JP2005010010A - 耐錆性評価試験装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、被試験体を冷却する冷却槽と、冷却した当該被試験体を所定の温度および湿度を有する環境下に保持して結露させる恒温・恒湿槽と、を具備してなり、被試験体の環境変化による錆の発生を評価する耐錆性評価試験装置に関する。
【解決手段】前記の冷却槽と恒温・恒湿槽とが連設され、かつ、前記被試験体がそれらの槽間を往来できる扉を具備してなる。
【選択図】 図1
【解決手段】前記の冷却槽と恒温・恒湿槽とが連設され、かつ、前記被試験体がそれらの槽間を往来できる扉を具備してなる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に家電製品、事務用機械、自動車、工業製品等の部品、電気・電子機器及びそれらの装置等から採取した被試験体を、条件の異なる所定の大気環境を模擬した複数の環境下に曝し、その環境下における被試験体の劣化促進の評価試験に適用するものである。特に、本発明は、めっき鋼板、塗装鋼板等を切断した端部及び折り曲げなどの加工による変形部等に発生する錆の評価に好適に適用し、所定の条件下で被試験体に結露を生じさせ、その被試験体における錆発生を評価する耐錆性評価試験装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
屋外で使用される各種材料の促進耐候性試験等を短期間に行うため、人工環境条件下に試料を曝露しての試験が行われている。
【0003】
従来の促進耐候性試験装置は、加熱加湿装置、紫外線照射装置、噴霧装置等の任意の人工環境を形成する人工環境形成装置を備えているが、試験槽が1槽からなり、ある環境から次の環境に移行する際、次の環境条件を達成するには条件の差異(例えば、両環境の温度や湿度の落差等) の程度、装置の大きさなどにより異なるが少なくとも30分以上待たなければならないことがある。
【0004】
このような場合、次の環境に曝す時間が十分長ければ、ある環境から次の環境に移行する際の変化の被試験体への影響が小さいので、30分以上の移行時間もそれほど問題になることはない。しかし、ある環境から次の環境に移行する際の変化が被試験体に影響する場合は、大きな問題となる。例えば、結露の評価試験がこれに該当する。
【0005】
すなわち、ある温度と湿度の条件の大気環境下に、その環境温度よりも低い露点以下の温度とした被試験体を導入すると、被試験体の表面に瞬時に結露し、その結露による劣化の度合いを種々評価、試験することができる。
【0006】
しかし、このような結露試験を行う場合、先に示した従来の装置では、ある環境条件から別の環境条件に移行するのに時間がかかるため、温度にして数℃の露点の変化に正確に追随できず、評価が困難になる。
【0007】
そのため、図6に示すように、2つの環境条件を備えた2つの槽を別々に用意して、試験することも行われている。
【0008】
すなわち、被試験体3を冷却槽1に入れ、その被試験体3を評価する温度・湿度とは異なる露点以下となる環境条件下で冷却し、被試験体3が冷却されて安定したところですばやく扉4aを開けて取出し、恒温・恒湿槽2に入れてその扉4bをすばやく閉めるようにする。
【0009】
ところで、図6の装置では、槽内に計測装置を備えていないため、槽内から被試験体を人の手で取出し、光沢計、色差計、化学発光測定器等の計測装置で計測し、また新しい試料を槽内に入れて、試験を継続することになる。そのため、非効率であり、また、試料の表面状態が、人の手、または、外部環境に触れることなどの要因によって試験条件が変化し、計測結果に異常値を発生しやすく、データのバラツキの原因にもなっていた。そのため、特許文献1では、試験装置内に計測装置を設けることにより、試験後に試料を装置外に取出すことなく、そのまま計測が可能な促進耐候性試験装置が提案されている。
【0010】
すなわち、特許文献1には、試料が人の手に触れられ、また、大気環境等の外的要因によって劣化することによる測定値のバラツキを少なくし、正確な計測結果が得られる促進耐候性試験装置を得ることを目的として、人工環境形成装置を備え、これにより形成される人工環境下に試料を曝露して、促進耐候性試験を行う試験室と、促進耐候性試験を行った試料の性状を計測する計測器を備えた計測室とを開閉可能なシャッタで遮断する構成としてなる促進耐候性試験装置が開示されている。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−229905号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の2つの槽を別々に用意する場合、槽から別の槽への移動には若干時間がかかり、その間に大気中の温度と湿度の影響を受けるため、その分を考慮しておく必要がある。大気中の温度と湿度が恒温・恒湿槽の環境よりも高い場合は、移動時に温度上昇するので冷却温度を予め低くしておき、逆に低い場合は、移動時に温度降下するので冷却温度を予め高くするなどの工夫が必要となり、一定条件下での試験をするには、そのための条件出しをしなければならない。
【0013】
また、大気中の温度と湿度の変動により、取り出し時における恒温・恒湿槽での結露膜厚が異なるので、年間を通じて一定の条件で試験を実施することが困難となる。
