JP2005008750A - 脂環式構造含有重合体樹脂フィルムおよび用途 - Google Patents

脂環式構造含有重合体樹脂フィルムおよび用途 Download PDF

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Koichi Ikeda
功一 池田
Tsuyoshi Konno
剛志 昆野
Atsumi Ikeda
篤美 池田
Mitsuru Tada
充 多田
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Abstract

【課題】フィルムを製造する際、及びそのフィルムを二次加工する際に発煙や臭気が発生せず、且つポケット部を有する成型品とした際に、ポケット部の凹みが生じないフィルムを提供すること。
【解決手段】脂環式構造含有重合体樹脂(A)と、
軟化点が100℃〜150℃の範囲にあり、数平均分子量が300〜700の範囲にあり、かつ200℃における揮発分が300ppm以下である石油樹脂(B)とを含有し、
且つ脂環式構造含有重合体樹脂(A)と石油樹脂(B)との比率(重量比)が、A/Bで95/5〜75/25の範囲にある樹脂組成物(C)からなる引張り弾性率が800〜2000MPaの範囲にあるフィルム(D)。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空成型等により二次成型に供されるフィルムに関する。更に詳しくは、脂環式構造含有重合体樹脂と石油樹脂とからなる、物性バランス、外観、透明性、成形性及び防湿性に優れたフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
錠剤やカプセル剤等の収納物を包装する包装体として、例えば、収納物を収納するポケット部を形成した厚さ250〜300μmのポリ塩化ビニルフィルムから成る底材と前記収納部を封止する蓋材から構成され、底材のポケット部を蓋材側に押し込んで蓋材の一部を破断させ、収納物を取り出す形式のプレススルーパッケージ(PTP)が用いられている。また、玩具等の収納物を包装する包装体として、例えば、収納物の形状をかたどった立体的なポケット部を形成したフィルムを組み合わせて収納物を外から目視でき、更に運搬時等の衝撃を吸収するブリスターパックも用いられている。
これらの包装体の材料としては、塩素不含有、薄さ、透明性、剛性、防湿、低酸素透過性が求められており、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系材料やノルボルネン系重合体などに代表される脂環式構造含有重合体からなるフィルムが使われるようになっている。
【0003】
特許文献1には、脂環式構造含有重合体樹脂の機械強度を高めるため、ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素添加物に、軟化点80℃以上の水素化石油樹脂等の炭化水素樹脂を配合してなる樹脂組成物が開示され、この組成物を成形してフィルムを得ることが開示されている。
特許文献2には、テトラシクロドデセン誘導体の(共)重合体と、石油樹脂等の軟化点50〜140℃、分子量1000以下の低分子量化合物とからなる樹脂層の少なくとも片面にポリプロピレンからなる樹脂層を積層してなる積層フィルムおよびその用途としてPTPが開示されている。
更に、特許文献3には、脂環式構造含有重合体樹脂層の両面にポリオレフィン層を積層してなる積層フィルムからなるPTPが開示されている。
【特許文献1】
特開平3−12448号報
【特許文献2】
特開平8−300578号報
【特許文献3】
特開2002−179139号報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらのフィルムは、フィルムを製造する際に、及びそのフィルムを真空成形等の二次加工する際に発煙や臭気が発生したり、その発煙により汚れが金型やフィルムに付着する等の問題や、PTP、プリスターパック等のポケット部を有する二次成形品の材料としてそれらのフィルムを用いると、二次成形品の円柱状ポケット部の底部が凹んだりするという問題があった。従って、本発明の目的は、フィルムを製造する際、及びそのフィルムを二次加工する際に発煙や臭気が発生せず、且つポケット部を有する成型品とした際に、ポケット部の凹みが生じないフィルムを提供することにある。
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、発煙や臭気の原因が石油樹脂にあることを見出した。また、ポケット部の凹みは、ポケットを有する二次成形品にアルミ箔を熱シールし、次いで室温に戻した際に、ポケット内部が減圧されて内部方向に応力が掛ることによって起きること、円柱状錠剤等を充填するためのポケット部形状が円柱状の場合に特に底部が凹むことを見出した。そこで、本発明者は、脂環式構造含有重合体樹脂と石油樹脂を更に検討し、その結果、脂環式構造含有重合体樹脂と特定の石油樹脂を特定の割合で含有してなる引張り弾性率が800〜2000MPaの範囲にある樹脂組成物からなるフィルムにより、上記目的を達成することができることを見出し、この知見によって本発明を完成するに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、
(1)脂環式構造含有重合体樹脂(A)と、
軟化点が100℃〜150℃の範囲にあり、数平均分子量が300〜700の範囲にあり、かつ200℃における揮発分が300ppm以下である石油樹脂(B)とを含有し、
且つ脂環式構造含有重合体樹脂(A)と石油樹脂(B)との比率(重量比)が、A/Bで95/5〜75/25の範囲にある樹脂組成物(C)からなる引張り弾性率が800〜2000MPaの範囲にあるフィルム(D)、
