JP2005020231A - スタブ素子およびそれを用いたインピーダンス整合器 - Google Patents
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Abstract
【課題】VHF帯において容易な構成で適切なインピーダンス整合を行うことのできるスタブ素子を提供する。
【解決手段】所定間隔を隔てて離間しながら相対移動自在に備えられた固定側電極25および可動側電極26と、固定側電極25および可動側電極26を覆うコンデンサカバー16と、可動側電極26を移動させるための駆動用モータ17とを備えたスタブ素子であって、一端が可動側電極26に導通接続されるとともに他端が固定側電極25に導通接続されるリアクトル40が巻回されている。
【選択図】 図3
【解決手段】所定間隔を隔てて離間しながら相対移動自在に備えられた固定側電極25および可動側電極26と、固定側電極25および可動側電極26を覆うコンデンサカバー16と、可動側電極26を移動させるための駆動用モータ17とを備えたスタブ素子であって、一端が可動側電極26に導通接続されるとともに他端が固定側電極25に導通接続されるリアクトル40が巻回されている。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、たとえば高周波電力を用いてプラズマを発生させてエッチングや薄膜形成などを行う半導体製造装置に用いられ、負荷側のインピーダンスと高周波電源側の特性インピーダンスとを整合させるためのインピーダンス整合器およびそのインピーダンス整合器に用いられるスタブ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
上述したような半導体製造装置は、通常、高周波電源と負荷とが同軸管によって接続され、同軸管の途中にインピーダンス整合器が介在された構成とされている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−330007号公報
【0004】
このインピーダンス整合器は、伝送路のインピーダンスと負荷側のインピーダンスとをマッチングさせることにより、高周波電源において発生した高周波電力が負荷側において反射することを抑制または防止して、高周波電源側からの高周波電力が負荷側において最大限に利用されるようにしたものである。
【0005】
上記特許文献1に記載されるインピーダンス整合器は、UHF帯(300MHz〜1GHz)やSHF帯(1GHz〜30GHz)の周波数で用いられるもので、図10に示すように、同軸管50に所定の間隔(λg/4,λg:管内波長)を隔てて連設された3つのスタブ素子1A,2A,3Aを備え、各スタブ素子は、同軸管50の内導体50Aに接続された固定電極51、およびこの固定電極51に対して所定間隔を隔てて移動自在に設けられた可動電極52からなる可変容量コンデンサ53と、この可変容量コンデンサ53を絶縁保護するための絶縁部材54と、可変容量コンデンサ53の可動電極52をコンデンサカバー56に電気的に接続するための伸縮自在に張設された導電性のベローズ55と、可変容量コンデンサ53および絶縁部材54の周囲を覆い、同軸管50の外導体50Bに接続された導電性のコンデンサカバー56と、可変容量コンデンサ53の可動電極52を駆動する駆動用モータ57とを備えている。
【0006】
このインピーダンス整合器に用いられるスタブ素子1A〜3Aは、UHF帯もしくはSHF帯では、その構造上、可変容量コンデンサ53の可動電極52を同軸管50の外導体50Bに接続するためのコンデンサカバー56や可動電極52の可動時にも安定して当該可動電極52を電気的にコンデンサカバー56に接続するためのベローズ55がインダクタとして機能するため、これらのインダクタと可変容量コンデンサ53の容量との直列共振回路として動作するようになっている。実際に整合素子として機能するときは、各スタブ素子1A〜3Aは直列共振回路の直列共振周波数を通り過ぎたインダクタの部分で動作し、可変容量コンデンサ53の容量を変化させることにより直列共振周波数が変化してそのインダクタが変化するようになっている。すなわち、各スタブ素子1A〜3Aは可変インダクタ素子として機能するようになっている。
【0007】
また、各スタブ素子1A〜3Aが実際の整合素子として機能するときは、直列共振周波数よりも高い周波数領域の高周波電力が使用される。なお、直列共振回路の場合、直列共振周波数よりも高い周波数領域になると、回路がインダクタとして機能する。しかし、各スタブ素子1A〜3Aは、同軸管管内波長の1/4の長さの間隔で同軸管50に接続されているので、スタブ素子1A〜3Aの位置によって特性が異なる。そのために、スタブ素子1Aがインダクタとして機能する場合は、スタブ素子2Aがキャパシタ(コンデンサ)として機能し、スタブ素子3Aがインダクタとして機能するようになる。また、インダクタやキャパシタとして機能する各スタブ素子1A〜3Aは、可変容量コンデンサ53の容量を変化させることによって可変インダクタ素子や可変容量素子として機能するようになる。
【0008】
したがって、図10に示すインピーダンス整合器では、各スタブ素子1A〜3Aにおいて可変容量コンデンサ53における静電容量を調整することにより実質的に各スタブのインダクタを調整してインピーダンスの整合が行なわれる。すなわち、駆動用モータ57によって固定電極51に対して可動電極52を移動させることにより、可変容量コンデンサ53の静電容量が変化され、これにより直列共振回路のリアクタンス値(インダクタンス値)が変化してインピーダンスの整合が行なわれる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の可変容量コンデンサからなるスタブ素子を用いたインピーダンス整合器をVHF帯(30MHz〜300MHz)にも適用すれば、外観上はUHF帯やSHF帯のインピーダンス整合器と同等のサイズで構成でき、この周波数帯域におけるインピーダンス整合器の大幅な小型化が可能となる。特に、短絡板をプランジャーによって可変とし、ある周波数で任意のリアクタンス値が得られるようにした先端ショートの伝送線路(可変ショート)からなるスタブ素子を用いたインピーダンス整合器では長手方向の素子寸法(短絡板が移動する線路長方向の寸法)が使用周波数の波長に依存し、VHF帯ではインピーダンス整合器が極めて大型化することから、可変容量コンデンサからなるスタブ素子を用いたインピーダンス整合器は、可変ショートからなるスタブ素子を用いたインピーダンス整合器に比して大幅な小型化が可能で、使い勝手の良いインピーダンス整合器を実現することができる。
【0010】
しかしながら、図10に示す従来のインピーダンス整合器の構造をそのままVHF帯に適用すると、VHF帯は、UHF帯やSHF帯に比べて周波数が低いのでベローズ55やコンデンサカバー56の部分がインダクタとして有効に機能しない。そのため、スタブ素子1A〜3Aが、インダクタと可変容量コンデンサ53の容量との直列共振回路として有効に機能しない。よって、図10に示す構成では、インピーダンス整合器として十分に機能しないといった問題がある。
【0011】
すなわち、図10に示す構成では、スタブ素子1A〜3Aは、個々のスタブ素子単体として見たときに、VHF帯では可変容量素子としてしか機能せず、可変インダクタとしては機能しないため、インピーダンスを整合させるためにスタブ素子1A〜3Aにインダクタンス成分が必要な場合には十分なインピーダンス整合ができなくなる。このことは、スミスチャート上の広範囲に負荷のインピーダンスが変化してもインピーダンス整合を可能にするというインピーダンス整合器に要求される基本的な特性を満足し得ないという点で特に問題となる。
【0012】
図11は、図10に示すインピーダンス整合器をたとえば150MHzの周波数で使用した場合の整合範囲をスミスチャートを用いて示した図である。同図において、黒い影の部分Sは整合可能な点をプロットしたものである。同図に示すように、従来のインピーダンス整合器では、ごく一部の領域でしか負荷に対するインピーダンスの整合範囲とすることができなかった。
【0013】
