JP2005019718A - セラミック積層部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】異種材料を積層し、チップに分割後に焼成するセラミック積層部品の製造方法において、焼成時に異種材料間にクラックや剥離を生じることがなく、信頼性の高いセラミック積層部品を製造する方法を提供する。
【解決手段】第1の材料からなるセラミックグリーンシート201,202,203を第1の圧力で圧着することにより第1積層ブロック体207を形成し、第2の材料からなるセラミックグリーンシート204,205,206を第2の圧力で圧着することにより第2積層ブロック体208を形成し、第1積層ブロック体207と第2積層ブロック体208とを重ねて、第1の圧力または第2の圧力の何れか小さい圧力以下の第3の圧力で圧着することにより、第3積層ブロック体209を形成し、第3積層ブロック体を焼成する。
【選択図】 図1
【解決手段】第1の材料からなるセラミックグリーンシート201,202,203を第1の圧力で圧着することにより第1積層ブロック体207を形成し、第2の材料からなるセラミックグリーンシート204,205,206を第2の圧力で圧着することにより第2積層ブロック体208を形成し、第1積層ブロック体207と第2積層ブロック体208とを重ねて、第1の圧力または第2の圧力の何れか小さい圧力以下の第3の圧力で圧着することにより、第3積層ブロック体209を形成し、第3積層ブロック体を焼成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック積層部品の製造方法に係り、特に、異なる材料からなる複数のセラミックグリーンシートを積層し、これを焼成して一体化したセラミック積層部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化、高機能化が急速に進んでいる。電子機器の小型化で電子部品の実装可能なスペースが減っている中で、電子部品に対して高性能・高機能のものが要求され、電子部品の複合化が進みつつある。
【0003】
これら複合部品の一例として、特許文献1に示されている積層LCフィルタ部品がある。これは、セラミックグリーンシートを積層し、これをチップに分割後焼成し、一体化したインダクタとコンデンサによって得られるLC複合フィルタである。フェライトなどの磁性体のグリーンシートに銀(Ag)などの導電体を用いてインダクタ用回路を印刷し、チタン酸バリウムなどの誘電体グリーンシートに銀などの導電体を用いてコンデンサ用回路を印刷して、これらのセラミックグリーンシートを積層することによって所望の立体構造を得て、フィルタ特性を有する複合部品ができる。
【0004】
従来、これら複合部品は、次のような方法で製造される。まず材料ごとに区別することなく、一つの金型を用いて、導電体パターン等を形成したセラミックグリーンシートを積層し、所定の圧力で静水圧プレスを行い積層ブロック体を作成する。この積層ブロック体をダイシングソーなどで切断して、チップに分割して焼成していた。
【0005】
しかしながら、例えば、焼成時に磁性体グリーンシートが誘電体グリーンシートに比して大きく収縮する場合がある。このため、分割焼成後のチップ内にクラックのあるチップや異種材料界面に剥離のあるチップや反りのあるチップが製造されるという問題点があった。
【0006】
このような不具合を防止するために、収縮率や熱膨張率を段階的に変化させた複数種の中間材料毎のセラミックグリーンシートを複数枚作製して、所望の特性を発現させるセラミックグリーンシート群間に挟み込むことにより、焼成時に応力の集中が発生しないようにする積層セラミック複合部品の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−215985号公報
【特許文献2】
特開平10−303069号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような文献2に記載の積層セラミック複合部品の製造方法にあっては、所望の特性を発現させるセラミックグリーンシート群間に挟み込む複数枚の中間材料シートは、その特性に寄与しないことから、チップ化する場合にはチップ体積の削減の妨げになってしまう。また、その中間材料シートは、複数種の中間材料毎にシート成形する必要があり、手間が掛かってコスト高になってしまう。
【0009】
ここで、中間材料シートを用いずに、異種材料間の界面にガラス成分を拡散させて機械的強度を向上させることも考えられるが、材料が限定されてしまって汎用性に劣り、根本的な解決にはならない。
【0010】
本発明は上述した事情に鑑みて為されたもので、異種材料を積層し、チップに分割後に焼成するセラミック積層部品の製造方法において、焼成時に異種材料間にクラックや剥離を生じることがなく、信頼性の高いセラミック積層部品を製造する方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、本発明のセラミック積層部品の製造方法は、第1の材料からなるセラミックグリーンシートを第1の圧力で圧着することにより第1積層ブロック体を形成し、第2の材料からなるセラミックグリーンシートを第2の圧力で圧着することにより第2積層ブロック体を形成し、第1積層ブロック体と第2積層ブロック体とを重ねて、第1の圧力または第2の圧力の何れか小さい圧力以下の第3の圧力で圧着することにより第3積層ブロック体を形成し、第3積層ブロック体をチップに分割した後に焼成する、もしくは焼成後に分割することを特徴とする。
【0012】
