JP2005008651A - 回折格子顔料及びその製造方法、塗料、並びに樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗膜や成型物の外観に虹色発色を付与することを可能とする回折格子顔料、及びその連続的に大量製造が可能とする製造方法を提供する。
【解決手段】無機系ナノ微粒子が分散された第1のポリマー相が、屈折率の異なる第2のポリマー中に含まれることを特徴とする回折格子顔料、及びその製造方法、塗料、並びに樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】無機系ナノ微粒子が分散された第1のポリマー相が、屈折率の異なる第2のポリマー中に含まれることを特徴とする回折格子顔料、及びその製造方法、塗料、並びに樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料や樹脂組成物などに配合して、それらに虹色の光輝性を付与する回折格子顔料及びその製造方法に関する。また、その回折格子顔料を含有する塗料、及び樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ある一定の間隔(数μm)を有する回折格子に光が入射するとその反射光は分光され、虹色を発色する。最近、この光の回折原理を顔料に応用したものがいくつか提案され、これまでにはない全く新しい意匠効果が生まれている。
【0003】
塗膜や成型物に虹色を付与する回折格子顔料についてはいくつか知られている。下記特許文献1には、顔料の片面に回折格子状の溝を構築したものを混入した塗料が開示され、この顔料はホログラムシートを粉砕して製造される。また、下記特許文献2には、溶融複合紡糸技術により高屈折率ポリマーと低屈折率ポリマーを交互に精密に積層した多層干渉性顔料の製造方法が開示されている。
【0004】
これらの光輝性顔料は、外部からの入射光をその表面で反射して虹色に輝き、塗料に配合されれば塗膜に、インキ組成物であれば描線または印刷面に、あるいは樹脂組成物であれば樹脂成型品の表面に、それら各種素地の色調と相まって変化に富んだ美粧性に優れた独特な外観を与える。また、この美粧性の向上を目的として、自動車、オートバイ、OA機器、携帯電話、家庭電化製品、印刷物または筆記用具類など各種用途に光輝性顔料は広く利用されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−172779号公報
【特許文献2】
特開2000−246829号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の特許文献1等に記載の回折格子顔料の最大の問題点は量産性であり、シートから剥離させる工程や真空蒸着工程など複雑な工程を必要とする。この結果、顔料価格としては非常に高価なものとなってしまっており(100万円/kg以上)、意匠効果には優れるものの汎用的には使用することができないのが実状であった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、塗料や樹脂組成物などに配合されて、塗膜中や樹脂成型物中に回折格子構造を効果的に実現し、塗膜や成型物の外観に虹色発色を付与することを可能とする回折格子顔料、及びその連続的な大量製造を可能とする製造方法を提供することにある。これにより、従来のものに比べはるかに安価かつ大量に回折格子顔料を製造することを可能とし、回折格子顔料の汎用性を大きく高めることにある。さらには、この回折格子顔料を用いた塗料や樹脂組成物などを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、特定のポリマーと特定の分散物を用いることによって、数μmの格子間隔を有する回折格子顔料を製造することに成功し、本発明に至った。
即ち、第1に、本発明は回折格子顔料の発明であり、無機系ナノ微粒子が分散された第1のポリマー相が、屈折率の異なる第2のポリマー中に含まれることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記無機系ナノ微粒子が、金属酸化物ナノ微粒子、金属ナノ微粒子、半導体ナノ微粒子から選択される1種以上であることが好ましい。
また、複合溶融紡糸法を用いて本発明の回折格子顔料を製造することを考慮すると、前記第1のポリマーと第2のポリマーの溶解性パラメーター(SP値)の比が1.3以下であることが好ましい。
また、前記第1のポリマー中の前記無機系ナノ微粒子の配合量が、3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であることがさらに好ましい。無機系ナノ微粒子の配合量が3重量%未満であると、十分な虹色が発現されない。
【0010】
第2に、本発明は回折格子顔料の製造方法の発明であり、無機系ナノ微粒子を第1のポリマー中に分散する工程と、該分散物を該第1のポリマーの融点以上で加熱・溶融させて第1の溶融物とする工程と、前記第1の溶融物をノズルから紡糸する際に、前記第1の溶融物の周囲から前記第1のポリマーとは屈折率の異なる第2のポリマーを加熱・溶融させた第2の溶融物を複合溶融紡糸する工程と、得られた複合溶融紡糸物を延伸・裁断する工程とを含むことを特徴とする回折格子顔料の製造方法である。
【0011】
ここで、前記無機系ナノ微粒子を第1のポリマー中に分散する工程としては、無機系ナノ微粒子を分散剤を用いて第1のポリマー中に分散する方法や、無機系ナノ微粒子の存在下に重合を行う方法を採用することができる。
【0012】
第1の発明と同様に、前記無機系ナノ微粒子が、金属酸化物ナノ微粒子、金属ナノ微粒子、半導体ナノ微粒子から選択される1種以上であることが好ましい。
また、複合溶融紡糸法を用いて本発明の回折格子顔料を製造することを考慮すると、前記第1のポリマーと第2のポリマーの溶解性パラメーター(SP値)の比が1.3以下であることが好ましい。
【0013】
また、前記第1のポリマー中の前記無機系ナノ微粒子の配合量が、3重量%以上であることが好ましい。無機系ナノ微粒子の配合量が3重量%未満であると、十分な虹色が発現されない。
【0014】