【発明の開示】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、VHF帯において容易な構成で適切にインピーダンス整合を行うことのできるインピーダンス整合器を提供することを、その課題とする。
【0014】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0015】
本願発明の第1の側面によって提供されるスタブ素子は、所定間隔を隔てて離間しながら相対移動自在に設けられた第1の電極および第2の電極と、少なくとも前記第1の電極および第2の電極を覆うシールド部材と、前記第1の電極および第2の電極のうちいずれか一方を移動させるための駆動手段とを備えたスタブ素子であって、一端が前記第1の電極に導通接続されるとともに他端が前記第2の電極に導通接続される導電性ワイヤが巻回されていることを特徴としている。
【0016】
本願発明の第2の側面によって提供されるスタブ素子は、静電容量を可変させるために相対移動自在に設けられた第1の電極および第2の電極を有するとともに、前記第1の電極および第2の電極を収容する外殻の一部が前記第1の電極および第2の電極との接続部材を電気的に絶縁するように絶縁部分で構成された可変容量コンデンサと、少なくとも前記可変容量コンデンサを覆うシールド部材と、前記第1の電極および第2の電極のうちいずれか一方を移動させるための駆動手段とを備えたスタブ素子であって、前記可変容量コンデンサの外殻の一部を構成する前記絶縁部材の周囲には、前記可変容量コンデンサに対して並列に接続された導電性ワイヤが巻回されていることを特徴としている。
【0017】
好ましい実施形態によれば、前記導電性ワイヤは、複数本設けられていてもよい。また、前記導電性ワイヤは、単線によって構成されていてもよい。
【0018】
また、他の好ましい実施形態によれば、前記可変容量コンデンサは、前記第1の電極と第2の電極との間の静電容量を形成するための空間が真空になっている真空可変容量コンデンサであってもよい。
【0019】
この発明によれば、第1の電極および第2の電極が可変容量コンデンサを構成し、絶縁部材が可変容量コンデンサの外殻の一部を構成し、シールド部材がコンデンサカバーを構成している。そして、外殻の周囲に、一端が第1の電極に接続されるとともに他端が第2の電極に接続されるリアクトルとしての導電性ワイヤが巻回されることにより、可変容量コンデンサに対して並列にリアクトルが接続されることになり、これら可変容量コンデンサおよびリアクトルによってLC並列共振回路が構成される。
【0020】
スタブ素子は、並列共振回路なので、可変容量コンデンサの容量値を変化させることによって並列共振周波数を調整することができる。そのため、並列共振周波数を高周波電力の発振周波数よりも高くすると、個々のスタブ素子単体として見たときに、スタブ素子がインダクタとして機能し、並列共振周波数を高周波電源の発振周波数よりも低くすると、スタブ素子がコンデンサとして機能する。また、可変容量コンデンサの容量値を変化させることによってリアクタンス値(インダクタンス値または容量値)を調整することができる。
【0021】
すなわち、従来の構成(図10参照)に示すインピーダンス整合器では、VHF帯で使用すると、各スタブ素子は、個々のスタブ素子単体として見たときに、コンデンサ単体としてしか機能しないため、その容量値を変化させてもインダクタンスが得られず、インピーダンスを整合させることができない場合が生じたが、本願発明にかかるインピーダンス整合器では、各スタブ素子が並列共振回路として機能し、その並列共振周波数を調整することにより各スタブ素子のリアクタンスを容量、インダクタンスのいずれにも調整可能で、負荷のインピーダンスがスミスチャート上の広範囲にわたって変化してもインピーダンスを整合させることができる。
【0022】
また、上記発明によれば、可変容量コンデンサの周囲にワイヤを巻回するといった容易な構成により、VHF帯においても適切にインピーダンス整合をとることができるので、装置の大型化を招いたり、設計変更による大幅なコスト増大を招くことはない。
【0023】
本願発明の第3の側面によって提供されるインピーダンス整合器は、本願発明の第1の側面によって提供されるスタブ素子と、それを支持するための同軸管とを備え、前記同軸管の管軸方向に少なくとも2つの前記スタブ素子が所定間隔を隔てて連設されていることを特徴としている。
【0024】
この発明によれば、同軸管に対して上記したスタブ素子を少なくとも2つ(好ましくは3つ)所定間隔を隔てて連設させることにより、VHF帯においても負荷に対して適切なインピーダンス整合を行うことができる。
【0025】
本願発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0027】
図1は、本願発明にかかるスタブ素子を含むインピーダンス整合器が適用された、たとえば高周波電力を用いてプラズマを発生させてエッチングや薄膜形成などを行う半導体製造装置の構成の一例を示す図である。
【0028】
この半導体製造装置は、高周波電源P、アンテナ装置A、インピーダンス整合器M、およびマイクロコンピュータCによって構成され、この装置には、プラズマチャンバーとしての負荷Lが接続されている。高周波電源Pと負荷Lとは、同軸管(導波管)Tによって接続され、その途中にアンテナ装置Aおよびインピーダンス整合器Mが介装されている。
【0029】
高周波電源Pは、負荷Lに対して高周波電力を供給するためのものである。
【0030】
アンテナ装置Aは、同軸管T内における高周波電力の電圧定在波振幅を検出するためのものであり、同軸管Tにおいてその管軸方向の3箇所に配置された3つのアンテナA1,A2,A3を備えている。アンテナ装置Aは、各アンテナA1,A2,A3で検出した電圧定在波振幅としての検出信号をマイクロコンピュータCに送出する。
【0031】
マイクロコンピュータCは、アンテナ装置Aから受け取った3つの検出信号に基づいて、同軸管T内における反射係数の大きさと位相とを計算し、インピーダンス整合器Mに備えられた第1ないし第3のスタブ素子1,2,3(後述)の各位置から負荷L側を見た値に変換し、インピーダンス整合に必要なスタブを選択するとともに、その調整量を算出するものである。マイクロコンピュータCは、検出信号としてのデータの取り込みを約1msecごとに実行し、最新のデータに基づいてスタブの調整量を補正する。
【0032】
負荷Lは、たとえばプラズマ処理装置(プラズマチャンバー)とされ、このプラズマ処理装置は、内部に備えた真空容器にプラズマ発生用のガスが導入され、供給された高周波電力を用いて上記ガスを電離させて、プラズマを発生させるものである。発生されたプラズマは、半導体ウェハや液晶基板等の被工作物を加工するために利用される。
【0033】
インピーダンス整合器Mは、伝送路のインピーダンスと負荷L側のインピーダンスとをマッチングさせるものであり、第1ないし第3のスタブ素子1,2,3を有している。第1ないし第3のスタブ素子1,2,3は、マイクロコンピュータCからの指令により、それぞれに備えられた駆動用モータ17(後述)を駆動回転させる。第1ないし第3のスタブ素子1,2,3では、駆動用モータ17の駆動回転により、可変容量コンデンサ15(後述)を上下動させて各スタブ素子1,2,3のリアクタンス値(またはサセプタンス値)を変化させ、適切なインピーダンスの整合を行う。
【0034】
図2は、図1に示すインピーダンス整合器Mの概略構成を示す断面図である。このインピーダンス整合器Mには、同軸管Tに接続される主同軸管10が設けられている。主同軸管10は、主同軸管内導体11と主同軸管外導体12とからなり、主同軸管内導体11の外周に所定の間隔を隔てて主同軸管外導体12が同心状に外套されている。主同軸管10には、第1ないし第3のスタブ素子1,2,3が設けられている。第1ないし第3のスタブ素子1,2,3は、印加する高周波電力の周波数の同軸管管内波長をλgとすると、主同軸管10に対してその管軸方向にλg/4だけ隔てた3ヶ所にそれぞれ取り付けられている。
【0035】
なお、同軸管における高周波電力の流れは、同軸管の導体表面しか流れない(表皮効果)ために、管内波長λgは自由空間における波長λと同じである。よって、隣り合うスタブ素子1,2,3間の距離λg/4は、次式で求められる。ただし、λは、高周波電源Pから出力される高周波電力の発振周波数における波長である。また、cは光の速度であり、fは高周波電源Pの発振周波数である。
