JP2005025992A - 非水系二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】高エネルギー密度で、安全性を高めた非水系二次電池を提供する。
【解決手段】リチウムを吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極と、リチウムを吸蔵放出可能な負極活物質を含む負極と、非水電解液とを備えた非水系二次電池において、前記非水電解液が、ニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物の少なくとも1種を含み、電解液重量に対する前記化合物の含有量を0.1〜5wt%とする。
【選択図】図1
【解決手段】リチウムを吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極と、リチウムを吸蔵放出可能な負極活物質を含む負極と、非水電解液とを備えた非水系二次電池において、前記非水電解液が、ニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物の少なくとも1種を含み、電解液重量に対する前記化合物の含有量を0.1〜5wt%とする。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解液がニオブ等の化合物を含む非水系二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池は、軽量、高電圧、長寿命という特徴を兼ね備えた電池であり、なかでも体積当たり高エネルギー密度であることから、携帯型端末機器の電源として急速に普及し、今や必須なものとなっている。また、より大型の移動体である電気自動車の電源としての使用のほか、非常用電源のとしての利用も検討されており、今後より一層の大型化と高出力化が推測される。
【0003】
このような電池の大型化がなされても、電池構成材料は同じ物である。正極活物質の代表的なものとして、岩塩型層状構造を有するコバルト酸リチウムやニッケル酸リチウム、そしてスピネル型構造を有するマンガン酸リチウムがあげられる。負極活物質としては主に炭素材料が使われ、電解液には可燃性の有機溶媒に支持塩を溶解した非水電解液が用いられる。これらを、ポリオレフィン微多孔質セパレータを隔て捲回した形状、もしくは封筒状のセパレータに正極、もしくは負極の一方を封したスタック型の形状が一般に用いられる。
【0004】
しかしながら、昨今の高エネルギー密度化や大型化により、安全性の確保がより重要視されている。正極活物質は、短絡による大電流の通電や高温にさらされることにより発熱反応を示し、将棋倒し的に反応が進み、負極の発熱、そして電解液の分解によって多量のガスが発生し、破裂発火へと至ることが懸念される。
【0005】
リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、これまで主にコバルトを主としたリチウム複合酸化物が用いられてきた。この電池の安全性を確保するために、ある温度で熱溶融により自ら微孔を閉じて多孔性を消失し、電流を遮断する、いわゆるシャットダウン機能を持ったポリプロピレン製やポリエチレン製の多孔質膜をセパレータとして用いることが、特開平05−159766号公報に開示されている。また、特定の温度範囲に作動温度を有するPTC素子を用いることにより、過充電による破裂を防止できることが、特開平05−074493号公報に開示されている。これらのシャットダウン機能を持ったセパレータやPTC素子は、コバルトを主としたリチウム複合酸化物よりも安全性が高いとされるスピネル型マンガンリチウム複合酸化物にも応用できる。
【0006】
そして、さらなる高エネルギー密度を有する正極活物質として、一般式LixNiO2(ただし0<x<1)で表されるリチウムニッケル複合酸化物が期待されているが、この化合物の発熱挙動はさらに顕著であり、より一層の安全性対策が求められる。正極活物質にリチウムニッケル複合酸化物を用いた場合、内部短絡状況での安全性の確保のために、Niの一部を異種元素で置換して充電時における熱的な安定性の向上をはかることが、特開2000−323143号公報に開示されている。
【0007】
また、正極活物質として、主活物質としてのLiCoO2に副活物質としてのNb2O5やLi2MoO4を混合して用いることにより、負極の過充電劣化を抑制する技術が特開平05−151995号に開示されており、正極合剤にタングステン酸リチウムを添加する技術が特開2000−011996号に開示されている。さらに、負極炭素材料にNb2O5、WO3、MoO3などを添加する技術が特開平07−192723号に開示されており、負極にNbSe5、WO2、MoS2などを添加する技術が特開平06−349524号に開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、大型化および高エネルギー密度化が進むにつれ、上記の安全対策や安全弁を設ける等の方法では、安全性の確保は不十分である。
【0009】
本発明の目的は、非水系二次電池の上記問題点を解決するもので、高エネルギー密度を維持しつつ、正極活物質の熱暴走時の発熱挙動を抑制することにより、安全性を高めた非水系二次電池を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、リチウムを吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極と、リチウムを吸蔵放出可能な負極活物質を含む負極と、非水電解液とを備えた非水系二次電池において、前記非水電解液がニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物の少なくとも1種を含み、電解液重量に対する前記化合物の含有量が0.1〜5wt%であることを特徴とする。
【0011】
