JP2005009027A - 生分解性織物およびその製造方法 - Google Patents

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浩太 中村
Katsunori Futai
克典 二井
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Abstract

【課題】軽量、柔軟で収納性に優れ、生分解性を有する織物およびその製造方法の提供を課題としたものである。
【解決手段】ポリ乳酸繊維からなる織物であって、該ポリ乳酸繊維を構成する単繊維の長軸と短軸の長さの比から求めた単繊維断面の扁平率が1.5〜8の扁平断面単繊維からなるポリ乳酸糸を織物の経緯両方または経糸、緯糸のどちらか一方に用いることを特徴とする生分解性織物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、厚みが薄く柔軟性に優れた織物に関するものであり、さらに詳しくは織物に扁平断面ポリ乳酸繊維を用いることで厚みが薄く柔軟性に優れるだけでなく生分解性を有する織物と、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、織物は衣類用途のみならず、自動車幌等の車両用、ヨット・帆船用幌等の船舶用、飛行船、パラシュート、パラグライダー用基布等の航空用、テント・オーニング・養生シート・養生メッシュ・天幕等の建築用、遮光・防霜・防風・防寒・病害保護布等の農業用、鞄地・パラソル・ネット・遮水シート・ターポリン・靴地・粘着シート・コンテナバック等の一般産業資材分野に広く用いられている。
【0003】
各用途に用いられる織物としては運搬時の負担を低減するための軽量化、保管時の収納性の向上が求められており、これらの問題を解決するための方法が特許文献1〜6等で提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には中空糸を用いることで織物を軽量化する方法が、特許文献2には発泡性樹脂をコーティングすることで織物を軽量化する方法が記載されている。これらの方法を用いた織物は空隙を多く有するため単位体積当たりの重量を減少させることはできるものの、織物の厚みが増してしまう。すなわち収納性および柔軟性に改善の余地を有するものであった。
【0005】
織物を肉薄、軽量化するために高強力糸、高弾性糸を用いて織物の目付け量を減少させる方法が特許文献3に、柔軟処理を施した繊維を用いて繊維の強力利用率を高めることで織物の目付け量を減少させる方法が特許文献4に記載されている。しかしながら、いわゆる超高強力繊維高強力繊維は値段が高価で、一般的な使用には適さないという問題点があり、低コストな高強力繊維として、ポリエチレンテレフタレート等よりなる高倍率延伸糸を用いた場合には、延伸糸を得る過程において単繊維切れや糸切れが発生しやすく、製織性を著しく低下させる等の問題を有している。また、特許文献4記載の方法では、従来の織物製造工程に加えて柔軟仕上げ剤を付与する工程が必要となり、工程の複雑化及び高コスト化してしまうという問題を有している。
【0006】
特許文献5にはポリプロピレンよりなるマルチフィラメントまたは扁平糸(スリットヤーン)を用いることで織物を軽量化する方法が記載されている。低比重の樹脂を使用することを特徴とする該方法を用いると織物を軽量化することが可能であるが、厚みとしては他の樹脂を用いた場合と同等のものとなり収納性や柔軟性に欠けるという問題を有している。
【0007】