【0036】
【数1】
【0037】
本実施形態のインピーダンス整合器は、VHF帯用のインピーダンス整合器Mであるから、たとえば高周波電源Pの発振周波数fが150MHzの場合は、λg/4=(3×108)/(150×106)×(1/4)=0.5[m]となる。なお、これら第1ないし第3のスタブ素子1,2,3の構造は、略同様とされているため、以下では、第1のスタブ素子1について説明する。
【0038】
図3は、第1のスタブ素子1を拡大して示す断面図である。第1のスタブ素子1は、可変容量コンデンサ15と、導電性のコンデンサカバー16と、駆動用モータ(ステッピングモータ)17とを備えて大略構成されている。
【0039】
上記主同軸管内導体11には、それに対して鉛直方向に延びて接合された分岐内導体18が設けられ、分岐内導体18は、主同軸管外導体12に形成された貫通孔12aを通して主同軸管外導体12の外側まで延出している。可変容量コンデンサ15は、この分岐内導体18の延出端部に固定されている。可変容量コンデンサ15の外周には、所定の間隔を隔ててたとえば銅、アルミニウム、または真鍮からなるコンデンサカバー16が外嵌され、このコンデンサカバー16は、主同軸管外導体12の外周面に接合されている。コンデンサカバー16は、可変容量コンデンサ15を電気的に覆うことにより外部導体の電気的影響を遮蔽するシールド部材である。コンデンサカバー16の上端部には、モータ支持フランジ20を介して駆動用モータ17が取り付けられている。
【0040】
なお、分岐内導体18と主同軸管内導体11とは、溶接、接着などで一体化されていてもよく、あるいはボルトなどの締結手段により分離可能な状態で連結されていてもよい。また、コンデンサカバー16と主同軸管外導体12とは、同様な接合構造とされていてもよい。
【0041】
可変容量コンデンサ15は、たとえば大電力を許容するための真空コンデンサによって構成されており、分岐内導体18に固着されたコンデンサ取付板19を介して分岐内導体18に取り付けられている。コンデンサ取付板19は、分岐内導体18と可変容量コンデンサ15とを電気的に導通させるため、金属製とされている。
【0042】
可変容量コンデンサ15は、軸方向一端にある板状の固定側電極板22と、軸方向他端にある板状の可動側電極板23と、これら軸方向で対向する固定側電極板22および可動側電極板23をつなぐ、たとえばセラミックス製の絶縁筒からなる外殻24とによって形成されている。この外殻24は、可変容量コンデンサ15を絶縁部材で密閉することにより電気的に保護するものである。外殻24の内部では、固定側電極板22に固定側電極25が固定され、この固定側電極25に対して可動側電極26が軸方向に沿って移動自在に内外嵌合されている。
【0043】
固定側電極25は、複数の円筒体を同心状に配置したものであり、可動側電極26は、固定側電極25を構成する複数の円筒体に対して内外嵌合する複数の円筒体を同心状に配置したものである。固定側電極25の複数の円筒体と、可動側電極26の複数の円筒体とは、半径方向に所定の間隔を隔てて対向している。この固定側電極25と可動側電極26とにおける多層構造によって静電容量が形成され、固定側電極25に対する可動側電極26の軸方向に沿った移動によって、静電容量が可変されるようになっている。
【0044】
なお、分岐内導体18と可変容量コンデンサ15とは、溶接、接着などで一体化されていてもよく、あるいはボルトなどの締結手段により分離可能な状態で連結されていてもよい。また、可動側電極板23とコンデンサカバー16とは、同様な接合構造とされていてもよい。
【0045】
固定側電極板22の軸心部には、ガイド筒29が設けられ、可動側電極26の軸心部には、可動リード30が設けられており、これらガイド筒29と可動リード30との間にわたって、たとえばセラミックス製のセンターピン31が摺動自在に差し渡し嵌合されている。この構造により軸心精度が高められ、固定側電極25に対する可動側電極26の軸方向に沿った相対移動をスムーズかつ正確なものにされている。
【0046】
可動側電極26に一体接合された可動リード30には、調整ボルト32が一体的に設けられている。可動側電極板23の軸心部には、凹入部33が形成されており、その凹入部33の軸心部に形成された貫通孔に上記調整ボルト32が軸方向で内外に貫通されている。調整ボルト32の外周部には雄ネジが螺刻されており、この雄ネジに後述する静電容量調整筒軸27の雌ネジが螺合されている。
【0047】
外殻24の内部において、可動側電極板23と可動側電極26との間には、調整ボルト32を取り巻く状態でベローズ36が軸方向に伸縮自在に張設されている。ベローズ36は、導体製であり、可動側電極26を可動側電極板23に対して電気的に接続している。このベローズ36は、可動側電極26が上下動するため、当該可動側電極26を可動側電極板23に伸縮可能に電気的に接続するものである。可動側電極板23は、コンデンサカバー16を介して主同軸管外導体12に電気的に接続されているから、結果的にベローズ36は可動側電極26を主同軸管外導体12に電気的に接続する機能を果たしている。また、このベローズ36は、可動側電極26や調整ボルト32の回り止めをも兼ねている。
【0048】
コンデンサカバー16は、その上端部に形成された貫通孔16aに対して静電容量調整筒軸27を貫通させた状態で、可変容量コンデンサ15に外套され、コンデンサカバー16の端板内面と可変容量コンデンサ15の可動側電極板23とが接合されている。静電容量調整筒軸27と可動側電極板23の凹入部33との間には、スラストベアリング(図示略)が介挿されている。
【0049】
コンデンサカバー16の基部のフランジ16bは、主同軸管外導体12の外周面に固定されている。コンデンサカバー16は、可動側電極板23を主同軸管外導体12に対して導通状態に接続している。
【0050】
コンデンサカバー16から突出した可変容量コンデンサ15の静電容量調整筒軸27には、それと同軸状に対向された状態で、かつカップリング37を介して駆動用モータ17の駆動軸38が減速機構の介在なしに直接的に連結されている。静電容量調整筒軸27、カップリング37および駆動軸38は、モータ支持フランジ20によってそれらの周囲が覆われており、モータ支持フランジ20は、駆動用モータ17とコンデンサカバー16との間に介装されている。
【0051】
駆動用モータ17は、マイクロコンピュータCからの制御信号に基づいて駆動される。駆動用モータ17が駆動されると、駆動軸38、カップリング37および静電容量調整筒軸27が回転し、静電容量調整筒軸27に螺合された調整ボルト32が上下動する。これに伴い、可動リード30に一体的に設けられた可動側電極26が上下動し、その結果、可変容量コンデンサ15における静電容量が可変される。なお、駆動用モータ17には、エンコーダ(図示略)が付属されており、そのエンコーダによって駆動用モータ17の駆動状態がマイクロコンピュータCに監視されるようになっている。なお、上記のように駆動用モータ17によって可動電極26が可動されることに代えて、手動で可動側電極26が可動されてもよい。
【0052】
本実施形態では、図3および図4に示すように、上記可変容量コンデンサ15の外殻24に、複数本のリアクトル40が巻回されている。リアクトル40は、本実施形態では2本構成とされ、外殻24の周囲において交わることなく螺旋状にそれぞれ1巻き巻回されている。リアクトル40を2本構成としているのは、リアクトル40に大電流が流れた場合に当該リアクトル40が焼損することを防止するため、リアクトル40に流れる電流を分流し、各リアクトル40に流れる電流を抑制するようにしたものである。
【0053】
リアクトル40は、たとえばアルミニウム、銅、銀、金または白金からなる単線によって構成されている。たとえばリアクトル40に銅が用いられる場合には、金めっきまたは銀めっきされて用いられてもよい。リアクトル40は、可変容量コンデンサ15に対してセラミックス製の絶縁材である外殻24によって絶縁されている。リアクトル40の一端部は、コンデンサカバー16の上端部に取り付けられ、それと導通接続されるリアクトル取付板41にボルトなどの締結手段によって固着されている。また、リアクトル40の他端部は、固定側電極板22に導通接続されたコンデンサ取付板19にボルトなどの締結手段によって固着されている。
