JP2005027503A - 緑化システム - Google Patents
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Abstract
【課題】人工地盤の緑化が可能な軽量で、管理が容易で、夏の高温乾燥にも耐えて植物が立ち枯れすることなく緑化が可能な緑化システムを得る。
【解決手段】建築物を覆う緑化システムにおいて、繊維シートあるいは3次元構造体マットに粒径が0.3〜50mmである多孔質セラミック粒子と土壌を鋤き込みこれに植物を植え込む。
【選択図】なし
【解決手段】建築物を覆う緑化システムにおいて、繊維シートあるいは3次元構造体マットに粒径が0.3〜50mmである多孔質セラミック粒子と土壌を鋤き込みこれに植物を植え込む。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薄い土壌層や部分土壌で構成された緑化システムに関する。特に人工地盤の緑化システムに関する。
【0002】
【従来の技術】都市のヒートアイランド現象の対策、建物の冷暖房エネルギーの節減、緑の環境を得るためといった目的で、種々の緑化システムが提案されている。これらのシステムはかなりの多量の土壌を用いるものであり、建築物の重量制限のため設置場所が限られる問題がある。また、土壌層を薄くし軽量にした緑化システムは、夏場に植物が枯れる、あるいは勢いが弱くなり夏場のヒートアイランド現象の軽減には役に立たないといった問題がある。また、透水(給水)が均一にできず、一部は水が不足し植物が枯れてしまい、他の部分は水が多すぎ根腐れを起こすといった問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は人工地盤の緑化が可能な軽量で、管理が容易で夏の高温、乾燥にも耐えて植物が立ち枯れすることがない緑化システムを得ることを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記の課題が以下の手段により達せられることを見出した。(1)粒径が0.3〜50mmである多孔質セラミック粒子を含有する緑化システムによる。(2)該多孔質セラミック粒子がセラミック破砕粒子である前項(1)に記載の緑化システムによる。(3)該多孔質セラミック粒子の空隙率が5〜60%である前項(1)〜(2)の緑化システム。(4)該多孔質セラミック粒子の孔の径が0.1〜700μmである前項(1)〜(3)に記載の緑化システムによる。(5)該多孔質セラミック粒子のかさ比重が1.1〜2.9である前項(1)〜(4)に記載の緑化システムによる。(6)耐根シートの上に、該多孔質セラミック粒子層を設け、その上に土壌層を設ける前項(1)〜(5)に記載の緑化システムによる。(7)耐根シートの上に、スパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)を敷き、その中に該多孔質セラミック粒子を敷き、その上に土壌層を設ける前項(6)に記載の緑化システムによる。
【0005】(8) 重量が180kg/m2満以下である(1)〜(7)に記載の緑化システムによる。(9) 繊維シートに該多孔質セラミック粒子と土壌をすき込み、それに植物を植え付けたシート状の植生マットを用いた前項(1)〜(8)に記載の緑化システムによる。(10) 該多孔質セラミックが少なくとも1種の粘土、および少なくとも1種の炭素材料を混合し、700℃以上の高温で焼成したものである前項(1)〜(9)に記載の緑化システムによる。(11) 該多孔質セラミックが粒子が、製紙産業廃棄物焼却灰を原料として、焼成して得た前項(1)〜(10)に記載の緑化システムによる。該製紙産業廃棄物焼却灰は特に限定される訳ではないが、例えば古紙パルプを製造する工程で発生する汚泥物を焼却して得た焼却灰が挙げられる。(12)Cuイオンおよび/またはZnイオンを含有する複合金属酸化物あるいは複合金属水酸化物である無機系抗菌剤を少なくとも一種含有する前項(1)〜(11)に記載の緑化システムによる。
【0006】本発明の緑化システムに用いられる多孔質セラミック粒子について述べる。多孔質セラミック粒子とは、素材がセラミックであり、多孔質で微細な孔が空いているものである。該多孔質セラミック粒子はいかなる方法で粒子が作製されても良いが、保水性、排水性、透水性、植物の根付き等の性能、取り扱い性、経済性の観点より、ある大きさのセラミックを破砕して粒子にした物が好ましい。特に、セラミックを成形した後に、破砕して得た多孔質セラミック破砕粒子が好ましい。この多孔質セラミック粒子は保水性、排水性、透水性、植物の根付きに優れており、緑化システムに好ましく用いることができる。
多孔質セラミック粒子の粒径は0.3〜50mmが好ましく、0.5〜20mmがより好ましく、1〜10mmが最も好ましい。全ての粒子がこの粒径範囲に入る必要はないが、体積で90%以上の粒子がこの粒径範囲に入ることが好ましい。粒径が大き過ぎると層が厚くなりすぎる、あるいは粒子間の連結が不十分になり給水が均一にならないことがあり好ましくない。小さすぎると粒子の脱落があり、また層としての安定性が損なわれるため好ましくない。
多孔質セラミック粒子の空隙率は保水性、排水性、透水性およびその取り扱い性、さらには植物の根付きを左右する重要な因子である。多孔質セラミック粒子の空隙率は5〜60%が好ましく、20〜60%がより好ましく、25〜50%が最も好ましい。
多孔質セラミック粒子の孔の径は0.1〜700μmが好ましく、0.5〜200μmがより好ましい。孔の径が大きすぎると毛細管現象が十分に働かず給水が均一に行き渡らない場合があり好ましくない。孔の径が小さ過ぎると水が浸透し難く保水力、給水力が落ちるので好ましくない。
多孔質セラミック粒子のかさ比重は1.1〜2.9が好ましく、1.4〜2.0がより好ましい。
【0007】この多孔質セラミックの製造方法は、粘土および炭素材料を混合し、700℃以上の高温で焼成する方法である。この焼成の際に、炭素と粘土に含まれていたミネラル成分の一部が高温で消失し、消失した後が0.5〜100μm程度の微細な孔になり、多孔質セラミックが得られる。この得られた多孔質セラミックを粒子として用いるためには、焼成により生成した粒子をそのまま用いることができるが、焼成後の塊あるいは成形された多孔質セラミックを破砕し粒子状にして用いることが好ましい。即ち焼成時の原料としては、粘土および炭素材料が必須であり、これに珪藻土、シャモット、製紙産業廃棄物焼却灰のいずれかを、あるいはそれらの2種以上を併用することにより、微細な孔がより多数得られるのでより好ましい。
【0008】本発明の多孔質セラミックの製造に用いられる粘土としては、カオリン系、バイロフィライト系、セリサイト系、タルク、焼成クレー等が挙げられる。また、古紙パルプを製造する工程で発生する汚泥物を焼却して得た製紙産業廃棄物焼却灰を原料に用いることは、より微細な孔を得られることと、産業廃棄物を有効に利用できる点で好ましい。
【0009】本発明品の多孔質セラミックの製造法の一例を示す。粘土に重量比でペーパースラッジ灰を10%から15%と、炭素(炭素の原料は木屑、おが屑、籾殻、古紙等、何でもよい)を水分5%以内の乾燥度で0.5%から3%、珪藻土15%から20%、シャモット15%から20%、および着色顔料等を調合混合し、成形プレスをして高温焼成する。炭素とペーパースラッジ灰の灰分は、高温焼成の過程で完全に燃焼消滅し、その跡が0.5μmから100μm位の微細な細孔を形成する。なお、天然の多孔質構造である珪藻土も微細な細孔を増加させ、ペーパースラッジ灰の主成分である高級粘土質のカオリンは紙の有機物と微細な形状で完全に混合しているために、高温焼成時点で微細な細孔を形成した多孔質構造のセラミックス材料になる。また、一度高温焼成し磁器質にして粉砕したシャモットおよび前記のカオリンは微細な細孔を保持したまま未焼成粘土と混合しており、未焼成粘土の溶融が進行していく中で、このシャモットおよび前記のカオリンは溶融点が高いために中心の柱的存在のまま溶融結合して多孔質構造を形成する。
