JP2005014129A - 表面に複数の一定方向溝を形成した金属材 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗装することなく、不規則な反射がなくギラツキ感などの不快な視覚的感覚を改善するとともに、表面の引っ掛かりをなくし、耐銹性の劣化を抑制した金属的な質感のある金属表面を提供する。
【解決手段】表面に一定方向に並んだ深さ10μm以下の複数の溝が形成された金属表面において、マクロ板面からの傾斜角で80゜未満の傾きであるミクロ面が、面積比率で、30%以下であることを特徴とする金属材。さらに、それに加えて平均的な溝の方向に対して30〜150゜および−150〜−30゜の方向であるミクロ面が、面積比率で、25%以下であることを特徴とする金属材。
【選択図】 図1
【解決手段】表面に一定方向に並んだ深さ10μm以下の複数の溝が形成された金属表面において、マクロ板面からの傾斜角で80゜未満の傾きであるミクロ面が、面積比率で、30%以下であることを特徴とする金属材。さらに、それに加えて平均的な溝の方向に対して30〜150゜および−150〜−30゜の方向であるミクロ面が、面積比率で、25%以下であることを特徴とする金属材。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に微細凹凸からなる処理を施した、金属板、金属製アングル等の金属材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属板は、一般的に圧延で製造されることが多い。この結果、金属板の表面は圧延の微細な条痕が残存する平滑面となる。ところが、公共建造物の壁やパネルでは、条痕の認められないような鏡面に近い光沢面や、逆に条痕とは異なる凹凸模様が求められる。
【0003】
鏡面に近い光沢面に対しては、例えばステンレス鋼の光輝焼鈍仕上げのように、光沢のある圧延ロールを使用し圧延速度を落として圧延製造し、高い光沢を有する表面の商品が実用化されている。逆に条痕とは異なる凹凸模様を付けた表面には、圧延後研磨を行う研磨仕上げがJIS G4305に規定されている。また、表面にショット粒やガラスビーズなどを高速で吹き付けたり、圧延ロールにランダムな凹凸を付けて軽圧下し、ランダムな凹凸表面を付与した金属板が公知である。特に、研磨の目を一定方向に連続的に付与したヘアライン仕上げは、金属的質感を良く表現しているとして、建造物の壁や家電製品厨房製品などで好まれている。
【0004】
ところが、一般的に提供されるJISに規定されたヘアライン仕上げ表面には、局所的だが不規則な反射やギラツキ感を感じさせる箇所があったり、手で触れるととげが刺さるような引っ掛かりを感ずるような欠点、さらには一般的な平滑の圧延材に比べて大気中での耐発銹性(耐銹性)が劣るという欠点があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−171496号公報
【特許文献2】
特開平8−281864号公報
【0006】
手で触れるととげが刺さるような引っ掛かりを感ずる欠点や耐銹性が劣るという欠点に対しては、例えば上記特許文献1や上記特許文献2に記載された発明に開示されているように、ステンレス鋼に対しても表面塗装を行って対処してきた。これらの方法では確かにとげの刺さるような引っ掛かりはなくなるし耐銹性も向上すると考えられるものの、表面塗装工程を別途必要とするのに加えて、金属の質感も低下する。更に、本来の耐食性の上からは不要と考えられる塗装を行うことは、経済的にも問題があることは明白である。
しかるに、このような質感の低下などの視覚的な感覚の問題は軽微な欠点として取り扱われ、特に対応策改善策が講じられることがなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、不規則な反射がなくギラツキ感など不快な視覚的感覚を改善するとともに、表面の引っ掛かりをなくし、耐銹性の劣化を抑制した金属的な質感のある金属表面を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、不規則な反射やギラツキ感などの不快な視覚的感覚は、表面の微細な凹凸の形状や方向などに起因するものと判断し、表面の微細形状と視覚的な感性特性との関係を検討した。
【0009】
