JP2005022564A - 車両の前部車体構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両のバンパーレインフォースメントの下部に障害物との衝突による衝撃エネルギーが加わった際、フロントサイドフレームに均等に衝撃エネルギーを伝達し、確実なエネルギー吸収により、乗員の安全を確保する。
【解決手段】バンパー1の車両後方で車幅方向に延びるバンパーレインフォースメント11と、フロントサイドフレーム5の前端部とが連結部材9で連結され、連結部材9は車両側面視断面略三角形状とされ、連結部材9の頂部はバンパーレインフォースメント側端部11A後面部に連結されているとともに、底辺部はフロントサイドフレーム5の前端部に連結されている。バンパーレインフォースメント11下部に加わった衝撃エネルギーは、連結部材9の頂部から上辺部31Uと下辺部31Lとに略均等に分配伝達され、さらに、フロントサイドフレーム5の上面部5Uと底面部5Lにも略均等に伝達される。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の前部車体構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の前部車体構造としては、下記特許文献1が知られている。本文献には、バンパーの衝撃吸収性能を落とすことなく、自動車衝突時における対向物(例えば、相手車のバンパー)が自車の上方へ乗り上げるのを防止するためのバンパー構造が開示されている。つまり、相手車の下部へ潜り込んでしまうのを防止するバンパー構造が提案されている。
【0003】
ところで、近年、自動車の使い方の多様化により、車高の低いタイプの車両に対して、車高の高いタイプの車両の比率が高まりつつある。例えば、レジャービークル(所謂、RV車)、或いはスポーツユーティリティビークル(所謂、SUV車)が車高の高いタイプの車両である。
【0004】
車高の低いタイプの車両、或いは車高の高いタイプの車両に係らず、一般的に、車両の前部は、車両側方視模式図である図6(A)に示すように、車両前方部側方において前後方向に延び、途中、衝撃エネルギーを吸収する蛇腹部90aを備えた左右一対のフロントサイドフレーム90と、該フロントサイドフレーム90の前端部に設けられ側方視略四角形状で衝撃エネルギーを吸収する蛇腹状のクラッシュ管91と、該クラッシュ管91の前端部において車幅方向に向かって延びるバンパーレインフォースメント92と、フロントサイドフレーム90前端部よりやや後方の側面部から下方に延びる支持部材93と、左右の支持部材93の下方部を連結する第1クロスメンバ94とを有した構造とされているものが多い。
【0005】
このような前部車体構造を有する車両は、図6(B)に示すように、バンバー位置が略同じ高さに設けられた車両との前面衝突、あるいは高い壁等との前面衝突に対しては、衝突部96から入力される衝突エネルギーがバンパーレインフォースメント92からクラッシュ管91に伝達されてクラッシュ管91が潰されることにより衝撃を一部吸収し、さらに残りの衝撃エネルギーは、フロントサイドフレーム90に伝達されて蛇腹部90aが潰されることにより衝撃を吸収し、最終的には、車室前部のダッシュパネル95の後退を抑えるようにされている。
【0006】
これは、バンパーレインフォースメント92前面に均一に衝撃エネルギーが加わり、矢印のように、バンパーレインフォースメント92、クラッシュ管91、更にはフロントサイドフレーム90の蛇腹部90aを潰していく過程で衝撃エネルギーを十分に吸収することができるためである。
【0007】
しかし、下記特許文献1に記載されているような車高の低いタイプの車両が、車高の高いタイプの車両に対して前方から衝突した場合、或いは、車高の高低に係らず、その車両のバンパーレインフォースメントよりも僅かに低い高さの障害物に前方から衝突した際には、車高の高い車両、或いは障害物よりも僅かに高い位置にバンパーレインフォースメントを備える車両は衝突エネルギーを十分に吸収できず、ダッシュパネルの後退を抑え難い。
【0008】
図6(C)は、その車高の高いタイプの車両が受けた衝撃エネルギーの伝達、及び車体の変形を模式的に示す図である。ここでは、車高の低いタイプの車両と車高の高いタイプの車両との前面衝突について説明するが、車高の低いタイプの車両の衝突部を、障害物と読み替えても良いし、車幅方向左右のどちらかの車両前部に衝突する、所謂、オフセット衝突で考えても良い。
【0009】
