JP2005008581A - 新規なピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、それを含有する医薬組成物およびそれらの用途 - Google Patents
新規なピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、それを含有する医薬組成物およびそれらの用途 Download PDFInfo
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロテインチロシンキナーゼ阻害作用、特にSrcファミリーキナーゼ阻害作用を有する新規なピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、それを含有する医薬組成物およびそれらの用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロテインチロシンキナーゼは、細胞蛋白質の特定のチロシン残基のリン酸化を触媒する酵素であり、細胞の活性化、増殖および分化の調節に重要な役割を果たしている(例えば、非特許文献1参照)。このプロテインチロシンキナーゼの異常な発現、刺激または変異は、様々な疾病をもたらすと考えられている。
【0003】
Srcファミリーキナーゼは、非レセプター型プロテインチロシンキナーゼの1つである。Srcファミリーキナーゼのメンバーとして、8つのキナーゼ(Src, Yes, Fyn, Fgr, Blk, Lck, LynおよびHck)が発見されている。Srcファミリーキナーゼは、正常細胞においては高度に制御されており、細胞外刺激のない状態では、不活性なコンフォーメーションに維持されている。
【0004】
Srcは、多くのヒトの癌において活性化されている。例えば、乳癌(例えば、非特許文献2参照)、胃癌、結腸癌、直腸癌(例えば、非特許文献3および4参照)、非小細胞肺癌(例えば、非特許文献5参照)、卵巣癌(例えば、非特許文献6参照)など)において、非常に活性化されていることが知られている。Src活性の変化は、細胞周期の変化と関連しており(例えば、非特許文献7参照)、Src活性の調節の変化は、腫瘍形成とも関連している(例えば、非特許文献8、9、10および11参照)。さらに卵巣癌および直腸癌細胞に発現されたアンチセンスSrcは、癌の増殖を阻害することが示されている(例えば、非特許文献6および12参照)。従って、Srcの阻害剤は、癌細胞の増殖を抑制すると期待される。
【0005】
Srcは、また、破骨細胞の骨吸収の制御に関与している(例えば、非特許文献13、14、15および16参照)。Src遺伝子のノックアウトマウスは、骨石灰化を引き起こすことが示されている(例えば、非特許文献13参照)。また、Src阻害剤であるHerbimycin Aは、in vivoにおいて破骨細胞の骨吸収を阻害することが知られている(例えば、非特許文献17参照)。従って、Srcの阻害剤は、骨疾患(例えば、骨粗しょう症、パジェト病、高カルシウム血症、変形性関節炎など)の予防または治療薬として有用であると期待される。
【0006】
Srcは、神経細胞のNMDA受容体の活性化の制御に関与している(例えば、非特許文献18参照)。Src阻害剤は神経細胞内へのCa2+の流入を抑制することにより、グルタミン酸の興奮毒性を解除し神経保護作用を示すと考えられる。またSrcは、MMP−9(matrix metalloproteinase 9)の産生抑制にも関与している(例えば、非特許文献19参照)。MMP−9は、脳卒中や脳損傷などの脳虚血に応答して産生され、血液脳関門の破綻を引き起こす1つの原因であると考えられている。この脳虚血後の血液脳関門の破綻は、脳浮腫や急性期脳梗塞をもたらすと考えられている。また脳梗塞モデルにおいて虚血再灌流後に、Srcキナーゼが神経細胞に強発現することが報告されている。またSrcは、炎症性細胞の遊走や接着にも関与しており、Src阻害剤は炎症部位への好中球の接着阻害や好中球からの活性酸素産生を抑制すると考えられる(例えば、非特許文献20参照)。このようにSrc阻害剤は、脳保護作用を有するので、パーキンソン病、てんかん、脳浮腫、急性期脳梗塞などの予防または治療薬として有用であると期待される。
【0007】
Lckは、免疫応答におけるT細胞の活性化に関係している。T細胞が、T細胞受容体(TCR)を介して抗原提示細胞上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に提示された抗原と結合すると、そのシグナルは細胞質内に伝達され、TCR/CD3ζ鎖中の immunoreceptor tyrosine−based activation motifs(ITAM)と称される部位のチロシン残基が、Lckによってリン酸化される。ZAP−70は、このリン酸化されたITAMにリクルートされ、LckによってZAP−70のチロシン残基がリン酸化されるとZAP−70は活性化される。活性化されたZAP−70は、さらに下流へのシグナル伝達を媒介し、細胞内Ca2+の動員、インターロイキン2の産生、T細胞の増殖などを引き起こす(例えば、非特許文献21参照)。従ってLckの阻害剤は、T細胞が関与する疾患、例えば、自己免疫疾患(乾癬、アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、ネフローゼ症候群など)、移植片対宿主病、臓器移植による拒絶反応の抑制などの治療薬として有用であると期待される。
【0008】
Ried W.らは、下記一般式:
【化8】
(式中、Raは、シアノまたはカルバモイルである)で表されるピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体を開示している(例えば、非特許文献22参照)。
【0009】
Andrew S.T.らは、下記一般式:
【化9】
(式中、Rbは、シアノ、カルバモイルまたは−C(O)N=N(CH3)2であり;Rcは、フェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、3−トリフルオロフェニル、3−ピリジルまたは4−ピリジルであり;Rdは、水素、メチルまたはトリフルオロメチルである;Xは、CH2、O、SまたはN(Re)であり;Reは、メチル、フェニル、ベンジル、2−ピリジルである)で表される、血圧降下剤、抗不安薬、認知機能障害治療薬として有用なピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体を開示しているが、プロテインチロシンキナーゼ阻害作用については開示も示唆もされていない(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
【非特許文献1】
Schlessinger J.ら, 「Neuron」, 1992年, 9巻, p.383−391
【非特許文献2】
Muthuswamyら, 「Oncogene」, 1995年, 11巻, p.1801−1810
【非特許文献3】
Cartwright CA.ら, 「Proc. Natl. Acad. Sci. USA」, 1990年, 87巻, p.558−562
【非特許文献4】
Maoら, 「Oncogene」, 1997年, 15巻, p.3083−3090
【非特許文献5】
Budde RJA.ら, 「Cancer Biochem. Biophys.」, 1994年, 14巻, p.171−175
【非特許文献6】
Wiener JR.ら, 「Clinical Cancer Research」, 1999年, 5巻, p.2164−2170
【非特許文献7】
Chackalaparampil I.ら, 「Cell」, 1988年, 52巻, p.801−810
【非特許文献8】
Bolen JB.ら, 「Proc. Natl. Acad. Sci.」, 1985年, 82巻, p.7275−7279
【非特許文献9】
Bolen JB.ら, 「Oncogene res.」, 1987年, 1巻, p.149−168
【非特許文献10】
Zheng XM.ら, 「Nature」, 1992年, 359巻, p.336−339
【非特許文献11】
Sabe H.ら, 「Mol. Cell Biol.」, 1992年, 12巻, p.4706−4713
【非特許文献12】
Staleyら, 「Cell Growth Diff.」, 1997年, 8巻, p.269
【非特許文献13】
Sorianoら, 「Cell」, 1991年, 64巻, p.693−702
【非特許文献14】
Boyceら, 「J. Clin. Invest.」, 1992年, 90巻, p.1622−1627
【非特許文献15】
Yonedaら, 「J. Clin. Invest.」, 1993年, 91巻, p.2791−2795
【非特許文献16】
Missbachら, 「Bone」, 1999年, 24巻, p.437−449
【非特許文献17】
Rodan GA.ら, 「Science」, 2000年, 289巻, p.1508−1514
【非特許文献18】
Lu WY.ら, 「Nat. Neurosci.」, 1999年, 2巻, p.331−338
【非特許文献19】
Sato H.ら, 「J. Biol. Chem.」, 1993年, 31巻, p.23460−23468
【非特許文献20】
Mocsai A.ら, 「J. Immunol.」, 1999年, 162巻, p.1120−1126
【非特許文献21】
Chu DH.ら, 「Immunological Reviews」, 1998年, 165巻, p.167−180
【非特許文献22】
Ried W.ら, 「Chemiker−Zeitung」, 1989年, 113巻, 5号, p.181−183
【特許文献1】
米国特許第4576943号明細書
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、プロテインチロシンキナーゼ阻害作用、好ましくはSrcファミリーキナーゼ阻害作用を有する新規な化合物を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、一般式(I)で表されるピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体が、優れたSrcファミリーキナーゼ阻害作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、一般式(I):
【化10】
〔式中、
R1は、以下のa)〜c):
a)非置換もしくはX1、X2およびX3からなる群から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基、
b)ヘテロアリール基、または
c)アラルキル基であり、
ここで、X1、X2およびX3は、それぞれ独立して、以下のa)〜g):
a)ハロゲン原子、
b)低級アルキル基、
c)ハロ低級アルキル基、
d)低級アルコキシ基、
e)ジ低級アルキルアミノ基、
f)環状アミノ基、または
g)以下からなる群:ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルコキシ基であり;
R2は、以下のa)〜g):
a)水素原子、
b)低級アルキル基、
c)ハロ低級アルキル基、
d)シクロアルキル基、
e)以下からなる群:水酸基、低級アルコキシ基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基、ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルキル基であり、
f)非置換もしくは以下からなる群:ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロ低級アルキル基および低級アルコキシ基から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基、または
g)ヘテロアリール基であり;
R3は、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはアラルキル基であり;
Aは、以下のa)〜d):
a)水素原子、
b)低級アルキル、
c)R4、または
d)NR5R6であり;
R4は、非置換もしくは以下からなる群:ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基および水酸基から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基であり、
R5は、水素原子、低級アルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルキル低級アルキル基であり;
R6は、以下のa)〜g):
a)水素原子、
b)低級アルキル基、
c)シクロアルキル基、
d)シクロアルキル低級アルキル基、
e)R4、
f)アラルキル基、
g)以下の式:
【化11】
で表される基を表すか、あるいはR5とR6が、それらが結合している窒素原子と一緒になって式:
【化12】
で表される基を形成し;
R7は、水素原子または低級アルキル基であり;
R8は、水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、スルファニル低級アルキル基、低級アルキルスルファニル低級アルキル基、アラルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基またはカルバモイル基であり;
R9は、水酸基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、低級アルコキシカルボニルアミノ基、低級アルコキシカルボニル低級アルキルアミノ基、カルバモイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基またはホスホノオキシ基であり;
R10は、水酸基またはアミノ基であり;
R11は、水酸基、ヒドロキシ低級アルキル基またはアミノ基であり;
aは、0、1または2であり;
A1は、結合またはC1−4アルキレン基であり;
A2は、結合またはC1−6アルキレン基であり;
A3は、C1−6アルキレン基であり;
A4は、結合またはC1−6アルキレン基であり;
A5は、C1−6アルキレン基である〕
で表される化合物またはそのプロドラッグ、あるいはそれらの薬理学的に許容される塩に関する。
【0014】
また別の局面において、本発明は、前記一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物に関する。
【0015】
さらに別の局面において、本発明は、前記一般式(I)に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、Srcファミリーキナーゼ関連疾患の治療または予防剤に関する。
【0016】
前記一般式(I)で表される化合物において、下記の用語は、特に断らない限り、以下の意味を有する。
【0017】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表し、好適には、フッ素原子または塩素原子である。
【0018】
「低級アルキル基」とは、直鎖または分岐鎖状の炭素数1〜6のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基などが挙げられる。
【0019】
「ハロ低級アルキル基」とは、1〜3個の同種または異種のハロゲン原子で置換された低級アルキル基を意味し、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基などが挙げられ、好適にはトリフルオロメチル基である。
【0020】
「ヒドロキシ低級アルキル基」とは、水酸基で置換された低級アルキル基を意味し、例えば、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基などが挙げられ、好適にはヒドロキシメチル基または1−ヒドロキシエチル基である。
【0021】
「スルファニル低級アルキル基」とは、SH基で置換された低級アルキル基を意味し、例えば、スルファニルメチル基、2−スルファニルエチル基、1−スルファニルエチル基、3−スルファニルプロピル基、4−スルファニルブチル基などが挙げられ、好適にはスルファニルメチル基である。
【0022】
「低級アルキルスルファニル低級アルキル基」とは、低級アルキルスルファニル基で置換された低級アルキル基を意味し、例えば、メチルスルファニルメチル基、2−メチルスルファニルエチル基、1−メチルスルファニルエチル基、3−メチルスルファニルプロピル基などが挙げられ、好適にはメチルスルファニルメチル基である。
【0023】
「シクロアルキル基」とは、3〜8員の飽和環状炭化水素を意味し、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基が挙げられ、好適にはシクロプロピル基である。
【0024】
「シクロアルキル低級アルキル基」とは、シクロアルキル基で置換された低級アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基などが挙げられ、好適にはシクロプロピルメチル基である。
【0025】
「低級アルコキシ基」とは、直鎖または分岐鎖状の炭素数1〜6のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられ、好適には炭素数1〜4のアルコキシ基であり、さらに好適にはメトキシ基またはエトキシ基であり、最も好適にはメトキシ基である。
【0026】
「低級アルキルアミノ基」とは、低級アルキル基で置換されたアミノ基を意味し、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基などが挙げられ、好適にはメチルアミノ基である。
【0027】
「ジ低級アルキルアミノ基」とは、同一のまたは異なる低級アルキル基でニ置換されたアミノ基を意味し、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられ、好適にはジメチルアミノ基である。
【0028】
「C1−4アルキレン基」とは、炭素数1〜4の2価の直鎖飽和炭化水素鎖を意味し、当該炭化水素鎖は必要に応じて1〜3個のメチル基で置換されてもよい。当該C1−4アルキレン基の具体例として、例えば、−CH2−、−CH2CH2−、−CH(CH3)−、−CH(CH3)CH2−、−CH2CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CH3)2CH2−、−CH2C(CH3)2−、−CH2CH2CH2−、−C(CH3)2CH2CH2−、−C(CH3)2CH2CH(CH3)−、−CH2CH2CH2CH2−などが挙げられる。
【0029】
「C1−6アルキレン基」とは、炭素数1〜6の2価の直鎖飽和炭化水素鎖を意味し、当該炭化水素鎖は必要に応じて1〜3個のメチル基で置換されてもよい。当該C1−6アルキレン基の具体例として、例えば、−CH2−、−CH2CH2−、−CH(CH3)−、−CH(CH3)CH2−、−CH2CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CH3)2CH2−、−CH2C(CH3)2−、−CH2CH2CH2−、−C(CH3)2CH2CH2−、−C(CH3)2CH2CH(CH3)−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−などの基が挙げられる。
【0030】
「低級アルコキシカルボニル基」とは、(低級アルコキシ)−CO−で表される基を意味し、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0031】
「低級アルコキシカルボニルアミノ基」とは、(低級アルコキシ)−CONH−で表される基を意味し、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。
【0032】
「低級アルコキシカルボニル低級アルキルアミノ基」とは、(低級アルコキシ)−CO−N(低級アルキル)−で表される基を意味し、例えば、メトキシカルボニル−N−メチルアミノ基、エトキシカルボニル−N−メチルアミノ基、tert−ブトキシカルボニル−N−メチルアミノ基などが挙げられる。
【0033】
「ヘテロアリール基」とは、1〜5個の炭素原子ならびにO、NおよびS原子からなる群から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する5〜6員の単環式芳香族複素環、あるいは1〜9個の炭素原子ならびにO、NおよびS原子からなる群から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する8〜10員のニ環式芳香族複素環を意味する。単環式芳香族複素環としては、例えば、ピロリル、フラニル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジルおよびピリダジニルなどが挙げられ、好適にはピリジルである。ニ環式芳香族複素環としては、例えば、インドリル、インダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ベンズイミダゾリルなどが挙げられ、好適にはインドリルである。これらの複素環の全ての位置異性体が考えられる(例えば、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジルなど)。またこれらの複素環は、必要に応じてハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基から独立して選択される1〜5個の基で置換することができる。
【0034】
「アラルキル基」とは、非置換もしくは以下からなる群:ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基および水酸基から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基、またはヘテロアリール基で置換された低級アルキル基を意味し、例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、4−メトキシベンジル基、3,4−ジメトキシベンジル基、3,5−ジメトキシベンジル基、4−ヒドロキシベンジル基、3,4−ジヒドロキシベンジル基、インドール−3−イルメチル基などが挙げられる。
