JP2005008804A - ゴム組成物およびタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】加工性および耐摩耗性を低下させることなく、ウェットグリップ性能を向上し得るゴム組成物および該ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤを提供する。
【解決手段】40重量%以上のスチレン−ブタジエンゴムを含むゴム成分100重量部に対して、シリカ80〜200重量部および軟化剤80〜250重量部からなり、前記スチレン−ブタジエンゴムは、ポリスチレン換算重量平均分子量が1000000以上、結合スチレン量が10〜40重量%、ビニル量が65重量%以上、かつ油展量がスチレン−ブタジエンゴムの固形分量100重量部に対して50重量部以上であるゴム組成物であって、tanδ温度分散のピーク温度が−5℃以上であるゴム組成物、ならびに、該ゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤ。
【選択図】 なし
【解決手段】40重量%以上のスチレン−ブタジエンゴムを含むゴム成分100重量部に対して、シリカ80〜200重量部および軟化剤80〜250重量部からなり、前記スチレン−ブタジエンゴムは、ポリスチレン換算重量平均分子量が1000000以上、結合スチレン量が10〜40重量%、ビニル量が65重量%以上、かつ油展量がスチレン−ブタジエンゴムの固形分量100重量部に対して50重量部以上であるゴム組成物であって、tanδ温度分散のピーク温度が−5℃以上であるゴム組成物、ならびに、該ゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤ。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム組成物およびタイヤに関し、とりわけウェット路面上で優れたウェットグリップを有するゴム組成物およびタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
とくに、モータースポーツなどで、ウェット路面上で激しい走行をする際、ウェットグリップを向上させるために、タイヤトレッドゴムにおいて、軟化剤を多く配合する方法、ゴム成分のガラス転移点(Tg)を上げる方法および水酸化アルミニウムのような無機フィラーを配合する方法が知られている。
【0003】
しかしながら、軟化剤を多く配合する方法においては、軟化剤の配合量を多くすると、耐摩耗性が低下するため、ある一定量以上は配合できず、またバンバリーミキサーなどによる混練り時、押し出し時に密着などが生じて加工性が低下するという問題があった。
【0004】
また、ゴム成分のガラス転移点(Tg)を上げる方法においては、ゴム成分のガラス転移点(Tg)を上げていくことにより、一般にウェットグリップは向上するが、ある一定温度以上にTgを上げようとすると、硬度(とくに室温、低温時)が上昇し、逆にウェットグリップが低下し、耐摩耗性の低下を招くという問題があった。
【0005】
さらに無機フィラーを配合する方法においては、ある一定量以上無機フィラーを配合すると、やはり耐摩耗性の低下を招き、バンバリーミキサーなどによる混練り時、押し出し時に加工性が低下するという問題があった。
【0006】
結合スチレン含有量の多いスチレン−ブタジエンゴムをゴム成分として使用する方法も知られている(特許文献1)。しかし、ウェットグリップ性能および耐摩耗性が充分ではないという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−273560号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、加工性および耐摩耗性を低下させることなく、ウェットグリップ性能を向上し得るゴム組成物および該ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、固形分量で40重量%以上のスチレン−ブタジエンゴムを含むゴム成分100重量部に対して、シリカ80〜200重量部および軟化剤80〜250重量部からなり、前記スチレン−ブタジエンゴムのポリスチレン換算重量平均分子量が1000000以上、結合スチレン量が10〜40重量%、ブタジエン部分中のビニル量が65重量%以上、かつ油展量がスチレン−ブタジエンゴム固形分100重量部に対して50重量部以上であるゴム組成物であって、tanδ温度分散のピーク温度が−5℃以上であるゴム組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、前記ゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤに関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分、シリカおよび軟化剤からなる。
