JP2005016356A - エンジンの始動装置 - Google Patents

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  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)
  • Control Of Vehicle Engines Or Engines For Specific Uses (AREA)
  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)

Abstract

【課題】必要に応じてスタータモータによる始動のアシストを行いながらも、その頻度をより削減してスタータモータの寿命低下を防止し、更に始動の迅速性を可及的に高めることができるエンジンの始動装置を提供する。
【解決手段】運転中に停止させたエンジン1を再始動させるエンジンの始動装置において、エンジン停止中のピストン4の位置が所定の適正範囲内にあるときには、エンジン1の燃焼によって発生するトルクによって始動させ、その範囲外にあるときには始動初期からスタータモータ28を駆動して始動をアシストするとともに、エンジン1の停止期間が短いときには上記適正範囲を拡大する。或いは、始動初期に一旦エンジン1の逆転を行うものについて、エンジン1の停止期間が短く、かつピストン4の停止位置が適正範囲内にあるときには上記逆転を行わず、始動初期から正転方向の回転による始動を行うようにする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジンの始動装置に関し、特にアイドリング時等に自動的にエンジンを一旦停止させ、その後に自動的に再始動させる場合に好適なエンジンの始動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、燃費低減およびCO排出量抑制等のため、アイドル時に自動的にエンジンを一旦停止させ、その後、発進操作等の再始動条件が成立したときに自動的にエンジンを再始動させる、所謂アイドルストップの技術が開発されてきている。
【0003】
アイドルストップにおける再始動は、エンジンを最初に始動させる初期始動の頻度に対して多く、スタータモータによりエンジン出力軸(クランクシャフト)を駆動する従来の一般的な始動の方法では、スタータモータの寿命が短くなり、また寿命の面からスタータモータの信頼性を向上すれば、その分コストが高くなる。従ってこのようなスタータモータによる始動方法は好ましくない。
【0004】
そこで、アイドルストップの再始動に好適な始動装置として、停止状態のエンジンの特定気筒(膨張行程にある気筒。以下膨張行程気筒という)に燃料を供給して着火、燃焼を行わせ、そのエネルギーでエンジンを即時的に始動させるようにしたものが開発されてきている。一般的に、膨張行程気筒に単に燃料を供給して着火、燃焼させてもエンジン始動のための充分なトルクが得られるとは限らない。円滑に再始動を行うためには一定以上の発生トルクの大きさが必要であり、上記始動装置には、これを満足するための技術が求められる。
【0005】
そのような技術として、IG OFF(点火停止)後、排気弁の閉時期を制御してピストンが適正位置(一般的には上死点と下死点の中間付近)にある状態でエンジンを停止させ易くしたもの(例えば特許文献1参照。)が知られている。ピストンを適正位置で停止させると、再始動時に適度な空気量が得られ、一定以上のトクルが発生するので再始動性を高めることができる。
【0006】
このように再始動性を向上させる一方、ピストンが適正位置に停止しなかった場合や、その他の要因で再始動性の低い状態にある場合でも、確実に再始動させるような技術も開発されてきている。例えば、エンジンの始動が不完全であった場合にスタータモータによって始動をアシスト(補助的に駆動力を付与)する始動装置が知られている(例えば特許文献2参照。)。
【0007】
【特許文献1】
WO 01/44636 A2号公報
【特許文献2】
特開2002−004985号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に示された始動装置と上記特許文献2に示された始動装置とを組み合わせることによって、例えばピストンを適正範囲内に停止させる確率を高めつつ、適正範囲内に停止しなかった場合にバックアップとしてスタータモータによる始動アシストを行うような装置が考えられる。
【0009】
このような始動アシストの頻度は、スタータモータの寿命確保のため、出来る限り少なくすることが望ましい。即ち、始動アシストに依らず、エンジンの燃焼によって再始動可能となる頻度を増大させることが望まれている。
【0010】
一方、エンジンの燃焼による再始動の確実性(始動性)を向上させる技術として、停止状態のエンジンの特定気筒(圧縮行程にある気筒。以下圧縮行程気筒という)に燃料を供給して着火、燃焼を行わせ、エンジンを一旦逆転させる技術も研究されている。これはエンジンの逆転によって膨張行程気筒内の空気を一旦圧縮し、そこで燃焼を行わせることにより、より高い正転方向の始動トルクを得るものである。このようにすればエンジンの始動性を高めることができるが、その反面、エンジンを一旦逆転させるための時間ロスを余儀なくされ、始動の迅速性には不利に作用するものであった。
【0011】
本発明は上記の事情に鑑み、必要に応じてスタータモータによる始動のアシストを行いながらも、その頻度をより削減してスタータモータの寿命低下を防止し、更に始動の迅速性を可及的に高めることができるエンジンの始動装置を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1は、運転中のエンジンを停止させ、その後エンジンを再始動させる際、エンジン停止時に実質的に膨張行程にある気筒に対して燃料を供給し、点火、燃焼を行ってエンジンを始動させるエンジンの始動装置において、エンジン停止中のピストン位置が、始動に適した所定の適正範囲内にあるときにはエンジンの燃焼によって発生するトルクによって始動させ、上記適正範囲外にあるときには更に始動初期からスタータモータを駆動して始動をアシストするとともに、エンジンの停止期間が短いときには上記適正範囲を拡大することを特徴とする。
【0013】
この構成によると、エンジン停止中のピストン停止位置が、始動に適した所定の適正範囲内にあるときにはエンジンの燃焼によって発生するトルクによって始動させるので、スタータモータに依らずに始動をさせることができ、上記適正範囲外にあるとき(エンジンの燃焼によって発生するトルクが小さくなる)には更に始動初期からスタータモータを駆動して始動をアシストするので、始動不良を効果的に回避することができる。全体として、始動アシストが必要なときのみスタータモータを作動させるようにすることができるので、スタータモータの使用頻度を減少させ、寿命を延長させることができる。
【0014】
なお、上記実質的に圧縮行程にある気筒とは、密閉された筒内の容積を減じて筒内ガスを圧縮する状態にある気筒を言い、本来の圧縮行程にある気筒以外にも、例えば本来排気行程(ピストンの動作方向は圧縮行程と同じ)にある気筒であるが、電磁弁等を用いて排気弁を閉じたもの等を含む。同様に、後述する実質的に膨張行程にある気筒とは、密閉された筒内のガス体積を膨張させて筒内容積を増大させる状態にある気筒を言い、本来の膨張行程にある気筒以外にも、例えば本来吸気行程(ピストンの動作方向は膨張行程と同じ)にある気筒であるが、電磁弁等を用いて吸気弁を閉じた状態で燃焼させるもの等を含む。以下、特に記す場合を除き、圧縮行程にある気筒(圧縮行程気筒ともいう)や膨張行程にある気筒(膨張行程気筒ともいう)には、上記実質的に圧縮行程(ないし膨張行程)にある気筒を含むものとする。
【0015】
