JP2004537991A - アレルギー及び喘息治療用Fcε融合タンパク質 - Google Patents
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Abstract
本発明は、Fcγ断片と結合されたFcε断片、例えば、Fcε1-ヒンジ-Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ;ヒンジ-Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ;Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ;Fcε2-Fcε3-Fcγ;Fcε3-Fcγ;及びFcε3-Fcε4-Fcγ、又は、均等な免疫学的機能を有するあらゆる誘導体若しくはペプチド、を包含する。Fcγ断片は、FcγRIIBに結合する、いずれのIgGサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)の断片であってもよく、好ましくは、IgG1又はIgG3の断片である。本発明はまた、前記融合タンパク質構築物を、例えば賦形剤、希釈剤又は担体を包含する医薬組成物中にアレルギー性疾患に罹患した患者に投与するのに適した組成物を包含する。この治療法は、抗IgE療法又はアレルゲン免疫療法と組み合わせることもできる。
【選択図】図1
【選択図】図1
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、IgE Fcε断片(天然及び機能的誘導体)並びにIgG Fcγ断片を含む融合タンパク質構築物に関する。該構築物は、高親和性レセプター(FcεRI)又は低親和性レセプター(FcεRII) 、及びFcεRIIBのようなFcγレセプターに結合することができ、それによって細胞表面上のFcεRIの発現を低減させ、これらのレセプターに対するIgEの結合をブロッキングするものである。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、細菌、ウイルス、寄生虫及び腫瘍細胞に関連した抗原と反応することにより、感染物及び腫瘍に対する防御を提供するものである。しかしながら、免疫応答が全て有益であるわけではない。
【0003】
アレルギー反応は、本来無害な食品、薬剤及び花粉等に対する免疫応答により引き起こされるものであり、喘息、アレルギー性鼻炎並びに食品及び薬剤アレルギーを引き起こし得る。これらのアレルギー性疾患は、通常、遅延型又は細胞媒介型過敏症ではなく、即時型過敏症としても知られる、IgE-媒介過敏症反応を伴う。これらの疾患は、工業国の人口の10〜40%もの人々が罹患している (Janeway, CA., et al., Immunology: the immune system in health and disease, Ed. 4, Elsevier Science Ltd., London; 1999)。喘息だけでも米国で1500万人を超える人が罹患しており、年間5000人を超える人が死亡している。10%を超える子供が、子供時代のある時点でアレルギー性皮膚炎を患っている(Leung, D., Mol. Gen. and Metab. 63:157-167 (1998)。アレルギー性疾患の罹患率は、この20年で急激に上昇した。
【0004】
アレルギー性疾患は、常にというわけではないが、しばしば高濃度の循環性IgEを伴う。IgE-媒介アレルギー反応において、IgEはFcεRIに結合し、もしレセプター−結合IgEがアレルゲンと相互作用すると、それによって、マスト細胞や好塩基球のようなエフェクター細胞上に結合されたIgE抗体の架橋が引き起こされる。その結果、その下にあるレセプターが凝集し、即時的な脱顆粒並びにヒスタミン及びトリプターゼの放出を引き起こす、細胞内信号伝達カスケードが開始され、次いでプロスタグランジン、ロイコトリエン、並びにIL-3, -4, -5, -6, -10及び-13, TNFα並びにGM-CSFのようなサイトカイン並びにアレルギー反応の他のメディエーターの合成及び放出が起きる。これらのメディエーターはアレルギー反応の病理的徴候を発現させる。
【0005】
IgEの主なレセプターは2つある。高親和性レセプターFcεRI及び低親和性レセプターFcεRIIである。FcεRIは、細胞表面上で、三量体αγ2(1本のα鎖及び2本のγ鎖)又は四量体αβγ2(1本のα鎖、1本のβ鎖及び2本のγ鎖)構造のいずれをも形成する(Kinet, JP., Annu. Rev. Immunol. 1999, 17:931-972)。α鎖の細胞外領域は、このレセプターに、高い親和性(Kd = 10-9-10-10M)でIgEと結合する能力を与える。該レセプターは主としてマスト細胞及び好塩基球の表面上に発現されるが、ヒトランゲルハンス細胞、樹状細胞及び単球においても、これらがIgE-媒介アレルゲン提示において機能する場合には、これらの上にもまた低濃度のFcεRIが見られる。さらに、FcεRIは、ヒト好酸球及び血小板上に存在することが報告されている(Hasegawa, S. et. al., Hematopoiesis, 1999, 93:2543-2551)。FcεRIは、B細胞、T細胞及び好中球の表面上には見られない。ランゲルハンス細胞及び皮膚樹状細胞上のFcεRIの発現は、アレルギーのヒトにおけるIgE-結合抗原の提示にとって機能的及び生物学的に重要である(Klubal R. et al., J. Invest. Dermatol. 1997, 108 (3):336-42)。
【0006】
低親和性レセプターであるFcεRII(CD23)は、細胞性原形質膜からのα−ヘリックスコイル状の茎から伸びる頭部構造を有する、同一の3個のサブユニットを含む、レクチン様分子である(Dierks, A. E. et al., J. Immunol. 1993,150:2372-2382)。IgEのCH3ドメインは、FcεRIIの3つの頭部構造のうちの2つと同時に低い親和性(Kd=6.3x10-7M)で結合することができる。このIgE結合部位は、CH3領域中に位置するが、FcεRI結合部位とは重複しない。IgEに結合すると、FcεRIIは、IgEの合成の調節に関与する、B細胞上のCD21と会合する(Sanon, A. et al., J. Allergy Clin. Immunol. 1990, 86:333-344, Bonnefoy, J. et al., Eur. Resp. J. 1996, 9:63s66s)。FcεRIIはアレルゲン提示の故に古くから認められている(SuttonとGould,1993, Nature, 366:421-428)。上皮細胞上のFcεRIIに結合したIgEは、特異的かつ迅速なアレルゲン提示を司る(Yang, P.P., J. Clin. Invest., 2000, 106:879-886)。FcεRIIは、B細胞、好酸球、血小板、ナチュラルキラー細胞、T細胞、小胞性樹状細胞及びランゲルハンス細胞を包含する、いくつかの型の細胞上に存在する。
【0007】
FcεRI及びFcεRIIと相互作用するIgE分子の構造も既に同定されている。突然変異試験により、CH3領域が、FcεRI(Presta et al., J. Biol. Chem. 1994, 269:26368-26373; Henry A.J. et al., Biochemistry, 1997, 36:15568-15578)及びFcεRII(Sutton and Gould, Nature, 1993, 366: 421-428; Shi, J. et al., Biochemistry, 1997, 36:2112-2122)の両者とのIgE相互作用を媒介することが示されている。高及び低親和性レセプターの両者に対する結合部位が、2つのCH3ドメインを介する中心回転軸に沿って対称的に位置している。FcεRI-結合部位は、CH2ドメインとの分岐点近傍の外側のCH3ドメイン中に位置し、一方、FcεRII-結合部位は、CH3のカルボキシル末端上に位置する。
【0008】
ヒト好塩基球密度についての初期の研究により、患者の血漿中のIgE濃度と、好塩基球あたりのFcεRIレセプターの数との間に相関関係があることが示された(Malveaux et al., J. Clin. Invest., 1978, 62:176)。彼らは、アレルギーのヒトとアレルギーではないヒト中のFcεRIの密度が、好塩基球当たり104ないし106個であることに気付いた。後になって、抗IgEでアレルギー性疾患を治療すると、循環IgEの濃度を治療前の1%に減少させることができることが示された(MacGlashan et al., J. Immunol., 1997, 158:1438-1445)。MacGlashanは、患者血清中に循環する遊離のIgEに結合する、全抗IgE抗体で治療した患者から得られた血清を分析した。彼らは、患者内の循環IgEの濃度を下げると、好塩基球の表面上に存在するレセプターの数が減少することを報告した。このように、彼らは、好塩基球及びマスト細胞の表面上のFcεRI密度が、循環IgE抗体の濃度によって、直接的又は間接的に調節されるとという仮説を立てた。
【0009】
より最近、WO 99/62550は、FcεRI及びFcεRIIのIgE結合部位に結合するIgE分子及びその断片を用いて、IgEのレセプターへの結合をブロックすることを開示した。しかしながら、これらのアレルギー疾患を治療するための、有害な副作用のない有効な治療法は限られている。アレルギー性疾患を治療する1つの治療手法は、ヒト化抗IgE抗体を用いてアレルギー性鼻炎及び喘息を治療することを包含する(Corne, J. et al., J. Clin. invest 1997, 99:879-887; Racine-Poon, A. et al., Clin. Pharmcol. Ther. 1997, 62:675-690; Fahy, J.V. et al., Am. J. Resp. Crit. Care Med. 1997, 155:1824-1834; Boulet, L. P. et al., Am. J. Resp. Crit. Care Med., 1997, 155:1835-1840; Milgrom, E. et al., N. Engl. J. Med., 1999, 341:1966-1973)。これらの臨床データは、IgEのレセプターへの結合を阻害することは、アレルギー性疾患治療の有効な手法であることを示している。
【0010】
有利なことに、Fcε-Fcγ融合タンパク質は、マスト細胞及び好塩基球上のFcεRI(Fcεを介して)及びFcγRIIB(Fcγを介して)を架橋することができる。このレセプター架橋は、これらの細胞の脱顆粒を阻害するであろう。この阻害は、FcγRIIB細胞質テール中の免疫レセプターのチロシン系阻害モチーフ(ITIMs)のチロシンのリン酸化を包含し、抗原レセプターFcεRIからの信号の活性化に対立し、細胞質テール内に免疫レセプターチロシン系活性化モチーフ(ITAM)を担持するSH2-含有タンパク質ホスファターゼ(タンパク質チロシンホスファターゼ1及び2(SHP-1, SHP-2)を含む Src相同ドメイン)及び/又はリピッドホスファターゼ(ポリホスファチジル−イノシトール5-ホスファターゼを含むSH2ドメイン)への結合部位を創製する。Fcε-Fcγ融合タンパク質はまた、B細胞、ランゲルハンス細胞、樹状細胞及び単球上のFcεRIIにも結合することができ、それによって、FcεRI及び/又はFcεRIIを介する、これらの細胞へのアレルゲン(IgEと複合した)の提示をブロックする。これにより、B細胞からのIgEの生産及びアレルゲン特異的T細胞の生成を包含する、アレルゲンに対する免疫応答が低減されるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、IgE生産を減少させ、マスト細胞及び好塩基球の脱顆粒を減少させ、マスト細胞及び好塩基球上のFcεRIレセプターの発現を減少させることによりIgE-媒介アレルギー性疾患の治療を提供する。本発明はまた、FcεRIを介するランゲルハンス細胞及び樹状細胞へのアレルゲンの提示及びFcεRIIを介するB細胞へのアレルゲンの提示を妨げることにより、アレルゲンに対する免疫応答を低減させる手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、例えば、Fcε1-ヒンジ-Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ; ヒンジ−Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ;Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ;Fcε2-Fcε3-Fcγ;Fcε3-Fcγ;及びFcε3-Fcε4-FcγのようなIgE Fcε断片及びIgG Fcγ断片、又はFcεRI若しくはFcεRII及びFcγRIIBレセプターに結合することができる、均等な免疫学的機能を有するあらゆる修飾断片若しくはペプチドを含む、融合タンパク質を包含する。Fcγ断片は、いずれのIgGサブクラス(IgG1, IgG2, IgG3又はIgG4)からの断片であってもよく、Fcγ1-Fcγ2-Fcγ3又はFcγRIIBレセプターに結合することができる、より小さなあらゆる断片を包含し得る。Fcγ断片は、そのC末端又はN末端を介してFcε断片に結合することができる。Fcε断片とFcγ断片は、互いに直接結合することもできるし、リンカーを介して結合することもできる。