特許文献1〜5等の問題を解決するために、ポリアミドに代表される合成樹脂を用いた扁平断面糸を用いることで肉薄のエアバック用織物を得る方法が特許文献6に記載されている。しかし、該技術のようにポリアミドに代表される合成樹脂を用いた場合には高強度、高弾性率の織物を得ることが出来るものの、使用後の処理時において燃焼時に有毒なガスが発生したり、土中に埋設しても分解せず半永久的に土中に残る等の問題を有している。一方、ポリ乳酸繊維を用いることでこれらの問題を解決するための技術が特許文献7に記載されている。特許文献7記載の方法を用いた場合には、生分解性に優れ、環境負荷の小さい織物を得ることはできるものの、織物の厚みに関しては従来の織物と同等のものであり収納性についての問題は解決されていない。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−8378号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2000−79010号公報
【0010】
【特許文献3】
特開平6−200447号公報
【0011】
【特許文献4】
特開平6−171024号公報
【0012】
【特許文献5】
特開2000−62103号公報
【0013】
【特許文献6】
特開2003−55861号公報
【0014】
【特許文献7】
特開2001−303388号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように従来技術では、軽量性、柔軟性、収納性、および環境負荷の低減など近年の織物に要求されるあらゆる特性を兼備した織物は得られていなかった。
【0016】
本発明は、上述の従来技術における問題点を解消した織物に関するものであり、さらに詳しくは、扁平断面を有するポリ乳酸繊維を用いることで従来より軽量で収納性に優れ、生分解性を有する織物と、その製造方法の提供を課題としたものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の織物は主として次の構成を有する。すなわち、ポリ乳酸繊維からなる織物であって、該ポリ乳酸繊維を構成する単繊維の長軸と短軸の長さの比から求めた単繊維断面の扁平率が1.5〜8のポリ乳酸繊維を含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の生分解性織物は以下の(1)〜(2)が好ましい形態であり、これらの条件の適用によってさらに優れた効果を期待することが出来る。
(1)前記ポリ乳酸繊維の単繊維断面の長軸方向と織物の水平方向とのなす角度(θ)の余弦(hi)の総和平均で表した水平度指数(HI)が0.75〜1となるように配列していること。
(2)織物を分解して得られた扁平断面糸が0〜7個/mの交絡数を有することまた、本発明の織物の製造方法は、扁平断面を有するポリ乳酸繊維を含む糸を、製織時の緯糸打ち込み部位における経糸張力を0.2〜2cN/dtexで製織することを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明の生分解性織物は扁平断面のポリ乳酸繊維用いることが必要である。近年、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の汎用合成樹脂を用いた繊維に代わって、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリカプロラクトン等に代表される生分解性繊維が環境保護の観点から好ましく使用されるようになってきているが、機械的特性に優れるだけでなく、大量生産による低コスト化が進んでいるポリ乳酸を用いることが一般産業資材用途の織物に必要である。
【0021】
本発明におけるポリ乳酸繊維はポリ乳酸ポリマと共重合可能な成分とのポリ乳酸共重合体、またはポリ乳酸ポリマとブレンド可能な他の熱可塑性ポリマとのポリ乳酸ブレンド物などからなる繊維であってもよい。ただし、これらの場合には、ポリ乳酸単位もしくはポリ乳酸が主成分であることが好ましい。ポリ乳酸を主体とする共重合体としては、前記乳酸と、例えばε―カプロラクトン等の環状ラクトン類、α―ヒドロキシイソ酪酸、α―ヒドロキシ吉草酸等のα−オキシ酸類、エチレングリコール、1,4−ブタンジンオール等のグリコール類、コハク酸、セバシン酸等のジカルボン酸類から選ばれるモノマーの一種または二種以上とを共重合したものが挙げられる。中でもポリマーの重合特性から、環状ラクトン類およびグリコール類が好ましい。共重合の割合としては特に限定されないが、乳酸100重量部に対して、共重合させるモノマーは100重量部以下が好ましく、1〜50重量部がより好ましい。
