JP2005001578A - タイヤの空気圧低下検知装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車輪速センサのみを用いて走行状態でも空気圧の低下した車輪を特定できるようなタイヤの空気圧低下検知装置を提供する。
【解決手段】前輪右車輪速度VFR、前輪左車輪速度VFL、後輪右車輪速度VRR、及び後輪左車輪速度VRLが空気圧低下検知装置1に入力されると、直進走行判定パラメータ演算部2は、これらのデータに基づいて前輪ヨーレートや後輪ヨーレートを演算して直進走行の判定を行う。重み算出部3が、直進走行の判定の程度に応じて直進状態で寄与率が高くなる重みを算出する。タイヤ径比算出部4は、前輪左右車輪速度差と後輪左右車輪速度差との偏差と車体速度と重みとによってタイヤ径比を算出する。空気圧低下検知部7が、タイヤ径比が所定の閾値以上のとき、タイヤ径比の正負の判定と、前輪左右車輪速度差と後輪左右車輪速度差との大小とに基づいてタイヤ空気圧が低下した車輪を特定する。
【選択図】 図3
【解決手段】前輪右車輪速度VFR、前輪左車輪速度VFL、後輪右車輪速度VRR、及び後輪左車輪速度VRLが空気圧低下検知装置1に入力されると、直進走行判定パラメータ演算部2は、これらのデータに基づいて前輪ヨーレートや後輪ヨーレートを演算して直進走行の判定を行う。重み算出部3が、直進走行の判定の程度に応じて直進状態で寄与率が高くなる重みを算出する。タイヤ径比算出部4は、前輪左右車輪速度差と後輪左右車輪速度差との偏差と車体速度と重みとによってタイヤ径比を算出する。空気圧低下検知部7が、タイヤ径比が所定の閾値以上のとき、タイヤ径比の正負の判定と、前輪左右車輪速度差と後輪左右車輪速度差との大小とに基づいてタイヤ空気圧が低下した車輪を特定する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、四輪車両におけるタイヤの空気圧状態を検知するタイヤの空気圧低下検知装置に関し、特に、走行しながらタイヤの空気圧の低下を検知することのできるタイヤの空気圧低下検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ブレーキロック防止システム(以下、単に「ABS」(Anti−lock Brake System)という)の車輪速センサが検出する各車輪の回転速度の和又は差によって空気圧の低下を検知することができるタイヤの空気圧低下検知装置が知られている。この技術は、車輪の空気圧が低下したとき、タイヤの径が小さくなるので他の車輪より早く回転するという現象を利用してタイヤの空気圧の低下を検知するものである。このようなタイヤの空気圧低下検知装置によれば、各車輪に備えられた車輪速センサから得られる回転速度の和又は差分を算出することによって、走行しながらタイヤの空気圧の低下を検知することが可能である。
【0003】
具体的には、四輪車両における4つのタイヤのうちの対角線上にある1対のタイヤの回転角速度の和と、他の1対のタイヤの回転角速度の和との比からタイヤの空気圧の低下を検知するもの(例えば、下記の特許文献1参照)や、前輪側の左右車輪の回転速度差と後輪側の左右車輪の回転速度差の差分からタイヤの空気圧の低下を検知するものなどが知られている。また、下記の特許文献2には、四輪の車輪速センサを用いてタイヤの空気圧の低下を検知するとき、車両を急旋回して横加速度を検出したときは空気圧の低下の検知を禁止し、横加速度の殆どない直進走行の時にのみ空気圧の低下の検知を行う技術が開示されている。これによって、直進走行の時にのみ高い精度でタイヤの空気圧の低下を検知することができる。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−92114号公報(請求項1、段落番号0019〜0040、及び図1〜図8参照)
【特許文献2】
特開平10−100622号公報(段落番号0009〜0035、図1〜図6参照)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のタイヤの空気圧低下検知装置による空気圧の低下の検知手法では、各車輪の回転速度を相対的に比較しているため、四輪のうちの何れかに空気圧の低下した車輪が存在することを検知したり、また、対角する二輪のうちの何れかに空気圧の低下した車輪が存在することを検知したりすることはできるものの、四輪のうち何れのタイヤの空気圧が低下しているかを特定することはできない。したがって、従来の空気圧低下検知装置によってタイヤの空気圧の低下を検知したときには、四輪の空気圧を実際にそれぞれ測定して、空気圧が低下した車輪を特定しなければならない。つまり、従来技術において、ABS方式の車輪速センサのみを用いた空気圧低下検知装置では、走行中に空気圧の低下した車輪を特定することはできない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車輪速センサのみを用いて走行状態でも空気圧の低下した車輪を特定することができるタイヤの空気圧低下検知装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、請求項1の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、四輪車両における各車輪の車輪速度に基づいてタイヤの空気圧の低下を検知するタイヤの空気圧低下検知装置であって、前輪の左右車輪の速度差と後輪の左右車輪の速度差との偏差、及び前輪の左右車輪の速度差と後輪の左右車輪の速度差との大小によってタイヤ空気圧が低下した車輪を特定することを特徴とする。
【0008】
すなわち、請求項1の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置によれば、例えば、四輪の各車輪に備えられた車輪速センサによってそれぞれの車輪の車輪速度を検出すれば、前輪側の左右車輪の速度差と後輪側の左右車輪の速度差の差分と、前輪側の左右車輪の速度差と後輪側の左右車輪の速度差との大小とによってタイヤ空気圧の低下した車輪を特定することができる。これによって、ヨーレートセンサや加速度センサなど各種のセンサを用いなくても、走行状態においてタイヤ空気圧の低下した車輪を特定することができるので、結果的に、タイヤの空気圧低下検知装置を備えた車両のコストダウンを図ることが可能となる。
【0009】
また、請求項2の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、四輪車両における各車輪の車輪速度に基づいてタイヤの空気圧の低下を検知するタイヤの空気圧低下検知装置であって、前記各車輪の車輪速度に基づいて車両の直進走行を判定する直進走行判定手段と、前記直進走行判定手段が判定した直進走行の程度に応じた重みを算出する重み算出手段と、前記各車輪の車輪速度と前記車両の車体速度と前記重み算出手段が算出した重みとに基づいて一輪のタイヤ径比を算出するタイヤ径比算出手段と、前記タイヤ径比算出手段で算出したタイヤ径比の絶対値が所定の閾値以上のとき、前記タイヤ径比の正負の判定、及び前記四輪車両における前輪の左右車輪の速度差と後輪の左右車輪の速度差との大小に基づいて、空気圧が低下したタイヤを特定する空気圧低下検知手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
すなわち、請求項2の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、各車輪の車輪速度のみによってタイヤの空気圧の低下を検知しているので、車両の旋回時に発生する左右車輪の速度差とタイヤの空気圧の低下によって発生する左右車輪の速度差とを弁別する必要がある。そこで、本発明では、直進走行判定手段が、加速度センサやヨーレートセンサなど各種のセンサを用いることなく、車輪速センサによって検出された各車輪の車輪速度のみに基づいて車両の直進走行の程度を判定している。さらに、重み算出手段が直進走行判定手段の判定した直進走行の程度に応じて重み付けをしている。すなわち、重み算出手段が直進走行の状態における空気圧の低下の検知寄与率を高くするような重み付けをしている。この結果、直進走行の状態の時にのみ正確に空気圧の低下を検知することができる。これによって、空気圧低下検知手段は、直進走行の状態のときに検出された各車輪の車輪速度によって算出されたタイヤ径比の絶対値が所定の閾値以上のとき、そのタイヤ径比が0以上であるか0未満であるかの判定と、前輪の左右車輪の速度差と後輪の左右車輪の速度差との大小とによって空気圧の低下したタイヤを検知している。このようにして、本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、車輪速センサが検出した車輪速度のみによって極めて高い精度で空気圧の低下したタイヤを特定することができる。
【0011】
また、請求項3の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、請求項2に記載のタイヤの空気圧低下検知装置であって、直進走行判定手段は、少なくとも、前輪の左右車輪の速度差に基づいて演算した前輪ヨーレートと後輪の左右車輪の速度差に基づいて演算した後輪ヨーレートとを用いて、車両の直進走行の程度を判定し、重み算出手段は、前輪ヨーレート及び後輪ヨーレートによって判定された直進走行の程度に応じて、直進状態での検知寄与率を高くするような傾向の重みを算出することを特徴とする。
【0012】
すなわち、請求項3の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置によれば、ヨーレートセンサを用いなくても、直進走行判定手段が、前輪の左右車輪の速度差や後輪の左右車輪の速度差に基づいて前輪ヨーレートや後輪ヨーレートを演算して直進走行の判定を行い、重み算出手段が、演算された前輪ヨーレートや後輪ヨーレートの大きさによって重みを算出している。例えば、演算された前輪ヨーレートや後輪ヨーレートが所定の閾値以下のときに重みを1として直進走行の判定の寄与率を高くしている。これによって、結果的には、車輪速度のみによって直進状態のときのみを選択して空気圧の低下の検知を行うので、車輪速度による空気圧の低下の検知をより高精度に行うことができる。尚、直進走行判定手段は、前記の前輪ヨーレートや後輪ヨーレート以外に、各車輪の車輪速度から前後加速度、前輪横加速度、後輪横加速度、あるいは駆動トルクなどを演算して直進走行の判定を行うこともできる。さらに詳しく述べれば、直進走行判定手段は、各車輪の車輪速度から、車速条件、車輪速変動条件、スリップ率の変動条件、ヨーレート条件、ヨーレート変動条件、横加速度条件、横加速度変動条件、前後加速度条件、前後加速度変動条件、悪路条件、ブレーキ条件、ABS制御中条件、F/S条件、及び駆動輪トルク条件などの各種パラメータについて、それぞれの閾値と比較して直進走行の判定を行うことができる。
【0013】
また、請求項4の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、請求項3に記載のタイヤの空気圧低下検知装置であって、タイヤ径比算出手段は、タイヤ径比をK、前輪左右車輪速度差をΔVF、後輪左右車輪速度差をΔVR、及び車体速度をVVとしたとき、