図6(C)に示すように、車高の低いタイプの車両と車高の高いタイプの車両との前面衝突では、車高の低いタイプの車両の衝突部(例えば、フロントバンパー)97は、車高の高いタイプの車両のフロントバンパー(不図示)を介してバンパーレインフォースメント92の下部に衝突する。この段階でクラッシュ管91の下部は押し潰されるが、バンパーレインフォースメント92の上部には衝突部97が直接、衝突していないので、上部と下部とに伝達される衝撃エネルギーに差が生じる。
【0010】
したがって、クラッシュ管91の下部は潰されるが、クラッシュ管91の上部は押し潰される長さが短くなってしまう。そして、クラッシュ管91の下部は大きな衝撃エネルギーが入力されているため、吸収しきれないエネルギーが更にフロントサイドフレーム90の下部に伝達されて蛇腹部90aの下部を潰す。
【0011】
このようになると、フロントサイドフレーム90の前方部は下方に向かって折れ曲がる状態に変形するが、矢印で示すように、フロントサイドフレーム90の上部に入力されたエネルギーが小さいがために、その下部に伝達されたエネルギーは逆に大きく、蛇腹部90aの下部が潰れても、エネルギーが吸収しきれず、その結果、フロントサイドフレーム90の前部が下方に折れ曲がり、この折れ曲がった状態のまま、さらにエネルギーが車両後方に伝達していくことになる。
【0012】
したがって、車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネル95には、フロントサイドフレーム90からのエネルギーが伝達され、結果、ダッシュパネル95の後退が抑えきれず、乗員の安全確保が困難となってしまう。
【0013】
【特許文献1】
特開平4−368248号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
以上から本発明は、車両のバンパーレインフォースメントの下部に障害物との衝突による衝撃エネルギーが加わった際、フロントサイドフレームに均等に衝撃エネルギーを伝達し、確実なエネルギー吸収により、乗員の安全を確保することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に関わる第一の構成は、エンジンルームの側壁を構成するホイールエプロンに沿って前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームの前端部分にバンパーが取付けられる車両の前部車体構造であって、バンパーの後方には車幅方向に延びるバンパーレインフォースメントが配設され、バンパーレインフォースメントの車幅方向側端部とフロントサイドフレームの前端部とが連結部材で連結され、連結部材のフロントサイドフレームより前方部は、車両側面視で前窄み略三角形状の衝撃吸収部とされ、衝撃吸収部の車両前方側頂部近傍は、バンパーレインフォースメントの車幅方向側端部の後面部に連結されているものである。
【0016】
第一の構成によれば、バンパーの車両後方で車幅方向に延びるバンパーレインフォースメントと、フロントサイドフレームの前端部とが車両側面視で前窄みの略三角形状の連結部材で連結される。より具体的には、連結部材は、車両前方側頂部がバンパーレインフォースメントの車幅方向側端部の後面部に連結されるとともに、連結部材の後方部がフロントサイドフレーム前端部に連結されている。
【0017】
車両の前部車体構造を上記構造にしておくと、バンパーレインフォースメントの下部に障害物が衝突した瞬間、まず、バンパーレインフォースメントには、前方下部から後方上部に向かう荷重が加わる。その際、略三角形状の連結部材の下面側に荷重が入力されてくるが、その荷重は、バンパーレインフォースメントを介して連結部材の頂部にも入力される。そして、その後に障害物からの全荷重が頂部に入力されるようになると、略三角形状の連結部材の上辺部と下辺部とに略均等に荷重が分配され、これら略均等な荷重は、クラッシュ管の機能を有する連結部材の上辺部と下辺部を均等に潰して衝撃エネルギーを吸収する。そして、ここで吸収し切れなかった衝撃エネルギーは、フロントサイドフレームの上面部と下面部に略均等に伝達され、通常、フロントサイドフレームの前方部に設けられている蛇腹状の衝撃吸収部で吸収される。なお、連結部材の上辺部と下辺部は、上下方向からの荷重に対しては、所定の強度を備えている。
【0018】
したがって、従来技術で示したように、フロントサイドフレームが下方に向って屈曲して、衝撃吸収が十分にできなくなってしまうのが回避できる。即ち、バンパーレインフォースメントの前面全体に衝撃荷重が加わる場合と同じように、クラッシュ管の機能を有する連結部材、及びフロントサイドフレームが上下均等に潰れて衝撃吸収が十分になされ、ダッシュパネルの後退長さが短くなって、乗員の安全が確保できるようになる。
【0019】
