JP2005009634A - シリンダライナの変形防止装置及びシリンダライナの変形防止方法 - Google Patents

シリンダライナの変形防止装置及びシリンダライナの変形防止方法 Download PDF

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Yoshiki Ishikawa
佳樹 石川
Isataka Fujii
功隆 藤井
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Abstract

【課題】手間及びコストがかからず、再現性がよく、且つ繰返し精度が高く、シリンダライナの製造工程における加熱処理中に行われるシリンダライナの変形防止のためのシリンダライナの変形防止装置及びシリンダライナの変形防止方法の提供。
【解決手段】シリンダライナの変形防止装置1は、変形防止容器10と変形防止具20とを備える。変形防止が行われるシリンダライナ2は、全体が変形防止容器10に覆われた状態で変形防止容器10内に収容される。変形防止容器10の内周面10Bとシリンダライナ2の外周面2Cとの間には変形防止具20が充填される。変形防止具20は、シリンダライナ2の線膨張係数と同等以上の材料からなり、変形防止容器10は、シリンダライナ2の線膨張係数と同等又は同等以下の材料からなる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はシリンダライナの変形防止装置及びシリンダライナの変形防止方法に関し、特に、シリンダライナの製造工程において行われる加熱処理中のシリンダライナの変形を防止するためのシリンダライナの変形防止装置及び変形防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関に設けられるシリンダライナは、その製造工程において内周摺動面に表面処理が施される。表面処理としては、例えば、国際公開第WO01/33065A1号パンフレットに記載されているような加熱処理たる水蒸気処理が行われ、内周摺動面上に酸化鉄皮膜が生成される。水蒸気処理は、シリンダライナとなるシリンダライナ材に切削加工や研削加工を施した後に行われる。
【0003】
水蒸気処理を行っているときには、シリンダライナは600℃程度の高温に曝されるため、鋳造応力や加工応力によって変形が生じやすくなる。この処理温度は、公知の窒化処理(550℃前後)より高い処理温度である。シリンダライナの場合には、水蒸気処理による酸化鉄皮膜を厚く生成する必要があり、この場合には特に変形が顕著となる。シリンダに変形が生じてしまうと、水蒸気処理後の加工の際、取り代(加工代)の増加や、それに伴う工数増となってしまう。そこで、シリンダライナの変形防止装置及びシリンダライナの変形防止方法が要求されていた。
【0004】
円筒状の金属材の加熱処理中に、当該円筒状の金属材に生ずる変形を防止する装置及び方法としては、円筒状の金属材の外側を覆うことによって変形を防止する装置及び方法と、円筒状の金属材の内周面を支持することによって変形を防止する装置及び方法とが知られている。例えば、特開平5−78749号公報には、円筒状のステンレス鋼管の外周を、補強リブが設けられた外管で覆った状態で加熱処理を行う変形防止装置及び方法が記載されている。また、特開2000−334629号公報には、大型の円筒状胴部材の内周面に、放射状に配置された4本の伸縮腕の端部をそれぞれ当接させて、円筒状胴部材の内周面を支持した状態で加熱処理をする変形防止装置及び方法が記載されている。
【0005】
また、特開2003−74407号公報には、加熱処理たる水蒸気処理を行う前に、予め焼鈍処理を行っておくことによってシリンダライナ製造工程における変形の発生を抑制する方法が記載されている。シリンダライナの製造工程では、シリンダライナ材の加工代が比較的大きい切削加工工程及び研削加工工程が行われた後に焼鈍処理工程が行われ、次に、シリンダライナ材の加工代が比較的小さいホーニング加工工程や外径研磨加工やポリシング工程が行われ、その後で水蒸気処理が行われる。