(2)脂環式構造含有重合体樹脂(A)が、ノルボルナン構造以外の脂環式構造である繰り返し単位(b)を含有してなり、脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)全体に対して繰り返し単位(b)が10重量%以上である脂環式構造含有重合体樹脂である1記載のフィルム(D)、
(3)脂環式構造含有重合体樹脂(A)が、ジシクロペンタジエン及びノルボルネンの開環共重合体又はその水素添加物である1、又は2記載のフィルム(D)、
(4)石油樹脂(B)がジシクロペンタジエン系水素化石油樹脂である請求項1、2又は3記載のフィルム(D)、
(5)1、2、3、又は4記載のフィルム(D)と非環状ポリオレフィン樹脂フィルム(E)とを積層してなる積層フィルム、又は
(6)1、2、3、4記載のフィルム、又は5記載の積層フィルムで形成してなるプレススルーパック又はプリスターパックが提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のフィルム(D)は脂環式構造含有重合体樹脂(A)と、石油樹脂(B)とを含有する樹脂組成物(C)からなっている。
【0008】
本発明に用いられる樹脂組成物(C)は脂環式構造含有重合体樹脂(A)と石油樹脂(B)とを含んでなっている。
本発明で用いられる脂環式構造含有重合体とは、脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)を有するものである。
重合体の脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が最も好ましい。脂環構造は主鎖にあっても良いし、側鎖にあっても良いが、機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械強度、耐熱性及びフィルム成形性の各特性が高度にバランスされる。本発明に使用される脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。割合がこの範囲にあると透明性および耐熱性が良好である。
【0009】
こうした脂環式構造含有重合体の具体例としては、
(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び(1)〜(4)の水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、(1)、(4)及びこれらの水素添加物が好ましい。
【0010】
(1)ノルボルネン系重合体
ノルボルネン系重合体は、(ア)開環重合によって得られるものと(イ)付加重合によって得られるものに大別される。
(ア)開環重合によって得られるものとして、ノルボルネン系モノマーの、又はこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環(共)重合体、並びにこれらの水素添加物、(イ)付加重合によって得られるものとして、ノルボルネン系モノマーの、又はこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加(共)重合体などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体水素添加物が、耐熱性、機械的強度等の観点から好ましい。
【0011】
ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ〔4.3.01,6.12,5〕デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3−エン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう:慣用名メタノテトラヒドロフルオレン)及びその誘導体、テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。
【0012】
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基などが例示でき、前記ノルボルネン系モノマーは、置換基を2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
中でも、ジシクロペンタジエンとノルボルネンの組み合わせ、ジシクロペンタジエンとテトラシクロドデセン誘導体の組み合わせ、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン及びメタノテトラヒドロフルオレンの組み合わせ、テトラシクロドデセンとメタノテトラヒドロフルオレンの組み合わせによる開環共重合体が好ましく、ジシクロペンタジエンとノルボルネンの組み合わせによる開環共重合体がより好ましい。
【0013】
ノルボルネン系モノマーの、又はこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環(共)重合体は、モノマーを公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
【0014】
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0015】
ノルボルネン系モノマーの、又はこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加(共)重合体は、モノマーを公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて(共)重合させて得ることができる。
ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、特にエチレンが特に好ましい。
ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを共重合する場合は、共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0017】
脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)全体に対する、ノルボルナン構造以外の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(b)の割合は特に限定されないが、その割合が、10重量%以上であると好ましく、30重量%以上であるとより好ましく、50重量%以上であると特に好ましい。割合がこの範囲にあると防湿性、機械強度が良好である。
繰り返し単位(b)の割合の調整について以下に説明する。
ノルボルナンは、式(1)
【化1】
Figure 2005008750
で表される二環系の橋かけ環式飽和炭化水素である。このような環構造をノルボルナン構造という。
ノルボルネンは、式(2)
【化2】
Figure 2005008750
で表される二環系の橋かけ環式不飽和炭化水素(環状オレフィン)である。ノルボルネンが開環重合すると、式(3)
【化3】
Figure 2005008750
で表される繰り返し単位が形成され、橋かけ環式構造がなくなり、主鎖に炭素−炭素二重結合が形成される。この二重結合を水素添加すると、飽和重合体が得られる。これに対して、ノルボルネンが付加重合すると、式(4)
【化4】
Figure 2005008750
で表される繰り返し単位が形成され、該繰り返し単位は、ノルボルナン構造を有することになる。
テトラシクロドデセンは、式(5)
【化5】
Figure 2005008750
で表される環状オレフィンである。テトラシクロドデセンが開環重合すると、式(6)
【化6】
Figure 2005008750
で表される繰り返し単位が形成され、該繰り返し単位は、1個のノルボルナン構造を有することになる。テトラシクロドデセンが付加重合すると、式(7)
【化7】
Figure 2005008750
で表される繰り返し単位が形成され、該繰り返し単位は、2個のノルボルナン構造を有することになる。
このように、ノルボルネン系モノマーの種類と量、重合方式により、脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)全体に対するノルボルナン構造を含有してなる繰り返し単位(b)の割合が決定される。
例えば、橋かけ環式構造として1個のノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーの開環重合体及びその水素添加物は、繰り返し単位中にノルボルナン構造を持たない。したがって、開環共重合とその水素添加物においては、橋かけ環式構造として1個のノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーの共重合割合を調整することにより、繰り返し単位(a)全体に対する繰り返し単位(b)の割合を調節することができる。ノルボルネン系モノマーの付加共重合体の場合は、例えば、共重合モノマーのシクロオレフィンなどの共重合割合を調節することにより、繰り返し単位(b)の割合を調節する。
【0018】
(2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができる。
【0019】
(3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−または1,4−付加重合した重合体及びその水素添加物などを用いることができる。
【0020】
(4)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素添加物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素添加物;などが挙げられ、ビニル脂環式炭化水素単量体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体及びその水素添加物など、いずれでもよい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック、またはそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に制限はない。
【0021】
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、5,000〜500,000、好ましくは8,000〜250,000、より好ましくは10,000〜200,000の範囲である。分子量がこの範囲であると、樹脂の機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされ好ましい。本発明において重量平均分子量は、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の値である。
【0022】
脂環式構造含有重合体樹脂(A)は、そのガラス転移温度(Tg)が50℃以上であると好ましく、60℃〜90℃の範囲であると特に好ましい。Tgがこの範囲であると、耐熱性・耐久性の点で好ましい。本発明においてTgは、JIS−K7121に基づいて示差走査熱量分析法(DSC)で測定した値である。
【0023】
脂環式構造含有重合体樹脂(A)のメルトフローレート(以下、「MFR」と記す。)は、10〜70g/10分の範囲であると好ましく、15〜65g/10分の範囲であると更に好ましく、20〜60g/10分の範囲であると特に好ましい。MFRがこの範囲であると、成形性、成形品の強度が良好である。本発明においてMFRは、JIS K 7210に準拠して280℃で測定した値である。
【0024】
これらの脂環式構造含有重合体樹脂はそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
(石油樹脂)