【0013】
前記融合タンパク質は、好塩基球及びマスト細胞上のFcεRI及びB細胞上のFcεRIIに結合することができ、それによって、これらのレセプターへのIgEの結合がブロックされ、好塩基球、マスト細胞及びB細胞の表面上におけるこれらのレセプターの発現を減少させる。前記融合タンパク質は、マスト細胞及び好塩基球上のFcεRI及びFcγRIIBを架橋することができ、それによってこれらの細胞の脱顆粒を低減させる。融合タンパク質のFcε断片上にはアレルゲン結合領域が存在しないので、マスト細胞又は好塩基球の表面上のアレルゲン分子により該断片が架橋されることはあり得ない。したがって、レセプターの凝集が起きず、アレルギー反応の原因となるメディエーターの放出を引き起こす細胞内信号伝達カスケードが開始されない。さらに、Fcε断片のFcεRIレセプターへの結合により、IgEの結合が妨害され、それによってアレルゲン特異的免疫応答が排除される。
【0014】
本発明はまた、例えば、賦形剤、希釈剤又は担体を含む組成物中に前記融合タンパク質を含む、アレルギー性疾患を罹患した患者に投与するために適した組成物をも包含する。この治療はまた、抗IgE治療又はアレルゲン免疫治療と組み合わせてもよい。
【0015】
本発明は、前記融合タンパク質をコードする核酸配列及びベクター、並びにこれらの配列でトランスフェクトされた宿主細胞を包含する。これらの哺乳動物配列は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウマ及びヒトを包含する。
【0016】
本発明は、Fcε断片とFcγ断片とを含む融合タンパク質の有効量を、哺乳動物個体に投与することを含む、感受性哺乳動物個体におけるIgE-媒介アレルギー反応を緩和又は防止する方法を包含する。アレルギー反応は、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、枯草熱、ピーナッツやツリーナッツアレルギーのような食品アレルギー、アトピー性皮膚炎又は薬剤アレルギーを伴い得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、Fcε1-ヒンジ-Fcε2-Fcε3-Fcε4;ヒンジ−Fcε2-Fcε3-Fcε4;Fcε2-Fcε3-Fcε4;Fcε2-Fcε3;Fcε3;及びFcε3-Fcε4のような、IgE Fcε断片が、IgG1, IgG2, IgG3又はIgG4のあらゆるサブタイプ、好ましくはIgG1又はIgG3の、Fcγ2-Fcγ3又はFcγ2のようなIgG Fcγ断片と結合した融合タンパク質を包含する。これらの融合タンパク質は、FcεRI及び/又はFcεRIIレセプターに結合することができ、したがって、FcεRI及びFcεRII、並びにFcγレセプター、特にFcγRIIBレセプターへのIgEの結合をブロックする。融合タンパク質は、免疫グロブリンのFc領域のみを含み、免疫グロブリンの抗原結合部分を含まないので、アレルゲンとの接触は、マスト細胞又は好塩基球の架橋及び脱顆粒を引き起こし得ない。
【0018】
Fcε断片は、この分野において周知の種々のリンカーを介してFcγ断片に結合させることができる。適切なリンカーの一例は、(GGS)2が(GGGGS)2に結合した、16アミノ酸から成る非免疫原性リンカーである(Argos, P., 1990, J. Mol. Biol. 211:943; Huston, J.S. et al. 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879)。リンカーは、融合タンパク質を投与される哺乳動物個体に対して非免疫原性であるように設計されるべきである。
【0019】
抗IgEモノクローナル抗体で患者を治療し、循環IgEの量が有意に減少すると、それに応じてFcεRIレセプターの数も減少することが示されている(Chang, "The pharmacological basis of anti-IgE therapy", Nat Biotechnol. 2000 Feb;18(2):15762.)。本発明の融合タンパク質がFcεRIレセプターに結合することにより、FcεRI発現が低減され、それによって将来のアレルギー反応の程度が弱められ又は防止される。なぜなら、より少ないレセプターが存在するであろうからである。この低減により、また、樹状細胞のようなプロフェッショナル抗原提示細胞によるアレルゲンの提示も低減される。
【0020】
Fcγ断片のサブクラスがIgG1又はIgG3である場合には、本発明の融合タンパク質は、細胞質性ITAMモチーフを担持するFcεRIと、マスト細胞及び好塩基球上の細胞質性ITIMモチーフを担持するFcγRIIBとを架橋することができ、それによってこれらの細胞の脱顆粒を防止することができる。あるいは、Fcγは、IgG2又はIgG4サブクラスのものであってもよい。用いるFcγサブクラスに関わらず、融合構築物は、Fcε断片単独よりも、はるかに長い宿主体内における生物学的半減期を有するであろう。このことは、アレルギーや喘息のような慢性疾患の治療にとって有利である。
【0021】
さらに、融合タンパク質は、Fcε2-Fcε3-Fcε4を含み、FcεRI及びFcεRIIレセプターに結合できるものであってもよい。Fcε断片はまた、IgE-Fcε2-Fcε3-Fcε4又はその機能的断片のヒンジ部を含んでいてもよい。本発明の融合タンパク質は、ネイティブIgEの結合親和性の少なくとも75%の結合親和性、85%の結合親和性、95%の結合親和性又はネイティブIgEの結合親和性よりも大きな結合親和性でFcεRI及び/又はFcεRIIレセプターに結合する。
【0022】
Fcε及びFcγ断片は、天然又は合成の断片、並びに配列は異なるが前記融合タンパク質と均等な免疫学的機能を有するタンパク質を包含する。このような免疫学的に均等なタンパク質は、FcεRI及びFcεRIIの両者、並びにFcγRIIBに結合する能力を有するものである。免疫学的に均等なタンパク質は、公知の多数の技術のいずれによっても製造することができる。例えば、タンパク質コンビネーショナルライブラリーから出発し、結合タンパク質を単離し、FcεRI、FcεRII及びFcγRIIBへの結合親和性を最適化することや、Fcε及びFcγ断片を含む融合タンパク質に対して選択的変更を加える等である。抗体断片のアミノ酸配列を変更する方法はこの分野において周知である。抗体遺伝子にインビトロにおいてランダムな変異を導入するために一般的に用いられている1つの方法は、間違いを起こしがちなポリメラーゼ及び親和性選択を用いることを包含する(Hawkins, R. et al., J. Mol. Biol., 1992, 226:889-896)。機能的に均等な融合タンパク質は、融合タンパク質ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列内でのアミノ酸残基の追加、置換、欠失及び修飾であって、サイレントな変更を生じるもの、したがって、機能的に均等な遺伝子産物を生成するものを包含するがこれらに限定されるものではない。アミノ酸の置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/又は両親媒性における類似性に基づいて行うことができる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンを包含する。極性のある中性アミノ酸は、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンを包含する。陽性に帯電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジン及びヒスチジンを包含する。陰性に帯電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を包含する。
【0023】
融合タンパク質をコードするDNAにランダム変異を導入し(当業者に周知なランダム変異法を用いて)、得られた変異体の活性を調べることもできるが、コード配列の部位特異的変異を工学的に作り出し(当業者に周知の部位特異的変異法を用いて)、それによって例えばより高いレセプター結合親和性等の高められた機能、減少された機能及び/又は増大された生理学的半減期を有する変異融合タンパク質を生成することもできる。このような分析の1つの出発点は、例えば、異なる種間で保存されているアミノ酸配列モチーフを同定するために、Fcε断片又はFcγ断片の配列を他の哺乳動物からの対応する遺伝子/タンパク質配列と整列させることである。異なる位置に、非保存的変異を工学的に作り出して機能、結合親和性又はこれらの両者を変化させることができる。あるいは、機能の変化が望まれる場合には、保存領域(すなわち、同一のアミノ酸配列)の欠失又は非保存的変更を工学的に作り出すことができる。例えば、免疫原性が生じる可能性があることを心に留めた上で、種々の保存ドメインの欠失又は非保存的変更(置換又は挿入)を行うことができる。
【0024】
コード配列に他の修飾を導入して、選択した宿主細胞中での発現、スケールアップ等により適した融合タンパク質を生成することができる。例えば、ジスルフィド架橋を排除するために、システイン残基を欠失させ又は他のアミノ酸と置換することができる。N−結合部位を過度にグリコシル化することが知られている酵母宿主からより容易に回収及び精製することができる、内発性の生産物の発現を達成するために、N−結合グリコシル化部位を変更し又は排除することができる。
【0025】
本発明は、本発明の融合タンパク質と、生理学的に許容できる賦形剤、添加剤、担体又は希釈剤を含む組成物を提供する。適切な生理学的物質は、この分野において一般的に用いられている文献であるRemington's Pharmaceutical Sciences, A. Osolに記載されている。本発明の方法を実施する際、本発明の接合化合物は単独で用いることもできるし、他の治療剤又は添加的な物質と組み合わせて用いることもできる。このような追加的な物質は、着色剤、安定剤、浸透圧調節剤及び殺菌剤を包含する。
【0026】
非経口投与のために、本発明の融合タンパク質を、生理学的に許容できる非経口用賦形剤と共に、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、凍結乾燥粉末に製剤することができる。このような賦形剤の例として、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液及び5%ヒト血清アルブミンを挙げることができる。リポソーム、及び不揮発性油のような非水性賦形剤を用いることもできる。賦形剤又は凍結乾燥粉末は、等張性(例えば塩化ナトリウム、マンニトール)及び化学的安定性(例えば緩衝液及び保存料)を維持する添加剤を含んでいてもよい。製剤は、一般的に用いられる方法により滅菌される。例えば、注射による投与に適した非経口組成物は、1.5重量%の活性成分を0.9%食塩水中に溶解することにより調製することができる。本発明の組成物は、1回又は複数回投与することができる。本発明の組成物は、個々の治療剤としてでも他の治療剤と組み合わせてでも投与することができる。本発明の治療は、別個に、連続的に又は同時に投与される従来の治療剤と組み合わせてもよい。
【0027】
本発明の組成物は、活性薬剤を標的細胞に到達させることが可能ないずれの手段によっても投与することができる。これらの方法は、経口、局所、皮内、皮下、静脈内、筋肉内及び腹腔内投与を包含するがこれらに限定されるものではない。化合物は、単独で又は他の化合物と組み合わせて投与することができる。添加する生理学的に許容可能な物質は、通常、投与経路及び標準的な医薬のプラクティスに基づいて選択される。
【0028】
融合タンパク質は、組換えDNA技術、共有結合を形成することによる化学結合、又は融合タンパク質を生成するためのこの分野における周知の他の方法により調製することができる。所望の融合タンパク質をコードする適当なDNAを提供することにより、この分野において周知の組換え技術を用いて融合タンパク質を生産することが可能になる。コード配列は、天然の供給源、合成又は広範囲な出発物質を用いるルーチンな方法により構築したものから得ることができる。コードDNAを合成する場合には、DNAが発現される、意図する宿主において優先的なコドンを用いることが有利である。
【0029】
本発明の融合タンパク質を製造するために、当業者は、Fcγ断片若しくはその一部をコードするDNA分子とに結合された、Fcε断片若しくはその一部をコードするDNA分子を合成し、又は容易に入手可能なヒトDNAから得ることができ、そのDNA分子を、周知の発現系において用いられる市販の発現ベクターに挿入することができる。これらの系には、目的の融合タンパク質が単鎖として生産されるものが包含される。
【0030】
