JP2004537501A - 肺への遺伝子送達のための安定化ポリマーエアロゾル - Google Patents
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Abstract
治療目的または研究目的の、エアロゾルを通じた治療的に有効な組成物の非ウイルス送達の使用は、主に、非効率的な送達系およびエアロゾル剪断粉末による処方物(遺伝子および/または送達系)の破壊により引き起こされる低効率により制限されていた。本発明は、ポリマー配合処方物により構築される処方物を開発した。この処方物は、エアロゾルを通してインビボで遺伝子を送達するのに非常に有効であり、そしてエアロゾル剪断粉末による破壊から送達遺伝子を保護し得る。
Description
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本出願は、2001年2月1日に出願された米国仮特許出願番号第60/266,174号の出願日の利益を主張する。上記参照の開示の全内容は、放棄されずにその全体において本明細書中に参考として詳細に援用される。
【0002】
(A.発明の分野)
本発明は、一般的には、エアロゾル送達の分野に関する。より詳細には、本発明は、遺伝子の効率的な送達のための新しい処方物、またはエアロゾル剪断力による破壊から薬学的に受容可能な薬剤を保護するインビボでの他の薬学的に受容可能な薬剤に関する。本発明はまた、このような組成物の調製の方法、およびこのような組成物で細胞をトランスフェクトする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(B.関連分野の説明)
遺伝子治療の成功は、最小の毒性で標的細胞に遺伝子を選択的かつ効率的に送達し得るベクターまたはビヒクルの開発に大きく依存する。ウイルスは、細胞の形質導入において効率的であり、従って遺伝子治療における送達ビヒクルとして一般的な選択を構成する。
【0004】
ウイルス成分の場合、使用されるウイルス成分は、通常、複製不全のウイルスまたは弱毒化したウイルスである。残念ながら、これらのウイルスゲノムは、なおもウイルスタンパク質(例えば、主要ヘキソンコートタンパク質)を低いレベルで発現し得る(Yangら、1994)。この発現は、免疫原性および毒性による継続的な問題を生じる、免疫応答を誘導するのに十分なレベルで生じる(Yangら、1994)。ベクターそれ自身が免疫原性であること、およびこの免疫応答が、このウイルスに基づく将来の遺伝子治療送達組成物の開発において決して克服され得ないこともまた明らかになっている(Kafriら、1998)。全体的には、このウイルス送達組成物/ベクターは、免疫原性であり、経済的に大量生産することが困難であり、限られた治療的核酸の運搬能力、生成についてヘルパー細胞株に対する連続的な依存性、標的化の欠如を有し、そして安全性および毒性に関する問題により未だ悩まされていることが明らかになっている(Marshall、1999)。
【0005】
ヒトにおけるウイルスの使用に関するこれらの安全性の関心は、非ウイルス送達系を魅力的な選択肢にさせる。非ウイルスベクターは、使用の単純さ、大スケールの生成の容易さおよび特定の免疫応答の欠如に関して、特に適切である。最も一般的に研究された3つの非ウイルス送達組成物成分は、脂質(例えば、リポソーム)(Bendasら、1999)、ポリカチオン(Xuら、1998)、または単純な裸のDNA(Chenら、2000)に関する処方物に基づく。残念ながら、これらの成分を含有する送達組成物は、伝統的に、特にインビボでの低い形質導入効率の反復性の問題を有し;裸のDNAは、最低の形質導入効率を示し、そしてリポソームは、最高の形質導入効率を示す(Bendasら、1999;Xuら、1998;Chenら、2000)。これらの送達組成物が有する他の問題としては、送達処方物の毒性が挙げられる。
【0006】
遺伝子発現は、裸のプラスミドDNAの直接的な組織内注射により達成され得るが、他の投与経路(例えば、気管内注射および静脈内注射ならびにエアロゾル)による遺伝子移入は、一般には、送達ベクターまたはビヒクルの使用を必要とする。
【0007】
1987年に、Felgnerらが、初めて、カチオン性脂質を用いたインビトロトランスフェクションの成功を記載して以来、遺伝子送達系における使用のための合成脂質の適用は、大きく進歩してきた。新しいカチオン性脂質が、合成され(Wheelerら、1996;Leeら、1996)、そしてインビトロおよびインビボでのトランスフェクションのために使用されてきた。
【0008】
カチオン性脂質/DNA複合体(リポプレックス(lipoplex))は、癌および嚢胞性線維症の処置のためのいくつかの臨床試験において使用されてきた(Nabelら、1993;Caplenら、1995)。リポプレックスは、比較的低用量で局所的に送達される場合に、安全であることが証明された。しかし、長期安全性の研究は、実施されていない。さらに、カチオン性脂質媒介性の遺伝子移入が、臨床において標準的に実施され得る前に、脂質ベクターの有効性は、改善される必要がある。脂質送達組成物の分野における進歩にも関わらず、現在の脂質ベクターは、特定の組織に対する遺伝子の活性な標的化において未だに非効率的なままである。
【0009】
ポリカチオンポリマーは、送達組成物の生成および処方の容易さに関して中間の特性に位置する。ポリカチオンポリマーは、イオン性相互作用に起因して核酸と混合される場合、自己アセンブリ特性を有する。培養細胞およびインビボでの細胞に対して核酸を送達するための成分として、合成的なポリカチオンポリエチレンイミン(PEI)を使用する多くの研究が存在している(Bousiffら、1995;Boussifら、1996;Densmoreら、2000;Fronsdalら、2000;Bolettaら、1997;Goulaら、1998;Collら、1999;Kircheisら、1997;Hart、2000;Rudolphら、2000)。