上記本発明によれば、第1の圧力で第1材料からなる第1積層ブロック体を圧着形成し、第2の圧力で第2材料からなる第2積層ブロック体を圧着形成して、第1積層ブロック体と第2積層ブロック体とを重ねて、第1の圧力または第2の圧力の何れか小さい圧力以下の第3の圧力で圧着することにより第3積層ブロック体を形成している。このため、それぞれ同じ材料からなる第1積層ブロック体および第2積層ブロック体は焼成時の収縮が均一である上に第1の圧力と第2の圧力を適当な値に選定することにより、第1積層ブロック体および第2積層ブロック体の焼成時の収縮を揃えることが出来る。そして、異なった材料の第1積層ブロック体と第2積層ブロック体の界面を圧着するときには最も弱い圧力(第3の圧力)を用いているので、チップ内部のそれぞれの界面に余分な応力(歪み)を与えることはない。従って、チップ内部にクラックや剥離がなく、チップの反りの無い信頼性の高いセラミック積層部品を、中間に材料を介在させることなく製造することができる。
【0013】
上記第1の圧力および第2の圧力は、ともに1.96×107Pa(200Kgf/cm2)以上で、9.8×107Pa(1000Kgf/cm2)以下であることが好ましく、上記第3の圧力は、1.96×107Pa(200Kgf/cm2)以上であることが好ましい。これにより、安定した積層ブロック体の形成が可能となる。
【0014】
前記第1の材料が誘電体グリーンシートであり、第2の材料が磁性体グリーンシートであることが好ましい。これにより、インダクタとコンデンサを有する積層LCフィルタ部品を信頼性高く製造することができる。
【0015】
また、予め、各材料ごとに圧着時の圧力と焼成時のチップ収縮率の関係を求めておき、それぞれ共通のチップ収縮率となるようにプレス圧力を決めて同じ材料の複数のグリーンシートを積層し圧着を行うことが好ましい。これにより、第1の積層ブロック体と第2の積層ブロック体の焼結時の熱収縮を揃えて異種材料による熱収縮の違いを解消することが出来るので、チップ内部のそれぞれの界面に焼成に伴う応力(歪み)の発生がなく、従って、チップ内部にクラックや剥離の発生を防止することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るセラミック積層部品の製造方法の実施形態について、図1から図3を参照して説明する。
【0017】
図1を参照して本発明のセラミック積層部品の製造方法を実施する工程について説明する。製造は、グリーンシートの原料配合から始まる。まず、絶縁材料を用いたグリーンシートを作成する場合には、原材料として、アルミナ、シリカガラス、アルミナ−シリカ混合系を用いる。磁性材料を用いたグリーンシートを作成する場合には、原材料としてNiZnCuフェライト、MnZnCuフェライト、MgZnCuフェライト、六方晶フェライトを用いる。誘電体材料を用いたグリーンシートを作成する場合には、原材料として、チタン酸バリウム系、チタン酸ストロンチウム系などの誘電体材料を用いる。これらのグリーンシートの作成には、仮焼き処理や粉砕による粒径調整、表面処理を行う。溶剤として、DOPやBBPなどのフタル酸エステル系可塑剤およびエタノールとトルエンの混合溶剤(エタノール/トルエン=1/1)およびノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性系の何れか若しくは混合系の分散剤を用いる。
【0018】
次に、ポリビニルブチラールなどのブチラール樹脂およびポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂およびエチルセルロースなどのセルロース樹脂のバインダーおよびフタル酸などの可塑剤およびノニオン系、カチオン系、アニオン系、両性系などの各種分散剤および有機溶媒や水などの溶剤を加えてボールミルなどの混合機でスラリを作る。そして、攪拌脱泡にて、混合・分散の工程で得られたスラリを攪拌脱泡してスラリ中の気泡を除去する。
【0019】
次に、攪拌脱泡後のスラリをドクターブレードまたはリバースコータなどの装置を用いて.厚さ5〜100μmのグリーンシートを作成する。この時のシート成形速度は、0.1〜5m/分の範囲内でシートの乾燥状態により調整する。この際、樹脂成分はシート内に留まってシートの柔軟性などの性質を出しているが、有機溶剤分は揮発するのでシート内に空孔が生じている。
次に、作成されたグリーンシートを金型サイズに打ち抜く。次に、メカパンチやYAG装置(レーザ装置)などでスルーホールを開ける。次に、インダクタやコンデンサが形成できるように内部電極(導体パターン)を印刷する。内部電極(導体)パターンは、銀(Ag)を100重量%にセルロース樹脂3重量%とBCAを加えたペーストを用いてパターンをスクリーン印刷する。
【0020】
次に、磁性材料を用いたグリーンシートおよび誘電体材料を用いたグリーンシートを材料ごとに仮積層する。図1(a)に示すように、積層ズレを防ぐために、誘電体グリーンシート201,202,203は予め設けられている位置合わせ用の穴を金型210の位置合わせピン211,212にはめ込んで仮積層される。また、磁性体グリーンシート204,205,206は予め設けられている位置合わせ用の穴を金型220の位置合わせピン221,222にはめ込んで仮積層される。なお、図示の例ではそれぞれ3枚のグリーンシートを仮積層していることを示しているが、実際にはより多数のグリーンシートが仮積層される。
【0021】
一枚のグリーンシートを仮積層する毎に弱い圧力で仮圧着しておくことが好ましい。その時の圧力としては1.96×107Pa(200Kgf/cm2)以下が好ましく、出来れば9.8×107Pa(100Kgf/cm2)以下が好ましい。これより強い圧力であると、グリーンシートが伸びて接着ズレが生じる。また、これより弱い圧力であると、仮圧着としては十分ではない。
【0022】
次に、図1(b)に示すように、材料ごとに仮積層されたグリーンシートに対して静水圧プレスを行い所要の圧力で圧着して積層ブロック体を形成する。
【0023】
それに先立ち、図2に示すような使用するグリーンシートに関するチップ収縮率対圧着圧力の関係を示すデータを取得する。
圧着後の積層ブロック体を焼成すると、その体積は収縮する。即ち、積層ブロック体の焼結後の体積は焼成前(圧着後)の体積よりも小さくなる。
セラミック積層部品のチップ収縮率S(%)を式(1)のように定義する。積層ブロック体のある辺について未焼結時の長さL0、焼結時の長さLとすると、
S=(L0−L)/L0 × 100(%) ……… (1)