【0012】
前記ゴム成分は、特定のスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を含む。
【0013】
本発明に用いられるSBRの結合スチレン量は、10〜40重量%であり、好ましくは20〜40重量%、より好ましくは30〜40重量%である。結合スチレン量が10重量%未満では、ウェットグリップが不足する。また、40重量%をこえると、低温でゴムが硬すぎるため、ウェットグリップが不足する。なお、結合スチレン量とは、SBR中のスチレンの重量%のことである。
【0014】
本発明に用いられるSBRのビニル量は、65重量%以上であり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは75重量%以上である。ビニル量が65重量%未満では、低温におけるtanδが低くなり、ウェットグリップが不足する。なお、ビニル量とは、SBR中のブタジエン部分中に対するビニル基の重量%のことである。
【0015】
本発明に用いられるSBRのtanδピーク温度は、−5〜10℃であることが好ましく、0〜5℃であることがより好ましい。tanδピーク温度が−5℃未満では、低温のtanδが低く、ウェットグリップが不足する傾向がある。また、10℃より高いと、低温でゴムが硬すぎるため、ウェットグリップが不足する傾向がある。
【0016】
従来、ビニル量に対する結合スチレン量を上げてTgを上げることによって、ウェットグリップを向上させることは行なわれていたが、一定温度以上にTgをあげようとすると、硬度が高くなり、温度依存性がわるくなり、グリップの低下を招く。また耐摩耗性も低下する。本発明では、SBRの結合スチレン量は少なく、ビニル量をできるだけ高くすることによって、硬度があまり高くならない。
【0017】
さらに、本発明に用いられるSBRのポリスチレン換算重量平均分子量は、1000000以上であり、好ましくは1400000以上、より好ましくは1600000以上である。SBRの重量平均分子量が1000000未満では耐摩耗性が低下する。
【0018】
本発明に用いられるSBRの油展量は、固形分100重量部に対して50重量部以上であり、好ましくは60重量部以上、より好ましくは80重量部以上である。油展量が50重量部未満では、後入れオイルが多くなり過ぎて、フィラーの分散が低下し、耐摩耗性が大きく低下する。油展オイルとしては、たとえば、アロマチックオイルなどがあげられる。
【0019】
モータースポーツなどのウェット路面走行用のタイヤのトレッドゴム配合では、従来から軟化剤を多く配合するが、バンバリーミキサーによる混練り時およびトレッド押し出し時の密着が激しく、加工性が問題となることが多かった。本発明では、SBRの分子量をできるだけ上げ、油展量を50重量部以上にすることによって、加工性が改善される。分子量を向上させること自体が、ムーニー粘度を向上させ、バンバリーでの混練り時の密着、押し出し時の密着に有利となる。さらにSBRへの油展量を多くすることによって、混練り時後入れオイルを減らすことができるため、バンバリーでの混練り時のスリップ低下を防ぎ、バンバリーでの混練り時の密着が有利となる。また、分子量を向上させることによって耐摩耗性が向上する。
【0020】
前記SBRは、溶液重合法によって製造することができる。
【0021】
前記SBRは、前記ゴム成分中に、固形分量で40重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上配合される。前記SBRの配合量が40重量%未満では、低温tanδが低く、ウェットグリップが不足する。
【0022】
前記ゴム成分は、前記SBRのほかにも、イソプレンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム(BR)、イソプレン−イソブチレンゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、前記SBRとは異なるSBRなどを含むことができる。
【0023】
本発明に用いられるシリカのチッ素吸着比表面積は、150m2/g以上であることが好ましく、180m2/g以上であることがより好ましい。シリカのチッ素吸着比表面積が150m2/g未満では、tanδが低く、ウェットグリップが不足する傾向がある。
【0024】
前記シリカは、前記ゴム成分(固形分)100重量部に対して、80〜200重量部、好ましくは100〜150重量部、より好ましくは100〜120重量部配合される。シリカの配合量が80重量部未満では、tanδが低く、ウェットグリップが不足する。また、200重量部をこえると、低温でゴムが硬く、ウェットグリップが不足する。
【0025】
本発明に用いられる軟化剤としては、たとえば、アロマオイル、ナフテンオイル、パラフィンオイル、各種可塑剤などがあげられる。
