JP2005011878A - 電磁波吸収体 - Google Patents
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Abstract
【課題】低廉であり、難燃性に優れ、低比重でもあり、長期にわたり電磁波吸収性能を持続する、電磁波吸収特性に優れた近傍界用電磁波吸収体を提供する。
【解決手段】磁性粉を含む近傍界用電磁波吸収体において、磁性粉の代わりに導電粉を含むことを特徴とする電磁波吸収体。
【選択図】 なし
【解決手段】磁性粉を含む近傍界用電磁波吸収体において、磁性粉の代わりに導電粉を含むことを特徴とする電磁波吸収体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、近傍界用電磁波吸収体、およびこの電磁波吸収体を備えた電磁波発生電子機器用デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、IT技術の進歩により、携帯電話、ノートタイプのパソコンなどデータ転送に使用する信号の周波数がますます高まってきている。同時に、携帯電話におけるメール、画像送信などのように、転送するデータ容量も飛躍的に増大してきている。これら携帯電話などは、その使用形態から、コンパクトかつ軽量であることが持ち運び上必要であるため、これら携帯電話などにおいては、種々のデバイスや装置などが狭い場所に集中して配置されるのが通常である。
【0003】
種々のデバイスや装置などはノイズなどの電磁波を発生するため、上記のような携帯電話などでは、さまざまな電磁波発生源が近接することになり、相互にデータ通信、信号処理に悪影響を与えるだけでなく、駆体外へ高い周波数の電磁波を放射することも多くなる。それらの対策のため、近傍界での電磁波吸収と阻害作用の緩和が求められるようになり、新たな近傍界用電磁波吸収体が開発されてきた。
【0004】
一般的に、電磁波の吸収には、磁性粉を用いた磁気損失または導電粉を用いた誘電損失を利用することが考えられる。しかし、誘電損失を利用した場合、表面抵抗値が小さくなると、遠方界用電磁波吸収体では反射が大きくなり、また近傍界用電磁波吸収体では電子回路などに対する影響が大きくなり、そのため電磁波吸収体として機能しなくなる。
したがって、従来は磁性粉を含む近傍界用電磁波吸収体が開発されてきた。
上記の磁性粉として、例えば、鉄アルミケイ素合金(センダスト)、鉄ニッケル合金(パーマロイ)などの軟磁性金属粉、フェライトなどが挙げられる。
【0005】
これら近傍界用電磁波吸収体は、通常、厚みが1μm前後(表皮厚さ以下)、直径が5〜100μmになるよう、ボールミルなどでフレーク状に加工変形させたセンダスト鋼などの粉末を、大量にゴムまたは樹脂などに配合させて作製される。例えば、特許文献1には、センダスト鋼を含有する電磁波吸収体が開示されている。また、特許文献2には、軟磁性粉を絶縁材料へ添加し混合して得られた電磁波吸収体が開示されている。
【0006】
フレーク状の軟磁性金属粉末を作成する代表的な方法として、下記に示す方法が挙げられる。
(1)所望の金属を混合溶解した後、冷却して得た鋼塊を破砕し、金属粉末を作製した後、アトライターにて、その粉末をたたき延ばし、厚みを1μm程度とすることによりフレーク状の金属粉末を得る方法。
(2)所望の割合で混合溶解した合金を、溶けた状態にて、空気中または水流中に噴霧し、急冷することにより球形粉末を得た後、上記(1)と同様の方法でフレーク状に変形する方法。
上記の二つの方法は、両方とも、特殊な粉末加工機と変形加工機を使用する多工程の加工方法であり、重量あたりのコストが多大となるため、製品コストが高くなる。
【0007】
また、センダスト鋼は、本来、塊状では不燃性であるが、上記のようなフレーク状の金属粉末とすると表面積が著しく増大するため、酸素と接触して容易に酸化反応を起こしやすくなり、その上、この合金の粉末は蓄熱する性質があるため、畜熱された熱により、酸化反応がさらに加速されやすくなる。
また、このため、電子部品近辺に配置される材料として要求される特性の一つである難燃性を、センダスト鋼の粉末などを含有した電磁波吸収体に付与することがきわめて困難となる。
実際、フレーク状の金属粉末と樹脂とを混合した電磁波吸収体を火に近づける燃焼試験を実施した際、この樹脂の燃焼により発生した熱がフレーク状金属粉末に蓄熱され、また酸素との反応が激しくなり、そのため、燃焼が持続する現象がみられた。
したがって、このような合金を含有する電磁波吸収体の難燃化は非常に困難である。
【0008】
同時に、大量の金属粉末を配合することにより、比重が2.5〜4程度の、非常に重い近傍界電磁波吸収体とならざるを得ない。
【0009】
さらに、金属粉末の表面積が大きいため、酸素などと反応して磁性特性を失いやすいので、長期にわたり効果を持続することが困難である。
【0010】
また、非特許文献1には、電磁波の反射を小さくするため、磁性粉の軟磁性金属粉と、導電粉のカーボンとを使用して、透磁率と誘電率を調整した、近傍界用電磁波吸収体が記載されている。しかし、近傍界では磁界が支配的であるため、磁気損失を利用せず、誘電損失のみを利用した電磁波吸収体が、近傍界用として良好な電磁波吸収特性を示すかどうかは明らかにされていなかった。
【0011】
一方、電磁波吸収体には、上記の近傍界用電磁波吸収体以外に、遠方界用電磁波吸収体がある。この遠方界用電磁波吸収体は、例えば特許文献3に記載されたように、ゴム、樹脂、コンクリートなどの基材に導電性カーボンまたはフェライトなどを多量に混合するなどして作製され、ビルや航空機の外面などに貼り付けられるなどして、レーダー波またはテレビ電波などの電磁波の反射を防ぐために用いられる。また、遠方界用電磁波吸収体は、電磁波が到達する面の反対側の面に金属膜などを複層に張り合わせるなどして構成される。遠方界用電磁波吸収体は、一般にXバンド、Kバンドなどの特定の周波数を選択的に吸収するよう設計されている。
【0012】
しかし、近傍界用電磁波吸収体は、上記に述べたようにIT機器などの内部または近傍に設けられ、球面波である電磁波を吸収することが求められる点で、レーダー波の吸収などを目的に電波発生源より遠方に設置され、平面波である電磁波を吸収することが求められる遠方界用電磁波吸収体とは異なる。
したがって、近傍界用電磁波吸収体は、遠方界用電磁波吸収体とは異なる機能が求められているため、遠方界用に設計された電磁波吸収体が近傍界用に使用できるかどうかは明らかではなかった。
【0013】
【特許文献1】
特開平10−79302号公報
【特許文献2】
特開2002−322361号公報
【特許文献3】
特公平6−50799号公報
【非特許文献1】
石黒豊,藤田直志,中島−隆,「伝送線路のノイズ対策用電波吸収体」,工業材料,日刊工業新聞社,2002年11月,第50巻,第12号,p.54−57
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低廉であり、難燃性に優れ、低比重でもある、長期にわたり電磁波吸収性能を持続する、電磁波吸収特性に優れた近傍界用電磁波吸収体を提供する。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、磁性粉を使用せず、磁性粉の代わりに導電性カーボン粒子などの導電粉を使用することにより、上記の課題を解決できる近傍界用電磁波吸収体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明は、磁性粉を含む近傍界用電磁波吸収体において、磁性粉の代わりに導電粉を含む電磁波吸収体に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態として、電磁波吸収用充填材として磁性粉を含まず、磁性粉の代わりに導電粉を含む近傍界用電磁波吸収体が挙げられる。
