JP2005019297A - 高圧放電ランプおよび照明装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】封止部に生じるクラックによる気密容器のリーク不良を防止するとともに、製造条件の設定が容易で、かつ、コストアップが少ない高圧放電ランプおよびこれを用いた照明装置を提供する。
【解決手段】高圧放電ランプは、内容積0.1cc以下の包囲部1aおよびその両端から延在する一対の封止部1a1、1a1を備えた気密容器1と、封止部1a1の内部に気密に埋設されるとともに、少なくとも一方において包囲部1a側に位置する一端の端面に凸円弧状部分2aが形成されている一対の封着金属箔2、2と、基端が封着金属箔2の一端部に溶接され、先端が気密容器1の放電空間1cに電極間距離5mm以下で臨む一対の電極1b、1bと、先端が封着金属箔2の他端部に溶接された一対の電流導入導体と、25℃において1気圧以上のXeを含み、気密容器1の放電空間1c内に封入された放電媒体と、を具備している。
【選択図】図3
【解決手段】高圧放電ランプは、内容積0.1cc以下の包囲部1aおよびその両端から延在する一対の封止部1a1、1a1を備えた気密容器1と、封止部1a1の内部に気密に埋設されるとともに、少なくとも一方において包囲部1a側に位置する一端の端面に凸円弧状部分2aが形成されている一対の封着金属箔2、2と、基端が封着金属箔2の一端部に溶接され、先端が気密容器1の放電空間1cに電極間距離5mm以下で臨む一対の電極1b、1bと、先端が封着金属箔2の他端部に溶接された一対の電流導入導体と、25℃において1気圧以上のXeを含み、気密容器1の放電空間1c内に封入された放電媒体と、を具備している。
【選択図】図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高圧放電ランプおよびこれを用いた照明装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
相対向する一対の電極を備えた発光管内に希ガス、発光金属のハロゲン化物および水銀を封入したメタルハライドランプと呼称される高圧放電ランプは、比較的高効率で、高演色性であるため広く使用されている。自動車の前照灯用においても、高圧放電ランプの使用が普及してきている。自動車の前照灯用を含めて、現在実用されている高圧放電ランプは、水銀を必須としている。なお、自動車の前照灯用の高圧放電ランプの仕様においては、約2〜15mgの水銀の封入が不可欠とされている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、環境問題が深刻化してきている現在、照明分野においても、環境負荷が大きい水銀をランプから減少させ、さらに廃絶することは非常に重要なことと考えられている。
【0004】
この課題に対して、高圧放電ランプにおいても、水銀を用いないための提案が既にいくつかなされている(例えば特許文献2参照。)。特許文献2においては、水銀に代えてZnI2などの蒸気圧の高い物質を発光物質のハロゲン化物、例えばScI3−NaIに加えて封入することにより、水銀入りランプと同等の電気特性と発光特性が得られている。
【0005】
ところで、自動車前照灯用の高圧放電ランプの場合、電源投入と同時に所定値以上の発光を行う必要があるため、特許文献1のように水銀を封入している高圧放電ランプ(以下、便宜上「水銀入りランプ」という。)および例えば特許文献2記載のように水銀を含まない高圧放電ランプ(以下、便宜上「水銀フリーランプ」という。)のいずれにおいても、光束立ち上がりを早めるべく、点灯直後に安定時の2倍以上のランプ電流を短時間通流させ、その後徐々に低減して安定時のランプ電流に落ち着くように制御する。加えて、水銀フリーランプにおいては、蒸気圧の非常に高い水銀を封入していないために、水銀入りランプにおけるよりさらに光束立ち上がりが遅くなるので、これを水銀入りランプと同等程度まで早めるためには、点灯直後に安定時の3倍以上のランプ電流を、しかも数秒間にわたって継続して通流させ、その後徐々に低減して安定時のランプ電流に落ち着くように制御する必要がある。
【0006】
また、金属ハロゲン化物の蒸気圧を所要に維持するために、気密容器の安定点灯中の外面温度を500℃以上に維持するべく気密容器を外管で包囲している。
【0007】
一方、高圧放電ランプにおいて、一般に電極は、その基端を封止部内に気密に埋設された封着金属箔の一端に溶接している。さらに、封着金属箔の他端には、電流導入導体の先端部を溶接していて、電流導入導体および封着金属箔を経由して点灯回路から電極へランプ電流を供給するように構成されている。
【0008】
ところが、自動車前照灯用の高圧放電ランプにおいては、上述したように点灯直後に安定点灯時に比べて非常に大きなランプ電流を通流させるために、気密容器の封止部にクラックが発生しやすいという問題がある。この問題は、点灯直後のランプ電流が水銀入りランプより大きくて、しかも長い時間にわたり流れるために、水銀フリーランプにおいて特に顕著である。
【0009】
上記の問題の対策として、封止管部に埋設されている電極軸の適宜な範囲にコイルを巻き付け、このコイルで緩衝して封止部へのクラック発生を防止しようとすることが知られている(特許文献3参照。)。
【0010】
また、封止管部に埋設されている電極軸を取り囲み軸方向に延びる境界クラックからなる残留圧縮歪層を形成することも知られている(特許文献4参照。)。
【0011】
【特許文献1】
特開平2−7347号公報
【特許文献2】
特開平11−238488号公報
【特許文献3】
特開平10−223175号公報
【特許文献4】
特開2001−15067号公報
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特許文献3および4による対策ではコストアップや製造条件の管理が非上に難しい問題がある。
【0012】
本発明は、一般的には封止部に生じるクラックによる気密容器のリーク不良を防止するとともに、製造条件の設定が容易で、かつ、コストアップが少ない高圧放電ランプおよびこれを用いた照明装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を達成するための手段】
請求項1の発明の高圧放電ランプは、内容積が0.1cc以下の放電空間が形成された包囲部および包囲部の両端から延在する一対の封止部を備えた耐火性で透光性の気密容器と;気密容器における一対の封止部の内部に気密に埋設されるとともに、少なくとも一方において包囲部側に位置する一端の端面に凸円弧状部分が形成されている一対の封着金属箔と;基端が封着金属箔の一端部に溶接されるとともに、先端が気密容器の放電空間に電極間距離5mm以下で臨むように放電空間の両端に離間対向して配設された一対の電極と;先端が封着金属箔の他端部に溶接されるとともに基端が気密容器の外部へ導出された一対の電流導入導体と;25℃において1気圧以上のXeを含み、気密容器の放電空間内に封入された放電媒体と;を具備していることを特徴としている。
【0014】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0015】
<気密容器について> 気密容器は、包囲部および一対の封止部を備えて構成されていて、耐火性で透光性である。「耐火性」とは、放電ランプの通常の作動温度に十分耐える意味である。したがって、気密容器は、耐火性を備える材料であり、放電によって発生した所望波長域の可視光を外部に導出することができ、かつ、電極および電流導入導体を溶接した封着金属箔を封止部内内に気密に埋設して封止できでれば、どのようなもので作られていてもよい。しかし、好適には石英ガラスからなる。なお、必要に応じて、気密容器の内面に耐ハロゲン性または耐ハロゲン化物性の透明性被膜を形成するか、気密容器の内面を改質することが許容される。
【0016】
また、気密容器の包囲部は、その内部に適当な形状をなした放電空間、例えば自動車前照灯用の高圧放電ランプにおいては細長い放電空間が形成されている。なお、細長い放電空間としては、例えば自動車前照灯用の高圧放電ランプにおいては放電空間を円柱状にすることができる。これにより、アークが水平点灯においては上方へ湾曲しようとするために、放電容器の上側の内面に接近するので、放電容器の上部の温度上昇が早くなる。なお、自動車前照灯用の高圧放電ランプの場合、包囲部の最大内径は、好適には1.5mm以上である。
【0017】
さらに、包囲部は、その肉厚を比較的大きくすることができる。すなわち、電極間距離のほぼ中央部の肉厚をその両側の肉厚より大きくすることができる。これにより、気密容器の伝熱が良好になって気密容器内部の放電空間の下部および側部内面に付着している液状をなした膜状の放電媒体の温度上昇が早まるために、光束立ち上がりが早くなる。
【0018】
一対の封止部は、気密容器の包囲部の両端から一体的に延在し、一般的には細長く形成されている。そして、その内部に後述する封着金属箔を気密に埋設するとともに、電極を支持し、かつ、電流導入導体を内部に導入させる。
【0019】
<封着金属箔について> 封着金属箔は、気密容器の内部を封止部で気密に封止する際にこれに協働するとともに、外部からのランプ電流の導入を仲介する。このために封着金属箔は、気密容器の封止部と熱膨張率が接近した熱膨張率を有するとともに、比較的大きな導電率を有する耐火性の導電材料からなり、封止部が石英ガラスからなる場合、モリブデンMoが好適である。また、封着金属箔は、その肉厚が一般的には10〜30μm程度、自動車前照灯用のメタルハライドランプのようにランプ電力60W以下の小形の高圧放電ランプにおいて好適には20〜25μm程度である。
