JP2005014011A - 高寸法精度管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】同一サイズの素管から加工度の異なる一定サイズの管を高寸法精度に製造できる高寸法精度管の製造方法を提供する。
【解決手段】管4を拡管および縮径可能なプラグ1を管内に装入し、ダイス2で管の押し抜きを行う。プラグは管内でフローティングさせ、管をダイスに連続して供給することが好ましい。また、プラグは、拡管部分1Aのテーパ角度θAが縮径部分1Bのテーパ角度θB未満とされたものが好ましい。また、ダイスの出側の管の目標外径D2を同入側の管の外径D0未満とすることが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】管4を拡管および縮径可能なプラグ1を管内に装入し、ダイス2で管の押し抜きを行う。プラグは管内でフローティングさせ、管をダイスに連続して供給することが好ましい。また、プラグは、拡管部分1Aのテーパ角度θAが縮径部分1Bのテーパ角度θB未満とされたものが好ましい。また、ダイスの出側の管の目標外径D2を同入側の管の外径D0未満とすることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高寸法精度管の製造方法に関し、詳しくは、例えば自動車部品などに用いられるような高い寸法精度が要求される管を、同一サイズの素管から加工度の異なる一定サイズのものに、製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば鋼管等の金属管(以下、単に管ともいう。)は溶接管と継目無管に大別される。溶接管は、例えば電縫鋼管のように、帯板の幅を丸め、該丸めた幅の両端を突き合わせて溶接するという方法で製造し、一方、継目無管は、材料の塊を高温で穿孔後マンドレルミル等で圧延するという方法で製造している。溶接管の場合、溶接後に溶接部分の盛り上がりを研削して管の寸法精度を向上させているが、その肉厚偏差は3.0 %を超える。また、継目無管の場合、穿孔工程で偏心しやすく、該偏心により大きな肉厚偏差が生じやすい。この肉厚偏差は後工程で低減させる努力が払われているが、それでも充分低減することができず、製品の段階で8.0 %以上残存する。
【0003】
自動車部品等に用いる管には肉厚、内径、外径の各偏差として3.0 %以下、さらに厳しくは1.0 %以下、の高寸法精度が要求される。そこで、管の肉厚、内径、外径の精度を高める手段としては、従来一般に、図2に示すように、管4(溶接管、継目無管とも)を造管後にダイス6とプラグ5を用いて冷間で引き抜く製造方法(いわゆる冷牽法)がとられている。また近年では、図3に示すように、円周方向に分割した分割ダイス8をロータリー鍛造機9で揺動(復動)12させ、該分割ダイス8のダイス孔に管4を押し込んで加工する製造技術(以下、ロータリー鍛造押し込み法という。)が提案されている(特許文献1,2,3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−262637号公報
【特許文献2】
特開平9−262619号公報
【特許文献3】
特開平10−156127号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の冷牽法では、設備上の制約や管の肉厚・径が大きいなどによって引き抜き応力が充分得られずに縮径率を低くせざるを得ない場合などでは、加工バイト(プラグとダイス孔内面との隙間)内での管の応力が引張応力であるがゆえにダイスと管外面、および引き抜きプラグと管内面との接触が不十分となり、管の内面、外面の平滑化が不足して凹凸が残留しやすい。そのため、冷牽法で管の縮径率を大きくして加工バイト内で管の内外面とプラグ、ダイスとの間の接触を十分なものとすることが図られている。しかし、ダイスを用いて管を引き抜いた場合、管の内面に凹凸が発生して管の縮径率が大きくなるほど凹凸による粗さが増加する。その結果、冷牽法では高寸法精度の管を得ることが難しく、寸法精度のさらに良好な管が強く求められていた。
【0006】
