JP2005002163A - 照明用熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温でも表面光沢を損なわないで、成形収縮や成形品の反り変形を抑制した、照明用部品に好適な熱可塑性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】熱可塑性ポリエステル樹脂85〜99重量%およびガラス転移温度が130℃以上のポリグルタルイミド1〜15重量%である照明用熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし。
【解決手段】熱可塑性ポリエステル樹脂85〜99重量%およびガラス転移温度が130℃以上のポリグルタルイミド1〜15重量%である照明用熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性ポリエステル樹脂およびポリグルタルイミドを含有する照明用熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂は耐熱性、耐薬品性、成形流動性、成形品の表面光沢に優れる為、照明部品、特に自動車ヘッドランプなど高温にさらされる用途へ利用されている。しかし、射出成形時および製品使用時にかかる高温によって成形品の収縮が大きい。そのため、製品成形品が変形したり反りが発生する欠点を有している。形状が複雑であればあるほどその問題は深刻であり改善が要求されている。そのような要求に対しては一般に無機粒子の配合による改良が行われてきた。樹脂成形品を照明部品として利用するには、成形体の表面にアルミニウムや銀の蒸着膜などの光反射金属膜が施される。上記のように無機粒子を含む場合は無機粒子に起因して成形品表面に凹凸ができるために光反射金属膜を形成させる以前に、予めアンダーコート等の下塗りをして表面を平滑にする事が必須であった。しかしながら、アンダーコートは樹脂の種類毎にアンダーコート材料を設計しなければいけないこと、アンダーコート材料を構成する有機溶剤が環境保護の上で好ましくないこと等の問題がある。そのため、無機粒子を用いない方法も検討されている。そのような方法は、熱可塑性ポリエステル樹脂と相溶性の高い非晶性樹脂、例えばポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂などをブレンドする方法である。しかしながらこの方法では、熱可塑性ポリエステル樹脂の結晶性を損なうために成形性が損なわれるほか、結晶化を損なうために高温環境下では表面光沢も損なわれる。熱可塑性ポリエステル樹脂の結晶性を損なわないようにするためにポリフェニレンエーテル樹脂など熱可塑性ポリエステル樹脂と相溶性が低い非晶性樹脂をブレンドする方法があるが、この方法では表面光沢が損なわれる。同様の方法としてはポリグルタルイミドを配合する方法がある(例えば、特許文献1〜3など)。ポリグルタルイミドは熱可塑性ポリエステル樹脂の結晶性への影響は比較的少ない。ただし、従来技術ではポリグルタルイミドのガラス転移温度が低い場合が含まれるのでランプエクステンションなどの高温にさらされる部品では不向きであり、また熱可塑性ポリエステル樹脂との混合比率が多すぎると表面光沢や成形流動性が損なわれ、複雑な形状の成形には不向きであった。
【0003】
【特許文献1】
特開昭59−41355号公報
【0004】
【特許文献2】
特開平7−145294号公報
【0005】
【特許文献3】
特開平5−331358号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的はこのような従来の問題を改善し、表面光沢や成形流動性を損なわないで、成形収縮や成形品の反り変形を抑制した、照明用部品に好適な熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成する為に鋭意検討した結果、熱可塑性ポリエステル樹脂およびポリグルタルイミドを含有する熱可塑性樹脂組成物は優れた特性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の第一は、熱可塑性ポリエステル樹脂85〜99重量%およびガラス転移温度が130℃以上のポリグルタルイミド1〜15重量%を含有する、照明用熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0009】
好ましい実施態様は、熱可塑性ポリエステル樹脂が、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートから選ばれる少なくとも1種である事を特徴とする、前記に記載の照明用熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0010】
本発明の第二は、前記何れかに記載の照明用熱可塑性樹脂組成物で形成されている樹脂成形品に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる熱可塑性ポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸化合物および/またはジカルボン酸のエステル形成性誘導体を主成分とする酸成分、並びにジオール化合物および/またはジオール化合物のエステル形成性誘導体を主成分とするジオール成分との反応により得られる従来公知の任意の熱可塑性ポリエステル樹脂である。
【0012】
前記主成分とするとは、酸成分又はジオール成分中に占めるそれぞれの割合が80モル%以上、さらには90モル%以上であることを意図し、上限は100モル%である。
【0013】