【0020】
また、封着金属箔は、少なくともその一方において、放電容器の包囲部側すなわち後述する電極の基端が溶接される側に位置する一端の端面に凸円弧状部分が形成されている。なお、「凸円弧状部分」とは、封着金属箔の一端において肩の部分が丸くなっているように見える部分をいい、当該部分は一つの円弧により形成されているだけでなく、複数の円弧により形成されていてもよく、さらには楕円をなしていたり、一端の端面の中央部が直線状をなし、両肩部が円弧状をなしていたりしていてもよい。
【0021】
さらに、封着金属箔と電極および電流導入導体との溶接手段は、レーザ溶接およびブレージング材なしの抵抗溶接のいずれであってもよい。封着金属箔の結晶構造を上記のように構成するための手段は特段限定されない。レーザ溶接の場合には、例えばレーザの出力、照射位置パターンまたは照射繰り返しパターンなどを適宜調整することで本発明の構成を実現することができる。また、ブレージング材なしの抵抗溶接の場合、溶接電極の形状、押圧分布、平面性または電流制御などにより本発明の構成を実現することができる。
【0022】
<一対の電極について> 一対の電極は、気密容器の両端内部に離間対向して封装される。なお、自動車前照灯用の高圧放電ランプの場合、電極間距離が5mm以下に設定するのが望ましい。また、電極の軸径は0.4mm以下で、かつ、電極間距離は5mm以下が望ましい。
【0023】
なお、電極は、交流および直流のいずれで作動するように構成してもよい。交流で作動する場合、一対の電極は同一構造とする。また、自動車前照灯用の高圧放電ランプの場合、電極の先端部の周囲にテーパ面を形成するなどにより先端面を狭めることにより、陰極輝点を安定させて明るさのちらつきを抑制することができる。直流で作動する場合、一般に陽極は温度上昇が激しいから、先端部近傍に径大部を形成すれば、放熱面積を大きくすることができるとともに、頻繁な点滅に対応することができる。これに対して、陰極は必ずしも径大部を形成する必要がない。
【0024】
<電流導入導体について> 電流導入導体は、例えばモリブデンなどの導電体からなり、先端が気密容器の封止部内において封着金属箔の他端に溶接され、基端が封止部から外部へ露出する。
【0025】
<放電媒体について> 本発明において、放電媒体は、少なくとも25℃において1気圧以上のXeを含んでいて、放電空間内に封入されていればよく、Xe以外の物質を含んでいることを許容する。したがって、放電媒体は、一般的には安定点灯状態における主発光物質が金属蒸気およびガスのいずれであってもよい。発光金属の金属蒸気源として単体の発光金属、例えば水銀またはその他の発光金属のハロゲン化物を封入することができる。また、発光金属に加えてランプ電圧形成物質として水銀や蒸気圧が比較的高い金属のハロゲン化物を封入することができる。さらに、上記に加えて始動ガスおよび緩衝ガスとして希ガスを用いることができる。
【0026】
次に、本発明の高圧放電ランプにおいて好適な実施の形態である自動車前照灯用の高圧放電ランプの放電媒体について説明する。この実施の形態における放電媒体は、金属ハロゲン化物およびキセノンを含み、水銀を本質的に含まない。
【0027】
金属ハロゲン化物は、発光金属およびランプ電圧形成用金属のハロゲン化物を含んでいる。
【0028】
発光金属のハロゲン化物は、特段限定されないが、好適にはナトリウムNaおよびスカンジウムScを主体とするハロゲン化物であり、所望によりインジウムInや希土類金属などのハロゲン化物を添加することができる。なお、インジウムは、発光物質およびランプ電圧形成のいずれにも寄与する。そして、インジウムInの発光は、高圧放電ランプの発光の色度調整用としても作用する。
【0029】
ランプ電圧形成用金属のハロゲン化物は、蒸気圧が比較的高くてランプ電圧を形成するのに効果的に寄与する金属、例えば亜鉛Zn、マグネシウムMg、コバルトCo、クロムCr、マンガンMn、アンチモンSb、レニウムRe、ガリウムGa、スズSn、鉄Fe、アルミニウムAl、チタンTi、ジルコニウムZrおよびハフニウムHfのグループから選択された一種または複数種のハロゲン化物を用いることができる。これらの金属ハロゲン化物を選択的に適量封入することにより、ランプ電圧を所要範囲に高めることができる。それにより、メタルハライドランプの電気特性を所望に設定できるので、比較的少ないランプ電流で所要のランプ電力を投入することが可能になる。なお、最適には亜鉛Znのハロゲン化物である。亜鉛Znは、蒸気圧が比較的高いとともに、化学的に安全であり、しかも、安価に、かつ、工業的規模で容易に入手することができる物質である。また、亜鉛Znの発光は、高圧放電ランプの発光色度の調整用としても寄与させることができる。
【0030】
ハロゲン化物を構成するハロゲンは、反応性に関してハロゲンの中でヨウ素が最も適当であり、少なくとも上記主発光金属は、主としてヨウ化物として封入される。しかし、要すれば、ヨウ化物および臭化物のように異なるハロゲンの化合物を併用することもできる。
【0031】
キセノンは、上述したように25℃すなわち室温で1気圧以上の圧力で封入する。また、キセノンは、始動ガスおよび緩衝ガスとして作用するとともに、上記の圧力で封入することにより、点灯直後において発光金属のハロゲン化物の蒸気圧が高くなっていないときに、発光物質としても作用する。なお、所望により、アルゴンまたはクリプトンなどを添加することができる。キセノンの封入圧力は、好ましくは5気圧以上、より好適には8〜15気圧である。これにより、高圧放電ランプのランプ電圧が高くなり、同一ランプ電流に対してランプ入力を大きくして、光束立ち上がり特性を向上させることができる。光束立ち上がり特性が良好であることは、どのような使用目的であっても好都合であるが、自動車前照灯用の場合には必須要件である。
【0032】
本実施の形態において、「本質的に水銀を含まない」とは、水銀を全く封入していないだけでなく、気密容器の内容積1cc当たり2mg未満、好ましくは1mg以下の水銀が存在していることを許容するという意味である。しかし、水銀を全く封入しないことは環境上望ましいことである。従来のように水銀蒸気によって放電ランプの電気特性を維持する場合には、短アーク形においては気密容器の内容積1cc当たり20〜40mg、さらに場合によっては50mg以上封入していたことからすれば、本発明は水銀量が実質的に頗る少ないといえる。
【0033】
<本発明のその他の構成について> 以下に示す構成を選択的に付加することにより、高圧放電ランプの性能が向上したり、機能が増加したりする。
【0034】
1.外管について 外管は、石英ガラスまたはハイシリケートガラスなどからなり、その内部に放電容器の少なくとも主要部をその収納する手段である。そして、外管、発光管から外部へ放射される紫外線を遮断し、機械的に保護し、かつ、発光管の気密容器を手で触れることで人の指紋や脂肪が付いて失透の原因とならないようにしたり、あるいは気密容器を保温したりたりする。また、外管の内部は、その目的に応じて外気に対して気密に封止して外気と同程度または減圧された空気または不活性ガスが封入されていてもよい。さらに、要すれば、外気に連通していてもよい。さらに、外管の外面または内面に所望の配光特性を付与するための遮光膜を配設することもできる。
【0035】
また、外管を形成する際に、外管の両端を気密容器の両端から管軸方向に延在する封止部およびまたは封止管にガラス溶着などの手段により支持させることができる。
【0036】
2.口金について 口金は、高圧放電ランプを点灯回路に接続したり、加えて機械的に支持したりするのに機能する。
【0037】
3.イグナイタについて イグナイタは、高電圧パルス電圧を発生し、これを高圧放電ランプに印加して、その始動を促進する手段であり、口金の内部に収納するなどにより、高圧放電ランプと一体化することができる。
【0038】
4.始動補助導体について 始動補助導体は、電極近傍における電界強度を高くして、高圧放電ランプの始動を支援する手段であり、その一端を他方の電極と同電位個所に接続し、他端を一方の電極近傍における気密容器の外面に配設する。
【0039】
<本発明の作用について> 本発明においては、以上説明した構成を具備していることにより、高圧放電ランプの寿命中に封止部のクラックに起因する気密容器のリーク発生が著しく減少する。その理由は詳らかでないが、封着金属箔の端面に凸円弧状部分が形成されていることによって、気密容器内の放電による発熱によって封止部が温度上昇した際に、封着金属箔と石英ガラスの熱膨張差により発生する応力歪が集中しないで分散されるためではないかと推測される。なお、一対の封着金属箔の少なくとも一方が前記の構成を備えていればよいとする理由は、一方だけでも本発明の構成を具備していれば、それなりの効果が得られるからである。しかし、両方の封着金属箔がともに本発明の構成を具備していることは、より一層の効果が得られるので、大変好ましいことである。
【0040】
また、自動車前照灯用の高圧放電ランプにおいては、安定時のランプ電流の2倍以上の電流が点灯直後に短時間通流されるために、封着金属箔に大きな負担がかかり、温度上昇が大きくなるので、本発明は効果的である。とりわけ、本発明は、点灯直後に通流される電流が安定点灯時のランプ電流の3倍以上で、しかも4秒間程度の間にわたって通流される水銀フリータイプの高圧放電ランプに効果的である。
【0041】