本発明に用いられる石油樹脂(B)の軟化点は、100〜150℃の範囲にある。中でも、軟化点が120〜145℃の範囲にあると好ましい。軟化点がこの範囲であるとフィルムの物理的特性や加工性が良好である。本発明において軟化点はJIS K 5903に準拠し測定した値である。
石油樹脂(B)の数平均分子量(Mn)は、300〜700の範囲にある。中でも、400〜500の範囲にあると好ましい。Mnがこの範囲にあると、樹脂組成物の流動性が向上し、フィルムの二次成形性が良好となる。本発明において数平均分子量(Mn)はGPC(ゲルパ−ミエ−ションクロマトグラフィ−)法によるポリスチレン換算の分子量である。
【0026】
石油樹脂(B)の200℃における揮発分は、300ppm以下である。中でも200℃における揮発分が200ppm以下であると好ましく、100ppm以下であると特に好ましい。石油樹脂の200℃における揮発分がこの範囲にあると、フィルムの製造の際、及びフィルムの二次加工の際の発煙や臭気、層間剥離等の点で良好である。
石油樹脂の揮発分量は以下の方法で測定する。
石油樹脂ペレットを、0.5〜20g秤量する。秤量した石油樹脂ペレットを、表面に吸着していた水分や有機物を完全に除去したステンレス製の試料室に入れ、温度200℃で30分間、市販の活性炭チューブを用いて気体を連続的に捕集した後、熱脱着ガスクロマトグラフィー質量分析計(TDS−GC−MS)を用いて揮発分量を測定する。(前記揮発分量)/(秤量した石油樹脂ペレットの重量)を、200℃における揮発分量とする。
石油樹脂の揮発分の具体例としては、石油樹脂中の未反応モノマーやオリゴマーまたはそれらの分解物;ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ジラウリルチオジプロピオネート等の樹脂に配合された酸化防止剤またはそれらの分解物;フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)などのフタル酸エステル、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリエチル(TEP)などのリン酸エステル、オレイン酸ブチルなどの脂肪酸エステル、アジピン酸ジオクチル(DOA)などのアジピン酸エステル等の可塑剤;アセトン、トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン、シクロヘキサン等の樹脂中の残留溶剤;光安定剤;架橋剤;滑剤;帯電防止剤等が挙げられる。
【0027】
石油樹脂としては、C5の鎖状オレフィン類混合物をカチオン重合したC5系石油樹脂、ジシクロペンタジエン留分を熱重合したジシクロペンタジエン系樹脂、C9芳香族オレフィン類混合物をカチオン重合したC9系石油樹脂、C5C9共重合樹脂、ピュアーモノマータイプ等の水素添加物が挙げられ、中でもジシクロペンタジエン系水素化石油樹脂が好ましい。
具体的には、三井化学(株)製の商品名「ハイレッツ」、「ペトロジン」、荒川化学工業(株)製の商品名「アルコン」、ヤスハラケミカル(株)製の商品名「クリアロン」、出光石油化学(株)製の商品名「アイマーブ」、トーネックス(株)製の商品名「エスコレッツ」、丸善石油化学(株)製の商品名「マルカレッツ」などの市販品を入手することができる。
これら石油樹脂はそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
脂環式構造含有重合体樹脂(A)と石油樹脂(B)との比率(重量比)は、A/Bで95/5〜75/25の範囲にある。この比率が95/5より大きいと真空成形等の二次加工性が悪くなる傾向にあり、75/25より小さいと押出し成形等の一次加工時に成形物表面にブリードや焼けが生じる傾向がある。中でも、A/Bの比率が92/8〜80/20の範囲にあると好ましい。
【0029】
本発明に用いる樹脂組成物(C)は、その調製法によって特に限定されない。
例えば、脂環式構造含有重合体樹脂(A)と石油樹脂(B)、及び必要に応じて他の添加剤とをヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー、コニカルブレンダーなどの混合器を用いて混合することによって、または更にこの混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどにより溶融混練した後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどにより溶融混練することによって得られる。樹脂組成物は、フィルムを成形し易くするために、造粒あるいは粉砕、又はペレット化することが好ましい。混練時の樹脂温度は、適宜設定できるが、通常150℃から300℃であり、好ましくは190〜250℃の範囲である。
【0030】
樹脂組成物(C)からなるフィルム(D)の成形方法は特に限定されないが、例えばTダイ法、インフレーション法、プレス成形法など公知の方法によって得られる。
フィルム(D)の厚さは、特に限定されないが、15〜300μmであると好ましく、25〜250μmであるとより好ましい。
フィルム(D)の引張り弾性率は、800〜2000MPaの範囲にある。中でも、900〜1700MPaの範囲であると好ましい。引張り弾性率がこの範囲にあると、二次成形性、二次成型品の寸法精度が良好である。本発明において引張り弾性率は、JIS K 7172に準拠してJISタイプ1B試験片を用いて引張り速度200mm/minにて引張り試験したときの引張り強さ10〜20MPa間の弾性率である。
フィルム(D)は、通常はシート状になっているが、チューブ状になっていてもよい。
【0031】
本発明のフィルムは、フィルムを製造する際、及びそのフィルムを二次加工する際に発煙や臭気が発生せず、且つポケット部を有する成型品とした際に、ポケット部の凹みが生じない。
【0032】