【0022】
また、上記ポリ乳酸もしくはポリ乳酸共重合体が水酸基を持つ化合物によってポリマ中のカルボキシル基をエステル化されてなるものであっても良い。水酸基を持つ化合物としては、例えばオクチルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数が6以上の高級アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類が挙げられる。水酸基を持つ化合物でポリ乳酸もしくはポリ乳酸共重合体の分子末端のカルボキシル基をエステル化処理することにより、溶融紡糸時の熱安定性および溶融紡糸後の繊維の経時安定性を改善することができる。中でも延伸性の観点から、炭素数6〜18の高級アルコールが好ましい。また、同様の効果を得る目的でカルボキシル基にカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、アジリジン化合物から選ばれる1種または2種以上の化合物を反応させても良い。
【0023】
また、本発明に用いるポリ乳酸繊維は、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、クレーなどの艶消し剤、顔料、染料、滑剤、酸化防止剤、耐熱剤、耐蒸熱剤、耐光剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤および難燃剤などを含むことができる。
【0024】
本発明に用いる扁平断面ポリ乳酸繊維は、単繊維の長軸の長さaと短軸の長bさの比(a/b)から求めた扁平率が1.5〜8であり、好ましくは2〜6である。かかる範囲の扁平断面糸からなるポリ乳酸繊維を使用することにより、各単繊維の長軸が織物の水平方向に配列することが可能となり、通常の円断面糸を使用した場合に比べて、得られる織物の厚みが薄くなるだけでなく、柔軟な織物を得ることができる。扁平率が1.5未満では、円形断面糸に近いため織物の厚みが充分薄くならず、柔軟性、コンパクトな収納性を兼備した織物を得ることができなくなる。一方、扁平率が8を越えると、扁平断面糸を用いる効果が飽和するばかりか、良好な品位で安定に製糸することが難しくなるという傾向が生じる。なお、ポリ乳酸繊維の単繊維断面形状は楕円形以外の形状であっても、長軸と短軸の関係が特定の範囲を満たすものであればよい。例えば、長方形、菱形、繭型のような左右対称型は勿論、左右非対称型であってもよく、あるいはそれらの組み合わせ型であってもよい。また、更に上記を基本型として、本発明の効果を損ねない範囲で突起や凹み或いは中空部が存在していてもよい。本発明において長軸とは単繊維断面で最も長い部分を指し、短軸とは長軸に直交し、かつ最も短い部分を指す。
【0025】
また、本発明に用いる扁平断面糸からなるポリ乳酸繊維は、JIS L1013の方法に準じて測定した強度が2〜8cN/dtex、好ましくは3〜8cN/dtex、さらに好ましくは4〜7cN/dtexであるポリ乳酸繊維であることが望ましく、かかる物性を有するポリ乳酸繊維を使用することにより、製織性良く、高引張り強力、高タフネスを有する織物を得ることができる。扁平断面糸からなるポリ乳酸繊維の強度が2cN/dtex未満では、製織時に断糸が発生し製織効率を悪化させ、強度が8cN/dtexを越えるような高強度な繊維を得ようとした場合には、原糸製造工程において毛羽が多くなり、織物の製品品位を維持することが困難となる傾向を生じる。
【0026】