大腸菌、酵母のサッカロミセス・セレビシアエ菌株又は昆虫細胞中での生産に用いられる完全なバキュロウイルス発現系における生産に用いることができる、プラスミドの多数の例がカリフォルニア州San DiegoのInvitrogen社等から市販されている。また、チャイニーズハムスター卵巣細胞やNS/O細胞のような哺乳動物細胞中での生産のためのベクターが市販されている。
【0031】
当業者は、これらの市販の発現ベクター及び系を使用し、又は周知の方法及び容易に入手可能な出発材料を用いてベクターを製造することができる。プロモーター及びポリアデニレーションシグナル、並びに好ましくはエンハンサーのような、必要な制御配列を含む発現系は、種々の宿主用のものが容易に入手可能であり公知である。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning a Laboratory Manual, Second Ed. Cold Spring Harbor Press (1989)を参照されたい。このように、所望のタンパク質は、原核生物及び真核生物の系において調製することができ、加工されたタンパク質のスペクトルを得ることができる。
【0032】
組換え外来タンパク質を生産するために、広範囲の真核生物宿主が利用可能である。細菌と同様、真核生物宿主も所望のタンパク質を生産する発現系で直接形質転換することができるが、より一般的には、タンパク質の分泌を行なうためのシグナル配列が提供されている。真核生物の系には、高等生物のタンパク質をコードするゲノミック配列中に存在し得るイントロンを処理することができるという、さらなる利点がある。真核生物の系はまた、例えば、グリコシル化、カルボキシ末端のアミド化、あるアミノ酸残基の酸化又は誘導体化、立体構造の制御等をもたらす、広範囲の処理メカニズムをも提供する。
【0033】
一般的に用いられている真核生物の系は、酵母、菌類細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞及び高等植物の細胞を包含するが、これらに限定されるものではない。例えばバキュロウイルスポリヘドロンプロモーターのような、これらの宿主タイプのそれぞれに対して、適合性があり動作可能な適当なプロモーター並びに停止配列及びエンハンサーが利用可能である。上記のように、プロモーターは、恒常的なものでも誘導的なものでもよい。
【0034】
いくつかの具体例においては、ここに記載したアミノ酸配列上方及び遺伝暗号を用いて、本発明の融合タンパク質をコードする塩基配列を包含するDNA分子が合成される。当業者は、所望の宿主細胞によって好まれるコドンを用いて、本発明の融合タンパク質をコードする塩基配列を包含するDNA分子を容易に合成することができる。生成されたDNA分子は、所望の宿主において、時々、過発現と呼ばれる、極めて旺盛な発現を可能にする発現ベクターに挿入することができる。
【0035】
所望の宿主に適した発現系の構築の詳細は当業者に知られている。タンパク質の組換え生産のために、タンパク質をコードするDNAを所望の発現ベクターに適切に連結し、次いでこれを用いて、適合性のある宿主を形質転換し、外来遺伝子の発現が起きる条件下でそれを培養し維持する。このようにして生産された本発明のタンパク質は、次に、当業者に知られたように、適宜細胞を溶解することによって、又は培地から回収される。
【0036】
当業者は、周知の技術を用いて、生産されたタンパク質を単離することができる。
【0037】
治療組成物が、経口用液体、錠剤、カプセル、鼻用スプレー、エアロゾル、懸濁液、溶液、乳濁液及び/又は点眼液の形態で提供できることは当業者にとって明らかである。他の送達方法として、注射、噴霧又は吸入が挙げられる。適切な投与量は、インビトロ又は動物実験において有効性を示す投与量から外挿することができる。投与量は、薬力学的特性;形態及び投与経路;受容者の年齢、健康状態及び体重;徴候の性質及び程度;併用療法の種類;並びに治療の頻度等の要因に依存して変化する。融合タンパク質の投与量は、体重50kg当たり約1〜3000mg;体重50kg当たり約10〜1000mg;又は体重50kg当たり約25〜800mgであり得る。通常、一人当たり8〜800mgを1日1回から数回に分けて投与することが、所望の結果を得るために効果的である。
【0038】
Fc断片の例
ヒトIgEのイプシロン鎖の模式的線図を図1に示す。これは、Bennich (Progress in Immunology II, 1974,1:49-58)のナンバリング体系に対応する。約550個のアミノ酸から成る配列を有する5つのドメイン、すなわち、1個の可変ドメイン及び4つの定常ドメインCH1-CH4がある。
【0039】
(1) Fcε1-Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ
この例では、断片は、IgEのアミノ酸113からアミノ酸547のペプチド領域を含む。Cys-225がCH1領域のCys-139とジスルフィド結合を形成する(図1)。
【0040】
(2) Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ
断片は、IgEのアミノ酸224からアミノ酸547のペプチド領域を含む。Cys-225を例えばAla-225に置換して(Young R.J. et al., Protein Engineering, 1995, 8:193-199)Fcε領域中の他の遊離のスルフヒドリル基とジスルフィド結合を形成することを回避してもよい。
【0041】
(3) Fcε2-Fcε3-Fcγ
断片は、IgEのアミノ酸224からアミノ酸437のペプチド領域を含む。上記の通り、Cys-225は例えばAla-225に置換してもよい。
【0042】
(4) Fcε3-Fcγ
断片は、IgEのアミノ酸328からアミノ酸437のペプチド領域を含む。該断片は、Fcε2からの2つのアミノ酸、すなわち、Cys-328及びVal-329を含む。Cys-328はジスルフィド結合を提供してダイマーを形成する。
【0043】
(5) Fcε3-Fcε4-Fcγ
断片は、およそIgEのアミノ酸328からアミノ酸547のペプチド領域を含む。
【0044】
IgG1遺伝子のヒト免疫グロブリン定常領域の塩基配列(Nucleic Acid Research 10:4071 (1982) Ellison, JW; Berson, BJ and Hood LE)から推定されたアミノ酸配列を図5に示す。融合タンパク質のFcγ部分は、その全配列又は、Fcγ2-Fcγ3断片やFcγ2断片のような、FcγRIIBレセプターに結合するいずれかの断片を含む。
【実施例】
【0045】
融合構築物の調製
FcεcDNA配列は、ヒトIgE発現セルラインであるSE44 (Sun, LK. et al., J Immunol. 1991, 146:199205)から、RT-PCRを用いて単離した全RNAから得た。Fcε断片は、上記した16アミノ酸から成るリンカーを用いてFcγ断片(異なるサブクラス)に結合し、これをpCDNA3.1にクローニングした。融合タンパク質の一過性の発現を行なうために、該プラスミドを293Tセルラインにトランスフェクトした。融合タンパク質をプロテインAクロマトグラフィーにより精製し、異なるアッセイ(下記参照)でその活性を試験した。機能的な構築物を、例えばCHOのような、安定な哺乳動物細胞セルライン中で発現させた。
【0046】
融合構築物の特徴づけ
実施例1 ELISAにおける、Fcε-Fcγ4とFcεRIαとの反応性
Fcε断片 (Fcε2-Fcε3-Fcε4, Fcε2-Fcε3, Fcε3又はFcε3-Fcε4)を有する、4種類の精製したFcε-Fcγ4融合タンパク質の組換えヒトFcεRIαへの結合をELISAにより試験した。炭酸ナトリウムバッファーpH9.6中に、バキュロウイルス発現された精製ヒト可溶性FcεRIα(コロラド州Fort Collins のHeska)を0.2μg/mlの濃度で含む溶液50μLで、Immunlon Iマイクロテストプレート(バージニア州Chantilly のDynatech Laboratories)の各ウェルを一夜被覆した。次いで、ウェル中の非特異結合部位を、PBS中に2% BSAを含む溶液200μLと1時間インキュベートすることにより飽和させた。次にウェルをPBSTバッファー(0.05% Tween20(登録商標)を含むPBS)で洗浄した。BSA中の各融合タンパク質(1nM)の50μLを各ウェルに加え、室温で1時間放置した。ウェルをPBSTで洗浄した。次に、結合した融合タンパク質を、希釈したセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合マウス抗ヒトIgG4(Fc特異的)(ミズリー州St. Louis のSigma)と室温で1時間反応させることにより検出した。次にウェルをPBSTで洗浄した。0.1M酢酸ナトリウムpH6.0中に0.1 % 3,3,5,5, テトラメチルベンチジン (Sigma)及び0.003%過酸化水素 (Sigma)を含むペルオキシダーゼ基質溶液をウェルに加え、30分間発色させた。0.5M H2SO4を50μLずつウェルに加えることにより、反応を停止させた。ELISAリーダー(Dynatech)で、450nmにおける吸光度(OD)を測定した。
【0047】
その結果、Fcε2-Fcε3-Fcε4及びFcε3-Fcε4は、組換えヒト可溶性FcεRIαに強く結合するが、Fcε2-Fcε3及びFcε3は、該タンパク質に弱く結合することが示された(図2)。このことは、Fcε2-Fcε3-Fcε4及びFcε3-Fcε4の両者が、IgEのFcεRIαへの結合に必須的なエピトープを含むことを示している。
【0048】
実施例2 ELISAにおける、Fcε-Fcγによる、ビオチン化IgEのFcεRIαへの結合阻害
前記4種類のFcε-Fcγ融合タンパク質による、ビオチン化IgEの組換えヒト可溶性FcεRIαへの結合に対する競合をELISAにより試験した。炭酸ナトリウムバッファーpH7.4中に、バキュロウイルス発現された精製ヒト可溶性FcεRIα(コロラド州Fort Collins のHeska)を0.2μg/mlの濃度で含む溶液50μLで、Immunlon Iマイクロテストプレート(Dynatech)の各ウェルを一夜被覆した。次いで、ウェル中の非特異結合部位を、PBS中に2% BSAを含む溶液200μLと1時間インキュベートすることにより飽和させた。次にウェルをPBSTバッファー(0.05% Tween20(登録商標)を含むPBS)で洗浄した。増大する量の融合タンパク質を、一定量の予め滴定したビオチン化組換えヒトIgE(1nM)と、0.065, 0.125, 0.25, 0.5, 1, 2及び4のモル比(Fcε-Fcγ:IgE)で混合した。非標識IgEを陽性対照として用いた。50μLの混合物を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。次にウェルをPBSTバッファーで洗浄した。次に、50mlのストレプトアビジン結合HRP(ペンシルバニア州West Grove のJackson ImmunoResearch Lab)を加え、室温で1時間インキュベートすることにより、結合したビオチン化IgEを検出した。次にウェルを洗浄した。次に、発色のために、上記のようにペルオキシダーゼの基質を加えた。ELISAプレートリーダーにより、450nmにおける吸光度を測定した。
【0049】
その結果、用量依存的競合曲線(図3)が同様な傾きを有していることから示されるように、Fcε2-Fcε3-Fcε4及びFcε3-Fcε4は、非標識IgEと同程度に効率的に、ビオチン化IgEのFcεRIαへの結合について競合することが示された。Fcε2-Fcε3及びFcε3は、予想通り、全く競合を示さなかった。なぜなら、これら2つのタンパク質は、図2に示されるように、FcεRIαに弱く結合するからである。
【0050】
実施例3 ELISAにおける、IgEによる、Fcε-FcγのFcεRIαへの結合阻害
実施例2の結果を確認するために、IgEによる、Fcε2-Fcε3-Fcε4及びFcε3-Fcε4のFcεRIαへの結合阻害もELISAにより試験した。炭酸ナトリウムバッファーpH7.4中に、バキュロウイルス発現された精製ヒト可溶性FcεRIα(コロラド州Fort Collins のHeska)を0.2μg/mlの濃度で含む溶液50μLで、Immunlon Iマイクロテストプレート(Dynatech)の各ウェルを一夜被覆した。次いで、ウェル中の非特異結合部位を、PBS中に2% BSAを含む溶液200μLを1時間インキュベートすることにより飽和させた。次にウェルをPBSTバッファー(0.05% Tween20(登録商標)を含むPBS)で洗浄した。増大する量の組換えIgEを、一定量のFcε2-Fcε3-Fcε4又はFcε3-Fcε4(1nM)と、0.125, 0.25, 0.5, 1, 2,4,8及び16のモル比(IgE:Fcε-Fcγ)で混合した。50μLの混合物を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。次にウェルをPBSTバッファーで洗浄した。次に、結合した融合タンパク質を、希釈したセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合マウス抗ヒトIgG4(Fc特異的)( Sigma)と室温で1時間反応させることにより検出した。次にウェルをPBSTで洗浄した。次に、発色のために、上記のようにペルオキシダーゼの基質を加えた。ELISAプレートリーダーにより、450nmにおける吸光度を測定した。
