JP2005007815A - 液体吐出装置及び液体吐出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】白スジによる画質の劣化を防止する。
【解決手段】ヘッドチップ27に設けられた発熱抵抗体の1つ以上を異なるタイミングで駆動させることで、記録紙Pの走行方向と略直交方向に並設したノズル44aより吐出されたインク液滴iのうち1つ以上が、少なくとも基準線Lと一部接触、且つ基準線Lに対して記録紙Pの走行方向又は走行方向と逆方向にずれたインクドット51を形成させることから、記録紙Pの走行方向と略直交する白スジを防止できる。
【選択図】 図14
【解決手段】ヘッドチップ27に設けられた発熱抵抗体の1つ以上を異なるタイミングで駆動させることで、記録紙Pの走行方向と略直交方向に並設したノズル44aより吐出されたインク液滴iのうち1つ以上が、少なくとも基準線Lと一部接触、且つ基準線Lに対して記録紙Pの走行方向又は走行方向と逆方向にずれたインクドット51を形成させることから、記録紙Pの走行方向と略直交する白スジを防止できる。
【選択図】 図14
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液室内の液体を圧力発生素子が発生した圧力で押圧することにより対象物と対向する吐出口より吐出させる液体吐出装置及び液体吐出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体を吐出する装置として、対象物となる記録紙に対してヘッドチップよりインクを吐出させて、画像や文字を記録するプリンタ装置がある。プリンタ装置には、インクジェット方式があり、このインクジェット方式を用いたプリンタ装置は、低ランニングコスト、装置の小型化、印刷画像のカラー化が容易という利点がある。
【0003】
インクジェット方式を用いたプリンタ装置では、例えばイエロー、マゼンダ、シアン、ブラック等のように複数の色のインクがそれぞれ充填されたインクカートリッジからヘッドチップのインク液室等に供給される。そして、このプリンタ装置では、インク液室等に供給されたインクを、インク液室内に配置された発熱抵抗体等で加熱し、発熱抵抗体上のインクに気泡を発生させ、この気泡が割れて消えるときのエネルギーによりインクがヘッドチップに設けられた微小なインク吐出口から吐出されて対象物となる記録紙等に対して画像や文字を印刷される。
【0004】
インクジェット方式のプリンタ装置の中には、インクカートリッジがインクヘッド部に装着され、インクカートリッジが装着されたインクヘッド部が記録紙の幅方向、すなわち記録紙の走行方向と略直交する方向に移動することによって所定の色のインクを記録紙に着弾させるシリアル型のプリンタ装置がある。また、記録紙の用紙幅とほぼ同じ範囲をインクの吐出範囲とした、すなわちライン状にインクを吐出するインク吐出口が設けられたライン型のプリンタ装置がある。
【0005】
シリアル型のプリンタ装置は、インクヘッド部が記録紙の走行方向と略直交する方向に移動するときに記録紙の走行を停止させ、停止している記録紙にインクヘッド部が移動しながらインクを吐出、着弾させ、これを繰り返すことで印刷する。一方、ライン型のプリンタ装置は、インクヘッド部が固定、若しくは印刷村を避けるための僅かな微動できる程度に固定されており、連続的に走行している記録紙にインクヘッド部がライン状にインクを吐出、着弾させることで印刷する。
【0006】
このため、このライン型のプリンタ装置は、シリアル型と異なりインクヘッド部を移動させないものであるから、シリアル型のプリンタ装置に比べて高速印刷を行うことが可能となる。また、ライン型のプリンタ装置は、インクヘッド部を移動させる必要がないことから、各インクカートリッジを大型化することができ、インクカートリッジのインク容量を増やすことができる。このようなライン型のプリンタ装置では、インクヘッド部が移動するものではないため構成の簡素化を図ることができ、各インクカートリッジにインクヘッド部を一体的に設けるようにしている(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−301199号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したライン型のプリンタ装置では、走行している記録紙にインクが着弾するタイミングの精度により画像や文字等の印刷精度が左右されてしまう。具体的に、例えば記録紙の走行速度が速いときは、記録された画像や文字等が記録紙の走行方向に伸びて印刷されてしまい、記録紙の走行速度が遅いときは、記録された画像や文字等が記録紙の走行方向に縮んで印刷されうといった問題が起こる。
【0009】
このような問題を解決するために、ライン型のプリンタ装置では、例えば記録紙を走行させるためのモータ等の制御にサーボモータ等を使用し、記録紙の走行速度にムラが出ないように走行速度を一定にすることで、記録紙にインクが着弾するタイミングを制御している。
【0010】
しかしながら、以上のようなサーボモータ等を用いた場合でも、図21に示すように、画像等の伸びや縮みは解消されるものの記録紙にインクが着弾するタイミングに僅か数ミクロンの誤差があると、記録紙の走行方向、すなわち図21中矢印X方向に色の濃度にムラが生じることがある。具体的には、サーボモータによる記録紙の走行速度の制御が僅か数ミクロン遅れると、この部分の色の濃度が濃くなってしまう。一方、サーボモータによる記録紙の走行速度の制御が僅か数ミクロン速まると、この部分の色の濃度が薄くなり、さらに記録紙の走行速度の制御が数十ミクロン、数百ミクロンのレベルで速まると、記録紙の走行方向と略直交方向に亘ってインクが着弾してない部分、いわゆる白スジが生じてしまう。そして、このような記録紙の走行方向に起きる色の濃度ムラや白スジは、例えば色調の階調が変化しないような印刷を行うときに顕著に現れてしまう。なお、図21中101は、インクが記録紙に着弾したときに形成されるインクドットを示している。
【0011】
このような問題は、例えばシリアル型のプリンタ装置を用いれば解決できる。具体的に、シリアル型のプリンタ装置では、記録紙の走行を停止させて印刷する際に、前回の印刷箇所と今回の印刷箇所との境界を所定の範囲で重なるような、いわゆるオーバーラップ部を設けた印刷を行うことで記録紙の走行方向に起きる色の濃度ムラを防止している。
【0012】
しかしながら、シリアル型のプリンタ装置では、オーバーラップ部を設けていることにより、印刷に係る時間が長くなったり、印刷に使用するインクの量が多くなったりするといった問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、印刷に係る時間を短時間にし、且つ高画質な印刷が得られる優れた液体吐出装置及び液体吐出方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成する本発明に係る液体吐出装置は、対象物を所定の方向に走行させる走行手段と、液体を貯留する複数の液室と、各液室に液体を供給する供給部と、各液室にそれぞれ設けられ、各液室に貯留された液体を押圧する圧力発生素子と、各圧力発生素子により押圧された液体を各液室から液滴の状態で略真下に吐出させる吐出口とを有し、各吐出口が対象物の走行方向と略直交方向に並設された吐出手段と、各圧力発生素子の駆動を制御することで、各吐出口から液滴が吐出されるタイミングを制御する吐出制御手段とを備え、吐出制御手段によって吐出手段における各圧力発生素子のうち1つ以上が異なるタイミングで駆動されることで、各吐出口から略真下に吐出された液滴のうち1つ以上を、対象物の主面における対象物の走行方向と略直交する基準線に対して少なくとも一部が接触すると共に、この基準線に対して対象物の走行方向又は走行方向とは逆方向にずらして、対象物の主面に着弾させることを特徴としている。
【0015】
この液体吐出装置では、吐出制御手段によって吐出手段における各圧力発生素子のうちの1つ以上が異なるタイミングで駆動されることで、対象物の走行方向と略直交方向に並設された各吐出口より略真下に吐出された液滴のうち1つ以上を、対象物の主面における対象物の走行方向と略直交する基準線に対して少なくとも一部が接触すると共に、この基準線に対して対象物の走行方向又は走行方向とは逆方向にずらして、対象物の主面に着弾させる。
【0016】
したがって、この液体吐出装置では、対象物の主面における基準線に対して対象物の走行方向又は走行方向とは逆方向にずれて着弾した液滴が、走行する対象物の走行速度にムラが生じたときに起こる走行方向と略直交方向に沿った白スジを防止する。
【0017】
本発明に係る液体の吐出方法は、液体を貯留する複数の液室と、各液室に液体を供給する供給部と、各液室にそれぞれ設けられ、各液室に貯留された液体を押圧する圧力発生素子と、各圧力発生素子により押圧された液体を各液室から液滴の状態で略真下に吐出させる吐出口とを有する吐出手段が、液滴を各吐出口と対向し且つ所定の方向に走行する対象物の主面に、対象物の走行方向と略直交方向に並設された各吐出口より吐出させるときに、各圧力発生素子のうちの1つ以上を異なるタイミングで駆動させることで、各吐出口から略真下に吐出された液滴のうち1つ以上を、対象物の主面における対象物の走行方向と略直交する基準線に対して少なくとも一部が接触すると共に、この基準線に対して対象物の走行方向又は走行方向とは逆方向にずらして、対象物の主面に着弾させることを特徴としている。
【0018】
この液体吐出方法では、各圧力発生素子のうちの1つ以上を異なるタイミングで駆動させることで、対象物の走行方向と略直交方向に並設された各吐出口から略真下に吐出された液滴のうち1つ以上を、対象物の主面における対象物の走行方向と略直交する基準線に対して少なくとも一部が接触すると共に、この基準線に対して対象物の走行方向又は走行方向とは逆方向にずらして、対象物の主面に着弾させる。
【0019】
したがって、この液体吐出方法では、対象物の主面における基準線に対して対象物の走行方向又は走行方向とは逆方向にずれて着弾した液滴によって、走行する対象物の走行速度にムラが生じたときに起こる走行方向と略直交方向に沿った白スジを防止できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明が適用されたインクジェットプリンタ装置について、図面を参照して説明する。図1に示すように、本発明が適用されたインクジェットプリンタ装置(以下、プリンタ装置と記す。)1は、所定の方向に走行する記録紙Pに対してインク等を吐出して画像や文字を印刷するものである。また、このプリンタ装置1は、記録紙Pの印刷幅に合わせて、記録紙Pの幅方向、すなわち図1中矢印W方向にインク吐出口(ノズル)を略ライン状に並設した、いわゆるライン型のプリンタ装置である。
【0021】
このプリンタ装置1は、インク4を吐出するインクジェットプリントヘッドカートリッジ(以下、ヘッドカートリッジと記す。)2と、このヘッドカートリッジ2を装着するプリンタ本体3とを備える。プリンタ装置1は、ヘッドカートリッジ2がプリンタ本体3に対して着脱可能であり、更に、ヘッドカートリッジ2に対してインク供給源となるインクカートリッジ11y,11m,11c,11kが着脱可能となっている。このプリンタ装置1では、イエローのインクカートリッジ11y、マゼンタのインクカートリッジ11m、シアンのインクカートリッジ11c、ブラックのインクカートリッジ11kが使用可能となっており、また、プリンタ本体3に対して着脱可能なヘッドカートリッジ2と、ヘッドカートリッジ2に対して着脱可能なインクカートリッジ11y,11m,11c,11kとを消耗品として交換可能になっている。
【0022】
このようなプリンタ装置1は、記録紙Pを積層して収納するトレイ65aをプリンタ本体3の前面底面側に設けられたトレイ装着口に装着することにより、トレイ65aに収納されている記録紙Pをプリンタ本体3内に給紙できる。トレイ65aは、プリンタ本体3の前面のトレイ装着口に装着されると、給排紙機構64により記録紙Pが給紙口65からプリンタ本体3の背面側に給紙される。プリンタ本体3の背面側に送られた記録紙Pは、反転ローラ83により走行方向が反転され、往路の上側をプリンタ本体3の背面側から前面側に送られる。プリンタ本体3の背面側から前面側に送られる記録紙Pは、プリンタ本体3の前面に設けられた排紙口66より排紙されるまでに、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置より入力された文字データや画像データに応じた印刷データが文字や画像として印刷される。
【0023】
記録紙Pに印刷を行うヘッドカートリッジ2は、プリンタ本体3の上面側から、すなわち図1中矢印A方向から装着され、給排紙機構64により走行する記録紙Pに対してインク4を吐出して印刷を行う。そこで、先ず、上述したプリンタ装置1を構成するプリンタ本体2に対して着脱可能なヘッドカートリッジ2と、このヘッドカートリッジ2に着脱されるインクカートリッジ11y,11m,11c,11kについて図面を参照して説明する。
【0024】
このヘッドカートリッジ2は、導電性の液体であるインク4を、例えば電気熱変換式又は電気機械変換式等を用いた圧力発生手段が発生した圧力により微細に粒子化して吐出し、記録紙P等の対象物上にインク4を液滴状態にして吹き付ける。具体的に、ヘッドカートリッジ2は、図2及び図3に示すように、カートリッジ本体21を有し、このカートリッジ本体21には、インク4が充填された容器であるインクカートリッジ11y,11m,11c,11kが装着される。なお、以下、インクカートリッジ11y,11m,11c,11kを単にインクカートリッジ11ともいう。
【0025】
ヘッドカートリッジ2に着脱可能なインクカートリッジ11は、図3に示すように、強度や耐インク性を有するポリプロピレン等の樹脂材料等を射出成形することにより成形されるカートリッジ容器11aを有し、このカートリッジ容器11aは、長手方向を使用する記録紙Pの幅方向の寸法と略同じ寸法となす略矩形状に形成され、内部に貯留するインク容量を最大限に増やす構成となっている。
【0026】
具体的に、インクカートリッジ11を構成するカートリッジ容器11aには、インク4を収容するインク収容部12と、インク収容部12からヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体21にインク4を供給するインク供給部13と、外部よりインク収容部12内に空気を取り込む外部連通孔14と、外部連通孔14より取り込まれた空気をインク収容部12内に導入する空気導入路15と、外部連通孔14と空気導入路15との間でインク4を一時的に貯留する貯留部16と、インクカートリッジ11をカートリッジ本体21に係止するための係止突部17及び係合段部18とが設けられている。
【0027】
インク収容部12は、気密性の高い材料によりインク4を収容するための空間を形成している。インク収容部12は、略矩形に形成され、長手方向の寸法が使用する記録紙Pの幅方向、すなわち記録紙Pの走行方向に対して略直交する方向の寸法と略同じ寸法となるように形成されている。
【0028】
インク供給部13は、インク収容部12の下側略中央部に設けられている。このインク供給部13は、インク収容部12と連通した略突形状のノズルであり、このノズルの先端が後述するヘッドカートリッジ2の接続部26に嵌合されることにより、インクカートリッジ2のカートリッジ容器11aとヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体21を接続する。
【0029】
インク供給部13は、図4及び図5に示すように、インクカートリッジ11の底面13aにインク4を供給する供給口13bが設けられ、この底面13aに、供給口13bを開閉する弁13cと、弁13cを供給口13bの閉塞する方向に付勢するコイルバネ13dと、弁13cを開閉する開閉ピン13eとを備えている。ヘッドカートリッジ2の接続部26に接続されるインク4を供給する供給口13dは、図4に示すように、インクカートリッジ11がヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体21に装着される前の段階において、付勢部材であるコイルバネ13dの付勢力により弁13cが供給口13dを閉じる方向に付勢され閉塞されている。そして、インクカートリッジ11がカートリッジ本体21に装着されると、図5に示すように、開閉ピン13eがヘッドカートリッジ2を構成するカートリッジ本体21の接続部26の上部によりコイルばね13dの付勢方向とは反対の方向に押し上げられる。これにより、押し上げられた開閉ピン13eは、コイルバネ13dの付勢力に抗して弁13cを押し上げて供給口13bを開放する。このようにして、インクカートリッジ11のインク供給部13は、ヘッドカートリッジ2の接続部26に接続され、インク収容部12とインク溜め部31とを連通し、インク溜め部31へのインク4の供給が可能な状態となる。
【0030】
また、インクカートリッジ11をヘッドカートリッジ2側の接続部26から引き抜くとき、すなわちインクカートリッジ11をヘッドカートリッジ2の装着部22より取り外すときは、弁13cの開閉ピン13eによる押し上げ状態が解除され、弁13cがコイルバネ13dの付勢方向に移動して供給口13bを閉塞する。これにより、インクカートリッジ11をカートリッジ本体21に装着する直前にインク供給部13の先端部が下方を向いている状態であってもインク収容部12内のインク4が漏れることを防止することができる。また、インクカートリッジ11をカートリッジ本体21から引き抜いたときには、直ちに弁13cが供給口13bを閉塞するので、インク供給部13の先端からインク4が漏れることを防止できる。