上記の酸成分のうち芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸等が挙げられ、これらの置換体(例えば、メチルイソフタル酸等のアルキル基置換体など)や誘導体(テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル等のようなアルキルエステル化合物など)も使用し得る。また、p−オキシ安息香酸及びp−ヒドロキシエトキシ安息香酸のようなオキシ酸及びこれらのエステル形成性誘導体も使用し得る。これらのモノマーを2種以上混合して用いても良い。得られる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の特性を損なわない程度の少量であれば、これらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、セバシン酸等のような脂肪族ジカルボン酸を1種以上混合して使用し得る。
【0014】
上記酸成分の中では、得られる熱可塑性ポリエステル樹脂の結晶性や強度、弾性率の点から、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、およびそれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
【0015】
また、上記のジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール等のような脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のような脂環式グリコール等が挙げられ、これらの置換体や誘導体もまた使用し得る。また、ε−カプロラクトンのような環状エステルも使用し得る。これらの内の2種以上を混合して用いても良い。更に、熱可塑性ポリエステル樹脂の弾性率を著しく低下させない程度の少量であるならば、長鎖型のジオール化合物(例えば、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール)、及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加重合体等(例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加重合体等)などを組み合わせて使用しても良い。
【0016】
前記ジオール成分の中では、取り扱い性および得られる熱可塑性ポリエステル樹脂の強度、弾性率等の点から、エチレングリコール、ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0017】
熱可塑性ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチルテレフタレート、ネオペンチルテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート等、またはこれらの共重合ポリエステルを挙げることができる。取扱、入手の容易さ、結晶性などの点からポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。それらは単独、または2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0018】
上記の熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量は、成形工程における成形流動性および最終製品の諸物性を考慮して選択され、低すぎても高すぎても好ましくなく適した分子量を設定する必要がある。すなわち、熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量は、フェノール/テトラクロロエタン(5/5重量比)混合溶媒を用いて、25℃で測定した対数粘度が0.3〜2.0dl/gであり、好ましくは0.35〜1.9dl/gであり、更に好ましくは0.4〜1.8dl/gである。対数粘度が0.3dl/g未満である場合、得られる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の成形品の機械的特性が低く、また2.0dl/gより大きい場合は成形時の流動性等の加工性に問題が生じる傾向がある。
【0019】
照明用熱可塑性樹脂組成物中、上記の熱可塑性ポリエステル樹脂が含まれる割合の上限値は99重量%である。上限値より多いと、本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形収縮や反り変形の点で問題が生じる。また、下限値は85重量%であり、好ましくは90重量%であり、より好ましくは95重量%である。下限値未満であると本発明の熱可塑性樹脂組成物の流動性に問題が生じる。
【0020】
本発明で用いられるポリグルタルイミドとはとは、下記一般式(1)で示される環状グルタルイミド単位を含有する重合体又は共重合体である。
【0021】
【化1】
(式中、R1、R2及びR3は各々水素原子、置換又は非置換の炭素数1〜23のアルキル基、アリール基、アルカリール基及びアラルキル基から選ばれた同一又は異なった基であり、ここで置換基としてはメチル基、エチル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、エチルカルボニル基等から選択することができる。好ましくはR1及びR2は共にメチル基であり、R3は炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくはメチル基である)
