JP2005008452A - 光ファイバ母材の焼結装置及び焼結方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の光ファイバ母材の焼結装置は、光ファイバ用多孔質母材2を焼結し、透明ガラス化して光ファイバ母材を製造する装置であって、焼結中、該母材2の伸縮量を検出する機能を備えており、母材2の伸縮量を検出する機能は、該母材2の下端を撮影するカメラ20と、撮影した画像を解析して母材2の下端の位置を求め、該下端の位置と母材2の引下げ距離から伸縮量を求める演算装置22からなっている。また、母材2の下端を撮影するカメラ20は、母材2の移動に同期して移動する移動手段24を有している。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信用ファイバの母材である石英ガラス棒の製造に係り、特には、光ファイバ母材の焼結装置及び焼結方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス微粒子を堆積して形成される光ファイバ用多孔質母材は、焼結・透明ガラス化されて光ファイバ母材とされる。
多孔質母材を焼結・透明ガラス化する方法の一例を、図1を参照して説明する。
図1において、支持部1に多孔質母材2が昇降・回転自在に取り付けられ、多孔質母材2が焼結炉3内を矢印の方向に移動することにより、多孔質母材2は、その端部4側から端部5側に向けて順次、加熱部6で1400〜1600℃に加熱・昇温され、透明ガラス化されて光ファイバ母材とされる。
【0003】
このようにして製造される光ファイバ母材の外径には変動があり、外径調整加工が必要であるが、近年、光ファイバ母材の大型化にともない、ガラス旋盤等による外径調整が困難になっている。
【0004】
光通信用ファイバは、光ファイバ母材を加熱・延伸後、線引きして製造されるが、光ファイバ母材の外径に変動があると、線引き装置内の気流が変化して、線引きして得られる光ファイバの寸法精度に影響を与え、光ファイバの特性が変動する。このため焼結された光ファイバ母材は、その寸法精度を上げるため、線引きに供する前に、バーナーや電気炉を用いて加熱・延伸しながら外径調整加工が行われる。
【0005】
通常、図1に示すような方法で焼結を行うと、焼結開始側の端部4では、収縮によって焼結後の外径は相対的に太くなる。そして、下方から順に焼結が進むにつれ、加熱部より下側の重量が増すことになり、加熱部に掛かる重量が増すため、伸長され、徐々に外径が細くなる。終了側の端部5付近では、相対的に加熱時間が短くなるため、伸長量は減少する。
その結果、図2に示すように、焼結後の光ファイバ母材には、外径が太い部分(a)と細い部分(b)が形成される。
【0006】
このため特許文献1は、焼結した光ファイバ母材をバーナーで加熱して、所定の径に延伸・縮径する際、延伸引落とし部付近の2点で外径を測定し、引伸ばし速度を調整して、線引きに供する光ファイバ母材の寸法精度を上げることを記載しているが、この外径調整加工を行うとコスト高になるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2は、焼結中、多孔質母材の温度を測定し、これに基づいてヒーター温度や引下げ速度を変化させているが、この方法は、結局は多孔質母材の温度を制御するものであるが、外径や粘度が変化すると、温度制御のみでは伸縮量を一定にすることはできない。
【0008】
また、延伸する光ファイバ母材の径が大きくなると、加熱手段にバーナー火炎を採用した場合、光ファイバ母材の内部まで軟化させるのが困難である。
他方、加熱手段に電気炉を用いる場合は、例えば、特許文献3は、光ファイバ母材の両端をチャックで把持し、チャックの一方を加熱炉に対して相対的に近付け、他方を相対的に遠ざけて延伸しているが、光ファイバ母材の大型化とともに設備が大掛かりになり、コスト高になるという問題があった。
【0009】
【特許文献1】特開昭56−9231号公報
【特許文献2】特開平11−322356号公報