第3に、本発明は塗料の発明であり、上記の回折格子顔料を含有する塗料である。本発明の塗料は、各種用途に用いることが出来るが、特に、その優れた光輝性から自動車用塗料として適している。
ここで、前記第2のポリマーと塗料樹脂との屈折率差が0.1以下であることが、虹色を発現する上で好ましい。
【0015】
第4に、本発明は樹脂組成物の発明であり、上記の回折格子顔料を含有する樹脂組成物である。本発明の樹脂組成物は、各種成型方法を用いて各種成型物に用いることができる。
ここで、前記第2のポリマーと樹脂組成物の主成分である樹脂との屈折率差が0.1以下であることが、虹色を発現する上で好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態に限定するものではない。
本発明で回折格子形成材料として用いられる無機系ナノ微粒子としては、金属酸化物ナノ微粒子、金属ナノ微粒子、半導体ナノ微粒子の1種または混合物が好ましい。金属酸化物ナノ微粒子としては、ITO(Indium Tin Oxide)、AL2O3、SiO2、MgO、TiO2、SeO2、ZrO、ZnO等が例示される。金属ナノ微粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、Si等が例示される。半導体ナノ微粒子としては、CdS、CdSe等が例示される。これらの中で、透明性と屈折率が高いものが好ましい。特に、ITO(Indium Tin Oxide)、TiO2が、透明性等の点で好ましい。これらの無機系ナノ微粒子は気相法、液相法等の公知の方法で製造することが出来る。これらの無機系ナノ微粒子の平均粒径は、数nm〜数100nmが好ましく、50nm以下がより好ましい。
【0017】
無機系ナノ微粒子が分散された複合ポリマーの作製には、10重量%以上の無機系ナノ微粒子を第1のポリマー中に分散剤を用いて分散させるか、重合して第1のポリマーとなるモノマー又はオリゴマー中に無機系ナノ微粒子を混合、重合を行わせ、複合ポリマーを得ることができる。
【0018】
本発明の回折格子顔料を構成する、無機系ナノ微粒子が分散された第1のポリマー、及び第1のポリマーとは屈折率の異なる第2のポリマーとしては、複合溶融紡糸が可能であれば特に制限されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS、AS、AES、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルサルホンまたはポリブタジエン、あるいはこれらポリマーの共重合体、混合物または変性物などが挙げられる。これらの中で、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン、AS樹脂またはポリカーボネートは透明性が高いことから、本発明の回折格子顔料のポリマー母材として好ましい。第1のポリマーの屈折率が第2のポリマーの屈折率より高い組み合わせが好ましい。特に、第1のポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン等が好ましく、第2のポリマーとしては、PMMA等のメタクリル樹脂、ポリアミドが好ましい。
【0019】
本発明の回折格子顔料の形状は、使用用途によって多少異なるが、一般的には複合溶融紡糸法によって製造された糸状物を、延伸、裁断して製造されるため、平均粒径5〜1000μm、好ましくは10〜30μm、特に好ましくは20μm程度で、平均厚さ0.5〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1μm程度であることが好ましい。
【0020】
本発明の回折格子顔料は、従来から顔料を利用してきた各種用途において、特に表面処理など施すことなくそのまま使用できる。しかし、強酸性/強アルカリ性の溶液を利用する用途においては、耐薬品性をさらに向上させるため、透明な光輝性を製品に付与するというこの発明の目的を阻害しない範囲で、シリカ(SiO2)やアルミニウムなどからなる保護膜を設けてもよい。同様に、耐水性や樹脂との混練性を高めるためにカップリング剤で表面処理してもよく、耐光性を向上させるために紫外線吸収被膜を成形してもよい。
【0021】
本発明の回折格子顔料は、ビヒクルや樹脂中に適量配合され、また他の着色顔料と併用されて、塗料、樹脂組成物等の各種用途に利用される。
例えば、塗料組成物に含まれるビヒクルは、本発明の回折格子顔料を分散するものであって、塗膜形成用樹脂と必要に応じて架橋剤とから構成される。上記ビヒクルを構成する上記塗膜形成用樹脂としては、例えば、(a)アクリル樹脂、(b)ポリエステル樹脂、(c)アルキド樹脂、(d)フッ素樹脂、(e)エポキシ樹脂、(f)ポリウレタン樹脂、(g)ポリエーテル樹脂等が挙げられ、これらは、2種以上を組合わせて使用することができる。特に、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
【0022】
上記(a)アクリル樹脂としては、アクリル系モノマーと他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を挙げることができる。上記共重合に使用し得るアクリル系モノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、フェニル、ベンジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル等のエステル化物類、アクリル酸又はメタクリル酸2−ヒドロキシエチルのカプロラクトンの開環付加物類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリルアミド、メタクリルアミド及びN−メチロールアクリルアミド、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルなどがある。これらと共重合可能な上記他のエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、イタコン酸、マレイン酸、酢酸ビニル等がある。
【0023】