また、前記特許文献1〜3などに示されたロータリー鍛造押し込み法では、分割ダイス4を揺動させて使用しているから、その分割部分で段差が生じやすくて管外面の平滑化が不足し、あるいは、円周方向に異なる分割ダイスの剛性によって仕上げ寸法精度を十分得ることができず、さらに改善を求められていた。また、このロータリー鍛造押し込み法では、管を押し込んだ後の肉厚は、押し込む前の肉厚よりも厚くなっている。これは、複雑な構造を有するために荷重を加えにくいロータリー鍛造機を用いているがゆえの制約からくるものであり、その結果、管の内面に凹凸が発生しやすくなり、管の平滑化がしにくくなっている。
【0007】
また、自動車部品では管の加工度を変えて用いられる。例えば、ある部品では加工度を低くして加工後の熱処理を省略することが検討され、別の部品では加工度を著しく大きくして強度を高くして用いられる。
【0008】
しかし、従来の冷牽法やロータリー鍛造押し込み法では、縮径のみの加工を行なっており、加工後の管外径はダイス径で一義的に決まり、肉厚もダイスとプラグにより一義的に決まるため、同一素管からは一義的な加工度しか得られず、同一素管から加工度の異なる同じサイズの管を製造することはほとんど不可能であった。そのため、同じサイズで加工度の異なる管を製造するためには、複数サイズの素管を用意して縮径率を変えることを余儀なくされ、素管製造に多大な手間がかかっていた。
【0009】
上述のように、従来の技術では高寸法精度の管を得るのが難しく、また、サイズが同じで加工度が異なる管を製造する際にはサイズの異なる素管を多数用意しなければならないという問題があった。本発明は、これらの問題を解決し、同一サイズの素管から加工度の異なる一定サイズの管を高寸法精度に製造できる高寸法精度管の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、同一サイズの素管から加工度の異なる一定サイズの管を高寸法精度に製造する高寸法精度管の製造方法であって、管を拡管および縮径可能なプラグを管内に装入し、ダイスで管の押し抜きを行うことを特徴とする高寸法精度管の製造方法である。本発明では、前記プラグを管内でフローティングさせ、管をダイスに連続して供給することが好ましい。また、本発明では、前記プラグは、拡管部分のテーパ角度が縮径部分のテーパ角度未満とされたプラグであることが好ましい。また、本発明では、前記ダイスの出側の管外径を同入側の管外径未満とすることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態および作用を、従来技術と対比させながら説明する。
【0012】
従来、ダイスとプラグを用いて管を引き抜いた場合、管の寸法精度を向上させることが困難である理由は、引き抜きであるがゆえに、加工バイト内でダイスと管外面、プラグと管内面の接触が不十分となることに由来する。すなわち、図2に示すように、管4内にプラグ5を装入してダイス6から管4を引き抜くことにより、ダイス6の出側で管引き機7により加えられた引き抜き力10によって加工バイト内には張力(引張応力)が発生する。加工バイト内の入側では、プラグ5に管内面が沿って変形するため、管外面はダイス6に接触しないかあるいは軽度にしか接触せず、また、加工バイト内の出側では、ダイス6に管外面が接触して変形するため、管内面はプラグ5に接触しないかあるいは軽度にしか接触しない。そのため、管外面、管内面ともに加工バイト内に自由変形の部分が存在して凹凸を十分平滑化できずに、引き抜き後には寸法精度の不十分な管しか得られていなかった。
【0013】
これに比べて、本発明の押し抜きの場合、図1に示すように、管4内にプラグ1を装入し、ダイス2の入側から管押し機3にて管4に押し込み力11を加えて、管4をダイス2内に送り込む。よって、加工バイト内の管の全域に亘って圧縮応力が作用する。その結果、加工バイト内の入側、出側を問わず、管4はプラグ1およびダイス2に十分接触できる。しかも、軽度の縮径率であっても、加工バイト内は圧縮応力状態となるため、引き抜きに比較して管とプラグ、管とダイスが十分接触しやすくて、管は平滑化しやすくなるので、高寸法精度の管が得られるわけである。
【0014】
また、図3に示す従来のロータリー鍛造押し込み法では、分割ダイス8を揺動(復動)12させて用いているため、分割部分による段差、あるいは、高応力下での円周方向に異なるダイスの剛性に起因する不均一変形を原因として、肉厚精度を十分良好なものにすることができなかった。