【0026】
前記軟化剤は、前記ゴム成分(固形分)100重量部に対して、SBRへの油展量を含めて80〜250重量部、好ましくは100〜150重量部、より好ましくは100〜120重量部配合される。軟化剤の配合量が80重量部未満では、ゴムが硬く、ウェットグリップが不足する。また、250重量部をこえると、耐摩耗性が低下する。
【0027】
本発明のゴム組成物には、前記ゴム成分、シリカおよび軟化剤のほかに、カーボンブラック、炭酸カルシウム、クレー、水酸化アルミニウムなどのフィラー、ゴム用ワックス、老化防止剤、加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤などを必要に応じて配合することができる。
【0028】
本発明のゴム組成物は、前記ゴム成分、シリカ、軟化剤および必要に応じてその他の配合剤を、バンバリーミキサーなどを用いて混錬りすることによって製造される。なお、前記油展オイルを除く軟化剤は、フィラー、薬品の投入、分散後に配合されることが好ましい。
【0029】
本発明のゴム組成物は、tanδ温度分散のピーク温度が−5℃以上であり、好ましくは−5〜10℃、より好ましくは0〜5℃である。ピーク温度が−5℃未満では、tanδが低く、ウェットグリップが不足する。また、10℃をこえると、低温でゴムが硬く、ウェットグリップが不足する傾向がある。
【0030】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材、たとえばタイヤトレッドに使用することができる。
【0031】
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、ゴム組成物を未加硫の段階でタイヤトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、未加硫タイヤを形成する。本発明のゴム組成物からなるトレッドを有する本発明のタイヤは、とくに、ウェット路面上を高速で走行する際、優れたウェット性能、耐摩耗性を発揮する。モータースポーツなどのサーキット走行で極めて有効であるが、一般舗装路で用いられてもよい。
【0032】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0033】
製造例1〜8(SBRの製造)
本発明で用いられるSBRは、リチウム系開始剤によりスチレンとブタジエンを共重合する溶液重合法により製造される。必要に応じて、スチレンランダム化剤、多官能性カップリング剤を用いる。重合終了後に伸展油を加え、脱溶媒、乾燥を行なう。得られたSBRについて、以下の測定を行なった。
【0034】
▲1▼結合スチレン量、ビニル量
赤外吸収スペクトル法により求めた。
▲2▼分子量
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)を用いてポリスチレン換算で算出した。
▲3▼油展量
アセトンでの抽出により算出した。
【0035】
実施例1〜3および比較例1〜5
(材料)
SBR:製造例1〜8で得られたSBR
シリカ:日本シリカ工業(株)製のニプシルAQ
軟化剤:アロマオイル(ジャパンエナジー社製のプロセスX−260)
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
【0036】
(製造方法)
表1の配合内容にしたがって、硫黄および加硫促進剤を除く材料を、バンバリー型ミキサーを用いて混練りした。つぎに、硫黄および加硫促進剤を添加し混練りし、得られたゴム組成物を押出し成型した。得られたゴム組成物を加硫することにより、試験片を作製した。
【0037】
また、表1の配合内容にしたがって、硫黄および加硫促進剤を除く材料を、バンバリー型ミキサーを用いて混練りし、オープンロールで加硫系を練りこんだ。シートを張り合わせてトレッドに整え、245/40R18のタイヤを試作した。
【0038】
(試験方法)
▲1▼tanδ(0℃)、E´(0℃)
試験片について、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、0℃、5%歪みの条件で損失正接(tanδ)および複素弾性率(E´)を測定した。tanδ(0℃)は、値が高いほどヒステリシスが上がりウェットグリップが向上する。E´(0℃)は、値が低いほど路面凹凸に追従しやすく、ウェットグリップが向上する。
【0039】
▲2▼硬度の温度依存
試験片について、0℃における硬度の値から100℃における硬度の値を引いた値を求めた。この値が小さいほど、硬度の温度依存性が小さく、さまざまな路面温度、路面状況に対して硬度が変わらず、ウェットグリップを発揮しやすい。
【0040】
▲3▼tanδピーク温度