請求項2の発明の高圧放電ランプは、内容積が0.1cc以下の放電空間が形成された包囲部および包囲部の両端から延在する一対の封止部を備えた耐火性で透光性の気密容器と;気密容器における一対の封止部の内部に気密に埋設されるとともに、包囲部側の一端に肉薄部を有する一対の封着金属箔と;基端が封着金属箔の一端部に溶接されるとともに、先端が気密容器の放電空間に電極間距離5mm以下で臨むように放電空間の両端に離間対向して配設された一対の電極と;先端が封着金属箔の他端部に溶接されるとともに基端が気密容器の外部へ導出された一対の電流導入導体と;気密容器の放電空間内に封入された放電媒体と;を具備していることを特徴としている。
【0042】
本発明は、一対の封着金属箔の少なくとも一方の包囲部側の一端に肉薄部を有するのが特徴的な構成である。上記肉薄部は、封着金属箔の一端における幅方向の全体ないし半分程度にわたり形成されていればよい。また、肉薄部の肉厚は、電極との接合部の肉厚の約4/5程度以下、例えば約1/20〜約4/5程度であるのがよい。好適には約3/4程度以下、例えば約1/10〜約3/4である。さらに、肉厚部は、封着金属箔の両面に対して段差を形成しているのが好ましいが、片面に対してのみ段差が形成されているのであってもよい。ただし、片面の場合には、段差が形成されている面が電極に接合しているように構成するのがよい。
【0043】
また、封着金属箔の肉薄部は、どのような方法で形成してもよいが、例えばプレス型を用いて封着金属箔の一端部をプレス成形することにより形成することができる。
【0044】
電極は、封着金属箔の薄肉部を除く部位に溶接するようにする。したがって、薄肉部は、電極の溶接に対してフリーになっているし、好ましくは薄肉部と電極との間に僅かな隙間が形成される。
【0045】
そうして、本発明においては、上記の構成を具備していることにより、封着条件の如何にかかわず封着部におけるクラックに起因するリーク不良が顕著に減少することが分かった。リーク不良が減少する理由は詳らかでないが、一端の端面に形成された肉薄部が点灯に伴う温度上昇時に封着金属箔と石英ガラスとの熱膨張率の違いにより発生する応力歪を分散させるのではないかと考えられる。
【0046】
また、自動車前照灯用の高圧放電ランプにおいては、安定時のランプ電流の2倍以上の電流が点灯直後に短時間通流されるために、封着金属箔に大きな負担がかかり、温度上昇が大きくなるので、本発明は効果的である。とりわけ、本発明は、点灯直後に通流される電流が安定点灯時のランプ電流の3倍以上で、しかも4秒間程度の間にわたって通流される水銀フリータイプの高圧放電ランプに効果的である。
【0047】
請求項3の発明の照明装置は、照明装置本体と;照明装置本体に配設された請求項1または2記載の高圧放電ランプと;高圧放電ランプを点灯する点灯回路と;を具備していることを特徴としている。
【0048】
本発明において、「照明装置」とは、高圧放電ランプを光源とする装置の全てを含む広い概念であり、例えば自動車前照灯、照明器具、信号灯、標識灯、光ファイバー照明装置、光化学反応装置などである。なお、「照明装置本体」とは、照明装置から高圧放電ランプおよび点灯回路を除いた残余の全ての部分を意味する。
【0049】
点灯回路は、高圧放電ランプを点灯する手段であり、電子化されたものが好適であるが、要すればコイルおよび鉄心を主体とするものであってもよい。また、自動車前照灯用の点灯回路の場合、高圧放電ランプ、例えばメタルハライドランプの点灯直後4秒までの最高入力電力を安定時のランプ電力の2〜4倍、好適には2.5〜4倍とすることにより、光束立ち上がりを自動車前照灯用として必要な範囲内に入るように早くすることができる。なお、希ガスとしてのキセノンの封入圧を5〜15気圧の範囲でX(気圧)とし、メタルハライドランプの点灯直後4秒までの最高入力電力をAA(W)としたとき、AAが下式を満足するように構成することにより、点灯直後4秒までの光束立ち上がりを早めて自動車用前照灯に必要な前照灯前面の代表点での光度8000cdを得ることができる。
【0050】
AA>−2.5X+102.5
上記のようにキセノン封入圧と最高入力電力とが直線的な関係になるのは、蒸気圧の低い放電媒体のみであるから、始動後4秒後の時点ではキセノンの発光が圧倒的になっているからである。キセノンの発光量は、キセノンの封入圧とその時の電力とで決まるので、キセノン圧が低ければ、入力電力を多くすればよい。反対に、キセノン圧が高ければ、入力電力を少なくすればよい。なお、本発明において、高圧放電ランプの点灯は、交流点灯および直流点灯のいずれであってもよい。
また、点灯回路は、所要により無負荷出力電圧を200V以下に構成することができる。水銀フリーランプは、一般に水銀入りランプに比較して、ランプ電圧が低いので、点灯回路の無負荷出力電圧を200V以下にすることができる。これにより、点灯回路の小形化が可能になる。なおて、水銀入りランプにおいては、400V程度の無負荷出力電圧を必要としている。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0052】
図1ないし図3は、本発明の高圧放電ランプにおける第1の実施の形態としての自動車前照灯用のメタルハライドランプを示し、図1は正面図、図2は底面図、図3は要部拡大背面図である。本実施の形態は、請求項1の発明に対応する。各図において、ITは放電容器すなわち発光管、2、2は一対の封着金属箔、3A、3Bは一対の電流導入導体、OTは外管、Tは絶縁チューブ、Bは口金である。
【0053】
放電容器ITは、気密容器1および一対の電極1b、1bからなる。気密容器1は、中空の紡錘形状に成形された包囲部1a、一対の封止部1a1および封止管1a2を備えている。包囲部1aは、その内部に細長いほぼ円柱状の放電空間1cを有している。一対の封止部1a1は、細長くて包囲部1aの管軸方向の両端からそれぞれ管軸方向に延在している。封止管1a2は、図1において下方の封止部1a1と一体に形成されていて、口金B内へ進入している。
【0054】
一対の電極1b、1bは、それぞれの基端が封止部1a1に埋設された後述する封着金属箔2の一端部にレーザ溶接されるとともに、中間部が封止部1a1に埋設されて緩く支持されることによって所定の位置に配設されて、先端が放電空間1c内へ両端から離間対向して突出している。
【0055】
一対の封着金属箔2、2は、その全体的を図1に示し、また図3に要部を拡大して示すように、それぞれ厚みが約20μmで、一端の端面に凸円弧状部分2aが形成され、かつ、他端の端面が直線的にカットされている。そして、図示していないが、両側縁がシャープにナイフエッジ化されたモリブデン箔からなり、気密容器1の封止部1a1内に気密に埋設されている。
【0056】
一対の電流導入導体3A、3Bは、その先端が気密容器1の両端の封止部1a1内において封着金属箔2の他端部に溶接され、その基端側が封止部1a1の外部へ導出されている。図1において、放電容器ITから上方へ導出された電流導入導体3Aは、その中間部が後述する外管OTに沿って折り返され、さらに後述する口金B内に導入されて、図示しない口金端子の一方に接続している。図1において、放電容器ITからその管軸に沿って下方へ導出された電流導入導体3Bは、管軸に沿って延在して口金B内に導入されて口金端子の他方に接続している。
【0057】
気密容器1a内には、放電媒体として発光金属のハロゲン化物、ランプ電圧形成用金属のハロゲン化物および希ガスが封入されている。発光金属は、ナトリウムNaおよびスカンジウムSc、ランプ電圧形成用金属は、亜鉛Znである。
【0058】
外管OTは、紫外線カット性能を備えており、内部に放電容器ITを収納していて、先端側の縮径部4が放電容器ITの封止部1a1の図1および図2に示す位置にガラス溶着している。また、他方の縮径部(図示しない。)は、封止管1a2にガラス溶着して支持されている。しかし、外管OTの内部は気密ではなく、外気に連通している。
【0059】
絶縁チューブTは、図2に示すように、電流導入導体3Aを被覆している。
【0060】
口金Bは、自動車前照灯用として規格化されているもので、放電容器ITおよび外管OTを中心軸に沿って植立して支持していて、自動車前照灯の背面に着脱可能に装着されるように構成されている。また、口金Bは、その前面から管軸方向に突出して外管OTの基端部を包持する支持バンド4を備えている。
【実施例1】
図1ないし図3に示す第1の実施の形態において、以下のとおりである。
【0061】
放電容器IT
気密容器1a:石英ガラス製、内容積0.025cc、最大内径2.4mm
電極1b :タングステン製、直径0.25mm、電極間距離4.2mm
封着金属2 :幅1.5mm、一端の凸円弧状部分の半径2.5mm
放電媒体
金属ハロゲン化物:ScI3−NaI−ZnI2=0.3mg
キセノンXe:10気圧
外管OT :外径9mm、内径7mm、内部雰囲気;大気圧(大気)
点灯直後投入電力:85W
点灯直後投入電流:2.8A
安定時ランプ電圧:42V
安定時ランプ電流:0.8A
安定時ランプ電力:35W
次に、表1を参照して本発明(第1の実施の形態)において封着金属箔の一端に形成される凸円弧状部分の形状とランプ製造後の封着金属箔の端部に係るクラックの発生との関係について調査した結果を比較例のそれとともに説明する。なお、表1は、第1行が左から「封着条件」、「本発明の封着金属箔の凸円弧状部分の曲率半径r」および「比較例」を示し、第2行が「本発明の封着金属箔の凸円弧状部分の曲率半径r」が左から「1S」、「2S」および「3S」を示し、さらにその右に「比較例」の形状が「直線」であることを示している。そして、第3行が封着条件Aの場合、第4行が封着条件Bの場合、第5行が封着条件Cの場合、のそれぞれクラック発生率(%)を示している。
