JP2005014537A - 管体連結部封止方法ならびに管路およびガスケット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】樹脂被覆12,22付き管体10,20同士の連結部における管端対向部30又は管体間段差部に、通電発熱体32を閉ループ状で環状配置するとともに、感熱接着性樹脂33も通電発熱体32を覆う状態で環状配置し、それから、管内に導電体の開ループ34を一時配置して通電することで、通電発熱体32を誘導加熱発熱させて、感熱接着性樹脂33を両脇の樹脂被覆に橋架け状に融着させる。そして、この管路は、連結部の樹脂被覆の一体化により管路内外間の隔絶性が強化され、更に連結部の環状溝の消滅・縮小により内容物の滞留阻止や付着阻止および管端部樹脂被覆の損傷防止も図られる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、樹脂被覆付き管体同士を連結して形成された管路と、その連結をシールするためのガスケット及び管体連結部封止方法とに関し、詳しくは、連結部内面の環状溝部分や環状隅部に樹脂被覆を形成する技術に関する。
この明細書で「樹脂被覆付き管体」とは、少なくとも内面が連結部まで含めて樹脂被覆されている管体を意味し、内面の大半が樹脂被覆されていても連結対象の端部が樹脂被覆されていない管体は該当しない。外面における樹脂被覆の有無は問わない。
【0002】
【従来の技術】
各種の化学プラントや発電所などで用いられる薬液等の輸送用配管(管路)に好適なものとして、各種の樹脂ライニング鋼管(樹脂被覆付き管体)が開発されている。その中でも、ポリエチレンライニング鋼管は、耐食性・経済性などに優れているという利点を持つことから、広く用いられている。その場合、配管のための管体同士の連結には、フランジ継手が用いられることが多い。フランジ継手以外のメカニカル継手(たとえばビクトリックジョイント)もよく用いられる。これらの継手やネジ継手などを用いた管体同士の接続手段を、ここでは、両管体の端面と端面とを突き合わせて連結する突合せ接続と、一方の管体の端部を他方の管体の中空に嵌挿して連結する重合せ接続とに大別する。このような接続における管体連結部には多くの場合にシール強化のためガスケットやテープの介挿や添設がなされる。
【0003】
また、そのような管体では、輸送流体(内容物)と鋼管(母材)とが直に接することのないように、少なくとも内面に樹脂被覆が施されている他、その樹脂被覆が連結部まで連続して延展形成されていることが多い。例えば、突合せ接続の典型といえるフランジ継手では、鋼管内面からフランジ面まで連続した樹脂被覆が施されている。そして、フランジボルトの締め付けにより、対向端面における樹脂面と樹脂面とが直に又はガスケットを介在させて圧縮押接されることで、連結部における輸送流体の出入が抑止される。
【0004】
そのような突合せ連結用のフランジ継手と重合せ連結用の特定ジョイント機構とを兼備した管体連結ジョイントが知られている(例えば特許文献1参照)。その適用は、樹脂被覆付き管体の連結に限られる訳ではないが、樹脂被覆付き管体の連結にも可能である。そして、その連結により、管体同士の連結部の内面には、突合せ連結では管内側に臨む環状の管端対向部ができ、重合せ連結では管内側に臨む管体間段差部が環状にできる。また、それらの管端対向部や管体間段差部には、母材の端面の面取りに倣った面輪郭(被覆の裂傷を避けるためのデザイン)やガスケットの存在に起因して、V字状ないしU字状断面の環状溝が発現する。そして、シール機能が働くのは管内側から見て上記環状溝よりも奥方であるため、この環状溝には輸送流体が自由に出入できる。
【0005】
なお、樹脂被覆付き管体用ではなく樹脂パイプ連結用のプラスチック継手であるが、ヒーター線を絶縁性耐熱繊維で被覆して埋め込んだものも知られている(例えば特許文献2参照)。ヒーター線の端が露出しているので、そこから直接通電すると、継手の内周部と嵌挿管体の外周部とが融着して、連結が行われる。この場合も、連結部における管内側に臨む環状の管端対向部や管内側に臨む管体間段差部に隙間や環状溝が発現し、その外周側でシールがなされる。
【0006】
ところで、管端同士を溶接にて連結する場合には、内面の大半が樹脂被覆されているが連結部およびその近傍となる端部では母材が露出している管体が用いられ、管端溶接部の内周面に露出している母材の表面を精整後に樹脂被覆を形成するライニング手法も知られている(例えば特許文献3参照)。この場合、溶接後の管体内面樹脂被覆は、管体の外側に加熱装置をセットするとともに、管体の内側にライニング装置をセットしておき、加熱してから或いは加熱しながら樹脂の吹き付けが行われる。このように溶接してから樹脂被覆することにより、シールが内周部までしっかり行われるうえ、連結部における内面環状部(すなわち管内側に臨む環状の管端対向部や管内側に臨む管体間段差部)に目立った環状溝が発現することもなくなる。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−274564号公報 (第1−2頁)
【特許文献2】
実開平3−91595号公報 (第1頁)
【特許文献3】
特開昭60−110368号公報 (第1頁、第2図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
もっとも、このような溶接による管路連結には、母材および施工環境が溶接可能なものに限られることや、熟練した溶接技能者を確保する必要があること、溶接設備ばかりかライニング装置も要ること、現場状況が外部加熱と内部吹付を同時に行えるようなものであること、といった制約がある。
また、総樹脂の管体には、強度や価格等の観点からの制約があるうえ、連結部の内面における環状溝の発現もやはりある。
【0009】
このため、管路の構成には各種の連結手法が使い分けられており、樹脂被覆付き管体同士の突合せ連結や重合せ連結も広く用いられている。
しかしながら、この連結部における管内側に臨む環状の管端対向部や管内側に臨む管体間段差部には、上述したように環状溝が発現する。しかも、その環状溝の底・奥部においても、樹脂被覆が被連結管体相互間では一体化されておらず、微視的とは云え被連結管体相互間の分け目が存在するので、連結に伴う押接力が無くなって、或いはそれに勝る開力が働いて、隙間が生じることが皆無とは云えない。
【0010】