【0010】炭素材料としては、木屑、おが屑、籾殻、古紙等の天然のもの、活性炭、木炭、竹炭、黒鉛、あるいは綿,麻,セルロース,ジュート、毛,絹等の天然繊維,アセテート,レーヨン等の再生繊維等、いずれも好ましい。
【0011】焼成時には、粘土および炭素材料等は水分を5重量%以内にし、よく混合した後、適切な形に成形した状態で焼成することが好ましい。焼成の条件は、温度は700〜1600℃が好ましく、700〜1400℃がより好ましく、900〜1250℃が最も好ましい。焼成雰囲気は、炭素を燃焼させるためには酸素が必要であるので大気条件が好ましい。
【0012】板状、ブロック状等の形に成形して焼成し、焼成後に破砕し多孔質セラミック粒子を得ることが好ましい。 板状、ブロック状等の形のまま、緑化システムに用いることもできるが、粒子状で用いた場合に比べ植物の根付きが劣るので、粒子状で用いる方が好ましい。粒子サイズとしては0.3〜50mmが好ましく、1〜30mmがより好ましく、2〜15mmが最も好ましい。粒子サイズが小さい場合は、施工後に流出、飛散する畏れがあり、また大きい場合は多孔質セラミック粒子層を十分薄くできないため好ましくない。ただし、粒子サイズの分布が大きくても、支障は余りないので、多少の大小粒子の存在は大きな問題にはならない。粒子形状は表面積が大きい物が植物の根付きが容易なため好ましい。作製の容易さから考えて、板、ブロック状等の大きなものを、破砕して作製された破砕粒子は表面積も大きく好ましい。
【0013】これらの本発明の多孔質セラミックとしては、特開平11−152879号、特開2000−342959号、特開2003−102265号に記載のものはいずれも好ましい。
【0014】本発明の緑化システムは耐根シート、排水層、多孔質セラミック粒子層、土壌層、植物層、目土層を有することができる。ただし、排水層は必ずしも必要なく、本発明の多孔質セラミック粒子層で保水層、透水(給水)層および排水層を兼ねることができる。また、傾斜面に本発明の緑化システムを設置する場合は、排水層を用いない方が水持ちが良く好ましい。本発明の多孔質セラミック粒子層は保水性、透水(給水)性および排水性に優れているため、少量の水で植物の生育が可能であり、また透水(給水)性が良好なため、一部に給水すれば広い面積に水が行き渡るため、管理が容易な緑化システムを実現できる。本発明の多孔質セラミック粒子層は保水、排水、透水(給水)の機能を兼ねることができる。
【0015】本発明の緑化システムを施工する際には、土壌の飛散等を防止する目的で、緑化システムをシート、金網等で覆うことができる。これらの、シート、金網は景観を損なうので、植物が成長した後には無くなることが好ましい。そのためには、分解性のシートを用いることが好ましい。この分解性は生分解性、光分解性のいずれも好ましい。分解性のシートとしては紙、天然繊維、合成繊維等の不織布、織物等の、生分解性あるいは光分解性のシートが好ましい。
【0016】多孔質セラミック粒子層には多孔質セラミック粒子以外に、後で述べるスパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)等の物理的強度がある程度大きく、連続した空隙の大きい構造体を用いることが好ましい。これにより、人がこの緑化システムを踏んだような場合にも、耐根シートを破損することがなく好ましい。こういうスパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)のような十分な物理強度の構造体を敷設しない場合は、人が緑化システムを踏んだ場合に、小石等により耐根シートに容易に孔が開き好ましくない。また、スパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)の高さを多孔質セラミック粒子層の厚さと同じにすれば、現場施工の際に多孔質セラミック粒子層の厚さを所定の値に容易にでき、かつ均一な厚みを実現できる。
【0017】本発明に用いられるスパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)とは、不織布等のシート上に、径が0.1mm程度以上の繊維が絡まった状態で5〜50mmの高さで3次元の構造体を作っている物で、軽く手で押さえた位では潰れない構造のものである。スパイラル状の3次元構造体はプラスチック製や天然の繊維等のいづれでも良い。プラスチックとしてはポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、塩化ビニルその他いかなるものでもよいが、ポリアミドが好ましい。
また施工の際に排水の目的でスパイラル状の3次元構造体を植生マットの下に敷くこともできる。これにより、緑化システムの強度を一定以上に保て、多孔質セラミック粒子および土壌等を保持できる。さらに、この構造体は空隙が連続しており、また空隙率が大きいため保水、透水(給水)、排水を妨げず好ましい。
【0018】本発明の緑化システムの土壌層は、軽量化のため薄い方が好ましいが、植物の種類により当然必要な厚みが異なる。本発明の多孔質セラミック粒子層は、保水性、排水性、透水(給水)性がいずれも優れているため、本発明の多孔質セラミック粒子層により土壌層の薄層化が可能になった。土壌層の厚みは5〜200mm程度であり、好ましくは5〜100mmである。土壌層には、土壌以外に、土壌改良材、肥料、土壌菌、抗菌剤、保水材、飛散防止のための繊維類を含ませることができる。
【0019】耐根シートの素材としては、綿,麻,セルロース,ジュート、毛,絹等の天然繊維,カーボン繊維,アセテート,レーヨン等の再生繊維,ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル等のビニール類、ポリエステル,ポリアミド(ナイロン),アクリル等の合成プラスチックが挙げられる。これらの耐根シートの耐久性が不十分な場合は建築物の建材、防水構造を損傷することがある。
【0020】本発明の緑化システムに植生マットを用いることができる。植生マットとは不織布等の繊維状のシートあるいは前記のスパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)に薄く土壌をすき込み、それに植物を植え付けたものである。これにより、施工後の生育、根付きが容易になり、かつ施工場所への運搬も、施工自体も容易になる。例えば、不織布等の繊維状のシートの上に5〜100mm程度の土壌を敷き、それにセダム、ハーブ、芝生等の植物が生育されており、マットとして植物を植え込んだ状態で移動可能なものである。その総厚みは5〜300mmが好ましく、10〜200mmがより好ましく、15〜70mmがさらに好ましい。この植生マットを使用すると、緑化システムの施工が容易であり、かつ予め生育させた植物を用いることができ、施工後の根付き不良、立ち枯れといった問題を回避することができる。本植生マットには本発明の多孔質セラミック粒子を含ませることも好ましい。その場合、多孔質セラミック粒子と土壌は別の層を形成しても、同一の層内で混合してても良く、別の層の場合はどちらが上になっても良い。ただし、多孔質セラミック粒子層の上に土壌を載せ植物を植える(撒く)ことが、植物の根付き、保水、透水(給水)、排水性を向上させる点で好ましい。
【0021】植生マットに用いる繊維質のシートの繊維素材としては、綿,麻,セルロース,ジュート、毛,絹等の天然繊維,カーボン繊維,アセテート,レーヨン等の再生繊維,ポリエステル,ポリアミド(ナイロン),アクリル等の合成繊維が採用可能である。 また、綿,麻,セルロース,ジュート,毛,絹等の天然繊維,合成繊維のカーボン繊維,アセテート,レーヨン等の再生繊維がより好ましく、綿,麻,セルロース,ジュート,レーヨン,アセテートがさらに好ましく、綿,麻,セルロース,ジュートが特に好ましい。そして、剛性の強い層にはジュートを含有するのが好ましい。
【0022】本発明の緑化システムには肥料を用いることができる。肥料の例としては、堆肥、コーヒー滓、粒状(例えば万理(商品名))等の有機肥料、コーティング肥料(被覆複合肥料)、チッソ肥料、リン酸肥料、カリ肥料等の無機の肥料がある。