ところで、上記適正範囲は、その範囲内に膨張行程気筒のピストンが停止したときに、燃焼による再始動を行い易い範囲として適宜設定して良いが、一般的には一定以上の筒内空気量と一定以上のピストンストロークとを確保することができるように、上死点と下死点との中間付近に設定するのが好適である。
【0016】
そして、スタータモータによる始動アシストの頻度を減少させるためには、適正範囲を、上記始動アシストを行わなくても良好な始動性が得られる最大の範囲に設定することが理想的である。以下、そのような仮想的な範囲を便宜上理想範囲という。理想範囲は一定ではなく、条件によって変化するものであり、特にエンジンの停止期間に大きく依存する。エンジンの停止期間が短いと、筒内圧の低下が少なく、筒内空気密度が高いので燃焼によって発生するトルクが大きくなる。また、シリンダ壁面の油膜残存量も多く、ピストンの摺動抵抗が小さくなる。このように、エンジンの停止時間が短いと多くの要因が始動性を高める方向に作用するので、ピストン位置が多少上死点寄り、或いは下死点寄りにずれても良好な始動を行うことができる。即ち、上記理想範囲が拡大する。
【0017】
本構成では、エンジンの停止期間が短いときに上記適正範囲を拡大するようにしているので、適正範囲を、停止期間の長短に応じて変化する理想範囲に追従するように設定することが出来る。これにより、スタータモータによる始動アシストを行う機会を可及的に減少させることができ、スタータモータの寿命低下を防止することができる。
【0018】
なお、当エンジンの始動装置は、膨張行程気筒に対して燃料を供給し、点火、燃焼を行ってエンジンを始動させるものであるが、これには膨張行程気筒での燃焼に先立ち、圧縮行程気筒で燃焼を行わせ、エンジンを一旦逆転させる(こうすることで、膨張行程気筒のピストンを一旦逆行させ、筒内容積を減じて筒内圧を高めることができる)ものも含む。
【0019】
上記理想範囲は、エンジンの停止期間が短いほど広くなるので、それに対応するように、エンジンの停止期間が短いほど上記適正範囲の拡大量を増大させる(請求項2)ようにすれば、スタータモータによる始動アシストの範囲をより理想的なものに近づけることができる。
【0020】
或いは、エンジンの停止期間が所定の期間以下であるときには、それより長い場合に対して、上記適正範囲を所定量拡大する(請求項3)ようにすれば、適正範囲の拡大有無をオン・オフ的に切換える簡単な制御によって請求項1の構成を実現することができる。
【0021】
請求項4の発明は、運転中のエンジンを停止させ、その後エンジンを再始動させる際、エンジン停止中のピストン位置が、始動に適した所定の第1適正範囲内にあるときには、エンジン停止時に実質的に圧縮行程にある気筒に対して燃料を供給し、点火、燃焼を行って、どの気筒のピストンも上死点を超えない範囲で一旦逆転方向に回転させ、その後、エンジン停止時に実質的に膨張行程にある気筒に対して燃料を供給し、点火、燃焼を行ってエンジンを正転方向に回転させて始動するエンジンの始動装置において、エンジンの停止期間が短いときには、始動に適した第2適正範囲が設けられ、そのときのエンジン停止中のピストン位置が上記第2適正範囲内にある場合には、上記逆転方向の回転を行わず、始動初期から上記正転方向の回転による始動を行うことを特徴とする。
【0022】
この構成によると、ピストン停止位置が第1適正範囲内にあるときには、圧縮行程気筒での燃焼を行ってエンジンを一旦逆転させ、その後、膨張行程気筒に対して燃焼を行ってエンジンを正転方向に回転させて始動するので、エンジンの逆転によって筒内圧の高められた膨張行程気筒での燃焼トルクが高く、始動性を高めることができる。
【0023】
そして、エンジンの停止期間が短いときには、始動に適した第2適正範囲が設けられ、そのときのエンジン停止中のピストン位置が上記第2適正範囲内にある場合に、上記逆転方向の回転を行わず、始動初期から上記正転方向の回転による始動を行うので、エンジンを一旦逆転させることによる時間ロスをなくすことができ、始動の迅速性を高めることができる。
【0024】
エンジンを一旦逆転してから正転させる理由は、初期から正転させる場合に比べて膨張行程気筒での発生トルクが大きく(逆転によって予め筒内圧を高められているため)、始動性を高められるからである。しかし、エンジンの停止期間が短いときには上記のように始動性が高くなっているので、ピストンの停止位置によっては初期から正転させても充分始動性を確保することができる。第2適正範囲は、そのようなピストンの停止位置の範囲として設定されるものである。
【0025】
第2適正範囲は、第1適正範囲と同様、通常は上死点と下死点の中間付近に設定するのが好適であるが、第1適正範囲と第2適正範囲との間には相互に他方の範囲を規制する直接の関係はなく、それぞれ好適な範囲を独立に設定して良い。例えば、エンジンの特性に応じて、各範囲が一致するもの、一方が他方に包含されるもの、互いに一部重複するもの、或いは互いに重複部分を有さないものなどであっても良い。
【0026】
そして、エンジンの始動性は、その停止期間が短いほど高くなるので、それに応じてエンジンの停止期間が短いほど上記第2適正範囲を増大させるようにすれば、エンジンを初期から正転方向に始動させる頻度が増え、全体として始動の迅速性を一層高めることができる。
【0027】
更に、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のエンジンの始動装置において、運転中のエンジンを停止させる際、その停止動作中の所定期間、スロットル開度を増大させる(請求項6)ようにすれば、エンジン停止時に気筒内に流入する空気量が増大し、その空気が各気筒のピストンを上死点付近で停止し難いように作用する(ピストンが上死点方向に移動すると空気が圧縮されてピストンを押し戻す方向に力が作用する)ので、結局は各気筒のピストンができるだけ上死点から離れた位置、つまり上死点と下死点の中間位置付近でピストンが停止し易くなる。従って、ピストンが上記適正範囲内または第1適正範囲内または第2適正範囲内に停止する確率を高めることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
図1及び図2は本発明の第1実施形態によるエンジンの概略構成を示している。これらの図において、エンジン1の本体はシリンダヘッド2a及びシリンダブロック2で構成される。当実施形態ではエンジン1は4気筒4サイクルエンジンであり、4つの気筒3(詳しくは、図2に示す状態で左から順に1番気筒3A、2番気筒3B、3番気筒3C、4番気筒3D)を有している。各気筒3にはピストン4が嵌挿され、ピストン4の上方に燃焼室5が形成されている。ピストン4はコンロッドを介してクランクシャフト6に連結されている。
【0030】
各気筒3の燃焼室5の頂部には点火プラグ7が装備され、その先端が燃焼室5内に臨んでいる。燃焼室5の側方部には、燃焼室5内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁8が設けられている。この燃料噴射弁8は、図略のニードル弁及びソレノイドを内蔵し、パルス信号が入力されることにより、そのパルス入力時期にパルス幅に対応する時間だけ駆動されて開弁し、その開弁時間に応じた量の燃料を噴射するように構成されている。そして、点火プラグ7付近に向けて燃料を噴射するように燃料噴射弁8の噴射方向が設定されている。なお、この燃料噴射弁8には図外の燃料ポンプにより燃料供給通路等を介して燃料が供給され、かつ、圧縮行程での燃焼室内の圧力よりも高い燃料圧力を与え得るように燃料供給系統が構成されている。
【0031】
また、各気筒3の燃焼室5に対して吸気ポート9及び排気ポート10が開口し、これらのポート9,10に吸気弁11及び排気弁12が装備されている。これら吸気弁11及び排気弁12は、カムシャフト27(シリンダヘッド2aに1対設けられている。図では一方を示す。)等からなる動弁機構により駆動される。そして、後に詳述するように各気筒3が所定の位相差をもって燃焼サイクルを行うように、各気筒の吸・排気弁の開閉タイミングが設定されている。