本発明に関わる第二の構成は、衝撃吸収部は、車両側面視で底辺長さよりも長い二辺を有する略二等辺三角形状とされ、長い二辺によって挟まれる頂部近傍は、フロントサイドフレームの前端面の上下幅略中間高さに設けられていると共に、バンパーレインフォースメントの車幅方向側端部の後面部に連結されているものである。
【0020】
第二の構成によれば、衝撃吸収部は、頂部とフロントサイドフレームの前端面の上下幅略中間高さを結ぶ水平線に対して、線対称の略二等辺三角形とされており、且つ頂部近傍は、バンパーレインフォースメントの車幅方向側端部の後面部に連結されているので、長い二辺が夫々、上辺部、下辺部となり、衝撃エネルギーで潰れる長さが長くでき、十分にエネルギー吸収することが可能となると共に、バンパーレインフォースメントの車幅方向側端部の後面部から入力される衝撃エネルギーが上辺部と下辺部とに略均等に分配、伝達され、結果、クラッシュ管の機能を有する連結部材の衝撃吸収部、及びフロントサイドフレームが上下均等に潰れて衝撃吸収が十分になされ、ダッシュパネルの後退長さが短くなって、乗員の安全が確保できるようになる。
【0021】
本発明に関わる第三の構成は、連結部材は、少なくとも、頂部から後上方に延びる上辺面部と、同後下方に延びる下辺面部と、上辺面部と下辺面部の車幅方向内方側端部を連結する内方側壁面部と、上辺面部と下辺面部の車幅方向外方側端部を連結する外方側壁面部とから成るボックス形状とされているものである。
【0022】
第三の構成によれば、連結部材は、上辺面部、下辺面部、内方側壁面部、及び外方側壁面部とから成るボックス形状とされている。つまり、側面視三角形状であるとともに、頂部を挟む上下二辺である上辺部と下辺部が、車両外方と内方とにおいて夫々、側壁面で結ばれた形状とされているので、バンパーレインフォースメントの下部に障害物が衝突し、頂部に衝突によるエネルギーが入力された際、側壁面を通して頂部を挟む二辺夫々に、略均等に衝撃エネルギーが伝達されるようになる。また、側壁が設けられていない構造、つまり1枚の板部材を単に略三角形に屈曲形成した構造では、頂部に衝突によるエネルギーが入力された際、上下二辺の内の何れか一方、又は両方がエネルギーを吸収することなく簡単に潰れてしまうのに対し、側壁が設けられることによって剛性が増すので、衝撃エネルギー吸収のためのクラッシュ管の機能が発揮できる。
【0023】
以上から、第三の構成によって、バンパーレインフォースメントの下部に障害物が衝突し、頂部に衝突によるエネルギーが入力された際、頂部を挟む二辺に略均等に衝撃荷重を分配し、衝撃エネルギーを吸収しつつ、後方のフロントサイドフレームの上部と下部にも略均等に衝撃エネルギーを伝達することが可能となって、結果、フロントサイドフレームが下方に屈曲することなく衝撃エネルギーの吸収ができ、ダッシュパネルの後退長さが短くなって、乗員の安全が確保できるようになる。
【0024】
本発明に関わる第四の構成は、連結部材は、衝撃吸収部の後端側から連続して後方に延びる連結面部を備え、連結面部がフロントサイドフレーム前端部に設けられた開口に挿入固定されているものである。
【0025】
第四の構成によれば、連結部材は、衝撃吸収部の後端側から連続して後方に延びる連結面部を備え、連結面部がフロントサイドフレーム前端部に設けられた開口に挿入固定されているので、従来では通常、フロントサイドフレームとクラッシュ管とはフランジ接合されているのに対して、車両前後方向視で取付けフランジ等が無くコンパクトになると共に、連結部材に入力された衝撃エネルギーを直接、フロントサイドフレームに伝達することが可能となって、結果、フロントサイドフレームが下方に屈曲することなく衝撃エネルギーの吸収ができ、ダッシュパネルの後退長さが短くなって、乗員の安全が確保できるようになる。
【0026】
本発明に関わる第五の構成は、連結部材は、フロントサイドフレームの前端部に設けられているものである。
【0027】
第五の構成によれば、連結部材は、フロントサイドフレームの前端部に設けられているので、連結部材の頂部を挟む二辺に入力される衝撃エネルギーを直接、フロントサイドフレームの上部と下部に均等に伝達することが可能となって、結果、フロントサイドフレームが下方に屈曲することなく衝撃エネルギーの吸収ができ、ダッシュパネルの後退長さが短くなって、乗員の安全が確保できるようになる。
【0028】
本発明に関わる第六の構成は、衝撃吸収部の車両前方側頂部近傍の上下辺面部は、バンパーレインフォースメントの車幅方向側端部の後面部によって挟み込むようにして結合されているものである。
【0029】