【0062】
そうして、表1において、発生したクラックの全てが寿命中にリークへと進行するものではないが、寿命中にリークが発生するものの中で封着金属箔のクラックが進行したと思われるものが含まれている。それゆえ、ランプ製造後の封着金属箔の端部に係るクラックをなくさねばならない。なお、表中%記号が付された数値は、クラック発生率を示している。記号Sは、封着金属箔の幅寸法を示す。封着条件は、加熱温度、ピンシール時の押圧力およびピンチ金型の形状の組み合わせがそれぞれA、B、Cと異なっている異を示している。比較例は、封着部の一端の端面が直線状をなしている以外本発明と同一仕様である。
【0063】
【表1】
表1から理解できるように、本発明によれば、従来構造の比較例に比較して、クラック発生率が顕著に低減していることから、クラックに起因するリークが効果的に防止されることが分かる。なお、表1に示していないが、凸円弧状部分の曲率半径rが0.5S以上で、しかも表1における2S以下のときに好ましい結果が得られた。
【0064】
図4は、本発明の高圧放電ランプにおける第2の実施の形態としての自動車前照灯用のメタルハライドランプを示すの拡大要部底面図である。本実施の形態は、請求項2の発明に対応する。
【0065】
すなわち、一対の封着金属箔2のそれぞれにおいて、気密容器1の包囲部1a側の一端に肉薄部2bを形成している。
【実施例2】
本実施例は、図4に示す第2の実施の形態におけるものであり、封着金属箔2が、実施例1における凸円弧状部分2aに代えて、封着金属箔の肉厚20μmの1/3の肉薄部2bが一端に形成されている以外は実施例1と同じである。
【0066】
次に、表2を参照して本発明(第2の実施の形態)において封着金属箔の一端に形成される肉薄部2bの肉厚とランプ製造後の封着金属箔2の端部に係るクラックの発生との関係について調査した結果を比較例のそれとともに説明する。なお、クラックとリークの関係の説明、表中%記号が付された数値がクラック発生率を示していること、および封着条件については、表1において説明したのと同様である。また、記号Tは封着金属箔2の肉厚を示す。比較例は、肉薄部2bがない構造すなわち封着金属箔の全体が肉厚Tである以外本発明と同一仕様である。
【0067】
【表2】
表1から理解できるように、本発明によれば、従来構造の比較例に比較して、クラック発生率が顕著に低減していることから、クラックに起因するリークが効果的に防止されることが分かる。
【0068】
図5および図6は、本発明の照明装置における一実施の形態としての自動車用前照灯装置を示し、図5は装置全体の背面斜視図、図6は点灯回路の回路図である。各図において、自動車用前照灯装置HLは、自動車用前照灯装置本体21、メタルハライドランプHPDLおよび2つの点灯回路OLにより構成されている。
【0069】
自動車用前照灯装置本体21は、前面透過パネル21a、リフレクタ21b、21c、ランプソケット21dおよび取付部21eなどから構成されている。前面レンズ21aは、自動車の外面と合わせた形状をなし、所要の光学的手段たとえばプリズムを備えている。リフレクタ21b、21cは、各メタルハライドランプHPDLごとに配設されていて、それぞれに要求される配光特性を得るように構成されている。ランプソケット21dは、点灯回路OCの出力端に接続し、メタルハライドランプHPDLの口金21dに装着される。取付部21eは、自動車用前照灯装置本体21を自動車の所定の位置に取り付けるための手段である。
【0070】
メタルハライドランプHPDLは、図1に示す構造を備えている。ランプソケット21dは、口金に装着されて接続する。そうして、2灯のメタルハライドランプKPDLが自動車用前照灯装置本体21に装着されて、4灯式の自動車用前照灯装置が構成される。各メタルハライドランプHPDLの発光部は、自動車用前照灯装置本体21のリフレクタ21b、21cの焦点にほぼ位置する。
【0071】
2つの点灯回路OLは、それぞれ後述する回路構成を備えていて、金属製容器22内に収納されているとともに、メタルハライドランプHPDLを付勢して点灯させる。
【0072】
点灯回路OLは、図6に示すように、直流電源11、チョッパ12、制御手段13、ランプ電流検出手段14、ランプ電圧検出手段15、イグナイタ16、メタルハライドランプHPDL、フルブリッジインバータ17により構成されていて、メタルハライドランプHPDLを交流点灯する。
【0073】
直流電源11は、後述するチョッパ12に対して直流電源を供給する手段であって、バッテリーまたは整流化直流電源が用いられる。自動車の場合には、一般的にバッテリーが用いられる。しかし、交流を整流する整流化直流電源であってもよい。必要に応じて電解コンデンサ11aを並列接続して平滑化を行う。
【0074】
チョッパ12は、直流電圧を所要値の直流電圧に変換するDC−DC変換回路であって、後述するフルブリッジインバータ17を介してメタルハライドランプHPDLを所要に制御する。直流電源電圧が低い場合には、昇圧チョッパを用い、反対に高い場合には降圧チョッパを用いる。
【0075】
制御手段13は、チョッパ12を制御する。たとえば、点灯直後にはメタルハライドランプHPDLに定格ランプ電流の3倍以上のランプ電流をチョッパ22からフルブリッジインバータ17を経由して流し、その後時間の経過とともに徐々にランプ電流を絞っていき、やがて定格ランプ電流にするように制御する。また、制御手段13は、ランプ電流とランプ電圧と相当するそれぞれの検出信号が後述するように帰還入力されることにより、定電力制御信号を発生して、チョッパ22を定電力制御する。さらに、制御手段13は、時間的な制御パターンが予め組み込まれたマイコンが内蔵されていて、点灯直後には定格ランプ電流の3倍以上のランプ電流をメタルハライドランプHPDLに流し、時間の経過とともにランプ電流を絞るようにチョッパ12を制御するように構成されている。
【0076】
ランプ電流検出手段14は、フルブリッジインバータ17を介してランプと直列に挿入されていて、ランプ電流に相当する電流を検出して制御手段13に制御入力する。
【0077】
ランプ電圧検出手段15は、同様にフルブリッジインバータ17を介してメタルハライドランプHPDLと並列的に接続されていて、ランプ電圧に相当する電圧を検出して制御手段23に制御入力する。
【0078】
イグナイタ16は、フルブリッジインバータ17とメタルハライドランプHPDLとの間に介在していて、始動時に約20kV程度の始動パルス電圧をメタルハライドランプHPDLに供給できるように構成されている。
【0079】
フルブリッジインバータ17は、4つのMOSFETQ1、Q2、Q3およびQ4からなるブリッジ回路、ブリッジ回路17aのMOSFETQ1およびQ3と、Q2およびQ4とを交互にスイッチングさせるゲートドライブ回路28bおよび極性反転回路INVから構成されていて、チョッパ12からの直流電圧を上記スイッチングにより矩形波の低周波交流電圧に変換して、メタルハライドランプHPDLに印加して、メタルハライドランプHPDLを低周波交流点灯させる。
【0080】
そうして、点灯回路OCを用いてメタルハライドランプHPDLを矩形波の低周波交流で点灯すると、点灯直後から所要の光束を発生する。これにより、自動車用前照灯として必要な電源投入後1秒後に定格に対して光束25%、4秒後に光束80%の点灯を実現することができる。
【0081】
【発明の効果】
請求項1によれば、一対の封着金属箔の少なくとも一方において包囲部側に位置する一端の端面に凸円弧状部分が形成されていることにより、封止部に生じるクラックによる気密容器のリーク不良を防止するとともに、製造条件の設定が容易で、かつ、コストアップが少ない高圧放電ランプを提供することができる。
【0082】
請求項2によれば、一対の封着金属箔の少なくとも一方において包囲部側の一端に肉薄部を有することにより、封止部に生じるクラックによる気密容器のリーク不良を防止するとともに、製造条件の設定が容易で、かつ、コストアップが少ない高圧放電ランプを提供することができる。
【0083】
請求項3によれば、請求項1および2の効果を有する照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高圧放電ランプにおける第1の実施の形態としての自動車前照灯用のメタルハライドランプを示す正面図
【図2】同じく底面図
【図3】同じく拡大要部正面図
【図4】本発明の高圧放電ランプにおける第2の実施の形態としての自動車前照灯用のメタルハライドランプを示すの拡大要部底面図
【図5】本発明の照明装置における一実施の形態としての自動車用前照灯装置を示す装置全体の背面斜視図
【図6】同じく点灯回路の回路図
【符号の説明】
1…気密容器、1a…包囲部、1a1…封止部、1b…電極、2…封着金属箔、2a…凸円弧状部分、IT…放電容器
【発明の属する技術分野】
本発明は、高圧放電ランプおよびこれを用いた照明装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
相対向する一対の電極を備えた発光管内に希ガス、発光金属のハロゲン化物および水銀を封入したメタルハライドランプと呼称される高圧放電ランプは、比較的高効率で、高演色性であるため広く使用されている。自動車の前照灯用においても、高圧放電ランプの使用が普及してきている。自動車の前照灯用を含めて、現在実用されている高圧放電ランプは、水銀を必須としている。なお、自動車の前照灯用の高圧放電ランプの仕様においては、約2〜15mgの水銀の封入が不可欠とされている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、環境問題が深刻化してきている現在、照明分野においても、環境負荷が大きい水銀をランプから減少させ、さらに廃絶することは非常に重要なことと考えられている。