【0032】
吸気ポート9及び排気ポート10には吸気通路15及び排気通路16が接続されている。吸気通路15は、サージタンク15bの下流に気筒別の分岐吸気通路15aを有し、各分岐吸気通路15aの下流端が各気筒の吸気ポート9に連通するが、その各分岐吸気通路15aの下流端近傍に、各分岐吸気通路15aを同時に絞り調節する多連型のロータリバルブからなるスロットル弁17が配設されている。このスロットル弁17はスロットル弁アクチュエータ18により駆動されるようになっている。
【0033】
上記吸気通路15におけるサージタンク15bの上流の共通吸気通路15cには、吸気量を検出するエアフローセンサ20が設けられている。また、上記クランクシャフト6に対し、その回転角を検出するクランク角センサが設けられており、当実施形態では、後に詳述するように、互いに一定量だけ位相のずれたクランク角信号を出力する2つのクランク角センサ21,22が設けられている。さらにカムシャフト27に対し、その特定回転位置を検出することで気筒識別信号を与えることのできるカム角センサ23が設けられている。
【0034】
クランクシャフト6の一端には、クランクシャフト6と一体回転するスタータリングギヤ41が設けられており、その外周部には多数の歯形が形成されている。一方、このスタータリングギヤ41を回転させてエンジン1を始動させるためのスタータモータ28とピニオン29が設けられている。ピニオン29は、スタータモータ28に対して軸方向の移動可能に設けられ、その外周部にはスタータリングギヤ41と噛合する歯形が形成されている。スタータモータ28は、その駆動によってピニオン29を回転させると共に、ピニオン29がスタータリングギヤ41と噛合する位置まで移動させる。スタータモータ28の駆動を停止すると、ピニオン29の回転を停止すると共に、ピニオン29を非噛合状態となる位置まで移動させる。
【0035】
なお、この他にもエンジン1の制御に必要な検出要素として、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ24、アクセル開度(アクセル操作量)を検出するアクセル開度センサ25、吸気温度を検出する吸気温度センサ26及び大気圧を検出する大気圧センサ45(それぞれ図3参照)等が装備されている。
【0036】
図3は、エンジン1の制御ブロック図であり、ECU(エンジンコントロールユニット)30を中心に、信号を入力するスイッチやセンサと、出力する装置やアクチュエータ等を示す。なお、このブロック図は、本発明の構成に関する部分を中心に記載したものであり、その他の制御に関する部分については省略している。
【0037】
ECU30の入力側には、上記エアフローセンサ20、クランク角センサ21,22、カム角センサ23、水温センサ24、アクセル開度センサ25、吸気温度センサ26及び大気圧センサ45が接続され、各検出信号が入力される。
【0038】
またECU30の出力側には、上記点火プラグ7、燃料噴射弁8、スロットル弁アクチュエータ18及びスタータモータ28が接続され、各装置類への駆動信号を出力する。
【0039】
ECU30は、内部にスロットル弁制御手段31、燃料噴射弁制御手段32、点火制御手段33、アイドルストップ制御手段34及びピストンの適正停止位置範囲演算手段35を含む。
【0040】
スロットル弁制御手段31は、アクセル開度センサ25からのアクセル開度情報や、クランク角センサ21,22からのクランク角速度情報に基づくエンジン回転速度等から、必要なスロットル弁17の開度を演算し、スロットル弁アクチュエータ18を制御する。
【0041】
燃料噴射弁制御手段32及び点火制御手段33は、上記アクセル開度情報やエンジン回転数情報に加え、エアフローセンサ20による吸気量情報や水温センサ24による冷却水温度情報等から、必要な燃料噴射量とその噴射時期及び適正な点火時期を演算し、燃料噴射弁8及び点火プラグ7に制御信号を出力する。
【0042】
また、スロットル弁制御手段31、燃料噴射弁制御手段32、点火制御手段33は、アイドルストップ(以下I/Sとも記す)を行う場合には上記制御に加えて、次に述べるアイドルストップ制御手段34によっても制御される。
【0043】
アイドルストップ制御手段34は、I/S実行条件やI/Sによるエンジン停止後の再始動条件を判定したり、ECU30内の各手段にI/Sを実行するために必要な情報を提供したりする。
【0044】
I/S実行条件としては、例えば車速がゼロ、かつフットブレーキON、かつパーキングブレーキがON、かつエンジン水温が所定値以上、等々の所定の条件が設定される。また、再始動条件としては、アクセル踏み込み量が所定値以上、又はフットブレーキOFF、又はパーキングブレーキOFF、等々の所定の条件が設定される。
【0045】
所定のI/S実行条件が成立すると、エンジンの自動停止が行われる。即ち燃料噴射弁8からの燃料噴射を停止させるとともに、点火プラグ7の点火を停止させる。
【0046】
エンジン停止の際の制御としては、エンジン停止時に圧縮行程となる気筒(説明の都合上、これを3番気筒3Cであると想定し、以下圧縮行程気筒3Cと記す。)及び膨張行程となる気筒(同様に1番気筒3Aであると想定し、以下膨張行程気筒3Aと記す。)においてピストン上死点方向の移動に対する抵抗を大きくすべく少なくともこれらの気筒に対する吸気量を増大させ、特に膨張行程気筒3Aにより多く吸気を供給するように、上記スロットル弁17をエンジン停止動作期間中の所定期間だけ所定の開弁状態とする。
【0047】
こうしてエンジン1が自動停止した後、所定の再始動条件が成立すると、エンジンの再始動がなされる。即ち燃料噴射弁8からの燃料噴射と点火プラグ7の点火を復帰させる。
【0048】
再始動の際の制御としては、先ず圧縮行程気筒3Cに対して初回の燃焼を実行してエンジンを少し逆転させることにより、膨張行程気筒3Aのピストン上昇によって筒内圧力を高めるようにしてから、当該膨張行程気筒3Aで燃焼を行わせるようにする。
【0049】
当実施形態では、上述のように圧縮行程気筒3Cでの初回燃焼、膨張行程気筒3Aでの燃焼を行わせるとともに、初回燃焼後の圧縮行程気筒3Cの筒内に燃焼用空気を残存させて圧縮行程気筒3Cのピストン4が上昇に転じてから上死点付近に達したときに再燃焼を行わせる第1再始動制御モードと、圧縮行程気筒3Cでの初回燃焼及び膨張行程気筒3Aでの燃焼は行わせるが圧縮行程気筒3Cでの再燃焼を行わせない第2再始動制御モードと、圧縮行程気筒3Cでの初回燃焼を行わずにスタータモータ28でアシストしつつ膨張行程気筒3Aでの燃焼及びその次の圧縮行程気筒3Cでの燃焼により始動を行う第3再始動制御モードとを、ピストン4の停止位置に応じて選択的に実行するようになっている。
【0050】
ピストンの適正停止位置範囲演算手段35は、膨張行程気筒3Aのピストン4の適正停止位置範囲を演算する。ピストン4の適正停止位置とは、ピストン4がその位置に停止した場合、スタータモータ28によるアシストがなくても良好な再始動を行い得る位置をいう。
【0051】
図4は、ピストン停止位置に応じた再始動制御モード選択のための範囲の設定を示す説明図である。図4に示す円は、膨張行程気筒3Aの行程を示し、円の上端TDCは膨張行程上死点、円の下端BDCは膨張行程下死点をそれぞれ示す。図4に示すように、適正停止位置の範囲(適正範囲C)が上死点と下死点との中間付近に設定されている。適正範囲Cは、上死点側適正範囲Aと下死点側適正範囲Bとから成る。そして更に、上死点側適正範囲Aは、予め設定された所定の基礎範囲A1と、補正によって増分された補正範囲A2とから成る。同様に、下死点側適正範囲Bは、予め設定された所定の基礎範囲B1と、補正によって増分された補正範囲B2とから成る。補正範囲A2,B2は、エンジンが停止してから短時間経過後(10秒程度以内)に再始動されるような場合など、特に始動性の高い状態のときに拡大される適正範囲である。
