JP2005022511A - 輸送機械用骨格構造部材 - Google Patents
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Abstract
【効果】固形化粉粒体に外部から荷重が作用した場合に、固形化粉粒体は、部分的に表面融解し固化した固化部が剥がれて粉粒体単体となって流動性を備えるようになり、歪みを拡散できる。この結果、骨格構造部材をほぼ均等に且つ大きな変形量まで変形させることができ、大きな変位量まで大きな荷重が支えられ、従来に比較して、骨格構造部材の吸収エネルギー量を増大できる。また、粉粒体同士が表面融解により結合するため、バインダで結合するのに比べて、固形化に伴う重量増が抑えられる。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両、産業車両、船舶、航空機、自動車、自動二輪車等の輸送機械用骨格構造部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
骨格構造部材として、骨格部材に粉粒体を充填したものが知られている。(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−193649公報(第9−10頁、図1−図4)
【特許文献2】
米国特許第4610836号公報(第3−5欄、図1、図2)
【特許文献3】
米国特許第4695343号公報(第3−5欄、図1、図2)
【0004】
特許文献1を図15で説明し、特許文献2を図16で説明する。
図15は従来の骨格構造部材を構成する固形化粉粒体を示す第1拡大断面図であり、固形化粉粒体(即ち、複数の粉粒体を結合して固めたもの)200は、粉粒体201…(…は複数個を示す。以下同じ。)と、これらの粉粒体201…を固形にするために粉粒体201…のそれぞれの間に満たした樹脂、接着剤等のバインダ202とからなり、粉粒体201を構造的に密に型に投入した後、バインダ202を流し込んで形成する。この固形化粉粒体200は、車体等の骨格部材内に挿入することで骨格構造部材を形成するものであり、車体の強度、剛性の向上を図る。
【0005】
図16は従来の骨格構造部材を構成する固形化粉粒体を示す第2拡大断面図であり、固形化粉粒体210は、接着剤211をコーティングした粉粒体としてのガラス製の小球体212…からなり、これらの小球体212…をガラス繊維製のクロスで包み、骨格部材内に満たすことで骨格構造部材を形成する。特許文献3にも同様の構造が記載されている。
【0006】
図17は従来の骨格構造部材を構成する固形化粉粒体を示す第3拡大断面図であり、固形化粉粒体214は、外部からの加熱、例えば、ヒータ、マイクロウェーブ等によって粉粒体215…の表面を融解させることで粉粒体215同士を結合したものである。なお、216…は粉粒体215の表面が融解後に固化した固化部である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図15に示した固形化粉粒体200では粉粒体201のみの場合に比べてバインダ202の分だけ重量が増し、図16に示した固形化粉粒体210でも同様に、小球体212のみの場合よりも接着剤211の分だけの重量が増すため、これらの固形化粉粒体200,210を用いた骨格構造部材の重量増が大きくなる。
【0008】
また、粉粒体201又は小球体212を密に充填すれば、固形化粉粒体200,210の剛性が高められるが、閉空間に粉粒体201又は小球体212を満たすには、外部から加圧する等の手段を講じなければならなず、容易ではない。
【0009】
図18は従来の骨格構造部材の表面融解を示す作用図であり、図17に示した粉粒体215の表面融解により出来た固化部216を拡大した拡大図である。
このように、固化部216によって粉粒体215同士の結合範囲が広くなり、結合は非常に強固となる。
【0010】
次に、上記の固形化粉粒体200,210を用いた骨格構造部材を曲げ試験で強制的に曲げ変形させて、骨格構造部材の吸収エネルギー量を求める。
