JP2005002386A - 高圧水素環境用鋼、鋼管およびその製造方法 - Google Patents

高圧水素環境用鋼、鋼管およびその製造方法 Download PDF

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隆弘 櫛田
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Abstract

【課題】オーステナイト系ステンレス鋼に代えて、高圧水素環境下で使用できる炭素鋼や低合金鋼、鋼管を供給する。
【解決手段】拡散性水素を可及的少とすべく、質量%にて、
C:0.03 〜0.18%、Si:0.1〜0.5 %、Mn:0.2〜1.8 %、P:0.025%以下、S:0.002 〜0.02%、sol.Al:0.01 〜0.10%、Ca:0.001〜0.10%を含み、 Ca/S:1.5未満または11以上であり、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有する。さらに、V:0.03〜0.3 %を含むものであってもよい。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素環境下、特に高圧水素環境下で使用される鋼、それより製造するシームレス鋼管、そしてそのような鋼管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、水素燃料電池自動車が注目されているように、水素がクリーンなエネルギーとして脚光をあびている。 水素の圧力が35MPa までの場合には、水素貯蔵用ボンベ材料としてMn鋼やCr−Mo鋼が使用され、配管用材料として316 系のオーステナイト系ステンレス鋼が使われている。
【0003】
しかし、水素燃料電池自動車の場合には、連続走行距離を増加させることが実用化のための課題であって、そのために大量の水素ガスを貯蔵・輸送する、つまり高圧の水素ガスを貯蔵する容器、配管などの設備機器の開発が急がれている。しかしながら、例えば35MPa を超え、例えば70MPa の高圧水素ガス環境下での構造材料の挙動についての研究は少ない。 ましてや、使用実績となると、炭素鋼の場合、高圧水素ガス環境下で割れるという報告事例もあって( 非特許文献1の P.899)、高圧水素ガス環境での使用実績はもちろん、研究例もない。
【0004】
ここに、湿潤環境下で用いられる鋼についての水素脆化対策としては、特許文献1および特許文献2に開示されているように、水素脆化に対する抵抗性を発揮する耐HIC 鋼があり、この耐HIC 鋼はNi、Cuなどが鋼材への水素侵入を防止するために含有されている。また、Caが硫化物介在物の形状を制御して耐HIC 性を改善するとされ、0.0005〜0.008 %程度含有されている。ただし、Sは硫化物を形成し、耐HIC 性を低下させるとして、含有量が0.005 %未満に抑制され、例えば0.001 %というように可及的少量とされている。
【0005】
非特許文献2の第68頁Fig.4 には、HIC 感受性をCa/Sのパラメータでもって評価できることを示しており、S:0.002〜0.005 %の低硫鋼の場合には、S:0.002%未満の超低硫鋼の場合に比較して、極く狭い領域に、最適値があることが示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−287442号公報
【特許文献2】特開平7−188838号公報
【非特許文献1】鉄と鋼第64年(1978)第7号
【非特許文献2】日本鋼管技報No.87(1980)pp.61〜75
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般にはfcc 結晶格子を有するオーステナイト系ステンレス鋼は、bcc 結晶格子を有する炭素鋼や低合金鋼より水素脆化に対する抵抗性が強いとされている。したがって、前述のように35MPa を超える高圧水素ガス環境下において使用する材料については、オーステナイト系ステンレス鋼を中心にその開発・研究が行われており、炭素鋼、低合金鋼については、むしろ否定的であった。