【0035】
「環状アミン」または「環状アミノ基」とは、環内に−NH−、−O−または−S−を含んでもよい、5〜7員の環状アミンを意味し、例えば、1−ピロリジル基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基などが挙げられ、好適にはモルホリノ基またはピペラジノ基である。
【0036】
「低級アシル基」とは、(低級アルキル)−CO−で表される基を意味し、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基などが挙げられる。
【0037】
本発明の前記一般式(I)で表される化合物において1つまたはそれ以上の不斉炭素原子が存在する場合、本発明は各々の不斉炭素原子がR配置の化合物、S配置の化合物、およびそれらの任意の組み合せの化合物のいずれも包含する。またそれらのラセミ化合物、ラセミ混合物、単一のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物が本発明の範囲に含まれる。本発明の前記一般式(I)で表される化合物において幾何学異性が存在する場合、本発明はその幾何学異性体のいずれも包含する。さらに本発明の前記一般式(I)で表される化合物には、水和物やエタノール等の医薬品として許容される溶媒との溶媒和物も含まれる。
【0038】
本発明の前記一般式(I)で表される化合物は、塩の形態で存在することができる。このような塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの鉱酸との付加塩、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、プロピオン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、炭酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等の有機酸との付加塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の無機塩基との塩、トリエチルアミン、ピペリジン、モルホリン、リジン等の有機塩基との塩を挙げることができる。
【0039】
本発明において「プロドラッグ」とは生体内において前記一般式(I)に変換される化合物を意味し、このようなプロドラッグはまた本発明の範囲内である。プロドラッグの様々な形態が当該分野で周知である。
【0040】
例えば、前記一般式(I)で表される化合物が水酸基を有する場合、プロドラッグとして、当該水酸基の水素原子と、以下のような基:低級アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基など);低級アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基など);またはスクシノイル基との置換により形成される化合物が挙げられる。また前記一般式(I)で表される化合物が、−NHまたは−NH2のようなアミノ基を有する場合、プロドラッグとして、当該アミノ基の水素原子と、以下のような基:低級アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基など);または低級アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基など)との置換により形成される化合物が挙げられる。これらのプロドラッグ化合物は、自体公知の方法によって化合物(I)から製造することができる。
【0041】
一般式(I)で表される化合物の好ましい実施態様は、
R1が、非置換もしくはX1、X2およびX3からなる群から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基であり、
ここで、X1、X2およびX3が、それぞれ独立して、以下のa)〜f):
a)ハロゲン原子、
b)低級アルキル基、
c)低級アルコキシ基、
d)ジ低級アルキルアミノ基、
e)環状アミノ基、または
f)以下からなる群:ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルコキシ基であり、
R3が、水素原子であり;
Aが、NR5R6であり;
R5が、水素原子、低級アルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルキル低級アルキル基であり;
R6が、以下のa)〜g):
a)水素原子、
b)低級アルキル基、
c)シクロアルキル基、
d)シクロアルキル低級アルキル基、
e)非置換もしくは以下からなる群:ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基および水酸基から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基、
f)アラルキル基、
g)以下の式:
【化13】
で表される基を表すか、あるいはR5とR6が、それらが結合している窒素原子と一緒になって式:
【化14】
で表される基を形成し;
R7が、水素原子または低級アルキル基であり;
R8が、水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、スルファニル低級アルキル基、低級アルキルスルファニル低級アルキル基、アラルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基またはカルバモイル基であり;
R9が、水酸基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、カルバモイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基またはホスホノオキシ基であり;
R10が、水酸基またはアミノ基であり;
R11が、水酸基、ヒドロキシ低級アルキル基またはアミノ基であり;
aが、0、1または2であり;
A1が、結合またはC1−4アルキレン基であり;
A2が、結合またはC1−6アルキレン基であり;
A3が、C1−6アルキレン基であり;
A4が、結合またはC1−6アルキレン基であり;
A5が、C1−6アルキレン基である化合物またはその薬理学的に許容される塩である。
【0042】
一般式(I)で表される化合物のさらに好ましい実施態様は、
R1が、非置換もしくはX1、X2およびX3からなる群から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基であり、
ここで、X1、X2およびX3は、好ましくは、それぞれ独立して以下のa)〜f):
a)ハロゲン原子、
b)低級アルキル基、
c)低級アルコキシ基、
d)ジ低級アルキルアミノ基、
e)環状アミノ基、または
f)以下からなる群:ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルコキシ基であり、
さらに好ましくは、X1、X2およびX3は、それぞれ独立して以下のa)またはb):
a)低級アルコキシ基、または
b)以下からなる群:ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルコキシ基であり;
R3が、水素原子であり;
Aが、式:
【化15】
で表される基であり、
ここで、R7が、水素原子または低級アルキル基であり、
R8が、水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基またはアラルキル基であり、
R9が、水酸基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基またはホスホノオキシ基であり、
A1が、結合またはC1−4アルキレン基である化合物またはその薬理学的に許容される塩である。
【0043】
一般式(I)で表される化合物の別のさらに好ましい実施態様は、
R1が、非置換もしくはX1、X2およびX3からなる群から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基であり、
ここで、X1、X2およびX3は、好ましくは、それぞれ独立して以下のa)〜f):
a)ハロゲン原子、
b)低級アルキル基、
c)低級アルコキシ基、
d)ジ低級アルキルアミノ基、
e)環状アミノ基、または
f)以下からなる群:ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルコキシ基であり、
さらに好ましくは、X1、X2およびX3は、それぞれ独立して以下のa)またはb):
a)低級アルコキシ基、または
b)以下からなる群:ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルコキシ基であり;
R3が、水素原子であり;
Aが、式:
【化16】
で表される基であり、
ここで、A4が、結合またはC1−6アルキレン基であり、さらに好ましくは結合であり、
A5が、C1−6アルキレン基であり、さらに好ましくはC3−4アルキレン基であり、最も好ましくは−CH2CH2CH2−であり、
R11が、水酸基またはヒドロキシ低級アルキル基であり、さらに好ましくは水酸基またはヒドロキシメチル基であり、最も好ましくはヒドロキシメチル基である化合物またはその薬理学的に許容される塩である。
【0044】
一般式(I)で表される化合物の特に好ましい実施態様の具体例は、以下の化合物またはその薬理学的に許容される塩である:
(R)−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物14);
(S)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルブチルアミノ)−5−イソプロピルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物28);
(R)−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物30);
(S)−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルブチルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物31);
(S)−5−シクロプロピル−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピルアミノ)−2−(4−モルホリン−4−イルフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物41);
(R)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−(2−フルオロフェニル)−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物42);
(S)−5−シクロプロピル−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピルアミノ)−2−[3−メトキシ−5−(2−モルホリン−4−イルエトキシ)フェニルアミノ]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物45);
7−(2−アミノ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物58);
7−(2−アミノ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−エチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物67);
7−(2−アミノ−2−メチルプロピルアミノ)−5−(2−クロロフェニル)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物72);または
(R)−リン酸−モノ−{2−[3−カルバモイル−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イルアミノ]}−3−メチルブチル(化合物122)。
【0045】
本発明の一般式(I)で表される化合物は、スキーム1〜4に示す方法により製造することができる。
【0046】
【化17】
(式中、R1、R2、R3、R5およびR6は前記と同義であり、R20は低級アルキル基を表す)
【0047】
工程1−1
3,3−ビス(メチルスルファニル)−2−シアノアクリロニトリル(XX)とアミン誘導体(XXI)とを、無溶媒または溶媒中で反応させることにより、ジシアノ誘導体(XXII)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、およびそれらの混合溶媒等が挙げられる。その反応温度は通常、室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1日間〜3日間である。
【0048】
工程1−2
このジシアノ誘導体(XXII)を、不活性溶媒中でヒドラジンと反応させることによりピラゾール誘導体(XXIII)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。その反応温度は通常、室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1時間〜24時間である。
【0049】
工程1−3
ピラゾール誘導体(XXIII)とβ−ケトエステル誘導体(XXIV)とを、酸の存在下に、無溶媒又は溶媒中で反応させることにより化合物(XXV)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等が挙げられる。酸としては、塩酸、硫酸などの鉱酸、酢酸などの有機酸などが挙げられる。その反応温度は通常室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1時間〜3日間である。
【0050】
工程1−4
この化合物(XXV)と塩素化剤(例えば、オキシ塩化リンなど)とを、無溶媒または不活性溶媒中、塩基の存在下で反応させることにより化合物(XXVI)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、トルエンなどが挙げられる。塩基としては、N,N−ジメチルアニリン等が挙げられる。その反応温度は通常、室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1時間〜12時間である。
【0051】
工程1−5
化合物(XXVI)とアミン誘導体(XXVII)とを不活性溶媒中、塩基(例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなど)の存在下に反応させることにより、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体(XXVIII)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。その温度は通常、室温から還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常、1時間〜3日間程度である。
【0052】
工程1−6
このピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体(XXVIII)を、適切な溶媒中で塩基を用いて加水分解することにより、イミダゾ[1,5−a]ピリミジン誘導体(Ia)へ変換することができる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、水、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、1,1,1−トリフルオロエタノールおよびそれらの混合溶媒等が挙げられる。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどが挙げられ、必要に応じて過酸化水素水を添加することができる。その反応温度は通常、室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常、1時間〜3日間である。
【0053】
【化18】
(式中、R1、R2、R3、R5およびR6は前記と同義である)
【0054】
工程2−1
イソチオシアネート誘導体(XXIX)とマロノニトリルとを不活性溶媒中、塩基(例えば、水酸化ナトリウムなど)の存在下に反応させ、更にメチル化剤によりメチル化することにより、ジシアノ誘導体(XXII)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。その温度は通常、0℃〜室温であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常、1時間〜3日間程度である。
以下、ジシアノ誘導体(XXII)は、工程1−2〜工程1−6と同様にして反応させることにより、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体(Ia)に変換することができる。
【0055】
【化19】
(式中、R1、R2およびR3は前記と同義であり、R21は水素原子、低級アルキル基またはR4を表し、R4は前記と同義である)
【0056】
工程3−1および3−2
ピラゾール誘導体(XXIII)とβ−ジカルボニル誘導体(XXX)とを、工程1−3と同様に反応させることにより化合物(XXXI)が得られる。続いて、この化合物(XXXI)は、工程1−6と同様に加水分解することにより、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体(Ib)へと変換することができる。
【0057】
【化20】
(式中、R1、R2、R3、R5、R6およびR20は前記と同義である)
【0058】
工程4−1
2−シアノ−3,3−ビス(メチルスルファニル)アクリル酸エステル誘導体(XXXII)とアミン誘導体(XXI)とを、無溶媒または溶媒中で反応させることにより化合物(XXXIII)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、およびそれらの混合溶媒等が挙げられる。その反応温度は通常、室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1日間〜3日間である。
【0059】
工程4−2
この化合物(XXXIII)を、不活性溶媒中でヒドラジンと反応させることによりピラゾール化合物(XXXIV)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。その反応温度は通常、0℃〜室温であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1時間〜3日間である。
【0060】
工程4−3
ピラゾール誘導体(XXXIV)とβ−ケトエステル誘導体(XXIV)とを、酸の存在下に、無溶媒または溶媒中で反応させることにより、化合物(XXXV)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等が挙げられる。酸としては、塩酸、硫酸などの鉱酸、酢酸などの有機酸などが挙げられる。その反応温度は通常室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1時間〜3日間である。
【0061】
工程4−4
この化合物(XXXV)と塩素化剤(例えば、オキシ塩化リンなど)とを、無溶媒または不活性溶媒中、塩基存在下で反応させることにより化合物(XXXVI)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、トルエンなどが挙げられる。塩基としては、N,N−ジメチルアニリン等が挙げられる。その反応温度は通常、室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1時間〜12時間である。
【0062】
工程4−5
化合物(XXXVI)とアミン誘導体(XXVII)とを、不活性溶媒中、塩基(例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなど)の存在下に反応させることにより、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体(XXXVII)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。その温度は通常、室温から還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常、1時間〜3日間程度である。
【0063】
工程4−6
このピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体(XXXVII)を、適切な溶媒中で塩基を用いて加水分解することにより、イミダゾ[1,5−a]ピリミジン誘導体(XXXVIII)へ変換することができる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、水、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサンおよびそれらの混合溶媒等が挙げられる。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどが挙げられ、必要に応じて過酸化水素水を添加することができる。その反応温度は通常、室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常、1時間〜3日間である。
【0064】
工程4−7
