JP2005027840A - 生体軟組織用医療用具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】生体軟組織に直接または間接に接触して使用され、適用時、留置状態、あるいは取出し時のいずれかの時点で、大きな歪を受ける生体軟組織用医療用具である。この生体軟組織用医療用具における歪を受ける部位が、Niを含有しない非晶質合金で構成してあり、前記非晶質合金の比例限界伸びが1.5%以上あり、ヤング率が100GPa以下である。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、循環器系医療用具や消化管系医療用具などの生体軟組織用医療用具に関する。
【0002】
【従来の技術】
高齢化などによって医療費が増大してきており、医療の合理化と軽費医療が望まれている。これに伴い、開胸手術、開心術等のような大手術から低侵襲的手術に移行することが望まれ、長期入院を要する手術から日帰りできる手術へとの移行が望まれている。このような低侵襲的手術では、カテーテル等を用いた、インターベンシュナルラジオロジーが主流に成っている。
【0003】
このような低侵襲的手術では、例えば、ガイドワイヤー、ステント、ステントグラフト、塞栓コイル、スタイレット、スネアー、バスケット、生検ブラシ、IVフィルター、動脈管開存塞栓材等の医療用具が用いられる。
【0004】
これらの医療用具は、生体の軟組織に直接或いは間接に接触して使用される。なお、生体の軟組織とは、歯、骨格等の硬質の組織を除き、心臓・血管、食道・胃・腸・肝臓等の消化器、気管・肺、脳神経の如く、外力に対し大きな変形を受ける生体組織を言う。
【0005】
このような生体軟組織用医療用具では、大きな外力を継続的に支える必要がないが、長期にわたって、柔らかく組織に力を及ぼし続ける必要のある場合が多く、また、これを低侵襲的に適用するとき、挿入時、留置状態、あるいは取出し時のいずれかの時点で、大きな歪を受ける。この歪に対して変形せず、機能を発揮することが必要である。
この要求に応えるため、従来、NiTi超弾性合金等の材料を用いることが多い。しかしながら、生体に留置されて使用される医療用具にあっては、低毒性とともに、組織適合性、血液接触適合性などが要求される。もちろん、これは単に材料のみではなく、表面性状などの改質により改良しやすい。しかし、長期にわたり生体内に埋め込まれる医療用具にあっては、表面修飾物質は分解し、ベースの金属本来の性質が現れることが多い。特に、脳循環を含む心臓血管系に用いられる医療用具にあっては、電解質である血液と接触が起こり、耐腐食性も強く要求される。
【0006】
従来、医療用具のベースとなる金属としては、耐食性の面から、SUS304、SUS316などの材料が多く用いられている。たとえば医療用具の1つであるステントは、通常、ステンレスで構成される(下記の特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5など)。また、最近では、医療用具を、NiTi超弾性合金で構成しようとする試みも知られている。
【0007】
しかしながら、これらの金属材料は、含有されるNiによる生体への影響が問題視される報告があり、現在、Niを含まず、かつ、体内で耐食性の良い金属材料が求められている。一般的には、耐食性の点からはTiおよびTi合金が用いられることが多いが、これらは、一般的に硬く、生体軟組織に留置しにくいばかりでなく加工性が悪いことが多い。
【0008】
なお、下記の特許文献6に示すように、高耐食性を持ち、加工性に優れた非晶質合金が提案されている。しかしながら、この特許文献6に開示してある非晶質合金は、Niを含んでも良い非晶質合金であると共に、組成範囲が広すぎて、生体軟組織用医療用具として用いることが適当ではない合金組成も含んでいる。
【0009】
【特許文献1】特開平9−117512号公報
【特許文献2】特開平11−99207号公報
【特許文献3】特表平12−501328号公報
【特許文献4】特開平7−531号公報
【特許文献5】特開平12−5321号公報