【0006】
【特許文献1】
国際公開第WO01/33065A1号パンフレット(4頁、6頁)
【特許文献2】
特開平5−78749号公報(2〜3頁、図2)
【特許文献3】
特開2000−334629号公報(2〜3頁、図1、図2)
【特許文献4】
特開2003−74407号公報(2〜5頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平5−78749号公報記載の変形防止装置や特開2000−334629号公報記載の変形防止装置では、変形を防止する対象である円筒状の金属材がシリンダライナではなく、鋼管や大型の円筒状胴部材であり、シリンダライナのように小型で種類も多く大量に生産されるもの1つ1つに対してこのような装置を用いて変形防止を行うことは困難であった。シリンダライナの変形防止を行う場合には、変形防止に手間がかからず、低いコストであり再現性がよく、且つ繰返し精度が高いことが要求されるためである。
【0008】
また、特開2003−74407号公報記載の変形防止方法では、シリンダライナの製造工程において、変形防止のための焼鈍工程を行う必要があり、シリンダライナの製造にかかる工程の数が多くなるため手間がかかり、コスト低減を図ることが困難であった。また、焼鈍処理工程前の加工応力が大きいために焼鈍工程を行っても変形が生じ、ホーニング加工工程等のための加工代が増加したり加工時間が増大したりする等の問題が生じていた。
【0009】
そこで本発明は、手間及びコストがかからず、再現性がよく、且つ繰返し精度が高く、シリンダライナの製造工程における加熱処理中に行われるシリンダライナの変形防止のためのシリンダライナの変形防止装置及びシリンダライナの変形防止方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、シリンダライナの製造工程中における該シリンダライナの変形を防止するためのシリンダライナの変形防止装置であって、有底筒状をなし、該シリンダライナの外径よりも内径が大きく、該シリンダライナを略同軸的な位置関係で底部に載置して収容する変形防止容器と、該変形防止容器の内周面と該変形防止容器に収容された該シリンダライナの外周面との間に充填される略球形粒状の変形防止具とを備え、該変形防止具は該シリンダライナの線膨張係数と同等以上の材料からなり、該変形防止容器は、該シリンダライナの線膨張係数と同等又は同等以下の材料からなるシリンダライナの変形防止装置を提供している。
【0011】
ここで、該変形防止容器の側面の肉厚は5mm〜12mmであり、該変形防止具は、線膨張係数が15〜23×10−6/Kの範囲の材料からなり、粒径は0.5mm〜2.0mmであることが好ましい。
【0012】
また、該変形防止容器の半径方向における該変形防止容器の内周面と該変形防止容器に収容された該シリンダライナの外周面との間の距離は5mm〜20mmであることが好ましい。
【0013】
また、該変形防止容器は鋳造物又は鋼材からなることが好ましい。
【0014】
また、該変形防止具はオーステナイトステンレス鋼からなることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、請求項1記載のシリンダライナの変形防止装置の該変形防止容器内に同軸的に該シリンダライナを収容する収納工程と、該変形防止容器の内周面と該変形防止容器に収容された該シリンダライナの外周面との間に該変形防止具を充填する充填工程と、該シリンダライナを収容し該変形防止具が充填された該変形防止容器を加熱処理の間所定時間放置する変形防止工程とを行うことによって、該加熱処理を含む該シリンダライナの製造工程中における該シリンダライナの変形を防止するシリンダライナの変形防止方法を提供している。
【0016】