【0031】
外部連通孔14は、図3に示すように、インクカートリッジ11外部からインク収容部12に空気を取り込む通気口であり、ヘッドカートリッジ2の装着部22に装着されたときも、外部に臨み外気を取り込むことができるように、装着部22への装着時に外部に臨む位置であるカートリッジ容器11aの上面、ここでは上面略中央に設けられている。外部連通孔14は、インクカートリッジ11がカートリッジ本体21に装着されてインク収容部12からカートリッジ本体21側にインク4が流下した際に、インク収容部12内のインク4が減少した分に相当する分の空気を外部よりインクカートリッジ11内に取り込む。
【0032】
空気導入路15は、インク収容部12と外部連通孔14とを連通し、外部連通孔14より取り込まれた空気をインク収容部12内に導入する。これにより、このインクカートリッジ11がカートリッジ本体21に装着された際に、ヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体21にインク4が供給されてインク収容部12内のインク4が減少し内部が減圧状態となっても、インク収容部12には、空気導入路15によりインク収容部12に空気が導入されることから、内部の圧力が平衡状態に保たれてインク4をカートリッジ本体21に適切に供給することができる。
【0033】
貯留部16は、外部連通孔14と空気導入路15との間に設けられ、インク収容部12に連通する空気導入路15よりインク4が漏れ出た際に、いきなり外部に流出することがないようにインク4を一時的に貯留する。
【0034】
この貯留部16は、長い方の対角線をインク収容部12の長手方向とした略菱形に形成され、インク収容部12の最も下側に位置する頂部に、すなわち短い方の対角線上の下側に空気導入路15を設けるようにし、インク収容部12より進入したインク4を再度インク収容部12に戻すことができるようにしている。また、貯留部16は、短い方の対角線上の最も下側の頂部に外部連通孔14を設けるようにし、インク収容部12より進入したインク4が外部連通孔14より外部に漏れにくくする。
【0035】
係止突部17は、インクカートリッジ11の短辺の一方の側面に設けられた突部であり、ヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体21のラッチレバー24に形成された係合孔24aと係合する。この係止突部17は、上面がインク収容部12の側面に対して略直交するような平面で形成されると共に、下面は側面から上面に向かって傾斜するように形成されている。係合段部18は、インクカートリッジ11の係止突部17が設けられた側面の反対側の側面の上部に設けられている。係合段部18は、カートリッジ容器11aの上面と一端を接する傾斜面18aと、この傾斜面18aの他端と他方の側面と連続し、上面と略平行な平面18bとからなる。インクカートリッジ11は、係合段部18が設けられていることで、平面18bが設けられた側面の高さがカートリッジ容器11aの上面より1段低くなるように形成され、この段部でカートリッジ本体21の係合片23と係合する。係合段部18は、ヘッドカートリッジ2の装着部22に挿入されるとき、挿入端側の側面に設けられ、ヘッドカートリッジ2の装着部22側の係合片23に係合することで、インクカートリッジ11を装着部22に装着する際の回動支点部となる。
【0036】
以上のような構成のインクカートリッジ11は、上述した構成の他に、例えばインク収容部12内のインク4の残量を検出するための残量検出手段や、インクカートリッジ11y,11m,11c,11kを識別するための識別手段等を備えている。
【0037】
次に、以上のように構成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインク4を収納したインクカートリッジ11y,11m,11c,11kが装着されるヘッドカートリッジ2について説明する。
【0038】
ヘッドカートリッジ2は、図2及び図3に示すように、カートリッジ本体21を有し、このカートリッジ本体21には、インクカートリッジ11が装着される装着部22y,22m,22c,22k(以下、全体を示すときには単に装着部22ともいう。)と、インクカートリッジ11を固定する係合片23及びラッチレバー24と、インクカートリッジ11を取り出し方向に付勢する付勢部材25と、インク供給部13と接続されてインク4が供給される接続部26と、インク4を吐出するヘッドチップ27と、ヘッドチップ27を保護するヘッドキャップ28とを有している。
【0039】
インクカートリッジ11が装着される装着部22は、インクカートリッジ11が装着されるように上面をインクカートリッジ11の挿脱口として略凹形状に形成され、ここでは4本のインクカートリッジ11が記録紙Pの幅方向と略直交方向、すなわち記録紙Pの走行方向に並んで収納される。装着部22は、インクカートリッジ11が収納されることから、インクカートリッジ11と同様に印刷幅の方向に長く設けられている。カートリッジ本体21には、インクカートリッジ11が収納装着される。
【0040】
装着部22は、図2に示すように、インクカートリッジ11が装着される部分であり、イエロー用のインクカートリッジ11yが装着される部分を装着部22yとし、マゼンタ用のインクカートリッジ11mが装着される部分を装着部22mとし、シアン用のインクカートリッジ11cが装着される部分を装着部22cとし、ブラック用のインクカートリッジ11kが装着される部分を装着部22kとし、各装着部22y,22m,22c,22kは、隔壁22aによりそれぞれ隣接するように区画されている。なお、上述したようにブラックのインクカートリッジ11kは、インク4の内容量が大きくなるように厚く形成されているため、幅が他のインクカートリッジ11y,11m,11cよりも広く設けられており、これに合わせて装着部22kの幅も他の装着部22y,22m,22cよりも広く設けられている。
【0041】
以上のようにインクカートリッジ11が装着される装着部22の開口端には、図3に示すように、係合片23が設けられている。この係合片23は、装着部22の長手方向の一端縁に設けられており、インクカートリッジ11の係合段部18と係合する。インクカートリッジ11は、インクカートリッジ11の係合段部18側を挿入端として斜めに装着部22内に挿入し、係合段部18と係合片23との係合位置を回動支点として、インクカートリッジ11の係合段部18が設けられていない側を装着部22側に回動させるようにして装着部22に装着することができる。これによって、インクカートリッジ11は、装着部22に容易に装着することができる。
【0042】
ラッチレバー24は、板バネを折曲して形成されるものであり、装着部22の係合片23に対して反対側の側面、すなわち長手方向の他端の側面に設けられている。ラッチレバー24は、基端部が装着部22を構成する長手方向の他端の側面の底面側に一体的に設けられ、先端側がこの側面に対して近接離間する方向に弾性変位するように形成され、先端側に係合孔24aが形成されている。ラッチレバー24は、インクカートリッジ11が装着部22に装着されると同時に、弾性変位し、係合孔24aがインクカートリッジ11の係止突部17と係合し、装着部22に装着されたインクカートリッジ11が装着部22より脱落しないようにする。
【0043】
付勢部材25は、インクカートリッジ11の係合段部18に対応する側面側の底面上にインクカートリッジ11を取り外す方向に付勢する板バネを折曲して設けられる。付勢部材25は、折曲することにより形成された頂部を有し、底面に対して近接離間する方向に弾性変位し、頂部でインクカートリッジ11の底面を押圧し、装着部22に装着されているインクカートリッジ11を装着部22より取り外す方向に付勢するイジェクト部材である。付勢部材25は、ラッチレバー24の係合孔24aと係止突部17との係合状態が解除されたとき、装着部23よりインクカートリッジ11を排出する。
【0044】
各装着部22y,22m,22c,22kの長手方向略中央には、インクカートリッジ11y,11m,11c,11kが装着部22y,22m,22c,22kに装着されたとき、インクカートリッジ11y,11m,11c,11kのインク供給部13が接続される接続部26が設けられている。この接続部26は、装着部22に装着されたインクカートリッジ11のインク供給部13からカートリッジ本体21の底面に設けられたインク4を吐出するヘッドチップ27にインク4を供給するインク供給路となる。
【0045】
具体的に、接続部26は、図6に示すように、インクカートリッジ11から供給されるインク4を溜めるインク溜め部31と、接続部26に連結されるインク供給部13をシールするシール部材32と、インク4内の不純物を除去するフィルタ33と、ヘッドチップ27側への供給路を開閉する弁機構34とを有している。
【0046】
インク溜め部31は、インク供給部13と接続されインクカートリッジ11から供給されるインク4を溜める空間部である。シール部材32は、インク溜め部31の上端に設けられた部材であり、インクカートリッジ11のインク供給部13が接続部26のインク溜め部31に接続されるとき、インク4が外部に漏れないようインク溜め部31とインク供給部13との間を密閉する。フィルタ33は、インクカートリッジ11の着脱時等にインク4に混入してしまった塵や埃等のごみを取り除くものであり、インク溜め部31よりも下流に設けられている。
【0047】
弁機構34は、図7及び図8に示すように、インク溜め部31からインク4が供給されるインク流入路34aと、インク流入路34aからインク4が流入するインク室34bと、インク室34bからインク4を流出するインク流出路34cと、インク室34bをインク流入路34a側とインク流出路34c側との間に設けられた開口部34dと、開口部34dを開閉する弁34eと、弁34eを開口部34dの閉塞する方向に付勢する付勢部材34fと、付勢部材34fの強さを調節する負圧調整ネジ34gと、弁34eと接続される弁シャフト34hと、弁シャフト34hと接続されるダイアフラム34iとを有する。
【0048】
インク流入路34aは、インク溜め部31を介してインクカートリッジ11のインク収容部12内のインク4をヘッドチップ27に供給可能にインク収容部12と連結する供給路である。インク流入路34aは、インク溜め部31の底面側からインク室34bまで設けられている。インク室34bは、インク流入路34a、インク流出路34c及び開口部34dと一体となって形成された略直方体をなす空間部であり、インク流入路34aからインク4が流入し、開口部34dを介してインク流出路34cからインク4を流出する。インク流出路34cは、インク室34bから開口部34dを介してインク4が供給されて、更にヘッドチップ27と連結された供給路である。インク流出路34cは、インク室34bの底面側からヘッドチップ27まで延在されている。
【0049】
弁34eは、開口部34dを閉塞してインク流入路34a側とインク流出路34c側とを分割する弁であり、インク室34b内に配設される。弁34eは、付勢部材34fの付勢力と、弁シャフト34hを介して接続されたダイアフラム34iの復元力と、インク流出路34c側のインク4の負圧によって上下に移動する。弁34eは、下端に位置するとき、インク室34bをインク流入路34a側とインク流出路34c側とを分離するように開口部34dを閉塞し、インク流出路34cへのインク4の供給を遮断する。弁34eは、付勢部材34fの付勢力に抗して上端に位置するとき、インク室34bをインク流入路34a側とインク流出路34c側とを遮断せずに、ヘッドチップ27へインク4の供給を可能とする。なお、弁34eを構成する材質は、その種類を問わないが、高い閉塞性を確保するため例えばゴム弾性体、いわゆるエラストマー等により形成される。
【0050】
付勢部材34fは、例えば圧縮コイルバネ等であり、弁34eの上面とインク室34bの上面との間で負圧調整ネジ34gと弁34eとを接続し、付勢力により弁34eを開口部34dの閉塞する方向に付勢する。負圧調整ネジ34gは、付勢部材34fの付勢力を調整するネジであり、負圧調整ネジ34gを調整することで付勢部材34fの付勢力を調整することができるようにしている。これにより、負圧調整ネジ34gは、詳細は後述するが開口部34dを開閉する弁34eを動作させるインク4の負圧を調整することができる。
【0051】
弁シャフト34hは、一端に接続された弁34eと、他端に接続されたダイアフラム34iとを連結して運動するように設けられたシャフトである。ダイアフラム34iは、弁シャフト34hの他端に接続された薄い弾性板である。このダイアフラム34iは、インク室34bのインク流出路34c側の一主面と、外気と接する他主面とからなり、大気圧とインク4の負圧により外気側とインク流出路34c側とに弾性変位する。
【0052】
以上のような弁機構34では、図7に示すように、弁34eが付勢部材34fの付勢力とダイアフラム34iの付勢力とによってインク室34bの開口部34dを閉塞するように押圧されている。そして、ヘッドチップ27からインク4が吐出された際に、開口部34dで分割されたインク流出路34c側のインク室34bのインク4の負圧が高まると、図8に示すように、インク4の負圧によりダイアフラム34iが大気圧により押し上げられて、弁シャフト34hと共に弁34eを付勢部材34fの付勢力に抗して押し上げる。このとき、インク室34bのインク流入路34a側とインク流出路34c側と間の開口部34dが開放され、インク4がインク流入路34a側からインク流出路34c側に供給される。そして、インク4の負圧が低下してダイアフラム34iが復元力により元の形状に戻り、付勢部材34fの付勢力により弁シャフト34hと共に弁34eをインク室34bが閉塞するように引き下げる。以上のようにして弁機構34では、インク4を吐出する度にインク4の負圧が高まると、上述の動作を繰り返す。
【0053】
また、この接続部26では、インク収容部12内のインク4がインク室34bに供給されると、インク収容部12内のインク4が減少するが、このとき、空気導入路15から外気がインクカートリッジ11内に入り込む。インクカートリッジ11内に入り込んだ空気は、インクカートリッジ11の上方に送られる。これにより、インク液滴iが後述するノズル44aから吐出される前の状態に戻り、平衡状態となる。このとき、空気導入路15内にインク4がほとんどない状態で平衡状態となる。
【0054】
ヘッドチップ27は、図6に示すように、カートリッジ本体21の底面に沿って配設されており、接続部26から供給されるインク液滴iを吐出するインク吐出口である後述するノズル44aが各色毎、記録紙Pの幅方向、すなわち図6中矢印W方向に略ライン状をなすように設けられている。
【0055】
ヘッドキャップ28は、図2に示すように、ヘッドチップ27を保護するために設けられたカバーであり、インク4を吐出する際にはヘッドチップ27より取り外される。ヘッドキャップ28は、開閉方向に設けられた溝部28aと、長手方向に設けられヘッドチップ27の吐出面27aに付着した余分なインク4を吸い取る清掃ローラ28bとを有している。ヘッドキャップ28は、開閉動作時にこの溝部28aに沿ってインクカートリッジ11の短手方向に開閉するようにされており、このとき清掃ローラ28bがヘッドチップ27の吐出面27aに当接しながら回転することで、余分なインク4を吸い取り、ヘッドチップ27の吐出面27aを清掃する。この清掃ローラ28bには、例えば吸水性の高い部材が用いられる。また、ヘッドキャップ28は、印刷動作しないときにはヘッドチップ27内のインク4が乾燥しないようにする。
【0056】
以上のような構成のヘッドカートリッジ2は、上述した構成の他に、例えばインクカートリッジ11内におけるインク残量を検出する手段や、接続部26にインク供給部13が接続されたときにインク4の有無を検出する手段等を備えている。
【0057】
上述したヘッドチップ27は、各色のインク4に対応して、図9乃至図11に示すように、ベースとなる回路基板41と、インク4を加熱する発熱抵抗体42と、インク4の漏れを防ぐフィルム43と、インク4が液滴の状態で吐出されるノズル44aが多数設けられたノズルシート44と、これらに囲まれてインク4が供給される空間であるインク液室45と、インク液室45にインク4を供給するインク流路46とを有する。なお、図11では、ノズル44aの位置を1点鎖線で示している。
【0058】
回路基板41は、シリコン等の半導体基板であり、その一主面41aに、インク液室45内のインク4を押圧するための圧力を発生させる圧力発生素子となる発熱抵抗体42が形成されており、発熱抵抗体42と回路基板41上の駆動回路41bとが接続されている。この駆動回路41bは、例えば後述する吐出制御部73等から出力される発熱抵抗体42を駆動させるための信号により発熱抵抗体を駆動制御させるロジックIC(Integrated Circuit)やドライバートランジスタ等で構成されている。
【0059】
発熱抵抗体42は、例えば吐出制御回路等により駆動制御され、吐出制御回路から電流が供給されると発熱し、インク液室45内のインク4を加熱してインク液室54内の内圧を高める。このようにして加熱されたインク4は、ノズルシート44に設けられたノズル44aから液滴の状態で吐出する。