すなわち、本発明の電磁波吸収体は、導電粉からなる電磁波吸収用充填材を含む近傍界用電磁波吸収体である。
本発明において電磁波吸収用充填材とは、樹脂などの基材に電磁波吸収性を付与するために配合されるもので、導電粉および磁性粉が挙げられる。
【0018】
本発明に使用できる導電粉は、軟磁性を有しておらず、例えば、導電性カーボン粒子、導電性亜鉛華粒子および炭化ケイ素などが挙げられる。本発明においては、これら導電粉を、単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0019】
上記の導電性カーボン粒子は、導電性を有していれば、特に制限されることなく、どのような導電性カーボンの粒子をも使用することができる。例えば、部分的または完全に層状格子構造を有し、少なくとも一方向に導電性を有するカーボン粒子などが挙げられる。
また、本発明に使用される導電性カーボンとして、例えば、無定形炭素、カーボンナノチューブ、フラーレン、黒鉛およびカーボンファイバーなども挙げられる。本発明においては、これら導電性カーボンを、単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0020】
本発明に使用される導電性カーボン粒子の形状は、特に制限されず、球形状、扁平状、鱗片状、フレーク状、星型形状、棒状形状、楕円形状、立方体形状、三角錐形状、繊維形状、線状形状、片状、芋虫状および不定形状など、どのような形状であっても使用することができる。好ましい、形状は扁平状である。
本発明においては、上記のどれか一つの形状を有する導電性カーボンを単独で使用することができるが、相互に異なる形状の導電性カーボンを2種以上併用することもできる。
【0021】
上記の形状を有する導電性カーボン粒子は、慣用の方法により、形成することができる。
【0022】
完全に層状格子構造を有し、少なくとも一方向に導電性を有するカーボンとは、例えば、黒鉛などが挙げられる。
【0023】
上記の黒鉛には、例えば、人造黒鉛、キッシュ黒鉛および天然黒鉛などがある。
【0024】
上記の天然黒鉛には、例えば、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛および土状黒鉛などがある。これら黒鉛は、例えば、鉱物から抽出して得ることができる。
【0025】
上記の人造黒鉛は、例えば、有機物や無定形炭素などを黒鉛化して得ることができる。黒鉛化は、慣用の方法に従い、例えば、無定形炭素などを、空気を遮断して約2,500℃以上、特に約3,000℃付近までの高温で処理することにより行うことができる。
なお、本発明において使用される黒鉛については、その黒鉛化度は、特に制限されず、どのような黒鉛化度の黒鉛をも使用することができる。
【0026】
本発明においては、上記の黒鉛を単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0027】
部分的に層状格子構造を有し、少なくとも一方向に導電性を有するカーボンとは、例えば、上記に示した無定形炭素などの黒鉛化過程の中途において得ることができる、黒鉛化度の低いものなどが挙げられる。
【0028】
また、本発明においては、上記の黒鉛および黒鉛化度の低いものに、さらに処理を加えたものを使用することもできる。例えば、黒鉛層間化合物、高配向性黒鉛、熱分解黒鉛、黒鉛ウイスカー(graphite whisker)、膨張黒鉛および膨張化黒鉛などが挙げられる。本発明においては、これらを、単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0029】
本発明においては、好ましい黒鉛として、膨張性黒鉛および鱗片状黒鉛などが挙げられる。
【0030】
本発明に使用される無定形炭素には、例えば、スス、コークス、カーボンブラック、木炭および活性炭などがある。本発明においては、これらを、単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。これら無定形炭素は、例えば、アセチレンなどのガスを使用した鉱物油の不完全燃焼により得ることができる。
【0031】
本発明の電磁波吸収体が含有する導電性カーボン粒子の量は、所望の電磁波吸収特性が得られる限り特に制限されない。しかし、電磁波吸収性能の点から、例えば上記の黒鉛粒子を、電磁波吸収体の基材100重量部あたり、30重量部以上、特に50重量部以上、とりわけ80重量部以上含有することが好ましく、また、基材の許容度の点から、例えば上記の黒鉛粒子を、電磁波吸収体の基材100重量部あたり、300重量部以下含有することが好ましい。
【0032】
本発明の電磁波吸収体を、慣用の方法に従って、上記の導電粉と基材とを、混合して製造することができる。好ましくは、上記の導電粉が電磁波吸収体中において均一に分散するように、上記の導電粉と基材とを混合して製造する。
【0033】
すなわち、本発明の実施形態として、本発明の電磁波吸収体の製造方法であって、(1)基材に上記の導電粉を添加して混合する工程と、(2)この得られた混合物を成形する工程とを含む方法が挙げられる。
また、本発明の実施形態として、本発明の電磁波吸収体を製造する方法であって、(1)基材を有機溶媒に溶解させる工程と、(2)この得られた溶液に上記の導電粉を添加して混合する工程と、(3)この得られた混合物を成形する工程と、(4)この得られた成形体を乾燥させる工程とを含む方法も挙げられる。
【0034】
なお、上記の製造工程において、混合はニーダー、ドウミキサー、ロールなどを用いて行うことができる。
【0035】
また、本発明の実施形態として、上記の製造方法により得られる電磁波吸収体も挙げられる。
【0036】
本発明に使用できる基材として、例えば、プラスチック、天然および合成の有機ゴム、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴムならびにガラス繊維などの絶縁基材などが挙げられる。好ましくは、ポリウレタン、シリコーンゴム、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンプロピレンジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム(NBR)およびエチレン酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0037】
上記の有機溶媒として、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、塩化エチレン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノールニトロメタン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、クロロベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、ピリジン、ニトロベンゼンおよびフェノールなどが使用することができる。特にキシレン、トルエンおよびメチルエチルケトンなどを使用すると電磁波吸収特性に優れた電磁波吸収体を得ることができる。
本発明において、上記の有機溶媒は単独で使用することも、2種類以上混合して使用することもできる。