【0015】
これに比べて、本発明の押し抜きでは、ダイスは一体物でよくかつ揺動させる必要がないから、不均一変形が発生せず、その結果として管内面、管外面とも平滑化できるわけである。
【0016】
また、従来の冷牽法やロータリー鍛造押し込み法では、縮径のみの加工を行なっており、同一サイズの素管からは一義的な加工度しか得られず、加工度の異なる一定サイズの管を製造することはほとんど不可能であった。これに対し、本発明では、図1に示すように、プラグ1に、管4を拡管させる拡管部分1Aおよび該拡管させられた管4をダイス2との協力下で縮径させる縮径部分1Bを設けることとした。これにより、同一サイズの素管を用いて加工度の異なる一定サイズの管を製造することが可能になる。というのは、素管および押し抜き加工後の管のサイズはそれぞれ一定としても、プラグの拡管部分による拡管率(=1−D0/D1 ;D0:素管の外径、D1:拡管後の目標外径)を加減するだけで、プラグの縮径部分による縮径率(=1−D2/D1 ;D2:縮径後の目標外径)も必然的に増減し、その結果、得られた管の加工度は異なってくるからである。
【0017】
また、本発明では、製造能率を上げる観点から、管をダイスに次々と連続して供給することが好ましい。その場合、プラグがダイス入側あるいは出側から支持されたものであるとその支持に用いるバーやワイヤ等の手段が障害となって、管を連続して供給するのが困難となるので、プラグは管内にフローティングさせることが好ましい。
【0018】
また、本発明の押し抜きを安定して実施するには、加工中にプラグを安定化させる(ダイスに対する適正な位置からずれないようにする)必要がある。この点について検討した結果、プラグは拡管および縮径により管から面圧を受けるが、縮径側の面圧を拡径側のそれよりも大きくするとプラグの安定化が図れることがわかった。縮径側の面圧を拡径側のそれよりも大きくするには、一つは、図4に示すように、プラグ1の拡管部分1Aのテーパ角度θAを縮径部分1Bのテーパ角度θB未満とするのが有効である。ここで、プラグの部分のテーパ角度とは、その部分の表面と管の進行方向に沿わされるプラグ中心軸に平行な直線13とのなす角度を意味する。なお、好ましくは、θA=0.3 〜35°、θB=3〜45°である。また、もう一つは、縮径率を拡管率よりも大きくするとよく、そのためにはダイスの出側の管外径を入側の管外径未満とするのが有効である。
【0019】
【実施例】
〔本発明例〕
φ40mm×6.0 mmt×5.5 mLの鋼管を素管とし、この素管を図1に概要を示した本発明(:拡管及び縮径が可能なプラグを用いた押し抜き)により拡管し次いで縮径加工した。ダイス出側の目標肉厚は入側と同じ6.0 mmtとした。プラグは鏡面仕上げしたものを管内にフローティングさせた。ダイスはダイス孔内面を鏡面仕上げした一体型固定ダイスを用いた。プラグの拡管率、縮径率、拡管部分と縮径部分のテーパ角度θAとθB、およびダイス出側(縮径後)の管の目標外径D2は、行なった例ごとに表1に示した値に設定した。管はダイスに連続して供給した。
【0020】
〔比較例A〕
同上の素管を図2に示した冷牽法(:縮径のみ可能)により縮径加工した。ダイス出側の目標肉厚は入側と同じ6.0 mmtとした。プラグは鏡面仕上げしたものを管内にフローティングさせた。ダイスはダイス孔内面を鏡面仕上げした一体型固定ダイスを用いた。プラグの縮径率、およびダイス出側の管の目標外径は、行なった例ごとに表1に示した値に設定した。管はダイスに連続して供給した。
【0021】
〔比較例B〕
同上の素管を図3に示したロータリー鍛造押し込み法(:縮径のみ可能)により縮径加工した。ダイス出側の目標肉厚は入側と同じ6.0 mmtとした。プラグは鏡面仕上げしたものを管内にフローティングさせた。ダイスはダイス孔内面を鏡面仕上げした分割ダイスを用いた。プラグの縮径率、およびダイス出側の管の目標外径は、行なった例ごとに表1に示した値に設定した。管はダイスに連続して供給した。
【0022】