【0060】
フィルム43は、回路基板41の一主面41aに積層されている。フィルム43は、例えば露光硬化型のドライフィルムレジストからなるものであり、回路基板41の一主面41aの略全体に積層された後、フォトリソグラフプロセスによって不要部分が除去され、発熱抵抗体42を一括して略凹状に囲むように形成されている。フィルム43は、発熱抵抗体42を囲む部分がインク液室45の一部を形成する。
【0061】
ノズルシート44は、インク液滴iを吐出させるためのノズル44aが形成されたシート状部材であり、フィルム43の回路基板41と反対側にノズル44aと発熱抵抗体42とが対向するように設けられる。ノズル44aは、ノズルシート44に略円形状に開口された微小孔であり、発熱抵抗体42と対向し、且つヘッドチップ27の吐出面27aとなるノズルシート44の外部側の主面内の記録紙Pの幅方向、すなわち図10及び図11中矢印W方向に略平行に並設されている。なお、ノズルシート44はインク液室45の一部を構成する。
【0062】
インク液室45は、回路基板41、発熱抵抗体42、フィルム43及びノズルシート44に囲まれた空間部であり、インク流路46からのインク4が供給される。インク液室45のインク4は、発熱抵抗体42により加熱され、内圧が上昇して押圧され、ノズル44aより外部に吐出される。
【0063】
インク流路46は、接続部26のインク流出路34cと接続されており、接続部26に接続されたインクカートリッジ11からインク4が供給され、連通する各インク液室45にインク4を送り込む流路となる。すなわち、インク液室45と接続部26とを連通させており、インクカートリッジ11から供給されるインク4をインク液室45内に供給させるインク供給部となる。
【0064】
上述した1個のヘッドチップ27には、インク液室45毎に発熱抵抗体42が設けられ、発熱抵抗体42が設けられたインク液室45を100個程度備えている。そして、ヘッドチップ27においては、プリンタ装置1の吐出制御回路等からの指令によってこれら発熱抵抗体42を適宜選択して駆動させ、駆動した発熱抵抗体42dに対応するインク液室45内のインク4を、インク液室45に対応するノズル44aから液滴の状態で吐出させる。
【0065】
すなわち、ヘッドチップ27においては、図12に示すように、ヘッドチップ27と結合されたインク流路46によりインク4が供給され、インク液室45内にインク4が満たされる。そして、発熱抵抗体42に短時間、例えば、1〜3μsecの間パルス電流を流すことにより、発熱抵抗体42が急速に加熱され、その結果、発熱抵抗体42と接する部分のインク4に気相のインク気泡Bが発生し、そのインク気泡Bの膨張によってある体積のインク4が押圧される(インク4が沸騰する)。これによって、ヘッドチップ27においては、図13に示すように、ノズル44aに接する部分でインク気泡Bに押圧されたインク4と同等の体積のインク4がインク液滴iとしてノズル44aから略真下に吐出され、記録紙P上に着弾される。
【0066】
以上のようなヘッドチップ27では、図14に示すように、各インク液室45に設けられた発熱抵抗体42のうち1つ以上を異なるタイミングで駆動させることで、記録紙Pの走行方向と略直交方向に並設されたノズル44aより略真下に吐出されたインク液滴iのうち1つ以上を、記録紙Pの主面における記録紙Pの対象物の走行方向、すなわち図14中矢印C方向と略直交する基準線Lに対して少なくとも一部接触、且つ基準線Lに対して記録紙Pの走行方向又は走行方向とは逆方向にずらして、記録紙Pの主面に着弾させる。これにより、記録紙Pの主面には、基準線Lに対して記録紙Pの走行方向又は走行方向とは逆方向にずれたインクドット51が形成されることになる。
【0067】
したがって、このヘッドチップ27では、少なくとも基準線Lと一部が接触、且つ基準線Lに対して記録紙Pの走行方向又は走行方向とは逆方向にインクドット51によって、例えば記録紙Pの走行速度にムラが生じたりして起こる白スジを防止させることが可能となる。
【0068】
次に、以上のように構成されたヘッドカートリッジ2が装着されるプリンタ装置1を構成するプリンタ本体3について図面を参照して説明する。
【0069】
プリンタ本体3は、上記図1及び図15に示すように、ヘッドカートリッジ2が装着されるヘッドカートリッジ装着部61と、ヘッドカートリッジ2をヘッドカートリッジ装着部61に保持、固定するためのヘッドカートリッジ保持機構62と、ヘッドキャップを開閉するヘッドキャップ開閉機構63と、記録紙Pを給排紙する給排紙機構64と、給排紙機構64に記録紙Pを供給する給紙口65と、給排紙機構64から記録紙Pが出力される排紙口66とを有する。
【0070】
ヘッドカートリッジ装着部61は、ヘッドカートリッジ2が装着される凹部であり、走行する記録紙にデータ通り印刷を行うため、ヘッドチップ27の吐出面27aと走行する記録紙Pの紙面とが略平行となるようにヘッドカートリッジ2が装着される。ヘッドカートリッジ2は、ヘッドチップ27内のインク詰まり等で交換する必要が生じる場合等があり、インクカートリッジ11程の頻度はないが消耗品であるため、ヘッドカートリッジ装着部61に対して着脱可能にヘッドカートリッジ保持機構62によって保持される。ヘッドカートリッジ保持機構62は、ヘッドカートリッジ装着部61にヘッドカートリッジ2を着脱可能に保持するための機構であり、ヘッドカートリッジ2に設けられたつまみ62aをプリンタ本体3の係止孔62b内に設けられた図示しないバネ等の付勢部材に係止することによってプリンタ本体3に設けられた基準面3aに圧着するようにしてヘッドカートリッジ2を位置決めして保持、固定できるようにしている。
【0071】
ヘッドキャップ開閉機構63は、ヘッドカートリッジ2のヘッドキャップ28を開閉する駆動部を有しており、印刷を行うときにヘッドキャップ28を開放してヘッドチップ27が記録紙Pに対して露出するようにし、印刷が終了したときにヘッドキャップ28を閉塞してヘッドチップ27を保護する。給排紙機構64は、記録紙Pを搬送する駆動部を有しており、給紙口65から供給される記録紙Pをヘッドカートリッジ2のヘッドチップ27まで搬送し、インク4が吐出された記録紙Pを排紙口66に搬送して装置外部へ出力する。給紙口65は、給排紙機構64に記録紙Pを供給する開口部であり、トレイ65a等に複数枚の記録紙Pを積層してストックすることができる。排紙口66は、インク液滴iが吐出された記録紙Pが給排紙機構64により搬送されて排出される。
【0072】
ここで、以上のように構成されたプリンタ装置1による印刷を制御する制御回路71について図面を参照して説明する。
【0073】
制御回路71は、図16に示すように、プリンタ本体3の各駆動部を駆動するプリンタ駆動部72と、各色のインク4に対応するヘッドチップ27の駆動回路41bを制御する吐出制御部73と、外部装置と信号の入出力を行う入出力端子74と、制御プログラム等が記録されたROM(Read Only Memory)75と、読み出された制御プログラム等が記録されるRAM(Random Access Memory)76と、各部の制御を行う制御部77とを有している。
【0074】
プリンタ駆動部72は、制御部77からの制御信号に基づき、ヘッドキャップ開閉機構63を構成する駆動モータを駆動させてヘッドキャップ28を開閉する。また、プリンタ駆動部72は、制御部77からの制御信号に基づき、給排紙機構64を構成する駆動モータを駆動させてプリンタ本体3の給紙口65から記録紙Pを給紙し、記録後に排紙口66から排紙する。
【0075】
吐出制御部73は、記録紙Pの走行方向と略直交方向に並設されたノズル44aより異なるタイミングでインク液滴iを吐出させる吐出制御のためのデータを生成するデータ生成部73aと、データ生成部73aで生成したデータを格納するメモリ73bとを備えている。
【0076】
データ生成部73aは、外部の情報処理装置78等から入力された印刷データ等に基づいてノズル44aよりインク液滴iを異なるタイミングで吐出させるための吐出制御データを生成する。具体的に、データ生成部73aは、情報処理装置78等から入力された印刷データ等に基づいて、記録紙Pの走行方向と略直交方向に並設されたノズル44aがインク液滴iを吐出する順番を例えば乱数回路等により発生した乱数データに基づいてランダムに決定した吐出制御データを生成する。
【0077】
データ生成部73aは、生成した吐出制御データをメモリ73bに出力、若しくはメモリ73bに格納された吐出制御データを読み出してヘッドチップ27の駆動回路41bに発熱抵抗体42を駆動させるための駆動信号Sを出力する。
【0078】
メモリ73bは、例えばRAM等であり、データ生成部73aにより生成された吐出制御データ、すなわちインク液滴iが吐出される順番のデータを各ノズル44aに対応するアドレスに記憶する。具体的に、メモリ73bは、図17(A)に示すように、各ノズル44aに対応する列と、駆動信号Sを出力するタイミング、すなわちインク液滴iをノズル44aより吐出するタイミングに対応する行とで特定されるアドレスにデータ生成部73aにより生成された吐出制御データを格納する。
【0079】
なお、図17(A)では、図17(A)中一番右側の列をn番目のノズルに対応するn列とし、n列から左に向かって順次n+1列、n+2列、...とする。また、記録紙Pの主面における記録紙Pの走行方向、すなわち図17(C)中矢印C方向と略直交する基準線Lと、インクドット51の中心とが重なるように発熱抵抗体42を駆動させる駆動信号Sを出力するタイミングが図17(A)中t行であり、以下、信号出力タイミングtと記す。さらに、信号出力タイミングtより早く駆動信号Sを出力するタイミングが信号出力タイミングtに近い方から順に図17(A)中t−1行、t−2行、...であり、以下、信号出力タイミングt−1、t−2、...と記す。さらにまた、信号出力タイミングtより遅く駆動信号Sを出力するタイミングが信号出力タイミングtに近い方から順に図17(A)中t+1行、t+2行、...であり、以下、信号出力タイミングt+1、t+2、...と記す。
【0080】
そして、吐出制御部73は、図17(A)及び図17(B)に示すように、各ノズル44aに対応するメモリ73bに格納された吐出制御データを読み出してヘッドチップ27の各ノズル44aに対応する駆動回路41bに駆動信号Sを出力する。ここでは、メモリ73bのn+5列のアドレスに格納された吐出制御データの信号出力タイミングt−5であり、最も早いタイミングで駆動信号Sを駆動回路41bに出力し、次に、n+1列の信号出力タイミングt−3の吐出制御データを駆動信号Sとして駆動回路41bに出力する。そして、吐出制御部73は、信号出力タイミングの早い順にメモリ73bの列に対応したノズル44aの駆動回路41bに駆動信号Sを順次出力していく。
【0081】
そして、ヘッドチップ27は、駆動信号Sが駆動回路41bに入力された順に、駆動回路41bに対応するノズル44aよりインク液滴iを順次吐出する。具体的には、最も早いタイミングで駆動信号Sを出力したメモリ73bのn+5列に対応するノズル44aが最も早いタイミングでインク液滴iを吐出し、次に、2番目に駆動信号Sを出力したメモリ73bのn+1列に対応したノズル44aがインク液滴iを吐出する。そして、ヘッドチップ27は、メモリ73bの駆動信号Sの出力が早い列順に、各列に対応するノズル44aよりインク液滴iを順次吐出し、最も遅いタイミングで駆動信号Sを出力したメモリ73bのn+2列に対応するノズル44aが最後にインク液滴iを吐出する。
【0082】
そして、ヘッドチップ27は、図17(B)及び図17(C)に示すように、メモリ73bのn+5列に対応するノズル44aより最も早いタイミングで吐出されたインク液滴iを、記録紙Pの主面の基準線Lに対して記録紙Pの走行方向とは逆方向に最も遠くにずれた位置に、基準線Lに一部接触した状態で1番目に着弾させ、次に、メモリ73bのn+1列に対応するノズル44aより吐出されたインク液滴iを記録紙Pの主面の基準線Lに対して記録紙Pの走行方向とは逆方向に次に遠くにずれた位置に着弾させる。そして、ヘッドチップ27は、インク液滴iをノズル44aより吐出される順番で少なくとも基準線Lに一部接触するように記録紙Pに着弾させ、メモリ73bのn+2列に対応するノズル44aより最も遅いタイミングで吐出されたインク液滴iを、記録紙Pの主面の基準線Lに対して記録紙Pの走行方向に最も遠くにずれた位置に、基準線Lに一部接触した状態で最後に着弾させる。そして、ヘッドチップ27は、以上のような動作をプリンタ装置1の印刷動作が終了されるまで繰り返す。
【0083】
このように、吐出制御部73は、データ生成部73aが駆動回路41bに異なる信号出力タイミングで駆動信号Sを出力することで、インク液滴iによるインクドット51の1つ以上が少なくとも基準線Lと一部が接触、且つ基準線Lに対して記録紙Pの走行方向又は走行方向とは逆方向にずれて形成されるようにヘッドチップ27を制御する。したがって、ヘッドチップ27においては、例えば記録紙Pの走行速度にムラが生じたりして起こる白スジを防止することが可能となる。
【0084】
吐出制御部73においては、データ生成部73aがノズル44aからインク液滴iを吐出する順番をランダムに決めていることから、インクドット51が基準線Lに対して記録紙Pの走行方向又は走行方向と逆方向にランダムにずれるようにヘッドチップ27が制御される。これにより、記録紙Pの主面には、インクドット51が規則性を示すことが無く記録紙Pの走行方向又は走行方向とは逆方向にずれて形成されることから、色の濃度分布等にも規則性が生じさせることなくインク液滴iが着弾されることになる。なお、吐出制御部73においては、例えば停止している記録紙Pに対してインク液滴iを着弾させたときに、標準偏差の分布に近似した濃度分布を以てインク液滴iが記録紙Pに着弾されるように、ヘッドチップ27を制御させることも可能である。これにより、ヘッドチップ27においては、記録紙Pの主面にインク液滴iを濃度ムラがさらに少なくなるように着弾させることが可能となる。
【0085】
また、吐出制御部73は、上述した発熱抵抗体42を駆動させるタイミングを制御するデータ生成部73aやメモリ73bの他に、例えばヘッドチップ27にパルス電流を供給する図示しない電源や、各発熱抵抗体42に供給されるパルス電流の大きさを制御する図示しない制御回路等も備えている。
【0086】
入出力端子74は、図16に示すように、上述した印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報をインタフェースを介して外部の情報処理装置78等に出力する。また、入出力端子74は、外部の情報処理装置78等から、上述した印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報を出力する制御信号や、印刷データ等が入力される。ここで、上述した情報処理装置78は、例えば、パーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)等の電子機器である。
【0087】
情報処理装置78等と接続される入出力端子74は、インタフェースとして、例えばシリアルインタフェースやパラレルインタフェース等を用いることができ、具体的にUSB(Universal Serial Bus)、RS(Recommended Standard)222c、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)1394等の規格に準拠したものである。また、入出力端子74は、情報処理装置78との間で有線通信又は無線通信の何れ形式でデータ通信を行うようにしてもよい。なお、この無線通信規格としては、IEEE802.11a,802.11b,802.11g等がある。
【0088】
ROM75は、例えばEP−ROM(Erasable Programmable Read−Only Memory)等のメモリであり、制御部77が行う各処理のプログラムが格納されている。この格納されているプログラムは、制御部77によりRAM76にロードされる。RAM76は、制御部77によりROM75から読み出されたプログラムや、プリンタ装置1の各種状態を記憶する。
【0089】
入出力端子74と情報処理装置78との間には、例えばインターネット等のネットワークが介在していてもよく、この場合、入出力端子74は、例えばLAN(Local Area Network)、ISDN(Integrated Services Digital Network)、xDSL(Digital Subscriber Line)、FTHP(Fiber To The Home)、CATV(Community Antenna TeleVision)、BS(Broadcasting Satellite)等のネットワーク網に接続され、データ通信は、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の各種プロトコルにより行われる。
【0090】
制御部77は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等の信号処理及び制御処理を行う集積回路等であり、入出力端子74から入力された印刷データ及び制御信号や、インク4の残量データ等に基づき、各部を制御する。制御部77は、このような処理プログラムとしてROM75から読み出してRAM76に記憶し、このプログラムに基づき各処理を行う。また、制御部77は、吐出制御を行う処理プログラムをROM75から読み出してRAM76に記憶し、このプログラムに基づき吐出制御部73等を制御する。そして、制御部77は、以上のようなプログラムによる制御に限定されることはなく、記録紙Pに印刷された状態を測定し、この測定結果に基づいた印刷データに則ってインク液滴iを記録紙Pに着弾するように吐出制御部73を制御させることもできる。
