JP2005015666A - 硬化性シリコーン樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A) 付加反応性炭素−炭素二重結合を含む多環式炭化水素基を1分子中に2個以上有するシロキサン系化合物、
(B) ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有するシロキサン系化合物、および
(C) ヒドロシリル化反応触媒を含む硬化性シリコーン樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学材料用部材、電子材料用絶縁材またはコーティング用として有用な、多環式炭化水素骨格含有成分を含む硬化性シリコーン樹脂組成物に関する。なお、本明細書において、「多環式炭化水素基」とは、多環式炭化水素骨格を有する炭化水素基を意味し、アルキレン基の一端に多環式炭化水素骨格が結合している基を包含する。また、本明細書において、ケイ素原子に結合した水素原子を「SiH」ということがある。
【0002】
【従来の技術】
従来、光学材料用部材、特に発光ダイオード(LED)素子の封止材料としては、一般的にエポキシ樹脂が用いられている。また、シリコーン樹脂に関しても、LED素子のモールド部材等として用いること(特許文献1、特許文献2参照)、またカラーフィルター材料として用いること(特許文献3参照)が試みられているが、実際上の使用例は少ない。
【0003】
近年、白色LEDが注目される中で、これまで問題とされなかったエポキシ封止材の紫外線等による黄変や、小型化に伴う発熱量の増加によるクラック等の問題が発生しており対応が急務となっている。これらの対応策としては、分子中に多量のフェニル基を持つシリコーンレジン硬化物を用いることが検討されている。しかし、今後のLEDの光源としては、より短い波長の光線を生じるものが使用されるようになる傾向にあり、エポキシ封止材およびフェニル基含有シリコーンレジン封止材は短波長領域での光透過性が悪いため、短波長領域の光線を生じるLEDへの適用は問題があった。
【0004】
また、炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機化合物と、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するケイ素化合物とを必須成分として含む光学材料用組成物も提案されている(特許文献4〜特許文献8参照)。しかし、これらの組成物を加熱硬化させて硬化物を得る際に発泡または硬化収縮を生じたり、硬化物が着色する等の問題点があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−228249号公報
【特許文献2】
特開平10−242513号公報
【特許文献3】
特開2000−123981号公報
【特許文献4】
特開2002−324920号公報
【特許文献5】
特開2002−327114号公報
【特許文献6】
特開2002−327126号公報
【特許文献7】
特開2002−338833号公報
【特許文献8】
特開2002−341101号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術の問題点に鑑み、本発明は、光学材料用部材、電子材料用絶縁材またはコーティング用として有用な、硬度および強度が高く、さらに短波長領域での光透過性に優れた硬化物を与え、かつ硬化収縮のない硬化性シリコーン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
(A) 付加反応性炭素−炭素二重結合を含む多環式炭化水素基を1分子中に2個以上有するシロキサン系化合物、
(B) ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有するシロキサン系化合物、および
(C) ヒドロシリル化反応触媒を含む硬化性シリコーン樹脂組成物を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0010】
[(A) 成分]
本発明の(A)成分である付加反応性炭素−炭素二重結合を含む多環式炭化水素基を1分子中に2個以上有するシロキサン系化合物において、前記「付加反応性」とは、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH)と付加反応し得る性質を意味する。該(A)成分としては、下記一般式(1)で表される環状シロキサン系化合物または下記一般式(2)で表される線状シロキサン系化合物が好ましい。
【0011】
【化1】
(式中、R1は上記多環式炭化水素基であり、R2、R3およびR4は、独立に、非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12、好ましくは1〜6の一価炭化水素基、および炭素原子数1〜6、好ましくは1〜4のアルコキシ基より成る群から選ばれる基であり、nは2〜10、好ましくは3〜5、mは0〜8、好ましくは0〜1、の整数であり、かつn+mの和は3〜10、好ましくは3〜6の整数である。)
【0012】
R2 3SiO−(R1R2SiO)q(R3R4SiO)p−SiR2 3 (2)
(式中、R1、R2、R3およびR4は、上記一般式(1)において定義のとおりであり、qは2〜50、好ましくは3〜30、pは0〜48、好ましくは0〜20の整数であり、かつq+pの和は2〜50、好ましくは3〜10の整数である。)
上記R1の付加反応性炭素−炭素二重結合を含む多環式炭化水素基としては、例えば、下記構造式(i):
【0013】