請求項1の発明によれば、正極合材層からの発熱量を減少させることができ、その結果、高エネルギー密度で、安全性の高い非水系二次電池を得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、リチウムを吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極と、リチウムを吸蔵放出可能な負極活物質を含む負極と、非水電解液とを備えた非水系二次電池に関するもので、非水系二次電池の電解液が、ニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物の少なくとも1種を含み、電解液重量に対するこれらの化合物の含有量が0.1〜5wt%であることを特徴とする。
【0013】
非水系二次電池の正極活物質として、これまで、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、ニッケルコバルト複合酸化物(LiNixCoyO2)、コバルトニッケルマンガン複合酸化物(LiCoxNiyMnzO2)、またはこれらにアルミニウムやマグネシウムなどの元素を固溶したリチウム複合酸化物が検討されてきた。
【0014】
当初、コバルト酸リチウムは安全性に問題が残されていたが、現在では諸々の安全性対策が施され、商品化が進められているものの、さらなる体積当たりの高エネルギー密度電池では完全な対策が施されているとは言い難い。
【0015】
スピネル構造を有するマンガン酸リチウムは、原材料が安価であり、コバルト酸リチウム等と比較して安全性に優れると言われているが、容量に劣るという短所を有するほか、大型化された場合には安全性に不安が残る。
【0016】
ニッケル酸リチウムは、高容量を示すため次世代の正極活物質として期待されているが、前述の正極活物質の中では最も発熱挙動が激しく、より高度な安全性対策が求められる。またニッケル酸リチウムは充放電による相変化を伴い、サイクル寿命に劣ることが問題視されていたが、これにコバルトやマンガンを加え複合酸化物化することで、サイクル寿命の改善を果たしている。
【0017】
このように、現在検討されている正極活物質の発熱挙動を完全に抑えることは不十分であり、電池の安全性に問題があった。そこで本発明は、正極活物質の発熱挙動を抑えるために、電解液中に、正極活物質と電解液との反応性を低下させる効果を有する化合物を含ませるものである。
【0018】
正極活物質と電解液との反応性を低下させる効果を有する化合物として、ニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物の少なくとも一種を用いる。電解液がこれらの化合物を含む場合、正極活物質と電解液とが反応して発熱した場合、これらの化合物が負触媒として機能して、正極活物質表面の活性が低下し、電解液の分解反応が抑制され、正極活物質の発熱量を減少させることができるものと推定される。
【0019】
電解液中のニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物の少なくとも1種の含有量は0.1〜5wt%とする必要がある。ここで「含有量」は、電解液の重量に対するこれらの化合物の重量%を示すものとする。含有量が0.1wt%未満の場合には、正極活物質の発熱量を減少させる効果が得られず、5wt%を越える場合には、溶解しない化合物粉末成分が多量に残り注液性が低下するほか、電解液の電導度が低下して電池の高率放電特性が低下するためである。
【0020】
本発明で使用するニオブ化合物としては、NbO、NbO2、Nb2O5などの酸化ニオブ、Nb3n+1O8n−2で表されるマグネリ相、塩化ニオブ(NbCl5)、LiNbO2、LiNbO3、LiNb2O5)などのニオブ酸リチウム、セレン化ニオブ(NbSe3)などが挙げられるが、これらの中ではNb2O5で表される酸化ニオブが好ましい。
【0021】
また、本発明で使用するモリブデン化合物としては、MoO2、MoO3などの酸化モリブデン、MonO3n−2で表されるマグネリ相、モリブデン酸リチウム(Li2MoO4)、硫化モリブデン(MoS2)などが挙げられるが、これらの中ではMoO3で表される酸化モリブデンが好ましい。
【0022】
さらに本発明で使用するタングステン化合物としては、WO2、WO3などの酸化タングステン、WnO3n−1で表されるマグネリ相、タングステン酸リチウム(Li2WO4)などが挙げられるが、これらの中ではMoO3で表される酸化タングステンが好ましい。
【0023】
本発明においては、電解液が、これらのニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物を2種以上含んでいてもよい。
【0024】
本発明の非水系二次電池の正極活物質としては、前述のコバルト、ニッケル、マンガンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む、各種リチウム複合酸化物を、単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0025】
本発明の非水系二次電池の負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な材料を用いる。具体例としては、炭素材料として天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、炭素繊維などの炭素質材料、またはリチウム金属、リチウム合金、酸化珪素などの系素質材料、酸化錫などの酸化金属が挙げられる。
【0026】
本発明の非水系二次電池に用いられる電解液の溶媒として、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1−3ジオキソラン、メチルアセテート、メチルプロピオネート等のいずれか1種以上を含むものを用いる。
【0027】
電解液の電解質としては、、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、トリフロロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)などを溶解して用いる。