ここで、該加熱処理は水蒸気処理であることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態によるシリンダライナの変形防止装置及びシリンダライナの変形防止方法について説明する。先ず、シリンダライナの変形防止装置について、図1に基づき説明する。図1に示されるように、シリンダライナの変形防止装置1は、変形防止容器10と変形防止具20とを備える。変形防止が行われるシリンダライナ2は、全体が変形防止容器10に覆われた状態で変形防止容器10内に収容される。
【0018】
シリンダライナ2は、図1に示されるように、一端にフランジ状部2Aを有する肉厚の薄い円筒状をなしている。他端2Bには円錐形状をした蓋3が被せられる。蓋3は、後述のシリンダライナの変形防止方法の充填工程で変形防止具20を変形防止容器10内に充填する際に、変形防止具20がシリンダライナ2の内周面により画成される空間内にこぼれ落ちるのを防止する。シリンダライナ2の寸法は、直径がφ80mm〜φ200mm、フランジ状部2A以外の部分の肉厚が1mm〜10mm、軸方向高さが180mm〜300mm程度であり、線膨張係数が11〜12×10−6/Kの範囲の鋳物材により構成される。
【0019】
変形防止容器10は有底筒状をなしており、その内径はシリンダライナ2の外径よりも大きい。シリンダライナ2は、変形防止容器10の底部10Aに変形防止容器10と同軸的に載置されて収容される。変形防止容器10の内径はシリンダライナ2の外径よりも大きいため、変形防止容器10の内周面10Bとシリンダライナ2の外周面2Cとの間には間隙が形成されている。間隙の幅、即ち、変形防止容器10の半径方向における変形防止容器10の内周面10Bと、シリンダライナ2の外周面2Cとの間の距離は5mm〜20mm程度である。この距離が5mm未満であると、変形防止具の内周側の張り出しが弱く、水蒸気処理後の真円度が悪くなり、20mmを超えると、変形防止具の内側への張り出しが強くなるが、防止具内での力が相殺し真円度が悪くなるため、この値の範囲とする。この間隙には後述の変形防止具20が充填される。
【0020】
変形防止容器10の底部10Aには、筒状をなす変形防止容器10と同軸的な位置関係で円形の貫通孔10aが形成されている。変形防止容器10の底部10Aと側面10Eとの接続位置には段部10Cが設けられており、変形防止容器10の軸方向における段部10Cの高さは、シリンダライナ2の軸方向におけるフランジ状部2Aの高さと同一である。また段部10Cにおける変形防止容器10の半径方向の最も内方に位置する端面10Dには、図1に示されるように、変形防止容器10に収容されたシリンダライナ2のフランジ状部2Aの外周2Dが当接する。
【0021】
変形防止容器10の半径方向における段部10Cの端面10Dから貫通孔10aの開口端10bまでの距離は、シリンダライナ2の半径方向におけるシリンダライナ2のフランジ状部2Aの長さに一致しており、シリンダライナ2が変形防止容器10に収容されているときには、図1に示されるように、貫通孔10aの内周面とシリンダライナ2の内周面とが面一となるように構成されている。変形防止容器10は、線膨張係数がシリンダライナ2の線膨張係数と同等の鋳物材、より具体的には、線膨張係数が11〜12×10−6/Kの範囲の鋳物材からなる。線膨張係数が11×10−6/K未満であると、シリンダライナの膨張の際に、変形防止容器と干渉が生じてしまう。12×10−6/Kを超えると、セットしたシリンダライナと変形防止容器との間の鍔隙間が増大し、精度が悪くなる。このためこの値の範囲とする。側面10Eの位置における変形防止容器10の肉厚は、5mm〜12mm程度である。肉厚が5mm未満であると、変形防止具の張力を変形防止容器が支えられず変形が生じやすく、12mmを超えると、変形防止容器の体積増による熱容量への影響があり、処理品のばらつきが大きくなるため、この値の範囲とする。
【0022】