【特許文献6】特公平7−122120号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、生体軟組織に良くなじみ、また、耐食性に優れ、しかもNiを含まず、生体への影響が少ないと考えられ、低細胞毒性であり、低侵襲的に適用する場合に、その挿入時、留置状態、あるいは取出し時に生じる大変形で永久変形を起こさず、インターベンションで優れた機能を発揮することができる生体軟組織用医療用具を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定組成の非晶質合金が、低ヤング率で、生体軟組織によくなじみ、また、耐食性に優れ、しかもNiを含まず、安全性が高く、低侵襲的に適用する場合に、挿入時、留置状態、あるいは取出し時に生じる大変形で永久変形を起こさず、インターベンションで優れた機能を発揮することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る生体軟組織用医療用具は、
生体軟組織に直接または間接に接触して使用され、適用時、留置状態、あるいは取出し時のいずれかの時点で、大きな歪を受ける生体軟組織用医療用具であって、
少なくとも前記歪を受ける部位が、Niを含有しない非晶質合金で構成してあり、前記非晶質合金の比例限界伸びが1.5%以上あり、ヤング率が100GPa以下であることを特徴とする。
【0012】
なお、比例限界伸びとは、材料に外力が加わった後、外力が開放されると、元の形状を回復し、永久歪を起こさない限界の歪量のことを言う。
【0013】
好ましくは、少なくとも体積率50%以上の非晶質相を含む実質的に非晶質の合金で、下記一般式(1)で示される組成を有するアモルファス合金であって、一般式(1)がM1aM2bM3cM4dM5eであり、
但し、M1はZr、Hf及びTiから選ばれる1種、2種又は3種の元素、M2はCu、Fe、Co、Mn、Nb、V、Cr、Zn、Al、Sn、及びGaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M3はB、C、N、P、Si及びOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M4はTa、W及びMoよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M5はAu、Pt、Pd及びAgよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、a、b、c、d及びeはそれぞれ原子%で、25≦a≦85、15≦b≦75、0≦c≦30、0≦d≦15、0≦e≦15である。
【0014】
更に、好ましくは、前記非晶質合金は、Zr、Al及びCuから成る三元系合金を主成分とし、前記主成分中にZrが、40原子%〜55原子%、Alが5原子%〜15原子%、Cuが30原子%〜50原子%含まれ、前記合金を構成するZr、Al及びCuの内の一部がHf、Ti、Fe及びCoのいずれかに置き換えられることができる。
【0015】
従来、弾性率が低く柔軟で、比例限界伸びが1.5%以上の材料は少なく、僅かにNiTi超弾性材料などが、1.5%以上の比例限界伸びを有している。しかしながら、実用的な超弾性合金であるNiTi合金は、およそ50%のNiを含み、患者によっては、生体への長期留置安全性が課題になっている。
【0016】
本発明の医療用具を構成する非晶質合金は、Niを含まないので、極めて安全性が高い。また、本発明の非晶質合金は、比例限界伸びが1.5%以上であり、ヤング率が100GPa以下であるため、生体軟組織によくなじみ、低侵襲的に適用する場合に、その挿入時、留置状態、あるいは取出し時に生じる大変形で永久変形を起こさず、インターベンションで優れた機能を発揮する。また、耐食性に優れ、長期間の留置にも適している。
【0017】
本発明の生体軟組織用医療用具の具体的な用途は、特に限定されず、心臓血管系留置治療医療用具のみならず、たとえばスタイレット、スネアー、バスケット、生検ブラシなどのように消化器内視鏡的手技に用いる医療用具、或いは、ガイドワイヤーなど、インターベンショナルラジオロジー関連の処置具などの用途にも有効である。これらは、比較的細いカテーテル内腔や内視鏡内腔を通して、湾曲する生体管状器官に送り込まれ、そこで機能を発揮し、取り出される過程で、比較的大きな歪を受け、また、管状体組織内面等を傷つけないことが要求される。
【0018】
本発明の生体軟組織用医療用具は、心臓血管系留置治療医療用具として用いられる。この医療用具としては、特に限定されないが、たとえばステント、ステントグラフト、塞栓コイル、あるいは心房中核欠損・動脈管開存在症などの先天性奇形治療用補綴材などが例示される。