【0008】
また、鋼表面から侵入する水素ガスが低合金鋼に及ぼす影響についてのこれまでの研究・開発は、湿潤環境下で水素が存在するときの解析も広く行われてきたが、高圧水素ガス環境下での水素ガスに起因する問題についてはその解決手段も含めて何一つ開示されてはいない。
【0009】
このように、従来技術にあっては、湿潤環境下で水素が存在したときの低合金鋼に対する水素脆性に関する知見が存在したり、またbcc 結晶格子を有するということからオーステナイト系ステンレス鋼は高圧水素に対して安全ではないかという見方が存在する。
【0010】
しかしながら、オーステナイト系ステンレス鋼は、高価な材料であるのみでなく、実際に高圧水素ガス環境下で使用に耐える材料であるかもまだ実証されていない。
【0011】
ここに、本発明の課題は、安全でかつ低コストの材料として、高圧水素ガス環境下で使用することのできる炭素鋼や低合金鋼、それより製造するシームレス鋼管、そしてその製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
ここに、高圧水素ガス環境下で使用される鋼の問題点として鋼表面からの水素ガスの侵入が考えられることから、いわゆる湿潤環境下で用いられる鋼についての水素脆化と共通することが推測されることから、まず、この点に関して従来技術を検討する。
【0013】
従来、湿潤HS 環境で使用される材料においては、水素誘起割れ (以下HIC と略す) が問題となっていた。その理由は、湿潤HS 環境から鋼表面に侵入した拡散性水素がトラップされ水素ガス圧が高くなり、硫化物系介在物の形態と相まってHIC を引き起こすからである。
【0014】
かかる水素脆性について、従来は、特許文献1および2に開示されているように、Ca添加により硫化物系介在物の形態制御を行うことで、耐HIC 性を改善するとしているが、その形態制御の具体的内容、そしてそのときの耐HIC 性の改善に及ぼすCa/Sの比率については何一つ明らかにされていない。
【0015】
また、非特許文献2においても、湿潤環境下での水素脆性については、Ca/Sの比でもって評価することが開示されている。しかし、それは定性的であって、最適領域の存在を指摘するにすぎない。
【0016】
そこで、本発明者は、鋼におけるCa/Sの比率に着目し、湿潤HS 環境下での鋼中への水素侵入または鋼中での水素トラップへの影響の有無について実験的に確認し、図1および図2に示すような結果を得た。
【0017】
すなわち、環境から侵入する水素量はCa/Sの比によって影響を受けない。しかし図2で示すように、湿潤HS 環境下では、Ca/S<2あるいはCa/S>10の領域でトラップされる水素量が増し、その場合の介在物の形態では応力集中が高くなる。 そのため、湿潤HS 環境下では、Ca/Sを2以上10以下に制限してトラップされる水素量を可及的少とするという技術思想に基づいて鋼の成分設計がなされている。併せて、Ca添加による介在物の形態制御により応力集中を防止している。
【0018】
湿潤HS 環境下での耐HIC 性に関する知見が、高圧水素環境下においても反映させることができればよいが、湿潤HS 環境下での拡散性水素濃度は約1ppm 前後であるのに対し、高圧水素ガス環境下ではせいぜい0.01 ppmであり、そのような環境上の相違がどのように影響しているか分からない。
【0019】
そこで、本発明者は、高圧水素ガス環境下を模擬する条件で同様の実験を行ったところ、図3および図4に示す結果が得られた。すなわち、鋼中Ca/Sの比率と侵入水素量やトラップされる水素量との傾向自体は、前述の図1、図2の場合と同様であるが、それらの程度が大幅に相違してい。
【0020】
