JP2005023112A - 有機物の分解方法 - Google Patents

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秀晴 長田
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Abstract

【課題】プラスチック等の有機物は、焼却するとダイオキシン等が発生するため、光触媒による分解が好ましい。
しかしながら、光触媒は触媒効率を上げるためできるだけ小さいことが望ましい。即ち、微粉末にするのである。従来のこの微粉末を使用する方法は、微粉末が舞い上がり、下流側に同伴される。これを分離してリターンすることが難しいという問題があった。また、微粉末が種々の空隙に詰まるという問題もあった。
【解決手段】有機物を酸化分解する方法であって、心材に水系樹脂を塗布し、次いでセメント及び粉状光触媒を固着した担持触媒を触媒として用い、該触媒には電磁波を照射するもの。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機物の分解方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、プラスチック等の有機物の処理が大きな社会問題となっている。これは、プラスチックがそのままでは分解しないため、埋め立てでは解決しないこと、また埋め立て場所もなくなりつつあるということが大きな原因である。
【0003】
このようなプラスチック等の処理は、従来から焼却であった。焼却は炉内で高温で燃焼させ、二酸化炭素、その他の酸化物にすることである。
【0004】
しかしながら、燃焼方法では完全燃焼しない限り有毒ガスが発生する危険性がある。よって、どうしても高温で燃料を使用して燃焼させることとなる。よって、不要な燃料も焼却しているため、周囲環境を加熱し、二酸化炭素を不必要に発生していることとなる。更に、ダイオキシンの発生も大きな問題である。
【0005】
そこで、発明者等は、プラスチックを光触媒によって比較的低温で酸化分解させる方法を考案し特許出願もしている。
これは、プラスチック砕片を加熱した光触媒粉体と混合するものであり、低温で簡単にプラスチックが分解できる優れた方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
光触媒は触媒効率を上げるためできるだけ小さいことが望ましい。即ち、微粉末にするのである。従来のこの微粉末を使用する方法は、微粉末が舞い上がり、下流側に同伴される。これを分離してリターンすることが難しいという問題があった。また、微粉末が種々の空隙に詰まるという問題もあった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以上のような現状に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明有機物の分解方法を完成したものであり、その特徴とするところは、有機物を酸化分解する方法であって、心材に水系樹脂を塗布し、次いでセメント及び粉状光触媒を固着した担持触媒を触媒として用い、該触媒には電磁波を照射する点にある。
【0008】
ここで有機物は、その形態はどのようなものでもよい。固体、液体、気体どのような状態のものでもよい。有機物も低分子、高分子は問わない。
例えば、固体で高分子であるものの代表はプラスチックである。また、液体としては、油脂や有機溶媒のようなものだけでなく、PCB等の有毒物も含まれる。気体としては、悪臭成分やシックハウス症候群の原因といわれているホルムアルデヒド等にも有効である。
即ち、本発明は有機物の分解方法であって、有機物自体はどのようなものでもよいということである。
【0009】
次に使用する触媒について説明する。
ここで心材とは、担持する被担持物である。本発明では、これは特別限定するものではない。無機系の粒子、即ち、シリカ、アルミナ、ケイ砂、天然石等だけでなく、有機物であるゴム粒子やプラスチック粒子でもよい。更に、ガラスバルーンのような無機の中空体でもよい。また、コンクリート廃材粒子、鉄鉱スラグ粒子など各種廃材粒子でもよい。多孔体であってもなくともよい。サイズは、特に限定はしないが、10mm以下、好ましくは数μm〜6mm、更に好ましくは10μm〜1mm程度が好適である。
【0010】
ここでいう水系樹脂とは、水溶性樹脂の水溶液、または非水溶性樹脂のポリマーエマルジョンをいう。要するに水によって塗布できる状態になっているものである。