【0028】
本発明の非水系二次電池に用いられるセパレータとしては、熱可塑性のシャットダウン機能を有したポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン材料、またはこれに耐熱多孔質層を塗布/貼り合せたものを用いる。
【0029】
【実施例】
[発熱量の測定]
<添加化合物の種類>
まず、正極活物質と電解液とが共存した場合の発熱量を測定した。正極活物質としては、最も顕著な発熱挙動を示すニッケルを主体とした、LiNi0.82Co0.15Al0.03O2で表されるリチウム複合酸化物を用い、電解液には酸化ニオブ(Nb2O5)を含ませた。
【0030】
リチウム複合酸化物LiNi0.82Co0.15Al0.03O2は、ニッケル源である水酸化ニッケルと、コバルト源である水酸化コバルトと、アルミニウム源である水酸化アルミニウムと、リチウム源である水酸化リチウムとを、リチウムとニッケルとコバルトとアルミニウムの原子比率が1:0.82:0.15:0.03となるように混合し、酸素雰囲気下において750℃で焼成することにより合成した。
【0031】
また、Nb2O5はナカライテスク製の試薬特級(平均粒径0.8μm)を使用した。
【0032】
LiNi0.82Co0.15Al0.03O2と、導電助剤としてアセチレンブラックと、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを重量比88:4:8で混合し、正極合材ペーストを作製した。これを15mm×15mmのアルミメッシュ集電体に塗布し、乾燥、プレスすることにより、発熱量評価用の正極とした。このようにして作製した正極合材を正極合材Aとした。
【0033】
この正極と、対極としての金属リチウムと、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比3:7で混合したものに1.2mol/lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を加えた電解液とを用いて、試験用のガラスセルを作製し、単極試験をおこなった。
単極の充放電試験は室温でおこない、1.0mA/cm2で4.3Vまで定電流で充電し、ついで1.0mA/cm2で3.0Vまで定電流で放電し、容量を確認した。その後、再び1.0mA/cm2で4.3Vまで定電圧で24時間充電した後、この正極から正極合材を取り出した。
【0034】
電解液としてエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比3:7で混合したものに1.2mol/lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を加えたものを作製し、これを電解液aとし、これに10種類のニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物を添加し、マグネットスターラーを用いて撹拌混合することにより、10種類の電解液を作製した。
【0035】
10種類の電解液の内容を表1に示した。なお、表1において、化合物の添加量は、電解液の重量に対して1wt%とし、Nb2O5とMoO3との混合比およびNb2O5とWO3との混合比は、いずれも重量比で1:1とした。
【0036】
【表1】
【0037】
充電状態の正極合材A1mgに、上記電解液1mgを加え、熱分析用のステンレス密閉容器に封入し、発熱量測定試料とした。熱分析には、Seiko Instruments Inc.製の示差走査熱量測定装置DSC6200を用いた。温度範囲は50〜450℃、昇温速度は10℃/minで測定した。
【0038】
電解液a1を用いた場合のDSC特性を図1に、電解液a4を用いた場合のDSC特性を図2に、電解液a7を用いた場合のDSC特性を図3に、それぞれ示す。なお、図1〜3においては、比較のため、電解液aを用いた場合のDSC特性も同時に記載した。また、図1〜3において、縦軸に示される発熱量の重量は、電解液を含まない正極合材Aの重量から求められた値である。
【0039】
図1から、Nb2O5を添加した電解液a1を用いた場合の発熱量は、Nb2O5を添加していない電解液aを用いた場合の発熱量よりも減少していることが確認できた。発熱量の減少は、電解液a4やa7を用いた図2や図3の場合にも確認できた。
【0040】
また、電解液a9を用いた場合のDSC特性を図4に示す。このように、電解液中にNb2O5とMoO3とが含有されている場合においても、Nb2O5を添加していない電解液aを用いた場合の発熱量よりも減少していることが確認できた。
【0041】
なお、図では示していないが、電解液a2、a3を用いた場合には図1と同様のDSC特性を示し、電解液a5およびa6を用いた場合には図2と同様のDSC特性を示し、電解液a8を用いた場合には図3と同様のDSC特性を示し、電解液a10を用いた場合には図4と同様のDSC特性を示した。
【0042】
<Nb2O5の添加量>
つぎに、電解液aに異なる量のNb2O5を含有させ、マグネットスターラーを用いて撹拌混合することにより、6種類の電解液を作製した。そして正極合材Aと6種類の電解液とを組み合わせて、発熱量を測定した。6種類の電解液の内容を表2に示した。なお、表2における化合物の含有量は、電解液の重量に対する化合物の重量%とした。ここで、化合物の含有量が3wt%を越える場合は、化合物がすべて溶解しないことがあり、その場合は撹拌混合後すみやかに注液しなければならない。
【0043】
【表2】
【0044】
電解液b1〜b6を用いた場合のDSC特性は図1とほぼ同様であり、電解液b1の場合には、Nb2O5を含有していない電解液aとの差がなく、電解液b2からb6の場合には電解液aとの差が見られ、Nb2O5の含有量が多くなるにしたがって発熱量は減少することがわかったが、その減少量は少ない。
【0045】
<正極活物質の種類>
