JP2005015383A - オレフィンオリゴマーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ヘテロポリ酸を金属酸化物担体に担持した触媒、及び/又はヘテロポリ酸のアルカリ金属塩を含む触媒に、原料オレフィンを接触させることにより、オレフィンオリゴマーを製造するオレフィンオリゴマーの製造方法である。
【選択図】 無し
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定留分のオレフィンオリゴマーの製造方法に関する。特に、ブテン類の3量体及び/又は4量体の収率を選択的に増加させるオレフィンオリゴマーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オレフィンオリゴマーは、ガソリン、ディーゼル等の燃料油、潤滑油、溶剤等として、幅広く使用されている有用な化合物である。
特に、ブテンオリゴマーは、電気的性質、安定性、混溶性、耐水性、さらにはガスや水蒸気の耐透過性等に優れることから、例えば、電気絶縁材料、接着剤、潤滑剤、防水剤、グリース、粘度指数向上剤、シーリングコンパウンド、ワックス、あるいはゴムや樹脂の変性剤等の用途に幅広く用いられている。
【0003】
ブテンオリゴマーは、一般に、ナフサ分解で生成するC4留分からブタジエンを抽出した残りの留分(いわゆるスペントBB留分)、又はブタン−ブテン混合(BB)留分を原料として用い、これらを重合させて得られた平均分子量が150〜2500程度の液状ポリマーである。
【0004】
酸触媒を用いるブテンオリゴマーの製造方法としては、様々な方法が知られている。
例えば、均一系酸触媒プロセスとして、BB留分からなる原料を、無水塩化アルミニウム等のフリーデル・クラフト触媒を懸濁させた液体スラリーに通す方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
また、不均一系固体触媒プロセスとして、乾燥塩素化アルミナからなる固体触媒に接触させる方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、フッ素化アルミナ、アルミナホウ素、シリカアルミナ、固体リン酸、酸化クロム、酸化亜鉛等の固体触媒に接触させる方法等が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
工業的には、スタンダード法プロセスやコスデン法プロセス等が実用化されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭60−124602号公報
【特許文献2】
特開昭57−82325号公報
【特許文献3】
特開昭56−40618号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の均一系触媒では、塩化アルミニウム、三弗化硼素、硫酸等の強ルイス酸触媒が用いられているため、廃触媒処理や製造装置の腐食等の工業的問題を有している。
一方、不均一系固体触媒では、シリカアルミナ、燐酸珪藻土触媒等が用いられているため、実用的な反応条件下では、異性化、分解、生成物の重質化といった副反応の進行による経済性の低下と、それら生成物の触媒活性点への堆積による著しい活性低下が大きな課題である。
【0007】
また、触媒反応によって得られるオリゴマー分布に関して、従来の製造方法においては、いずれの触媒系を用いても、原料組成とブテン転化率が決まれば、各オリゴマーの生成割合はほぼ決まってしまい、ある特定のオリゴマーのみの収率を増加させることができないという問題があった。
例えば、各種溶剤や潤滑油基材等として有用なブテンの3量体及び/又は4量体を製造しようとしても、2量体や5量体等、他のオリゴマー留分も多量に生成していた。そのため、蒸留分離等の後処理工程の負荷が大きくなり、不要なオリゴマー留分が廃棄物となる等、エネルギーコスト、製造コストの面で経済性が高くなかった。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、固体酸触媒の存在下にオレフィン類、特に、ブテン類を重合させてブテンオリゴマーを製造するに際し、特定の留分(3量体及び/又は4量体)のオリゴマー収率を、選択的に増加させることができるオレフィンオリゴマーの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、本発明者らは、オレフィン類を、ヘテロポリ酸又はヘテロポリ酸アルカリ金属塩を含む固体触媒に接触させてオリゴマー化反応させることにより、3量体及び/又は4量体留分へ、選択的に転化できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明によれば、ヘテロポリ酸を金属酸化物担体に担持した触媒、及び/又はヘテロポリ酸のアルカリ金属塩を含む触媒に、原料オレフィンを接触させることにより、オレフィンオリゴマーを製造するオレフィンオリゴマーの製造方法が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明では、原料オレフィンを、ヘテロポリ酸を金属酸化物担体に担持した触媒、及び/又はヘテロポリ酸のアルカリ金属塩を含む触媒に接触させることにより、オレフィンオリゴマーを製造する。