上記(b)ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、例えば、多塩基酸と多価アルコールを加熱縮合して得られた縮合物が挙げられる。多塩基酸としては、飽和多塩基酸、不飽和多塩基酸が挙げられ、飽和多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸等が挙げられ、不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、二価アルコール、三価アルコール等が挙げられ、二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられ、三価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0024】
また、上記塗膜形成用樹脂には、硬化性を有するタイプとラッカータイプがあるが、通常硬化性を有するタイプのものが使用される。硬化性を有するタイプの場合には、アミノ樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、アミン系、ポリアミド系、多価カルボン酸等の架橋剤と混合して用いられ、加熱または常温で硬化反応を進行させることができる。また、硬化性を有しないラッカータイプの塗膜形成用樹脂と硬化性を有するタイプとを併用することも可能である。
【0025】
上記ビヒクルが架橋剤を含む場合、塗膜形成用樹脂と架橋剤との割合としては、固形分換算で塗膜形成用樹脂が90〜50重量%、架橋剤が10〜50重量%であり、好ましくは塗膜形成用樹脂が85〜60重量%であり、架橋剤が15〜40重量%である。架橋剤が10重量%未満では(塗膜形成用樹脂が90重量%を超えると)、塗膜中の架橋が十分でない。一方、架橋剤が50重量%を超えると(塗膜形成用樹脂が50重量%未満では)、光輝性塗料組成物の貯蔵安定性が低下するとともに硬化速度が大きくなるため、塗膜外観が悪くなる。
【0026】
本発明の回折格子顔料を含む塗料組成物においては、着色顔料を含有することもできる。このようなものとして、従来から塗料用として常用されているものが用いられる。有機顔料としては、例えば、アゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられ、また、無機顔料としては、例えば、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。光輝性顔料および/または着色顔料を含む場合の添加量は、得られる塗膜の透明性を損なわない範囲の量を含有することができる。また各種体質顔料を併用することができる。
【0027】
本発明の回折格子顔料を含む塗料組成物は、上記成分の他に、脂肪族アミドの潤滑分散体であるポリアミドワックスや酸化ポリエチレンを主体としたコロイド状分散体であるポリエチレンワックス、沈降防止剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、シリコーンや有機高分子等の表面調整剤、タレ止め剤、増粘剤、消泡剤、架橋性重合体粒子(ミクロゲル)等を適宜含有することができる。これらの添加剤は、通常、上記ビヒクル100重量部(固形分基準)に対して、例えば、それぞれ15重量部以下の割合で配合することにより、塗料や塗膜の性能を改善することができる。
【0028】
本発明の回折格子顔料を含む塗料組成物は、上記構成成分を、通常、溶剤に溶解または分散した態様で提供される。溶剤としては、ビヒクルを溶解または分散するものであればよく、有機溶剤および/または水を使用し得る。有機溶剤としては、塗料用として常用されているものを挙げることができる。例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ等のエステル類、アルコール類等を例示できる。環境面の観点から有機溶剤の使用が規制されている場合には、水を用いることが好ましい。この場合、適量の親水性有機溶剤を含有させてもよい。
【0029】
本発明の回折格子顔料を含む塗膜層は、溶剤型塗料または粉体型塗料により形成してもよい。溶剤型塗料としては、一液型塗料を用いてもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等のような二液型塗料を用いてもよい。塗膜平滑性の点からは、溶剤型塗料が好ましい。
【0030】
本発明の回折格子顔料を含む塗膜層の乾燥膜厚は、10〜100μmが好ましく、10μm未満では回折格子顔料による光輝感が、十分に発現できず、100μmを超えると塗膜外観が、不充分となる恐れがある。より好ましくは20〜50μmである。
【0031】
本発明の回折格子顔料を含む塗膜形成方法における好ましい態様は、回折格子顔料含有クリヤー塗膜層が、回折格子顔料含有クリヤー塗膜と回折格子顔料を含んでいないクリヤー塗膜とからなる2層構造からなるものであり、この2層の塗膜が、ウェットオンウェットの2コート1ベークで形成されることが好ましい。この2層構造からなる場合には、光輝感及び塗膜外観を一層向上させることができるため、平滑性の高い、深み感のある光輝性塗膜を得ることができる。この場合の回折格子顔料含有光輝性クリヤー塗膜の膜厚は、上記回折格子顔料を含む塗膜層を一層で形成する場合と同じであり、クリヤー塗膜は、20〜100μmが好ましく、この範囲を外れると塗膜外観が不充分となる恐れがある。
【0032】
塗料中における回折格子顔料の含有率は、乾燥硬化後の塗膜において0.1〜30重量%となるように調整することが好ましい。より好ましい含有率は、1〜20重量%である。回折格子顔料の含有率が0.1重量%よりも少ない場合は、塗膜に十分な虹色の発現がなく、一方30重量%よりも多いと、含有率の割には光輝性の向上が小さくなり、却って素地の色調を損なってしまうおそれが生じる。この回折格子顔料は、素地の色調を損なうことがないので、各色の塗料に利用することができる。
【0033】
本発明の回折格子顔料を樹脂組成物中に配合する場合は、母材樹脂に上記の各種熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を利用することができる。特に、熱可塑性樹脂に使用すれば、射出成形が可能となるため、複雑な形状の成型品を得ることができる。