図1は、JIS G4305に記載の方法及びその他種々の公知の方法で製造した、一定方向に並んだ深さ10μm以下の複数の溝からなる金属表面の中から、不規則な反射やギラツキ感がある表面とそれらの少ない表面についてミクロ面のマクロ板面からの角度の存在比率を整理し比較した図である。
解析は、1μm間隔のメッシュで板面の微細な高さを測定し、ある点およびそれと隣接する2点の合計3点で形成されるミクロな平面の平均的な面からの立ち上がり角度を「傾斜角」、溝の平均的な方向(肉眼的観察により一定方向と見える溝の方向)からのずれを「水平角」として算出し、観察した全ての点について集計した。図1はその結果をまとめたものである。
ここで、「ミクロ面」とは、顕微鏡等を用いて詳細に観察する上述1μm間隔のメッシュで、ある点およびそれと隣接する2点の合計3点で形成されるミクロな平面を言い、「マクロ板面」とは、ミクロ面を総合した板面を言い、これは肉眼観察面と同じである。
【0010】
不規則な反射やギラツキ感がある表面は、傾斜角が90゜に近い面が多いものの、60゜近辺の比較的小さな傾斜角の面も多く見られた。それに対して、不規則な反射やギラツキ感の少ない表面は、傾斜角の大半が80゜以上で、傾斜角の小さな面はわずかしか認められなかった。すなわち、不規則な反射やギラツキ感がある表面では、マクロ板面に対する微細な凸部の立ち上がり角度がばらついているのに対して、不規則な反射やギラツキ感のない表面は、溝の立ち上がりがほぼ90゜の矩形的であることがわかった。
一方、図2は、JIS G4305に記載の方法及びその他種々の公知の方法で製造した、一定方向に並んだ深さ10μm以下の複数の溝からなる金属表面の中から、目の揃った表面と目が不揃いの表面について、ミクロ面の、平均的な溝の方向に対する方向の存在比率で整理し比較した図である。解析は図1の場合と同様である。
【0011】
図2からわかるように、目の揃わない表面は、水平角が0゜または180゜であるミクロ面が多いものの、90゜に近いものまで比較的高い頻度で存在するのに対して、目の揃った表面は、水平角の大半が0゜または180゜近辺に集中していた。すなわち、目の揃わない表面は肉眼では判別できなくとも、溝を形成する側面の方向が必ずしも揃っていないのに対して、目の揃った表面では、肉眼で判別できないレベルまで溝がほぼ一定方向に揃っていることがわかった。
【0012】
表面に複数の一方向溝が形成されている金属表面において、手で触れるととげが刺さるような引っ掛かりを感ずる表面や耐銹性が劣る表面は、経験的にギラツキ感のある表面と一致している。これは溝の立ち上がりが90゜であるもの(傾斜角が90°)では凸部が尖っておらず丸みを帯びているのに対して、溝の立ち上がり角度の小さなもの(傾斜角が小さなもの)は凸部の頂上付近が尖っているため、とげが刺さるような引っ掛かりを感ずるものと考えられる。同じ理由から尖った凸部には液滴が付着しやすいことから耐銹性の劣化につながるものと考えられる。すなわち、これらの欠点(引っ掛かり感や耐銹性の劣化)は、ギラツキ感を解消すれば改善されるものと推察した。
【0013】
【発明の実施の形態】
JIS G4305の記載の方法及びその他種々の公知の方法で製造した、一定方向に並んだ深さ10μm以下の複数の溝からなるステンレス鋼表面について、官能的に測定した不規則な反射やギラツキ感の程度と前記傾斜角との関係を、また官能的に測定した目の揃う程度と前述した水平角との関係を検討した。
【0014】
不規則な反射やギラツキ感の程度は、溝と直角の方向でかつ30〜45゜の斜め上方から光を照射し、その反対側からその反射光を肉眼で観察して評価した。評点は、「直接鏡面反射する部分が全くなくほぼ反射程度が一定のもの」を1、「直接鏡面反射する部分が全くないが反射程度が一定でないもの」を2、「鏡面反射部分がわずかに点状に認められるもの」を3、「わずかではあるが溝方向に伸びた線状に認められるもの」を4、さらには「それらが面積比で概ね10%以上と認められるもの」を5とした。
【0015】
溝の目の揃い程度は、溝方向でかつ30〜45゜の斜め上方から光を照射しその反対側からその鏡面反射光を肉眼で観察して評価した。評点は、「ほぼ全体の溝が直線的に揃い反射光がほぼ均一のもの」をA、「反射光のずれのため黒く見える部分がわずかにあるもの」をB、「黒く見える部分がかなりあるもの」をC、「反射光によらずとも肉眼で明らかに溝の方向が異なっているものがあると認められるもの」をD、さらに「全体的に溝が揃っていないもの」をEとした。
