JP2005005649A - GaN系半導体光装置の製造方法 - Google Patents

GaN系半導体光装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】GaN系半導体層を有する光素子の光学端面を形成する際、高い歩留まりで劈開面を形成することができ、量産性に優れたGaN系半導体光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】GaN系半導体光装置の製造方法は、サファイア基板10上に、GaN系半導体からなる半導体層20をエピタキシャル成長させて、複数の光素子30を区分的に形成する素子形成工程と、半導体層20にけがき線33を形成するけがき工程と、外力を印加して、サファイア基板10および半導体層20をけがき線方向に沿って分割し、各光素子30の光学端面30aに劈開面を形成する劈開工程とを含み、けがき工程において、光素子30の光学端面以外の領域にけがき線33を形成するとともに、けがき線方向に沿ったけがき断面形状は端部で丸みを帯びている。
【選択図】 図6

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サファイア基板上に、GaN,AlGaN,InGaN,AlInGaNなどのGaN系半導体を有する光素子を形成した後、光素子の光学端面に劈開面を形成するためのGaN系半導体光装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
GaN系半導体は、サファイアなどの結晶方位の異なる異種基板上に結晶成長させることが多い。レーザダイオードなどの半導体光素子では、光共振器の各端面を高い平面性および高い平行度で形成する必要があり、一般には、結晶の劈開を利用して光学端面を形成している。
【0003】
劈開する方法として、(1)サファイア基板の裏面にスクライブ線を形成した後、外力を印加することによって基板を劈開面に沿って分割し、GaN系半導体層を劈開させる方法、(2)角錐状のけがき針を用いて、GaN系半導体層側にスクライブ線を形成した後、外力を印加することによってGaN系半導体層を劈開する方法、などがある。
【0004】
なお、下記の先行技術(例えば特許文献1,2)には、サファイア基板上に窒化ガリウム系半導体層を形成した後、半導体層を劈開する方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−106965号公報(図3)
【特許文献2】
特開平7−169715号公報(図4)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法(1)は、結晶方位の異なる異種基板の劈開を利用してGaN系半導体を分割しているため、基板の劈開方向とGaN系半導体層の劈開方向が異なる場合、GaN系半導体層の劈開面を制御するのが困難である。上記の方法(2)は、けがき針によるスクライブ線の断面形状を滑らかに制御するのが困難である。従って、現時点ではいずれの方法も製造歩留まりを向上させるのが難しい。
【0007】
また、上記の特許文献1は、回転ダイサー刃を用いてサファイア基板の裏面側をダイシングして劈開用の溝を形成している点で相違する。上記の特許文献2は、予めサファイア基板の表面に溝を形成することにより、基板上に窒化ガリウム系半導体層を成長させる際、溝部分で成長する半導体の結晶性を低下させている点で相違する。
【0008】
本発明の目的は、GaN系半導体層を有する光素子の光学端面を形成する際、高い歩留まりで劈開面を形成することができ、量産性に優れたGaN系半導体光装置の製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るGaN系半導体光装置の製造方法は、サファイア基板上にGaN系半導体からなる半導体層をエピタキシャル成長させて、複数の光素子を区分的に形成する素子形成工程と、
半導体層にけがき線を形成するけがき工程と、
外力を印加して、サファイア基板および半導体層をけがき線方向に沿って分割し、各光素子の光学端面に劈開面を形成する劈開工程とを含み、
けがき工程において、光素子の光学端面以外の領域にけがき線を形成するとともに、けがき線方向に沿ったけがき断面形状は端部で丸みを帯びていることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、GaN系半導体層の成長プロセスを示す断面図である。サファイア基板10の上に、GaN系半導体(GaN,AlGaN,InGaN,AlInGaNなど)からなる半導体層20をエピタキシャル成長させる。成膜手法として、MOCVD(有機金属気相成長法)、MBE(分子ビーム成長法)などを用いることができる。サファイア基板10は、一般に300〜430μm程度の厚さであり、その上に6〜10μm程度の厚さに半導体層20を成膜する。