【0054】
なお、リアクトル40の巻数や巻回形態は、上記に限るものではない。リアクトル40の本数は3本以上でもよく、大容量のリアクトルで構成する場合は1本であってもよい。
【0055】
また、リアクトル40を流れる電流は、表皮効果によってその表面を流れるが、リアクトル40の外側(可変容量コンデンサ15に遠い面)よりもリアクトル40の内側(可変容量コンデンサ15に近い面)の方が長さが短いので、より流れやすい。そのため、リアクトル40は、この実施形態ではその断面が略円形とされているが、たとえば略円形のものよりその断面積が大の略楕円形や略矩形状のものを採用してもよい。
【0056】
図5は、本実施形態にかかる第1ないし第3のスタブ素子1,2,3を等価回路で表した図である。同図左側の等価回路のコンデンサVCは可変容量コンデンサ15の容量に相当し、インダクタンスL1はベローズ36や配線による寄生インダクタンスおよびコンデンサカバー16による固定インダクタンスに相当し、インダクタンスL2はリアクトル40のインダクタンスに相当している。
【0057】
VHF帯ではインダクタンスL1は非常に小さくなるため、インダクタンスL1とコンデンサVCとの直列回路は、図5の右側に示すように実質的にコンデンサVCと見なすことができる。したがって、各スタブ素子1〜3は同図右側に示すコンデンサVCとインダクタンスL2との並列共振回路となり、本実施形態にかかるインピーダンス整合器の等価回路も図6に示すようになる。
【0058】
各スタブ素子1〜3は、並列共振回路なので、可変容量コンデンサの容量値を変化させることによって並列共振周波数を調整することができる。そのため、並列共振周波数を高周波電力Pの発振周波数よりも高くすると、個々のスタブ素子単体として見たときに、各スタブ素子1〜3がインダクタとして機能し、並列共振周波数を高周波電源Pの発振周波数よりも低くすると、各スタブ素子1〜3がコンデンサとして機能する。また、可変容量コンデンサの容量値を変化させることによってリアクタンス値(インダクタンス値または容量値)を調整することができる。
【0059】
図10に示すインピーダンス整合器では、VHF帯で使用すると、各スタブ素子は、個々のスタブ素子単体として見たときに、コンデンサ単体としてしか機能しないため、その容量値を変化させてもインダクタンスが得られず、インピーダンスを整合させることができない場合が生じたが、本実施形態にかかるインピーダンス整合器Mでは、各スタブ素子1〜3が並列共振回路として機能し、その並列共振周波数を調整することにより各スタブ素子1〜3のリアクタンスを容量、インダクタンスのいずれにも調整可能で、負荷のインピーダンスがスミスチャート上の広範囲にわたって変化してもインピーダンスを整合させることができる。
【0060】
なお、各スタブ素子1〜3は、同軸管管内波長の1/4の長さの間隔で主同軸管10に接続されているので、スタブ素子1〜3の位置によって特性が異なる。そのため、第1のスタブ素子1がインダクタとして機能する場合には、第2のスタブ素子2がキャパシタ(コンデンサ)として機能し、第3のスタブ素子3がインダクタとして機能するようになっている。また、本実施形態では、各スタブ素子1〜3が、主にコンデンサとして機能し、一部においてインダクタとして機能するように、並列共振周波数の変化範囲を設定している。
【0061】
また、この実施形態によれば、可変容量コンデンサ15の周囲にリアクトル40を巻回するといった容易な構成により、VHF帯においても適切にインピーダンス整合をとることができるので、装置の大型化を招いたり、設計変更による大幅なコスト増大を招いたりすることはない。
【0062】
図7は、上記構成におけるインピーダンス整合器の整合範囲をスミスチャートにして示した図である。なお、インピーダンス整合器Mの各スタブ素子1〜3の可変容量コンデンサ15の容量値はステップ状に可変になっており、たとえば6pF〜30pFの範囲で2000段階に調整可能になっている。図7に示す整合範囲は、インピーダンス整合器Mの出力端に50Ωの終端抵抗を接続し、各スタブ素子1〜3の容量値をそれぞれ100ステップずつ変化させたときのインピーダンス整合器Mの入力端のインピーダンス値をプロットしたものである。スミスチャート上の複数個の黒丸の点はそのインピーダンス値を示している。
【0063】
図7に示す測定値は、50Ωの終端抵抗、すなわち、50Ωの負荷がインピーダンス整合器Mの入力端ではどのようなインピーダンスに変更されるかを示すものである。インピーダンス整合器Mの入力端におけるインピーダンスがスミスチャート上の任意の点のインピーダンスに変換されるということは、インピーダンス整合器Mの入力端と出力端とを逆に見れば、スミスチャート上の任意の点の負荷Lのインピーダンスが50Ωに変換されることを意味する。すなわち、図7において、負荷Lのインピーダンスが黒丸の点のインピーダンスである場合は、インピーダンス整合器Mにより50Ωに整合させることができることを意味する。
【0064】
図7に示すように、黒丸の点はスミスチャートの略全領域に分布していることから、本発明にかかるインピーダンス整合器Mによれば、VHF帯で任意の負荷Lのインピーダンスを高周波電源Pの入力インピーダンス(たとえば50Ω)に整合させることができることが分かる。なお、図7は150MHzについて確認したものであるが、VHF帯の他の周波数、特に100〜300MHzの周波数に対し、上記構成により好適なインピーダンス整合器Mを作成することができる。
【0065】
もちろん、この発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、3つのスタブ素子1,2,3を備えたインピーダンス整合器Mについて説明したが、この構成に代えて、3つのスタブ素子1,2,3のうちいずれか2つのスタブ素子のみを備えたインピーダンス整合器を用いてもよい。ただし、この場合の整合範囲は、図8および図9に示すように、限られた範囲とされるため、その整合範囲に対応した負荷Lに用いることができる。なお、図8は、図7に示す整合範囲の測定において、第3のスタブ素子3を最小容量値に固定し、第1および第2のスタブ素子1,2を動作させたときの整合範囲を示す図であり、図9は、同測定において、第1のスタブ素子1を最小容量値に固定し、第2および第3のスタブ素子2,3を動作させたときの整合範囲を示す図である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明にかかるスタブ素子を含むインピーダンス整合器が適用された半導体製造装置の構成の一例を示す図である。
【図2】図1に示すインピーダンス整合器の概略構成を示す断面図である。
【図3】図2に示すスタブ素子を拡大して示す断面図である。
【図4】スタブ素子の外観図である。
【図5】本願発明にかかるスタブ素子の等価回路を表した図である。
【図6】本願発明にかかるインピーダンス整合器の等価回路を表した図である。
【図7】本願発明のインピーダンス整合器における整合範囲をスミスチャートにして示す図である。
【図8】第1および第2のスタブ素子を動作させたときの整合範囲を示した図である。
【図9】第2および第3のスタブ素子を動作させたときの整合範囲を示した図である。
【図10】従来のインピーダンス整合器の概略構成を示す断面図である。
【図11】従来のインピーダンス整合器における整合範囲をスミスチャートにして示す図である。
【符号の説明】
1 第1のスタブ素子
2 第2のスタブ素子
3 第3のスタブ素子
10 主同軸管
15 可変容量コンデンサ
16 コンデンサカバー
17 駆動用モータ
24 外殻
25 固定側電極
26 可動側電極
40 リアクトル
L 負荷
M インピーダンス整合器
P 高周波電源
T 同軸管
【発明の属する技術分野】
本願発明は、たとえば高周波電力を用いてプラズマを発生させてエッチングや薄膜形成などを行う半導体製造装置に用いられ、負荷側のインピーダンスと高周波電源側の特性インピーダンスとを整合させるためのインピーダンス整合器およびそのインピーダンス整合器に用いられるスタブ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