ポリグルタルイミドの分子量は、通常、約25,000〜95,000であり、好ましくは約75,000〜95,000の範囲である。上記分子量より小さいと射出成形品としての強度が得られない場合がある。また上記分子量より大きいと溶融粘度が高すぎて熱可塑性ポリエステル樹脂との混合が不十分になる場合がある。本発明で用いられるポリグルタルイミドのDSC測定におけるガラス転移温度は130℃以上であり、好ましくは140℃以上であり、特に好ましくは150℃以上である。ガラス転移温度が130℃未満であると、高温環境下での表面光沢が損なわれる。ガラス転移温度の上限値は特にないが、180℃以上では、溶融粘度が高くなり過ぎ、熱可塑性ポリエステル樹脂との混合が不十分になる場合がある。
【0022】
ポリグルタルイミドはグルタルイミド単位(1)の単独重合体か又は他のモノマー、好ましくは低級アルキル(メタ)アクリレート、より好ましくはメチルメタアクリレートを含む共重合体である。また、スチレン;塩化ビニル;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸無水物;メタアクリルアミド、N−メチルメタアクリルアミド、N,N−ジメチルメタアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;あるいは(メタ)アクリロニトリル等が含まれる共重合体であってもよい。グルタルイミド共重合体は、メタクリル酸又はメタクリル酸エステル共重合体とアンモニア、アミン、尿素又は非置換尿素との高温での反応;ポリメタクリル酸無水物とアンモニア又はアミンとの反応;メタクリ酸エステル−メタクリルアミド共重合体のイミド環を生じる熱反応;あるいは(メタ)アクリル酸エステルを高率で含むポリマーとアンモニア又はアミンとの、溶液中又は溶融物中での反応等;のような、公知の方法によって得ることができる。好ましい調製法は、アール エム コプチック(R.M.Kopchik)の米国特許第4,246,374号明細書に記載された方法等がある。
【0023】
照明用熱可塑性樹脂組成物中、上記のポリグルタルイミドの含まれる割合の上限値は15重量%であり、好ましくは10重量%であり、より好ましくは5重量%である。上限値より多いと、本発明の照明用熱可塑性樹脂組成物の流動性や表面光沢に問題が生じる。また、ポリグルタルイミドの組成比の下限値は1重量%である。下限値未満であると本発明の照明用熱可塑性樹脂組成物の成形収縮や反り変形に問題が生じる。
【0024】
本発明の照明用熱可塑性樹脂組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂とポリグルタルイミドとを、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練する方法をあげることができる。混練機の例としては、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどが挙げられ、特に、剪断効率の高い混練機が好ましい。前記熱可塑性ポリエステル樹脂と前記ポリグルタルイミドとは上記の混練機に一括投入して溶融混練しても良いし、あるいは予め溶融状態にした熱可塑性ポリエステル樹脂にポリグルタルイミドを添加して溶融混練しても良いし、その逆でもよい。
【0025】
本発明の照明用熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、アクリルゴム、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、天然ゴム、塩素化ブチルゴム、α−オレフィンの単独重合体、2種以上のα−オレフィンの共重合体(ランダム、ブロック、グラフトなど、いずれの共重合体も含み、これらの混合物であっても良い)、またはオレフィン系エラストマーなどの耐衝撃性改良剤を添加することができる。これらは無水マレイン酸等の酸化合物、またはグリシジルメタクリレート等のエポキシ化合物で変性されていても良い。また、表面外観や反り変形などの特性を損なわない範囲で、他の任意の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂、例えば、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ゴム質重合体強化スチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリサルフォン樹脂、及びポリアリレート樹脂等を単独または2種以上組み合わせて使用し得る。
【0026】
更に、目的に応じて、顔料や染料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、及び界面活性剤のような帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。
【0027】
本発明で得られる照明用熱可塑性樹脂組成物は、特に限定されないが例えば、射出成形して得られる樹脂成形品として用いられ得る。該樹脂成形品は、高温でも表面外観を損なわず、かつ成形収縮の異方性が少ないので複雑な形状の成形品を射出成形しても反り変形が少ないので、照明用部品として好適に用いることが出来るものである。具体的には、自動車ヘッドランプやリアランプのリフレクタやエクステンション等の自動車ランプ関連部品、ダウンライトなどの施設照明関連部品、自動車の室内鏡などの鏡様部品などに好適に利用され得る。上記照明関連部品の中で自動車ヘッドランプエクステンションや施設照明のダウンライトでは、従来必須であったアンダーコートが不必要であるので、いわゆる金属膜のダイレクト蒸着仕様に好適に利用され得る。
【0028】