原料オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン類(イソブテン、1−ブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、ジイソブチレン)、ペンテン類、ヘキセン類等を単独で、又は混合して使用することができる。好ましくは、ブテン類、プロピレンであり、特に、ブテン類が好ましい。
【0012】
また、ナフサ分解で生成したC4留分(BB留分)を用いることができ、さらに、BB留分からブタジエンを抽出した残りの留分である、いわゆるスペントBB留分を用いることもできる。
さらに、各オレフィンの2量体留分を、蒸留分離後、反応器にリサイクルして、原料の一部又は全部として再使用することもできる。
【0013】
ヘテロポリ酸としては、例えば、12タングスト(VI)リン酸(H3PW12O40)、12タングスト(VI)ケイ酸(H4SiW12O40)、12モリブド(VI)リン酸(H3PMo12O40)、12モリブド(VI)ケイ酸(H4SiMo12O40)を挙げることができる。
【0014】
好ましくは、12タングスト(VI)リン酸(H3PW12O40)、12タングスト(VI)ケイ酸(H4SiW12O40)である。
これらのヘテロポリ酸は、単独で使用してもよく、また、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
ヘテロポリ酸は、金属酸化物に担持された状態で使用する。
金属酸化物の担体としては、例えば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、シリカアルミナ(SiO2−Al2O3)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)及びゼオライト類を挙げることができる。好ましくは、シリカ(SiO2)である。
【0016】
金属酸化物の担体にヘテロポリ酸を担持させた触媒の調製法について、例えば、シリカ担持ヘテロポリ酸触媒の場合は、ヘテロポリ酸水溶液をシリカ粉末に含浸し、次いで乾燥、焼成することで調製できる。含浸するヘテロポリ酸水溶液の濃度や量、含浸回数によって担持率を変えることができる。
【0017】
金属酸化物にヘテロポリ酸を担持させたときの担持率は、5〜50重量%が好ましく、特に、10〜40重量%とすることが好ましい。担持率が5重量%未満だと酸量が少なく酸強度が弱すぎ、オリゴマー化活性が低下する。また、担持率が50重量%より大きいと酸量が多く酸強度が強すぎ、生成したオリゴマーの分解等の副反応が顕著になるため目的留分の選択率が低下する。
【0018】
ヘテロポリ酸のアルカリ金属塩としては、上述したヘテロポリ酸のアルカリ金属塩が挙げられる。特に、12タングスト(VI)リン酸(H3PW12O40)のアルカリ金属塩が好ましく使用できる。
ヘテロポリ酸と結合するアルカリ金属としては、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)又はセシウム(Cs)が好ましい。
ヘテロポリ酸のアルカリ金属塩は、例えば、リンタングステン酸水溶液(H3PW12O40・nH2O)に、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸ルビジウム(Rb2CO3)又は炭酸セシウム(Cs2CO3)等の炭酸塩を滴下することで得られるコロイド溶液を、乾燥、加熱処理することで調製できる。
ヘテロポリ酸のアルカリ金属塩におけるアルカリ金属の導入量は、KXH3 − XPW12O40、RbXH3−XPW12O40又はCsXH3−XPW12O40で示される構造式中において、X=0〜3の範囲で調整可能である。好ましくは、X=2.0〜2.8の範囲である。
【0019】
上記の原料オレフィンと、ヘテロポリ酸を金属酸化物担体に担持した触媒、及び/又はヘテロポリ酸のアルカリ金属塩を含む触媒を接触させて、オレフィンオリゴマーを製造する。