【0091】
なお、以上のように構成された制御回路71においては、ROM75にプログラムを格納するようにしたが、プログラムを格納する媒体としては、ROMに限定されるものでなく、例えばプログラムが記録された光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、ICカード等の各種記録媒体を用いることができる。この場合に制御回路71は、各種記録媒体を駆動するドライブと直接又は情報処理装置78を介して接続されてこれら記録媒体からプログラムを読み出すように構成する。また、制御回路71は、上述した構成の他に、例えば印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報を表示するLCD(Liquid Crystal Display)等の表示手段等も備えている。
【0092】
次に、以上のように構成されるプリンタ装置1の全体の動作について図18に示すフローチャートを参照にして説明する。なお、本動作はROM75等の記憶手段に格納された処理プログラムに基づいて制御部77内の図示しない印刷動作制御用のCPU等の処理に基づいて実行されるものである。
【0093】
先ず、ユーザが情報処理装置78で印刷する文字データ、印刷データ等を選択し、印刷実行操作をすると、情報処理装置78は、選択されたデータより印刷データを生成し、プリンタ装置1の入出力端子74に生成した印刷データを出力する。
【0094】
次に、制御部77は、ステップS1において、各装着部22に所定の色のインクカートリッジ11が装着されているかどうかを判断する。そして、制御部77は、全ての装着部22に所定の色のインクカートリッジ11が適切に装着されているときはステップS2に進み、装着部22においてインクカートリッジ11が適切に装着されていないときはステップS3に進み、印刷動作を禁止する。
【0095】
制御部77は、ステップS2において、接続部26内のインク4が所定量以下、すなわちインク無し状態であるか否かを判断し、インク無し状態であると判断されたときは、表示手段等にその旨を表示、すなわち警告表示を行い、ステップS3において、印刷動作を禁止する。一方、制御部77は、接続部26内のインク4が所定量以下でないとき、すなわちインク4が満たされているとき、ステップS4において、印刷動作を許可する。
【0096】
印刷動作を行う場合、制御部77は、図19に示すように、ヘッドキャップ開閉機構63を構成する駆動モータを駆動させてヘッドキャップ28をヘッドカートリッジ2に対してトレイ65a側に移動させ、ヘッドチップ27のノズル44aを露出させる。
【0097】
そして、制御部77は、給排紙機構64を構成する駆動モータを駆動させて記録紙Pを走行させる。具体的に、制御部77は、トレイ65aから給紙ローラ81によって記録紙Pを引き出し、互いに反対方向に回転する一対の分離ローラ82a,82bによって引き出された記録紙Pの一枚を反転ローラ83に搬送して搬送方向を反転させた後に搬送ベルト84に記録紙Pを搬送し、搬送ベルト84に搬送された記録紙Pを押さえ手段85が所定の位置で保持させることでインク4が着弾される位置が位置決めされるように給排紙機構64を制御する。
【0098】
これと共に、制御部77は、ヘッドチップ27よりインク液滴iを走行している記録紙Pに吐出させるように吐出制御部73を制御する。具体的に、ヘッドチップ27では、図12に示すように、インク液室54内の発熱抵抗体42にパルス電流を供給してインク気泡Bを発生させ、図13に示すように、そのインク気泡Bの膨張によってインク気泡Bの膨張分の体積と等しい体積のインク4が押しのけられる。これによって、ノズル44aに接する部分で押しのけられたインク4と同等の体積のインク液滴iが記録紙Pの走行方向と略直交方向に並設されたノズル44aから略真下に吐出され、記録紙Pの主面に着弾してインクドット51が形成され、記録紙Pには印刷データに応じた文字、画像等が印刷される。
【0099】
このとき、ヘッドチップ27においては、吐出制御部73のデータ生成部73aが生成してメモリ73bに記憶された吐出制御データに基づいて各インク液室45に設けられた発熱抵抗体42のうち1つ以上を異なるタイミングで駆動させ、記録紙Pの走行方向と略直交方向に並設されたノズル44aのうち1つ以上が異なるタイミングでインク液滴iを吐出させる。
【0100】
具体的には、図17(A)〜図17(C)に示すように、メモリ73bに記憶された信号出力タイミングが最も早いn+5列に対応するノズル44a、次に信号出力タイミングが早いn+1列に対応するノズル44aの順でインク液滴iを吐出する。そして、吐出制御部73は、メモリ73bに記憶されている信号出力タイミングが早い順にデータ生成部73aが吐出制御データを読み出して駆動信号Sとしてヘッドチップ27の駆動回路41bに順次出力する。これに応じてヘッドチップ27は、駆動回路41bに駆動信号Sが入力された順番で駆動回路41bに対応するノズル44aからインク液滴iを順次吐出し、最後に信号吐出タイミングが最も遅いn+2列に対応するノズル44aよりインク液滴iを吐出する。そして、ヘッドチップ27は、このようなインク液滴iを異なるタイミングで吐出する動作を印刷動作が終了するまで繰り返す。
【0101】
このようにして、ヘッドチップ27では、ノズル44aより略真下に吐出されたインク液滴iを図17(C)中矢印C方向に走行する記録紙Pに向かって吐出させ、記録紙Pの主面に着弾したインク液滴iが、少なくとも基準線Lに接触、且つ基準線Lに対して記録紙Pの走行方向又は走行方向とは逆方向にずれたインクドット51を形成させる。
【0102】
これにより、ヘッドチップ27では、例えば従来のような給排紙機構の誤動作等により記録紙の走行速度が速まったときに、記録紙の走行方向で隣り合うインクドットの間に隙間ができて生じる記録紙の走行方向と略直行方向の白スジ等を防止できる。したがって、記録紙Pには、白スジの無い高画質な文字、画像等が印刷データに応じて印刷される。
【0103】
以上ように、インク液滴iがノズル44aより吐出されると、インク液滴iを吐出したインク液室45内に吐出された量と同量のインク4がインク流路46から直ちに補充され、図8に示すように、元の状態に戻る。ヘッドチップ27からインク液滴iが吐出されると、付勢部材34fの付勢力とダイアフラム34iの付勢力とによってインク室34bの開口部34dを閉塞している弁34eは、図7に示すように、ヘッドチップ27からインク液滴iが吐出された際に、開口部34d分割されたインク流出路34c側のインク室34bのインク4の負圧が高まると、インク4の負圧によりダイアフラム34iが大気圧により押し上げられて、弁シャフト34hと共に弁34eを付勢部材34fの付勢力に抗して押し上げる。このとき、インク室34bのインク流入路34a側とインク流出路34c側と間の開口部34dが開放され、インク4がインク流入路34a側からインク流出路34c側に供給され、インク流路46にインクが補充される。そして、インク4の負圧が低下してダイアフラム34iが復元力により元の形状に戻り、付勢部材34fの付勢力により弁シャフト34hと共に弁34eをインク室34bが閉塞するように引き下げる。以上のようにして弁機構34では、インク液滴iを吐出する度にインク4の負圧が高まると、上述の動作を繰り返す。
【0104】
このようにして、給排紙機構64によって走行している記録紙Pには、順に印刷データに応じた文字や画像が印刷されることになる。そして、印刷が終了して記録紙Pは、排紙口66より排出される。
【0105】
以上で説明したプリンタ装置1では、吐出制御部73のデータ生成部73aが生成してメモリ73bに記憶された吐出制御データに基づいて、ヘッドチップ27の各インク液室45に設けられた発熱抵抗体42のうち1つ以上を異なるタイミングで駆動させる。
【0106】
これにより、プリント装置1では、図20に示すように、記録紙Pの幅行方向、すなわち図20中矢印W方向に並設されたノズル44aより略真下に吐出されたインク液滴iが図20中矢印C方向に走行する記録紙Pの主面に着弾し、記録紙Pの主面に着弾したインク液滴iのうち1つ以上が少なくとも基準線Lに接触、且つ基準線Lに対して記録紙Pの走行方向又は走行方向とは逆方向にずれたインクドット51を形成させる。
【0107】
したがって、プリンタ装置1では、記録紙Pの走行方向方向又は走行方向とは逆方向にずれてインクドット51を形成させることから、例えば給排紙機構64の誤動作により記録紙Pの走行速度が速まったときに記録紙Pの走行方向で隣り合うインクドット51の間にできた隙間による記録紙Pの幅方向に沿った白スジを防止でき、高品質な画像を印刷できる。
【0108】
また、このプリンタ装置1では、従来のような印刷時にオーバーラップ部を設けることなく白スジ等を防止できることから、印刷に係る時間を大幅に短縮して高品質な画像を印刷できる。
【0109】
以上では、主に、並設された各ノズル44aのうち1つ以上が異なるタイミングでインク液滴iを吐出させる場合について説明したが、例えばインク液滴iを吐出するタイミングが略一緒となるノズル44aが多い場合はインク液滴iを吐出するタイミングが略同じとなるノズル44aについて時分割駆動させることも可能である。
【0110】
具体的に、上述したヘッドチップ27では、例えば発熱抵抗体42を数百個〜数万個程度備える場合、メモリ73bに記憶された吐出制御データに基づいて発熱抵抗体42を駆動させたときに、発熱抵抗体42の中に略同じタイミングで駆動されるものが生じる虞がある。このとき、略同時に駆動する発熱抵抗体42が多いと、パルス電流が一度に供給されて消費電力が大きくなって例えばプリンタ装置1を駆動させることが困難になることから、略同時に駆動する発熱抵抗体42を2つ以上のグループにランダムに分けてグループ毎にパルス電流を順番に供給し、各グループで発熱抵抗体42を駆動する、すなわち時分割駆動する。
【0111】
そして、ヘッドチップ27では、略同時に駆動する発熱抵抗体42をグループ毎で時分割駆動した場合、所定の方向に走行する記録紙Pにインク液滴iを吐出することから、時分割駆動されたグループのノズル44aより吐出されたインク液滴iの着弾位置が本来の位置より記録紙Pの走行方向にずれてしまう。このため、吐出制御部73では、インク液滴iを本来の位置に着弾させるために、インク液滴iを吐出する吐出タイミングの最も早いグループを基準にし、次に吐出タイミングが早いグループから順に記録紙Pの走行速度に応じて同じ時間間隔で駆動回路41bに駆動信号Sを出力するタイミングを遅延させる駆動信号Sの信号出力タイミングを補正した補正データをデータ生成部73aで生成してメモリ73bに記憶させ、この補正データに基づいてヘッドチップ27における略同時に駆動する発熱抵抗体42を駆動制御させる。
【0112】
これにより、プリンタ装置1では、例えばヘッドチップ27において略同時に駆動する発熱抵抗体42が多い場合でも、略同時に駆動する発熱抵抗体42を時分割駆動して一度に消費される電力を抑制且つインク液滴iが本来の位置に着弾できる。
【0113】
したがって、プリンタ装置1では、ヘッドチップ27において略同時に駆動する発熱抵抗体42を時分割駆動した場合でも、少なくとも基準線Lに接触、且つ基準線Lに対して記録紙Pの走行方向方向又は走行方向とは逆方向にずれてインクドット51が所定の方向に走行する記録紙Pの主面に形成され、記録紙Pの幅方向に沿った白スジが防止された高品質な画像を印刷できる。
【0114】
なお、以上の例では、プリンタ本体3に対してヘッドカートリッジ2が着脱可能であり、更に、ヘッドカートリッジ2に対してインクカートリッジ11が着脱可能なプリンタ装置1を例に取り説明したが、プリンタ本体3とヘッドカートリッジ2とが一体化さえたプリンタ装置にも適用可能である。
【0115】
また、以上の例では、記録紙Pに文字や画像を印刷するプリンタ装置1を例に取り説明したが、本発明は、微少量の液体を吐出する他の装置に広く適用することができる。例えば、本発明は、液体中のDNAチップ用吐出装置(特開2002−34560号公報)やプリント配線基板の微細な配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出したりする液体吐出装置に適用することもできる。
【0116】
さらに、以上の例では、発熱抵抗体42によってインク4を加熱しながらノズル44aから吐出させる電気熱変換方式を採用しているが、このような方式に限定されず、例えばピエゾ素子といった圧電素子等の電気機械変換素子等によってインクを電気機械的にノズルより吐出させる電気機械変換方式を採用したものであってもよい。
【0117】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、対象物の走行速度にムラがあっても、吐出手段における各液室に設けられた圧力発生素子のうちの1つ以上を異なるタイミングで駆動させることで、対象物の走行方向と略直交方向に並設された吐出口より略真下に吐出された液滴の1つ以上が、対象物の走行方向又は走行方向とは逆方向にずれて着弾されることから、白スジによる画質の劣化を防止できる。
【0118】
また、本発明によれば、印刷時にオーバーラップ部を設けることなく白スジを防止できることから、印刷に係る時間を大幅に短縮して優れた画質の印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンタ装置を示す斜視図である。
【図2】同インクジェットプリンタ装置に備わるインクジェットプリントヘッドカートリッジを示す斜視図である。
【図3】同インクジェットプリントヘッドカートリッジにインクカートリッジが装着された状態を示す断面図である。
【図4】同インクジェットプリントヘッドカートリッジにインクカートリッジが装着された際にインク供給部の供給口が弁により閉塞された状態を示す模式図である。
【図5】同インクジェットプリントヘッドカートリッジにインクカートリッジが装着された際にインク供給部の供給口が開放された状態を示す模式図である。
【図6】同インクジェットプリントヘッドカートリッジとヘッドチップの関係を示す断面図である。
【図7】同インクジェットプリントヘッドカートリッジの接続部における弁機構の弁が閉じた状態を示す断面図である。
【図8】同インクジェットプリントヘッドカートリッジの接続部における弁機構の弁が開いた状態を示す断面図である。
【図9】同インクジェットプリントヘッドカートリッジのヘッドチップを示す断面図である。
【図10】同ヘッドチップを示す分解斜視図である。
【図11】同ヘッドチップを示す平面図である。
【図12】同ヘッドチップにおいて、インク気泡が発生した状態を示す断面図である。
【図13】同ヘッドチップにおいて、発生したインク気泡が押圧してインク液滴をノズルより吐出する状態を示す断面図である。
【図14】同ヘッドチップより吐出されたインク液滴によるインクドットを模式的に示す図である。
【図15】同インクジェットプリンタ装置の一部を透視して示す側面図である。
【図16】同インクジェットプリンタ装置の制御回路を説明するブロック図である。
【図17】同制御回路の吐出制御部が生成した吐出制御データに基づいてヘッドチップがインク液滴を吐出することを説明しており、同図(A)は吐出制御部を示す模式図であり、同図(B)はヘッドチップを示す模式図であり、同図(C)は記録紙にインクドットが形成された状態を示す模式図である。
【図18】同インクジェットプリンタ装置の印刷動作を説明するフローチャートである。
【図19】同インクジェットプリンタ装置において、ヘッドキャップ開閉機構が開いている状態を一部透視して示す側面図である。
【図20】同ヘッドチップより吐出したインク液滴が記録紙に着弾してインクドットが形成された状態を模式的に示す図である。
【図21】従来のプリンタ装置で印刷を行ったときの色の濃度ムラや白スジが発生した状態を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
1 インクジェットプリンタ装置、2 インクジェットプリントヘッドカートリッジ、3 プリンタ本体、4 インク、11 インクカートリッジ、27 ヘッドチップ、41 回路基板、41b 駆動回路、42 発熱抵抗体、43 フィルム、44 ノズルシート、44a ノズル、45 インク液室、46 インク流路、51 インクドット、71 制御回路、73 吐出制御部、73a データ生成部、73b メモリ
【発明の属する技術分野】
本発明は、液室内の液体を圧力発生素子が発生した圧力で押圧することにより対象物と対向する吐出口より吐出させる液体吐出装置及び液体吐出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体を吐出する装置として、対象物となる記録紙に対してヘッドチップよりインクを吐出させて、画像や文字を記録するプリンタ装置がある。プリンタ装置には、インクジェット方式があり、このインクジェット方式を用いたプリンタ装置は、低ランニングコスト、装置の小型化、印刷画像のカラー化が容易という利点がある。
【0003】