【0010】
薬学的薬剤の送達のためのポリカチオンポリマーの利用は、これらの分子について多数の異なる適用をもたらした。とりわけ1つのグループは、「分子結合体」と称される(CristianoおよびRoth、1995)。分子結合体は、細胞および正に荷電したポリカチオンポリマーに結合されている送達組成物に特異的なタンパク質から構成される。これらの結合体は、DNAに結合して、タンパク質−DNA複合体またはポリプレックス(polyplex)(ポリカチオンの使用に基づく)を形成し、これらは、使用した成分に依存して特定の細胞型に対してDNAを標的化し得る。
【0011】
薬学的薬剤の送達の様式は、薬剤の有効性に関して重要であり得る。送達の1つの様式は、エアロゾルによるものである。エアロゾル化は、体内へ薬学的薬剤を運搬するための迅速かつ有効な手段である。エアロゾル送達は、送達組成物を肺へ直接接触させるために使用され得る。肺において、多くの異なる疾患が、肺の表面上に直接的に薬物を付着(deposit)させるために使用されるエアロゾル送達系の使用を介して首尾よく処置されてきた。
【0012】
肺へのエアロゾル化した治療剤の投与の分野は、公知である。例えば、エアロゾル送達のための複合体の処方およびエアロゾル粒子を形成するための装置は、例えば、米国特許第5,962,429号、同第6,090,925号、同第5,744,166号、同第5,985,309号、および同第5,639,441号に教示される。
【0013】
遺伝子治療におけるエアロゾル送達のためのベクターの処方物としては、カチオン性脂質が挙げられる。エアロゾル遺伝子送達による肺への送達およびトランスフェクションのためのカチオン性脂質ベースの処方物の使用は、例えば、米国特許第5,641,662号および同第5,756,353号に記載されている。エアロゾル処方物の一部としてのカチオン性脂質は、例えば、米国特許第6,086,913号、同第5,981,501号、同第6,106,859号、同第6,008,202号、Striblingら、1992;Crookら、1996;Eastmanら、1997;Chadwickら、1997;McDonaldら、1998;Birchallら、2000およびDensmoreら、2000に教示される。しかし、エアロゾル送達における使用のためのカチオン性脂質ベクターに関していくつかの問題が存在する。1つの問題は、より低いトランスフェクション効率であり、カチオン性脂質処方物の乏しい安定性は、送達ベクターとしての多くのカチオン性脂質の使用を妨げる。
【0014】
エアロゾル送達がしばしば遭遇する問題は、粒子のエアロゾル化が、投与されるべき薬剤の治療的効力の破壊を引き起こすことである。噴霧器の噴射口を介する処方物の押出しにより生じる剪断力は、多くの化合物の活性を減少させるのに十分に大きい。別の問題は、送達される治療剤の低い安定性である。しばしば、これらの薬剤は、肺に入って数分以内に有効性を損失する。
【0015】
送達ベクター処方物における粒子の安定性を増加させる分野において研究がなされてきた。Caponettiら、1999;Leeら、1997は、ポリ−L−リジン(PLL)の使用を教示し、そして粒子の機械的な安定性を増強させるためのアルギナート−PLLマイクロカプセル中にポリエチレングリコール(PEG)を含有する。同様に、米国特許第6,008,202号、Densmoreら、1999;Godbeyら、2000;Vinogradovら、1998;Ogrisら、1999;Eastmanら、1997;およびGautamら、2000は、いくつかのPEIベースの処方物の使用および増加した安定性を教示する。しかし、PEIベースの処方物の使用は、処方物の毒性を増加させ得る。従って、改良された脂質ベースの送達系に対する必要性がなおも存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
従って、本発明に基づいて、細胞、膜、器官または組織へ組成物を投与するための方法が提供される。この方法は、上記組成物を上記細胞、膜、器官または組織と接触させることを包含し、ここで提供される上記組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリカチオンポリマー、ポリエチレンイミン(PEI)およびカチオン性脂質を含有する。この投与は、エアロゾルの形態であり得る。カチオン性脂質は、この組成物の毒性を減少させるのに役立つ任意のカチオン性脂質であり得;リン脂質(例えば、ジパルミトイルグリセロエチルホスホコリン(DPEPC))、他のジアシ(diacy)−ジメチルアンモニウムプロパン(例えば、DSEPC、DMEPC、DLEPC、DOEPC、またはパルミトイル−オレオイル−EPC)、ジアシル−ジメチルアンモニウムプロパン(例えば、DSDAP、DPDAP、DMDAP、またはDODAP)、ジアシル−トリメチルアンモニウムプロパン(例えば、DSTAP、DPTAP、DMTAP、またはDOTAP)が選択される。他のカチオン性脂質としては、例えば、以下が挙げられる:ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、N−[1−(2,3−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、DOSPA、3−β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、3−β−[N−(N,N−ジカルボベンゾキシスペミジン)カルバモイル]コレステロール、または3−β−(N−スペミンカルバモイル)コレステロール。特定のポリカチオンポリマーとしては、以下が挙げられる:プロタミン、ポリ(アミノ酸)(例えば、ポリリジン、ポリヒスチジン、またはポリアルギニン)、または他のカチオン性ポリマー(例えば、ポリ(L−オルニチン)、ポリ(ジメチルアミン)エチルメタシレート、またはポリ(トリメチルアミン)エチルメタシレート)。より詳細には、選択されるポリカチオンポリマーとしては、プロタミンおよびポリリジンである。2つ、3つまたはそれよりも多いカチオン性ポリマーが、本発明の処方物中に組込まれ得る。