そして、このような環状溝や分け目が連結部にあると、幾つかの不都合がある。具体例を挙げると、例えば高圧配管に適用するには注意が必要になる。すなわち、通常は約1MPa以下の圧力で用いられ、そのような圧力であれば安心して長期間に亘り流体輸送等に使えるが、3MPa程度の高圧になると、連結部に隙間ができて流体が外に漏れるといったことが無いように、高圧用フランジを採用したり、ガスケットを特殊なものにしたり、さらには締め付け力などの施工条件も厳しくする、といった工夫が要る。逆に、例えば海底配管や埋設配管などの場合は、高純度な輸送液体に対して外部から海水等が進入してきたり汚染土壌から汚染物質が混入してきたりといったことが無いよう、的確に連結しなければならない。
【0011】
あるいは、例えば化学プラント等の場合、特に、人が行き交うようなところの頭上に位置した配管の場合、内容物の漏れは絶対にあってはならない。また、配管敷設後は人が入れないような場合も、メンテナンスは大ごとであるので、漏れがあってはならない。そのようなところへの適用には、フェールセーフが切望される。
また、フランジ連結では、事故を危惧するあまりフランジの締め付けボルトを締めすぎると、樹脂ライニングの場合には、その荷重がダイレクトにフランジの樹脂被覆にかかってしまう。ガスケットを用いていればそれで吸収される部分もあるが、いずれにしても、締め付け過ぎれば、樹脂の変形量が大きくなることは避けられない。そして、過剰な締付により、樹脂は、不所望な永久変形を起こしてしまう。連結部が一体化していれば、強く締め付けなければ心配だという不安がなくなり、過剰に締め付けて樹脂被覆を壊してしまうこともなくなるのであるが、一体化していない構造のままでは過剰締付を誘発しやすい。
【0012】
また、例えば、固形物混じりのスラリーを輸送するような場合、管路に環状溝があると、溝肩部にスラリー内の固形物が衝突しやすく、衝突が多いと樹脂被覆の摩耗が速く進んでしまう。
【0013】
また、例えば、管路が飲食物の輸送に用いられるような場合、管路に環状溝があると、そこ輸送物が溜まりやすく、食用や飲用にされる物が長期間滞ると、そこに不所望な残渣や腐敗が生じかねないので、その防止のため、加熱殺菌や、管内清掃の他、場合によっては分解掃除なども、頻繁に行わなければならない。
また、例えば、海水配管の場合、配管内面に環状溝があると、そこに海生物が付着することが多い。ポリエチレンは無極性樹脂であることから、海水流の中でポリエチレンに海生物が付着することはほとんど無いのだが、流体の乱れなどから、フランジ連結部には海生物の付着が見られる。
【0014】
そこで、これらの不都合を解消すべく、樹脂被覆付き管体同士の突合せ接続や重合せ接続にて構成された管路について、連結部の樹脂被覆を一体化して管路内外間の隔絶性を強化し、更には連結部の環状溝を無くして又は少なくして樹脂被覆の損耗を防止すると共に内容物の滞留・付着を阻止するよう、連結部における管内側に臨む環状の管端対向部や管内側に臨む管体間段差部の改良手法を案出することが技術的な課題となる。
しかしながら、管路内というアクセスそのものが不如意な手狭空間内の極く局部に加熱を要する樹脂被覆施工を適用するのは、既存樹脂被覆の加熱劣化・損傷を云う依然に、施工そのものが従来の樹脂被覆手段では不可能に近い。
【0015】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、管体連結部に存在する管端部樹脂被覆に挟まれた分け目を、前記環状溝を埋めるなどの形態で封止した管路を実現することを目的とする。
また、本発明は、そのような管路を作るための管体連結部封止方法を実現することも目的とする。
さらに、本発明は、そのような管体連結部封止方法に好適なガスケットを実現することをも目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、この発明の請求項1記載の管体連結部封止方法にあっては、被連結管体として供された樹脂被覆付き管体同士の突合せ連結部の管内側に臨む環状の管端対向部に、又は樹脂被覆付き管体同士の重合せ連結部の管内側に臨む管体間段差部に、感熱接着性樹脂と閉ループ状の又は開ループ状の通電発熱体とを前記感熱接着性樹脂が管内側に臨むように組み合わせた複合環状体を配置してから、前記通電発熱体に電磁誘導又は直接通電により通電して前記複合環状体を加熱し、この複合環状体の感熱接着性樹脂部を両被連結管体の樹脂被覆に両者の間を取り持つ形で熱接着させて、両者間の分け目を樹脂のみが管内側に臨む形で封止する。
ここで、通電発熱体への通電は、閉ループ状の場合には電磁誘導によって行われ、開ループ状の場合には直接通電によって行われる。なお、電磁誘導による際の通電周波数としては、本発明の場合、10kHz〜200kHzの範囲、更に望ましくは20kHz〜50kHzの範囲が、電磁誘導能率の点から好適である。
【0017】
また、このような管体連結部封止方法の実行により、請求項2記載の管路が出来上がる。すなわち、この発明の請求項2記載の管路は、樹脂被覆付き管体同士の突合せ連結にて又は樹脂被覆付き管体同士の重合せ連結にて形成された管路において、連結部の管内側に臨む環状の管端対向部が又は連結部の管内側に臨む管体間段差部が、ループ状の通電発熱体と複合された感熱接着性樹脂により、前記通電発熱体が管内側から遮断された形で、封止されている、というものである。
さらに、そのような管体連結部封止方法の実行に好適なものの一つである請求項3記載のガスケットは、内周縁に感熱接着性樹脂が配され、その外周側に閉ループ状の通電発熱体が配置されている、というものである。
このガスケットを用いて行われる本発明の請求項6の管端連結部封止方法は、上記ガスケットを挟んで管端を突合わせ連結してから前記通電体を誘導加熱するというものである。
【0018】
このような管体連結部封止方法を実行すると、環状配置された感熱接着性樹脂が、配置後の加熱によって熱融して又は熱変性して、連結部の内面環状部(すなわち連結部の管内側に臨む管端対向部または管体間段差部)の樹脂被覆と接着(熱接着)する。これにより、連結部に存在する管端部樹脂被覆に挟まれて存在する分け目が、前記環状溝をなだらかに埋めるなどの形態で封じられて消滅し、前記課題が解決される。しかも、この場合、通電発熱体を通電により発熱させることで、容易に、感熱接着性樹脂の加熱が行える。そして、連結部の内面環状部の樹脂被覆が起伏の少ないなだらかな一体的なものとなる。