【0019】
これらの医療用具は、線径あるいは箔の厚さが0.05mm〜0.5mm程度であり、R=50mm程度に曲げられると想定すると、歪量が1.5〜5%程度と推定される。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の1実施形態に係るステントの概略斜視図、
図2(A)および図2(B)はステントの使用状態を示す要部断面図、
図3は本発明の他の実施形態に係る欠損補綴材の概略斜視図である。
【0021】
第1実施形態
図1に示すように、本実施形態に係る循環器系医療用具としてのステント2は、生体の管腔内に留置される全体として略円筒形状のステントであって、第1ステント要素4と第2ステント要素6とを有する。第1ステント要素4および第2ステント要素6が、医療用具本体を構成する。
【0022】
第1ステント要素4は、周方向に沿って存在し、外径が拡張可能な形状を持ち、外径が拡張された後には潰れ難い材質で構成してある。外径が拡張可能な形状としては、特に限定されないが、具体的には、円周方向に沿って波形形状、山谷形状、サイン・コサインカーブ形状、ジグザグ形状、連珠状、鋸歯形状、パルス形状、またはこれらの組み合せ、またはその他の繰り返し形状などでも良い。
【0023】
本実施形態では、第1ステント要素4は、特定の非晶質合金で構成してある。この非晶質合金は、少なくとも体積率50%以上の非晶質相を含む実質的に非晶質の合金で、下記一般式(1)で示される組成を有するアモルファス合金であって、一般式(1)がM1aM2bM3cM4dM5eであり、
但し、M1はZr、Hf及びTiから選ばれる1種、2種又は3種の元素、M2はCu、Fe、Co、Mn、Nb、V、Cr、Zn、Al、Sn、及びGaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M3はB、C、N、P、Si及びOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M4はTa、W及びMoよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M5はAu、Pt、Pd及びAgよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、a、b、c、d及びeはそれぞれ原子%で、25≦a≦85、15≦b≦75、0≦c≦30、0≦d≦15、0≦e≦15である。
【0024】
更に、好ましくは、前記非晶質合金は、Zr、Al及びCuから成る三元系合金を主成分とし、前記主成分中にZrが、40原子%〜55原子%、Alが5原子%〜15原子%、Cuが30原子%〜50原子%含まれ、前記合金を構成するZr、Al及びCuの内の一部がHf、Ti、Fe及びCoのいずれかに置き換えられることができる。
【0025】
図1に示すように、第2ステント要素6は、軸方向に配置された複数の前記第1ステント要素4を軸方向に接続するためのステント要素であり、本実施形態では、第1ステント要素と同じ材質で構成してある。
【0026】
第1ステント要素4の幅および/または厚みは、好ましくは30〜400μm、さらに好ましくは50〜100μmであり、第2ステント要素6の幅および/または厚みは、好ましくは20〜100μm、さらに好ましくは30〜60μmである。各第1ステント要素4を構成する繰り返し単位の軸方向単位長さLlは、特に限定されないが、好ましくは0.5〜5mm、さらに好ましくは0.8〜2mmである。第2ステント要素6の軸方向長さL2は、特に限定されないが、好ましくは0.5〜5mm、さらに好ましくは1.5〜3mmである。なお、第2ステント要素6は、必ずしもステントの中心軸に平行な直線である必要はなく、斜めの直線、曲線、またはこれらの組み合わせ形状であっても良い。
【0027】
本実施形態では、第2ステント要素6は、第1ステント要素4よりも、周方向に沿って疎に配置してある。たとえば第1ステント要素4の周方向に、第2ステント要素6を2〜6個を配置することが好ましい。また、第2ステント要素6は、第1ステント要素4における繰り返し単位の山部同士を接続しても良いし、谷部同士、または山部と谷部とを接続しても良く、また、山谷の途中を接続しても良い。
【0028】