【0016】
ギラツキ感の程度は、傾斜角が80゜未満のミクロ面の比率と概ね相関し、その値が30%を超えると評点が3あるいはそれより不良(4、5)となる。すなわち我々は、金属材表面を見る角度がわずかにずれると、鏡面反射をする面がランダムに移動しギラツいていると認識するのであるが、凸部の立ち上がり角度が均一でないと、鏡面反射をする面の移動の傾向が激しいためギラツキの程度が悪いと判断される。逆に、凸部の立ち上がり角度が均一であると、多少見る角度が動いてもランダムに鏡面反射をする面が移動することが小さいことから、ギラツいていないと認識される。
【0017】
微細な溝が一定方向に並んだ典型的な表面であるJIS G4305に記載されているヘアライン仕上げ材は、ギラツキ感の評点が4と不良であった。この理由は、ヘアライン仕上げは、研磨紙ないし研磨布と被研磨材料との間に脱離した砥粒が転がることで研磨されることから、砥粒の当たった角度で溝を形成する。砥粒は大まかには球形でそれに角が着いた形状と考えられることから、溝の溝壁の立ち上がりは90゜より小さくなるものと思料され、その結果ヘアライン仕上げ材がギラツキ感が不良であったと推察される。
【0018】
本発明は、この知見に基づいたものであり、すなわち、一定方向に並んだ深さ10μm以下の複数の溝が形成された金属表面において、マクロ板面からの傾斜角が80゜未満の傾きであるミクロ面が、面積比率で、30%以下であることを特徴とする金属材が提供される。
【0019】
本発明のギラツキ感のない表面において、溝の目が揃うと一層落ち着きのある表面となる。
溝の目の揃い程度は、前記水平角が30〜150゜および−150〜−30゜であるミクロ面の比率と概ね相関し、その値が25%を超えると、評点がCあるいはそれより不良(D、E)となる。すなわち我々の目は、溝が曲がっていることを認識して溝の目が揃っていないと判断するのではなく、反射光の乱れから溝の目が揃っているか否かを判断していると考えられる。
【0020】
表面に複数の一方向溝が形成されている典型的な表面であるJIS G4305に記載のヘアライン仕上げ材は、溝の目の揃い程度の評点がA〜Bと良好であった。ヘアライン仕上げは、研磨紙ないし研磨布と被研磨材料が一定方向に動くことから研磨の溝が一定方向に揃うことになるが、ミクロ的には脱離した砥粒が転がるために溝の方向に乱れが生じ、ミクロ的には研磨方向からずれる面もあるため、評点Bも存在するものと考えられる。このようにJIS G4305に記載のヘアライン仕上げ材は、目の揃いは非常に良好であるが、前述したように傾斜角の不揃いに基づくギラツキ感があるため、せっかく微細な溝の目が揃っていても、落ち着いた金属の質感は感じられない。
【0021】
この知見に基づき実施態様として第2の発明をなした。すなわち、平均的な溝の方向に対して30〜150゜および−150〜−30゜の方向であるミクロ面が、面積比率で、25%以下である請求項1に記載した金属材が提供される。
本発明の金属表面は、例えば研磨砥粒の形状とサイズを揃えた研磨布で研磨を行い製造することが可能である。
【0022】
次に、本発明の限定理由を説明する。
一定方向に並んだ溝の深さが10μmを超えると、肉眼でも明らかに凹凸の存在が認められ、マクロ的に平面であると認識できなくなり波板あるいは型材と判断され用途が全く異なることから10μmを上限とした。
板面からの傾斜角で80゜未満の傾きであるミクロ面の比率が30%を超えるとギラツキ感が感じられ、その評点でも3あるいはそれより不良と判断されることから、30%を上限とした。
【0023】
第2の発明において、平均的な溝の方向に対して30〜150゜および−150〜−30゜の方向であるミクロ面の比率が25%を超えると、溝の方向の目が揃っていないと感じられ、その評点でもCあるいはそれより不良と判断されることから、25%を上限とした。
【0024】
本発明は、表面の質感を対象とすることから、人間の目に触れる場所に使用されるものであれば金属の種類や厚さにはよらない。一般的には、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、チタン、銅めっき材、ニッケルめっき材、クロムめっき材、クラッドや被覆などの表面に金属を露出させた複合材さらにはセラミックスなどを利用して表面硬化処理などを施した金属の薄板材、薄帯材、厚板あるいは平面部分のあるアングルなどの型材に適用できる。