本発明のフィルム(D)は、単層フィルムであっても良いが、非環状ポリオレフィン樹脂フィルム(E)を積層した積層フィルムであると好ましい。積層フィルムの積層態様は特に限定されないが、例えば(D)/(E)、(D)/(E)/(D)、(E)/(D)/(E)のように積層することもできる。中でも、(E)/(D)/(E)のように積層すると皮脂白化の点で好ましい。更に、前記積層フィルムは、(E)と(D)の間に接着剤を含んでも良い。
【0033】
(非環状ポリオレフィン樹脂フィルム)
本発明に用いる非環状ポリオレフィン樹脂フィルム(E)は、非環状ポリオレフィン樹脂からなっている。非環状ポリオレフィン樹脂とは、環状構造を有さないポリオレフィン樹脂である。
非環状ポリオレフィン樹脂としては、通常は炭素数2〜20のα−オレフィンの(共)重合体が使用される。炭素数2〜20のα−オレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセンなどを挙げることができる。
【0034】
非環状ポリオレフィン樹脂は、前記のようなα−オレフィンの単独重合体であってもよいし、2種以上のα−オレフィンの共重合体であってもよい。さらに、この非環状ポリオレフィン樹脂には、このポリオレフィンの特性を損なわない範囲内で、この前記のようなα−オレフィンに、非共役ジエン類、酢酸ビニル、マレイン酸、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの他の単量体が共重合していても良い。
非環状ポリオレフィン樹脂が、共重合体である場合、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても良い。
【0035】
特に本発明では、この非環状ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンであることが好ましい。
ポリエチレンは、エチレンの単独重合体であっても、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体であってもよいが、モノマー全体に対するエチレンの割合が90〜100モル%の範囲にあると好ましく、93〜100モル%の範囲にあるとより好ましい。割合がこの範囲にあると機械的強度が良好である。
ポリエチレンは、その密度が0.83g/cm以上にあると好ましく、0.87〜0.95g/cmの範囲にあるとより好ましい。又、その190℃のメルトフローレートが0.01〜100g/10分の範囲にあると好ましく、0.03〜50g/10分の範囲であるとより好ましい。更に、その融点が50〜140℃の範囲にあると好ましく、80〜130℃の範囲にあるとより好ましい。
【0036】
ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体であっても、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体であっても良いが、モノマー全体に対するプロピレンの割合が70〜100モル%の範囲にあると好ましく、80〜100モル%の範囲にあるとより好ましい。
ポリプロピレンは、その密度が0.85g/cm以上であると好ましく、0.89〜0.91g/cmの範囲にあるとより好ましい。又、その230℃のメルトフローレートが0.01〜100g/10分の範囲にあると好ましく、0.05〜50g/10分の範囲にあるとより好ましい。更に、そのビカット軟化点が100〜170℃の範囲にあると好ましく、110〜160℃の範囲にあるとより好ましい。
【0037】
非環状ポリオレフィン樹脂の重合法には制限がない。
前記非環状ポリオレフィンは、結晶化度に関しては、高度の結晶性を有するものから、低結晶性のもの、さらには非晶質のものまで幅広く得ることができので、使用目的に応じて所望の結晶度のものを選択することができる。
【0038】
また、非環状ポリオレフィン樹脂はグラフト変性物であってもよい。ここで使用される変性剤としては、マレイン酸などの不飽和カルボン酸、これの酸無水物、または不飽和カルボン酸のアルキルエステル等の誘導体などを挙げることができる。非環状ポリオレフィン樹脂がグラフト変性物である場合に、この非環状ポリオレフィン樹脂中における変性剤から誘導される構成単位の含有率は、通常10モル%以下である。
このようなグラフト変性物は、所望の変性率になるように非環状ポリオレフィン樹脂に変性剤を配合してグラフト重合させ製造することもできるし、予め高変性率の変性物を調製し、次いでこの変性物と未変性の非環状ポリオレフィンとを混合することにより製造することもできる。
【0039】
非環状ポリオレフィン樹脂フィルム(E)の厚みは、特に限定されないが、15〜50μmの範囲であると好ましく、25〜40μmの範囲であると特に好ましい。厚みがこの範囲にあると二次加工時の金型離型性、透明性が良好である。
【0040】
本発明のフィルム(D)及び本発明に用いるフィルム(E)には、それぞれ、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、造核剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機物充填材、無機物充填材、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止材、抗菌剤、その他の樹脂や熱可塑性エラストマーなどの公知の添加剤を発明の効果が損なわれない範囲で添加することができる。
【0041】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、有機ホスファイト系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。中でも透明性及び耐熱性の観点から、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系安定剤が挙げられる。
紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。
帯電防止剤としては、ノニオン系帯電防止剤、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、両性イオン系帯電防止剤、無機フィラー、カーボンナノチューブ等があげられる。中でも、透明性及び分散性の観点から、ノニオン系帯電防止剤、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、カーボンナノチューブが好ましい。
分散剤としてはビスアミド系分散剤、ワックス系分散剤、有機金属塩系分散剤が挙げられる。
【0042】
難燃剤としては、リン酸系難燃剤、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、マグネシウムの炭酸塩、赤リン等が挙げられる。中でも、分散性の観点からリン酸系難燃剤が好ましい。
ブロッキング防止剤としては、シリカ、シリカアルミナ、天然ゼオライト、合成ゼオライト、カオリン、タルク、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、溶融シリカ、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ハイドロタルサイト系等の微粒子が挙げられる。
滑剤としては、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドが好適である。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、SEBS、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、SEPS、エチレンプロピレンゴム、アイオノマーなどが挙げられる。
【0043】
本発明の積層フィルムは、製法によって特に限定されない。例えば、(ア)フィルム(D)に、非環状ポリオレフィン樹脂フィルム(E)を貼合することによって、(イ)フィルム(D)に非環状ポリオレフィン樹脂の溶液を塗布して、乾燥することによって、又は、(ウ)樹脂組成物(C)と非環状ポリオレフィン樹脂とを共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出することによって得ることができる。
【0044】
層間接着剤の具体例としては、接着性ゴム、接着性熱可塑性樹脂、接着性熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂接着剤、ポリビニルエーテル、アクリル樹脂、酢酸ビニルーエチレン共重合体などの熱可塑性樹脂接着剤、ポリアミド樹脂系ホットメルト接着剤、ニトリルゴムなどのゴム系接着剤などが挙げられる。フィルムの特性を損なわない範囲で制限はないが、ウレタン系接着剤、接着性オレフィン重合体が好ましい。
【0045】
本発明の積層フィルムの厚さは、特に限定されないが、30〜350μmの範囲にあると好ましく、50〜320μmの範囲にあるとより好ましく、70〜300μmの範囲にあると特に好ましい。厚さがこの範囲にあると、柔軟性、強度が良好である。
【0046】
本発明のフィルムは、用いる樹脂組成物の溶融混練時、フィルムの製造時、及びそのフィルムの二次加工時に発煙や臭気が発生せず、且つポケット部を有する成型品とした際に、ポケット部の凹みが生じない。
また、使用後、焼却廃棄してもダイオキシン、塩化水素等の有害ガスを発生せず、炉を傷めず、残灰もほとんど残らないため、環境に対する影響も少ない。
このような特性から本発明のフィルムは、PTP、ブリスターパック用フィルムに好適である。
【0047】
本発明のフィルムは二次成型によりポケット部を形成する事ができる。形成方法は特に限定されないが、真空成形法によって形成する事が好ましい。ポケット部の形状、大きさ、深さ、個数、配列等は収納物の形状や使い勝手によって設計すれば良い。また、真空成形の方法も一般的な成形方法で良く、通常のPTPの成形装置等で成形することができる。
【0048】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
実施例及び比較例における物性の測定方法は、以下のとおりである。
【0049】
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)
テトラヒドロフラン(THF)を溶剤として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレン換算にて求めた。
(2)ガラス転移温度(Tg)
JIS K7121に基づき、示差走査熱量分析法(DSC法)により測定した。
(3)水素添加率
重合体の主鎖及び芳香環の水素添加率は、H−NMRを測定し算出した。
(4)フィルムの厚み
マイクロゲージを用いて測定した。
(5)揮発分量
石油樹脂ペレットを0.5〜20g秤量する。秤量した石油樹脂ペレットを、表面に吸着していた水分や有機物を完全に除去したステンレス製の試料室に入れ、温度200℃で30分間、市販の活性炭チューブを用いて気体を連続的に捕集した後、熱脱着ガスクロマトグラフィー−質量分析計(TDS−GC−MS)(TDS:GERSTEL社製 GERSTEL TDS、GC−MS:Agilent社製 Agilent6890GC/5973Mass Selective Detector)を用いて揮発分量を測定測定する。(前記揮発分量)/(秤量した石油樹脂ペレットの重量)を、200℃における揮発分量とする。
(6)臭気
樹脂組成物(C)の押出成形を始めてから1時間後のTダイ出口30cmの位置で試験者5人により匂いを嗅ぎ、臭気を感じた試験者の数を数えた。
(7)発煙
樹脂組成物(C)の押出成形を始めてから1時間後のTダイ出口付近の発煙を目視で観察した。
(8)引張り弾性率