つぎに、LiNi0.82Co0.15Al0.03O2とは異なる正極活物質を用いて、LiNi0.82Co0.15Al0.03O2の場合と同様の方法で正極合材B〜Fを作製した。これらの正極合材B〜Fと電解液a1とを組み合わせて、発熱量を測定した。正極合材B〜Fに用いた5種類の正極活物質を表3に示した。なお、これらの正極活物質は、従来から公知の方法で合成した。
【0046】
【表3】
【0047】
正極合材B〜Eを用いた場合のDSC特性は、いずれも図1とほぼ同様であり、正極活物質の種類が変わっても、電解液中にNb2O5を含有することにより、Nb2O5を含有していない電解液aと比較して発熱量は減少することがわかった。
【0048】
[非水系二次電池]
<実施例1>
正極合材Aのペーストを、集電体としての厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗布、乾燥、プレスすることにより、アルミニウム箔の両面に正極合材層を備えた正極板を得た。
【0049】
負極活物質として、人造黒鉛と天然黒鉛の重量比1:1の混合物を用いた。負極活物質と、結着材としてのPVdFとを重量比92:8の割合で混合し、負極ペーストとした。この負極ペーストを、集電体としての厚さ15μmの銅箔に塗布、乾燥、プレスすることにより、銅箔の両面に負極合材層を備えた負極板を得た。
【0050】
前述の正極板、ポリエチレン製のセパレータ、負極板、ポリエチレン製セパレータの順に積層したものを巻回して発電素子を作製し、アルミニウムよりなる角型の電池缶に収納した。この電池缶内に、電解液a1を充填し、電池蓋により密閉して、周知の方法で安全弁を備えた、公称容量700mAhの角型非水電解質二次電池を作製し、これを実施例1の電池X1とした。
【0051】
<実施例2〜10>
電解液としてa1の代わりにa2〜a10を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2〜10の電池X2〜X10を作製した。
【0052】
<比較例1>
電解液としてa1の代わりにaを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の電池Y1を作製した。
【0053】
<実施例11〜14>
電解液としてa1の代わりにb2〜b5を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例11〜14の電池X11〜X14を作製した。
【0054】
<比較例2および比較3>
電解液としてa1の代わりにb1を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の電池Y2を作製し、また、電解液としてa1の代わりにb6を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3の電池Y3を作製した。
【0055】
<実施例15〜18>
正極合材としてAの代わりにB〜Eを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例15〜18の電池X15〜X18を作製した。
【0056】
表4に、ここで作製した電池の内容をまとめた。
【0057】
【表4】
【0058】
<試験条件>
実施例1〜18の電池X1〜X18および比較例1〜3の電池Y1〜Y3について、つぎのような条件で試験を行った。
【0059】
充放電試験は室温でおこない、充電は700mA(1CA)定電流で4.2Vまで、さらに4.2V定電圧で3時間行い、ついで700mA(1CA)定電流で2.75Vまで放電し、この時の放電容量を「電池容量」とした。
【0060】
その次に高率放電試験を室温で行った。充電は700mA(1CA)定電流で4.2Vまで、さらに4.2V定電圧で3時間行い、ついで2100mA(3CA)定電流で2.75Vまで放電し、この時の放電容量を「高率電池容量」とし、1CA定電流放電での「電池容量」に対する2CA定電流放電での「高率電池容量」の比(%)を「高率/低率放電容量比」とした。
【0061】
さらに、再び700mA(1CA)定電流で4.2Vまで、さらに4.2V定電圧で3時間の充電を行い、その後、安全性確認試験としての釘刺試験および過充電試験をおこなった。釘刺試験は2.5φの釘が電池を貫通するまで刺し、過充電試験は2100mA(3CA)定電流で12Vまで、さらに4.2で定電圧充電を続けた。
【0062】
これらの試験結果を表5〜表7にまとめた。
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
【表7】
【0066】
表4〜7の結果から、つぎのようなことがわかった。1CA定電流での放電容量は、すべての電池においてほぼ700mAhであった。高率/低率放電容量比は、比較例3の電池Y3では、他の電池と比較して極端に小さい値となった。この原因は、電解液中のNb2O5の含有量が7wt%であるため、電解液の電導度が小さくなったためと考えられる。
【0067】
また、安全性確認試験では、電解液がNb2O5を含有しない比較例1の電池Y1および電解液中のNb2O5の含有量が0.05wt%と小さい比較例2の電池Y2において、釘刺試験において弁作動と発煙、また過充電試験において弁作動が見られた。これは、電解液中のNb2O5の含有量が少なく、正極活物質と電解液との発熱反応を抑制する効果がなかったものと考えられる。
【0068】
一方、実施例1〜19の電池X1〜X19では、でやや電池が膨れたものが見られたが、弁作動には至らず、他に異常は見られなかった。
【0069】
【発明の効果】
本発明のように、非水電解液が、ニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物の少なくとも1種を含み、電解液重量に対する前記化合物の含有量を0.1〜5wt%とすることにより、非水系二次電池における熱暴走などの発熱挙動を抑制することが可能となり、高エネルギー安全性をより高めた非水系二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】正極合材Aと電解液a1を用いた場合のDSC特性を示す図。
【図2】正極合材Aと電解液a4を用いた場合のDSC特性を示す図。