【0025】
【実施例】
ミクロの溝が一定方向に並んだ表面で、かつマクロ板面に対する傾斜角の分布において、80゜未満の面の面積比および平均的な溝の方向に対して30〜150゜および−150〜−30゜の方向であるミクロ面の面積比率を変えた種々の金属板を前記方法により、作成した。これらの材料を表1に示す。また、これらの材料のギラツキ感の程度と溝の目の揃う程度の官能評価結果を、表1に併せて示す。
【0026】
【表1】
【0027】
実施例1は、矩形に近いレベルの微細な溝から構成されていることから、ギラツキ感は極めて良好であった。実施例3は、目の揃い程度は不良であったものの、ギラツキ感はなく相応の金属的な質感のある表面であった。比較例3は、溝の目は揃っているがギラツキ感が不良のため、金属的質感は感じられなかった。
【0028】
【発明の効果】
本発明により、金属的質感が有りギラツキ感の少ない表面の金属材を提供することができる。この結果、建造物の屋内外や都市景観の上からも、落ち着きのある設計が可能となる。本発明によれば、従来実施していた塗装が不要となり、工業的あるいは環境的な効果は極めて大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】不規則な反射やギラツキ感がある表面とそれらの少ない表面について、ミクロ面の平均的な板面に対する角度の頻度分布を示す図である。
【図2】目の揃った表面と不揃いの表面について、ミクロ面の溝の方向に対する水平角の頻度分布を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に微細凹凸からなる処理を施した、金属板、金属製アングル等の金属材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属板は、一般的に圧延で製造されることが多い。この結果、金属板の表面は圧延の微細な条痕が残存する平滑面となる。ところが、公共建造物の壁やパネルでは、条痕の認められないような鏡面に近い光沢面や、逆に条痕とは異なる凹凸模様が求められる。
【0003】
鏡面に近い光沢面に対しては、例えばステンレス鋼の光輝焼鈍仕上げのように、光沢のある圧延ロールを使用し圧延速度を落として圧延製造し、高い光沢を有する表面の商品が実用化されている。逆に条痕とは異なる凹凸模様を付けた表面には、圧延後研磨を行う研磨仕上げがJIS G4305に規定されている。また、表面にショット粒やガラスビーズなどを高速で吹き付けたり、圧延ロールにランダムな凹凸を付けて軽圧下し、ランダムな凹凸表面を付与した金属板が公知である。特に、研磨の目を一定方向に連続的に付与したヘアライン仕上げは、金属的質感を良く表現しているとして、建造物の壁や家電製品厨房製品などで好まれている。
【0004】
ところが、一般的に提供されるJISに規定されたヘアライン仕上げ表面には、局所的だが不規則な反射やギラツキ感を感じさせる箇所があったり、手で触れるととげが刺さるような引っ掛かりを感ずるような欠点、さらには一般的な平滑の圧延材に比べて大気中での耐発銹性(耐銹性)が劣るという欠点があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−171496号公報
【特許文献2】
特開平8−281864号公報
【0006】
手で触れるととげが刺さるような引っ掛かりを感ずる欠点や耐銹性が劣るという欠点に対しては、例えば上記特許文献1や上記特許文献2に記載された発明に開示されているように、ステンレス鋼に対しても表面塗装を行って対処してきた。これらの方法では確かにとげの刺さるような引っ掛かりはなくなるし耐銹性も向上すると考えられるものの、表面塗装工程を別途必要とするのに加えて、金属の質感も低下する。更に、本来の耐食性の上からは不要と考えられる塗装を行うことは、経済的にも問題があることは明白である。
