JP2005005240A - 接地体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属材から成る長尺板状の主電極と、前記主電極に重畳配置されると共に回動自在に取着される金属材から成る短尺板状の副電極とからなる接地体とした。また、金属材から成る長尺板状の主電極と、前記主電極に重畳配置されると共に回動自在に取着される金属材から成る短尺板状の副電極とからなる接地体を1単位の接地部材とし、該接地部材同士を複数連設できるよう構成した接地体とした。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、送電鉄塔、無線中継所、その他の建造物に配設される接地体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
無線中継所等の建造物には、建造物へ直撃する雷からその建造物自体を防護したり、建造物内に配設される電気通信機器等を防護する目的で避雷針が設置されており、前記の避雷針は、大地内部に埋設された接地体と避雷ケーブルにて接続されている。
【0003】
一方、建造物内に設置される電気通信機器は、該電気通信機器の接地端子と建造物の接地端子との間がケーブルで接続されており、建造物の接地端子と大地内部に埋設される接地体との間は、絶縁被覆ケーブル等により接続され、このようにして電気通信機器の接地が確保されている。
【0004】
従来、大地内部に埋設される接地体は、銅を材料とした棒状部材、板状部材、裸銅撚線、導電性被覆ケーブル等が使用されているが、これらの接地体は、所望の接地抵抗(例えば、10Ω以下)を得るため、長さ、太さ、厚さ等が適宜設計され、種々の形状に形成されている。
【0005】
図5は、従来の棒状部材の接地体を大地内部に埋設した様子を表す概略図である。主として銅材から成る棒状の接地体S1は、例えば、直径20mm、長さ1〜3m程度に形成されたものであって、地表から1m程度の距離をおいて大地内部に地表に対して垂直に埋設されている。そして、接地体S1には絶縁被覆ケーブル5の一端が接続され、絶縁被覆ケーブル5の他端は設備機器が設置された建造物の基礎体や接地端子(図示せず。)に接続されているものである。
【0006】
また、図6は、従来の板状部材の接地体を大地内部に埋設した様子を表す概略図である。主として銅材から成る板状の接地体S2は、例えば、長さ1〜3m程度、幅5cm程度、厚さ1mm程度に形成されたものであって、地表から1m程度の距離をおいて大地内部に地表に対して平行に埋設されている。そして、接地体S2には絶縁被覆ケーブル5の一端が接続され、絶縁被覆ケーブル5の他端は設備機器が設置された建造物の基礎体や接地端子(図示せず。)に接続されているものである。なお、接地体を地表と平行に埋設する場合には、板状部材に替えて裸銅撚線や導電性被覆ケーブルが適用されることも多い。
【0007】
更には、接地抵抗が低減するよう、裸銅撚線等の中心導体の外周に炭素粉末及び該炭素粉末を包み込む包体を配設した接地体も近年用いられるようになってきている。(例えば、特許文献1参照。)
【0008】
【特許文献1】
特許第3238284号公報
【0009】
なお、前述のように、接地体は設置場所の環境条件等によって最適の形態が選択されたり最適な大きさに構成されるものであるが、その選択又は構成を行う際に考慮すべき重要な要素として大地抵抗率が挙げられる。大地抵抗率が極めて高い場所では低い接地抵抗の取得が困難であるため、接地体の長さを長くするなどして接地面積を大きくすることにより所望の接地抵抗を確保し、サージ電流が大地内部に流入した際に発生する大地電位の上昇を充分に抑える必要があるからである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、接地体の長さを長くすることによって所望の接地抵抗(例えば、10Ω)を得ることは達成できたとしても、それに伴って接地サージインピーダンス(過渡接地抵抗)が増大してしまうという弊害があった。
【0011】