インクジェット方式を用いたプリンタ装置では、例えばイエロー、マゼンダ、シアン、ブラック等のように複数の色のインクがそれぞれ充填されたインクカートリッジからヘッドチップのインク液室等に供給される。そして、このプリンタ装置では、インク液室等に供給されたインクを、インク液室内に配置された発熱抵抗体等で加熱し、発熱抵抗体上のインクに気泡を発生させ、この気泡が割れて消えるときのエネルギーによりインクがヘッドチップに設けられた微小なインク吐出口から吐出されて対象物となる記録紙等に対して画像や文字を印刷される。
【0004】
インクジェット方式のプリンタ装置の中には、インクカートリッジがインクヘッド部に装着され、インクカートリッジが装着されたインクヘッド部が記録紙の幅方向、すなわち記録紙の走行方向と略直交する方向に移動することによって所定の色のインクを記録紙に着弾させるシリアル型のプリンタ装置がある。また、記録紙の用紙幅とほぼ同じ範囲をインクの吐出範囲とした、すなわちライン状にインクを吐出するインク吐出口が設けられたライン型のプリンタ装置がある。
【0005】
シリアル型のプリンタ装置は、インクヘッド部が記録紙の走行方向と略直交する方向に移動するときに記録紙の走行を停止させ、停止している記録紙にインクヘッド部が移動しながらインクを吐出、着弾させ、これを繰り返すことで印刷する。一方、ライン型のプリンタ装置は、インクヘッド部が固定、若しくは印刷村を避けるための僅かな微動できる程度に固定されており、連続的に走行している記録紙にインクヘッド部がライン状にインクを吐出、着弾させることで印刷する。
【0006】
このため、このライン型のプリンタ装置は、シリアル型と異なりインクヘッド部を移動させないものであるから、シリアル型のプリンタ装置に比べて高速印刷を行うことが可能となる。また、ライン型のプリンタ装置は、インクヘッド部を移動させる必要がないことから、各インクカートリッジを大型化することができ、インクカートリッジのインク容量を増やすことができる。このようなライン型のプリンタ装置では、インクヘッド部が移動するものではないため構成の簡素化を図ることができ、各インクカートリッジにインクヘッド部を一体的に設けるようにしている(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−301199号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したライン型のプリンタ装置では、走行している記録紙にインクが着弾するタイミングの精度により画像や文字等の印刷精度が左右されてしまう。具体的に、例えば記録紙の走行速度が速いときは、記録された画像や文字等が記録紙の走行方向に伸びて印刷されてしまい、記録紙の走行速度が遅いときは、記録された画像や文字等が記録紙の走行方向に縮んで印刷されうといった問題が起こる。
【0009】
このような問題を解決するために、ライン型のプリンタ装置では、例えば記録紙を走行させるためのモータ等の制御にサーボモータ等を使用し、記録紙の走行速度にムラが出ないように走行速度を一定にすることで、記録紙にインクが着弾するタイミングを制御している。
【0010】
しかしながら、以上のようなサーボモータ等を用いた場合でも、図21に示すように、画像等の伸びや縮みは解消されるものの記録紙にインクが着弾するタイミングに僅か数ミクロンの誤差があると、記録紙の走行方向、すなわち図21中矢印X方向に色の濃度にムラが生じることがある。具体的には、サーボモータによる記録紙の走行速度の制御が僅か数ミクロン遅れると、この部分の色の濃度が濃くなってしまう。一方、サーボモータによる記録紙の走行速度の制御が僅か数ミクロン速まると、この部分の色の濃度が薄くなり、さらに記録紙の走行速度の制御が数十ミクロン、数百ミクロンのレベルで速まると、記録紙の走行方向と略直交方向に亘ってインクが着弾してない部分、いわゆる白スジが生じてしまう。そして、このような記録紙の走行方向に起きる色の濃度ムラや白スジは、例えば色調の階調が変化しないような印刷を行うときに顕著に現れてしまう。なお、図21中101は、インクが記録紙に着弾したときに形成されるインクドットを示している。
【0011】
このような問題は、例えばシリアル型のプリンタ装置を用いれば解決できる。具体的に、シリアル型のプリンタ装置では、記録紙の走行を停止させて印刷する際に、前回の印刷箇所と今回の印刷箇所との境界を所定の範囲で重なるような、いわゆるオーバーラップ部を設けた印刷を行うことで記録紙の走行方向に起きる色の濃度ムラを防止している。
【0012】
しかしながら、シリアル型のプリンタ装置では、オーバーラップ部を設けていることにより、印刷に係る時間が長くなったり、印刷に使用するインクの量が多くなったりするといった問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、印刷に係る時間を短時間にし、且つ高画質な印刷が得られる優れた液体吐出装置及び液体吐出方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成する本発明に係る液体吐出装置は、対象物を所定の方向に走行させる走行手段と、液体を貯留する複数の液室と、各液室に液体を供給する供給部と、各液室にそれぞれ設けられ、各液室に貯留された液体を押圧する圧力発生素子と、各圧力発生素子により押圧された液体を各液室から液滴の状態で略真下に吐出させる吐出口とを有し、各吐出口が対象物の走行方向と略直交方向に並設された吐出手段と、各圧力発生素子の駆動を制御することで、各吐出口から液滴が吐出されるタイミングを制御する吐出制御手段とを備え、吐出制御手段によって吐出手段における各圧力発生素子のうち1つ以上が異なるタイミングで駆動されることで、各吐出口から略真下に吐出された液滴のうち1つ以上を、対象物の主面における対象物の走行方向と略直交する基準線に対して少なくとも一部が接触すると共に、この基準線に対して対象物の走行方向又は走行方向とは逆方向にずらして、対象物の主面に着弾させることを特徴としている。
【0015】
この液体吐出装置では、吐出制御手段によって吐出手段における各圧力発生素子のうちの1つ以上が異なるタイミングで駆動されることで、対象物の走行方向と略直交方向に並設された各吐出口より略真下に吐出された液滴のうち1つ以上を、対象物の主面における対象物の走行方向と略直交する基準線に対して少なくとも一部が接触すると共に、この基準線に対して対象物の走行方向又は走行方向とは逆方向にずらして、対象物の主面に着弾させる。
【0016】
したがって、この液体吐出装置では、対象物の主面における基準線に対して対象物の走行方向又は走行方向とは逆方向にずれて着弾した液滴が、走行する対象物の走行速度にムラが生じたときに起こる走行方向と略直交方向に沿った白スジを防止する。
【0017】
本発明に係る液体の吐出方法は、液体を貯留する複数の液室と、各液室に液体を供給する供給部と、各液室にそれぞれ設けられ、各液室に貯留された液体を押圧する圧力発生素子と、各圧力発生素子により押圧された液体を各液室から液滴の状態で略真下に吐出させる吐出口とを有する吐出手段が、液滴を各吐出口と対向し且つ所定の方向に走行する対象物の主面に、対象物の走行方向と略直交方向に並設された各吐出口より吐出させるときに、各圧力発生素子のうちの1つ以上を異なるタイミングで駆動させることで、各吐出口から略真下に吐出された液滴のうち1つ以上を、対象物の主面における対象物の走行方向と略直交する基準線に対して少なくとも一部が接触すると共に、この基準線に対して対象物の走行方向又は走行方向とは逆方向にずらして、対象物の主面に着弾させることを特徴としている。
【0018】
この液体吐出方法では、各圧力発生素子のうちの1つ以上を異なるタイミングで駆動させることで、対象物の走行方向と略直交方向に並設された各吐出口から略真下に吐出された液滴のうち1つ以上を、対象物の主面における対象物の走行方向と略直交する基準線に対して少なくとも一部が接触すると共に、この基準線に対して対象物の走行方向又は走行方向とは逆方向にずらして、対象物の主面に着弾させる。
【0019】
したがって、この液体吐出方法では、対象物の主面における基準線に対して対象物の走行方向又は走行方向とは逆方向にずれて着弾した液滴によって、走行する対象物の走行速度にムラが生じたときに起こる走行方向と略直交方向に沿った白スジを防止できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明が適用されたインクジェットプリンタ装置について、図面を参照して説明する。図1に示すように、本発明が適用されたインクジェットプリンタ装置(以下、プリンタ装置と記す。)1は、所定の方向に走行する記録紙Pに対してインク等を吐出して画像や文字を印刷するものである。また、このプリンタ装置1は、記録紙Pの印刷幅に合わせて、記録紙Pの幅方向、すなわち図1中矢印W方向にインク吐出口(ノズル)を略ライン状に並設した、いわゆるライン型のプリンタ装置である。
【0021】
このプリンタ装置1は、インク4を吐出するインクジェットプリントヘッドカートリッジ(以下、ヘッドカートリッジと記す。)2と、このヘッドカートリッジ2を装着するプリンタ本体3とを備える。プリンタ装置1は、ヘッドカートリッジ2がプリンタ本体3に対して着脱可能であり、更に、ヘッドカートリッジ2に対してインク供給源となるインクカートリッジ11y,11m,11c,11kが着脱可能となっている。このプリンタ装置1では、イエローのインクカートリッジ11y、マゼンタのインクカートリッジ11m、シアンのインクカートリッジ11c、ブラックのインクカートリッジ11kが使用可能となっており、また、プリンタ本体3に対して着脱可能なヘッドカートリッジ2と、ヘッドカートリッジ2に対して着脱可能なインクカートリッジ11y,11m,11c,11kとを消耗品として交換可能になっている。
【0022】
このようなプリンタ装置1は、記録紙Pを積層して収納するトレイ65aをプリンタ本体3の前面底面側に設けられたトレイ装着口に装着することにより、トレイ65aに収納されている記録紙Pをプリンタ本体3内に給紙できる。トレイ65aは、プリンタ本体3の前面のトレイ装着口に装着されると、給排紙機構64により記録紙Pが給紙口65からプリンタ本体3の背面側に給紙される。プリンタ本体3の背面側に送られた記録紙Pは、反転ローラ83により走行方向が反転され、往路の上側をプリンタ本体3の背面側から前面側に送られる。プリンタ本体3の背面側から前面側に送られる記録紙Pは、プリンタ本体3の前面に設けられた排紙口66より排紙されるまでに、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置より入力された文字データや画像データに応じた印刷データが文字や画像として印刷される。
【0023】
記録紙Pに印刷を行うヘッドカートリッジ2は、プリンタ本体3の上面側から、すなわち図1中矢印A方向から装着され、給排紙機構64により走行する記録紙Pに対してインク4を吐出して印刷を行う。そこで、先ず、上述したプリンタ装置1を構成するプリンタ本体2に対して着脱可能なヘッドカートリッジ2と、このヘッドカートリッジ2に着脱されるインクカートリッジ11y,11m,11c,11kについて図面を参照して説明する。
【0024】
このヘッドカートリッジ2は、導電性の液体であるインク4を、例えば電気熱変換式又は電気機械変換式等を用いた圧力発生手段が発生した圧力により微細に粒子化して吐出し、記録紙P等の対象物上にインク4を液滴状態にして吹き付ける。具体的に、ヘッドカートリッジ2は、図2及び図3に示すように、カートリッジ本体21を有し、このカートリッジ本体21には、インク4が充填された容器であるインクカートリッジ11y,11m,11c,11kが装着される。なお、以下、インクカートリッジ11y,11m,11c,11kを単にインクカートリッジ11ともいう。
【0025】
ヘッドカートリッジ2に着脱可能なインクカートリッジ11は、図3に示すように、強度や耐インク性を有するポリプロピレン等の樹脂材料等を射出成形することにより成形されるカートリッジ容器11aを有し、このカートリッジ容器11aは、長手方向を使用する記録紙Pの幅方向の寸法と略同じ寸法となす略矩形状に形成され、内部に貯留するインク容量を最大限に増やす構成となっている。
【0026】
具体的に、インクカートリッジ11を構成するカートリッジ容器11aには、インク4を収容するインク収容部12と、インク収容部12からヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体21にインク4を供給するインク供給部13と、外部よりインク収容部12内に空気を取り込む外部連通孔14と、外部連通孔14より取り込まれた空気をインク収容部12内に導入する空気導入路15と、外部連通孔14と空気導入路15との間でインク4を一時的に貯留する貯留部16と、インクカートリッジ11をカートリッジ本体21に係止するための係止突部17及び係合段部18とが設けられている。
【0027】
インク収容部12は、気密性の高い材料によりインク4を収容するための空間を形成している。インク収容部12は、略矩形に形成され、長手方向の寸法が使用する記録紙Pの幅方向、すなわち記録紙Pの走行方向に対して略直交する方向の寸法と略同じ寸法となるように形成されている。
【0028】
インク供給部13は、インク収容部12の下側略中央部に設けられている。このインク供給部13は、インク収容部12と連通した略突形状のノズルであり、このノズルの先端が後述するヘッドカートリッジ2の接続部26に嵌合されることにより、インクカートリッジ2のカートリッジ容器11aとヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体21を接続する。
【0029】
インク供給部13は、図4及び図5に示すように、インクカートリッジ11の底面13aにインク4を供給する供給口13bが設けられ、この底面13aに、供給口13bを開閉する弁13cと、弁13cを供給口13bの閉塞する方向に付勢するコイルバネ13dと、弁13cを開閉する開閉ピン13eとを備えている。ヘッドカートリッジ2の接続部26に接続されるインク4を供給する供給口13dは、図4に示すように、インクカートリッジ11がヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体21に装着される前の段階において、付勢部材であるコイルバネ13dの付勢力により弁13cが供給口13dを閉じる方向に付勢され閉塞されている。そして、インクカートリッジ11がカートリッジ本体21に装着されると、図5に示すように、開閉ピン13eがヘッドカートリッジ2を構成するカートリッジ本体21の接続部26の上部によりコイルばね13dの付勢方向とは反対の方向に押し上げられる。これにより、押し上げられた開閉ピン13eは、コイルバネ13dの付勢力に抗して弁13cを押し上げて供給口13bを開放する。このようにして、インクカートリッジ11のインク供給部13は、ヘッドカートリッジ2の接続部26に接続され、インク収容部12とインク溜め部31とを連通し、インク溜め部31へのインク4の供給が可能な状態となる。
【0030】
また、インクカートリッジ11をヘッドカートリッジ2側の接続部26から引き抜くとき、すなわちインクカートリッジ11をヘッドカートリッジ2の装着部22より取り外すときは、弁13cの開閉ピン13eによる押し上げ状態が解除され、弁13cがコイルバネ13dの付勢方向に移動して供給口13bを閉塞する。これにより、インクカートリッジ11をカートリッジ本体21に装着する直前にインク供給部13の先端部が下方を向いている状態であってもインク収容部12内のインク4が漏れることを防止することができる。また、インクカートリッジ11をカートリッジ本体21から引き抜いたときには、直ちに弁13cが供給口13bを閉塞するので、インク供給部13の先端からインク4が漏れることを防止できる。
【0031】
外部連通孔14は、図3に示すように、インクカートリッジ11外部からインク収容部12に空気を取り込む通気口であり、ヘッドカートリッジ2の装着部22に装着されたときも、外部に臨み外気を取り込むことができるように、装着部22への装着時に外部に臨む位置であるカートリッジ容器11aの上面、ここでは上面略中央に設けられている。外部連通孔14は、インクカートリッジ11がカートリッジ本体21に装着されてインク収容部12からカートリッジ本体21側にインク4が流下した際に、インク収容部12内のインク4が減少した分に相当する分の空気を外部よりインクカートリッジ11内に取り込む。
【0032】
空気導入路15は、インク収容部12と外部連通孔14とを連通し、外部連通孔14より取り込まれた空気をインク収容部12内に導入する。これにより、このインクカートリッジ11がカートリッジ本体21に装着された際に、ヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体21にインク4が供給されてインク収容部12内のインク4が減少し内部が減圧状態となっても、インク収容部12には、空気導入路15によりインク収容部12に空気が導入されることから、内部の圧力が平衡状態に保たれてインク4をカートリッジ本体21に適切に供給することができる。
【0033】
貯留部16は、外部連通孔14と空気導入路15との間に設けられ、インク収容部12に連通する空気導入路15よりインク4が漏れ出た際に、いきなり外部に流出することがないようにインク4を一時的に貯留する。
【0034】