【0051】
その結果、IgEは、Fcε2-Fcε3-Fcε4及びFcε3-Fcε4のFcεRIαへの結合に対して効果的に競合した(図4)。総合すると、図3及び図4のデータは、Fcε2-Fcε3-Fcε4及びFcε3-Fcε4がネイティブIgEのFcεRIα結合性を維持していることを示している。
【0052】
実施例4 ヒト好塩基球との機能的アッセイ
A. ヒト好塩基球の調製
健常人からの静脈血約40mlを、氷冷リン酸緩衝液(PBS)で3倍希釈し、この溶液の35mlを15mlのFicoll Paque上に慎重に積層した。密度勾配遠心後、上層を吸引して、界面に乱されていない単核細胞層を残した。単核細胞層をプールし、EDTA-PBSで洗浄した。トリパンブルー染色で細胞数を測定し、最終体積を106個/μLに調節した。
【0053】
次に、midi-MACSカラム (カリフォルニア州Auburn のMiltenyi Biotec)を用いて好塩基球をさらに精製した。このキットは、ハプテン結合抗CD3, CD7, CD14, CD15, CD16, CD36, CD45A及び抗HLA-DR抗体を含むハプテン−抗体カクテルを提供する。コロイド性超磁性MACSマイクロビーズをモノクローナル抗ハプテン抗体と結合させた。前記カクテルを用いて非好塩基球細胞を間接的に磁気的に標識し、磁気的に標識した細胞を、磁界中のMACSカラム上に保持することにより除去した。
【0054】
次に、精製した好塩基球をフローサイトメトリーにより評価した。評価される試料を、ヒトIgG(1μg/ml 105細胞)でブロックした。以下の個々の標識を用いた。ヤギ抗ヒトIgE-FITC、マウス抗ヒトCD123-PE、マウスIgG1-PE、マウス抗ヒトCD45-PE及びマウス抗HLA-DR-FITC。以下の二重標識を用いた。(1)ヤギ抗ヒトIgE-FITCとヤギ抗CD45-PE、及び(2)マウス抗CD123-PEとマウス抗HLA-DR-FITC。各試料を染色後、FACS分析を行なった。
【0055】
B. 好塩基球のIgE媒介脱顆粒
各融合タンパク質がメディエーターの放出をもたらさないことを確認するために、例えば、Beckman Coulter (カリフォルニア州Fullerton)から得られる標準的な試薬及びプロトコールを用いて、ヒスタミン放出アッセイを行なった。簡単に述べると、細胞を、被検融合タンパク質の存在下又は非存在下でIgEで感作した。本実施例では、HIV-1 gp120 V3領域から誘導されるペプチド領域に特異的な可変領域と、IgEの定常領域から成る組換えIgE(rIgE)を用いた。次に、感作した細胞を、(1)陽性対照である、オバルブミンとHIV-1 gp120 V3ペプチドとの結合物、(2)抗IgE、C5a,F-met混合物又は(3)IgGで攻撃した。放出されたヒスタミン量を測定し、融合タンパク質による好塩基球脱顆粒を測定するために用いた。
【0056】
C. 好塩基球上でのFcεRI発現
好塩基球のFcεRI発現がFACS分析により調べられるであろう。2%熱不活化ウシ胎児血清、40μg/mlのゲンタマイシン及び10 ng/mlのrIL-3を含むイスコベの修飾ダルベッコ培地中で好塩基球を先ず14日間培養する。トリパンブルー染色を用いて、細胞の生存を第7日及び第14日に試験する。
【0057】
14日間培養後、好塩基球の一部である0.5 x 106個を以下の試薬の1つと種々の濃度(10-1000 ng/ml)で混合し、7日間インキュベートする。(1) rlgE 単独、 (2) rlgE + Fcε1-Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ; (3) rIgE + Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ; (4) rlgE + Fcε3-Fcε4-Fcγ; (5) rlgE + Fcε3-Fcγ; (6) rlgE + Fcε2-Fcε3-Fcγ; (7) rIgE + IgG-γ4; (8)rIgEなしの細胞。また、対照として、それぞれの個々のFcε-Fcγ融合タンパク質の存在下で、rIgEの非存在下で細胞を培養した。
【0058】
次に、細胞を遠心し、洗浄し、IgGでブロックして抗体のFcγRへの非特異的結合を低減した。次に各試料を抗FcεRImAb-FITC又はマウスアイソタイプ対照で染色し、FACS分析に供した。IgEにさらされなかった細胞(上記#8)を、培養好塩基球上に存在するレセプターの数の基準として用いた。融合タンパク質の非存在下においてrIgEにさらされた細胞は、最大のFcεRI発現のための陽性対照を与えた(上記#1)。
【0059】
IgEのエピトープとは異なるエピトープに結合する抗FcεRI mAbを用いたFITC染色の濃度の増大により、FcεRIレセプターの数が陰性対照よりも増大することが測定された。低濃度のFITC染色を示す断片が、アレルギー反応の治療のために適した候補である。
【0060】
証拠5 培養ヒトマスト細胞からの、IgE媒介ヒスタミン放出に対するFcε-Fcγ融合タンパク質の阻害効果
A. マスト細胞培養
10%ウシ胎児アルブミン(ミズリー州St. LouisのSigma-Aldrich)、2 mM L-グルタミン、50 mM 2-メルカプトエタノール、100U/mlペニシリン、100 mg/mlストレプトマイシン、10 mg/mlゲンタマイシン(GIBCO/BRL)、100 ng/ml幹細胞因子、50 ng/ml IL-6及び5 ng/ml IL-10(ミネソタ州Minneapolis のR&D Systems Inc.)を添加したRPMI 1640 (メリーランド州Rockville のGIBCO-BRL)から成る培地中で、凍結保存したヒト臍帯血CD34+細胞を8週間培養した。前記サイトカイン添加培地は毎週交換し、非接着性細胞を新たな培養フラスコに移すことにより細胞の接着画分を捨てた。第3週に、CD14及びCD15特異的モノクローナル抗体(M-450 CD14, M-450 CD15)で被覆されたビーズを、製造者(ニューヨーク州Lake Success のDynal)のプロトコールにしたがって用いてCD14及びCD15陽性細胞を枯渇させた。培養細胞の一部を取り、トリプターゼの発現を8週間に亘って毎週監視した。
【0061】
B. 免疫細胞化学
毎週、培養細胞の一部3〜4 x 104個を、細胞遠心機中のスライドガラス上に遠心した。スライド上の細胞を風乾し、カルノア液(60%エタノール、30%クロロホルム及び10%氷酢酸)中で室温で10分間固定した。スライドをPBSで洗浄した後、スライドをブロッキングバッファー(PBS中3% BSA, 1.5%正常ウマ血清, 0.2% Triton X-100, 0.02% NaN3)で室温で30分間ブロッキングした。ブロッキング後、スライドをマウス抗ヒトトリプターゼMAb(アルカリホスファターゼ結合、カリフォルニア州Temecula のChemicon)で37℃で1時間インキュベートした。3% BSA, 0.2% Triton X-100, 0.02% NaN3を含むPBSバッファーで抗体を1:300希釈した。スライドをPBS(0.2% Triton X-100含有)で洗浄し、アリカリホスファターゼ基質キット(カリフォルニア州BurlingameのVector Lab Inc.)を用いて免疫細胞化学操作を行なった。強い免疫反応を示す細胞を計数し、計数した全細胞の百分率で表示した。
【0062】
C. フローサイトメトリー
第7週に細胞をPBSで1回洗浄し、次に1% BSA及び1%ヒトγグロブリン(PBSBH)を添加した冷PBS中で4℃、30分間予備インキュベートした。次に細胞を、以下のエピトープに対して特異的な、PE/FITC-結合マウス抗ヒトMAb(MAbはBD PharMingenから購入した)と共にインキュベートした。c-kit(幹細胞因子に対するレセプター)、CD13(アミノペプチダーゼNのマーカー)、CD14(単球のマーカー)、CD16(好中球マーカー)及びCD61(インテグリンファミリーのβ3サブユニット)。細胞をMAbと共に4℃、30分間インキュベートし、次に、冷PBSBHで3回洗浄した。染色された細胞を1%パラホルムアルデヒド(4℃)中で一夜固定し、フローサイトメーター(EPICS XL-MCL,フロリダ州MiamiのBeckman-Coulter)を用いて分析した。フローサイトメトリー分析により、細胞はc-kitに対して強度に陽性(>90%)であり、CD13に対して中程度に陽性であり(>60%)、CD14及びCD16に対して陰性であり、CD61に対して僅かに陽性(>50%)であった。
【0063】
D. ヒトマスト細胞からのIgE媒介ヒスタミン放出
Beckman Coulter (カリフォルニア州Fullerton)から得られる標準的な試薬及びプロトコールを用いて、ヒスタミン放出アッセイを行なった。簡単に述べると、マスト細胞(1.5 x 105)を、種々の濃度のFcε-Fcγタンパク質の存在下又は非存在下で、組換えIgE(0.1, 1又は10μg/ml)で、37℃で1時間感作した。組換えIgEは、HIV-1 gp120 V3領域から誘導されるペプチド部分(15mer)に特異的な可変領域とヒトIgEの定常領域とから成る。洗浄後、マルチプルHIV-1 V3ペプチドに結合したオバルブミンであるOva/V3 (100 ng/ml)で細胞を37℃、2時間攻撃した。細胞上清を回収し、ヒスタミン免疫測定キット(イリノイ州PalatineのBeckman-Coulter)を用いて製造者のプロトコールに従ってヒスタミン含量を測定した。免疫測定は、測定すべきヒスタミンと、ヒスタミン−アルカリホスファターゼ結合物との間の競合に基づくものであった。簡単に述べると、細胞上清中に存在するヒスタミンを、微アルカリ性pHにおいて、アシル化剤でアシル化し、抗体で被覆したマイクロタイターウェルに添加した。マイクロタイターウェルは、試料中の前記結合物とアシル化ヒスタミンとの間の競合が起きるように限定された数の抗体で被覆された。4℃で2時間インキュベートした後、ウェルを濯いで未結合成分を除去した。発色基質(pNPP)添加することにより、結合した酵素活性を測定した。発色強度は、試料中のヒスタミン濃度に反比例していた。放出されたヒスタミンは、キットに含まれる標準を用いた標準曲線に基づいて算出した。試験に含まれた対照群は、未処理細胞、イオノフォアA23187 (2 μM)で処理した細胞、IgEのみで処理した細胞又はOva/V3のみで処理した細胞であった。
【0064】
上記の記述、用語、表現及び例は、例示のためだけのものであり、限定的なものではない。本発明は、公知のものも公知でないものも、上記の具体例の全ての均等物を包含する。本発明は、以下の請求の範囲によってのみ限定されるものであり、この書類の他のいずれの部分又は他のいずれのソースにおけるいずれの記述によっても限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、ヒトIgEのイプシロンH鎖の模式的線図である。アミノ酸の値は、Bennichによるナンバリング体系(下記参照)に対応する。
【図2】図2は、ELISAにおける、Fcε-Fcγと組換えヒト可溶性FcεRIαとの反応性を示す。
【図3】図3は、ELISAにおける、Fcε-Fcγによるビオチン化IgEのFcεRIαへの結合阻害を示す。
【図4】図4は、ELISAにおける、IgEによるFcε-FcγのFcεRIαへの結合阻害を示す。
【図5】図5は、Fcγのアミノ酸配列を示す。
【0001】
本発明は、IgE Fcε断片(天然及び機能的誘導体)並びにIgG Fcγ断片を含む融合タンパク質構築物に関する。該構築物は、高親和性レセプター(FcεRI)又は低親和性レセプター(FcεRII) 、及びFcεRIIBのようなFcγレセプターに結合することができ、それによって細胞表面上のFcεRIの発現を低減させ、これらのレセプターに対するIgEの結合をブロッキングするものである。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、細菌、ウイルス、寄生虫及び腫瘍細胞に関連した抗原と反応することにより、感染物及び腫瘍に対する防御を提供するものである。しかしながら、免疫応答が全て有益であるわけではない。
【0003】
アレルギー反応は、本来無害な食品、薬剤及び花粉等に対する免疫応答により引き起こされるものであり、喘息、アレルギー性鼻炎並びに食品及び薬剤アレルギーを引き起こし得る。これらのアレルギー性疾患は、通常、遅延型又は細胞媒介型過敏症ではなく、即時型過敏症としても知られる、IgE-媒介過敏症反応を伴う。これらの疾患は、工業国の人口の10〜40%もの人々が罹患している (Janeway, CA., et al., Immunology: the immune system in health and disease, Ed. 4, Elsevier Science Ltd., London; 1999)。喘息だけでも米国で1500万人を超える人が罹患しており、年間5000人を超える人が死亡している。10%を超える子供が、子供時代のある時点でアレルギー性皮膚炎を患っている(Leung, D., Mol. Gen. and Metab. 63:157-167 (1998)。アレルギー性疾患の罹患率は、この20年で急激に上昇した。