【化2】
で表される 2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5−イル)エチル基、下記構造式(ii):
【0014】
【化3】
で表される 2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−6−イル)エチル基、下記構造式(iii):
【0015】
【化4】
で表される 5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、下記構造式(iv):
【0016】
【化5】
で表される 5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−イル基、下記構造式(v):
【0017】
【化6】
で表される 6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、下記構造式(vi):
【0018】
【化7】
で表される 6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−イル基等が挙げられる。
【0019】
なお、上記各構造式中、エンドメチレン基からみてエチレン基、ビニル基等の結合部位については、シス配置(エキソ形)またはトランス配置(エンド形)のいずれであってもよい。但し、前記配置の相違によって、前記R1の反応性等に特段の差異がないことから、前記異性体が混然としているものを区別なく用いても差し支えない。また、以下、前記構造式(i)〜(vi)で表される基を区別する必要がない場合は、これらを「NB基」と総称し、また、これらを区別せずに「NB」と略記する場合がある。
【0020】
上記R2〜R4が一価炭化水素基である場合としては、例えば、メチル基、エチル、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、sec−ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−,m−,p−トリル等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基等のアルケニル基;p−ビニル−フェニル基等のアルケニルアリール基;およびこれらの基の1個以上の水素原子が、ハロゲン原子、シアノ基、エポキシ基含有基等で置換された、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基、2−シアノエチル基、3−グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
【0021】
また、上記R2〜R4がアルコキシ基である場合としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
【0022】
上記の中でも、上記R2〜R4としては、アルケニル基およびアルケニルアリール基以外のものであるものが好ましく、特に、その全てがメチル基であるものが、工業的に製造することが容易であり、入手しやすいことから好ましい。
【0023】
上記(A)成分の好適な具体例を、以下に示すが、これに限定されるものではない。なお、以下、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を意味し、「NB」は上記のとおりである。
(NBMeSiO)4
(NBMeSiO)3[Me(MeO)SiO]
(NBMeSiO)2[Me(MeO)SiO]2
(NBMeSiO)3[Me(EtO)SiO]
(NBMeSiO)2[Me(EtO)SiO]2
Me3SiO−(NBMeSiO)4(Me2SiO)4−SiMe3
Me3SiO−(NBMeSiO)10(Me2SiO)10−SiMe3
Me3SiO−(NBMeSiO)20(Me2SiO)20−SiMe3
【0024】
上記例示の化合物は、例えば、SiHを有する環状のシクロメチルハイドロジェンポリシロキサン、または鎖状のメチルハイドロジェンポリシロキサンと、下記構造式(a):
【0025】
【化8】
で表される 5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、下記構造式(b):
【0026】
で表される 6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、または前記両者の組み合わせ(以下、これらを区別せずに「ビニルノルボルネン」という)とを、白金等後記ヒドロシリル化反応触媒の存在下で付加反応させることによって調製することができる。なお、前記ビニルノルボルネンのビニル基は、シス配置であっても、トランス配置であってもよく、また、前記両配置の異性体の組み合わせであっても差し支えない。
【0027】
上記付加反応に際して、上記ビニルノルボルネンが有するビニル基および環内炭素−炭素二重結合のSiHとの付加反応性には特段の差異がないので、実質上、NB基が選択的に付加することはない。また、上記付加反応の結果、未反応のSiHが残存する場合には、後述する(B)成分との付加反応に際して、ゲル化物を生成する原因となるので、水酸化ナトリウムのメチルアルコール溶液等で処理してメトキシル基等に変換しておく必要がある。
【0028】
また、例えば、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンと上記ビニルノルボルネンとの付加反応に際して、上記ビニルノルボルネン中のビニル基および環内炭素−炭素二重結合の双方がSiHと反応して、テトラメチルシクロテトラシロキサン環同士がビニルノルボルネンに由来する環構造により結合されたものを生成する場合であっても、NB基を有しているものであれば、本発明の(A)成分として支障なく使用することができる。下記に、その生成物の例を示す。