これら各例の条件で製造された鋼管について、寸法精度(外径偏差、内径偏差、肉厚偏差)を測定した。外径偏差および内径偏差は、管の円周方向断面を画像解析して、真円からの最大偏差(すなわち(最大径−最小径)/真円径×100 %)を円周方向に算出することにより求めた。また、肉厚偏差は、管の円周方向断面を画像解析して、肉厚断面の画像から平均肉厚に対する最大偏差(すなわち(最大肉厚−最小肉厚)/平均肉厚×100 %)として直接測定した。また、加工度の指標として断面硬度を測定した。また、加工後に一定サイズの管が得られたか否かを判断するための指標として上記寸法精度の測定と同時に求めた加工後の管の平均外径と平均肉厚を採用した。これらの結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
表1より、本発明例ではいずれも、加工後の寸法精度が著しく良好であり、プラグとダイスの組合せを変更することで、同一サイズの素管から一定サイズであってしかも加工度の異なる管を得ることができた。これに対し、比較例では、寸法精度が低下するとともに、同一サイズの素管から加工度の異なる管を得ようとすると、一定サイズの外径や肉厚を得ることができなかった。なお、θA<θB、D2<D0のいずれか一方または両方を満たした本発明例では、管内でのプラグのフローティング状態が一段と安定化した。
【0025】
なお、拡管率a(%)=(D1−D0)/D1×100
縮径率b(%)=(D1−D2)/D1×100
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、同一サイズの素管から加工度の異なる一定サイズの管を著しく良好な寸法精度に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概要を示す模式図である。
【図2】従来の冷牽法の概要を示す模式図である。
【図3】従来のロータリー押し込み鍛造法の概要を示す模式図(a)およびそのA−A矢視図(b)である。
【図4】プラグの部分のテーパ角度の説明図である。
【符号の説明】
1 プラグ
1A 拡管部分
1B 縮径部分
2 ダイス(一体型固定ダイス)
3 管押し機
4 管(金属管、鋼管)
5 プラグ
6 ダイス
7 管引き機
8 分割ダイス
9 ロータリー鍛造機
10 引き抜き力
11 押し込み力
12 揺動(復動)
13 管の進行方向に沿わされるプラグ中心軸に平行な直線
【発明の属する技術分野】
本発明は、高寸法精度管の製造方法に関し、詳しくは、例えば自動車部品などに用いられるような高い寸法精度が要求される管を、同一サイズの素管から加工度の異なる一定サイズのものに、製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば鋼管等の金属管(以下、単に管ともいう。)は溶接管と継目無管に大別される。溶接管は、例えば電縫鋼管のように、帯板の幅を丸め、該丸めた幅の両端を突き合わせて溶接するという方法で製造し、一方、継目無管は、材料の塊を高温で穿孔後マンドレルミル等で圧延するという方法で製造している。溶接管の場合、溶接後に溶接部分の盛り上がりを研削して管の寸法精度を向上させているが、その肉厚偏差は3.0 %を超える。また、継目無管の場合、穿孔工程で偏心しやすく、該偏心により大きな肉厚偏差が生じやすい。この肉厚偏差は後工程で低減させる努力が払われているが、それでも充分低減することができず、製品の段階で8.0 %以上残存する。
【0003】
自動車部品等に用いる管には肉厚、内径、外径の各偏差として3.0 %以下、さらに厳しくは1.0 %以下、の高寸法精度が要求される。そこで、管の肉厚、内径、外径の精度を高める手段としては、従来一般に、図2に示すように、管4(溶接管、継目無管とも)を造管後にダイス6とプラグ5を用いて冷間で引き抜く製造方法(いわゆる冷牽法)がとられている。また近年では、図3に示すように、円周方向に分割した分割ダイス8をロータリー鍛造機9で揺動(復動)12させ、該分割ダイス8のダイス孔に管4を押し込んで加工する製造技術(以下、ロータリー鍛造押し込み法という。)が提案されている(特許文献1,2,3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−262637号公報
【特許文献2】
特開平9−262619号公報
【特許文献3】