【0004】
アレルギー性疾患は、常にというわけではないが、しばしば高濃度の循環性IgEを伴う。IgE-媒介アレルギー反応において、IgEはFcεRIに結合し、もしレセプター−結合IgEがアレルゲンと相互作用すると、それによって、マスト細胞や好塩基球のようなエフェクター細胞上に結合されたIgE抗体の架橋が引き起こされる。その結果、その下にあるレセプターが凝集し、即時的な脱顆粒並びにヒスタミン及びトリプターゼの放出を引き起こす、細胞内信号伝達カスケードが開始され、次いでプロスタグランジン、ロイコトリエン、並びにIL-3, -4, -5, -6, -10及び-13, TNFα並びにGM-CSFのようなサイトカイン並びにアレルギー反応の他のメディエーターの合成及び放出が起きる。これらのメディエーターはアレルギー反応の病理的徴候を発現させる。
【0005】
IgEの主なレセプターは2つある。高親和性レセプターFcεRI及び低親和性レセプターFcεRIIである。FcεRIは、細胞表面上で、三量体αγ2(1本のα鎖及び2本のγ鎖)又は四量体αβγ2(1本のα鎖、1本のβ鎖及び2本のγ鎖)構造のいずれをも形成する(Kinet, JP., Annu. Rev. Immunol. 1999, 17:931-972)。α鎖の細胞外領域は、このレセプターに、高い親和性(Kd = 10-9-10-10M)でIgEと結合する能力を与える。該レセプターは主としてマスト細胞及び好塩基球の表面上に発現されるが、ヒトランゲルハンス細胞、樹状細胞及び単球においても、これらがIgE-媒介アレルゲン提示において機能する場合には、これらの上にもまた低濃度のFcεRIが見られる。さらに、FcεRIは、ヒト好酸球及び血小板上に存在することが報告されている(Hasegawa, S. et. al., Hematopoiesis, 1999, 93:2543-2551)。FcεRIは、B細胞、T細胞及び好中球の表面上には見られない。ランゲルハンス細胞及び皮膚樹状細胞上のFcεRIの発現は、アレルギーのヒトにおけるIgE-結合抗原の提示にとって機能的及び生物学的に重要である(Klubal R. et al., J. Invest. Dermatol. 1997, 108 (3):336-42)。
【0006】
低親和性レセプターであるFcεRII(CD23)は、細胞性原形質膜からのα−ヘリックスコイル状の茎から伸びる頭部構造を有する、同一の3個のサブユニットを含む、レクチン様分子である(Dierks, A. E. et al., J. Immunol. 1993,150:2372-2382)。IgEのCH3ドメインは、FcεRIIの3つの頭部構造のうちの2つと同時に低い親和性(Kd=6.3x10-7M)で結合することができる。このIgE結合部位は、CH3領域中に位置するが、FcεRI結合部位とは重複しない。IgEに結合すると、FcεRIIは、IgEの合成の調節に関与する、B細胞上のCD21と会合する(Sanon, A. et al., J. Allergy Clin. Immunol. 1990, 86:333-344, Bonnefoy, J. et al., Eur. Resp. J. 1996, 9:63s66s)。FcεRIIはアレルゲン提示の故に古くから認められている(SuttonとGould,1993, Nature, 366:421-428)。上皮細胞上のFcεRIIに結合したIgEは、特異的かつ迅速なアレルゲン提示を司る(Yang, P.P., J. Clin. Invest., 2000, 106:879-886)。FcεRIIは、B細胞、好酸球、血小板、ナチュラルキラー細胞、T細胞、小胞性樹状細胞及びランゲルハンス細胞を包含する、いくつかの型の細胞上に存在する。
【0007】
FcεRI及びFcεRIIと相互作用するIgE分子の構造も既に同定されている。突然変異試験により、CH3領域が、FcεRI(Presta et al., J. Biol. Chem. 1994, 269:26368-26373; Henry A.J. et al., Biochemistry, 1997, 36:15568-15578)及びFcεRII(Sutton and Gould, Nature, 1993, 366: 421-428; Shi, J. et al., Biochemistry, 1997, 36:2112-2122)の両者とのIgE相互作用を媒介することが示されている。高及び低親和性レセプターの両者に対する結合部位が、2つのCH3ドメインを介する中心回転軸に沿って対称的に位置している。FcεRI-結合部位は、CH2ドメインとの分岐点近傍の外側のCH3ドメイン中に位置し、一方、FcεRII-結合部位は、CH3のカルボキシル末端上に位置する。
【0008】
ヒト好塩基球密度についての初期の研究により、患者の血漿中のIgE濃度と、好塩基球あたりのFcεRIレセプターの数との間に相関関係があることが示された(Malveaux et al., J. Clin. Invest., 1978, 62:176)。彼らは、アレルギーのヒトとアレルギーではないヒト中のFcεRIの密度が、好塩基球当たり104ないし106個であることに気付いた。後になって、抗IgEでアレルギー性疾患を治療すると、循環IgEの濃度を治療前の1%に減少させることができることが示された(MacGlashan et al., J. Immunol., 1997, 158:1438-1445)。MacGlashanは、患者血清中に循環する遊離のIgEに結合する、全抗IgE抗体で治療した患者から得られた血清を分析した。彼らは、患者内の循環IgEの濃度を下げると、好塩基球の表面上に存在するレセプターの数が減少することを報告した。このように、彼らは、好塩基球及びマスト細胞の表面上のFcεRI密度が、循環IgE抗体の濃度によって、直接的又は間接的に調節されるとという仮説を立てた。
【0009】
より最近、WO 99/62550は、FcεRI及びFcεRIIのIgE結合部位に結合するIgE分子及びその断片を用いて、IgEのレセプターへの結合をブロックすることを開示した。しかしながら、これらのアレルギー疾患を治療するための、有害な副作用のない有効な治療法は限られている。アレルギー性疾患を治療する1つの治療手法は、ヒト化抗IgE抗体を用いてアレルギー性鼻炎及び喘息を治療することを包含する(Corne, J. et al., J. Clin. invest 1997, 99:879-887; Racine-Poon, A. et al., Clin. Pharmcol. Ther. 1997, 62:675-690; Fahy, J.V. et al., Am. J. Resp. Crit. Care Med. 1997, 155:1824-1834; Boulet, L. P. et al., Am. J. Resp. Crit. Care Med., 1997, 155:1835-1840; Milgrom, E. et al., N. Engl. J. Med., 1999, 341:1966-1973)。これらの臨床データは、IgEのレセプターへの結合を阻害することは、アレルギー性疾患治療の有効な手法であることを示している。
【0010】
有利なことに、Fcε-Fcγ融合タンパク質は、マスト細胞及び好塩基球上のFcεRI(Fcεを介して)及びFcγRIIB(Fcγを介して)を架橋することができる。このレセプター架橋は、これらの細胞の脱顆粒を阻害するであろう。この阻害は、FcγRIIB細胞質テール中の免疫レセプターのチロシン系阻害モチーフ(ITIMs)のチロシンのリン酸化を包含し、抗原レセプターFcεRIからの信号の活性化に対立し、細胞質テール内に免疫レセプターチロシン系活性化モチーフ(ITAM)を担持するSH2-含有タンパク質ホスファターゼ(タンパク質チロシンホスファターゼ1及び2(SHP-1, SHP-2)を含む Src相同ドメイン)及び/又はリピッドホスファターゼ(ポリホスファチジル−イノシトール5-ホスファターゼを含むSH2ドメイン)への結合部位を創製する。Fcε-Fcγ融合タンパク質はまた、B細胞、ランゲルハンス細胞、樹状細胞及び単球上のFcεRIIにも結合することができ、それによって、FcεRI及び/又はFcεRIIを介する、これらの細胞へのアレルゲン(IgEと複合した)の提示をブロックする。これにより、B細胞からのIgEの生産及びアレルゲン特異的T細胞の生成を包含する、アレルゲンに対する免疫応答が低減されるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、IgE生産を減少させ、マスト細胞及び好塩基球の脱顆粒を減少させ、マスト細胞及び好塩基球上のFcεRIレセプターの発現を減少させることによりIgE-媒介アレルギー性疾患の治療を提供する。本発明はまた、FcεRIを介するランゲルハンス細胞及び樹状細胞へのアレルゲンの提示及びFcεRIIを介するB細胞へのアレルゲンの提示を妨げることにより、アレルゲンに対する免疫応答を低減させる手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、例えば、Fcε1-ヒンジ-Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ; ヒンジ−Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ;Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ;Fcε2-Fcε3-Fcγ;Fcε3-Fcγ;及びFcε3-Fcε4-FcγのようなIgE Fcε断片及びIgG Fcγ断片、又はFcεRI若しくはFcεRII及びFcγRIIBレセプターに結合することができる、均等な免疫学的機能を有するあらゆる修飾断片若しくはペプチドを含む、融合タンパク質を包含する。Fcγ断片は、いずれのIgGサブクラス(IgG1, IgG2, IgG3又はIgG4)からの断片であってもよく、Fcγ1-Fcγ2-Fcγ3又はFcγRIIBレセプターに結合することができる、より小さなあらゆる断片を包含し得る。Fcγ断片は、そのC末端又はN末端を介してFcε断片に結合することができる。Fcε断片とFcγ断片は、互いに直接結合することもできるし、リンカーを介して結合することもできる。
【0013】
前記融合タンパク質は、好塩基球及びマスト細胞上のFcεRI及びB細胞上のFcεRIIに結合することができ、それによって、これらのレセプターへのIgEの結合がブロックされ、好塩基球、マスト細胞及びB細胞の表面上におけるこれらのレセプターの発現を減少させる。前記融合タンパク質は、マスト細胞及び好塩基球上のFcεRI及びFcγRIIBを架橋することができ、それによってこれらの細胞の脱顆粒を低減させる。融合タンパク質のFcε断片上にはアレルゲン結合領域が存在しないので、マスト細胞又は好塩基球の表面上のアレルゲン分子により該断片が架橋されることはあり得ない。したがって、レセプターの凝集が起きず、アレルギー反応の原因となるメディエーターの放出を引き起こす細胞内信号伝達カスケードが開始されない。さらに、Fcε断片のFcεRIレセプターへの結合により、IgEの結合が妨害され、それによってアレルゲン特異的免疫応答が排除される。
【0014】
本発明はまた、例えば、賦形剤、希釈剤又は担体を含む組成物中に前記融合タンパク質を含む、アレルギー性疾患を罹患した患者に投与するために適した組成物をも包含する。この治療はまた、抗IgE治療又はアレルゲン免疫治療と組み合わせてもよい。
【0015】
本発明は、前記融合タンパク質をコードする核酸配列及びベクター、並びにこれらの配列でトランスフェクトされた宿主細胞を包含する。これらの哺乳動物配列は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウマ及びヒトを包含する。
【0016】
本発明は、Fcε断片とFcγ断片とを含む融合タンパク質の有効量を、哺乳動物個体に投与することを含む、感受性哺乳動物個体におけるIgE-媒介アレルギー反応を緩和又は防止する方法を包含する。アレルギー反応は、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、枯草熱、ピーナッツやツリーナッツアレルギーのような食品アレルギー、アトピー性皮膚炎又は薬剤アレルギーを伴い得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、Fcε1-ヒンジ-Fcε2-Fcε3-Fcε4;ヒンジ−Fcε2-Fcε3-Fcε4;Fcε2-Fcε3-Fcε4;Fcε2-Fcε3;Fcε3;及びFcε3-Fcε4のような、IgE Fcε断片が、IgG1, IgG2, IgG3又はIgG4のあらゆるサブタイプ、好ましくはIgG1又はIgG3の、Fcγ2-Fcγ3又はFcγ2のようなIgG Fcγ断片と結合した融合タンパク質を包含する。これらの融合タンパク質は、FcεRI及び/又はFcεRIIレセプターに結合することができ、したがって、FcεRI及びFcεRII、並びにFcγレセプター、特にFcγRIIBレセプターへのIgEの結合をブロックする。融合タンパク質は、免疫グロブリンのFc領域のみを含み、免疫グロブリンの抗原結合部分を含まないので、アレルゲンとの接触は、マスト細胞又は好塩基球の架橋及び脱顆粒を引き起こし得ない。