【0038】
本発明の電磁波吸収体は、本発明の効果を損なわない限り、導電粉および基材以外の成分、例えば、結合剤および難燃剤などを含むことができる。
【0039】
本発明の実施形態として、さらに導電層を有する本発明の電磁波吸収体が挙げられる。
上記の導電層として、例えば、金属箔、導電性メッシュおよび導電性表面処理により形成される導電性被膜などが挙げられる。
【0040】
上記の導電性表面処理として、例えば、無電解めっきなどのめっき;真空蒸着などの蒸着;イオンプレーティング;スパッタリング;金属溶射;導電性を有する、塗料、ペーストまたは接着剤の塗布;導電性繊維またはフィルムの貼付;蒸着膜のエッチング;およびスパッタエッチングなどが挙げられる。また、これらを単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
【0041】
本発明の電磁波吸収体は、導電層および電磁波吸収層をそれぞれ1層以上積層することができる。また、本発明の電磁波吸収体は、導電層や電磁波吸収層以外にも接着層や保護層などの層を1層以上積層することもできる。
さらに、これらの層の積層順序は特に限定されない。すなわち、導電層と電磁波吸収層の間に、接着層などの層を1層以上介在させることもできるし、また接着層などが場合により介在する導電層と電磁波吸収層の積層体の、片面または両面に、さらに保護層または接着層などの層を1層以上積層することもできる。
導電層の一方の面に、場合により接着層などを介在させて、電磁波吸収層を積層し、さらに、該一方の面の反対側の面に、場合により接着層などを介在させて、電磁波吸収層を積層し、さらに、場合により、この得られた積層体の片面または両面に保護層などを積層して、本発明の電磁波吸収体とすることもできる。
【0042】
本発明の電磁波吸収体においては、導電層の厚さは、特に制限されないが、電子機器の微細化・高密度化に対応できるようにするため、0.3mm以下が好ましく、また導電性能の点から、0.01mm以上が好ましい。
【0043】
本発明の電磁波吸収体においては、電磁波吸収層の厚さは、特に制限されないが、電子機器の微細化・高密度化に対応できるようにするため、3mm以下が好ましく、また電磁波吸収性能の点から、0.05mm以上が好ましい。
【0044】
本発明の実施形態として、本発明の電磁波吸収体を備えた電磁波発生電子機器用デバイスが挙げられる。本発明に使用される電磁波発生電子機器用デバイスとして、例えば電子機器の筐体、回路基板、プリント配線板、電子素子、LSI、ICチップおよびFPC(フレキシブルプリント回路)、ならびに信号線路、例えばケーブルなどが挙げられる。
【0045】
本発明の電磁波発生電子機器用デバイスは、本発明の電磁波吸収体を、慣用の方法で、電磁波発生電子機器用デバイスに装着することで得ることができる。電磁波吸収体が上記の導電層と電磁波吸収層とを有する場合は、該電磁波吸収体を、該電磁波吸収体の導電層側が外側に、該電磁波吸収体の電磁波吸収層側が内側になるように、電磁発生電子機器用デバイスに装着させる。
また、場合により、接着層などの層を介在させて、本発明の電磁波吸収体を、電磁波発生電子機器用デバイスに装着させてもよい。
【0046】
本発明の電磁波吸収体を電磁波発生電子機器用デバイスに装着する場合、該電磁波吸収体を該電磁波発生電子機器用デバイスの全表面に装着することが好ましい。しかし、電磁波発生電子機器用デバイスが他の電子機器部品に、例えば筐体、回路基板またはプリント配線板などに設けられている場合において、その設置面を底面とした場合の、該電磁波発生電子機器用デバイスの側面にのみ本発明の電磁波吸収体を装着することもできる。例えば、図1に示すようにICチップをプリント基板に設置した場合において、該ICチップの側面のみに本発明の電磁波吸収体を装着することもできる。
【0047】
本発明の実施形態として、本発明の電磁波吸収体を含む電磁波吸収用部品が挙げられる。本発明の電磁波吸収用部品は、電磁波発生電子機器用デバイスに装着されて、該電磁波発生電子機器用デバイスから発生した電磁波を吸収するために使用されるものである。例えば、回路基板、プリント配線板、電子素子、LSI、ICチップおよびFPC(フレキシブルプリント回路)、ならびに信号線路、例えばケーブルなどの電子機器用デバイス用の、キャップ、蓋および収納ケースなどが挙げられる。
【0048】
本発明の電磁波吸収用部品は、例えば、図2に示すように凹部を有していて、装着されるべき電磁波発生電子機器用デバイスに、凹部を内側にして被せるようにして使用することができる。また、本発明の電磁波吸収用部品は、例えば、図3に示すような枠状の形態となり、装着されるべき電磁波発生電子機器用デバイスの周囲を囲むようにして使用することもできる。
【0049】
本発明の電磁波吸収用部品は、本発明の電磁波吸収体を、慣用の方法で、例えば、注型、圧縮成形、射出成形、積層などにより製造することができる。
例えば、本発明の電磁波吸収体を、溶融して、注型し、固化させることにより、または加熱加圧することにより、本発明の電磁波吸収用部品を成形することができる。また、本発明の電磁波吸収体を基材に積層させた後、加熱加圧することにより、本発明の電磁波吸収用部品を成形することもできる。
あるいは、本発明の電磁波吸収用部品は、非電磁波吸収材料の成形品を本発明の電磁波吸収体で被覆することにより製造することもできる。
【0050】
本発明の電磁波吸収体または電磁波吸収用部品は、近傍界用に使用することができる。本発明において、近傍界用電磁波吸収体とは、筐体内の電波環境を良好にして、その内部に配置された各種デバイスの性能向上や性能維持を目的とするもので、上記に示したような電磁波発生電子機器用デバイスに装着させ、該電磁波発生電子機器用デバイスから電磁波が発生することを抑制するために使用されるものをいう。
また、本発明の電磁波吸収体または電磁波吸収用部品において、吸収されるべき電磁波の周波数は特に制限されないが、本発明の電磁波吸収体または電磁波吸収用部品は、EMI対策として30MHz〜1GHzの周波数の電磁波を吸収することに好適であり、クロストーキング対策として5.8GHz以下の周波数の電磁波を吸収することに好適である。
【0051】
以下に、本発明を実施例によって詳細に示す。実施例および比較例において、部は重量部を示す。本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0052】
【実施例】
電磁波吸収体の作製
実施例1
ポリウレタン樹脂(ニッポラン5033:日本ポリウレタン製)100部をメチルエチルケトン(鹿1級:関東化学製)600部に溶かし、その中に黒鉛(GR−5:日本黒鉛工業製)を120部添加し、30分間撹拌した。得られた溶液に、硬化剤(コロネートL:日本ポリウレタン製、これをメチルエチルケトンにより濃度10重量%に希釈したもの)10部および触媒(LT−CAT:これをメチルエチルケトンにより濃度10重量%に希釈したもの)5部を添加し1分間撹拌した。これを、シリコーンコートPETフィルム(PET100×2C:ニッパ製)上に流し込み、ロールコーターで厚み350μmになるように余剰分を除き、ドライヤーで120℃、10分間乾燥してシートを得た。得られたシートの厚みは105μmであった。
【0053】
実施例2
シリコーンゴム(TSE3032:GE東芝シリコーン製、A:B=10:1)を混合し、脱泡したもの110部を、トルエン(鹿1級:関東化学製)470部の有機溶媒に溶かし、その中に黒鉛(GR−5:日本黒鉛工業製)を120部添加し、30分間撹拌した。これを、フッ素コートPETフィルム(ユニチカ製)上に流し込み、ロールコーターで厚み350μmになるように余剰分を除き、ドライヤーで120℃、40分間乾燥してシートを得た。得られたシートの厚みは105μmであった。