上述したような半導体製造装置は、通常、高周波電源と負荷とが同軸管によって接続され、同軸管の途中にインピーダンス整合器が介在された構成とされている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−330007号公報
【0004】
このインピーダンス整合器は、伝送路のインピーダンスと負荷側のインピーダンスとをマッチングさせることにより、高周波電源において発生した高周波電力が負荷側において反射することを抑制または防止して、高周波電源側からの高周波電力が負荷側において最大限に利用されるようにしたものである。
【0005】
上記特許文献1に記載されるインピーダンス整合器は、UHF帯(300MHz〜1GHz)やSHF帯(1GHz〜30GHz)の周波数で用いられるもので、図10に示すように、同軸管50に所定の間隔(λg/4,λg:管内波長)を隔てて連設された3つのスタブ素子1A,2A,3Aを備え、各スタブ素子は、同軸管50の内導体50Aに接続された固定電極51、およびこの固定電極51に対して所定間隔を隔てて移動自在に設けられた可動電極52からなる可変容量コンデンサ53と、この可変容量コンデンサ53を絶縁保護するための絶縁部材54と、可変容量コンデンサ53の可動電極52をコンデンサカバー56に電気的に接続するための伸縮自在に張設された導電性のベローズ55と、可変容量コンデンサ53および絶縁部材54の周囲を覆い、同軸管50の外導体50Bに接続された導電性のコンデンサカバー56と、可変容量コンデンサ53の可動電極52を駆動する駆動用モータ57とを備えている。
【0006】
このインピーダンス整合器に用いられるスタブ素子1A〜3Aは、UHF帯もしくはSHF帯では、その構造上、可変容量コンデンサ53の可動電極52を同軸管50の外導体50Bに接続するためのコンデンサカバー56や可動電極52の可動時にも安定して当該可動電極52を電気的にコンデンサカバー56に接続するためのベローズ55がインダクタとして機能するため、これらのインダクタと可変容量コンデンサ53の容量との直列共振回路として動作するようになっている。実際に整合素子として機能するときは、各スタブ素子1A〜3Aは直列共振回路の直列共振周波数を通り過ぎたインダクタの部分で動作し、可変容量コンデンサ53の容量を変化させることにより直列共振周波数が変化してそのインダクタが変化するようになっている。すなわち、各スタブ素子1A〜3Aは可変インダクタ素子として機能するようになっている。
【0007】
また、各スタブ素子1A〜3Aが実際の整合素子として機能するときは、直列共振周波数よりも高い周波数領域の高周波電力が使用される。なお、直列共振回路の場合、直列共振周波数よりも高い周波数領域になると、回路がインダクタとして機能する。しかし、各スタブ素子1A〜3Aは、同軸管管内波長の1/4の長さの間隔で同軸管50に接続されているので、スタブ素子1A〜3Aの位置によって特性が異なる。そのために、スタブ素子1Aがインダクタとして機能する場合は、スタブ素子2Aがキャパシタ(コンデンサ)として機能し、スタブ素子3Aがインダクタとして機能するようになる。また、インダクタやキャパシタとして機能する各スタブ素子1A〜3Aは、可変容量コンデンサ53の容量を変化させることによって可変インダクタ素子や可変容量素子として機能するようになる。
【0008】
したがって、図10に示すインピーダンス整合器では、各スタブ素子1A〜3Aにおいて可変容量コンデンサ53における静電容量を調整することにより実質的に各スタブのインダクタを調整してインピーダンスの整合が行なわれる。すなわち、駆動用モータ57によって固定電極51に対して可動電極52を移動させることにより、可変容量コンデンサ53の静電容量が変化され、これにより直列共振回路のリアクタンス値(インダクタンス値)が変化してインピーダンスの整合が行なわれる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の可変容量コンデンサからなるスタブ素子を用いたインピーダンス整合器をVHF帯(30MHz〜300MHz)にも適用すれば、外観上はUHF帯やSHF帯のインピーダンス整合器と同等のサイズで構成でき、この周波数帯域におけるインピーダンス整合器の大幅な小型化が可能となる。特に、短絡板をプランジャーによって可変とし、ある周波数で任意のリアクタンス値が得られるようにした先端ショートの伝送線路(可変ショート)からなるスタブ素子を用いたインピーダンス整合器では長手方向の素子寸法(短絡板が移動する線路長方向の寸法)が使用周波数の波長に依存し、VHF帯ではインピーダンス整合器が極めて大型化することから、可変容量コンデンサからなるスタブ素子を用いたインピーダンス整合器は、可変ショートからなるスタブ素子を用いたインピーダンス整合器に比して大幅な小型化が可能で、使い勝手の良いインピーダンス整合器を実現することができる。
【0010】
しかしながら、図10に示す従来のインピーダンス整合器の構造をそのままVHF帯に適用すると、VHF帯は、UHF帯やSHF帯に比べて周波数が低いのでベローズ55やコンデンサカバー56の部分がインダクタとして有効に機能しない。そのため、スタブ素子1A〜3Aが、インダクタと可変容量コンデンサ53の容量との直列共振回路として有効に機能しない。よって、図10に示す構成では、インピーダンス整合器として十分に機能しないといった問題がある。
【0011】
すなわち、図10に示す構成では、スタブ素子1A〜3Aは、個々のスタブ素子単体として見たときに、VHF帯では可変容量素子としてしか機能せず、可変インダクタとしては機能しないため、インピーダンスを整合させるためにスタブ素子1A〜3Aにインダクタンス成分が必要な場合には十分なインピーダンス整合ができなくなる。このことは、スミスチャート上の広範囲に負荷のインピーダンスが変化してもインピーダンス整合を可能にするというインピーダンス整合器に要求される基本的な特性を満足し得ないという点で特に問題となる。
【0012】
図11は、図10に示すインピーダンス整合器をたとえば150MHzの周波数で使用した場合の整合範囲をスミスチャートを用いて示した図である。同図において、黒い影の部分Sは整合可能な点をプロットしたものである。同図に示すように、従来のインピーダンス整合器では、ごく一部の領域でしか負荷に対するインピーダンスの整合範囲とすることができなかった。
【0013】
【発明の開示】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、VHF帯において容易な構成で適切にインピーダンス整合を行うことのできるインピーダンス整合器を提供することを、その課題とする。
【0014】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0015】
本願発明の第1の側面によって提供されるスタブ素子は、所定間隔を隔てて離間しながら相対移動自在に設けられた第1の電極および第2の電極と、少なくとも前記第1の電極および第2の電極を覆うシールド部材と、前記第1の電極および第2の電極のうちいずれか一方を移動させるための駆動手段とを備えたスタブ素子であって、一端が前記第1の電極に導通接続されるとともに他端が前記第2の電極に導通接続される導電性ワイヤが巻回されていることを特徴としている。
【0016】
本願発明の第2の側面によって提供されるスタブ素子は、静電容量を可変させるために相対移動自在に設けられた第1の電極および第2の電極を有するとともに、前記第1の電極および第2の電極を収容する外殻の一部が前記第1の電極および第2の電極との接続部材を電気的に絶縁するように絶縁部分で構成された可変容量コンデンサと、少なくとも前記可変容量コンデンサを覆うシールド部材と、前記第1の電極および第2の電極のうちいずれか一方を移動させるための駆動手段とを備えたスタブ素子であって、前記可変容量コンデンサの外殻の一部を構成する前記絶縁部材の周囲には、前記可変容量コンデンサに対して並列に接続された導電性ワイヤが巻回されていることを特徴としている。
【0017】
好ましい実施形態によれば、前記導電性ワイヤは、複数本設けられていてもよい。また、前記導電性ワイヤは、単線によって構成されていてもよい。
【0018】