【0004】
この課題に対して、高圧放電ランプにおいても、水銀を用いないための提案が既にいくつかなされている(例えば特許文献2参照。)。特許文献2においては、水銀に代えてZnI2などの蒸気圧の高い物質を発光物質のハロゲン化物、例えばScI3−NaIに加えて封入することにより、水銀入りランプと同等の電気特性と発光特性が得られている。
【0005】
ところで、自動車前照灯用の高圧放電ランプの場合、電源投入と同時に所定値以上の発光を行う必要があるため、特許文献1のように水銀を封入している高圧放電ランプ(以下、便宜上「水銀入りランプ」という。)および例えば特許文献2記載のように水銀を含まない高圧放電ランプ(以下、便宜上「水銀フリーランプ」という。)のいずれにおいても、光束立ち上がりを早めるべく、点灯直後に安定時の2倍以上のランプ電流を短時間通流させ、その後徐々に低減して安定時のランプ電流に落ち着くように制御する。加えて、水銀フリーランプにおいては、蒸気圧の非常に高い水銀を封入していないために、水銀入りランプにおけるよりさらに光束立ち上がりが遅くなるので、これを水銀入りランプと同等程度まで早めるためには、点灯直後に安定時の3倍以上のランプ電流を、しかも数秒間にわたって継続して通流させ、その後徐々に低減して安定時のランプ電流に落ち着くように制御する必要がある。
【0006】
また、金属ハロゲン化物の蒸気圧を所要に維持するために、気密容器の安定点灯中の外面温度を500℃以上に維持するべく気密容器を外管で包囲している。
【0007】
一方、高圧放電ランプにおいて、一般に電極は、その基端を封止部内に気密に埋設された封着金属箔の一端に溶接している。さらに、封着金属箔の他端には、電流導入導体の先端部を溶接していて、電流導入導体および封着金属箔を経由して点灯回路から電極へランプ電流を供給するように構成されている。
【0008】
ところが、自動車前照灯用の高圧放電ランプにおいては、上述したように点灯直後に安定点灯時に比べて非常に大きなランプ電流を通流させるために、気密容器の封止部にクラックが発生しやすいという問題がある。この問題は、点灯直後のランプ電流が水銀入りランプより大きくて、しかも長い時間にわたり流れるために、水銀フリーランプにおいて特に顕著である。
【0009】
上記の問題の対策として、封止管部に埋設されている電極軸の適宜な範囲にコイルを巻き付け、このコイルで緩衝して封止部へのクラック発生を防止しようとすることが知られている(特許文献3参照。)。
【0010】
また、封止管部に埋設されている電極軸を取り囲み軸方向に延びる境界クラックからなる残留圧縮歪層を形成することも知られている(特許文献4参照。)。
【0011】
【特許文献1】
特開平2−7347号公報
【特許文献2】
特開平11−238488号公報
【特許文献3】
特開平10−223175号公報
【特許文献4】
特開2001−15067号公報
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特許文献3および4による対策ではコストアップや製造条件の管理が非上に難しい問題がある。
【0012】
本発明は、一般的には封止部に生じるクラックによる気密容器のリーク不良を防止するとともに、製造条件の設定が容易で、かつ、コストアップが少ない高圧放電ランプおよびこれを用いた照明装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を達成するための手段】
請求項1の発明の高圧放電ランプは、内容積が0.1cc以下の放電空間が形成された包囲部および包囲部の両端から延在する一対の封止部を備えた耐火性で透光性の気密容器と;気密容器における一対の封止部の内部に気密に埋設されるとともに、少なくとも一方において包囲部側に位置する一端の端面に凸円弧状部分が形成されている一対の封着金属箔と;基端が封着金属箔の一端部に溶接されるとともに、先端が気密容器の放電空間に電極間距離5mm以下で臨むように放電空間の両端に離間対向して配設された一対の電極と;先端が封着金属箔の他端部に溶接されるとともに基端が気密容器の外部へ導出された一対の電流導入導体と;25℃において1気圧以上のXeを含み、気密容器の放電空間内に封入された放電媒体と;を具備していることを特徴としている。
【0014】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0015】
<気密容器について> 気密容器は、包囲部および一対の封止部を備えて構成されていて、耐火性で透光性である。「耐火性」とは、放電ランプの通常の作動温度に十分耐える意味である。したがって、気密容器は、耐火性を備える材料であり、放電によって発生した所望波長域の可視光を外部に導出することができ、かつ、電極および電流導入導体を溶接した封着金属箔を封止部内内に気密に埋設して封止できでれば、どのようなもので作られていてもよい。しかし、好適には石英ガラスからなる。なお、必要に応じて、気密容器の内面に耐ハロゲン性または耐ハロゲン化物性の透明性被膜を形成するか、気密容器の内面を改質することが許容される。
【0016】
また、気密容器の包囲部は、その内部に適当な形状をなした放電空間、例えば自動車前照灯用の高圧放電ランプにおいては細長い放電空間が形成されている。なお、細長い放電空間としては、例えば自動車前照灯用の高圧放電ランプにおいては放電空間を円柱状にすることができる。これにより、アークが水平点灯においては上方へ湾曲しようとするために、放電容器の上側の内面に接近するので、放電容器の上部の温度上昇が早くなる。なお、自動車前照灯用の高圧放電ランプの場合、包囲部の最大内径は、好適には1.5mm以上である。
【0017】
さらに、包囲部は、その肉厚を比較的大きくすることができる。すなわち、電極間距離のほぼ中央部の肉厚をその両側の肉厚より大きくすることができる。これにより、気密容器の伝熱が良好になって気密容器内部の放電空間の下部および側部内面に付着している液状をなした膜状の放電媒体の温度上昇が早まるために、光束立ち上がりが早くなる。
【0018】
一対の封止部は、気密容器の包囲部の両端から一体的に延在し、一般的には細長く形成されている。そして、その内部に後述する封着金属箔を気密に埋設するとともに、電極を支持し、かつ、電流導入導体を内部に導入させる。
【0019】
<封着金属箔について> 封着金属箔は、気密容器の内部を封止部で気密に封止する際にこれに協働するとともに、外部からのランプ電流の導入を仲介する。このために封着金属箔は、気密容器の封止部と熱膨張率が接近した熱膨張率を有するとともに、比較的大きな導電率を有する耐火性の導電材料からなり、封止部が石英ガラスからなる場合、モリブデンMoが好適である。また、封着金属箔は、その肉厚が一般的には10〜30μm程度、自動車前照灯用のメタルハライドランプのようにランプ電力60W以下の小形の高圧放電ランプにおいて好適には20〜25μm程度である。
【0020】
また、封着金属箔は、少なくともその一方において、放電容器の包囲部側すなわち後述する電極の基端が溶接される側に位置する一端の端面に凸円弧状部分が形成されている。なお、「凸円弧状部分」とは、封着金属箔の一端において肩の部分が丸くなっているように見える部分をいい、当該部分は一つの円弧により形成されているだけでなく、複数の円弧により形成されていてもよく、さらには楕円をなしていたり、一端の端面の中央部が直線状をなし、両肩部が円弧状をなしていたりしていてもよい。
【0021】
さらに、封着金属箔と電極および電流導入導体との溶接手段は、レーザ溶接およびブレージング材なしの抵抗溶接のいずれであってもよい。封着金属箔の結晶構造を上記のように構成するための手段は特段限定されない。レーザ溶接の場合には、例えばレーザの出力、照射位置パターンまたは照射繰り返しパターンなどを適宜調整することで本発明の構成を実現することができる。また、ブレージング材なしの抵抗溶接の場合、溶接電極の形状、押圧分布、平面性または電流制御などにより本発明の構成を実現することができる。
【0022】
<一対の電極について> 一対の電極は、気密容器の両端内部に離間対向して封装される。なお、自動車前照灯用の高圧放電ランプの場合、電極間距離が5mm以下に設定するのが望ましい。また、電極の軸径は0.4mm以下で、かつ、電極間距離は5mm以下が望ましい。
【0023】
なお、電極は、交流および直流のいずれで作動するように構成してもよい。交流で作動する場合、一対の電極は同一構造とする。また、自動車前照灯用の高圧放電ランプの場合、電極の先端部の周囲にテーパ面を形成するなどにより先端面を狭めることにより、陰極輝点を安定させて明るさのちらつきを抑制することができる。直流で作動する場合、一般に陽極は温度上昇が激しいから、先端部近傍に径大部を形成すれば、放熱面積を大きくすることができるとともに、頻繁な点滅に対応することができる。これに対して、陰極は必ずしも径大部を形成する必要がない。
【0024】
<電流導入導体について> 電流導入導体は、例えばモリブデンなどの導電体からなり、先端が気密容器の封止部内において封着金属箔の他端に溶接され、基端が封止部から外部へ露出する。
【0025】