変形防止具20は、略球形粒状のオーステナイトステンレス鋼からなる。変形防止具20の一粒一粒は、正確な球形ではなく略球形の外形曲面形状をなす。外形曲面形状のものは安価であり、コスト低減を図ることができる。変形防止具20の粒径は、0.5mm〜2.0mm程度である。粒径が0.5mm未満であると、変形防止具の接触点の増加による接触面積が増え、防止具同士が密着するため処理後の段取りに手間がかかる。2.0mmを超えると、水蒸気処理後の真円度が悪い。このためこの値の範囲とする。線膨張係数はシリンダライナ2の線膨張係数と同等以上である。より具体的には、15〜23×10−6/Kの範囲内が好適である。線膨張係数が15×10−6/K未満であると、十分な変形防止具の張り出しが得られず、23×10−6/Kを超えると、変形防止具の張り出しが大きすぎるため、この値の範囲とする。
【0023】
変形防止具20としては、例えば、ショットブラストに用いられるドイツVULKAN社製のStainless Steel Shot,“CHRONITAL”のSize No.50〜No.200が用いられる。Size No.については、一種類のみを用いるか又は複数種類を混ぜて使用する。一種類のSize No.のものを用いた方が管理は容易である。
【0024】
変形防止具20は、図1に示されるように、変形防止容器10の内周面10Bと変形防止容器10に収容されたシリンダライナ2の外周面2Cとの間に充填される。充填されたときの変形防止具20の充填率は60〜65%であり、かさ比重は4.4〜4.6g/cmである。この充填率とは、変形防止容器とシリンダライナ外周面との間に変形防止具を充填した際の体積率を示している。充填率が60%未満であると、十分な変形防止具の張り出しが得られず、65%を超えると、変形防止具の張り出しが大きすぎるため、この値の範囲とする。また、この時のかさ比重が4.4g/cm未満であると、十分な変形防止具の張り出しが得られず、4.6g/cmを超えると、変形防止具の張り出しが大きすぎるため、この値の範囲とする。
【0025】
変形防止具20がオーステナイトステンレス鋼により構成されているため、水蒸気処理を行っているときの酸化雰囲気中でも優れた耐食性を得ることができ、変形防止具20の表面に水蒸気処理皮膜が生成されるのを防ぐことができる。
【0026】
次に、シリンダライナ2の製造工程において行われるシリンダライナの変形防止方法について説明する。シリンダライナの変形防止方法では、先ず、図1に示されるように、シリンダライナの変形防止装置1の変形防止容器10内に同軸的にシリンダライナ2を収容させる収納工程を行う。収容されるシリンダライナ2は、シリンダライナ2の製造工程である切削加工工程、研削加工工程、ホーニング加工工程、外径研磨加工、ポリシング工程等が行われた後の状態のものである。シリンダライナ2の他端2Bには、次の充填工程で変形防止具20がシリンダライナ2の内周面により画成される空間内にこぼれ落ちるのを防止するために、予め蓋3が被せられている。次に、変形防止容器10の内周面10Bと変形防止容器10に収容されたシリンダライナ2の外周面2Cとの間に変形防止具20を充填する充填工程を行う。
【0027】
次に、シリンダライナの変形防止装置1の変形防止容器10内に収納した状態のシリンダライナ2の内周摺動面に対して、加熱処理たる水蒸気処理を行う。水蒸気処理では、シリンダライナ2の内周摺動面は550〜630℃程度の高温下で蒸気雰囲気にさらされる。水蒸気処理を行っている間の所定時間中、シリンダライナ2は、変形防止具20が充填された変形防止容器10内に収容されており、この状態で当該所定条件により処理することにより変形防止工程を行う。
【0028】
シリンダライナ2の線膨張係数と同等の線膨張係数を有する変形防止容器10内にシリンダライナ2を収容し、変形防止容器10の内周面10Bとシリンダライナ2の外周面2Cとの間にシリンダライナ2の線膨張係数と同等以上の変形防止具20を充填させるようにして、シリンダライナ2の変形を防止するようにしたため、加熱処理たる水蒸気処理を行っているときに、線膨張の差によりシリンダライナ2に対して変形防止容器10は半径方向にあまり膨張せず、変形防止具20は、全体として変形防止容器10の半径方向内方に膨張して、半径方向外方へ膨張しようとするシリンダライナ2の外周面2Cを、シリンダライナ2の軸芯方向へ向かって均等に押圧することができる。このため、シリンダライナ2と変形防止容器10とにおいて張出しを得ることができ、シリンダライナ2の半径方向外方及び内方へ張出す変形を防止することができる。