【0034】
本発明の回折格子顔料はインキ組成物に用いることができる。インキ組成物には、各種ボールペン、フェルトペンなどの筆記具用インキ並びにグラビアインキ、オフセットインキなどの印刷インキがあるが、いずれのインキ組成物にも使用することができる。筆記具用インキのビヒクルの例としては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、アクリル酢酸ビニル共重合体、ザンサンガムなどの微生物産性多糖類またはグアーガムなどの水溶性植物性多糖類などと、溶剤としての水、アルコール、炭化水素、エステルなどからなるものとが挙げられる。
【0035】
グラビアインキ用ビヒクルの例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、ライムロジン、ロジンエスエル、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ギルソナイト、ダンマル若しくはセラックなどの樹脂混合物、上記樹脂の混合物、上記樹脂を水溶化した水溶性樹脂又は水性エマルション樹脂と、炭化水素、アルコール、エーテル、エステル又は水などの溶剤とからなるものが挙げられる。
【0036】
オフセットインキ用ビヒクルの例としては、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキド樹脂またはこれらの乾性変性樹脂などの樹脂と、アマニ油、桐油または大豆油などの植物油と、n−パラフィン、イソパラフィン、アロマテック、ナフテン、α−オレフィンまたは水などの溶剤とからなるものが挙げられる。
なお、上記の各種ビヒクル成分には、染料、顔料、各種界面活性剤、潤滑剤、消泡剤、レベリング剤などの慣用の添加剤を適宜選択して配合してもよい。
【0037】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示してこの発明をより詳細に説明する。
(実施例1)
第1のポリマーとしてポリカーボネートを、無機系ナノ微粒子としてITOを用い、第2のポリマーとしてポリメチルメタクリレートを使用し、複合溶融紡糸した糸状物を、延伸裁断して回折格子顔料を作製した。顔料のサイズは、厚み2μm,粒径20μmであり、回折格子の間隔は2μmとした。
【0038】
この顔料をアクリルメラミン塗料にPWC(顔料重量比)10%で混合してベース塗料とした。黒中塗りを塗装した鋼板に、上述のベース塗料を約15μm塗装し、焼付せずにアクリルメラミン系のクリヤー塗料を約30μm塗装し、140℃で30分間焼付けた。
製造された顔料は、分光された虹色を発色し、優れた意匠効果を有することを確認した。
【0039】
(実施例2)
第1のポリマーとしてポリカーボネートを、無機系ナノ微粒子としてTiO2を10重量%用い、第2のポリマーとしてポリメチルメタクリレートを使用し、複合溶融紡糸した糸状物を、延伸裁断して回折格子顔料を作製した。顔料のサイズは、厚み2μm,粒径20μmであり、回折格子の間隔は2μmとした。
実施例1と同様の方法で塗膜を作製したところ、製造された顔料は、分光された虹色を発色し、優れた意匠効果を有することを確認した。
【0040】
(実施例3)
第1のポリマーとしてポリエチレンテレフタレートを、無機系ナノ微粒子としてITOを10重量%用い、第2のポリマーとしてポリアミドを使用し、複合溶融紡糸した糸状物を、延伸裁断して回折格子顔料を作製した。顔料のサイズは、厚み2μm,粒径20μmであり、回折格子の間隔は2μmとした。
実施例1と同様の方法で塗膜を作製したところ、製造された顔料は、分光された虹色を発色し、優れた意匠効果を有することを確認した。
【0041】
(比較例1)
第1のポリマーとしてポリカーボネートを、無機系ナノ微粒子としてITOを1重量%用い、第2のポリマーとしてポリメチルメタクリレートを使用し、複合溶融紡糸した糸状物を、延伸裁断して回折格子顔料を作製した。顔料のサイズは、厚み2μm,粒径20μmであり、回折格子の間隔は2μmとした。
実施例1と同様の方法で塗膜を作製したところ、製造された顔料は、分光された虹色を発色しなかった。
【0042】
(比較例2)
第1のポリマーとしてポリスチレンを、無機系ナノ微粒子としてITOを10重量%用い、第2のポリマーとしてポリメチルメタクリレートを使用し、複合溶融紡糸を試みたが、相溶性が悪く、回折構造を構築できなかった。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、無機系ナノ微粒子が回折格子を構成する新規な構造の回折格子顔料が、連続的に大量製造が可能であり、塗膜中や成型物中に回折格子構造を効果的に実現し、塗膜や成型物外観に虹色発色を付与することを可能とする。本発明により、従来のものに比べはるかに安価かつ大量に回折格子顔料を製造することが可能となり、このタイプの顔料の汎用性を大きく高めることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料や樹脂組成物などに配合して、それらに虹色の光輝性を付与する回折格子顔料及びその製造方法に関する。また、その回折格子顔料を含有する塗料、及び樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ある一定の間隔(数μm)を有する回折格子に光が入射するとその反射光は分光され、虹色を発色する。最近、この光の回折原理を顔料に応用したものがいくつか提案され、これまでにはない全く新しい意匠効果が生まれている。
【0003】
塗膜や成型物に虹色を付与する回折格子顔料についてはいくつか知られている。下記特許文献1には、顔料の片面に回折格子状の溝を構築したものを混入した塗料が開示され、この顔料はホログラムシートを粉砕して製造される。また、下記特許文献2には、溶融複合紡糸技術により高屈折率ポリマーと低屈折率ポリマーを交互に精密に積層した多層干渉性顔料の製造方法が開示されている。
【0004】