【0014】
なお、特許文献1には、促進耐候性試験を行う試験室と、促進耐候性試験を行った試料の性状を計測する計測器を備えた計測室とを開閉可能なシャッタで遮断する構成が開示されているが、各室の環境条件を同等とすることが前提とされており、被試験体に環境変化を起こさせることはできない。また、環境を変化させた所定の条件下で結露を生じさせることもできない。
【0015】
本発明は、条件の異なる所定の大気環境を模擬した複数の環境下に曝し、その環境下における被試験体の劣化促進の評価試験、特に、結露を生じさせて錆発生を評価する試験に好適に適用することができ、再現性が高く、高精度の評価試験を行うことができる耐錆性評価試験装置を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ある1つの大気環境から他の1つ以上の大気環境に順次繰り返して被試験体を暴露させることにより被試験体の環境劣化の促進を図り、その環境劣化に対する評価を行うことを目的とした耐錆性評価試験装置に関し、特に、冷却槽と恒温・恒湿槽の2槽間で被試験体を移動させることで錆を発生させ、その評価を好適に行うものである。
【0017】
その構造は、2つの環境が相互に干渉されることのないように開閉式の扉で隔離した環境の異なる少なくとも2つの槽からなる。なお、3つ以上の環境の異なる槽を連接設置して構成してもよいことは言うまでもない。その場合、被試験体が第1槽から第2槽、更には第2槽以降のもう1つ以上の槽へ、逆に、第2槽あるいは第2槽以降の槽から元の第1槽へと移動することが続けて繰返し可能であるように構成する。
【0018】
さらに、その槽間移動の際に扉が移動を妨げることのないように開扉し、かつ移動完了後には、元の環境を維持するために閉扉して隔離可能とする。特に、このような槽間移動を短時間に完了させ、槽間相互の干渉の影響を極力少なくするようにする。
【0019】
すなわち、本発明は、被試験体を冷却する冷却槽と、冷却した当該被試験体を所定の温度および湿度を有する雰囲気下に保持して結露させる恒温・恒湿槽と、を具備してなり、被試験体の環境変化による錆の発生を評価する耐錆性評価試験装置であって、前記の冷却槽と恒温・恒湿槽とが連設され、かつ、前記被試験体がそれらの槽間を往来できる扉を具備してなることを特徴とする耐錆性評価試験装置の提供によって上記課題を解決した。
【0020】
この発明で、「恒温・恒湿槽」とは、槽内の温度および湿度を所定の条件に制御しうる機能を有する化学機器の呼称であり、いかなる場合でも厳密に一定の温度・湿度であることを意味するものではない。
【0021】
また本発明は、上記試験装置において、前記の冷却槽と恒温・恒湿槽の間に、さらに中間の恒温・恒湿槽を挿入して連設し、それぞれの槽間に扉を具備してなることを好適とするものである。
【0022】
また、前記扉を、高速で開閉する第1の扉と、断熱シール材を具備し密閉可能としてなる第2の扉と、から構成してなることを好適とするものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の耐錆性評価試験装置の好適な実施の形態を図1に基づき説明する。
【0024】
本発明では、図1に示すように、冷却槽(第1槽)11と恒温・恒湿槽(第2槽)12の2つの槽を、開閉用の扉16を介して連設することを特徴とする。また、冷却槽(第1槽)11と恒温・恒湿槽(第2槽)12には、被試験体3を出し入れするための扉14、15を設けておく。これらの扉14〜16は、高速で開閉可能とし、かつ、密閉性の高い構造とすることを好適とする。本発明において、扉の開閉の高速とは、開および閉の動作の開始から完了までの時間が3秒以内で行われることとする。例えば、図1に示すように、上下動するシャッタ形式のものとしてもよいし、また、左右のいずれかに移動して開く構造、あるいは、左右に分かれて移動して開く構造としてもよい。さらには、観音開きとしてもよい。ようするに、扉を開けた際の槽内の環境変化を最小限に止めるように構成する。
【0025】
次に、上記で説明した本発明装置を用いて、被試験体の試験を行う手順を詳細に説明する。
【0026】
まず、金網ホルダ5などで保持した被試験体3をマニピュレータ6に載せ、扉14を開けて冷却槽(第1槽)11内に載置させる。なお、金網ホルダ5を用いるのは、ホルダの熱容量をできるだけ小さくして、槽内に入れた際の影響を最小限にするためである。ホルダとしては、金網ホルダ以外にも、例えば、針山状のピンの上に被試験体を載置する構造のものでもよく、また、熱容量の小さい樹脂製ホルダとすることもできる。
【0027】
冷却槽(第1槽)11内に載置した被試験体3は、槽内に所定時間だけ保持して冷却が行われる。なお、冷却槽の環境は、多少変化しても元の冷却状態に戻るまでに幾分かの時間を要するだけであり、あまり大きな問題ではない。
【0028】
次に、扉16の開閉を行い、冷却した被試験体3を、冷却槽(第1槽)11から恒温・恒湿槽(第2槽)12に移送する。なお、図1では、この槽間移送用のマニピュレータの記載を省略している。
【0029】
ここで、扉16の開閉に際しては、冷却槽(第1槽)11の冷気が恒温・恒湿槽(第2槽)12に流入し、逆に、恒温・恒湿槽(第2槽)12から冷却槽(第1槽)11に恒温・恒湿槽の暖気が流出することが問題となる。そのため、扉16を、高速で開閉可能とし、かつ、密閉性の高い構造とし、十分な断熱性と遮蔽・密閉性を具備させることが好ましい。また、扉の大きさは、被試験体が移送可能な程度の必要最低限の大きさとすればよく、必ずしも槽の一面全部を開口部にする必要はない。