また、他の好ましい実施形態によれば、前記可変容量コンデンサは、前記第1の電極と第2の電極との間の静電容量を形成するための空間が真空になっている真空可変容量コンデンサであってもよい。
【0019】
この発明によれば、第1の電極および第2の電極が可変容量コンデンサを構成し、絶縁部材が可変容量コンデンサの外殻の一部を構成し、シールド部材がコンデンサカバーを構成している。そして、外殻の周囲に、一端が第1の電極に接続されるとともに他端が第2の電極に接続されるリアクトルとしての導電性ワイヤが巻回されることにより、可変容量コンデンサに対して並列にリアクトルが接続されることになり、これら可変容量コンデンサおよびリアクトルによってLC並列共振回路が構成される。
【0020】
スタブ素子は、並列共振回路なので、可変容量コンデンサの容量値を変化させることによって並列共振周波数を調整することができる。そのため、並列共振周波数を高周波電力の発振周波数よりも高くすると、個々のスタブ素子単体として見たときに、スタブ素子がインダクタとして機能し、並列共振周波数を高周波電源の発振周波数よりも低くすると、スタブ素子がコンデンサとして機能する。また、可変容量コンデンサの容量値を変化させることによってリアクタンス値(インダクタンス値または容量値)を調整することができる。
【0021】
すなわち、従来の構成(図10参照)に示すインピーダンス整合器では、VHF帯で使用すると、各スタブ素子は、個々のスタブ素子単体として見たときに、コンデンサ単体としてしか機能しないため、その容量値を変化させてもインダクタンスが得られず、インピーダンスを整合させることができない場合が生じたが、本願発明にかかるインピーダンス整合器では、各スタブ素子が並列共振回路として機能し、その並列共振周波数を調整することにより各スタブ素子のリアクタンスを容量、インダクタンスのいずれにも調整可能で、負荷のインピーダンスがスミスチャート上の広範囲にわたって変化してもインピーダンスを整合させることができる。
【0022】
また、上記発明によれば、可変容量コンデンサの周囲にワイヤを巻回するといった容易な構成により、VHF帯においても適切にインピーダンス整合をとることができるので、装置の大型化を招いたり、設計変更による大幅なコスト増大を招くことはない。
【0023】
本願発明の第3の側面によって提供されるインピーダンス整合器は、本願発明の第1の側面によって提供されるスタブ素子と、それを支持するための同軸管とを備え、前記同軸管の管軸方向に少なくとも2つの前記スタブ素子が所定間隔を隔てて連設されていることを特徴としている。
【0024】
この発明によれば、同軸管に対して上記したスタブ素子を少なくとも2つ(好ましくは3つ)所定間隔を隔てて連設させることにより、VHF帯においても負荷に対して適切なインピーダンス整合を行うことができる。
【0025】
本願発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0027】
図1は、本願発明にかかるスタブ素子を含むインピーダンス整合器が適用された、たとえば高周波電力を用いてプラズマを発生させてエッチングや薄膜形成などを行う半導体製造装置の構成の一例を示す図である。
【0028】
この半導体製造装置は、高周波電源P、アンテナ装置A、インピーダンス整合器M、およびマイクロコンピュータCによって構成され、この装置には、プラズマチャンバーとしての負荷Lが接続されている。高周波電源Pと負荷Lとは、同軸管(導波管)Tによって接続され、その途中にアンテナ装置Aおよびインピーダンス整合器Mが介装されている。
【0029】
高周波電源Pは、負荷Lに対して高周波電力を供給するためのものである。
【0030】
アンテナ装置Aは、同軸管T内における高周波電力の電圧定在波振幅を検出するためのものであり、同軸管Tにおいてその管軸方向の3箇所に配置された3つのアンテナA1,A2,A3を備えている。アンテナ装置Aは、各アンテナA1,A2,A3で検出した電圧定在波振幅としての検出信号をマイクロコンピュータCに送出する。
【0031】
マイクロコンピュータCは、アンテナ装置Aから受け取った3つの検出信号に基づいて、同軸管T内における反射係数の大きさと位相とを計算し、インピーダンス整合器Mに備えられた第1ないし第3のスタブ素子1,2,3(後述)の各位置から負荷L側を見た値に変換し、インピーダンス整合に必要なスタブを選択するとともに、その調整量を算出するものである。マイクロコンピュータCは、検出信号としてのデータの取り込みを約1msecごとに実行し、最新のデータに基づいてスタブの調整量を補正する。
【0032】
負荷Lは、たとえばプラズマ処理装置(プラズマチャンバー)とされ、このプラズマ処理装置は、内部に備えた真空容器にプラズマ発生用のガスが導入され、供給された高周波電力を用いて上記ガスを電離させて、プラズマを発生させるものである。発生されたプラズマは、半導体ウェハや液晶基板等の被工作物を加工するために利用される。
【0033】
インピーダンス整合器Mは、伝送路のインピーダンスと負荷L側のインピーダンスとをマッチングさせるものであり、第1ないし第3のスタブ素子1,2,3を有している。第1ないし第3のスタブ素子1,2,3は、マイクロコンピュータCからの指令により、それぞれに備えられた駆動用モータ17(後述)を駆動回転させる。第1ないし第3のスタブ素子1,2,3では、駆動用モータ17の駆動回転により、可変容量コンデンサ15(後述)を上下動させて各スタブ素子1,2,3のリアクタンス値(またはサセプタンス値)を変化させ、適切なインピーダンスの整合を行う。
【0034】
図2は、図1に示すインピーダンス整合器Mの概略構成を示す断面図である。このインピーダンス整合器Mには、同軸管Tに接続される主同軸管10が設けられている。主同軸管10は、主同軸管内導体11と主同軸管外導体12とからなり、主同軸管内導体11の外周に所定の間隔を隔てて主同軸管外導体12が同心状に外套されている。主同軸管10には、第1ないし第3のスタブ素子1,2,3が設けられている。第1ないし第3のスタブ素子1,2,3は、印加する高周波電力の周波数の同軸管管内波長をλgとすると、主同軸管10に対してその管軸方向にλg/4だけ隔てた3ヶ所にそれぞれ取り付けられている。
【0035】
なお、同軸管における高周波電力の流れは、同軸管の導体表面しか流れない(表皮効果)ために、管内波長λgは自由空間における波長λと同じである。よって、隣り合うスタブ素子1,2,3間の距離λg/4は、次式で求められる。ただし、λは、高周波電源Pから出力される高周波電力の発振周波数における波長である。また、cは光の速度であり、fは高周波電源Pの発振周波数である。
【0036】
【数1】
【0037】
本実施形態のインピーダンス整合器は、VHF帯用のインピーダンス整合器Mであるから、たとえば高周波電源Pの発振周波数fが150MHzの場合は、λg/4=(3×108)/(150×106)×(1/4)=0.5[m]となる。なお、これら第1ないし第3のスタブ素子1,2,3の構造は、略同様とされているため、以下では、第1のスタブ素子1について説明する。
【0038】
図3は、第1のスタブ素子1を拡大して示す断面図である。第1のスタブ素子1は、可変容量コンデンサ15と、導電性のコンデンサカバー16と、駆動用モータ(ステッピングモータ)17とを備えて大略構成されている。
【0039】
上記主同軸管内導体11には、それに対して鉛直方向に延びて接合された分岐内導体18が設けられ、分岐内導体18は、主同軸管外導体12に形成された貫通孔12aを通して主同軸管外導体12の外側まで延出している。可変容量コンデンサ15は、この分岐内導体18の延出端部に固定されている。可変容量コンデンサ15の外周には、所定の間隔を隔ててたとえば銅、アルミニウム、または真鍮からなるコンデンサカバー16が外嵌され、このコンデンサカバー16は、主同軸管外導体12の外周面に接合されている。コンデンサカバー16は、可変容量コンデンサ15を電気的に覆うことにより外部導体の電気的影響を遮蔽するシールド部材である。コンデンサカバー16の上端部には、モータ支持フランジ20を介して駆動用モータ17が取り付けられている。
【0040】