ステント2の全体の寸法は、使用目的などに応じて適宜決定され、特に限定されないが、たとえば冠状動脈治療用に用いる場合には、ステント2の拡張時の外径は、好ましくは2〜5mm、軸方向長さは15〜40mmである。また、末梢血管治療用ステントの場合には、ステント2の拡張時の外径は、好ましくは3〜10mm、軸方向長さは15〜40mmである。また、大動脈治療用ステントの場合には、ステント2の拡張時の外径は、好ましくは5〜30mm、軸方向長さは30〜100mmである。
【0029】
ステント2を構成する第1ステント要素4および第2ステント要素6の表面は、メッキ膜および/または生体適合性コーティング膜で被覆しても良い。生体適合性を向上させるためである。また、メッキ膜としては、白金または金メッキ膜が用いられる。生体適合性コーティング膜としては、特に限定されないが、たとえばポリエチレンなどのオレフィン類、ポリイミドやポリアミドなどの含窒素ポリマー、シロキサンポリマーなど、医療用として用いられる通常のポリマーなどが用いられる。また、コーティング膜としては、ポリマーに限定されず、炭化珪素、パイロライトカーボンやダイアモンドライクカーボンなどのカーボンなど、無機物のコーティング膜であっても良い。さらに、ステント2の表面を、親水化処理しても良いし、ステント2の表面に、酵素や生体成分、あるいは再狭窄を防止する薬剤を固定しても良い。これらの膜厚は、特に限定されないが、メッキ膜の膜厚は、たとえば0.05〜5μm程度であり、生体適合性コーティング膜の膜厚は、0.1〜10μm程度、好ましくは0.5〜5μmである。
【0030】
次に、本実施形態のステントの製造方法について説明する。
まず、第1ステント要素4および第2ステント要素6から成る医療用具本体の原材料となる非晶質合金を製造する。この非晶質合金を製造するには、材料成分粉末を高周波溶解炉などで溶解し、その溶解した合金組成物をメルトスピン法、または鋳造法によってリボン材(箔帯)または、薄板に急冷し成形する。これらをYAGレーザー溶接等によって、パイプ状に成形し、金属チューブ(厚みが50〜400μm)を形成する。
【0031】
次に、この金属チューブを、YAGレーザあるいはファントム秒レーザなどで所定パターンに切削加工して、図1に示すステント2を得ることができる。
【0032】
次に、本実施形態に係るステントの使用例を説明する。
図2(A)に示すように、ステント2は、まず、半径方向に収縮状態で、バルーンカテーテル12のバルーン部10の外周に装着され、その状態で、バルーンカテーテル12が血管20などの体腔内部に挿入される。その後、ステントは、バルーンカテーテル12のバルーン部10と共に、最大で90度以上に屈曲する血管20の内部を通過し、最終的には、血管20の狭窄部22に到達する。本実施形態に係るステント2では、主として第2ステント要素6が、血管20の屈曲形状に合わせて容易に屈曲し、目的とする狭窄部22に位置させた後で、その元の形状を回復する。したがって、ステント2の屈曲追随性および挿入特性が向上する。
【0033】
その後、図2(B)に示すように、バルーン部10の拡張と共に狭窄部22が拡張し、ステント2も同時に半径方向外方に拡張する。その後、バルーンカテーテル12のみを血管20内から抜き取り、拡張されたステント2のみを、拡張された狭窄部22の内部に留置し、再狭窄を防止する。本実施形態では、ステント2における第1ステント要素4が、拡張後の狭窄部が元に戻ろうとする力を抑制する部分であり、容易には潰れない材質で構成してあるため、再狭窄を有効に防止することができる。
【0034】
本実施形態では、第1ステント要素4および第2ステント要素6が、前記の非晶質合金で構成してあり、Niを含まないので、極めて安全性が高い。また、この非晶質合金から成る第1ステント要素4および第2ステント要素6は、比例限界伸びが1.5%以上であり、ヤング率が100GPa以下であるため、生体軟組織によくなじみ、その挿入時において曲がりくねった血管を通過する際に生じる大変形で永久変形を起こさず、目的とする部位で適切に使用することができる。また、この非晶質合金から成る第1ステント要素4および第2ステント要素6は、耐食性に優れ、長期間の留置にも適している。
【0035】
なお、ステント2の具体的な形態は、図1に示すものに限定されず、螺旋状、六角形一重累積構造、六角形二重累積構造など、種々の形態が考えられる。
【0036】
第2実施形態