【0017】
本発明の1つの局面は、組成物の増加した形質導入効率である。治療剤を用いる本発明の組成物の使用は、上記組成物対上記治療剤の比率が、50以下:1である場合が好ましい。より好ましくは、10:1の比率である。この組成物は、必要ならば、治療剤に比較して、100:1の濃度で使用され得る。
【0018】
特定の実施形態において、組成物が、さらに、核酸、DNA、RNA、タンパク質、ワクチン、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、発現構築物、p53のコード領域、化学薬品、抗生物質、化学療法剤または診断剤を含有することが企図される。この組成物の投与は、気道(例えば、肺、気管または肺胞)におけるどこに対してもなされ得る。
【0019】
特定の実施形態において、本組成物が、例えば、肺癌、肺感染、喘息、気管支炎、気腫、細気管支炎(bronchilitis)、嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺水腫、肺塞栓、呼吸不全、肺高血圧、肺炎または結核を予防または処置するために投与されることが考慮される。本組成物が肺癌を予防または処置するために投与されることが好ましい。
【0020】
本発明のさらなる局面は、上記薬学的組成物の懸濁液において、5〜0.01μmの範囲、またはより好ましくは2〜0.05μmの範囲、またはより好ましくは0.05μmおよび0.2μmの直径の粒子を含む。0.01μmの直径は、種々の適用に対して、理想的であることが見出されてきた。本発明の組成物における粒子の直径の範囲について言及する場合、この粒子の少なくとも80%がこの範囲内に入ることが理解される。所定の範囲より大きい幾つかの粒子または凝集体が、本組成物において、予測される。これら粒子は、乾燥散剤または液体を形成し得る。この好ましいエアロゾル滴の直径は、0.3〜3.0μmである。
【0021】
本発明の別の実施形態は、エアロゾル送達のための組成物を処方するための方法を包含し、この方法は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリカチオンポリマー、ポリエチレンイミン(PEI)およびカチオン性脂質を配合して合わせて、組成物を作製する工程を包含し、ここで、この組成物は、エアロゾルとして投与され得る。上記組成物が安定化剤または共溶媒をさらに含むことは、本発明の1局面である。
【0022】
上記組成物における上記プロタミンに対する上記PEGの比率が、約1:1〜1:5であるか、またはより好ましくは、約1:2であることが、本発明の1局面である。上記組成物における上記ポリリジンに対する上記PEGの比率は、約1:1〜10:1であるか、またはより好ましくは、約3:2である。上記組成物における上記ポリカチオンポリマーに対する上記PEIの比率は、約1:5〜1:20であるか、またはより好ましくは、約1:10である。上記組成物における上記ポリカチオンポリマーに対する上記カチオン性脂質の比率は、約1:2〜1:20であるか、またはより好ましくは、約1:3〜1.20である。上記組成物における上記ポリカチオンポリマーに対する上記DPEPCの比率は、約1:3〜1:20であるか、またはより好ましくは、約1:5である。上記組成物における上記成分、プロタミン、PEG、PEI、およびDPEPCの比率は、約2:1:1:0.4〜50:25:1:10であるか、またはより好ましくは、約10:5:1:2である。上記組成物における上記成分、ポリリジン、PEG、PEI、およびDPEPCの比率は、2:3:1:0.4〜50:80:1:10であるか、またはより好ましくは、約10:16:1:2である。
【0023】
比率について言及する場合、特定の量の誤差が許容されることが理解される。例えば、約2:1の比率は、1.90:1と2.10:1との間の値を含むことが理解される。好ましい比率が以下の特定の成分:ポリリジン、プロタミン、PEG、PEI、およびDPEPCについて与えられるが、他のカチオン性脂質および他のポリカチオンポリマーが使用され得ることが、理解される。これらの組成物についての比率は、本明細書中に記載される情報を与えられれば、過度の実験をすることなく、決定され得る。
【0024】
本発明の別の実施形態は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリカチオンポリマー、ポリエチレンイミン(PEI)およびカチオン性脂質を含むエアロゾル送達のための組成物を提供する。この組成物はまた、さらなる実施形態において、用量を量るための手段を含む、エアロゾルキャニスターを含み得る。
【0025】
本発明のさらなる実施形態は、エアロゾル処方物におけるポリエチレンイミン(PEI)の毒性を低減するための方法を提供し、ここで、ジパルミトイルグリセロエチルホスホコリン(DPEPC)は、上記PEIの毒性を減少するのに十分な量で、上記エアロゾル処方物に添加される。
【0026】
さらなる実施形態は、エアロゾル送達のための組成物を提供し、この組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリカチオンポリマーおよび薬学的活性因子を含み、ここで、エアロゾル化の10分後の上記薬学的活性因子の活性は、上記薬学的活性因子の初期活性の少なくとも50%である。エアロゾル化の10分後の活性は、上記薬学的活性因子の初期活性の少なくとも60%であることが、より好ましい。エアロゾル化の10分後の活性が、上記薬学的活性因子の初期活性の少なくとも70%であることは、なおより好ましい。このポリカチオンポリマーは、プロタミン、ポリリジン、またはポリカチオンポリマーの組み合わせを含み得る。