したがって、この発明によれば、管体連結部に存在する管端部樹脂被覆に挟まれた分け目を前記環状溝を埋めるなどの形態で封止した管路を容易に作ることができる。
【0019】
この発明の請求項4記載のガスケットは、内周縁に感熱接着性樹脂が配されて熱融部を構成し、その外周側に閉ループ状の通電発熱体が配置されておりこの通電発熱体に沿って通電端付きの開ループ状の導電体が配されこの通電端が外部へ引き出されている、というものである。
また、この発明の請求項5記載のガスケットは、内周縁に感熱接着性樹脂が配され、その外周側に通電端付きの開ループ状の通電発熱体が配され、この通電発熱体は一周分を満たす長さを有し且つ通電端の一方と他方とが短絡せずに擦れ違ってから外部に引き出されている、というものである。
また、上記ガスケットを用いて行われる本発明の請求項7記載の管体連結部封止方法は、上記ガスケットを挟んで管体同士を突合せ連結してから前記通電端に通電する、というものである。
【0020】
請求項4のガスケットによる場合には、導電体の通電端が管外に出ているので、そこから導電体に高周波通電すると、その内周側に位置する通電発熱体に誘導電流が流れ、その発熱によって感熱接着性樹脂が加熱される。請求項5のガスケットによる場合には、通電発熱体の通電端が管外に出ているので、そこから直接通電すると、通電発熱体が発熱し、その熱で感熱接着性樹脂が加熱される。この通電は自己発熱のためなので、商用交流や自家発電機あるいは二次電池や一次電池などによる非高周波通電(インバータなどの高周波電源装置によらない通電)で事足りる。そして、この場合も、連結部の内面環状部の樹脂被覆が起伏の少ないなだらかな一体的なものとなる。
これにより、管内からの誘導加熱が困難なときなどに、通電加熱によって加熱を容易に行えることとなる。
したがって、この発明によれば、管体連結部に存在する管端部樹脂被覆に挟まれた分け目を前記環状溝を埋めるなどの形態で封止した管路を容易に作ることができる。
【0021】
この発明の請求項8記載の管体連結部封止方法は、請求項1に記載の管体連結部封止方法であって、前記感熱接着性樹脂が熱可塑性樹脂であってチューブ状に賦形されておりその中に全長に亘って前記通電発熱体と感熱発泡剤配合樹脂とが納められている通電融着性資材を前記複合環状体として用い、これによって前記通電発熱体の環状配置と前記感熱接着性樹脂の環状配置とを行う、というものである。
また、本発明の請求項9記載のガスケットは、請求項3乃至請求項5に記載のガスケットであって、前記感熱接着性樹脂が熱可塑性樹脂であり、感熱発泡剤配合樹脂が前記通電発熱体と共に環状に配置されている、というものである。
さらに、本発明の請求項10記載の管路は、請求項2に記載の管路であって、前記感熱接着性樹脂が熱可塑性樹脂であり、感熱発泡剤配合樹脂が前記通電発熱体と共に環状に配置されている、というものである。
【0022】
この場合、感熱接着性樹脂の配置とその通電加熱のための追加物の配置が一緒に纏めて行われる。また、加熱によって感熱発泡剤配合樹脂が膨らむので、感熱接着性樹脂が樹脂被覆に押しつけられて、感熱接着性樹脂と樹脂被覆との熱接着(融着等)が確実に行われる。
これにより、施工作業の容易化が図れるばかりか融着の確実性も高められる。したがって、この発明によれば、管体連結部に存在する管端部樹脂被覆に挟まれた分け目を前記環状溝を埋めるなどの形態で封止した管路を容易かつ確実に作ることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1に示した本発明の一実施形態は、管体連結部封止方法と管路に関する。図1(a)は、フランジ管継手による突合せ連結部の縦断面図であり、同図(b)は、ビクトリック形管継手による突合せ連結部の縦断面図である。同図(c)〜(h)は、何れもA部分の要部拡大図であり、継手等は省略されている。なお、(c)はガスケットの有る例、(d)〜(h)はガスケットの無い例である。
【0024】
突合せ連結では、フランジ管継手の場合も(図1(a)参照)、ビクトリック形管継手の場合も(図1(b)参照)、連結される両管体10,20の径が等しく、管体10,20の端面同士が直に接して又は近接して対向させられた状態で、両管体10,20の端部がボルト等の適宜な付属具にて連結されるので、その内面には、環状の対向部が現出する。この管内側に臨む環状の管端対向部30には、端面間に介在するガスケット31が露見することもあれば(図1(c)参照)露見しないこともあるが(図1(d)参照)、いずれにしても、環状溝や凹凸が現出する。
【0025】
管体10,20同士の連結方式についてはJIS規格等でも規定されているので更なる説明は割愛し、管体10,20を説明する。管体10,20は、何れも、樹脂被覆付き管体であり、内面が連結部まで含めて樹脂被覆されている。具体的には、管体10は、母材11の内面および端面に樹脂被覆12を施したものであり、同様に、管体20は、母材21の内面および端面に樹脂被覆22を施したものである。母材11,21は、鋼管や,ステンレス鋼管,ダクタイル鋳鉄管などの鉄鋼系管材が典型的であるが、銅系など非鉄金属製の管材でも良く、更にはアルミナなどセラミック製の管材であっても良い。鋼管の場合、管径は、外径21.7mm〜外径812.8mmが一般的であるが、それより細い場合も太い場合もある。肉厚も、2.8mm〜7.9mmが一般的であるが、それより薄い場合も厚い場合もある。
【0026】
樹脂被覆12,22を形成している材料は、ポリエチレン(PE)が典型的であるが、その他の熱可塑性樹脂、更には反応硬化性樹脂であっても良く、例えばポリプロピレン(PP)や他のポリオレフィン,ポリアミド(PA),ポリ塩化ビニル(PVC),エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA),エチレンアクリル共重合体(EEA,EAAなど),フッ素樹脂(FEP,PFA,PVDF,ETFEなど),ポリエステル,ポリウレタン,エポキシ樹脂,フェノール樹脂なども用いられる。単一で用いても2種以上複合させて用いても良い。これらの樹脂には、多くの場合、耐候性向上等のため、カーボンブラックや,酸化チタン等の顔料が配合されている。ポリエチレンの場合、通常は融点120℃〜130℃のものが使用されている。樹脂被覆12,22の厚さは、ポリエチレンの場合、大抵、1mm〜3mmである。
【0027】
樹脂被覆の形成には、加熱した母材に樹脂粉体を吹き付けたり、樹脂シートを母材に貼って加熱したり、幾つかの手法が知られているが、樹脂ライニング用管体の管端の角部は通常3mmR以上の丸みをつけるものとされており、この丸みに起因して管端対向部30に環状溝が現出する。