すなわち、拡散性水素が約1ppm 前後含まれる湿潤HS 環境下に比べ、それが0.01ppm 程度しか含有されない高圧水素ガス環境下においては、鋼中に侵入する拡散性水素の量は僅かであり、約100 分の1程度であった。しかも湿潤HS 環境下では弊害視されているCa/S<2あるいはCa/S<10の領域におけるトラップ水素量もそれ程多くないことが判明した。しかし、僅かな拡散性水素の量であっても、疲労に対しては悪影響を及ぼす可能性が考えられる。すなわち、疲労亀裂で生じた新生面では、水素分子が水素原子に解離するので、極少量の拡散性水素量であっても疲労亀裂の伝播を加速する可能性がある。
【0021】
従って、高圧水素ガス環境下においては、湿潤HS 環境下の場合と対照的に、拡散性水素を非拡散性水素にトラップさせ、拡散性水素を可及的少とすることで疲労亀裂の伝播を阻止しているのである。
【0022】
一方、すでに述べたように、湿潤HS 環境下では図2に示すように、従来の耐 HIC鋼では、Ca/Sの適正値は2〜10である。それは、Ca/Sが2〜10の範囲の場合、拡散性水素がトラップされ難く、逆に、Ca/Sが2未満や10を超えた範囲の場合、トラップされる拡散性水素の量が増大し、トラップされた拡散性水素の量が増大するにつれて拡散性水素のガス圧も増大し、その結果としてHIC を発生させるからである。
【0023】
従来の湿潤環境下では鋼中の拡散性水素の量そのものを低減させることを目的としているのは、トラップされた拡散性水素が脆性破壊の起点となると考えられているからである。
【0024】
しかし、高圧水素ガス環境下では、むしろ拡散性水素を可及的に減少させることが望ましい。その方法としては拡散性水素を非拡散性水素にトラップさせればよい。
【0025】
ここに、これらの知見を総合することにより、本発明者は、高圧水素環境下での拡散性水素の量を減少させる手段として、拡散性水素濃度比を70%以下とすることを目安とし、従来技術における耐 HIC性改善の際に得た知見に反し、むしろ「 Ca/Sの範囲を拡散性水素のトラップサイトが多い領域にする」ことに着目し、具体的には、Ca/ S<1.5 またはCa/ S≧11にすれば、拡散性水素濃度比が70%以下になることを知り、本発明を完成した。
【0026】
さらに、鋼にVを含有させることにより、拡散性水素がトラップされ易く、鋼に0.03%以上のVを含有させると、拡散性水素濃度比が約60%以下になることも分かった。
【0027】
ここに、「拡散性水素濃度比」とは、400 ℃までに放出される水素を拡散性水素、400 ℃から800 ℃までに放出される水素を非拡散性水素と定義し、この両者の合算を100 %として、全体 (100 %) に占める拡散性水素の割合を言う。
【0028】
本発明にあっては、水素脆性の改善には、その拡散性水素の量を可能なかぎり減少させておくというものである。
本発明は、次の通りである。
【0029】
(1)質量%にて、
C:0.03 〜0.18%、Si:0.1〜0.5 %、Mn:0.2〜1.8 %、P:0.025%以下、S:0.002 〜0.02%、sol.Al:0.01 〜0.10%、Ca:0.001〜0.01%を含み、 Ca/S:1.5未満または11以上であり、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有する、高圧水素環境下で使用される鋼。
【0030】
(2)質量%にて、
C:0.03 〜0.18%、Si:0.1〜0.5 %、Mn:0.2〜1.8 %、P:0.025%以下、S:0.002 〜0.02%、sol.Al:0.01 〜0.10%、Ca:0.001〜0.01%、V:0.03〜0.3 %を含み、 Ca/S:1.5未満または11以上であり、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有する、高圧水素環境下で使用される鋼。
【0031】
(3)前記化学組成が、そのFeの一部に代えて、さらに、Cr:0.25 〜2.5 %、Mo:0.1〜1.2 %、およびB:0.0002〜0.002 %の中から選んだ1種あるいは2種以上を含むことを特徴とする上記(1) または(2) に記載の鋼。
【0032】
(4)前記化学組成が、そのFeの一部に代えて、さらに、Nb:0.01 〜0.03%およびTi:0.01 〜0.05%の中から選んだ1種あるいは2種を含むことを特徴とする上記(1) ないし(3) のいずれかに記載の鋼。
