JP2005019634A - 電磁波吸収体用粉末 - Google Patents
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Abstract
【課題】粒径が小さく、高周波域で高い電磁波吸収能を有する電磁波吸収体に用いて好適な電磁波吸収体用粉末を提供する。
【解決手段】Cr:9〜13質量%、Si:0.1〜6質量%、S:0.1〜0.5質量%、残部がFeと不可避的不純物から成る軟磁性合金粉末である電磁波吸収体用粉末。
【選択図】 なし
【解決手段】Cr:9〜13質量%、Si:0.1〜6質量%、S:0.1〜0.5質量%、残部がFeと不可避的不純物から成る軟磁性合金粉末である電磁波吸収体用粉末。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電磁波吸収体用粉末に関し、更に詳しくは、新規な組成の軟磁性合金粉末であって、それを用いた電磁波吸収体に高周波域において高い電磁波吸収能を発揮させることができる電磁波吸収体用粉末に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種の軟磁性合金粉末の所定量を、例えば、樹脂やゴムから成るマトリックスの中に分散させ、例えばシート成形した材料は、電磁波吸収体として使用されている。
その場合、用いる軟磁性合金粉末の成分組成やその粒径、またマトリックスへの配合割合などにより、製造された電磁波吸収体の電磁波吸収能は変動する。
【0003】
そして、このような軟磁性合金粉末としては、例えば、Fe−Cr−Al系、Fe−Si−Cr系、Fe−Si−Al系から成り、粒径4μm以下のものが提案されている(特許文献1を参照)。
従来から、軟磁性合金粉末は、大別して、機械的粉砕法とアトマイズ法で製造されている。このうち、粒形状と粒径が揃った粉末を製造しやすいアトマイズ法につき、その概略を以下に説明する。
【0004】
まず、耐火るつぼに収容された所定組成の軟磁性合金を、ArやN2のような非酸化性のガス雰囲気下において、例えば誘導加熱炉を用いて溶製する。
ついで、溶湯を、耐火るつぼの底部に設けられている噴霧ノズルから噴流させ、そのときに、噴霧ノズル内に形成された圧縮ガスの渦流ジェット(ガスアトマイズ法の場合)や加圧水の渦流ジェット(水アトマイズ法の場合)により、噴流した溶湯を分裂させ融滴にする。融滴は、表面張力により球状化し、ここにアトマイズ粉末が製造される。
【0005】
この一連の過程において、例えば、溶製温度の影響を受ける溶湯の粘度、ガスや水の流速と圧力などの製造条件が変化すると、得られる粉末の粒径とその粒度分布も変化する。
ところで、最近の動向として、各種の電子機器においては、使用周波数の高周波化が進んでいる。そのため、これら電子機器に組み込まれる電磁波吸収体に関しても、高周波域における電磁波吸収能を発揮することが強く要求されるようになっている。
【0006】
その要求を満たすために、マトリックスに配合される軟磁性合金粉末は、その粒径ができるだけ小さいことが必要とされる。粒径が大きくなると、高周波域で粉末における渦電流損が大きくなり、電磁波吸収体の透磁率が低下するようになるからである。例えば、電磁波吸収体を5.8GHz域で使用する場合、配合される軟磁性合金粉末の粒径は15μm以下であることが必要であるとされている。
【0007】
なお、ここでいう粒径とは、D50値(μm)のことをいい、粉末の粒度累積曲線における相対累積頻度が50%のときの粒子径(μm)である。
しかしながら、このように微細な粉末を例えば前記したアトマイズ法で製造することは可成り困難である。
アトマイズ法で微細な粉末を製造する場合には、装置のスペックや製造条件を目的粉末よりも大径の粉末を製造していたときの条件に対して変えることが必要になる。具体的には、溶湯の噴霧ノズルの口径を細径化するなどの処置が採られる。
【0008】
しかしながら、このような処置は、実際問題としてノズルの閉塞現象などを引き起こし、また粒径が大きい粉末製造時に比べれば歩留まりの低下を招くという問題がある。
また、微細な粉末の製造に関しては、溶湯の融点を低下させ、アトマイズ温度域における溶湯の粘度を低下させる方法も提案されている(特許文献2を参照)。具体的には、SとTiをTi/S≧3,Ti+S≦2重量%となるように添加した組成の合金溶湯をガスアトマイズする方法である。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−138492号公報
【特許文献2】