【0029】
また、シリンダライナの変形防止装置1は、筒状の変形防止容器10と略球形粒状の変形防止具20とからなる簡単な構成であるため、変形防止装置1にかかるコスト変形防止にかかる手間とを省くことができ、再現性がよく、且つ繰返し精度の高いシリンダライナ2の変形防止を行うことができる。また、加熱処理たる水蒸気処理を行いながら変形防止方法を行うことができるので、シリンダライナ2の製造工程において焼鈍工程等の工程を行わずに済み、シリンダライナ2の製造工程を簡単にすることができ、シリンダライナ2の製造コストを低減することができる。
【0030】
次に、本実施の形態によるシリンダライナの変形防止装置1及び変形防止方法の効果を試す試験を行った。試験では、本発明品1〜12として本実施の形態によるシリンダライナの変形防止装置1を用いて、水蒸気処理下におけるシリンダライナ2の変形の防止を行った。また、比較品1〜7として本実施の形態によるシリンダライナの変形防止装置1とは異なる構成のシリンダライナの変形防止装置を用いて水蒸気処理下におけるシリンダライナ2の変形の防止を行った。
【0031】
本発明品1〜12、比較品1〜7においては、全て変形防止容器10の線膨張係数は11〜12×10−6/Kの範囲内の所定の値を採る。これに対して、変形防止具20の粒径や、変形防止容器10の側面10Eの肉厚や、変形防止容器10の内周面10Bとシリンダライナ2の外周面2Cとの間の距離や、変形防止具20の線膨張係数が様々な値を採るようにしてシリンダライナの変形防止装置を構成した。比較品1〜7では、変形防止容器の線膨張係数と変形防止具の粒径以外のこれらの値が、本実施の形態の変形防止装置1の値とは異なっている。
【0032】
変形防止容器の中にシリンダライナを収容し、変形防止容器の内周面とシリンダライナの外周面との間に変形防止具が充填されるという変形防止装置の構成は、本発明品1〜12、比較品1〜7のいずれにおいても同じである。また、水蒸気処理における試験条件は600℃×5時間である。試験結果は表1に示されるとおりである。
【表1】
Figure 2005009634
【0033】
表1の上から1〜3段目は、変形防止具の膨張係数の値のみを様々な値として、変形防止具の粒径等の他の値を一定として試験を行った結果を示している。上から4〜11段目は、変形防止具の粒径のみを様々な値とし、変形防止具の膨張係数等の他の値を一定として試験を行った結果を示している。上から12〜19段目は、変形防止容器の内周面とシリンダライナの外周面との間の距離のみを様々な値として、変形防止具の粒径等の他の値を一定として試験を行った結果を示している。
【0034】
ここで、表1中のWA後−前(真円度)とは、変形防止されたシリンダライナ2の真円度であり、水蒸気処理後(WA後)−水蒸気処理前の真円度の差が15μm以下の場合に○とされ、15.01μm以上は×とされる。変形量が15.01μmより大きいと、水蒸気処理後の加工の際、目残り等の不具合が生じやすい為、この値で良否の判断をした。また、防止具の密着の有無については、変形防止を行ったあとに変形防止具がシリンダライナの外周面に付着していない場合、及び変形防止具同士が密着していない場合に、結果は良好であるとして「無」とされる。付着している場合には、結果は不良であるとして「有」とされる。
【0035】
また、段取りのしやすさとは、シリンダライナ2を変形防止容器10内に収容した後に変形防止具20を充填してゆくときの充填のしやすさのことであり、セットタイムが30秒以下の場合には、結果は良好であるとして○とされる。30.01秒以上の場合には、結果は不良であるとして×とされる。処理品のばらつきとは、変形防止を行った後のシリンダライナ2に大きな変形があるか否かのばらつきのことであり、水蒸気処理後の真円度から処理前の値を引いた最大値と最小値との差が20μm以下の場合には、結果は良好であるとして○とされる。20.01μm以上の場合には、結果は不良であるとして×とされる。また、判定については、WA後−前(真円度)、防止具の密着の有無、段取りのしやすさ、処理品のばらつきのいずれにおいても結果が良好であった場合には○とされ、いずれか1つでも不良であった場合には×とされる。