【0030】
特に、扉の開閉の高速性と、閉時の密閉性を両立させるため、図2に示すように、槽の壁面21に、高速で開閉する第1の扉(高速シャッタ)19と、開閉速度は第1の扉(高速シャッタ)19よりも遅いものの、断熱シール材22、23等を具備することで断熱性と密閉性を高めた第2の扉(密閉シャッタ)20を併置することを好適とする。扉をこのように構成することで、被試験体3を移動する際に、あらかじめ第2の扉(密閉シャッタ)20を開けて準備しておき、第1の扉(高速シャッタ)19を開および閉の動作の開始から終了までの時間が好ましくは3秒以内で行なわれるように高速で開閉して、その開状態で被試験体をすばやく移動させ、その後、第2の扉(密閉シャッタ)20を閉めて密閉状態とする。こうすることで被試験体を移動する際の槽内の環境変化を最小限に止めることができる。
【0031】
そして、被試験体3を所定の温度および湿度を有する雰囲気下に保持した恒温・恒湿槽(第2槽)12で結露させ、錆を発生させる。なお、2サイクル目以降の試験で、再度、結露させる場合には、恒温・恒湿槽(第2槽)12から冷却槽(第1槽)11に被試験体3を直接戻してもよいし、また、扉15から大気中に取出して、再度冷却槽(第1槽)11に装入するようにしてもよい。その場合、被試験体が高温から低温に暴露される際は露点が高くなるため結露せず、被試験体に影響を及ぼすことはない。
【0032】
本発明では、前述の通り、被試験体3を冷却槽(第1槽)11から恒温・恒湿槽(第2槽)12に直接移送することができ、大気中に取出す必要がないことから、試験条件を厳密に一定条件となるようにすることができる。
【0033】
さらに、本発明では、恒温・恒湿槽(第2槽)12への冷気侵入等による所定の温度・湿度条件の変化を最小とするため、図3に示すように、冷却槽(第1槽)11と恒温・恒湿槽(第2槽)12の間に、第3の槽となる中間恒温・恒湿槽12a を挿入して連設することを好適とする。こうすることで、中間恒温・恒湿槽12a がバッファの槽となって、被試験体3の移送に際しての恒温・恒湿槽(第2槽)12の環境変化を最小限に止めることができる。すなわち、中間恒温・恒湿槽12a の2つの扉17、18を同時に開けないようにすることで、冷却槽(第1槽)11と恒温・恒湿槽(第2槽)12を完全に独立させることが可能となり、互いに与える影響を最小限に止めることができるようになる。
【0034】
なお、図3における扉17、18を、既に図2において説明した2重扉構造とすれば更に好適となる。
【0035】
ところで、上記で説明した各槽の連設配置としては、左右、上下、前後及びこれらの組み合わせのいずれであってもかまわない。また、各槽は必ずしも同じ大きさである必要はない。被試験体がもつ熱容量、および、高湿度加熱と低湿度冷却の能力にもよるが、被試験体がもつ熱容量が小さければ冷却側の槽の大きさを小さくした方が設定温度まで下げるのに若干時間がかかるものの経済的であると言える。また、むしろ加熱側の恒温・恒湿槽の方を大きくしておき、被試験体がもつ熱容量の移入による設定温度の熱変動を小さくする方が、実験精度の面からも好ましい。
【0036】
被試験体の移送及び扉の開閉には、エアシリンダ方式の採用が好ましい。また、スプリング方式、カム方式、ラック・ピニオン方式、油圧方式等を単独或いは組み合わせて採用することも可能であって、被試験体を迅速に移送可能であればこの他の方式としてもよい。
【0037】
本発明においては、扉16、17、18及び第1の扉19は、開扉から、被試験体移送、閉扉までの一連の動作を、1分以内に完了させることが好ましい。なお、この一連の動作を1分以内とすることが好ましいのは、できるだけ移送時の環境の変化を回避したいためである。従って、さらに好ましくは30秒以内、特に好ましくは15秒以内に完了できれば、環境変化を更に鋭敏に再現することができるので望ましい。また、閉扉後の恒温・恒湿への復帰は、長くとも5分以内にすることが好ましく、さらに好ましくは2分以内、特に好ましくは1分以内とすることが望ましい。この際、被試験体及びそのホルダ、移送用マニピュレータ等が有する熱容量を考慮することが好ましい。
【0038】
本発明の装置では、その詳細の説明を省略するが、少なくとも2つ以上の大気環境を実現させるために、それぞれ個別に温度、湿度を設定、制御できるように、加温、冷却、加湿、除湿等の装置や、槽内の状態を検出するための検出器及び検出値を記録する装置が設置されている。また、被試験体の状態を把握し、被試験体への結露の有無及び結露時間を確認するためにACMセンサ(商品名、北斗電工製)等の結露センサを取り付けるようにしてもよい。
【0039】
なお、本発明装置では、上記の結露試験以外にも、更に、各槽に所要の装置を具備させることで種々の環境を再現することもできる。例えば、水や塩、特に、海塩等をアトマイザ等により噴霧する噴霧装置や、NOx 、SOx などを添加したガスや関東ローム層などの微細な赤土粉塵等を導入する環境等も必要に応じて設定することができる。ただし、その場合には、排気環境等を十分に配慮することが好ましい。
【0040】
【実施例】
(実施例1)