【0023】本発明の緑化システムに土壌菌を用いることができる。土壌菌の例としては菌根菌類、窒素固定細菌、VA菌根菌、アゾ菌類、アゾスピルラム菌(Dr.キンコン(商品名))、フランキア菌、マメ科根粒菌、ブリオ種が挙げられる。
【0024】本発明の緑化システムには土壌改良材を用いることができる。土壌改良材としては、ピートモス、バーライト、バーミキュライト、珪藻土組成物、バーク、パーライト、ゼオライト、ロックウール、スポンジ、ヤシ殻、クリプトモス日高砂等の軽石類、古紙成分、植物室天然有機物(ピートモス鋸屑、籾殻、バガス、間伐材、)水苔粉末、ヤシ髄粉末、パルプ繊維、種子リンター、層状粘土鉱物、多孔質鉱物、沸石類(ゼオライト)、モンモリロナイト系の粘土系鉱物、木炭,活性炭,石,れき,コンクリート等、多孔質鉱物(シリカ、アルミナ、ウィスカー等の結晶性化合物、珪藻土のような堆積物)が挙げられる。
【0025】本発明の緑化システムは多孔質セラミック破砕粒子以外の保水材を用いることができる。保水材としては古紙成分、植物質天然勇気物(ピートモス、鋸屑、籾殻、バガス、間伐材、コーヒー滓)苔粉末、ヤシ髄粉末、パルプ繊維、種子リンター、層状粘土鉱物、多孔質鉱物、沸石類(ゼオライト)、モンモリロナイト系の粘土系鉱物、多孔質鉱物(シリカ、アルミナ、ウィスカー等の結晶性化合物、珪藻土のような堆積物)、ポリエチレンオキサイド、ポリウレタン、酢酸ビニール、アクリル樹脂やこれらの共重合体、特開平10−191777、128108、94729号公報記載の高分子ような親水性の合成高分子、親水性の天然高分子等が挙げられる。
【0026】本発明の緑化システムには土壌の飛散防止等の目的で、繊維素材を用いることができる。繊維素材の例としては、綿,麻,セルロース,ジュート、毛,絹等の天然繊維,カーボン繊維,アセテート,レーヨン等の再生繊維,ポリエステル,ポリアミド(ナイロン),アクリル等の合成繊維が挙げられる。
【0027】本発明の緑化システムには抗菌剤を用いることができる。抗菌剤は土壌で有害な細菌、カビの発生を防止すると共に、多孔質セラミック粒子層に添加するとやはり細菌、カビの発生を防止して、目詰まりを防ぎ、保水性、排水性、透水(給水)性を維持できるので好ましい。抗菌剤としては有機系、無機系抗菌剤をいずれも用いることができるが、有機系抗菌剤は蒸散、流出により消失すること、また人の健康を害する畏れがあり好ましくない。また無機系抗菌剤でも一般に知られている銀系抗菌剤は、酸性雨中の硫黄化合物、水道水中の塩素イオンと反応し抗菌効果を失うので好ましくない。好ましい抗菌剤としては、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnからなる金属イオンの少なくとも1種を含む複合金属酸化物あるいは複合金属水酸化物である無機系抗菌剤であり、かつ前記の金属イオン以外にアルカリ土類金属、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素のを少なくとも一種含有する無機系抗菌剤である。さらに、Cuイオンおよび/またはZnイオンを含有する複合金属酸化物あるいは複合金属水酸化物である無機系抗菌剤がより好ましく、Cuイオンおよび/またはZnイオンに加え、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムを含有する複合金属水酸化物である無機系抗菌剤が一層好ましい。特に好ましい抗菌剤はZnイオンおよびアルミニウムイオンを含有した複合金属酸化物と、Znイオンおよびマグネシウムを含有した複合金属酸化物であり、Znイオンおよびアルミニウムイオンを含有した複合金属酸化物が最も好ましい。好ましい無機系抗菌剤としては、特許登録2911282号、特許登録2987262号、特開平08−291011号、特開平08−48606号に記載されているものが挙げられる。
【0028】本発明の緑化システムには紫外線吸収剤を用いることができる。紫外線吸収剤としては、有機系の化合物、無機系の化合物をいずれも好ましく用いることができるが、耐久性と安全性の観点から無機系が好ましい。無機系の紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化シリカ、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどがある
【0029】本発明の緑化システムに用いられる植物としては、ある程度丈の低い植物ならば何であっても好ましいが、セダム類,ハーブ類,蘚苔類、芝生、トマト、ナス、シシトウ等の野菜、パンジー、アリッサム、サルビア、日々草、バコパ、アゲラタム等の鑑賞用の矮性顕花植物、竹、笹等が挙げられる。これらの中でセダム類,ハーブ類,蘚苔類が好ましく、特にセダム類が好ましい。植物は1種でも良いが、混在させても良い。混在させる場合は、花の咲く時期、葉の茂る時期、花や葉の大きさ、色等様々な要因の組み合わせが考えられる。さらには、高温に強いものと低温に強いもの,乾燥に強いものと高湿に強いもの、花が咲くものと葉がきれいなもの、常緑のものと紅葉するもの、紅葉する色が様々のものと言った組み合わが好ましい。セダム類,のみならず、例えばハーブ類,蘚苔類が好ましい。これらの植物は、同じ植物が1種のみの態様に於て混在させる(セダム類のみ、あるいはハーブ類のみ、蘚苔類のみ、顕花植物のみ、野菜のみ等)、あるいは2種類以上混在させることも好ましい(たとえばセダム類とハーブ類、あるいはセダム類,ハーブ類,および蘚苔類)。セダム類の中でも複数の品種を組み合わせるのが好ましい。好ましい組み合わせ例としてはセダム類とハーブ類と蘚苔類がある。好ましい植物例としてはセダムアルバム,サガサマンネングサ,セダムスプリューム,タイトゴメ,メキシコマンネングサ,マルバマンネングサ,オオバマルバマンネングサ,キリンソウ,アルブム、ヨーロッパマンネングサ、サマーグローリー、ナデシコ,アリューム等である。
【0030】本発明の緑化システムに用いられる植物の植え付け方法としては、予め生育したものを植え付ける方法、予め植物が生育した植生マットを使用する方法、芝生の様に植物自体が絡み合いシート状になったものを敷く方法、植物の種子を撒く方法、植物の茎、葉、根を撒く方法、挿し木,球根植え付け,地下茎植え付け,葉挿し等が挙げられる。
【0031】本発明の緑化システムの代表的な施工方法は、厚さが0.05〜2mmの耐根シートを敷設し、その上にレンガ等で囲いを作り(例えば1m四方)、その囲い中にスパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)を絡みあった繊維を上に、不織布を下にして敷設し、その繊維の中に本発明の多孔質セラミック粒子を埋め込み、その上に土壌を敷設し、植物を植え付け、紙、澱粉原料のポリマー等の生分解性あるいは光触媒を埋め込んだプラスチックシート等の光分解性のシートで覆う施工方法である。あるいは、多孔質セラミック粒子を埋め込んだ上に、前述の植生マットを敷設する方法、多孔質セラミック粒子を埋め込んだ植生マットを敷設する方法も好ましい。
【0032】本発明の緑化システムには灌水システムを備えることが好ましい。水の散水式のスプリンクラーや滲出式のリーキーパイプ等やドリップタイプの水供給システムが好ましいが、この際、水の供給は1〜100リットル/日・m2 が好ましく、3〜80リットル/日・m2 がさらに好ましく、3〜40リットル/日・m2 が特に好ましい。この供給量が多過ぎると、雑草が生え、また、病虫害にかかり易く、また、少な過ぎると、植物が枯れて好ましくない。
【0033】本発明の緑化システムの重量は軽量な程好ましい。乾燥状態の重量は好ましくは180kg/m2以下であり、より好ましくは100kg/m2以下であり、さらに好ましくは60kg/m2以下であり、特に好ましくは40kg/m2下である。
【0034】本発明の緑化システムは住宅、事務所、工場等の建築物の屋上、テラス、屋根、高速道路の分離帯、公園の緑地等の緑化に用いることができる。また、本発明の緑化システムにより、景観の改善、ヒートアイランド現象の軽減、建物の温度変化の軽減、それによる省エネルギーの実現、建材への太陽光の直接の照射を防止できるため建築物の寿命の延長を実現できる。