これらの光輝性顔料は、外部からの入射光をその表面で反射して虹色に輝き、塗料に配合されれば塗膜に、インキ組成物であれば描線または印刷面に、あるいは樹脂組成物であれば樹脂成型品の表面に、それら各種素地の色調と相まって変化に富んだ美粧性に優れた独特な外観を与える。また、この美粧性の向上を目的として、自動車、オートバイ、OA機器、携帯電話、家庭電化製品、印刷物または筆記用具類など各種用途に光輝性顔料は広く利用されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−172779号公報
【特許文献2】
特開2000−246829号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の特許文献1等に記載の回折格子顔料の最大の問題点は量産性であり、シートから剥離させる工程や真空蒸着工程など複雑な工程を必要とする。この結果、顔料価格としては非常に高価なものとなってしまっており(100万円/kg以上)、意匠効果には優れるものの汎用的には使用することができないのが実状であった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、塗料や樹脂組成物などに配合されて、塗膜中や樹脂成型物中に回折格子構造を効果的に実現し、塗膜や成型物の外観に虹色発色を付与することを可能とする回折格子顔料、及びその連続的な大量製造を可能とする製造方法を提供することにある。これにより、従来のものに比べはるかに安価かつ大量に回折格子顔料を製造することを可能とし、回折格子顔料の汎用性を大きく高めることにある。さらには、この回折格子顔料を用いた塗料や樹脂組成物などを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、特定のポリマーと特定の分散物を用いることによって、数μmの格子間隔を有する回折格子顔料を製造することに成功し、本発明に至った。
即ち、第1に、本発明は回折格子顔料の発明であり、無機系ナノ微粒子が分散された第1のポリマー相が、屈折率の異なる第2のポリマー中に含まれることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記無機系ナノ微粒子が、金属酸化物ナノ微粒子、金属ナノ微粒子、半導体ナノ微粒子から選択される1種以上であることが好ましい。
また、複合溶融紡糸法を用いて本発明の回折格子顔料を製造することを考慮すると、前記第1のポリマーと第2のポリマーの溶解性パラメーター(SP値)の比が1.3以下であることが好ましい。
また、前記第1のポリマー中の前記無機系ナノ微粒子の配合量が、3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であることがさらに好ましい。無機系ナノ微粒子の配合量が3重量%未満であると、十分な虹色が発現されない。
【0010】
第2に、本発明は回折格子顔料の製造方法の発明であり、無機系ナノ微粒子を第1のポリマー中に分散する工程と、該分散物を該第1のポリマーの融点以上で加熱・溶融させて第1の溶融物とする工程と、前記第1の溶融物をノズルから紡糸する際に、前記第1の溶融物の周囲から前記第1のポリマーとは屈折率の異なる第2のポリマーを加熱・溶融させた第2の溶融物を複合溶融紡糸する工程と、得られた複合溶融紡糸物を延伸・裁断する工程とを含むことを特徴とする回折格子顔料の製造方法である。
【0011】
ここで、前記無機系ナノ微粒子を第1のポリマー中に分散する工程としては、無機系ナノ微粒子を分散剤を用いて第1のポリマー中に分散する方法や、無機系ナノ微粒子の存在下に重合を行う方法を採用することができる。
【0012】
第1の発明と同様に、前記無機系ナノ微粒子が、金属酸化物ナノ微粒子、金属ナノ微粒子、半導体ナノ微粒子から選択される1種以上であることが好ましい。
また、複合溶融紡糸法を用いて本発明の回折格子顔料を製造することを考慮すると、前記第1のポリマーと第2のポリマーの溶解性パラメーター(SP値)の比が1.3以下であることが好ましい。
【0013】
また、前記第1のポリマー中の前記無機系ナノ微粒子の配合量が、3重量%以上であることが好ましい。無機系ナノ微粒子の配合量が3重量%未満であると、十分な虹色が発現されない。
【0014】
第3に、本発明は塗料の発明であり、上記の回折格子顔料を含有する塗料である。本発明の塗料は、各種用途に用いることが出来るが、特に、その優れた光輝性から自動車用塗料として適している。
ここで、前記第2のポリマーと塗料樹脂との屈折率差が0.1以下であることが、虹色を発現する上で好ましい。
【0015】
第4に、本発明は樹脂組成物の発明であり、上記の回折格子顔料を含有する樹脂組成物である。本発明の樹脂組成物は、各種成型方法を用いて各種成型物に用いることができる。
ここで、前記第2のポリマーと樹脂組成物の主成分である樹脂との屈折率差が0.1以下であることが、虹色を発現する上で好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態に限定するものではない。
本発明で回折格子形成材料として用いられる無機系ナノ微粒子としては、金属酸化物ナノ微粒子、金属ナノ微粒子、半導体ナノ微粒子の1種または混合物が好ましい。金属酸化物ナノ微粒子としては、ITO(Indium Tin Oxide)、AL2O3、SiO2、MgO、TiO2、SeO2、ZrO、ZnO等が例示される。金属ナノ微粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、Si等が例示される。半導体ナノ微粒子としては、CdS、CdSe等が例示される。これらの中で、透明性と屈折率が高いものが好ましい。特に、ITO(Indium Tin Oxide)、TiO2が、透明性等の点で好ましい。これらの無機系ナノ微粒子は気相法、液相法等の公知の方法で製造することが出来る。これらの無機系ナノ微粒子の平均粒径は、数nm〜数100nmが好ましく、50nm以下がより好ましい。
【0017】
無機系ナノ微粒子が分散された複合ポリマーの作製には、10重量%以上の無機系ナノ微粒子を第1のポリマー中に分散剤を用いて分散させるか、重合して第1のポリマーとなるモノマー又はオリゴマー中に無機系ナノ微粒子を混合、重合を行わせ、複合ポリマーを得ることができる。
【0018】