化合物(XXXVIII)とアンモニアとを、不活性溶媒中、塩基(例えば、ピリジンなど)および縮合剤の存在下に反応させることにより、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体(Ia)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。縮合剤としては、二炭酸ジ−tert−ブチル、カルボジイミダゾール、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩などが挙げられる。その温度は通常、室温から還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常、1時間〜3日間程度である。
【0065】
上記に示したスキームは、本発明の化合物またはその製造中間体を製造するための方法のいくつかの例示であり、当業者には容易に理解され得るようにこれらのスキームの様々な改変が可能である。
本発明化合物を製造する際、必要に応じて、原料ないし中間体の段階で適切な保護基を導入し、しかる後、適切な段階で保護基を除去し、所望の化合物を得ることが可能である。このような保護基の選択、導入および除去は当業者には周知であり、例えば、アミノ基、水酸基、カルボキシル基等の官能基の保護基として、T.W.GreenおよびP.G.Wuts,「Protective Groups in Organic Synthesis」第3版に記載された保護基が挙げられ、これらの保護基を官能基の種類に応じて、適宜、導入、除去することができる。
【0066】
本発明の一般式(I)で表される化合物、および当該化合物を製造するために使用される中間体は、必要に応じて、当該分野の当業者には周知の単離・精製手段である溶媒抽出、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー、分取高速液体クロマトグラフィーなどの操作を行うことにより、単離・精製することができる。
【0067】
このようにして製造される本発明の化合物は、Srcファミリーキナーゼ、特にSrcおよび/またはLckキナーゼ阻害作用を有するので、Srcファミリーキナーゼ活性の異常に起因する疾患の予防または治療薬として有用である。
例えば、本発明の化合物は、優れたSrcキナーゼ阻害作用を有するのでSrc活性の亢進に関連した癌細胞の増殖抑制に有用であり、特に乳癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、非小細胞癌、卵巣癌などの治療薬として有用である。
【0068】
本発明の化合物は、優れたSrc阻害作用を有し、破骨細胞の吸収阻害作用を示すので骨疾患、例えば、骨粗しょう症、パジェト病、高カルシウム血症、変形性関節炎などの予防または治療薬として有用である。また、本発明の化合物は、必要に応じて、Srcファミリーキナーゼ阻害剤以外の骨疾患治療薬と組み合わせて使用することができる。このような骨疾患治療薬としては、例えば、ビスホスホネート剤(例えば、エチドロン二ナトリウム、ゾレドロン酸水和物、チルドロン酸二ナトリウム、アレンドロン酸ナトリウム水和物、クロドロン酸ナトリウム水和物、レセドロン酸ナトリウム水和物など);活性型ビタミンD剤(例えば、カルシトリオール、セカルシフェロール、ファレカルシトリオール、アルファカルシドールなど);プロゲステロンアゴニスト(例えば、トリメゲストンなど);エストロゲンアゴニスト(例えば、エストラジオール、ゲストデンなど);アンドロゲン拮抗剤(例えば、酢酸オサテロンなど);ビタミンK剤(例えば、メナテトレニンなど);イプリフラボン、エルカトニン、カルシトニンなどが挙げられる。
【0069】
本発明の化合物は、優れたSrc阻害作用を持ち、脳保護作用を有するのでパーキンソン病、てんかん、脳浮腫、急性期脳梗塞などの予防または治療薬として有用である。また、本発明の化合物は、必要に応じて、Srcファミリーキナーゼ阻害剤以外の脳保護薬(例えば、抗パーキンソン剤、抗てんかん薬、急性期脳梗塞治療薬など)と組み合わせて使用することができる。本発明の化合物と組み合わせて使用できる抗パーキンソン剤としては、例えば、ドーパミンD2アゴニスト(例えば、カベルゴリン、メシル酸ブロモクリプチン、テルグリド、塩酸タリペキソール、塩酸ロピニロール、メシル酸ペルゴリド、塩酸プラミペキソールなど);ドーパミンアゴニスト(例えば、レボドパ、ドロキシドパ、メレボドパなど);COMT(catechol O−methyl transferase)阻害剤(例えば、トルカポン、エンタカポンなど);NMDA拮抗剤(例えば、ブジピンなど);モノアミンオキダーゼB阻害剤(例えば、塩酸セレギリンなど)などが挙げられる。本発明の化合物と組み合わせて使用できる抗てんかん薬としては、例えば、ベンゾジアゼピンアゴニスト(例えば、クロバザム、クロナゼパム、ニトラゼパムなど);GABAアゴニスト(例えば、ガバペンチン、プロガバイド、トピラマートなど);ナトリウムチャネル拮抗剤(例えば、フェニトイン、ホスフェニトインナトリウム、オクスカルバゼピン、カルバマゼピンなど);フェノバルビタール、プリミドン、バルプロ酸ナトリウム、ゾニサミド、ビガバトリン、ラモトリギン、フェルバメイト、塩酸タイアガビンなどが挙げられる。本発明の化合物と組み合わせて使用できる急性期脳梗塞治療薬としては、例えば、血栓溶解剤(例えば、t−PA(tissue plasminogen activator)、ウロキナーゼなど);トロンビン阻害剤(例えば、アルガトロバンなど);TXA2合成酵素阻害剤(例えば、オザグレルナトリウムなど);ラジカル消去剤(例えば、エブセレン、エダラボン、ニカラベンなど);5−HT1Aアゴニスト(例えば、SUN−N4057、BAYx3702など);NMDA拮抗剤(例えば、アプチガネルなど);AMPA拮抗剤(例えば、S−1746など);塩酸ジラゼプ、シチコリンなどが挙げられる。
【0070】
本発明の化合物は、優れたLck阻害作用を有するので、T細胞が関与する疾患、例えば、自己免疫疾患(乾癬、アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、ネフローゼ症候群など)、移植片対宿主病、臓器移植による拒絶反応の抑制などの予防または治療薬として有用である。また、本発明の化合物は、必要に応じて、Srcファミリーキナーゼ阻害剤以外のT細胞関連疾患の治療薬と組み合わせて使用することができる。このようなT細胞関連疾患の治療薬としては、例えば、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンA、タクロリムス水和物、ラパマイシン、アザチオプリン、メトトレキサートなど);COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブなど);ステロイド(例えば、プレドニゾン、デキサメタゾンなど);非ステロイド性抗炎症剤(例えば、インドメタシン、ケトプロフェン、イブプロフェンなど);抗CD−3抗体(ムロモナブ)、抗CD−4抗体(セデリズマブ)、抗CD45RB抗体、抗ICAM−3、抗IL−2レセプター抗体、抗TNF−α抗体などが挙げられる。
【0071】
本発明の前記一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物を実際の治療に用いる場合、用法に応じ種々の剤型のものが使用される。このような剤型としては例えば、散剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、錠剤、カプセル剤、注射剤、液剤、軟膏剤、坐剤、貼付剤などを挙げることができ、経口または非経口的に投与される。
これらの医薬組成物は、その剤型に応じ製剤学的に公知の手法により、適切な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤などの医薬品添加物と適宜混合または希釈・溶解することにより調剤することができる。
【0072】
本発明の医薬組成物を実際の治療に用いる場合、その有効成分である前記一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩の投与量は患者の年齢、性別、体重、疾患および治療の程度等により適宜決定されるが、経口投与の場合成人1日当たり約0.01mg〜約1000mgの範囲で、非経口投与の場合は、成人1日当たり約0.001mg〜約100mgの範囲で、一回または数回に分けて適宜投与することができる。
【0073】
本発明の前記一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩と、Srcファミリーキナーゼ阻害剤以外の骨疾患用剤、抗パーキンソン剤、抗てんかん薬、脳浮腫治療薬、急性期脳梗塞治療薬およびT細胞関連疾患治療薬から選択される少なくとも1種とを組み合わせてなる医薬は、これらの有効成分を別々にまたは同時に、薬理学的に許容される賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤などと混合し、医薬組成物として経口または非経口的に投与することができる。このとき有効成分を別々に製剤化した場合、別々に製剤化したものを使用時に希釈剤などを用いて混合して投与することができるが、別々に製剤化したものを、別々に、同時に、または時間差をおいて同一対象に投与してもよい。
【0074】
本発明の前記一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩と、Srcファミリーキナーゼ阻害剤以外の骨疾患用剤、抗パーキンソン剤、抗てんかん薬、脳浮腫治療薬、急性期脳梗塞治療薬およびT細胞関連疾患治療薬から選択される少なくとも1種とを組み合わせてなる医薬において、薬剤の配合比は、患者の年齢、性別、および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせなどにより、適宜選択することができる。
【0075】
【発明の実施の形態】
本発明の内容を以下の参考例、実施例および試験例でさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0076】
【実施例】
参考例1−1
2−シアノ−3−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−3−メチルスルファニルアクリロニトリル
3,3−ビス(メチルスルファニル)−2−シアノアクリロニトリル (10.56g)と3,5−ジメトキシアニリン(9.55g)のエタノール(100mL)溶液を、一晩加熱還流した。室温まで冷却後、析出物を濾取して、表題化合物(13.97g)を得た。
3,5−ジメトキシアニリンの代わりに対応するアミンを用い、参考例1−1と同様にして、参考例1−2〜参考例1−15を合成した。これらを表1に示した。
【0077】
【表1】
【0078】
参考例2−1
5−アミノ−3−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−1H−ピラゾール−4−カルボニトリル(方法A)
参考例1−1(10.0g)とヒドラジン一水和物(2.10mL)のN,N−ジメチルホルムアミド(30mL)溶液を、100℃にて2時間撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物に水を加え、析出物を濾取して、表題化合物(9.53g)を得た。
参考例1−1の代わりに参考例1−2〜1−14を用い、参考例2−1と同様にして、参考例2−2〜参考例2−14を合成した。これらを表2に示した。
【0079】
5−アミノ−3−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−1H−ピラゾール−4−カルボニトリル(方法B)
水酸化ナトリウム(1.3g)のN,N−ジメチルホルムアミド(30mL)懸濁液に、マロノニトリル(1.7g)及び3,5−ジメトキシフェニルイソチオシアネート(5.0g)を加え、室温下一晩撹拌した。反応混合物にヨウ化メチル(2.4mL)を加え、室温にて一晩撹拌した。過剰なヨウ化メチルを減圧下留去後、ヒドラジン一水和物(1.5mL)を加え、100℃にて一晩撹拌した。反応混合物に水(30mL)を加え、室温にて一晩撹拌した。析出物を濾取し、表題化合物(4.37g)を得た。
【0080】
【表2】
【0081】
参考例3−1
2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−メチル−7−オキソ−4,7−ジヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル
参考例2−1(1.3g)の酢酸(10mL)溶液に、3−オキソブタン酸エチル(720mg)を加え、120℃にて一晩撹拌した。反応混合物に水(20mL)を加え、析出物を濾取して、表題化合物(1.19g)を得た。
参考例3−1と同様にして、参考例3−2〜参考例3−29を合成した。これらを表3に示した。
【0082】
【表3】
【0083】
参考例3−30
2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−ジメチルアミノメチル−7−オキソ−4,7−ジヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル
参考例3−7(199.3mg)のメタノール(3.7mL)懸濁液に、2mol/L ジメチルアミン−メタノール溶液(0.61mL)を加え、120℃で1.5時間撹拌した。室温に冷却後、反応混合物を減圧下濃縮し、表題化合物(206.5mg)を得た。これを表3に示した。
【0084】
参考例4−1
7−クロロ−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル
参考例3−1(163mg)のN,N−ジメチルアニリン(1mL)懸濁液に、オキシ塩化リン(1mL)を加えて60℃にて2時間撹拌した。反応混合物に水を加え、析出物を濾取して、表題化合物(172mg)を得た。
参考例4−1と同様にして、参考例4−3〜参考例4−29を合成した。これらを表4に示した。
【0085】
参考例4−2
1−(3−シアノ−5−イソプロピル−2−フェニルアミノピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル)−2,6−ジメチルピリジニウムクロリド
参考例3−2(445mg)と2,6−ジメチルピリジン(2.89mL)の懸濁液にオキシ塩化リン(2.97mL)を加え、60℃にて4時間撹拌した。室温に冷却後、反応液を氷水(30g)に添加し、室温下撹拌した。析出物を濾取し、水で洗浄後、減圧乾燥して、表題化合物(905mg)を得た。
【0086】
参考例4−30
7−クロロ−5−メチル−2−p−トルイルアミノピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル
参考例2−11(30mg)の酢酸(0.5mL)溶液に、3−オキソブタン酸エチル(20μL)を加え、還流下一晩撹拌した。析出物を濾取して、2−(4−メチルフェニルアミノ)−5−メチル−7−オキソ−4,7−ジヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル(34mg)を得た。
この2−(4−メチルフェニルアミノ)−5−メチル−7−オキソ−4,7−ジヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル(33mg)とN,N−ジメチルアニリン(0.5mL)の懸濁液にオキシ塩化リン(220μL)を加え、60℃にて2時間撹拌した。反応液を氷水に添加後、析出物を濾取し、表題化合物(27mg)を得た。
参考例4−30と同様にして、参考例4−31〜参考例4−33を合成した。これらを表4に示した。
【0087】
参考例4−34
2−ベンジルアミノ−7−クロロ−5−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル
参考例1−15(229mg)とヒドラジン一水和物(0.08mL)のN,N−ジメチルホルムアミド(1.00mL)溶液を、100℃にて2時間撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物に水を加え、析出物を濾取して、5−アミノ−3−ベンジルアミノ−1H−ピラゾール−4−カルボニトリル(78.4mg)を得た。
この5−アミノ−3−ベンジルアミノ−1H−ピラゾール−4−カルボニトリル(30mg)の酢酸(0.5mL)溶液に、3−オキソブタン酸エチル(0.02mL)を加え、還流下一晩撹拌した。析出物を濾取して、3−ベンジルアミノ−5−メチル−7−オキソ−4,7−ジヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル(20mg)を得た。
この3−ベンジルアミノ−5−メチル−7−オキソ−4,7−ジヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル(20mg)とN,N−ジメチルアニリン(0.25mL)の懸濁液にオキシ塩化リン(0.14mL)を加え、60℃にて2時間撹拌した。反応液を氷水に添加後、析出物を濾取し、表題化合物(12mg)を得た。これを表4に示した。
【0088】
【表4】
【0089】
参考例5−1
(R)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−5−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル
参考例4−1 (35mg)をN,N−ジメチルホルムアミド(0.3mL)に懸濁し、D−プロリノール(12mg)とジイソプロピルエチルアミン(20μL)を加え、60℃にて30分撹拌し、更に室温にて一晩撹拌した。反応混合物に水を加え、析出物を濾取し、粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:塩化メチレン/メタノール=10/1)にて精製し、表題化合物(24mg)を得た。
参考例5−1と同様にして、参考例5−2〜参考例5−102及び参考例5−104〜参考例5−107を合成した。これらを表5に示した。
【0090】
【表5】
【0091】
参考例5−103
{2−[3−シアノ−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−(2−ヒドロキシエチル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イルアミノ]−1,1−ジメチルエチル}カルバミン酸tert−ブチル
参考例5−66 (97mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(1.0mL)溶液に、二炭酸ジ−tert−ブチル(49mg)を加え、室温下2日間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出物を10%食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去して粗生成物を得た。この粗生成物をアミノプロピルシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル)にて精製し、[7−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−メチルプロピルアミノ)−3−シアノ−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−5−イル]酢酸メチル(90mg)を得た。
この[7−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−メチルプロピルアミノ)−3−シアノ−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−5−イル]酢酸メチル(85mg)のテトラヒドロフラン(1mL)溶液に、テトラヒドロホウ酸リチウム(13mg)を加え、50℃で3時間撹拌し、更に室温下2日間撹拌した。反応混合物に水及び10%クエン酸を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出物を10%食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去して表題化合物(79mg)を得た。これを表5に示した。
【0092】
参考例5−108
2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−メチル−7−フェニルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル
参考例2−1(130mg)の酢酸(1mL)溶液に、ベンゾイルアセトン(82mg)を加え、120℃で一晩撹拌した。反応混合物に水(2mL)を加え、析出物を濾取して、表題化合物(101mg)を得た。
ベンゾイルアセトンの代わりに5,5−ジメチルヘキサン−2,4−ジオンを用い、参考例5−108と同様にして、参考例5−109を合成した。これらを表5に示した。
【0093】
参考例6−1
2−シアノ−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−3−メチルスルファニルアクリル酸エチル
2−シアノ−3,3−ビス(メチルスルファニル)アクリル酸エチル (5.0g)と3,5−ジメトキシアニリン(3.52g)のエタノール(100mL)溶液を、一晩加熱還流した。室温まで冷却後、析出物を濾取して、表題化合物(5.19g)を得た。
1H−NMR(CDCl3)δ ppm:1.35 (3H, t, J=6.9Hz), 2.31(3H, s), 3.79(6H, s), 4.27(2H, q, J=6.9Hz), 6.38(1H, t, J=2.2Hz), 6.46(2H, d, J=2.2Hz), 11.42 (1H, brs)
【0094】
参考例6−2
5−アミノ−3−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル
参考例6−1(4.97g)とヒドラジン一水和物(897μL)のN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)懸濁液を、100℃にて2時間撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物に水を加え、析出物を濾取して、表題化合物(4.27g)を得た。