【0033】
(5)上記(1) ないし(4) のいずれかに記載の化学組成を有する鋼よりなる、高圧水素環境下で使用されるシームレス鋼管。
(6)上記(1) ないし(4) のいずれかに記載の化学組成を有する鋼を用い、熱間圧延による製管を行い、その際に、最終仕上圧延温度が850 ℃以上1100℃以下であって、最終仕上圧延後そのまま焼き入れを行い、得られたシームレス鋼管に引き続いて500 ℃以上で焼戻を行うことを特徴とする、高圧水素環境下で使用されるシームレス鋼管の製造方法。
【0034】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明するが、本明細書において、鋼の化学組成を示す「%」は特に断りがない限り、「質量%」である。
【0035】
本発明の特徴とする点は、低炭素鋼および/または低合金鋼において、Ca/ Sの適正範囲を規定したことにあるが、その限定理由を説明すると次の通りである。
【0036】

Cは、鋼の強化に必要な元素であり、その下限を0.03%に定めた。 一方、過剰な添加は、鋼の溶接性の低下 (溶接低温割れおよび溶接部の硬度上昇) を招くので、その上限を0.18%と定めた。 望ましくは、C:0.04 %以上、0.12%以下である。
【0037】
Si
Siは鋼の脱酸に必要な元素であり、その下限を0.1 %に定めた。 一方、過剰な添加は、鋼の靱性の低下を招くので、その上限を0.5 %と定めた。 望ましくは、0.2 %以上、0.3 %以下である。
【0038】
Mn
Mnは、鋼の強化に必要な元素であり、その下限を0.2 %に定めた。一方、過剰な添加は、鋼の溶接性の低下 (溶接低温割れおよび溶接部の硬度上昇) を招くので、その上限を1.8 %と定めた。 望ましくは、0.5 %以上、1.5 %以下である。
【0039】

Pは、不純物であり、極力少ない方がよい。 不純物量が多いと、鋼の熱間加工性の低下を招くので、その上限を0.025 %に定めた。
【0040】

Sは、非拡散性水素によるトラップサイトを生成し、拡散性水素をトラップするのに必要な元素であり、その下限を0.002 %に定めた。 一方、過剰な添加は、鋼の熱間加工性の低下を招くので、その上限を0.02%と定めた。 望ましくは、0.004 %以上、0.015 %以下である。
【0041】
sol.Al
Alは、鋼の脱酸に必要な元素であり、その下限を0.01%に定めた。 一方、過剰な添加は、鋼の清浄性と靱性の低下を招くので、その上限を0.1 %と定めた。 望ましくは、sol.Al:0.02 〜0.04%である。
【0042】
Ca
非拡散性水素によるトラップサイトを形成するために0.001 %以上を含有する。一方、余り多量に含有すると溶製コストが上昇するばかりでなく、強度等の低下をもたらすため上限は0.1 %とした。
【0043】
Ca /S
Ca/Sは、非拡散性水素によってトラップサイトを生成し易いMnS やCa系複合介在物を形成させる上での重要な因子である。 Ca/S<2の場合に、 MnS介在物を形成し易いが、本発明は好ましくは1.5 未満 (Ca/S<1.5)とする。一方、Ca/S≧11の場合に、Ca系複合介在物を形成し易い。 望ましくは、Ca/Sは、0.5 以下、あるいは、Ca/Sは15以上である。
【0044】

Vは、添加しなくてもよいが、添加した場合には、VCを形成し、拡散性水素をトラップするのに有効となるため、その下限を0.03%に定めた。 一方、過剰に添加しても効果が飽和するため、その上限を0.3 %と定めた。
【0045】
本発明において鋼中の拡散性水素濃度比は、より低いのが好ましいため、鋼にVを含有させて、拡散性水素濃度比を60%以下とするのがよい。
以下の元素は、必ずしも添加する必要はない。 しかし、鋼の強度や靱性を高めようとする場合には、添加してもよい。
【0046】
Cr
Crは、鋼の強化に有効な任意含有元素であり、その下限を0.25%に定めた。 一方、過剰な添加は、鋼の溶接性の低下を招くので、その上限を2.5 %と定めた。 望ましくは、0.25〜1.5 %である。