特開2002−270413号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高周波域で高い電磁波吸収能を有する電磁波吸収体を製造する際に必要とされ、かつアトマイズ法で製造される微細な軟磁性合金粉末において、アトマイズ時に比較的大きい口径の噴霧ノズルを使用しているにもかかわらず、粒径が20μm以下である微細な粉末として製造することができる電磁波吸収体用粉末の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アトマイズ法により微細な粉末を高い歩留まりで製造するための研究の過程で、Fe−Cr−Si系の軟磁性合金につき、その組成と粉末粒径とアトマイズ時の製造条件との相関関係を調査した。
その結果、そのFe−Cr−Si系に更にSが配合された後述する組成の合金を用いると、例えば噴霧ノズルの口径を大きくしても、微細な粉末を高い歩留まりで製造することができるとの知見を得た。そして、得られた粉末を用いて製造した電磁波吸収体は、高い透磁率特性を示す事実を確認し、本発明の電磁波吸収体用粉末を開発するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の電磁波吸収体用粉末は、Cr:9〜13質量%、Si:0.1〜6質量%、S:0.1〜0.5質量%、残部がFeと不可避的不純物から成る軟磁性合金粉末であることを特徴とする。
そして、この粉末の粒径は、D50値が1〜20μmの範囲内に収まっていることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の合金粉末は、既に公知であるFe−Cr−Si系合金に、積極的にS成分を添加して成るFe−Cr−Si−S系合金の粉末であり、かつアトマイズ法で製造される。
ここで、S成分は次のような作用効果を発揮する。
【0014】
S成分は、上記合金の結晶粒を微細化し、しかもその粒界に脆弱な硫化物系介在物を生成する。そして、るつぼから噴霧させた溶湯は例えば水の渦流ジェットで分裂されて融滴となり、更にその融滴は粉末化するのであるが、この過程で、粉末に作用する渦流ジェットの圧力により、生成した粉末は脆弱な硫化物系介在物が存在する結晶粒界で破壊されて更に微細化する。
【0015】
すなわち、S成分は、合金内の結晶粒を微細化し、それら結晶粒界に脆弱な箇所を生成している。そのため、アトマイズの進行過程で生成した粉末は、渦流ジェットの圧力それ自体でその脆弱箇所が破壊され、噴霧ノズルの口径を小さくしなくても、微細な結晶粒に分裂して更に細かい粉末になるという作用効果が実現する。
【0016】
このような作用は、S成分の含有量が0.1質量%以上になると発揮される。しかし、あまり多くS成分を含有させると、合金内に生成する例えばCr系硫化物が多くなって合金粉末の耐食性が劣化する。
このようなことから、S成分の含有量は0.1〜0.5質量%に設定される。
Cr成分は、合金粉末の耐食性に資する成分である。この含有量が少なすぎると合金粉末の耐食性が劣化して例えば電磁波吸収体の製造時にマトリックス内の腐食成分で粉末が腐食されるようになり、また多すぎると、粉末コストの上昇を招く。
【0017】
このようなことから、Cr成分の含有量は9〜13質量%に設定される。
Si成分は、溶湯の粘度を下げて当該溶湯をアトマイズしやすい状態にするために配合される成分である。含有量が少なすぎると上記した効果が得られず、逆に多すぎると、Siは非磁性元素であるため、磁気特性の劣化のような不都合な問題が生ずるので、含有量は0.1〜6質量%に設定される。
【0018】
なお、この合金粉末には、更に、Al、C、P、Mn、Oなどの不可避的不純物が含まれてくるが、その場合、これら不純物の含有量は全体で1質量%以下に規制することが好ましい。
この合金粉末の粒径と粒度分布は、溶湯におけるS成分の含有量、溶湯の粘度、噴霧ノズルの口径、渦流ジェットの圧力などの因子が変化すると、それらの相互作用を受けて変化する。
【0019】
この合金粉末を高周波域で高い電磁波吸収能を示す電磁波吸収体に使用することを考慮すると、その粒径は、D50値で1〜20μmにすることが好ましい。
例えば、上記した因子のうち、噴霧ノズルの口径を不変とすれば、例えばS成分の含有量を多くしたり、渦流ジェットの圧力を高くしたりすることによって、より微細な粉末を得ることができる。
【0020】
【実施例】
(1)粉末の製造
Ar雰囲気中で、Cr:9質量%、Si:4質量%、S:0.1質量%、残部Feから成る軟磁性合金30kgを溶製した。
この溶湯を水アトマイズ装置に掛け、実施例のアトマイズ粉末にした。
【0021】
得られたアトマイズ粉末につき、粒度分布計(機種:MK3300、マクロトラック社製)を用いてD50値を測定したところ、8μmであった。
比較のために、Cr:13質量%、残部がFeから成る軟磁性合金を溶製した。
この溶湯につき、実施例粉末の製造条件と同じ条件で水アトマイズ法を適用して比較例の粉末にした。
【0022】
この粉末のD50値は16μmであった。
このことからも明らかなように、アトマイズ時の条件は同じであっても、本発明組成の合金を用いると、粒径が10μm以下である微細な軟磁性粉末を容易に製造することができる。
(2)電磁波吸収体の製造とその特性