【0027】
(例示的な実施形態の説明)
本発明は、エアロゾルとして与えられた場合に、遺伝子および他の生物学的産物(例えば、遺伝子、RNA、タンパク質、オリゴヌクレオチド)、化学的因子(例えば、化学療法剤、抗生物質、他の薬物)または診断学的因子(例えば、気体)を、肺へ効率的に送達し得る、脂質/ポリマー処方物に関する。単一のカチオン性ポリマーおよびカチオン性脂質の組み合わせ、またはPEI単独は、エアロゾル投与を介する遺伝子送達に対して、効率的ではない。しかし、エアロゾルとして与えられたPEGおよび複数のカチオン性ポリマーの適切な組み合わせは、肺および肺癌細胞に遺伝子を効率的に送達し得る。特定の量のカチオン性リン脂質の添加は、インビボにおける遺伝子送達効率を増加し得る。特に、本発明は、肺癌、嚢胞性線維症、TB、肺感染および喘息のような肺疾患の処置または予防のために使用され得る。
【0028】
(1.核酸送達組成物)
特定の実施形態において、本発明のエアロゾル送達処方物は、少なくとも1つのポリカチオンポリマー、PEGおよび少なくとも1つの核酸を含む。さらなる実施形態において、送達組成物は、少なくとも1つの追加の因子をさらに含み、この因子として、標的因子(例えば、標的リガンド)、エンドソーム因子、リンカー/カップリング剤、タンパク質様化合物、脂質、薬物、抗がん剤、ワクチン成分、薬学的に受容可能なキャリアまたはこのような因子の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な実施例において、本発明の組成物は、リンカー/カップリング剤に結合したポリカチオンポリマーを含み得、これは、標的因子に結合される。別の非限定的な例において、本発明の組成物は、標的因子を含むリポソームにおいて核酸を含み得る。当然のことながら、エアロゾル送達処方物成分の他の組み合わせは、本明細書中に記載され、そしてさらなる組み合わせは、本明細書の開示から当業者に容易に明らかであり、従って、本発明によって包含される。エアロゾル送達処方物の種々の成分は、手段(共有結合、イオン性相互作用、疎水性相互作用またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)によって互いに結合され得る。
【0029】
特定の実施形態において、エアロゾル送達処方物成分として、複数のカチオン性ポリマー、PEG、PEI、およびカチオン性脂質が挙げられる。核酸は、ポリアクリルアミドゲル上で、塩化セシウム遠心勾配で、または当業者に公知の任意の他の手段によって、精製され得る。例えば、Sambrookら(1989)を参照のこと(本明細書中において、参考として援用され、ここで、アルカリ溶解手順のバリエーションに基づくDNA精製プロトコルが記載される)。
【0030】
(A.ポリマー)
ポリマーまたはポリマーの混合物は、本発明のエアロゾル処方物を調製するために使用され得る。ポリマーは、核酸組成物から水を除去するか、もしくは核酸組成物を脱水するか、または体積排除を引き起こすために使用され得る。ポリマーはまた、結合リガンドおよび/または化学部位の結合の点(例えば、共有結合を介する)として作用する能力の利点を有する。
【0031】
本発明の特定のポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)であり、これはまた、ポリ(オキシエチレン)グリコールとして公知である。PEGは、エチレンオキシドおよび水の縮合ポリマーであり、一般的な化学式HO(CH2CH2O)nHを有する。本発明において、分枝型PEGおよびその誘導体、PEG−アクリレート、および他のPEGコポリマーもまた、企図される。
【0032】
(B.ポリカチオンポリマー)
ポリカチオンポリマーは、核酸(例えば、DNA、RNA、PNAまたはこれらの組み合わせ)と合わせた場合に自己集合し、これらの使用を簡単する利点を有し、市販され、安価であり、そして難しい合成ストラテジーを必要としない。本明細書中に記載される任意のポリカチオンポリマーまたは当業者に公知の任意のポリカチオンポリマーが、本明細書に記載される組成物および方法において使用されることが意図される。
【0033】
ポリカチオンポリマーはまた、例えば、共有結合を介して、結合リガンドおよび/または化学部分の結合の点として作用し得る能力を保有する。最も重要なことは、いくつかのポリカチオンポリマーが、エンドソーム溶解因子としての役割において機能する能力を保有し、従って、細胞の細胞質へのDNAまたは薬学的に受容可能な組成物の通過を増大し得る。多数のカチオン性化学部分(例えば、アミン)は、分子が、エンドソーム溶解を導くエンドソームの酸性化の間に、水素イオンを吸着するためにそのカチオン性部分を使用して、「プロトンスポンジ」として作用することを可能にする。エンドソーム因子として作用し得るポリカチオンポリマーが、本発明の特定の実施形態において好まれる。
【0034】
ポリカチオンポリマーの例は、ポリ(アミノ酸)(ポリリジン、ポリヒスチジンもしくはポリアルギニンが挙げられるが、これらに限定されない)または他のカチオン性ポリマー(例えば、プロタミン、ポリ(L−オルニチン)、ポリ(ジメチルアミン)エチルメタクリレート、もしくはポリ(トリメチルアミン)エチルメタクリレートである。
【0035】