実際には、セラミック粉末の充填性の限界からLとL0との差はある程度までしか小さくならない。一般的にチップ収縮率Sは15%〜25%となるようにLおよびL0は設定されるのが好ましい。
【0024】
今回データ取得のため下記の試料を用意した。CaTiO3とガラスを主成分とする誘電体セラミック粉末を、エタノール、トルエン、ポリビニルブチラール、フタル酸ジオクチルからなる混合ビヒクルにボールミルを用いて分散させた後、ドクターブレードを用いて厚さ30μmのシート状に成形した。このシートを200mm角に切断して15枚積層した後、圧力を変化させて圧着した。3mm角に切断してチップを作製し、焼成し、シートに平行な方向の収縮率を求めると、図2の実線に示す関係が得られた。
【0025】
同様にして、NiZnCu系フェライト粉からなる磁性体セラミック粉末を厚さ30μmのシート状に成形し、積層し、圧着して、シートに平行な方向の収縮率を求めると、図2の破線に示す関係が得られた。
【0026】
各種材料のグリーンシートに対して同一のチップ収縮率が得られるように、それぞれの圧着時に加える圧力を決定する。即ち、図2に示す圧着圧力とチップ収縮率との関係から、同一のチップ収縮率を与える圧力P1、P2を求める。
【0027】
そして、図1(b)に示すように、誘電体グリーンシートは金型210の位置合わせピン211,212にはめ込んで仮積層された後、静水圧プレス機を用いて圧力P1で圧着され積層ブロック体207を形成する。また、磁性体グリーンシートは金型220の位置合わせピン221,222にはめ込んで仮積層された後、圧力P2で圧着され積層ブロック体208を形成する(圧着1)。
この時の圧力P1またはP2は、
1.96×107Pa(200Kgf/cm2)≦圧着圧力(P1またはP2)≦9.8×107Pa(1000Kgf/cm2)
の範囲内にあることが好ましい。
圧着圧力(P1またはP2)>9.8×107Pa(1000Kgf/cm2)
の場合には、グリーンシートの伸びが大きくなって積層ズレが生じ、ビア部分の接続が困難になることが多くなる。また、下限値を下回った圧力を採用した場合は接着が不十分で剥がれてしまうことが多くなる。
【0028】
第1積層ブロック体と第2積層ブロック体を形成するとき(圧着1)には、グリーンシートは位置ズレ防止ピンのついた金型にセットされた状態で圧着されるのが好ましい。これは、圧着時の積層ズレを防ぐとともに、第1積層ブロック体と第2積層ブロック体を重ねて第3積層ブロック体を作成する時の位置合わせを容易にするためでもある。積層ブロック体を形成することで、グリーンシートを積層して積層方向に圧力を加えることにより樹脂が流動化してシート間の接着が生じる。この際、シート中の空孔は潰されて減少し、その結果圧着後のセラミック積層ブロック体の体積は圧着前と比較して減少する。
【0029】
次に、図1(c)に示すように、異種材料が同一チップ収縮率となるように選定された圧力(P1およびP2)で形成された複数の積層ブロック体207,208を位置合わせ用のピン221,222の付いた金型220にセットする。積層ブロック体207と積層ブロック体208を重ねて静水圧プレス機を用いて圧力P3を与えて、異種材料間の界面を圧着させる(圧着2)。
【0030】
この時の圧力P3は、同種材料からなる第1積層ブロック体と第2積層ブロック体を作成した時(圧着1)に加えた圧力(P1またはP2)の内の小さいものと同等かそれよりも弱く、且つ1.96×107Pa(200Kgf/cm2)以上でなされることが好ましい。圧力P3として、大きな圧力(>P1または>P2)を用いると、チップ収縮率が変わってしまうし、P3<1.96×107Pa(200Kgf/cm2)では界面の接着が不十分になるからである。
【0031】
そして、異種材料間の界面の接着された積層ブロック体209を製品サイズ(例えば、1005(1.0mm×0.5mm)や1608(1.6mm×0.8mm))に合わせて切断してチップに分割する。切断は、ダイシング方式等で行う。チップに分割した後、所定の高温で焼成され、外部電極が形成されて、セラミック積層部品が製造される。もしくは積層ブロック体に、焼成後に製品サイズに分割(ブレーク)するための切り込み(ハーフカット)を施した後に、焼成してその後に分割するようにしてもよい。
【0032】
上述のように、第1積層ブロック体と第2積層ブロック体の作成(圧着1)に用いる圧力(P1,P2)をそれぞれのチップ収縮率が同一になるように決定すること、および第1積層ブロック体と第2積層ブロック体間の界面を圧着する圧着2では圧着1で用いた圧力の内の小さいものと同等かそれより弱い圧力(P3)を用いている。このため、異なる材料間の剥離やチップ内のクラックが無く、反りの無い信頼性の高いセラミック積層チップ230を得ることができる。
【0033】
【実施例1】
厚さ30μmで200mm角の誘電体グリーンシート(15枚)と同サイズの磁性体グリーンシート(15枚)を使用して異種材料の2層構造の帯域通過型フィルタを製作した。各グリーンシートに穴開け加工し、銀(Ag)を用いて誘電体グリーンシートにコンデンサ用回路を印刷し、磁性体グリーンシートにはインダクタ用回路を印刷した後に、それぞれ材料別にグリーンシートを位置合わせピンの付いた金型にセットし、50Kgf/cm2(=0.49×107Pa)の圧力を加えて仮圧着しながらグリーンシートを積層した。
【0034】
チップ収縮率は一般的に15%から25%の範囲にあることが好ましいが、今回はチップ収縮率を18%に設定した。それぞれの材料について圧着時の圧力(P1およびP2)を求めると、誘電体からなる積層ブロック体の作成に用いる圧力P1=300Kgf/cm2(=2.94×107Pa)とし、磁性体からなる積層ブロック体の作成に用いる圧力P2=340Kgf/cm2(=3.33×107Pa)とする。そして、それぞれ仮積層されたグリーンシートに対して静水圧プレスを行い積層ブロック体を形成した。誘電体からなる積層ブロック体を金型からはずして磁性体ブロック体の金型に移してセットし、圧力P3=300Kgf/cm2(=2.94×107Pa)で磁性体の積層ブロック体と誘電体ブロック体の積層ブロック体を重ねて再度静水圧プレスを施して第3積層ブロック体を形成した。