本発明の回折格子顔料を構成する、無機系ナノ微粒子が分散された第1のポリマー、及び第1のポリマーとは屈折率の異なる第2のポリマーとしては、複合溶融紡糸が可能であれば特に制限されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS、AS、AES、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルサルホンまたはポリブタジエン、あるいはこれらポリマーの共重合体、混合物または変性物などが挙げられる。これらの中で、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン、AS樹脂またはポリカーボネートは透明性が高いことから、本発明の回折格子顔料のポリマー母材として好ましい。第1のポリマーの屈折率が第2のポリマーの屈折率より高い組み合わせが好ましい。特に、第1のポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン等が好ましく、第2のポリマーとしては、PMMA等のメタクリル樹脂、ポリアミドが好ましい。
【0019】
本発明の回折格子顔料の形状は、使用用途によって多少異なるが、一般的には複合溶融紡糸法によって製造された糸状物を、延伸、裁断して製造されるため、平均粒径5〜1000μm、好ましくは10〜30μm、特に好ましくは20μm程度で、平均厚さ0.5〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1μm程度であることが好ましい。
【0020】
本発明の回折格子顔料は、従来から顔料を利用してきた各種用途において、特に表面処理など施すことなくそのまま使用できる。しかし、強酸性/強アルカリ性の溶液を利用する用途においては、耐薬品性をさらに向上させるため、透明な光輝性を製品に付与するというこの発明の目的を阻害しない範囲で、シリカ(SiO2)やアルミニウムなどからなる保護膜を設けてもよい。同様に、耐水性や樹脂との混練性を高めるためにカップリング剤で表面処理してもよく、耐光性を向上させるために紫外線吸収被膜を成形してもよい。
【0021】
本発明の回折格子顔料は、ビヒクルや樹脂中に適量配合され、また他の着色顔料と併用されて、塗料、樹脂組成物等の各種用途に利用される。
例えば、塗料組成物に含まれるビヒクルは、本発明の回折格子顔料を分散するものであって、塗膜形成用樹脂と必要に応じて架橋剤とから構成される。上記ビヒクルを構成する上記塗膜形成用樹脂としては、例えば、(a)アクリル樹脂、(b)ポリエステル樹脂、(c)アルキド樹脂、(d)フッ素樹脂、(e)エポキシ樹脂、(f)ポリウレタン樹脂、(g)ポリエーテル樹脂等が挙げられ、これらは、2種以上を組合わせて使用することができる。特に、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
【0022】
上記(a)アクリル樹脂としては、アクリル系モノマーと他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を挙げることができる。上記共重合に使用し得るアクリル系モノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、フェニル、ベンジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル等のエステル化物類、アクリル酸又はメタクリル酸2−ヒドロキシエチルのカプロラクトンの開環付加物類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリルアミド、メタクリルアミド及びN−メチロールアクリルアミド、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルなどがある。これらと共重合可能な上記他のエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、イタコン酸、マレイン酸、酢酸ビニル等がある。
【0023】
上記(b)ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、例えば、多塩基酸と多価アルコールを加熱縮合して得られた縮合物が挙げられる。多塩基酸としては、飽和多塩基酸、不飽和多塩基酸が挙げられ、飽和多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸等が挙げられ、不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、二価アルコール、三価アルコール等が挙げられ、二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられ、三価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0024】
また、上記塗膜形成用樹脂には、硬化性を有するタイプとラッカータイプがあるが、通常硬化性を有するタイプのものが使用される。硬化性を有するタイプの場合には、アミノ樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、アミン系、ポリアミド系、多価カルボン酸等の架橋剤と混合して用いられ、加熱または常温で硬化反応を進行させることができる。また、硬化性を有しないラッカータイプの塗膜形成用樹脂と硬化性を有するタイプとを併用することも可能である。
【0025】
上記ビヒクルが架橋剤を含む場合、塗膜形成用樹脂と架橋剤との割合としては、固形分換算で塗膜形成用樹脂が90〜50重量%、架橋剤が10〜50重量%であり、好ましくは塗膜形成用樹脂が85〜60重量%であり、架橋剤が15〜40重量%である。架橋剤が10重量%未満では(塗膜形成用樹脂が90重量%を超えると)、塗膜中の架橋が十分でない。一方、架橋剤が50重量%を超えると(塗膜形成用樹脂が50重量%未満では)、光輝性塗料組成物の貯蔵安定性が低下するとともに硬化速度が大きくなるため、塗膜外観が悪くなる。
【0026】