【0029】
【化9】
【0030】
【化10】
(式中、nは1〜10の整数である。)
本発明の(A)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0031】
[(B) 成分]
本発明の(B)成分は、上記(A)成分とヒドロシリル化反応により付加し得るSiH基を1分子中に3個以上有するシロキサン化合物である。
該(B)成分としては、下記一般式(3)で表される環状シロキサン系化合物または下記一般式(4)で表される線状シロキサン系化合物が好ましい。
【0032】
【化11】
(式中、R5、R6およびR7は、独立に、水素原子または非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12、好ましくは1〜6の一価炭化水素基であり、nは3〜10、好ましくは3〜8、mは0〜7、好ましくは0〜2、の整数であり、かつn+mの和は3〜10、好ましくは3〜6の整数である。)
【0033】
R5 3SiO−(HR5SiO)q(R6R7SiO)p−SiR5 3 (4)
(式中、R5、R6およびR7は、上記一般式(3)において定義のとおりであり、qは3〜50、好ましくは3〜30、pは0〜47、好ましくは0〜20の整数であり、かつq+pの和は3〜50、好ましくは3〜30の整数である。)
上記R5、R6およびR7が一価炭化水素基である場合としては、上記上記R2〜R4が一価炭化水素基である場合と同様な基が挙げられ、中でも、アルケニル基およびアルケニルアリール基以外のものであるものが好ましく、特に、その全てがメチル基であるものが好ましい。
【0034】
上記(B)成分の好適な具体例を、以下に示すが、これに限定されるものではない。
(HMeSiO)3
(HMeSiO)4
(HMeSiO)3(Me2SiO)
(HMeSiO)4(Me2SiO)
Me3SiO−(HMeSiO)5(Me2SiO)5−SiMe3
Me3SiO−(HMeSiO)20(Me2SiO)20−SiMe3
本発明の(B)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0035】
この(B)成分の配合量は、上記(A)成分中の付加反応性炭素−炭素二重結合1モルに対して、(B)成分中のSiHが、通常、0.5〜2.0モル、好ましくは 0.8〜1.5モルとなる量とするのがよい。前記範囲内の配合量とすることで、コーティング材料等の用途に充分な硬度を有する硬化物を得ることができる。
【0036】
[(C) 成分]
本発明の(C)成分であるヒドロシリル化反応触媒としては、従来から公知のものが全て使用することができる。例えば、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒;パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属系触媒が挙げられる。
【0037】
なお、この(C)成分の配合量は、触媒としての有効量であればよく、特に制限されないが、上記(A)成分と(B)成分との合計重量に対して、白金族金属原子として、通常、1〜500 ppm、特に2〜100 ppm程度配合することが好ましい。前記範囲内の配合量とすることで、硬化反応に要する時間が適度のものとなり、硬化物が着色する等の問題を生じることがない。
【0038】
[(D) 成分]
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物中には、未反応の反応性炭素−炭素二重結合(2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル)エチル基の開環メタセシス反応により生じる炭素−炭素二重結合を含む)が残存している場合があり、大気中の酸素により酸化されて着色を生じる原因となる。本発明組成物に、上記(A)〜(C)成分に加えて、必要に応じ、更に(D)酸化防止剤を配合することにより前記着色を未然に防止することができる。
【0039】
この(D)成分としては、従来から公知の酸化防止剤が全て使用することができる。例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、等が挙げられる。これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0040】
なお、この(D)成分を使用する場合、その配合量は、酸化防止剤としての有効量であればよく、特に制限されないが、上記(A)成分と(B)成分との合計重量に対して、通常、10〜10,000 ppm、特に100〜1,000 ppm程度配合することが好ましい。前記範囲内の配合量とすることによって、酸化防止能力が十分発揮され、着色、白濁、酸化劣化等の発生がなく光学的特性に優れた硬化物が得られる。
【0041】
[その他の配合成分]
本発明組成物には、上記(A)〜(D)成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を配合することは任意である。
例えば、組成物の粘度、硬化物の硬度等を調整するために、ケイ素原子に結合したアルケニル基またはSiHを有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンもしくは網状オルガノポリシロキサン、非反応性の直鎖状もしくは環状ジオルガノポリシロキサン、シルフェニレン系化合物等を配合してもよい。