【図3】正極合材Aと電解液a7を用いた場合のDSC特性を示す図。
【図4】正極合材Aと電解液a8を用いた場合のDSC特性を示す図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解液がニオブ等の化合物を含む非水系二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池は、軽量、高電圧、長寿命という特徴を兼ね備えた電池であり、なかでも体積当たり高エネルギー密度であることから、携帯型端末機器の電源として急速に普及し、今や必須なものとなっている。また、より大型の移動体である電気自動車の電源としての使用のほか、非常用電源のとしての利用も検討されており、今後より一層の大型化と高出力化が推測される。
【0003】
このような電池の大型化がなされても、電池構成材料は同じ物である。正極活物質の代表的なものとして、岩塩型層状構造を有するコバルト酸リチウムやニッケル酸リチウム、そしてスピネル型構造を有するマンガン酸リチウムがあげられる。負極活物質としては主に炭素材料が使われ、電解液には可燃性の有機溶媒に支持塩を溶解した非水電解液が用いられる。これらを、ポリオレフィン微多孔質セパレータを隔て捲回した形状、もしくは封筒状のセパレータに正極、もしくは負極の一方を封したスタック型の形状が一般に用いられる。
【0004】
しかしながら、昨今の高エネルギー密度化や大型化により、安全性の確保がより重要視されている。正極活物質は、短絡による大電流の通電や高温にさらされることにより発熱反応を示し、将棋倒し的に反応が進み、負極の発熱、そして電解液の分解によって多量のガスが発生し、破裂発火へと至ることが懸念される。
【0005】
リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、これまで主にコバルトを主としたリチウム複合酸化物が用いられてきた。この電池の安全性を確保するために、ある温度で熱溶融により自ら微孔を閉じて多孔性を消失し、電流を遮断する、いわゆるシャットダウン機能を持ったポリプロピレン製やポリエチレン製の多孔質膜をセパレータとして用いることが、特開平05−159766号公報に開示されている。また、特定の温度範囲に作動温度を有するPTC素子を用いることにより、過充電による破裂を防止できることが、特開平05−074493号公報に開示されている。これらのシャットダウン機能を持ったセパレータやPTC素子は、コバルトを主としたリチウム複合酸化物よりも安全性が高いとされるスピネル型マンガンリチウム複合酸化物にも応用できる。
【0006】
そして、さらなる高エネルギー密度を有する正極活物質として、一般式LixNiO2(ただし0<x<1)で表されるリチウムニッケル複合酸化物が期待されているが、この化合物の発熱挙動はさらに顕著であり、より一層の安全性対策が求められる。正極活物質にリチウムニッケル複合酸化物を用いた場合、内部短絡状況での安全性の確保のために、Niの一部を異種元素で置換して充電時における熱的な安定性の向上をはかることが、特開2000−323143号公報に開示されている。
【0007】
また、正極活物質として、主活物質としてのLiCoO2に副活物質としてのNb2O5やLi2MoO4を混合して用いることにより、負極の過充電劣化を抑制する技術が特開平05−151995号に開示されており、正極合剤にタングステン酸リチウムを添加する技術が特開2000−011996号に開示されている。さらに、負極炭素材料にNb2O5、WO3、MoO3などを添加する技術が特開平07−192723号に開示されており、負極にNbSe5、WO2、MoS2などを添加する技術が特開平06−349524号に開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、大型化および高エネルギー密度化が進むにつれ、上記の安全対策や安全弁を設ける等の方法では、安全性の確保は不十分である。
【0009】
本発明の目的は、非水系二次電池の上記問題点を解決するもので、高エネルギー密度を維持しつつ、正極活物質の熱暴走時の発熱挙動を抑制することにより、安全性を高めた非水系二次電池を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、リチウムを吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極と、リチウムを吸蔵放出可能な負極活物質を含む負極と、非水電解液とを備えた非水系二次電池において、前記非水電解液がニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物の少なくとも1種を含み、電解液重量に対する前記化合物の含有量が0.1〜5wt%であることを特徴とする。
【0011】
請求項1の発明によれば、正極合材層からの発熱量を減少させることができ、その結果、高エネルギー密度で、安全性の高い非水系二次電池を得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、リチウムを吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極と、リチウムを吸蔵放出可能な負極活物質を含む負極と、非水電解液とを備えた非水系二次電池に関するもので、非水系二次電池の電解液が、ニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物の少なくとも1種を含み、電解液重量に対するこれらの化合物の含有量が0.1〜5wt%であることを特徴とする。
【0013】
非水系二次電池の正極活物質として、これまで、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、ニッケルコバルト複合酸化物(LiNixCoyO2)、コバルトニッケルマンガン複合酸化物(LiCoxNiyMnzO2)、またはこれらにアルミニウムやマグネシウムなどの元素を固溶したリチウム複合酸化物が検討されてきた。
【0014】