ここで、接地サージインピーダンスについて補説する。雷電流が接地体を介して大地内部に流入する際には、当然のことながら、雷電流と接地抵抗との積によって算出される電圧が大地内部に発生する(大地電位上昇)。例えば、1kAの雷電流が接地抵抗10Ωの接地体を介して大地内部に流入すると、10kVの大地電位上昇が生じることとなる。ところで、前記の計算は、いわゆる定常状態における接地抵抗の考えに基づいたものであって、過渡状態における接地抵抗はこれとは異なる値を示すことが多い。すなわち、雷電流が大地内部に流入された瞬間の過渡状態(流入時点より30μs程度の時間の間)では、接地抵抗は、接地体の形状に依存して定常抵抗とは異なる値を示すこととなるのである。
【0012】
図7は、接地電極の過渡特性図である。本図を用いて接地電極の過渡特性の例について説明する。横軸は、雷電流が接地体を介して大地内部に流入した時点からの経過時間(μs)を示すものであり、これに対し、縦軸は、過渡接地抵抗と定常接地抵抗aとの比率(%)を表したものである。棒状接地体やケーブル状接地体のように接地体が直線状に長い場合には、過渡接地抵抗はcのように誘導型となる。すなわち、誘導型の場合の過渡接地抵抗は、雷電流流入の瞬間は定常接地抵抗と比べて約150%の大きさであり、8μs程度の時間が経過すると定常接地抵抗と同レベルとなり、その後定常接地抵抗よりも低くなり、更にその後30μs程度経過した時点で再び定常接地抵抗と同レベルに達して一定となる。
【0013】
一方、裸銅撚線を放射状に張り巡らせたり、編み目のように構成した接地体の場合には、過渡接地抵抗はdのように容量型となる。すなわち、容量型の過渡接地抵抗は、雷電流流入の瞬間はほとんど零に近く、7μs程度の時間が経過すると定常接地抵抗の約半分のレベルとなり、その後徐々に定常接地抵抗に近づくよう上昇し、更にその後30μs程度経過した時点で定常接地抵抗と同レベルに達してほぼ一定となる。
【0014】
なお、bは、過渡接地抵抗が定常接地抵抗とほぼ同様の値を示す平坦型の接地体を表したものであるが、このような平坦型の特性を示す接地体は希である。
【0015】
また、前記した過渡接地抵抗と定常接地抵抗との比率は一例であって、接地体の材料等その他種々の条件によって異なることが確認されている。
【0016】
上述のように、接地体が誘導型であると、場合によっては過渡接地抵抗が定常抵抗の1.5倍程度となるが、このことは、瞬時的ではあるものの大地電位上昇が設計値の1.5倍程度大きくなることを示している。従って、設備機器の耐電圧を越える程度の大地電位上昇が瞬時的に発生し、そのため設備機器がこの瞬時的な大地電位上昇に耐えられなかった場合には損傷してしまう可能性があった。
【0017】
このようにみると、接地体は、容量型とすることが望ましいのであるが、従来の容量型の接地体を構築する方法(裸銅撚線を放射状に張り巡らせたり、編み目のように構成し、広大な面積を使用して埋設する方法等)を採用すると、部材が大量に必要であったり施工面積も広くなるのでコストが極めて高くなる問題があった。ゆえに、極めて高い保護レベルを要求されるとともに敷地にある程度余裕のある変電所や中継所等では容量型が採用されるが、敷地に余裕のない場所やその他一般保護レベルの場所においては誘導型の接地体が用いられていた。
【0018】
この問題を解決するため、図8に示される構造の接地体S3が存在し、公知となっている。この接地体S3は、直径14mm程度、長さ1.5m程度の金属棒の胴体6から放射状に針状電極7が所定の間隔(例えば、10cm程度)をもって複数突設されている。針状電極7は、胴体との接続部の直径が5mm程度、長さが50mm程度の部材であり、図8では、胴体から放射状に角度90度の間隔で4本の針状電極7a〜7dが突設されている。なお、針状電極7は先端が鋭く尖っているが、このように先端部が尖っていると、先端部から電位傾度の高い電界が発生しやすくなる。そして、電子なだれによる放電作用で土壌を破壊すると同時にストリーマを延ばし、放電初期のサージ電流を速やかに消滅させる効果を有している。
【0019】
しかしながら、前述の針状電極付きの接地体S3は、過渡時の接地抵抗の瞬時的な上昇をある程度抑制する効果は有するものの、針状電極7が胴体6から突設して常時固定されているため危険であり、取扱に充分注意しなければならなかった。また、保管も行いにくく、運搬にも手間取るという問題があった。
【0020】