このような管体10,20同士の突き合わせ連結は公知の手法で遂行されるので、それは済んでいるものとして、以後の追加工程を詳述する。
追加工程は、突合せ連結部における管内側に臨む環状の管端対向部30の環状溝部分に対してその環状溝を埋めるように樹脂被覆を重ねて形成する、というものである。
この例では、管端対向部30にガスケット31が無く、又、閉ループ状の通電発熱体32による場合を具体例にして詳述する(図1(d)〜(h)参照)。
【0028】
この場合、通電発熱体32と感熱接着性樹脂33とを用いるが、これらは別体になっているものを、管端対向部30に対し、先に通電発熱体32を環状配置し、次いで感熱接着性樹脂33を環状配置してその場で複合環状体としてもよく(人の入れる大径管の場合)、予め複合化された紐状体をリング状に閉じた上で配置するようにしてもよい(管径を問わない)。ここでは、前者の形態について説明する。こうして配置した複合環状体の通電発熱体32を通電により発熱させて感熱接着性樹脂33を加熱する。
感熱接着性樹脂33は、樹脂被覆12,22と同じ樹脂か熱接着性能(融着性能等)を強化した変性体が好ましいが、材質の異なるものや、混合材であっても、十分な熱接着性能と耐環境性能とを具備したものであれば良い。
通電発熱体32は、例えば細いニクロム線,ステンレス線,鉄線,ニッケル線などの金属細線,カーボンファイバーやシリコンカーバイドファイバーなどの導電性セラミックス繊維などからなり、それをワイヤー状に形成したものである。導電性樹脂線を用いても良い。
【0029】
通電発熱体32の環状配置は(図1(e)参照)、ワイヤー状の通電発熱体32を環状溝の最奥部へ押し込むようにして、管内側に臨む環状の管端対向部30に通電発熱体32を一巡させ、端部同士をろう接などの手段によって相互導通状態に閉じる。こうして、管端対向部30に通電発熱体32が閉ループ状で環状配置される。なお、通電発熱体32に要求される適切な剛性と可撓性とが、管径や環状溝等の使用状況に応じて異なるので、通電発熱体32には、単線のものや,複数本を束ねたもの,複数本を撚り合わせたり編んだりしたもの等から、適宜なものが選択されて使用される。更には、通電発熱体の素線あるいはワイヤーを複数巻きし、要部のろう接などにより端部や隣接線間の導通を確保して1つの閉ループ電路を構成した環状体を配置するようにしてもよい。
【0030】
感熱接着性樹脂33の環状配置は(図1(f)参照)、紐状に予め形成されている感熱接着性樹脂33を通電発熱体32の上に重ねるようにして配置し、あるいは高粘度の塗料状に調製された感熱接着性樹脂33の原体を通電発熱体32やその周りの樹脂被覆12,22へ塗工して、一巡施工する。
通電発熱体32利用の感熱接着性樹脂33の加熱は(図1(g)参照)、通電発熱体32の直ぐ内側に感熱接着性樹脂33には接触しない態様で環状の導電体34を一時配置し、導電体34に高周波通電することで、行う。
【0031】
導電体34に高周波通電すると、その内周側に位置する通電発熱体32に誘導電流が流れて、通電発熱体32が発熱し(即ち、誘導加熱され)、その熱が感熱接着性樹脂33とその辺りの樹脂被覆12,22に伝わって、感熱接着性樹脂33とその周囲の樹脂とが融着または接着する。
こうして(図1(h)参照)、管体10,20同士を突合せ連結した管路の連結部の管端対向部30は、その樹脂被覆12,22が、これらの間を取り持つ感熱接着性樹脂33による橋架け接続により一体化され連続体となって前記分け目が封止される。そして、そこには、この橋架け封止のための加熱機能を果した通電発熱体が随伴しているが、管内側には露呈しない形となっており、流送物に悪影響をもたらすことがないばかりでなく、感熱接着性樹脂33の環状形態を維持する強化体として機能する。感熱接着性樹脂33とこれに連なる樹脂被覆12,22は、融着等によって一体化されるとともに、連結部内面における環状溝と通電発熱体32とを埋めて、表面の起伏の少ないなだらかな被覆に再形成されている。
【0032】
図2に示した本発明の他の実施形態は、管体連結部封止方法と管路に関する。図2(a)は、感熱接着性樹脂(この例では熱可塑性樹脂)のチューブ体42と通電発熱体41とが複合された通電融着性資材40の自由状態外観図、同図(b)は、通電融着性資材の横断面拡大図、同図(c)は、環状配置した通電融着性資材の側面図、同図(d)は、切断端の繋合せ部分の側面図である。図2(e)〜(h)は、何れも、突合せ連結部の要部(上述のA部分相当)を拡大した断面図である。
【0033】
すなわち、ここでは、施工の簡便化のため、予め複合化された通電融着性資材40(図2(a)参照)を用いる。通電融着性資材40は、感熱接着性樹脂からなるチューブ体42の中空部に通電発熱体41を内蔵させた(図2(b)参照)、可撓性の紐状体である。当初から円輪状に形成してあれば直ちに使用できるが、長い有端のものから閉ループ状のものを作るときは(図2(c)参照)、適宜な長さに切ってから、切断端43を突き合わせて環状にする。切断端43の突合せ部分については(図2(d)参照)、閉ループ電路を構成するために通電発熱体41の端部同士をろう接,スリーブ圧着,素線編み合わせなど(44)によって相互導通状態に閉じておく。更には、チューブ体42の端部同士も、感熱接着性樹脂を用いた、融着やテーピングあるいはシュリンクチューブ・テープ被覆によって繋ぎ合わせておくと良い。
【0034】
ここでは(図2(e)参照)、管内側に臨む環状の管端対向部30にガスケット31が有り、又、通電融着性資材を予め閉じた状態で配置する場合を具体例にして説明する。
この場合(図2(f)参照)、先ず、通電融着性資材40を管体10,20の内径に対応した環状体たとえば単一リングに形成し、それをガスケット31の内周面にも管体10,20の樹脂被覆12,22にも接触させる形で管端対向部30の環状溝に配置する。
【0035】
それからは、上例で述べたのと同様(図2(g)参照)、導電体34等を用いて非接触で通電発熱体41に誘導電流を生じさせ、その発熱によって通電融着性資材40及びその近傍の樹脂被覆12,22を融着させる。