【特許文献3】特開昭62−167236号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記いずれの焼結方法にも精度的又はコスト的な問題がある。この対策として、そのほかに平均径の変化量や、焼結炉の経時変化で変化する伸縮量を予め求めておき、対応する方法も考えられるが、煩雑であり、より正確に光ファイバ母材の外径を一定にするためには、さらなる改善が必要である。
【0011】
本発明の課題は、外径の大きな多孔質母材であっても、焼結後、長手方向に外径が均一で、従来必要とされた外径調整加工を不要とし、そのまま線引きに使用でき製造コストを下げることのできる、光ファイバ母材の焼結装置及び焼結方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の光ファイバ母材の焼結装置は、光ファイバ用多孔質母材を焼結し、透明ガラス化して光ファイバ母材を製造する装置であって、焼結中、該母材の伸縮量を検出する機能を備えており、母材の伸縮量を検出する機能は、該母材の下端を撮影するカメラと、撮影した画像を解析して母材の下端の位置を求め、該下端の位置と母材の引下げ距離から伸縮量を求める演算装置からなっている。また、母材の下端を撮影するカメラは、母材の移動に同期して移動する移動手段を有している。
【0013】
本発明の光ファイバ母材の焼結方法は、コアロッドの表面にスートを堆積してなる光ファイバ用多孔質母材を焼結し、透明ガラス化して光ファイバ母材を製造する方法において、焼結中、該母材の長手方向への伸縮量を測定してその変化量を求め、該変化量が予め設定した変化量になるように調整することを特徴としている。なお、多孔質母材の形成に使用されたコアロッドは、予め焼結時における光ファイバ用多孔質母材の外径の伸縮量を長手方向にわたって測定し、各部の伸縮量と基準位置での伸縮量との比を求め、これを逆数倍した外径に、長手方向に外径を変化させたものである。また、変化量の調整は、焼結炉のヒーターの温度及び/又は母材の送り速度を調整することにより行われる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、先に、焼結時における多孔質母材の伸縮量を加味して、すなわち、焼結時における光ファイバ用多孔質母材の外径の伸縮量を長手方向にわたって測定し、各部の伸縮量と基準位置での伸縮量との比を求め、これを逆数倍した外径に予め長手方向にわたって調整したコアロッドを使用し、その上に外付け法でスートの堆積厚とコアロッドの外径との比が一定になるようにスートを堆積させて多孔質母材を製造し、焼結することで、光ファイバ母材の外径を均一化できることを見出している。
【0015】
光ファイバ母材の伸縮量は製造ロットによって変動があるため、本発明においては、予め外径を長手方向に変化させたコアロッドにスートを堆積させた多孔質母材を使用し、焼結中、母材の長手方向への伸縮量を測定してその変化量を求め、この変化量が予め設定した変化量になるように調整することで、より外径の均一な光ファイバ母材を得るものであり、外径調整加工することなく、線引きに供することができる。
【0016】
以下、本発明の光ファイバ母材の焼結装置及び焼結方法について、図を用いてさらに詳細に説明する。
図3は、外付けCVD法(OVD法)による光ファイバ用多孔質母材の製造方法を説明する図である。
多孔質母材2のコアロッド7は、コア及び一部のクラッドからなり、図示していないコアロッド支持部材により軸回りに回転自在に支持されている。このコアロッド7の下方には、左右に移動自在なバーナー8が設置されている。
【0017】
バーナー8には、通常、酸水素バーナーが使用され、光ファイバ用原料、例えば、SiCl4等の蒸気と反応ガス(水素ガス及び酸素ガス)とをコアロッド7に吹き付け、酸水素火炎中での加水分解により合成されるガラス微粒子(スート)を、コアロッド7上に堆積させることで、多孔質母材2が形成される。このコアロッド両端の非スート堆積部には、石英等の部材が接続され、把持部として用いられることが多い。
【0018】
このようにして作製された多孔質母材2は、例えば、図1に示す焼結炉のような、母材の長手方向に沿って加熱を行う焼結炉3を用いて、焼結・透明ガラス化が行われる。