図2に示す扉が扉16、17、18として設置された図1及び図3の本発明の試験装置を適用し、亜鉛めっき鋼板の被試験体(Zn目付量:20g/m2 、板厚1.6mm 、50mm×100mm の冷延鋼板SPCC)に結露を生じさせ、その端部の錆発生状況を評価する試験を行った。
【0041】
ここで、第1槽の冷却槽11は、槽内温度15℃、相対湿度50%に設定し、図1の装置の第2槽12及び図3の装置の第2槽の恒温・恒湿槽12は、槽内温度30℃、相対湿度85%に設定し、さらに図3の装置の第3槽の中間恒温・恒湿槽12a は、槽内温度30℃、相対湿度85%に設定した。扉16、17、18は被試験体3の移動の際に、あらかじめ第2の扉20を開けておき、第1の扉19を開扉から被試験体移送、閉扉までの一連の動作を10秒で完了させ、その後第2の扉20を閉めた。
【0042】
図4に、槽間移送した被試験体の温度変化のグラフを示す。また、図5に、図1の装置における実施例の槽間移送した被試験体の結露状況の推移(すなわち、結露センサ出力の推移)を示す。ここで、結露センサはACMセンサを用いている。
【0043】
以上の結露試験を、夏場と冬場のそれぞれにおいて所定サイクルだけ繰り返し、赤錆発生状況を確認した。なお、本発明の試験装置を適用して実施した本発明例と、比較のため、図6に示すように大気中を介して槽間移送する比較例での結果を表1に対比して示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1から、比較例では、夏場と冬場に赤錆発生状況が異なり、試験結果の再現性が得られていないのに対し、本発明例では、夏場、冬場に関係なく評価試験の高い再現性を得られることが判る。すなわち、本発明装置を用いることで、高精度の大気環境評価を実現できるようになった。
(実施例2)
図2に示す扉が扉16として設置された図1の本発明の試験装置を適用し、黒色鋼板(Zn−Ni合金めっき鋼板(めっき付着量:20g/m2 、Ni:12mass%)を陽極処理してなる黒色化処理鋼板、Zn−Ni合金めっき付着量:10g/m2 、Ni:18mass%、上層のクリア塗装:樹脂付着量1.0 g/m2 、50mm×100mm の冷延鋼板SPCC)を、図7に示すように、プレス機30を用いて90°曲げ加工し、被試験体3aとした。そして、該被試験体3aに結露を生じさせ、その変形部(図8参照)の錆発生状況を評価する試験を行った。結果を表2に示す。結露試験条件、ならびに、第1の扉19と第2の扉20の開閉、 及び被試験体の移送の条件は、実施例1と同じである。
【0046】
なお、比較のため、図6に示すように大気中を介して槽間移送する比較例での結果を表2に対比して示す。
【0047】
本実施例2では、結露試験を、季節状況を勘案して1年の2、5、8、11月のそれぞれで実施し、赤錆発生状況を確認した。なお、表2では、各実施月において赤錆発生面積率5%以上を示すまでのサイクル数を示している。
【0048】
【表2】
【0049】
表2から、比較例では最高値と最低値の差が40サイクルあるのに対し、本発明例では最高値と最低値の差が3サイクルと少なく、高い再現性が得られていることがわかる。
【0050】
すなわち、本発明装置を用いることで、高精度の錆発生評価を実現できるようになった。
【0051】
【発明の効果】
本発明装置を用いることで、被試験体を条件の異なる所定の大気環境を模擬した複数の環境下に曝し、その環境下における劣化促進状態、特に、めっき鋼板、塗装鋼板等を切断した被試験体の端部の錆発生状態の評価を高精度に行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の好適な実施の形態を示す模式図である。
【図2】高速シャッタと密閉シャッタを併置した構成を示す模式図である。
【図3】中間の恒温・恒湿槽を付加した本発明装置の好適な実施の形態を示す模式図である。
【図4】本発明装置(図1、3)及び比較例装置(図6)における被試験体の槽間移動に伴う温度変化を例示するグラフである。
【図5】本発明装置(図1)における被試験体の槽間移動に伴う結露変化を例示するグラフである。
【図6】従来の試験装置の構成を示す模式図である。
【図7】実施例2における90°折り曲げ加工を示す模式図である。
【図8】実施例2において耐錆性評価用の被試験体の変形部を示す模式図である。
【符号の説明】
1 冷却槽
2 恒温・恒湿槽
3、3a 被試験体(結露試験片)
4a、4b 扉
5 金網ホルダ
6 搬送装置(マニピュレータ)
11 冷却槽(第1槽)
12 恒温・恒湿槽(第2槽)
12a 中間恒温・恒湿槽(第3槽)
14〜18 扉(シャッタ)
19 第1の扉(高速シャッタ)
20 第2の扉(密閉シャッタ)
21 槽の壁面
22、23 断熱シール材
30 プレス機
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に家電製品、事務用機械、自動車、工業製品等の部品、電気・電子機器及びそれらの装置等から採取した被試験体を、条件の異なる所定の大気環境を模擬した複数の環境下に曝し、その環境下における被試験体の劣化促進の評価試験に適用するものである。特に、本発明は、めっき鋼板、塗装鋼板等を切断した端部及び折り曲げなどの加工による変形部等に発生する錆の評価に好適に適用し、所定の条件下で被試験体に結露を生じさせ、その被試験体における錆発生を評価する耐錆性評価試験装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