そうすると(図2(g)参照)、この管路も、連結部の管端対向部30の分け目が感熱接着性樹脂42によって封止されるとともに、閉ループ状の通電発熱体41は管内側に露呈することなく環状に埋蔵された管路となる。この場合も、感熱接着性樹脂42と樹脂被覆12,22は、融着によって一体化されるとともに、連結部内面における環状溝と通電発熱体41とを埋めて、表面の起伏の少ないなだらかな被覆に再形成される。なお、通電融着性資材40の環状体の配置は単一リングに限定されるものではなく、必要に応じて複数のリングを管軸方向あるいは管径方向に同心的に並べて配置するようにしてもよい。
【0036】
図3に示した本発明の更に他の実施形態は、管体連結部封止方法と管路に関する。図3(a)〜(d)は、何れも、重合せ連結部の要部(上述のA部分相当)を拡大した断面図である。
【0037】
重合せ連結では(図3(a)参照)、連結対象の両管体のうち管径の小さい方の管体10の外径が管径の大きい方の管体20の内径に等しいか僅かに小さくて、管体10の端部が管体20の中空端部に嵌挿されるので、管路の内面には、環状の段差部が現出する。この管内側に臨む管体間段差部39については、段差自体が環状溝を成していることに加えて、内挿された母材11に係る端角の面取りに由来する樹脂被覆12の丸みによって、奥部で環状溝が強調されている。
【0038】
この場合も、上述した各例の管体連結部封止方法を使うことができるが、ここでは、通電融着性資材40の使用例を説明する。この場合、上記段差より少し直径の小さい通電融着性資材40を使用すると良い。管体間段差部39の喉部に通電融着性資材40を環状配置し(図3(b)参照)、その内側に導電体34を一時配置して(図3(c)参照)、これに通電することで通電融着性資材40の誘導加熱を行う。そうすると(図3(d)参照)、連結部の管体間段差部39が、通電融着性資材40によって埋められ、そのチューブ体42であった感熱接着性樹脂が、近傍の樹脂被覆12,22と融着して一体になると同時に変形もして、管体間段差部39の表面が平坦化・平準化される。こうして、この管路は、管体間段差部39の分け目が感熱接着性樹脂42によって起伏の少ないなだらかな状態に封止されるとともに、閉ループ状の通電発熱体41は管内側に露呈することなく埋蔵されたものとなる。
【0039】
図4及び図5に示した本発明の更に他の実施形態は、ガスケットと管体連結部封止方法と管路に関する。図4(a)は、熱融部付きガスケットの外観図、同図(b)は、そのBB断面拡大図、図5(a)は、管路における連結部の縦断面図、同図(b)は要部拡大図(上述のA部分相当)である。
【0040】
熱融部付きガスケット50は(図4参照)、内周縁に配した環状の通電融着性資材40と円輪板状体52とを組み合わせたものであり、管端に介在するガスケットとして使えるような形状になっている。そのため、円輪板状体52には市販のゴム系などのガスケットをほぼそのまま利用して、通常ガスケットの機械的クッション機能を具備させておく形態が1つの望ましい形態となる。そして、その内周縁には、閉ループ状にした通電融着性資材40が飛石状の部分融着などの手法で取り付けられている。円輪板状体52には、ガスケットに適した材質のものであれば何でも採用することができる。例えば、EPDM(エチレンプロピレンゴム),シリコンゴム,フッ素ゴム,ネオプレンゴム,軟質天然ゴムなどが良い。フッ素樹脂などで覆装された包みパッキンも良い。
【0041】
この場合(図5参照)、管体10,20同士を突合せ連結するとき、予め、連結部に熱融部付きガスケット50が介挿される。管端の連結がボルト締結等にて固定された後に、ほぼ環状の導電体34を連結部の内側に適宜な治具・道具で一時的に配置し、これに適宜な電源ユニットから所定時間だけ所定の高周波通電を行う。そうすると、熱融部付きガスケット50の内周縁に在る通電融着性資材40の感熱接着性樹脂外皮が、内蔵されている通電発熱体51の誘導加熱発熱により加熱されて、両側の樹脂被覆12,22と融着して一体化するので、この管路も、管内側に臨む環状の管端対向部30が感熱接着性樹脂と樹脂被覆とで起伏の少ないなだらかな状態に封止されたものとなる。この場合、連結部における樹脂被覆の再形成・後形成に必要な部材の環状配置がガスケットの装着に随伴して行われるので、施工が一段と容易になる。
【0042】
図6に示した本発明の更に他の実施形態は、熱融部付きガスケットに関する。図6(a)は、その外観図、同図(b)は、CC断面拡大図、同図(c)は、熱融部を構成する通電融着性資材のCC断面拡大図である。
この熱融部付きガスケット60が、上述した熱融部付きガスケット50と相違するのは、熱融部付きガスケット50における通電融着性資材40に代えて、図6(c)に示したような、通電発熱体61が筒状編組になっていてその中に感熱発泡剤配合樹脂64が充填された構造の、感熱膨張性の通電融着性資材401を用いている点である。
【0043】
感熱発泡剤配合樹脂64は、加熱されることで膨張し、加熱で軟化している感熱接着性樹脂製の外皮62を押し広げて被接合面に押しつけるためのものであり、樹脂中に感熱発泡剤が配合されている。例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)や,エチレンアクリル共重合体(EEA,EAAなど),ポリオレフィン(PE,PPなど),ポリアミド(PA),ポリ塩化ビニル(PVC)などの樹脂中に、特有の温度以上で熱分解して窒素や二酸化炭素などの気体を発生する感熱発泡剤が配合されている。感熱発泡剤配合樹脂64の形態は、押出成形や,シートからの切り出しによって棒状,紐状,パイプ状に賦形したもの、繊維を束ねたもの、短繊維群、粉粒体群など、任意である。
【0044】
通電発熱体61は、感熱発泡剤配合樹脂64を効率よく加熱するために感熱発泡剤配合樹脂64を包むようになっていることから、感熱発泡剤配合樹脂64が発泡して膨らんだときにはそれを内側から外周側へ通過させることが必要なので、金属細線を筒状に編組して作り上げられている。このような編組形態の通電発熱体61を用いる場合、通電発熱体61の軸線と、通電発熱体61を構成する素線とに関して、交叉角度が15゜〜60゜になるように設定すると良い。交叉角度がその範囲内の筒状網組であれば、通過する感熱発泡剤配合樹脂64が通電発熱体61を拡径させて交叉角度が増大する力と、膨張する感熱発泡剤配合樹脂64が通電発熱体61を伸張させて交叉角度が減少する力とが概ねバランスして形状が安定しやすいからである。
【0045】