本発明は、上述した従来の接地体が有する課題を解決すること、すなわち、雷電流流入の際の過渡時において接地抵抗が容量性を示す小型の接地体であって、構造上危険性が無く、しかも保管もしやすく運搬も容易である接地体を提供し、ひいては設備機器の保護を確実に図ることにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために、
第1には、金属材から成る長尺板状の主電極と、前記主電極に重畳配置されると共に回動自在に取着される金属材から成る短尺板状の副電極とからなることを特徴とする接地体としたものであり、
第2には、金属材から成る長尺板状の主電極と、前記主電極に重畳配置されると共に回動自在に取着される金属材から成る短尺板状の副電極とからなる接地体を1単位の接地部材とし、該接地部材同士を複数連設できるよう構成したことを特徴とする接地体としたものである。
【0022】
【実施例】
以下に、図1から図8を用いて本発明の実施例について説明するが、本発明の趣旨を越えない限り何ら本実施例に限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明の接地体Aの一実施例を表す図である。1は、長尺板状の主電極であって、例えば、長さ1.5m、幅40mm、厚さ2mm程度の大きさを有している。また、板状の主電極1には、後述の副電極2が取着出来るよう、25cm程度の所定の間隔をもって透孔が複数設けられている。また、主電極1の一端には、図4に表されるケーブル接続部材4が配設されている。
【0024】
ケーブル接続部材4は、透孔4cが穿設された板状の部材4bと、接地ケーブルの端部を挿通してカシメ接続が可能な接地ケーブル挿通部4aとが一体に形成されたものであり、透孔4cと主電極1の最も端の透孔とを合わせてボルトとナットにより接合されている。なお、このようにケーブル接続部材4を主電極1と別個に用意して、これを主電極1に接合しても良いが、予め主電極1と一体にケーブル接続部を形成するようにしても良い。
【0025】
2は、主電極1の表面又は裏面に、主電極1に対して重ね合わせられるよう重畳配置されると共に、回動自在に取着される金属材から成る短尺板状の副電極である。この副電極2は、例えば、長さ23cm程度、幅40mm程度、厚さ2mm程度の大きさを有しており、一方の端部には、主電極1に対して取着出来るよう透孔が設けられている。また、もう一方の端部は、くの字型にカットされており、鋭角部2aが設けられている。なお、このように鋭角部分2aが設けられている理由は、雷電流流入時において、先端部から電位傾度の高い電界を発生しやすくし、電子なだれによる放電作用で土壌を破壊すると同時にストリーマを延ばし、放電初期のサージ電流を速やかに消滅させるためである。
【0026】
3は、主電極1と副電極2とが取着される接合部である。副電極2は、副電極2の透孔が主電極1の透孔に重ね合わされ、ボルトとナットを用いて接合されている。複数の副電極2は、主電極1に複数設けられた接合部3に取着されており、図1では複数の副電極2が接合部3を中心に回動されて翼状に広げられた様子が表されている。接地体Aは、副電極2が翼状に広げられた状態で大地内部に埋設されて使用されるものであるが、このように接地体を構成すると過渡特性が容量型を示すこととなり、雷電流流入時点の過渡接地抵抗が定常接地抵抗よりも小さくなるため、設備機器を確実に保護することが出来るものである。
【0027】
なお、図1の実施例においては、副電極2は、それぞれの接合部3において主電極1の表面に2枚重ねるよう配置されているが、1枚のみ配置するようにしても良い。また、主電極1の表面に1枚の副電極2を取着すると共に、主電極1の裏面に1枚の副電極2を取着するようにしても良い。
【0028】
次ぎに、図2は、本発明の接地体の一実施例を表す図であって、副電極2の鋭角部2aがケーブル接続部材4の方向に向かうよう副電極2を回動して折り畳んだ様子を表した正面図である。本実施例の接地体Aでは、主電極1の幅と副電極2の幅とが同じ長さの部材を使用しているため、副電極2を折り畳んだ際には、副電極2が主電極1の上に完全に重なり合うこととなるが、副電極2の幅は、主電極1の幅と必ずしも同じでなくても良く、適宜調整しても良い。
【0029】