【0052】
再び図3を参照して、ピストンの適正停止位置範囲演算手段35は上述のような適正範囲Cと、その内訳を演算する手段であって、停止時間計測手段36、エンジン運転履歴記憶手段37、ピストン摺動抵抗推定手段38及び筒内空気密度推定手段39を含む。
【0053】
停止時間計測手段36は、ECU30内のタイマーによって、エンジンが自動停止してから再始動を開始するまでの停止時間を計測する。エンジン運転履歴記憶手段37は、IG−ONからのエンジンの運転履歴を記憶する。
【0054】
ピストン摺動抵抗推定手段38は、再始動開始時点でのピストン4の摺動抵抗を推定する。図5に、ピストン摺動抵抗推定手段38の推定方法ブロック図を示す。まず、水温センサ24から得られる水温24aと、エンジン運転履歴記憶手段37から得られるエンジン運転履歴37aとによって、エンジンオイルの油温38aを推定する。そして、その油温38aと、停止時間計測手段36から得られるエンジン停止時間36aとによってピストン摺動抵抗38bを推定する。同じ油温であっても、エンジン停止時間36aが長ほど、シリンダ壁面のオイル落下量が大きくなり、摺動抵抗38bが大きくなる。エンジン停止時間36aが短い(数秒程度)と、シリンダ壁面のオイル残存量が多く、ピストン摺動抵抗38bは充分小さくなる。
【0055】
図6は、ピストン摺動抵抗推定手段38で得られたピストン摺動抵抗38bと、それによってピストンの適正停止位置範囲演算手段35が演算する補正範囲A2、B2の関係を示すグラフである。横軸にピストン摺動抵抗、縦軸に補正量を示す。油温38aが充分高く、エンジン停止時間36aが充分短いとき、ピストン摺動抵抗38bはR2以下の小さな値となる。このときに補正範囲A2、B2は最大となる。そしてピストン摺動抵抗38bが増大(油温38aが一定なら、エンジン停止時間36aが長いほど増大する)するに従って補正量も減少し、ピストン摺動抵抗38bがR1以上では、A2=B2=0、つまりA=A1、B=B1となる。
【0056】
なお図6では、補正範囲A2、B2の変化を直線的に示しているが、適宜エンジンの特性に応じた曲線としても良い。
【0057】
また、このように連続的に変化させる特性に替えて、破線で示すように所定の抵抗値R3で、オン・オフ的に補正の有無を切換える(補正範囲A2’、B2’)ようにしても良い。前者はピストン摺動抵抗38bに応じたきめ細かい制御を行うことができ、後者は補正量を求める演算を簡潔に行うことができる。
【0058】
図3に戻って説明を続ける。筒内空気密度推定手段39は、再始動開始時点での筒内空気密度を推定する。図7に、筒内空気密度推定手段39の推定方法ブロック図を示す。まず、停止時間計測手段36から得られるエンジン停止時間36a、水温センサ24から得られる水温24a及び吸気温度センサ26から得られる吸気温度26aによって、筒内温度39aを推定する。そして、その筒内温度39aと、大気圧センサ45から得られる大気圧45aとによって筒内空気密度39bを推定する。同じ水温、吸気温度であっても、エンジン停止時間36aが長いほど、筒内温度39aが低下し、筒内空気密度39bが低下する。エンジン停止時間36aが短い(数秒程度)と、筒内温度39aの低下が小さく、筒内空気密度39bは充分大きく(低下量が小さく)なる。
【0059】
図8は、筒内空気密度推定手段39で得られた筒内空気密度39bと、それによってピストンの適正停止位置範囲演算手段35が演算する補正範囲A2、B2の関係を示すグラフである。横軸に筒内空気密度、縦軸に補正量を示す。筒内温度39aが充分低く、大気圧45aが充分高いとき、筒内空気密度39bは、ρ2以上の大きな値となる。このときに補正範囲A2、B2は最大となる。そして筒内空気密度39bが減少(水温24a、吸気温度26a及び大気圧45aが一定なら、エンジン停止時間36aが長いほど減少する)するに従って補正量も減少し、筒内空気密度39bがρ1以下では、A2=B2=0、つまりA=A1、B=B1となる。
【0060】
なお図8に示す特性も図6と同様、適宜エンジンの特性に応じた曲線としても良く、破線で示すように所定の筒内空気密度ρ3で、オン・オフ的に補正の有無を切換える(補正範囲A2’、B2’)ようにしても良い。
【0061】
ところで、図8では補正範囲B2が補正範囲A1よりも大、即ち適正範囲の拡大量が、上死点側よりも下死点側の方が大となっている。これは以下の理由による。膨張行程気筒3Aのピストン4が比較的大きく下死点寄りに停止したとき、再始動を阻害する要因は、圧縮行程気筒3C(ピストン4が上死点寄りに停止している)での空気量不足である。即ち、上述のように、再始動時にはまず圧縮行程気筒3Cでの燃焼を行ってエンジンを一旦逆転させるが、その燃焼のための空気量が不足するのである。筒内空気密度39bが大であると、その空気量不足が効果的に補える。それに加えて、膨張行程気筒3Aでの空気量が多い(筒内容積と筒内空気密度39b共に大)ので、エンジンを正転方向に回転させるための膨張行程気筒3Aでの燃焼トルクも増大させることができる。
【0062】
一方、膨張行程気筒3Aのピストン4が比較的大きく上死点寄りに停止したとき、再始動を阻害する要因は、膨張行程気筒3Aの空気量不足である。筒内空気密度39bが増大すると、この空気量不足が補われるので効果的である。しかし、このとき圧縮行程気筒3Cのピストン4は下死点寄りとなって空気量が増大しているものの、圧縮行程気筒3Cでの燃焼トルクはエンジンを一旦逆転させる程度で充分であり、必要以上に空気量を増大させてもメリットを受けない。また、詳細は後述するが、膨張行程気筒3Aのピストン4が上死点寄りで停止したときには、エンジンを逆転させるための圧縮行程気筒3Cでの燃焼はリーン空燃比での燃焼を行う。その際、良好な燃焼のためにはリーン限界以上のリーン空燃比とすることができないので、必要以上の燃料噴射を要し、結果として必要以上の逆転トルクを発生させてしまう可能性がある。
【0063】
以上のように、筒内空気密度39bが増大したときのメリットは、膨張行程気筒3Aのピストン4が下死点寄りに停止した場合の方が上死点寄りに停止した場合よりも大きい。従って、補正範囲B2は補正範囲A2よりも大となる。
【0064】
ピストンの適正停止位置範囲演算手段35は、図6及び図8に示す特性を総合的に判定し、最終的な補正範囲A2,B2を決定する。これらは、特にエンジン停止時間36aに大きく依存し、エンジン停止時間36aが短い(数秒程度)と、ピストン摺動抵抗38bが小さく筒内空気密度39bが大きいので、始動時のエンジン駆動トルクを充分高くすることができ、補正範囲A2,B2を大きく拡大することができる。
【0065】
以上のような当実施形態の装置の作用を次に説明する。
【0066】
4気筒4サイクルエンジンであるエンジン1では、各気筒3が所定の位相差をもって吸気、圧縮、膨張、排気の各行程からなるサイクルを行うようになっており、図9に示すように、上記サイクルが1番気筒3A、3番気筒3C、4番気筒3D、2番気筒3Bの順にクランク角で180°(180°CA)づつの位相差をもって行われるようになっている。
【0067】
エンジン1が運転されている状態においてエンジン1の出力を要しない所定のアイドリング状態となった場合には、エンジン停止条件の成否判定に基づき、アイドルストップが実行される。
【0068】
エンジン停止条件が成立するとアイドルストップによるエンジン停止のための一連の制御が行われる。エンジンを停止させるため、まず燃料供給が停止される(燃料カット時点t1)。このときのエンジン回転数はアイドル回転数(当実施形態では約650rpm)である。
【0069】
そして、ピストン4を再始動のための好ましい範囲内(図4の適正範囲C)で停止させるために、燃料カット時点t1で燃料カットするとともに、スロットル弁17を所定開度に開き、その後、エンジン回転数が予め設定された所定回転数N1(当実施形態ではN1=約500rpm)まで低下した時点t2でスロットル弁17を閉じるように制御する。