本発明の生分解性織物は、単繊維断面の扁平率が1.5〜8の扁平断面糸からなるポリ乳酸繊維を経糸と緯糸の両方または経糸、緯糸のどちらか一方に用いることが重要である。扁平率が上記範囲内に有る扁平断面ポリ乳酸繊維を経糸および緯糸の両方に用いることで本発明の効果は最大限に発現するが、経糸または緯糸のどちらか一方に本発明の扁平断面ポリ乳酸繊維を用いるだけでも織物の肉薄化に十分な効果を得ることが出来る。なかでも、製織工程において張力のコントロール性に優れた経糸に用いることが好ましい。また、経糸または緯糸のどちらか一方に扁平断面ポリ乳酸繊維を用いた場合、他方には丸断面等の扁平断面以外のポリ乳酸繊維や、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリカプロラクトン、麻、綿、絹等の生分解性を有する合成繊維や天然繊維等を用いることが好ましい。また、本発明の織物は、扁平断面ポリ乳酸繊維を用いているため織物中での空隙が少ない高密度織物となり、織物表面の凸凹が少なく、例えば糊剤等をコーティングする際に薬剤の付与量を少なくすることが出来る。
【0027】
本発明の生分解性織物を構成する扁平断面ポリ乳酸繊維の長軸方向がこの織物の水平方向に配列していることが最大かつ重要な要件である。このことを定量的に表現するために、水平度指数(HI:Horizontal Index)を定義した。水平度指数HIは、織物を構成する経糸および緯糸の各フィラメント断面(単繊維断面)の長軸方向が織物の水平方向とのなす角度(θ)の余弦(hi)とし、その総和平均として表した値である。すなわち、水平度指数(HI)は、以下の式で算出することができる。
【0028】
HI=(Σhi)/f
hi=cosθ
θ:各フィラメント断面の長軸方向と織物の水平方向とのなす角度
f:フィラメント数
本発明の扁平断面ポリ乳酸繊維からなる織物は、経糸断面の水平度指数HIが0.75〜1であることが好ましく、さらに好ましくは0.85〜1、より好ましくは0.9〜1である。水平度指数HIをかかる範囲ととすることにより、柔軟性、収納性に優れた織物を得ることができる。水平度指数HIが0.75未満では、扁平断面糸を用いたとしても厚みが薄く、柔軟で、コンパクトで格納性に優れるという効果が十分に発現し難い。
【0029】
本発明の扁平断面ポリ乳酸繊維は、上記特定範囲内の扁平率を有していればマルチフィラメント、モノフィラメント、スリットヤーン等のいずれであってもよいが、製品として得られた織物の柔軟性を考えるとマルチフィラメントが好ましく用いられる。
【0030】
本発明の生分解性織物は、扁平率が1.5〜8である扁平断面ポリ乳酸繊維を用い、扁平断面糸の長軸が織物の水平方向に整然と配列する構造を有することから、同一の繊度および同一の打ち込み本数の円断面糸からなる織物とその厚みを比較した場合に、およそ10%以上薄くできることが特徴である。
【0031】
本発明の織物に用いる扁平断面ポリ乳酸繊維の総繊度、単繊維繊度、および織密度に関しては、特に規定はなく、本発明の効果を損なわない範囲であればよい。本発明の効果を損なわない好ましい範囲としては、繊度30〜2400dtex、織密度5〜200本/インチの範囲が例示できる。
【0032】
上記の範囲を外れる場合、すなわち下限未満の場合は、織物の強力、タフネスおよび剛性が不足する傾向となり、一方、上限を越える場合は、織物の厚みが厚くなり、硬くなるなどの好ましくない傾向を生じる。
【0033】
次に本発明の生分解性織物の製造方法について、その一例を概説する。
【0034】
本発明の生分解性織物を構成する扁平断面繊維を製造するためにポリ乳酸ポリマを溶融し、濾過した後、口金の細孔から紡出するが、この時、口金孔形状を各フィラメントの断面が特定の扁平断面となるよう設計した口金を用いる。特に紡出され糸条が冷却固化するまでの溶融ポリマの表面張力による断面形状の変化を考慮して口金孔形状を設計する。紡出糸条は冷却固化した後、油剤が付与され所定の回転速度で回転する引取りローラに捲回して引き取られる。引き続き、そのまま連続して糸条を順次高速度で回転するネルソンローラーに捲回することにより延伸を行う。高強度の繊維を得るためには、2段以上の多段延伸することが好ましい。また、最終延伸ローラー温度は120℃以上に設定し、延伸熱処理を施した後の延伸繊維は、最終延伸ローラーの次に配置されたリラックスローラーとの間で数%、通常0〜10%の弛緩処理をした後で巻き取られる。