【0018】
Fcε断片は、この分野において周知の種々のリンカーを介してFcγ断片に結合させることができる。適切なリンカーの一例は、(GGS)2が(GGGGS)2に結合した、16アミノ酸から成る非免疫原性リンカーである(Argos, P., 1990, J. Mol. Biol. 211:943; Huston, J.S. et al. 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879)。リンカーは、融合タンパク質を投与される哺乳動物個体に対して非免疫原性であるように設計されるべきである。
【0019】
抗IgEモノクローナル抗体で患者を治療し、循環IgEの量が有意に減少すると、それに応じてFcεRIレセプターの数も減少することが示されている(Chang, "The pharmacological basis of anti-IgE therapy", Nat Biotechnol. 2000 Feb;18(2):15762.)。本発明の融合タンパク質がFcεRIレセプターに結合することにより、FcεRI発現が低減され、それによって将来のアレルギー反応の程度が弱められ又は防止される。なぜなら、より少ないレセプターが存在するであろうからである。この低減により、また、樹状細胞のようなプロフェッショナル抗原提示細胞によるアレルゲンの提示も低減される。
【0020】
Fcγ断片のサブクラスがIgG1又はIgG3である場合には、本発明の融合タンパク質は、細胞質性ITAMモチーフを担持するFcεRIと、マスト細胞及び好塩基球上の細胞質性ITIMモチーフを担持するFcγRIIBとを架橋することができ、それによってこれらの細胞の脱顆粒を防止することができる。あるいは、Fcγは、IgG2又はIgG4サブクラスのものであってもよい。用いるFcγサブクラスに関わらず、融合構築物は、Fcε断片単独よりも、はるかに長い宿主体内における生物学的半減期を有するであろう。このことは、アレルギーや喘息のような慢性疾患の治療にとって有利である。
【0021】
さらに、融合タンパク質は、Fcε2-Fcε3-Fcε4を含み、FcεRI及びFcεRIIレセプターに結合できるものであってもよい。Fcε断片はまた、IgE-Fcε2-Fcε3-Fcε4又はその機能的断片のヒンジ部を含んでいてもよい。本発明の融合タンパク質は、ネイティブIgEの結合親和性の少なくとも75%の結合親和性、85%の結合親和性、95%の結合親和性又はネイティブIgEの結合親和性よりも大きな結合親和性でFcεRI及び/又はFcεRIIレセプターに結合する。
【0022】
Fcε及びFcγ断片は、天然又は合成の断片、並びに配列は異なるが前記融合タンパク質と均等な免疫学的機能を有するタンパク質を包含する。このような免疫学的に均等なタンパク質は、FcεRI及びFcεRIIの両者、並びにFcγRIIBに結合する能力を有するものである。免疫学的に均等なタンパク質は、公知の多数の技術のいずれによっても製造することができる。例えば、タンパク質コンビネーショナルライブラリーから出発し、結合タンパク質を単離し、FcεRI、FcεRII及びFcγRIIBへの結合親和性を最適化することや、Fcε及びFcγ断片を含む融合タンパク質に対して選択的変更を加える等である。抗体断片のアミノ酸配列を変更する方法はこの分野において周知である。抗体遺伝子にインビトロにおいてランダムな変異を導入するために一般的に用いられている1つの方法は、間違いを起こしがちなポリメラーゼ及び親和性選択を用いることを包含する(Hawkins, R. et al., J. Mol. Biol., 1992, 226:889-896)。機能的に均等な融合タンパク質は、融合タンパク質ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列内でのアミノ酸残基の追加、置換、欠失及び修飾であって、サイレントな変更を生じるもの、したがって、機能的に均等な遺伝子産物を生成するものを包含するがこれらに限定されるものではない。アミノ酸の置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/又は両親媒性における類似性に基づいて行うことができる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンを包含する。極性のある中性アミノ酸は、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンを包含する。陽性に帯電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジン及びヒスチジンを包含する。陰性に帯電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を包含する。
【0023】
融合タンパク質をコードするDNAにランダム変異を導入し(当業者に周知なランダム変異法を用いて)、得られた変異体の活性を調べることもできるが、コード配列の部位特異的変異を工学的に作り出し(当業者に周知の部位特異的変異法を用いて)、それによって例えばより高いレセプター結合親和性等の高められた機能、減少された機能及び/又は増大された生理学的半減期を有する変異融合タンパク質を生成することもできる。このような分析の1つの出発点は、例えば、異なる種間で保存されているアミノ酸配列モチーフを同定するために、Fcε断片又はFcγ断片の配列を他の哺乳動物からの対応する遺伝子/タンパク質配列と整列させることである。異なる位置に、非保存的変異を工学的に作り出して機能、結合親和性又はこれらの両者を変化させることができる。あるいは、機能の変化が望まれる場合には、保存領域(すなわち、同一のアミノ酸配列)の欠失又は非保存的変更を工学的に作り出すことができる。例えば、免疫原性が生じる可能性があることを心に留めた上で、種々の保存ドメインの欠失又は非保存的変更(置換又は挿入)を行うことができる。
【0024】
コード配列に他の修飾を導入して、選択した宿主細胞中での発現、スケールアップ等により適した融合タンパク質を生成することができる。例えば、ジスルフィド架橋を排除するために、システイン残基を欠失させ又は他のアミノ酸と置換することができる。N−結合部位を過度にグリコシル化することが知られている酵母宿主からより容易に回収及び精製することができる、内発性の生産物の発現を達成するために、N−結合グリコシル化部位を変更し又は排除することができる。
【0025】
本発明は、本発明の融合タンパク質と、生理学的に許容できる賦形剤、添加剤、担体又は希釈剤を含む組成物を提供する。適切な生理学的物質は、この分野において一般的に用いられている文献であるRemington's Pharmaceutical Sciences, A. Osolに記載されている。本発明の方法を実施する際、本発明の接合化合物は単独で用いることもできるし、他の治療剤又は添加的な物質と組み合わせて用いることもできる。このような追加的な物質は、着色剤、安定剤、浸透圧調節剤及び殺菌剤を包含する。
【0026】
非経口投与のために、本発明の融合タンパク質を、生理学的に許容できる非経口用賦形剤と共に、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、凍結乾燥粉末に製剤することができる。このような賦形剤の例として、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液及び5%ヒト血清アルブミンを挙げることができる。リポソーム、及び不揮発性油のような非水性賦形剤を用いることもできる。賦形剤又は凍結乾燥粉末は、等張性(例えば塩化ナトリウム、マンニトール)及び化学的安定性(例えば緩衝液及び保存料)を維持する添加剤を含んでいてもよい。製剤は、一般的に用いられる方法により滅菌される。例えば、注射による投与に適した非経口組成物は、1.5重量%の活性成分を0.9%食塩水中に溶解することにより調製することができる。本発明の組成物は、1回又は複数回投与することができる。本発明の組成物は、個々の治療剤としてでも他の治療剤と組み合わせてでも投与することができる。本発明の治療は、別個に、連続的に又は同時に投与される従来の治療剤と組み合わせてもよい。
【0027】
本発明の組成物は、活性薬剤を標的細胞に到達させることが可能ないずれの手段によっても投与することができる。これらの方法は、経口、局所、皮内、皮下、静脈内、筋肉内及び腹腔内投与を包含するがこれらに限定されるものではない。化合物は、単独で又は他の化合物と組み合わせて投与することができる。添加する生理学的に許容可能な物質は、通常、投与経路及び標準的な医薬のプラクティスに基づいて選択される。
【0028】
融合タンパク質は、組換えDNA技術、共有結合を形成することによる化学結合、又は融合タンパク質を生成するためのこの分野における周知の他の方法により調製することができる。所望の融合タンパク質をコードする適当なDNAを提供することにより、この分野において周知の組換え技術を用いて融合タンパク質を生産することが可能になる。コード配列は、天然の供給源、合成又は広範囲な出発物質を用いるルーチンな方法により構築したものから得ることができる。コードDNAを合成する場合には、DNAが発現される、意図する宿主において優先的なコドンを用いることが有利である。
【0029】
本発明の融合タンパク質を製造するために、当業者は、Fcγ断片若しくはその一部をコードするDNA分子とに結合された、Fcε断片若しくはその一部をコードするDNA分子を合成し、又は容易に入手可能なヒトDNAから得ることができ、そのDNA分子を、周知の発現系において用いられる市販の発現ベクターに挿入することができる。これらの系には、目的の融合タンパク質が単鎖として生産されるものが包含される。
【0030】
大腸菌、酵母のサッカロミセス・セレビシアエ菌株又は昆虫細胞中での生産に用いられる完全なバキュロウイルス発現系における生産に用いることができる、プラスミドの多数の例がカリフォルニア州San DiegoのInvitrogen社等から市販されている。また、チャイニーズハムスター卵巣細胞やNS/O細胞のような哺乳動物細胞中での生産のためのベクターが市販されている。
【0031】
当業者は、これらの市販の発現ベクター及び系を使用し、又は周知の方法及び容易に入手可能な出発材料を用いてベクターを製造することができる。プロモーター及びポリアデニレーションシグナル、並びに好ましくはエンハンサーのような、必要な制御配列を含む発現系は、種々の宿主用のものが容易に入手可能であり公知である。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning a Laboratory Manual, Second Ed. Cold Spring Harbor Press (1989)を参照されたい。このように、所望のタンパク質は、原核生物及び真核生物の系において調製することができ、加工されたタンパク質のスペクトルを得ることができる。
【0032】
組換え外来タンパク質を生産するために、広範囲の真核生物宿主が利用可能である。細菌と同様、真核生物宿主も所望のタンパク質を生産する発現系で直接形質転換することができるが、より一般的には、タンパク質の分泌を行なうためのシグナル配列が提供されている。真核生物の系には、高等生物のタンパク質をコードするゲノミック配列中に存在し得るイントロンを処理することができるという、さらなる利点がある。真核生物の系はまた、例えば、グリコシル化、カルボキシ末端のアミド化、あるアミノ酸残基の酸化又は誘導体化、立体構造の制御等をもたらす、広範囲の処理メカニズムをも提供する。
【0033】
一般的に用いられている真核生物の系は、酵母、菌類細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞及び高等植物の細胞を包含するが、これらに限定されるものではない。例えばバキュロウイルスポリヘドロンプロモーターのような、これらの宿主タイプのそれぞれに対して、適合性があり動作可能な適当なプロモーター並びに停止配列及びエンハンサーが利用可能である。上記のように、プロモーターは、恒常的なものでも誘導的なものでもよい。
【0034】
いくつかの具体例においては、ここに記載したアミノ酸配列上方及び遺伝暗号を用いて、本発明の融合タンパク質をコードする塩基配列を包含するDNA分子が合成される。当業者は、所望の宿主細胞によって好まれるコドンを用いて、本発明の融合タンパク質をコードする塩基配列を包含するDNA分子を容易に合成することができる。生成されたDNA分子は、所望の宿主において、時々、過発現と呼ばれる、極めて旺盛な発現を可能にする発現ベクターに挿入することができる。
【0035】
所望の宿主に適した発現系の構築の詳細は当業者に知られている。タンパク質の組換え生産のために、タンパク質をコードするDNAを所望の発現ベクターに適切に連結し、次いでこれを用いて、適合性のある宿主を形質転換し、外来遺伝子の発現が起きる条件下でそれを培養し維持する。このようにして生産された本発明のタンパク質は、次に、当業者に知られたように、適宜細胞を溶解することによって、又は培地から回収される。
【0036】