<放電媒体について> 本発明において、放電媒体は、少なくとも25℃において1気圧以上のXeを含んでいて、放電空間内に封入されていればよく、Xe以外の物質を含んでいることを許容する。したがって、放電媒体は、一般的には安定点灯状態における主発光物質が金属蒸気およびガスのいずれであってもよい。発光金属の金属蒸気源として単体の発光金属、例えば水銀またはその他の発光金属のハロゲン化物を封入することができる。また、発光金属に加えてランプ電圧形成物質として水銀や蒸気圧が比較的高い金属のハロゲン化物を封入することができる。さらに、上記に加えて始動ガスおよび緩衝ガスとして希ガスを用いることができる。
【0026】
次に、本発明の高圧放電ランプにおいて好適な実施の形態である自動車前照灯用の高圧放電ランプの放電媒体について説明する。この実施の形態における放電媒体は、金属ハロゲン化物およびキセノンを含み、水銀を本質的に含まない。
【0027】
金属ハロゲン化物は、発光金属およびランプ電圧形成用金属のハロゲン化物を含んでいる。
【0028】
発光金属のハロゲン化物は、特段限定されないが、好適にはナトリウムNaおよびスカンジウムScを主体とするハロゲン化物であり、所望によりインジウムInや希土類金属などのハロゲン化物を添加することができる。なお、インジウムは、発光物質およびランプ電圧形成のいずれにも寄与する。そして、インジウムInの発光は、高圧放電ランプの発光の色度調整用としても作用する。
【0029】
ランプ電圧形成用金属のハロゲン化物は、蒸気圧が比較的高くてランプ電圧を形成するのに効果的に寄与する金属、例えば亜鉛Zn、マグネシウムMg、コバルトCo、クロムCr、マンガンMn、アンチモンSb、レニウムRe、ガリウムGa、スズSn、鉄Fe、アルミニウムAl、チタンTi、ジルコニウムZrおよびハフニウムHfのグループから選択された一種または複数種のハロゲン化物を用いることができる。これらの金属ハロゲン化物を選択的に適量封入することにより、ランプ電圧を所要範囲に高めることができる。それにより、メタルハライドランプの電気特性を所望に設定できるので、比較的少ないランプ電流で所要のランプ電力を投入することが可能になる。なお、最適には亜鉛Znのハロゲン化物である。亜鉛Znは、蒸気圧が比較的高いとともに、化学的に安全であり、しかも、安価に、かつ、工業的規模で容易に入手することができる物質である。また、亜鉛Znの発光は、高圧放電ランプの発光色度の調整用としても寄与させることができる。
【0030】
ハロゲン化物を構成するハロゲンは、反応性に関してハロゲンの中でヨウ素が最も適当であり、少なくとも上記主発光金属は、主としてヨウ化物として封入される。しかし、要すれば、ヨウ化物および臭化物のように異なるハロゲンの化合物を併用することもできる。
【0031】
キセノンは、上述したように25℃すなわち室温で1気圧以上の圧力で封入する。また、キセノンは、始動ガスおよび緩衝ガスとして作用するとともに、上記の圧力で封入することにより、点灯直後において発光金属のハロゲン化物の蒸気圧が高くなっていないときに、発光物質としても作用する。なお、所望により、アルゴンまたはクリプトンなどを添加することができる。キセノンの封入圧力は、好ましくは5気圧以上、より好適には8〜15気圧である。これにより、高圧放電ランプのランプ電圧が高くなり、同一ランプ電流に対してランプ入力を大きくして、光束立ち上がり特性を向上させることができる。光束立ち上がり特性が良好であることは、どのような使用目的であっても好都合であるが、自動車前照灯用の場合には必須要件である。
【0032】
本実施の形態において、「本質的に水銀を含まない」とは、水銀を全く封入していないだけでなく、気密容器の内容積1cc当たり2mg未満、好ましくは1mg以下の水銀が存在していることを許容するという意味である。しかし、水銀を全く封入しないことは環境上望ましいことである。従来のように水銀蒸気によって放電ランプの電気特性を維持する場合には、短アーク形においては気密容器の内容積1cc当たり20〜40mg、さらに場合によっては50mg以上封入していたことからすれば、本発明は水銀量が実質的に頗る少ないといえる。
【0033】
<本発明のその他の構成について> 以下に示す構成を選択的に付加することにより、高圧放電ランプの性能が向上したり、機能が増加したりする。
【0034】
1.外管について 外管は、石英ガラスまたはハイシリケートガラスなどからなり、その内部に放電容器の少なくとも主要部をその収納する手段である。そして、外管、発光管から外部へ放射される紫外線を遮断し、機械的に保護し、かつ、発光管の気密容器を手で触れることで人の指紋や脂肪が付いて失透の原因とならないようにしたり、あるいは気密容器を保温したりたりする。また、外管の内部は、その目的に応じて外気に対して気密に封止して外気と同程度または減圧された空気または不活性ガスが封入されていてもよい。さらに、要すれば、外気に連通していてもよい。さらに、外管の外面または内面に所望の配光特性を付与するための遮光膜を配設することもできる。
【0035】
また、外管を形成する際に、外管の両端を気密容器の両端から管軸方向に延在する封止部およびまたは封止管にガラス溶着などの手段により支持させることができる。
【0036】
2.口金について 口金は、高圧放電ランプを点灯回路に接続したり、加えて機械的に支持したりするのに機能する。
【0037】
3.イグナイタについて イグナイタは、高電圧パルス電圧を発生し、これを高圧放電ランプに印加して、その始動を促進する手段であり、口金の内部に収納するなどにより、高圧放電ランプと一体化することができる。
【0038】
4.始動補助導体について 始動補助導体は、電極近傍における電界強度を高くして、高圧放電ランプの始動を支援する手段であり、その一端を他方の電極と同電位個所に接続し、他端を一方の電極近傍における気密容器の外面に配設する。
【0039】
<本発明の作用について> 本発明においては、以上説明した構成を具備していることにより、高圧放電ランプの寿命中に封止部のクラックに起因する気密容器のリーク発生が著しく減少する。その理由は詳らかでないが、封着金属箔の端面に凸円弧状部分が形成されていることによって、気密容器内の放電による発熱によって封止部が温度上昇した際に、封着金属箔と石英ガラスの熱膨張差により発生する応力歪が集中しないで分散されるためではないかと推測される。なお、一対の封着金属箔の少なくとも一方が前記の構成を備えていればよいとする理由は、一方だけでも本発明の構成を具備していれば、それなりの効果が得られるからである。しかし、両方の封着金属箔がともに本発明の構成を具備していることは、より一層の効果が得られるので、大変好ましいことである。
【0040】
また、自動車前照灯用の高圧放電ランプにおいては、安定時のランプ電流の2倍以上の電流が点灯直後に短時間通流されるために、封着金属箔に大きな負担がかかり、温度上昇が大きくなるので、本発明は効果的である。とりわけ、本発明は、点灯直後に通流される電流が安定点灯時のランプ電流の3倍以上で、しかも4秒間程度の間にわたって通流される水銀フリータイプの高圧放電ランプに効果的である。
【0041】
請求項2の発明の高圧放電ランプは、内容積が0.1cc以下の放電空間が形成された包囲部および包囲部の両端から延在する一対の封止部を備えた耐火性で透光性の気密容器と;気密容器における一対の封止部の内部に気密に埋設されるとともに、包囲部側の一端に肉薄部を有する一対の封着金属箔と;基端が封着金属箔の一端部に溶接されるとともに、先端が気密容器の放電空間に電極間距離5mm以下で臨むように放電空間の両端に離間対向して配設された一対の電極と;先端が封着金属箔の他端部に溶接されるとともに基端が気密容器の外部へ導出された一対の電流導入導体と;気密容器の放電空間内に封入された放電媒体と;を具備していることを特徴としている。
【0042】
本発明は、一対の封着金属箔の少なくとも一方の包囲部側の一端に肉薄部を有するのが特徴的な構成である。上記肉薄部は、封着金属箔の一端における幅方向の全体ないし半分程度にわたり形成されていればよい。また、肉薄部の肉厚は、電極との接合部の肉厚の約4/5程度以下、例えば約1/20〜約4/5程度であるのがよい。好適には約3/4程度以下、例えば約1/10〜約3/4である。さらに、肉厚部は、封着金属箔の両面に対して段差を形成しているのが好ましいが、片面に対してのみ段差が形成されているのであってもよい。ただし、片面の場合には、段差が形成されている面が電極に接合しているように構成するのがよい。
【0043】
また、封着金属箔の肉薄部は、どのような方法で形成してもよいが、例えばプレス型を用いて封着金属箔の一端部をプレス成形することにより形成することができる。
【0044】
電極は、封着金属箔の薄肉部を除く部位に溶接するようにする。したがって、薄肉部は、電極の溶接に対してフリーになっているし、好ましくは薄肉部と電極との間に僅かな隙間が形成される。
【0045】
そうして、本発明においては、上記の構成を具備していることにより、封着条件の如何にかかわず封着部におけるクラックに起因するリーク不良が顕著に減少することが分かった。リーク不良が減少する理由は詳らかでないが、一端の端面に形成された肉薄部が点灯に伴う温度上昇時に封着金属箔と石英ガラスとの熱膨張率の違いにより発生する応力歪を分散させるのではないかと考えられる。
【0046】
また、自動車前照灯用の高圧放電ランプにおいては、安定時のランプ電流の2倍以上の電流が点灯直後に短時間通流されるために、封着金属箔に大きな負担がかかり、温度上昇が大きくなるので、本発明は効果的である。とりわけ、本発明は、点灯直後に通流される電流が安定点灯時のランプ電流の3倍以上で、しかも4秒間程度の間にわたって通流される水銀フリータイプの高圧放電ランプに効果的である。