1H−NMR(DMSO−d6)δ ppm:1.30(3H, t, J=6.9Hz), 3.70(6H, s), 4.23(2H, q, J=6.9Hz), 5.95−6.05(2H, m), 6.75−6.80(2H, m), 8.02(1H, brs)
【0095】
参考例6−3
2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−オキソ−5−トリフルオロメチル−4,7−ジヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボン酸エチル
参考例6−2(250mg)の酢酸(1mL)溶液に、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸メチル(116μL)を加え、120℃にて一晩撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出物を10%−食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去して、表題化合物(298mg)を得た。
MS (ESI, m/z): 427 (M+H)+
【0096】
参考例6−4
7−クロロ−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−トリフルオロメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボン酸エチル
参考例6−3(276mg)のN,N−ジメチルアニリン(1.23mL)懸濁液に、オキシ塩化リン(1.2mL)を加えて60℃にて2時間撹拌した。反応混合物に水を加え、析出物を濾取して、表題化合物(226mg)を得た。
1H−NMR(DMSO−d6)δ ppm:1.37(3H, t, J=7.3Hz), 3.78(6H, s), 4.41(2H, q, J=7.3Hz), 6.21(1H, t, J=2.2Hz), 7.11(2H, d, J=2.2Hz), 8.07(1H, s), 9.11(1H, s)
【0097】
参考例6−5
7−(2−アミノ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−トリフルオロメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボン酸エチル
参考例6−4(102mg)の1−メチル−2−ピロリドン(1.0mL)溶液に、2−メチルプロパン−1,2−ジアミン(72μL)を加え、室温下終夜撹拌した。反応混合物に水(3mL)を加え、析出物を濾取し、表題化合物(94mg)を得た。
同様にして参考例6−6を合成した。これらを表6に示した。
【0098】
参考例6−7
7−(2−アミノ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−トリフルオロメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボン酸
参考例6−5(52.3mg)のエタノール(0.5mL)懸濁液に、5mol/L水酸化ナトリウム(42μL)を加え、50℃で4時間撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物に2mol/L 塩酸を加え、析出物を濾取し、表題化合物(35mg)を得た。
同様にして参考例6−8を合成した。これらを表6に示した。
【0099】
【表6】
【0100】
実施例1
(R)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−5−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物1)
参考例5−1(24mg)のジメチルスルホキシド(1mL)及びエタノール(1mL)懸濁液に、5.0mol/L水酸化ナトリウム水溶液(106μL)、30%過酸化水素水(60μL)を加え、室温下1時間撹拌した。更に30%過酸化水素水(60μL)を加え、50℃で一晩撹拌した。室温下冷却後、1.0mol/L塩酸(530μL)加え、生じた沈殿物を濾取、減圧乾燥して表題化合物(17mg)を得た。
参考例5−1の代わりに参考例5−2〜参考例5−107を用い、実施例1と同様にして、化合物2〜化合物47、化合物49及び化合物51〜化合物109を合成した。これらを表7に示した。
【0101】
【表7】
【0102】
実施例2
(R)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピルアミノ)−5−トリフルオロメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物48)
参考例6−8(65mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(0.5mL)溶液に、二炭酸ジ−tert−ブチル(88.1mg)、炭酸アンモニウム(31.9mg)及びピリジン(33μL)を加え、室温下終夜撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水及び10%食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残渣をアミノプロピルシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル)にて精製し、表題化合物(61mg)を得た。これを表7に示した。
【0103】
実施例3
{2−[3−カルバモイル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−トリフルオロメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イルアミノ]−1,1−ジメチルエチル}カルバミン酸tert−ブチル(化合物50)
参考例6−7(26mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(0.5mL)溶液に、二炭酸ジ−tert−ブチル(36.3mg)、炭酸アンモニウム(13.2mg)、及びピリジン(14μL)を加え、室温下終夜撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水及び10%食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残渣を分取用アミノプロピルシリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/1)にて精製し、表題化合物(7.4mg)を得た。これを表7に示した。
【0104】
実施例4
7−(2−アミノエチルアミノ)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド塩酸塩(化合物110)
化合物49(0.020g)を飽和塩化水素―エタノール溶液(1mL)に溶解し、室温で2時間撹拌した。反応液を濃縮して、表題化合物(0.016g)を合成した。
化合物49の代わりに化合物50〜化合物56、化合物58、61、67及び73を用い、実施例4と同様にして、化合物111〜化合物121を合成した。これらを表8に示した。
【0105】
【表8】
【0106】
実施例5
(R)−リン酸−モノ−{2−[3−カルバモイル−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イルアミノ]}−3−メチルブチル(化合物122)
化合物30 (49mg) のテトラヒドロフラン (0.5mL) 溶液に、1H−テトラゾール (15mg) 及びジベンジル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト(56mg) を加え、室温下20分間撹拌した。−40℃に冷却後、m−クロロ過安息香酸 (28mg) を加え、同条件下30分間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残渣を分取用アミノプロピルシリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/1)にて精製し、(R)−リン酸−ジベンジル−2−[3−カルバモイル−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イルアミノ]−3−メチルブチル(38mg)を得た。
この(R)−リン酸−ジベンジル−2−[3−カルバモイル−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イルアミノ]−3−メチルブチル(29mg) 及び10%パラジウムカーボン粉末(10mg)の酢酸(1mL)懸濁液を水素雰囲気下、室温にて2時間撹拌した。セライトを用いてパラジウムカーボン粉末をろ去後、ろ液を減圧下濃縮し、表題化合物(22mg)を得た。
1H−NMR(DMSO−d6)δ ppm:0.85−1.10(10H, m), 2.00−2.15(2H,m), 3.77(6H, s), 3.80−3.90(1H, m), 3.95−4.05(2H, m), 6.06(1H, t, J=2.2Hz), 6.49(1H, s), 6.90(2H, d, J=2.2Hz), 6.98(1H, brd, J=9.5Hz), 7.32(1H, m), 7.44(1H, m), 9.58(1H, s)
【0107】
実施例6
2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−メチル−7−フェニルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物123)
参考例5−108(40mg)のジメチルスルホキシド(0.5mL)及びエタノール(0.5mL)懸濁液に、5.0mol/L水酸化ナトリウム水溶液(320μL)、30%過酸化水素水(180μL)を加え、室温下1時間撹拌した。更に30%過酸化水素水(180μL)を加え、50℃で一晩撹拌した。室温下冷却後、1.0mol/L塩酸(1mL)加え、生じた沈殿物を濾取、減圧乾燥して表題化合物(14mg)を得た。
MS(ESI, m/z): 404(M+H)+
参考例5−108の代わりに参考例5−109を用い、実施例6と同様にして以下の化合物を合成した。
7―tert−ブチル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物124)
MS(ESI, m/z): 384(M+H)+
【0108】
試験例1
c−src チロシンキナーゼ阻害作用試験
1)c−srcタンパク質のクローニング、発現、および精製
ヒトc−srcのキナーゼドメイン(SER251−PHE523)は、ヒト胎盤cDNAから、PCR(polymerase chain reaction)法を用いて、pET−19b発現ベクター(Novagen社)のNdeおよびXhoI部位へクローニングした。更に、このヒトc−srcキナーゼドメインを、その5’末端にpET−19bのHisタグの遺伝子を結合した形で、BAC−TO−BAC(登録商標)バキュロウイルス発現システム(GIBCO BRL社)に含まれるベクターpFASTBAC1に組み込んだ。このプラスミドDNAをバキュロウイルス発現システムに含まれるコンピテントセルDH10BACに形質導入し、組み換えウイルスのDNAを作製した。さらに組み換えウイルスのDNAをSf−9細胞(Invitrogen社)にトランスフェクションすることにより組み換えウイルス(培養上清)を得た。
この組み換えウイルスを感染させたHigh Five(登録商標)昆虫細胞(Invitrogen社)を回収し、超音波処理によって細胞を溶解した。可溶性画分を遠心分離した後、上清をTALON(登録商標)メタルアフィニティーレジン(CLONTECH社)と混合し、レジンにc−srcキナーゼドメインのHisタグ融合タンパク質を吸着させた。レジンを数回洗浄した後、イミダゾールを含むバッファーでc−srcキナーゼドメインのHisタグ融合タンパク質を溶出した。
【0109】
2)c−srcチロシンキナーゼ阻害アッセイ
被験化合物のc−src阻害活性を、分光光度計を用いた共役酵素アッセイで測定した。10nmol/L c−srcキナーゼドメインタンパク質とジメチルスルホキシドで溶解した様々な濃度の被験化合物を0.1mol/L HEPES緩衝液(pH7.6、20mmol/L MgCl2、2.5mmol/Lホスホエノールピルベート、0.2mmol/L NADH、150μg/mLピルベートキナーゼ、50μg/mLラクテートデヒドロゲナーゼ、0.5mmol/L c−srcペプチド)中で30℃、10分間静置した。c−srcペプチド(アミノ酸配列: AEEEIYGEFEAKKKK)は、c−srcチロシンキナーゼ触媒反応のリン酸基受容体基質として使用した。酵素反応は、50μmol/LのATP添加で開始し、30℃に設定した分光光度計で単位時間あたりの340nm の吸収減少量(速度V(mOD/min))を測定した。阻害剤濃度に対する速度値V(mOD/min)を酵素速度解析ソフトウェアーPlate Ki(Bio Kin,Ltd.)に入力し、Ki値を算出した。これらの結果を表9に示した。
【0110】
【表9】
【0111】
試験例2
Lck チロシンキナーゼ阻害作用試験
3)Lckタンパク質のクローニング、発現、および精製
ヒトLckのキナーゼドメイン(Gln225−Pro509)は、ヒト脾臓Marathon−Ready(登録商標)cDNA(CLONTECH社)から、PCR法を用いて、pET−19b発現ベクター(Novagen社)のNdeおよびXhoI部位へクローニングした。更に、このヒトLckキナーゼドメインを、その5’末端にpET−19bのHisタグの遺伝子を結合した形で、BAC−TO−BAC(登録商標)バキュロウイルス発現システム(GIBCO BRL社)に含まれるベクターpFASTBAC1に組み込んだ。このプラスミドDNAをバキュロウイルス発現システムに含まれるコンピテントセルDH10BACに形質導入し、組み換えウイルスのDNAを作製した。さらに組み換えウイルスのDNAをSf−9細胞(Invitrogen社)にトランスフェクションすることにより組み換えウイルス(培養上清)を得た。
この組み換えウイルスを感染させたHigh Five(登録商標)昆虫細胞(Invitrogen社)を回収し、超音波処理によって細胞を溶解した。可溶性画分を遠心分離した後、上清をTALON(登録商標)メタルアフィニティーレジン(CLONTECH社)と混合し、レジンにLckキナーゼドメインのHisタグ融合タンパク質を吸着させた。レジンを数回洗浄した後、イミダゾールを含むバッファーでLckキナーゼドメインのHisタグ融合タンパク質を溶出した。
【0112】
4)Lckチロシンキナーゼ阻害アッセイ
被験化合物のLck阻害活性を、分光光度計を用いた共役酵素アッセイで測定した。10nmol/L Lckキナーゼドメインタンパク質とジメチルスルホキシドで溶解した様々な濃度の被験化合物を0.1mol/L HEPES緩衝液(pH7.6、20mmol/L MgCl2、2.5mmol/Lホスホエノールピルベート、0.2mmol/L NADH、150μg/mLピルベートキナーゼ、50μg/mLラクテートデヒドロゲナーゼ、0.5mmol/L c−srcペプチド)中で30℃、10分間静置した。c−srcペプチド(アミノ酸配列: AEEEIYGEFEAKKKK)は、Lckチロシンキナーゼ触媒反応のリン酸基受容体基質として使用した。酵素反応は、50μmol/LのATP添加で開始し、30℃に設定した分光光度計で単位時間あたりの340nm の吸収減少量(速度V(mOD/min))を測定した。阻害剤濃度に対する速度値V(mOD/min)を酵素速度解析ソフトウェアーPlate Ki(Bio Kin,Ltd.)に入力し、Ki値を算出した。これらの結果を表10に示した。
【0113】
【表10】
【0114】
【発明の効果】
本発明の一般式(I)で表されるピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体は、Srcファミリーキナーゼ、特にSrcおよび/またはLckキナーゼに対して強力な阻害作用を有する。従って本発明の化合物は、Srcファミリーキナーゼ関連疾患の治療または予防薬として有用であり、特に癌、骨粗しょう症、パジェット病、高カルシウム血症、変形性関節炎、パーキンソン病、てんかん、脳浮腫、急性期脳梗塞、自己免疫性疾患、移植片対宿主病、臓器移植による拒絶反応などの治療または予防剤として好適である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロテインチロシンキナーゼ阻害作用、特にSrcファミリーキナーゼ阻害作用を有する新規なピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、それを含有する医薬組成物およびそれらの用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロテインチロシンキナーゼは、細胞蛋白質の特定のチロシン残基のリン酸化を触媒する酵素であり、細胞の活性化、増殖および分化の調節に重要な役割を果たしている(例えば、非特許文献1参照)。このプロテインチロシンキナーゼの異常な発現、刺激または変異は、様々な疾病をもたらすと考えられている。
【0003】
Srcファミリーキナーゼは、非レセプター型プロテインチロシンキナーゼの1つである。Srcファミリーキナーゼのメンバーとして、8つのキナーゼ(Src, Yes, Fyn, Fgr, Blk, Lck, LynおよびHck)が発見されている。Srcファミリーキナーゼは、正常細胞においては高度に制御されており、細胞外刺激のない状態では、不活性なコンフォーメーションに維持されている。
【0004】
Srcは、多くのヒトの癌において活性化されている。例えば、乳癌(例えば、非特許文献2参照)、胃癌、結腸癌、直腸癌(例えば、非特許文献3および4参照)、非小細胞肺癌(例えば、非特許文献5参照)、卵巣癌(例えば、非特許文献6参照)など)において、非常に活性化されていることが知られている。Src活性の変化は、細胞周期の変化と関連しており(例えば、非特許文献7参照)、Src活性の調節の変化は、腫瘍形成とも関連している(例えば、非特許文献8、9、10および11参照)。さらに卵巣癌および直腸癌細胞に発現されたアンチセンスSrcは、癌の増殖を阻害することが示されている(例えば、非特許文献6および12参照)。従って、Srcの阻害剤は、癌細胞の増殖を抑制すると期待される。
【0005】
Srcは、また、破骨細胞の骨吸収の制御に関与している(例えば、非特許文献13、14、15および16参照)。Src遺伝子のノックアウトマウスは、骨石灰化を引き起こすことが示されている(例えば、非特許文献13参照)。また、Src阻害剤であるHerbimycin Aは、in vivoにおいて破骨細胞の骨吸収を阻害することが知られている(例えば、非特許文献17参照)。従って、Srcの阻害剤は、骨疾患(例えば、骨粗しょう症、パジェト病、高カルシウム血症、変形性関節炎など)の予防または治療薬として有用であると期待される。
【0006】
Srcは、神経細胞のNMDA受容体の活性化の制御に関与している(例えば、非特許文献18参照)。Src阻害剤は神経細胞内へのCa2+の流入を抑制することにより、グルタミン酸の興奮毒性を解除し神経保護作用を示すと考えられる。またSrcは、MMP−9(matrix metalloproteinase 9)の産生抑制にも関与している(例えば、非特許文献19参照)。MMP−9は、脳卒中や脳損傷などの脳虚血に応答して産生され、血液脳関門の破綻を引き起こす1つの原因であると考えられている。この脳虚血後の血液脳関門の破綻は、脳浮腫や急性期脳梗塞をもたらすと考えられている。また脳梗塞モデルにおいて虚血再灌流後に、Srcキナーゼが神経細胞に強発現することが報告されている。またSrcは、炎症性細胞の遊走や接着にも関与しており、Src阻害剤は炎症部位への好中球の接着阻害や好中球からの活性酸素産生を抑制すると考えられる(例えば、非特許文献20参照)。このようにSrc阻害剤は、脳保護作用を有するので、パーキンソン病、てんかん、脳浮腫、急性期脳梗塞などの予防または治療薬として有用であると期待される。
【0007】
Lckは、免疫応答におけるT細胞の活性化に関係している。T細胞が、T細胞受容体(TCR)を介して抗原提示細胞上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に提示された抗原と結合すると、そのシグナルは細胞質内に伝達され、TCR/CD3ζ鎖中の immunoreceptor tyrosine−based activation motifs(ITAM)と称される部位のチロシン残基が、Lckによってリン酸化される。ZAP−70は、このリン酸化されたITAMにリクルートされ、LckによってZAP−70のチロシン残基がリン酸化されるとZAP−70は活性化される。活性化されたZAP−70は、さらに下流へのシグナル伝達を媒介し、細胞内Ca2+の動員、インターロイキン2の産生、T細胞の増殖などを引き起こす(例えば、非特許文献21参照)。従ってLckの阻害剤は、T細胞が関与する疾患、例えば、自己免疫疾患(乾癬、アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、ネフローゼ症候群など)、移植片対宿主病、臓器移植による拒絶反応の抑制などの治療薬として有用であると期待される。
【0008】
Ried W.らは、下記一般式:
【化8】
(式中、Raは、シアノまたはカルバモイルである)で表されるピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体を開示している(例えば、非特許文献22参照)。
【0009】
Andrew S.T.らは、下記一般式:
【化9】