当業者は、周知の技術を用いて、生産されたタンパク質を単離することができる。
【0037】
治療組成物が、経口用液体、錠剤、カプセル、鼻用スプレー、エアロゾル、懸濁液、溶液、乳濁液及び/又は点眼液の形態で提供できることは当業者にとって明らかである。他の送達方法として、注射、噴霧又は吸入が挙げられる。適切な投与量は、インビトロ又は動物実験において有効性を示す投与量から外挿することができる。投与量は、薬力学的特性;形態及び投与経路;受容者の年齢、健康状態及び体重;徴候の性質及び程度;併用療法の種類;並びに治療の頻度等の要因に依存して変化する。融合タンパク質の投与量は、体重50kg当たり約1〜3000mg;体重50kg当たり約10〜1000mg;又は体重50kg当たり約25〜800mgであり得る。通常、一人当たり8〜800mgを1日1回から数回に分けて投与することが、所望の結果を得るために効果的である。
【0038】
Fc断片の例
ヒトIgEのイプシロン鎖の模式的線図を図1に示す。これは、Bennich (Progress in Immunology II, 1974,1:49-58)のナンバリング体系に対応する。約550個のアミノ酸から成る配列を有する5つのドメイン、すなわち、1個の可変ドメイン及び4つの定常ドメインCH1-CH4がある。
【0039】
(1) Fcε1-Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ
この例では、断片は、IgEのアミノ酸113からアミノ酸547のペプチド領域を含む。Cys-225がCH1領域のCys-139とジスルフィド結合を形成する(図1)。
【0040】
(2) Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ
断片は、IgEのアミノ酸224からアミノ酸547のペプチド領域を含む。Cys-225を例えばAla-225に置換して(Young R.J. et al., Protein Engineering, 1995, 8:193-199)Fcε領域中の他の遊離のスルフヒドリル基とジスルフィド結合を形成することを回避してもよい。
【0041】
(3) Fcε2-Fcε3-Fcγ
断片は、IgEのアミノ酸224からアミノ酸437のペプチド領域を含む。上記の通り、Cys-225は例えばAla-225に置換してもよい。
【0042】
(4) Fcε3-Fcγ
断片は、IgEのアミノ酸328からアミノ酸437のペプチド領域を含む。該断片は、Fcε2からの2つのアミノ酸、すなわち、Cys-328及びVal-329を含む。Cys-328はジスルフィド結合を提供してダイマーを形成する。
【0043】
(5) Fcε3-Fcε4-Fcγ
断片は、およそIgEのアミノ酸328からアミノ酸547のペプチド領域を含む。
【0044】
IgG1遺伝子のヒト免疫グロブリン定常領域の塩基配列(Nucleic Acid Research 10:4071 (1982) Ellison, JW; Berson, BJ and Hood LE)から推定されたアミノ酸配列を図5に示す。融合タンパク質のFcγ部分は、その全配列又は、Fcγ2-Fcγ3断片やFcγ2断片のような、FcγRIIBレセプターに結合するいずれかの断片を含む。
【実施例】
【0045】
融合構築物の調製
FcεcDNA配列は、ヒトIgE発現セルラインであるSE44 (Sun, LK. et al., J Immunol. 1991, 146:199205)から、RT-PCRを用いて単離した全RNAから得た。Fcε断片は、上記した16アミノ酸から成るリンカーを用いてFcγ断片(異なるサブクラス)に結合し、これをpCDNA3.1にクローニングした。融合タンパク質の一過性の発現を行なうために、該プラスミドを293Tセルラインにトランスフェクトした。融合タンパク質をプロテインAクロマトグラフィーにより精製し、異なるアッセイ(下記参照)でその活性を試験した。機能的な構築物を、例えばCHOのような、安定な哺乳動物細胞セルライン中で発現させた。
【0046】
融合構築物の特徴づけ
実施例1 ELISAにおける、Fcε-Fcγ4とFcεRIαとの反応性
Fcε断片 (Fcε2-Fcε3-Fcε4, Fcε2-Fcε3, Fcε3又はFcε3-Fcε4)を有する、4種類の精製したFcε-Fcγ4融合タンパク質の組換えヒトFcεRIαへの結合をELISAにより試験した。炭酸ナトリウムバッファーpH9.6中に、バキュロウイルス発現された精製ヒト可溶性FcεRIα(コロラド州Fort Collins のHeska)を0.2μg/mlの濃度で含む溶液50μLで、Immunlon Iマイクロテストプレート(バージニア州Chantilly のDynatech Laboratories)の各ウェルを一夜被覆した。次いで、ウェル中の非特異結合部位を、PBS中に2% BSAを含む溶液200μLと1時間インキュベートすることにより飽和させた。次にウェルをPBSTバッファー(0.05% Tween20(登録商標)を含むPBS)で洗浄した。BSA中の各融合タンパク質(1nM)の50μLを各ウェルに加え、室温で1時間放置した。ウェルをPBSTで洗浄した。次に、結合した融合タンパク質を、希釈したセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合マウス抗ヒトIgG4(Fc特異的)(ミズリー州St. Louis のSigma)と室温で1時間反応させることにより検出した。次にウェルをPBSTで洗浄した。0.1M酢酸ナトリウムpH6.0中に0.1 % 3,3,5,5, テトラメチルベンチジン (Sigma)及び0.003%過酸化水素 (Sigma)を含むペルオキシダーゼ基質溶液をウェルに加え、30分間発色させた。0.5M H2SO4を50μLずつウェルに加えることにより、反応を停止させた。ELISAリーダー(Dynatech)で、450nmにおける吸光度(OD)を測定した。
【0047】
その結果、Fcε2-Fcε3-Fcε4及びFcε3-Fcε4は、組換えヒト可溶性FcεRIαに強く結合するが、Fcε2-Fcε3及びFcε3は、該タンパク質に弱く結合することが示された(図2)。このことは、Fcε2-Fcε3-Fcε4及びFcε3-Fcε4の両者が、IgEのFcεRIαへの結合に必須的なエピトープを含むことを示している。
【0048】
実施例2 ELISAにおける、Fcε-Fcγによる、ビオチン化IgEのFcεRIαへの結合阻害
前記4種類のFcε-Fcγ融合タンパク質による、ビオチン化IgEの組換えヒト可溶性FcεRIαへの結合に対する競合をELISAにより試験した。炭酸ナトリウムバッファーpH7.4中に、バキュロウイルス発現された精製ヒト可溶性FcεRIα(コロラド州Fort Collins のHeska)を0.2μg/mlの濃度で含む溶液50μLで、Immunlon Iマイクロテストプレート(Dynatech)の各ウェルを一夜被覆した。次いで、ウェル中の非特異結合部位を、PBS中に2% BSAを含む溶液200μLと1時間インキュベートすることにより飽和させた。次にウェルをPBSTバッファー(0.05% Tween20(登録商標)を含むPBS)で洗浄した。増大する量の融合タンパク質を、一定量の予め滴定したビオチン化組換えヒトIgE(1nM)と、0.065, 0.125, 0.25, 0.5, 1, 2及び4のモル比(Fcε-Fcγ:IgE)で混合した。非標識IgEを陽性対照として用いた。50μLの混合物を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。次にウェルをPBSTバッファーで洗浄した。次に、50mlのストレプトアビジン結合HRP(ペンシルバニア州West Grove のJackson ImmunoResearch Lab)を加え、室温で1時間インキュベートすることにより、結合したビオチン化IgEを検出した。次にウェルを洗浄した。次に、発色のために、上記のようにペルオキシダーゼの基質を加えた。ELISAプレートリーダーにより、450nmにおける吸光度を測定した。
【0049】
その結果、用量依存的競合曲線(図3)が同様な傾きを有していることから示されるように、Fcε2-Fcε3-Fcε4及びFcε3-Fcε4は、非標識IgEと同程度に効率的に、ビオチン化IgEのFcεRIαへの結合について競合することが示された。Fcε2-Fcε3及びFcε3は、予想通り、全く競合を示さなかった。なぜなら、これら2つのタンパク質は、図2に示されるように、FcεRIαに弱く結合するからである。
【0050】
実施例3 ELISAにおける、IgEによる、Fcε-FcγのFcεRIαへの結合阻害
実施例2の結果を確認するために、IgEによる、Fcε2-Fcε3-Fcε4及びFcε3-Fcε4のFcεRIαへの結合阻害もELISAにより試験した。炭酸ナトリウムバッファーpH7.4中に、バキュロウイルス発現された精製ヒト可溶性FcεRIα(コロラド州Fort Collins のHeska)を0.2μg/mlの濃度で含む溶液50μLで、Immunlon Iマイクロテストプレート(Dynatech)の各ウェルを一夜被覆した。次いで、ウェル中の非特異結合部位を、PBS中に2% BSAを含む溶液200μLを1時間インキュベートすることにより飽和させた。次にウェルをPBSTバッファー(0.05% Tween20(登録商標)を含むPBS)で洗浄した。増大する量の組換えIgEを、一定量のFcε2-Fcε3-Fcε4又はFcε3-Fcε4(1nM)と、0.125, 0.25, 0.5, 1, 2,4,8及び16のモル比(IgE:Fcε-Fcγ)で混合した。50μLの混合物を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。次にウェルをPBSTバッファーで洗浄した。次に、結合した融合タンパク質を、希釈したセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合マウス抗ヒトIgG4(Fc特異的)( Sigma)と室温で1時間反応させることにより検出した。次にウェルをPBSTで洗浄した。次に、発色のために、上記のようにペルオキシダーゼの基質を加えた。ELISAプレートリーダーにより、450nmにおける吸光度を測定した。
【0051】
その結果、IgEは、Fcε2-Fcε3-Fcε4及びFcε3-Fcε4のFcεRIαへの結合に対して効果的に競合した(図4)。総合すると、図3及び図4のデータは、Fcε2-Fcε3-Fcε4及びFcε3-Fcε4がネイティブIgEのFcεRIα結合性を維持していることを示している。
【0052】
実施例4 ヒト好塩基球との機能的アッセイ
A. ヒト好塩基球の調製
健常人からの静脈血約40mlを、氷冷リン酸緩衝液(PBS)で3倍希釈し、この溶液の35mlを15mlのFicoll Paque上に慎重に積層した。密度勾配遠心後、上層を吸引して、界面に乱されていない単核細胞層を残した。単核細胞層をプールし、EDTA-PBSで洗浄した。トリパンブルー染色で細胞数を測定し、最終体積を106個/μLに調節した。
【0053】
次に、midi-MACSカラム (カリフォルニア州Auburn のMiltenyi Biotec)を用いて好塩基球をさらに精製した。このキットは、ハプテン結合抗CD3, CD7, CD14, CD15, CD16, CD36, CD45A及び抗HLA-DR抗体を含むハプテン−抗体カクテルを提供する。コロイド性超磁性MACSマイクロビーズをモノクローナル抗ハプテン抗体と結合させた。前記カクテルを用いて非好塩基球細胞を間接的に磁気的に標識し、磁気的に標識した細胞を、磁界中のMACSカラム上に保持することにより除去した。
【0054】
次に、精製した好塩基球をフローサイトメトリーにより評価した。評価される試料を、ヒトIgG(1μg/ml 105細胞)でブロックした。以下の個々の標識を用いた。ヤギ抗ヒトIgE-FITC、マウス抗ヒトCD123-PE、マウスIgG1-PE、マウス抗ヒトCD45-PE及びマウス抗HLA-DR-FITC。以下の二重標識を用いた。(1)ヤギ抗ヒトIgE-FITCとヤギ抗CD45-PE、及び(2)マウス抗CD123-PEとマウス抗HLA-DR-FITC。各試料を染色後、FACS分析を行なった。
【0055】
B. 好塩基球のIgE媒介脱顆粒
各融合タンパク質がメディエーターの放出をもたらさないことを確認するために、例えば、Beckman Coulter (カリフォルニア州Fullerton)から得られる標準的な試薬及びプロトコールを用いて、ヒスタミン放出アッセイを行なった。簡単に述べると、細胞を、被検融合タンパク質の存在下又は非存在下でIgEで感作した。本実施例では、HIV-1 gp120 V3領域から誘導されるペプチド領域に特異的な可変領域と、IgEの定常領域から成る組換えIgE(rIgE)を用いた。次に、感作した細胞を、(1)陽性対照である、オバルブミンとHIV-1 gp120 V3ペプチドとの結合物、(2)抗IgE、C5a,F-met混合物又は(3)IgGで攻撃した。放出されたヒスタミン量を測定し、融合タンパク質による好塩基球脱顆粒を測定するために用いた。
【0056】
C. 好塩基球上でのFcεRI発現