【0035】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
【実施例1】<多孔質セラミック粒子の作製> 古紙を離解して古紙パルプを製造する工程で発生する汚泥物を800℃以上の高温で焼却して得た製紙産業廃棄物焼却灰を15重量%、カオリン系粘土を53重量%、含水率が5%の木屑、おが屑の炭素材料を2重量%、珪藻土を15重量%、シャモットを15重量%を秤量し、均一に混合した。これを成形プレスして1200℃で焼成した。この成形物を破砕し、不定形の2〜10mmサイズで、平均サイズが3mmの多孔質セラミック破砕粒子Aを得た。この多孔質セラミック破砕粒子のかさ比重は約1.7で、空隙率は約30%で、孔の径は1〜100μmであった。
【0036】
【実施例2】本発明の緑化システムの作製は以下の様に行った。
<水平な屋上に設置する本発明の緑化システムの例> 7月に、屋根の上を掃除し小石等を除いた後に、黒色のポリエチレンシート(耐根シート)を敷設した。この上に高さ50mmのレンガで1m四方の区画を作った。この区画の中にポリアミド性の繊維(径が0.3mm程度)がランダムに絡み合った(3次元スパイラル状)状態になっていて、片方が不織布に接着されているスパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)を敷いた。繊維の絡み合ったものが上になるように不織布のシート側を下にして敷いた。絡み合った繊維の高さは約15mmであった。その上に、上記の多孔質セラミック破砕粒子Aを絡み合った繊維が隠れる程度までの高さに平らに敷き詰めた。さらに、その上に植栽土壌を厚さ30mmに平らに敷いた。その上に芝生を敷き本発明の緑化システムH−1を得た。この緑化システムの乾燥状態の重量は38kg/m2であった。
【比較例1】<水平な屋上に設置する緑化システムの比較例> 多孔質セラミック破砕粒子Aの代わりに粒径が5〜20mmのパーライトを用いた以外は緑化システムH−1と同様にして比較例の緑化システムC−1を得た。パーライトのかさ比重は約0.7で、空隙率は約67%で、孔の径は200〜900μmであった。
【比較例2】<水平な屋上に設置する緑化システムの比較例> 多孔質セラミック破砕粒子Aの代わりに、多孔質セラミック破砕粒子Aを破砕作製する前の、多孔質セラミック板(厚さ15mm)を用いた以外は緑化システムH−1と同様にして比較例の緑化システムC−2を得た。
【0037】
【実施例3】<施工後の評価>
実施例1の緑化システムH−1、比較例の緑化システムC−1,2を以下の様にして評価した。施工14日後に芝生の根付きを、芝生を引きはがして評価した。本発明のサンプルH−1では芝生の根が多孔質セラミック粒子層に入り込み、セラミック粒子に絡みついており、容易には引きはがすことができなかった。比較例C−2も芝生の根が多孔質セラミック板に絡みついてはいたが、弱く引っ張ることで剥がれてしまった。また、比較例C−1では芝生の根がパーライト層に絡みついておらず、芝生がC−2よりもさらに簡単に剥がれてしまった。芝生の剥がれにくさの順は、H−1>>C−2>C−1の順であった。本発明のサンプルH−1は、比較例のC−1、C−2より芝生の根付きが好ましかった。
また8月に(施工1ヶ月後)、暑さと乾燥で芝生が弱り、一部枯れかけた。芝生の枯れた面積の小さい方から順に、H−1<C−2<<C−1であった。この評価でも本発明のサンプルH−1は、比較例のC−1、C−2より好ましかった。本発明の緑化システムは夏の暑さ、乾燥にも強いため、施工時期の制限がなく、年中施工可能であり好ましかった。
施工した緑化システムの裏側の屋上の温度を測定した。8月の夏の盛りには、施工なしの場所に比べ、H−1を施工した場所では温度が20度低くなった。温度の低下はC−1では3度、C−2では10度であった。本発明のH−1は温度の低下が大きく、比較例のC−1、C−2より好ましかった。
【実施例4】芝生をメキシコマンネングサに代えた以外は実施例1のH−1と同様にして本発明の緑化システムH−2を得た。
【比較例3】芝生をメキシコマンネングサに代えた以外は比較例1のC−1と同様にして比較例の緑化システムC−3を得た。
【比較例4】芝生をメキシコマンネングサに代えた以外は比較例1のC−2と同様にして比較例の緑化システムC−4を得た。
【実施例5】<施工後の評価>
施工7日後にメキシコマンネングサを引っ張った。C−3は容易に抜けてしまい、C−4はC−3より強かったがやはり抜けてしまった。本発明のH−2は根が絡みついているためか、根が抜けずに茎がちぎれてしまった。本発明のH−2は、C−3、4よりメキシコマンネングサの根付きが良く好ましかった。
【0038】
【実施例6】<植生マットを用いた例>
<本発明の植生マットAの作製> ポリアミド性の繊維(径が1mm程度)がランダムに絡み合った(3次元スパイラル状)状態になっていて、片方が不織布に接着されているマット(毛状体マット)を敷いた。このマットに、上記の多孔質セラミック粒子Aを厚み15mm程度埋め込んだ。セラミック粒子は出来るだけ密に埋め込み、連続的に接触するように工夫した。この上に土壌を10mmの厚さ埋め込み、さらに竹炭の粉を混ぜ込み、さらに木綿の繊維屑をすき込んだ。その上にセダム類であるメキシコマンネングサ、タイトゴメ、アルバム、サカサマンネングサ、スプリューム、キリンソウの茎を10mm程度に切ったものを蒔き、目土をぱらぱらと振り掛け、その上に粘着剤とレーヨン等と混合したシートを敷き押さえとした。これをビニールハウスで約30日間栽培し、セダム類が生育し緑になった植生マットAを得た。植生マットAの栽培時には、定期的に灌水した。セダム類の生育は順調で、根は多孔質セラミック粒子Aに絡んでおり、引っ張ると抜けずに茎が引きちぎれた。緑化率は(全面積中の緑化部面積の割合)80%であった。
【0039】
<比較例の植生マットBの作製> 多孔質セラミック破砕粒子Aの代わりに粒径が比較例C−1と同じパーライトを用いた以外は植生マットAと同様にして、比較例の植生マットBを得た。セダム類の生育は一応順調であったが、根はパーライトに十分には絡みつかず、引っ張ると根が抜けるものもあった。緑化率は70%であった。
<屋上に緑化システムを施工> 7月に、屋根の上を掃除し小石等を除いた後に、黒色のポリエチレンシート(耐根シート)を敷設した。この上に高さ50mmのレンガで1m四方の区画を作った。この区画の中に前記の毛状体マットを不織布を上にしスパイラル状の構造(絡み合った繊維の高さは約15mmであった)を下側(耐根シート側)にして敷き排水層とした。その不織布の上に上記の植生マットAをセダム類を上にして置いた。その上に粘着剤とレーヨン等と混合したシートを敷き押さえとした。定期的に1日1平米当たり、4リットルの水を供給し、本発明の緑化システムH−3を得た。
<屋上に緑化システムを施工の比較例> 植生マットAの代わりに、植生マットBを用いた以外は緑化システムH−3と同様な方法で比較例の緑化システムC−5を得た。
【0040】
【実施例7】<施工後の評価>
上記の緑化システムH−3と比較例の緑化システムC−5を比較した。施工60日後には緑化の程度は、本発明のH−2の場合は緑化率は100%であった。一方、比較例のC−5の緑化率は20%程度であり、まだらになっていた。このように、本発明の多孔質セラミック粒子Aを用いた本発明の緑化システムH−3は、比較例のC−5に比べ緑化率が高く好ましかった。
【発明の属する技術分野】本発明は、薄い土壌層や部分土壌で構成された緑化システムに関する。特に人工地盤の緑化システムに関する。
【0002】