【0035】
第3積層ブロック体を金型から取り外し、3.2mm角のチップ状に切断し分割した後、焼成を行った。チップ230(図1参照)のように、異なる材料間の界面での剥離やチップ内でのクラックは無く、チップの反りも確認されなかった。
【0036】
【比較例1】
実施例1と同じグリーンシート材料を使用して、同じ2層構造を有する帯域通過型フィルタを従来の製造方法で製作した。即ち、図3に示すように、複数の誘電体シート401,402,403と複数の磁性体シート404,405,406は予め設けている位置合わせ用の穴を一つの金型410の位置合わせピン411,412にはめ込んで積層して、圧力P4(=2.94×107Pa)で静水圧プレスを行い積層ブロック体407を作成した。その積層ブロック体407をチップに分割して焼成して2層構造の帯域通過型フィルタを製造した。この帯域通過型フィルタにおいては、異なる材料のグリーンシートを積層して接合させるために、焼結時にチップ収縮率の差による応力が異なる材料間に発生し、扇状のチップ430となった。また、チップ431のように異種材料界面に剥離が見られた。
【0037】
【比較例2】
実施例1と同じ材料を使用して、同じ2層構造を有する帯域通過型フィルタを実施例1と異なる製造方法で製作した。比較例1との違いは圧力P4の値を変えたが、その他は比較例1と同じ製造方法である。即ち、グリーンシートを材料ごとに区別することなく、一つの金型に積層し、圧力P4=3.33×107Paで静水圧プレスを行って積層ブロック体を形成した。この積層ブロック体をチップに分割して焼成したところ、磁性体グリーンシートが誘電体グリーンシートに比して大きく収縮し、扇状のチップとなった。また、異なる材料間の界面には剥離が見られた。
【0038】
【実施例2】
実施例1と同じ材料を用い、上下に磁性体グリーンシートで形成されるインダクタ回路を配し、その中間に誘電体グリーンシートで形成されるコンデンサ回路を有する3層構造の帯域通過型フィルタを製作した。誘電体グリーンシートからなる積層ブロック体は圧力P1=300Kgf/cm2(=2.94×107Pa)で、磁性体グリーンシートからなる積層ブロック体は圧力P2=340Kgf/cm2(=3.33×107Pa)で静水圧プレスを行った後、3層の積層ブロック体を一つの金型にセットして圧力P3=300Kgf/cm2(=2.94×107Pa)で圧着して積層ブロック体を形成した。
【0039】
圧着して形成した積層ブロック体を金型から取り外し、2.5mm角のチップ状に切断し分割した後、焼成したところ、異種材料の界面での剥離やチップ内のクラックは無く、チップの反りも確認されなかった。
【0040】
【比較例3】
実施例2と同じ構造、即ち、3層構造の帯域通過型フィルタを製作した。実施例2とは製造方法が異なる。即ち、誘電体グリーンシートと磁性体グリーンシートを区別することなく、一つの金型に積層し、2.94×107Paの圧力で静水圧プレスを行って積層ブロック体を形成した。この積層ブロック体をチップ分割して焼成したところ、磁性体グリーンシートが誘電体グリーンシートに比して大きく収縮し、扇状のチップとなった。また、異なる材料間の界面に剥離が見られた。
【0041】
なお、上記実施形態は本発明の実施例の一態様を述べたもので、本発明の趣旨を逸脱することなく種々の変形実施例が可能なことは勿論である。上記の実施例では2層構造および3層構造の帯域通過型フィルタについて説明したが、4層以上の構造を有するセラミック積層部品にも適用できることは勿論である。また、例えば同種の材料でも銀(Ag)などの回路パターンが印刷されたグリーンシートと回路パターンの無いグリーンシ−トでは焼成時のチップ収縮率が異なるので、同種の材料でもその性質が異なる場合には本発明の趣旨を同様に適用できることは勿論である。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、異種材料の収縮率を揃え、界面を弱い圧力で接着させるので、チップ内部にクラックや剥離がなく、チップの反りの無い信頼性の高い異種材料を用いたセラミック積層部品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るセラミック積層チップ部品の製造工程の主要部を説明する図である。
【図2】誘電体グリーンシートと磁性体グリーンシートの積層ブロック体についてのチップ収縮率対圧着圧力の関係を示す図である。
【図3】比較例としての従来の製造工程の主要部を説明する図である。
【符号の説明】
201〜203 誘電体グリーンシート
204〜206 磁性体グリーンシート
207,208,209 積層ブロック体
210,220 金型
211,212 金型(210)の位置合わせピン
221,222 金型(220)の位置合わせピン
230 チップ
401〜403 誘電体グリーンシート
404〜406 磁性体グリーンシート
407 積層ブロック体
410 金型
411,412 金型(410)の位置合わせピン
430 反りあるチップ
431 剥離のあるチップ
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック積層部品の製造方法に係り、特に、異なる材料からなる複数のセラミックグリーンシートを積層し、これを焼成して一体化したセラミック積層部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化、高機能化が急速に進んでいる。電子機器の小型化で電子部品の実装可能なスペースが減っている中で、電子部品に対して高性能・高機能のものが要求され、電子部品の複合化が進みつつある。
【0003】