図19は骨格構造部材の曲げ試験の方法を示す説明図であり、曲げ試験は、骨格構造部材220を2つの支点221,221で支え、これらの支点221,221の間隔の中央位置に対応する骨格構造部材220の上面に曲げ試験機の押圧片222を介して下向きの荷重Fを加えて行う。なお、δは押圧片222のストローク量、即ち下方への変位量、223(骨格構造部材220中に描いた破線)は、骨格構造部材220内に挿入した固形化粉粒体を示す。
【0011】
図20は骨格構造部材の曲げ試験の結果として得られる荷重と変位量との関係を略式に示すグラフであり、縦軸は荷重F、横軸は変位量δを表す。
このグラフでは、変位量δが小さいうちは、荷重Fは直線的に急激に立ち上がり、そして、荷重Fの増加は次第に小さくなって最大の荷重f1が発生し、この後は、変形量δが大きくなるにつれて、荷重Fは次第に減少し、やがてほぼ一定になる。
【0012】
立ち上がりの直線部の上端の荷重をL、直線の角度をαとすると、角度αが大きいほど、また、荷重Lが大きい(即ち、直線部が長い)ほど骨格構造部材の剛性は大きい。更に、荷重f1が大きいほど、骨格構造部材の強度は大きい。
【0013】
このグラフ上の線と横軸とで挟まれた部分の面積は、仕事量、即ち骨格構造部材の変形による吸収エネルギー量であり、例えば、車両の骨格構造における衝突時の吸収エネルギー量を求める場合に使用するものである。
【0014】
図21(a)〜(d)は骨格構造部材の曲げ試験の結果として得られる荷重と変位量との関係及び吸収エネルギー量を示す説明図である。
(a)は荷重Fと変位量δとの関係を示すグラフであり、縦軸は荷重F、横軸は変位量δを表す。
グラフ中の試料1は、図20に示したものと同一のもので、例えば中空の四角形断面とし、内部に固形化粉粒体を挿入していない骨格構造部材の結果である。
【0015】
試料2は、試料1の最大の荷重f1となる変位量より大きい変位量では、試料1よりも荷重Fが大きくなる。
試料3は、試料1の荷重f1となる変位量より大きい変位量では、試料2よりも荷重Fが大きくなる。
【0016】
これらの試料1〜試料3の吸収エネルギー量を示したのが(b)である。
(b)では縦軸が吸収エネルギー量Eを表す。試料1〜試料3の各吸収エネルギー量をe1〜e3とすると、e1<e2<e3となる。
【0017】
(c)は荷重Fと変位量δとの関係を示すグラフであり、縦軸は荷重F、横軸は変位量δを表す。
試料4は、試料1よりも立ち上がりの角度α(図20参照)を大きくし、且つ試料1の荷重f1よりも大きな荷重f2を最大値とするものであり、荷重f2のときの変位量よりも大きな変位量δでは、次第に試料1に重なる。
【0018】
試料5は、試料4よりも立ち上がりの角度α(図20参照)を大きくし、且つ試料4の荷重f2よりも大きな荷重f3を最大値とするものであり、荷重f3のときの変位量よりも大きな変位量δでは、次第に試料1に重なる。
【0019】
これらの試料1、試料4及び試料5の吸収エネルギー量を示したのが(d)である。
(d)では縦軸が吸収エネルギー量Eを表す。試料4、試料5の各吸収エネルギー量をe4、e5とすると、e1<e4<e5となる。
【0020】
以上の(a)〜(d)より、荷重Fの最大値が大きくなっただけでは吸収エネルギー量の増加は小さいが、荷重Fの最大値を大きくするとともに、最大荷重発生後の荷重を高く維持すれば、吸収エネルギー量の増加を大きくすることができる。
【0021】
図22は従来の骨格構造部材の曲げ試験結果としての変形状態を示す説明図である。
例えば、固形化粉粒体200(図15も参照)を挿入した骨格構造部材205を曲げ試験で変形させた場合、固形化粉粒体200を挿入した部分はほとんど変形せず、固形化粉粒体200の端部側が大きく変形した。206は大きく変形して屈曲した骨格部材207の屈曲部である。
【0022】
これは、粉粒体の高い充填率とバインダによる強い結合のために、固形化粉粒体200を挿入した部分の強度が非常に高まり、固形化粉粒体200以外の部分に歪みが集中したと考えられる。
【0023】
図23は従来の骨格構造部材の曲げ試験により得られた荷重と変位量との関係を示すグラフであり、縦軸は荷重F、横軸は変位量δを表す。各データの最大の変位量δは、変位量δを次第に増していって、急激に荷重Fが低下する直前の値である(以下同じ)。