【0042】
本発明において、(E1)ケイ素原子に結合したアルケニル基を有する種々の構造のオルガノポリシロキサンを配合する場合、その配合量は、前記アルケニル基と上記(A)成分が有する付加反応性炭素−炭素二重結合との合計量1モルに対する、上記(B)成分中のSiHが、通常、0.5〜2.0モル、好ましくは 0.8〜1.5モルとなる量とするのがよい。また、(E2)SiHを有する種々の構造のオルガノポリシロキサンを配合する場合、その配合量は、前記SiHと上記(B)成分が有するSiHとの合計量が、上記(A)成分が有する付加反応性炭素−炭素二重結合1モルに対して、通常、0.5〜2.0モル、好ましくは 0.8〜1.5モルとなる量とするのがよい。
【0043】
また、ポットライフを確保するために、1−エチニルシクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等の付加反応制御剤を配合することができる。更に、透明性に影響を与えない範囲で、強度を向上させるためにヒュームドシリカ等の無機質充填剤を配合してもよいし、必要に応じて、染料、顔料、難燃剤等を配合してもよい。
【0044】
さらに、太陽光線、蛍光灯等の光エネルギーによる光劣化に抵抗性を付与するため光安定剤を用いることも可能である。この光安定剤としては、光酸化劣化で生成するラジカルを補足するヒンダードアミン系安定剤が適しており、(D)酸化防止剤と併用することで、酸化防止効果はより向上する。光安定剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
なお、本発明組成物の硬化条件については、その量により異なり、特に制限されないが、通常、60〜180℃、5〜180分の条件とすることが好ましい。
【0045】
【実施例】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0046】
[合成例](A)成分の調製
攪拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた 500mLの4つ口フラスコに、トルエン 50gおよびビニルノルボルネン(商品名:V0062、東京化成社製;5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと 6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンとの略等モル量の異性体混合物)60g(0.5モル)を加えオイルバスを用いて 65℃に加熱した。これに、白金−ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液(白金金属原子として 0.5重量%)を0.01g添加し、攪拌しながら 1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン 24g(0.1モル)を 35分間かけて滴下した。滴下終了後、更に 70℃で加熱攪拌を24時間行った後、室温まで冷却した。水酸化ナトリウムの5重量%メチルアルコール溶液 10g(メチルアルコール:0.3モル)を添加し、30℃で2時間反応させた後、エチレンクロルヒドリン9gを添加し、更に75℃に昇温させて2時間反応させた。反応液を室温まで冷却した後、活性炭を 0.5g添加し8時間攪拌を行った。得られた反応液をろ過して固形分を除去した後に、減圧下でトルエン等をストリップして、濃縮し、無色透明なオイル状の反応生成物(25℃における粘度:7,000 mm2/s)を得た。
【0047】
反応生成物を、FT−IR、NMR、GPC等により分析した結果、このものは、
(1)シクロテトラシロキサン環を1個有する化合物:(NBMeSiO)4 および (NBMeSiO)3[Me(MeO)SiO] 計約 34モル%、
(2)シクロテトラシロキサン環を2個有する化合物:約 25モル%(下記に推定構造式の一例を示す)
【0048】
【化12】
(3)シクロテトラシロキサン環を3個有する:約15モル%(下記に推定構造式の一例を示す)、および
【0049】
【化13】
(4)シクロテトラシロキサン環を4〜12個有する化合物:残余(下記に推定構造式の一例を示す)
【0050】
【化14】
(式中、nは2〜10の整数である。)
の混合物であることが判明した。また、前記混合物全体としての付加反応性炭素−炭素二重結合の含有割合は、0.45モル/100gであった。
【0051】
[実施例1]
(A) 合成例1で得られた反応生成物:80重量部、
(B) (MeHSiO)4:20重量部(SiH/(A)C=C(モル比)=0.93)
(C) 白金−ビニルシロキサン錯体:白金金属原子として(A)と(B)との合計重量に対して 20 ppm、および
1−エチニルシクロヘキサノール:0.03重量部
を均一に混合して組成物を得た。この組成物を、ガラス板で組んだ型の中に4mm厚になるように流し込み、150℃で2時間加熱して硬化物を得た。
【0052】
[実施例2]
(A) 合成例1で得られた反応生成物:80重量部、
(B) (MeHSiO)4:20重量部(SiH/(A)C=C(モル比)=0.93)
(C) 白金−ビニルシロキサン錯体:白金金属原子として(A)と(B)との合計重量に対して20 ppm
(D) 2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、(商品名:アンテージ W−500、川口化学社製):(A)と(B)との合計重量に対して 500 ppm、および1−エチニルシクロヘキサノール:0.03重量部を均一に混合して組成物を得た。この組成物を、ガラス板で組んだ型の中に4mm厚になるように流し込み、150℃で2時間加熱して硬化物を得た。