その他、本発明の照明用熱可塑性樹脂組成物は熱プレス成形で成形しても良く、ブロー成形にも使用できる。得られる成形品は高温でも表面外観に優れる。
【0029】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0030】
実施例、及び比較例で使用する主要原料を以下にまとめて示す。尚、特に断らない場合は、原料の精製は行っていない。
(原料)
・熱可塑性ポリエステル樹脂A(PET):ベルペットEFG70(カネボウ合繊(株)社製)
・熱可塑性ポリエステル樹脂B(PBT):SPESIN KP210(KOL)
・熱可塑性ポリエステル樹脂C(PPT):CORTERRA(シェルケミカル社製)
・熱可塑性ポリエステル樹脂D:ビスフェノールAの両末端にアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルが共重合したポリエチレンテレフタレート
・ポリグルタルイミドE:PLEXIMID8505(レーム社製)、ガラス転移温度153℃
・ポリグルタルイミドF:PLEXIMID8717(レーム社製)、ガラス転移温度172℃
(評価)
〔ガラス転移温度〕
ガラス転移温度(Tg)は、パーキンエルマー社製のDSC−7を用いて、開始温度30℃、昇温速度20℃/分、終了温度300℃で測定した。
〔反り〕
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を乾燥(130℃、6時間)した後、樹脂温度240〜280℃の条件で、寸法約120×120×1mm厚の平板状試験片を射出成形した。平面上に上記の平板状試験片を置き、試験片の4隅の内、1カ所を押さえ、残り3隅の内、平面からの距離が最も大きい値をノギス等で測定した。4隅それぞれを押さえ、得られた反り値の平均値を求めた。
〔成形収縮率〕
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を乾燥(130℃、6時間)した後、樹脂温度240〜280℃の条件で、寸法約120×120×2mm厚の平板状試験片を射出成形し、次式により成形収縮率を測定した。なお、MDは樹脂の流れ方向を、TDは樹脂の流れと直角方向を示す。
収縮率(%)=(金型寸法−成形品実寸法)÷(金型寸法)×100
〔表面光沢〕
表面光沢は、アルミニウムを蒸着した成形品の拡散反射率で評価した。14000番で研磨した金型で約80mm×約50mm×約2mm厚の平板状試験片を成形した。ULVAC社製の電子ビーム蒸着機を用い、前記試験片にアルミニウムを約800オングストローム蒸着した。アルミ蒸着した直後および170℃×75時間処理した後の拡散反射率を、東京電色(株)社製のミラー反射率計で測定した。
〔流動性〕
流動性は、3mm厚のスパイラルフローでの流動長で評価した。150トンの射出成形機を用い、温度280℃で射出した際の流動長を測定した。
(製造例1)
ポリメタクリル酸メチルのペレットをメチルアミンとともに押出機中に仕込み、押出機中に取り付けられた排気口から発生ガスを脱気しながら、樹脂温度280℃で押出を行い、ポリグルタルイミド樹脂のペレットを得た。イミド化率は18モル%であり、Tgは127℃であった。
(実施例1〜10、比較例1)
表1に示す重量比の熱可塑性ポリエステルA、熱可塑性ポリエステルB、熱可塑性ポリエステルC、熱可塑性ポリエステルD、ポリグルタルイミドE、ポリグルタルイミドF、製造例1で得たポリグルタルイミドを二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX44)を用いて溶融混練することにより熱可塑性樹脂組成物を得て、これらを評価した。結果を表1に示す。
(比較例2〜4)
表1に示す重量比の熱可塑性ポリエステルA、熱可塑性ポリエステルB、ポリグルタルイミドEを実施例1と同様に溶融混練することにより熱可塑性樹脂組成物を得て、これらを評価した。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
(比較例5〜9)
表2に示す重量比の熱可塑性ポリエステルA、熱可塑性ポリエステルB、ポリカーボネート樹脂およびタルクを実施例1と同様に溶融混練することにより熱可塑性樹脂組成物を得て、これらを評価した。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
実施例および比較例から、本願発明の熱可塑性ポリエステル樹脂およびポリグルタルイミドを配合した照明用熱可塑性樹脂組成物は、高温でも表面外観を損なわずに収縮率や反り変形が抑制された。添加するポリグルタルイミドが1重量%より少ない場合、拡散反射率については本願発明の熱可塑性樹脂組成物と大差はなかったものの、反りや成形収縮率といった、寸法安定性の点で本願発明品に劣った。また、添加するポリグルタルイミドの量が、15重量%より多い場合、寸法安定性の点では本願発明品と遜色がなかったものの、拡散反射率が大きく、表面光沢が悪いことが判る。また、ポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂またはタルクを配合した場合は、表面外観が損なわれた。Tgが130℃未満のポリグルタルイミドでは耐熱性が劣ることが判る。従って、比較例の技術では本発明の目的に添う樹脂組成物が得られない事が判る。