オリゴマー化の反応形式は、連続流通式でも回分式でもどちらでも良い。反応器は一つでも良いが、二つ以上を直列又は並列に組み合わせて使うこともできる。
反応温度は、原料オレフィンの種類や用いる触媒によって異なるが、通常、50℃〜200℃が好ましい。
また、反応圧力は、通常大気圧〜10MPa、好ましくは、液相を維持できる圧力である1〜6MPaの範囲で選定される。
反応時間(連続流通式の場合は液滞留時間)は、10分〜10時間の範囲で選定される。回分式の場合の触媒濃度は、原料オレフィンに対して通常0.1〜10重量%の範囲で選定される。
反応には、溶媒を使用してもよく、また、無溶媒で行ってもよい。溶媒を用いる場合は、通常、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素が用いられる。
【0020】
本発明のオレフィンオリゴマーの製造方法は、従来の触媒を使用した場合と比べて、オレフィンオリゴマー化の反応活性が高く、選択率も高いため、目的とするオレフィン3量体及び/又は4量体を高収率で得ることができる。
また、固体酸触媒プロセスであるため、均一系酸触媒プロセスで起きるような廃触媒処理や装置腐食等の工業的問題がない。
さらに、副反応の進行による経済性低下が低減できる。
以上より本製造方法は、目的製品(オレフィン3量体及び/又は4量体)を高収率、経済的に得られ、かつ環境負荷の少ない、クリーンでシンプルなプロセスである。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
[触媒]
触媒は、ヘテロポリ酸として、12タングスト(VI)ケイ酸(H4SiW12O40、以下、HSiWと示す。日本無機化学工業株式会社製)水溶液と、金属酸化物担体として、シリカ粉末(Aerosil300、表面積274m2/g)を使用して、インシピエント・ウェットネス含浸法にて以下の方法で調製した。
シリカ粉末(SiO2)に、HSiWの0.0195mol/dm3の水溶液を、室温下、撹拌しながら滴下した。このときの含浸比は、SiO21gに対して、HSiW水溶液を約2cm3とした。この湿った状態の試料を100℃で一晩乾燥させ、次いで、300℃で5時間空気中焼成し、シリカ担持HSiW触媒(担持率、10重量%)を得た。
尚、担持率(重量%)は、触媒の仕込み量における、ヘテロポリ酸(HSiW)の重量を、担体(SiO2)とヘテロポリ酸の合計重量で除した値である。
【0022】
[反応]
内容積15ccのステンレス製反応器に、上記の触媒50mg、溶媒(n−ヘキサン)2cc、原料オレフィンとして、イソブテン(液相、住友精化株式会社製、純度99%以上)3ccを仕込み、攪拌しながら100℃に昇温して、1.5MPaで1時間反応させた。
得られた反応生成液を、ガスクロマトグラフ(FID)を用いて分析した。
結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
転化率(%)=生成オリゴマー全量×100/原料ブテン量
選択率(%)=各オリゴマー成分量×100/生成オリゴマー全量
【0024】
実施例2
実施例1において、担体であるシリカ粉末(SiO2)に、HSiWの0.0195mol/dm3の水溶液を、室温下、撹拌しながら滴下する工程と、湿った状態の試料を100℃で一晩乾燥させる工程を4回繰り返して行い、触媒のHSiWの担持率を、40重量%となるように調製した他は、実施例1と同様にしてオレフィンオリゴマーを製造した。
【0025】
実施例3
実施例1において、ヘテロポリ酸として、12タングスト(VI)リン酸(H3PW12O40、以下、HPWと示す。日本無機化学工業株式会社製)を使用した他は、実施例1と同様にしてオレフィンオリゴマーを製造した。
【0026】
実施例4
実施例2において、ヘテロポリ酸として、HPWを使用した他は、実施例2と同様にしてオレフィンオリゴマーを製造した。
【0027】
実施例5
触媒として、セシウムリンタングステン酸(Cs2.5H0.5PW12O40、以下、CsPWと示す。)を使用した。CsPWは、以下のようにして調製した。
0.05mol/dm3のリンタングステン酸(H3PW12O40、日本無機化学工業株式会社製)水溶液に、0.05mol/dm3の炭酸セシウム(Cs2CO3)水溶液を室温下、撹拌しながら滴下した。得られたコロイド溶液を一晩静置し、次いで、減圧下45℃で脱水した。さらに、減圧下250℃で2時間処理することによって調製した。
このCsPWを、触媒として50mg使用した他は、実施例1と同様にしてオレフィンオリゴマーを製造した。
【0028】
比較例1
触媒として、シリカアルミナ(SiO2−Al2O3、日揮化学N633)を使用した他は、実施例1と同様にしてオレフィンオリゴマーを製造した。