【0035】
巻取り前の糸条には集束性を付与するため交絡処理を行う。交絡処理は走行糸条に対し略交叉方向に、複数のノズル孔から高圧の空気を噴射させることにより行う。交絡数が多いほど糸条は集束され、整経や製織での工程通過性がよくなるため好まれる。しかしながら一方で、糸条に与えられた交絡は製織後に解れて、織物中での糸条には交絡は実質的にないことが好ましい。織物を構成する扁平断面ポリ乳酸糸に交絡が多く残っていると、扁平断面繊維の平行性が失われ、本発明で特定する水平度指数HIが得られないことがある。
【0036】
本発明の織物を構成するための繊維糸条に付与する好ましい交絡数は0〜50個/m、より好ましくは0〜40個/mである。また、織物中での扁平断面糸の交絡数、すなわち織物を分解することで得られる分解扁平断面糸の交絡数は、7個/m以下、さらには5個/m以下であることが好ましい。かかる範囲の交絡数とすることにより、整経、製織における工程通過性を損なうことなく、繊維からなる織物の水平度指数HIを十分に高めることができ、その結果、厚みが薄く、柔軟で、コンパクトで格納性に優れた本発明の織物を高い生産性で得ることができる。
【0037】
上記のように製造された織物用の扁平断面糸からなるポリ乳酸マルチフィラメントは、例えばレピア、エアー、ウォーター等の織機を用いて製織することができる。例えば、緯糸には通常の繊度560dtexの円断面糸からなる生分解性繊維マルチフィラメントを用いて、織密度38本/インチで打ち込み、経糸には、繊度560dtexの扁平断面糸からなる扁平断面ポリ乳酸マルチフィラメントを織密度38本/インチで打ち込んで織物をとする。織組織としては特に決まりが無く、用途に応じて平織、斜文織、朱子織等の任意の織り方を採用することが出来る。
【0038】
本発明の生分解性織物の製造方法において、扁平断面繊維が織物と水平方向に並ぶように、製織工程で扁平断面糸の打ち込み張力が適切となるよう制御しながら製織を行う。製織時に付与するワープビームとクロスビームの間の経糸張力は、0.2〜2cN/dtexであることが好ましい。製織時の経糸張力が0.2cN/dtex未満であると、本発明における扁平断面繊維の配列状態を表す水平度指数(HI)が十分に高くならず、厚みが薄く、柔軟で、コンパクトで格納性に優れた織物を得ることが困難な傾向となる。逆に、経糸張力が2cN/dtexを越えた場合においても、水平度指数(HI)はむしろ低下し、本発明が目的とする織物の特徴が得られない傾向を生じることがある。また、製織時の経糸張力が高すぎると、単繊維切れ、全糸切れが発生して製織機の停台を起し、織物の品位が低下するばかりか、生産効率が低下する傾向を生じることになる。
【0039】
一方、緯糸は原糸チーズから糸条を解ジョし、緯糸を打ち込むまでの間で張力を付与する。その張力範囲には特に決まりはないが、0.2〜2cN/dtexの範囲が好ましい。
【0040】
また、本発明の生分解性織物は必要に応じて染色加工、プリント加工を施してもよい。染色には通常の丸断面糸からなる織物と同じ方法を用いてよく、例えば、染色浴に浸漬処理する方法を用いることができる。染料としては、アントラキノン染料、アゾ染料、ニトロジジェニルアミン染料、メチン染料およびナフトキノン染料など通常のポリエステル用染料を用いることができる。また、一般に赤、青、黄色の染料を組み合わせることによって望ましい色彩を得ることができる。
【0041】
また、必要であれば加熱加圧加工、所謂カレンダー加工やラミネート加工を施してもよい。
【0042】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。本実施例における評価項目は次のようにして測定した値である。
[扁平率]