【0047】
請求項3の発明の照明装置は、照明装置本体と;照明装置本体に配設された請求項1または2記載の高圧放電ランプと;高圧放電ランプを点灯する点灯回路と;を具備していることを特徴としている。
【0048】
本発明において、「照明装置」とは、高圧放電ランプを光源とする装置の全てを含む広い概念であり、例えば自動車前照灯、照明器具、信号灯、標識灯、光ファイバー照明装置、光化学反応装置などである。なお、「照明装置本体」とは、照明装置から高圧放電ランプおよび点灯回路を除いた残余の全ての部分を意味する。
【0049】
点灯回路は、高圧放電ランプを点灯する手段であり、電子化されたものが好適であるが、要すればコイルおよび鉄心を主体とするものであってもよい。また、自動車前照灯用の点灯回路の場合、高圧放電ランプ、例えばメタルハライドランプの点灯直後4秒までの最高入力電力を安定時のランプ電力の2〜4倍、好適には2.5〜4倍とすることにより、光束立ち上がりを自動車前照灯用として必要な範囲内に入るように早くすることができる。なお、希ガスとしてのキセノンの封入圧を5〜15気圧の範囲でX(気圧)とし、メタルハライドランプの点灯直後4秒までの最高入力電力をAA(W)としたとき、AAが下式を満足するように構成することにより、点灯直後4秒までの光束立ち上がりを早めて自動車用前照灯に必要な前照灯前面の代表点での光度8000cdを得ることができる。
【0050】
AA>−2.5X+102.5
上記のようにキセノン封入圧と最高入力電力とが直線的な関係になるのは、蒸気圧の低い放電媒体のみであるから、始動後4秒後の時点ではキセノンの発光が圧倒的になっているからである。キセノンの発光量は、キセノンの封入圧とその時の電力とで決まるので、キセノン圧が低ければ、入力電力を多くすればよい。反対に、キセノン圧が高ければ、入力電力を少なくすればよい。なお、本発明において、高圧放電ランプの点灯は、交流点灯および直流点灯のいずれであってもよい。
また、点灯回路は、所要により無負荷出力電圧を200V以下に構成することができる。水銀フリーランプは、一般に水銀入りランプに比較して、ランプ電圧が低いので、点灯回路の無負荷出力電圧を200V以下にすることができる。これにより、点灯回路の小形化が可能になる。なおて、水銀入りランプにおいては、400V程度の無負荷出力電圧を必要としている。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0052】
図1ないし図3は、本発明の高圧放電ランプにおける第1の実施の形態としての自動車前照灯用のメタルハライドランプを示し、図1は正面図、図2は底面図、図3は要部拡大背面図である。本実施の形態は、請求項1の発明に対応する。各図において、ITは放電容器すなわち発光管、2、2は一対の封着金属箔、3A、3Bは一対の電流導入導体、OTは外管、Tは絶縁チューブ、Bは口金である。
【0053】
放電容器ITは、気密容器1および一対の電極1b、1bからなる。気密容器1は、中空の紡錘形状に成形された包囲部1a、一対の封止部1a1および封止管1a2を備えている。包囲部1aは、その内部に細長いほぼ円柱状の放電空間1cを有している。一対の封止部1a1は、細長くて包囲部1aの管軸方向の両端からそれぞれ管軸方向に延在している。封止管1a2は、図1において下方の封止部1a1と一体に形成されていて、口金B内へ進入している。
【0054】
一対の電極1b、1bは、それぞれの基端が封止部1a1に埋設された後述する封着金属箔2の一端部にレーザ溶接されるとともに、中間部が封止部1a1に埋設されて緩く支持されることによって所定の位置に配設されて、先端が放電空間1c内へ両端から離間対向して突出している。
【0055】
一対の封着金属箔2、2は、その全体的を図1に示し、また図3に要部を拡大して示すように、それぞれ厚みが約20μmで、一端の端面に凸円弧状部分2aが形成され、かつ、他端の端面が直線的にカットされている。そして、図示していないが、両側縁がシャープにナイフエッジ化されたモリブデン箔からなり、気密容器1の封止部1a1内に気密に埋設されている。
【0056】
一対の電流導入導体3A、3Bは、その先端が気密容器1の両端の封止部1a1内において封着金属箔2の他端部に溶接され、その基端側が封止部1a1の外部へ導出されている。図1において、放電容器ITから上方へ導出された電流導入導体3Aは、その中間部が後述する外管OTに沿って折り返され、さらに後述する口金B内に導入されて、図示しない口金端子の一方に接続している。図1において、放電容器ITからその管軸に沿って下方へ導出された電流導入導体3Bは、管軸に沿って延在して口金B内に導入されて口金端子の他方に接続している。
【0057】
気密容器1a内には、放電媒体として発光金属のハロゲン化物、ランプ電圧形成用金属のハロゲン化物および希ガスが封入されている。発光金属は、ナトリウムNaおよびスカンジウムSc、ランプ電圧形成用金属は、亜鉛Znである。
【0058】
外管OTは、紫外線カット性能を備えており、内部に放電容器ITを収納していて、先端側の縮径部4が放電容器ITの封止部1a1の図1および図2に示す位置にガラス溶着している。また、他方の縮径部(図示しない。)は、封止管1a2にガラス溶着して支持されている。しかし、外管OTの内部は気密ではなく、外気に連通している。
【0059】
絶縁チューブTは、図2に示すように、電流導入導体3Aを被覆している。
【0060】
口金Bは、自動車前照灯用として規格化されているもので、放電容器ITおよび外管OTを中心軸に沿って植立して支持していて、自動車前照灯の背面に着脱可能に装着されるように構成されている。また、口金Bは、その前面から管軸方向に突出して外管OTの基端部を包持する支持バンド4を備えている。
【実施例1】
図1ないし図3に示す第1の実施の形態において、以下のとおりである。
【0061】
放電容器IT
気密容器1a:石英ガラス製、内容積0.025cc、最大内径2.4mm
電極1b :タングステン製、直径0.25mm、電極間距離4.2mm
封着金属2 :幅1.5mm、一端の凸円弧状部分の半径2.5mm
放電媒体
金属ハロゲン化物:ScI3−NaI−ZnI2=0.3mg
キセノンXe:10気圧
外管OT :外径9mm、内径7mm、内部雰囲気;大気圧(大気)
点灯直後投入電力:85W
点灯直後投入電流:2.8A
安定時ランプ電圧:42V
安定時ランプ電流:0.8A
安定時ランプ電力:35W
次に、表1を参照して本発明(第1の実施の形態)において封着金属箔の一端に形成される凸円弧状部分の形状とランプ製造後の封着金属箔の端部に係るクラックの発生との関係について調査した結果を比較例のそれとともに説明する。なお、表1は、第1行が左から「封着条件」、「本発明の封着金属箔の凸円弧状部分の曲率半径r」および「比較例」を示し、第2行が「本発明の封着金属箔の凸円弧状部分の曲率半径r」が左から「1S」、「2S」および「3S」を示し、さらにその右に「比較例」の形状が「直線」であることを示している。そして、第3行が封着条件Aの場合、第4行が封着条件Bの場合、第5行が封着条件Cの場合、のそれぞれクラック発生率(%)を示している。
【0062】
そうして、表1において、発生したクラックの全てが寿命中にリークへと進行するものではないが、寿命中にリークが発生するものの中で封着金属箔のクラックが進行したと思われるものが含まれている。それゆえ、ランプ製造後の封着金属箔の端部に係るクラックをなくさねばならない。なお、表中%記号が付された数値は、クラック発生率を示している。記号Sは、封着金属箔の幅寸法を示す。封着条件は、加熱温度、ピンシール時の押圧力およびピンチ金型の形状の組み合わせがそれぞれA、B、Cと異なっている異を示している。比較例は、封着部の一端の端面が直線状をなしている以外本発明と同一仕様である。
【0063】
【表1】
表1から理解できるように、本発明によれば、従来構造の比較例に比較して、クラック発生率が顕著に低減していることから、クラックに起因するリークが効果的に防止されることが分かる。なお、表1に示していないが、凸円弧状部分の曲率半径rが0.5S以上で、しかも表1における2S以下のときに好ましい結果が得られた。
【0064】
図4は、本発明の高圧放電ランプにおける第2の実施の形態としての自動車前照灯用のメタルハライドランプを示すの拡大要部底面図である。本実施の形態は、請求項2の発明に対応する。
【0065】
すなわち、一対の封着金属箔2のそれぞれにおいて、気密容器1の包囲部1a側の一端に肉薄部2bを形成している。
【実施例2】
本実施例は、図4に示す第2の実施の形態におけるものであり、封着金属箔2が、実施例1における凸円弧状部分2aに代えて、封着金属箔の肉厚20μmの1/3の肉薄部2bが一端に形成されている以外は実施例1と同じである。
【0066】
次に、表2を参照して本発明(第2の実施の形態)において封着金属箔の一端に形成される肉薄部2bの肉厚とランプ製造後の封着金属箔2の端部に係るクラックの発生との関係について調査した結果を比較例のそれとともに説明する。なお、クラックとリークの関係の説明、表中%記号が付された数値がクラック発生率を示していること、および封着条件については、表1において説明したのと同様である。また、記号Tは封着金属箔2の肉厚を示す。比較例は、肉薄部2bがない構造すなわち封着金属箔の全体が肉厚Tである以外本発明と同一仕様である。
【0067】
【表2】
表1から理解できるように、本発明によれば、従来構造の比較例に比較して、クラック発生率が顕著に低減していることから、クラックに起因するリークが効果的に防止されることが分かる。