【0024】
図中に短い破線で示した比較例1は、中空の四角形断面を有する骨格構造部材で固形化粉粒体を挿入していないもののデータであり、最大の変位量d5は大きいが、最大の荷重f5は小さい。
【0025】
一点鎖線で示した比較例2は、図15及び図22に示した骨格構造部材、即ち中実の粉粒体をバインダで結合した固形化粉粒体を備えたもののデータであり、粉粒体の結合が強固であるために最大の荷重f6は大きくなるが、曲げ試験の早期に固形化粉粒体以外の部分が局部的に大きく変形することにより最大の変位量d6は小さくなる。
【0026】
二点鎖線で示した比較例3は、図16に示した骨格構造部材、即ち中実の粉粒体に接着剤をコーティングして結合した固形化粉粒体を備えたもののデータであり、粉粒体の結合が強固なために最大の荷重f7は比較例2よりも大きくなるが、比較例2と同様に局部的な変形が大きいため、最大の変位量d7は小さい。
【0027】
長い破線で示した比較例4は、中実の粉粒体を表面融解させて結合した固形化粉粒体を備えたもののデータであり、表面融解によって粉粒体の結合が強固なために最大の荷重f8は比較例2とほぼ同等であるが、荷重f8の発生した変位量δよりも変位量が大きくなると、荷重Fは急激に低下し、その変位量d8は大きくならない。このような荷重Fの低下を抑えることができれば、大きな荷重を大きな変位量まで維持でき、骨格構造部材の吸収エネルギー量が増大できる。
【0028】
そこで、本発明の目的は、輸送機械用骨格構造部材を改良することで、粉粒体の固形化に伴う重量増を抑え、しかも、骨格構造部材の吸収エネルギー量を増大させることにある。
【0029】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、輸送機械の骨格部材内及び/又は骨格部材とその周囲のパネル部材とで囲まれる空間に、複数の粉粒体を結合して固めた固形化粉粒体を配置した骨格構造部材であって、粉粒体を、互いに部分的に表面融解させることにより結合するようにしたことを特徴とする。
【0030】
例えば、粉粒体の表面全体を融解させることにより粉粒体同士を結合する場合にはその結合が非常に強固になり、固形化粉粒体に外部から荷重が作用した場合に、結合部が割れて破片となり、破片が移動しないために歪みが集中する。従って、骨格構造部材に局部的に変形が進行し、大きな荷重を支えることができなくなる。
【0031】
これに対して、本発明では、粉粒体を、互いに部分的に表面融解させることにより結合することで、固形化粉粒体に外部から荷重が作用した場合に、固形化粉粒体は、部分的に表面融解し固化した固化部が剥がれて粉粒体単体となって流動性を備えるようになり、外部からの荷重により発生する歪みを拡散して歪みの集中を防ぐことができる。
【0032】
この結果、骨格構造部材をほぼ均等に且つ大きな変形量まで変形させることができる。このとき、バインダによる粉粒体の結合ほど強固ではないが、粉粒体の大きな結合によって、大きな変位量まで大きな荷重を支えることができ、従来に比較して、骨格構造部材の吸収エネルギー量を増大させることができる。
【0033】
また、粉粒体同士が表面融解により結合するため、粉粒体同士の結合に接着剤や樹脂等のバインダを用いるのに比べて、固形化に伴う重量増を抑えることができる。
【0034】
請求項2は、粉粒体を、その表面に部分的に無機材料層を形成することで加熱したときに部分的に表面融解させるようにしたことを特徴とする。
粉粒体に部分的に無機材料層を形成することで、粉粒体を容易に部分的に結合させることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る輸送機械用骨格構造部材の斜視図であり、中空とした骨格部材11内に固形化粉粒体を充填した輸送機械用骨格構造部材12(以下、単に「骨格構造部材12」と記す。)を示す。なお、13,13は骨格部材11の両端を塞ぐ端部閉塞部材である。
【0036】