第六の構成によれば、バンパーレインフォースメントは、衝撃吸収部の車両前方側頂部近傍を上下で挟み込むようにして結合されているので、バンパーレインフォースメントの下部、略中央高さ位置、或いは上部のどこに衝撃エネルギーが入力されても、頂部から連結部材の上辺及び下辺に衝撃エネルギーを略均等に分配して伝達でき、連結部材は衝撃吸収をしつつ、フロントサイドフレームの上部と下部にも略均等に衝撃エネルギーを伝達することが可能となる。結果、フロントサイドフレームが下方に屈曲することなく衝撃エネルギーの吸収ができ、ダッシュパネルの後退長さが短くなって、乗員の安全が確保できるようになる。
【0030】
【発明の効果】
以上より本発明は、車両のバンパーレインフォースメントの下部に障害物との衝突による衝撃エネルギーが加わった際、フロントサイドフレームに均等に衝撃エネルギーを伝達し、確実なエネルギー吸収により、乗員の安全を確保することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図5に基づいて説明する。図1は、本発明に関わる車両の前部車体構造を示す斜視図、図2は、図1における連結部材とフロントサイドフレームの連結構造の第1の実施形態を示す図、図3は、図2で説明する連結部材の詳細図、図4は、連結部材とフロントサイドフレームの連結構造の第2の実施形態を示す図である。図5は、第1の実施の形態の構造を基に、車体前部が衝撃エネルギーを吸収する過程を説明する図である。
【0032】
本発明に関わる車両の前部車体構造は、図1に示すように、エンジンルームERの左右側壁であるホイールエプロン3、3に沿って前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム5、5の前端部分に、車両側方視で前窄み略三角形の形状の衝撃吸収部9A、9Aを有する連結部材9、9が連結され、さらに連結部材9、9を連結するバンパーレインフォースメント11が車幅方向に配設されている。また、連結部材9、9やバンパーレインフォースメント11等を覆うように、車両前方からバンパー1が白抜き矢印の如く近接配設される。
【0033】
なお、本発明では、連結部材9において、フロントサイドフレーム5よりも前方に位置する衝撃吸収部9Aは車両側面視で略三角形状としている。第1及び第2の実施の形態では、その前端頂部T(図2(B)参照)が車幅方向に延び、上下方向に僅かな頂部幅を有する前面部31T(図3参照)が形成された衝撃吸収部9Aを示しているが、この前面部31Tは僅かな頂部幅であるため、車両側方視での衝撃吸収部9Aとしては略三角形状と言える。したがって、本発明では、これら実施形態の衝撃吸収部9Aの形状も略三角形状と呼び、さらにはその前面部が前方に向かって円弧状になっているものも略三角形状と呼ぶものとする。
【0034】
図1から分かるように、バンパーレインフォースメント11の車幅方向端部11Aは、連結部材9における衝撃吸収部9Aの形状に沿うように車両側面視略く字状とされ、頂部T(図2(B)参照)を挟むようにして上下面複数の溶接点Wで結合されている。また、バンパーレインフォースメント11の車幅方向内方部11Bは、車幅方向断面視で略逆コ字状とされ、車両前方から入力される衝撃エネルギーを高面積で受けるようになっている。
【0035】
フロントサイドフレーム5の車両外方面の前下部には、下方に延びる支持部材8が固定され、支持部材8の下部車両内方面には第1クロスメンバ7が固定されている。第1クロスメンバ7は、もう一方のフロントサイドフレーム5に固定された支持部材に向かって車幅方向に配設されており、フロントサイドフレーム5、5間における第1クロスメンバ7の上面部(符号なし)には、ラジエータやコンデンサ(不図示)を支持するシュラウド13がマウント部材(不図示)を介して支持されている。なお、シュラウド13の上部は、左右後方に延びる延設部13a、13aの先端部がホイールエプロン3、3に固定される。
【0036】
次に、図2と図3に基づいて、連結部材9の構造、及び連結部材9とフロントサイドフレーム5との連結構造について説明する。
【0037】
図2において、図2(A)は、図1における(A)方向矢視図であり、図2(B)は、図1における(B)方向矢視図である。なお、図2では、ホイールエプロン3、第1クロスメンバ7、支持部材8、及びシュラウド13は省略している。
【0038】
また、図3において、図3(A)は、連結部材9の構造を示す図であり、図3(B)は、連結部材9を構成する部材の分解図である。
【0039】
図2(A)に示すように、フロントサイドフレーム5の前端部には連結部材9が連結されている。連結部材9は、略三角形状の衝撃吸収部9Aと、フロントサイドフレーム5の前端部内に挿入固定されている連結面部9Bとから成り、フロントサイドフレーム5に設けられた複数の孔5h、5hと、連結部材9に設けられた複数の孔(図3参照)とが位置合わせされて図示しない締結部材によって連結される。