好塩基球のFcεRI発現がFACS分析により調べられるであろう。2%熱不活化ウシ胎児血清、40μg/mlのゲンタマイシン及び10 ng/mlのrIL-3を含むイスコベの修飾ダルベッコ培地中で好塩基球を先ず14日間培養する。トリパンブルー染色を用いて、細胞の生存を第7日及び第14日に試験する。
【0057】
14日間培養後、好塩基球の一部である0.5 x 106個を以下の試薬の1つと種々の濃度(10-1000 ng/ml)で混合し、7日間インキュベートする。(1) rlgE 単独、 (2) rlgE + Fcε1-Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ; (3) rIgE + Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ; (4) rlgE + Fcε3-Fcε4-Fcγ; (5) rlgE + Fcε3-Fcγ; (6) rlgE + Fcε2-Fcε3-Fcγ; (7) rIgE + IgG-γ4; (8)rIgEなしの細胞。また、対照として、それぞれの個々のFcε-Fcγ融合タンパク質の存在下で、rIgEの非存在下で細胞を培養した。
【0058】
次に、細胞を遠心し、洗浄し、IgGでブロックして抗体のFcγRへの非特異的結合を低減した。次に各試料を抗FcεRImAb-FITC又はマウスアイソタイプ対照で染色し、FACS分析に供した。IgEにさらされなかった細胞(上記#8)を、培養好塩基球上に存在するレセプターの数の基準として用いた。融合タンパク質の非存在下においてrIgEにさらされた細胞は、最大のFcεRI発現のための陽性対照を与えた(上記#1)。
【0059】
IgEのエピトープとは異なるエピトープに結合する抗FcεRI mAbを用いたFITC染色の濃度の増大により、FcεRIレセプターの数が陰性対照よりも増大することが測定された。低濃度のFITC染色を示す断片が、アレルギー反応の治療のために適した候補である。
【0060】
証拠5 培養ヒトマスト細胞からの、IgE媒介ヒスタミン放出に対するFcε-Fcγ融合タンパク質の阻害効果
A. マスト細胞培養
10%ウシ胎児アルブミン(ミズリー州St. LouisのSigma-Aldrich)、2 mM L-グルタミン、50 mM 2-メルカプトエタノール、100U/mlペニシリン、100 mg/mlストレプトマイシン、10 mg/mlゲンタマイシン(GIBCO/BRL)、100 ng/ml幹細胞因子、50 ng/ml IL-6及び5 ng/ml IL-10(ミネソタ州Minneapolis のR&D Systems Inc.)を添加したRPMI 1640 (メリーランド州Rockville のGIBCO-BRL)から成る培地中で、凍結保存したヒト臍帯血CD34+細胞を8週間培養した。前記サイトカイン添加培地は毎週交換し、非接着性細胞を新たな培養フラスコに移すことにより細胞の接着画分を捨てた。第3週に、CD14及びCD15特異的モノクローナル抗体(M-450 CD14, M-450 CD15)で被覆されたビーズを、製造者(ニューヨーク州Lake Success のDynal)のプロトコールにしたがって用いてCD14及びCD15陽性細胞を枯渇させた。培養細胞の一部を取り、トリプターゼの発現を8週間に亘って毎週監視した。
【0061】
B. 免疫細胞化学
毎週、培養細胞の一部3〜4 x 104個を、細胞遠心機中のスライドガラス上に遠心した。スライド上の細胞を風乾し、カルノア液(60%エタノール、30%クロロホルム及び10%氷酢酸)中で室温で10分間固定した。スライドをPBSで洗浄した後、スライドをブロッキングバッファー(PBS中3% BSA, 1.5%正常ウマ血清, 0.2% Triton X-100, 0.02% NaN3)で室温で30分間ブロッキングした。ブロッキング後、スライドをマウス抗ヒトトリプターゼMAb(アルカリホスファターゼ結合、カリフォルニア州Temecula のChemicon)で37℃で1時間インキュベートした。3% BSA, 0.2% Triton X-100, 0.02% NaN3を含むPBSバッファーで抗体を1:300希釈した。スライドをPBS(0.2% Triton X-100含有)で洗浄し、アリカリホスファターゼ基質キット(カリフォルニア州BurlingameのVector Lab Inc.)を用いて免疫細胞化学操作を行なった。強い免疫反応を示す細胞を計数し、計数した全細胞の百分率で表示した。
【0062】
C. フローサイトメトリー
第7週に細胞をPBSで1回洗浄し、次に1% BSA及び1%ヒトγグロブリン(PBSBH)を添加した冷PBS中で4℃、30分間予備インキュベートした。次に細胞を、以下のエピトープに対して特異的な、PE/FITC-結合マウス抗ヒトMAb(MAbはBD PharMingenから購入した)と共にインキュベートした。c-kit(幹細胞因子に対するレセプター)、CD13(アミノペプチダーゼNのマーカー)、CD14(単球のマーカー)、CD16(好中球マーカー)及びCD61(インテグリンファミリーのβ3サブユニット)。細胞をMAbと共に4℃、30分間インキュベートし、次に、冷PBSBHで3回洗浄した。染色された細胞を1%パラホルムアルデヒド(4℃)中で一夜固定し、フローサイトメーター(EPICS XL-MCL,フロリダ州MiamiのBeckman-Coulter)を用いて分析した。フローサイトメトリー分析により、細胞はc-kitに対して強度に陽性(>90%)であり、CD13に対して中程度に陽性であり(>60%)、CD14及びCD16に対して陰性であり、CD61に対して僅かに陽性(>50%)であった。
【0063】
D. ヒトマスト細胞からのIgE媒介ヒスタミン放出
Beckman Coulter (カリフォルニア州Fullerton)から得られる標準的な試薬及びプロトコールを用いて、ヒスタミン放出アッセイを行なった。簡単に述べると、マスト細胞(1.5 x 105)を、種々の濃度のFcε-Fcγタンパク質の存在下又は非存在下で、組換えIgE(0.1, 1又は10μg/ml)で、37℃で1時間感作した。組換えIgEは、HIV-1 gp120 V3領域から誘導されるペプチド部分(15mer)に特異的な可変領域とヒトIgEの定常領域とから成る。洗浄後、マルチプルHIV-1 V3ペプチドに結合したオバルブミンであるOva/V3 (100 ng/ml)で細胞を37℃、2時間攻撃した。細胞上清を回収し、ヒスタミン免疫測定キット(イリノイ州PalatineのBeckman-Coulter)を用いて製造者のプロトコールに従ってヒスタミン含量を測定した。免疫測定は、測定すべきヒスタミンと、ヒスタミン−アルカリホスファターゼ結合物との間の競合に基づくものであった。簡単に述べると、細胞上清中に存在するヒスタミンを、微アルカリ性pHにおいて、アシル化剤でアシル化し、抗体で被覆したマイクロタイターウェルに添加した。マイクロタイターウェルは、試料中の前記結合物とアシル化ヒスタミンとの間の競合が起きるように限定された数の抗体で被覆された。4℃で2時間インキュベートした後、ウェルを濯いで未結合成分を除去した。発色基質(pNPP)添加することにより、結合した酵素活性を測定した。発色強度は、試料中のヒスタミン濃度に反比例していた。放出されたヒスタミンは、キットに含まれる標準を用いた標準曲線に基づいて算出した。試験に含まれた対照群は、未処理細胞、イオノフォアA23187 (2 μM)で処理した細胞、IgEのみで処理した細胞又はOva/V3のみで処理した細胞であった。
【0064】
上記の記述、用語、表現及び例は、例示のためだけのものであり、限定的なものではない。本発明は、公知のものも公知でないものも、上記の具体例の全ての均等物を包含する。本発明は、以下の請求の範囲によってのみ限定されるものであり、この書類の他のいずれの部分又は他のいずれのソースにおけるいずれの記述によっても限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、ヒトIgEのイプシロンH鎖の模式的線図である。アミノ酸の値は、Bennichによるナンバリング体系(下記参照)に対応する。
【図2】図2は、ELISAにおける、Fcε-Fcγと組換えヒト可溶性FcεRIαとの反応性を示す。
【図3】図3は、ELISAにおける、Fcε-Fcγによるビオチン化IgEのFcεRIαへの結合阻害を示す。
【図4】図4は、ELISAにおける、IgEによるFcε-FcγのFcεRIαへの結合阻害を示す。
【図5】図5は、Fcγのアミノ酸配列を示す。
Claims (26)
- IgE Fcε断片及びIgG Fcγ断片を含み、FcεRI及び/又はFcεRIIレセプター並びにFcγRIIBレセプターに結合する融合タンパク質。
- 前記Fcε断片は、ヒンジ-Fcε2-Fcε3-Fcε4、又はその機能的断片であってネイティブIgEの少なくとも75%の親和性でFcεRI及びFcεRIIに結合することができる断片を含む請求項1記載の融合タンパク質。
- ヒンジ-Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ、Fcε2-Fcε3-Fcε4-Fcγ、Fcε2-Fcε3-Fcγ、Fcε3-Fcγ及びFcε3-Fcε4-Fcγから選ばれる請求項1記載の融合タンパク質。
- 前記Fcγ断片は、IgG1若しくはIgG3から選ばれるIgGサブクラスからの断片、又はFcγRIIBに結合することができるその修飾形態である請求項1記載の融合タンパク質。
- 前記Fcγ断片は、ヒンジ-Fcγ2-Fcγ3、Fcγ2-Fcγ3又はFcγ2である請求項1記載の融合タンパク質。
- Fcε断片及びFcγ断片を含み、Fcε2-Fcε3-Fcγ3を含み、FcεRI及びFcεRIIレセプターにネイティブIgEの少なくとも75%の親和性でFcεRI及びFcεRIIに結合する融合タンパク質。
- Fcε断片とFcγ断片がリンカーを介して結合される請求項1ないし6のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
- 前記リンカーが非免疫原性である請求項7記載の融合タンパク質。
- 前記非免疫原性リンカーは、GGSGGSGGGGSGGGGS(配列番号2)の配列を有する16アミノ酸リンカーである請求項8記載の融合タンパク質。
- 請求項1ないし9のいずれか1項に記載の融合タンパク質と、生理学的に許容できる賦形剤、希釈剤又は担体とを含む組成物。
- 請求項1ないし9のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子。
- 前記核酸分子は、転写制御配列と機能的に連結されている請求項11記載の核酸分子。
- 請求項12記載の核酸分子でトランスフェクトされた宿主細胞。
- 前記融合タンパク質をコードするベクターを作製し、該ベクターで宿主系をトランスフェクトし、該宿主系内で前記融合タンパク質を発現させることを含む、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の融合タンパク質の作製方法。
- Fcε断片をFcγ断片に結合することを含む、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の融合タンパク質の作製方法。
- 請求項1ないし10のいずれか1項に記載の融合タンパク質又は組成物のブロッキング量を、哺乳動物個体に投与することを含む、哺乳動物個体内でIgEのFcεRI及び/又はFcεRIIへの結合をブロックする方法。
- FcεRI又はFcεRIIがFcγRIIBに架橋されている請求項16記載の方法。
- 請求項1ないし10のいずれか1項に記載の融合タンパク質又は組成物の阻害量を哺乳動物個体に投与することを含む、哺乳動物個体内においてFcεRIの発現を阻害し、IgEの産生を低減させる方法。
- 請求項1ないし10のいずれか1項に記載の融合タンパク質又は組成物の緩和又は防止量を哺乳動物個体に投与することを含む、感受性哺乳動物個体中においてIgE媒介アレルギー反応を緩和又は防止する方法。
- 前記アレルギー反応は、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、枯草熱、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎及び薬剤アレルギーを伴う請求項19記載の方法。
- 前記アレルギー反応が、ピーナッツアレルゲンにより引き起こされる請求項20記載の方法。
- 抗IgE抗体の投与をさらに含み、該抗IgE抗体の投与は、同時に、別個に又は連続的に行なわれる請求項19記載の方法。
- 前記アレルギー反応は、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、枯草熱、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎及び薬剤アレルギーを伴う請求項22記載の方法。
- 請求項1ないし10のいずれか1項に記載の融合タンパク質又は組成物の緩和又は防止量及びアレルゲンを投与することを含む、IgE媒介アレルギー性疾患の緩和又は防止方法。
- 前記融合タンパク質又は組成物とアレルゲンとは、別個に、連続的に又は同時に投与される請求項24記載の方法。
- 前記哺乳動物個体はヒト、イヌ又はネコである請求項16ないし25記載の方法。
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