この焼結前後での外径の伸縮量の変化を長手方向に測定し、さらに、基準点(図4に示す相対位置0の位置)の外径の伸縮量を1として、各部の伸縮量と基準点の伸縮量との比、すなわち、相対外径を長手方向にわたって求め、これを図4に示した。
【0019】
本発明においては、上記相対外径を逆数倍した外径に、長手方向にわたって調整してなるコアロッドを用いて多孔質母材を形成し、該母材の焼結中、長手方向への伸縮量を測定してその変化量を求め、この変化量が予め設定した変化量になるように、ヒーターの温度及び/又は引下げ速度を変更することにより、光ファイバ母材の外径を一定に制御するものである。
【0020】
次ぎに、本発明による製造装置の一例を図5に示す。
支持部1に昇降・回転自在に取り付けられた多孔質母材2は、焼結炉3内を矢印の方向に移動することにより、その端部4側から端部5側に向けて順次、加熱部6で1400〜1600℃に加熱・昇温され、透明ガラス化されて光ファイバ母材とされる。
【0021】
焼結中、多孔質母材の伸縮は、その下端の様子が炉心管11の外部から観察可能に設けられたカメラ20によって撮影され、その画像は演算装置22で解析され、多孔質母材の下端の位置が求められる。演算装置22では、図示を省略したリニヤスケールや引下げ用モーターの回転量を積算して求めた多孔質母材2の引下げ距離と、画像処理して求めた下端の位置及びカメラ移動機構24によるカメラ20の移動距離とから、演算処理により、各引下げ距離毎に多孔質母材の伸縮量が求められ、さらにその変化量が求められる。
なお、上記装置は、カメラ20で撮影した画像の画像処理と、多孔質母材の伸縮量を求める演算処理とを演算装置22で行っているが、これを画像処理装置と演算処理装置とに分けて行ってもよい。
【0022】
この装置は、このようにして求めた伸縮量の変化量と予め設定した変化量との差を求め、これに基づいてヒーター温度及び/又は引下げ用モーターの出力を制御するように構成されている。
さらに、このカメラに多孔質母材の引下げ速度と同期させて移動する機構を持たせると、母材の伸縮量のみを検出することができ、位置の変化が直接伸縮量として測定される。また、この方法は、伸縮量が多孔質母材の移動距離に比べ1/10以下と小さく、画像を拡大して観察できるため、精度をさらに向上させることができる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されず、様々な態様が可能である。
【0024】
(実施例1)
先ず、多孔質母材の焼結前後での外径の伸縮量の変化を長手方向に測定して得た相対外径(図4参照)を逆数倍した外径に、長手方向にわたって調整してなるコアロッドを用いて、外付けCVD法により多孔質母材を作製した。
次ぎに、図5に示すような焼結炉を使用して、多孔質母材2をその端部4側から端部5側にかけて、順次1400〜1600℃程度に加熱して焼結した。
【0025】
その間、多孔質母材2の引下げ距離と多孔質母材2の下端を撮影するカメラ20の移動距離とから多孔質母材2の伸縮量の変化量を演算装置22で求め、求めた伸縮量の変化量と予め設定した変化量との差が大きく、すなわち伸びが大きい(または縮みが小さい)場合には、ヒーターの温度を下げる(または上げる)ようにフィードバックし、焼結・透明ガラス化して光ファイバ母材を得た。
得られた光ファイバ母材の形状を調べたところ、外径の長手方向への変化量は、50ロット連続して製造した場合でも、最大で1%程度の外径変動であり、格段の効果が得られた。
【0026】
(実施例2)
実施例1と同様な方法で製作した多孔質母材を、図1に示すような焼結炉を用い、端部4側から端部5側にかけて、順次1400〜1600℃程度に加熱して焼結した。その間、多孔質母材2の引下げ距離と多孔質母材2の下端を撮影するカメラ20の移動距離とから多孔質母材2の伸縮量の変化量を演算装置22で求め、求めた伸縮量の変化量と予め設定した変化量との差が大きく、すなわち伸びが大きい(または縮みが小さい)場合には、母材2の引下げ速度が速まる(または遅くなる)ようにフィードバックし、焼結・透明ガラス化して光ファイバ母材を得た。
得られた光ファイバ母材の形状を調べたところ、外径の長手方向への変化量は、50ロット連続して製造した場合でも、最大で1%程度の外径変動であり、実施例1と同様な効果が得られた。