【0040】
図1で説明したように、連結部材9の衝撃吸収部9A頂部は、バンパーレインフォースメント11の車幅方向端部11Aと連結されている。詳細には、バンパーレインフォースメント11の車幅方向端部11Aは、連結部材9の衝撃吸収部9Aが車両側方視で略三角形状であるため、その上辺面部31Uに沿う上面部11Uと、下辺面部31Lとに沿う下面部11Lを有し、夫々、上面部11Uは上辺面部31Uに、下面部11Lは下辺面部31Lに溶接により連結されている。つまり、車両側方視で略三角形状を成す連結部材9の衝撃吸収部9Aの車両前方側に位置する頂部Tは、バンパーレインフォースメント11の車幅方向端部11Aにおける車両後方面部によって挟まれるようにして結合されている。なお、頂部Tは、フロントサイドフレームの前端面の上下幅略中間高さに設けられており、ハッチングで示すように、連結部材9の最前面の前面部31Tだけでなく、上辺面部31Uと下辺面部31Lの前方部を含むものとする。
【0041】
また、フロントサイドフレーム5には、連結部材9と連結される位置よりも後方で、蛇腹状の衝撃エネルギー吸収部5Aが設けられている。なお、衝撃エネルギー吸収部5Aは、フロントサイドフレーム5の車両外方面部5Sa(図3(B)参照)と、車両内方面部5Sb(図3(B)参照)との両方に対面するように設けられ、衝撃エネルギーが車両前方から入力された際、その長さが短くなるように潰れて、衝撃エネルギーを車両前部で吸収する役割を有している。
【0042】
図2(B)、図3(A)、及び図3(B)に基づいて連結部材9の構造、及び連結部材9とフロントサイドフレーム5との連結構造を、より詳細に説明する。
【0043】
まず、図3(B)に示すように、連結部材9は、車両側方視で略く字状に折り曲げられた形状の中央部材31と、中央部材31の車両幅方向外方側に設けられる外方側壁部材32と、中央部材31の車両幅方向内方側に設けられる内方側壁部材33とから構成されている。
【0044】
中央部材31は、図2(A)に示したように、上辺面部31Uと下辺面部31Lとを有し、上下方向に僅かな頂部幅を有する前面部31Tが、上辺面部31Uと下辺面部31Lの前部を繋いでいる。
【0045】
上辺面部31Uの後端部には、水平に後方に向かって延びる上部連結面部31Ubが、また、下辺面部31Lの後端部には、水平に後方に向かって延びる下部連結面部31Lbが設けられ、上部連結面部31Ubと下部連結面部31Lbとには夫々、孔31h、31hが形成されている。
【0046】
外方側壁部材32は、中央部材31の上辺面部31U、前面部31T、及び下辺面部31Lの車両幅方向外方側端部を覆う車両側方視略三角形の外方側壁面部32aと、外方側壁面部32aの後部から連続して後方に延びる外方連結面部32bと、さらに、外方側壁面部32aから、中央部材31の上辺面部31Uの下面に連結されるように折り曲げられて車両内方に延びる上部延設固定面部32U、及び外方側壁面部32aから、中央部材31の下辺面部31Lの上面に連結されるように折り曲げられて車両内方に延びる下部延設固定面部32Lとが設けられている。
【0047】
また、外方連結面部32bには、複数の孔32h、32hが形成されている。
【0048】
内方側壁部材33は、中央部材31の上辺面部31U、前面部31T、及び下辺面部31Lの車両幅方向外方側端部を覆う車両側方視略三角形の内方側壁面部33aと、外方側壁面部33aの後部からから連続して後方に延びる外方連結面部33bと、さらに、外方側壁面部33aから、中央部材31の上辺面部31Uの下面に連結されるように折り曲げられて車両外方に延びる上部延設固定面部33U、及び内方側壁面部33aから、中央部材31の下辺面部31Lの上面に連結されるように折り曲げられて車両外方に延びる下部延設固定面部33Lとが設けられている。
【0049】
また、外方連結面部33bには、複数の孔33h、33hが形成されている。
【0050】
これら、中央部材31と、外方側壁部材32と、内方側壁部材33とを組み立てた連結部材9が、図3(A)に示されている。なお、図中、X印は溶接箇所を示す。同図から分かるように、連結部材9は、中央部材31の上辺面部31Uが、外方側壁部材32の上部延設固定面部32U、及び内方側壁部材33の上部延設固定面部33Uと複数箇所で溶接固定されるとともに、下辺面部31Lも、外方側壁部材32の下部延設固定面部32L、及び内方側壁部材33の下部延設固定面部33Lと複数箇所で溶接固定され、ボックス形状とされている。
【0051】