このような熱融部付きガスケット60は、上述した熱融部付きガスケット50と同様にして用いられ(図5参照)、同様の管路が出来上がるが、この場合は、感熱発泡剤配合樹脂64が関与する。感熱発泡剤が加熱によって発泡すると、感熱発泡剤配合樹脂64が膨張し、その一部が通電発熱体61から溢れ出て、感熱接着性樹脂のチューブ体62を膨らませて通電融着性資材401を拡径させるので、それに伴う押付け作用によって両脇の樹脂被覆12,22によくフィットして、管内側に臨む環状の管端対向部30の全域に亘って確実に融着する。融着後の通電融着性資材401は、その内部に充満した発泡体の存在によって弾性変形しやすくなっており、円輪板状体52のクッション機能時の変形によく追随できるため、機械的性能面でも優れた熱融部付きガスケット60が実現される。
【0046】
図7に示した本発明の更に他の実施形態は、ガスケットと管体連結部封止方法と管路に関する。図7(a)は、熱融部付きガスケットの外観図、同図(b)は、DD断面拡大図、同図(c)は、フランジ管継手による突合せ連結部の外観図、同図(d)は、その縦断面の一部拡大図(上述のA部分相当)、同図(e)は、その主要部の拡大図である。
【0047】
この熱融部付きガスケット70が上述の熱融部付きガスケット60と相違するのは(図7(a),(b)参照)、導電体ユニット71が追加されている点である。
導電体ユニット71は、ガスケットの内周部に、通電融着性資材401との間に介在する形で配置されている。ほぼ環状になっているが、通電発熱体61とは異なり、完全には一巡しておらず、一対の通電端72が直接給電のため外部へ引き出されている。導電体ユニット71は、この例では、金属細線の平編状編組体からなる導電体71aと、これの通電融着性資材401との短絡防止強化のためのガラスファイバー製テープ71bとからなり、接着剤等によってガスケットの内周縁と通電融着性資材との間に固定されている。この固定は、周方向に飛石状に行ってもよいし、全周に亘って行ってもよい。後者の場合には、導電体ユニット71に感熱接着剤を塗布ないし含侵適用した上で、導電体ユニット中の導電体71aに商用交流や自家発電機あるいは二次電池や一次電池などによる非高周波通電(インバータなどの高周波電源装置によらない通電)を適用し自己発熱させて相手部材に熱接着させる手法も有用となる。
【0048】
このような熱融部付きガスケット70は(図7(c)参照)、作業者が中に入れないような管路に適している。管体10,20同士を突合せ連結するとき、予め、連結部に熱融部付きガスケット70が介挿される。連結がボルト締結等にて固定された後に、外に出ている導電体71の通電端72に適宜な電源ユニットの給電線を連結して、導電体71に所定時間だけ所定の高周波通電を行う。そうすると(図7(d),(e)参照)、熱融部付きガスケット70の内周部の通電融着性資材401に内蔵されている通電発熱体61が誘導加熱されて発熱し、樹脂被覆62が前出例と同様に、両側の樹脂被覆12,22と融着して一体化する。
【0049】
こうして、この管路も、管内側に臨む環状の管端対向部の分け目が感熱接着性樹脂33によって起伏の少ないなだらかな状態に封止されたものとなる。その管路には、閉ループ状の通電発熱体61と、ほぼ環状で有端の導電体71aとが、埋蔵状態で残っているが、両方共、感熱接着性樹脂33によって管内から遮断されている。
【0050】
図8に幾つか示した本発明の更に他の実施形態は、何れも熱融部付きガスケットに関する。
図8(a)は熱融部付きガスケット50のBB断面図であって上述の図4(b)に対応しており、図8(b)は熱融部付きガスケット60のCC断面図であって上述の図6(b)に対応しており、図8(c)は熱融部付きガスケット70のDD断面図であって上述の図7(b)に対応しており、いずれも外形本位に略記した断面図となっている。
これらは、断面で見て、内周部がテーパ状に形成されており、最内周角部81が広くなっている。そのため、管端対向部30の環状溝のうち管内側のところが逆V溝形状や逆U溝形状になっているような場合に、好適であり、環状溝を的確に埋めることができる。
【0051】
図9に示した本発明の更に他の実施形態は、管体連結部封止方法と管路に関する。図9は、ビクトリック型管継手300を用いた突合わせ連結部を示す縦断面図であって、(a)が、無端環状に調えた前記通電融着性資材401を管端対向部301に配置した状態を示しており、(b)が、上記通電融着性資材401を誘導加熱により、両脇の樹脂被覆12,22に橋架け融着させて管端対向部の分け目(この例では数mm巾の間隙)を、樹脂被覆が一体的に連なる形で封じた状態を示している。
【0052】
このビクトリック型管継手300はガスケットを用いない管体連結手段であり、管端対向部301には上記間隙が管体の外周縁まで続いている(但し、管路外とは間隙の外側に配したリップシールゴム体302によってシールされている)。
この場合(図9(a)参照)、上記間隙の幅より少し太い通電融着性資材401を選定し、それを環状体にする。そして、この環状体を挟み込んだ形で両脇の管端面を対向させ、この状態で、管継手300の金属製の半割りハウジング対(図示略)をゴム体302の外側に配してこれをボルト締結して閉じる。次いで、前記と同様の手法で管内から通電融着性資材401の誘導加熱を行い、これを両脇の樹脂被覆12,22に橋架け融着させて間隙301を封止するのである。なお、ビクトリック型管継手は、連結部に若干の屈曲性を具えているのが一つの特徴であるが、融着後の通電融着性資材は発泡樹脂の内蔵により前述のように変形追従性を有するので、上記屈曲性が本質的に失われることはなく、むしろ屈曲性リミット手段として機能するという利点をもたらすこととなる。
【0053】
図10に示した本発明の更に他の実施形態は、熱融部付きガスケットに関する。図10は、(a)がガスケットの外観斜視図、(b)が通電端の引出部分の拡大図である。
このガスケット100は、上述した円輪板状体52と同様の円輪板状体101を具えており、内周縁に通電融着性資材401が配されている。この通電融着性資材401は、閉ループ状でなく、開ループ状になっており、さらにその一対の端部103,104から、通電融着性資材401内の編組状の通電発熱体のみが、平紐状に押潰され且つ絶縁被覆を施された態様にて、通電端として外周側へ引き出されている。上記端部の一方103と他方104は、短絡せずに、擦れ違ってから、円輪板状体101の一方の面側と他方の面側とに振分けられて、外部に引き出されている。なお、通電端の外部への引出しは、相互の短絡が避けられる形態であれば、上記振分け形態以外の形態でもよい。
【0054】