図2は図1の2−2線断面図であり、骨格構造部材12は、骨格部材11内に隔壁部材15,15を取付け、これらの隔壁部材15,15の間の空間に固形化粉粒体16を充填したことを示す。ここでは、固形化粉粒体16を骨格構造部材12の長手方向の中央に配置した。図中の18…は粉粒体であり、実際には外径が10μm〜5.0mmであるが、説明の都合上、大きく描いた(以下同じ)。
【0037】
図3は図1の3−3線断面図であり、中空の四角形断面とした骨格部材11内に、粉粒体18…をそれぞれ結合させて固形にした固形化粉粒体16を充填したことを示す。
【0038】
図4は本発明に係る固形化粉粒体の結合状態を示す拡大断面図であり、加熱による表面融解の後に部分的に結合した粉粒体18…を示す。
粉粒体18は、熱可塑性樹脂製の粉粒体18Aと、この粉粒体18Aの表面に部分的に形成した無機材料層23…とからなる。なお、24…は無機材料層23…の間から外部に露出した粉粒体18Aの表面である露出部である。
【0039】
粉粒体18同士は、加熱により露出部24…が融解した後に冷却によって固化した固化部22…で結合する。
無機材料層23を形成する無機材料としては、炭酸カルシウム、酸化チタンが好適である。
【0040】
図5は本発明に係る骨格構造部材の製造方法を示す作用図である。
まず、無機材料を粉粒体18Aの表面に部分的に付着、あるいは部分的にコーティングすることで無機材料層23…を形成した粉粒体18…を造る。
次に、粉粒体18…を骨格部材11内に所定量投入する。
そして、骨格部材11及び粉粒体18…を加熱する。
【0041】
これにより、各粉粒体18が部分的に表面融解を起こし、詳しくは、各粉粒体18の露出部24…(図4参照)のみが融解し、各粉粒体18の融解部分同士が一体になり、冷却した後に、粉粒体18同士が部分的に結合して、即ち粉粒体18同士が固化部22…を介して結合して固形化粉粒体16を形成し、骨格構造部材12が出来る。
【0042】
例えば、車両では、車両骨格部材内に粉粒体18を投入しておき、車両の塗装を乾燥させるために製造ラインに設けた塗装乾燥路で130〜200℃に加熱すれば、塗装乾燥の完了とほぼ同時に骨格構造部材が出来る。従って、別に加熱装置を必要とせず、しかも粉粒体18のための加熱時間も別に必要がないから、コストアップ及び製造工数の増加を抑えることができる。
また、粉粒体18Aを熱可塑性樹脂製とすることで低い温度で融解させることができるため、高温を発生させるような特別な加熱装置を必要としない。
【0043】
図6(a)〜(d)は骨格構造部材の曲げ試験の結果を示す説明図であり、(a)及び(b)は実施例(本実施の形態)、(c)及び(d)は比較例を示す。
(a)は骨格構造部材12(図2も参照)の曲げ試験を実施した後の状態を示す拡大正面図であり、骨格構造部材12の固形化粉粒体16(図中の破線部)を充填した部分がほぼ円弧状に変形したことを示す。
【0044】
(b)は骨格構造部材12の曲げ試験時に発生する歪みを説明する図であり、模式的に描いた骨格構造部材12を2つの支点31,31で支え、これらの支点31,31の間隔の中央位置に対応する骨格構造部材12の上面に下向きの荷重Fを加えたときに、骨格構造部材12の支点31,31間に発生する歪みをグラフとして表したものである。縦軸は歪み、横軸は骨格構造部材12の長手方向の位置を表す。
【0045】
支点31,31の位置では歪みはゼロであり、この位置から次第に固形化粉粒体16(図中のハッチングを施した部分)に近づくにつれて歪みは徐々に増加し、固形化粉粒体16の位置では歪みは一定になる。このときの歪みをε1とする。
【0046】
(c)は無機材料層を有していない中実の粉粒体を表面融解させて形成した固形化粉粒体を挿入した骨格構造部材230の曲げ試験を実施した後の状態を示す拡大正面図であり、骨格構造部材230の固形化粉粒体231(図中の破線部)を充填した部分はほとんど変形せず、固形化粉粒体231の外側の骨格部材232が大きく変形したことを示す。
【0047】