図2(B)に示すように、連結部材9とフロントサイドフレーム5との連結は、連結部材に形成された孔とフロントサイドフレームに形成された孔とを位置合せし、図示しない締結部材で連結されている。
【0052】
具体的には、フロントサイドフレーム5は、車両前後方向視で中空の略四角形状とされ、上面部5Uと、車両外方面部5Saと、底面部5Lと、車両内方面部5Sbとから構成されている。
【0053】
これら上面部5Uと、車両外方面部5Saと、底面部5Lと、車両内方面部5Sbとを周縁部として、開口Kがフロントサイドフレーム5の前端部に形成されており、開口K内に連結部材9の上部連結面部31Ub、下部連結面部31Lb、外方連結面部32b、及び内方連結面部33bが挿入、連結されている。
【0054】
フロントサイドフレーム5の上面部5Uと、車両外方面部5Saと、底面部5Lと、車両内方面部5Sbとには、夫々少なくとも1つの孔5hが形成されており、これらの孔5h、5hに対応するように連結部材9の孔31h、32h、33hは形成されているので、位置合わせした後、締結部材でフロントサイドフレーム5に連結部材9が連結されている。具体的には、例えば、連結部材9の上面部5Uに形成された孔5hと連結部材9における上部連結面部31Ubに形成された孔31hとが位置合せされるが、予め上部連結面部31Ubにおける内面の孔31hには、内面ナット部材(不図示)が固定されており、このナット部材に対して孔5h側からボルト部材(不図示)を通して締め付けていくことでフロントサイドフレーム5の上面部5Uと連結部材9における上部連結面部31Ubとが連結されているものである。
【0055】
以上の説明を簡単にまとめると、図2(A)に示した連結部材9における車両側方視で略三角形状の衝撃吸収部9Aは、上辺面部31Uと、下辺面部31Lと、外方側壁面部32aと、内方側壁面部33aとから成り、フロントサイドフレーム5の前端部内に挿入固定されている連結面部9Bは、上部連結面部31Ubと、下部連結面部31Lbと、外方連結面部32bと、内方連結面部33bとから成っている。
【0056】
なお、図3では、3つの部材を組み合わせた連結部材を説明したが、1枚の板材を成形したものであっても良い。
【0057】
次に、図4に基づいて、第2の実施形態を説明する。なお、図4は、図2(B)と同じ方向からの斜視図である。
【0058】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態で説明した連結部材9における上部連結面部31Ub、下部連結面部31Lb、外方連結面部32b、及び内方連結面部33bが後方に向かって延びるのではなく、車幅方向に延びるように設けられているものである。したがって、中央部材31の車幅方向長さと、上辺面部31Uの後端部と下辺面部31Lの後端部との距離は、第1の実施の形態よりもやや短くなっており、車両側方視で略二等辺三角形の衝撃吸収部を有した構造である。連結部材9を構成する中央部材31と外方側壁部材32との連結構造、及び中央部材31と内方側壁部材33との連結構造は、第1の実施の形態と同じで良い。頂部Tは、フロントサイドフレームの前端面の上下幅略中間高さに設けられており、第1の実施の形態と同じく、ハッチングで示すように、連結部材9の最前面の前面部31Tだけでなく、上辺面部31Uと下辺面部31Lの前方部を含むものとする。
【0059】
図4から分かるように、連結部材9において、上辺面部31U後端部からは上方に屈曲された上部フランジ部31UFが、下辺面部31L後端部からは下方に屈曲された下部フランジ部31LFが、外方側壁面部32a後端部からは車幅方向外方に屈曲された外方側フランジ32Fが、さらに内方側壁面部33a後端部からは車幅方向内方に屈曲された内方側フランジ33Fが設けられている。これら、上部フランジ部31UF、下部フランジ部31LF、外方側フランジ32F、及び内方側フランジ33Fは、いずれも連結面部としてフロントサイドフレーム5にエネルギーを伝達する機能を有している。
【0060】
一方、フロントサイドフレーム5の前端部には、上面部5Uと、車両外方面部5Saと、底面部5Lと、車両内方面部5Sbとを連結すると共に、内方に開口K’を有するフランジ部材5Fが固定されており、フランジ部材5Fの前面部に連結部材9の上部フランジ部31UF、下部フランジ部31LF、外方側フランジ32F、及び外方側フランジ33Fが、例えば、レーザ溶接により連結されている。
【0061】