【0036】
表1の上から1〜3段目に着目すると、本発明品1、2では、WA後−前(真円度)、防止具の密着の有無、段取りのしやすさ、処理品のばらつきのいずれにおいても結果は良好である。これに対して、比較品1では、WA後−前(真円度)が悪い。以上より、変形防止具20の膨張係数が11〜12×10−6/Kの範囲の値を採る場合には、WA後−前(真円度)が良好であり、判定が良好となることが分かる。
【0037】
次に、表1の上から4〜11段目に着目すると、本発明品3〜7では、WA後−前(真円度)、防止具の密着の有無、段取りのしやすさ、処理品のばらつきのいずれにおいても結果は良好である。これに対して、比較品2及び比較品3では、WA後−前(真円度)が悪く、これらの判定は悪い。又は、比較例4では、処理品のばらつきが大きくなり好ましくない。以上より、変形防止容器の肉厚が5mm〜12mmの値を採る場合には、WA後−前(真円度)及び防止具の密着の有無が良好であり、判定が良好となることが分かる。
【0038】
次に、表1の上から12〜19段目に着目すると、本発明品8〜12では、WA後−前(真円度)、防止具の密着の有無、段取りのしやすさ、処理品のばらつきのいずれにおいても結果は良好である。これに対して、比較品5〜7では、WA後−前(真円度)が悪く、また、比較品5、6では段取りのしやすさも悪く、比較品7では処理品のばらつきも大きくなり、これらの判定は悪い。以上より、変形防止容器10の内周面10Bとシリンダライナ2の外周面2Cとの間の距離が5mm〜20mmの値を採る場合には、WA後−前(真円度)、段取りのしやすさ、及び処理品のばらつきが良好であり、判定が良好となることが分かる。
【0039】
次に、変形防止容器の肉厚がそれぞれ5mm、10mmの場合に、変形防止具の粒径と、変形防止容器の内周面とシリンダライナの外周面との間の距離とを様々な値としてシリンダライナの変形防止装置を構成し、シリンダライナの変形防止を行い、水蒸気処理後(WA後)−水蒸気処理前の真円度の値を求め、変形防止容器の内周面とシリンダライナの外周面との間の距離の値による影響について試験を行った。試験条件、変形防止容器の線膨張係数、及び変形防止具の線膨張係数は、前述の試験の条件と同一である。
【0040】
試験結果は、変形防止容器の肉厚が5mmのものについては表2、変形防止容器の肉厚が10mmのものについては、表3に示されるとおりである。表2、表3では、それぞれ縦方向に、使用した変形防止装置の変形防止具の粒径の値をとり、横方向に変形防止容器の内周面とシリンダライナの外周面との間の距離の値をとり、これら各値に対する水蒸気処理後(WA後)−水蒸気処理前の真円度の値(μm)を表している。水蒸気処理後(WA後)−水蒸気処理前の真円度の値(μm)は小さい値が好ましく、15μm以下であれば、結果は良好である。
【表2】
Figure 2005009634
【表3】
Figure 2005009634
【0041】
表2、表3の何れにおいても、変形防止容器の内周面とシリンダライナの外周面との間の距離の値が5mm〜20mmの範囲内では、一部結果が悪いのもあるが、水蒸気処理後(WA後)−水蒸気処理前の真円度の値がほとんど15.0μm以下になっており、結果は良好である。変形防止具の範囲が0.5〜2.0mmの範囲は全て良好である。
【0042】
これに対して、変形防止容器の内周面とシリンダライナの外周面との間の距離の値が5mm未満又は20mmを超える場合には、いずれの場合においても、水蒸気処理後(WA後)−水蒸気処理前の真円度の値が15.01μm以上の値になっており、結果は悪い。以上より、変形防止容器の内周面とシリンダライナの外周面との間の距離の値が本実施の形態の範囲である5mm〜20mmの値の範囲内である場合には、水蒸気処理後(WA後)−水蒸気処理前の真円度の値が15.0μm以下となりやすく、結果が良好となりやすいことが理解できる。