図3に示すように、本実施形態に係る循環器系医療用具としての欠損補綴材30は、メッシュを構成するワイヤ32を有する。ワイヤ32を編み込むことにより、図3に示すように、第1ディスク34と第2ディスク36と、これらの間に形成される凹部38とが形成され、全体として鼓形状の医療用具本体が構成される。図3は、欠損補綴材30が拡張された状態を示し、体腔壁40に、たとえば先天的に形成された孔を塞ぐことが可能になっている。体腔壁40の孔に通す前の状態の欠損補綴材30は、外径が収縮された状態で、カテーテルなどにより体腔壁40の孔に運ばれ、そこで拡張される。
【0037】
本実施形態では、医療用具本体としてのワイヤ32が、前記第1実施と同様な非晶質合金で構成してある。
【0038】
本実施形態に係る欠損補綴材30でも、ワイヤ32が、前記の非晶質合金で構成してあり、Niを含まないので、極めて安全性が高い。また、この非晶質合金から成るワイヤ32は、比例限界伸びが1.5%以上であり、ヤング率が100GPa以下であるため、生体軟組織によくなじみ、その挿入時において曲がりくねった血管を通過する際に生じる大変形で永久変形を起こさず、目的とする部位で拡張して適切に使用することができる。また、この非晶質合金から成るワイヤ32は、耐食性に優れ、長期間の留置にも適している。
【0039】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、医療用具としては、図示する実施形態に限定されず、種々の生体軟組織用医療用具が考えられる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0041】
実施例1
まず、図1に示す第1ステント要素4および第2ステント要素6から成る医療用具本体の原材料となる非晶質合金を製造した。この非晶質合金を製造するために、材料成分の金属塊を高周波溶解炉で溶解し、母合金塊とした。これを、鋳造機で、再度、溶解、射出成形して板材に成形した。
【0042】
この板材の主組成は、Zr、AlおよびCuから成る三元系合金組成であり、主成分中に、Zrが45原子%、Alが10原子%、Cuが45原子%含まれていた。これを薄板に成形加工し、その薄板をYAGレーザー溶接等でパイプ状に成形し、押出加工などで金属チューブ(厚みが80μmで外径が3mmで長さが15mm)を形成した。
【0043】
次に、この金属チューブを、YAGレーザで所定パターンに切削加工および化学研磨し、図1に示すステント2のサンプルを得た。
【0044】
このステント2のサンプルについて、以下の評価を行った。
(1)ヤング率および比例限界伸び
サンプルを構成する線材について、JIS(Z−2241)に基づき、ヤング率および比例限界伸びを求めた。実施例1のヤング率は、100GPa以下である88GPaであった。また、実施例1の比例限界伸びは、1.5%以上である2.2%であった。結果を表1に示す。
【0045】
(2)耐食性試験
脱気したハンクス(Hanks)液中に、加工前の金属チューブをサンプルとして浸し、サンプルの分極試験を行った。
【0046】
通常の体液循環環境での各試料の電位は、本分極曲線における自然浸漬電位(Eopen)付近であると考えられる。そこで、自然浸漬電位(Eopen)での材料の耐腐食性に相応する分極抵抗(Rp)をEopenでの電流密度の傾きから求めた。結果を表2に示す。表2に示す実験は、JIS G0579−1983に準拠し、Hanks液でのアノード分極試験として行った。Hanks液は、N2ガス/通気脱気、310Kの条件であった。なお、表2におけるRpは、分極抵抗であり、Eopenは自然浸漬電位であり、Vvs.SCEは飽和カロメル電極基準の電位の単位であり、Epitは孔食電位である。
【0047】
表2に示すように、実施例1のサンプルを構成する材料のRpはステンレスよりも一桁高く、純Tiよりも数倍高いことが確認された。また、実施例1のサンプルの不働態維持電流密度は純Tiと同等以上であることが分かった。
【0048】
なお、ステンレスおよびNi−Ti合金では、Niを含むために、生体内に長期間留置する生体軟組織用医療用具としては好ましくない。また、純Tiは、一般的に硬く、生体軟組織に留置し難いと共に、加工性が悪い。
【0049】
(3)挿入性
ステントのサンプルをデリバリーカテーテルに装着し、それを、生理食塩水中の疑似血管の内部に5回挿入し、挿入性が良好であることが確認できた。結果を表1に示す。
【0050】