(式中、Rbは、シアノ、カルバモイルまたは−C(O)N=N(CH3)2であり;Rcは、フェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、3−トリフルオロフェニル、3−ピリジルまたは4−ピリジルであり;Rdは、水素、メチルまたはトリフルオロメチルである;Xは、CH2、O、SまたはN(Re)であり;Reは、メチル、フェニル、ベンジル、2−ピリジルである)で表される、血圧降下剤、抗不安薬、認知機能障害治療薬として有用なピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体を開示しているが、プロテインチロシンキナーゼ阻害作用については開示も示唆もされていない(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
【非特許文献1】
Schlessinger J.ら, 「Neuron」, 1992年, 9巻, p.383−391
【非特許文献2】
Muthuswamyら, 「Oncogene」, 1995年, 11巻, p.1801−1810
【非特許文献3】
Cartwright CA.ら, 「Proc. Natl. Acad. Sci. USA」, 1990年, 87巻, p.558−562
【非特許文献4】
Maoら, 「Oncogene」, 1997年, 15巻, p.3083−3090
【非特許文献5】
Budde RJA.ら, 「Cancer Biochem. Biophys.」, 1994年, 14巻, p.171−175
【非特許文献6】
Wiener JR.ら, 「Clinical Cancer Research」, 1999年, 5巻, p.2164−2170
【非特許文献7】
Chackalaparampil I.ら, 「Cell」, 1988年, 52巻, p.801−810
【非特許文献8】
Bolen JB.ら, 「Proc. Natl. Acad. Sci.」, 1985年, 82巻, p.7275−7279
【非特許文献9】
Bolen JB.ら, 「Oncogene res.」, 1987年, 1巻, p.149−168
【非特許文献10】
Zheng XM.ら, 「Nature」, 1992年, 359巻, p.336−339
【非特許文献11】
Sabe H.ら, 「Mol. Cell Biol.」, 1992年, 12巻, p.4706−4713
【非特許文献12】
Staleyら, 「Cell Growth Diff.」, 1997年, 8巻, p.269
【非特許文献13】
Sorianoら, 「Cell」, 1991年, 64巻, p.693−702
【非特許文献14】
Boyceら, 「J. Clin. Invest.」, 1992年, 90巻, p.1622−1627
【非特許文献15】
Yonedaら, 「J. Clin. Invest.」, 1993年, 91巻, p.2791−2795
【非特許文献16】
Missbachら, 「Bone」, 1999年, 24巻, p.437−449
【非特許文献17】
Rodan GA.ら, 「Science」, 2000年, 289巻, p.1508−1514
【非特許文献18】
Lu WY.ら, 「Nat. Neurosci.」, 1999年, 2巻, p.331−338
【非特許文献19】
Sato H.ら, 「J. Biol. Chem.」, 1993年, 31巻, p.23460−23468
【非特許文献20】
Mocsai A.ら, 「J. Immunol.」, 1999年, 162巻, p.1120−1126
【非特許文献21】
Chu DH.ら, 「Immunological Reviews」, 1998年, 165巻, p.167−180
【非特許文献22】
Ried W.ら, 「Chemiker−Zeitung」, 1989年, 113巻, 5号, p.181−183
【特許文献1】
米国特許第4576943号明細書
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、プロテインチロシンキナーゼ阻害作用、好ましくはSrcファミリーキナーゼ阻害作用を有する新規な化合物を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、一般式(I)で表されるピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体が、優れたSrcファミリーキナーゼ阻害作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、一般式(I):
【化10】
〔式中、
R1は、以下のa)〜c):
a)非置換もしくはX1、X2およびX3からなる群から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基、
b)ヘテロアリール基、または
c)アラルキル基であり、
ここで、X1、X2およびX3は、それぞれ独立して、以下のa)〜g):
a)ハロゲン原子、
b)低級アルキル基、
c)ハロ低級アルキル基、
d)低級アルコキシ基、
e)ジ低級アルキルアミノ基、
f)環状アミノ基、または
g)以下からなる群:ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルコキシ基であり;
R2は、以下のa)〜g):
a)水素原子、
b)低級アルキル基、
c)ハロ低級アルキル基、
d)シクロアルキル基、
e)以下からなる群:水酸基、低級アルコキシ基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基、ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルキル基であり、
f)非置換もしくは以下からなる群:ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロ低級アルキル基および低級アルコキシ基から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基、または
g)ヘテロアリール基であり;
R3は、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはアラルキル基であり;
Aは、以下のa)〜d):
a)水素原子、
b)低級アルキル、
c)R4、または
d)NR5R6であり;
R4は、非置換もしくは以下からなる群:ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基および水酸基から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基であり、
R5は、水素原子、低級アルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルキル低級アルキル基であり;
R6は、以下のa)〜g):
a)水素原子、
b)低級アルキル基、
c)シクロアルキル基、
d)シクロアルキル低級アルキル基、
e)R4、
f)アラルキル基、
g)以下の式:
【化11】
で表される基を表すか、あるいはR5とR6が、それらが結合している窒素原子と一緒になって式:
【化12】
で表される基を形成し;
R7は、水素原子または低級アルキル基であり;
R8は、水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、スルファニル低級アルキル基、低級アルキルスルファニル低級アルキル基、アラルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基またはカルバモイル基であり;
R9は、水酸基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、低級アルコキシカルボニルアミノ基、低級アルコキシカルボニル低級アルキルアミノ基、カルバモイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基またはホスホノオキシ基であり;
R10は、水酸基またはアミノ基であり;
R11は、水酸基、ヒドロキシ低級アルキル基またはアミノ基であり;
aは、0、1または2であり;
A1は、結合またはC1−4アルキレン基であり;
A2は、結合またはC1−6アルキレン基であり;
A3は、C1−6アルキレン基であり;
A4は、結合またはC1−6アルキレン基であり;
A5は、C1−6アルキレン基である〕
で表される化合物またはそのプロドラッグ、あるいはそれらの薬理学的に許容される塩に関する。
【0014】
また別の局面において、本発明は、前記一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物に関する。
【0015】
さらに別の局面において、本発明は、前記一般式(I)に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、Srcファミリーキナーゼ関連疾患の治療または予防剤に関する。
【0016】
前記一般式(I)で表される化合物において、下記の用語は、特に断らない限り、以下の意味を有する。
【0017】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表し、好適には、フッ素原子または塩素原子である。
【0018】
「低級アルキル基」とは、直鎖または分岐鎖状の炭素数1〜6のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基などが挙げられる。
【0019】
「ハロ低級アルキル基」とは、1〜3個の同種または異種のハロゲン原子で置換された低級アルキル基を意味し、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基などが挙げられ、好適にはトリフルオロメチル基である。
【0020】
「ヒドロキシ低級アルキル基」とは、水酸基で置換された低級アルキル基を意味し、例えば、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基などが挙げられ、好適にはヒドロキシメチル基または1−ヒドロキシエチル基である。
【0021】
「スルファニル低級アルキル基」とは、SH基で置換された低級アルキル基を意味し、例えば、スルファニルメチル基、2−スルファニルエチル基、1−スルファニルエチル基、3−スルファニルプロピル基、4−スルファニルブチル基などが挙げられ、好適にはスルファニルメチル基である。
【0022】
「低級アルキルスルファニル低級アルキル基」とは、低級アルキルスルファニル基で置換された低級アルキル基を意味し、例えば、メチルスルファニルメチル基、2−メチルスルファニルエチル基、1−メチルスルファニルエチル基、3−メチルスルファニルプロピル基などが挙げられ、好適にはメチルスルファニルメチル基である。
【0023】
「シクロアルキル基」とは、3〜8員の飽和環状炭化水素を意味し、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基が挙げられ、好適にはシクロプロピル基である。
【0024】
「シクロアルキル低級アルキル基」とは、シクロアルキル基で置換された低級アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基などが挙げられ、好適にはシクロプロピルメチル基である。
【0025】
「低級アルコキシ基」とは、直鎖または分岐鎖状の炭素数1〜6のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられ、好適には炭素数1〜4のアルコキシ基であり、さらに好適にはメトキシ基またはエトキシ基であり、最も好適にはメトキシ基である。
【0026】
「低級アルキルアミノ基」とは、低級アルキル基で置換されたアミノ基を意味し、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基などが挙げられ、好適にはメチルアミノ基である。
【0027】
「ジ低級アルキルアミノ基」とは、同一のまたは異なる低級アルキル基でニ置換されたアミノ基を意味し、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられ、好適にはジメチルアミノ基である。
【0028】
「C1−4アルキレン基」とは、炭素数1〜4の2価の直鎖飽和炭化水素鎖を意味し、当該炭化水素鎖は必要に応じて1〜3個のメチル基で置換されてもよい。当該C1−4アルキレン基の具体例として、例えば、−CH2−、−CH2CH2−、−CH(CH3)−、−CH(CH3)CH2−、−CH2CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CH3)2CH2−、−CH2C(CH3)2−、−CH2CH2CH2−、−C(CH3)2CH2CH2−、−C(CH3)2CH2CH(CH3)−、−CH2CH2CH2CH2−などが挙げられる。
【0029】
「C1−6アルキレン基」とは、炭素数1〜6の2価の直鎖飽和炭化水素鎖を意味し、当該炭化水素鎖は必要に応じて1〜3個のメチル基で置換されてもよい。当該C1−6アルキレン基の具体例として、例えば、−CH2−、−CH2CH2−、−CH(CH3)−、−CH(CH3)CH2−、−CH2CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CH3)2CH2−、−CH2C(CH3)2−、−CH2CH2CH2−、−C(CH3)2CH2CH2−、−C(CH3)2CH2CH(CH3)−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−などの基が挙げられる。
【0030】
「低級アルコキシカルボニル基」とは、(低級アルコキシ)−CO−で表される基を意味し、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0031】
「低級アルコキシカルボニルアミノ基」とは、(低級アルコキシ)−CONH−で表される基を意味し、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。
【0032】
「低級アルコキシカルボニル低級アルキルアミノ基」とは、(低級アルコキシ)−CO−N(低級アルキル)−で表される基を意味し、例えば、メトキシカルボニル−N−メチルアミノ基、エトキシカルボニル−N−メチルアミノ基、tert−ブトキシカルボニル−N−メチルアミノ基などが挙げられる。
【0033】
「ヘテロアリール基」とは、1〜5個の炭素原子ならびにO、NおよびS原子からなる群から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する5〜6員の単環式芳香族複素環、あるいは1〜9個の炭素原子ならびにO、NおよびS原子からなる群から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する8〜10員のニ環式芳香族複素環を意味する。単環式芳香族複素環としては、例えば、ピロリル、フラニル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジルおよびピリダジニルなどが挙げられ、好適にはピリジルである。ニ環式芳香族複素環としては、例えば、インドリル、インダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ベンズイミダゾリルなどが挙げられ、好適にはインドリルである。これらの複素環の全ての位置異性体が考えられる(例えば、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジルなど)。またこれらの複素環は、必要に応じてハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基から独立して選択される1〜5個の基で置換することができる。
【0034】
「アラルキル基」とは、非置換もしくは以下からなる群:ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基および水酸基から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基、またはヘテロアリール基で置換された低級アルキル基を意味し、例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、4−メトキシベンジル基、3,4−ジメトキシベンジル基、3,5−ジメトキシベンジル基、4−ヒドロキシベンジル基、3,4−ジヒドロキシベンジル基、インドール−3−イルメチル基などが挙げられる。
【0035】
「環状アミン」または「環状アミノ基」とは、環内に−NH−、−O−または−S−を含んでもよい、5〜7員の環状アミンを意味し、例えば、1−ピロリジル基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基などが挙げられ、好適にはモルホリノ基またはピペラジノ基である。
【0036】
「低級アシル基」とは、(低級アルキル)−CO−で表される基を意味し、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基などが挙げられる。
【0037】
本発明の前記一般式(I)で表される化合物において1つまたはそれ以上の不斉炭素原子が存在する場合、本発明は各々の不斉炭素原子がR配置の化合物、S配置の化合物、およびそれらの任意の組み合せの化合物のいずれも包含する。またそれらのラセミ化合物、ラセミ混合物、単一のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物が本発明の範囲に含まれる。本発明の前記一般式(I)で表される化合物において幾何学異性が存在する場合、本発明はその幾何学異性体のいずれも包含する。さらに本発明の前記一般式(I)で表される化合物には、水和物やエタノール等の医薬品として許容される溶媒との溶媒和物も含まれる。
【0038】
本発明の前記一般式(I)で表される化合物は、塩の形態で存在することができる。このような塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの鉱酸との付加塩、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、プロピオン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、炭酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等の有機酸との付加塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の無機塩基との塩、トリエチルアミン、ピペリジン、モルホリン、リジン等の有機塩基との塩を挙げることができる。
【0039】
本発明において「プロドラッグ」とは生体内において前記一般式(I)に変換される化合物を意味し、このようなプロドラッグはまた本発明の範囲内である。プロドラッグの様々な形態が当該分野で周知である。
【0040】
例えば、前記一般式(I)で表される化合物が水酸基を有する場合、プロドラッグとして、当該水酸基の水素原子と、以下のような基:低級アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基など);低級アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基など);またはスクシノイル基との置換により形成される化合物が挙げられる。また前記一般式(I)で表される化合物が、−NHまたは−NH2のようなアミノ基を有する場合、プロドラッグとして、当該アミノ基の水素原子と、以下のような基:低級アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基など);または低級アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基など)との置換により形成される化合物が挙げられる。これらのプロドラッグ化合物は、自体公知の方法によって化合物(I)から製造することができる。
【0041】
一般式(I)で表される化合物の好ましい実施態様は、
R1が、非置換もしくはX1、X2およびX3からなる群から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基であり、
ここで、X1、X2およびX3が、それぞれ独立して、以下のa)〜f):
a)ハロゲン原子、
b)低級アルキル基、
c)低級アルコキシ基、
d)ジ低級アルキルアミノ基、
e)環状アミノ基、または
f)以下からなる群:ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルコキシ基であり、
R3が、水素原子であり;
Aが、NR5R6であり;
R5が、水素原子、低級アルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルキル低級アルキル基であり;
R6が、以下のa)〜g):
a)水素原子、
b)低級アルキル基、
c)シクロアルキル基、
d)シクロアルキル低級アルキル基、
e)非置換もしくは以下からなる群:ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基および水酸基から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基、
f)アラルキル基、
g)以下の式:
【化13】
で表される基を表すか、あるいはR5とR6が、それらが結合している窒素原子と一緒になって式:
【化14】
で表される基を形成し;
R7が、水素原子または低級アルキル基であり;
R8が、水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、スルファニル低級アルキル基、低級アルキルスルファニル低級アルキル基、アラルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基またはカルバモイル基であり;