特定の実施形態において、ポリカチオンポリマーは、静電的電荷−電荷相互作用によって核酸を凝縮し得る(Plumら、1990)。例えば、ポリカチオンポリマー(例えば、ポリリジン)によるDNAの中和および小さい(約100nm)トロイド様構造への凝縮は、インビトロでの細胞への核酸のエンドサイトーシスを促進する(本明細書中で参考として援用される、米国特許第5,972,600号)。核酸の負の荷電の中和は、トランスフェクションを補助し得る。細胞表面は、しばしば、負に荷電しているからである(Stevensonら、1989;Lemaitreら、1987)。さらに、ポリカチオンポリマー(例えば、ポリリジン)はまた、細胞膜を不安定化し、そしてさらなる薬剤の結合のための部位として使用され得る(本明細書中で参考として援用される、米国特許第6,071,533号)。
【0036】
特定の実施形態において、個々のポリカチオン鎖中のモノマーの数は、3〜約1000モノマー、ここから導き出される任意の整数、そしてここから導き出せる任意の範囲であり得る。もちろん、種々の局面において、異なる長さのポリカチオン鎖の混合物が使用され得る。他の実施形態において、特定のポリカチオン鎖上のカチオン性部分の数は、3〜約1000モノマー、ここから導き出される任意の整数、そしてここから導き出せる任意の範囲から構成され得る。特定の局面において、カチオン性部分またはカチオン性電荷の数は、核酸、タンパク質性組成物、または本発明の組成物中のアニオン性部分もしくはアニオン性電荷の数と一致するか、あるいは近似する。
【0037】
特定の実施形態において、ポリカチオンポリマーは、ポリアミン(例えば、スペルミジン、スペルミン、ポリアンモニウム分子(例えば、ポリブレン(ヘキサジメトリン(hexadimethrine)ブロマイド))、塩基性ポリアミノ酸(例えば、ポリリジン)、塩基性タンパク質またはこれらの組み合わせである。他のポリカチオンポリマーとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:米国特許第5,656,611号、同第5,354,844号、同第5,462,866号、同第5,462,866号および同第5,494,682号(これらは各々、本明細書中で参考として援用される)に記載されるポリカチオンポリマー。
【0038】
他の実施形態において、このポリカチオンポリマーは、プロタミン、ヒストン、異種ポリペプチド、非ペプチドカチオン(例えば、ポリエチレンイミン)またはこれらの組み合わせである(本明細書中で参考として援用される、米国特許第5,792,645号)。
【0039】
他の実施形態において、ポリカチオンポリマーは、例えば、カチオン化アルブミン、DEAE−デキストラン、ヒストン、ポリブレン、ポリオルニチン、プロタミン、スペルミン、カスケードアミドアミン「樹状」ポリマー、グラミシジンS環状ペプチド、スペルミジン、ポリリジン(例えば、臭化物塩、分子量25,600;Sigma Chemical Corporation St.Louis、Mo)、短い合成カチオン性ペプチド)またはこれらの組み合わせ(本明細書中で各々参考として援用される、米国特許第5,908,777号;HaenslerおよびSzoka、1993)。米国特許第5,260,002号は、本明細書中で意図される種々のポリマーを記載する。
【0040】
本発明の実施形態において、当業者に理解されるように、ポリマーのカチオン性のメンバー(例えば、ゼラチン)が、本発明のポリカチオンポリマーとして使用され得ることが意図される。このようなポリマーとしては、NIH Approved Implantable材料(これには、ポリ酸(例えば、ポリアクリレート(例えば、ナトリウム)、ポリメタクリレートおよびオレフィン無水マレイン酸コポリマー));ポリエステル(例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクタンおよびこれらのポリエステルのコポリマー);ポリオルトエステル(例えば、ポリジオキシアルキルテトラヒドロフランおよびポリ3,9−ビスメチレン−2,4,8,10−テトラアスピロ5,5ウンデカン−コ−1,6ヘキサンジオール);ヒドロゲル(例えば、PEG、ヒドロキシエチルメタクリレート、モノメタクリレートおよびホルムアルデヒドで架橋されたゼラチン);ポリサッカリド(例えば、セルロールおよびデキストラン);ポリペプチド(例えば、ポリグルタミン酸およびグルタミン酸ロイシンコポリマー、ポリアミノトリアゾール/アルキレンアミノトリアゾールコポリマーおよびアルブミンビーズ(すなわち、グルタルアルデヒドで架橋されたアルブミン));アミノ酸ポリマー(例えば、ポリD−リジンHCLまたはポリL−リジンHCL、ポリD−オルニチンHCLまたはポリL−オルニチンHCLおよびポリD−アルギニンまたはポリL−アルギニン);ならびにこれらの組み合わせを含む)が挙げられる。
【0041】
記載される他のポリマーとしては、水溶性ポリマー(例えば、ポリサッカリド(−):デンプン、ゴム、カラゲナン、デキストラン、キサン、硫酸化藻類ポリサッカリド(−)、アルギネート(−)、ヒアルロン酸フィルム(−)、ヘパリン(−)、硫酸コンドロイチン(−)、ポリガラクツロン酸(−)、アルギン酸(−)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(−)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース−ジエチルアミノエチルデキストランコポリマー(−)、寒天、ヒアルロネート(−)、硫酸ヒアルロン酸(−)、硫酸脱アシル化ヒアルロン酸(−)、ヘパリン(−)、ポリグルロネート(ノルマルまたはアセチル化)(−)、ポリマンヌロネート(−)、硫酸コンドロイチン(−)、アスコピラン(ascopyllan)(−)、ペクチン(1,4ポリグラクテロン酸(polyglacteronic acid)から形成される)(−)、硫酸デキストラン(−)、フコイダン(fucoidan)(−)、酸化セルロース(−)、ポリペプチドおよびタンパク質(例えば、疎水性(例えば、ポリフェニルアラニン)、極性(例えば、セリン)、酸性(−)(例えば、アスパラギン酸、コンドロイチン−6−硫酸、ヘパリン、ヒト血清アルブミン、塩基性(+)(例えば、リジン、l−アルギニン、コラーゲン);ポリ核酸(RNA、DNA)(非イオン性)、プラン(pullan)(非イオン性)、セルロース(非イオン性)、藻類ペクチン、修飾セルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(非イオン性、薄いフィルムを形成する)、ヒドロキシプロピルセルロース(非イオン性)、カルボキシメチルセルロース(非イオン性、ゲル/フィルムを形成する)、ジエチルアミノヒドロキシプロピルセルロース(+)、ジエチルアミノエチルセルロース(+)およびキトサン(+)が挙げられる。
