JP2005000112A - 炊飯添加用調味液及びそれを用いた炊飯方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の米飯用調味液および米飯にて、炊飯時に乳化液を添加剤として使用し、食感を改善する技術には、更に食品添加物である乳化剤を使用して、水溶性蛋白液と油脂類を乳化させる必要があった。しかし、添加物であるが故の使用制限または不可の場面が多々あった。消費者が、原料表示に敏感になっているため、より天然素材に近い商品を訴求するようになったためである。
【解決手段】水溶性蛋白液と油脂類を、乳化特性に優れた含有率に調整し、ホモゲナイザーを始めとする機械的、物理的な強制乳化によって乳化液とすることで、より天然素材に近い物性の、米飯用調味液および米飯商品を提供することができる。これらは、乳化剤を使用した調味液および米飯に対して遜色ない、食感、テクスチャーの改善機能を有し、均一に作用する。これにより、消費者の欲求を満たす、安全、安心で美味しい米飯商品を容易に提供できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、米飯または調味米飯などを炊飯する際に使用する、品質の安定・向上を目的とした調味液及びそれを用いた炊飯方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生米を炊飯する場合には、一般的には水が使用される。
しかし、業務用または給食用などで多量に炊飯する場合には、動物性エキスなどの水溶性蛋白液に、動物性または植物性の食用油脂を乳化させた調味液を使用することによって、炊き上がりのムラを極力少なくし、食感が良く、品質の安定した炊飯方法が採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような従来の炊飯方法では食品添加物として乳化剤を使用する必要がある。
しかしながら、近年の消費者は天然、安全、健康などを志向する傾向が強いために、かかる乳化剤を使用した調味液の使用は困難または制限されている。
【0004】
このような問題に鑑み、本発明は、豚骨や鶏骨など動物性の原料を始めとする高蛋白原料から抽出し濃縮したエキスに、豚脂や鶏脂など動物性の原料を始めとする油脂原料から抽出したオイルおよび大豆油・菜種油・胡麻油などの植物性オイルを機械的、物理的に乳化させた調味液とすることで、天然原料を主体とした、より安全、安心な製品を供給することができ、また、物理的乳化液の特性である、水和力の強さに起因する乳化安定性と油脂粒子の均一化により、より米飯に馴染みやすく、食感を改善しテクスチャーを保持する炊飯添加用調味液及びそれを用いた炊飯方法を提供するものである。
【0005】
さらに、上述した油脂部分に、香味野菜、魚介類などの好ましい香味を有する副材をシーズニングし調味オイルとすることで、特徴的な食欲を増す香味を炊飯中に効率よく分散させる効果をもつ炊飯添加用調味液及びそれを用いた炊飯方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の炊飯添加用調味液は、請求項1に記載されているように、食用油脂が水溶性蛋白に物理的に強制乳化されていることを特徴とするものである。
【0007】
ここで、水溶性蛋白液とは、骨肉より熱水抽出された、動物性の水溶性蛋白液であるが、蛋白の種類に限定はない。食用油脂は、食用に供し得る油であり、豚脂、鶏脂、牛脂、大豆油、米油、ヒマワリ油、ごま油などが挙げられる。
【0008】
まず始めに、骨肉を熱水にて抽出し濃縮する。この場合は、油脂分を乳化させる量にもよるが、30%以上の蛋白量になるように濃縮するのが一般的である。これは、前記の食用油脂類を乳化した場合に、乳化力を保持するのに充分な量の蛋白量を得ることが目的である。
【0009】
こうして得られた蛋白液に、ホモゲナイザーなど公知の乳化機を使用して、前記の食用油脂類を乳化し、乳化液を得る。この乳化液に含まれる油脂の平均粒子は、この大きさに限定されるものではないが、通常5〜30ミクロン程度である。また、乳化液中の油脂量は、少なすぎると乳化安定性に乏しくなり、逆に多すぎると粘度が高くなりすぎて溶解性が悪くなるため、通常20〜30%程度が好適である。また、油脂製品には、一般的に酸化防止剤が使用されるが、本発明の目的のひとつである、天然物主体という点を鑑みて、大豆などの天然物から抽出したトコフェロール(ビタミンE)を使用するのが望ましい。
【0010】
以上のようにして造られた乳化液を、生米を炊飯する際に水で希釈して添加することにより、乳化剤を使用せずに、米飯の食感を高め、更に調味油を使用すれば、非常に好ましい香味を付与することができる。また、乳化液とすることで、多量に炊飯した場合でも、全体に均一に油脂成分を浸透させることができ、味や香りについて非常にバラツキの少ない、高品質の米飯商品を提供し得ることとなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
好適と考える本発明の実施の形態を、図1に基づいて説明する。
【0012】
本発明は、豚骨、鶏骨などの高蛋白含有原料を熱水抽出し水溶性蛋白を得た後これを濃縮して高濃度蛋白エキスを得る。別に、豚脂、鶏脂、牛脂などの動物性油脂またはコーン油、ごま油などの植物性油脂を抽出、精製したオイル、更に香味野菜や魚介類などの副材により着香したオイルを得る。
【0013】
これらのエキス、オイルを、目的の成分になるような比率によって、攪拌付きのタンクで混合し、循環などの手法によって、あらかじめ均一化を図り、ホモゲナイザーによって高圧をかけ、蛋白と油脂を強制乳化させ乳化エキスを得る。
【0014】