K=(ΔVF−ΔVR)/VV
によって一輪のタイヤ径比を算出することを特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項4の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置によれば、各車輪の車輪速度が検出されれば、前輪左右車輪速度差ΔVFや後輪左右車輪速度差ΔVRや車体速度VVは、簡単に求められるので、タイヤ径比Kも前記の式によって簡単に算出することができる。よって、前記のようにして求められたタイヤ径比Kが所定の閾値以上のとき、そのタイヤ径比Kの正負の判定と、前輪左右車輪速度差ΔVFと後輪左右車輪速度差ΔVRとの大小とによって、容易にタイヤ空気圧の低下した車輪を特定することができる。
【0015】
また、請求項5の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、請求項4に記載のタイヤの空気圧低下検知装置であって、空気圧低下検知手段は、K≧0、かつ、|K|≧閾値であって、|ΔVF|≧|ΔVR|のときに前輪右車輪をタイヤ空気圧の低下した車輪として特定し、K≧0、かつ、|K|≧閾値であって、|ΔVF|<|ΔVR|のときに後輪左車輪をタイヤ空気圧の低下した車輪として特定し、K<0、かつ、|K|≧閾値であって、|ΔVF|≧|ΔVR|のときに前輪左車輪をタイヤ空気圧の低下した車輪として特定し、K<0、かつ、|K|≧閾値であって、|ΔVF|<|ΔVR|のときに後輪右車輪をタイヤ空気圧の低下した車輪として特定することを特徴とする。
【0016】
すなわち、請求項5の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置によれば、タイヤ径比Kが所定の閾値以上であれば、タイヤ径比Kが0以上か未満かかの判定と、前輪左右車輪速度差ΔVFと後輪左右車輪速度差ΔVRとの大小によって、前記のように一義的にタイヤ空気圧の低下した車輪を特定することができる。
【0017】
また、請求項6の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、請求項1〜請求項5の何れかに記載のタイヤの空気圧低下検知装置であって、各車輪の車輪速度はABSに備えられている車輪速センサによって検出されることを特徴とする。
【0018】
すなわち、請求項6の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置によれば、ABSに用いられている車輪速センサを利用して各車輪の車輪速度を検出しているので、新たに車輪速センサを設けなくてもタイヤの空気圧の低下を検知することができる。このようにしてABS用の既存の車輪速センサのみによってタイヤの空気圧の低下を検知することができるので、結果的に、タイヤの空気圧低下検知装置を装備した車両のコストダウンを図ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
まず、本実施の形態におけるタイヤの空気圧低下検知装置の概要について説明する。ABSは、車輪速センサの車輪速信号を検出してブレーキ圧制御を行うシステムであり、本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、このABSに用いられている車輪速センサのみを利用して四輪のうち何れのタイヤの空気圧が低下しているかを検知するシステムになっている。すなわち、本実施の形態におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、車輪速度の左右差の前後差から空気圧の低下を検知する手段と、前輪側の左右車輪速度差と後輪側の左右車輪速度差の大小関係を判定する手段とによってタイヤ空気圧の低下した車輪を特定することを特徴としている。したがって、以下の説明では、ABSに利用される車輪速センサのみを用いてタイヤの空気圧を検知するシステムをABS方式の空気圧低下検知システム(Tire Pressure Monitoring System)ということにする。尚、本実施の形態の空気圧低下検知装置1におけるABS方式の空気圧低下検知システムにおいては、原則として直線走行時においてタイヤの空気圧検知を行うことを条件としている。
【0020】
以下、図面を用いて、本実施の形態におけるタイヤの空気圧低下検知装置を詳細に説明する。
図1は、本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置を搭載する車両のシステム構成図である。
図1に示すように、車両Cは、FRONT(前)を上部にして、前輪右車輪FR、前輪左車輪FL、後輪右車輪RR、及び後輪左車輪RLの4つの車輪を有する四輪車両である。また、各車輪FR,FL,RR,RLには、それぞれ対応した車輪速センサS(SFR,SFL,SRR,SRL)が備えられている。これらの4個の車輪速センサSはABS用に設けられたセンサであるが、ABSは、周知の技術であるのでその説明は省略する。
【0021】
各車輪速センサS(SFR,SFL,SRR,SRL)は、例えば、ホール素子等を用いて車輪速パルスを生成する一般的なセンサであり、それぞれ対応する各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速パルスを、前輪右車輪速度VFR、前輪左車輪速度VFL、後輪右車輪速度VRR、及び後輪左車輪速度VRLとして検出して空気圧低下検知装置1へ送信している。各車輪速センサSが生成して空気圧低下検知装置1へ送信する車輪速パルスは、車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLが早くなるほど単位時間当たりのパルス数が多くなり、車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLが遅くなるほど単位時間当たりのパルス数が少なくなる。
図2は、車両の走行状態を示す図で、(a)は前輪右車輪の空気圧低下時の状態を示す概略図であり、(b)は車両旋回時の状態を示す概略図であり、(c)はタイヤの径にバラツキがある時の状態を示す概略図である。
空気圧低下検知装置1(図1参照)は、一般的に前記車輪速パルスに基づいて車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLや車体速度VVを測定する。しかしながら、図2(a)に示すように、車輪速パルスから得られる車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLは、タイヤの空気圧が低いほど輪径(タイヤの径)が小さくなるため、例えば、空気圧の低い車輪FRが他の車輪FL,RR,RLより回転が速くなる。前記のようにABSを搭載した車両Cは、通常、各車輪FR,FL,RR,RLに前記のような車輪速センサSを有しているので、本実施の形態に適用されるタイヤの空気圧低下検知装置1ではこれらの車輪速センサSを流用している。なお、空気圧低下検知システムTPMSは、空気圧低下検知装置1、車速センサSなどから構成されている。
【0022】
空気圧低下検知装置1(図1参照)は、図示しないマイコン(マイクロコンピュータ)及び周辺回路から構成され、マイコンが図示しないROMに書き込まれたプログラムを読み出すことにより、このプログラムの各モジュールを実行して、タイヤの空気圧の低下を検知する機能を有している。また、空気圧低下検知装置1は、タイヤの空気圧の低下を検知するために、各種信号・情報・指令等を入出力する入出力ポート、アナログ信号をデジタル信号に変換してマイコンでデジタル処理するための図示しないAD変換器などを有する。
【0023】
次に、空気圧低下検知装置1が、各車輪速センサSの検出したそれぞれの車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLに基づいてタイヤの空気圧の低下を検知する空気圧低下検知システムTPMSの全体ロジックについて、図1を参照しつつ図3に沿って説明する。
図3は、本実施の形態におけるタイヤの空気圧低下検知装置に適用されるABS方式による空気圧低下検知システムの全体構成図である。
図3において、空気圧低下検知システムTPMSの要部をなす空気圧低下検知装置1は、図示しない車輪速センサSによって検出された前輪右車輪速度VFR、前輪左車輪速度VFL、後輪右車輪速度VRR、後輪左車輪速度VRL、及び車体速度VVを入力し、かつ、タイヤの初期バラツキを補正するための初期学習を開始する学習スイッチ信号SWを入力するシステム構成となっている。尚、学習スイッチ信号SWは、ドライバの判断により図示しない学習スイッチがONされたときに、空気圧低下検知装置1に入力される信号の名称である。また、空気圧低下検知装置1は、直進走行判定パラメータ演算部2、重み算出部3、タイヤ径比算出部4、学習開始部5、学習値記憶部6、空気圧低下検知部7、及び走行可否判定部8を備えた構成となっている。
【0024】
直進走行判定パラメータ演算部2は、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLに基づいて車両の直進走行を判定する直進走行判定手段を構成している。すなわち、直進走行判定パラメータ演算部2は、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLに基づいて求めた車速条件、車輪速変動条件、スリップ率の変動条件、ヨーレート条件、ヨーレート変動条件、横加速度条件、横加速度変動条件、前後加速度条件、前後加速度変動条件、悪路条件、ブレーキ条件、ABS制御中条件、F/S条件、及び駆動輪トルク条件などの各種パラメータについて、それぞれの閾値と比較して直進走行の判定を行う機能を備えている。しかし、以下の実施の形態では、説明を容易にするために、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLから求められる前輪ヨーレート、後輪ヨーレート、横加速度、前後加速度、及び駆動輪トルクの各パラメータの安定条件を演算する場合について説明する。尚、ヨーレートは、車両の旋回挙動であるが、ここでは、前輪ヨーレートは前輪の左右車輪FR,FLの速度差に基づいて求めた値、後輪ヨーレートは後輪の左右車輪RR,RLの速度差に基づいて求めた値とする。
【0025】
重み算出部3は、直進走行判定パラメータ演算部2が判定した直進走行の程度に応じた重みを算出する重み算出手段を構成している。すなわち、重み算出部3は、直進走行判定パラメータ演算部2によって求められた値に基づいて直進性の重み付けをするために重みの値を算出する。具体的には、重みの値が“1”に近いほど直進走行の状態であって、“0”に近いほど旋回又は停止の状態にあるような傾向にある重みを算出する。
【0026】