【0042】
開示される他のポリマーとしては、合成ポリマー(例えば、非イオン性ポリマー(ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルアルコールフィルム));アニオン性ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリスチレン硫酸ナトリウム、ポリビニルスルホン酸塩、ポリビニル安息香酸塩、ポリビニルオキシプロパンスルホン酸塩、ポリ4−ビニルフェノール塩、ポリビニルスクシンイミド(polyvinylsucciniumidum)酸塩、ナトリウム−2−スルホキシエチルメタクリレート、ナトリウム−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホネートおよびナトリウム−3−アクリルアミド−3−メチルブタノエート);およびカチオン性ポリマー(ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、メタアリーリルオキシエチルトリメチルアンモニウムスルフェート(metharyloxyethyltrimethyl ammonium sulfate)、メタアリーリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(metharylryloxyethyltrimethyl ammoniumchloride)、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリビニルピリジン(血漿置換)、第四級ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン、直線状ポリメチレン−N,N−ジメチルピペリジニウム、ポリビニル4−アルキルピリジニウム、ポリビニルベンゼントリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンジメチルアンモニウムクロライドおよび1,3スルホプロピル−2−ビニルピリジニウム)が挙げられる。カチオン性ポリマーの分子量は、好ましくは、2〜80kDaの間である。懸濁物中の粒子サイズは、好ましくは、直径200nm未満である。
【0043】
(1.ポリエチルアミン)
特定の実施形態において、分枝鎖ポリカチオンポリマーが好ましい。特に好ましい分枝鎖ポリカチオンポリマーは、合成ポリカチオン性ポリエチレンイミン(PEI)である。PEIは、第一級:第二級:第三級アミンが1:2:1の比で配置された多数のアミン基を有し、これらは、プロトンスポンジおよびエンドソーム溶解因子としてのその機能に寄与すると考えられる。
【0044】
(2.デンドリマーポリカチオン)
特定の実施形態において、ポリカチオンポリマーは、デンドリマーポリカチオンを含む。デンドリマーポリカチオンおよびこれらを調製する方法は、Tomaliaら、1990;PCT/US83/02052;米国特許第6,113,946号、同第4,507,466号;同第4,558,120号、同第4,568,737号、同第4,587,329号、同第4,631,337号、同第4,694,064号、同第4,713,975号、同第4,737,550号、同第4,871,779号および同第4,857,599号に記載され、これらの各々は、本明細書中で参考として援用される。デンドリマーポリカチオンは、一般に、コア分子に結合したオリゴマーおよび/またはポリマー化合物を含む。本明細書中で使用される場合、「結合した」は、例えば、共有結合を意味するような結合を含むが、これに限定されない。
【0045】
デンドリマーポリカチオンにおいて使用するためのオリゴマーおよびポリマーの例としては、ポリアミドアミン(これには、メチルアクリレート、エチレンジアミンまたはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるがこれに限定されない。特定の実施形態において、オリゴマーまたはポリマーは、カチオン性である(すなわち、正に荷電し得る)。他の実施形態において、カチオン性部分は、オリゴマーまたはポリマーに結合される。このようなカチオン性部分としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:グアニジニウム;アゾール(第一級、第二級、第三級もしくは第四級の脂肪族アゾールもしくは芳香族アゾール)、および/またはS、O、グアニジニウムもしくはそれらの組み合わせの置換アゾール;アミド(第一級、第二級、第三級もしくは第四級の脂肪族アミンもしくは芳香族アミン)、および/またはS、O、グアニジニウムもしくはこれらの組み合わせの置換アミド;ならびに、グアニジニウム、アゾールおよび/またはアミドの組み合わせ。オリゴマーまたはポリマーは、カチオン性部分以外の反応性部分を含み得る。このような反応性部分としては、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、スルフヒドリル、アミド、チオエーテルまたはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。カチオン性部分または反応性部分は、オリゴマーもしくはポリマー、またはオリゴマーもしくはポリマーを構成するモノマーの、約1%〜約100%、ここから導き出される任意の整数、そしてここから導き出せる任意の範囲を含み得るか、あるいは約1%〜約100%、ここから導き出される任意の整数、そしてここから導き出せる任意の範囲であり得る。