【0011】
半導体層20は複数の層で構成され、各層は組成が同じでも異なってもよく、必要に応じて各種ドーパントを添加することによってp型層やn型層を形成することができ、またドーパント量を制御することによって各層のキャリア濃度を制御することができる。
【0012】
図2は基板上に複数の光素子を形成した状態を示す平面図であり、図3は光素子の構造を示す図2のA1−A1線に沿った部分断面図である。サファイア基板10は、一般に2インチの直径を有する円板であり、円周の一部にオリフラ(オリエンテーションフラット)10aが形成される。
【0013】
サファイア基板10の上には、複数の光素子30が区分的に形成され、一般に、オリフラ10aと平行なX方向およびオリフラ10aに対して垂直なY方向に沿ってマトリクス状に配列している。
【0014】
図2に示すように、個々の光素子30は、一般に、サファイア基板10の上に、順次、GaN系半導体からなるn型半導体層21と、GaN系半導体からなる活性層22と、GaN系半導体からなるp型半導体層23とが成膜される。
【0015】
n型半導体層21は、異種基板との結晶不整合を緩和するためのバッファ層と、外部から供給される電子を活性層22へ運ぶためのn型導電層やn型クラッド層などで構成される。活性層22は、電子と正孔の再結合により光を発生する機能を有する。p型半導体層23は、外部から供給される正孔を活性層22へ運ぶためのp型導電層やp型クラッド層などで構成され、レーザ素子の場合には光を導波するための光ガイド層などを設けてもよく、光増幅利得を高めるために利得導波構造や屈折率導波構造などを採用してもよい。ここでは、p型半導体層23にリッジ24を設けた例を示している。
【0016】
光素子30の光軸は、リッジ24の長手方向に沿って、図2の紙面に対して垂直な方向に設定される。光素子30の光学端面は、図2の紙面に対して平行で、光軸に対して垂直に設定される。素子分割によって形成される2つの光学端面は、互いに平行で所定の間隔を隔てて配置され、光共振器を構成する。
【0017】
p側電極25は、リッジ24を覆うようにp型半導体層23の表面に形成される。隣接する光素子30の間において、p型半導体層23、活性層22およびn型半導体層21の一部をエッチングなどで除去することによって、n型半導体層21が露出しており、この露出面にn側電極26が形成される。
【0018】
光素子30を形成した後、サファイア基板10は、分割し易くするために研磨などによって、例えば100μm程度の厚さにまで薄くしてもよい。
【0019】
こうしてサファイア基板10の上には、個々の光素子30を構成する凸部31と、n側電極26が設けられる凹部32とがストライプ状に交互に形成されることになる。
【0020】
図4(a)はサファイア基板10の裏面側を示す部分斜視図であり、図4(b)はサファイア基板10の表面側を示す部分斜視図である。上述したように、光素子30を分割し、光学端面に劈開面を形成する方法には、(1)サファイア基板の裏面にスクライブ線を形成した後、外力を印加することによって基板を劈開面に沿って分割し、GaN系半導体層を劈開させる方法、(2)角錐状のけがき針を用いて、GaN系半導体層側にスクライブ線を形成した後、外力を印加することによってGaN系半導体層を劈開する方法、などがある。
【0021】
サファイア基板は劈開性が弱い性質があり、しかもサファイア基板の劈開方向とGaN系半導体層の劈開方向が異なるため、方法(1)のようにサファイア基板を起点とした劈開方法では所望のGaN系半導体層の劈開面を得ることが困難である。
【0022】
本発明では、半導体層20にけがき線33を施して半導体層20を起点とした劈開を行っており、けがき線33は区分的に形成しており、凹部32にのみ形成し、凸部31には形成していない。さらに、けがき線33を形成するための刃具の形状を工夫して、けがき線方向に沿ったけがき断面形状の端部に丸みを帯びさせている。これによって、素子分割後の光素子30の光学端面に高精度の劈開面を形成することができる。
【0023】
図5は、刃具40の形状の一例を示し、図5(a)は正面図、図5(b)は側面図、図5(c)は斜視図である。刃具40は、2つの円錐台を底面同士で接合した形状、いわゆるそろばん玉のような形状を有する。刃具40は、円周上に刃40aが形成されており、その中心は軸受け(不図示)によって支持され、自転可能な回転刃具として構成される。円周上の刃40aは、高い硬度の材料でコーティングされ、例えばCVD(化学気相成長)を用いてダイヤモンドをコーティングしたダイヤコート刃が好ましく、これによって刃具40の耐磨耗性を強化できる。