【0033】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、表面光沢や成形流動性を損なわないで、成形収縮や成形品の反り変形を抑制した熱可塑性樹脂組成物が得られる。このような性質を有する本発明の熱可塑性樹脂組成物は、照明用部品として好適に用いることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性ポリエステル樹脂およびポリグルタルイミドを含有する照明用熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂は耐熱性、耐薬品性、成形流動性、成形品の表面光沢に優れる為、照明部品、特に自動車ヘッドランプなど高温にさらされる用途へ利用されている。しかし、射出成形時および製品使用時にかかる高温によって成形品の収縮が大きい。そのため、製品成形品が変形したり反りが発生する欠点を有している。形状が複雑であればあるほどその問題は深刻であり改善が要求されている。そのような要求に対しては一般に無機粒子の配合による改良が行われてきた。樹脂成形品を照明部品として利用するには、成形体の表面にアルミニウムや銀の蒸着膜などの光反射金属膜が施される。上記のように無機粒子を含む場合は無機粒子に起因して成形品表面に凹凸ができるために光反射金属膜を形成させる以前に、予めアンダーコート等の下塗りをして表面を平滑にする事が必須であった。しかしながら、アンダーコートは樹脂の種類毎にアンダーコート材料を設計しなければいけないこと、アンダーコート材料を構成する有機溶剤が環境保護の上で好ましくないこと等の問題がある。そのため、無機粒子を用いない方法も検討されている。そのような方法は、熱可塑性ポリエステル樹脂と相溶性の高い非晶性樹脂、例えばポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂などをブレンドする方法である。しかしながらこの方法では、熱可塑性ポリエステル樹脂の結晶性を損なうために成形性が損なわれるほか、結晶化を損なうために高温環境下では表面光沢も損なわれる。熱可塑性ポリエステル樹脂の結晶性を損なわないようにするためにポリフェニレンエーテル樹脂など熱可塑性ポリエステル樹脂と相溶性が低い非晶性樹脂をブレンドする方法があるが、この方法では表面光沢が損なわれる。同様の方法としてはポリグルタルイミドを配合する方法がある(例えば、特許文献1〜3など)。ポリグルタルイミドは熱可塑性ポリエステル樹脂の結晶性への影響は比較的少ない。ただし、従来技術ではポリグルタルイミドのガラス転移温度が低い場合が含まれるのでランプエクステンションなどの高温にさらされる部品では不向きであり、また熱可塑性ポリエステル樹脂との混合比率が多すぎると表面光沢や成形流動性が損なわれ、複雑な形状の成形には不向きであった。
【0003】
【特許文献1】
特開昭59−41355号公報
【0004】
【特許文献2】
特開平7−145294号公報
【0005】
【特許文献3】
特開平5−331358号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的はこのような従来の問題を改善し、表面光沢や成形流動性を損なわないで、成形収縮や成形品の反り変形を抑制した、照明用部品に好適な熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成する為に鋭意検討した結果、熱可塑性ポリエステル樹脂およびポリグルタルイミドを含有する熱可塑性樹脂組成物は優れた特性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の第一は、熱可塑性ポリエステル樹脂85〜99重量%およびガラス転移温度が130℃以上のポリグルタルイミド1〜15重量%を含有する、照明用熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0009】
好ましい実施態様は、熱可塑性ポリエステル樹脂が、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートから選ばれる少なくとも1種である事を特徴とする、前記に記載の照明用熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0010】
本発明の第二は、前記何れかに記載の照明用熱可塑性樹脂組成物で形成されている樹脂成形品に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる熱可塑性ポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸化合物および/またはジカルボン酸のエステル形成性誘導体を主成分とする酸成分、並びにジオール化合物および/またはジオール化合物のエステル形成性誘導体を主成分とするジオール成分との反応により得られる従来公知の任意の熱可塑性ポリエステル樹脂である。
【0012】
前記主成分とするとは、酸成分又はジオール成分中に占めるそれぞれの割合が80モル%以上、さらには90モル%以上であることを意図し、上限は100モル%である。
【0013】
上記の酸成分のうち芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸等が挙げられ、これらの置換体(例えば、メチルイソフタル酸等のアルキル基置換体など)や誘導体(テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル等のようなアルキルエステル化合物など)も使用し得る。また、p−オキシ安息香酸及びp−ヒドロキシエトキシ安息香酸のようなオキシ酸及びこれらのエステル形成性誘導体も使用し得る。これらのモノマーを2種以上混合して用いても良い。得られる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の特性を損なわない程度の少量であれば、これらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、セバシン酸等のような脂肪族ジカルボン酸を1種以上混合して使用し得る。