上記した実施例のアトマイズ粉末の製造時に、加圧水の圧力と流速を変化させたことを除いては同様の条件でアトマイズ法を行って、D50値が、それぞれ、16μm、8μm、2μmである3種類の粉末を製造した。
【0023】
上記した比較例の粉末についても、加圧水の圧力と流速のみを変化させて、D50値が39μm、44μmである2種類の粉末を製造した。
これらの粉末のそれぞれと塩素化ポリエチレンとを容量比にして30:70の割合で配合したのち混練し、ついでカレンダ成形して厚み1mmのシートにした。
ついで、これら5種類のシートにつき、周波数5GHzで透磁率を測定した。その結果を粉末の粒径との関係図として図1に示す。
【0024】
Fe−Cr−Si−S系合金であり、D50値がいずれも25μm以下である実施例のアトマイズ粉末を用いたシートは、透磁率が高く、電磁波吸収能が向上している。
そして、粉末の粒径が25μm程度までは、シートの透磁率は粒径に関係なく略同じ値であるが、粒径が25μm以下になると、シートの透磁率は粒径が小さくなるにつれて大きくなっていき、そのシートの電磁波吸収能の向上が認められる。したがって、これら粉末を用いたシートは、5GHzという高周波域において高い電磁波吸収能を示す電磁波吸収体として使用することができる。
【0025】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の軟磁性合金粉末は、その組成にS成分を積極的に添加させているので、アトマイズ時の渦流ジェットの圧力で容易に20μm以下の粉末に微細化する。したがって、この粉末を用いることにより、5GHz以上の高周波域においても高い電磁波吸収能を有する電磁波吸収体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】粉末の粒径と、その粉末を用いて製造したゴムシートの透磁率との関係を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は電磁波吸収体用粉末に関し、更に詳しくは、新規な組成の軟磁性合金粉末であって、それを用いた電磁波吸収体に高周波域において高い電磁波吸収能を発揮させることができる電磁波吸収体用粉末に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種の軟磁性合金粉末の所定量を、例えば、樹脂やゴムから成るマトリックスの中に分散させ、例えばシート成形した材料は、電磁波吸収体として使用されている。
その場合、用いる軟磁性合金粉末の成分組成やその粒径、またマトリックスへの配合割合などにより、製造された電磁波吸収体の電磁波吸収能は変動する。
【0003】
そして、このような軟磁性合金粉末としては、例えば、Fe−Cr−Al系、Fe−Si−Cr系、Fe−Si−Al系から成り、粒径4μm以下のものが提案されている(特許文献1を参照)。
従来から、軟磁性合金粉末は、大別して、機械的粉砕法とアトマイズ法で製造されている。このうち、粒形状と粒径が揃った粉末を製造しやすいアトマイズ法につき、その概略を以下に説明する。
【0004】
まず、耐火るつぼに収容された所定組成の軟磁性合金を、ArやN2のような非酸化性のガス雰囲気下において、例えば誘導加熱炉を用いて溶製する。
ついで、溶湯を、耐火るつぼの底部に設けられている噴霧ノズルから噴流させ、そのときに、噴霧ノズル内に形成された圧縮ガスの渦流ジェット(ガスアトマイズ法の場合)や加圧水の渦流ジェット(水アトマイズ法の場合)により、噴流した溶湯を分裂させ融滴にする。融滴は、表面張力により球状化し、ここにアトマイズ粉末が製造される。
【0005】
この一連の過程において、例えば、溶製温度の影響を受ける溶湯の粘度、ガスや水の流速と圧力などの製造条件が変化すると、得られる粉末の粒径とその粒度分布も変化する。
ところで、最近の動向として、各種の電子機器においては、使用周波数の高周波化が進んでいる。そのため、これら電子機器に組み込まれる電磁波吸収体に関しても、高周波域における電磁波吸収能を発揮することが強く要求されるようになっている。
【0006】
その要求を満たすために、マトリックスに配合される軟磁性合金粉末は、その粒径ができるだけ小さいことが必要とされる。粒径が大きくなると、高周波域で粉末における渦電流損が大きくなり、電磁波吸収体の透磁率が低下するようになるからである。例えば、電磁波吸収体を5.8GHz域で使用する場合、配合される軟磁性合金粉末の粒径は15μm以下であることが必要であるとされている。
【0007】
なお、ここでいう粒径とは、D50値(μm)のことをいい、粉末の粒度累積曲線における相対累積頻度が50%のときの粒子径(μm)である。
しかしながら、このように微細な粉末を例えば前記したアトマイズ法で製造することは可成り困難である。
アトマイズ法で微細な粉末を製造する場合には、装置のスペックや製造条件を目的粉末よりも大径の粉末を製造していたときの条件に対して変えることが必要になる。具体的には、溶湯の噴霧ノズルの口径を細径化するなどの処置が採られる。