【0046】
コア分子としては、アンモニア、エチレンジアミン、リジン、オルニチン、ペンタエリスリトール、トリス−(2−アミノエチル)アミン、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。コア分子は、一般に、オリゴマー化合物および/またはポリマー化合物に結合する少なくとも2つの反応性部分を含む。このような反応性部分としては、アミノ、カルボキシハライドマレイミド、カルボキシル、ジチオピリジル(dethiopyridyl)、エステル、ハライド、ヒドロキシル、イミド、イミノ、スルフヒドリルまたはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に受容可能なコア分子、オリゴマーおよび/またはポリマーが、特定の実施形態において好ましい。
【0047】
代表的なデンドリマーポリカチオンは、約2,000〜約1,000,000、ここから導き出される任意の整数、そしてここから導き出せる任意の範囲の平均MWである。代表的なデンドリマーポリカチオンは、約11〜約60Å、ここから導き出される任意の整数、そしてここから導き出せる任意の範囲の流体力学的半径を有する。
【0048】
(3.タンパク質様ポリカチオン)
特定の実施形態では、ポリカチオンポリマーは、カチオン性タンパク質様配列を含む。このようなカチオン性タンパク質様配列は、好ましくは、1つ以上のカチオン性アミノ酸残基、またはカチオン性タンパク質様配列に付着した1つ以上のカチオン性部分を含む。
【0049】
本明細書中で使用される用語「カチオン性タンパク質様配列」は、カチオン性残基の混合物(dおよび/またはlコンフォメーション)および/または付着されたカチオン性部分を含むが、これらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、用語「カチオン性タンパク質様配列」は、dおよび/またはlアイソマーコンフォメーションの1つ以上のアルギニン、ヒスチジン、および/またはリジンを含むアミノ酸鎖を含む。カチオン性タンパク質様配列はまた、大多数の(すなわち、50%を超える)残基が、カチオン性残基、および/またはカチオン性タンパク質様配列の残基に付着したカチオン性部分を含む限り、本明細書中に記載の任意の天然アミノ酸、改変アミノ酸、または非通常アミノ酸を含み得る。1つを超える異なるタイプのアミノ酸残基を含むポリカチオン性タンパク質様配列は、時として、「コポリマー」と呼ばれる。
【0050】
好ましいカチオン性タンパク質様配列としては、ポリ(l−アルギニン酸)、ポリ(d−アルギニン酸)、ポリ(dl−アルギニン酸)、ポリ(l−ヒスチジン酸)、ポリ(d−ヒスチジン酸)、ポリ(dl−ヒスチジン酸)、ポリ(l−リジン)、ポリ(d−リジン)、ポリ(dl−リジン)、上述に列挙したポリアミノ酸とポリエチレングリコールとのコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、およびポリ乳酸、ならびにポリ(2−ヒドロキシエチル 1−グルタミン)、キトサン、カルボキシメチルデキストラン、ヒアルロン酸、ヒト血清アルブミン、および/またはアルギン酸が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本発明のカチオン性タンパク質様配列は、以下の分子量を有する:約1,000、約2,000、約3,000、約4,000、約5,000、約6,000、約7,000、約8,000、約9,000、約10,000、約11,000、約12,000、約13,000、約14,000、約15,000、約16,000、約17,000、約18,000、約19,000、約20,000、約21, 000、約22,000、約23,000、約24,000、約25,000、約26,000、約27,000、約28,000、約29,000、約30,000、約31,000、約32,000、約33,000、約34,000、約35,000、約36,000、約37,000、約38,000、約39,000、約40,000、約41,000、約42,000、約43,000、約44,000、約45,000、約46,000、約47,000、約48,000、約49,000、約50,000、約51,000、約52,000、約53,000、約54,000、約55,000、約56,000、約57,000、約58,000、約59,000、約60,000、約61,000、約62,000、約63,000、約64,000、約65,000、約66,000、約67,000、約68,000、約69,000、約70,000、約71,000、約72,000、約73,000、約74,000、約75,000、約76,000、約77,000、約78,000、約79,000、約80,000、約81,000、約82,000、約83,000、約84,000、約85,000、約86,000、約87,000、約88,000、約89,000、約90,000、約91,000、約92,000、約93,000、約94,000、約95,000、約96,000、約97,000、約98,000、約99,000、約100,000kdまで、およびその中で導き出され得る任意の整数、およびその中で導き出され得る任意の範囲。
【0051】