これら複合部品の一例として、特許文献1に示されている積層LCフィルタ部品がある。これは、セラミックグリーンシートを積層し、これをチップに分割後焼成し、一体化したインダクタとコンデンサによって得られるLC複合フィルタである。フェライトなどの磁性体のグリーンシートに銀(Ag)などの導電体を用いてインダクタ用回路を印刷し、チタン酸バリウムなどの誘電体グリーンシートに銀などの導電体を用いてコンデンサ用回路を印刷して、これらのセラミックグリーンシートを積層することによって所望の立体構造を得て、フィルタ特性を有する複合部品ができる。
【0004】
従来、これら複合部品は、次のような方法で製造される。まず材料ごとに区別することなく、一つの金型を用いて、導電体パターン等を形成したセラミックグリーンシートを積層し、所定の圧力で静水圧プレスを行い積層ブロック体を作成する。この積層ブロック体をダイシングソーなどで切断して、チップに分割して焼成していた。
【0005】
しかしながら、例えば、焼成時に磁性体グリーンシートが誘電体グリーンシートに比して大きく収縮する場合がある。このため、分割焼成後のチップ内にクラックのあるチップや異種材料界面に剥離のあるチップや反りのあるチップが製造されるという問題点があった。
【0006】
このような不具合を防止するために、収縮率や熱膨張率を段階的に変化させた複数種の中間材料毎のセラミックグリーンシートを複数枚作製して、所望の特性を発現させるセラミックグリーンシート群間に挟み込むことにより、焼成時に応力の集中が発生しないようにする積層セラミック複合部品の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−215985号公報
【特許文献2】
特開平10−303069号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような文献2に記載の積層セラミック複合部品の製造方法にあっては、所望の特性を発現させるセラミックグリーンシート群間に挟み込む複数枚の中間材料シートは、その特性に寄与しないことから、チップ化する場合にはチップ体積の削減の妨げになってしまう。また、その中間材料シートは、複数種の中間材料毎にシート成形する必要があり、手間が掛かってコスト高になってしまう。
【0009】
ここで、中間材料シートを用いずに、異種材料間の界面にガラス成分を拡散させて機械的強度を向上させることも考えられるが、材料が限定されてしまって汎用性に劣り、根本的な解決にはならない。
【0010】
本発明は上述した事情に鑑みて為されたもので、異種材料を積層し、チップに分割後に焼成するセラミック積層部品の製造方法において、焼成時に異種材料間にクラックや剥離を生じることがなく、信頼性の高いセラミック積層部品を製造する方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、本発明のセラミック積層部品の製造方法は、第1の材料からなるセラミックグリーンシートを第1の圧力で圧着することにより第1積層ブロック体を形成し、第2の材料からなるセラミックグリーンシートを第2の圧力で圧着することにより第2積層ブロック体を形成し、第1積層ブロック体と第2積層ブロック体とを重ねて、第1の圧力または第2の圧力の何れか小さい圧力以下の第3の圧力で圧着することにより第3積層ブロック体を形成し、第3積層ブロック体をチップに分割した後に焼成する、もしくは焼成後に分割することを特徴とする。
【0012】
上記本発明によれば、第1の圧力で第1材料からなる第1積層ブロック体を圧着形成し、第2の圧力で第2材料からなる第2積層ブロック体を圧着形成して、第1積層ブロック体と第2積層ブロック体とを重ねて、第1の圧力または第2の圧力の何れか小さい圧力以下の第3の圧力で圧着することにより第3積層ブロック体を形成している。このため、それぞれ同じ材料からなる第1積層ブロック体および第2積層ブロック体は焼成時の収縮が均一である上に第1の圧力と第2の圧力を適当な値に選定することにより、第1積層ブロック体および第2積層ブロック体の焼成時の収縮を揃えることが出来る。そして、異なった材料の第1積層ブロック体と第2積層ブロック体の界面を圧着するときには最も弱い圧力(第3の圧力)を用いているので、チップ内部のそれぞれの界面に余分な応力(歪み)を与えることはない。従って、チップ内部にクラックや剥離がなく、チップの反りの無い信頼性の高いセラミック積層部品を、中間に材料を介在させることなく製造することができる。
【0013】
上記第1の圧力および第2の圧力は、ともに1.96×107Pa(200Kgf/cm2)以上で、9.8×107Pa(1000Kgf/cm2)以下であることが好ましく、上記第3の圧力は、1.96×107Pa(200Kgf/cm2)以上であることが好ましい。これにより、安定した積層ブロック体の形成が可能となる。
【0014】
前記第1の材料が誘電体グリーンシートであり、第2の材料が磁性体グリーンシートであることが好ましい。これにより、インダクタとコンデンサを有する積層LCフィルタ部品を信頼性高く製造することができる。
【0015】
また、予め、各材料ごとに圧着時の圧力と焼成時のチップ収縮率の関係を求めておき、それぞれ共通のチップ収縮率となるようにプレス圧力を決めて同じ材料の複数のグリーンシートを積層し圧着を行うことが好ましい。これにより、第1の積層ブロック体と第2の積層ブロック体の焼結時の熱収縮を揃えて異種材料による熱収縮の違いを解消することが出来るので、チップ内部のそれぞれの界面に焼成に伴う応力(歪み)の発生がなく、従って、チップ内部にクラックや剥離の発生を防止することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るセラミック積層部品の製造方法の実施形態について、図1から図3を参照して説明する。
【0017】