この状態は、主に、接地体Aを保管したり運搬したりする際に用いられる際の形態である。副電極2が主電極1と一体になるため保管の際に場所をとらずにすむことができる。また、副電極2が主電極に対して鋭利に突設していないことから、取扱の際に危険性が無く、運搬にも適している。なお、もちろんのこと、折り畳んだ状態で接地体として使用することもできる。
【0030】
そして、図3は、本発明の接地体の一実施例を表す図であって、前述の接地体Aを2つ用意し、一方の接地体A1の端部の透孔と他方の接地体A2の端部の透孔とを合わせ、ボルトとナットを用いて接合した接地体Bの様子を表す図である。本実施例では接地体Aを2つ連接して接地体Bを構成しているが、これは、接地体Aのみを用いたのでは所望の接地抵抗が得られない場合に用いられる形態である。このようにすることで、接地体の接地抵抗は小さくなることから、接地抵抗の基準が厳しい場所や、大地抵抗率の高い場所に対処可能となる。また、接地体A2の端部に更に別の接地体A3(図示せず。)を用意して接合し、連設数を増やせば、更に接地抵抗は低くなる。
【0031】
なお、接地体A1と接地体A2との接続部分は上述形態に限定されることはなく、例えば、接地体A1の中心付近の透孔と接地体A2の端部の透孔とを用いて双方をT字型に接合してもよい。このように、種々の接続形態が可能であることから、様々な敷地に適応させることも可能となっている。
【0032】
また、上述した接地体A、Bは、主として銅材が用いられているが、少なくとも金属材料であればよく、銅材に代えて腐食に強いチタンを用いたり、場合によってはステンレス等を用いることもできる。
【0033】
本発明の接地体Aを用いて実験を行った結果、従来の同じ長さの接地体を用いた場合に比べ、定常接地抵抗は約2分の1程度、過渡接地抵抗も同様に2分の1程度となることが判明した。
【0034】
【発明の効果】
本発明は、接地体に関し、上述した構成を有するため、以下に記載の効果を奏することができる。
【0035】
雷電流が流入する際の過渡時において接地抵抗が容量型を示す小型な接地体を提供することができる。
【0036】
また、従来の容量型の接地体に比べて小型且つ安価であるため、これまで誘導型の接地体を採用してきた一般保護レベルの場所においても適用しやすくなる。
【0037】
更に、主電極に対して重畳配置された副電極が回動自在に取着されているため副電極を主電極に対して完全に重なるよう折り畳めることができ、従って、保管もしやすく運搬も容易に行うことができるとともに、構造上の危険性もない。
【0038】
更にまた、過渡時の大地電位上昇を低く抑えることができる。従って、設備機器の保護を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の接地体の一実施例を表す図であって、副電極を回動して広げた様子を表した正面図である。
【図2】図2は、本発明の接地体の一実施例を表す図であって、副電極を回動して折り畳んだ様子を表した正面図である。
【図3】図3は、本発明の接地体の他の実施例を表す正面図である。
【図4】図4は、本発明の接地体の接地ケーブル接続部の側面図である。
【図5】図5は、従来の接地体を大地内部に埋設した様子を表す概略図である。
【図6】図6は、従来の他の接地体を大地内部に埋設した様子を表す概略図である。
【図7】図7は、接地電極の過渡特性図である。
【図8】図8は、従来の接地体を表す概略図である。
【符号の説明】
A、B …… 接地体
E …… 大地
S1〜S3 …… 接地体
a …… 定常接地抵抗
b …… 平坦型
c …… 誘導型
d …… 容量型
1 …… 主電極
2 …… 副電極
3 …… 接合部
4 …… ケーブル接続部材
5 …… 絶縁被覆ケーブル
6 …… 胴体
7 …… 針状電極
Claims (2)
- 金属材から成る長尺板状の主電極と、前記主電極に重畳配置されると共に回動自在に取着される金属材から成る短尺板状の副電極とからなることを特徴とする接地体。
- 金属材から成る長尺板状の主電極と、前記主電極に重畳配置されると共に回動自在に取着される金属材から成る短尺板状の副電極とからなる接地体を1単位の接地部材とし、該接地部材同士を複数連設できるよう構成したことを特徴とする接地体。
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