屋外で使用される各種材料の促進耐候性試験等を短期間に行うため、人工環境条件下に試料を曝露しての試験が行われている。
【0003】
従来の促進耐候性試験装置は、加熱加湿装置、紫外線照射装置、噴霧装置等の任意の人工環境を形成する人工環境形成装置を備えているが、試験槽が1槽からなり、ある環境から次の環境に移行する際、次の環境条件を達成するには条件の差異(例えば、両環境の温度や湿度の落差等) の程度、装置の大きさなどにより異なるが少なくとも30分以上待たなければならないことがある。
【0004】
このような場合、次の環境に曝す時間が十分長ければ、ある環境から次の環境に移行する際の変化の被試験体への影響が小さいので、30分以上の移行時間もそれほど問題になることはない。しかし、ある環境から次の環境に移行する際の変化が被試験体に影響する場合は、大きな問題となる。例えば、結露の評価試験がこれに該当する。
【0005】
すなわち、ある温度と湿度の条件の大気環境下に、その環境温度よりも低い露点以下の温度とした被試験体を導入すると、被試験体の表面に瞬時に結露し、その結露による劣化の度合いを種々評価、試験することができる。
【0006】
しかし、このような結露試験を行う場合、先に示した従来の装置では、ある環境条件から別の環境条件に移行するのに時間がかかるため、温度にして数℃の露点の変化に正確に追随できず、評価が困難になる。
【0007】
そのため、図6に示すように、2つの環境条件を備えた2つの槽を別々に用意して、試験することも行われている。
【0008】
すなわち、被試験体3を冷却槽1に入れ、その被試験体3を評価する温度・湿度とは異なる露点以下となる環境条件下で冷却し、被試験体3が冷却されて安定したところですばやく扉4aを開けて取出し、恒温・恒湿槽2に入れてその扉4bをすばやく閉めるようにする。
【0009】
ところで、図6の装置では、槽内に計測装置を備えていないため、槽内から被試験体を人の手で取出し、光沢計、色差計、化学発光測定器等の計測装置で計測し、また新しい試料を槽内に入れて、試験を継続することになる。そのため、非効率であり、また、試料の表面状態が、人の手、または、外部環境に触れることなどの要因によって試験条件が変化し、計測結果に異常値を発生しやすく、データのバラツキの原因にもなっていた。そのため、特許文献1では、試験装置内に計測装置を設けることにより、試験後に試料を装置外に取出すことなく、そのまま計測が可能な促進耐候性試験装置が提案されている。
【0010】
すなわち、特許文献1には、試料が人の手に触れられ、また、大気環境等の外的要因によって劣化することによる測定値のバラツキを少なくし、正確な計測結果が得られる促進耐候性試験装置を得ることを目的として、人工環境形成装置を備え、これにより形成される人工環境下に試料を曝露して、促進耐候性試験を行う試験室と、促進耐候性試験を行った試料の性状を計測する計測器を備えた計測室とを開閉可能なシャッタで遮断する構成としてなる促進耐候性試験装置が開示されている。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−229905号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の2つの槽を別々に用意する場合、槽から別の槽への移動には若干時間がかかり、その間に大気中の温度と湿度の影響を受けるため、その分を考慮しておく必要がある。大気中の温度と湿度が恒温・恒湿槽の環境よりも高い場合は、移動時に温度上昇するので冷却温度を予め低くしておき、逆に低い場合は、移動時に温度降下するので冷却温度を予め高くするなどの工夫が必要となり、一定条件下での試験をするには、そのための条件出しをしなければならない。
【0013】
また、大気中の温度と湿度の変動により、取り出し時における恒温・恒湿槽での結露膜厚が異なるので、年間を通じて一定の条件で試験を実施することが困難となる。
【0014】
なお、特許文献1には、促進耐候性試験を行う試験室と、促進耐候性試験を行った試料の性状を計測する計測器を備えた計測室とを開閉可能なシャッタで遮断する構成が開示されているが、各室の環境条件を同等とすることが前提とされており、被試験体に環境変化を起こさせることはできない。また、環境を変化させた所定の条件下で結露を生じさせることもできない。
【0015】
本発明は、条件の異なる所定の大気環境を模擬した複数の環境下に曝し、その環境下における被試験体の劣化促進の評価試験、特に、結露を生じさせて錆発生を評価する試験に好適に適用することができ、再現性が高く、高精度の評価試験を行うことができる耐錆性評価試験装置を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ある1つの大気環境から他の1つ以上の大気環境に順次繰り返して被試験体を暴露させることにより被試験体の環境劣化の促進を図り、その環境劣化に対する評価を行うことを目的とした耐錆性評価試験装置に関し、特に、冷却槽と恒温・恒湿槽の2槽間で被試験体を移動させることで錆を発生させ、その評価を好適に行うものである。
【0017】