なお、疑似血管は、末梢血管から冠状動脈までを模擬した疑似血管であり、角度113度の曲折部が水平方向距離30mmおきに3個存在するジグザグ状の内径2.5mmのシリコン製疑似血管であった。それぞれの曲折部における外側の曲率が12mmであり、内側の曲率が8mmであった。
【0051】
(4)圧壊強さ・柔軟さ
ステントのサンプルを、模擬冠状動脈の上からR=2.5で180度曲げ、戻した後の潰れ具合を評価した。実施例1では、潰れが観察されなかった。潰れが観察されなかったものを、表1において、○で示し、潰れが観察されたものを表1において、×で示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
実施例2
第1ステント要素4および第2ステント要素6から成る医療用具本体を構成する非晶質合金を、主成分中に、Zrが50原子%、Alが10原子%、Cuが40原子%含まれているものとした以外は、実施例1と同様にしてステントのサンプルを作製し、同様な評価を行った。
【0055】
実施例2のヤング率は、100GPa以下である85GPaであった。また、実施例2の比例限界伸びは、1.5%以上である2.2%であった。実施例2のサンプルを構成する材料のRpはSUSよりも一桁高く、純Tiよりも数倍高いことが確認された。また、実施例2のサンプルの不働態体維持電流密度は純Tiと同等以上であることが分かった。また、実施例2でも、挿入性が、良好であった。さらに、圧壊強さ・柔軟さの特性に関して、実施例2でも、ステントの潰れは観察されなかった。
【0056】
実施例3
第1ステント要素4および第2ステント要素6から成る医療用具本体を構成する非晶質合金を、主成分中に、Zrが45原子%、Hfが5原子%、Alが10原子%、Cuが40原子%含まれているものとした以外は、実施例1と同様にしてステントのサンプルを作製し、同様な評価を行った。
【0057】
実施例3のヤング率は、100GPa以下である92GPaであった。また、実施例3の比例限界伸びは、1.5%以上である2.0%であった。実施例3のサンプルを構成する材料のRpはSUSよりも一桁高く、純Tiよりも数倍高いことが確認された。また、実施例3のサンプルの不働態体維持電流密度は純Tiと同等以上であることが分かった。また、実施例3でも、挿入抵抗が、良好で、さらに、圧壊強さ・柔軟さの特性に関して、実施例3でも、ステントの潰れは観察されなかった。
【0058】
実施例4〜6
第1ステント要素4および第2ステント要素6から成る医療用具本体を構成する非晶質合金を、表1に示す組成とした以外は、実施例1と同様にしてステントのサンプルを作製し、同様な評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
これらの実施例ではヤング率は、100GPa以下である92〜95GPaであった。また、比例限界伸びは、1.5%以上である2.0%であった。サンプルを構成する材料のRpはSUSよりも一桁高く、純Tiよりも数倍高いことが確認された。また、これらのサンプルの不働態体維持電流密度は純Tiと同等以上であることが分かった。また、いずれの実施例でも、挿入抵抗が、良好であった。さらに、圧壊強さ・柔軟さの特性に関して、いずれの実施例でも、ステントの潰れは観察されなかった。
【0060】
比較例1〜3
第1ステント要素4および第2ステント要素6から成る医療用具本体を構成する非晶質合金を、表1に示す組成とした以外は、実施例1と同様にしてステントのサンプルを作製し、同様な評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
これらの比較例では、ヤング率が120GPaを越えたり、測定不能であったり、比例限界伸びが1.5%未満であったりして、柔軟性及び挿入性の点で、実施例1〜6に比較して劣っていた。
【0062】
比較例4
第1ステント要素4および第2ステント要素6から成る医療用具本体を、純チタンで形成した以外は、実施例1と同様にしてステントのサンプルを作製し、同様な評価を行った。
【0063】
この比較例のヤング率は、110GPaであった。また、この比較例の比例限界伸びは、10%であった。この比較例に係るステントは、変形に対する抵抗性が低く、挿入性、圧壊強さ、柔軟さの点で、実施例1〜6に比較して劣っていた。すなわち、純Tiから成るステントは、一般的に硬く、生体軟組織に留置し難いことが確認された。また、純チタンでは、加工性が悪いと共に高価である。
【0064】
実施例7