【0070】
このようにすると、上記時点t1からt2の間、スロットル弁17が所定開度に開かれることにより、多少の時間的遅れをもって一時的に吸気負圧が減少(吸気量が増大)し、その後に吸気圧負圧が増大(吸気量が減少)するが、一時的に吸気負圧が減少する期間が、膨張行程気筒3Aの吸気行程の期間に概ね対応するように予め上記所定回転数等が設定されている。これにより、スロットル弁17が開かれない場合と比べ、エンジン停止前に各気筒3に吸入される空気量が増加し、そのうちでも特に膨張行程気筒3Aに流入する吸気量が多くなる。
【0071】
そして、エンジン停止に至るときには、圧縮行程気筒3Cではピストン4が上死点に近づくにつれて当該気筒3C内の空気が圧縮されてピストン4を押し返す方向に圧力が作用し、これによりエンジン1が逆転して圧縮行程気筒3Cのピストン4が下死点側に押し返されると、膨張行程気筒3Aのピストン4が上死点側に移動し、それに伴い当該気筒3A内の空気が圧縮され、その圧力で膨張行程気筒3Aのピストン4が下死点側に押し返される。このようにしてピストン4がある程度振動してから停止し、この際、圧縮行程及び膨張行程においてそれぞれピストン4が上死点に近いほどこれを押し戻す力が大きいため、ピストン4の停止位置は行程中間部に近い位置となる場合が多い。図4に示す範囲で区分すると、大多数(例えば90%程度)は基礎範囲A1,B1内に、残りの殆どは補正範囲A2,B2内に、そしてごく稀に適正範囲Cから外れた位置に停止する。
【0072】
上記のようにエンジン停止前に吸気量が増加されることにより、上死点に近づいたときにピストン4を押し戻す力が増大するので、ピストン4が適正範囲C内に停止する確率が高くなる。さらに、上記のようなスロットル弁17の制御により膨張行程気筒3Aの吸気量が圧縮行程気筒3Cと比べて多くなるようにすれば、膨張行程気筒3Aにおいてピストン4が行程中間部に近い範囲のうちでも多少下死点寄り(図4の適正範囲B)に停止することが多くなる。
【0073】
なお、燃料カットからエンジン1が完全に停止するまでに慣性でエンジン1が数回転するため、既燃ガスは排出され、膨張行程といえども筒内は殆ど新気となる。また、エンジン1が停止すると圧縮行程気筒3Cでも圧力は時間の経過に伴い低下する。
【0074】
また、スロットル弁17をエンジン停止まで閉弁しないようにしても良いが、そうするとエンジン停止までずっと吸気量が多い状態が続くので、吸気の圧縮によるピストン4の押し下げ力が減衰し難く、ピストン4の振動回数が増加してエンジン停止時に揺れ戻しが大きくなる場合がある。従って、当実施形態に示すように好適な時点t2でスロットル弁17を閉弁するのが望ましい。
【0075】
ピストン4の停止位置は、クランク角センサ21,22からの信号によって以下のように検出される。図10はクランクシャフト6が回転することによって得られるパルス信号であり、クランク角センサ21からの第1クランク角信号CA1と、クランク角センサ22からの第2クランク角信号CA2とを示す。図10(a)は正転時(図1の状態で右回り)のもの、図10(b)は逆転時のものを示す。エンジンの正転時には、図10(a)のように、第1クランク角信号CA1に対して第2クランク角信号CA2が半パルス幅程度の位相遅れをもって生じることにより、第1クランク角信号CA1の立ち上がり時に第2クランク角信号CA2がLow、第1クランク角信号CA1の立ち下がり時に第2クランク角信号CA2がHighとなる。一方、エンジンの逆転時には、図10(b)のように、第1クランク角信号CA1に対して第2クランク角信号CA2が半パルス幅程度の位相の進みをもって生じることにより、エンジンの正転時とは逆に第1クランク角信号CA1の立ち上がり時に第2クランク角信号CA2がHigh、第1クランク角信号CA1の立ち下がり時に第2クランク角信号CA2がLowとなる。ECU30は、この差異を検出して、クランクシャフト6が正転中か逆転中かを判定しつつパルス信号をカウントする。カウントした値はCAカウンタ値として記憶され、エンジン1が作動中は常時更新される。そして、CAカウンタ値の増減がなくなった状態がエンジン1の停止であり、そのときのCAカウンタ値によってピストン4の停止位置が検出される。
【0076】
図11は、CAカウンタ値の積算フローチャートである。スタート後、ステップS51で、第1クランク角信号CA1の立ち上がり時に第2クランク角信号CA2がLowとなっているか、或いは第1クランク角信号CA1の立ち下がり時に第2クランク角信号CA2がHighとなっているかの判定がなされ、YESであればエンジン1は正転していることを示すので、ステップS52に移行して計測したパルス数をCAカウンタ値に加算する(CAカウンタup)。ステップS51でNOであれば、エンジン1が逆転していることを示すので、ステップS53に移行して計測したパルス数をCAカウンタ値から減算する(CAカウンタdown)。
【0077】
図12は、アイドルストップにおけるエンジン停止までのECU30の概略制御フローチャートを示す。スタート後、各種センサ類(図3参照)からの信号を読み取る(ステップS1)。次にその信号に基づき、エンジン停止条件が成立したか否かの判定を行い(ステップS2)、NOであればリターンするが、YESであれば続いてエンジン自動停止のための一連の制御を行う。
【0078】
まず燃料噴射弁8からの燃料供給を停止(燃料カット)する(ステップS7)。続くステップS11でスロットル弁17を開弁し、吸気負圧を減少させる。その後、エンジン回転数が所定回転数N1(500rpm)よりも低くなった時点でスロットル弁17を閉弁する(ステップS13、S15)。次に、常時カウント中のCAカウンタ値(図11参照)を読み取る(ステップS16)。次のステップS17で、CAカウンタ値の変化度合いからエンジン1が完全に停止したか否かの判定がなされ、YESであればCAカウンタ値から決定されるピストン4の停止位置を記憶(ステップS19)する。続いて停止時間計測手段36によるエンジン停止時間の計測を開始(ステップS21)してリターンする。
【0079】
次にエンジンの再始動について説明する。エンジン停止後に再始動条件が成立すると、自動的にエンジン1を再始動する制御が行われる。再始動に当たって、当実施形態では第1再始動モード、第2再始動モード及び第3再始動モードのうち何れかが選択され、その始動モードを経て通常の燃焼制御に移行する。各モードの詳細は後述するが、第1再始動モードでは、圧縮行程気筒3Cで燃焼を行って一旦エンジンを逆転させた後、膨張行程気筒3Aで燃焼を行ってエンジンを正転させる。その後、圧縮行程気筒3Cでの最初の燃焼ガスを排気することなく、残留ガス(未燃空気を含む)に燃料を噴射して再燃焼させる。第2再始動モードは、一旦エンジンを逆転させる点は第1再始動モードと同様であるが、圧縮行程気筒3Cでの再燃焼を行わない。第3再始動モードは、エンジンの逆転を行わず、スタータモータ28による始動アシストがなされる。
【0080】
図13は、その再始動モード選択のためのフローチャートである。エンジンの自動停止中に所定の再始動条件が成立する(ステップS91でYES)と、停止時間計測手段36によるエンジン停止時間の計測を終了する(ステップS93)。そして、ピストン摺動抵抗推定手段38によるピストン摺動抵抗38bの推定(ステップS95)と筒内空気密度推定手段39による筒内空気密度39bの推定(ステップS97)とを行った上で、ピストンの適正停止位置範囲演算手段35によるピストンの適正停止位置範囲の演算(ステップS99)を行う。詳しくは、予め設定されている基礎範囲A1,B1に、ステップS95,S97で求めた各推定値から演算される補正範囲A2,B2を追加して上死点側適正範囲A及び下死点側適正範囲Bを求める。