(d)は骨格構造部材230の曲げ試験時に発生する歪みを説明する図であり、模式的に描いた骨格構造部材230を2つの支点221,221で支え、これらの支点221,221の間隔の中央位置に対応する骨格構造部材230の上面に下向きの荷重Fを加えたときに、骨格構造部材230の支点221,221間に発生する歪みをグラフとして表したものである。縦軸は歪み、横軸は骨格構造部材230の長手方向の位置を表す。
【0048】
支点221,221の位置では歪みはゼロであり、この位置から次第に固形化粉粒体231に近づくにつれて歪みは急激に増加し、固形化粉粒体231の両端部近傍の外方位置で歪みは最大になる。このときの歪みをε2とする。
そして、歪みが最大となる位置から固形化粉粒体231の端部までは歪みが減少し、固形化粉粒体231の位置では歪みが一定になる。このときの歪みをε3とする。
【0049】
以上の(a)〜(d)において、比較例の骨格構造部材230では、固形化粉粒体230の剛性が過度に大きいために固形化粉粒体231はほとんど変形せず、歪みε3は小さくなるが、骨格部材232が局部的に大きく変形し、歪みε2は非常に大きくなる。従って、曲げ試験の早期に荷重Fは大きく低下する。即ち、吸収エネルギー量は少ない。
【0050】
これに対して、実施例の骨格構造部材12では、固形化粉粒体16の剛性が比較例の固形化粉粒体231に比べて小さく、曲げ試験によって固形化粉粒体16が徐々に変形しするとともにほぼ均一に変形するため、比較例の最大の歪みε2に対して最大の歪みε1を抑えることができる。即ち、歪みε1は歪みε2よりもdだけ小さい。従って、実施例の骨格構造部材12では、曲げ試験において大きな変位量まで高い荷重を維持することができ、比較例に対して吸収エネルギー量をより増大させることができる。
【0051】
図7(a)〜(c)は本発明に係る骨格構造部材の曲げ試験時の変形を示す作用図であり、図19に示したのと同じ方法で骨格構造部材12の曲げ試験を実施し、そのときの骨格構造部材12の変形、詳しくは、固形化粉粒体16の変化を説明する。
(a)において、骨格構造部材12に荷重Fを加える。なお、32は荷重Fを加えた骨格部材11上の加重点である。
【0052】
(b)において、骨格構造部材12が撓み、加重点32近傍の粉粒体18では、粉粒体18の固化部22…(図4参照)が剥がれて粉粒体18同士の結合が外れて、粉粒体18…が矢印で示すように移動し、骨格部材11の内部圧力が激増するのを抑える。
【0053】
(c)において、骨格構造部材12の撓みが更に大きくなると、粉粒体18…の固化部の剥がれが進行し、固形化粉粒体16(図(a)参照)の大部分は粉粒体18単体に戻って矢印のように流動し、歪みを拡散させる。
従って、骨格構造部材12は局部的に変形せず、ほぼ均一に変形するため、大きな荷重を維持しつつ流動によって大きな変位量まで安定して変形することができる。
【0054】
図8は本発明に係る骨格構造部材の曲げ試験終了後の断面図であり、曲げ試験開始前に、固形化粉粒体に、骨格構造部材12の長手方向に直角な方向に直線として描いた線34〜線38の変化を見ると、曲げ試験終了後では、例えば、線35の両端の点、即ち骨格部材11と交わる点を端点41,42とし、これらの端点41,42を通る直線43を引いたときに、直線35は、直線43よりも骨格構造部材12の端部側に湾曲していることが分かる。即ち、骨格部材11の上部が凹状に変形することで、前述した表面融解部が剥がれた粉粒体は、白抜き矢印で示すように、一方の隔壁部材15側に流動したことが分かる。
【0055】
図9は本発明に係る骨格構造部材の曲げ試験の結果得られた荷重と変位量との関係を示すグラフであり、縦軸は荷重F、横軸は変位量δを表す。
実施例(中実粉+無機材料層)の骨格構造部材12のデータ(実線で示す。)は、立ち上がりの直線部の長さ、例えば変位量d9における荷重f9は比較例2〜比較例4に対してそれほど大きくないが、大きな変位量まで徐々に荷重Fが増加する。従って、本発明の骨格構造部材12では、比較例1〜比較例4に比べて吸収エネルギー量をより増大させることができる。
【0056】
図10(a),(b)は本発明に係る骨格構造部材を車両に採用した例を示す斜視図である。