この貯留部16は、長い方の対角線をインク収容部12の長手方向とした略菱形に形成され、インク収容部12の最も下側に位置する頂部に、すなわち短い方の対角線上の下側に空気導入路15を設けるようにし、インク収容部12より進入したインク4を再度インク収容部12に戻すことができるようにしている。また、貯留部16は、短い方の対角線上の最も下側の頂部に外部連通孔14を設けるようにし、インク収容部12より進入したインク4が外部連通孔14より外部に漏れにくくする。
【0035】
係止突部17は、インクカートリッジ11の短辺の一方の側面に設けられた突部であり、ヘッドカートリッジ2のカートリッジ本体21のラッチレバー24に形成された係合孔24aと係合する。この係止突部17は、上面がインク収容部12の側面に対して略直交するような平面で形成されると共に、下面は側面から上面に向かって傾斜するように形成されている。係合段部18は、インクカートリッジ11の係止突部17が設けられた側面の反対側の側面の上部に設けられている。係合段部18は、カートリッジ容器11aの上面と一端を接する傾斜面18aと、この傾斜面18aの他端と他方の側面と連続し、上面と略平行な平面18bとからなる。インクカートリッジ11は、係合段部18が設けられていることで、平面18bが設けられた側面の高さがカートリッジ容器11aの上面より1段低くなるように形成され、この段部でカートリッジ本体21の係合片23と係合する。係合段部18は、ヘッドカートリッジ2の装着部22に挿入されるとき、挿入端側の側面に設けられ、ヘッドカートリッジ2の装着部22側の係合片23に係合することで、インクカートリッジ11を装着部22に装着する際の回動支点部となる。
【0036】
以上のような構成のインクカートリッジ11は、上述した構成の他に、例えばインク収容部12内のインク4の残量を検出するための残量検出手段や、インクカートリッジ11y,11m,11c,11kを識別するための識別手段等を備えている。
【0037】
次に、以上のように構成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインク4を収納したインクカートリッジ11y,11m,11c,11kが装着されるヘッドカートリッジ2について説明する。
【0038】
ヘッドカートリッジ2は、図2及び図3に示すように、カートリッジ本体21を有し、このカートリッジ本体21には、インクカートリッジ11が装着される装着部22y,22m,22c,22k(以下、全体を示すときには単に装着部22ともいう。)と、インクカートリッジ11を固定する係合片23及びラッチレバー24と、インクカートリッジ11を取り出し方向に付勢する付勢部材25と、インク供給部13と接続されてインク4が供給される接続部26と、インク4を吐出するヘッドチップ27と、ヘッドチップ27を保護するヘッドキャップ28とを有している。
【0039】
インクカートリッジ11が装着される装着部22は、インクカートリッジ11が装着されるように上面をインクカートリッジ11の挿脱口として略凹形状に形成され、ここでは4本のインクカートリッジ11が記録紙Pの幅方向と略直交方向、すなわち記録紙Pの走行方向に並んで収納される。装着部22は、インクカートリッジ11が収納されることから、インクカートリッジ11と同様に印刷幅の方向に長く設けられている。カートリッジ本体21には、インクカートリッジ11が収納装着される。
【0040】
装着部22は、図2に示すように、インクカートリッジ11が装着される部分であり、イエロー用のインクカートリッジ11yが装着される部分を装着部22yとし、マゼンタ用のインクカートリッジ11mが装着される部分を装着部22mとし、シアン用のインクカートリッジ11cが装着される部分を装着部22cとし、ブラック用のインクカートリッジ11kが装着される部分を装着部22kとし、各装着部22y,22m,22c,22kは、隔壁22aによりそれぞれ隣接するように区画されている。なお、上述したようにブラックのインクカートリッジ11kは、インク4の内容量が大きくなるように厚く形成されているため、幅が他のインクカートリッジ11y,11m,11cよりも広く設けられており、これに合わせて装着部22kの幅も他の装着部22y,22m,22cよりも広く設けられている。
【0041】
以上のようにインクカートリッジ11が装着される装着部22の開口端には、図3に示すように、係合片23が設けられている。この係合片23は、装着部22の長手方向の一端縁に設けられており、インクカートリッジ11の係合段部18と係合する。インクカートリッジ11は、インクカートリッジ11の係合段部18側を挿入端として斜めに装着部22内に挿入し、係合段部18と係合片23との係合位置を回動支点として、インクカートリッジ11の係合段部18が設けられていない側を装着部22側に回動させるようにして装着部22に装着することができる。これによって、インクカートリッジ11は、装着部22に容易に装着することができる。
【0042】
ラッチレバー24は、板バネを折曲して形成されるものであり、装着部22の係合片23に対して反対側の側面、すなわち長手方向の他端の側面に設けられている。ラッチレバー24は、基端部が装着部22を構成する長手方向の他端の側面の底面側に一体的に設けられ、先端側がこの側面に対して近接離間する方向に弾性変位するように形成され、先端側に係合孔24aが形成されている。ラッチレバー24は、インクカートリッジ11が装着部22に装着されると同時に、弾性変位し、係合孔24aがインクカートリッジ11の係止突部17と係合し、装着部22に装着されたインクカートリッジ11が装着部22より脱落しないようにする。
【0043】
付勢部材25は、インクカートリッジ11の係合段部18に対応する側面側の底面上にインクカートリッジ11を取り外す方向に付勢する板バネを折曲して設けられる。付勢部材25は、折曲することにより形成された頂部を有し、底面に対して近接離間する方向に弾性変位し、頂部でインクカートリッジ11の底面を押圧し、装着部22に装着されているインクカートリッジ11を装着部22より取り外す方向に付勢するイジェクト部材である。付勢部材25は、ラッチレバー24の係合孔24aと係止突部17との係合状態が解除されたとき、装着部23よりインクカートリッジ11を排出する。
【0044】
各装着部22y,22m,22c,22kの長手方向略中央には、インクカートリッジ11y,11m,11c,11kが装着部22y,22m,22c,22kに装着されたとき、インクカートリッジ11y,11m,11c,11kのインク供給部13が接続される接続部26が設けられている。この接続部26は、装着部22に装着されたインクカートリッジ11のインク供給部13からカートリッジ本体21の底面に設けられたインク4を吐出するヘッドチップ27にインク4を供給するインク供給路となる。
【0045】
具体的に、接続部26は、図6に示すように、インクカートリッジ11から供給されるインク4を溜めるインク溜め部31と、接続部26に連結されるインク供給部13をシールするシール部材32と、インク4内の不純物を除去するフィルタ33と、ヘッドチップ27側への供給路を開閉する弁機構34とを有している。
【0046】
インク溜め部31は、インク供給部13と接続されインクカートリッジ11から供給されるインク4を溜める空間部である。シール部材32は、インク溜め部31の上端に設けられた部材であり、インクカートリッジ11のインク供給部13が接続部26のインク溜め部31に接続されるとき、インク4が外部に漏れないようインク溜め部31とインク供給部13との間を密閉する。フィルタ33は、インクカートリッジ11の着脱時等にインク4に混入してしまった塵や埃等のごみを取り除くものであり、インク溜め部31よりも下流に設けられている。
【0047】
弁機構34は、図7及び図8に示すように、インク溜め部31からインク4が供給されるインク流入路34aと、インク流入路34aからインク4が流入するインク室34bと、インク室34bからインク4を流出するインク流出路34cと、インク室34bをインク流入路34a側とインク流出路34c側との間に設けられた開口部34dと、開口部34dを開閉する弁34eと、弁34eを開口部34dの閉塞する方向に付勢する付勢部材34fと、付勢部材34fの強さを調節する負圧調整ネジ34gと、弁34eと接続される弁シャフト34hと、弁シャフト34hと接続されるダイアフラム34iとを有する。
【0048】
インク流入路34aは、インク溜め部31を介してインクカートリッジ11のインク収容部12内のインク4をヘッドチップ27に供給可能にインク収容部12と連結する供給路である。インク流入路34aは、インク溜め部31の底面側からインク室34bまで設けられている。インク室34bは、インク流入路34a、インク流出路34c及び開口部34dと一体となって形成された略直方体をなす空間部であり、インク流入路34aからインク4が流入し、開口部34dを介してインク流出路34cからインク4を流出する。インク流出路34cは、インク室34bから開口部34dを介してインク4が供給されて、更にヘッドチップ27と連結された供給路である。インク流出路34cは、インク室34bの底面側からヘッドチップ27まで延在されている。
【0049】
弁34eは、開口部34dを閉塞してインク流入路34a側とインク流出路34c側とを分割する弁であり、インク室34b内に配設される。弁34eは、付勢部材34fの付勢力と、弁シャフト34hを介して接続されたダイアフラム34iの復元力と、インク流出路34c側のインク4の負圧によって上下に移動する。弁34eは、下端に位置するとき、インク室34bをインク流入路34a側とインク流出路34c側とを分離するように開口部34dを閉塞し、インク流出路34cへのインク4の供給を遮断する。弁34eは、付勢部材34fの付勢力に抗して上端に位置するとき、インク室34bをインク流入路34a側とインク流出路34c側とを遮断せずに、ヘッドチップ27へインク4の供給を可能とする。なお、弁34eを構成する材質は、その種類を問わないが、高い閉塞性を確保するため例えばゴム弾性体、いわゆるエラストマー等により形成される。
【0050】
付勢部材34fは、例えば圧縮コイルバネ等であり、弁34eの上面とインク室34bの上面との間で負圧調整ネジ34gと弁34eとを接続し、付勢力により弁34eを開口部34dの閉塞する方向に付勢する。負圧調整ネジ34gは、付勢部材34fの付勢力を調整するネジであり、負圧調整ネジ34gを調整することで付勢部材34fの付勢力を調整することができるようにしている。これにより、負圧調整ネジ34gは、詳細は後述するが開口部34dを開閉する弁34eを動作させるインク4の負圧を調整することができる。
【0051】
弁シャフト34hは、一端に接続された弁34eと、他端に接続されたダイアフラム34iとを連結して運動するように設けられたシャフトである。ダイアフラム34iは、弁シャフト34hの他端に接続された薄い弾性板である。このダイアフラム34iは、インク室34bのインク流出路34c側の一主面と、外気と接する他主面とからなり、大気圧とインク4の負圧により外気側とインク流出路34c側とに弾性変位する。
【0052】
以上のような弁機構34では、図7に示すように、弁34eが付勢部材34fの付勢力とダイアフラム34iの付勢力とによってインク室34bの開口部34dを閉塞するように押圧されている。そして、ヘッドチップ27からインク4が吐出された際に、開口部34dで分割されたインク流出路34c側のインク室34bのインク4の負圧が高まると、図8に示すように、インク4の負圧によりダイアフラム34iが大気圧により押し上げられて、弁シャフト34hと共に弁34eを付勢部材34fの付勢力に抗して押し上げる。このとき、インク室34bのインク流入路34a側とインク流出路34c側と間の開口部34dが開放され、インク4がインク流入路34a側からインク流出路34c側に供給される。そして、インク4の負圧が低下してダイアフラム34iが復元力により元の形状に戻り、付勢部材34fの付勢力により弁シャフト34hと共に弁34eをインク室34bが閉塞するように引き下げる。以上のようにして弁機構34では、インク4を吐出する度にインク4の負圧が高まると、上述の動作を繰り返す。
【0053】
また、この接続部26では、インク収容部12内のインク4がインク室34bに供給されると、インク収容部12内のインク4が減少するが、このとき、空気導入路15から外気がインクカートリッジ11内に入り込む。インクカートリッジ11内に入り込んだ空気は、インクカートリッジ11の上方に送られる。これにより、インク液滴iが後述するノズル44aから吐出される前の状態に戻り、平衡状態となる。このとき、空気導入路15内にインク4がほとんどない状態で平衡状態となる。
【0054】
ヘッドチップ27は、図6に示すように、カートリッジ本体21の底面に沿って配設されており、接続部26から供給されるインク液滴iを吐出するインク吐出口である後述するノズル44aが各色毎、記録紙Pの幅方向、すなわち図6中矢印W方向に略ライン状をなすように設けられている。
【0055】
ヘッドキャップ28は、図2に示すように、ヘッドチップ27を保護するために設けられたカバーであり、インク4を吐出する際にはヘッドチップ27より取り外される。ヘッドキャップ28は、開閉方向に設けられた溝部28aと、長手方向に設けられヘッドチップ27の吐出面27aに付着した余分なインク4を吸い取る清掃ローラ28bとを有している。ヘッドキャップ28は、開閉動作時にこの溝部28aに沿ってインクカートリッジ11の短手方向に開閉するようにされており、このとき清掃ローラ28bがヘッドチップ27の吐出面27aに当接しながら回転することで、余分なインク4を吸い取り、ヘッドチップ27の吐出面27aを清掃する。この清掃ローラ28bには、例えば吸水性の高い部材が用いられる。また、ヘッドキャップ28は、印刷動作しないときにはヘッドチップ27内のインク4が乾燥しないようにする。
【0056】
以上のような構成のヘッドカートリッジ2は、上述した構成の他に、例えばインクカートリッジ11内におけるインク残量を検出する手段や、接続部26にインク供給部13が接続されたときにインク4の有無を検出する手段等を備えている。
【0057】
上述したヘッドチップ27は、各色のインク4に対応して、図9乃至図11に示すように、ベースとなる回路基板41と、インク4を加熱する発熱抵抗体42と、インク4の漏れを防ぐフィルム43と、インク4が液滴の状態で吐出されるノズル44aが多数設けられたノズルシート44と、これらに囲まれてインク4が供給される空間であるインク液室45と、インク液室45にインク4を供給するインク流路46とを有する。なお、図11では、ノズル44aの位置を1点鎖線で示している。
【0058】
回路基板41は、シリコン等の半導体基板であり、その一主面41aに、インク液室45内のインク4を押圧するための圧力を発生させる圧力発生素子となる発熱抵抗体42が形成されており、発熱抵抗体42と回路基板41上の駆動回路41bとが接続されている。この駆動回路41bは、例えば後述する吐出制御部73等から出力される発熱抵抗体42を駆動させるための信号により発熱抵抗体を駆動制御させるロジックIC(Integrated Circuit)やドライバートランジスタ等で構成されている。
【0059】
発熱抵抗体42は、例えば吐出制御回路等により駆動制御され、吐出制御回路から電流が供給されると発熱し、インク液室45内のインク4を加熱してインク液室54内の内圧を高める。このようにして加熱されたインク4は、ノズルシート44に設けられたノズル44aから液滴の状態で吐出する。
【0060】
フィルム43は、回路基板41の一主面41aに積層されている。フィルム43は、例えば露光硬化型のドライフィルムレジストからなるものであり、回路基板41の一主面41aの略全体に積層された後、フォトリソグラフプロセスによって不要部分が除去され、発熱抵抗体42を一括して略凹状に囲むように形成されている。フィルム43は、発熱抵抗体42を囲む部分がインク液室45の一部を形成する。
【0061】
ノズルシート44は、インク液滴iを吐出させるためのノズル44aが形成されたシート状部材であり、フィルム43の回路基板41と反対側にノズル44aと発熱抵抗体42とが対向するように設けられる。ノズル44aは、ノズルシート44に略円形状に開口された微小孔であり、発熱抵抗体42と対向し、且つヘッドチップ27の吐出面27aとなるノズルシート44の外部側の主面内の記録紙Pの幅方向、すなわち図10及び図11中矢印W方向に略平行に並設されている。なお、ノズルシート44はインク液室45の一部を構成する。
【0062】
インク液室45は、回路基板41、発熱抵抗体42、フィルム43及びノズルシート44に囲まれた空間部であり、インク流路46からのインク4が供給される。インク液室45のインク4は、発熱抵抗体42により加熱され、内圧が上昇して押圧され、ノズル44aより外部に吐出される。
【0063】
インク流路46は、接続部26のインク流出路34cと接続されており、接続部26に接続されたインクカートリッジ11からインク4が供給され、連通する各インク液室45にインク4を送り込む流路となる。すなわち、インク液室45と接続部26とを連通させており、インクカートリッジ11から供給されるインク4をインク液室45内に供給させるインク供給部となる。
【0064】
上述した1個のヘッドチップ27には、インク液室45毎に発熱抵抗体42が設けられ、発熱抵抗体42が設けられたインク液室45を100個程度備えている。そして、ヘッドチップ27においては、プリンタ装置1の吐出制御回路等からの指令によってこれら発熱抵抗体42を適宜選択して駆動させ、駆動した発熱抵抗体42dに対応するインク液室45内のインク4を、インク液室45に対応するノズル44aから液滴の状態で吐出させる。