しかるに、このような質感の低下などの視覚的な感覚の問題は軽微な欠点として取り扱われ、特に対応策改善策が講じられることがなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、不規則な反射がなくギラツキ感など不快な視覚的感覚を改善するとともに、表面の引っ掛かりをなくし、耐銹性の劣化を抑制した金属的な質感のある金属表面を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、不規則な反射やギラツキ感などの不快な視覚的感覚は、表面の微細な凹凸の形状や方向などに起因するものと判断し、表面の微細形状と視覚的な感性特性との関係を検討した。
【0009】
図1は、JIS G4305に記載の方法及びその他種々の公知の方法で製造した、一定方向に並んだ深さ10μm以下の複数の溝からなる金属表面の中から、不規則な反射やギラツキ感がある表面とそれらの少ない表面についてミクロ面のマクロ板面からの角度の存在比率を整理し比較した図である。
解析は、1μm間隔のメッシュで板面の微細な高さを測定し、ある点およびそれと隣接する2点の合計3点で形成されるミクロな平面の平均的な面からの立ち上がり角度を「傾斜角」、溝の平均的な方向(肉眼的観察により一定方向と見える溝の方向)からのずれを「水平角」として算出し、観察した全ての点について集計した。図1はその結果をまとめたものである。
ここで、「ミクロ面」とは、顕微鏡等を用いて詳細に観察する上述1μm間隔のメッシュで、ある点およびそれと隣接する2点の合計3点で形成されるミクロな平面を言い、「マクロ板面」とは、ミクロ面を総合した板面を言い、これは肉眼観察面と同じである。
【0010】
不規則な反射やギラツキ感がある表面は、傾斜角が90゜に近い面が多いものの、60゜近辺の比較的小さな傾斜角の面も多く見られた。それに対して、不規則な反射やギラツキ感の少ない表面は、傾斜角の大半が80゜以上で、傾斜角の小さな面はわずかしか認められなかった。すなわち、不規則な反射やギラツキ感がある表面では、マクロ板面に対する微細な凸部の立ち上がり角度がばらついているのに対して、不規則な反射やギラツキ感のない表面は、溝の立ち上がりがほぼ90゜の矩形的であることがわかった。
一方、図2は、JIS G4305に記載の方法及びその他種々の公知の方法で製造した、一定方向に並んだ深さ10μm以下の複数の溝からなる金属表面の中から、目の揃った表面と目が不揃いの表面について、ミクロ面の、平均的な溝の方向に対する方向の存在比率で整理し比較した図である。解析は図1の場合と同様である。
【0011】
図2からわかるように、目の揃わない表面は、水平角が0゜または180゜であるミクロ面が多いものの、90゜に近いものまで比較的高い頻度で存在するのに対して、目の揃った表面は、水平角の大半が0゜または180゜近辺に集中していた。すなわち、目の揃わない表面は肉眼では判別できなくとも、溝を形成する側面の方向が必ずしも揃っていないのに対して、目の揃った表面では、肉眼で判別できないレベルまで溝がほぼ一定方向に揃っていることがわかった。
【0012】
表面に複数の一方向溝が形成されている金属表面において、手で触れるととげが刺さるような引っ掛かりを感ずる表面や耐銹性が劣る表面は、経験的にギラツキ感のある表面と一致している。これは溝の立ち上がりが90゜であるもの(傾斜角が90°)では凸部が尖っておらず丸みを帯びているのに対して、溝の立ち上がり角度の小さなもの(傾斜角が小さなもの)は凸部の頂上付近が尖っているため、とげが刺さるような引っ掛かりを感ずるものと考えられる。同じ理由から尖った凸部には液滴が付着しやすいことから耐銹性の劣化につながるものと考えられる。すなわち、これらの欠点(引っ掛かり感や耐銹性の劣化)は、ギラツキ感を解消すれば改善されるものと推察した。
【0013】
【発明の実施の形態】
JIS G4305の記載の方法及びその他種々の公知の方法で製造した、一定方向に並んだ深さ10μm以下の複数の溝からなるステンレス鋼表面について、官能的に測定した不規則な反射やギラツキ感の程度と前記傾斜角との関係を、また官能的に測定した目の揃う程度と前述した水平角との関係を検討した。
【0014】
不規則な反射やギラツキ感の程度は、溝と直角の方向でかつ30〜45゜の斜め上方から光を照射し、その反対側からその反射光を肉眼で観察して評価した。評点は、「直接鏡面反射する部分が全くなくほぼ反射程度が一定のもの」を1、「直接鏡面反射する部分が全くないが反射程度が一定でないもの」を2、「鏡面反射部分がわずかに点状に認められるもの」を3、「わずかではあるが溝方向に伸びた線状に認められるもの」を4、さらには「それらが面積比で概ね10%以上と認められるもの」を5とした。