【0054】
実施例3〜11
エチレン酢酸ビニル共重合体60部と、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム30部と、エチレンプロピレンジエン共重合体10部とを混合し、そこに表1に示す各種黒鉛(日本黒鉛工業製)197部を添加し、ニーダーで混練した後、カレンダー加工により厚み0.3mmのシート状に成形して電磁波吸収体を得た。
【0055】
【表1】
【0056】
比較例1
ポリウレタン樹脂(ニッポラン5033:日本ポリウレタン製)100部をメチルエチルケトン(鹿1級:関東化学製)600部に溶かし、その中に軟磁性粉(i−1:三菱マテリアル製)を120部添加し、30分間撹拌した。得られた溶液に、硬化剤(コロネートL:日本ポリウレタン製、これをメチルエチルケトンにより濃度10重量%に希釈したもの)10部および触媒(LT−CAT:これをメチルエチルケトンにより濃度10重量%に希釈したもの)5部を添加して1分間撹拌した。これを、シリコーンコートPETフィルム(PET100×2C:ニッパ製)上に流し込み、ロールコーターで厚み350μmになるように余剰分を除き、ドライヤーで120℃、10分間乾燥してシートを得た。得られたシートの厚みは105μmであった。
【0057】
比較例2
実施例3〜11と同様にして、電磁波吸収体を作製した。ただし、黒鉛の代わりに、黒鉛と同体積のフレーク状軟磁性金属紛末(商品名DT、同和鉄粉工業社製)を使用した。
【0058】
導電層を有する電磁波吸収体の作製
実施例14
上記で作製した電磁波吸収体を4×5cmに切断したものの表面に、イオンスパッタリング装置(JFC−1500、JEOL製)により、金を照射して、電磁波吸収体を得た。
【0059】
実施例15
上記で作製された電磁波吸収体を4×5cmに切断したものの表面に、市販のアルミニウムの金属塗料〔metaflux、リキッドアルミニウム、(株)テスコ製〕を塗布し、乾燥させて、電磁波吸収体を得た。
【0060】
実施例16
上記で作製した電磁波吸収層を4×5cmに切断したものの表面に、4×5cmの市販の導電メッシュ(MT3−100、日清紡テンペスト(株)製)を160℃の熱圧縮により貼り合わせ、電磁波吸収体を得た。
【0061】
マイクロストリップライン法による電磁波吸収特性の評価
上記で作製された電磁波吸収体の電磁波吸収特性を、森下健およびその他による「マイクロストリップラインの伝送特性に及ぼす磁気損失材料の装着」、電気学会計測研究会資料、社団法人、電気学会、2001年、IM−01−24、p.39−42に記載された方法に従い評価した。
すなわち、図4に示すように、誘電体基板6(FR4:εγ=4.7−j0.1)上に、幅2.8mm、長さ75.0mmストリップ導体を有するマイクロストリップライン5(MSL)に、SMAコネクタ9を介して、同軸ケーブル8により高周波電力を供給し、ネットワークアナライザー4(8720D、HEWLETT PACKARD社製)を用いて、S21を測定した。MSL上に、上記で得られた電磁波吸収体7(40×50×0.4mm)を配置して測定した。
【0062】
実施例1、実施例2および比較例1の電磁波吸収体の電磁波吸収特性を図5に示す。
【0063】
図5より、実施例1と2は、比較例1より良好な電磁波吸収特性を示すことが認められた。
また、本発明に係わる実施例3〜13の電磁波吸収体は良好な電磁波吸収特性を示した。また実施例3〜13の電磁波吸収体は比較例2と同等の電磁波吸収特性も示した。
また、実施例3〜13の電磁波吸収体の比重は1.62と低く、軽量であることも示された。
【0064】
電磁波吸収用部品の製造
実施例17
装着されるべきICの外側の寸法に合わせた形状の金型を使用して、上記の実施例1を圧縮成形して、電磁波吸収用部品を製造した。
【0065】
実施例18
手作業にてPCグラフィックチップの側面および上面に、実施例1の電磁波吸収体を貼りつけた。これを3m法にて50〜1000GHzまでの不要電波輻射を測定したところ、実施例1の電磁波吸収体をPCグラフィックチップの上面のみに貼り付けた場合と比較して、PCグラフィックチップよりの輻射の周波数が著しく減少された。
【0066】
【発明の効果】
本発明の効果を以下に示す。
本発明によれば、電磁波吸収用充填材として磁性粉を含む近傍界用電磁波吸収体において、該磁性粉の代わりに導電粉を含む電磁波吸収体を提供することができる。
本発明の電磁波吸収体または電磁波吸収用部品は、フレーク状の軟磁性金属粉末などの磁性粉を使用しないため、低廉であり、また、難燃性にも優れ、低比重でもある。さらに、本発明の電磁波吸収体は長期にわたり電磁波吸収性能を持続する。
その上、本発明の電磁波吸収体または電磁波吸収用部品は、従来の電磁波吸収体より電磁波吸収特性に優れているので、従来品より厚さを薄くすることができ、携帯電話などの小型機器へのノイズ対策により有用である。
【0067】
本発明に係わる電磁波吸収体または電磁波吸収用部品は、電子機器の筐体内、回路基板、プリント配線板、電子素子、LSI、ICチップおよびFPC(フレキシブルプリント回路)、ならびに信号線路、例えばケーブルなどの電磁波発生電子機器デバイスからの不要なノイズを吸収、抑制する目的に使用される。
【0068】
また、本発明の電磁波吸収体の製造方法によれば、キシレンまたはトルエンなどの有機溶媒を使用し、成形後、乾燥させることにより、電磁波吸収特性の優れた電磁波吸収体を得ることができる。
【0069】
本発明においては、本発明の電磁波吸収体は、電磁波発生電子機器用デバイスの上面および/または側面部分に装着されるため、該電磁波発生電子機器用デバイスの設置面からの電磁波を効率良く吸収することができる。例えば、本発明のの電磁波吸収体または電磁波吸収用部品をプリント配線板上に設けられたICチップに装着する場合であれば、該電磁波吸収体または電磁波吸収用部品の電磁波吸収層がICリードに近くに配置されるため、本発明の電磁波吸収体または電磁波吸収用部品はICリードからプリント配線板に伝わる伝導性ノイズなどに対しローパスフィルターとしてより効果的に働くことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プリント配線板上に設けられたICチップの側面に、本発明の電磁波吸収体を装着した、本発明の一使用例の模式図の断面図である。
【図2】本発明の電磁波吸収用部品の一例の断面図である。
【図3】プリント配線板上に設けられたICチップに、本発明の枠状の電磁波吸収用部品を装着した、本発明の一使用例の模式図である。
【図4】マイクロストリップライン法による測定系の概要を示した図である。
【図5】電磁波吸収特性を示した図である。
【符号の説明】
1 電磁波吸収用部品
2 ICチップ
2a ICチップの上面
2b ICチップの側面
2c ICチップの設置面
3 プリント配線板
4 ネットワークアナライザー
5 マイクロストリップライン
6 誘電体基板
7 電磁波吸収体
8 同軸ケーブル
9 SMAコネクタ
【発明の属する技術分野】