試験片について、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、0.5%歪み、10Hzの条件で−70〜100℃までの温度分散を測定し、そのときのtanδピーク温度を求めた。この温度が高いほど、tanδ(0℃)は大きくなるが、E´(0℃)は高くなり、硬度の温度依存性も悪化する傾向がある。
【0041】
▲4▼耐摩耗性指数
試作タイヤを装着した乗用車でウェット路面において実車テストを行なった。サーキットを10周したときの摩耗外観を、比較例1を100として評価した。指数が大きいほど、耐摩耗性が良好であることを示す。
【0042】
▲5▼ウェットグリップ指数
耐摩耗性試験において、10周を限界速度で走行したときのラップタイムの測定値の平均を出し、比較例1を基準としたときの逆数で評価した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能が良好であることを示す。
【0043】
▲6▼加工性(バンバリーでの混練り時の密着)
タイヤ試作時のバンバリーでの混練りで、加工性を5点満点で評価した。点数が高いほど加工性がよい。
評点3:ロール作業時に、ロールを止めて引張らないとゴムがロールから外せない(シートオフできない)レベル。
評点3.5:ロール作業時にかなりの力でゴムを引張らないとシートオフできないレベル。
評点4:ロール作業時にややゴムを引張らないとシートオフできないレベル。
評点5:ロール作業時に容易にシートオフできるレベル。
【0044】
(試験結果)
結果を表1に示す。
【0045】
比較例1の基準に対して、適度にSBRのビニル量を上げて結合スチレン量を下げ、分子量を上げ、かつ油展量を増やした実施例1では、ウェットグリップ、耐摩耗性および加工性の改善が図られた。
【0046】
極端にSBRのビニル量を上げ、可能なまで高分子量化した実施例2および3では、さらに各性能が向上した。
【0047】
一方、SBRの結合スチレン量を少しだけ下げてビニル量を少しだけ上げた比較例2では、その効果は充分ではなかった。
【0048】
SBRの結合スチレン量とビニル量は維持し、分子量のみ上げた比較例3では、耐摩耗性は向上したがウェットグリップの向上効果は小さかった。
【0049】
SBRのビニル量を上げ、分子量を上げても、ある一定温度以上のtanδピーク温度を示さない比較例4では、ウェットグリップが不足した。
【0050】
SBRの結合スチレン量を上げ、ビニル量を下げた比較例5では、tanδ(0℃)は向上するが、E´(0℃)および硬度の温度依存性はわるくなり、ウェットグリップが不充分であった。
【0051】
【表1】
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、結合スチレン量が低く、ビニル量が高く、分子量が高く、かつ油展量の多いSBRを使用することによって、ウェットグリップ、耐摩耗性および加工性の改善を図ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム組成物およびタイヤに関し、とりわけウェット路面上で優れたウェットグリップを有するゴム組成物およびタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
とくに、モータースポーツなどで、ウェット路面上で激しい走行をする際、ウェットグリップを向上させるために、タイヤトレッドゴムにおいて、軟化剤を多く配合する方法、ゴム成分のガラス転移点(Tg)を上げる方法および水酸化アルミニウムのような無機フィラーを配合する方法が知られている。
【0003】
しかしながら、軟化剤を多く配合する方法においては、軟化剤の配合量を多くすると、耐摩耗性が低下するため、ある一定量以上は配合できず、またバンバリーミキサーなどによる混練り時、押し出し時に密着などが生じて加工性が低下するという問題があった。
【0004】
また、ゴム成分のガラス転移点(Tg)を上げる方法においては、ゴム成分のガラス転移点(Tg)を上げていくことにより、一般にウェットグリップは向上するが、ある一定温度以上にTgを上げようとすると、硬度(とくに室温、低温時)が上昇し、逆にウェットグリップが低下し、耐摩耗性の低下を招くという問題があった。
【0005】
さらに無機フィラーを配合する方法においては、ある一定量以上無機フィラーを配合すると、やはり耐摩耗性の低下を招き、バンバリーミキサーなどによる混練り時、押し出し時に加工性が低下するという問題があった。
【0006】