R9が、水酸基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、カルバモイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基またはホスホノオキシ基であり;
R10が、水酸基またはアミノ基であり;
R11が、水酸基、ヒドロキシ低級アルキル基またはアミノ基であり;
aが、0、1または2であり;
A1が、結合またはC1−4アルキレン基であり;
A2が、結合またはC1−6アルキレン基であり;
A3が、C1−6アルキレン基であり;
A4が、結合またはC1−6アルキレン基であり;
A5が、C1−6アルキレン基である化合物またはその薬理学的に許容される塩である。
【0042】
一般式(I)で表される化合物のさらに好ましい実施態様は、
R1が、非置換もしくはX1、X2およびX3からなる群から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基であり、
ここで、X1、X2およびX3は、好ましくは、それぞれ独立して以下のa)〜f):
a)ハロゲン原子、
b)低級アルキル基、
c)低級アルコキシ基、
d)ジ低級アルキルアミノ基、
e)環状アミノ基、または
f)以下からなる群:ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルコキシ基であり、
さらに好ましくは、X1、X2およびX3は、それぞれ独立して以下のa)またはb):
a)低級アルコキシ基、または
b)以下からなる群:ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルコキシ基であり;
R3が、水素原子であり;
Aが、式:
【化15】
で表される基であり、
ここで、R7が、水素原子または低級アルキル基であり、
R8が、水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基またはアラルキル基であり、
R9が、水酸基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基またはホスホノオキシ基であり、
A1が、結合またはC1−4アルキレン基である化合物またはその薬理学的に許容される塩である。
【0043】
一般式(I)で表される化合物の別のさらに好ましい実施態様は、
R1が、非置換もしくはX1、X2およびX3からなる群から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基であり、
ここで、X1、X2およびX3は、好ましくは、それぞれ独立して以下のa)〜f):
a)ハロゲン原子、
b)低級アルキル基、
c)低級アルコキシ基、
d)ジ低級アルキルアミノ基、
e)環状アミノ基、または
f)以下からなる群:ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルコキシ基であり、
さらに好ましくは、X1、X2およびX3は、それぞれ独立して以下のa)またはb):
a)低級アルコキシ基、または
b)以下からなる群:ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルコキシ基であり;
R3が、水素原子であり;
Aが、式:
【化16】
で表される基であり、
ここで、A4が、結合またはC1−6アルキレン基であり、さらに好ましくは結合であり、
A5が、C1−6アルキレン基であり、さらに好ましくはC3−4アルキレン基であり、最も好ましくは−CH2CH2CH2−であり、
R11が、水酸基またはヒドロキシ低級アルキル基であり、さらに好ましくは水酸基またはヒドロキシメチル基であり、最も好ましくはヒドロキシメチル基である化合物またはその薬理学的に許容される塩である。
【0044】
一般式(I)で表される化合物の特に好ましい実施態様の具体例は、以下の化合物またはその薬理学的に許容される塩である:
(R)−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物14);
(S)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルブチルアミノ)−5−イソプロピルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物28);
(R)−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物30);
(S)−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルブチルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物31);
(S)−5−シクロプロピル−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピルアミノ)−2−(4−モルホリン−4−イルフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物41);
(R)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−(2−フルオロフェニル)−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物42);
(S)−5−シクロプロピル−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピルアミノ)−2−[3−メトキシ−5−(2−モルホリン−4−イルエトキシ)フェニルアミノ]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物45);
7−(2−アミノ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物58);
7−(2−アミノ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−エチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物67);
7−(2−アミノ−2−メチルプロピルアミノ)−5−(2−クロロフェニル)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物72);または
(R)−リン酸−モノ−{2−[3−カルバモイル−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イルアミノ]}−3−メチルブチル(化合物122)。
【0045】
本発明の一般式(I)で表される化合物は、スキーム1〜4に示す方法により製造することができる。
【0046】
【化17】
(式中、R1、R2、R3、R5およびR6は前記と同義であり、R20は低級アルキル基を表す)
【0047】
工程1−1
3,3−ビス(メチルスルファニル)−2−シアノアクリロニトリル(XX)とアミン誘導体(XXI)とを、無溶媒または溶媒中で反応させることにより、ジシアノ誘導体(XXII)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、およびそれらの混合溶媒等が挙げられる。その反応温度は通常、室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1日間〜3日間である。
【0048】
工程1−2
このジシアノ誘導体(XXII)を、不活性溶媒中でヒドラジンと反応させることによりピラゾール誘導体(XXIII)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。その反応温度は通常、室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1時間〜24時間である。
【0049】
工程1−3
ピラゾール誘導体(XXIII)とβ−ケトエステル誘導体(XXIV)とを、酸の存在下に、無溶媒又は溶媒中で反応させることにより化合物(XXV)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等が挙げられる。酸としては、塩酸、硫酸などの鉱酸、酢酸などの有機酸などが挙げられる。その反応温度は通常室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1時間〜3日間である。
【0050】
工程1−4
この化合物(XXV)と塩素化剤(例えば、オキシ塩化リンなど)とを、無溶媒または不活性溶媒中、塩基の存在下で反応させることにより化合物(XXVI)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、トルエンなどが挙げられる。塩基としては、N,N−ジメチルアニリン等が挙げられる。その反応温度は通常、室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1時間〜12時間である。
【0051】
工程1−5
化合物(XXVI)とアミン誘導体(XXVII)とを不活性溶媒中、塩基(例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなど)の存在下に反応させることにより、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体(XXVIII)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。その温度は通常、室温から還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常、1時間〜3日間程度である。
【0052】
工程1−6
このピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体(XXVIII)を、適切な溶媒中で塩基を用いて加水分解することにより、イミダゾ[1,5−a]ピリミジン誘導体(Ia)へ変換することができる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、水、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、1,1,1−トリフルオロエタノールおよびそれらの混合溶媒等が挙げられる。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどが挙げられ、必要に応じて過酸化水素水を添加することができる。その反応温度は通常、室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常、1時間〜3日間である。
【0053】
【化18】
(式中、R1、R2、R3、R5およびR6は前記と同義である)
【0054】
工程2−1
イソチオシアネート誘導体(XXIX)とマロノニトリルとを不活性溶媒中、塩基(例えば、水酸化ナトリウムなど)の存在下に反応させ、更にメチル化剤によりメチル化することにより、ジシアノ誘導体(XXII)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。その温度は通常、0℃〜室温であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常、1時間〜3日間程度である。
以下、ジシアノ誘導体(XXII)は、工程1−2〜工程1−6と同様にして反応させることにより、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体(Ia)に変換することができる。
【0055】
【化19】
(式中、R1、R2およびR3は前記と同義であり、R21は水素原子、低級アルキル基またはR4を表し、R4は前記と同義である)
【0056】
工程3−1および3−2
ピラゾール誘導体(XXIII)とβ−ジカルボニル誘導体(XXX)とを、工程1−3と同様に反応させることにより化合物(XXXI)が得られる。続いて、この化合物(XXXI)は、工程1−6と同様に加水分解することにより、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体(Ib)へと変換することができる。
【0057】
【化20】
(式中、R1、R2、R3、R5、R6およびR20は前記と同義である)
【0058】
工程4−1
2−シアノ−3,3−ビス(メチルスルファニル)アクリル酸エステル誘導体(XXXII)とアミン誘導体(XXI)とを、無溶媒または溶媒中で反応させることにより化合物(XXXIII)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、およびそれらの混合溶媒等が挙げられる。その反応温度は通常、室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1日間〜3日間である。
【0059】
工程4−2
この化合物(XXXIII)を、不活性溶媒中でヒドラジンと反応させることによりピラゾール化合物(XXXIV)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。その反応温度は通常、0℃〜室温であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1時間〜3日間である。
【0060】
工程4−3
ピラゾール誘導体(XXXIV)とβ−ケトエステル誘導体(XXIV)とを、酸の存在下に、無溶媒または溶媒中で反応させることにより、化合物(XXXV)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等が挙げられる。酸としては、塩酸、硫酸などの鉱酸、酢酸などの有機酸などが挙げられる。その反応温度は通常室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1時間〜3日間である。
【0061】
工程4−4
この化合物(XXXV)と塩素化剤(例えば、オキシ塩化リンなど)とを、無溶媒または不活性溶媒中、塩基存在下で反応させることにより化合物(XXXVI)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、トルエンなどが挙げられる。塩基としては、N,N−ジメチルアニリン等が挙げられる。その反応温度は通常、室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1時間〜12時間である。
【0062】
工程4−5
化合物(XXXVI)とアミン誘導体(XXVII)とを、不活性溶媒中、塩基(例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなど)の存在下に反応させることにより、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体(XXXVII)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。その温度は通常、室温から還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常、1時間〜3日間程度である。
【0063】
工程4−6
このピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体(XXXVII)を、適切な溶媒中で塩基を用いて加水分解することにより、イミダゾ[1,5−a]ピリミジン誘導体(XXXVIII)へ変換することができる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、水、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサンおよびそれらの混合溶媒等が挙げられる。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどが挙げられ、必要に応じて過酸化水素水を添加することができる。その反応温度は通常、室温〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常、1時間〜3日間である。
【0064】
工程4−7
化合物(XXXVIII)とアンモニアとを、不活性溶媒中、塩基(例えば、ピリジンなど)および縮合剤の存在下に反応させることにより、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体(Ia)が得られる。当該反応に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。縮合剤としては、二炭酸ジ−tert−ブチル、カルボジイミダゾール、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩などが挙げられる。その温度は通常、室温から還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常、1時間〜3日間程度である。
【0065】
上記に示したスキームは、本発明の化合物またはその製造中間体を製造するための方法のいくつかの例示であり、当業者には容易に理解され得るようにこれらのスキームの様々な改変が可能である。
本発明化合物を製造する際、必要に応じて、原料ないし中間体の段階で適切な保護基を導入し、しかる後、適切な段階で保護基を除去し、所望の化合物を得ることが可能である。このような保護基の選択、導入および除去は当業者には周知であり、例えば、アミノ基、水酸基、カルボキシル基等の官能基の保護基として、T.W.GreenおよびP.G.Wuts,「Protective Groups in Organic Synthesis」第3版に記載された保護基が挙げられ、これらの保護基を官能基の種類に応じて、適宜、導入、除去することができる。
【0066】
本発明の一般式(I)で表される化合物、および当該化合物を製造するために使用される中間体は、必要に応じて、当該分野の当業者には周知の単離・精製手段である溶媒抽出、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー、分取高速液体クロマトグラフィーなどの操作を行うことにより、単離・精製することができる。
【0067】
このようにして製造される本発明の化合物は、Srcファミリーキナーゼ、特にSrcおよび/またはLckキナーゼ阻害作用を有するので、Srcファミリーキナーゼ活性の異常に起因する疾患の予防または治療薬として有用である。
例えば、本発明の化合物は、優れたSrcキナーゼ阻害作用を有するのでSrc活性の亢進に関連した癌細胞の増殖抑制に有用であり、特に乳癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、非小細胞癌、卵巣癌などの治療薬として有用である。
【0068】
本発明の化合物は、優れたSrc阻害作用を有し、破骨細胞の吸収阻害作用を示すので骨疾患、例えば、骨粗しょう症、パジェト病、高カルシウム血症、変形性関節炎などの予防または治療薬として有用である。また、本発明の化合物は、必要に応じて、Srcファミリーキナーゼ阻害剤以外の骨疾患治療薬と組み合わせて使用することができる。このような骨疾患治療薬としては、例えば、ビスホスホネート剤(例えば、エチドロン二ナトリウム、ゾレドロン酸水和物、チルドロン酸二ナトリウム、アレンドロン酸ナトリウム水和物、クロドロン酸ナトリウム水和物、レセドロン酸ナトリウム水和物など);活性型ビタミンD剤(例えば、カルシトリオール、セカルシフェロール、ファレカルシトリオール、アルファカルシドールなど);プロゲステロンアゴニスト(例えば、トリメゲストンなど);エストロゲンアゴニスト(例えば、エストラジオール、ゲストデンなど);アンドロゲン拮抗剤(例えば、酢酸オサテロンなど);ビタミンK剤(例えば、メナテトレニンなど);イプリフラボン、エルカトニン、カルシトニンなどが挙げられる。
【0069】
本発明の化合物は、優れたSrc阻害作用を持ち、脳保護作用を有するのでパーキンソン病、てんかん、脳浮腫、急性期脳梗塞などの予防または治療薬として有用である。また、本発明の化合物は、必要に応じて、Srcファミリーキナーゼ阻害剤以外の脳保護薬(例えば、抗パーキンソン剤、抗てんかん薬、急性期脳梗塞治療薬など)と組み合わせて使用することができる。本発明の化合物と組み合わせて使用できる抗パーキンソン剤としては、例えば、ドーパミンD2アゴニスト(例えば、カベルゴリン、メシル酸ブロモクリプチン、テルグリド、塩酸タリペキソール、塩酸ロピニロール、メシル酸ペルゴリド、塩酸プラミペキソールなど);ドーパミンアゴニスト(例えば、レボドパ、ドロキシドパ、メレボドパなど);COMT(catechol O−methyl transferase)阻害剤(例えば、トルカポン、エンタカポンなど);NMDA拮抗剤(例えば、ブジピンなど);モノアミンオキダーゼB阻害剤(例えば、塩酸セレギリンなど)などが挙げられる。本発明の化合物と組み合わせて使用できる抗てんかん薬としては、例えば、ベンゾジアゼピンアゴニスト(例えば、クロバザム、クロナゼパム、ニトラゼパムなど);GABAアゴニスト(例えば、ガバペンチン、プロガバイド、トピラマートなど);ナトリウムチャネル拮抗剤(例えば、フェニトイン、ホスフェニトインナトリウム、オクスカルバゼピン、カルバマゼピンなど);フェノバルビタール、プリミドン、バルプロ酸ナトリウム、ゾニサミド、ビガバトリン、ラモトリギン、フェルバメイト、塩酸タイアガビンなどが挙げられる。本発明の化合物と組み合わせて使用できる急性期脳梗塞治療薬としては、例えば、血栓溶解剤(例えば、t−PA(tissue plasminogen activator)、ウロキナーゼなど);トロンビン阻害剤(例えば、アルガトロバンなど);TXA2合成酵素阻害剤(例えば、オザグレルナトリウムなど);ラジカル消去剤(例えば、エブセレン、エダラボン、ニカラベンなど);5−HT1Aアゴニスト(例えば、SUN−N4057、BAYx3702など);NMDA拮抗剤(例えば、アプチガネルなど);AMPA拮抗剤(例えば、S−1746など);塩酸ジラゼプ、シチコリンなどが挙げられる。
【0070】