特開平10−156127号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の冷牽法では、設備上の制約や管の肉厚・径が大きいなどによって引き抜き応力が充分得られずに縮径率を低くせざるを得ない場合などでは、加工バイト(プラグとダイス孔内面との隙間)内での管の応力が引張応力であるがゆえにダイスと管外面、および引き抜きプラグと管内面との接触が不十分となり、管の内面、外面の平滑化が不足して凹凸が残留しやすい。そのため、冷牽法で管の縮径率を大きくして加工バイト内で管の内外面とプラグ、ダイスとの間の接触を十分なものとすることが図られている。しかし、ダイスを用いて管を引き抜いた場合、管の内面に凹凸が発生して管の縮径率が大きくなるほど凹凸による粗さが増加する。その結果、冷牽法では高寸法精度の管を得ることが難しく、寸法精度のさらに良好な管が強く求められていた。
【0006】
また、前記特許文献1〜3などに示されたロータリー鍛造押し込み法では、分割ダイス4を揺動させて使用しているから、その分割部分で段差が生じやすくて管外面の平滑化が不足し、あるいは、円周方向に異なる分割ダイスの剛性によって仕上げ寸法精度を十分得ることができず、さらに改善を求められていた。また、このロータリー鍛造押し込み法では、管を押し込んだ後の肉厚は、押し込む前の肉厚よりも厚くなっている。これは、複雑な構造を有するために荷重を加えにくいロータリー鍛造機を用いているがゆえの制約からくるものであり、その結果、管の内面に凹凸が発生しやすくなり、管の平滑化がしにくくなっている。
【0007】
また、自動車部品では管の加工度を変えて用いられる。例えば、ある部品では加工度を低くして加工後の熱処理を省略することが検討され、別の部品では加工度を著しく大きくして強度を高くして用いられる。
【0008】
しかし、従来の冷牽法やロータリー鍛造押し込み法では、縮径のみの加工を行なっており、加工後の管外径はダイス径で一義的に決まり、肉厚もダイスとプラグにより一義的に決まるため、同一素管からは一義的な加工度しか得られず、同一素管から加工度の異なる同じサイズの管を製造することはほとんど不可能であった。そのため、同じサイズで加工度の異なる管を製造するためには、複数サイズの素管を用意して縮径率を変えることを余儀なくされ、素管製造に多大な手間がかかっていた。
【0009】
上述のように、従来の技術では高寸法精度の管を得るのが難しく、また、サイズが同じで加工度が異なる管を製造する際にはサイズの異なる素管を多数用意しなければならないという問題があった。本発明は、これらの問題を解決し、同一サイズの素管から加工度の異なる一定サイズの管を高寸法精度に製造できる高寸法精度管の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、同一サイズの素管から加工度の異なる一定サイズの管を高寸法精度に製造する高寸法精度管の製造方法であって、管を拡管および縮径可能なプラグを管内に装入し、ダイスで管の押し抜きを行うことを特徴とする高寸法精度管の製造方法である。本発明では、前記プラグを管内でフローティングさせ、管をダイスに連続して供給することが好ましい。また、本発明では、前記プラグは、拡管部分のテーパ角度が縮径部分のテーパ角度未満とされたプラグであることが好ましい。また、本発明では、前記ダイスの出側の管外径を同入側の管外径未満とすることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態および作用を、従来技術と対比させながら説明する。
【0012】
従来、ダイスとプラグを用いて管を引き抜いた場合、管の寸法精度を向上させることが困難である理由は、引き抜きであるがゆえに、加工バイト内でダイスと管外面、プラグと管内面の接触が不十分となることに由来する。すなわち、図2に示すように、管4内にプラグ5を装入してダイス6から管4を引き抜くことにより、ダイス6の出側で管引き機7により加えられた引き抜き力10によって加工バイト内には張力(引張応力)が発生する。加工バイト内の入側では、プラグ5に管内面が沿って変形するため、管外面はダイス6に接触しないかあるいは軽度にしか接触せず、また、加工バイト内の出側では、ダイス6に管外面が接触して変形するため、管内面はプラグ5に接触しないかあるいは軽度にしか接触しない。そのため、管外面、管内面ともに加工バイト内に自由変形の部分が存在して凹凸を十分平滑化できずに、引き抜き後には寸法精度の不十分な管しか得られていなかった。