本発明の回折格子顔料を含む塗料組成物においては、着色顔料を含有することもできる。このようなものとして、従来から塗料用として常用されているものが用いられる。有機顔料としては、例えば、アゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられ、また、無機顔料としては、例えば、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。光輝性顔料および/または着色顔料を含む場合の添加量は、得られる塗膜の透明性を損なわない範囲の量を含有することができる。また各種体質顔料を併用することができる。
【0027】
本発明の回折格子顔料を含む塗料組成物は、上記成分の他に、脂肪族アミドの潤滑分散体であるポリアミドワックスや酸化ポリエチレンを主体としたコロイド状分散体であるポリエチレンワックス、沈降防止剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、シリコーンや有機高分子等の表面調整剤、タレ止め剤、増粘剤、消泡剤、架橋性重合体粒子(ミクロゲル)等を適宜含有することができる。これらの添加剤は、通常、上記ビヒクル100重量部(固形分基準)に対して、例えば、それぞれ15重量部以下の割合で配合することにより、塗料や塗膜の性能を改善することができる。
【0028】
本発明の回折格子顔料を含む塗料組成物は、上記構成成分を、通常、溶剤に溶解または分散した態様で提供される。溶剤としては、ビヒクルを溶解または分散するものであればよく、有機溶剤および/または水を使用し得る。有機溶剤としては、塗料用として常用されているものを挙げることができる。例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ等のエステル類、アルコール類等を例示できる。環境面の観点から有機溶剤の使用が規制されている場合には、水を用いることが好ましい。この場合、適量の親水性有機溶剤を含有させてもよい。
【0029】
本発明の回折格子顔料を含む塗膜層は、溶剤型塗料または粉体型塗料により形成してもよい。溶剤型塗料としては、一液型塗料を用いてもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等のような二液型塗料を用いてもよい。塗膜平滑性の点からは、溶剤型塗料が好ましい。
【0030】
本発明の回折格子顔料を含む塗膜層の乾燥膜厚は、10〜100μmが好ましく、10μm未満では回折格子顔料による光輝感が、十分に発現できず、100μmを超えると塗膜外観が、不充分となる恐れがある。より好ましくは20〜50μmである。
【0031】
本発明の回折格子顔料を含む塗膜形成方法における好ましい態様は、回折格子顔料含有クリヤー塗膜層が、回折格子顔料含有クリヤー塗膜と回折格子顔料を含んでいないクリヤー塗膜とからなる2層構造からなるものであり、この2層の塗膜が、ウェットオンウェットの2コート1ベークで形成されることが好ましい。この2層構造からなる場合には、光輝感及び塗膜外観を一層向上させることができるため、平滑性の高い、深み感のある光輝性塗膜を得ることができる。この場合の回折格子顔料含有光輝性クリヤー塗膜の膜厚は、上記回折格子顔料を含む塗膜層を一層で形成する場合と同じであり、クリヤー塗膜は、20〜100μmが好ましく、この範囲を外れると塗膜外観が不充分となる恐れがある。
【0032】
塗料中における回折格子顔料の含有率は、乾燥硬化後の塗膜において0.1〜30重量%となるように調整することが好ましい。より好ましい含有率は、1〜20重量%である。回折格子顔料の含有率が0.1重量%よりも少ない場合は、塗膜に十分な虹色の発現がなく、一方30重量%よりも多いと、含有率の割には光輝性の向上が小さくなり、却って素地の色調を損なってしまうおそれが生じる。この回折格子顔料は、素地の色調を損なうことがないので、各色の塗料に利用することができる。
【0033】
本発明の回折格子顔料を樹脂組成物中に配合する場合は、母材樹脂に上記の各種熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を利用することができる。特に、熱可塑性樹脂に使用すれば、射出成形が可能となるため、複雑な形状の成型品を得ることができる。
【0034】
本発明の回折格子顔料はインキ組成物に用いることができる。インキ組成物には、各種ボールペン、フェルトペンなどの筆記具用インキ並びにグラビアインキ、オフセットインキなどの印刷インキがあるが、いずれのインキ組成物にも使用することができる。筆記具用インキのビヒクルの例としては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、アクリル酢酸ビニル共重合体、ザンサンガムなどの微生物産性多糖類またはグアーガムなどの水溶性植物性多糖類などと、溶剤としての水、アルコール、炭化水素、エステルなどからなるものとが挙げられる。
【0035】
グラビアインキ用ビヒクルの例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、ライムロジン、ロジンエスエル、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ギルソナイト、ダンマル若しくはセラックなどの樹脂混合物、上記樹脂の混合物、上記樹脂を水溶化した水溶性樹脂又は水性エマルション樹脂と、炭化水素、アルコール、エーテル、エステル又は水などの溶剤とからなるものが挙げられる。
【0036】
オフセットインキ用ビヒクルの例としては、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキド樹脂またはこれらの乾性変性樹脂などの樹脂と、アマニ油、桐油または大豆油などの植物油と、n−パラフィン、イソパラフィン、アロマテック、ナフテン、α−オレフィンまたは水などの溶剤とからなるものが挙げられる。
なお、上記の各種ビヒクル成分には、染料、顔料、各種界面活性剤、潤滑剤、消泡剤、レベリング剤などの慣用の添加剤を適宜選択して配合してもよい。
【0037】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示してこの発明をより詳細に説明する。
(実施例1)