【0081】
続いてステップS103及びステップS105において膨張行程気筒3Aのピストン停止位置(図12のステップS19で記憶された位置)の判定が行われ、その位置が図4の上死点側適正範囲AにあればステップS107に移行し、第1再始動モードでの再始動を行う。同じく下死点側適正範囲BにあればステップS109に移行し、第2再始動モードでの再始動を行う。そして同じく適正範囲C以外にあればステップS111に移行し、第3再始動モードでの再始動を行う。何れのモードが選択された場合も、その後ステップS113で通常の燃焼制御に移行し、リターンする。
【0082】
図14は第1再始動制御モードの概略フローチャートである。また図15はそれに対応するエンジンの各気筒の行程と始動制御開始時点からの各気筒における燃焼(図中に燃焼の順序に従って▲1▼,▲2▼,▲3▼……で示す)との関係を示すとともに、各燃焼によるエンジンの動作方向を矢印で示す図である。そして図16は、上記第1再始動制御モードによる場合のエンジン回転速度、クランク角、角気筒の筒内圧及び図示トルクの時間的変化を示している。
【0083】
図14のフローチャートにおいて、第1再始動モードによる始動が開始すると、ピストン4の停止位置に基づいて圧縮行程気筒3C及び膨張行程気筒3Aの筒内空気量を算出する(ステップS151)。次にステップS153で、圧縮行程気筒3Cに対して算出した空気量に対し、所定のリーン空燃比(ピストン4の停止位置の関数として予め定められた特性M1のマップから読み取り。)となるように燃料が噴射される。続いてステップS155で膨張行程気筒3Aに対して算出した空気量に対し、所定の空燃比(理論空燃比付近。ピストン4の停止位置の関数として予め定められた特性M2のマップから読み取り。)となるように燃料が噴射される。次にステップS157で、所定の気化時間を考慮した設定時間経過後、圧縮行程気筒3Cにおいて点火がなされ、初回燃焼が行われる(図15中の▲1▼)。但し、点火を行っても着火しない、つまり燃焼が行われない虞があるので、次のステップS159で、クランク角センサ21,22のエッジ(図10に示す波形)が検出されたか否かの判定が行われる。YESであれば、クランクシャフト6が回転を始めた、即ち燃焼が行われたことを示す。NOであれば燃焼が行われなかったことを示すので、ステップS161に移行して再点火を行う。
【0084】
この初回燃焼による燃焼圧(図16中のa部分)で圧縮行程気筒3Cのピストン4が下死点側に押し下げられてエンジン1が逆転方向に駆動され、それに伴い、膨張行程気筒3Aのピストン4が上死点に近づくことにより当該気筒3A内の空気が圧縮されて筒内圧が上昇する(図16中のb部分)。
【0085】
次にフローチャートのステップS163で、所定のディレイ時間(膨張行程気筒3Aのピストン4が上死点に充分に近づくまでの時間。ピストン4の停止位置の関数として予め定められた特性M3のマップから読み取り。)経過後に膨張行程気筒3Aに対する点火が行われて、予め当該気筒3Aに噴射されている燃料が燃焼し(図15中の▲2▼)、その燃焼圧(図16中のc部分)でエンジン1が正転方向に駆動される。次のステップS173で燃料の噴射と点火がなされ、2回目の燃焼(図15中の▲3▼)が行われ、その燃焼圧(図16中のd部分)でエンジン駆動力が高められる。この際の空燃比は、過早着火防止のため、特性M1とピストン4の停止位置の関数として予め定められた特性M8とを合わせて理論空燃比よりリッチに設定され、点火時期はピストン4の停止位置の関数として予め定められた特性M9のマップから読み取る。その後、リターンして通常の燃焼制御に移行する。
【0086】
次に、第2再始動モードによる始動について説明する。第2再始動モードも、第1再始動モードのフローチャートに準じた制御がなされる。但し、ステップS153でなされる圧縮行程気筒3Cへの燃料噴射が、理論空燃比もしくはそれよりややリッチな空燃比となるようになされる点と、ステップS173での2回目の燃焼▲3▼がなされない点とが異なる。
【0087】
上述のように第1再始動制御モードと第2再始動制御モードとがピストン4の停止位置によって使い分けられることにより、エンジン1の再始動が効果的に行われる。この点を図17も参照しつつ説明する。
【0088】
図17はエンジン停止時のピストン位置と圧縮行程気筒3Cの初回燃焼(逆転用)における要求空燃比、圧縮行程気筒3Cの空気量、膨張行程気筒3Aの空気量及び発生頻度との関係を示しており、この図のように、エンジン停止時に膨張行程気筒3Aのピストン4が上死点寄り(圧縮行程気筒3Cのピストン4が下死点寄り)となるほど膨張行程気筒3Aの空気量が少なくて圧縮行程気筒3Cの空気量が多くなり、逆に膨張行程気筒3Aのピストン4が下死点寄り(圧縮行程気筒3Cのピストン4が上死点寄り)となるほど膨張行程気筒3Aの空気量が多くて圧縮行程気筒3Cの空気量が少なくなる。
【0089】
また、圧縮行程気筒3Cでの初回燃焼では、圧縮行程気筒3Cのピストン4が下死点より少し手前(膨張行程気筒3Aのピストン4が上死点より少し手前)となる所定位置までエンジンを逆転させるだけのトルクを生じさせることが要求されるが、圧縮行程気筒3Cのピストン4が上死点寄りにあれば、圧縮行程気筒3C内の空気量が少なく、かつ、上記所定位置までの逆転に要求されるトルクが比較的大きいので、要求空燃比がリッチとなり、一方、圧縮行程気筒3Cのピストン4が下死点寄りにあれば圧縮行程気筒内3Cの空気量が多く、かつ、上記所定位置までの逆転に要求されるトルクが比較的小さいので、要求空燃比がリーンとなる。
【0090】
膨張行程気筒3Aにおいては、ピストン4が下死点寄りにある程空気量が多いため燃料を多く燃焼させることができる。
【0091】
従って、エンジン停止時に膨張行程気筒3Aのピストン位置が下死点側適正範囲Bにある場合、圧縮行程気筒3Cでは初回燃焼時の空燃比が上記要求に適合するようにリッチとされ、初回燃焼後に燃焼用空気が残存しないため圧縮上死点付近での2回目の燃焼は行われないが、膨張行程気筒3Aでは空気量が比較的多くて、それに応じた燃料が噴射された上で、圧縮されてから着火、燃焼が行われるため、比較的大きなトルクが得られ、上記圧縮行程気筒3Cの圧縮上死点を過ぎてさらに次の気筒の圧縮上死点を越えるまでエンジンを回転させることができ、再始動を達成することができる。
【0092】
一方、エンジン停止時に膨張行程気筒3Aのピストン位置が上死点側適正範囲Aにある場合、下死点側適正範囲Bにある場合と比べると、膨張行程気筒内3Aの空気量が少ないため膨張行程での燃焼により得られるトルクが小さくなるが、圧縮行程気筒3Cでは初回燃焼時の空燃比が上記要求に対応してリーンとされ、それにより初回燃焼後も残存する余剰空気が利用されて圧縮上死点付近での2回目の燃焼が行われるため、エンジン正転方向の駆動のためのトルクが補われ、膨張行程気筒3Aでの燃焼と圧縮行程気筒3Cにおける2回目の燃焼の両方により、再始動を達成するに足るトルクが得られる。
【0093】
ところで、当実施形態では、前述のようにエンジン停止の際、燃料供給停止後に所定期間だけスロットル弁17を所定の開弁状態として吸気量を増加させることにより、圧縮行程気筒3C及び膨張行程気筒3Aにおいてピストン4の上死点方向への移動に対する抵抗を大きくし、かつ、膨張行程気筒3Aの吸気量をより多くしているため、図17中にも示すように、エンジン停止時の膨張行程気筒3Aにおけるピストン位置は行程中間部付近の適正範囲C内となることが殆どであり、そのうちでも下死点側適正範囲B内となることが多く、このように停止位置が調整されることで効果的に再始動が行われる。
【0094】