【0043】
本発明によるシリンダライナの変形防止装置及びシリンダライナの変形防止方法は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、本実施の形態では、シリンダライナ2、変形防止容器10はそれぞれ鋳物材により構成されたが、鋼材やセラミック等により構成されてもよい。
【0044】
また、変形防止容器10は、線膨張係数がシリンダライナ2の線膨張係数と同等の鋳物材により構成されたが、線膨張係数が同等以下の鋳物材により構成されてもよい。線膨張係数は小さいほど好ましい。
【0045】
また、水蒸気処理を行っている最中にシリンダライナの変形防止方法を行うようにしたが、水蒸気処理に限定されず、他の加熱処理中に行うようにしてもよい。
【0046】
また、変形防止具20は、オーステナイトステンレス鋼により構成されたが、SUS303、SUS316等の他のオーステナイトステンレス鋼や、SUS430材等のステンレススチールでもよく、また、耐食性に優れ、膨張係数の大きい他の材料により構成されてもよい。また、一粒一粒は、正確な球形ではなく外形曲面形状であったが、球形でもよく、球形の方が好適である。
【0047】
【発明の効果】
請求項1記載のシリンダライナの変形防止装置によれば、シリンダライナの線膨張係数と同等又は同等以下の変形防止容器内にシリンダライナを収容し、変形防止容器の内周面とシリンダライナの外周面との間にシリンダライナの線膨張係数と同等以上の変形防止具を充填させるようにしたため、線膨張の差によりシリンダライナに−対して変形防止容器は半径方向にあまり膨張せず、これに対して変形防止具は、全体として変形防止容器の半径方向内方に膨張して、半径方向外方へ膨張しようとするシリンダライナをその外周面から内方へ向かって均等に押圧することができる。このため、シリンダライナと変形防止容器とにおいて張出しを得ることができ、シリンダライナの半径方向外方及び内方へ張り出す変形を防止することができる。
【0048】
また、シリンダライナの変形防止装置は、筒状の変形防止装置と略球形粒状の変形防止具とからなる簡単な構成であるため、シリンダライナの変形防止装置にかかるコストと変形防止を行う手間とを省くことができ、再現性がよく、且つ繰返し精度の高いシリンダライナの変形防止を行うことができる。
【0049】
また、この装置を用いることにより、熱処理、例えば水蒸気処理等を行いながら変形防止を行うことができるので、シリンダライナの製造工程において焼鈍工程等の工程を行わずに済み、シリンダライナの製造工程を簡単にすることができ、シリンダライナの製造コストを低減することができる。
【0050】
請求項2記載のシリンダライナの変形防止装置によれば、変形防止容器の側面の肉厚は5mm〜12mmであり、変形防止具は、線膨張係数が15〜23×10−6/Kの範囲の材料からなり、粒径は0.5mm〜2.0mmであるため、変形防止されるシリンダライナの真円度を高く維持することができ、変形防止の際にシリンダライナに変形防止具が付着することを防止でき、変形防止具を変形防止容器に充填させるときの作業を容易とすることができ、変形防止されるシリンダライナのばらつきを少なくすることができる。
【0051】
請求項3記載のシリンダライナの変形防止装置によれば、変形防止容器の半径方向における変形防止容器の内周面と変形防止容器に収容されたシリンダライナの外周面との間の距離は5mm〜20mmであるため、変形防止されるシリンダライナの真円度をより高くレベルで維持することができ、変形防止されるシリンダライナのばらつきをより少なくすることができる。
【0052】
請求項4記載のシリンダライナの変形防止装置によれば、変形防止容器は鋳造物又は鋼材からなるため、比較的安価な材料でシリンダライナの変形防止装置を製造することができる。
【0053】