タイヤ径比算出部4は、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLと車両の車体速度VVと重み算出部3が算出した重みとに基づいて、一輪のタイヤ径比を算出するタイヤ径比算出手段を構成している。すなわち、タイヤ径比算出部4は、タイヤの空気圧とタイヤの径と回転速度とが一定の関係を持つことから、前輪の左右車輪FR,FLの回転速度差と後輪の左右車輪RR,RLの回転速度差の偏差を車体速度VVで除算してタイヤ径比を算出する。このとき、重み算出部3が算出した重みの値に基づいて重み付けをしてタイヤ径比を算出する。すなわち、空気圧低下検知装置1は、車両が直進走行していることを示す指標を正規化した値を用いてタイヤ径比に重み付けを行った結果でタイヤの空気圧の低下の判定を行う。つまり、図2(b)に示すように、車両Cが旋回などしている場合には、タイヤの空気圧とは無関係に、外側の車輪FR,RRが内側の車輪FL,RLより回転が速くなって、左右の車輪FR,FL,RR,RLに回転速度差が発生するので、このようなときに算出されるタイヤ径比は、空気圧変化の判定に対する寄与率を低下させるために重み付けを行う。このため、結果的に、車両Cが直進走行している間の空気圧変化に起因する回転速度差に基づいて空気圧の低下の検知が行われるようになる。
【0027】
図2(c)に示すように、車両Cは、各タイヤの製造バラツキ、磨耗バラツキ、空気圧調整バラツキなどによるタイヤの径の初期バラツキにより、直進走行していても旋回中のときと同じように左右の車輪FR,FL,RR,RLに微妙な回転速度差が発生する。
図3に示す、学習開始部5は、ドライバの操作によって図示しない学習スイッチがONされたときに入力される学習スイッチ信号SWによって初期学習の開始を判断し、所定の初期学習を行って、各タイヤのタイヤ径の初期バラツキの補正を行う。また、学習値記憶部6は、車輪FR,FL,RR,RLごとの空気圧の低下の判定を行うために、学習開始部5の初期学習によって補正された補正データを記憶すると共に、この補正データに基づいて決定された閾値を記憶する。尚、この閾値は、車輪FR,FL,RR,RLの空気圧の低下の判定を行うために用いられるタイヤ径比の判定レベルである。また、学習値記憶部6は、必要に応じて初期学習が行われたときに閾値が更新された場合は、最新の閾値への書き換えを行う。
【0028】
空気圧低下検知部7は、タイヤ径比算出部4が算出したタイヤ径比の絶対値が所定の閾値以上のときは、そのタイヤ径比の正負の判定と、四輪車両における前輪側の左右車輪FR,FLの速度差と後輪側の左右車輪RR,RLの速度差との大小関係とに基づいて、空気圧の低下したタイヤを特定する請求項の空気圧低下検知手段を構成している。すなわち、空気圧低下検知部7は、タイヤ径比算出部4から取得したタイヤ径比の絶対値が学習値記憶部6に記憶されている初期バラツキを補正した閾値以上のとき、そのタイヤ径比が0以上であるか0未満であるかの判定と、前輪側における左右車輪FR,FLの速度差の絶対値と後輪側における左右車輪RR,RLの速度差の絶対値の大小関係とに基づいて、空気圧が低下している車輪を特定する機能を備えている。
【0029】
走行可否判定部8は、空気圧低下検知部7によって特定された車輪の空気圧の低下が、学習開始部5で初期バラツキを補正した値(閾値)と比較して安定走行に耐え得る状態であるか否かの判定を行う機能を備えている。なお、車速速度VFR,VFL,VRR,VRLは、図示しない安定判別演算部により、安定条件が成立しているときのデータが採用されるようになっている(図6のS2参照)。
【0030】
次に、図3におけるABS方式の空気圧低下検知システムの動作について説明する。
空気圧低下検知システムTPMSを構成する空気圧低下検知装置1が前輪右車輪速度VFR、前輪左車輪速度VFL、後輪右車輪速度VRR、及び後輪左車輪速度VRLを各々個別に検出すると、直進走行判定パラメータ演算部2は、これらのデータに基づいて、前輪ヨーレート、後輪ヨーレート、横加速度、前後加速度、スリップ率の左右車輪差などの各種パラメータを演算して直進走行の判定を行う。例えば、前輪ヨーレートYF(図5参照)は、前輪右車輪速度VFRと前輪左車輪速度VFLの差分である前輪左右車輪速度差ΔVFによって演算され、後輪ヨーレートYR(図5参照)は、後輪右車輪速度VRRと後輪左車輪速度VRLの差分である後輪左右車輪速度差ΔVRによって演算される。尚、このような直進走行の判定の演算は、走行中において例えば10msごとに行われる。
【0031】
また、直進走行判定パラメータ演算部2が直進走行の判定を行うための条件として演算するパラメータには、前記したように、前輪・後輪ヨーレートYF,YR(図5参照)以外に、車速条件、車輪速変動条件、前後加速度条件、悪路条件、ブレーキ条件、ABS制御中条件、及び駆動輪トルク条件などがあり、これらの条件を適宜に用いて所定の閾値と比較しながら直進走行の判定を行うが、前輪・後輪ヨーレートYF,YR(図5参照)及び加速度による直進走行の判定の演算について後記する。
【0032】
前記のようにして直進走行判定パラメータ演算部2が各種パラメータについて直進走行の判定の演算を行うと、重み算出部3は、直進走行判定パラメータ演算部2で演算された前輪ヨーレートYF及び後輪ヨーレートYRなどのパラメータを利用し、これらの前輪・後輪ヨーレートYF,YRに応じて、ヨーレートYF,YRが大きく発生すれば小さな値となり(最も小さい値としては0)、ヨーレートYF,YRが小さく発生すれば大きな値となる(所定のレベル以上のヨーレートYF,YRが発生しない場合は1となる)ような重みWTを演算する。つまり、前輪ヨーレートYF及び後輪ヨーレートYRの大きさに応じて0〜1の間を変化するような重みWTを演算する。横加速度やスリップ率の左右車輪差などについても、直進走行のときに検出された値について重みWTを“1”とし、旋回走行のときに検出された値については重みWTを“0”とするような重みを算出する(図3及び図5参照)。このようにして重み付けをすることによって直進走行時のタイヤ径比の寄与率を高くしている。
【0033】
一方、タイヤ径比算出部4は、前輪右車輪速度VFR、前輪左車輪速度VFL、後輪右車輪速度VRR、及び後輪左車輪速度VRLを入力し、前輪側の左右車輪FR,FLの回転速度差と後輪側の左右車輪RR,RLの回転速度差の偏差を車体速度VVで除算して、タイヤ径比Kを算出する。すなわち、タイヤ径比Kは、前輪左右車輪速度差ΔVF、後輪左右車輪速度差ΔVR、及び車体速度VVに基づいて、次の式(1)により求められる。
K=(ΔVF−ΔVR)/VV (1)
なお、具体的なタイヤ径Kの算出は、図5のように行われる。この点は、後記する。
【0034】
また、ドライバが、タイヤの初期バラツキを補正するために図示しない学習スイッチをONすると、学習スイッチ信号SWが空気圧低下検知装置1の学習開始部5へ入力されて初期学習が開始される。すると、学習開始部5は、各車輪FR,FL,RR,RLにおけるタイヤ径の初期バラツキの補正を行い、補正データ及びこの補正データによって補正された閾値を学習値記憶部6に記憶させる。これによって、空気圧低下検知部7は、タイヤ径比算出部4から取得したタイヤ径比Kと学習値記憶部6に記憶されている閾値とに基づいて空気圧が低下している車輪を特定する。すなわち、タイヤ径比Kの絶対値が所定の閾値以上の場合について、タイヤ径比Kが0以上であるか0未満かの何れかの条件と、前輪側における左右車輪FR,FLの速度差の絶対値と後輪側における左右車輪RR,RLの速度差の絶対値との大小関係に基づいて、空気圧が低下している車輪を特定する。そして、走行可否判定部8が、空気圧低下検知部7によって特定された車輪の空気圧の低下が、学習開始部5で初期バラツキを補正した閾値と比較して安定走行に耐え得る状態であるか否かを判定する。
【0035】
次に、直進走行の判定を行うためのパラメータである、ヨーレート、加速度、及び駆動トルクを算出するロジックについて説明する。
図4は、ヨーレート、加速度、及び駆動トルクの算出ロジックの流れを示すフロー図である。
図4のフローにしたがって説明すると、後輪側については、後輪右車輪速度VRRと後輪左車輪速度VRLとの差(|VRR−VRL|)に所定の係数を掛けて後輪ヨーレートYR’を求める。さらに、タイヤの製造バラツキなどを補正するために後輪初期補正値CRによって補正して後輪補正後ヨーレートYRを求め、これを真の後輪ヨーレートとして直進走行の判定を行う。すなわち、ここで求められた後輪補正後ヨーレートYRが図3の重み算出部3へ送出されて直進性の重み付けが行われる。また、後輪補正後ヨーレートYRを微分し、さらに、所定の変換係数を掛けてフィルタリングすることによって高周波成分を除去して後輪横加速度GRを求め、直進走行の判定のパラメータとして用いる。
【0036】
前輪側についても、前記と同様のロジックにより、前輪右車輪速度VFRと前輪左車輪速度VFLとの差(|VFR−VFL|)に基づいて前輪補正後ヨーレートYF及び前輪横加速度GFが求められる。
また、後輪右車輪速度(右従動輪速度)VRRと後輪左車輪速度(左従動輪速度)VRLの平均値(〔VRR+VRL〕/2)から車体速度VVを求め、この車体速度VVを微分した車体速度変化量ΔVVから前後加速度(従動輪加速度)Gを求めて直進走行の判定のパラメータとして用いる。
さらに、前輪右車輪速度(右駆動輪速度)VFRと前輪左車輪速度(左駆動輪速度)VFLの平均値(〔VFR+VFL〕/2)から駆動輪速度VMを求め、この駆動輪速度VMを微分した駆動輪速度変化量ΔVMから駆動輪加速度GMを求めて直進走行の判定のパラメータとして用いる。また、この駆動輪加速度GMに車両の荷重及びタイヤの半径を掛けることによって駆動トルクTを求めて直進走行の判定のパラメータとして用いる。
このように、本実施の形態では、直進走行の判定のパラメータを、4つの車輪速センサS(SFR,SFL,SRR,SRL)から得られる。
【0037】
次に、タイヤ径比の算出ロジックについて説明する。
図5はタイヤ径比の算出ロジックの流れを示すフロー図である。
フロー図に沿って説明すると、後輪右車輪速度VRRと後輪左車輪速度VRLとの差である後輪左右車輪速度差ΔVRに基づいて後輪ヨーレートYRを求め、前輪右車輪速度VFRと前輪左車輪速度VFLとの差である前輪左右車輪速度差ΔVFに基づいて前輪ヨーレートYFを求める。尚、これらのヨーレートYF,YRは、補正後のヨーレートであるものとする。そして、後輪ヨーレートYRと前輪ヨーレートYFとの差からヨーレート偏差ΔYを求める。さらに、このヨーレート偏差ΔYを車体速度VVで除して瞬時タイヤ径比K’を求める。このとき、ヨーレート偏差ΔYは、10msループのサンプリングで演算されるので、所定時間に亘って演算された瞬時タイヤ径比K’を積算して瞬時タイヤ径比積算値ΣK’を求める。そして、求められた瞬時タイヤ径比積算値ΣK’を積算回数でわって仮の平均タイヤ径比K’avを算出する。さらに、平均タイヤ径比K’avを今回値として、重みWTを考慮して移動平均処理を行って平均タイヤ径比Kを求める。すなわち、平均タイヤ径比Kは、後輪左右車輪速度差ΔVR、前輪左右車輪速度差ΔVF、及び車体速度VVに基づいて前記の式(1)によって求めることができる。尚、ここで求めた平均タイヤ径比Kが、図3においてタイヤ径比算出部4が算出した空気圧の低下判定用のタイヤ径比Kである。
ちなみに、移動平均回数を20(つまり、m=20回)とし、今回の重みWTが1とすると、今回値の平均タイヤ径比K’avは1/20にされ、前回値K(n−1)は(20−1)/20=19/20にされて足し合わされ、今回値のK(n)が算出される。なお、WTが0の場合は、今回値の平均タイヤ径比K’avが無視されることになる。