【0008】
しかしながら、このような処置は、実際問題としてノズルの閉塞現象などを引き起こし、また粒径が大きい粉末製造時に比べれば歩留まりの低下を招くという問題がある。
また、微細な粉末の製造に関しては、溶湯の融点を低下させ、アトマイズ温度域における溶湯の粘度を低下させる方法も提案されている(特許文献2を参照)。具体的には、SとTiをTi/S≧3,Ti+S≦2重量%となるように添加した組成の合金溶湯をガスアトマイズする方法である。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−138492号公報
【特許文献2】
特開2002−270413号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高周波域で高い電磁波吸収能を有する電磁波吸収体を製造する際に必要とされ、かつアトマイズ法で製造される微細な軟磁性合金粉末において、アトマイズ時に比較的大きい口径の噴霧ノズルを使用しているにもかかわらず、粒径が20μm以下である微細な粉末として製造することができる電磁波吸収体用粉末の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アトマイズ法により微細な粉末を高い歩留まりで製造するための研究の過程で、Fe−Cr−Si系の軟磁性合金につき、その組成と粉末粒径とアトマイズ時の製造条件との相関関係を調査した。
その結果、そのFe−Cr−Si系に更にSが配合された後述する組成の合金を用いると、例えば噴霧ノズルの口径を大きくしても、微細な粉末を高い歩留まりで製造することができるとの知見を得た。そして、得られた粉末を用いて製造した電磁波吸収体は、高い透磁率特性を示す事実を確認し、本発明の電磁波吸収体用粉末を開発するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の電磁波吸収体用粉末は、Cr:9〜13質量%、Si:0.1〜6質量%、S:0.1〜0.5質量%、残部がFeと不可避的不純物から成る軟磁性合金粉末であることを特徴とする。
そして、この粉末の粒径は、D50値が1〜20μmの範囲内に収まっていることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の合金粉末は、既に公知であるFe−Cr−Si系合金に、積極的にS成分を添加して成るFe−Cr−Si−S系合金の粉末であり、かつアトマイズ法で製造される。
ここで、S成分は次のような作用効果を発揮する。
【0014】
S成分は、上記合金の結晶粒を微細化し、しかもその粒界に脆弱な硫化物系介在物を生成する。そして、るつぼから噴霧させた溶湯は例えば水の渦流ジェットで分裂されて融滴となり、更にその融滴は粉末化するのであるが、この過程で、粉末に作用する渦流ジェットの圧力により、生成した粉末は脆弱な硫化物系介在物が存在する結晶粒界で破壊されて更に微細化する。
【0015】
すなわち、S成分は、合金内の結晶粒を微細化し、それら結晶粒界に脆弱な箇所を生成している。そのため、アトマイズの進行過程で生成した粉末は、渦流ジェットの圧力それ自体でその脆弱箇所が破壊され、噴霧ノズルの口径を小さくしなくても、微細な結晶粒に分裂して更に細かい粉末になるという作用効果が実現する。
【0016】
このような作用は、S成分の含有量が0.1質量%以上になると発揮される。しかし、あまり多くS成分を含有させると、合金内に生成する例えばCr系硫化物が多くなって合金粉末の耐食性が劣化する。
このようなことから、S成分の含有量は0.1〜0.5質量%に設定される。
Cr成分は、合金粉末の耐食性に資する成分である。この含有量が少なすぎると合金粉末の耐食性が劣化して例えば電磁波吸収体の製造時にマトリックス内の腐食成分で粉末が腐食されるようになり、また多すぎると、粉末コストの上昇を招く。
【0017】
このようなことから、Cr成分の含有量は9〜13質量%に設定される。
Si成分は、溶湯の粘度を下げて当該溶湯をアトマイズしやすい状態にするために配合される成分である。含有量が少なすぎると上記した効果が得られず、逆に多すぎると、Siは非磁性元素であるため、磁気特性の劣化のような不都合な問題が生ずるので、含有量は0.1〜6質量%に設定される。
【0018】
なお、この合金粉末には、更に、Al、C、P、Mn、Oなどの不可避的不純物が含まれてくるが、その場合、これら不純物の含有量は全体で1質量%以下に規制することが好ましい。
この合金粉末の粒径と粒度分布は、溶湯におけるS成分の含有量、溶湯の粘度、噴霧ノズルの口径、渦流ジェットの圧力などの因子が変化すると、それらの相互作用を受けて変化する。
【0019】
この合金粉末を高周波域で高い電磁波吸収能を示す電磁波吸収体に使用することを考慮すると、その粒径は、D50値で1〜20μmにすることが好ましい。