当初、コバルト酸リチウムは安全性に問題が残されていたが、現在では諸々の安全性対策が施され、商品化が進められているものの、さらなる体積当たりの高エネルギー密度電池では完全な対策が施されているとは言い難い。
【0015】
スピネル構造を有するマンガン酸リチウムは、原材料が安価であり、コバルト酸リチウム等と比較して安全性に優れると言われているが、容量に劣るという短所を有するほか、大型化された場合には安全性に不安が残る。
【0016】
ニッケル酸リチウムは、高容量を示すため次世代の正極活物質として期待されているが、前述の正極活物質の中では最も発熱挙動が激しく、より高度な安全性対策が求められる。またニッケル酸リチウムは充放電による相変化を伴い、サイクル寿命に劣ることが問題視されていたが、これにコバルトやマンガンを加え複合酸化物化することで、サイクル寿命の改善を果たしている。
【0017】
このように、現在検討されている正極活物質の発熱挙動を完全に抑えることは不十分であり、電池の安全性に問題があった。そこで本発明は、正極活物質の発熱挙動を抑えるために、電解液中に、正極活物質と電解液との反応性を低下させる効果を有する化合物を含ませるものである。
【0018】
正極活物質と電解液との反応性を低下させる効果を有する化合物として、ニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物の少なくとも一種を用いる。電解液がこれらの化合物を含む場合、正極活物質と電解液とが反応して発熱した場合、これらの化合物が負触媒として機能して、正極活物質表面の活性が低下し、電解液の分解反応が抑制され、正極活物質の発熱量を減少させることができるものと推定される。
【0019】
電解液中のニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物の少なくとも1種の含有量は0.1〜5wt%とする必要がある。ここで「含有量」は、電解液の重量に対するこれらの化合物の重量%を示すものとする。含有量が0.1wt%未満の場合には、正極活物質の発熱量を減少させる効果が得られず、5wt%を越える場合には、溶解しない化合物粉末成分が多量に残り注液性が低下するほか、電解液の電導度が低下して電池の高率放電特性が低下するためである。
【0020】
本発明で使用するニオブ化合物としては、NbO、NbO2、Nb2O5などの酸化ニオブ、Nb3n+1O8n−2で表されるマグネリ相、塩化ニオブ(NbCl5)、LiNbO2、LiNbO3、LiNb2O5)などのニオブ酸リチウム、セレン化ニオブ(NbSe3)などが挙げられるが、これらの中ではNb2O5で表される酸化ニオブが好ましい。
【0021】
また、本発明で使用するモリブデン化合物としては、MoO2、MoO3などの酸化モリブデン、MonO3n−2で表されるマグネリ相、モリブデン酸リチウム(Li2MoO4)、硫化モリブデン(MoS2)などが挙げられるが、これらの中ではMoO3で表される酸化モリブデンが好ましい。
【0022】
さらに本発明で使用するタングステン化合物としては、WO2、WO3などの酸化タングステン、WnO3n−1で表されるマグネリ相、タングステン酸リチウム(Li2WO4)などが挙げられるが、これらの中ではMoO3で表される酸化タングステンが好ましい。
【0023】
本発明においては、電解液が、これらのニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物を2種以上含んでいてもよい。
【0024】
本発明の非水系二次電池の正極活物質としては、前述のコバルト、ニッケル、マンガンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む、各種リチウム複合酸化物を、単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0025】
本発明の非水系二次電池の負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な材料を用いる。具体例としては、炭素材料として天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、炭素繊維などの炭素質材料、またはリチウム金属、リチウム合金、酸化珪素などの系素質材料、酸化錫などの酸化金属が挙げられる。
【0026】
本発明の非水系二次電池に用いられる電解液の溶媒として、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1−3ジオキソラン、メチルアセテート、メチルプロピオネート等のいずれか1種以上を含むものを用いる。
【0027】
電解液の電解質としては、、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、トリフロロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)などを溶解して用いる。
【0028】
本発明の非水系二次電池に用いられるセパレータとしては、熱可塑性のシャットダウン機能を有したポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン材料、またはこれに耐熱多孔質層を塗布/貼り合せたものを用いる。
【0029】
【実施例】
[発熱量の測定]
<添加化合物の種類>
まず、正極活物質と電解液とが共存した場合の発熱量を測定した。正極活物質としては、最も顕著な発熱挙動を示すニッケルを主体とした、LiNi0.82Co0.15Al0.03O2で表されるリチウム複合酸化物を用い、電解液には酸化ニオブ(Nb2O5)を含ませた。
【0030】
リチウム複合酸化物LiNi0.82Co0.15Al0.03O2は、ニッケル源である水酸化ニッケルと、コバルト源である水酸化コバルトと、アルミニウム源である水酸化アルミニウムと、リチウム源である水酸化リチウムとを、リチウムとニッケルとコバルトとアルミニウムの原子比率が1:0.82:0.15:0.03となるように混合し、酸素雰囲気下において750℃で焼成することにより合成した。