単繊維断面の切片を作成し、光学顕微鏡により単繊維断面の長軸長(a)と短軸長(b)を測定し、式:扁平率=a/bにより計算して求めた。マルチフィラメントの場合には全単繊維数の半分の単繊維の扁平率の平均値を採用した。
[水平度指数(HI)]:
織物を経糸断面および緯糸断面方向にそれぞれ切断し、SEMを用いてそれぞれの断面を写真撮影し、写真上で扁平断面糸の長軸が織物の水平方向となす角度(θ)を各フイラメント毎に測定した。測定した角度の余弦値(hi)を求め、その総和平均を水平度指数(HI)とした。
【0043】
水平度指数HI=(Σhi)/f
hi=cosθ
θ:各フィラメントの長軸方向と織物の水平方向とのなす角度
f:フィラメント数
特に断らない限り、経糸および緯糸を1本を選びその全単繊維について測定した。
[繊度、強度および伸度]
繊維:JIS L1013の方法で測定した。試料を気温20℃、湿度65%の温調室にて24時間以上放置した後。強度、伸度の測定は、テンシロン引張試験機を用い、糸長25cm、引張速度30cm/分で測定した。
[交絡数]
1m試長の試料に100gの荷重をかけ、6gのフックを下降速度1〜2cm/秒で下降させ、式:交絡数=100(cm)/下降距離(cm)により計算して、試行回数10回の平均値により求めた。
[織物分解糸の交絡数]
織物を分解し、経糸および緯糸を10本サンプリングして測定試料とした。得られた測定試料を上記交絡数測定方法で測定した
[織物の厚み]
JIS L1096(6.5)の方法で測定した。
[織物の強力]
JIS L1096(6.12.1A法)の方法で、試験片の幅2.5cm、つかみ間隔10cm、引張速度15cm/分で測定した。
[生分解性]
ISO14855で定められたプラスチックの生分解性試験に供し、30日後のサンプルを水洗・乾燥した後、表面をSEMを用いて観察し、織物を構成する繊維表面に凹凸が確認できたサンプルを生分解性有、ボイドが観察できなかったサンプルを生分解性無とした。
【0044】
(実施例1〜3)
カーギルダウ社製ポリ乳酸チップ(グレード:6200D)を、エクストルダー型紡糸機で溶融した後、15μmの空隙を有する金属フィルターを通して濾過し、240℃に加熱した紡糸パック中に導き紡出した。この時、紡糸温度が240℃となるようエクストルーダーおよびスピンプロックなどの温度を調整した。紡糸口金は、スリット状孔(実施例1においては長軸長1.2mm、短軸長0.2mm、実施例2においては長軸長1mm、短軸長0.25mm、実施例3においては長軸長1.6mm、短軸長0.15mm)を96個有する口金を用いた。
【0045】
口金直下には30cmの加熱筒を取り付け、筒内雰囲気温度を240℃となるように加熱した。ここでいう筒内雰囲気温度とは、加熱筒長の中央部で、内壁から1cm離れた部分の空気層温度である。
【0046】
加熱筒の直下にはユニフロー型チムニーを取付け、糸条に18℃の冷風を30m/分の速度で吹き付け冷却固化した。固化した糸条に油剤を付与した後、紡糸引き取りローラに捲回して引き取った。引き取り糸条は一旦巻き取ることなく連続して延伸・熱処理ゾーンに供給し、3段延伸後弛緩処理を施し扁平断面ポリ乳酸糸を得た。
【0047】
延伸は、引き取りローラと給糸ローラの間で1.8%のストレッチをかけ、次いで給糸ローラと第1延伸ローラの間で1段目の延伸、第1延伸ローラと第2延伸ローラの間で2段目の延伸、第2延伸ローラと第3延伸ローラの間で3段目の延伸を行なった。引き続き、第3延伸ローラと弛緩ローラとの間で1.5%の弛緩熱処理を施し、交絡付与装置にて糸条を交絡処理した後、巻き取り機にて巻き取った。
【0048】
各ローラの表面温度は、引き取りローラが60℃、給糸ローラが95℃℃、第1延伸ローラ、第2延伸ローラ、第3延伸ローラがそれぞれ105℃、130℃、150℃、弛緩ローラが非加熱となるように設定した。弛緩ローラの周速度は3000m/分とし、引き取りローラ、給糸ローラ、第1延伸ローラ、第2延伸ローラの速度は、単繊維繊度や単繊維の断面形状などの変化による延伸倍率に応じて、それぞれ変化させた。延伸比率は1段目で総延伸倍率の40%、2段目で、30%の延伸を行い、残りを3段目で延伸した。糸条のローラへの捲回数は引き取りローラが5回、給糸ローラから第2延伸ローラが各7回、第3延伸ローラが11回、弛緩ローラが4.5回とした。