本発明は、近傍界用電磁波吸収体、およびこの電磁波吸収体を備えた電磁波発生電子機器用デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、IT技術の進歩により、携帯電話、ノートタイプのパソコンなどデータ転送に使用する信号の周波数がますます高まってきている。同時に、携帯電話におけるメール、画像送信などのように、転送するデータ容量も飛躍的に増大してきている。これら携帯電話などは、その使用形態から、コンパクトかつ軽量であることが持ち運び上必要であるため、これら携帯電話などにおいては、種々のデバイスや装置などが狭い場所に集中して配置されるのが通常である。
【0003】
種々のデバイスや装置などはノイズなどの電磁波を発生するため、上記のような携帯電話などでは、さまざまな電磁波発生源が近接することになり、相互にデータ通信、信号処理に悪影響を与えるだけでなく、駆体外へ高い周波数の電磁波を放射することも多くなる。それらの対策のため、近傍界での電磁波吸収と阻害作用の緩和が求められるようになり、新たな近傍界用電磁波吸収体が開発されてきた。
【0004】
一般的に、電磁波の吸収には、磁性粉を用いた磁気損失または導電粉を用いた誘電損失を利用することが考えられる。しかし、誘電損失を利用した場合、表面抵抗値が小さくなると、遠方界用電磁波吸収体では反射が大きくなり、また近傍界用電磁波吸収体では電子回路などに対する影響が大きくなり、そのため電磁波吸収体として機能しなくなる。
したがって、従来は磁性粉を含む近傍界用電磁波吸収体が開発されてきた。
上記の磁性粉として、例えば、鉄アルミケイ素合金(センダスト)、鉄ニッケル合金(パーマロイ)などの軟磁性金属粉、フェライトなどが挙げられる。
【0005】
これら近傍界用電磁波吸収体は、通常、厚みが1μm前後(表皮厚さ以下)、直径が5〜100μmになるよう、ボールミルなどでフレーク状に加工変形させたセンダスト鋼などの粉末を、大量にゴムまたは樹脂などに配合させて作製される。例えば、特許文献1には、センダスト鋼を含有する電磁波吸収体が開示されている。また、特許文献2には、軟磁性粉を絶縁材料へ添加し混合して得られた電磁波吸収体が開示されている。
【0006】
フレーク状の軟磁性金属粉末を作成する代表的な方法として、下記に示す方法が挙げられる。
(1)所望の金属を混合溶解した後、冷却して得た鋼塊を破砕し、金属粉末を作製した後、アトライターにて、その粉末をたたき延ばし、厚みを1μm程度とすることによりフレーク状の金属粉末を得る方法。
(2)所望の割合で混合溶解した合金を、溶けた状態にて、空気中または水流中に噴霧し、急冷することにより球形粉末を得た後、上記(1)と同様の方法でフレーク状に変形する方法。
上記の二つの方法は、両方とも、特殊な粉末加工機と変形加工機を使用する多工程の加工方法であり、重量あたりのコストが多大となるため、製品コストが高くなる。
【0007】
また、センダスト鋼は、本来、塊状では不燃性であるが、上記のようなフレーク状の金属粉末とすると表面積が著しく増大するため、酸素と接触して容易に酸化反応を起こしやすくなり、その上、この合金の粉末は蓄熱する性質があるため、畜熱された熱により、酸化反応がさらに加速されやすくなる。
また、このため、電子部品近辺に配置される材料として要求される特性の一つである難燃性を、センダスト鋼の粉末などを含有した電磁波吸収体に付与することがきわめて困難となる。
実際、フレーク状の金属粉末と樹脂とを混合した電磁波吸収体を火に近づける燃焼試験を実施した際、この樹脂の燃焼により発生した熱がフレーク状金属粉末に蓄熱され、また酸素との反応が激しくなり、そのため、燃焼が持続する現象がみられた。
したがって、このような合金を含有する電磁波吸収体の難燃化は非常に困難である。
【0008】
同時に、大量の金属粉末を配合することにより、比重が2.5〜4程度の、非常に重い近傍界電磁波吸収体とならざるを得ない。
【0009】
さらに、金属粉末の表面積が大きいため、酸素などと反応して磁性特性を失いやすいので、長期にわたり効果を持続することが困難である。
【0010】
また、非特許文献1には、電磁波の反射を小さくするため、磁性粉の軟磁性金属粉と、導電粉のカーボンとを使用して、透磁率と誘電率を調整した、近傍界用電磁波吸収体が記載されている。しかし、近傍界では磁界が支配的であるため、磁気損失を利用せず、誘電損失のみを利用した電磁波吸収体が、近傍界用として良好な電磁波吸収特性を示すかどうかは明らかにされていなかった。
【0011】
一方、電磁波吸収体には、上記の近傍界用電磁波吸収体以外に、遠方界用電磁波吸収体がある。この遠方界用電磁波吸収体は、例えば特許文献3に記載されたように、ゴム、樹脂、コンクリートなどの基材に導電性カーボンまたはフェライトなどを多量に混合するなどして作製され、ビルや航空機の外面などに貼り付けられるなどして、レーダー波またはテレビ電波などの電磁波の反射を防ぐために用いられる。また、遠方界用電磁波吸収体は、電磁波が到達する面の反対側の面に金属膜などを複層に張り合わせるなどして構成される。遠方界用電磁波吸収体は、一般にXバンド、Kバンドなどの特定の周波数を選択的に吸収するよう設計されている。
【0012】
しかし、近傍界用電磁波吸収体は、上記に述べたようにIT機器などの内部または近傍に設けられ、球面波である電磁波を吸収することが求められる点で、レーダー波の吸収などを目的に電波発生源より遠方に設置され、平面波である電磁波を吸収することが求められる遠方界用電磁波吸収体とは異なる。
したがって、近傍界用電磁波吸収体は、遠方界用電磁波吸収体とは異なる機能が求められているため、遠方界用に設計された電磁波吸収体が近傍界用に使用できるかどうかは明らかではなかった。
【0013】
【特許文献1】
特開平10−79302号公報
【特許文献2】
特開2002−322361号公報
【特許文献3】
特公平6−50799号公報
【非特許文献1】
石黒豊,藤田直志,中島−隆,「伝送線路のノイズ対策用電波吸収体」,工業材料,日刊工業新聞社,2002年11月,第50巻,第12号,p.54−57
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低廉であり、難燃性に優れ、低比重でもある、長期にわたり電磁波吸収性能を持続する、電磁波吸収特性に優れた近傍界用電磁波吸収体を提供する。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、磁性粉を使用せず、磁性粉の代わりに導電性カーボン粒子などの導電粉を使用することにより、上記の課題を解決できる近傍界用電磁波吸収体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明は、磁性粉を含む近傍界用電磁波吸収体において、磁性粉の代わりに導電粉を含む電磁波吸収体に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態として、電磁波吸収用充填材として磁性粉を含まず、磁性粉の代わりに導電粉を含む近傍界用電磁波吸収体が挙げられる。
すなわち、本発明の電磁波吸収体は、導電粉からなる電磁波吸収用充填材を含む近傍界用電磁波吸収体である。
本発明において電磁波吸収用充填材とは、樹脂などの基材に電磁波吸収性を付与するために配合されるもので、導電粉および磁性粉が挙げられる。
【0018】
本発明に使用できる導電粉は、軟磁性を有しておらず、例えば、導電性カーボン粒子、導電性亜鉛華粒子および炭化ケイ素などが挙げられる。本発明においては、これら導電粉を、単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0019】
上記の導電性カーボン粒子は、導電性を有していれば、特に制限されることなく、どのような導電性カーボンの粒子をも使用することができる。例えば、部分的または完全に層状格子構造を有し、少なくとも一方向に導電性を有するカーボン粒子などが挙げられる。