結合スチレン含有量の多いスチレン−ブタジエンゴムをゴム成分として使用する方法も知られている(特許文献1)。しかし、ウェットグリップ性能および耐摩耗性が充分ではないという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−273560号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、加工性および耐摩耗性を低下させることなく、ウェットグリップ性能を向上し得るゴム組成物および該ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、固形分量で40重量%以上のスチレン−ブタジエンゴムを含むゴム成分100重量部に対して、シリカ80〜200重量部および軟化剤80〜250重量部からなり、前記スチレン−ブタジエンゴムのポリスチレン換算重量平均分子量が1000000以上、結合スチレン量が10〜40重量%、ブタジエン部分中のビニル量が65重量%以上、かつ油展量がスチレン−ブタジエンゴム固形分100重量部に対して50重量部以上であるゴム組成物であって、tanδ温度分散のピーク温度が−5℃以上であるゴム組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、前記ゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤに関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分、シリカおよび軟化剤からなる。
【0012】
前記ゴム成分は、特定のスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を含む。
【0013】
本発明に用いられるSBRの結合スチレン量は、10〜40重量%であり、好ましくは20〜40重量%、より好ましくは30〜40重量%である。結合スチレン量が10重量%未満では、ウェットグリップが不足する。また、40重量%をこえると、低温でゴムが硬すぎるため、ウェットグリップが不足する。なお、結合スチレン量とは、SBR中のスチレンの重量%のことである。
【0014】
本発明に用いられるSBRのビニル量は、65重量%以上であり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは75重量%以上である。ビニル量が65重量%未満では、低温におけるtanδが低くなり、ウェットグリップが不足する。なお、ビニル量とは、SBR中のブタジエン部分中に対するビニル基の重量%のことである。
【0015】
本発明に用いられるSBRのtanδピーク温度は、−5〜10℃であることが好ましく、0〜5℃であることがより好ましい。tanδピーク温度が−5℃未満では、低温のtanδが低く、ウェットグリップが不足する傾向がある。また、10℃より高いと、低温でゴムが硬すぎるため、ウェットグリップが不足する傾向がある。
【0016】
従来、ビニル量に対する結合スチレン量を上げてTgを上げることによって、ウェットグリップを向上させることは行なわれていたが、一定温度以上にTgをあげようとすると、硬度が高くなり、温度依存性がわるくなり、グリップの低下を招く。また耐摩耗性も低下する。本発明では、SBRの結合スチレン量は少なく、ビニル量をできるだけ高くすることによって、硬度があまり高くならない。
【0017】
さらに、本発明に用いられるSBRのポリスチレン換算重量平均分子量は、1000000以上であり、好ましくは1400000以上、より好ましくは1600000以上である。SBRの重量平均分子量が1000000未満では耐摩耗性が低下する。
【0018】
本発明に用いられるSBRの油展量は、固形分100重量部に対して50重量部以上であり、好ましくは60重量部以上、より好ましくは80重量部以上である。油展量が50重量部未満では、後入れオイルが多くなり過ぎて、フィラーの分散が低下し、耐摩耗性が大きく低下する。油展オイルとしては、たとえば、アロマチックオイルなどがあげられる。
【0019】
モータースポーツなどのウェット路面走行用のタイヤのトレッドゴム配合では、従来から軟化剤を多く配合するが、バンバリーミキサーによる混練り時およびトレッド押し出し時の密着が激しく、加工性が問題となることが多かった。本発明では、SBRの分子量をできるだけ上げ、油展量を50重量部以上にすることによって、加工性が改善される。分子量を向上させること自体が、ムーニー粘度を向上させ、バンバリーでの混練り時の密着、押し出し時の密着に有利となる。さらにSBRへの油展量を多くすることによって、混練り時後入れオイルを減らすことができるため、バンバリーでの混練り時のスリップ低下を防ぎ、バンバリーでの混練り時の密着が有利となる。また、分子量を向上させることによって耐摩耗性が向上する。
【0020】
前記SBRは、溶液重合法によって製造することができる。
【0021】
前記SBRは、前記ゴム成分中に、固形分量で40重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上配合される。前記SBRの配合量が40重量%未満では、低温tanδが低く、ウェットグリップが不足する。
【0022】
前記ゴム成分は、前記SBRのほかにも、イソプレンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム(BR)、イソプレン−イソブチレンゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、前記SBRとは異なるSBRなどを含むことができる。