【従来の技術】都市のヒートアイランド現象の対策、建物の冷暖房エネルギーの節減、緑の環境を得るためといった目的で、種々の緑化システムが提案されている。これらのシステムはかなりの多量の土壌を用いるものであり、建築物の重量制限のため設置場所が限られる問題がある。また、土壌層を薄くし軽量にした緑化システムは、夏場に植物が枯れる、あるいは勢いが弱くなり夏場のヒートアイランド現象の軽減には役に立たないといった問題がある。また、透水(給水)が均一にできず、一部は水が不足し植物が枯れてしまい、他の部分は水が多すぎ根腐れを起こすといった問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は人工地盤の緑化が可能な軽量で、管理が容易で夏の高温、乾燥にも耐えて植物が立ち枯れすることがない緑化システムを得ることを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記の課題が以下の手段により達せられることを見出した。(1)粒径が0.3〜50mmである多孔質セラミック粒子を含有する緑化システムによる。(2)該多孔質セラミック粒子がセラミック破砕粒子である前項(1)に記載の緑化システムによる。(3)該多孔質セラミック粒子の空隙率が5〜60%である前項(1)〜(2)の緑化システム。(4)該多孔質セラミック粒子の孔の径が0.1〜700μmである前項(1)〜(3)に記載の緑化システムによる。(5)該多孔質セラミック粒子のかさ比重が1.1〜2.9である前項(1)〜(4)に記載の緑化システムによる。(6)耐根シートの上に、該多孔質セラミック粒子層を設け、その上に土壌層を設ける前項(1)〜(5)に記載の緑化システムによる。(7)耐根シートの上に、スパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)を敷き、その中に該多孔質セラミック粒子を敷き、その上に土壌層を設ける前項(6)に記載の緑化システムによる。
【0005】(8) 重量が180kg/m2満以下である(1)〜(7)に記載の緑化システムによる。(9) 繊維シートに該多孔質セラミック粒子と土壌をすき込み、それに植物を植え付けたシート状の植生マットを用いた前項(1)〜(8)に記載の緑化システムによる。(10) 該多孔質セラミックが少なくとも1種の粘土、および少なくとも1種の炭素材料を混合し、700℃以上の高温で焼成したものである前項(1)〜(9)に記載の緑化システムによる。(11) 該多孔質セラミックが粒子が、製紙産業廃棄物焼却灰を原料として、焼成して得た前項(1)〜(10)に記載の緑化システムによる。該製紙産業廃棄物焼却灰は特に限定される訳ではないが、例えば古紙パルプを製造する工程で発生する汚泥物を焼却して得た焼却灰が挙げられる。(12)Cuイオンおよび/またはZnイオンを含有する複合金属酸化物あるいは複合金属水酸化物である無機系抗菌剤を少なくとも一種含有する前項(1)〜(11)に記載の緑化システムによる。
【0006】本発明の緑化システムに用いられる多孔質セラミック粒子について述べる。多孔質セラミック粒子とは、素材がセラミックであり、多孔質で微細な孔が空いているものである。該多孔質セラミック粒子はいかなる方法で粒子が作製されても良いが、保水性、排水性、透水性、植物の根付き等の性能、取り扱い性、経済性の観点より、ある大きさのセラミックを破砕して粒子にした物が好ましい。特に、セラミックを成形した後に、破砕して得た多孔質セラミック破砕粒子が好ましい。この多孔質セラミック粒子は保水性、排水性、透水性、植物の根付きに優れており、緑化システムに好ましく用いることができる。
多孔質セラミック粒子の粒径は0.3〜50mmが好ましく、0.5〜20mmがより好ましく、1〜10mmが最も好ましい。全ての粒子がこの粒径範囲に入る必要はないが、体積で90%以上の粒子がこの粒径範囲に入ることが好ましい。粒径が大き過ぎると層が厚くなりすぎる、あるいは粒子間の連結が不十分になり給水が均一にならないことがあり好ましくない。小さすぎると粒子の脱落があり、また層としての安定性が損なわれるため好ましくない。
多孔質セラミック粒子の空隙率は保水性、排水性、透水性およびその取り扱い性、さらには植物の根付きを左右する重要な因子である。多孔質セラミック粒子の空隙率は5〜60%が好ましく、20〜60%がより好ましく、25〜50%が最も好ましい。
多孔質セラミック粒子の孔の径は0.1〜700μmが好ましく、0.5〜200μmがより好ましい。孔の径が大きすぎると毛細管現象が十分に働かず給水が均一に行き渡らない場合があり好ましくない。孔の径が小さ過ぎると水が浸透し難く保水力、給水力が落ちるので好ましくない。
多孔質セラミック粒子のかさ比重は1.1〜2.9が好ましく、1.4〜2.0がより好ましい。
【0007】この多孔質セラミックの製造方法は、粘土および炭素材料を混合し、700℃以上の高温で焼成する方法である。この焼成の際に、炭素と粘土に含まれていたミネラル成分の一部が高温で消失し、消失した後が0.5〜100μm程度の微細な孔になり、多孔質セラミックが得られる。この得られた多孔質セラミックを粒子として用いるためには、焼成により生成した粒子をそのまま用いることができるが、焼成後の塊あるいは成形された多孔質セラミックを破砕し粒子状にして用いることが好ましい。即ち焼成時の原料としては、粘土および炭素材料が必須であり、これに珪藻土、シャモット、製紙産業廃棄物焼却灰のいずれかを、あるいはそれらの2種以上を併用することにより、微細な孔がより多数得られるのでより好ましい。
【0008】本発明の多孔質セラミックの製造に用いられる粘土としては、カオリン系、バイロフィライト系、セリサイト系、タルク、焼成クレー等が挙げられる。また、古紙パルプを製造する工程で発生する汚泥物を焼却して得た製紙産業廃棄物焼却灰を原料に用いることは、より微細な孔を得られることと、産業廃棄物を有効に利用できる点で好ましい。
【0009】本発明品の多孔質セラミックの製造法の一例を示す。粘土に重量比でペーパースラッジ灰を10%から15%と、炭素(炭素の原料は木屑、おが屑、籾殻、古紙等、何でもよい)を水分5%以内の乾燥度で0.5%から3%、珪藻土15%から20%、シャモット15%から20%、および着色顔料等を調合混合し、成形プレスをして高温焼成する。炭素とペーパースラッジ灰の灰分は、高温焼成の過程で完全に燃焼消滅し、その跡が0.5μmから100μm位の微細な細孔を形成する。なお、天然の多孔質構造である珪藻土も微細な細孔を増加させ、ペーパースラッジ灰の主成分である高級粘土質のカオリンは紙の有機物と微細な形状で完全に混合しているために、高温焼成時点で微細な細孔を形成した多孔質構造のセラミックス材料になる。また、一度高温焼成し磁器質にして粉砕したシャモットおよび前記のカオリンは微細な細孔を保持したまま未焼成粘土と混合しており、未焼成粘土の溶融が進行していく中で、このシャモットおよび前記のカオリンは溶融点が高いために中心の柱的存在のまま溶融結合して多孔質構造を形成する。
【0010】炭素材料としては、木屑、おが屑、籾殻、古紙等の天然のもの、活性炭、木炭、竹炭、黒鉛、あるいは綿,麻,セルロース,ジュート、毛,絹等の天然繊維,アセテート,レーヨン等の再生繊維等、いずれも好ましい。
【0011】焼成時には、粘土および炭素材料等は水分を5重量%以内にし、よく混合した後、適切な形に成形した状態で焼成することが好ましい。焼成の条件は、温度は700〜1600℃が好ましく、700〜1400℃がより好ましく、900〜1250℃が最も好ましい。焼成雰囲気は、炭素を燃焼させるためには酸素が必要であるので大気条件が好ましい。
【0012】板状、ブロック状等の形に成形して焼成し、焼成後に破砕し多孔質セラミック粒子を得ることが好ましい。 板状、ブロック状等の形のまま、緑化システムに用いることもできるが、粒子状で用いた場合に比べ植物の根付きが劣るので、粒子状で用いる方が好ましい。粒子サイズとしては0.3〜50mmが好ましく、1〜30mmがより好ましく、2〜15mmが最も好ましい。粒子サイズが小さい場合は、施工後に流出、飛散する畏れがあり、また大きい場合は多孔質セラミック粒子層を十分薄くできないため好ましくない。ただし、粒子サイズの分布が大きくても、支障は余りないので、多少の大小粒子の存在は大きな問題にはならない。粒子形状は表面積が大きい物が植物の根付きが容易なため好ましい。作製の容易さから考えて、板、ブロック状等の大きなものを、破砕して作製された破砕粒子は表面積も大きく好ましい。