【0049】
交絡処理は、交絡付与装置内で走行糸条に対し略直角方向に高圧空気を噴射することにより行った。噴射する空気の圧力を変更し(例えば実施例1の経糸の場合0.1MPa)糸条の交絡数を変化させた。
【0050】
上記方法で製造し、表1に示した繊度、扁平率、強度、伸度、交絡数を有する扁平断面ポリ乳酸糸を、経糸織密度38本/インチ、緯糸を織密度38本/インチに引き揃え、それぞれ表1および表2に記載した織物内での交絡数となるように製織張力を調整して(例えば実施例1の経糸製織張力0.8cN/dtex、緯糸製織張力0.5cN/dtex)300m/minの速度で整経し、次いで津田駒製ウォータージェットルーム(ZW303)を用いて回転速度1000rpmで平織りに製織し生機を得た。その際、経糸の整経張力および製織時の経糸張力、緯糸の解ジョから測長ドラム間の張力および緯糸打ち込み張力等を変化させて製織し、織物を得た。得られた織物の特性を表1に示した。
【0051】
(実施例4)
0.6φの丸孔を96個有する口金を用いたこと以外は実施例1記載の製造方法と同様にして、表1に示す特性を有する丸断面扁平ポリ乳酸糸を得た。得られた丸断面ポリ乳酸糸を経糸に、実施例1で得られた扁平断面ポリ乳酸糸を緯糸に用いたこと以外は実施例1と同じ方法で巾40cm、高さ60cmの織物を得た。得られた糸および織物の特性を表1に示した。
【0052】
(実施例5)
実施例1記載の方法で得られた扁平断面ポリ乳酸糸を経糸に、実施例4記載の方法で得られた丸断面ポリ乳酸糸を緯糸に用いたこと以外は実施例1と同じ方法で織物を得た。得られた糸および織物の特性を表1に示した。
【0053】
(実施例6)
経糸製造工程における交絡処理時に噴射する空気の圧力を0.3MPa、製織時の経糸張力を0.13cN/dtexにしたこと以外は実施例5に記載の方法で織物を得た。得られた糸及び織物の特性を表1に示した。
【0054】
(比較例1)
実施例4記載の方法で得られた丸断面扁平ポリ乳酸糸を経糸及び緯糸に用いたこと以外は実施例1記載の方法で織物を得た。得られた糸及び織物の特性を表2に示した。
【0055】
(比較例2)
比較例2においては扁平率1.2のポリ乳酸糸を得るためにスリット状孔の長軸長と短軸長の長さを変化させた口金を用いたこと以外は実施例1と同様に紡糸し、織物を得た。得られた糸および織物の特性を表2に示した。
【0056】
(比較例3)
比較例3においては扁平率9.5のポリ乳酸糸を得るためにスリット状孔の長軸長と短軸長の長さを変化させた口金を用いたこと以外は実施例1と同様に紡糸したが、扁平率が高すぎるために毛羽が増えて製糸性が悪化し、サンプルは得られなかった。
【0057】
(比較例4)
固有粘度1.2のポリエチレンテレフタレートポリマー(PET)チップを、エクストルダー型紡糸機で溶融した後、295℃に加熱した紡糸パック中に導き紡出した。この時、紡糸温度が295℃となるようエクストルーダーおよびスピンプロックなどの温度を調整した。紡糸口金は、孔数96、長軸長1.2mm、短軸長0.2mmの矩形孔を有する口金を用いた。
【0058】
口金直下には30cmの加熱筒を取り付け、筒内雰囲気温度を300℃となるように加熱した。ここでいう筒内雰囲気温度とは、加熱筒長の中央部で、内壁から1cm離れた部分の空気層温度である。
【0059】
加熱筒の直下にはユニフロー型チムニーを取付け、糸条に18℃の冷風を30m/分の速度で吹き付け冷却固化した。固化した糸条に油剤を付与した後、紡糸引き取りローラに捲回して引き取った。引き取り糸条は一旦巻き取ることなく連続して延伸・熱処理ゾーンに供給し、2段延伸後弛緩処理を施しポリエチレンテレフタレート糸を得た。
【0060】