なお、分岐内導体18と主同軸管内導体11とは、溶接、接着などで一体化されていてもよく、あるいはボルトなどの締結手段により分離可能な状態で連結されていてもよい。また、コンデンサカバー16と主同軸管外導体12とは、同様な接合構造とされていてもよい。
【0041】
可変容量コンデンサ15は、たとえば大電力を許容するための真空コンデンサによって構成されており、分岐内導体18に固着されたコンデンサ取付板19を介して分岐内導体18に取り付けられている。コンデンサ取付板19は、分岐内導体18と可変容量コンデンサ15とを電気的に導通させるため、金属製とされている。
【0042】
可変容量コンデンサ15は、軸方向一端にある板状の固定側電極板22と、軸方向他端にある板状の可動側電極板23と、これら軸方向で対向する固定側電極板22および可動側電極板23をつなぐ、たとえばセラミックス製の絶縁筒からなる外殻24とによって形成されている。この外殻24は、可変容量コンデンサ15を絶縁部材で密閉することにより電気的に保護するものである。外殻24の内部では、固定側電極板22に固定側電極25が固定され、この固定側電極25に対して可動側電極26が軸方向に沿って移動自在に内外嵌合されている。
【0043】
固定側電極25は、複数の円筒体を同心状に配置したものであり、可動側電極26は、固定側電極25を構成する複数の円筒体に対して内外嵌合する複数の円筒体を同心状に配置したものである。固定側電極25の複数の円筒体と、可動側電極26の複数の円筒体とは、半径方向に所定の間隔を隔てて対向している。この固定側電極25と可動側電極26とにおける多層構造によって静電容量が形成され、固定側電極25に対する可動側電極26の軸方向に沿った移動によって、静電容量が可変されるようになっている。
【0044】
なお、分岐内導体18と可変容量コンデンサ15とは、溶接、接着などで一体化されていてもよく、あるいはボルトなどの締結手段により分離可能な状態で連結されていてもよい。また、可動側電極板23とコンデンサカバー16とは、同様な接合構造とされていてもよい。
【0045】
固定側電極板22の軸心部には、ガイド筒29が設けられ、可動側電極26の軸心部には、可動リード30が設けられており、これらガイド筒29と可動リード30との間にわたって、たとえばセラミックス製のセンターピン31が摺動自在に差し渡し嵌合されている。この構造により軸心精度が高められ、固定側電極25に対する可動側電極26の軸方向に沿った相対移動をスムーズかつ正確なものにされている。
【0046】
可動側電極26に一体接合された可動リード30には、調整ボルト32が一体的に設けられている。可動側電極板23の軸心部には、凹入部33が形成されており、その凹入部33の軸心部に形成された貫通孔に上記調整ボルト32が軸方向で内外に貫通されている。調整ボルト32の外周部には雄ネジが螺刻されており、この雄ネジに後述する静電容量調整筒軸27の雌ネジが螺合されている。
【0047】
外殻24の内部において、可動側電極板23と可動側電極26との間には、調整ボルト32を取り巻く状態でベローズ36が軸方向に伸縮自在に張設されている。ベローズ36は、導体製であり、可動側電極26を可動側電極板23に対して電気的に接続している。このベローズ36は、可動側電極26が上下動するため、当該可動側電極26を可動側電極板23に伸縮可能に電気的に接続するものである。可動側電極板23は、コンデンサカバー16を介して主同軸管外導体12に電気的に接続されているから、結果的にベローズ36は可動側電極26を主同軸管外導体12に電気的に接続する機能を果たしている。また、このベローズ36は、可動側電極26や調整ボルト32の回り止めをも兼ねている。
【0048】
コンデンサカバー16は、その上端部に形成された貫通孔16aに対して静電容量調整筒軸27を貫通させた状態で、可変容量コンデンサ15に外套され、コンデンサカバー16の端板内面と可変容量コンデンサ15の可動側電極板23とが接合されている。静電容量調整筒軸27と可動側電極板23の凹入部33との間には、スラストベアリング(図示略)が介挿されている。
【0049】
コンデンサカバー16の基部のフランジ16bは、主同軸管外導体12の外周面に固定されている。コンデンサカバー16は、可動側電極板23を主同軸管外導体12に対して導通状態に接続している。
【0050】
コンデンサカバー16から突出した可変容量コンデンサ15の静電容量調整筒軸27には、それと同軸状に対向された状態で、かつカップリング37を介して駆動用モータ17の駆動軸38が減速機構の介在なしに直接的に連結されている。静電容量調整筒軸27、カップリング37および駆動軸38は、モータ支持フランジ20によってそれらの周囲が覆われており、モータ支持フランジ20は、駆動用モータ17とコンデンサカバー16との間に介装されている。
【0051】
駆動用モータ17は、マイクロコンピュータCからの制御信号に基づいて駆動される。駆動用モータ17が駆動されると、駆動軸38、カップリング37および静電容量調整筒軸27が回転し、静電容量調整筒軸27に螺合された調整ボルト32が上下動する。これに伴い、可動リード30に一体的に設けられた可動側電極26が上下動し、その結果、可変容量コンデンサ15における静電容量が可変される。なお、駆動用モータ17には、エンコーダ(図示略)が付属されており、そのエンコーダによって駆動用モータ17の駆動状態がマイクロコンピュータCに監視されるようになっている。なお、上記のように駆動用モータ17によって可動電極26が可動されることに代えて、手動で可動側電極26が可動されてもよい。
【0052】
本実施形態では、図3および図4に示すように、上記可変容量コンデンサ15の外殻24に、複数本のリアクトル40が巻回されている。リアクトル40は、本実施形態では2本構成とされ、外殻24の周囲において交わることなく螺旋状にそれぞれ1巻き巻回されている。リアクトル40を2本構成としているのは、リアクトル40に大電流が流れた場合に当該リアクトル40が焼損することを防止するため、リアクトル40に流れる電流を分流し、各リアクトル40に流れる電流を抑制するようにしたものである。
【0053】
リアクトル40は、たとえばアルミニウム、銅、銀、金または白金からなる単線によって構成されている。たとえばリアクトル40に銅が用いられる場合には、金めっきまたは銀めっきされて用いられてもよい。リアクトル40は、可変容量コンデンサ15に対してセラミックス製の絶縁材である外殻24によって絶縁されている。リアクトル40の一端部は、コンデンサカバー16の上端部に取り付けられ、それと導通接続されるリアクトル取付板41にボルトなどの締結手段によって固着されている。また、リアクトル40の他端部は、固定側電極板22に導通接続されたコンデンサ取付板19にボルトなどの締結手段によって固着されている。
【0054】
なお、リアクトル40の巻数や巻回形態は、上記に限るものではない。リアクトル40の本数は3本以上でもよく、大容量のリアクトルで構成する場合は1本であってもよい。
【0055】
また、リアクトル40を流れる電流は、表皮効果によってその表面を流れるが、リアクトル40の外側(可変容量コンデンサ15に遠い面)よりもリアクトル40の内側(可変容量コンデンサ15に近い面)の方が長さが短いので、より流れやすい。そのため、リアクトル40は、この実施形態ではその断面が略円形とされているが、たとえば略円形のものよりその断面積が大の略楕円形や略矩形状のものを採用してもよい。
【0056】
図5は、本実施形態にかかる第1ないし第3のスタブ素子1,2,3を等価回路で表した図である。同図左側の等価回路のコンデンサVCは可変容量コンデンサ15の容量に相当し、インダクタンスL1はベローズ36や配線による寄生インダクタンスおよびコンデンサカバー16による固定インダクタンスに相当し、インダクタンスL2はリアクトル40のインダクタンスに相当している。
【0057】
VHF帯ではインダクタンスL1は非常に小さくなるため、インダクタンスL1とコンデンサVCとの直列回路は、図5の右側に示すように実質的にコンデンサVCと見なすことができる。したがって、各スタブ素子1〜3は同図右側に示すコンデンサVCとインダクタンスL2との並列共振回路となり、本実施形態にかかるインピーダンス整合器の等価回路も図6に示すようになる。
【0058】