また、本発明に使用される導電性カーボンとして、例えば、無定形炭素、カーボンナノチューブ、フラーレン、黒鉛およびカーボンファイバーなども挙げられる。本発明においては、これら導電性カーボンを、単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0020】
本発明に使用される導電性カーボン粒子の形状は、特に制限されず、球形状、扁平状、鱗片状、フレーク状、星型形状、棒状形状、楕円形状、立方体形状、三角錐形状、繊維形状、線状形状、片状、芋虫状および不定形状など、どのような形状であっても使用することができる。好ましい、形状は扁平状である。
本発明においては、上記のどれか一つの形状を有する導電性カーボンを単独で使用することができるが、相互に異なる形状の導電性カーボンを2種以上併用することもできる。
【0021】
上記の形状を有する導電性カーボン粒子は、慣用の方法により、形成することができる。
【0022】
完全に層状格子構造を有し、少なくとも一方向に導電性を有するカーボンとは、例えば、黒鉛などが挙げられる。
【0023】
上記の黒鉛には、例えば、人造黒鉛、キッシュ黒鉛および天然黒鉛などがある。
【0024】
上記の天然黒鉛には、例えば、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛および土状黒鉛などがある。これら黒鉛は、例えば、鉱物から抽出して得ることができる。
【0025】
上記の人造黒鉛は、例えば、有機物や無定形炭素などを黒鉛化して得ることができる。黒鉛化は、慣用の方法に従い、例えば、無定形炭素などを、空気を遮断して約2,500℃以上、特に約3,000℃付近までの高温で処理することにより行うことができる。
なお、本発明において使用される黒鉛については、その黒鉛化度は、特に制限されず、どのような黒鉛化度の黒鉛をも使用することができる。
【0026】
本発明においては、上記の黒鉛を単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0027】
部分的に層状格子構造を有し、少なくとも一方向に導電性を有するカーボンとは、例えば、上記に示した無定形炭素などの黒鉛化過程の中途において得ることができる、黒鉛化度の低いものなどが挙げられる。
【0028】
また、本発明においては、上記の黒鉛および黒鉛化度の低いものに、さらに処理を加えたものを使用することもできる。例えば、黒鉛層間化合物、高配向性黒鉛、熱分解黒鉛、黒鉛ウイスカー(graphite whisker)、膨張黒鉛および膨張化黒鉛などが挙げられる。本発明においては、これらを、単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0029】
本発明においては、好ましい黒鉛として、膨張性黒鉛および鱗片状黒鉛などが挙げられる。
【0030】
本発明に使用される無定形炭素には、例えば、スス、コークス、カーボンブラック、木炭および活性炭などがある。本発明においては、これらを、単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。これら無定形炭素は、例えば、アセチレンなどのガスを使用した鉱物油の不完全燃焼により得ることができる。
【0031】
本発明の電磁波吸収体が含有する導電性カーボン粒子の量は、所望の電磁波吸収特性が得られる限り特に制限されない。しかし、電磁波吸収性能の点から、例えば上記の黒鉛粒子を、電磁波吸収体の基材100重量部あたり、30重量部以上、特に50重量部以上、とりわけ80重量部以上含有することが好ましく、また、基材の許容度の点から、例えば上記の黒鉛粒子を、電磁波吸収体の基材100重量部あたり、300重量部以下含有することが好ましい。
【0032】
本発明の電磁波吸収体を、慣用の方法に従って、上記の導電粉と基材とを、混合して製造することができる。好ましくは、上記の導電粉が電磁波吸収体中において均一に分散するように、上記の導電粉と基材とを混合して製造する。
【0033】
すなわち、本発明の実施形態として、本発明の電磁波吸収体の製造方法であって、(1)基材に上記の導電粉を添加して混合する工程と、(2)この得られた混合物を成形する工程とを含む方法が挙げられる。
また、本発明の実施形態として、本発明の電磁波吸収体を製造する方法であって、(1)基材を有機溶媒に溶解させる工程と、(2)この得られた溶液に上記の導電粉を添加して混合する工程と、(3)この得られた混合物を成形する工程と、(4)この得られた成形体を乾燥させる工程とを含む方法も挙げられる。
【0034】
なお、上記の製造工程において、混合はニーダー、ドウミキサー、ロールなどを用いて行うことができる。
【0035】
また、本発明の実施形態として、上記の製造方法により得られる電磁波吸収体も挙げられる。
【0036】
本発明に使用できる基材として、例えば、プラスチック、天然および合成の有機ゴム、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴムならびにガラス繊維などの絶縁基材などが挙げられる。好ましくは、ポリウレタン、シリコーンゴム、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンプロピレンジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム(NBR)およびエチレン酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0037】
上記の有機溶媒として、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、塩化エチレン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノールニトロメタン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、クロロベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、ピリジン、ニトロベンゼンおよびフェノールなどが使用することができる。特にキシレン、トルエンおよびメチルエチルケトンなどを使用すると電磁波吸収特性に優れた電磁波吸収体を得ることができる。
本発明において、上記の有機溶媒は単独で使用することも、2種類以上混合して使用することもできる。
【0038】
本発明の電磁波吸収体は、本発明の効果を損なわない限り、導電粉および基材以外の成分、例えば、結合剤および難燃剤などを含むことができる。
【0039】
本発明の実施形態として、さらに導電層を有する本発明の電磁波吸収体が挙げられる。
上記の導電層として、例えば、金属箔、導電性メッシュおよび導電性表面処理により形成される導電性被膜などが挙げられる。
【0040】
上記の導電性表面処理として、例えば、無電解めっきなどのめっき;真空蒸着などの蒸着;イオンプレーティング;スパッタリング;金属溶射;導電性を有する、塗料、ペーストまたは接着剤の塗布;導電性繊維またはフィルムの貼付;蒸着膜のエッチング;およびスパッタエッチングなどが挙げられる。また、これらを単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
【0041】
本発明の電磁波吸収体は、導電層および電磁波吸収層をそれぞれ1層以上積層することができる。また、本発明の電磁波吸収体は、導電層や電磁波吸収層以外にも接着層や保護層などの層を1層以上積層することもできる。