【0053】
[実施例3]
(A) 合成例1で得られた反応生成物:50重量部、
(B) (MeHSiO)4:30重量部(SiH/{(A)+(E1)}C=C(モル比)=1.10)
(C) 白金−ビニルシロキサン錯体:白金金属原子として(A)と(B)との合計量に対して20 ppm
(D) 2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、(商品名:アンテージ W−500、川口化学社製):(A)と(B)との合計量に対して 500 ppm
1−エチニルシクロヘキサノール:0.03重量部、および(E1)1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン:20重量部を均一に混合して組成物を得た。この組成物を、ガラス板で組んだ型の中に4mm厚になるように流し込み、150℃で2時間加熱して硬化物を得た。
【0054】
[比較例1]
(A)成分に代えて、(A’)(ViMeSiO)4(前記Viはビニル基である)を 59重量部用いること、および、(B)成分の(MeHSiO)4の使用量 20重量部を 41重量部に変更すること(なお、SiH/(A’)Vi(モル比)=1.0)以外は、実施例1と同様にして組成物および硬化物を得た。
【0055】
[比較例2]
フェニルシリコーンレジン系硬化性組成物(商品名:X−34−1195、信越化学工業社製、フェニル基含有量:約50モル%)を、実施例1と同様にガラス板で組んだ型の中に4mm厚になるように流し込み、150℃で8時間加熱して硬化物を得た。
【0056】
<性能評価手法>
(1)上記各実施例および比較例で得られた硬化物について、下記手法に従い、性能を評価した。
外観
各硬化物の外観を目視により観察した。観察結果を表1に示す。
硬度
ASTM D 2240 に準じて、各硬化物の硬度(Shore D)を測定した。測定結果を表1に示す。
弾性率
4mm厚の各硬化物から、10mm×100mmの試験片を作製し、JIS K−66911 に準じて、3点曲げ試験により、弾性率(MPa)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0057】
(2)収縮率の測定
上記各実施例および比較例1で得られた樹脂組成物(比較例2については、上記フェニルシリコーンレジン系硬化性組成物)を、4mm×10mm×100mmの金型に流し込み、150℃で2時間加熱して硬化させ、冷却した後に硬化物を取り出した。硬化に際する収縮率を下式によって求めた。測定結果を表1に示す。
収縮率(%)=(硬化物の長さ/金型部の長さ)×100
【0058】
(3)光透過率
各硬化物の光透過率を分光光度計を用いて、測定波長:800、600、400nm、および 300nm(紫外線領域)の4点について測定した。測定結果を表2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
[評価]
比較例のものと対比するに、実施例の硬化物は、いずれも、硬度および弾性率に優れ、かつ、硬化収縮が無い。また、特に 300nm(紫外線領域)の短波長における光透過率においても優れていることが分かる。
【0062】
【発明の効果】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、硬度および強度が高く、硬化収縮が無く、短波長領域の光線についても光透過率が高く、透明性に優れた硬化物を与えることができる。従って、発光ダイオード素子の保護、封止もしくは接着、波長変更もしくは調整またはレンズ等の用途に好適に使用できる。また、レンズ材料、光学材料用封止材、ディスプレイ材料等の各種の光学用材料、電子材料用絶縁材、更にはコーティング材料としても有用である。
Claims (6)
- (A) 付加反応性炭素−炭素二重結合を含む多環式炭化水素基を1分子中に2個以上有するシロキサン系化合物、
(B) ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有するシロキサン系化合物、および
(C) ヒドロシリル化反応触媒を含む硬化性シリコーン樹脂組成物。 - 請求項1に係る硬化性シリコーン樹脂組成物であって、前記(A)成分中の前記炭素−炭素二重結合1モルに対して、前記(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量が 0.5〜2.0モルである、組成物。
- 請求項1または2に係る硬化性シリコーン樹脂組成物であって、前記(A)成分が、5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンまたは前記両者の組み合わせと 1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの付加反応物である、組成物。
- 請求項1〜3の何れか1項に係る硬化性シリコーン樹脂組成物であって、前記(B)成分が、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンである、組成物。
- 請求項1〜4の何れか1項に係る硬化性シリコーン樹脂組成物であって、更に、(D) 酸化防止剤を含む、組成物。
- 請求項5に係る硬化性シリコーン樹脂組成物であって、前記(A)成分と前記(B)成分との合計重量に対して、前記(D)成分を 10〜10,000 ppm含む、組成物。
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