その構造は、2つの環境が相互に干渉されることのないように開閉式の扉で隔離した環境の異なる少なくとも2つの槽からなる。なお、3つ以上の環境の異なる槽を連接設置して構成してもよいことは言うまでもない。その場合、被試験体が第1槽から第2槽、更には第2槽以降のもう1つ以上の槽へ、逆に、第2槽あるいは第2槽以降の槽から元の第1槽へと移動することが続けて繰返し可能であるように構成する。
【0018】
さらに、その槽間移動の際に扉が移動を妨げることのないように開扉し、かつ移動完了後には、元の環境を維持するために閉扉して隔離可能とする。特に、このような槽間移動を短時間に完了させ、槽間相互の干渉の影響を極力少なくするようにする。
【0019】
すなわち、本発明は、被試験体を冷却する冷却槽と、冷却した当該被試験体を所定の温度および湿度を有する雰囲気下に保持して結露させる恒温・恒湿槽と、を具備してなり、被試験体の環境変化による錆の発生を評価する耐錆性評価試験装置であって、前記の冷却槽と恒温・恒湿槽とが連設され、かつ、前記被試験体がそれらの槽間を往来できる扉を具備してなることを特徴とする耐錆性評価試験装置の提供によって上記課題を解決した。
【0020】
この発明で、「恒温・恒湿槽」とは、槽内の温度および湿度を所定の条件に制御しうる機能を有する化学機器の呼称であり、いかなる場合でも厳密に一定の温度・湿度であることを意味するものではない。
【0021】
また本発明は、上記試験装置において、前記の冷却槽と恒温・恒湿槽の間に、さらに中間の恒温・恒湿槽を挿入して連設し、それぞれの槽間に扉を具備してなることを好適とするものである。
【0022】
また、前記扉を、高速で開閉する第1の扉と、断熱シール材を具備し密閉可能としてなる第2の扉と、から構成してなることを好適とするものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の耐錆性評価試験装置の好適な実施の形態を図1に基づき説明する。
【0024】
本発明では、図1に示すように、冷却槽(第1槽)11と恒温・恒湿槽(第2槽)12の2つの槽を、開閉用の扉16を介して連設することを特徴とする。また、冷却槽(第1槽)11と恒温・恒湿槽(第2槽)12には、被試験体3を出し入れするための扉14、15を設けておく。これらの扉14〜16は、高速で開閉可能とし、かつ、密閉性の高い構造とすることを好適とする。本発明において、扉の開閉の高速とは、開および閉の動作の開始から完了までの時間が3秒以内で行われることとする。例えば、図1に示すように、上下動するシャッタ形式のものとしてもよいし、また、左右のいずれかに移動して開く構造、あるいは、左右に分かれて移動して開く構造としてもよい。さらには、観音開きとしてもよい。ようするに、扉を開けた際の槽内の環境変化を最小限に止めるように構成する。
【0025】
次に、上記で説明した本発明装置を用いて、被試験体の試験を行う手順を詳細に説明する。
【0026】
まず、金網ホルダ5などで保持した被試験体3をマニピュレータ6に載せ、扉14を開けて冷却槽(第1槽)11内に載置させる。なお、金網ホルダ5を用いるのは、ホルダの熱容量をできるだけ小さくして、槽内に入れた際の影響を最小限にするためである。ホルダとしては、金網ホルダ以外にも、例えば、針山状のピンの上に被試験体を載置する構造のものでもよく、また、熱容量の小さい樹脂製ホルダとすることもできる。
【0027】
冷却槽(第1槽)11内に載置した被試験体3は、槽内に所定時間だけ保持して冷却が行われる。なお、冷却槽の環境は、多少変化しても元の冷却状態に戻るまでに幾分かの時間を要するだけであり、あまり大きな問題ではない。
【0028】
次に、扉16の開閉を行い、冷却した被試験体3を、冷却槽(第1槽)11から恒温・恒湿槽(第2槽)12に移送する。なお、図1では、この槽間移送用のマニピュレータの記載を省略している。
【0029】
ここで、扉16の開閉に際しては、冷却槽(第1槽)11の冷気が恒温・恒湿槽(第2槽)12に流入し、逆に、恒温・恒湿槽(第2槽)12から冷却槽(第1槽)11に恒温・恒湿槽の暖気が流出することが問題となる。そのため、扉16を、高速で開閉可能とし、かつ、密閉性の高い構造とし、十分な断熱性と遮蔽・密閉性を具備させることが好ましい。また、扉の大きさは、被試験体が移送可能な程度の必要最低限の大きさとすればよく、必ずしも槽の一面全部を開口部にする必要はない。
【0030】
特に、扉の開閉の高速性と、閉時の密閉性を両立させるため、図2に示すように、槽の壁面21に、高速で開閉する第1の扉(高速シャッタ)19と、開閉速度は第1の扉(高速シャッタ)19よりも遅いものの、断熱シール材22、23等を具備することで断熱性と密閉性を高めた第2の扉(密閉シャッタ)20を併置することを好適とする。扉をこのように構成することで、被試験体3を移動する際に、あらかじめ第2の扉(密閉シャッタ)20を開けて準備しておき、第1の扉(高速シャッタ)19を開および閉の動作の開始から終了までの時間が好ましくは3秒以内で行なわれるように高速で開閉して、その開状態で被試験体をすばやく移動させ、その後、第2の扉(密閉シャッタ)20を閉めて密閉状態とする。こうすることで被試験体を移動する際の槽内の環境変化を最小限に止めることができる。
【0031】