以上説明したように、本発明は、バンパー1の車両後方で車幅方向に延びるバンパーレインフォースメント11と、フロントサイドフレーム5の前端部とが連結部材9で連結され、連結部材9はフロントサイドフレーム5より前方部が車両側面視で略三角形状の衝撃吸収部9Aとされ、衝撃吸収部9Aの車両前方側に位置する頂部Tは前記バンパーレインフォースメント側端部11Aの後面部に連結されており、これにより、車両前方部から衝撃エネルギーが入力された際、バンパーレインフォースメント11から連結部材9を経て、さらにフロントサイドフレーム5に衝撃エネルギーが伝達されるが、その過程で連結部材9がクラッシュ管の役目をして潰れるとともに、フロントサイドフレーム5が下方に折れ曲がることなく潰れて衝撃エネルギーを十分に吸収できるものである。
【0062】
このような効果が発揮できる理由について、自車のバンパーレインフォースメントの下部に、自車よりも車高の低い車両、即ち、自車のバンパーレインフォースメントよりも低い位置にバンパーレインフォースメントが配設された車両が衝突した場合を例とし、図5に基づいて説明を加える。なお、この自車よりも車高の低い車両のバンパーレインフォースメントを、単に障害物と考えても良い。
【0063】
図5は、先に説明した第1の実施の形態を基にし、衝撃エネルギーの入力から、車体前部が潰れる様子を時系列的に示している。図5の▲1▼は、バンパーレインフォースメントの下部に、互いのバンパーフェースを介して相手車のバンパーレインフォースメントが衝突した状態、図5の▲2▼は、連結部材でのエネルギーの分散状態、図5の▲3▼は、連結部材が潰れ、且つ連結部材が潰れても吸収し切れなかった衝撃エネルギーがフロントサイドフレームに伝達されている状態、図5の▲4▼は、最終的にフロントサイドフレームも潰れた状態である。なお、図5における▲2▼、▲3▼、及び▲4▼では、自車のバンパーフェース1とバンパーレインフォースメント11B、及び相手車のバンパーフェースBとバンパーレインフォースメントBRの図は省略した。
【0064】
まず、図5の▲1▼に示すように、自車のバンパーレインフォースメント11Bの下部に、自車のバンパーフェース1と相手車のバンパーフェースBを介して、相手車のバンパーレインフォースメントBRが衝突した場合、バンパーレインフォースメント11の車幅方向内方部11Bには車両の後上方に向かって突き上げる衝撃エネルギー(荷重)が作用する。バンパーレインフォースメント11は、車幅方向内方部11Bと、フロントサイドフレーム5の前端部に連結され、車両側方視で略三角形状を成す連結部材9の前方頂部に支持固定された左右一対の車幅方向端部11Aとを有しているので、車幅方向内方部11Bに作用する衝撃エネルギーは車幅方向端部11Aに伝達され、車幅方向端部11Aにおいても車両の後上方に向かって突き上げる方向の荷重となる。ここで、車幅方向端部11Aに作用する荷重を矢印で示し、これを荷重F1とする。
【0065】
バンパーレインフォースメント11の車幅方向端部11Aは、連結部材9における衝撃吸収部9Aの上辺部31Uと下辺部31Lの前方部を連結する頂部を上下から挟み込むように上面部11Uと、下面部11Lとによって、連結部材に固定されている。したがって、図5の▲2▼に示すように、荷重F1は、上辺部31Uと下辺部31Lに分配される。ここで、上辺部31Uに作用する荷重をF2、下辺部31Lに作用する荷重をF3とする。荷重F1は、一旦、略三角形状を成す連結部材9における上辺部31Uと下辺部31Lの前方部を連結する頂部に集中した後、水平線に対して同じ角度で上下に向かう上辺部31Uと下辺部31Lには、略均等な荷重、荷重F2と荷重F3とが作用する。
【0066】
但し、正確には、バンパーレインフォースメントには前方下部から後方上部に向かう突き上げ荷重が入力されるため、一旦、連結部材の頂部に集中したとしても、上辺部31Uに加わる荷重の方が下辺部31Lに加わる荷重よりも若干大きい。
【0067】
図5の▲3▼に示すように、これら略均等な荷重F2、F3は、クラッシュ管の機能を有する連結部材9における衝撃吸収部9Aを構成する上辺部31Uと下辺部31Lを均等に潰して衝撃荷重を吸収する。
【0068】
しかし、荷重F1が衝撃吸収部9Aだけでは吸収しきれない程の過大な荷重の場合、フロントサイドフレーム5の前端部内に挿入固定されている連結部材9の連結面部9Bからフロントサイドフレーム5に、吸収しきれなかった荷重が伝達される。
【0069】
ここで、フロントサイドフレーム5の上面部5Uには荷重F2a、フロントサイドフレーム5の下面部5Lには荷重F3aが、吸収しきれなかった荷重として作用するものとする。荷重F2aと荷重F3aは夫々、荷重F2と荷重F3の一部であるため、やはり略均等である。
【0070】
そして、図5の▲4▼に示すように、フロントサイドフレーム5の前方部には蛇腹状の衝撃吸収部5Aが設けられているので、略均等な荷重F2aと荷重F3aとにより衝撃吸収部5Aは下方、或いは上方に向かって屈曲することなく潰れる。
【0071】