【0047】
Mo
Moは、鋼の強化に有効な任意含有元素であり、その下限を0.1 %に定めた。 一方、Moは高価な元素であり、かつ過剰に添加しても効果が飽和するため、その上限をl.2 %と定めた。 望ましくは、0.1 〜0.6 %である。
【0048】

Bは、焼入れ性を高め、鋼の強化に有効な任意含有元素であり、その下限を0.0002%に定めた。一方、過剰な添加は、鋼の溶接性を低下させるので、その上限を0.002 %と定めた。 望ましくは、0.0002〜0.001 %である。
【0049】
このようなCr、Mo, Bは鋼の強化用に少なくとも1種含有される。
Nb
Nbは、鋼を細粒化し、靱性の向上に有効な元素であり、その下限を0.Ol%に定めた。 一方、過剰に添加しても、効果が飽和するばかりか、焼入れ時に強度バラツキを生じさせる原因ともなるので、その上限を0.03%と定めた。 望ましくは、0.015 〜0.025 %である。
【0050】
Ti
Tiは、鋼の細粒化による靱性の向上に有効な元素であり、その下限を0.01%に定めた。一方、過剰に添加した場合、TiC の析出によって、逆に靱性が低下するので、その上限を0.05%と定めた。望ましくは、0.01〜0.05%である。
【0051】
NbおよびTiは、鋼の細粒化のために少なくとも1種含有させる。
このような化学組成の残りは、Feおよび不純物であり、そのときの不純物としては、N、Cu、Niなどが挙げられ、それらは合計量で0.3 %以下程度は許容される。
【0052】
かかる化学組成をもった鋼は、適宜溶製されてから、例えば連続鋳造法によって鋳片とされ、次いで、熱間圧延、さらに必要により冷間圧延を行って所望形態の鋼材として使用される。このときの鋼材の形態としては、管材、板材、形材などがあり、所期の耐水素脆性が発揮される限り、特に制限はされない。
【0053】
次に、このような本発明にかかる鋼材、特にシームレス鋼管の製造方法について説明する。
連続鋳造法により得られた鋳片は、例えば1100〜1300℃という適宜温度に加熱され、または保持され、熱間圧延が行われる。本発明においてシームレス鋼管を製造するには、熱間圧延は、通常、マンネスマン製管法によって行う。それ以外の圧延方式でシームレス鋼管の製造を行ってもよく、本発明においては特に制限されない。
【0054】
最終仕上圧延温度
熱間圧延に際し、最終仕上圧延温度が低いと、MnS やCa系複合介在物が伸びて疲労亀裂の起点となる可能性が高いので、本発明にあっては、その下限を850 ℃に定めた。 また、熱間圧延終了後には、その好適態様では焼入れを行うことから、1100℃を超える温度域から焼入れを行うと、鋼の組織が粗粒化し、靱性の低下を招くので、その上限を1100℃と定めた。 望ましくは、900 ℃以上1050℃以下である。
【0055】
焼戻し温度
熱間圧延終了後には、上述のように焼入れ処理を行い、次いで、それに続いて焼戻し処理を行う。そのときの焼戻し温度は、500 ℃以上でよい、望ましくは、600 ℃以上である。
【0056】
所要の熱処理を終えたシームレス鋼管は、次いで、適宜後処理を行って、製品とされる。
次に、本発明の作用効果について、実施例によってさらに具体的に説明する。
【0057】
【実施例】
本例では、実際の高圧水素ガス環境下で試験を行うことは困難であるため、HIC を起こさない程度の微量の水素を電気的にチャージし、高圧水素ガス環境の代替とした。
【0058】
すなわち、表1および表2に記載の化学組成の鋼を溶製し、仕上げ温度950 ℃で熱間圧延を行い、熱延後、そのまま焼入れを行い、次いで650 ℃で焼戻し処理を行った。得られた鋼板から寸法:30mm (幅) ×100mm(長さ) の試験片を切り出して水素ガスチャージ処理を行った。
【0059】
水素ガスチャージ条件は以下の通りである。
3%NaClag、
1.2VvsAg/Ag/AgCl 、
かかる水素環境下に試験片を常温、200hの期間保持した。試験片の厚みは2mmであった。
【0060】