図1を参照して本発明のセラミック積層部品の製造方法を実施する工程について説明する。製造は、グリーンシートの原料配合から始まる。まず、絶縁材料を用いたグリーンシートを作成する場合には、原材料として、アルミナ、シリカガラス、アルミナ−シリカ混合系を用いる。磁性材料を用いたグリーンシートを作成する場合には、原材料としてNiZnCuフェライト、MnZnCuフェライト、MgZnCuフェライト、六方晶フェライトを用いる。誘電体材料を用いたグリーンシートを作成する場合には、原材料として、チタン酸バリウム系、チタン酸ストロンチウム系などの誘電体材料を用いる。これらのグリーンシートの作成には、仮焼き処理や粉砕による粒径調整、表面処理を行う。溶剤として、DOPやBBPなどのフタル酸エステル系可塑剤およびエタノールとトルエンの混合溶剤(エタノール/トルエン=1/1)およびノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性系の何れか若しくは混合系の分散剤を用いる。
【0018】
次に、ポリビニルブチラールなどのブチラール樹脂およびポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂およびエチルセルロースなどのセルロース樹脂のバインダーおよびフタル酸などの可塑剤およびノニオン系、カチオン系、アニオン系、両性系などの各種分散剤および有機溶媒や水などの溶剤を加えてボールミルなどの混合機でスラリを作る。そして、攪拌脱泡にて、混合・分散の工程で得られたスラリを攪拌脱泡してスラリ中の気泡を除去する。
【0019】
次に、攪拌脱泡後のスラリをドクターブレードまたはリバースコータなどの装置を用いて.厚さ5〜100μmのグリーンシートを作成する。この時のシート成形速度は、0.1〜5m/分の範囲内でシートの乾燥状態により調整する。この際、樹脂成分はシート内に留まってシートの柔軟性などの性質を出しているが、有機溶剤分は揮発するのでシート内に空孔が生じている。
次に、作成されたグリーンシートを金型サイズに打ち抜く。次に、メカパンチやYAG装置(レーザ装置)などでスルーホールを開ける。次に、インダクタやコンデンサが形成できるように内部電極(導体パターン)を印刷する。内部電極(導体)パターンは、銀(Ag)を100重量%にセルロース樹脂3重量%とBCAを加えたペーストを用いてパターンをスクリーン印刷する。
【0020】
次に、磁性材料を用いたグリーンシートおよび誘電体材料を用いたグリーンシートを材料ごとに仮積層する。図1(a)に示すように、積層ズレを防ぐために、誘電体グリーンシート201,202,203は予め設けられている位置合わせ用の穴を金型210の位置合わせピン211,212にはめ込んで仮積層される。また、磁性体グリーンシート204,205,206は予め設けられている位置合わせ用の穴を金型220の位置合わせピン221,222にはめ込んで仮積層される。なお、図示の例ではそれぞれ3枚のグリーンシートを仮積層していることを示しているが、実際にはより多数のグリーンシートが仮積層される。
【0021】
一枚のグリーンシートを仮積層する毎に弱い圧力で仮圧着しておくことが好ましい。その時の圧力としては1.96×107Pa(200Kgf/cm2)以下が好ましく、出来れば9.8×107Pa(100Kgf/cm2)以下が好ましい。これより強い圧力であると、グリーンシートが伸びて接着ズレが生じる。また、これより弱い圧力であると、仮圧着としては十分ではない。
【0022】
次に、図1(b)に示すように、材料ごとに仮積層されたグリーンシートに対して静水圧プレスを行い所要の圧力で圧着して積層ブロック体を形成する。
【0023】
それに先立ち、図2に示すような使用するグリーンシートに関するチップ収縮率対圧着圧力の関係を示すデータを取得する。
圧着後の積層ブロック体を焼成すると、その体積は収縮する。即ち、積層ブロック体の焼結後の体積は焼成前(圧着後)の体積よりも小さくなる。
セラミック積層部品のチップ収縮率S(%)を式(1)のように定義する。積層ブロック体のある辺について未焼結時の長さL0、焼結時の長さLとすると、
S=(L0−L)/L0 × 100(%) ……… (1)
実際には、セラミック粉末の充填性の限界からLとL0との差はある程度までしか小さくならない。一般的にチップ収縮率Sは15%〜25%となるようにLおよびL0は設定されるのが好ましい。
【0024】
今回データ取得のため下記の試料を用意した。CaTiO3とガラスを主成分とする誘電体セラミック粉末を、エタノール、トルエン、ポリビニルブチラール、フタル酸ジオクチルからなる混合ビヒクルにボールミルを用いて分散させた後、ドクターブレードを用いて厚さ30μmのシート状に成形した。このシートを200mm角に切断して15枚積層した後、圧力を変化させて圧着した。3mm角に切断してチップを作製し、焼成し、シートに平行な方向の収縮率を求めると、図2の実線に示す関係が得られた。
【0025】
同様にして、NiZnCu系フェライト粉からなる磁性体セラミック粉末を厚さ30μmのシート状に成形し、積層し、圧着して、シートに平行な方向の収縮率を求めると、図2の破線に示す関係が得られた。
【0026】
各種材料のグリーンシートに対して同一のチップ収縮率が得られるように、それぞれの圧着時に加える圧力を決定する。即ち、図2に示す圧着圧力とチップ収縮率との関係から、同一のチップ収縮率を与える圧力P1、P2を求める。
【0027】
そして、図1(b)に示すように、誘電体グリーンシートは金型210の位置合わせピン211,212にはめ込んで仮積層された後、静水圧プレス機を用いて圧力P1で圧着され積層ブロック体207を形成する。また、磁性体グリーンシートは金型220の位置合わせピン221,222にはめ込んで仮積層された後、圧力P2で圧着され積層ブロック体208を形成する(圧着1)。
この時の圧力P1またはP2は、
1.96×107Pa(200Kgf/cm2)≦圧着圧力(P1またはP2)≦9.8×107Pa(1000Kgf/cm2)
の範囲内にあることが好ましい。
圧着圧力(P1またはP2)>9.8×107Pa(1000Kgf/cm2)
の場合には、グリーンシートの伸びが大きくなって積層ズレが生じ、ビア部分の接続が困難になることが多くなる。また、下限値を下回った圧力を採用した場合は接着が不十分で剥がれてしまうことが多くなる。
【0028】