すなわち、ピストン停止位置が上記適正範囲Cよりも膨張行程気筒3Aの上死点側(圧縮行程気筒3Cの下死点側)に近づきすぎた場合には、エンジン逆転方向の移動量を充分にとることができなくなるとともに、膨張行程気筒3Aの空気量が少なくなるので膨張行程気筒3Aでの燃焼により得られるトルクが少なくなり、また、上記適正範囲Cよりも膨張行程気筒3Aの下死点側(圧縮行程気筒3Cの上死点側)に近づきすぎた場合には、圧縮行程気筒3Cの空気量が少なくなるのでエンジン逆転のためのトルクが充分に得られなくなる。これに対し、ピストン停止位置が適正範囲C内にあれば、圧縮行程気筒3Cでの初期燃焼による逆転駆動が可能で、かつ、膨張行程気筒3Aでの燃焼が良好に行われてその燃焼エネルギーを充分にピストンに作用させることができ、特にピストン停止位置が下死点側適正範囲Bにあれば膨張行程気筒3Aの空気量を充分に多く確保でき、膨張行程気筒3Aでの燃焼エネルギーを増大させ、始動性を高めることができる。
【0095】
次に、エンジン停止時のピストン位置が適正範囲Cから外れた場合に選択され、再始動初期から始動アシストがなされる第3再始動モードについて説明する。図18は、第3再始動モード(モーターアシスト)のフローチャートである。スタート後、ステップS200でスタータ解除条件の読み込みを行う。これは、スタータモータで始動アシストをするにあたり、それを解除するエンジン回転数を予め設定された特性値から読み込むものである。その特性を図19に示す。この図に示すように、スタータ駆動解除回転数は、膨張行程気筒3Aのピストン停止位置が下死点(BDC)に近いほど高く、上死点(TDC)に近づくに従って低くなるように設定されている。
【0096】
フローチャートに戻り、次に所定の再始動条件が成立(ステップS201でYES)すると、ステップS202でスタータモータ28の駆動を開始する。次のステップS203でピストン4の停止位置に基づいて圧縮行程気筒3C及び膨張行程気筒3Aの空気量を算出し、ステップS204で圧縮行程気筒3C及び膨張行程気筒3Aの各空燃比が理論空燃比付近となるように燃料を噴射する。そして、ステップS205で、膨張行程気筒3Aの燃料噴射後に燃料の気化時間を考慮して設定された時間が経過してから、当該気筒に対して点火を行う。従って、エンジン1は最初から正転方向に回転を始める。
【0097】
次に、ステップS206で所定クランク角となったとき圧縮行程気筒3Cに対して点火を行って燃焼させる。その後ステップS207で順次他の気筒に対しても燃料噴射と点火を行って燃焼させる。次のステップS208で、エンジン回転数がステップS200で読み込んだスタータ駆動解除回転数を超えたか否かが判定され、YESであれば、ステップS209へ移行し、スタータモータ28の駆動を停止し、リターンする。
【0098】
以上、第1〜第3再始動モードについて説明したが、仮に補正範囲A2,B2を設けず、A=A1,B=B1とした場合、上述のようにエンジン停止時のスロットル弁17の制御によって、圧縮行程気筒3Cのピストン4は、多くの場合(エンジンの特性によっても異なるが、例えば90%程度)基礎範囲A1,B1に停止して、第1又は第2再始動モードが選択される。また、小頻度ではあるが、基礎範囲A1,B1から僅かに外れて停止して、第3再始動モードが選択される場合もある。このときにはスタータモータ28による始動アシストがなされるが、アイドルストップは走行中何度も行うので、たとえ小頻度であっても全体としてスタータモータ28の使用頻度が大きく増大し、寿命低下が避けられない。
【0099】
しかし、当実施形態のように、始動性の高さに応じて補正範囲A2,B2を設ければ、基礎範囲A1,A2から僅かに外れて補正範囲A2,B2内に停止した場合に第1又は第2再始動モードが選択されるので、第3再始動モードが選択される頻度を大きく削減することができる。即ち、全体としてスタータモータ28の作動回数を削減することによって、寿命低下を防止することができる。本願発明者によるテストでは、補正範囲A2,B2は最大約7〜8°CAとすることができ(但しエンジンの特性にもよって異なる)、その場合にピストン4が適正範囲C内に停止する確率はほぼ100%であった。
【0100】
次に、本願発明の第2実施形態について説明する。
【0101】
第2実施形態の装置各部の構成は第1実施形態と同一なので、以下重複する箇所については説明を省略する。第2実施形態は、比較的始動性が低いとき(第1実施形態においてA=A1,B=B1となるようなとき)は全く第1実施形態と同様である。しかし再始動モードとして第4再始動モードを有し、始動性が高い状態のときに、この第4再始動モードによる始動を行う点が異なっている。
【0102】
第4再始動モードは、圧縮行程気筒3Cでの初回燃焼によるエンジンの逆転を行わず、スタータモータ28による始動アシストも行わず(始動不良が発生したときのバックアップを除く)、膨張行程気筒3Aでの燃焼及びその次の圧縮行程気筒3Cでの燃焼により始動を行うモードである。エンジンを一旦逆転させることによる膨張行程気筒3Aでの圧縮を行わないので、第1、第2再始動モードよりも始動性の高い状態であることが要求される。
【0103】
図20は、当実施形態におけるピストン停止位置に応じた再始動制御モード選択のための範囲の設定(始動性の高い状態にあるとき)を示す説明図である。適正範囲C(後述する第2適正範囲Dと区別するため、以下第1適正範囲Cという)は上死点と下死点との中間付近に設定されており、中でも特に中間に近い第2適正範囲Dと、その外側の上死点側適正範囲A及び下死点側適正範囲Bとから成る。第2適正範囲Dは、予め設定された所定の上死点側適正範囲A及び下死点側適正範囲B(これらは第1実施形態の基礎範囲A1,B1に相当する)を背景として、その上に重ねる(A,Bよりも優先される)ようにして、始動性の高さに応じた範囲に設定される。その範囲は、図6や図8に示す特性に準じ、ピストン摺動抵抗38bや筒内空気密度39bに応じて増減するようにしても良く、所定の境界点でオン・オフ的に切換えるようにしても良い。
【0104】
再始動の際には、膨張行程気筒3Aのピストン4の停止位置が上死点側適正範囲Aにあるときには第1再始動モードが、下死点側適正範囲Bにあるときには第2再始動モードが、第1適正範囲Cの外部にあるときには第3再始動モードが、第2適正範囲Dにあるときには第4再始動モードが選択される。
【0105】
図21は、その再始動モード選択のためのフローチャートである。図13に示す第1実施形態のものに準ずるが、ステップS106、S110が追加されている。即ち、ステップS103、S105、S106によってピストン4の停止位置の分類がなされ、第2適正範囲DにあるときにステップS110に移行して、第4再始動モードによる正転始動を行うようになっている。
【0106】
第4再始動モードの制御は、フローチャートの図示を省略するが、図18に示す第3始動モードの制御において、スタータモータ28の駆動を行わないようにすれば良い。第4再始動モードによる始動は、エンジンを一旦逆転させることによる時間ロスをなくすことができるので、始動の迅速性を高めることができる。
【0107】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の装置の具体的構成は上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲内で種々変更可能である。
【0108】
例えば、第1実施形態における第1及び第2再始動モードで、エンジンの特性によって(特に始動性の高いエンジンの場合)エンジンを一旦逆転させることなく、最初から正転させる(第2実施形態における第4始動モードに相当する制御を行う)ようにしても良い。
【0109】
また、上記第2実施形態において、第2適性範囲Dの外側には、必ずしも上死点側適正範囲Aや下死点側適正範囲Bを設ける必要はなく、第2適正範囲Dが最大のとき、上死点側適正範囲A及び下死点側適正範囲Bの全体を包含するような設定としても良い。また、第2適正範囲Dは必ずしも第1適正範囲Cの内部に設定する必要はなく、エンジンの特性に応じて一部または全部が第1適正範囲Cの外部に設定されるようにしても良い。