【0038】
次に、前記のようにして求めたタイヤ径比K(すなわち、平均タイヤ径比K(=K(n)))と、前輪左右車輪速度差ΔVF及び後輪左右車輪速度差ΔVRとによって空気圧の低下したタイヤを特定するロジックについて説明する。
図6は、本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置が空気圧の低下したタイヤを特定する処理の流れを示すフローチャートである。
図3に示すABS方式の空気圧低下検知システムTPMSのブロック図を参照しながら、図6のフローチャートに基づいて空気圧の低下したタイヤを特定する処理の流れを説明する。なお、VFR,K,ΔY等といったような変数名やデータ名は、適宜に該当図面を参照するものとする。
【0039】
まず、図6において、図3に示す前輪右車輪速度VFR、前輪左車輪速度VFL、後輪右車輪速度VRR、及び後輪左車輪速度VRLが空気圧低下検知装置1へ入力される。すると、空気圧低下検知装置1の直進走行判定パラメータ演算部2が、安定した直進走行の状態かの判別を行うために、入力された各車輪速度VFR、VFL、VRR、VRLに基づいて車両の直進走行の状態を示す係数を演算する。(ステップS1)。そして、その演算結果の係数に基づいて安定した直進走行の状態にあるか否かを判定する。つまり、直進走行の安定条件は、成立しているか否かを判定する。例えば、前輪の左右車輪FR,FLの速度差に基づいて求めた前輪ヨーレートYFと所定の直線性閾値との比較、後輪の左右車輪RR,RLの速度差に基づいて求めた後輪ヨーレートYRと所定の直線性閾値との比較などを行い、直進走行の安定条件は成立しているか否かを判定する(ステップS2)。ここで、直進走行の安定条件が成立していない場合は(ステップS2でNoの場合)、タイヤの空気圧の低下を検知することができないので、直進走行の安定時間をカウントするカウンタをクリアして終了する(ステップS3)。
【0040】
一方、ステップS2で、直進走行の安定条件が成立している場合は(ステップS2でYesの場合)、タイヤ径比算出部4が、重み算出部3によって算出された直進走行の状態に相当する重み(例えば“1”)を加味して一輪の瞬時タイヤ径比K’を演算する。すなわち、瞬時タイヤ径比K’は、前輪左右車輪速度差ΔVFと後輪左右車輪速度差ΔVRと車体速度VVとに基づいて、
K’=(ΔVF−ΔVR)/VV
の演算によって求められる(ステップS4)。次に、前輪左右車輪速度差ΔVFの加算演算(ΣΔVF)を実行する(ステップS5)。同様にして、後輪左右車輪速度差ΔVRの加算演算(ΣΔVR)を実行する(ステップS6)。
【0041】
次に、前記演算回数が規定回数に達したか否かを判定する(ステップS7)。
ここで、演算回数が規定回数に達していないときは(ステップS7でNoの場合)、カウンタを1カウントアップして(ステップS8)、ステップS4に戻り、次の10msのサンプリングデータにおける一輪の瞬時タイヤ径比K’の演算を行い、前記のステップS7までの処理を繰り返す。一方、演算回数が規定回数に達した場合は(ステップS7でYesの場合)、規定回数の演算で求められたそれぞれの瞬時タイヤ径比K’を積算して瞬時タイヤ径比積算値ΣK’を求め、この瞬時タイヤ径比積算値ΣK’を規定回数(積算回数)で割って一輪の仮の平均タイヤ径比K’avを算出する(ステップS9)。さらに、重みWTや平均タイヤ径比の前回値K(n−1)等を考慮して一輪の平均タイヤ径比K(n)を算出する。また、前輪左右車輪速度差ΔVFの平均値を算出する(ステップS10)。同様にして、後輪左右車輪速度差ΔVRの平均値を算出する(ステップS11)。
【0042】
そして、一輪の平均タイヤ径比K(=K(N))の絶対値が所定の閾値を超えているか否かを判定する(ステップS12)。ここで、一輪の平均タイヤ径比Kの絶対値が所定の閾値を超えていない場合は(ステップS12でNoの場合)、四輪のタイヤ空気圧は安定状態にあるのでそのまま終了する。一方、一輪の平均タイヤ径比Kの絶対値が所定の閾値を超えている場合は(ステップS12でYesの場合)、一輪の平均タイヤ径比Kが0以上か未満かを判定する(ステップS13)。ここで、一輪の平均タイヤ径比Kが0未満の場合(ステップS13でNoの場合)、さらに、前輪左右車輪速度差ΔVFの平均値の絶対値|ΔVF|が、後輪左右車輪速度差ΔVRの平均値の絶対値|ΔVR|以上か未満かを判定する(ステップS14)。
【0043】
ここで、ステップS14において、後輪左右車輪速度差ΔVRの平均値の絶対値|ΔVR|の方が前輪左右車輪速度差ΔVFの平均値の絶対値|ΔVF|以上の場合は(ステップS14でNoの場合)、後輪右車輪RRを空気圧低下車輪として選択する(ステップS15)。また、ステップS14において、前輪左右車輪速度差ΔVFの平均値の絶対値|ΔVF|の方が後輪左右車輪速度差ΔVRの平均値の絶対値|ΔVR|以上の場合は(ステップS14でYesの場合)、前輪左車輪FLを空気圧低下車輪として選択する(ステップS16)。
【0044】
また、前記ステップS13で、一輪の平均タイヤ径比Kが0以上の場合(ステップS13でYesの場合)、さらに、前輪左右車輪速度差ΔVFの平均値の絶対値|ΔVF|が、後輪左右車輪速度差ΔVRの平均値の絶対値|ΔVR|以上か未満かを判定する(ステップS17)。ここで、後輪左右車輪速度差ΔVRの平均値の絶対値|ΔVR|の方が前輪左右車輪速度差ΔVFの平均値の絶対値|ΔVF|以上の場合は(ステップS17でNoの場合)、後輪左車輪RLを空気圧低下車輪として選択する(ステップS18)。また、ステップS17において、前輪左右車輪速度差ΔVFの平均値の絶対値|ΔVF|の方が後輪左右車輪速度差ΔVRの平均値の絶対値|ΔVR|以上の場合は(ステップS17でYesの場合)、前輪右車輪FRを空気圧低下車輪として選択する(ステップS19)。そして、選択された車輪に対応した警告灯を点灯する(ステップS20)。
【0045】
図7は、図6のフローチャートに基づいて空気圧の低下のタイヤが特定された状態を示す空気圧低下タイヤの特定テーブルの図である。
図7に示すように、|平均タイヤ径比K|≧閾値である場合には、四輪のうち何れかのタイヤに空気圧の低下が発生している。そこで、|平均タイヤ径比K|≧閾値であり、かつ、平均タイヤ径比K≧0である場合に、|前輪左右車輪速度差ΔVF|≧|後輪左右車輪速度差ΔVR|であるときは、前輪右車輪FRが空気圧の低下した車輪であると特定され、|前輪左右車輪速度差ΔVF|<|後輪左右車輪速度差ΔVR|であるときは、後輪左車輪RLが空気圧の低下した車輪であると特定される。また、|平均タイヤ径比K|≧閾値であり、かつ、平均タイヤ径比K<0である場合に、|前輪左右車輪速度差ΔVF|≧|後輪左右車輪速度差ΔVR|であるときは、前輪左車輪FLが空気圧の低下した車輪であると特定され、|前輪左右車輪速度差ΔVF|<|後輪左右車輪速度差ΔVR|であるときは、後輪右車輪RRが空気圧の低下した車輪であると特定される。このようにして、四輪車両の走行中に検出された各車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLのみによって空気圧の低下したタイヤ(車輪)を特定することができる。
【0046】
以上述べた実施の形態は本発明を説明するための一例であり、本発明は、前記の実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲で種々の変形が可能である。前記の実施の形態では、ABS用の車輪速センサSのみを用いて空気圧の低下したタイヤを特定する手法について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、車輪速センサSは、ABS用以外の車輪速センサを用いてもよいし、ヨーレートセンサや加速度センサなど他のセンサと併用してもよいことは云うまでもない。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置によれば、四輪の車輪速度のみを検出すれば、車輪速度の左右差の前後差から何れかの車輪に空気圧の低下が発生しているか否かを検知し、さらに、前輪側の左右車輪速度差と後輪側の左右車輪速度差との大小関係から空気圧の低下した車輪を特定することができる。これによって車両から降りることなく空気圧の低下した車輪を知ることができるので、安定走行に大いに寄与することができる。また、空気圧の低下した車輪が自動的に特定されることにより、四輪全てのタイヤの空気圧を測定する手間を省くことができるので、ユーザにとって使い勝手のよい車両を提供することができる。さらに、加速度センサやヨーレートセンサなど複数のセンサを用いることなく、ABS用の既存の車輪速センサのみによってタイヤの空気圧の低下を検知することができるので、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置を搭載する車両のシステム構成図である。
【図2】車両の走行状態を示す図で、(a)は前輪右車輪の空気圧低下時の状態を示す概略図であり、(b)は車両旋回時の状態を示す概略図であり、(c)はタイヤの径にバラツキがある時の状態を示す概略図である。
【図3】本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置に適用されるABS方式による空気圧低下検知システムの全体構成図である。
【図4】ヨーレート、加速度、及び駆動トルクの算出ロジックの流れを示すフロー図である(直進走行のパラメータの算出ロジック)。
【図5】タイヤ径比の算出ロジックの流れを示すフロー図である。
【図6】本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置が空気圧の低下したタイヤを特定する処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図6のフローチャートに基づいて空気圧の低下のタイヤが特定された状態を示す空気圧低下タイヤの特定テーブルの図である。
【符号の説明】
1 空気圧低下検知装置
2 直進走行判定パラメータ演算部(直進走行判定手段)
3 重み算出部(重み算出手段)
4 タイヤ径比算出部(タイヤ径比算出手段)
5 学習開始部
6 学習値記憶部
7 空気圧低下検知部(空気圧低下検知手段)
8 走行可否判定部
VFR 前輪右車輪速度
VFL 前輪左車輪速度
VRR 後輪右車輪速度
VRL 後輪左車輪速度
VV 車体速度
ΔVF 前輪左右車輪速度差
ΔVR 後輪左右車輪速度差
YF 前輪ヨーレート
YR 後輪ヨーレート
K タイヤ径比
WT 重み
【発明の属する技術分野】
本発明は、四輪車両におけるタイヤの空気圧状態を検知するタイヤの空気圧低下検知装置に関し、特に、走行しながらタイヤの空気圧の低下を検知することのできるタイヤの空気圧低下検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ブレーキロック防止システム(以下、単に「ABS」(Anti−lock Brake System)という)の車輪速センサが検出する各車輪の回転速度の和又は差によって空気圧の低下を検知することができるタイヤの空気圧低下検知装置が知られている。この技術は、車輪の空気圧が低下したとき、タイヤの径が小さくなるので他の車輪より早く回転するという現象を利用してタイヤの空気圧の低下を検知するものである。このようなタイヤの空気圧低下検知装置によれば、各車輪に備えられた車輪速センサから得られる回転速度の和又は差分を算出することによって、走行しながらタイヤの空気圧の低下を検知することが可能である。