第1積層ブロック体と第2積層ブロック体を形成するとき(圧着1)には、グリーンシートは位置ズレ防止ピンのついた金型にセットされた状態で圧着されるのが好ましい。これは、圧着時の積層ズレを防ぐとともに、第1積層ブロック体と第2積層ブロック体を重ねて第3積層ブロック体を作成する時の位置合わせを容易にするためでもある。積層ブロック体を形成することで、グリーンシートを積層して積層方向に圧力を加えることにより樹脂が流動化してシート間の接着が生じる。この際、シート中の空孔は潰されて減少し、その結果圧着後のセラミック積層ブロック体の体積は圧着前と比較して減少する。
【0029】
次に、図1(c)に示すように、異種材料が同一チップ収縮率となるように選定された圧力(P1およびP2)で形成された複数の積層ブロック体207,208を位置合わせ用のピン221,222の付いた金型220にセットする。積層ブロック体207と積層ブロック体208を重ねて静水圧プレス機を用いて圧力P3を与えて、異種材料間の界面を圧着させる(圧着2)。
【0030】
この時の圧力P3は、同種材料からなる第1積層ブロック体と第2積層ブロック体を作成した時(圧着1)に加えた圧力(P1またはP2)の内の小さいものと同等かそれよりも弱く、且つ1.96×107Pa(200Kgf/cm2)以上でなされることが好ましい。圧力P3として、大きな圧力(>P1または>P2)を用いると、チップ収縮率が変わってしまうし、P3<1.96×107Pa(200Kgf/cm2)では界面の接着が不十分になるからである。
【0031】
そして、異種材料間の界面の接着された積層ブロック体209を製品サイズ(例えば、1005(1.0mm×0.5mm)や1608(1.6mm×0.8mm))に合わせて切断してチップに分割する。切断は、ダイシング方式等で行う。チップに分割した後、所定の高温で焼成され、外部電極が形成されて、セラミック積層部品が製造される。もしくは積層ブロック体に、焼成後に製品サイズに分割(ブレーク)するための切り込み(ハーフカット)を施した後に、焼成してその後に分割するようにしてもよい。
【0032】
上述のように、第1積層ブロック体と第2積層ブロック体の作成(圧着1)に用いる圧力(P1,P2)をそれぞれのチップ収縮率が同一になるように決定すること、および第1積層ブロック体と第2積層ブロック体間の界面を圧着する圧着2では圧着1で用いた圧力の内の小さいものと同等かそれより弱い圧力(P3)を用いている。このため、異なる材料間の剥離やチップ内のクラックが無く、反りの無い信頼性の高いセラミック積層チップ230を得ることができる。
【0033】
【実施例1】
厚さ30μmで200mm角の誘電体グリーンシート(15枚)と同サイズの磁性体グリーンシート(15枚)を使用して異種材料の2層構造の帯域通過型フィルタを製作した。各グリーンシートに穴開け加工し、銀(Ag)を用いて誘電体グリーンシートにコンデンサ用回路を印刷し、磁性体グリーンシートにはインダクタ用回路を印刷した後に、それぞれ材料別にグリーンシートを位置合わせピンの付いた金型にセットし、50Kgf/cm2(=0.49×107Pa)の圧力を加えて仮圧着しながらグリーンシートを積層した。
【0034】
チップ収縮率は一般的に15%から25%の範囲にあることが好ましいが、今回はチップ収縮率を18%に設定した。それぞれの材料について圧着時の圧力(P1およびP2)を求めると、誘電体からなる積層ブロック体の作成に用いる圧力P1=300Kgf/cm2(=2.94×107Pa)とし、磁性体からなる積層ブロック体の作成に用いる圧力P2=340Kgf/cm2(=3.33×107Pa)とする。そして、それぞれ仮積層されたグリーンシートに対して静水圧プレスを行い積層ブロック体を形成した。誘電体からなる積層ブロック体を金型からはずして磁性体ブロック体の金型に移してセットし、圧力P3=300Kgf/cm2(=2.94×107Pa)で磁性体の積層ブロック体と誘電体ブロック体の積層ブロック体を重ねて再度静水圧プレスを施して第3積層ブロック体を形成した。
【0035】
第3積層ブロック体を金型から取り外し、3.2mm角のチップ状に切断し分割した後、焼成を行った。チップ230(図1参照)のように、異なる材料間の界面での剥離やチップ内でのクラックは無く、チップの反りも確認されなかった。
【0036】
【比較例1】
実施例1と同じグリーンシート材料を使用して、同じ2層構造を有する帯域通過型フィルタを従来の製造方法で製作した。即ち、図3に示すように、複数の誘電体シート401,402,403と複数の磁性体シート404,405,406は予め設けている位置合わせ用の穴を一つの金型410の位置合わせピン411,412にはめ込んで積層して、圧力P4(=2.94×107Pa)で静水圧プレスを行い積層ブロック体407を作成した。その積層ブロック体407をチップに分割して焼成して2層構造の帯域通過型フィルタを製造した。この帯域通過型フィルタにおいては、異なる材料のグリーンシートを積層して接合させるために、焼結時にチップ収縮率の差による応力が異なる材料間に発生し、扇状のチップ430となった。また、チップ431のように異種材料界面に剥離が見られた。
【0037】
【比較例2】
実施例1と同じ材料を使用して、同じ2層構造を有する帯域通過型フィルタを実施例1と異なる製造方法で製作した。比較例1との違いは圧力P4の値を変えたが、その他は比較例1と同じ製造方法である。即ち、グリーンシートを材料ごとに区別することなく、一つの金型に積層し、圧力P4=3.33×107Paで静水圧プレスを行って積層ブロック体を形成した。この積層ブロック体をチップに分割して焼成したところ、磁性体グリーンシートが誘電体グリーンシートに比して大きく収縮し、扇状のチップとなった。また、異なる材料間の界面には剥離が見られた。
【0038】
【実施例2】
実施例1と同じ材料を用い、上下に磁性体グリーンシートで形成されるインダクタ回路を配し、その中間に誘電体グリーンシートで形成されるコンデンサ回路を有する3層構造の帯域通過型フィルタを製作した。誘電体グリーンシートからなる積層ブロック体は圧力P1=300Kgf/cm2(=2.94×107Pa)で、磁性体グリーンシートからなる積層ブロック体は圧力P2=340Kgf/cm2(=3.33×107Pa)で静水圧プレスを行った後、3層の積層ブロック体を一つの金型にセットして圧力P3=300Kgf/cm2(=2.94×107Pa)で圧着して積層ブロック体を形成した。