【0068】
図5および図6は、本発明の照明装置における一実施の形態としての自動車用前照灯装置を示し、図5は装置全体の背面斜視図、図6は点灯回路の回路図である。各図において、自動車用前照灯装置HLは、自動車用前照灯装置本体21、メタルハライドランプHPDLおよび2つの点灯回路OLにより構成されている。
【0069】
自動車用前照灯装置本体21は、前面透過パネル21a、リフレクタ21b、21c、ランプソケット21dおよび取付部21eなどから構成されている。前面レンズ21aは、自動車の外面と合わせた形状をなし、所要の光学的手段たとえばプリズムを備えている。リフレクタ21b、21cは、各メタルハライドランプHPDLごとに配設されていて、それぞれに要求される配光特性を得るように構成されている。ランプソケット21dは、点灯回路OCの出力端に接続し、メタルハライドランプHPDLの口金21dに装着される。取付部21eは、自動車用前照灯装置本体21を自動車の所定の位置に取り付けるための手段である。
【0070】
メタルハライドランプHPDLは、図1に示す構造を備えている。ランプソケット21dは、口金に装着されて接続する。そうして、2灯のメタルハライドランプKPDLが自動車用前照灯装置本体21に装着されて、4灯式の自動車用前照灯装置が構成される。各メタルハライドランプHPDLの発光部は、自動車用前照灯装置本体21のリフレクタ21b、21cの焦点にほぼ位置する。
【0071】
2つの点灯回路OLは、それぞれ後述する回路構成を備えていて、金属製容器22内に収納されているとともに、メタルハライドランプHPDLを付勢して点灯させる。
【0072】
点灯回路OLは、図6に示すように、直流電源11、チョッパ12、制御手段13、ランプ電流検出手段14、ランプ電圧検出手段15、イグナイタ16、メタルハライドランプHPDL、フルブリッジインバータ17により構成されていて、メタルハライドランプHPDLを交流点灯する。
【0073】
直流電源11は、後述するチョッパ12に対して直流電源を供給する手段であって、バッテリーまたは整流化直流電源が用いられる。自動車の場合には、一般的にバッテリーが用いられる。しかし、交流を整流する整流化直流電源であってもよい。必要に応じて電解コンデンサ11aを並列接続して平滑化を行う。
【0074】
チョッパ12は、直流電圧を所要値の直流電圧に変換するDC−DC変換回路であって、後述するフルブリッジインバータ17を介してメタルハライドランプHPDLを所要に制御する。直流電源電圧が低い場合には、昇圧チョッパを用い、反対に高い場合には降圧チョッパを用いる。
【0075】
制御手段13は、チョッパ12を制御する。たとえば、点灯直後にはメタルハライドランプHPDLに定格ランプ電流の3倍以上のランプ電流をチョッパ22からフルブリッジインバータ17を経由して流し、その後時間の経過とともに徐々にランプ電流を絞っていき、やがて定格ランプ電流にするように制御する。また、制御手段13は、ランプ電流とランプ電圧と相当するそれぞれの検出信号が後述するように帰還入力されることにより、定電力制御信号を発生して、チョッパ22を定電力制御する。さらに、制御手段13は、時間的な制御パターンが予め組み込まれたマイコンが内蔵されていて、点灯直後には定格ランプ電流の3倍以上のランプ電流をメタルハライドランプHPDLに流し、時間の経過とともにランプ電流を絞るようにチョッパ12を制御するように構成されている。
【0076】
ランプ電流検出手段14は、フルブリッジインバータ17を介してランプと直列に挿入されていて、ランプ電流に相当する電流を検出して制御手段13に制御入力する。
【0077】
ランプ電圧検出手段15は、同様にフルブリッジインバータ17を介してメタルハライドランプHPDLと並列的に接続されていて、ランプ電圧に相当する電圧を検出して制御手段23に制御入力する。
【0078】
イグナイタ16は、フルブリッジインバータ17とメタルハライドランプHPDLとの間に介在していて、始動時に約20kV程度の始動パルス電圧をメタルハライドランプHPDLに供給できるように構成されている。
【0079】
フルブリッジインバータ17は、4つのMOSFETQ1、Q2、Q3およびQ4からなるブリッジ回路、ブリッジ回路17aのMOSFETQ1およびQ3と、Q2およびQ4とを交互にスイッチングさせるゲートドライブ回路28bおよび極性反転回路INVから構成されていて、チョッパ12からの直流電圧を上記スイッチングにより矩形波の低周波交流電圧に変換して、メタルハライドランプHPDLに印加して、メタルハライドランプHPDLを低周波交流点灯させる。
【0080】
そうして、点灯回路OCを用いてメタルハライドランプHPDLを矩形波の低周波交流で点灯すると、点灯直後から所要の光束を発生する。これにより、自動車用前照灯として必要な電源投入後1秒後に定格に対して光束25%、4秒後に光束80%の点灯を実現することができる。
【0081】
【発明の効果】
請求項1によれば、一対の封着金属箔の少なくとも一方において包囲部側に位置する一端の端面に凸円弧状部分が形成されていることにより、封止部に生じるクラックによる気密容器のリーク不良を防止するとともに、製造条件の設定が容易で、かつ、コストアップが少ない高圧放電ランプを提供することができる。
【0082】
請求項2によれば、一対の封着金属箔の少なくとも一方において包囲部側の一端に肉薄部を有することにより、封止部に生じるクラックによる気密容器のリーク不良を防止するとともに、製造条件の設定が容易で、かつ、コストアップが少ない高圧放電ランプを提供することができる。
【0083】
請求項3によれば、請求項1および2の効果を有する照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高圧放電ランプにおける第1の実施の形態としての自動車前照灯用のメタルハライドランプを示す正面図
【図2】同じく底面図
【図3】同じく拡大要部正面図
【図4】本発明の高圧放電ランプにおける第2の実施の形態としての自動車前照灯用のメタルハライドランプを示すの拡大要部底面図
【図5】本発明の照明装置における一実施の形態としての自動車用前照灯装置を示す装置全体の背面斜視図
【図6】同じく点灯回路の回路図
【符号の説明】
1…気密容器、1a…包囲部、1a1…封止部、1b…電極、2…封着金属箔、2a…凸円弧状部分、IT…放電容器
Claims (3)
- 内容積が0.1cc以下の放電空間が形成された包囲部および包囲部の両端から延在する一対の封止部を備えた耐火性で透光性の気密容器と;
気密容器における一対の封止部の内部に気密に埋設されるとともに、少なくとも一方において包囲部側に位置する一端の端面に凸円弧状部分が形成されている一対の封着金属箔と;
基端が封着金属箔の一端部に溶接されるとともに、先端が気密容器の放電空間に電極間距離5mm以下で臨むように放電空間の両端に離間対向して配設された一対の電極と;
先端が封着金属箔の他端部に溶接されるとともに基端が気密容器の外部へ導出された一対の電流導入導体と;
25℃において1気圧以上のXeを含み、気密容器の放電空間内に封入された放電媒体と;
を具備していることを特徴とする高圧放電ランプ。 - 内容積が0.1cc以下の放電空間が形成された包囲部および包囲部の両端から延在する一対の封止部を備えた耐火性で透光性の気密容器と;
気密容器における一対の封止部の内部に気密に埋設されるとともに、少なくとも一方において包囲部側の一端に肉薄部を有する一対の封着金属箔と;
基端が封着金属箔の一端部に溶接されるとともに、先端が気密容器の放電空間に電極間距離5mm以下で臨むように放電空間の両端に離間対向して配設された一対の電極と;
先端が封着金属箔の他端部に溶接されるとともに基端が気密容器の外部へ導出された一対の電流導入導体と;
気密容器の放電空間内に封入された放電媒体と;
を具備していることを特徴とする高圧放電ランプ。 - 照明装置本体と;
照明装置本体に配設された請求項1または2記載の高圧放電ランプと;
高圧放電ランプを点灯する点灯回路と;
を具備していることを特徴とする照明装置。
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WO2011042830A2 (en) | 2009-10-09 | 2011-04-14 | Koninklijke Philips Electronics N.V. | High efficiency lighting assembly |
-
2003
- 2003-06-27 JP JP2003184680A patent/JP2005019297A/ja not_active Withdrawn
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WO2011042830A2 (en) | 2009-10-09 | 2011-04-14 | Koninklijke Philips Electronics N.V. | High efficiency lighting assembly |
WO2011042830A3 (en) * | 2009-10-09 | 2011-07-21 | Koninklijke Philips Electronics N.V. | High efficiency lighting assembly with an ac-driven metal halide lamp |
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