【0014】
上記酸成分の中では、得られる熱可塑性ポリエステル樹脂の結晶性や強度、弾性率の点から、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、およびそれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
【0015】
また、上記のジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール等のような脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のような脂環式グリコール等が挙げられ、これらの置換体や誘導体もまた使用し得る。また、ε−カプロラクトンのような環状エステルも使用し得る。これらの内の2種以上を混合して用いても良い。更に、熱可塑性ポリエステル樹脂の弾性率を著しく低下させない程度の少量であるならば、長鎖型のジオール化合物(例えば、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール)、及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加重合体等(例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加重合体等)などを組み合わせて使用しても良い。
【0016】
前記ジオール成分の中では、取り扱い性および得られる熱可塑性ポリエステル樹脂の強度、弾性率等の点から、エチレングリコール、ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0017】
熱可塑性ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチルテレフタレート、ネオペンチルテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート等、またはこれらの共重合ポリエステルを挙げることができる。取扱、入手の容易さ、結晶性などの点からポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。それらは単独、または2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0018】
上記の熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量は、成形工程における成形流動性および最終製品の諸物性を考慮して選択され、低すぎても高すぎても好ましくなく適した分子量を設定する必要がある。すなわち、熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量は、フェノール/テトラクロロエタン(5/5重量比)混合溶媒を用いて、25℃で測定した対数粘度が0.3〜2.0dl/gであり、好ましくは0.35〜1.9dl/gであり、更に好ましくは0.4〜1.8dl/gである。対数粘度が0.3dl/g未満である場合、得られる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の成形品の機械的特性が低く、また2.0dl/gより大きい場合は成形時の流動性等の加工性に問題が生じる傾向がある。
【0019】
照明用熱可塑性樹脂組成物中、上記の熱可塑性ポリエステル樹脂が含まれる割合の上限値は99重量%である。上限値より多いと、本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形収縮や反り変形の点で問題が生じる。また、下限値は85重量%であり、好ましくは90重量%であり、より好ましくは95重量%である。下限値未満であると本発明の熱可塑性樹脂組成物の流動性に問題が生じる。
【0020】
本発明で用いられるポリグルタルイミドとはとは、下記一般式(1)で示される環状グルタルイミド単位を含有する重合体又は共重合体である。
【0021】
【化1】
(式中、R1、R2及びR3は各々水素原子、置換又は非置換の炭素数1〜23のアルキル基、アリール基、アルカリール基及びアラルキル基から選ばれた同一又は異なった基であり、ここで置換基としてはメチル基、エチル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、エチルカルボニル基等から選択することができる。好ましくはR1及びR2は共にメチル基であり、R3は炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくはメチル基である)
ポリグルタルイミドの分子量は、通常、約25,000〜95,000であり、好ましくは約75,000〜95,000の範囲である。上記分子量より小さいと射出成形品としての強度が得られない場合がある。また上記分子量より大きいと溶融粘度が高すぎて熱可塑性ポリエステル樹脂との混合が不十分になる場合がある。本発明で用いられるポリグルタルイミドのDSC測定におけるガラス転移温度は130℃以上であり、好ましくは140℃以上であり、特に好ましくは150℃以上である。ガラス転移温度が130℃未満であると、高温環境下での表面光沢が損なわれる。ガラス転移温度の上限値は特にないが、180℃以上では、溶融粘度が高くなり過ぎ、熱可塑性ポリエステル樹脂との混合が不十分になる場合がある。
【0022】