JIS K 7172に準拠してJISタイプ1B試験片を用いて引張り速度200mm/minにて引張り試験したときの引張り強さ10〜20MPa間の弾性率を引張り弾性率とした。
(9)二次加工性(ポケット部の凹み)
薬品包装成形機(CKD(株)製 FBP−M2)を使用して、金型の表面温度130℃の条件で、積層フィルムに錠剤(8mmφ×最大厚4mm)を収容する円柱状部分(ポケット:直径9mm×高さ5mm)を中心間隔15mmの配列で真空形成し加工フィルム(F)を得る。次いで、内容物を充填せずに加工フィルム(F)のポケットの凹部側(非突出側)の面と、マレイン酸変性ポリオレフィンがコートされた硬質アルミ箔(厚み20μm)のマレイン酸変性ポリオレフィンコート面とを重ね合わせ、210℃でヒートシール、175℃でスリッターを入れた後、幅37mm、長さ94mm、コーナー5mmRに打ち抜いてPTP(ポケット数:縦5個、横2個、合計10個)を得る。
次いでPTPを室温に戻した後、無作為に10枚のPTPを選び、PTPの円柱状部分100個を目視で観察し、円柱状部分の底面が内側につぶれている数を数えた。
(10)MFR(メルトフローレート)
JIS K 6719に準拠して、280℃、2.16kgfで測定した。
(11)軟化点
JIS K 5903に準拠し測定した。
(13)密度
JIS K 6758に準拠して測定した。
【0050】
(参考例1)
脂環式構造含有重合体樹脂の製造
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部、及びトリイソブチルアルミニウム0.30部を室温で反応器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ〔4.3.01,6.12,5〕デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン、以下、「DCP」と略記する。)160部と、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン(ノルボルネン、以下、「NB」と略記する。)40部と、及び六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)80部とを、併行して2時間かけて連続的に添加しながら重合し、更に1時間かけて重合した。次いで、重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部とイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し重合反応を停止させた。
次いで、前記反応溶液100部に対して、シクロヘキサン270部を加え、さらに水素添加触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら温度200℃まで加温した後、4時間反応させ、DCP/NB開環共重合体水素添加物を20%含有する反応溶液を得た。濾過により水素化触媒を除去した後、前記水素添加物100部あたり0.1部のヒンダードフェノール系酸化防止剤(吉富製薬社製;トミノックスTT)を、得られた溶液に添加して溶解させた。次いで、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、次いで水素化物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、水冷しながらペレタイザーにてカットし、円柱状のペレットを得た。この脂環式構造含有重合体樹脂の重量平均分子量(Mw)は35,000、水素添加率は99.8%、Tgは70℃、MFR(280℃)は27g/10分であった。
【0051】
(参考例2)
密度0.9kg/cm、融点159℃、MFR(230℃)4g/10分、エチレン含有量2%のランダムポリプロピレン樹脂をスクリュー径50mmφ、圧縮比2.5、L/D=30のスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するハンガーマニュホールドタイプのTダイ式フィルム溶融押出し成形機を使用して以下の条件でTダイ成形を行い、ポリプロピレン(PP)フィルム(E1)(層厚30μm)を得た。
条件;ダイリップ0.5mm、
溶融樹脂温度:220℃、
Tダイの幅300mm、
キャストロール温度70℃
冷却ロール温度60℃
【0052】
(実施例1)
参考例1で得られた脂環式構造含有重合体樹脂のペレット90部とジシクロペンタジエン系水素化石油樹脂(B1)(軟化点125℃、数平均分子量450、200℃の揮発分30ppm)10部とを、ブレンダーで混合した。次いで、ニ軸押出機(東芝機械社製 TEM−35B)により、以下の条件で混練し、押し出し、ペレット化し、樹脂組成物(C1)のペレットを得た。
条件;スクリュー径37mm、L/D=32、
スクリュー回転数250rpm、
樹脂温度200℃、
フィードレート10kg/時間
得られた樹脂組成物(C1)のペレットをスクリュー径50mmφ、圧縮比2.5、L/D=30のスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するハンガーマニュホールドタイプのTダイ式フィルム溶融押出し成形機を使用して以下の条件でTダイ成形を行い単層フィルム(D1)(層厚135μm)を得た。
条件;ダイリップ0.5mm、
溶融樹脂温度:220℃、
Tダイの幅300mm、
キャストロール温度60℃
冷却ロール温度50℃
押出成形を始めてから1時間後のTダイ出口30cmの位置で試験者5人により匂いを嗅ぎ、臭気を感じた試験者の数を数えたところ臭気を感じた試験者はいなかった。また、発煙も観測されなかった。
得られた単層フィルム(D1)の引張り弾性率を測定したところ、950MPaであった。
単層フィルム(D1)の両面にウレタン系接着剤を介して、PPフィルム(E1)を貼り付け、温度70℃において接着させて積層フィルム(総厚み200μm)を得た。