【0110】
上記第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせたものとしても良い。つまり、エンジンの停止期間が短く、始動性の高い状態にあるときには、上死点側適正範囲Aや下死点側適正範囲Bを拡大しつつ、第2適正範囲Dを設定するようにしても良い。このようにすると、スタータモータ28の寿命確保と始動の迅速性とをそれぞれ独立して得ることができる。
【0111】
上記実施形態において、再始動直後の膨張行程気筒3Aへの燃料噴射は、圧縮行程気筒3Cへの噴射と略同時であっても、それより遅めの設定としても良い。例えば、図14に示すフローチャートで、ステップS155は、ステップS153と同時であっても良く、逆にステップS163の直前であっても良い。ステップS155をステップS153に近づけたものは、膨張行程気筒3Aにおける気化時間を長くすることができるので均一燃焼に適し、ステップS163に近づけたものは点火時に燃料を偏在させ易いので成層燃焼に適する。
【0112】
【発明の効果】
以上のように本発明のエンジンの始動装置によると、運転中のエンジンを停止させ、その後エンジンを再始動させる際、エンジン停止時に実質的に膨張行程にある気筒に対して燃料を供給し、点火、燃焼を行ってエンジンを始動させるエンジンの始動装置において、エンジン停止中のピストン位置が、始動に適した所定の適正範囲内にあるときにはエンジンの燃焼によって発生するトルクによって始動させ、上記適正範囲外にあるときには更に始動初期からスタータモータを駆動して始動をアシストするとともに、エンジンの停止期間が短いときには上記適正範囲を拡大するので、必要に応じてスタータモータによる始動のアシストを行いながらも、その頻度をより削減してスタータモータの寿命低下を防止することができる。
【0113】
また、運転中のエンジンを停止させ、その後エンジンを再始動させる際、エンジン停止中のピストン位置が、始動に適した所定の第1適正範囲内にあるときには、エンジン停止時に実質的に圧縮行程にある気筒に対して燃料を供給し、点火、燃焼を行って、どの気筒のピストンも上死点を超えない範囲で一旦逆転方向に回転させ、その後、エンジン停止時に実質的に膨張行程にある気筒に対して燃料を供給し、点火、燃焼を行ってエンジンを正転方向に回転させて始動するエンジンの始動装置において、エンジンの停止期間が短いときには、始動に適した第2適正範囲が設けられ、そのときのエンジン停止中のピストン位置が上記第2適正範囲内にある場合に、上記逆転方向の回転を行わず、始動初期から上記正転方向の回転による始動を行うので、始動の迅速性を可及的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による始動装置を備えたエンジンの概略断面図である。
【図2】上記エンジンの概略平面図である。
【図3】上記エンジンの概略制御ブロック図である。
【図4】第1実施形態におけるエンジン停止時のピストン位置に応じた再始動制御モード選択のための範囲の設定を示す説明図である。
【図5】上記制御ブロック図のピストン摺動抵抗推定手段における推定方法ブロック図である。
【図6】上記エンジンのピストン摺動抵抗と補正範囲との関係を示すグラフである。
【図7】上記制御ブロック図の筒内空気密度推定手段における推定方法ブロック図である。
【図8】上記エンジンの筒内空気密度と補正範囲との関係を示すグラフである。
【図9】エンジン停止時のエンジン回転数、スロットル開度及び吸気管負圧の変化並びに各気筒のサイクルを示す説明図である。
【図10】2つのクランク角センサからのクランク角信号を示すものであって、(a)はエンジン正転時の信号、(b)はエンジン逆転時の信号である。
【図11】エンジン停止時のピストン位置を検出するための処理を示すフローチャートである。
【図12】エンジン停止時の制御フローを示すフローチャートである。
【図13】第1実施形態のエンジン再始動時の制御フローを示すフローチャートである。
【図14】図13に示すフローチャートにおける、第1再始動モードのサブルーチンを示すフローチャートである。
【図15】エンジン再始動時の各気筒のサイクル及び燃焼動作を示す説明図である。
【図16】エンジン再始動時のエンジン回転数、クランク角、各気筒の筒内圧及び図示トルクの、それぞれの変化を示す説明図である。
【図17】エンジン停止時のピストン位置と圧縮行程気筒の要求空燃比、圧縮行程気筒の空気量、膨張行程気筒の空気量及び発生頻度との関係を示す説明図である。
【図18】図13に示すフローチャートにおける、第3再始動モードのサブルーチンを示すフローチャートである。
【図19】上記エンジンにおいて、始動アシストを行う際の膨張行程気筒のピストン停止位置とスタータ駆動解除回転数との関係を示すグラフである。
【図20】第2実施形態におけるエンジン停止時のピストン位置に応じた再始動制御モード選択のための範囲の設定を示す説明図である。
【図21】第2実施形態のエンジン再始動時の制御フローを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
3 気筒
3A 1番気筒、膨張行程気筒(実質的に膨張行程にある気筒)
3C 3番気筒、圧縮行程気筒(実質的に圧縮行程にある気筒)
4 ピストン
7 点火プラグ
8 燃料噴射弁
17 スロットル弁
18 スロットル弁アクチュエータ
28 スタータモータ
30 ECU
31 スロットル弁制御手段
39 停止時間計測手段
A 上死点側適正範囲
B 下死点側適正範囲
C 適正範囲、第1適正範囲
D 第2適正範囲

Claims (6)

  1. 運転中のエンジンを停止させ、その後エンジンを再始動させる際、エンジン停止時に実質的に膨張行程にある気筒に対して燃料を供給し、点火、燃焼を行ってエンジンを始動させるエンジンの始動装置において、
    エンジン停止中のピストン位置が、始動に適した所定の適正範囲内にあるときにはエンジンの燃焼によって発生するトルクによって始動させ、上記適正範囲外にあるときには更に始動初期からスタータモータを駆動して始動をアシストするとともに、
    エンジンの停止期間が短いときには上記適正範囲を拡大する
    ことを特徴とするエンジンの始動装置。
  2. エンジンの停止期間が短いほど上記適正範囲の拡大量を増大させることを特徴とする請求項1記載のエンジンの始動装置。
  3. エンジンの停止期間が所定の期間以下であるときには、それより長い場合に対して、上記適正範囲を所定量拡大することを特徴とする請求項1記載のエンジンの始動装置。
  4. 運転中のエンジンを停止させ、その後エンジンを再始動させる際、エンジン停止中のピストン位置が、始動に適した所定の第1適正範囲内にあるときには、エンジン停止時に実質的に圧縮行程にある気筒に対して燃料を供給し、点火、燃焼を行って、どの気筒のピストンも上死点を超えない範囲で一旦逆転方向に回転させ、その後、エンジン停止時に実質的に膨張行程にある気筒に対して燃料を供給し、点火、燃焼を行ってエンジンを正転方向に回転させて始動するエンジンの始動装置において、
    エンジンの停止期間が短いときには、始動に適した第2適正範囲が設けられ、そのときのエンジン停止中のピストン位置が上記第2適正範囲内にある場合に、上記逆転方向の回転を行わず、始動初期から上記正転方向の回転による始動を行う
    ことを特徴とするエンジンの始動装置。
  5. エンジンの停止期間が短いほど上記第2適正範囲を増大させることを特徴とする請求項4記載のエンジンの始動装置。
  6. 運転中のエンジンを停止させる際、その停止動作中の所定期間、スロットル開度を増大させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のエンジンの始動装置。
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