【0039】
圧着して形成した積層ブロック体を金型から取り外し、2.5mm角のチップ状に切断し分割した後、焼成したところ、異種材料の界面での剥離やチップ内のクラックは無く、チップの反りも確認されなかった。
【0040】
【比較例3】
実施例2と同じ構造、即ち、3層構造の帯域通過型フィルタを製作した。実施例2とは製造方法が異なる。即ち、誘電体グリーンシートと磁性体グリーンシートを区別することなく、一つの金型に積層し、2.94×107Paの圧力で静水圧プレスを行って積層ブロック体を形成した。この積層ブロック体をチップ分割して焼成したところ、磁性体グリーンシートが誘電体グリーンシートに比して大きく収縮し、扇状のチップとなった。また、異なる材料間の界面に剥離が見られた。
【0041】
なお、上記実施形態は本発明の実施例の一態様を述べたもので、本発明の趣旨を逸脱することなく種々の変形実施例が可能なことは勿論である。上記の実施例では2層構造および3層構造の帯域通過型フィルタについて説明したが、4層以上の構造を有するセラミック積層部品にも適用できることは勿論である。また、例えば同種の材料でも銀(Ag)などの回路パターンが印刷されたグリーンシートと回路パターンの無いグリーンシ−トでは焼成時のチップ収縮率が異なるので、同種の材料でもその性質が異なる場合には本発明の趣旨を同様に適用できることは勿論である。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、異種材料の収縮率を揃え、界面を弱い圧力で接着させるので、チップ内部にクラックや剥離がなく、チップの反りの無い信頼性の高い異種材料を用いたセラミック積層部品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るセラミック積層チップ部品の製造工程の主要部を説明する図である。
【図2】誘電体グリーンシートと磁性体グリーンシートの積層ブロック体についてのチップ収縮率対圧着圧力の関係を示す図である。
【図3】比較例としての従来の製造工程の主要部を説明する図である。
【符号の説明】
201〜203 誘電体グリーンシート
204〜206 磁性体グリーンシート
207,208,209 積層ブロック体
210,220 金型
211,212 金型(210)の位置合わせピン
221,222 金型(220)の位置合わせピン
230 チップ
401〜403 誘電体グリーンシート
404〜406 磁性体グリーンシート
407 積層ブロック体
410 金型
411,412 金型(410)の位置合わせピン
430 反りあるチップ
431 剥離のあるチップ
Claims (5)
- 第1の材料からなるセラミックグリーンシートを第1の圧力で圧着することにより第1積層ブロック体を形成し、
第2の材料からなるセラミックグリーンシートを第2の圧力で圧着することにより第2積層ブロック体を形成し、
前記第1積層ブロック体と第2積層ブロック体とを重ねて、第1の圧力または第2の圧力の何れか小さい圧力以下の第3の圧力で圧着することにより、第3積層ブロック体を形成し、
前記第3積層ブロック体を焼成することを特徴とするセラミック積層部品の製造方法。 - 前記第1の圧力および第2の圧力は、ともに1.96×107Pa以上で、9.8×107Pa以下であることを特徴とする請求項1に記載のセラミック積層部品の製造方法。
- 前記第3の圧力は、1.96×107Pa以上であることを特徴とする請求項1に記載のセラミック積層部品の製造方法。
- 前記第1の材料が誘電体グリーンシートであり、第2の材料が磁性体グリーンシートであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のセラミック積層部品の製造方法。
- 予め、各材料ごとに圧着時の圧力と焼成時のチップ収縮率の関係を求め、共通のチップ収縮率となるように材料ごとにプレス圧力を決め、同じ材料の複数のグリーンシートを積層し、前記プレス圧力で圧着を行い積層ブロック体を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のセラミック積層部品の製造方法。
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JP2003183003A JP2005019718A (ja) | 2003-06-26 | 2003-06-26 | セラミック積層部品の製造方法 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009111197A (ja) * | 2007-10-31 | 2009-05-21 | Toda Kogyo Corp | フェライト成形シート、焼結フェライト基板およびアンテナモジュール |
JP2009111184A (ja) * | 2007-10-30 | 2009-05-21 | Sanyo Electric Co Ltd | 積層セラミック基板および積層セラミック基板の製造方法 |
KR101244258B1 (ko) * | 2010-11-12 | 2013-03-18 | 주식회사 이엠따블유 | 다층 기판의 제조 방법 |
US9394204B2 (en) | 2007-03-07 | 2016-07-19 | Toda Kogyo Corporation | Molded ferrite sheet, sintered ferrite substrate and antenna module |
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2003
- 2003-06-26 JP JP2003183003A patent/JP2005019718A/ja active Pending
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