【0065】
すなわち、ヘッドチップ27においては、図12に示すように、ヘッドチップ27と結合されたインク流路46によりインク4が供給され、インク液室45内にインク4が満たされる。そして、発熱抵抗体42に短時間、例えば、1〜3μsecの間パルス電流を流すことにより、発熱抵抗体42が急速に加熱され、その結果、発熱抵抗体42と接する部分のインク4に気相のインク気泡Bが発生し、そのインク気泡Bの膨張によってある体積のインク4が押圧される(インク4が沸騰する)。これによって、ヘッドチップ27においては、図13に示すように、ノズル44aに接する部分でインク気泡Bに押圧されたインク4と同等の体積のインク4がインク液滴iとしてノズル44aから略真下に吐出され、記録紙P上に着弾される。
【0066】
以上のようなヘッドチップ27では、図14に示すように、各インク液室45に設けられた発熱抵抗体42のうち1つ以上を異なるタイミングで駆動させることで、記録紙Pの走行方向と略直交方向に並設されたノズル44aより略真下に吐出されたインク液滴iのうち1つ以上を、記録紙Pの主面における記録紙Pの対象物の走行方向、すなわち図14中矢印C方向と略直交する基準線Lに対して少なくとも一部接触、且つ基準線Lに対して記録紙Pの走行方向又は走行方向とは逆方向にずらして、記録紙Pの主面に着弾させる。これにより、記録紙Pの主面には、基準線Lに対して記録紙Pの走行方向又は走行方向とは逆方向にずれたインクドット51が形成されることになる。
【0067】
したがって、このヘッドチップ27では、少なくとも基準線Lと一部が接触、且つ基準線Lに対して記録紙Pの走行方向又は走行方向とは逆方向にインクドット51によって、例えば記録紙Pの走行速度にムラが生じたりして起こる白スジを防止させることが可能となる。
【0068】
次に、以上のように構成されたヘッドカートリッジ2が装着されるプリンタ装置1を構成するプリンタ本体3について図面を参照して説明する。
【0069】
プリンタ本体3は、上記図1及び図15に示すように、ヘッドカートリッジ2が装着されるヘッドカートリッジ装着部61と、ヘッドカートリッジ2をヘッドカートリッジ装着部61に保持、固定するためのヘッドカートリッジ保持機構62と、ヘッドキャップを開閉するヘッドキャップ開閉機構63と、記録紙Pを給排紙する給排紙機構64と、給排紙機構64に記録紙Pを供給する給紙口65と、給排紙機構64から記録紙Pが出力される排紙口66とを有する。
【0070】
ヘッドカートリッジ装着部61は、ヘッドカートリッジ2が装着される凹部であり、走行する記録紙にデータ通り印刷を行うため、ヘッドチップ27の吐出面27aと走行する記録紙Pの紙面とが略平行となるようにヘッドカートリッジ2が装着される。ヘッドカートリッジ2は、ヘッドチップ27内のインク詰まり等で交換する必要が生じる場合等があり、インクカートリッジ11程の頻度はないが消耗品であるため、ヘッドカートリッジ装着部61に対して着脱可能にヘッドカートリッジ保持機構62によって保持される。ヘッドカートリッジ保持機構62は、ヘッドカートリッジ装着部61にヘッドカートリッジ2を着脱可能に保持するための機構であり、ヘッドカートリッジ2に設けられたつまみ62aをプリンタ本体3の係止孔62b内に設けられた図示しないバネ等の付勢部材に係止することによってプリンタ本体3に設けられた基準面3aに圧着するようにしてヘッドカートリッジ2を位置決めして保持、固定できるようにしている。
【0071】
ヘッドキャップ開閉機構63は、ヘッドカートリッジ2のヘッドキャップ28を開閉する駆動部を有しており、印刷を行うときにヘッドキャップ28を開放してヘッドチップ27が記録紙Pに対して露出するようにし、印刷が終了したときにヘッドキャップ28を閉塞してヘッドチップ27を保護する。給排紙機構64は、記録紙Pを搬送する駆動部を有しており、給紙口65から供給される記録紙Pをヘッドカートリッジ2のヘッドチップ27まで搬送し、インク4が吐出された記録紙Pを排紙口66に搬送して装置外部へ出力する。給紙口65は、給排紙機構64に記録紙Pを供給する開口部であり、トレイ65a等に複数枚の記録紙Pを積層してストックすることができる。排紙口66は、インク液滴iが吐出された記録紙Pが給排紙機構64により搬送されて排出される。
【0072】
ここで、以上のように構成されたプリンタ装置1による印刷を制御する制御回路71について図面を参照して説明する。
【0073】
制御回路71は、図16に示すように、プリンタ本体3の各駆動部を駆動するプリンタ駆動部72と、各色のインク4に対応するヘッドチップ27の駆動回路41bを制御する吐出制御部73と、外部装置と信号の入出力を行う入出力端子74と、制御プログラム等が記録されたROM(Read Only Memory)75と、読み出された制御プログラム等が記録されるRAM(Random Access Memory)76と、各部の制御を行う制御部77とを有している。
【0074】
プリンタ駆動部72は、制御部77からの制御信号に基づき、ヘッドキャップ開閉機構63を構成する駆動モータを駆動させてヘッドキャップ28を開閉する。また、プリンタ駆動部72は、制御部77からの制御信号に基づき、給排紙機構64を構成する駆動モータを駆動させてプリンタ本体3の給紙口65から記録紙Pを給紙し、記録後に排紙口66から排紙する。
【0075】
吐出制御部73は、記録紙Pの走行方向と略直交方向に並設されたノズル44aより異なるタイミングでインク液滴iを吐出させる吐出制御のためのデータを生成するデータ生成部73aと、データ生成部73aで生成したデータを格納するメモリ73bとを備えている。
【0076】
データ生成部73aは、外部の情報処理装置78等から入力された印刷データ等に基づいてノズル44aよりインク液滴iを異なるタイミングで吐出させるための吐出制御データを生成する。具体的に、データ生成部73aは、情報処理装置78等から入力された印刷データ等に基づいて、記録紙Pの走行方向と略直交方向に並設されたノズル44aがインク液滴iを吐出する順番を例えば乱数回路等により発生した乱数データに基づいてランダムに決定した吐出制御データを生成する。
【0077】
データ生成部73aは、生成した吐出制御データをメモリ73bに出力、若しくはメモリ73bに格納された吐出制御データを読み出してヘッドチップ27の駆動回路41bに発熱抵抗体42を駆動させるための駆動信号Sを出力する。
【0078】
メモリ73bは、例えばRAM等であり、データ生成部73aにより生成された吐出制御データ、すなわちインク液滴iが吐出される順番のデータを各ノズル44aに対応するアドレスに記憶する。具体的に、メモリ73bは、図17(A)に示すように、各ノズル44aに対応する列と、駆動信号Sを出力するタイミング、すなわちインク液滴iをノズル44aより吐出するタイミングに対応する行とで特定されるアドレスにデータ生成部73aにより生成された吐出制御データを格納する。
【0079】
なお、図17(A)では、図17(A)中一番右側の列をn番目のノズルに対応するn列とし、n列から左に向かって順次n+1列、n+2列、...とする。また、記録紙Pの主面における記録紙Pの走行方向、すなわち図17(C)中矢印C方向と略直交する基準線Lと、インクドット51の中心とが重なるように発熱抵抗体42を駆動させる駆動信号Sを出力するタイミングが図17(A)中t行であり、以下、信号出力タイミングtと記す。さらに、信号出力タイミングtより早く駆動信号Sを出力するタイミングが信号出力タイミングtに近い方から順に図17(A)中t−1行、t−2行、...であり、以下、信号出力タイミングt−1、t−2、...と記す。さらにまた、信号出力タイミングtより遅く駆動信号Sを出力するタイミングが信号出力タイミングtに近い方から順に図17(A)中t+1行、t+2行、...であり、以下、信号出力タイミングt+1、t+2、...と記す。
【0080】
そして、吐出制御部73は、図17(A)及び図17(B)に示すように、各ノズル44aに対応するメモリ73bに格納された吐出制御データを読み出してヘッドチップ27の各ノズル44aに対応する駆動回路41bに駆動信号Sを出力する。ここでは、メモリ73bのn+5列のアドレスに格納された吐出制御データの信号出力タイミングt−5であり、最も早いタイミングで駆動信号Sを駆動回路41bに出力し、次に、n+1列の信号出力タイミングt−3の吐出制御データを駆動信号Sとして駆動回路41bに出力する。そして、吐出制御部73は、信号出力タイミングの早い順にメモリ73bの列に対応したノズル44aの駆動回路41bに駆動信号Sを順次出力していく。
【0081】
そして、ヘッドチップ27は、駆動信号Sが駆動回路41bに入力された順に、駆動回路41bに対応するノズル44aよりインク液滴iを順次吐出する。具体的には、最も早いタイミングで駆動信号Sを出力したメモリ73bのn+5列に対応するノズル44aが最も早いタイミングでインク液滴iを吐出し、次に、2番目に駆動信号Sを出力したメモリ73bのn+1列に対応したノズル44aがインク液滴iを吐出する。そして、ヘッドチップ27は、メモリ73bの駆動信号Sの出力が早い列順に、各列に対応するノズル44aよりインク液滴iを順次吐出し、最も遅いタイミングで駆動信号Sを出力したメモリ73bのn+2列に対応するノズル44aが最後にインク液滴iを吐出する。
【0082】
そして、ヘッドチップ27は、図17(B)及び図17(C)に示すように、メモリ73bのn+5列に対応するノズル44aより最も早いタイミングで吐出されたインク液滴iを、記録紙Pの主面の基準線Lに対して記録紙Pの走行方向とは逆方向に最も遠くにずれた位置に、基準線Lに一部接触した状態で1番目に着弾させ、次に、メモリ73bのn+1列に対応するノズル44aより吐出されたインク液滴iを記録紙Pの主面の基準線Lに対して記録紙Pの走行方向とは逆方向に次に遠くにずれた位置に着弾させる。そして、ヘッドチップ27は、インク液滴iをノズル44aより吐出される順番で少なくとも基準線Lに一部接触するように記録紙Pに着弾させ、メモリ73bのn+2列に対応するノズル44aより最も遅いタイミングで吐出されたインク液滴iを、記録紙Pの主面の基準線Lに対して記録紙Pの走行方向に最も遠くにずれた位置に、基準線Lに一部接触した状態で最後に着弾させる。そして、ヘッドチップ27は、以上のような動作をプリンタ装置1の印刷動作が終了されるまで繰り返す。
【0083】
このように、吐出制御部73は、データ生成部73aが駆動回路41bに異なる信号出力タイミングで駆動信号Sを出力することで、インク液滴iによるインクドット51の1つ以上が少なくとも基準線Lと一部が接触、且つ基準線Lに対して記録紙Pの走行方向又は走行方向とは逆方向にずれて形成されるようにヘッドチップ27を制御する。したがって、ヘッドチップ27においては、例えば記録紙Pの走行速度にムラが生じたりして起こる白スジを防止することが可能となる。
【0084】
吐出制御部73においては、データ生成部73aがノズル44aからインク液滴iを吐出する順番をランダムに決めていることから、インクドット51が基準線Lに対して記録紙Pの走行方向又は走行方向と逆方向にランダムにずれるようにヘッドチップ27が制御される。これにより、記録紙Pの主面には、インクドット51が規則性を示すことが無く記録紙Pの走行方向又は走行方向とは逆方向にずれて形成されることから、色の濃度分布等にも規則性が生じさせることなくインク液滴iが着弾されることになる。なお、吐出制御部73においては、例えば停止している記録紙Pに対してインク液滴iを着弾させたときに、標準偏差の分布に近似した濃度分布を以てインク液滴iが記録紙Pに着弾されるように、ヘッドチップ27を制御させることも可能である。これにより、ヘッドチップ27においては、記録紙Pの主面にインク液滴iを濃度ムラがさらに少なくなるように着弾させることが可能となる。
【0085】
また、吐出制御部73は、上述した発熱抵抗体42を駆動させるタイミングを制御するデータ生成部73aやメモリ73bの他に、例えばヘッドチップ27にパルス電流を供給する図示しない電源や、各発熱抵抗体42に供給されるパルス電流の大きさを制御する図示しない制御回路等も備えている。
【0086】
入出力端子74は、図16に示すように、上述した印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報をインタフェースを介して外部の情報処理装置78等に出力する。また、入出力端子74は、外部の情報処理装置78等から、上述した印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報を出力する制御信号や、印刷データ等が入力される。ここで、上述した情報処理装置78は、例えば、パーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)等の電子機器である。
【0087】
情報処理装置78等と接続される入出力端子74は、インタフェースとして、例えばシリアルインタフェースやパラレルインタフェース等を用いることができ、具体的にUSB(Universal Serial Bus)、RS(Recommended Standard)222c、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)1394等の規格に準拠したものである。また、入出力端子74は、情報処理装置78との間で有線通信又は無線通信の何れ形式でデータ通信を行うようにしてもよい。なお、この無線通信規格としては、IEEE802.11a,802.11b,802.11g等がある。
【0088】
ROM75は、例えばEP−ROM(Erasable Programmable Read−Only Memory)等のメモリであり、制御部77が行う各処理のプログラムが格納されている。この格納されているプログラムは、制御部77によりRAM76にロードされる。RAM76は、制御部77によりROM75から読み出されたプログラムや、プリンタ装置1の各種状態を記憶する。
【0089】
入出力端子74と情報処理装置78との間には、例えばインターネット等のネットワークが介在していてもよく、この場合、入出力端子74は、例えばLAN(Local Area Network)、ISDN(Integrated Services Digital Network)、xDSL(Digital Subscriber Line)、FTHP(Fiber To The Home)、CATV(Community Antenna TeleVision)、BS(Broadcasting Satellite)等のネットワーク網に接続され、データ通信は、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の各種プロトコルにより行われる。
【0090】
制御部77は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等の信号処理及び制御処理を行う集積回路等であり、入出力端子74から入力された印刷データ及び制御信号や、インク4の残量データ等に基づき、各部を制御する。制御部77は、このような処理プログラムとしてROM75から読み出してRAM76に記憶し、このプログラムに基づき各処理を行う。また、制御部77は、吐出制御を行う処理プログラムをROM75から読み出してRAM76に記憶し、このプログラムに基づき吐出制御部73等を制御する。そして、制御部77は、以上のようなプログラムによる制御に限定されることはなく、記録紙Pに印刷された状態を測定し、この測定結果に基づいた印刷データに則ってインク液滴iを記録紙Pに着弾するように吐出制御部73を制御させることもできる。
【0091】
なお、以上のように構成された制御回路71においては、ROM75にプログラムを格納するようにしたが、プログラムを格納する媒体としては、ROMに限定されるものでなく、例えばプログラムが記録された光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、ICカード等の各種記録媒体を用いることができる。この場合に制御回路71は、各種記録媒体を駆動するドライブと直接又は情報処理装置78を介して接続されてこれら記録媒体からプログラムを読み出すように構成する。また、制御回路71は、上述した構成の他に、例えば印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報を表示するLCD(Liquid Crystal Display)等の表示手段等も備えている。
【0092】
次に、以上のように構成されるプリンタ装置1の全体の動作について図18に示すフローチャートを参照にして説明する。なお、本動作はROM75等の記憶手段に格納された処理プログラムに基づいて制御部77内の図示しない印刷動作制御用のCPU等の処理に基づいて実行されるものである。
【0093】
先ず、ユーザが情報処理装置78で印刷する文字データ、印刷データ等を選択し、印刷実行操作をすると、情報処理装置78は、選択されたデータより印刷データを生成し、プリンタ装置1の入出力端子74に生成した印刷データを出力する。
【0094】