【0023】
本発明に用いられるシリカのチッ素吸着比表面積は、150m2/g以上であることが好ましく、180m2/g以上であることがより好ましい。シリカのチッ素吸着比表面積が150m2/g未満では、tanδが低く、ウェットグリップが不足する傾向がある。
【0024】
前記シリカは、前記ゴム成分(固形分)100重量部に対して、80〜200重量部、好ましくは100〜150重量部、より好ましくは100〜120重量部配合される。シリカの配合量が80重量部未満では、tanδが低く、ウェットグリップが不足する。また、200重量部をこえると、低温でゴムが硬く、ウェットグリップが不足する。
【0025】
本発明に用いられる軟化剤としては、たとえば、アロマオイル、ナフテンオイル、パラフィンオイル、各種可塑剤などがあげられる。
【0026】
前記軟化剤は、前記ゴム成分(固形分)100重量部に対して、SBRへの油展量を含めて80〜250重量部、好ましくは100〜150重量部、より好ましくは100〜120重量部配合される。軟化剤の配合量が80重量部未満では、ゴムが硬く、ウェットグリップが不足する。また、250重量部をこえると、耐摩耗性が低下する。
【0027】
本発明のゴム組成物には、前記ゴム成分、シリカおよび軟化剤のほかに、カーボンブラック、炭酸カルシウム、クレー、水酸化アルミニウムなどのフィラー、ゴム用ワックス、老化防止剤、加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤などを必要に応じて配合することができる。
【0028】
本発明のゴム組成物は、前記ゴム成分、シリカ、軟化剤および必要に応じてその他の配合剤を、バンバリーミキサーなどを用いて混錬りすることによって製造される。なお、前記油展オイルを除く軟化剤は、フィラー、薬品の投入、分散後に配合されることが好ましい。
【0029】
本発明のゴム組成物は、tanδ温度分散のピーク温度が−5℃以上であり、好ましくは−5〜10℃、より好ましくは0〜5℃である。ピーク温度が−5℃未満では、tanδが低く、ウェットグリップが不足する。また、10℃をこえると、低温でゴムが硬く、ウェットグリップが不足する傾向がある。
【0030】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材、たとえばタイヤトレッドに使用することができる。
【0031】
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、ゴム組成物を未加硫の段階でタイヤトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、未加硫タイヤを形成する。本発明のゴム組成物からなるトレッドを有する本発明のタイヤは、とくに、ウェット路面上を高速で走行する際、優れたウェット性能、耐摩耗性を発揮する。モータースポーツなどのサーキット走行で極めて有効であるが、一般舗装路で用いられてもよい。
【0032】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0033】
製造例1〜8(SBRの製造)
本発明で用いられるSBRは、リチウム系開始剤によりスチレンとブタジエンを共重合する溶液重合法により製造される。必要に応じて、スチレンランダム化剤、多官能性カップリング剤を用いる。重合終了後に伸展油を加え、脱溶媒、乾燥を行なう。得られたSBRについて、以下の測定を行なった。
【0034】
▲1▼結合スチレン量、ビニル量
赤外吸収スペクトル法により求めた。
▲2▼分子量
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)を用いてポリスチレン換算で算出した。
▲3▼油展量
アセトンでの抽出により算出した。
【0035】
実施例1〜3および比較例1〜5
(材料)
SBR:製造例1〜8で得られたSBR
シリカ:日本シリカ工業(株)製のニプシルAQ
軟化剤:アロマオイル(ジャパンエナジー社製のプロセスX−260)
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
【0036】
(製造方法)
表1の配合内容にしたがって、硫黄および加硫促進剤を除く材料を、バンバリー型ミキサーを用いて混練りした。つぎに、硫黄および加硫促進剤を添加し混練りし、得られたゴム組成物を押出し成型した。得られたゴム組成物を加硫することにより、試験片を作製した。
【0037】
また、表1の配合内容にしたがって、硫黄および加硫促進剤を除く材料を、バンバリー型ミキサーを用いて混練りし、オープンロールで加硫系を練りこんだ。シートを張り合わせてトレッドに整え、245/40R18のタイヤを試作した。