このような熱融部付きガスケット100は、上述した熱融部付きガスケット70と同様(図7(c)参照)、作業者が中に入れないような管路に適している。この場合も、管体10,20同士を突合せ連結するとき、予め、連結部に熱融部付きガスケット100が介挿される。連結がボルト締結等にて固定された後に、外に出ている通電端に適宜な電源ユニットの給電線を連結して通電し、前記と同様に通電融着性資材401を両脇の樹脂被覆12,22に融着させることができる。なお、この開ループ状通電発熱体への通電は、電磁誘導通電ではなく直接通電であるため、高周波通電ではなく、商用交流や可搬発電機や電池などの簡便な電源からの通電で事足りる。
【0055】
こうして、この管路も、管内側に臨む環状の管端対向部が感熱接着性樹脂と樹脂被覆とで起伏の少ないなだらかな状態に封止されたものとなる。その管路の連結部には、通電端付きの開ループ状の通電発熱体が埋蔵状態で残される。その通電発熱体のうち開ループ状の部分102は一周分を満たす長さを有し、その通電発熱体のうち通電端の部分は一方103と他方104とが両管端10,20側に振分けられた形で外部に引き出されている。なお、上記通電融着性資材401(発泡剤配合樹脂入り)の代りに、発泡剤配合樹脂を用いていない通電融着性資材(前記40)を用いるようにしても良い。
【0056】
【実施例】
図7の熱融部付きガスケット70を試作して、熱融部を有しない通常のガスケットとシール能力の比較実験を行った。
管体10,20の母材11,21は、外径が114.3mm内径が105.3mmで、厚さが4.5mmで、JIS呼び圧力30Kのフランジの付いた鋼管であり、材質は炭素鋼である。樹脂被覆12,22は、ポリエチレンであり、膜厚は約1.5mmである。
熱融部付きガスケット70は、厚さが4.5mm,内径が107.3mm,外径が210.0mmのEPDM(エチレンプロピレンゴム)製のガスケットの内周縁に、外径が6mmの通電融着性資材401(発泡剤配合樹脂入り)を導電体ユニット71を介して部分融着固定したものである。
また、比較用のガスケットは、内径が103.3mmの通常のEPDM製ガスケットである。
【0057】
導電体ユニット71は、純銅細線(0.2mm)の平紐状編組体とガラスファイバーテープの積層体であり、厚さが1mm、巾は3mmである。
通電融着性資材401に内蔵されている通電発熱体61は、ニクロム線からなり、素線径が0.2mmで、編組筒径が3.0mmである。
感熱発泡剤配合樹脂64は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂に、感熱接着性樹脂の接着性発現温度で発泡する発泡剤を混合したものであり、通電発熱体61の中空いっぱいに充填されている。
【0058】
比較用ガスケットは管体10,20の対向端面間に挟み、M22のボルト8本を用いてフランジを規定トルクで締結した。これに対し、熱融部付きガスケット70は、同じことを行ったうえで、導電体ユニット71に、ほぼ40kHzで高周波通電して、通電融着性資材401を加熱し、その感熱接着性樹脂外皮と両側の樹脂被覆12,22とを融着一体化させた。
そして、両管路に、水を入れ、3MPaに加圧した。その状態で、フランジの締結ボルトを徐々に緩めていった。
【0059】
そうすると、比較用ガスケットを挟んだだけの方は、締結ボルトを約1/4回転ほど回したところで、漏水が始まった。
これに対し、熱融部付きガスケット70を挟んだうえで樹脂被覆との一体化も行った方は、締結ボルトを約1回転(4/4回転)ほど回したところでも漏水は全く起こらなかった。この結果は、本発明が漏水に関するフェイルセーフ効果をもたらしたことを示すとともに、本発明管路にあっては、締結ボルトが良好に機能している常態も含めて、管路内外間の物質の出入が皆無となっていることの証明ともなっている。
【0060】
また、同じものをもう一組用意して、砂を混ぜた水を流して、管内側に臨む環状の管端対向部30の損耗状態を比較した。砂は平均粒径が約1.5mmのものを、重量で約3.0%ほど混入した。流量は12kL/minで、30日間に亘って通水し続けた(図11参照、(a)及び(b)は何れも突合せ連結部の要部を拡大した断面図であり、矢印は水流の向きを示している)。
管端対向部30の環状溝は、初期状態では、比較用ガスケット組み込みのもので約3mm、熱融部付きガスケット70組み込みのもので約0.5mmであった。すなわち、溝内容積が1/10以下に減少して、その環状溝に流送物の残渣等が不所望に堆積する余地がほとんど無くなる。また、これらに通水後は、管端対向部30の下流側の溝肩部に損耗が発生し、比較用ガスケット組み込みのものでは損耗量Xが約1.0mmになり(図11(a)参照)、熱融部付きガスケット70組み込みのものでは損耗量Yが0.1mm以下になった(図11(b)参照)。
【0061】
【その他】
上述した図2及び図3記載の実施形態では、感熱接着性樹脂のチューブ体42に通電発熱体41だけが埋め込まれた通電融着性資材40を用い、上述した図9記載の実施形態では、感熱接着性樹脂のチューブ体42に通電発熱体61と共に感熱発泡剤配合樹脂64も埋め込まれた通電融着性資材401を用いたが、これらは逆であっても良い。すなわち、図2及び図3記載の実施形態で通電融着性資材401を用い、図9記載の実施形態で通電融着性資材40を用いるのも良い。
【0062】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の管体連結部封止方法にあっては、連結部の内面環状部に感熱接着性樹脂を通電発熱体と組合わせた形で配置してから通電加熱して樹脂被覆に接着させて、被連結部管体間の分け目を封止するようにしたことにより、連結部の封止機能が管路内外間の流体漏出入の起り得ないレベルまで高められ、且つ連結部の内面環状部の樹脂被覆が起伏の少ないなだらかな形態となった一体的な管路を作ることができる。
また、本発明の一つの管体連結部封止方法ならびに管路およびガスケットにあっては、感熱接着性樹脂の加熱を、閉ループ状の通電発熱体を配置し、これを誘導加熱により発熱させて行うように構成して、閉ループ状資材による高度の封止と起伏の少ない樹脂被覆形態とを、熟練技術なしに実現することができる。
【0063】
さらに、本発明の他の管体連結部封止方法ならびに管路およびガスケットにあっては、上記誘導加熱を、閉ループ状の通電発熱体に沿わせて誘導コイルに相当する有端の導電体ループを配置し、これに直接通電して行うように構成して、誘導加熱作業を簡単なものとすることができる。