【0013】これらの本発明の多孔質セラミックとしては、特開平11−152879号、特開2000−342959号、特開2003−102265号に記載のものはいずれも好ましい。
【0014】本発明の緑化システムは耐根シート、排水層、多孔質セラミック粒子層、土壌層、植物層、目土層を有することができる。ただし、排水層は必ずしも必要なく、本発明の多孔質セラミック粒子層で保水層、透水(給水)層および排水層を兼ねることができる。また、傾斜面に本発明の緑化システムを設置する場合は、排水層を用いない方が水持ちが良く好ましい。本発明の多孔質セラミック粒子層は保水性、透水(給水)性および排水性に優れているため、少量の水で植物の生育が可能であり、また透水(給水)性が良好なため、一部に給水すれば広い面積に水が行き渡るため、管理が容易な緑化システムを実現できる。本発明の多孔質セラミック粒子層は保水、排水、透水(給水)の機能を兼ねることができる。
【0015】本発明の緑化システムを施工する際には、土壌の飛散等を防止する目的で、緑化システムをシート、金網等で覆うことができる。これらの、シート、金網は景観を損なうので、植物が成長した後には無くなることが好ましい。そのためには、分解性のシートを用いることが好ましい。この分解性は生分解性、光分解性のいずれも好ましい。分解性のシートとしては紙、天然繊維、合成繊維等の不織布、織物等の、生分解性あるいは光分解性のシートが好ましい。
【0016】多孔質セラミック粒子層には多孔質セラミック粒子以外に、後で述べるスパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)等の物理的強度がある程度大きく、連続した空隙の大きい構造体を用いることが好ましい。これにより、人がこの緑化システムを踏んだような場合にも、耐根シートを破損することがなく好ましい。こういうスパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)のような十分な物理強度の構造体を敷設しない場合は、人が緑化システムを踏んだ場合に、小石等により耐根シートに容易に孔が開き好ましくない。また、スパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)の高さを多孔質セラミック粒子層の厚さと同じにすれば、現場施工の際に多孔質セラミック粒子層の厚さを所定の値に容易にでき、かつ均一な厚みを実現できる。
【0017】本発明に用いられるスパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)とは、不織布等のシート上に、径が0.1mm程度以上の繊維が絡まった状態で5〜50mmの高さで3次元の構造体を作っている物で、軽く手で押さえた位では潰れない構造のものである。スパイラル状の3次元構造体はプラスチック製や天然の繊維等のいづれでも良い。プラスチックとしてはポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、塩化ビニルその他いかなるものでもよいが、ポリアミドが好ましい。
また施工の際に排水の目的でスパイラル状の3次元構造体を植生マットの下に敷くこともできる。これにより、緑化システムの強度を一定以上に保て、多孔質セラミック粒子および土壌等を保持できる。さらに、この構造体は空隙が連続しており、また空隙率が大きいため保水、透水(給水)、排水を妨げず好ましい。
【0018】本発明の緑化システムの土壌層は、軽量化のため薄い方が好ましいが、植物の種類により当然必要な厚みが異なる。本発明の多孔質セラミック粒子層は、保水性、排水性、透水(給水)性がいずれも優れているため、本発明の多孔質セラミック粒子層により土壌層の薄層化が可能になった。土壌層の厚みは5〜200mm程度であり、好ましくは5〜100mmである。土壌層には、土壌以外に、土壌改良材、肥料、土壌菌、抗菌剤、保水材、飛散防止のための繊維類を含ませることができる。
【0019】耐根シートの素材としては、綿,麻,セルロース,ジュート、毛,絹等の天然繊維,カーボン繊維,アセテート,レーヨン等の再生繊維,ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル等のビニール類、ポリエステル,ポリアミド(ナイロン),アクリル等の合成プラスチックが挙げられる。これらの耐根シートの耐久性が不十分な場合は建築物の建材、防水構造を損傷することがある。
【0020】本発明の緑化システムに植生マットを用いることができる。植生マットとは不織布等の繊維状のシートあるいは前記のスパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)に薄く土壌をすき込み、それに植物を植え付けたものである。これにより、施工後の生育、根付きが容易になり、かつ施工場所への運搬も、施工自体も容易になる。例えば、不織布等の繊維状のシートの上に5〜100mm程度の土壌を敷き、それにセダム、ハーブ、芝生等の植物が生育されており、マットとして植物を植え込んだ状態で移動可能なものである。その総厚みは5〜300mmが好ましく、10〜200mmがより好ましく、15〜70mmがさらに好ましい。この植生マットを使用すると、緑化システムの施工が容易であり、かつ予め生育させた植物を用いることができ、施工後の根付き不良、立ち枯れといった問題を回避することができる。本植生マットには本発明の多孔質セラミック粒子を含ませることも好ましい。その場合、多孔質セラミック粒子と土壌は別の層を形成しても、同一の層内で混合してても良く、別の層の場合はどちらが上になっても良い。ただし、多孔質セラミック粒子層の上に土壌を載せ植物を植える(撒く)ことが、植物の根付き、保水、透水(給水)、排水性を向上させる点で好ましい。
【0021】植生マットに用いる繊維質のシートの繊維素材としては、綿,麻,セルロース,ジュート、毛,絹等の天然繊維,カーボン繊維,アセテート,レーヨン等の再生繊維,ポリエステル,ポリアミド(ナイロン),アクリル等の合成繊維が採用可能である。 また、綿,麻,セルロース,ジュート,毛,絹等の天然繊維,合成繊維のカーボン繊維,アセテート,レーヨン等の再生繊維がより好ましく、綿,麻,セルロース,ジュート,レーヨン,アセテートがさらに好ましく、綿,麻,セルロース,ジュートが特に好ましい。そして、剛性の強い層にはジュートを含有するのが好ましい。
【0022】本発明の緑化システムには肥料を用いることができる。肥料の例としては、堆肥、コーヒー滓、粒状(例えば万理(商品名))等の有機肥料、コーティング肥料(被覆複合肥料)、チッソ肥料、リン酸肥料、カリ肥料等の無機の肥料がある。
【0023】本発明の緑化システムに土壌菌を用いることができる。土壌菌の例としては菌根菌類、窒素固定細菌、VA菌根菌、アゾ菌類、アゾスピルラム菌(Dr.キンコン(商品名))、フランキア菌、マメ科根粒菌、ブリオ種が挙げられる。
【0024】本発明の緑化システムには土壌改良材を用いることができる。土壌改良材としては、ピートモス、バーライト、バーミキュライト、珪藻土組成物、バーク、パーライト、ゼオライト、ロックウール、スポンジ、ヤシ殻、クリプトモス日高砂等の軽石類、古紙成分、植物室天然有機物(ピートモス鋸屑、籾殻、バガス、間伐材、)水苔粉末、ヤシ髄粉末、パルプ繊維、種子リンター、層状粘土鉱物、多孔質鉱物、沸石類(ゼオライト)、モンモリロナイト系の粘土系鉱物、木炭,活性炭,石,れき,コンクリート等、多孔質鉱物(シリカ、アルミナ、ウィスカー等の結晶性化合物、珪藻土のような堆積物)が挙げられる。
【0025】本発明の緑化システムは多孔質セラミック破砕粒子以外の保水材を用いることができる。保水材としては古紙成分、植物質天然勇気物(ピートモス、鋸屑、籾殻、バガス、間伐材、コーヒー滓)苔粉末、ヤシ髄粉末、パルプ繊維、種子リンター、層状粘土鉱物、多孔質鉱物、沸石類(ゼオライト)、モンモリロナイト系の粘土系鉱物、多孔質鉱物(シリカ、アルミナ、ウィスカー等の結晶性化合物、珪藻土のような堆積物)、ポリエチレンオキサイド、ポリウレタン、酢酸ビニール、アクリル樹脂やこれらの共重合体、特開平10−191777、128108、94729号公報記載の高分子ような親水性の合成高分子、親水性の天然高分子等が挙げられる。