請求項5記載のシリンダライナの変形防止装置によれば、変形防止具はオーステナイトステンレス鋼からなるため、変形防止具に高い耐食性を持たせることができ、例えば、加熱処理たる水蒸気処理が行われるような酸化雰囲気中でも腐食を防止することができる。
【0054】
請求項6記載のシリンダライナの変形防止方法によれば、シリンダライナを収容し変形防止具が充填された変形防止容器を加熱処理の間所定時間放置する変形防止工程を行うことによって、加熱処理を含むシリンダライナの製造工程中におけるシリンダライナの変形を防止するようにしたため、加熱処理を行いながら変形防止を同時に行うことができ、シリンダライナの製造工程において焼鈍工程等の変形防止のための工程を別途行わずに済み、シリンダライナの製造工程を簡単にすることができ、シリンダライナの製造コストを低減することができる。
【0055】
請求項7記載のシリンダライナの変形防止方法によれば、加熱処理は水蒸気処理であるため、シリンダライナの内周摺動面に酸化鉄被膜を生成しながら、同時にシリンダライナの変形防止を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態によるシリンダライナの変形防止装置を示す断面図。
【符号の説明】
1 シリンダライナの変形防止装置
2 シリンダライナ
2C 外周面
10 変形防止容器
10A 底部
10B 内周面
20 変形防止具

Claims (7)

  1. シリンダライナの製造工程中における該シリンダライナの変形を防止するためのシリンダライナの変形防止装置であって、
    有底筒状をなし、該シリンダライナの外径よりも内径が大きく、該シリンダライナを略同軸的な位置関係で底部に載置して収容する変形防止容器と、
    該変形防止容器の内周面と該変形防止容器に収容された該シリンダライナの外周面との間に充填される略球形粒状の変形防止具とを備え、
    該変形防止具は該シリンダライナの線膨張係数と同等以上の材料からなり、
    該変形防止容器は、該シリンダライナの線膨張係数と同等又は同等以下の材料からなることを特徴とするシリンダライナの変形防止装置。
  2. 該変形防止容器の側面の肉厚は5mm〜12mmであり、
    該変形防止具は、線膨張係数が15〜23×10−6/Kの範囲の材料からなり、粒径は0.5mm〜2.0mmであることを特徴とする請求項1記載のシリンダライナの変形防止装置。
  3. 該変形防止容器の半径方向における該変形防止容器の内周面と該変形防止容器に収容された該シリンダライナの外周面との間の距離は5mm〜20mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のシリンダライナの変形防止装置。
  4. 該変形防止容器は鋳造物又は鋼材からなることを特徴とする請求項1記載のシリンダライナの変形防止装置。
  5. 該変形防止具はオーステナイトステンレス鋼からなることを特徴とする請求項1記載のシリンダライナの変形防止装置。
  6. 請求項1記載のシリンダライナの変形防止装置の該変形防止容器内に同軸的に該シリンダライナを収容する収納工程と、
    該変形防止容器の内周面と該変形防止容器に収容された該シリンダライナの外周面との間に該変形防止具を充填する充填工程と、
    該シリンダライナを収容し該変形防止具が充填された該変形防止容器を加熱処理の間所定時間放置する変形防止工程とを行うことによって、該加熱処理を含む該シリンダライナの製造工程中における該シリンダライナの変形を防止することを特徴とするシリンダライナの変形防止方法。
  7. 該加熱処理は水蒸気処理であることを特徴とする請求項6記載のシリンダライナの変形防止方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN102978550A (zh) * 2012-01-06 2013-03-20 贵州航天风华精密设备有限公司 防止大直径镁合金壳体零件热处理变形的方法及装置
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