(a)において、本発明の骨格構造部材は、車体前部のエンジン両側方下方に配置するフロントサイドフレーム51,51、車室の両側方下部に配置するサイドシル52,52、左右のサイドシル52,52間に渡したフロントフロアクロスメンバ53、サイドシル52,52から立ち上げたセンタピラー54,54、サイドシル52,52から後方へ延ばしたリヤフレーム56,56に採用する。
【0057】
また、(b)において、本発明の骨格構造部材は、フロントピラー61,61、フロントドア(不図示)内及びリヤドア(不図示)内にそれぞれ配置したドアビーム62,63、ルーフの両側部に設けたルーフサイドレール64,64、左右のルーフサイドレール64,64に渡したルーフレール66,67に採用する。
【0058】
図11(a)〜(e)は本発明に係る骨格構造部材をフロントサイドフレームに採用した例の説明図である。なお、骨格構造部材としてのフロントサイドフレーム51の符号51を、ここでは便宜上、51A〜51Eと変更した。フロントサイドフレーム51A〜51Dでは、粉粒体18…を、直接に骨格部材内に充填し、フロントサイドフレーム51Eでは、粉粒体18…を予め別の骨格部材内に充填した状態で骨格部材内に挿入する。
【0059】
(a)に示すフロントサイドフレーム51Aは、アウタパネル71と、このアウタパネル71よりもエンジン室側に設けたインナパネル72とから骨格部材73を形成し、この骨格部材73内に粉粒体18…を充填した部材である。なお、フロントサイドフレーム51Aに粉粒体18を充填する場合に、フロントサイドフレーム51Aの長手方向全体に充填してもよいし、あるいは、フロントサイドフレーム51Aの長手方向に部分的に充填する、即ち、フロントサイドフレーム51A内に長手方向に所定間隔を開けて2枚の隔壁を設け、これら2枚の隔壁間に粉粒体18を充填してもよい。以下に述べる部位についても同様である。
【0060】
(b)に示すフロントサイドフレーム51Bは、斜面75を設けたアウタパネル76と、このアウタパネル76のエンジン室側に設けるとともに斜面77を形成したインナパネル78とから骨格部材81を形成し、この骨格部材81に粉粒体18…を充填した部材である。
【0061】
(c)に示すフロントサイドフレーム51Cは、アウタパネル71と、インナパネル72と、これらのアウタパネル71及びインナパネル72の内側に取付けた隔壁83とから骨格部材84を形成し、アウタパネル71及びインナパネル72内の隔壁83で区画した第1室85及び第2室86のうちの第1室85内に粉粒体18…を充填した部材である。
【0062】
(d)に示すフロントサイドフレーム51Dは、(c)に示したフロントサイドフレーム51Cの第2室86に粉粒体18…を充填した部材である。
(e)に示すフロントサイドフレーム51Eは、骨格部材88内に粉粒体18…を充填し、この骨格部材88を骨格部材73の内側に配置した部材である。
【0063】
図12(a)〜(d)は本発明に係る骨格構造部材をリヤフレームに採用した例の説明図である。なお、骨格構造部材としてのリヤフレーム56の符号56を、ここでは便宜上、56A〜56Dと変更した。
(a)に示すリヤフレーム56Aは、パネル部材としてのロアパネル91と、このロアパネル91の上部に設けたパネル部材としてのリヤフロアパネル92との間に粉粒体18を充填した部材である。
【0064】
(b)に示すリヤフレーム56Bは、ロアパネル91と、このロアパネル91の上部に取付けたサブロアパネル93との間に粉粒体18…を充填した部材である。
【0065】
(c)に示すリヤフレーム56Cは、ロアパネル91の上部に取付けたサブロアパネル93と、このサブロアパネル93の上部に設けたリヤフロアパネル92との間に粉粒体18を充填した部材である。
【0066】
(d)に示すリヤフレーム56Dは、ロアパネル91とリヤフロアパネル92とで囲まれる閉空間内に骨格部材94を配置し、この骨格部材94内に粉粒体18…を充填した部材である。
【0067】
また、骨格部材94内には粉粒体18…を充填せず、骨格部材94とその周囲のパネル部材としてのロアパネル91、リヤフロアパネル92とで囲まれる空間95に粉粒体18…を充填してもよく、更には、骨格部材94内及び空間95内の両方に粉粒体18…を充填してもよい。