そして、被試験体3を所定の温度および湿度を有する雰囲気下に保持した恒温・恒湿槽(第2槽)12で結露させ、錆を発生させる。なお、2サイクル目以降の試験で、再度、結露させる場合には、恒温・恒湿槽(第2槽)12から冷却槽(第1槽)11に被試験体3を直接戻してもよいし、また、扉15から大気中に取出して、再度冷却槽(第1槽)11に装入するようにしてもよい。その場合、被試験体が高温から低温に暴露される際は露点が高くなるため結露せず、被試験体に影響を及ぼすことはない。
【0032】
本発明では、前述の通り、被試験体3を冷却槽(第1槽)11から恒温・恒湿槽(第2槽)12に直接移送することができ、大気中に取出す必要がないことから、試験条件を厳密に一定条件となるようにすることができる。
【0033】
さらに、本発明では、恒温・恒湿槽(第2槽)12への冷気侵入等による所定の温度・湿度条件の変化を最小とするため、図3に示すように、冷却槽(第1槽)11と恒温・恒湿槽(第2槽)12の間に、第3の槽となる中間恒温・恒湿槽12a を挿入して連設することを好適とする。こうすることで、中間恒温・恒湿槽12a がバッファの槽となって、被試験体3の移送に際しての恒温・恒湿槽(第2槽)12の環境変化を最小限に止めることができる。すなわち、中間恒温・恒湿槽12a の2つの扉17、18を同時に開けないようにすることで、冷却槽(第1槽)11と恒温・恒湿槽(第2槽)12を完全に独立させることが可能となり、互いに与える影響を最小限に止めることができるようになる。
【0034】
なお、図3における扉17、18を、既に図2において説明した2重扉構造とすれば更に好適となる。
【0035】
ところで、上記で説明した各槽の連設配置としては、左右、上下、前後及びこれらの組み合わせのいずれであってもかまわない。また、各槽は必ずしも同じ大きさである必要はない。被試験体がもつ熱容量、および、高湿度加熱と低湿度冷却の能力にもよるが、被試験体がもつ熱容量が小さければ冷却側の槽の大きさを小さくした方が設定温度まで下げるのに若干時間がかかるものの経済的であると言える。また、むしろ加熱側の恒温・恒湿槽の方を大きくしておき、被試験体がもつ熱容量の移入による設定温度の熱変動を小さくする方が、実験精度の面からも好ましい。
【0036】
被試験体の移送及び扉の開閉には、エアシリンダ方式の採用が好ましい。また、スプリング方式、カム方式、ラック・ピニオン方式、油圧方式等を単独或いは組み合わせて採用することも可能であって、被試験体を迅速に移送可能であればこの他の方式としてもよい。
【0037】
本発明においては、扉16、17、18及び第1の扉19は、開扉から、被試験体移送、閉扉までの一連の動作を、1分以内に完了させることが好ましい。なお、この一連の動作を1分以内とすることが好ましいのは、できるだけ移送時の環境の変化を回避したいためである。従って、さらに好ましくは30秒以内、特に好ましくは15秒以内に完了できれば、環境変化を更に鋭敏に再現することができるので望ましい。また、閉扉後の恒温・恒湿への復帰は、長くとも5分以内にすることが好ましく、さらに好ましくは2分以内、特に好ましくは1分以内とすることが望ましい。この際、被試験体及びそのホルダ、移送用マニピュレータ等が有する熱容量を考慮することが好ましい。
【0038】
本発明の装置では、その詳細の説明を省略するが、少なくとも2つ以上の大気環境を実現させるために、それぞれ個別に温度、湿度を設定、制御できるように、加温、冷却、加湿、除湿等の装置や、槽内の状態を検出するための検出器及び検出値を記録する装置が設置されている。また、被試験体の状態を把握し、被試験体への結露の有無及び結露時間を確認するためにACMセンサ(商品名、北斗電工製)等の結露センサを取り付けるようにしてもよい。
【0039】
なお、本発明装置では、上記の結露試験以外にも、更に、各槽に所要の装置を具備させることで種々の環境を再現することもできる。例えば、水や塩、特に、海塩等をアトマイザ等により噴霧する噴霧装置や、NOx 、SOx などを添加したガスや関東ローム層などの微細な赤土粉塵等を導入する環境等も必要に応じて設定することができる。ただし、その場合には、排気環境等を十分に配慮することが好ましい。
【0040】
【実施例】
(実施例1)
図2に示す扉が扉16、17、18として設置された図1及び図3の本発明の試験装置を適用し、亜鉛めっき鋼板の被試験体(Zn目付量:20g/m2 、板厚1.6mm 、50mm×100mm の冷延鋼板SPCC)に結露を生じさせ、その端部の錆発生状況を評価する試験を行った。
【0041】
ここで、第1槽の冷却槽11は、槽内温度15℃、相対湿度50%に設定し、図1の装置の第2槽12及び図3の装置の第2槽の恒温・恒湿槽12は、槽内温度30℃、相対湿度85%に設定し、さらに図3の装置の第3槽の中間恒温・恒湿槽12a は、槽内温度30℃、相対湿度85%に設定した。扉16、17、18は被試験体3の移動の際に、あらかじめ第2の扉20を開けておき、第1の扉19を開扉から被試験体移送、閉扉までの一連の動作を10秒で完了させ、その後第2の扉20を閉めた。
【0042】
図4に、槽間移送した被試験体の温度変化のグラフを示す。また、図5に、図1の装置における実施例の槽間移送した被試験体の結露状況の推移(すなわち、結露センサ出力の推移)を示す。ここで、結露センサはACMセンサを用いている。
【0043】