ポリグルタルイミドはグルタルイミド単位(1)の単独重合体か又は他のモノマー、好ましくは低級アルキル(メタ)アクリレート、より好ましくはメチルメタアクリレートを含む共重合体である。また、スチレン;塩化ビニル;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸無水物;メタアクリルアミド、N−メチルメタアクリルアミド、N,N−ジメチルメタアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;あるいは(メタ)アクリロニトリル等が含まれる共重合体であってもよい。グルタルイミド共重合体は、メタクリル酸又はメタクリル酸エステル共重合体とアンモニア、アミン、尿素又は非置換尿素との高温での反応;ポリメタクリル酸無水物とアンモニア又はアミンとの反応;メタクリ酸エステル−メタクリルアミド共重合体のイミド環を生じる熱反応;あるいは(メタ)アクリル酸エステルを高率で含むポリマーとアンモニア又はアミンとの、溶液中又は溶融物中での反応等;のような、公知の方法によって得ることができる。好ましい調製法は、アール エム コプチック(R.M.Kopchik)の米国特許第4,246,374号明細書に記載された方法等がある。
【0023】
照明用熱可塑性樹脂組成物中、上記のポリグルタルイミドの含まれる割合の上限値は15重量%であり、好ましくは10重量%であり、より好ましくは5重量%である。上限値より多いと、本発明の照明用熱可塑性樹脂組成物の流動性や表面光沢に問題が生じる。また、ポリグルタルイミドの組成比の下限値は1重量%である。下限値未満であると本発明の照明用熱可塑性樹脂組成物の成形収縮や反り変形に問題が生じる。
【0024】
本発明の照明用熱可塑性樹脂組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂とポリグルタルイミドとを、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練する方法をあげることができる。混練機の例としては、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどが挙げられ、特に、剪断効率の高い混練機が好ましい。前記熱可塑性ポリエステル樹脂と前記ポリグルタルイミドとは上記の混練機に一括投入して溶融混練しても良いし、あるいは予め溶融状態にした熱可塑性ポリエステル樹脂にポリグルタルイミドを添加して溶融混練しても良いし、その逆でもよい。
【0025】
本発明の照明用熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、アクリルゴム、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、天然ゴム、塩素化ブチルゴム、α−オレフィンの単独重合体、2種以上のα−オレフィンの共重合体(ランダム、ブロック、グラフトなど、いずれの共重合体も含み、これらの混合物であっても良い)、またはオレフィン系エラストマーなどの耐衝撃性改良剤を添加することができる。これらは無水マレイン酸等の酸化合物、またはグリシジルメタクリレート等のエポキシ化合物で変性されていても良い。また、表面外観や反り変形などの特性を損なわない範囲で、他の任意の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂、例えば、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ゴム質重合体強化スチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリサルフォン樹脂、及びポリアリレート樹脂等を単独または2種以上組み合わせて使用し得る。
【0026】
更に、目的に応じて、顔料や染料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、及び界面活性剤のような帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。
【0027】
本発明で得られる照明用熱可塑性樹脂組成物は、特に限定されないが例えば、射出成形して得られる樹脂成形品として用いられ得る。該樹脂成形品は、高温でも表面外観を損なわず、かつ成形収縮の異方性が少ないので複雑な形状の成形品を射出成形しても反り変形が少ないので、照明用部品として好適に用いることが出来るものである。具体的には、自動車ヘッドランプやリアランプのリフレクタやエクステンション等の自動車ランプ関連部品、ダウンライトなどの施設照明関連部品、自動車の室内鏡などの鏡様部品などに好適に利用され得る。上記照明関連部品の中で自動車ヘッドランプエクステンションや施設照明のダウンライトでは、従来必須であったアンダーコートが不必要であるので、いわゆる金属膜のダイレクト蒸着仕様に好適に利用され得る。
【0028】
その他、本発明の照明用熱可塑性樹脂組成物は熱プレス成形で成形しても良く、ブロー成形にも使用できる。得られる成形品は高温でも表面外観に優れる。
【0029】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0030】
実施例、及び比較例で使用する主要原料を以下にまとめて示す。尚、特に断らない場合は、原料の精製は行っていない。
(原料)
・熱可塑性ポリエステル樹脂A(PET):ベルペットEFG70(カネボウ合繊(株)社製)
・熱可塑性ポリエステル樹脂B(PBT):SPESIN KP210(KOL)
・熱可塑性ポリエステル樹脂C(PPT):CORTERRA(シェルケミカル社製)