【0064】
又、本発明の更に他の接続管路封止方法ならびに管路およびガスケットにあっては、閉ループ状の通電発熱体に代えて有端のループ状通電発熱体を配置した構成により、構成上の技術集約は要するものの、最も安価な資材構成と、商用電源のみで済ませることもできる簡素な設備形態とを以て、高度の封止や起伏の少ない樹脂被覆形態を実現することができる。
【0065】
また、上記各種の管体連結部封止方法ならびに管路およびガスケットにおいて、ループ状の通電発熱体と一緒に感熱発泡剤配合樹脂も埋め込んで加熱時に感熱接着性樹脂が膨らむようにもしたことにより、連結部の内面環状部の樹脂被覆の表面に感熱接着性樹脂が容易かつ確実にフィットして接着する状況をもたらして、高度の封止や起伏の少ない樹脂被覆形態を容易かつ確実に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態について、(a)はフランジ管継手による突合せ連結部の縦断面図、(b)はビクトリック形管継手による突合せ連結部の縦断面図、(c)〜(h)は何れもA部分の要部拡大図である。
【図2】本発明の他の実施形態について、(a)は通電融着性資材の自由状態外観図、(b)はその横断面図、(c)は環状配置状態の側面図、(d)は切断端の繋合せ部分の側面図、(e)〜(h)は何れも突合せ連結部の要部を拡大した断面図である。
【図3】本発明の更に他の実施形態について、(a)〜(d)は何れも重合せ連結部の要部を拡大した断面図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態について、(a)はガスケットの外観図、(b)はBB断面図である。
【図5】(a)は連結部の縦断面図、(b)は要部拡大図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態について、(a)はガスケットの外観図、(b)はCC断面図、(c)は、熱融部を構成する通電融着性資材のCC断面拡大図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態について、(a)はガスケットの外観図、(b)はDD断面図、(c)はフランジ管継手による突合せ連結部の外観図、(d)はその縦断面の一部拡大図、(e)はその要部拡大図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態について、(a)はガスケットのBB断面図、(b)はガスケットのCC断面図、(c)はガスケットのDD断面図である。
【図9】本発明の更に他の実施形態について、(a)及び(b)は何れも突合せ連結部の要部を拡大した断面図である。
【図10】本発明の更に他の実施形態について、(a)はガスケットの外観斜視図、(b)は通電端の引出部分の拡大図である。
【図11】本発明の実施例について、(a)及び(b)は何れも突合せ連結部の要部を拡大した断面図であり、矢印は水流の向きを示している。
【符号の説明】
10…管体、11…母材、12…樹脂被覆、
20…管体、21…母材、22…樹脂被覆、
30…管端対向部、31…ガスケット、32…通電発熱体、
33…感熱接着性樹脂、34…導電体、39…管体間段差部、
40…通電融着性資材、401…感熱膨張性の通電融着性資材、
41…通電発熱体、42…感熱接着性樹脂のチューブ体、
50…熱融部付きガスケット、52…円輪板状体、
60…熱融部付きガスケット、61…筒状編組形態の通電発熱体、
62…ガスケットの内周部、63…ガスケットの外周部、
64…感熱発泡剤配合樹脂、70…熱融部付きガスケット、
71…導電体ユニット、72…通電端、
100,110…熱融部付きガスケット
Claims (10)
- 被連結管体として供された樹脂被覆付き管体同士の突合せ連結部の管内側に臨む環状の管端対向部に、又は樹脂被覆付き管体同士の重合せ連結部の管内側に臨む管体間段差部に、感熱接着性樹脂と閉ループ状の又は開ループ状の通電発熱体とを前記感熱接着性樹脂が管内側に臨むように組み合わせた複合環状体を配置してから、前記通電発熱体に電磁誘導又は直接通電により通電して前記複合環状体を加熱し、この複合環状体の感熱接着性樹脂部を両被連結管体の樹脂被覆に両者の間を取り持つ形で熱接着させて、両者間の分け目を樹脂のみが管内側に臨む形で封止することを特徴とする管体連結部封止方法。
- 樹脂被覆付き管体同士の突合せ連結にて又は樹脂被覆付き管体同士の重合せ連結にて形成された管路において、連結部の管内側に臨む環状の管端対向部が又は連結部の管内側に臨む管体間段差部が、ループ状の通電発熱体と複合された感熱接着性樹脂により、前記通電発熱体が管内側から遮断された形で、封止されていることを特徴とする管路。
- 内周縁に感熱接着性樹脂が配され、その外周側に閉ループ状の通電発熱体が配置されていることを特徴とするガスケット。
- 内周縁に感熱接着性樹脂が配され、その外周側に閉ループ状の通電発熱体が配置されておりこの通電発熱体に沿って通電端付きの開ループ状の導電体が配されこの通電端が外部へ引き出されていることを特徴とするガスケット。
- 内周縁に感熱接着性樹脂が配され、その外周側に通電端付きの開ループ状の通電発熱体が配され、この通電発熱体は一周分を満たす長さを有し且つ通電端の一方と他方とが短絡せずに擦れ違ってから外部に引き出されていることを特徴とするガスケット。
- 請求項3に記載のガスケットを挟んで樹脂被覆付き管体同士を突合せ連結してから前記通電体を誘導加熱することを特徴とする管体連結部封止方法。
- 請求項4又は請求項5に記載のガスケットを挟んで樹脂被覆付き管体同士を突合せ連結してから前記通電端に通電することを特徴とする管体連結部封止方法。
- 前記感熱接着性樹脂が熱可塑性樹脂であってチューブ状に賦形されておりその中に全長に亘って前記通電発熱体と感熱発泡剤配合樹脂とが納められている通電融着性資材を前記複合環状体として用いることを特徴とする請求項1記載の管体連結部封止方法。
- 前記感熱接着性樹脂が熱可塑性樹脂であり、感熱発泡剤配合樹脂が前記通電発熱体と共に環状に配置されていることを特徴とする請求項3乃至請求項5に記載のガスケット。
- 前記感熱接着性樹脂が熱可塑性樹脂であり、感熱発泡剤配合樹脂が前記通電発熱体と共に環状に配置されていることを特徴とする請求項2記載の管路。
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