【0024】
図6は、図5に示す刃具40を用いてけがき線を形成する様子を示す説明図である。まず刃具40を半導体層20の上方に配置し、徐々に下降させると刃具40の刃40aが半導体層20に接触する。
【0025】
さらに、刃具40を下方に押圧すると、刃40aが半導体層20に食い込んで、刃40aの円弧形状に対応したけがき線33が描かれる。次に、刃具40を押圧しながら移動させると、刃40aが半導体層20に食い込んだ状態で従動回転し、直線的なけがき線33が描かれる。最後に、刃具40を上昇させる。
【0026】
図7は、けがき線33の形状の一例を示し、図7(a)は平面図、図7(b)はけがき線方向(A2−A2線)に沿った断面図である。けがき線33は、刃40aが半導体層20への食い込みを開始した前端部33aと、刃具40が水平に移動した直線部33bと、刃40aが半導体層20から離れた後端部33cとを有する。
【0027】
直線部33bは、刃40aの断面形状に対応したV字状の溝が一定の深さで形成される。前端部33aおよび後端部33cは、刃40aの形状に対応して丸みを帯びており、溝の深さは円弧状に変化している。従って、けがき線33は、全体として2つの舳先を連結したような立体形状になる。こうした滑らかな形状を有するけがき線33により、光素子30の光学端面に高精度の劈開面を形成することができる。
【0028】
図10は、比較例として角錐状のけがき針50を用いてけがき線を形成する様子を示す説明図である。けがき針50は、半導体層20の表面に対して角度θで進行方向に傾斜させた状態で押し当てて、押し当て圧力Pと速度Vを制御しながら直線的に移動させる。すると、押し当て圧力Pの変化に応じて、けがき線53の深さと長さが決定される。
【0029】
図11は、けがき線53の形状の一例を示し、図11(a)は平面図、図11(b)はけがき線方向(A4−A4線)に沿った断面図である。角錐状のけがき針50は半導体層20に対して点接触しているため、移動中は左右または上下に蛇行し易い。そのため、けがき線53を微視的に観察すると、波形の曲線であり、けがき線53の深さは上下に変動している。
【0030】
GaN系半導体は六方晶であることから、図12に示すように、けがき線53の端部からけがき線方向に対して±60度の方向に沿って劈開容易面が存在している。その結果、角錐状のけがき針50を用いた場合、けがき線53の端部形状が左右または上下に微視的に曲がっていると、端部での局所応力分布がけがき線中心に対して非対称になり、±60度の方向に沿った劈開が生じ易くなる。そうすると、±60度の劈開によるマイクロクラックが多く存在する光学端面しか得られず、レーザ光共振器の性能が低下してしまう。
【0031】
これに対して本発明では、図5に示すような自転式の刃具40を用いているため、半導体層20に対して線で接触するようになり、移動中において左右の蛇行を防止できる。また、自転式の刃具40は、けがき針50と比べて半導体層20との接触面積も増加するため、圧力変動も抑制でき、深さ方向の変動も防止できる。特に、けがき線の端部は滑らかに丸みを帯びるようになるため、端部での局所応力分布がけがき線中心に対して対称になり、±60度の劈開を抑制することができる。これによって、素子分割後の光素子30の光学端面に高精度の劈開面を形成することができ、製造歩留まりが大きく向上する。
【0032】
図8(a)は、光素子30とけがき線33の位置関係を示す拡大平面図であり、図8(b)は、図8(a)中のA3−A3線に沿った断面図である。光素子30のp側電極25は、リッジ24の長手方向に沿ったリッジライン24aを共通にしてY方向に配列しており、n側電極26は隣り合うp側電極25の間に配置される。
【0033】
けがき線33は、リッジライン24aおよびその近傍を横切らないように、X方向に沿って区分的に形成され、素子分割の際には、けがき線33が通過しない部分に劈開面が形成されることになり、光素子30の光学端面30aとして機能する。けがき線33のピッチは、個々の光素子30の光共振器長を決定するもので、例えば600〜900μm程度に設定される。
【0034】
なお、単一の刃具40を用いてけがき線33を1本ずつ描くことも可能であるが、複数の刃具40を所定ピッチ、例えば光共振器長またはその整数倍のピッチで配列し、複数のけがき線を同時に形成することによって、けがき作業効率を向上させることができる。
【0035】
一方、Y方向に沿った分割ライン39は、n側電極26と隣りの光素子30のp側電極25との間に設定される。この分割ライン39は、光素子30を分離するだけで足り、劈開面は要求されないことから、一般に、ダイシングソーを用いた切断方法が採用される。分割ライン39のピッチは、光素子30の幅をを決定するもので、例えば500μm程度に設定される。