本発明の化合物は、優れたLck阻害作用を有するので、T細胞が関与する疾患、例えば、自己免疫疾患(乾癬、アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、ネフローゼ症候群など)、移植片対宿主病、臓器移植による拒絶反応の抑制などの予防または治療薬として有用である。また、本発明の化合物は、必要に応じて、Srcファミリーキナーゼ阻害剤以外のT細胞関連疾患の治療薬と組み合わせて使用することができる。このようなT細胞関連疾患の治療薬としては、例えば、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンA、タクロリムス水和物、ラパマイシン、アザチオプリン、メトトレキサートなど);COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブなど);ステロイド(例えば、プレドニゾン、デキサメタゾンなど);非ステロイド性抗炎症剤(例えば、インドメタシン、ケトプロフェン、イブプロフェンなど);抗CD−3抗体(ムロモナブ)、抗CD−4抗体(セデリズマブ)、抗CD45RB抗体、抗ICAM−3、抗IL−2レセプター抗体、抗TNF−α抗体などが挙げられる。
【0071】
本発明の前記一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物を実際の治療に用いる場合、用法に応じ種々の剤型のものが使用される。このような剤型としては例えば、散剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、錠剤、カプセル剤、注射剤、液剤、軟膏剤、坐剤、貼付剤などを挙げることができ、経口または非経口的に投与される。
これらの医薬組成物は、その剤型に応じ製剤学的に公知の手法により、適切な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤などの医薬品添加物と適宜混合または希釈・溶解することにより調剤することができる。
【0072】
本発明の医薬組成物を実際の治療に用いる場合、その有効成分である前記一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩の投与量は患者の年齢、性別、体重、疾患および治療の程度等により適宜決定されるが、経口投与の場合成人1日当たり約0.01mg〜約1000mgの範囲で、非経口投与の場合は、成人1日当たり約0.001mg〜約100mgの範囲で、一回または数回に分けて適宜投与することができる。
【0073】
本発明の前記一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩と、Srcファミリーキナーゼ阻害剤以外の骨疾患用剤、抗パーキンソン剤、抗てんかん薬、脳浮腫治療薬、急性期脳梗塞治療薬およびT細胞関連疾患治療薬から選択される少なくとも1種とを組み合わせてなる医薬は、これらの有効成分を別々にまたは同時に、薬理学的に許容される賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤などと混合し、医薬組成物として経口または非経口的に投与することができる。このとき有効成分を別々に製剤化した場合、別々に製剤化したものを使用時に希釈剤などを用いて混合して投与することができるが、別々に製剤化したものを、別々に、同時に、または時間差をおいて同一対象に投与してもよい。
【0074】
本発明の前記一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩と、Srcファミリーキナーゼ阻害剤以外の骨疾患用剤、抗パーキンソン剤、抗てんかん薬、脳浮腫治療薬、急性期脳梗塞治療薬およびT細胞関連疾患治療薬から選択される少なくとも1種とを組み合わせてなる医薬において、薬剤の配合比は、患者の年齢、性別、および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせなどにより、適宜選択することができる。
【0075】
【発明の実施の形態】
本発明の内容を以下の参考例、実施例および試験例でさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0076】
【実施例】
参考例1−1
2−シアノ−3−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−3−メチルスルファニルアクリロニトリル
3,3−ビス(メチルスルファニル)−2−シアノアクリロニトリル (10.56g)と3,5−ジメトキシアニリン(9.55g)のエタノール(100mL)溶液を、一晩加熱還流した。室温まで冷却後、析出物を濾取して、表題化合物(13.97g)を得た。
3,5−ジメトキシアニリンの代わりに対応するアミンを用い、参考例1−1と同様にして、参考例1−2〜参考例1−15を合成した。これらを表1に示した。
【0077】
【表1】
【0078】
参考例2−1
5−アミノ−3−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−1H−ピラゾール−4−カルボニトリル(方法A)
参考例1−1(10.0g)とヒドラジン一水和物(2.10mL)のN,N−ジメチルホルムアミド(30mL)溶液を、100℃にて2時間撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物に水を加え、析出物を濾取して、表題化合物(9.53g)を得た。
参考例1−1の代わりに参考例1−2〜1−14を用い、参考例2−1と同様にして、参考例2−2〜参考例2−14を合成した。これらを表2に示した。
【0079】
5−アミノ−3−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−1H−ピラゾール−4−カルボニトリル(方法B)
水酸化ナトリウム(1.3g)のN,N−ジメチルホルムアミド(30mL)懸濁液に、マロノニトリル(1.7g)及び3,5−ジメトキシフェニルイソチオシアネート(5.0g)を加え、室温下一晩撹拌した。反応混合物にヨウ化メチル(2.4mL)を加え、室温にて一晩撹拌した。過剰なヨウ化メチルを減圧下留去後、ヒドラジン一水和物(1.5mL)を加え、100℃にて一晩撹拌した。反応混合物に水(30mL)を加え、室温にて一晩撹拌した。析出物を濾取し、表題化合物(4.37g)を得た。
【0080】
【表2】
【0081】
参考例3−1
2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−メチル−7−オキソ−4,7−ジヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル
参考例2−1(1.3g)の酢酸(10mL)溶液に、3−オキソブタン酸エチル(720mg)を加え、120℃にて一晩撹拌した。反応混合物に水(20mL)を加え、析出物を濾取して、表題化合物(1.19g)を得た。
参考例3−1と同様にして、参考例3−2〜参考例3−29を合成した。これらを表3に示した。
【0082】
【表3】
【0083】
参考例3−30
2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−ジメチルアミノメチル−7−オキソ−4,7−ジヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル
参考例3−7(199.3mg)のメタノール(3.7mL)懸濁液に、2mol/L ジメチルアミン−メタノール溶液(0.61mL)を加え、120℃で1.5時間撹拌した。室温に冷却後、反応混合物を減圧下濃縮し、表題化合物(206.5mg)を得た。これを表3に示した。
【0084】
参考例4−1
7−クロロ−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル
参考例3−1(163mg)のN,N−ジメチルアニリン(1mL)懸濁液に、オキシ塩化リン(1mL)を加えて60℃にて2時間撹拌した。反応混合物に水を加え、析出物を濾取して、表題化合物(172mg)を得た。
参考例4−1と同様にして、参考例4−3〜参考例4−29を合成した。これらを表4に示した。
【0085】
参考例4−2
1−(3−シアノ−5−イソプロピル−2−フェニルアミノピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル)−2,6−ジメチルピリジニウムクロリド
参考例3−2(445mg)と2,6−ジメチルピリジン(2.89mL)の懸濁液にオキシ塩化リン(2.97mL)を加え、60℃にて4時間撹拌した。室温に冷却後、反応液を氷水(30g)に添加し、室温下撹拌した。析出物を濾取し、水で洗浄後、減圧乾燥して、表題化合物(905mg)を得た。
【0086】
参考例4−30
7−クロロ−5−メチル−2−p−トルイルアミノピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル
参考例2−11(30mg)の酢酸(0.5mL)溶液に、3−オキソブタン酸エチル(20μL)を加え、還流下一晩撹拌した。析出物を濾取して、2−(4−メチルフェニルアミノ)−5−メチル−7−オキソ−4,7−ジヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル(34mg)を得た。
この2−(4−メチルフェニルアミノ)−5−メチル−7−オキソ−4,7−ジヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル(33mg)とN,N−ジメチルアニリン(0.5mL)の懸濁液にオキシ塩化リン(220μL)を加え、60℃にて2時間撹拌した。反応液を氷水に添加後、析出物を濾取し、表題化合物(27mg)を得た。
参考例4−30と同様にして、参考例4−31〜参考例4−33を合成した。これらを表4に示した。
【0087】
参考例4−34
2−ベンジルアミノ−7−クロロ−5−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル
参考例1−15(229mg)とヒドラジン一水和物(0.08mL)のN,N−ジメチルホルムアミド(1.00mL)溶液を、100℃にて2時間撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物に水を加え、析出物を濾取して、5−アミノ−3−ベンジルアミノ−1H−ピラゾール−4−カルボニトリル(78.4mg)を得た。
この5−アミノ−3−ベンジルアミノ−1H−ピラゾール−4−カルボニトリル(30mg)の酢酸(0.5mL)溶液に、3−オキソブタン酸エチル(0.02mL)を加え、還流下一晩撹拌した。析出物を濾取して、3−ベンジルアミノ−5−メチル−7−オキソ−4,7−ジヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル(20mg)を得た。
この3−ベンジルアミノ−5−メチル−7−オキソ−4,7−ジヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル(20mg)とN,N−ジメチルアニリン(0.25mL)の懸濁液にオキシ塩化リン(0.14mL)を加え、60℃にて2時間撹拌した。反応液を氷水に添加後、析出物を濾取し、表題化合物(12mg)を得た。これを表4に示した。
【0088】
【表4】
【0089】
参考例5−1
(R)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−5−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル
参考例4−1 (35mg)をN,N−ジメチルホルムアミド(0.3mL)に懸濁し、D−プロリノール(12mg)とジイソプロピルエチルアミン(20μL)を加え、60℃にて30分撹拌し、更に室温にて一晩撹拌した。反応混合物に水を加え、析出物を濾取し、粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:塩化メチレン/メタノール=10/1)にて精製し、表題化合物(24mg)を得た。
参考例5−1と同様にして、参考例5−2〜参考例5−102及び参考例5−104〜参考例5−107を合成した。これらを表5に示した。
【0090】
【表5】
【0091】
参考例5−103
{2−[3−シアノ−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−(2−ヒドロキシエチル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イルアミノ]−1,1−ジメチルエチル}カルバミン酸tert−ブチル
参考例5−66 (97mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(1.0mL)溶液に、二炭酸ジ−tert−ブチル(49mg)を加え、室温下2日間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出物を10%食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去して粗生成物を得た。この粗生成物をアミノプロピルシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル)にて精製し、[7−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−メチルプロピルアミノ)−3−シアノ−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−5−イル]酢酸メチル(90mg)を得た。
この[7−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−メチルプロピルアミノ)−3−シアノ−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−5−イル]酢酸メチル(85mg)のテトラヒドロフラン(1mL)溶液に、テトラヒドロホウ酸リチウム(13mg)を加え、50℃で3時間撹拌し、更に室温下2日間撹拌した。反応混合物に水及び10%クエン酸を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出物を10%食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去して表題化合物(79mg)を得た。これを表5に示した。
【0092】
参考例5−108
2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−メチル−7−フェニルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル
参考例2−1(130mg)の酢酸(1mL)溶液に、ベンゾイルアセトン(82mg)を加え、120℃で一晩撹拌した。反応混合物に水(2mL)を加え、析出物を濾取して、表題化合物(101mg)を得た。
ベンゾイルアセトンの代わりに5,5−ジメチルヘキサン−2,4−ジオンを用い、参考例5−108と同様にして、参考例5−109を合成した。これらを表5に示した。
【0093】
参考例6−1
2−シアノ−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−3−メチルスルファニルアクリル酸エチル
2−シアノ−3,3−ビス(メチルスルファニル)アクリル酸エチル (5.0g)と3,5−ジメトキシアニリン(3.52g)のエタノール(100mL)溶液を、一晩加熱還流した。室温まで冷却後、析出物を濾取して、表題化合物(5.19g)を得た。
1H−NMR(CDCl3)δ ppm:1.35 (3H, t, J=6.9Hz), 2.31(3H, s), 3.79(6H, s), 4.27(2H, q, J=6.9Hz), 6.38(1H, t, J=2.2Hz), 6.46(2H, d, J=2.2Hz), 11.42 (1H, brs)
【0094】
参考例6−2
5−アミノ−3−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル
参考例6−1(4.97g)とヒドラジン一水和物(897μL)のN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)懸濁液を、100℃にて2時間撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物に水を加え、析出物を濾取して、表題化合物(4.27g)を得た。
1H−NMR(DMSO−d6)δ ppm:1.30(3H, t, J=6.9Hz), 3.70(6H, s), 4.23(2H, q, J=6.9Hz), 5.95−6.05(2H, m), 6.75−6.80(2H, m), 8.02(1H, brs)
【0095】
参考例6−3
2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−オキソ−5−トリフルオロメチル−4,7−ジヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボン酸エチル
参考例6−2(250mg)の酢酸(1mL)溶液に、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸メチル(116μL)を加え、120℃にて一晩撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出物を10%−食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去して、表題化合物(298mg)を得た。
MS (ESI, m/z): 427 (M+H)+
【0096】
参考例6−4
7−クロロ−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−トリフルオロメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボン酸エチル
参考例6−3(276mg)のN,N−ジメチルアニリン(1.23mL)懸濁液に、オキシ塩化リン(1.2mL)を加えて60℃にて2時間撹拌した。反応混合物に水を加え、析出物を濾取して、表題化合物(226mg)を得た。
1H−NMR(DMSO−d6)δ ppm:1.37(3H, t, J=7.3Hz), 3.78(6H, s), 4.41(2H, q, J=7.3Hz), 6.21(1H, t, J=2.2Hz), 7.11(2H, d, J=2.2Hz), 8.07(1H, s), 9.11(1H, s)
【0097】
参考例6−5
7−(2−アミノ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−トリフルオロメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボン酸エチル
参考例6−4(102mg)の1−メチル−2−ピロリドン(1.0mL)溶液に、2−メチルプロパン−1,2−ジアミン(72μL)を加え、室温下終夜撹拌した。反応混合物に水(3mL)を加え、析出物を濾取し、表題化合物(94mg)を得た。
同様にして参考例6−6を合成した。これらを表6に示した。
【0098】
参考例6−7
7−(2−アミノ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−トリフルオロメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボン酸
参考例6−5(52.3mg)のエタノール(0.5mL)懸濁液に、5mol/L水酸化ナトリウム(42μL)を加え、50℃で4時間撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物に2mol/L 塩酸を加え、析出物を濾取し、表題化合物(35mg)を得た。
同様にして参考例6−8を合成した。これらを表6に示した。
【0099】
【表6】
【0100】
実施例1
(R)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−5−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物1)
参考例5−1(24mg)のジメチルスルホキシド(1mL)及びエタノール(1mL)懸濁液に、5.0mol/L水酸化ナトリウム水溶液(106μL)、30%過酸化水素水(60μL)を加え、室温下1時間撹拌した。更に30%過酸化水素水(60μL)を加え、50℃で一晩撹拌した。室温下冷却後、1.0mol/L塩酸(530μL)加え、生じた沈殿物を濾取、減圧乾燥して表題化合物(17mg)を得た。
参考例5−1の代わりに参考例5−2〜参考例5−107を用い、実施例1と同様にして、化合物2〜化合物47、化合物49及び化合物51〜化合物109を合成した。これらを表7に示した。
【0101】
【表7】
【0102】
実施例2
(R)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピルアミノ)−5−トリフルオロメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物48)
参考例6−8(65mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(0.5mL)溶液に、二炭酸ジ−tert−ブチル(88.1mg)、炭酸アンモニウム(31.9mg)及びピリジン(33μL)を加え、室温下終夜撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水及び10%食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残渣をアミノプロピルシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル)にて精製し、表題化合物(61mg)を得た。これを表7に示した。
【0103】
実施例3