【0003】
具体的には、四輪車両における4つのタイヤのうちの対角線上にある1対のタイヤの回転角速度の和と、他の1対のタイヤの回転角速度の和との比からタイヤの空気圧の低下を検知するもの(例えば、下記の特許文献1参照)や、前輪側の左右車輪の回転速度差と後輪側の左右車輪の回転速度差の差分からタイヤの空気圧の低下を検知するものなどが知られている。また、下記の特許文献2には、四輪の車輪速センサを用いてタイヤの空気圧の低下を検知するとき、車両を急旋回して横加速度を検出したときは空気圧の低下の検知を禁止し、横加速度の殆どない直進走行の時にのみ空気圧の低下の検知を行う技術が開示されている。これによって、直進走行の時にのみ高い精度でタイヤの空気圧の低下を検知することができる。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−92114号公報(請求項1、段落番号0019〜0040、及び図1〜図8参照)
【特許文献2】
特開平10−100622号公報(段落番号0009〜0035、図1〜図6参照)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のタイヤの空気圧低下検知装置による空気圧の低下の検知手法では、各車輪の回転速度を相対的に比較しているため、四輪のうちの何れかに空気圧の低下した車輪が存在することを検知したり、また、対角する二輪のうちの何れかに空気圧の低下した車輪が存在することを検知したりすることはできるものの、四輪のうち何れのタイヤの空気圧が低下しているかを特定することはできない。したがって、従来の空気圧低下検知装置によってタイヤの空気圧の低下を検知したときには、四輪の空気圧を実際にそれぞれ測定して、空気圧が低下した車輪を特定しなければならない。つまり、従来技術において、ABS方式の車輪速センサのみを用いた空気圧低下検知装置では、走行中に空気圧の低下した車輪を特定することはできない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車輪速センサのみを用いて走行状態でも空気圧の低下した車輪を特定することができるタイヤの空気圧低下検知装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、請求項1の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、四輪車両における各車輪の車輪速度に基づいてタイヤの空気圧の低下を検知するタイヤの空気圧低下検知装置であって、前輪の左右車輪の速度差と後輪の左右車輪の速度差との偏差、及び前輪の左右車輪の速度差と後輪の左右車輪の速度差との大小によってタイヤ空気圧が低下した車輪を特定することを特徴とする。
【0008】
すなわち、請求項1の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置によれば、例えば、四輪の各車輪に備えられた車輪速センサによってそれぞれの車輪の車輪速度を検出すれば、前輪側の左右車輪の速度差と後輪側の左右車輪の速度差の差分と、前輪側の左右車輪の速度差と後輪側の左右車輪の速度差との大小とによってタイヤ空気圧の低下した車輪を特定することができる。これによって、ヨーレートセンサや加速度センサなど各種のセンサを用いなくても、走行状態においてタイヤ空気圧の低下した車輪を特定することができるので、結果的に、タイヤの空気圧低下検知装置を備えた車両のコストダウンを図ることが可能となる。
【0009】
また、請求項2の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、四輪車両における各車輪の車輪速度に基づいてタイヤの空気圧の低下を検知するタイヤの空気圧低下検知装置であって、前記各車輪の車輪速度に基づいて車両の直進走行を判定する直進走行判定手段と、前記直進走行判定手段が判定した直進走行の程度に応じた重みを算出する重み算出手段と、前記各車輪の車輪速度と前記車両の車体速度と前記重み算出手段が算出した重みとに基づいて一輪のタイヤ径比を算出するタイヤ径比算出手段と、前記タイヤ径比算出手段で算出したタイヤ径比の絶対値が所定の閾値以上のとき、前記タイヤ径比の正負の判定、及び前記四輪車両における前輪の左右車輪の速度差と後輪の左右車輪の速度差との大小に基づいて、空気圧が低下したタイヤを特定する空気圧低下検知手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
すなわち、請求項2の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、各車輪の車輪速度のみによってタイヤの空気圧の低下を検知しているので、車両の旋回時に発生する左右車輪の速度差とタイヤの空気圧の低下によって発生する左右車輪の速度差とを弁別する必要がある。そこで、本発明では、直進走行判定手段が、加速度センサやヨーレートセンサなど各種のセンサを用いることなく、車輪速センサによって検出された各車輪の車輪速度のみに基づいて車両の直進走行の程度を判定している。さらに、重み算出手段が直進走行判定手段の判定した直進走行の程度に応じて重み付けをしている。すなわち、重み算出手段が直進走行の状態における空気圧の低下の検知寄与率を高くするような重み付けをしている。この結果、直進走行の状態の時にのみ正確に空気圧の低下を検知することができる。これによって、空気圧低下検知手段は、直進走行の状態のときに検出された各車輪の車輪速度によって算出されたタイヤ径比の絶対値が所定の閾値以上のとき、そのタイヤ径比が0以上であるか0未満であるかの判定と、前輪の左右車輪の速度差と後輪の左右車輪の速度差との大小とによって空気圧の低下したタイヤを検知している。このようにして、本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、車輪速センサが検出した車輪速度のみによって極めて高い精度で空気圧の低下したタイヤを特定することができる。
【0011】
また、請求項3の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、請求項2に記載のタイヤの空気圧低下検知装置であって、直進走行判定手段は、少なくとも、前輪の左右車輪の速度差に基づいて演算した前輪ヨーレートと後輪の左右車輪の速度差に基づいて演算した後輪ヨーレートとを用いて、車両の直進走行の程度を判定し、重み算出手段は、前輪ヨーレート及び後輪ヨーレートによって判定された直進走行の程度に応じて、直進状態での検知寄与率を高くするような傾向の重みを算出することを特徴とする。
【0012】
すなわち、請求項3の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置によれば、ヨーレートセンサを用いなくても、直進走行判定手段が、前輪の左右車輪の速度差や後輪の左右車輪の速度差に基づいて前輪ヨーレートや後輪ヨーレートを演算して直進走行の判定を行い、重み算出手段が、演算された前輪ヨーレートや後輪ヨーレートの大きさによって重みを算出している。例えば、演算された前輪ヨーレートや後輪ヨーレートが所定の閾値以下のときに重みを1として直進走行の判定の寄与率を高くしている。これによって、結果的には、車輪速度のみによって直進状態のときのみを選択して空気圧の低下の検知を行うので、車輪速度による空気圧の低下の検知をより高精度に行うことができる。尚、直進走行判定手段は、前記の前輪ヨーレートや後輪ヨーレート以外に、各車輪の車輪速度から前後加速度、前輪横加速度、後輪横加速度、あるいは駆動トルクなどを演算して直進走行の判定を行うこともできる。さらに詳しく述べれば、直進走行判定手段は、各車輪の車輪速度から、車速条件、車輪速変動条件、スリップ率の変動条件、ヨーレート条件、ヨーレート変動条件、横加速度条件、横加速度変動条件、前後加速度条件、前後加速度変動条件、悪路条件、ブレーキ条件、ABS制御中条件、F/S条件、及び駆動輪トルク条件などの各種パラメータについて、それぞれの閾値と比較して直進走行の判定を行うことができる。
【0013】
また、請求項4の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、請求項3に記載のタイヤの空気圧低下検知装置であって、タイヤ径比算出手段は、タイヤ径比をK、前輪左右車輪速度差をΔVF、後輪左右車輪速度差をΔVR、及び車体速度をVVとしたとき、
K=(ΔVF−ΔVR)/VV
によって一輪のタイヤ径比を算出することを特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項4の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置によれば、各車輪の車輪速度が検出されれば、前輪左右車輪速度差ΔVFや後輪左右車輪速度差ΔVRや車体速度VVは、簡単に求められるので、タイヤ径比Kも前記の式によって簡単に算出することができる。よって、前記のようにして求められたタイヤ径比Kが所定の閾値以上のとき、そのタイヤ径比Kの正負の判定と、前輪左右車輪速度差ΔVFと後輪左右車輪速度差ΔVRとの大小とによって、容易にタイヤ空気圧の低下した車輪を特定することができる。
【0015】
また、請求項5の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、請求項4に記載のタイヤの空気圧低下検知装置であって、空気圧低下検知手段は、K≧0、かつ、|K|≧閾値であって、|ΔVF|≧|ΔVR|のときに前輪右車輪をタイヤ空気圧の低下した車輪として特定し、K≧0、かつ、|K|≧閾値であって、|ΔVF|<|ΔVR|のときに後輪左車輪をタイヤ空気圧の低下した車輪として特定し、K<0、かつ、|K|≧閾値であって、|ΔVF|≧|ΔVR|のときに前輪左車輪をタイヤ空気圧の低下した車輪として特定し、K<0、かつ、|K|≧閾値であって、|ΔVF|<|ΔVR|のときに後輪右車輪をタイヤ空気圧の低下した車輪として特定することを特徴とする。
【0016】
すなわち、請求項5の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置によれば、タイヤ径比Kが所定の閾値以上であれば、タイヤ径比Kが0以上か未満かかの判定と、前輪左右車輪速度差ΔVFと後輪左右車輪速度差ΔVRとの大小によって、前記のように一義的にタイヤ空気圧の低下した車輪を特定することができる。
【0017】
また、請求項6の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、請求項1〜請求項5の何れかに記載のタイヤの空気圧低下検知装置であって、各車輪の車輪速度はABSに備えられている車輪速センサによって検出されることを特徴とする。
【0018】