まず、図3に示すワイヤ32から成る医療用具本体の原材料となる非晶質合金を製造した。この非晶質合金を製造するために、材料成分粉末を高周波溶解炉で溶解し、その溶解した合金組成物を過冷却ゾーンから追い出し成形して線材に成形した。
【0065】
この線材の主組成は、Zr、AlおよびCuから成る三元系合金組成であり、主成分中に、Zrが45原子%、Alが10原子%、Cuが45原子%含まれていた。これをさらに線引き加工し、線径50μmの線材を形成した。
【0066】
次に、この線材を編み込み、図3に示すような鼓形状にし、内面にポリエチレンメッシュを固定し、図3に示す欠損補綴材30のサンプルを得た。
【0067】
この欠損補綴材30のサンプルについて、実施例1と同様な評価を行った。 結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
実施例8〜12
欠損補綴材30のワイヤ32を構成する非晶質合金を、表3に示す組成とした以外は、実施例7と同様にして欠損補綴材30のサンプルを作製し、同様な評価を行った。結果を表3に示す。実施例7と同様な結果が得られた。
【0070】
比較例5〜7
欠損補綴材30のワイヤ32を構成する非晶質合金を、表3に示す組成とした以外は、実施例7と同様にして欠損補綴材30のサンプルを作製し、同様な評価を行った。結果を表3に示す。
【0071】
これらの比較例では、ヤング率が100GPaを越えたり、比例限界伸びが1.5%未満であったりして、挿入性、安定性、圧壊強さの点で、実施例7〜12に比較して劣っていた。
【0072】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、生体軟組織に良くなじみ、また、耐食性に優れ、しかもNiを含まず、生体への影響が少ないと考えられ、低細胞毒性であり、低侵襲的に適用する場合に、その挿入時、留置状態、あるいは取出し時に生じる大変形で永久変形を起こさず、インターベンションで優れた機能を発揮することができる生体軟組織用医療用具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の1実施形態に係るステントの概略斜視図である。
【図2】図2(A)および図2(B)はステントの使用状態を示す要部断面図である。
【図3】図3は本発明の他の実施形態に係る欠損補綴材の概略斜視図である。
【符号の説明】
2… ステント
4… 第1ステント要素
6… 第2ステント要素
10… バルーン部
12… バルーンカテーテル
20… 血管
22… 狭窄部
30… 欠損補綴材
32… ワイヤ
Claims (3)
- 生体軟組織に直接または間接に接触して使用され、適用時、留置状態、あるいは取出し時のいずれかの時点で、大きな歪を受ける生体軟組織用医療用具であって、
少なくとも前記歪を受ける部位が、Niを含有しない非晶質合金で構成してあり、前記非晶質合金の比例限界伸びが1.5%以上あり、ヤング率が100GPa以下であることを特徴とする生体軟組織用医療用具。 - 少なくとも体積率50%以上の非晶質相を含む実質的に非晶質の合金で、下記一般式(1)で示される組成を有するアモルファス合金であって、一般式(1)がM1aM2bM3cM4dM5eであり、
但し、M1はZr、Hf及びTiから選ばれる1種、2種又は3種の元素、M2はCu、Fe、Co、Mn、Nb、V、Cr、Zn、Al、Sn、及びGaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M3はB、C、N、P、Si及びOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M4はTa、W及びMoよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M5はAu、Pt、Pd及びAgよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、a、b、c、d及びeはそれぞれ原子%で、25≦a≦85、15≦b≦75、0≦c≦30、0≦d≦15、0≦e≦15である請求項1記載の生体軟組織用医療用具。 - 心臓血管系留置治療医療用具として用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の生体軟組織用医療用具。
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