まず、引き取りローラと給糸ローラの間で3%のストレッチをかけ、次いで給糸ローラと第1延伸ローラの間で1段目の延伸、第1延伸ローラと第2延伸ローラの間で2段目の延伸を行った。引き続き、第2延伸ローラと弛緩ローラとの間で3%の弛緩熱処理を施し、交絡付与装置にて糸条を交絡処理した後、巻き取り機にて巻き取った。
【0061】
各ローラの表面温度は、引き取りローラが非加熱、給糸ローラが90℃、第1延伸ローラ、第2延伸ローラがそれぞれ100℃、220℃、弛緩ローラが非加熱となるように設定した。弛緩ローラの周速度は4000m/分の一定とし、引き取りローラ、給糸ローラ、第1延伸ローラ、第2延伸ローラの速度は、単繊維繊度や単繊維の断面形状などの変化による延伸倍率に応じて、それぞれ変化させた。延伸比率は1段目で総延伸倍率の70%の延伸を行い、残りを2段目で延伸した。
【0062】
交絡処理は、交絡付与装置内で走行糸条に対し略直角方向に高圧空気を噴射することにより行った。噴射する空気の圧力を0.1MPaとして行ない、表1に示す特性を有する扁平断面ポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られた糸を用いて実施例1と同様の方法で得た織物の特性を表2に示した。
【0063】
【表1】
Figure 2005009027
【0064】
【表2】
Figure 2005009027
【0065】
表1および表2の結果より明らかなように、扁平率が本発明の範囲内にある扁平断面ポリ乳酸繊維は製糸性良く得ることができ、得られた扁平断面ポリ乳酸糸を経緯両方または経糸、緯糸のどちらか一方に用いた織物は丸断面糸のみで構成される織物と比較して厚みの薄いものであった。
【0066】
比較例3の様に高扁平率を狙った場合には高変形のため紡糸時の毛羽が多く、高品位なポリ乳酸繊維および織物を得ることが出来なかった。
【0067】
また、実施例1〜6、比較例1、2、4の方法で得られた織物を生分解性試験に供したところ、比較例4以外の織物に関しては、織物を構成する繊維表面に多数のボイドを観察でき、分解が確認された。比較例5に関しては織物を構成する繊維表面は埋設前と変化が無く、分解が確認できなかった。
【0068】
しかしながら、比較例2または3に記載の様に、扁平率が本発明の範囲未満の扁平断面ポリ乳酸繊維を用いた場合には織物の薄化効果が小さく、扁平率が本発明の範囲以上の扁平断面ポリ乳酸繊維を得ようとした場合には繊維の毛羽および断糸が多く、品位の良い織物を得ることが出来なかった。
【0069】
【発明の効果】
本発明の織物は厚みが薄く、軽量で、耐候性、柔軟性に優れるだけでなく生分解性を有する織物であるため、衣類用途のみならず、特にテント・オーニング・養生シート・養生メッシュ・天幕等の建築用鞄地・パラソル・ネット・遮水シート・ターポリン・靴地・粘着シート・コンテナバック等の一般産資用途に好適である。

Claims (5)

  1. 単繊維の長軸と短軸の長さの比から求めた単繊維断面の扁平率が1.5〜8のポリ乳酸繊維を含むことを特徴とする生分解性織物。
  2. 前記ポリ乳酸繊維の単繊維断面の長軸方向と織物の水平方向とのなす角度(θ)の余弦(hi)の総和平均で表した水平度指数(HI)が0.75〜1となるように配列していることを特徴とする請求項1記載の生分解性織物。
  3. 織物を分解して得られた扁平断面糸が0〜7個/mの交絡数を有することを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性織物。
  4. 扁平断面を有するポリ乳酸繊維を含む糸を、製織時の緯糸打ち込み部位における経糸張力を0.2〜2cN/dtexで製織することを特徴とする生分解性織物の製造方法。
  5. 交絡数が0〜50個/mである前記扁平断面を有するポリ乳酸繊維を含む糸を少なくとも経糸に用いることを特徴とする請求項4に記載の生分解性織物の製造方法。
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