【0038】
(試験方法)
▲1▼tanδ(0℃)、E´(0℃)
試験片について、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、0℃、5%歪みの条件で損失正接(tanδ)および複素弾性率(E´)を測定した。tanδ(0℃)は、値が高いほどヒステリシスが上がりウェットグリップが向上する。E´(0℃)は、値が低いほど路面凹凸に追従しやすく、ウェットグリップが向上する。
【0039】
▲2▼硬度の温度依存
試験片について、0℃における硬度の値から100℃における硬度の値を引いた値を求めた。この値が小さいほど、硬度の温度依存性が小さく、さまざまな路面温度、路面状況に対して硬度が変わらず、ウェットグリップを発揮しやすい。
【0040】
▲3▼tanδピーク温度
試験片について、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、0.5%歪み、10Hzの条件で−70〜100℃までの温度分散を測定し、そのときのtanδピーク温度を求めた。この温度が高いほど、tanδ(0℃)は大きくなるが、E´(0℃)は高くなり、硬度の温度依存性も悪化する傾向がある。
【0041】
▲4▼耐摩耗性指数
試作タイヤを装着した乗用車でウェット路面において実車テストを行なった。サーキットを10周したときの摩耗外観を、比較例1を100として評価した。指数が大きいほど、耐摩耗性が良好であることを示す。
【0042】
▲5▼ウェットグリップ指数
耐摩耗性試験において、10周を限界速度で走行したときのラップタイムの測定値の平均を出し、比較例1を基準としたときの逆数で評価した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能が良好であることを示す。
【0043】
▲6▼加工性(バンバリーでの混練り時の密着)
タイヤ試作時のバンバリーでの混練りで、加工性を5点満点で評価した。点数が高いほど加工性がよい。
評点3:ロール作業時に、ロールを止めて引張らないとゴムがロールから外せない(シートオフできない)レベル。
評点3.5:ロール作業時にかなりの力でゴムを引張らないとシートオフできないレベル。
評点4:ロール作業時にややゴムを引張らないとシートオフできないレベル。
評点5:ロール作業時に容易にシートオフできるレベル。
【0044】
(試験結果)
結果を表1に示す。
【0045】
比較例1の基準に対して、適度にSBRのビニル量を上げて結合スチレン量を下げ、分子量を上げ、かつ油展量を増やした実施例1では、ウェットグリップ、耐摩耗性および加工性の改善が図られた。
【0046】
極端にSBRのビニル量を上げ、可能なまで高分子量化した実施例2および3では、さらに各性能が向上した。
【0047】
一方、SBRの結合スチレン量を少しだけ下げてビニル量を少しだけ上げた比較例2では、その効果は充分ではなかった。
【0048】
SBRの結合スチレン量とビニル量は維持し、分子量のみ上げた比較例3では、耐摩耗性は向上したがウェットグリップの向上効果は小さかった。
【0049】
SBRのビニル量を上げ、分子量を上げても、ある一定温度以上のtanδピーク温度を示さない比較例4では、ウェットグリップが不足した。
【0050】
SBRの結合スチレン量を上げ、ビニル量を下げた比較例5では、tanδ(0℃)は向上するが、E´(0℃)および硬度の温度依存性はわるくなり、ウェットグリップが不充分であった。
【0051】
【表1】
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、結合スチレン量が低く、ビニル量が高く、分子量が高く、かつ油展量の多いSBRを使用することによって、ウェットグリップ、耐摩耗性および加工性の改善を図ることができる。
Claims (2)
- 40重量%以上のスチレン−ブタジエンゴムを含むゴム成分100重量部に対して、シリカ80〜200重量部および軟化剤80〜250重量部からなり、前記スチレン−ブタジエンゴムは、ポリスチレン換算重量平均分子量が1000000以上、結合スチレン量が10〜40重量%、ブタジエン部分中のビニル量が65重量%以上、かつ油展量がスチレン−ブタジエンゴムの固形分量100重量部に対して50重量部以上であるゴム組成物であって、tanδ温度分散のピーク温度が−5℃以上であるゴム組成物。
- 請求項1記載のゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤ。
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- 2003-06-20 JP JP2003176249A patent/JP2005008804A/ja active Pending
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