以上の過程により、自車のバンパーレインフォースメントの下部に、自車よりも車高の低い車両、即ち、自車のバンパーレインフォースメントよりも低い位置にバンパーレインフォースメントが配設された車両が衝突した場合においても、フロントサイドフレームに均等に衝撃エネルギーを伝達し、確実なエネルギー吸収により、乗員の安全を確保することが可能となる。
【0072】
第2の実施の形態では、連結部材9における衝撃吸収部9Aが潰れた後、ここで吸収しきれない衝撃エネルギーは、フロントサイドフレーム5の前端部に連結されたフランジ部材5Fを介してフロントサイドフレーム5に伝達される点が第1の実施の形態と異なるが、フロントサイドフレームに均等に衝撃エネルギーを伝達し、確実なエネルギー吸収により、乗員の安全を確保できる効果は略同じである。
【0073】
なお、連結部材9はボックス形状をしており、この内部に衝撃吸収性を高める部材、例えば、発泡材を充填した構造、連結部材9の衝撃吸収部9Aを完全な三角形として、その頂点を挟む上辺部31Uと下辺部31Lの内面前方部を上下に別部材で連結した構造、頂部Tが、フロントサイドフレームの前端面の上下幅略中間高さから上又は下方向に僅かにずれて設けられている構造、更には、連結部材9において、その上辺面部31U、下辺面部31L、外方側壁面部32a、或いは外方側壁面部33aを蛇腹状の衝撃吸収構造にすること等も、本発明に関わる別の実施形態として挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関わる車両の前部車体構造を示す斜視図
【図2】連結部材とフロントサイドフレームの連結構造の第1実施形態を示す図
【図3】第1の実施形態における連結部材の詳細図
【図4】連結部材とフロントサイドフレームの連結構造の第2実施形態を示す図
【図5】本発明の車体前部構造の衝撃エネルギー吸収過程を説明する図
【図6】従来技術を示す図
【符号の説明】
1・・・バンパー
3・・・エプロン部材
5・・・フロントサイドフレーム
9・・・連結部材
9A・・・衝撃吸収部
9B・・・連結面部
11・・・バンパーレインフォースメント
31Ub・・・上部連結面部
31Lb・・・下部連結面部
32b・・・外方連結面部
33b・・・内方連結面部
T・・・頂部
K・・・開口

Claims (6)

  1. エンジンルームの側壁を構成するホイールエプロンに沿って前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームの前端部分にバンパーが取付けられる車両の前部車体構造であって、
    前記バンパーの後方には車幅方向に延びるバンパーレインフォースメントが配設され、該バンパーレインフォースメントの車幅方向側端部と前記フロントサイドフレームの前端部とが連結部材で連結され、該連結部材の前記フロントサイドフレームより前方部は、車両側面視で前窄み略三角形状の衝撃吸収部とされ、該衝撃吸収部の車両前方側頂部近傍は、前記バンパーレインフォースメントの車幅方向側端部の後面部に連結されていることを特徴とする、車両の前部車体構造。
  2. 請求項1において、前記衝撃吸収部は、車両側面視で底辺長さよりも長い二辺を有する略二等辺三角形状とされ、前記長い二辺によって挟まれる頂部近傍は、前記フロントサイドフレームの前端面の上下幅略中間高さに設けられていると共に、前記バンパーレインフォースメントの車幅方向側端部の後面部に連結されていることを特徴とする、車両の前部車体構造。
  3. 請求項1又は2において、前記連結部材は、少なくとも、前記頂部から後上方に延びる上辺面部と、同後下方に延びる下辺面部と、前記上辺面部と下辺面部の車幅方向内方側端部を連結する内方側壁面部と、前記上辺面部と下辺面部の車幅方向外方側端部を連結する外方側壁面部とから成るボックス形状とされていることを特徴とする、車両の前部車体構造。
  4. 請求項1及至3のいずれか一つにおいて、前記連結部材は、前記衝撃吸収部の後端側から連続して後方に延びる連結面部を備え、該連結面部が前記フロントサイドフレームの前端部に設けられた開口に挿入固定されていることを特徴とする、車両の前部車体構造。
  5. 請求項1及至3のいずれか一つにおいて、前記連結部材は、前記フロントサイドフレームの前端部に設けられていることを特徴とする、車両の前部車体構造。
  6. 請求項1及至5のいずれか一つにおいて、前記衝撃吸収部の車両前方側頂部近傍の上下辺面部は、前記バンパーレインフォースメントの車幅方向側端部の後面部によって挟み込むようにして結合されているものである。
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