薬品包装成形機(CKD(株)製 FBP−M2)を使用して、金型の表面温度130℃の条件で、前記積層フィルムに錠剤(8mmφ×最大厚4mm)を収容する円柱状部分(ポケット:直径9mm×高さ5mm)を中心間隔15mmの配列で真空形成し加工フィルム(F1)を得た。次いで、内容物を充填せずに加工フィルム(F1)のポケットの凹部側(非突出側)の面と、マレイン酸変性ポリオレフィンがコートされた硬質アルミ箔(厚み20μm)のマレイン酸変性ポリオレフィンコート面とを重ね合わせ、210℃でヒートシール、175℃でスリッターを入れた後、幅37mm、長さ94mm、コーナー5mmRに打ち抜いてPTP(1)(ポケット数:縦5個、横2個、合計10個)を得た。この二次成形時にも臭気は感じられず、発煙も観測されなかった。
次いでPTPを室温に戻した後、無作為に10枚のPTPを選び、PTPの円柱状部分100個を目視で観察し、円柱状部分の底面が内側につぶれている数を数えた。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例2)
PPフィルム(E1)を、密度0.944kg/cm3、融点128℃、MFR(190℃)4g/10分の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(E2)に変えた以外は実施例1と同様にPTP(2)を作製し評価を行った。溶融混練時、フィルム成形時及びフィルムの二次加工時に臭気は感じられず、発煙も観測されなかった。結果を表1に示す。
【0054】
(比較例1)
ジシクロペンタジエン系水素化石油樹脂(B1)の代わりにジシクロペンタジエン系水素化石油樹脂(B2)(軟化点125℃、数平均分子量450、200℃の揮発分600ppm)を用いた以外は実施例1と同様にPTP(3)を作製し評価を行った。溶融混練時及びフィルム成形時には、発煙と臭気が発生し、フィルムの二次加工時には発煙による金型及びフィルムに汚れがあった。結果を表1に示す。
(比較例2)
ジシクロペンタジエン系水素化石油樹脂(B1)を用いない以外は実施例1と同様にPTP(4)を作製し評価を行った。溶融混練時、フィルム成形時及びフィルムの二次加工時に臭気は感じられず、発煙も観測されなかった。結果を表1に示す。
【0055】
(比較例3)
ジシクロペンタジエン系水素化石油樹脂(B1)の代わりに水素添加テルペン系樹脂(B2)(軟化点125℃、数平均分子量700、200℃の揮発分620ppm)を用いた以外は実施例1と同様にPTP(5)を作製し評価を行った。溶融混練時及びフィルム成形時には、発煙と臭気が発生し、フィルムの二次加工時には発煙による金型及びフィルムに汚れがあった。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
Figure 2005008750
脂環式構造含有重合体樹脂(A)と、軟化点が100℃〜150℃の範囲にあり、数平均分子量が300〜700の範囲にあり、かつ200℃における揮発分が300ppm以下である石油樹脂(B)とを含有し、且つ脂環式構造含有重合体樹脂(A)と石油樹脂(B)との比率(重量比)が、A/Bで95/5〜75/25の範囲にある樹脂組成物(C)からなる引張り弾性率が800〜2000MPaの範囲にあるフィルム(D)からなる積層フィルム(実施例1及び2)は一次成型時に臭気及び発煙がなく、成形品のポケット部の凹みが見られなかった。
石油樹脂(B)として、200℃における揮発分が300ppm以下の範囲にない石油樹脂を用いた場合(比較例1)、一次成型時に臭気及び発煙があり、二次成形品のポケット部に凹みが見られた。
脂環式構造含有重合体樹脂(A)に、石油樹脂を配合せず、引張り弾性率が800MPa未満の樹脂組成物からなるフィルムを用いた場合(比較例2)では、一次成型時に臭気及び発煙がみられなかったが、成形品のポケット部の凹みが見られた。
石油樹脂(B)の代わりに、200℃における揮発分が300ppm以下の範囲にない水添テルペン系樹脂を用いた場合(比較例3)では、一次成型時に臭気及び発煙があり、また、二次成形品のポケット部に凹みが見られた。
【0057】
【発明の効果】
フィルムを製造する際、及びそのフィルムを二次加工する際に発煙や臭気が発生せず、且つポケット部を有する成型品とした際に、ポケット部の凹みが生じないフィルムが提供される。

Claims (6)

  1. 脂環式構造含有重合体樹脂(A)と、
    軟化点が100℃〜150℃の範囲にあり、数平均分子量が300〜700の範囲にあり、かつ200℃における揮発分が300ppm以下である石油樹脂(B)とを含有し、
    且つ脂環式構造含有重合体樹脂(A)と石油樹脂(B)との比率(重量比)が、A/Bで95/5〜75/25の範囲にある樹脂組成物(C)からなる引張り弾性率が800〜2000MPaの範囲にあるフィルム(D)。
  2. 脂環式構造含有重合体樹脂(A)が、ノルボルナン構造以外の脂環式構造である繰り返し単位(b)を含有してなり、脂環式構造を含有してなる繰り返し単位(a)全体に対して繰り返し単位(b)が10重量%以上である脂環式構造含有重合体樹脂である請求項1記載のフィルム(D)。
  3. 脂環式構造含有重合体樹脂(A)が、ジシクロペンタジエン及びノルボルネンの開環共重合体又はその水素添加物である請求項1、又は2記載のフィルム(D)。
  4. 石油樹脂(B)がジシクロペンタジエン系水素化石油樹脂である請求項1、2又は3記載のフィルム(D)。
  5. 請求項1、2、3、又は4記載のフィルム(D)と非環状ポリオレフィン樹脂フィルム(E)とを積層してなる積層フィルム。
  6. 請求項1、2、3、4記載のフィルム、又は請求項5記載の積層フィルムで形成してなるプレススルーパック又はプリスターパック。
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