{2−[3−カルバモイル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−トリフルオロメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イルアミノ]−1,1−ジメチルエチル}カルバミン酸tert−ブチル(化合物50)
参考例6−7(26mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(0.5mL)溶液に、二炭酸ジ−tert−ブチル(36.3mg)、炭酸アンモニウム(13.2mg)、及びピリジン(14μL)を加え、室温下終夜撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水及び10%食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残渣を分取用アミノプロピルシリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/1)にて精製し、表題化合物(7.4mg)を得た。これを表7に示した。
【0104】
実施例4
7−(2−アミノエチルアミノ)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド塩酸塩(化合物110)
化合物49(0.020g)を飽和塩化水素―エタノール溶液(1mL)に溶解し、室温で2時間撹拌した。反応液を濃縮して、表題化合物(0.016g)を合成した。
化合物49の代わりに化合物50〜化合物56、化合物58、61、67及び73を用い、実施例4と同様にして、化合物111〜化合物121を合成した。これらを表8に示した。
【0105】
【表8】
【0106】
実施例5
(R)−リン酸−モノ−{2−[3−カルバモイル−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イルアミノ]}−3−メチルブチル(化合物122)
化合物30 (49mg) のテトラヒドロフラン (0.5mL) 溶液に、1H−テトラゾール (15mg) 及びジベンジル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト(56mg) を加え、室温下20分間撹拌した。−40℃に冷却後、m−クロロ過安息香酸 (28mg) を加え、同条件下30分間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残渣を分取用アミノプロピルシリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/1)にて精製し、(R)−リン酸−ジベンジル−2−[3−カルバモイル−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イルアミノ]−3−メチルブチル(38mg)を得た。
この(R)−リン酸−ジベンジル−2−[3−カルバモイル−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イルアミノ]−3−メチルブチル(29mg) 及び10%パラジウムカーボン粉末(10mg)の酢酸(1mL)懸濁液を水素雰囲気下、室温にて2時間撹拌した。セライトを用いてパラジウムカーボン粉末をろ去後、ろ液を減圧下濃縮し、表題化合物(22mg)を得た。
1H−NMR(DMSO−d6)δ ppm:0.85−1.10(10H, m), 2.00−2.15(2H,m), 3.77(6H, s), 3.80−3.90(1H, m), 3.95−4.05(2H, m), 6.06(1H, t, J=2.2Hz), 6.49(1H, s), 6.90(2H, d, J=2.2Hz), 6.98(1H, brd, J=9.5Hz), 7.32(1H, m), 7.44(1H, m), 9.58(1H, s)
【0107】
実施例6
2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−メチル−7−フェニルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物123)
参考例5−108(40mg)のジメチルスルホキシド(0.5mL)及びエタノール(0.5mL)懸濁液に、5.0mol/L水酸化ナトリウム水溶液(320μL)、30%過酸化水素水(180μL)を加え、室温下1時間撹拌した。更に30%過酸化水素水(180μL)を加え、50℃で一晩撹拌した。室温下冷却後、1.0mol/L塩酸(1mL)加え、生じた沈殿物を濾取、減圧乾燥して表題化合物(14mg)を得た。
MS(ESI, m/z): 404(M+H)+
参考例5−108の代わりに参考例5−109を用い、実施例6と同様にして以下の化合物を合成した。
7―tert−ブチル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド(化合物124)
MS(ESI, m/z): 384(M+H)+
【0108】
試験例1
c−src チロシンキナーゼ阻害作用試験
1)c−srcタンパク質のクローニング、発現、および精製
ヒトc−srcのキナーゼドメイン(SER251−PHE523)は、ヒト胎盤cDNAから、PCR(polymerase chain reaction)法を用いて、pET−19b発現ベクター(Novagen社)のNdeおよびXhoI部位へクローニングした。更に、このヒトc−srcキナーゼドメインを、その5’末端にpET−19bのHisタグの遺伝子を結合した形で、BAC−TO−BAC(登録商標)バキュロウイルス発現システム(GIBCO BRL社)に含まれるベクターpFASTBAC1に組み込んだ。このプラスミドDNAをバキュロウイルス発現システムに含まれるコンピテントセルDH10BACに形質導入し、組み換えウイルスのDNAを作製した。さらに組み換えウイルスのDNAをSf−9細胞(Invitrogen社)にトランスフェクションすることにより組み換えウイルス(培養上清)を得た。
この組み換えウイルスを感染させたHigh Five(登録商標)昆虫細胞(Invitrogen社)を回収し、超音波処理によって細胞を溶解した。可溶性画分を遠心分離した後、上清をTALON(登録商標)メタルアフィニティーレジン(CLONTECH社)と混合し、レジンにc−srcキナーゼドメインのHisタグ融合タンパク質を吸着させた。レジンを数回洗浄した後、イミダゾールを含むバッファーでc−srcキナーゼドメインのHisタグ融合タンパク質を溶出した。
【0109】
2)c−srcチロシンキナーゼ阻害アッセイ
被験化合物のc−src阻害活性を、分光光度計を用いた共役酵素アッセイで測定した。10nmol/L c−srcキナーゼドメインタンパク質とジメチルスルホキシドで溶解した様々な濃度の被験化合物を0.1mol/L HEPES緩衝液(pH7.6、20mmol/L MgCl2、2.5mmol/Lホスホエノールピルベート、0.2mmol/L NADH、150μg/mLピルベートキナーゼ、50μg/mLラクテートデヒドロゲナーゼ、0.5mmol/L c−srcペプチド)中で30℃、10分間静置した。c−srcペプチド(アミノ酸配列: AEEEIYGEFEAKKKK)は、c−srcチロシンキナーゼ触媒反応のリン酸基受容体基質として使用した。酵素反応は、50μmol/LのATP添加で開始し、30℃に設定した分光光度計で単位時間あたりの340nm の吸収減少量(速度V(mOD/min))を測定した。阻害剤濃度に対する速度値V(mOD/min)を酵素速度解析ソフトウェアーPlate Ki(Bio Kin,Ltd.)に入力し、Ki値を算出した。これらの結果を表9に示した。
【0110】
【表9】
【0111】
試験例2
Lck チロシンキナーゼ阻害作用試験
3)Lckタンパク質のクローニング、発現、および精製
ヒトLckのキナーゼドメイン(Gln225−Pro509)は、ヒト脾臓Marathon−Ready(登録商標)cDNA(CLONTECH社)から、PCR法を用いて、pET−19b発現ベクター(Novagen社)のNdeおよびXhoI部位へクローニングした。更に、このヒトLckキナーゼドメインを、その5’末端にpET−19bのHisタグの遺伝子を結合した形で、BAC−TO−BAC(登録商標)バキュロウイルス発現システム(GIBCO BRL社)に含まれるベクターpFASTBAC1に組み込んだ。このプラスミドDNAをバキュロウイルス発現システムに含まれるコンピテントセルDH10BACに形質導入し、組み換えウイルスのDNAを作製した。さらに組み換えウイルスのDNAをSf−9細胞(Invitrogen社)にトランスフェクションすることにより組み換えウイルス(培養上清)を得た。
この組み換えウイルスを感染させたHigh Five(登録商標)昆虫細胞(Invitrogen社)を回収し、超音波処理によって細胞を溶解した。可溶性画分を遠心分離した後、上清をTALON(登録商標)メタルアフィニティーレジン(CLONTECH社)と混合し、レジンにLckキナーゼドメインのHisタグ融合タンパク質を吸着させた。レジンを数回洗浄した後、イミダゾールを含むバッファーでLckキナーゼドメインのHisタグ融合タンパク質を溶出した。
【0112】
4)Lckチロシンキナーゼ阻害アッセイ
被験化合物のLck阻害活性を、分光光度計を用いた共役酵素アッセイで測定した。10nmol/L Lckキナーゼドメインタンパク質とジメチルスルホキシドで溶解した様々な濃度の被験化合物を0.1mol/L HEPES緩衝液(pH7.6、20mmol/L MgCl2、2.5mmol/Lホスホエノールピルベート、0.2mmol/L NADH、150μg/mLピルベートキナーゼ、50μg/mLラクテートデヒドロゲナーゼ、0.5mmol/L c−srcペプチド)中で30℃、10分間静置した。c−srcペプチド(アミノ酸配列: AEEEIYGEFEAKKKK)は、Lckチロシンキナーゼ触媒反応のリン酸基受容体基質として使用した。酵素反応は、50μmol/LのATP添加で開始し、30℃に設定した分光光度計で単位時間あたりの340nm の吸収減少量(速度V(mOD/min))を測定した。阻害剤濃度に対する速度値V(mOD/min)を酵素速度解析ソフトウェアーPlate Ki(Bio Kin,Ltd.)に入力し、Ki値を算出した。これらの結果を表10に示した。
【0113】
【表10】
【0114】
【発明の効果】
本発明の一般式(I)で表されるピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体は、Srcファミリーキナーゼ、特にSrcおよび/またはLckキナーゼに対して強力な阻害作用を有する。従って本発明の化合物は、Srcファミリーキナーゼ関連疾患の治療または予防薬として有用であり、特に癌、骨粗しょう症、パジェット病、高カルシウム血症、変形性関節炎、パーキンソン病、てんかん、脳浮腫、急性期脳梗塞、自己免疫性疾患、移植片対宿主病、臓器移植による拒絶反応などの治療または予防剤として好適である。
Claims (17)
- 一般式(I):
R1は、以下のa)〜c):
a)非置換もしくはX1、X2およびX3からなる群から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基、
b)ヘテロアリール基、または
c)アラルキル基であり、
ここで、X1、X2およびX3は、それぞれ独立して、以下のa)〜g):
a)ハロゲン原子、
b)低級アルキル基、
c)ハロ低級アルキル基、
d)低級アルコキシ基、
e)ジ低級アルキルアミノ基、
f)環状アミノ基、または
g)以下からなる群:ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルコキシ基であり;
R2は、以下のa)〜g):
a)水素原子、
b)低級アルキル基、
c)ハロ低級アルキル基、
d)シクロアルキル基、
e)以下からなる群:水酸基、低級アルコキシ基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基、ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルキル基であり、
f)非置換もしくは以下からなる群:ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロ低級アルキル基および低級アルコキシ基から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基、または
g)ヘテロアリール基であり;
R3は、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはアラルキル基であり;
Aは、以下のa)〜d):
a)水素原子、
b)低級アルキル、
c)R4、または
d)NR5R6であり;
R4は、非置換もしくは以下からなる群:ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基および水酸基から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基であり、
R5は、水素原子、低級アルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルキル低級アルキル基であり;
R6は、以下のa)〜g):
a)水素原子、
b)低級アルキル基、
c)シクロアルキル基、
d)シクロアルキル低級アルキル基、
e)R4、
f)アラルキル基、
g)以下の式:
R7は、水素原子または低級アルキル基であり;
R8は、水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、スルファニル低級アルキル基、低級アルキルスルファニル低級アルキル基、アラルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基またはカルバモイル基であり;
R9は、水酸基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、低級アルコキシカルボニルアミノ基、低級アルコキシカルボニル低級アルキルアミノ基、カルバモイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基またはホスホノオキシ基であり;
R10は、水酸基またはアミノ基であり;
R11は、水酸基、ヒドロキシ低級アルキル基またはアミノ基であり;
aは、0、1または2であり;
A1は、結合またはC1−4アルキレン基であり;
A2は、結合またはC1−6アルキレン基であり;
A3は、C1−6アルキレン基であり;
A4は、結合またはC1−6アルキレン基であり;
A5は、C1−6アルキレン基である〕
で表される化合物またはそのプロドラッグ、あるいはそれらの薬理学的に許容される塩。 - R1が、非置換もしくはX1、X2およびX3からなる群から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基であり、
ここで、X1、X2およびX3が、それぞれ独立して、以下のa)〜f):
a)ハロゲン原子、
b)低級アルキル基、
c)低級アルコキシ基、
d)ジ低級アルキルアミノ基、
e)環状アミノ基、または
f)以下からなる群:ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルコキシ基であり、
R3が、水素原子であり;
Aが、NR5R6であり;
R5が、水素原子、低級アルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルキル低級アルキル基であり;
R6が、以下のa)〜g):
a)水素原子、
b)低級アルキル基、
c)シクロアルキル基、
d)シクロアルキル低級アルキル基、
e)非置換もしくは以下からなる群:ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基および水酸基から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基、
f)アラルキル基、
g)以下の式:
R7が、水素原子または低級アルキル基であり;
R8が、水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、スルファニル低級アルキル基、低級アルキルスルファニル低級アルキル基、アラルキル基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基またはカルバモイル基であり;
R9が、水酸基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、カルバモイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基またはホスホノオキシ基であり;
R10が、水酸基またはアミノ基であり;
R11が、水酸基、ヒドロキシ低級アルキル基またはアミノ基であり;
aが、0、1または2であり;
A1が、結合またはC1−4アルキレン基であり;
A2が、結合またはC1−6アルキレン基であり;
A3が、C1−6アルキレン基であり;
A4が、結合またはC1−6アルキレン基であり;
A5が、C1−6アルキレン基である、請求項1に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩。 - R1が、非置換もしくはX1、X2およびX3からなる群から独立して選択される1〜3個の基で置換されるフェニル基であり、
ここで、X1、X2およびX3が、それぞれ独立して、以下のa)またはb):
a)低級アルコキシ基、または
b)以下からなる群:ジ低級アルキルアミノ基および環状アミノ基から選択される基で置換される低級アルコキシ基である、請求項3または4に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩。 - 以下の化合物群:
(R)−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド;
(S)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルブチルアミノ)−5−イソプロピルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド;
(R)−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド;
(S)−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルブチルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド;
(S)−5−シクロプロピル−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピルアミノ)−2−(4−モルホリン−4−イルフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド;
(R)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−(2−フルオロフェニル)−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド;
(S)−5−シクロプロピル−7−(1−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピルアミノ)−2−[3−メトキシ−5−(2−モルホリン−4−イルエトキシ)フェニルアミノ]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド;
7−(2−アミノ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド;
7−(2−アミノ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)−5−エチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド;
7−(2−アミノ−2−メチルプロピルアミノ)−5−(2−クロロフェニル)−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボキサミド;および
(R)−リン酸−モノ−{2−[3−カルバモイル−5−シクロプロピル−2−(3,5−ジメトキシフェニルアミノ)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イルアミノ]}−3−メチルブチル、
またはその薬理学的に許容される塩から選択される、請求項1に記載の化合物。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、プロテインチロシンキナーゼ関連疾患の治療または予防剤。
- 前記プロテインチロシンキナーゼ関連疾患が、癌である、請求項8に記載の治療または予防剤。
- 前記プロテインチロシンキナーゼ関連疾患が、骨粗しょう症、パジェット病、高カルシウム血症または変形性関節炎である、請求項8に記載の治療または予防剤。
- 前記プロテインチロシンキナーゼ関連疾患が、パーキンソン病、てんかん、脳浮腫または急性期脳梗塞である、請求項8に記載の治療または予防剤。
- 前記プロテインチロシンキナーゼ関連疾患が、T細胞関連疾患である、請求項8に記載の治療または予防剤。
- 前記T細胞関連疾患が、自己免疫性疾患、移植片対宿主病、臓器移植による拒絶反応である、請求項12に記載の治療または予防剤。
- 前記プロテインチロシンキナーゼが、Srcファミリーキナーゼである、請求項8に記載の治療または予防剤。
- 前記プロテインチロシンキナーゼが、Srcである、請求項8に記載の治療または予防剤。
- 前記プロテインチロシンキナーゼが、Lckである、請求項8に記載の治療または予防剤。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩と、Srcファミリーキナーゼ阻害剤以外の骨疾患用剤、抗パーキンソン剤、抗てんかん薬、急性期脳梗塞治療薬およびT細胞関連疾患治療薬から選択される少なくとも1種とを組み合わせてなる医薬。
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