さらに、これらの層の積層順序は特に限定されない。すなわち、導電層と電磁波吸収層の間に、接着層などの層を1層以上介在させることもできるし、また接着層などが場合により介在する導電層と電磁波吸収層の積層体の、片面または両面に、さらに保護層または接着層などの層を1層以上積層することもできる。
導電層の一方の面に、場合により接着層などを介在させて、電磁波吸収層を積層し、さらに、該一方の面の反対側の面に、場合により接着層などを介在させて、電磁波吸収層を積層し、さらに、場合により、この得られた積層体の片面または両面に保護層などを積層して、本発明の電磁波吸収体とすることもできる。
【0042】
本発明の電磁波吸収体においては、導電層の厚さは、特に制限されないが、電子機器の微細化・高密度化に対応できるようにするため、0.3mm以下が好ましく、また導電性能の点から、0.01mm以上が好ましい。
【0043】
本発明の電磁波吸収体においては、電磁波吸収層の厚さは、特に制限されないが、電子機器の微細化・高密度化に対応できるようにするため、3mm以下が好ましく、また電磁波吸収性能の点から、0.05mm以上が好ましい。
【0044】
本発明の実施形態として、本発明の電磁波吸収体を備えた電磁波発生電子機器用デバイスが挙げられる。本発明に使用される電磁波発生電子機器用デバイスとして、例えば電子機器の筐体、回路基板、プリント配線板、電子素子、LSI、ICチップおよびFPC(フレキシブルプリント回路)、ならびに信号線路、例えばケーブルなどが挙げられる。
【0045】
本発明の電磁波発生電子機器用デバイスは、本発明の電磁波吸収体を、慣用の方法で、電磁波発生電子機器用デバイスに装着することで得ることができる。電磁波吸収体が上記の導電層と電磁波吸収層とを有する場合は、該電磁波吸収体を、該電磁波吸収体の導電層側が外側に、該電磁波吸収体の電磁波吸収層側が内側になるように、電磁発生電子機器用デバイスに装着させる。
また、場合により、接着層などの層を介在させて、本発明の電磁波吸収体を、電磁波発生電子機器用デバイスに装着させてもよい。
【0046】
本発明の電磁波吸収体を電磁波発生電子機器用デバイスに装着する場合、該電磁波吸収体を該電磁波発生電子機器用デバイスの全表面に装着することが好ましい。しかし、電磁波発生電子機器用デバイスが他の電子機器部品に、例えば筐体、回路基板またはプリント配線板などに設けられている場合において、その設置面を底面とした場合の、該電磁波発生電子機器用デバイスの側面にのみ本発明の電磁波吸収体を装着することもできる。例えば、図1に示すようにICチップをプリント基板に設置した場合において、該ICチップの側面のみに本発明の電磁波吸収体を装着することもできる。
【0047】
本発明の実施形態として、本発明の電磁波吸収体を含む電磁波吸収用部品が挙げられる。本発明の電磁波吸収用部品は、電磁波発生電子機器用デバイスに装着されて、該電磁波発生電子機器用デバイスから発生した電磁波を吸収するために使用されるものである。例えば、回路基板、プリント配線板、電子素子、LSI、ICチップおよびFPC(フレキシブルプリント回路)、ならびに信号線路、例えばケーブルなどの電子機器用デバイス用の、キャップ、蓋および収納ケースなどが挙げられる。
【0048】
本発明の電磁波吸収用部品は、例えば、図2に示すように凹部を有していて、装着されるべき電磁波発生電子機器用デバイスに、凹部を内側にして被せるようにして使用することができる。また、本発明の電磁波吸収用部品は、例えば、図3に示すような枠状の形態となり、装着されるべき電磁波発生電子機器用デバイスの周囲を囲むようにして使用することもできる。
【0049】
本発明の電磁波吸収用部品は、本発明の電磁波吸収体を、慣用の方法で、例えば、注型、圧縮成形、射出成形、積層などにより製造することができる。
例えば、本発明の電磁波吸収体を、溶融して、注型し、固化させることにより、または加熱加圧することにより、本発明の電磁波吸収用部品を成形することができる。また、本発明の電磁波吸収体を基材に積層させた後、加熱加圧することにより、本発明の電磁波吸収用部品を成形することもできる。
あるいは、本発明の電磁波吸収用部品は、非電磁波吸収材料の成形品を本発明の電磁波吸収体で被覆することにより製造することもできる。
【0050】
本発明の電磁波吸収体または電磁波吸収用部品は、近傍界用に使用することができる。本発明において、近傍界用電磁波吸収体とは、筐体内の電波環境を良好にして、その内部に配置された各種デバイスの性能向上や性能維持を目的とするもので、上記に示したような電磁波発生電子機器用デバイスに装着させ、該電磁波発生電子機器用デバイスから電磁波が発生することを抑制するために使用されるものをいう。
また、本発明の電磁波吸収体または電磁波吸収用部品において、吸収されるべき電磁波の周波数は特に制限されないが、本発明の電磁波吸収体または電磁波吸収用部品は、EMI対策として30MHz〜1GHzの周波数の電磁波を吸収することに好適であり、クロストーキング対策として5.8GHz以下の周波数の電磁波を吸収することに好適である。
【0051】
以下に、本発明を実施例によって詳細に示す。実施例および比較例において、部は重量部を示す。本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0052】
【実施例】
電磁波吸収体の作製
実施例1
ポリウレタン樹脂(ニッポラン5033:日本ポリウレタン製)100部をメチルエチルケトン(鹿1級:関東化学製)600部に溶かし、その中に黒鉛(GR−5:日本黒鉛工業製)を120部添加し、30分間撹拌した。得られた溶液に、硬化剤(コロネートL:日本ポリウレタン製、これをメチルエチルケトンにより濃度10重量%に希釈したもの)10部および触媒(LT−CAT:これをメチルエチルケトンにより濃度10重量%に希釈したもの)5部を添加し1分間撹拌した。これを、シリコーンコートPETフィルム(PET100×2C:ニッパ製)上に流し込み、ロールコーターで厚み350μmになるように余剰分を除き、ドライヤーで120℃、10分間乾燥してシートを得た。得られたシートの厚みは105μmであった。
【0053】
実施例2
シリコーンゴム(TSE3032:GE東芝シリコーン製、A:B=10:1)を混合し、脱泡したもの110部を、トルエン(鹿1級:関東化学製)470部の有機溶媒に溶かし、その中に黒鉛(GR−5:日本黒鉛工業製)を120部添加し、30分間撹拌した。これを、フッ素コートPETフィルム(ユニチカ製)上に流し込み、ロールコーターで厚み350μmになるように余剰分を除き、ドライヤーで120℃、40分間乾燥してシートを得た。得られたシートの厚みは105μmであった。
【0054】
実施例3〜11
エチレン酢酸ビニル共重合体60部と、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム30部と、エチレンプロピレンジエン共重合体10部とを混合し、そこに表1に示す各種黒鉛(日本黒鉛工業製)197部を添加し、ニーダーで混練した後、カレンダー加工により厚み0.3mmのシート状に成形して電磁波吸収体を得た。
【0055】
【表1】
【0056】
比較例1