第1のポリマーとしてポリカーボネートを、無機系ナノ微粒子としてITOを用い、第2のポリマーとしてポリメチルメタクリレートを使用し、複合溶融紡糸した糸状物を、延伸裁断して回折格子顔料を作製した。顔料のサイズは、厚み2μm,粒径20μmであり、回折格子の間隔は2μmとした。
【0038】
この顔料をアクリルメラミン塗料にPWC(顔料重量比)10%で混合してベース塗料とした。黒中塗りを塗装した鋼板に、上述のベース塗料を約15μm塗装し、焼付せずにアクリルメラミン系のクリヤー塗料を約30μm塗装し、140℃で30分間焼付けた。
製造された顔料は、分光された虹色を発色し、優れた意匠効果を有することを確認した。
【0039】
(実施例2)
第1のポリマーとしてポリカーボネートを、無機系ナノ微粒子としてTiO2を10重量%用い、第2のポリマーとしてポリメチルメタクリレートを使用し、複合溶融紡糸した糸状物を、延伸裁断して回折格子顔料を作製した。顔料のサイズは、厚み2μm,粒径20μmであり、回折格子の間隔は2μmとした。
実施例1と同様の方法で塗膜を作製したところ、製造された顔料は、分光された虹色を発色し、優れた意匠効果を有することを確認した。
【0040】
(実施例3)
第1のポリマーとしてポリエチレンテレフタレートを、無機系ナノ微粒子としてITOを10重量%用い、第2のポリマーとしてポリアミドを使用し、複合溶融紡糸した糸状物を、延伸裁断して回折格子顔料を作製した。顔料のサイズは、厚み2μm,粒径20μmであり、回折格子の間隔は2μmとした。
実施例1と同様の方法で塗膜を作製したところ、製造された顔料は、分光された虹色を発色し、優れた意匠効果を有することを確認した。
【0041】
(比較例1)
第1のポリマーとしてポリカーボネートを、無機系ナノ微粒子としてITOを1重量%用い、第2のポリマーとしてポリメチルメタクリレートを使用し、複合溶融紡糸した糸状物を、延伸裁断して回折格子顔料を作製した。顔料のサイズは、厚み2μm,粒径20μmであり、回折格子の間隔は2μmとした。
実施例1と同様の方法で塗膜を作製したところ、製造された顔料は、分光された虹色を発色しなかった。
【0042】
(比較例2)
第1のポリマーとしてポリスチレンを、無機系ナノ微粒子としてITOを10重量%用い、第2のポリマーとしてポリメチルメタクリレートを使用し、複合溶融紡糸を試みたが、相溶性が悪く、回折構造を構築できなかった。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、無機系ナノ微粒子が回折格子を構成する新規な構造の回折格子顔料が、連続的に大量製造が可能であり、塗膜中や成型物中に回折格子構造を効果的に実現し、塗膜や成型物外観に虹色発色を付与することを可能とする。本発明により、従来のものに比べはるかに安価かつ大量に回折格子顔料を製造することが可能となり、このタイプの顔料の汎用性を大きく高めることができる。
Claims (15)
- 無機系ナノ微粒子が分散された第1のポリマー相が、屈折率の異なる第2のポリマー中に含まれることを特徴とする回折格子顔料。
- 前記無機系ナノ微粒子が、金属酸化物ナノ微粒子、金属ナノ微粒子、半導体ナノ微粒子から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の回折格子顔料。
- 前記第1のポリマーと第2のポリマーの溶解性パラメーター(SP値)の比が1.3以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の回折格子顔料。
- 前記第1のポリマー中の前記無機系ナノ微粒子の配合量が、3重量%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の回折格子顔料。
- 無機系ナノ微粒子を第1のポリマー中に分散する工程と、該分散物を該第1のポリマーの融点以上で加熱・溶融させて第1の溶融物とする工程と、前記第1の溶融物をノズルから紡糸する際に、前記第1の溶融物の周囲から前記第1のポリマーとは屈折率の異なる第2のポリマーを加熱・溶融させた第2の溶融物を複合溶融紡糸する工程と、得られた複合溶融紡糸物を延伸・裁断する工程とを含むことを特徴とする回折格子顔料の製造方法。
- 前記無機系ナノ微粒子を第1のポリマー中に分散する工程は、無機系ナノ微粒子を分散剤を用いて第1のポリマー中に分散するものであることを特徴とする請求項5に記載の回折格子顔料の製造方法。
- 前記無機系ナノ微粒子を第1のポリマー中に分散する工程は、無機系ナノ微粒子の存在下に重合を行うものであることを特徴とする請求項5に記載の回折格子顔料の製造方法。
- 前記無機系ナノ微粒子が、金属酸化物ナノ微粒子、金属ナノ微粒子、半導体ナノ微粒子から選択される1種以上であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の回折格子顔料の製造方法。
- 前記第1のポリマーと第2のポリマーの溶解性パラメーター(SP値)の比が1.3以下であることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の回折格子顔料の製造方法。
- 前記第1のポリマー中の前記無機系ナノ微粒子の配合量が、3重量%以上であることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の回折格子顔料の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の回折格子顔料を含有する塗料。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の回折格子顔料を含有する自動車用塗料。
- 前記第2のポリマーと塗料樹脂との屈折率差が0.1以下であることを特徴とする請求項11または12に記載の塗料。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の回折格子顔料を含有する樹脂組成物。
- 前記第2のポリマーと樹脂組成物の主成分である樹脂との屈折率差が0.1以下であることを特徴とする請求項14に記載の樹脂組成物。
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