【0011】
ポリマーエマルジョンとは、通常の樹脂エマルジョンであり、アクリルやエポキシ等のエマルジョンでよい。混合比率も通常通りでよい。
エマルジョンは、重合したポリマーのエマルジョンでも反応性のエマルジョンでもよい。2液の反応性エマルジョンは主剤と硬化剤のうち少なくとも一方がエマルジョンである必要がある。エマルジョンの樹脂あるいは反応性物質の濃度は10〜80%であり、残りは液体である。水の層中には少量の界面活性物質、水溶性物質等が溶解していてもよい。
エマルジョンは適当に水で希釈してもよいし、粉体は付着前後に必要量追加してもよい。
更に、このエマルジョンには、セメントを混合しておいてもよい。混合量としては、エマルジョン100重量部に対して、セメント20〜500重量部が好適である。
【0012】
水溶性樹脂は、どのようなものでもよいが、ポリビニルアルコール、CMCその他通常のものでよい。
【0013】
ここでいう粉状光触媒は、通常は酸化チタンのアナターゼ型と呼ばれるものである。勿論、光触媒効果があれば他のものでもよい。他の触媒を混合してもよい。
大きさは、数nm〜数μmが好適である。
セメントは、ポルトランドセメント系のものを意味するだけでなく、広義の無機質接合材ともいうべき物である。セメントを分類すると、気硬性セメント、水硬性セメント及び特殊セメントに大きく分けられる。〔コンクリート工学ハンドブック(1990.7.1改訂新版発行、第6刷、朝倉書店〕ポルトランドセメントのほかには、水硬性石灰、高炉セメント、フライアッシュセメント、着色セメント、アルミナセメント、グラウト用セメント、耐酸セメント、各種水ガラスセメントなどがあげられる。
セメントが水などにより硬化するさいに、セメント同士が触媒粒子を囲むネットワークを均一に形成させるために各種触媒粉末とセメント粉末とを予め均一混合しておき使用するとよい。
【0014】
上記した心材として、ケイ砂等に樹脂でセメントを固着したものを用いてもよい。即ち、このセメントを固着したケイ砂等を心材として、ポリマーエマルジョンを塗布するのである。このように、心材自体が周囲にセメントを固着したものであれば、より接着が容易になるし、心材の角張った形が丸みを帯びてきて流動性の良い粒子になる。
また、心材自体に、樹脂のみあるいは樹脂モルタルを、例えば0.5〜3%の薄層で塗布した物でもよく、この場合は心材粒子同士の付着力は小さいのでセメント粉体などをまぶさなくても取り扱いは、未硬化時でも比較的容易である。
心材が有機樹脂などの光触媒で分解しやすい物では、上述のようにセメントバリア層を形成するのが安価であるが、フッ素系又はシリコン系接着剤の層を形成してもよいことは当然である。薄層塗布ではセメント粉体などまぶしてもまぶさなくてもよい。
【0015】
次に本発明に使用する触媒の製造方法の1例について説明する。
まず、心材と水系樹脂(ポリマーエマルジョン(セメントを含むものでもよい)を例にとって説明する)を混合攪拌する。ここにセメントを入れ攪拌する。
ポリマーエマルジョン100重量部に対してセメントが600重量部以下が好適である。
また、本法では、心材の表面に水系樹脂液を塗布し、その塗布量によって付着する粉体の量が決まるので、その範囲内では粉体としてセメントの他に種々の触媒粉体を含有率を変えて層状に形成することができる。これは粉体と樹脂液の混合が機械的な固体と液体の混合ではなく毛細管現象による液体の静的な浸透であるためである。
通常の粉体の固液混合では、心材への塗布のためには液比を高めて流動性を出さなくてはならず、粉体高含有スラリーの心材への塗布と粒子化(乾燥状態)は著しい困難をともない実質的には不可能である。
そして、エマルジョンの水とセメントが固化して流動性を失なう前に粉状光触媒を入れて攪拌する。この量は、ポリマーエマルジョン100重量部に対して、600重量部以下が好ましく、その値はポリマーエマルジョンにあらかじめ混合されたセメント量によって影響される。これで完成であるが、水が不足する場合には追加的に水を加えてもよい。
【0016】
このようにしてできた触媒は、表面が光触媒であるのに、エマルジョンとして使用した樹脂と光触媒の間にセメントが遮断層(完全でなくとも)として存在するため、有機物である樹脂が分解されないのである。
また、間隙をぬってエマルジョンの樹脂成分が酸化されたとしても、中間のセメント層がネットワーク状の接着層となり、粉状触媒を心材に固定するため、触媒が心材から離脱することはない。