この試験片を100 ℃/hで昇温分析し、400 ℃までに放出される拡散性水素量と400 ℃から800 ℃までに放出される非拡散性水素量とを測定し、拡散性水素濃度比を求めた。
【0061】
結果は、表1、表2にまとめて示す。
これらの結果から、本願発明が規定する鋼の組成とCa/ Sの範囲の場合には、拡散性水素濃度比が70%以下となることを確認した。
【0062】
また、Vを添加することにより、拡散性水素濃度比が60%以下となることを確認した。
【0063】
【表1】
Figure 2005002386
【0064】
【表2】
Figure 2005002386
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかる鋼を用いることによって例えば75MPa という高圧水素環境下で使用するガスボンベ、配管、周辺機器を構成することができ、長期間の使用によっても水素脆化の起こるおそれはなく、したがって、高圧水素として保持することで多量の水素を貯蔵できるガスボンベなとが製造できるなと、今日のように水素エネルギーが注目されている状況下からは、本発明の意義は特に大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】湿潤HS 環境下での鋼中に環境中から侵入する水素量とCa/Sの比との関係を模式的に示すグラフである。
【図2】湿潤HS 環境下での鋼中にトラップされる水素量とCa/Sの比との関係を模式的に示すグラフである。
【図3】高圧水素ガス環境下での鋼中に環境中から侵入する水素量とCa/Sの比との関係を模式的に示すグラフである。
【図4】高圧水素ガス環境下での鋼中にトラップされる水素量とCa/Sの比との関係を模式的に示すグラフである。

Claims (6)

  1. 質量%にて、
    C:0.03 〜0.18%、Si:0.1〜0.5 %、Mn:0.2〜1.8 %、P:0.025%以下、S:0.002 〜0.02%、sol.Al:0.01 〜0.10%、Ca:0.001〜0.10%を含み、 Ca/S:1.5未満または11以上であり、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有する、高圧水素環境下で使用される鋼。
  2. 質量%にて、
    C:0.03 〜0.18%、Si:0.1〜0.5 %、Mn:0.2〜1.8 %、P:0.025%以下、S:0.002 〜0.02%、sol.Al:0.01 〜0.10%、Ca:0.001〜0.10%、V:0.03〜0.3 %を含み、 Ca/S:1.5未満または11以上であり、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有する、高圧水素環境下で使用される鋼。
  3. 前記化学組成が、そのFeの一部に代えて、さらに、Cr:0.25 〜2.5 %、Mo:0.1〜1.2 %、およびB:0.0002〜0.002 %の中から選んだ1種あるいは2種以上を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の鋼。
  4. 前記化学組成が、そのFeの一部に代えて、さらに、Nb:0.01 〜0.03%およびTi:0.01 〜0.05%の中から選んだ1種あるいは2種を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の鋼。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載の化学組成を有する鋼よりなる、高圧水素環境下で使用されるシームレス鋼管。
  6. 請求項1ないし4のいずれかに記載の化学組成を有する鋼を用い、熱間圧延による製管を行い、その際に、最終仕上圧延温度が850 ℃以上1100℃以下であって、最終仕上圧延後そのまま焼き入れを行い、得られたシームレス鋼管に引き続いて500 ℃以上で焼戻を行うことを特徴とする、高圧水素環境下で使用されるシームレス鋼管の製造方法。
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