【0036】
図9は、半導体層20の劈開工程を示す説明図である。半導体層20に形成されたけがき線33の両側に一対の支持部材42を配置して、くさび形状の押圧部材41をサファイア基板10から押し当てると、けがき線33と交差する方向に引っ張り応力が印加される。引っ張り応力が半導体層20の降伏応力を超えると、けがき線33に沿って劈開が始まり、続いてサファイア基板10もけがき線33に沿って劈開する。こうした作業をけがき線33ごとに繰り返すことによって、X方向の素子分割を行う。
【0037】
次に、ダイシングソーを用いて分割ライン39を切断することにより、Y方向の素子分割を行う。なお、分割された光素子30がばらばらに分離しないために、半導体層20またはサファイア基板10には粘着シートなどが予め貼り付けられている。
【0038】
こうして個々の光素子30が分離され、光素子30の光学端面30aには、高い平面性および高い平行度の劈開面を形成することができる。分離された光素子30は、サブマウント等のパッケージ部材に搭載され、ダイボンディング工程、ワイヤボンディング工程などを経て、光デバイスとして完成する。
【0039】
【発明の効果】
以上詳説したように、半導体層にけがき線を形成するための刃具の形状を工夫し、けがき線方向に沿ったけがき断面形状の端部に丸みを帯びさせることて、素子分割後の光素子の光学端面に高精度の劈開面を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】GaN系半導体層の成長プロセスを示す断面図である。
【図2】基板上に複数の光素子を形成した状態を示す平面図である。
【図3】光素子の構造を示す部分断面図である。
【図4】図4(a)はサファイア基板10の裏面側を示す部分斜視図であり、図4(b)はサファイア基板10の表面側を示す部分斜視図である。
【図5】刃具40の形状の一例を示し、図5(a)は正面図、図5(b)は側面図、図5(c)は斜視図である。
【図6】図5に示す刃具40を用いてけがき線を形成する様子を示す説明図である。
【図7】けがき線33の形状の一例を示し、図7(a)は平面図、図7(b)はけがき線方向(A2−A2線)に沿った断面図である。
【図8】図8(a)は、光素子30とけがき線33の位置関係を示す拡大平面図であり、図8(b)は、図8(a)中のA3−A3線に沿った断面図である。
【図9】半導体層20の劈開工程を示す説明図である。
【図10】比較例として角錐状のけがき針50を用いてけがき線を形成する様子を示す説明図である。
【図11】けがき線53の形状の一例を示し、図11(a)は平面図、図11(b)はけがき線方向(A4−A4線)に沿った断面図である。
【図12】GaN系半導体の劈開方向を示す平面図である。
【符号の説明】
10 サファイア基板、 20 半導体層、 21 n型半導体層、 22 活性層、 23 p型半導体層、 24 リッジ、 24a リッジライン、 25 p側電極、 26 n側電極、 30 光素子、 30a 光学端面、 31 凸部、 32 凹部、 33,53 けがき線、 39 分割ライン、 40 刃具、 40a 刃、 50 けがき針。

Claims (5)

  1. サファイア基板上にGaN系半導体からなる半導体層をエピタキシャル成長させて、複数の光素子を区分的に形成する素子形成工程と、
    半導体層にけがき線を形成するけがき工程と、
    外力を印加して、サファイア基板および半導体層をけがき線方向に沿って分割し、各光素子の光学端面に劈開面を形成する劈開工程とを含み、
    けがき工程において、光素子の光学端面以外の領域にけがき線を形成するとともに、けがき線方向に沿ったけがき断面形状は端部で丸みを帯びていることを特徴とするGaN系半導体光装置の製造方法。
  2. けがき工程において、円周上に刃が形成された回転刃具を半導体層に対して押圧しながら従動回転させて、けがき線を形成することを特徴とする請求項1記載のGaN系半導体光装置の製造方法。
  3. 回転刃具は、2つの円錐台を底面同士で接合した形状を有することを特徴とする請求項2記載のGaN系半導体光装置の製造方法。
  4. 回転刃具は、ダイヤコートされた刃を有することを特徴とする請求項2記載のGaN系半導体光装置の製造方法。
  5. けがき工程において、所定ピッチで配列した複数の回転刃具を用いて、複数のけがき線を同時に形成することを特徴とする請求項2記載のGaN系半導体光装置の製造方法。
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