すなわち、請求項6の本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置によれば、ABSに用いられている車輪速センサを利用して各車輪の車輪速度を検出しているので、新たに車輪速センサを設けなくてもタイヤの空気圧の低下を検知することができる。このようにしてABS用の既存の車輪速センサのみによってタイヤの空気圧の低下を検知することができるので、結果的に、タイヤの空気圧低下検知装置を装備した車両のコストダウンを図ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
まず、本実施の形態におけるタイヤの空気圧低下検知装置の概要について説明する。ABSは、車輪速センサの車輪速信号を検出してブレーキ圧制御を行うシステムであり、本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、このABSに用いられている車輪速センサのみを利用して四輪のうち何れのタイヤの空気圧が低下しているかを検知するシステムになっている。すなわち、本実施の形態におけるタイヤの空気圧低下検知装置は、車輪速度の左右差の前後差から空気圧の低下を検知する手段と、前輪側の左右車輪速度差と後輪側の左右車輪速度差の大小関係を判定する手段とによってタイヤ空気圧の低下した車輪を特定することを特徴としている。したがって、以下の説明では、ABSに利用される車輪速センサのみを用いてタイヤの空気圧を検知するシステムをABS方式の空気圧低下検知システム(Tire Pressure Monitoring System)ということにする。尚、本実施の形態の空気圧低下検知装置1におけるABS方式の空気圧低下検知システムにおいては、原則として直線走行時においてタイヤの空気圧検知を行うことを条件としている。
【0020】
以下、図面を用いて、本実施の形態におけるタイヤの空気圧低下検知装置を詳細に説明する。
図1は、本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置を搭載する車両のシステム構成図である。
図1に示すように、車両Cは、FRONT(前)を上部にして、前輪右車輪FR、前輪左車輪FL、後輪右車輪RR、及び後輪左車輪RLの4つの車輪を有する四輪車両である。また、各車輪FR,FL,RR,RLには、それぞれ対応した車輪速センサS(SFR,SFL,SRR,SRL)が備えられている。これらの4個の車輪速センサSはABS用に設けられたセンサであるが、ABSは、周知の技術であるのでその説明は省略する。
【0021】
各車輪速センサS(SFR,SFL,SRR,SRL)は、例えば、ホール素子等を用いて車輪速パルスを生成する一般的なセンサであり、それぞれ対応する各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速パルスを、前輪右車輪速度VFR、前輪左車輪速度VFL、後輪右車輪速度VRR、及び後輪左車輪速度VRLとして検出して空気圧低下検知装置1へ送信している。各車輪速センサSが生成して空気圧低下検知装置1へ送信する車輪速パルスは、車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLが早くなるほど単位時間当たりのパルス数が多くなり、車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLが遅くなるほど単位時間当たりのパルス数が少なくなる。
図2は、車両の走行状態を示す図で、(a)は前輪右車輪の空気圧低下時の状態を示す概略図であり、(b)は車両旋回時の状態を示す概略図であり、(c)はタイヤの径にバラツキがある時の状態を示す概略図である。
空気圧低下検知装置1(図1参照)は、一般的に前記車輪速パルスに基づいて車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLや車体速度VVを測定する。しかしながら、図2(a)に示すように、車輪速パルスから得られる車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLは、タイヤの空気圧が低いほど輪径(タイヤの径)が小さくなるため、例えば、空気圧の低い車輪FRが他の車輪FL,RR,RLより回転が速くなる。前記のようにABSを搭載した車両Cは、通常、各車輪FR,FL,RR,RLに前記のような車輪速センサSを有しているので、本実施の形態に適用されるタイヤの空気圧低下検知装置1ではこれらの車輪速センサSを流用している。なお、空気圧低下検知システムTPMSは、空気圧低下検知装置1、車速センサSなどから構成されている。
【0022】
空気圧低下検知装置1(図1参照)は、図示しないマイコン(マイクロコンピュータ)及び周辺回路から構成され、マイコンが図示しないROMに書き込まれたプログラムを読み出すことにより、このプログラムの各モジュールを実行して、タイヤの空気圧の低下を検知する機能を有している。また、空気圧低下検知装置1は、タイヤの空気圧の低下を検知するために、各種信号・情報・指令等を入出力する入出力ポート、アナログ信号をデジタル信号に変換してマイコンでデジタル処理するための図示しないAD変換器などを有する。
【0023】
次に、空気圧低下検知装置1が、各車輪速センサSの検出したそれぞれの車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLに基づいてタイヤの空気圧の低下を検知する空気圧低下検知システムTPMSの全体ロジックについて、図1を参照しつつ図3に沿って説明する。
図3は、本実施の形態におけるタイヤの空気圧低下検知装置に適用されるABS方式による空気圧低下検知システムの全体構成図である。
図3において、空気圧低下検知システムTPMSの要部をなす空気圧低下検知装置1は、図示しない車輪速センサSによって検出された前輪右車輪速度VFR、前輪左車輪速度VFL、後輪右車輪速度VRR、後輪左車輪速度VRL、及び車体速度VVを入力し、かつ、タイヤの初期バラツキを補正するための初期学習を開始する学習スイッチ信号SWを入力するシステム構成となっている。尚、学習スイッチ信号SWは、ドライバの判断により図示しない学習スイッチがONされたときに、空気圧低下検知装置1に入力される信号の名称である。また、空気圧低下検知装置1は、直進走行判定パラメータ演算部2、重み算出部3、タイヤ径比算出部4、学習開始部5、学習値記憶部6、空気圧低下検知部7、及び走行可否判定部8を備えた構成となっている。
【0024】
直進走行判定パラメータ演算部2は、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLに基づいて車両の直進走行を判定する直進走行判定手段を構成している。すなわち、直進走行判定パラメータ演算部2は、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLに基づいて求めた車速条件、車輪速変動条件、スリップ率の変動条件、ヨーレート条件、ヨーレート変動条件、横加速度条件、横加速度変動条件、前後加速度条件、前後加速度変動条件、悪路条件、ブレーキ条件、ABS制御中条件、F/S条件、及び駆動輪トルク条件などの各種パラメータについて、それぞれの閾値と比較して直進走行の判定を行う機能を備えている。しかし、以下の実施の形態では、説明を容易にするために、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLから求められる前輪ヨーレート、後輪ヨーレート、横加速度、前後加速度、及び駆動輪トルクの各パラメータの安定条件を演算する場合について説明する。尚、ヨーレートは、車両の旋回挙動であるが、ここでは、前輪ヨーレートは前輪の左右車輪FR,FLの速度差に基づいて求めた値、後輪ヨーレートは後輪の左右車輪RR,RLの速度差に基づいて求めた値とする。
【0025】
重み算出部3は、直進走行判定パラメータ演算部2が判定した直進走行の程度に応じた重みを算出する重み算出手段を構成している。すなわち、重み算出部3は、直進走行判定パラメータ演算部2によって求められた値に基づいて直進性の重み付けをするために重みの値を算出する。具体的には、重みの値が“1”に近いほど直進走行の状態であって、“0”に近いほど旋回又は停止の状態にあるような傾向にある重みを算出する。
【0026】
タイヤ径比算出部4は、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLと車両の車体速度VVと重み算出部3が算出した重みとに基づいて、一輪のタイヤ径比を算出するタイヤ径比算出手段を構成している。すなわち、タイヤ径比算出部4は、タイヤの空気圧とタイヤの径と回転速度とが一定の関係を持つことから、前輪の左右車輪FR,FLの回転速度差と後輪の左右車輪RR,RLの回転速度差の偏差を車体速度VVで除算してタイヤ径比を算出する。このとき、重み算出部3が算出した重みの値に基づいて重み付けをしてタイヤ径比を算出する。すなわち、空気圧低下検知装置1は、車両が直進走行していることを示す指標を正規化した値を用いてタイヤ径比に重み付けを行った結果でタイヤの空気圧の低下の判定を行う。つまり、図2(b)に示すように、車両Cが旋回などしている場合には、タイヤの空気圧とは無関係に、外側の車輪FR,RRが内側の車輪FL,RLより回転が速くなって、左右の車輪FR,FL,RR,RLに回転速度差が発生するので、このようなときに算出されるタイヤ径比は、空気圧変化の判定に対する寄与率を低下させるために重み付けを行う。このため、結果的に、車両Cが直進走行している間の空気圧変化に起因する回転速度差に基づいて空気圧の低下の検知が行われるようになる。
【0027】
図2(c)に示すように、車両Cは、各タイヤの製造バラツキ、磨耗バラツキ、空気圧調整バラツキなどによるタイヤの径の初期バラツキにより、直進走行していても旋回中のときと同じように左右の車輪FR,FL,RR,RLに微妙な回転速度差が発生する。
図3に示す、学習開始部5は、ドライバの操作によって図示しない学習スイッチがONされたときに入力される学習スイッチ信号SWによって初期学習の開始を判断し、所定の初期学習を行って、各タイヤのタイヤ径の初期バラツキの補正を行う。また、学習値記憶部6は、車輪FR,FL,RR,RLごとの空気圧の低下の判定を行うために、学習開始部5の初期学習によって補正された補正データを記憶すると共に、この補正データに基づいて決定された閾値を記憶する。尚、この閾値は、車輪FR,FL,RR,RLの空気圧の低下の判定を行うために用いられるタイヤ径比の判定レベルである。また、学習値記憶部6は、必要に応じて初期学習が行われたときに閾値が更新された場合は、最新の閾値への書き換えを行う。
【0028】
空気圧低下検知部7は、タイヤ径比算出部4が算出したタイヤ径比の絶対値が所定の閾値以上のときは、そのタイヤ径比の正負の判定と、四輪車両における前輪側の左右車輪FR,FLの速度差と後輪側の左右車輪RR,RLの速度差との大小関係とに基づいて、空気圧の低下したタイヤを特定する請求項の空気圧低下検知手段を構成している。すなわち、空気圧低下検知部7は、タイヤ径比算出部4から取得したタイヤ径比の絶対値が学習値記憶部6に記憶されている初期バラツキを補正した閾値以上のとき、そのタイヤ径比が0以上であるか0未満であるかの判定と、前輪側における左右車輪FR,FLの速度差の絶対値と後輪側における左右車輪RR,RLの速度差の絶対値の大小関係とに基づいて、空気圧が低下している車輪を特定する機能を備えている。