【0015】
溝の目の揃い程度は、溝方向でかつ30〜45゜の斜め上方から光を照射しその反対側からその鏡面反射光を肉眼で観察して評価した。評点は、「ほぼ全体の溝が直線的に揃い反射光がほぼ均一のもの」をA、「反射光のずれのため黒く見える部分がわずかにあるもの」をB、「黒く見える部分がかなりあるもの」をC、「反射光によらずとも肉眼で明らかに溝の方向が異なっているものがあると認められるもの」をD、さらに「全体的に溝が揃っていないもの」をEとした。
【0016】
ギラツキ感の程度は、傾斜角が80゜未満のミクロ面の比率と概ね相関し、その値が30%を超えると評点が3あるいはそれより不良(4、5)となる。すなわち我々は、金属材表面を見る角度がわずかにずれると、鏡面反射をする面がランダムに移動しギラツいていると認識するのであるが、凸部の立ち上がり角度が均一でないと、鏡面反射をする面の移動の傾向が激しいためギラツキの程度が悪いと判断される。逆に、凸部の立ち上がり角度が均一であると、多少見る角度が動いてもランダムに鏡面反射をする面が移動することが小さいことから、ギラツいていないと認識される。
【0017】
微細な溝が一定方向に並んだ典型的な表面であるJIS G4305に記載されているヘアライン仕上げ材は、ギラツキ感の評点が4と不良であった。この理由は、ヘアライン仕上げは、研磨紙ないし研磨布と被研磨材料との間に脱離した砥粒が転がることで研磨されることから、砥粒の当たった角度で溝を形成する。砥粒は大まかには球形でそれに角が着いた形状と考えられることから、溝の溝壁の立ち上がりは90゜より小さくなるものと思料され、その結果ヘアライン仕上げ材がギラツキ感が不良であったと推察される。
【0018】
本発明は、この知見に基づいたものであり、すなわち、一定方向に並んだ深さ10μm以下の複数の溝が形成された金属表面において、マクロ板面からの傾斜角が80゜未満の傾きであるミクロ面が、面積比率で、30%以下であることを特徴とする金属材が提供される。
【0019】
本発明のギラツキ感のない表面において、溝の目が揃うと一層落ち着きのある表面となる。
溝の目の揃い程度は、前記水平角が30〜150゜および−150〜−30゜であるミクロ面の比率と概ね相関し、その値が25%を超えると、評点がCあるいはそれより不良(D、E)となる。すなわち我々の目は、溝が曲がっていることを認識して溝の目が揃っていないと判断するのではなく、反射光の乱れから溝の目が揃っているか否かを判断していると考えられる。
【0020】
表面に複数の一方向溝が形成されている典型的な表面であるJIS G4305に記載のヘアライン仕上げ材は、溝の目の揃い程度の評点がA〜Bと良好であった。ヘアライン仕上げは、研磨紙ないし研磨布と被研磨材料が一定方向に動くことから研磨の溝が一定方向に揃うことになるが、ミクロ的には脱離した砥粒が転がるために溝の方向に乱れが生じ、ミクロ的には研磨方向からずれる面もあるため、評点Bも存在するものと考えられる。このようにJIS G4305に記載のヘアライン仕上げ材は、目の揃いは非常に良好であるが、前述したように傾斜角の不揃いに基づくギラツキ感があるため、せっかく微細な溝の目が揃っていても、落ち着いた金属の質感は感じられない。
【0021】
この知見に基づき実施態様として第2の発明をなした。すなわち、平均的な溝の方向に対して30〜150゜および−150〜−30゜の方向であるミクロ面が、面積比率で、25%以下である請求項1に記載した金属材が提供される。
本発明の金属表面は、例えば研磨砥粒の形状とサイズを揃えた研磨布で研磨を行い製造することが可能である。
【0022】
次に、本発明の限定理由を説明する。
一定方向に並んだ溝の深さが10μmを超えると、肉眼でも明らかに凹凸の存在が認められ、マクロ的に平面であると認識できなくなり波板あるいは型材と判断され用途が全く異なることから10μmを上限とした。
板面からの傾斜角で80゜未満の傾きであるミクロ面の比率が30%を超えるとギラツキ感が感じられ、その評点でも3あるいはそれより不良と判断されることから、30%を上限とした。
【0023】
第2の発明において、平均的な溝の方向に対して30〜150゜および−150〜−30゜の方向であるミクロ面の比率が25%を超えると、溝の方向の目が揃っていないと感じられ、その評点でもCあるいはそれより不良と判断されることから、25%を上限とした。