次に、制御部77は、ステップS1において、各装着部22に所定の色のインクカートリッジ11が装着されているかどうかを判断する。そして、制御部77は、全ての装着部22に所定の色のインクカートリッジ11が適切に装着されているときはステップS2に進み、装着部22においてインクカートリッジ11が適切に装着されていないときはステップS3に進み、印刷動作を禁止する。
【0095】
制御部77は、ステップS2において、接続部26内のインク4が所定量以下、すなわちインク無し状態であるか否かを判断し、インク無し状態であると判断されたときは、表示手段等にその旨を表示、すなわち警告表示を行い、ステップS3において、印刷動作を禁止する。一方、制御部77は、接続部26内のインク4が所定量以下でないとき、すなわちインク4が満たされているとき、ステップS4において、印刷動作を許可する。
【0096】
印刷動作を行う場合、制御部77は、図19に示すように、ヘッドキャップ開閉機構63を構成する駆動モータを駆動させてヘッドキャップ28をヘッドカートリッジ2に対してトレイ65a側に移動させ、ヘッドチップ27のノズル44aを露出させる。
【0097】
そして、制御部77は、給排紙機構64を構成する駆動モータを駆動させて記録紙Pを走行させる。具体的に、制御部77は、トレイ65aから給紙ローラ81によって記録紙Pを引き出し、互いに反対方向に回転する一対の分離ローラ82a,82bによって引き出された記録紙Pの一枚を反転ローラ83に搬送して搬送方向を反転させた後に搬送ベルト84に記録紙Pを搬送し、搬送ベルト84に搬送された記録紙Pを押さえ手段85が所定の位置で保持させることでインク4が着弾される位置が位置決めされるように給排紙機構64を制御する。
【0098】
これと共に、制御部77は、ヘッドチップ27よりインク液滴iを走行している記録紙Pに吐出させるように吐出制御部73を制御する。具体的に、ヘッドチップ27では、図12に示すように、インク液室54内の発熱抵抗体42にパルス電流を供給してインク気泡Bを発生させ、図13に示すように、そのインク気泡Bの膨張によってインク気泡Bの膨張分の体積と等しい体積のインク4が押しのけられる。これによって、ノズル44aに接する部分で押しのけられたインク4と同等の体積のインク液滴iが記録紙Pの走行方向と略直交方向に並設されたノズル44aから略真下に吐出され、記録紙Pの主面に着弾してインクドット51が形成され、記録紙Pには印刷データに応じた文字、画像等が印刷される。
【0099】
このとき、ヘッドチップ27においては、吐出制御部73のデータ生成部73aが生成してメモリ73bに記憶された吐出制御データに基づいて各インク液室45に設けられた発熱抵抗体42のうち1つ以上を異なるタイミングで駆動させ、記録紙Pの走行方向と略直交方向に並設されたノズル44aのうち1つ以上が異なるタイミングでインク液滴iを吐出させる。
【0100】
具体的には、図17(A)〜図17(C)に示すように、メモリ73bに記憶された信号出力タイミングが最も早いn+5列に対応するノズル44a、次に信号出力タイミングが早いn+1列に対応するノズル44aの順でインク液滴iを吐出する。そして、吐出制御部73は、メモリ73bに記憶されている信号出力タイミングが早い順にデータ生成部73aが吐出制御データを読み出して駆動信号Sとしてヘッドチップ27の駆動回路41bに順次出力する。これに応じてヘッドチップ27は、駆動回路41bに駆動信号Sが入力された順番で駆動回路41bに対応するノズル44aからインク液滴iを順次吐出し、最後に信号吐出タイミングが最も遅いn+2列に対応するノズル44aよりインク液滴iを吐出する。そして、ヘッドチップ27は、このようなインク液滴iを異なるタイミングで吐出する動作を印刷動作が終了するまで繰り返す。
【0101】
このようにして、ヘッドチップ27では、ノズル44aより略真下に吐出されたインク液滴iを図17(C)中矢印C方向に走行する記録紙Pに向かって吐出させ、記録紙Pの主面に着弾したインク液滴iが、少なくとも基準線Lに接触、且つ基準線Lに対して記録紙Pの走行方向又は走行方向とは逆方向にずれたインクドット51を形成させる。
【0102】
これにより、ヘッドチップ27では、例えば従来のような給排紙機構の誤動作等により記録紙の走行速度が速まったときに、記録紙の走行方向で隣り合うインクドットの間に隙間ができて生じる記録紙の走行方向と略直行方向の白スジ等を防止できる。したがって、記録紙Pには、白スジの無い高画質な文字、画像等が印刷データに応じて印刷される。
【0103】
以上ように、インク液滴iがノズル44aより吐出されると、インク液滴iを吐出したインク液室45内に吐出された量と同量のインク4がインク流路46から直ちに補充され、図8に示すように、元の状態に戻る。ヘッドチップ27からインク液滴iが吐出されると、付勢部材34fの付勢力とダイアフラム34iの付勢力とによってインク室34bの開口部34dを閉塞している弁34eは、図7に示すように、ヘッドチップ27からインク液滴iが吐出された際に、開口部34d分割されたインク流出路34c側のインク室34bのインク4の負圧が高まると、インク4の負圧によりダイアフラム34iが大気圧により押し上げられて、弁シャフト34hと共に弁34eを付勢部材34fの付勢力に抗して押し上げる。このとき、インク室34bのインク流入路34a側とインク流出路34c側と間の開口部34dが開放され、インク4がインク流入路34a側からインク流出路34c側に供給され、インク流路46にインクが補充される。そして、インク4の負圧が低下してダイアフラム34iが復元力により元の形状に戻り、付勢部材34fの付勢力により弁シャフト34hと共に弁34eをインク室34bが閉塞するように引き下げる。以上のようにして弁機構34では、インク液滴iを吐出する度にインク4の負圧が高まると、上述の動作を繰り返す。
【0104】
このようにして、給排紙機構64によって走行している記録紙Pには、順に印刷データに応じた文字や画像が印刷されることになる。そして、印刷が終了して記録紙Pは、排紙口66より排出される。
【0105】
以上で説明したプリンタ装置1では、吐出制御部73のデータ生成部73aが生成してメモリ73bに記憶された吐出制御データに基づいて、ヘッドチップ27の各インク液室45に設けられた発熱抵抗体42のうち1つ以上を異なるタイミングで駆動させる。
【0106】
これにより、プリント装置1では、図20に示すように、記録紙Pの幅行方向、すなわち図20中矢印W方向に並設されたノズル44aより略真下に吐出されたインク液滴iが図20中矢印C方向に走行する記録紙Pの主面に着弾し、記録紙Pの主面に着弾したインク液滴iのうち1つ以上が少なくとも基準線Lに接触、且つ基準線Lに対して記録紙Pの走行方向又は走行方向とは逆方向にずれたインクドット51を形成させる。
【0107】
したがって、プリンタ装置1では、記録紙Pの走行方向方向又は走行方向とは逆方向にずれてインクドット51を形成させることから、例えば給排紙機構64の誤動作により記録紙Pの走行速度が速まったときに記録紙Pの走行方向で隣り合うインクドット51の間にできた隙間による記録紙Pの幅方向に沿った白スジを防止でき、高品質な画像を印刷できる。
【0108】
また、このプリンタ装置1では、従来のような印刷時にオーバーラップ部を設けることなく白スジ等を防止できることから、印刷に係る時間を大幅に短縮して高品質な画像を印刷できる。
【0109】
以上では、主に、並設された各ノズル44aのうち1つ以上が異なるタイミングでインク液滴iを吐出させる場合について説明したが、例えばインク液滴iを吐出するタイミングが略一緒となるノズル44aが多い場合はインク液滴iを吐出するタイミングが略同じとなるノズル44aについて時分割駆動させることも可能である。
【0110】
具体的に、上述したヘッドチップ27では、例えば発熱抵抗体42を数百個〜数万個程度備える場合、メモリ73bに記憶された吐出制御データに基づいて発熱抵抗体42を駆動させたときに、発熱抵抗体42の中に略同じタイミングで駆動されるものが生じる虞がある。このとき、略同時に駆動する発熱抵抗体42が多いと、パルス電流が一度に供給されて消費電力が大きくなって例えばプリンタ装置1を駆動させることが困難になることから、略同時に駆動する発熱抵抗体42を2つ以上のグループにランダムに分けてグループ毎にパルス電流を順番に供給し、各グループで発熱抵抗体42を駆動する、すなわち時分割駆動する。
【0111】
そして、ヘッドチップ27では、略同時に駆動する発熱抵抗体42をグループ毎で時分割駆動した場合、所定の方向に走行する記録紙Pにインク液滴iを吐出することから、時分割駆動されたグループのノズル44aより吐出されたインク液滴iの着弾位置が本来の位置より記録紙Pの走行方向にずれてしまう。このため、吐出制御部73では、インク液滴iを本来の位置に着弾させるために、インク液滴iを吐出する吐出タイミングの最も早いグループを基準にし、次に吐出タイミングが早いグループから順に記録紙Pの走行速度に応じて同じ時間間隔で駆動回路41bに駆動信号Sを出力するタイミングを遅延させる駆動信号Sの信号出力タイミングを補正した補正データをデータ生成部73aで生成してメモリ73bに記憶させ、この補正データに基づいてヘッドチップ27における略同時に駆動する発熱抵抗体42を駆動制御させる。
【0112】
これにより、プリンタ装置1では、例えばヘッドチップ27において略同時に駆動する発熱抵抗体42が多い場合でも、略同時に駆動する発熱抵抗体42を時分割駆動して一度に消費される電力を抑制且つインク液滴iが本来の位置に着弾できる。
【0113】
したがって、プリンタ装置1では、ヘッドチップ27において略同時に駆動する発熱抵抗体42を時分割駆動した場合でも、少なくとも基準線Lに接触、且つ基準線Lに対して記録紙Pの走行方向方向又は走行方向とは逆方向にずれてインクドット51が所定の方向に走行する記録紙Pの主面に形成され、記録紙Pの幅方向に沿った白スジが防止された高品質な画像を印刷できる。
【0114】
なお、以上の例では、プリンタ本体3に対してヘッドカートリッジ2が着脱可能であり、更に、ヘッドカートリッジ2に対してインクカートリッジ11が着脱可能なプリンタ装置1を例に取り説明したが、プリンタ本体3とヘッドカートリッジ2とが一体化さえたプリンタ装置にも適用可能である。
【0115】
また、以上の例では、記録紙Pに文字や画像を印刷するプリンタ装置1を例に取り説明したが、本発明は、微少量の液体を吐出する他の装置に広く適用することができる。例えば、本発明は、液体中のDNAチップ用吐出装置(特開2002−34560号公報)やプリント配線基板の微細な配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出したりする液体吐出装置に適用することもできる。
【0116】
さらに、以上の例では、発熱抵抗体42によってインク4を加熱しながらノズル44aから吐出させる電気熱変換方式を採用しているが、このような方式に限定されず、例えばピエゾ素子といった圧電素子等の電気機械変換素子等によってインクを電気機械的にノズルより吐出させる電気機械変換方式を採用したものであってもよい。
【0117】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、対象物の走行速度にムラがあっても、吐出手段における各液室に設けられた圧力発生素子のうちの1つ以上を異なるタイミングで駆動させることで、対象物の走行方向と略直交方向に並設された吐出口より略真下に吐出された液滴の1つ以上が、対象物の走行方向又は走行方向とは逆方向にずれて着弾されることから、白スジによる画質の劣化を防止できる。
【0118】
また、本発明によれば、印刷時にオーバーラップ部を設けることなく白スジを防止できることから、印刷に係る時間を大幅に短縮して優れた画質の印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンタ装置を示す斜視図である。
【図2】同インクジェットプリンタ装置に備わるインクジェットプリントヘッドカートリッジを示す斜視図である。
【図3】同インクジェットプリントヘッドカートリッジにインクカートリッジが装着された状態を示す断面図である。
【図4】同インクジェットプリントヘッドカートリッジにインクカートリッジが装着された際にインク供給部の供給口が弁により閉塞された状態を示す模式図である。
【図5】同インクジェットプリントヘッドカートリッジにインクカートリッジが装着された際にインク供給部の供給口が開放された状態を示す模式図である。
【図6】同インクジェットプリントヘッドカートリッジとヘッドチップの関係を示す断面図である。
【図7】同インクジェットプリントヘッドカートリッジの接続部における弁機構の弁が閉じた状態を示す断面図である。
【図8】同インクジェットプリントヘッドカートリッジの接続部における弁機構の弁が開いた状態を示す断面図である。
【図9】同インクジェットプリントヘッドカートリッジのヘッドチップを示す断面図である。
【図10】同ヘッドチップを示す分解斜視図である。
【図11】同ヘッドチップを示す平面図である。
【図12】同ヘッドチップにおいて、インク気泡が発生した状態を示す断面図である。
【図13】同ヘッドチップにおいて、発生したインク気泡が押圧してインク液滴をノズルより吐出する状態を示す断面図である。
【図14】同ヘッドチップより吐出されたインク液滴によるインクドットを模式的に示す図である。
【図15】同インクジェットプリンタ装置の一部を透視して示す側面図である。
【図16】同インクジェットプリンタ装置の制御回路を説明するブロック図である。
【図17】同制御回路の吐出制御部が生成した吐出制御データに基づいてヘッドチップがインク液滴を吐出することを説明しており、同図(A)は吐出制御部を示す模式図であり、同図(B)はヘッドチップを示す模式図であり、同図(C)は記録紙にインクドットが形成された状態を示す模式図である。
【図18】同インクジェットプリンタ装置の印刷動作を説明するフローチャートである。
【図19】同インクジェットプリンタ装置において、ヘッドキャップ開閉機構が開いている状態を一部透視して示す側面図である。
【図20】同ヘッドチップより吐出したインク液滴が記録紙に着弾してインクドットが形成された状態を模式的に示す図である。
【図21】従来のプリンタ装置で印刷を行ったときの色の濃度ムラや白スジが発生した状態を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
1 インクジェットプリンタ装置、2 インクジェットプリントヘッドカートリッジ、3 プリンタ本体、4 インク、11 インクカートリッジ、27 ヘッドチップ、41 回路基板、41b 駆動回路、42 発熱抵抗体、43 フィルム、44 ノズルシート、44a ノズル、45 インク液室、46 インク流路、51 インクドット、71 制御回路、73 吐出制御部、73a データ生成部、73b メモリ
Claims (4)
- 対象物を所定の方向に走行させる走行手段と、
液体を貯留する複数の液室と、上記各液室に液体を供給する供給部と、上記各液室にそれぞれ設けられ、上記各液室に貯留された液体を押圧する圧力発生素子と、上記各圧力発生素子により押圧された液体を上記各液室から液滴の状態で略真下に吐出させる吐出口とを有し、上記各吐出口が上記対象物の走行方向と略直交方向に並設された吐出手段と、
上記各圧力発生素子の駆動を制御することで、上記各吐出口から上記液滴が吐出されるタイミングを制御する吐出制御手段とを備え、
上記吐出手段は、上記吐出制御手段が上記各圧力発生素子のうち1つ以上を異なるタイミングで駆動することで、上記各吐出口から略真下に吐出された上記液滴のうち1つ以上を、上記対象物の主面における上記対象物の走行方向と略直交する基準線に対して少なくとも一部が接触すると共に、当該基準線に対して上記対象物の走行方向又は走行方向とは逆方向にずらして、上記対象物の主面に着弾させる液体吐出装置。 - 上記吐出制御手段は、上記各圧力発生素子のうち略同時に駆動するものを複数のグループに分けてグループ毎に上記各圧力発生素子を駆動させるときに、上記液滴を吐出するタイミングが最も早いグループを基準にして次に上記液滴を吐出するタイミングの早いグループから順に走行速度に応じて同じ時間間隔で上記各圧力発生素子を駆動させる請求項1記載の液体吐出装置。
- 液体を貯留する複数の液室と、上記各液室に液体を供給する供給部と、上記各液室にそれぞれ設けられ、上記各液室に貯留された液体を押圧する圧力発生素子と、上記各圧力発生素子により押圧された液体を上記各液室から液滴の状態で略真下に吐出させる吐出口とを有する吐出手段が、上記液滴を上記各吐出口と対向し且つ所定の方向に走行する対象物の主面に、上記対象物の走行方向と略直交方向に並設された上記各吐出口より吐出させるときに、
上記各圧力発生素子のうち1つ以上を異なるタイミングで駆動させることで、上記各吐出口から略真下に吐出された上記液滴の1つ以上を、上記対象物の主面における上記対象物の走行方向と略直交する基準線に対して少なくとも一部が接触すると共に、当該基準線に対して上記対象物の走行方向又は走行方向とは逆方向にずらして、上記対象物の主面に着弾させる液体吐出方法。 - 上記各圧力発生素子のうち略同時に駆動するものを複数のグループに分けてグループ毎に上記各圧力発生素子を駆動させるときに、上記液滴を吐出するタイミングが最も早いグループを基準にして次に上記液滴を吐出するタイミングの早いグループから順に走行速度に応じて同じ時間間隔で上記各圧力発生素子を駆動させる請求項3記載の液体吐出方法。
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