・熱可塑性ポリエステル樹脂D:ビスフェノールAの両末端にアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルが共重合したポリエチレンテレフタレート
・ポリグルタルイミドE:PLEXIMID8505(レーム社製)、ガラス転移温度153℃
・ポリグルタルイミドF:PLEXIMID8717(レーム社製)、ガラス転移温度172℃
(評価)
〔ガラス転移温度〕
ガラス転移温度(Tg)は、パーキンエルマー社製のDSC−7を用いて、開始温度30℃、昇温速度20℃/分、終了温度300℃で測定した。
〔反り〕
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を乾燥(130℃、6時間)した後、樹脂温度240〜280℃の条件で、寸法約120×120×1mm厚の平板状試験片を射出成形した。平面上に上記の平板状試験片を置き、試験片の4隅の内、1カ所を押さえ、残り3隅の内、平面からの距離が最も大きい値をノギス等で測定した。4隅それぞれを押さえ、得られた反り値の平均値を求めた。
〔成形収縮率〕
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を乾燥(130℃、6時間)した後、樹脂温度240〜280℃の条件で、寸法約120×120×2mm厚の平板状試験片を射出成形し、次式により成形収縮率を測定した。なお、MDは樹脂の流れ方向を、TDは樹脂の流れと直角方向を示す。
収縮率(%)=(金型寸法−成形品実寸法)÷(金型寸法)×100
〔表面光沢〕
表面光沢は、アルミニウムを蒸着した成形品の拡散反射率で評価した。14000番で研磨した金型で約80mm×約50mm×約2mm厚の平板状試験片を成形した。ULVAC社製の電子ビーム蒸着機を用い、前記試験片にアルミニウムを約800オングストローム蒸着した。アルミ蒸着した直後および170℃×75時間処理した後の拡散反射率を、東京電色(株)社製のミラー反射率計で測定した。
〔流動性〕
流動性は、3mm厚のスパイラルフローでの流動長で評価した。150トンの射出成形機を用い、温度280℃で射出した際の流動長を測定した。
(製造例1)
ポリメタクリル酸メチルのペレットをメチルアミンとともに押出機中に仕込み、押出機中に取り付けられた排気口から発生ガスを脱気しながら、樹脂温度280℃で押出を行い、ポリグルタルイミド樹脂のペレットを得た。イミド化率は18モル%であり、Tgは127℃であった。
(実施例1〜10、比較例1)
表1に示す重量比の熱可塑性ポリエステルA、熱可塑性ポリエステルB、熱可塑性ポリエステルC、熱可塑性ポリエステルD、ポリグルタルイミドE、ポリグルタルイミドF、製造例1で得たポリグルタルイミドを二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX44)を用いて溶融混練することにより熱可塑性樹脂組成物を得て、これらを評価した。結果を表1に示す。
(比較例2〜4)
表1に示す重量比の熱可塑性ポリエステルA、熱可塑性ポリエステルB、ポリグルタルイミドEを実施例1と同様に溶融混練することにより熱可塑性樹脂組成物を得て、これらを評価した。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
(比較例5〜9)
表2に示す重量比の熱可塑性ポリエステルA、熱可塑性ポリエステルB、ポリカーボネート樹脂およびタルクを実施例1と同様に溶融混練することにより熱可塑性樹脂組成物を得て、これらを評価した。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
実施例および比較例から、本願発明の熱可塑性ポリエステル樹脂およびポリグルタルイミドを配合した照明用熱可塑性樹脂組成物は、高温でも表面外観を損なわずに収縮率や反り変形が抑制された。添加するポリグルタルイミドが1重量%より少ない場合、拡散反射率については本願発明の熱可塑性樹脂組成物と大差はなかったものの、反りや成形収縮率といった、寸法安定性の点で本願発明品に劣った。また、添加するポリグルタルイミドの量が、15重量%より多い場合、寸法安定性の点では本願発明品と遜色がなかったものの、拡散反射率が大きく、表面光沢が悪いことが判る。また、ポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂またはタルクを配合した場合は、表面外観が損なわれた。Tgが130℃未満のポリグルタルイミドでは耐熱性が劣ることが判る。従って、比較例の技術では本発明の目的に添う樹脂組成物が得られない事が判る。
【0033】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、表面光沢や成形流動性を損なわないで、成形収縮や成形品の反り変形を抑制した熱可塑性樹脂組成物が得られる。このような性質を有する本発明の熱可塑性樹脂組成物は、照明用部品として好適に用いることができる。
Claims (3)
- 熱可塑性ポリエステル樹脂85〜99重量%およびガラス転移温度が130℃以上のポリグルタルイミド1〜15重量%を含有する、照明用熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性ポリエステル樹脂が、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートから選ばれる少なくとも1種である事を特徴とする、請求項1に記載の照明用熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載の照明用熱可塑性樹脂組成物で形成されている樹脂成形品。
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