【0029】
走行可否判定部8は、空気圧低下検知部7によって特定された車輪の空気圧の低下が、学習開始部5で初期バラツキを補正した値(閾値)と比較して安定走行に耐え得る状態であるか否かの判定を行う機能を備えている。なお、車速速度VFR,VFL,VRR,VRLは、図示しない安定判別演算部により、安定条件が成立しているときのデータが採用されるようになっている(図6のS2参照)。
【0030】
次に、図3におけるABS方式の空気圧低下検知システムの動作について説明する。
空気圧低下検知システムTPMSを構成する空気圧低下検知装置1が前輪右車輪速度VFR、前輪左車輪速度VFL、後輪右車輪速度VRR、及び後輪左車輪速度VRLを各々個別に検出すると、直進走行判定パラメータ演算部2は、これらのデータに基づいて、前輪ヨーレート、後輪ヨーレート、横加速度、前後加速度、スリップ率の左右車輪差などの各種パラメータを演算して直進走行の判定を行う。例えば、前輪ヨーレートYF(図5参照)は、前輪右車輪速度VFRと前輪左車輪速度VFLの差分である前輪左右車輪速度差ΔVFによって演算され、後輪ヨーレートYR(図5参照)は、後輪右車輪速度VRRと後輪左車輪速度VRLの差分である後輪左右車輪速度差ΔVRによって演算される。尚、このような直進走行の判定の演算は、走行中において例えば10msごとに行われる。
【0031】
また、直進走行判定パラメータ演算部2が直進走行の判定を行うための条件として演算するパラメータには、前記したように、前輪・後輪ヨーレートYF,YR(図5参照)以外に、車速条件、車輪速変動条件、前後加速度条件、悪路条件、ブレーキ条件、ABS制御中条件、及び駆動輪トルク条件などがあり、これらの条件を適宜に用いて所定の閾値と比較しながら直進走行の判定を行うが、前輪・後輪ヨーレートYF,YR(図5参照)及び加速度による直進走行の判定の演算について後記する。
【0032】
前記のようにして直進走行判定パラメータ演算部2が各種パラメータについて直進走行の判定の演算を行うと、重み算出部3は、直進走行判定パラメータ演算部2で演算された前輪ヨーレートYF及び後輪ヨーレートYRなどのパラメータを利用し、これらの前輪・後輪ヨーレートYF,YRに応じて、ヨーレートYF,YRが大きく発生すれば小さな値となり(最も小さい値としては0)、ヨーレートYF,YRが小さく発生すれば大きな値となる(所定のレベル以上のヨーレートYF,YRが発生しない場合は1となる)ような重みWTを演算する。つまり、前輪ヨーレートYF及び後輪ヨーレートYRの大きさに応じて0〜1の間を変化するような重みWTを演算する。横加速度やスリップ率の左右車輪差などについても、直進走行のときに検出された値について重みWTを“1”とし、旋回走行のときに検出された値については重みWTを“0”とするような重みを算出する(図3及び図5参照)。このようにして重み付けをすることによって直進走行時のタイヤ径比の寄与率を高くしている。
【0033】
一方、タイヤ径比算出部4は、前輪右車輪速度VFR、前輪左車輪速度VFL、後輪右車輪速度VRR、及び後輪左車輪速度VRLを入力し、前輪側の左右車輪FR,FLの回転速度差と後輪側の左右車輪RR,RLの回転速度差の偏差を車体速度VVで除算して、タイヤ径比Kを算出する。すなわち、タイヤ径比Kは、前輪左右車輪速度差ΔVF、後輪左右車輪速度差ΔVR、及び車体速度VVに基づいて、次の式(1)により求められる。
K=(ΔVF−ΔVR)/VV (1)
なお、具体的なタイヤ径Kの算出は、図5のように行われる。この点は、後記する。
【0034】
また、ドライバが、タイヤの初期バラツキを補正するために図示しない学習スイッチをONすると、学習スイッチ信号SWが空気圧低下検知装置1の学習開始部5へ入力されて初期学習が開始される。すると、学習開始部5は、各車輪FR,FL,RR,RLにおけるタイヤ径の初期バラツキの補正を行い、補正データ及びこの補正データによって補正された閾値を学習値記憶部6に記憶させる。これによって、空気圧低下検知部7は、タイヤ径比算出部4から取得したタイヤ径比Kと学習値記憶部6に記憶されている閾値とに基づいて空気圧が低下している車輪を特定する。すなわち、タイヤ径比Kの絶対値が所定の閾値以上の場合について、タイヤ径比Kが0以上であるか0未満かの何れかの条件と、前輪側における左右車輪FR,FLの速度差の絶対値と後輪側における左右車輪RR,RLの速度差の絶対値との大小関係に基づいて、空気圧が低下している車輪を特定する。そして、走行可否判定部8が、空気圧低下検知部7によって特定された車輪の空気圧の低下が、学習開始部5で初期バラツキを補正した閾値と比較して安定走行に耐え得る状態であるか否かを判定する。
【0035】
次に、直進走行の判定を行うためのパラメータである、ヨーレート、加速度、及び駆動トルクを算出するロジックについて説明する。
図4は、ヨーレート、加速度、及び駆動トルクの算出ロジックの流れを示すフロー図である。
図4のフローにしたがって説明すると、後輪側については、後輪右車輪速度VRRと後輪左車輪速度VRLとの差(|VRR−VRL|)に所定の係数を掛けて後輪ヨーレートYR’を求める。さらに、タイヤの製造バラツキなどを補正するために後輪初期補正値CRによって補正して後輪補正後ヨーレートYRを求め、これを真の後輪ヨーレートとして直進走行の判定を行う。すなわち、ここで求められた後輪補正後ヨーレートYRが図3の重み算出部3へ送出されて直進性の重み付けが行われる。また、後輪補正後ヨーレートYRを微分し、さらに、所定の変換係数を掛けてフィルタリングすることによって高周波成分を除去して後輪横加速度GRを求め、直進走行の判定のパラメータとして用いる。
【0036】
前輪側についても、前記と同様のロジックにより、前輪右車輪速度VFRと前輪左車輪速度VFLとの差(|VFR−VFL|)に基づいて前輪補正後ヨーレートYF及び前輪横加速度GFが求められる。
また、後輪右車輪速度(右従動輪速度)VRRと後輪左車輪速度(左従動輪速度)VRLの平均値(〔VRR+VRL〕/2)から車体速度VVを求め、この車体速度VVを微分した車体速度変化量ΔVVから前後加速度(従動輪加速度)Gを求めて直進走行の判定のパラメータとして用いる。
さらに、前輪右車輪速度(右駆動輪速度)VFRと前輪左車輪速度(左駆動輪速度)VFLの平均値(〔VFR+VFL〕/2)から駆動輪速度VMを求め、この駆動輪速度VMを微分した駆動輪速度変化量ΔVMから駆動輪加速度GMを求めて直進走行の判定のパラメータとして用いる。また、この駆動輪加速度GMに車両の荷重及びタイヤの半径を掛けることによって駆動トルクTを求めて直進走行の判定のパラメータとして用いる。
このように、本実施の形態では、直進走行の判定のパラメータを、4つの車輪速センサS(SFR,SFL,SRR,SRL)から得られる。
【0037】
次に、タイヤ径比の算出ロジックについて説明する。
図5はタイヤ径比の算出ロジックの流れを示すフロー図である。
フロー図に沿って説明すると、後輪右車輪速度VRRと後輪左車輪速度VRLとの差である後輪左右車輪速度差ΔVRに基づいて後輪ヨーレートYRを求め、前輪右車輪速度VFRと前輪左車輪速度VFLとの差である前輪左右車輪速度差ΔVFに基づいて前輪ヨーレートYFを求める。尚、これらのヨーレートYF,YRは、補正後のヨーレートであるものとする。そして、後輪ヨーレートYRと前輪ヨーレートYFとの差からヨーレート偏差ΔYを求める。さらに、このヨーレート偏差ΔYを車体速度VVで除して瞬時タイヤ径比K’を求める。このとき、ヨーレート偏差ΔYは、10msループのサンプリングで演算されるので、所定時間に亘って演算された瞬時タイヤ径比K’を積算して瞬時タイヤ径比積算値ΣK’を求める。そして、求められた瞬時タイヤ径比積算値ΣK’を積算回数でわって仮の平均タイヤ径比K’avを算出する。さらに、平均タイヤ径比K’avを今回値として、重みWTを考慮して移動平均処理を行って平均タイヤ径比Kを求める。すなわち、平均タイヤ径比Kは、後輪左右車輪速度差ΔVR、前輪左右車輪速度差ΔVF、及び車体速度VVに基づいて前記の式(1)によって求めることができる。尚、ここで求めた平均タイヤ径比Kが、図3においてタイヤ径比算出部4が算出した空気圧の低下判定用のタイヤ径比Kである。
ちなみに、移動平均回数を20(つまり、m=20回)とし、今回の重みWTが1とすると、今回値の平均タイヤ径比K’avは1/20にされ、前回値K(n−1)は(20−1)/20=19/20にされて足し合わされ、今回値のK(n)が算出される。なお、WTが0の場合は、今回値の平均タイヤ径比K’avが無視されることになる。
【0038】
次に、前記のようにして求めたタイヤ径比K(すなわち、平均タイヤ径比K(=K(n)))と、前輪左右車輪速度差ΔVF及び後輪左右車輪速度差ΔVRとによって空気圧の低下したタイヤを特定するロジックについて説明する。
図6は、本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置が空気圧の低下したタイヤを特定する処理の流れを示すフローチャートである。
図3に示すABS方式の空気圧低下検知システムTPMSのブロック図を参照しながら、図6のフローチャートに基づいて空気圧の低下したタイヤを特定する処理の流れを説明する。なお、VFR,K,ΔY等といったような変数名やデータ名は、適宜に該当図面を参照するものとする。
【0039】
まず、図6において、図3に示す前輪右車輪速度VFR、前輪左車輪速度VFL、後輪右車輪速度VRR、及び後輪左車輪速度VRLが空気圧低下検知装置1へ入力される。すると、空気圧低下検知装置1の直進走行判定パラメータ演算部2が、安定した直進走行の状態かの判別を行うために、入力された各車輪速度VFR、VFL、VRR、VRLに基づいて車両の直進走行の状態を示す係数を演算する。(ステップS1)。そして、その演算結果の係数に基づいて安定した直進走行の状態にあるか否かを判定する。つまり、直進走行の安定条件は、成立しているか否かを判定する。例えば、前輪の左右車輪FR,FLの速度差に基づいて求めた前輪ヨーレートYFと所定の直線性閾値との比較、後輪の左右車輪RR,RLの速度差に基づいて求めた後輪ヨーレートYRと所定の直線性閾値との比較などを行い、直進走行の安定条件は成立しているか否かを判定する(ステップS2)。ここで、直進走行の安定条件が成立していない場合は(ステップS2でNoの場合)、タイヤの空気圧の低下を検知することができないので、直進走行の安定時間をカウントするカウンタをクリアして終了する(ステップS3)。
【0040】
一方、ステップS2で、直進走行の安定条件が成立している場合は(ステップS2でYesの場合)、タイヤ径比算出部4が、重み算出部3によって算出された直進走行の状態に相当する重み(例えば“1”)を加味して一輪の瞬時タイヤ径比K’を演算する。すなわち、瞬時タイヤ径比K’は、前輪左右車輪速度差ΔVFと後輪左右車輪速度差ΔVRと車体速度VVとに基づいて、
K’=(ΔVF−ΔVR)/VV
の演算によって求められる(ステップS4)。次に、前輪左右車輪速度差ΔVFの加算演算(ΣΔVF)を実行する(ステップS5)。同様にして、後輪左右車輪速度差ΔVRの加算演算(ΣΔVR)を実行する(ステップS6)。