ポリウレタン樹脂(ニッポラン5033:日本ポリウレタン製)100部をメチルエチルケトン(鹿1級:関東化学製)600部に溶かし、その中に軟磁性粉(i−1:三菱マテリアル製)を120部添加し、30分間撹拌した。得られた溶液に、硬化剤(コロネートL:日本ポリウレタン製、これをメチルエチルケトンにより濃度10重量%に希釈したもの)10部および触媒(LT−CAT:これをメチルエチルケトンにより濃度10重量%に希釈したもの)5部を添加して1分間撹拌した。これを、シリコーンコートPETフィルム(PET100×2C:ニッパ製)上に流し込み、ロールコーターで厚み350μmになるように余剰分を除き、ドライヤーで120℃、10分間乾燥してシートを得た。得られたシートの厚みは105μmであった。
【0057】
比較例2
実施例3〜11と同様にして、電磁波吸収体を作製した。ただし、黒鉛の代わりに、黒鉛と同体積のフレーク状軟磁性金属紛末(商品名DT、同和鉄粉工業社製)を使用した。
【0058】
導電層を有する電磁波吸収体の作製
実施例14
上記で作製した電磁波吸収体を4×5cmに切断したものの表面に、イオンスパッタリング装置(JFC−1500、JEOL製)により、金を照射して、電磁波吸収体を得た。
【0059】
実施例15
上記で作製された電磁波吸収体を4×5cmに切断したものの表面に、市販のアルミニウムの金属塗料〔metaflux、リキッドアルミニウム、(株)テスコ製〕を塗布し、乾燥させて、電磁波吸収体を得た。
【0060】
実施例16
上記で作製した電磁波吸収層を4×5cmに切断したものの表面に、4×5cmの市販の導電メッシュ(MT3−100、日清紡テンペスト(株)製)を160℃の熱圧縮により貼り合わせ、電磁波吸収体を得た。
【0061】
マイクロストリップライン法による電磁波吸収特性の評価
上記で作製された電磁波吸収体の電磁波吸収特性を、森下健およびその他による「マイクロストリップラインの伝送特性に及ぼす磁気損失材料の装着」、電気学会計測研究会資料、社団法人、電気学会、2001年、IM−01−24、p.39−42に記載された方法に従い評価した。
すなわち、図4に示すように、誘電体基板6(FR4:εγ=4.7−j0.1)上に、幅2.8mm、長さ75.0mmストリップ導体を有するマイクロストリップライン5(MSL)に、SMAコネクタ9を介して、同軸ケーブル8により高周波電力を供給し、ネットワークアナライザー4(8720D、HEWLETT PACKARD社製)を用いて、S21を測定した。MSL上に、上記で得られた電磁波吸収体7(40×50×0.4mm)を配置して測定した。
【0062】
実施例1、実施例2および比較例1の電磁波吸収体の電磁波吸収特性を図5に示す。
【0063】
図5より、実施例1と2は、比較例1より良好な電磁波吸収特性を示すことが認められた。
また、本発明に係わる実施例3〜13の電磁波吸収体は良好な電磁波吸収特性を示した。また実施例3〜13の電磁波吸収体は比較例2と同等の電磁波吸収特性も示した。
また、実施例3〜13の電磁波吸収体の比重は1.62と低く、軽量であることも示された。
【0064】
電磁波吸収用部品の製造
実施例17
装着されるべきICの外側の寸法に合わせた形状の金型を使用して、上記の実施例1を圧縮成形して、電磁波吸収用部品を製造した。
【0065】
実施例18
手作業にてPCグラフィックチップの側面および上面に、実施例1の電磁波吸収体を貼りつけた。これを3m法にて50〜1000GHzまでの不要電波輻射を測定したところ、実施例1の電磁波吸収体をPCグラフィックチップの上面のみに貼り付けた場合と比較して、PCグラフィックチップよりの輻射の周波数が著しく減少された。
【0066】
【発明の効果】
本発明の効果を以下に示す。
本発明によれば、電磁波吸収用充填材として磁性粉を含む近傍界用電磁波吸収体において、該磁性粉の代わりに導電粉を含む電磁波吸収体を提供することができる。
本発明の電磁波吸収体または電磁波吸収用部品は、フレーク状の軟磁性金属粉末などの磁性粉を使用しないため、低廉であり、また、難燃性にも優れ、低比重でもある。さらに、本発明の電磁波吸収体は長期にわたり電磁波吸収性能を持続する。
その上、本発明の電磁波吸収体または電磁波吸収用部品は、従来の電磁波吸収体より電磁波吸収特性に優れているので、従来品より厚さを薄くすることができ、携帯電話などの小型機器へのノイズ対策により有用である。
【0067】
本発明に係わる電磁波吸収体または電磁波吸収用部品は、電子機器の筐体内、回路基板、プリント配線板、電子素子、LSI、ICチップおよびFPC(フレキシブルプリント回路)、ならびに信号線路、例えばケーブルなどの電磁波発生電子機器デバイスからの不要なノイズを吸収、抑制する目的に使用される。
【0068】
また、本発明の電磁波吸収体の製造方法によれば、キシレンまたはトルエンなどの有機溶媒を使用し、成形後、乾燥させることにより、電磁波吸収特性の優れた電磁波吸収体を得ることができる。
【0069】
本発明においては、本発明の電磁波吸収体は、電磁波発生電子機器用デバイスの上面および/または側面部分に装着されるため、該電磁波発生電子機器用デバイスの設置面からの電磁波を効率良く吸収することができる。例えば、本発明のの電磁波吸収体または電磁波吸収用部品をプリント配線板上に設けられたICチップに装着する場合であれば、該電磁波吸収体または電磁波吸収用部品の電磁波吸収層がICリードに近くに配置されるため、本発明の電磁波吸収体または電磁波吸収用部品はICリードからプリント配線板に伝わる伝導性ノイズなどに対しローパスフィルターとしてより効果的に働くことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プリント配線板上に設けられたICチップの側面に、本発明の電磁波吸収体を装着した、本発明の一使用例の模式図の断面図である。
【図2】本発明の電磁波吸収用部品の一例の断面図である。
【図3】プリント配線板上に設けられたICチップに、本発明の枠状の電磁波吸収用部品を装着した、本発明の一使用例の模式図である。
【図4】マイクロストリップライン法による測定系の概要を示した図である。
【図5】電磁波吸収特性を示した図である。
【符号の説明】
1 電磁波吸収用部品
2 ICチップ
2a ICチップの上面
2b ICチップの側面
2c ICチップの設置面
3 プリント配線板
4 ネットワークアナライザー
5 マイクロストリップライン
6 誘電体基板
7 電磁波吸収体
8 同軸ケーブル
9 SMAコネクタ
Claims (10)
- 磁性粉を含む近傍界用電磁波吸収体において、該磁性粉の代わりに導電粉を含むことを特徴とする電磁波吸収体。
- 導電粉が導電性カーボン粒子である、請求項1記載の電磁波吸収体。
- 導電性カーボン粒子の形状が扁平形状である、請求項2記載の電磁波吸収体。
- 導電性カーボン粒子の全部または一部が、部分的または完全に層状格子構造を有し、少なくとも一方向に導電性を有するカーボン粒子である、請求項2または3記載の電磁波吸収体。
- カーボン粒子が黒鉛粒子である、請求項4記載の電磁波吸収体。
- 請求項5記載の電磁波吸収体であって、該電磁波吸収体の基材100重量部あたり、黒鉛粒子を30〜300重量部含有する電磁波吸収体。
- さらに導電層を有する、請求項1〜6のいずれか一項記載の電磁波吸収体。
- 請求項1〜7のいずれか一項記載の電磁波吸収体を製造する方法であって、(1)基材を有機溶媒に溶解させる工程と、(2)この得られた溶液に導電粉を添加して混合する工程と、(3)この得られた混合物を成形する工程と、(4)この得られた成形体を乾燥させる工程とを含む方法。
- 請求項1〜7のいずれか一項記載の電磁波吸収体を備えた電磁波発生電子機器用デバイス。
- 請求項1〜7のいずれか一項記載の電磁波吸収体を含む電磁波吸収用部品。
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