【0013】
これに比べて、本発明の押し抜きの場合、図1に示すように、管4内にプラグ1を装入し、ダイス2の入側から管押し機3にて管4に押し込み力11を加えて、管4をダイス2内に送り込む。よって、加工バイト内の管の全域に亘って圧縮応力が作用する。その結果、加工バイト内の入側、出側を問わず、管4はプラグ1およびダイス2に十分接触できる。しかも、軽度の縮径率であっても、加工バイト内は圧縮応力状態となるため、引き抜きに比較して管とプラグ、管とダイスが十分接触しやすくて、管は平滑化しやすくなるので、高寸法精度の管が得られるわけである。
【0014】
また、図3に示す従来のロータリー鍛造押し込み法では、分割ダイス8を揺動(復動)12させて用いているため、分割部分による段差、あるいは、高応力下での円周方向に異なるダイスの剛性に起因する不均一変形を原因として、肉厚精度を十分良好なものにすることができなかった。
【0015】
これに比べて、本発明の押し抜きでは、ダイスは一体物でよくかつ揺動させる必要がないから、不均一変形が発生せず、その結果として管内面、管外面とも平滑化できるわけである。
【0016】
また、従来の冷牽法やロータリー鍛造押し込み法では、縮径のみの加工を行なっており、同一サイズの素管からは一義的な加工度しか得られず、加工度の異なる一定サイズの管を製造することはほとんど不可能であった。これに対し、本発明では、図1に示すように、プラグ1に、管4を拡管させる拡管部分1Aおよび該拡管させられた管4をダイス2との協力下で縮径させる縮径部分1Bを設けることとした。これにより、同一サイズの素管を用いて加工度の異なる一定サイズの管を製造することが可能になる。というのは、素管および押し抜き加工後の管のサイズはそれぞれ一定としても、プラグの拡管部分による拡管率(=1−D0/D1 ;D0:素管の外径、D1:拡管後の目標外径)を加減するだけで、プラグの縮径部分による縮径率(=1−D2/D1 ;D2:縮径後の目標外径)も必然的に増減し、その結果、得られた管の加工度は異なってくるからである。
【0017】
また、本発明では、製造能率を上げる観点から、管をダイスに次々と連続して供給することが好ましい。その場合、プラグがダイス入側あるいは出側から支持されたものであるとその支持に用いるバーやワイヤ等の手段が障害となって、管を連続して供給するのが困難となるので、プラグは管内にフローティングさせることが好ましい。
【0018】
また、本発明の押し抜きを安定して実施するには、加工中にプラグを安定化させる(ダイスに対する適正な位置からずれないようにする)必要がある。この点について検討した結果、プラグは拡管および縮径により管から面圧を受けるが、縮径側の面圧を拡径側のそれよりも大きくするとプラグの安定化が図れることがわかった。縮径側の面圧を拡径側のそれよりも大きくするには、一つは、図4に示すように、プラグ1の拡管部分1Aのテーパ角度θAを縮径部分1Bのテーパ角度θB未満とするのが有効である。ここで、プラグの部分のテーパ角度とは、その部分の表面と管の進行方向に沿わされるプラグ中心軸に平行な直線13とのなす角度を意味する。なお、好ましくは、θA=0.3 〜35°、θB=3〜45°である。また、もう一つは、縮径率を拡管率よりも大きくするとよく、そのためにはダイスの出側の管外径を入側の管外径未満とするのが有効である。
【0019】
【実施例】
〔本発明例〕
φ40mm×6.0 mmt×5.5 mLの鋼管を素管とし、この素管を図1に概要を示した本発明(:拡管及び縮径が可能なプラグを用いた押し抜き)により拡管し次いで縮径加工した。ダイス出側の目標肉厚は入側と同じ6.0 mmtとした。プラグは鏡面仕上げしたものを管内にフローティングさせた。ダイスはダイス孔内面を鏡面仕上げした一体型固定ダイスを用いた。プラグの拡管率、縮径率、拡管部分と縮径部分のテーパ角度θAとθB、およびダイス出側(縮径後)の管の目標外径D2は、行なった例ごとに表1に示した値に設定した。管はダイスに連続して供給した。
【0020】
〔比較例A〕