水系樹脂(水溶性又は水エマルジョン)の役割は心材と粉体を接着して成形する(一定形状を保持する)ことにあるが、その含有する水によってセメントを固化結合することも重要である。樹脂が硬化した後も接着剤として形態保持するが、これは硬化したセメントも同様の役割を果たす。しかし、触媒担持粒子が苛酷な条件(例えば、高温、UV照射、酸化など)下で使用されれば、樹脂は分解消滅することにもなり、粒子の形態保持はセメント粒子の結合力、耐久性に委ねられる。使用時の反応条件によって、水系樹脂は一般に一部〜全部残留するが、全部分解消失することもある。
【0017】
このような触媒は、一般的に見られる骨材粒子に対し、粉状の各種触媒をセメント粉末とともに付着させ、セメントを硬化させることにより担持させるものであり、主に常温、常圧で行なうことができること、触媒およびセメント粉末は、骨材に塗布する水系樹脂によって付着、保持される。
粉体担持された骨材粒子は、最表面に樹脂は無く、粉体で覆われ、そのためこの粒子は相互に付着しあわず流動性が非常によい。
【0018】
心材の上に、はじめに付着した樹脂に対して、粉体は飽和するまで付着されるが、粉体の構成をセメントのみ、セメント/触媒粒子混合物あるいは触媒のみとすることにより、1層以上の粉体層が形成される。
最表面の触媒粒子比率を最も高くしておくのが好ましいことは当然である。セメントの硬化によるネットワークの形成は水との反応によって行なわれる。はじめは、エマルジョンなどに含まれる水によって行なわれるが、水が不足する場合には層形成の途中あるいは最終段階以後に水を供給することができる。養生は主に室温で行なわれるが、業界周知の加熱蒸気養生等によってもよい。
養生によって、セメントは粒子同士が反応、結合し、ネットワークが形成されると同時に触媒粒子を抱き込んであるいは反応して固着することになる。このような状態では、樹脂(エマルジョンまたは水溶液中)の存在はもはや必要なものではなくなる。
【0019】
本発明分解方法は、上記の担持触媒を用いて、これらと有機物を接触させることにある。
その第1の方法は、固体の有機物の破砕物(粉砕物)と加熱した担持触媒を混合攪拌し、そこに電磁波を照射するものである。電磁波は、紫外線、可視光、赤外線、電子線等である。加熱は、混合容器又はその前段階で電気ヒータやガスバーナーで行なうのがよい。
混合は攪拌機(回転羽根を有する)が簡単である。
加熱の温度は、100℃〜500℃であるが、250℃〜300℃程度が好適である。
【0020】
固体の破砕物も予め加熱しておいてもよい。プラスチック等の場合、その軟化点近くまで加熱しておくのが好適である。
【0021】
混合攪拌、分解は、バッチ式でもよいが連続的に行なうことが好ましい。例えば、ロータリーキルン方式、ベルトコンベア方式等順次下流に触媒と有機物の混合物を送り、分解され気体となった有機物は上部から排出し、光触媒はリターンして最初の位置に戻す。
【0022】
電磁波照射機(紫外線ランプ等)は混合物に連続的に電磁波を照射するよう配置する。特に光触媒には常時照射されているようにすることが望ましい。
【0023】
第2の方法は、有機物が液体の場合である。この場合にも基本的には上記と同様であるが、上記のようなコンベア上の担持触媒上に液体有機物を適用するのがよい。適用とは、散布、滴下、その他触媒に液体をかけることをいう。
また、まったく別に液体有機物と担持触媒を容器内で混合攪拌する方法でも構わない。
【0024】
更に、第3の方法として、有機物が気体の場合、担持触媒を入れた容器内をその気体を通過させるだけでよい。電磁波の照射が効率的にできるように薄い容器(網等の)に入れたものでもよい。また、担持触媒をフィルターに固着し、そこを気体が通過するようにしてもよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下好適な実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。まず、担持触媒の例を示す。
Figure 2005023112
製法:
ポリマーエマルジョン−セメント混合物を調整する。これは、エマルジョンにセメントを混合して作成した。これとケイ砂を混合、攪拌し、ケイ砂の周囲をポリマーエマルジョンが完全に覆うようにする。これが流動性を示すうちに、追加のセメントを混合、攪拌し、最後に酸化チタンを混合攪拌する。これを1日室温養生した後、少量の水を添加混合し室温養生する。これでセメントが硬化すれば完成である。
