
1 車両
2 屋根
3 ITVカメラ
4 パンタグラフ
5 画像処理部
6 結果記録部
7 構造物
8 曲線引き金具
9 エピポーラ線
10 原画像
10A、13、14、15、16、17 輪郭線
11 画素数
12 正方形
18 投影平面
19 映像記録部
20 映像再生部
Claims (10)
- 車両に設置したITVカメラでパンタグラフ近傍の映像を取得し、この映像を車両に設置した画像処理装置で画像処理することでパンタグラフ支障物を検知することを特徴とするパンタグラフ支障物検出方法。
- 車両に設置したITVカメラでパンタグラフ近傍の映像を取得して録画しておき、この映像を車両外に設置した画像処理装置で画像処理することでパンタグラフ支障物を検知することを特徴とするパンタグラフ支障物検出方法。
- 請求項1または2において、画像処理装置では、パンタグラフ付近の連続画像を取得し、前記連続画像の数フレーム隔てた画像間において構造物の特徴点の対応付けにより、ITVカメラの姿勢を求め、更に、前記特徴点の位置を求め、この位置とパンタグラフの位置からパンタグラフ支障物を検知することを特徴とするパンタグラフ支障物検出方法。
- 請求項1または2において、画像処理装置では、オプティカルフローにより車両進行方向に合った移動体の領域についてパンタグラフ支障物を検知することを特徴とするパンタグラフ支障物検出方法。
- 請求項1または2において、ITVカメラに近接レンズを入れ、画像処理装置ではパンタグラフ付近だけに存在する物体のエッジ得ることにより、パンタグラフ支障物を検知することを特徴とするパンタグラフ支障物検出方法。
- パンタグラフ近傍の映像を取得する車両に設置したITVカメラと、このITVカメラで取得した映像を画像処理することでパンタグラフ支障物を検知する車両に設置した画像処理装置を備えることを特徴とするパンタグラフ支障物検出装置。
- パンタグラフ近傍の映像を取得する車両に設置したITVカメラと、このITVカメラで取得した映像を録画する車両に設置した映像記録部と、映像を画像処理することでパンタグラフ支障物を検知する車両外に設置した画像処理装置を備えることを特徴とするパンタグラフ支障物検出装置。
- 請求項6または7において、前記画像処理装置は、パンタグラフ付近の連続画像を取得し、前記連続画像の数フレーム隔てた画像間において構造物の特徴点の対応付けにより、ITVカメラの姿勢を求め、更に、前記特徴点の位置を求め、この位置とパンタグラフの位置からパンタグラフ支障物を検知する機能を有することを特徴とするパンタグラフ支障物検出装置。
- 請求項6または7において、前記画像処理装置は、オプティカルフローにより車両進行方向に合った移動体の領域についてパンタグラフ支障物を検知する機能を有することを特徴とするパンタグラフ支障物検出装置。
- 請求項6または7において、ITVカメラに入れた近接レンズを備え、前記画像処理装置はパンタグラフ付近だけに存在する物体のエッジ得ることにより、パンタグラフ支障物を検知する機能を有することを特徴とするパンタグラフ支障物検出装置。
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