【0026】本発明の緑化システムには土壌の飛散防止等の目的で、繊維素材を用いることができる。繊維素材の例としては、綿,麻,セルロース,ジュート、毛,絹等の天然繊維,カーボン繊維,アセテート,レーヨン等の再生繊維,ポリエステル,ポリアミド(ナイロン),アクリル等の合成繊維が挙げられる。
【0027】本発明の緑化システムには抗菌剤を用いることができる。抗菌剤は土壌で有害な細菌、カビの発生を防止すると共に、多孔質セラミック粒子層に添加するとやはり細菌、カビの発生を防止して、目詰まりを防ぎ、保水性、排水性、透水(給水)性を維持できるので好ましい。抗菌剤としては有機系、無機系抗菌剤をいずれも用いることができるが、有機系抗菌剤は蒸散、流出により消失すること、また人の健康を害する畏れがあり好ましくない。また無機系抗菌剤でも一般に知られている銀系抗菌剤は、酸性雨中の硫黄化合物、水道水中の塩素イオンと反応し抗菌効果を失うので好ましくない。好ましい抗菌剤としては、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnからなる金属イオンの少なくとも1種を含む複合金属酸化物あるいは複合金属水酸化物である無機系抗菌剤であり、かつ前記の金属イオン以外にアルカリ土類金属、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素のを少なくとも一種含有する無機系抗菌剤である。さらに、Cuイオンおよび/またはZnイオンを含有する複合金属酸化物あるいは複合金属水酸化物である無機系抗菌剤がより好ましく、Cuイオンおよび/またはZnイオンに加え、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムを含有する複合金属水酸化物である無機系抗菌剤が一層好ましい。特に好ましい抗菌剤はZnイオンおよびアルミニウムイオンを含有した複合金属酸化物と、Znイオンおよびマグネシウムを含有した複合金属酸化物であり、Znイオンおよびアルミニウムイオンを含有した複合金属酸化物が最も好ましい。好ましい無機系抗菌剤としては、特許登録2911282号、特許登録2987262号、特開平08−291011号、特開平08−48606号に記載されているものが挙げられる。
【0028】本発明の緑化システムには紫外線吸収剤を用いることができる。紫外線吸収剤としては、有機系の化合物、無機系の化合物をいずれも好ましく用いることができるが、耐久性と安全性の観点から無機系が好ましい。無機系の紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化シリカ、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどがある
【0029】本発明の緑化システムに用いられる植物としては、ある程度丈の低い植物ならば何であっても好ましいが、セダム類,ハーブ類,蘚苔類、芝生、トマト、ナス、シシトウ等の野菜、パンジー、アリッサム、サルビア、日々草、バコパ、アゲラタム等の鑑賞用の矮性顕花植物、竹、笹等が挙げられる。これらの中でセダム類,ハーブ類,蘚苔類が好ましく、特にセダム類が好ましい。植物は1種でも良いが、混在させても良い。混在させる場合は、花の咲く時期、葉の茂る時期、花や葉の大きさ、色等様々な要因の組み合わせが考えられる。さらには、高温に強いものと低温に強いもの,乾燥に強いものと高湿に強いもの、花が咲くものと葉がきれいなもの、常緑のものと紅葉するもの、紅葉する色が様々のものと言った組み合わが好ましい。セダム類,のみならず、例えばハーブ類,蘚苔類が好ましい。これらの植物は、同じ植物が1種のみの態様に於て混在させる(セダム類のみ、あるいはハーブ類のみ、蘚苔類のみ、顕花植物のみ、野菜のみ等)、あるいは2種類以上混在させることも好ましい(たとえばセダム類とハーブ類、あるいはセダム類,ハーブ類,および蘚苔類)。セダム類の中でも複数の品種を組み合わせるのが好ましい。好ましい組み合わせ例としてはセダム類とハーブ類と蘚苔類がある。好ましい植物例としてはセダムアルバム,サガサマンネングサ,セダムスプリューム,タイトゴメ,メキシコマンネングサ,マルバマンネングサ,オオバマルバマンネングサ,キリンソウ,アルブム、ヨーロッパマンネングサ、サマーグローリー、ナデシコ,アリューム等である。
【0030】本発明の緑化システムに用いられる植物の植え付け方法としては、予め生育したものを植え付ける方法、予め植物が生育した植生マットを使用する方法、芝生の様に植物自体が絡み合いシート状になったものを敷く方法、植物の種子を撒く方法、植物の茎、葉、根を撒く方法、挿し木,球根植え付け,地下茎植え付け,葉挿し等が挙げられる。
【0031】本発明の緑化システムの代表的な施工方法は、厚さが0.05〜2mmの耐根シートを敷設し、その上にレンガ等で囲いを作り(例えば1m四方)、その囲い中にスパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)を絡みあった繊維を上に、不織布を下にして敷設し、その繊維の中に本発明の多孔質セラミック粒子を埋め込み、その上に土壌を敷設し、植物を植え付け、紙、澱粉原料のポリマー等の生分解性あるいは光触媒を埋め込んだプラスチックシート等の光分解性のシートで覆う施工方法である。あるいは、多孔質セラミック粒子を埋め込んだ上に、前述の植生マットを敷設する方法、多孔質セラミック粒子を埋め込んだ植生マットを敷設する方法も好ましい。
【0032】本発明の緑化システムには灌水システムを備えることが好ましい。水の散水式のスプリンクラーや滲出式のリーキーパイプ等やドリップタイプの水供給システムが好ましいが、この際、水の供給は1〜100リットル/日・m2 が好ましく、3〜80リットル/日・m2 がさらに好ましく、3〜40リットル/日・m2 が特に好ましい。この供給量が多過ぎると、雑草が生え、また、病虫害にかかり易く、また、少な過ぎると、植物が枯れて好ましくない。
【0033】本発明の緑化システムの重量は軽量な程好ましい。乾燥状態の重量は好ましくは180kg/m2以下であり、より好ましくは100kg/m2以下であり、さらに好ましくは60kg/m2以下であり、特に好ましくは40kg/m2下である。
【0034】本発明の緑化システムは住宅、事務所、工場等の建築物の屋上、テラス、屋根、高速道路の分離帯、公園の緑地等の緑化に用いることができる。また、本発明の緑化システムにより、景観の改善、ヒートアイランド現象の軽減、建物の温度変化の軽減、それによる省エネルギーの実現、建材への太陽光の直接の照射を防止できるため建築物の寿命の延長を実現できる。
【0035】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
【実施例1】<多孔質セラミック粒子の作製> 古紙を離解して古紙パルプを製造する工程で発生する汚泥物を800℃以上の高温で焼却して得た製紙産業廃棄物焼却灰を15重量%、カオリン系粘土を53重量%、含水率が5%の木屑、おが屑の炭素材料を2重量%、珪藻土を15重量%、シャモットを15重量%を秤量し、均一に混合した。これを成形プレスして1200℃で焼成した。この成形物を破砕し、不定形の2〜10mmサイズで、平均サイズが3mmの多孔質セラミック破砕粒子Aを得た。この多孔質セラミック破砕粒子のかさ比重は約1.7で、空隙率は約30%で、孔の径は1〜100μmであった。
【0036】
【実施例2】本発明の緑化システムの作製は以下の様に行った。
<水平な屋上に設置する本発明の緑化システムの例> 7月に、屋根の上を掃除し小石等を除いた後に、黒色のポリエチレンシート(耐根シート)を敷設した。この上に高さ50mmのレンガで1m四方の区画を作った。この区画の中にポリアミド性の繊維(径が0.3mm程度)がランダムに絡み合った(3次元スパイラル状)状態になっていて、片方が不織布に接着されているスパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)を敷いた。繊維の絡み合ったものが上になるように不織布のシート側を下にして敷いた。絡み合った繊維の高さは約15mmであった。その上に、上記の多孔質セラミック破砕粒子Aを絡み合った繊維が隠れる程度までの高さに平らに敷き詰めた。さらに、その上に植栽土壌を厚さ30mmに平らに敷いた。その上に芝生を敷き本発明の緑化システムH−1を得た。この緑化システムの乾燥状態の重量は38kg/m2であった。