【0041】
次に、前記演算回数が規定回数に達したか否かを判定する(ステップS7)。
ここで、演算回数が規定回数に達していないときは(ステップS7でNoの場合)、カウンタを1カウントアップして(ステップS8)、ステップS4に戻り、次の10msのサンプリングデータにおける一輪の瞬時タイヤ径比K’の演算を行い、前記のステップS7までの処理を繰り返す。一方、演算回数が規定回数に達した場合は(ステップS7でYesの場合)、規定回数の演算で求められたそれぞれの瞬時タイヤ径比K’を積算して瞬時タイヤ径比積算値ΣK’を求め、この瞬時タイヤ径比積算値ΣK’を規定回数(積算回数)で割って一輪の仮の平均タイヤ径比K’avを算出する(ステップS9)。さらに、重みWTや平均タイヤ径比の前回値K(n−1)等を考慮して一輪の平均タイヤ径比K(n)を算出する。また、前輪左右車輪速度差ΔVFの平均値を算出する(ステップS10)。同様にして、後輪左右車輪速度差ΔVRの平均値を算出する(ステップS11)。
【0042】
そして、一輪の平均タイヤ径比K(=K(N))の絶対値が所定の閾値を超えているか否かを判定する(ステップS12)。ここで、一輪の平均タイヤ径比Kの絶対値が所定の閾値を超えていない場合は(ステップS12でNoの場合)、四輪のタイヤ空気圧は安定状態にあるのでそのまま終了する。一方、一輪の平均タイヤ径比Kの絶対値が所定の閾値を超えている場合は(ステップS12でYesの場合)、一輪の平均タイヤ径比Kが0以上か未満かを判定する(ステップS13)。ここで、一輪の平均タイヤ径比Kが0未満の場合(ステップS13でNoの場合)、さらに、前輪左右車輪速度差ΔVFの平均値の絶対値|ΔVF|が、後輪左右車輪速度差ΔVRの平均値の絶対値|ΔVR|以上か未満かを判定する(ステップS14)。
【0043】
ここで、ステップS14において、後輪左右車輪速度差ΔVRの平均値の絶対値|ΔVR|の方が前輪左右車輪速度差ΔVFの平均値の絶対値|ΔVF|以上の場合は(ステップS14でNoの場合)、後輪右車輪RRを空気圧低下車輪として選択する(ステップS15)。また、ステップS14において、前輪左右車輪速度差ΔVFの平均値の絶対値|ΔVF|の方が後輪左右車輪速度差ΔVRの平均値の絶対値|ΔVR|以上の場合は(ステップS14でYesの場合)、前輪左車輪FLを空気圧低下車輪として選択する(ステップS16)。
【0044】
また、前記ステップS13で、一輪の平均タイヤ径比Kが0以上の場合(ステップS13でYesの場合)、さらに、前輪左右車輪速度差ΔVFの平均値の絶対値|ΔVF|が、後輪左右車輪速度差ΔVRの平均値の絶対値|ΔVR|以上か未満かを判定する(ステップS17)。ここで、後輪左右車輪速度差ΔVRの平均値の絶対値|ΔVR|の方が前輪左右車輪速度差ΔVFの平均値の絶対値|ΔVF|以上の場合は(ステップS17でNoの場合)、後輪左車輪RLを空気圧低下車輪として選択する(ステップS18)。また、ステップS17において、前輪左右車輪速度差ΔVFの平均値の絶対値|ΔVF|の方が後輪左右車輪速度差ΔVRの平均値の絶対値|ΔVR|以上の場合は(ステップS17でYesの場合)、前輪右車輪FRを空気圧低下車輪として選択する(ステップS19)。そして、選択された車輪に対応した警告灯を点灯する(ステップS20)。
【0045】
図7は、図6のフローチャートに基づいて空気圧の低下のタイヤが特定された状態を示す空気圧低下タイヤの特定テーブルの図である。
図7に示すように、|平均タイヤ径比K|≧閾値である場合には、四輪のうち何れかのタイヤに空気圧の低下が発生している。そこで、|平均タイヤ径比K|≧閾値であり、かつ、平均タイヤ径比K≧0である場合に、|前輪左右車輪速度差ΔVF|≧|後輪左右車輪速度差ΔVR|であるときは、前輪右車輪FRが空気圧の低下した車輪であると特定され、|前輪左右車輪速度差ΔVF|<|後輪左右車輪速度差ΔVR|であるときは、後輪左車輪RLが空気圧の低下した車輪であると特定される。また、|平均タイヤ径比K|≧閾値であり、かつ、平均タイヤ径比K<0である場合に、|前輪左右車輪速度差ΔVF|≧|後輪左右車輪速度差ΔVR|であるときは、前輪左車輪FLが空気圧の低下した車輪であると特定され、|前輪左右車輪速度差ΔVF|<|後輪左右車輪速度差ΔVR|であるときは、後輪右車輪RRが空気圧の低下した車輪であると特定される。このようにして、四輪車両の走行中に検出された各車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLのみによって空気圧の低下したタイヤ(車輪)を特定することができる。
【0046】
以上述べた実施の形態は本発明を説明するための一例であり、本発明は、前記の実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲で種々の変形が可能である。前記の実施の形態では、ABS用の車輪速センサSのみを用いて空気圧の低下したタイヤを特定する手法について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、車輪速センサSは、ABS用以外の車輪速センサを用いてもよいし、ヨーレートセンサや加速度センサなど他のセンサと併用してもよいことは云うまでもない。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置によれば、四輪の車輪速度のみを検出すれば、車輪速度の左右差の前後差から何れかの車輪に空気圧の低下が発生しているか否かを検知し、さらに、前輪側の左右車輪速度差と後輪側の左右車輪速度差との大小関係から空気圧の低下した車輪を特定することができる。これによって車両から降りることなく空気圧の低下した車輪を知ることができるので、安定走行に大いに寄与することができる。また、空気圧の低下した車輪が自動的に特定されることにより、四輪全てのタイヤの空気圧を測定する手間を省くことができるので、ユーザにとって使い勝手のよい車両を提供することができる。さらに、加速度センサやヨーレートセンサなど複数のセンサを用いることなく、ABS用の既存の車輪速センサのみによってタイヤの空気圧の低下を検知することができるので、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置を搭載する車両のシステム構成図である。
【図2】車両の走行状態を示す図で、(a)は前輪右車輪の空気圧低下時の状態を示す概略図であり、(b)は車両旋回時の状態を示す概略図であり、(c)はタイヤの径にバラツキがある時の状態を示す概略図である。
【図3】本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置に適用されるABS方式による空気圧低下検知システムの全体構成図である。
【図4】ヨーレート、加速度、及び駆動トルクの算出ロジックの流れを示すフロー図である(直進走行のパラメータの算出ロジック)。
【図5】タイヤ径比の算出ロジックの流れを示すフロー図である。
【図6】本発明におけるタイヤの空気圧低下検知装置が空気圧の低下したタイヤを特定する処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図6のフローチャートに基づいて空気圧の低下のタイヤが特定された状態を示す空気圧低下タイヤの特定テーブルの図である。
【符号の説明】
1 空気圧低下検知装置
2 直進走行判定パラメータ演算部(直進走行判定手段)
3 重み算出部(重み算出手段)
4 タイヤ径比算出部(タイヤ径比算出手段)
5 学習開始部
6 学習値記憶部
7 空気圧低下検知部(空気圧低下検知手段)
8 走行可否判定部
VFR 前輪右車輪速度
VFL 前輪左車輪速度
VRR 後輪右車輪速度
VRL 後輪左車輪速度
VV 車体速度
ΔVF 前輪左右車輪速度差
ΔVR 後輪左右車輪速度差
YF 前輪ヨーレート
YR 後輪ヨーレート
K タイヤ径比
WT 重み
Claims (6)
- 四輪車両における各車輪の車輪速度に基づいてタイヤの空気圧の低下を検知するタイヤの空気圧低下検知装置であって、
前輪の左右車輪の速度差と後輪の左右車輪の速度差との偏差、及び前輪の左右車輪の速度差と後輪の左右車輪の速度差との大小によってタイヤ空気圧が低下した車輪を特定することを特徴とするタイヤの空気圧低下検知装置。 - 四輪車両における各車輪の車輪速度に基づいてタイヤの空気圧の低下を検知するタイヤの空気圧低下検知装置であって、
前記各車輪の車輪速度に基づいて車両の直進走行を判定する直進走行判定手段と、
前記直進走行判定手段が判定した直進走行の程度に応じた重みを算出する重み算出手段と、
前記各車輪の車輪速度と前記車両の車体速度と前記重み算出手段が算出した重みとに基づいて一輪のタイヤ径比を算出するタイヤ径比算出手段と、
前記タイヤ径比算出手段で算出したタイヤ径比の絶対値が所定の閾値以上のとき、前記タイヤ径比の正負の判定、及び前記四輪車両における前輪の左右車輪の速度差と後輪の左右車輪の速度差との大小に基づいて、空気圧が低下したタイヤを特定する空気圧低下検知手段と、を備えたことを特徴とするタイヤの空気圧低下検知装置。 - 前記直進走行判定手段は、少なくとも、前輪の左右車輪の速度差に基づいて演算した前輪ヨーレートと後輪の左右車輪の速度差に基づいて演算した後輪ヨーレートとを用いて、前記車両の直進走行の程度を判定し、
前記重み算出手段は、前記前輪ヨーレート及び後輪ヨーレートによって判定された直進走行の程度に応じて、直進状態での検知寄与率を高くする重みを算出することを特徴とする請求項2に記載のタイヤの空気圧低下検知装置。 - 前記タイヤ径比算出手段は、
タイヤ径比をK、前輪左右車輪速度差をΔVF、後輪左右車輪速度差をΔVR、及び車体速度をVVとしたとき、
K=(ΔVF−ΔVR)/VV
によって一輪のタイヤ径比を算出することを特徴とする請求項3に記載のタイヤの空気圧低下検知装置。 - 前記空気圧低下検知手段は、
K≧0、かつ、|K|≧閾値であって、|ΔVF|≧|ΔVR|のときに前輪右車輪をタイヤ空気圧の低下した車輪として特定し、
K≧0、かつ、|K|≧閾値であって、|ΔVF|<|ΔVR|のときに後輪左車輪をタイヤ空気圧の低下した車輪として特定し、
K<0、かつ、|K|≧閾値であって、|ΔVF|≧|ΔVR|のときに前輪左車輪をタイヤ空気圧の低下した車輪として特定し、
K<0、かつ、|K|≧閾値であって、|ΔVF|<|ΔVR|のときに後輪右車輪をタイヤ空気圧の低下した車輪として特定することを特徴とする請求項4に記載のタイヤの空気圧低下検知装置。 - 前記各車輪の車輪速度は、ブレーキロック防止システムに備えられている車輪速センサによって検出されることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載のタイヤの空気圧低下検知装置。
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JP2003168891A JP2005001578A (ja) | 2003-06-13 | 2003-06-13 | タイヤの空気圧低下検知装置 |
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