【0031】
また、Nb2O5はナカライテスク製の試薬特級(平均粒径0.8μm)を使用した。
【0032】
LiNi0.82Co0.15Al0.03O2と、導電助剤としてアセチレンブラックと、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを重量比88:4:8で混合し、正極合材ペーストを作製した。これを15mm×15mmのアルミメッシュ集電体に塗布し、乾燥、プレスすることにより、発熱量評価用の正極とした。このようにして作製した正極合材を正極合材Aとした。
【0033】
この正極と、対極としての金属リチウムと、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比3:7で混合したものに1.2mol/lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を加えた電解液とを用いて、試験用のガラスセルを作製し、単極試験をおこなった。
単極の充放電試験は室温でおこない、1.0mA/cm2で4.3Vまで定電流で充電し、ついで1.0mA/cm2で3.0Vまで定電流で放電し、容量を確認した。その後、再び1.0mA/cm2で4.3Vまで定電圧で24時間充電した後、この正極から正極合材を取り出した。
【0034】
電解液としてエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比3:7で混合したものに1.2mol/lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を加えたものを作製し、これを電解液aとし、これに10種類のニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物を添加し、マグネットスターラーを用いて撹拌混合することにより、10種類の電解液を作製した。
【0035】
10種類の電解液の内容を表1に示した。なお、表1において、化合物の添加量は、電解液の重量に対して1wt%とし、Nb2O5とMoO3との混合比およびNb2O5とWO3との混合比は、いずれも重量比で1:1とした。
【0036】
【表1】
【0037】
充電状態の正極合材A1mgに、上記電解液1mgを加え、熱分析用のステンレス密閉容器に封入し、発熱量測定試料とした。熱分析には、Seiko Instruments Inc.製の示差走査熱量測定装置DSC6200を用いた。温度範囲は50〜450℃、昇温速度は10℃/minで測定した。
【0038】
電解液a1を用いた場合のDSC特性を図1に、電解液a4を用いた場合のDSC特性を図2に、電解液a7を用いた場合のDSC特性を図3に、それぞれ示す。なお、図1〜3においては、比較のため、電解液aを用いた場合のDSC特性も同時に記載した。また、図1〜3において、縦軸に示される発熱量の重量は、電解液を含まない正極合材Aの重量から求められた値である。
【0039】
図1から、Nb2O5を添加した電解液a1を用いた場合の発熱量は、Nb2O5を添加していない電解液aを用いた場合の発熱量よりも減少していることが確認できた。発熱量の減少は、電解液a4やa7を用いた図2や図3の場合にも確認できた。
【0040】
また、電解液a9を用いた場合のDSC特性を図4に示す。このように、電解液中にNb2O5とMoO3とが含有されている場合においても、Nb2O5を添加していない電解液aを用いた場合の発熱量よりも減少していることが確認できた。
【0041】
なお、図では示していないが、電解液a2、a3を用いた場合には図1と同様のDSC特性を示し、電解液a5およびa6を用いた場合には図2と同様のDSC特性を示し、電解液a8を用いた場合には図3と同様のDSC特性を示し、電解液a10を用いた場合には図4と同様のDSC特性を示した。
【0042】
<Nb2O5の添加量>
つぎに、電解液aに異なる量のNb2O5を含有させ、マグネットスターラーを用いて撹拌混合することにより、6種類の電解液を作製した。そして正極合材Aと6種類の電解液とを組み合わせて、発熱量を測定した。6種類の電解液の内容を表2に示した。なお、表2における化合物の含有量は、電解液の重量に対する化合物の重量%とした。ここで、化合物の含有量が3wt%を越える場合は、化合物がすべて溶解しないことがあり、その場合は撹拌混合後すみやかに注液しなければならない。
【0043】
【表2】
【0044】
電解液b1〜b6を用いた場合のDSC特性は図1とほぼ同様であり、電解液b1の場合には、Nb2O5を含有していない電解液aとの差がなく、電解液b2からb6の場合には電解液aとの差が見られ、Nb2O5の含有量が多くなるにしたがって発熱量は減少することがわかったが、その減少量は少ない。
【0045】
<正極活物質の種類>
つぎに、LiNi0.82Co0.15Al0.03O2とは異なる正極活物質を用いて、LiNi0.82Co0.15Al0.03O2の場合と同様の方法で正極合材B〜Fを作製した。これらの正極合材B〜Fと電解液a1とを組み合わせて、発熱量を測定した。正極合材B〜Fに用いた5種類の正極活物質を表3に示した。なお、これらの正極活物質は、従来から公知の方法で合成した。
【0046】
【表3】
【0047】
正極合材B〜Eを用いた場合のDSC特性は、いずれも図1とほぼ同様であり、正極活物質の種類が変わっても、電解液中にNb2O5を含有することにより、Nb2O5を含有していない電解液aと比較して発熱量は減少することがわかった。
【0048】
[非水系二次電池]
<実施例1>
正極合材Aのペーストを、集電体としての厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗布、乾燥、プレスすることにより、アルミニウム箔の両面に正極合材層を備えた正極板を得た。
【0049】
負極活物質として、人造黒鉛と天然黒鉛の重量比1:1の混合物を用いた。負極活物質と、結着材としてのPVdFとを重量比92:8の割合で混合し、負極ペーストとした。この負極ペーストを、集電体としての厚さ15μmの銅箔に塗布、乾燥、プレスすることにより、銅箔の両面に負極合材層を備えた負極板を得た。