【0068】
図13(a)〜(c)は本発明に係る骨格構造部材をセンタピラーに採用した例の説明図である。なお、骨格構造部材としてのセンタピラー54の符号54を、ここでは便宜上、54A〜54Cと変更した。
(a)に示したセンタピラー54Aは、アウタパネル96と、このアウタパネル96の車室側に配置したインナパネル97とで骨格部材98を形成し、この骨格部材98に粉粒体18…を充填した部材である。
【0069】
(b)に示したセンタピラー54Bは、アウタパネル96とインナパネル97との間に補強部材101を取付けることで骨格部材102を形成し、補強部材101とアウタパネル96との間に粉粒体18…を充填した部材である。
【0070】
(c)に示したセンタピラー54Cは、アウタパネル96とインナパネル97との間に補強部材101を取付け、この補強材101とインナパネル97との間に粉粒体18…を充填した部材である。
【0071】
図14(a)〜(c)は本発明に係る骨格構造部材をルーフサイドレールに採用した例の説明図である。なお、骨格構造部材としてのルーフサイドレール64の符号を、ここでは便宜上、64A〜64Cと変更した。
【0072】
(a)に示したルーフサイドレール64Aは、アウタパネル104と、このアウタパネル104の車室側に配置したインナパネル105とで骨格部材106を形成し、この骨格部材106に粉粒体18…を充填した部材である。
【0073】
(b)に示したルーフサイドレール64Bは、アウタパネル104とインナパネル105との間に補強部材107を取付けることで骨格部材108を形成し、補強部材107とアウタパネル104との間に粉粒体18…を充填した部材である。
【0074】
(c)に示したルーフサイドレール64Cは、アウタパネル104とインナパネル105との間に補強部材107を取付けることで骨格部材108を形成し、補強部材107とインナパネル105との間に粉粒体18…を充填した部材である。
【0075】
以上の図5で説明したように、本発明第1には、輸送機械の骨格部材11内及び/又は骨格部材11とその周囲のパネル部材(例えば、図12に示したロアパネル91、リヤフロアパネル92)とで囲まれる空間(例えば、図12に示した空間95)に、複数の粉粒体18を結合して固めた固形化粉粒体16を配置した骨格構造部材12であって、粉粒体18を、互いに部分的に表面融解させることにより結合するようにしたことを特徴とする。
【0076】
例えば、粉粒体の表面全体を融解させることにより粉粒体同士を結合する場合にはその結合が非常に強固になり、固形化粉粒体に外部から荷重が作用した場合に、結合部が割れて破片となり、破片が移動しないために歪みが集中する。従って、骨格構造部材に局部的に変形が進行し、大きな荷重を支えることができなくなる。
【0077】
これに対して、本発明では、粉粒体18を、互いに部分的に表面融解させることにより結合することで、固形化粉粒体16に外部から荷重が作用した場合に、固形化粉粒体16は、部分的に表面融解し固化した固化部22…が剥がれて粉粒体18の単体となって流動性を備えるようになり、外部からの荷重により発生する歪みを拡散して歪みの集中を防ぐことができる。
【0078】
この結果、骨格構造部材12をほぼ均等に且つ大きな変形量まで変形させることができる。このとき、バインダによる粉粒体の結合ほど強固ではないが、粉粒体18の大きな結合によって、大きな変位量まで大きな荷重を支えることができ、従来に比較して、骨格構造部材12の吸収エネルギー量を増大させることができる。
【0079】
また、粉粒体18同士が表面融解により結合するため、粉粒体18同士の結合に接着剤や樹脂等のバインダを用いるのに比べて、固形化に伴う重量増を抑えることができる。
【0080】
本発明は第2に、粉粒体18Aを、その表面に部分的に無機材料層23…を形成することで加熱したときに部分的に表面融解させるようにしたことを特徴とする。
粉粒体18に部分的に無機材料層23…を形成することで、粉粒体18を容易に部分的に結合させることができる。
【0081】