こうして得られた乳化エキスは、乳化剤を使用しなくとも安定した物性を示し粘度を3、500〜10、000センチポイズ(CP)程度に調整することによって水で希釈した際の溶解性が非常に良く、使用しやすい添加剤となる。更に、10%程度の食塩を添加し水分活性を下げれば、常温流通が可能となる。
【0015】
【実施例】
本発明は、炊飯時の品質改良、保持として有効に利用できる添加用調味液及びこれを用いた炊飯方法に係るものである。
したがって、本実施例は、本発明者が実際に炊飯試験を実施し、その効果について検証したものである。この検証試験において使用した乳化エキスの概要は、以下に示す。
【0016】
【表1】
Figure 2005000112
(1)チキンエキス
鶏骨100%にて抽出し濃縮したエキス。
(2)動植物油脂
鶏脂に長葱・生姜を加工副材としてシーズニングしたものに、ラードとごま油を混合したオイル。
(3)食塩
海水由来の並塩を使用。水分活性を低下させ、常温流通可能とする。
(4)酸化防止剤(ビタミンE)
オイルバルク製造時に添加。油脂部の劣化を防止する。大豆より抽出したトコフェロールを使用。
実施例では、米2合を炊飯することを基本とした。その炊飯用の水に、炊きあがりの米飯の0.9%および1.8%となるように乳化液を添加し、常法どおりに炊飯した。こうして得られた米飯を使用して、80gのおにぎりを7個作り、0分から36時間までの水分量の経時変化において、保水性の検証試験とした。更に、米4合を乳化液添加区と無添加区で炊飯し、上面より段階的にサンプリングし、香り、照り、食感について官能試験により均一性を評価し、分散性の検証試験とした。また、同様の方法にて炊飯したものを常温で24時間放置した米飯のバラケ具合についても官能試験により検証した。
【0017】
結果は以下の検証結果に示すとおりであった。
1.保水性の検証結果(水分%)
【表2】
Figure 2005000112
(1)2合の米を上記の条件で炊飯し、型を使用して80g/個のおにぎりを作った。
(2)20℃前後の室温にラップを掛け放置し、上記の経時変化を測定した。
(3)水分測定はケット赤外線水分計にて、165℃、20分とした。
(4)結果として、本乳化液を添加したものの方が、水分の蒸発量が1/3程度であり、高い保水性を示した。官能的にも「しっとり感」が持続し、目的とする品質保持能力を示した。
2.香り、油分の分散性の検証結果
(1)4合の米を下記の配合で炊飯し、炊き上がりの高さ14cmから4cm単位でサンプルを採取し、香り、照り、食感について官能試験を実施した。
【表3】
Figure 2005000112
(2)結果を下記に示す。
【表4】
Figure 2005000112
(3)位置による差はなく、分散性は良好であった。最下部においては食欲をそそる香ばしい香気の「おこげ」が出来るが、一般には炊飯後のほぐし工程で均一に混ざるので特に問題はない。この際も、油分が均一に分散していることにより、作業が容易になるという利点がある。
3.バラケ具合の検証
(1)4合の米を下記の配合で炊飯したものと、水道水のみで炊飯したものを15℃で24時間放置したもののバラケ具合を比較した。
【表5】
Figure 2005000112
(2)添付の写真に示すとおり、明らかにエキスを添加したものの方がバラケ具合が良好であり、効果は大きいと認められた。この傾向は、炊飯後冷凍し、レンジアップしたものでも同様であった。
【表6】
Figure 2005000112
保水性の検証試験においては、乳化液添加区の方が明らかに水分の蒸発量が少なく、テクスチャー的にも「しっとり感」が残った。分散性の検証試験においては、最下層を除いて品質の有意差はなく、どの層においても香味、コク味が豊かな米飯が得られるとの結果となった。また、経時変化においても、24時間後のものについてでも、炊き上がりとの差異が少なく、充分に食に耐え得る食感と香味を保持できるという結果となった。
【0018】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【0019】
【発明の効果】
本発明は上述のように構成されるものであるから、高蛋白原料から得た水溶性蛋白液と、動物性または植物性油脂およびそれに着香した油脂などを、乳化剤の使用なしに物理的に強制乳化することで、消費者の持つ天然、安全、安心志向に合致した、品質と保存性を高める米飯用調味液となる。
【0020】
米飯は、昔も今も特に日本を始めとするアジア圏では主食であり、炊飯加工品においては、より美味しいものが求められている。商品についても、白飯のみならず炊き込み御飯、赤飯、中華おこわ、パエリアなど、多種多様になってきている。本発明は、これらの欲求を満たすに充分な機能性と安全性を備えていると言うことができ、この調味液を使用することにより、食感が良く均一な保存性の高い安心な米飯商品を、簡単に造り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における乳化液製造工程を示すフローチャート図である。

Claims (3)

  1. 動物油脂、植物油脂などの食用油脂を水溶性蛋白液中に物理的に乳化させたことを特徴とする炊飯添加用調味液。
  2. 水溶性蛋白液中に更に食塩を含ませたことを特徴とする請求項1に記載の炊飯添加用調味液。
  3. 請求項1または2のいずれかに記載の炊飯添加用調味液を、乳化剤未使用の調味料とともに生米に添加して炊飯することを特徴とする炊飯方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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