【0050】
前述の正極板、ポリエチレン製のセパレータ、負極板、ポリエチレン製セパレータの順に積層したものを巻回して発電素子を作製し、アルミニウムよりなる角型の電池缶に収納した。この電池缶内に、電解液a1を充填し、電池蓋により密閉して、周知の方法で安全弁を備えた、公称容量700mAhの角型非水電解質二次電池を作製し、これを実施例1の電池X1とした。
【0051】
<実施例2〜10>
電解液としてa1の代わりにa2〜a10を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2〜10の電池X2〜X10を作製した。
【0052】
<比較例1>
電解液としてa1の代わりにaを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の電池Y1を作製した。
【0053】
<実施例11〜14>
電解液としてa1の代わりにb2〜b5を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例11〜14の電池X11〜X14を作製した。
【0054】
<比較例2および比較3>
電解液としてa1の代わりにb1を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の電池Y2を作製し、また、電解液としてa1の代わりにb6を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3の電池Y3を作製した。
【0055】
<実施例15〜18>
正極合材としてAの代わりにB〜Eを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例15〜18の電池X15〜X18を作製した。
【0056】
表4に、ここで作製した電池の内容をまとめた。
【0057】
【表4】
【0058】
<試験条件>
実施例1〜18の電池X1〜X18および比較例1〜3の電池Y1〜Y3について、つぎのような条件で試験を行った。
【0059】
充放電試験は室温でおこない、充電は700mA(1CA)定電流で4.2Vまで、さらに4.2V定電圧で3時間行い、ついで700mA(1CA)定電流で2.75Vまで放電し、この時の放電容量を「電池容量」とした。
【0060】
その次に高率放電試験を室温で行った。充電は700mA(1CA)定電流で4.2Vまで、さらに4.2V定電圧で3時間行い、ついで2100mA(3CA)定電流で2.75Vまで放電し、この時の放電容量を「高率電池容量」とし、1CA定電流放電での「電池容量」に対する2CA定電流放電での「高率電池容量」の比(%)を「高率/低率放電容量比」とした。
【0061】
さらに、再び700mA(1CA)定電流で4.2Vまで、さらに4.2V定電圧で3時間の充電を行い、その後、安全性確認試験としての釘刺試験および過充電試験をおこなった。釘刺試験は2.5φの釘が電池を貫通するまで刺し、過充電試験は2100mA(3CA)定電流で12Vまで、さらに4.2で定電圧充電を続けた。
【0062】
これらの試験結果を表5〜表7にまとめた。
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
【表7】
【0066】
表4〜7の結果から、つぎのようなことがわかった。1CA定電流での放電容量は、すべての電池においてほぼ700mAhであった。高率/低率放電容量比は、比較例3の電池Y3では、他の電池と比較して極端に小さい値となった。この原因は、電解液中のNb2O5の含有量が7wt%であるため、電解液の電導度が小さくなったためと考えられる。
【0067】
また、安全性確認試験では、電解液がNb2O5を含有しない比較例1の電池Y1および電解液中のNb2O5の含有量が0.05wt%と小さい比較例2の電池Y2において、釘刺試験において弁作動と発煙、また過充電試験において弁作動が見られた。これは、電解液中のNb2O5の含有量が少なく、正極活物質と電解液との発熱反応を抑制する効果がなかったものと考えられる。
【0068】
一方、実施例1〜19の電池X1〜X19では、でやや電池が膨れたものが見られたが、弁作動には至らず、他に異常は見られなかった。
【0069】
【発明の効果】
本発明のように、非水電解液が、ニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物の少なくとも1種を含み、電解液重量に対する前記化合物の含有量を0.1〜5wt%とすることにより、非水系二次電池における熱暴走などの発熱挙動を抑制することが可能となり、高エネルギー安全性をより高めた非水系二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】正極合材Aと電解液a1を用いた場合のDSC特性を示す図。
【図2】正極合材Aと電解液a4を用いた場合のDSC特性を示す図。
【図3】正極合材Aと電解液a7を用いた場合のDSC特性を示す図。
【図4】正極合材Aと電解液a8を用いた場合のDSC特性を示す図。
Claims (1)
- リチウムを吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極と、リチウムを吸蔵放出可能な負極活物質を含む負極と、非水電解液とを備えた非水系二次電池において、前記非水電解液がニオブ化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物の少なくとも1種を含み、電解液重量に対する前記化合物の含有量が0.1〜5wt%であることを特徴とする非水系二次電池。
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- 2003-06-30 JP JP2003187990A patent/JP2005025992A/ja active Pending
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