尚、本発明の実施の形態では、骨格部材内に粉粒体をそのまま投入したが、これに限らず、袋(ゴム製、ポリエチレン等の樹脂製、紙製のもの)や容器に予め詰めた状態で骨格部材内に投入してもよい。
【0082】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1の輸送機械用骨格構造部材は、粉粒体を、互いに部分的に表面融解させることにより結合するようにしたので、固形化粉粒体に外部から荷重が作用した場合に、固形化粉粒体は、部分的に表面融解し固化した固化部が剥がれて粉粒体単体となって流動性を備えるようになり、外部からの荷重により発生する歪みを拡散して歪みの集中を防ぐことができる。
【0083】
この結果、骨格構造部材をほぼ均等に且つ大きな変形量まで変形させることができる。このとき、バインダによる粉粒体の結合ほど強固ではないが、粉粒体の大きな結合によって、大きな変位量まで大きな荷重を支えることができ、従来に比較して、骨格構造部材の吸収エネルギー量を増大させることができる。
【0084】
また、粉粒体同士が表面融解により結合するため、粉粒体同士の結合に接着剤や樹脂等のバインダを用いるのに比べて、固形化に伴う重量増を抑えることができる。
【0085】
請求項2の輸送機械用骨格構造部材は、粉粒体を、その表面に部分的に無機材料層を形成することで加熱したときに部分的に表面融解させるようにしたので、粉粒体に部分的に形成した無機材料層によって、粉粒体を容易に部分的に結合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る輸送機械用骨格構造部材の斜視図
【図2】図1の2−2線断面図
【図3】図1の3−3線断面図
【図4】本発明に係る固形化粉粒体の結合状態を示す拡大断面図
【図5】本発明に係る骨格構造部材の製造方法を示す作用図
【図6】骨格構造部材の曲げ試験の結果を示す説明図
【図7】本発明に係る骨格構造部材の曲げ試験時の変形を示す作用図
【図8】本発明に係る骨格構造部材の曲げ試験終了後の断面図
【図9】本発明に係る骨格構造部材の曲げ試験の結果得られた荷重と変位量との関係を示すグラフ
【図10】本発明に係る骨格構造部材を車両に採用した例を示す斜視図
【図11】本発明に係る骨格構造部材をフロントサイドフレームに採用した例の説明図
【図12】本発明に係る骨格構造部材をリヤフレームに採用した例の説明図
【図13】本発明に係る骨格構造部材をセンタピラーに採用した例の説明図
【図14】本発明に係る骨格構造部材をルーフサイドレールに採用した例の説明図
【図15】従来の骨格構造部材を構成する固形化粉粒体を示す第1拡大断面図
【図16】従来の骨格構造部材を構成する固形化粉粒体を示す第2拡大断面図
【図17】従来の骨格構造部材を構成する固形化粉粒体を示す第3拡大断面図
【図18】従来の骨格構造部材の表面融解を示す作用図
【図19】骨格構造部材の曲げ試験の方法を示す説明図
【図20】骨格構造部材の曲げ試験の結果として得られる荷重と変位量との関係を略式に示すグラフ
【図21】骨格構造部材の曲げ試験の結果として得られる荷重と変位量との関係及び吸収エネルギー量を示す説明図
【図22】従来の骨格構造部材の曲げ試験結果としての変形状態を示す説明図
【図23】従来の骨格構造部材の曲げ試験により得られた荷重と変位量との関係を示すグラフ
【符号の説明】
11…骨格部材、12…輸送機械用骨格構造部材、16…固形化粉粒体、18,18A…粉粒体、23…無機材料層、91,92…パネル部材(ロアパネル、リヤフロアパネル)、95…空間。
Claims (2)
- 輸送機械の骨格部材内及び/又は骨格部材とその周囲のパネル部材とで囲まれる空間に、複数の粉粒体を結合して固めた固形化粉粒体を配置した骨格構造部材であって、
前記粉粒体は、互いに部分的に表面融解させることにより結合することを特徴とした輸送機械用骨格構造部材。 - 前記粉粒体は、その表面に部分的に無機材料層を形成することで加熱したときに部分的に表面融解させることを特徴とする請求項1記載の輸送機械用骨格構造部材。
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