以上の結露試験を、夏場と冬場のそれぞれにおいて所定サイクルだけ繰り返し、赤錆発生状況を確認した。なお、本発明の試験装置を適用して実施した本発明例と、比較のため、図6に示すように大気中を介して槽間移送する比較例での結果を表1に対比して示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1から、比較例では、夏場と冬場に赤錆発生状況が異なり、試験結果の再現性が得られていないのに対し、本発明例では、夏場、冬場に関係なく評価試験の高い再現性を得られることが判る。すなわち、本発明装置を用いることで、高精度の大気環境評価を実現できるようになった。
(実施例2)
図2に示す扉が扉16として設置された図1の本発明の試験装置を適用し、黒色鋼板(Zn−Ni合金めっき鋼板(めっき付着量:20g/m2 、Ni:12mass%)を陽極処理してなる黒色化処理鋼板、Zn−Ni合金めっき付着量:10g/m2 、Ni:18mass%、上層のクリア塗装:樹脂付着量1.0 g/m2 、50mm×100mm の冷延鋼板SPCC)を、図7に示すように、プレス機30を用いて90°曲げ加工し、被試験体3aとした。そして、該被試験体3aに結露を生じさせ、その変形部(図8参照)の錆発生状況を評価する試験を行った。結果を表2に示す。結露試験条件、ならびに、第1の扉19と第2の扉20の開閉、 及び被試験体の移送の条件は、実施例1と同じである。
【0046】
なお、比較のため、図6に示すように大気中を介して槽間移送する比較例での結果を表2に対比して示す。
【0047】
本実施例2では、結露試験を、季節状況を勘案して1年の2、5、8、11月のそれぞれで実施し、赤錆発生状況を確認した。なお、表2では、各実施月において赤錆発生面積率5%以上を示すまでのサイクル数を示している。
【0048】
【表2】
【0049】
表2から、比較例では最高値と最低値の差が40サイクルあるのに対し、本発明例では最高値と最低値の差が3サイクルと少なく、高い再現性が得られていることがわかる。
【0050】
すなわち、本発明装置を用いることで、高精度の錆発生評価を実現できるようになった。
【0051】
【発明の効果】
本発明装置を用いることで、被試験体を条件の異なる所定の大気環境を模擬した複数の環境下に曝し、その環境下における劣化促進状態、特に、めっき鋼板、塗装鋼板等を切断した被試験体の端部の錆発生状態の評価を高精度に行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の好適な実施の形態を示す模式図である。
【図2】高速シャッタと密閉シャッタを併置した構成を示す模式図である。
【図3】中間の恒温・恒湿槽を付加した本発明装置の好適な実施の形態を示す模式図である。
【図4】本発明装置(図1、3)及び比較例装置(図6)における被試験体の槽間移動に伴う温度変化を例示するグラフである。
【図5】本発明装置(図1)における被試験体の槽間移動に伴う結露変化を例示するグラフである。
【図6】従来の試験装置の構成を示す模式図である。
【図7】実施例2における90°折り曲げ加工を示す模式図である。
【図8】実施例2において耐錆性評価用の被試験体の変形部を示す模式図である。
【符号の説明】
1 冷却槽
2 恒温・恒湿槽
3、3a 被試験体(結露試験片)
4a、4b 扉
5 金網ホルダ
6 搬送装置(マニピュレータ)
11 冷却槽(第1槽)
12 恒温・恒湿槽(第2槽)
12a 中間恒温・恒湿槽(第3槽)
14〜18 扉(シャッタ)
19 第1の扉(高速シャッタ)
20 第2の扉(密閉シャッタ)
21 槽の壁面
22、23 断熱シール材
30 プレス機
Claims (3)
- 被試験体を冷却する冷却槽と、冷却した当該被試験体を所定の温度および湿度を有する雰囲気下に保持して結露させる恒温・恒湿槽と、を具備してなり、被試験体の環境変化による錆の発生を評価する耐錆性評価試験装置であって、
前記の冷却槽と恒温・恒湿槽とが連設され、かつ、前記被試験体がそれらの槽間を往来できる扉を具備してなることを特徴とする耐錆性評価試験装置。 - 前記の冷却槽と恒温・恒湿槽の間に、さらに中間の恒温・恒湿槽を挿入して連設し、それぞれの槽間に扉を具備してなることを特徴とする請求項1に記載の耐錆性評価試験装置。
- 前記扉を、高速で開閉する第1の扉と、断熱シール材を具備し密閉可能としてなる第2の扉と、から構成してなることを特徴とする請求項1または2に記載の耐錆性評価試験装置。
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Cited By (2)
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JP2020076637A (ja) * | 2018-11-07 | 2020-05-21 | 岩谷産業株式会社 | 温度サイクル試験装置及びその方法 |
CN112014428A (zh) * | 2020-10-27 | 2020-12-01 | 广州奥松电子有限公司 | 一种结露试验自动供水测试装置及其测试方法 |
-
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- 2003-06-19 JP JP2003174319A patent/JP2005010010A/ja active Pending
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