例えば、上記した因子のうち、噴霧ノズルの口径を不変とすれば、例えばS成分の含有量を多くしたり、渦流ジェットの圧力を高くしたりすることによって、より微細な粉末を得ることができる。
【0020】
【実施例】
(1)粉末の製造
Ar雰囲気中で、Cr:9質量%、Si:4質量%、S:0.1質量%、残部Feから成る軟磁性合金30kgを溶製した。
この溶湯を水アトマイズ装置に掛け、実施例のアトマイズ粉末にした。
【0021】
得られたアトマイズ粉末につき、粒度分布計(機種:MK3300、マクロトラック社製)を用いてD50値を測定したところ、8μmであった。
比較のために、Cr:13質量%、残部がFeから成る軟磁性合金を溶製した。
この溶湯につき、実施例粉末の製造条件と同じ条件で水アトマイズ法を適用して比較例の粉末にした。
【0022】
この粉末のD50値は16μmであった。
このことからも明らかなように、アトマイズ時の条件は同じであっても、本発明組成の合金を用いると、粒径が10μm以下である微細な軟磁性粉末を容易に製造することができる。
(2)電磁波吸収体の製造とその特性
上記した実施例のアトマイズ粉末の製造時に、加圧水の圧力と流速を変化させたことを除いては同様の条件でアトマイズ法を行って、D50値が、それぞれ、16μm、8μm、2μmである3種類の粉末を製造した。
【0023】
上記した比較例の粉末についても、加圧水の圧力と流速のみを変化させて、D50値が39μm、44μmである2種類の粉末を製造した。
これらの粉末のそれぞれと塩素化ポリエチレンとを容量比にして30:70の割合で配合したのち混練し、ついでカレンダ成形して厚み1mmのシートにした。
ついで、これら5種類のシートにつき、周波数5GHzで透磁率を測定した。その結果を粉末の粒径との関係図として図1に示す。
【0024】
Fe−Cr−Si−S系合金であり、D50値がいずれも25μm以下である実施例のアトマイズ粉末を用いたシートは、透磁率が高く、電磁波吸収能が向上している。
そして、粉末の粒径が25μm程度までは、シートの透磁率は粒径に関係なく略同じ値であるが、粒径が25μm以下になると、シートの透磁率は粒径が小さくなるにつれて大きくなっていき、そのシートの電磁波吸収能の向上が認められる。したがって、これら粉末を用いたシートは、5GHzという高周波域において高い電磁波吸収能を示す電磁波吸収体として使用することができる。
【0025】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の軟磁性合金粉末は、その組成にS成分を積極的に添加させているので、アトマイズ時の渦流ジェットの圧力で容易に20μm以下の粉末に微細化する。したがって、この粉末を用いることにより、5GHz以上の高周波域においても高い電磁波吸収能を有する電磁波吸収体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】粉末の粒径と、その粉末を用いて製造したゴムシートの透磁率との関係を示すグラフである。
Claims (2)
- Cr:9〜13質量%、Si:0.1〜6質量%、S:0.1〜0.5質量%、残部がFeと不可避的不純物から成る軟磁性合金粉末であることを特徴とする電磁波吸収体用粉末。
- D50値が1〜20μmである請求項1の電磁波吸収体用粉末。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003181525A JP2005019634A (ja) | 2003-06-25 | 2003-06-25 | 電磁波吸収体用粉末 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003181525A JP2005019634A (ja) | 2003-06-25 | 2003-06-25 | 電磁波吸収体用粉末 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2005019634A true JP2005019634A (ja) | 2005-01-20 |
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JP2003181525A Withdrawn JP2005019634A (ja) | 2003-06-25 | 2003-06-25 | 電磁波吸収体用粉末 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060426 |
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A761 | Written withdrawal of application |
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