【比較例1】<水平な屋上に設置する緑化システムの比較例> 多孔質セラミック破砕粒子Aの代わりに粒径が5〜20mmのパーライトを用いた以外は緑化システムH−1と同様にして比較例の緑化システムC−1を得た。パーライトのかさ比重は約0.7で、空隙率は約67%で、孔の径は200〜900μmであった。
【比較例2】<水平な屋上に設置する緑化システムの比較例> 多孔質セラミック破砕粒子Aの代わりに、多孔質セラミック破砕粒子Aを破砕作製する前の、多孔質セラミック板(厚さ15mm)を用いた以外は緑化システムH−1と同様にして比較例の緑化システムC−2を得た。
【0037】
【実施例3】<施工後の評価>
実施例1の緑化システムH−1、比較例の緑化システムC−1,2を以下の様にして評価した。施工14日後に芝生の根付きを、芝生を引きはがして評価した。本発明のサンプルH−1では芝生の根が多孔質セラミック粒子層に入り込み、セラミック粒子に絡みついており、容易には引きはがすことができなかった。比較例C−2も芝生の根が多孔質セラミック板に絡みついてはいたが、弱く引っ張ることで剥がれてしまった。また、比較例C−1では芝生の根がパーライト層に絡みついておらず、芝生がC−2よりもさらに簡単に剥がれてしまった。芝生の剥がれにくさの順は、H−1>>C−2>C−1の順であった。本発明のサンプルH−1は、比較例のC−1、C−2より芝生の根付きが好ましかった。
また8月に(施工1ヶ月後)、暑さと乾燥で芝生が弱り、一部枯れかけた。芝生の枯れた面積の小さい方から順に、H−1<C−2<<C−1であった。この評価でも本発明のサンプルH−1は、比較例のC−1、C−2より好ましかった。本発明の緑化システムは夏の暑さ、乾燥にも強いため、施工時期の制限がなく、年中施工可能であり好ましかった。
施工した緑化システムの裏側の屋上の温度を測定した。8月の夏の盛りには、施工なしの場所に比べ、H−1を施工した場所では温度が20度低くなった。温度の低下はC−1では3度、C−2では10度であった。本発明のH−1は温度の低下が大きく、比較例のC−1、C−2より好ましかった。
【実施例4】芝生をメキシコマンネングサに代えた以外は実施例1のH−1と同様にして本発明の緑化システムH−2を得た。
【比較例3】芝生をメキシコマンネングサに代えた以外は比較例1のC−1と同様にして比較例の緑化システムC−3を得た。
【比較例4】芝生をメキシコマンネングサに代えた以外は比較例1のC−2と同様にして比較例の緑化システムC−4を得た。
【実施例5】<施工後の評価>
施工7日後にメキシコマンネングサを引っ張った。C−3は容易に抜けてしまい、C−4はC−3より強かったがやはり抜けてしまった。本発明のH−2は根が絡みついているためか、根が抜けずに茎がちぎれてしまった。本発明のH−2は、C−3、4よりメキシコマンネングサの根付きが良く好ましかった。
【0038】
【実施例6】<植生マットを用いた例>
<本発明の植生マットAの作製> ポリアミド性の繊維(径が1mm程度)がランダムに絡み合った(3次元スパイラル状)状態になっていて、片方が不織布に接着されているマット(毛状体マット)を敷いた。このマットに、上記の多孔質セラミック粒子Aを厚み15mm程度埋め込んだ。セラミック粒子は出来るだけ密に埋め込み、連続的に接触するように工夫した。この上に土壌を10mmの厚さ埋め込み、さらに竹炭の粉を混ぜ込み、さらに木綿の繊維屑をすき込んだ。その上にセダム類であるメキシコマンネングサ、タイトゴメ、アルバム、サカサマンネングサ、スプリューム、キリンソウの茎を10mm程度に切ったものを蒔き、目土をぱらぱらと振り掛け、その上に粘着剤とレーヨン等と混合したシートを敷き押さえとした。これをビニールハウスで約30日間栽培し、セダム類が生育し緑になった植生マットAを得た。植生マットAの栽培時には、定期的に灌水した。セダム類の生育は順調で、根は多孔質セラミック粒子Aに絡んでおり、引っ張ると抜けずに茎が引きちぎれた。緑化率は(全面積中の緑化部面積の割合)80%であった。
【0039】
<比較例の植生マットBの作製> 多孔質セラミック破砕粒子Aの代わりに粒径が比較例C−1と同じパーライトを用いた以外は植生マットAと同様にして、比較例の植生マットBを得た。セダム類の生育は一応順調であったが、根はパーライトに十分には絡みつかず、引っ張ると根が抜けるものもあった。緑化率は70%であった。
<屋上に緑化システムを施工> 7月に、屋根の上を掃除し小石等を除いた後に、黒色のポリエチレンシート(耐根シート)を敷設した。この上に高さ50mmのレンガで1m四方の区画を作った。この区画の中に前記の毛状体マットを不織布を上にしスパイラル状の構造(絡み合った繊維の高さは約15mmであった)を下側(耐根シート側)にして敷き排水層とした。その不織布の上に上記の植生マットAをセダム類を上にして置いた。その上に粘着剤とレーヨン等と混合したシートを敷き押さえとした。定期的に1日1平米当たり、4リットルの水を供給し、本発明の緑化システムH−3を得た。
<屋上に緑化システムを施工の比較例> 植生マットAの代わりに、植生マットBを用いた以外は緑化システムH−3と同様な方法で比較例の緑化システムC−5を得た。
【0040】
【実施例7】<施工後の評価>
上記の緑化システムH−3と比較例の緑化システムC−5を比較した。施工60日後には緑化の程度は、本発明のH−2の場合は緑化率は100%であった。一方、比較例のC−5の緑化率は20%程度であり、まだらになっていた。このように、本発明の多孔質セラミック粒子Aを用いた本発明の緑化システムH−3は、比較例のC−5に比べ緑化率が高く好ましかった。
Claims (12)
- 粒径が0.3〜50mmである多孔質セラミック粒子を含有する
ことを特徴とする緑化システム。 - 該多孔質セラミック粒子がセラミック破砕粒子であることことを特徴とする請求項1に記載の緑化システム。
- 該多孔質セラミック粒子の空隙率が5〜60%であることを特徴とする請求項1〜2に記載の緑化システム。
- 該多孔質セラミック粒子の孔の径が0.1〜700μmであることを特徴とする請求項1〜3に記載の緑化システム。
- 該多孔質セラミック粒子のかさ比重が1.1〜2.9であることを特徴とする請求項1〜4に記載の緑化システム。
- 耐根シートの上に、該多孔質セラミック粒子層を設け、その上に土壌層を設けることを特徴とする請求項1〜5に記載の緑化システム。
- 耐根シートの上に、スパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)を敷き、その中に該多孔質セラミック粒子を敷き、その上に土壌層を設けることを特徴とする請求項6に記載の緑化システム。
- 乾燥状態の重量が180kg/m2以下であることを特徴とする請求項1〜7に記載の緑化システム。
- 繊維シートあるいはスパイラル状の3次元構造体マット(毛状体マット)に該多孔質セラミック粒子と土壌をすき込み、それに植物を植え付けたシート状の植生マットを用いたことを特徴とする請求項1〜8に記載の緑化システム。
- 該多孔質セラミックが少なくとも1種の粘土、および少なくとも1種の炭素材料を混合し、700℃以上の高温で焼成したものであることを特徴とする請求項1〜9に記載の緑化システム。
- 該多孔質セラミック粒子が、製紙産業廃棄物焼却灰を原料として、焼成して得たことを特徴とする請求項1〜10に記載の緑化システム。
- Cuイオンおよび/またはZnイオンを含有する複合金属酸化物あるいは複合金属水酸化物である無機系抗菌剤を少なくとも一種含有することを特徴とする請求項1〜11に記載の緑化システム。
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