【0029】
実施例6−8
原料オレフィンとして、混合ブテンを使用して、表1に記載の触媒及び反応温度で重合した他は、実施例1と同様にしてオレフィンオリゴマーを製造した。
混合ブテンの組成は、ブテン50%、1−ブテン21%、トランス−2−ブテン12%、シス−2−ブテン8%、イソブタン2%、ノルマルブタン7%であり、ブタジエンとプロピレンをほとんど含有しないBB留分を使用した。
【0030】
比較例2−4
触媒として、担持していないHSiW(比較例2)、担持していないHPW(比較例3)、シリカアルミナ(比較例4)をそれぞれ使用した他は、実施例6と同様にしてオレフィンオリゴマーを製造した。
【0031】
上記の結果から、代表的な固体酸触媒であるシリカアルミナや、通常のヘテロポリ酸触媒と比べ、シリカ担持ヘテロポリ酸及びヘテロポリ酸アルカリ金属塩の方がブテン3量体及び/又は4量体を高収率で得ることができることが確認できた。
【0032】
実施例9、比較例5
原料オレフィンとして、ジイソブチレンを使用して、表2に記載の触媒及び反応温度で重合した他は、実施例1と同様にしてオレフィンオリゴマーを製造した。
ジイソブチレンは、2,4,4−トリメチル−1−ペンテンと2,4,4−トリメチル−2−ペンテンが約4:1の組成比率で、合計95%以上含有する試薬(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
ジイソブチレンを原料としてオリゴマー化反応実験を行なった結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
シリカアルミナ触媒(比較例5)では、実施例9より反応温度が50℃も高いにもかかわらず、未反応原料(C8留分)が多く、ジイソブチレンの2量体(C16留分)が分解して生成したと思われるC12留分が多く生成した。
一方、シリカ担持ヘテロポリ酸触媒(実施例9)では、ブテン3量体(C12留分)とブテン4量体(C16留分)が高収率で得られた。また、C12留分の割合が低く、分解等の副反応の進行が少ない優れた触媒であることが確認できた。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、各種溶剤、潤滑油基材等として有用なオレフィンオリゴマー、特に、3量体及び/又は4量体留分を高収率で得ることができるオレフィンオリゴマーの製造方法を提供することができる。
Claims (9)
- ヘテロポリ酸を金属酸化物担体に担持した触媒、及び/又はヘテロポリ酸のアルカリ金属塩を含む触媒に、原料オレフィンを接触させることにより、オレフィンオリゴマーを製造するオレフィンオリゴマーの製造方法。
- 前記ヘテロポリ酸が、12タングスト(VI)リン酸(H3PW12O40)又は12タングスト(VI)ケイ酸(H4SiW12O40)である請求項1に記載のオレフィンオリゴマーの製造方法。
- 前記金属酸化物担体が、シリカ(SiO2)であり、前記ヘテロポリ酸の担持率が、5〜50重量%である請求項1又は2に記載のオレフィンオリゴマーの製造方法。
- 前記ヘテロポリ酸のアルカリ金属塩が、12タングスト(VI)リン酸(H3PW12O40)のアルカリ金属塩である請求項1に記載のオレフィンオリゴマーの製造方法。
- 前記ヘテロポリ酸のアルカリ金属塩のアルカリ金属が、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)又はセシウム(Cs)である請求項1又は4に記載のオレフィンオリゴマーの製造方法。
- 前記ヘテロポリ酸のアルカリ金属塩の構造式が、KXH3 − XPW12O40、RbXH3−XPW12O40又はCsXH3−XPW12O40(X=2.0〜2.8)である請求項5に記載のオレフィンオリゴマーの製造方法。
- 前記原料オレフィンが、エチレン、プロピレン又はブテン類(イソブテン、1−ブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、ジイソブチレン)を少なくとも1つ含んでいる請求項1〜6のいずれか一項に記載のオレフィンオリゴマーの製造方法。
- 前記原料オレフィンが、ブタン−ブテン(BB)留分である請求項1〜7のいずれか一項に記載のオレフィンオリゴマーの製造方法。
- 前記オレフィンオリゴマーが、前記原料オレフィンの3及び/又は4量体を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載のオレフィンオリゴマーの製造方法。
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