室温養生(7日間)後の酸化チタン担持ケイ砂5号粒子は均一な暗褐色をしており、流動性良好であった。酸化チタンの遊離は見られなかった。
【0026】
Figure 2005023112
製法:
ケイ砂7号に樹脂を塗布しセメントを固着する。これを心材とする。
ポリマーエマルジョン‐セメント混合物を調整する。これは、エマルジョンにセメントを混合して作成した。これと心材を混合、攪拌し、心材の周囲をポリマーエマルジョンが完全に覆うようにする。これが完全硬化する前に、追加のセメント(酸化チタンを混合したもの)を混合、攪拌する。これでセメントが硬化すれば完成である。
【0027】
室温養生1日後の酸化チタン担持ケイ砂7号粒子は灰色で流動性は良好であった。透明フィルム袋内で振動させるとフィルム面は遊離酸化チタンにより発生するくもりが見られず透明であった。
【0028】
Figure 2005023112
製法:
ポリマーエマルジョン−セメント混合物を調整する。これは、エマルジョンにセメントを混合して作成した。これとマイクロバルーンを混合、攪拌し、マイクロバルーンの周囲をポリマーエマルジョン−セメント混合物が完全に覆うようにする。次いですぐセメント/酸化チタン混合物を混合、攪拌し、最後に酸化チタンを混合、攪拌して完了する。
【0029】
室温養生1日後及び7日後の酸化チタン担持マイクロバルーン粒子は有色で流動性は良好であり、粒子同士の接着はほとんど見られなかった。しかし、透明フィルム袋内で、振動を与えるとフィルム面は白いくもりが見られ、酸化チタンの固着が不十分で一部遊離することがわかった。
【0030】
この担持粒子に対し、5重量部の水を添加し、混合、攪拌して養生10日間行なったところ、フィルム面のくもりは見られなくなった。養生後の粒子は付着して塊りになったが、簡単に崩れ単粒子になった。流動性は良好である。
【0031】
実施例1〜3の触媒を用いて実験を行なった。
図1は、本発明方法の1例を実施しているところを示すもので、反応容器1内に各実施例の担持触媒2が充填されている。この担持触媒2は、300℃に昇温されている。この中に攪拌翼3が設けられている。また、温度を保つため外熱式の加熱装置4(ガスバーナー)が設けられている。電気ヒーターでもよい。容器の天井部には紫外線照射装置5が取りつけている。
投入口6からポリエチレンの破砕品(サイズ約5〜10mm角)7を投入し、混合攪拌する。担持触媒2が紫外線により活性化され、プラスチック片7が酸化分解され、部分的又は全部がガス化する。このガスは排出口8から排出される。
【0032】
光触媒が粉体のままである場合、そのサイズが7〜20nm程度であるため、粉体が舞い上がり、排出口8からガスと共に排出されてしまう。よって、排出口8に相当目の細かいフィルターを設けなければならない。しかし、フィルターは直ぐに目詰まりする。よって、フィルター交換等の手間がかかった。
本実施例の場合、どの担持触媒においても光触媒の粉体に比較して、大きいため舞い上がりはほとんどなかった。
【0033】
【発明の効果】
本発明分解方法には、次のような大きな利点がある。
(1) 光触媒が粒子に担持されているため、舞い上がり等の扱いにくさが改善されている。
(2) 水系樹脂とセメントを用いているため、酸化チタンの固着力は減少しない。
(3) 自由にサイズを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の1例を実施しているところを示す断面図である。
【符号の説明】
1 反応容器
2 担持触媒
3 攪拌翼
4 加熱装置
5 紫外線照射装置
6 投入口
7 ポリエチレンの破砕品
8 排出口

Claims (5)

  1. 有機物を酸化分解する方法であって、心材に水系樹脂を塗布し、次いでセメント及び粉状光触媒を固着した担持触媒を触媒として用い、該触媒には電磁波を照射することを特徴とする有機物の分解方法。
  2. 該有機物は、固体であり、粉砕されたものであり、該担持触媒と混合されるものである請求項1記載の有機物の分解方法。
  3. 該有機物は、液体であり、該担持触媒のを固定した容器中を通過するものである請求項1記載の有機物の分解方法。
  4. 該有機物は、液体であり、上方から該担持触媒に噴霧又は滴下するものである請求項1記載の有機物の分解方法。
  5. 該有機物は、気体であり、該担持触媒が充填された容器内を通過するものである請求項1記載の有機物の分解方法。
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