【0027】
なお、母材の伸縮量の変化量と予め設定した変化量との差にもとづいて、実施例1,2では、ヒーターの温度又は母材の引下げ速度を調整するようにフィードバックして焼結したが、ヒーターの温度と引下げ速度の両方を同時に調整してもよい。
【0028】
(比較例1)
外径が長手方向にわたって一様なコアロッドを用いて、外付けCVD法により多孔質母材を作製した。この多孔質母材を、図1に示すような焼結炉を用い、端部4側から端部5側にかけて、1400〜1600℃程度に加熱して焼結・透明ガラス化して光ファイバ母材とした。
焼結後、得られた光ファイバ母材の形状を調べたところ、長手方向に13%程度の外径変動があった。
【0029】
(比較例2)
実施例1と同様にして作製した、すなわち、外径を長手方向に変化させたコアロッドを用いて多孔質母材を作製し、図1に示すような焼結炉を用い、端部4側から端部5側にかけて、1400〜1600℃程度に加熱して焼結・透明ガラス化して光ファイバ母材とした。
焼結後、得られた光ファイバ母材の形状を調べたところ、外径の長手方向への変化量は、2%未満で良好であったが、この条件で50ロット連続して製造したところ、ロット間では最大で4%程度の外径変動を生じる場合があった。
【0030】
【発明の効果】
本発明は、測定した多孔質母材の伸縮量の変化量と設定した変化量との差が小さくなるように、ヒーターの出力及び/又は多孔質母材の引下げ速度を調整することにより、光ファイバ母材の外径を一定にでき、線引き時の条件の変化を少なくできるため、外径や特性の変動の小さい光ファイバを得ることができる。また、焼結後に外径を調整する工程を必要としないので、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】多孔質母材を焼結し透明ガラス化する方法の一例を示す概略断面図である。
【図2】焼結後の光ファイバ母材の外径の変化を示す概略断面図である。
【図3】多孔質母材の製造方法を説明する概略断面図である。
【図4】焼結前後での多孔質母材の外径の伸縮量の変化から求めた、長手方向への相対外径の分布を示すグラフである。
【図5】本発明の焼結装置の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1.……支持部、
2.……多孔質母材、
3.……焼結炉、
4,5.……端部、
6.……加熱部、
7.……コアロッド、
8.……バーナー、
9.……堆積部、
10.……火炎。
11.……炉心管、
20.……カメラ、
22.……演算装置、
24.……カメラ移動機構。
Claims (6)
- 光ファイバ用多孔質母材を焼結し、透明ガラス化して光ファイバ母材を製造する装置であって、焼結中、該母材の伸縮量を検出する機能を備えていることを特徴とする光ファイバ母材の焼結装置。
- 母材の伸縮量を検出する機能が、該母材の下端を撮影するカメラと、撮影した画像を解析して母材の下端の位置を求め、該下端の位置と母材の引下げ距離から伸縮量を求める演算装置からなる請求項1に記載の光ファイバ母材の焼結装置。
- 母材の下端を撮影するカメラが、母材の移動に同期して移動する移動手段を有している請求項1又は2に記載の光ファイバ母材の焼結装置。
- コアロッドの表面にスートを堆積してなる光ファイバ用多孔質母材を焼結し、透明ガラス化して光ファイバ母材を製造する方法において、焼結中、該母材の長手方向への伸縮量を測定してその変化量を求め、該変化量が予め設定した変化量になるように調整することを特徴とする光ファイバ母材の焼結方法。
- 前記コアロッドが、予め焼結時における光ファイバ用多孔質母材の外径の伸縮量を長手方向にわたって測定し、各部の伸縮量と基準位置での伸縮量との比を求め、これを逆数倍した外径に、長手方向に外径を変化させてなる請求項4に記載の光ファイバ母材の焼結方法。
- 焼結炉のヒーターの温度及び/又は母材の送り速度を調整することにより、変化量を調整する請求項4又は5に記載の光ファイバ母材の焼結方法。
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