【0024】
本発明は、表面の質感を対象とすることから、人間の目に触れる場所に使用されるものであれば金属の種類や厚さにはよらない。一般的には、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、チタン、銅めっき材、ニッケルめっき材、クロムめっき材、クラッドや被覆などの表面に金属を露出させた複合材さらにはセラミックスなどを利用して表面硬化処理などを施した金属の薄板材、薄帯材、厚板あるいは平面部分のあるアングルなどの型材に適用できる。
【0025】
【実施例】
ミクロの溝が一定方向に並んだ表面で、かつマクロ板面に対する傾斜角の分布において、80゜未満の面の面積比および平均的な溝の方向に対して30〜150゜および−150〜−30゜の方向であるミクロ面の面積比率を変えた種々の金属板を前記方法により、作成した。これらの材料を表1に示す。また、これらの材料のギラツキ感の程度と溝の目の揃う程度の官能評価結果を、表1に併せて示す。
【0026】
【表1】
【0027】
実施例1は、矩形に近いレベルの微細な溝から構成されていることから、ギラツキ感は極めて良好であった。実施例3は、目の揃い程度は不良であったものの、ギラツキ感はなく相応の金属的な質感のある表面であった。比較例3は、溝の目は揃っているがギラツキ感が不良のため、金属的質感は感じられなかった。
【0028】
【発明の効果】
本発明により、金属的質感が有りギラツキ感の少ない表面の金属材を提供することができる。この結果、建造物の屋内外や都市景観の上からも、落ち着きのある設計が可能となる。本発明によれば、従来実施していた塗装が不要となり、工業的あるいは環境的な効果は極めて大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】不規則な反射やギラツキ感がある表面とそれらの少ない表面について、ミクロ面の平均的な板面に対する角度の頻度分布を示す図である。
【図2】目の揃った表面と不揃いの表面について、ミクロ面の溝の方向に対する水平角の頻度分布を示す図である。
Claims (2)
- 表面に一定方向に並んだ深さ10μm以下の複数の溝が形成された金属表面において、マクロ板面からの傾斜角が80°未満の傾きであるミクロ面が、面積比率で30%以下であることを特徴とする金属材。
- 平均的な溝の方向に対して30〜150°および−150〜−30°の方向であるミクロ面が、面積比率で25%以下である、請求項1に記載の金属材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003180379A JP2005014129A (ja) | 2003-06-25 | 2003-06-25 | 表面に複数の一定方向溝を形成した金属材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003180379A JP2005014129A (ja) | 2003-06-25 | 2003-06-25 | 表面に複数の一定方向溝を形成した金属材 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2005014129A true JP2005014129A (ja) | 2005-01-20 |
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ID=34181381
Family Applications (1)
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JP2003180379A Pending JP2005014129A (ja) | 2003-06-25 | 2003-06-25 | 表面に複数の一定方向溝を形成した金属材 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2005014129A (ja) |
-
2003
- 2003-06-25 JP JP2003180379A patent/JP2005014129A/ja active Pending
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