各スタブ素子1〜3は、並列共振回路なので、可変容量コンデンサの容量値を変化させることによって並列共振周波数を調整することができる。そのため、並列共振周波数を高周波電力Pの発振周波数よりも高くすると、個々のスタブ素子単体として見たときに、各スタブ素子1〜3がインダクタとして機能し、並列共振周波数を高周波電源Pの発振周波数よりも低くすると、各スタブ素子1〜3がコンデンサとして機能する。また、可変容量コンデンサの容量値を変化させることによってリアクタンス値(インダクタンス値または容量値)を調整することができる。
【0059】
図10に示すインピーダンス整合器では、VHF帯で使用すると、各スタブ素子は、個々のスタブ素子単体として見たときに、コンデンサ単体としてしか機能しないため、その容量値を変化させてもインダクタンスが得られず、インピーダンスを整合させることができない場合が生じたが、本実施形態にかかるインピーダンス整合器Mでは、各スタブ素子1〜3が並列共振回路として機能し、その並列共振周波数を調整することにより各スタブ素子1〜3のリアクタンスを容量、インダクタンスのいずれにも調整可能で、負荷のインピーダンスがスミスチャート上の広範囲にわたって変化してもインピーダンスを整合させることができる。
【0060】
なお、各スタブ素子1〜3は、同軸管管内波長の1/4の長さの間隔で主同軸管10に接続されているので、スタブ素子1〜3の位置によって特性が異なる。そのため、第1のスタブ素子1がインダクタとして機能する場合には、第2のスタブ素子2がキャパシタ(コンデンサ)として機能し、第3のスタブ素子3がインダクタとして機能するようになっている。また、本実施形態では、各スタブ素子1〜3が、主にコンデンサとして機能し、一部においてインダクタとして機能するように、並列共振周波数の変化範囲を設定している。
【0061】
また、この実施形態によれば、可変容量コンデンサ15の周囲にリアクトル40を巻回するといった容易な構成により、VHF帯においても適切にインピーダンス整合をとることができるので、装置の大型化を招いたり、設計変更による大幅なコスト増大を招いたりすることはない。
【0062】
図7は、上記構成におけるインピーダンス整合器の整合範囲をスミスチャートにして示した図である。なお、インピーダンス整合器Mの各スタブ素子1〜3の可変容量コンデンサ15の容量値はステップ状に可変になっており、たとえば6pF〜30pFの範囲で2000段階に調整可能になっている。図7に示す整合範囲は、インピーダンス整合器Mの出力端に50Ωの終端抵抗を接続し、各スタブ素子1〜3の容量値をそれぞれ100ステップずつ変化させたときのインピーダンス整合器Mの入力端のインピーダンス値をプロットしたものである。スミスチャート上の複数個の黒丸の点はそのインピーダンス値を示している。
【0063】
図7に示す測定値は、50Ωの終端抵抗、すなわち、50Ωの負荷がインピーダンス整合器Mの入力端ではどのようなインピーダンスに変更されるかを示すものである。インピーダンス整合器Mの入力端におけるインピーダンスがスミスチャート上の任意の点のインピーダンスに変換されるということは、インピーダンス整合器Mの入力端と出力端とを逆に見れば、スミスチャート上の任意の点の負荷Lのインピーダンスが50Ωに変換されることを意味する。すなわち、図7において、負荷Lのインピーダンスが黒丸の点のインピーダンスである場合は、インピーダンス整合器Mにより50Ωに整合させることができることを意味する。
【0064】
図7に示すように、黒丸の点はスミスチャートの略全領域に分布していることから、本発明にかかるインピーダンス整合器Mによれば、VHF帯で任意の負荷Lのインピーダンスを高周波電源Pの入力インピーダンス(たとえば50Ω)に整合させることができることが分かる。なお、図7は150MHzについて確認したものであるが、VHF帯の他の周波数、特に100〜300MHzの周波数に対し、上記構成により好適なインピーダンス整合器Mを作成することができる。
【0065】
もちろん、この発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、3つのスタブ素子1,2,3を備えたインピーダンス整合器Mについて説明したが、この構成に代えて、3つのスタブ素子1,2,3のうちいずれか2つのスタブ素子のみを備えたインピーダンス整合器を用いてもよい。ただし、この場合の整合範囲は、図8および図9に示すように、限られた範囲とされるため、その整合範囲に対応した負荷Lに用いることができる。なお、図8は、図7に示す整合範囲の測定において、第3のスタブ素子3を最小容量値に固定し、第1および第2のスタブ素子1,2を動作させたときの整合範囲を示す図であり、図9は、同測定において、第1のスタブ素子1を最小容量値に固定し、第2および第3のスタブ素子2,3を動作させたときの整合範囲を示す図である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明にかかるスタブ素子を含むインピーダンス整合器が適用された半導体製造装置の構成の一例を示す図である。
【図2】図1に示すインピーダンス整合器の概略構成を示す断面図である。
【図3】図2に示すスタブ素子を拡大して示す断面図である。
【図4】スタブ素子の外観図である。
【図5】本願発明にかかるスタブ素子の等価回路を表した図である。
【図6】本願発明にかかるインピーダンス整合器の等価回路を表した図である。
【図7】本願発明のインピーダンス整合器における整合範囲をスミスチャートにして示す図である。
【図8】第1および第2のスタブ素子を動作させたときの整合範囲を示した図である。
【図9】第2および第3のスタブ素子を動作させたときの整合範囲を示した図である。
【図10】従来のインピーダンス整合器の概略構成を示す断面図である。
【図11】従来のインピーダンス整合器における整合範囲をスミスチャートにして示す図である。
【符号の説明】
1 第1のスタブ素子
2 第2のスタブ素子
3 第3のスタブ素子
10 主同軸管
15 可変容量コンデンサ
16 コンデンサカバー
17 駆動用モータ
24 外殻
25 固定側電極
26 可動側電極
40 リアクトル
L 負荷
M インピーダンス整合器
P 高周波電源
T 同軸管
Claims (6)
- 所定間隔を隔てて離間しながら相対移動自在に設けられた第1の電極および第2の電極と、
少なくとも前記第1の電極および第2の電極を覆うシールド部材と、
前記第1の電極および第2の電極のうちいずれか一方を移動させるための駆動手段とを備えたスタブ素子であって、
一端が前記第1の電極に導通接続されるとともに他端が前記第2の電極に導通接続される導電性ワイヤが巻回されていることを特徴とする、スタブ素子。 - 静電容量を可変させるために相対移動自在に設けられた第1の電極および第2の電極を有するとともに、前記第1の電極および第2の電極を収容する外殻の一部が前記第1の電極および第2の電極との接続部分を電気的に絶縁するように絶縁部材で構成された可変容量コンデンサと、
少なくとも前記可変容量コンデンサを覆うシールド部材と、
前記第1の電極および第2の電極のうちいずれか一方を移動させるための駆動手段とを備えたスタブ素子であって、
前記可変容量コンデンサの外殻の一部を構成する前記絶縁部材の周囲には、前記可変容量コンデンサに対して並列に接続された導電性ワイヤが巻回されていることを特徴とする、スタブ素子。 - 前記導電性ワイヤは、複数本設けられている、請求項1または請求項2に記載のスタブ素子。
- 前記導電性ワイヤは、単線によって構成されている、請求項1ないし3のいずれかに記載のスタブ素子。
- 前記可変容量コンデンサは、前記第1の電極と第2の電極との間の静電容量を形成するための空間が真空になっている真空可変容量コンデンサである、請求項2ないし4のいずれかに記載のスタブ素子。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載のスタブ素子と、それを支持するための同軸管とを備え、
前記同軸管の管軸方向に少なくとも2つの前記スタブ素子が所定間隔を隔てて連設されていることを特徴とする、インピーダンス整合器。
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-
2003
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