同上の素管を図2に示した冷牽法(:縮径のみ可能)により縮径加工した。ダイス出側の目標肉厚は入側と同じ6.0 mmtとした。プラグは鏡面仕上げしたものを管内にフローティングさせた。ダイスはダイス孔内面を鏡面仕上げした一体型固定ダイスを用いた。プラグの縮径率、およびダイス出側の管の目標外径は、行なった例ごとに表1に示した値に設定した。管はダイスに連続して供給した。
【0021】
〔比較例B〕
同上の素管を図3に示したロータリー鍛造押し込み法(:縮径のみ可能)により縮径加工した。ダイス出側の目標肉厚は入側と同じ6.0 mmtとした。プラグは鏡面仕上げしたものを管内にフローティングさせた。ダイスはダイス孔内面を鏡面仕上げした分割ダイスを用いた。プラグの縮径率、およびダイス出側の管の目標外径は、行なった例ごとに表1に示した値に設定した。管はダイスに連続して供給した。
【0022】
これら各例の条件で製造された鋼管について、寸法精度(外径偏差、内径偏差、肉厚偏差)を測定した。外径偏差および内径偏差は、管の円周方向断面を画像解析して、真円からの最大偏差(すなわち(最大径−最小径)/真円径×100 %)を円周方向に算出することにより求めた。また、肉厚偏差は、管の円周方向断面を画像解析して、肉厚断面の画像から平均肉厚に対する最大偏差(すなわち(最大肉厚−最小肉厚)/平均肉厚×100 %)として直接測定した。また、加工度の指標として断面硬度を測定した。また、加工後に一定サイズの管が得られたか否かを判断するための指標として上記寸法精度の測定と同時に求めた加工後の管の平均外径と平均肉厚を採用した。これらの結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
表1より、本発明例ではいずれも、加工後の寸法精度が著しく良好であり、プラグとダイスの組合せを変更することで、同一サイズの素管から一定サイズであってしかも加工度の異なる管を得ることができた。これに対し、比較例では、寸法精度が低下するとともに、同一サイズの素管から加工度の異なる管を得ようとすると、一定サイズの外径や肉厚を得ることができなかった。なお、θA<θB、D2<D0のいずれか一方または両方を満たした本発明例では、管内でのプラグのフローティング状態が一段と安定化した。
【0025】
なお、拡管率a(%)=(D1−D0)/D1×100
縮径率b(%)=(D1−D2)/D1×100
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、同一サイズの素管から加工度の異なる一定サイズの管を著しく良好な寸法精度に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概要を示す模式図である。
【図2】従来の冷牽法の概要を示す模式図である。
【図3】従来のロータリー押し込み鍛造法の概要を示す模式図(a)およびそのA−A矢視図(b)である。
【図4】プラグの部分のテーパ角度の説明図である。
【符号の説明】
1 プラグ
1A 拡管部分
1B 縮径部分
2 ダイス(一体型固定ダイス)
3 管押し機
4 管(金属管、鋼管)
5 プラグ
6 ダイス
7 管引き機
8 分割ダイス
9 ロータリー鍛造機
10 引き抜き力
11 押し込み力
12 揺動(復動)
13 管の進行方向に沿わされるプラグ中心軸に平行な直線
Claims (4)
- 同一サイズの素管から加工度の異なる一定サイズの管を高寸法精度に製造する高寸法精度管の製造方法であって、管を拡管および縮径可能なプラグを管内に装入し、ダイスで管の押し抜きを行うことを特徴とする高寸法精度管の製造方法。
- 前記プラグを管内でフローティングさせ、管をダイスに連続して供給することを特徴とする請求項1記載の高寸法精度管の製造方法。
- 前記プラグは、拡管部分のテーパ角度が縮径部分のテーパ角度未満とされたプラグであることを特徴とする請求項1または2に記載の高寸法精度管の製造方法。
- 前記ダイスの出側の管の目標外径を同入側の管の外径未満とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高寸法精度管の製造方法。
Priority Applications (6)
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