特定の実施形態では、天然に存在するアミノ酸、非通常アミノ酸、または化学的に改変されたアミノ酸の種々の置換が、同様または他に所望の特徴を有する分子を得るために、カチオン性タンパク質様配列のアミノ酸組成においてなされ得る。例えば、ポリアミノ酸(例えば、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリリジン、あるいはアルギニン、ヒスチジン、および/またはリジンの混合物を含むカチオン性タンパク質様配列)は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、または約25かそこら、およびその中で導き出され得る任意の範囲のアルギニン残基、ヒスチジン残基、またはリジン残基が、それぞれ、本明細書中に記載の天然に存在するアミノ酸、改変アミノ酸、または非通常アミノ酸のいずれかによって置換されており得る。本発明の他の局面では、カチオン性タンパク質様配列(例えば、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリリジン、あるいはこれらの3つのアミノ酸のいくつかまたは全ての混合物を含むアミノ酸鎖)は、大部分の残基が、ヒスチジン、アルギニン、および/またはリジン、あるいは付着されたカチオン性部分を含む限り、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、から約50%かそこら、およびその中で導き出され得る任意の範囲のアルギニン残基、ヒスチジン残基、またはリジン残基が、それぞれ、本明細書中に記載の天然に存在するアミノ酸、改変アミノ酸、または非通常アミノ酸のいずれかによって置換されており得る。
【0052】
ポリアミノ酸への非カチオン性残基および/または部分のこのような置換は、さらなる因子(例えば、標的化因子(例えば、標的化リガンド)、エンドソーム因子、リンカー/カップリング因子、薬物、抗癌剤、またはそれらの組み合わせのような)の付着のための好都合な化学的部分を提供し得る。非限定的な例において、グルタミン酸残基は、因子(例えば、薬物のような)を共有結合付着させるために使用され得る側鎖カルボキシル官能基を含む。もちろん、カチオン性残基はまた、1つ以上のさらなる因子のための付着点として働き得る。このような化学的付着方法は、本明細書中に記載され、そして、当業者に周知である(例えば、Liら、1996;Greenwaldら、1996;Van Heeswijkら、1985;Hoesら、1985;Hiranoら、1979;Katoら、1984;Morimotoら、1984;および米国特許第5,362,831号(これらの各々は、参考として本明細書中に援用される)を参照のこと)。特定の局面では、1つ以上の成分の付着は、因子をエアロゾル処方物に、共有結合によって直接的に付着させることによるものであり得る。他の局面では、付着は、リンカー/カップリング因子によるものであり得る。
【0053】
ポリカチオンポリマーは、送達および処方が比較的容易である。ポリカチオンポリマーは、イオン性相互作用に起因して核酸と混合される場合、自己アセンブリ特性を有する。培養細胞に、およびインビボでの細胞に、核酸を送達するための成分として、合成ポリカチオン性ポリエチレンイミン(PEI)を利用する多くの研究が存在している(Bousiffら、1995;Boussifら、1996)。
【0054】
1つ以上のポリカチオンポリマーは、複数のカチオン性基を有するポリマーとして定義される。ポリカチオンポリマーとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ポリ(アミノ酸)(例えば、ポリリジン);ポリ4級化合物;プロタミン;ポリイミン;ポリビニルアミン;ポリビニルピリジン;ポリメタクリレート;ポリアクリレート;ポリオキセタン(polyoxethanes);ポリチオジエチルアミノメチルエチレン(P(TDAE));ポリヒスチジン;ポリオルニチン;ポリ−p−アミノスチレン;ポリオキセタン(polyoxethanes);コ−ポリメタクリレート;およびポリアミドアミン。ポリカチオンポリマーはまた、ゼラチンまたはアルブミンのカチオン性形態;カチオン性リン脂質;およびカチオン性デンプンを含む。本発明のより好ましいポリカチオンポリマーは、プロタミンおよびポリリジンである。ポリエチレンイミン(polyethyenimine)(PEI)の使用もまた、本発明において好ましい。
【0055】
(C.リンカー/カップリング因子)
所望であれば、目的のエアロゾル送達処方成分(1つまたは複数)が、生物学的に解離可能な結合(biologically−releasable bond)(例えば、選択的に切断可能なリンカーまたはアミノ酸配列)を介して接合され得る。例えば、腫瘍環境内に優先的に位置するかまたは活性な酵素についての切断部位を含むペプチドリンカーが意図される。このようなペプチドリンカーの例示の形態は、ウロキナーゼ、プラスミン、トロンビン、第IXa因子、第Xa因子、またはメタロプロテイナーゼ(metallaproteinase)(例えば、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、またはストロメリシン(stromelysin))により切断されるリンカーである。
【0056】
特定の実施形態では、ポリエチレングリコール(PEG)が、リンカー/カップリング剤として意図される。ポリエチレングリコールは、ポリカチオン/核酸組み合わせをコートし得ることが意図される。これは、細胞−粒子(ポリマー粒子または脂質粒子)の融合および肺気道上の粒子の接着を増強するための因子として働き、ならびに、標的化リガンドのようなさらなる因子についての付着点として働く。特定の実施形態では、例えば、PEGは、電荷(例えば、イオン性相互作用)および/または共有結合により他の核酸送達成分に付着され得る。
【0057】
さらに、部分を結合体化するために首尾よく用いられ得る多数のタイプのジスルフィド結合含有リンカーが公知であるが、一般に、特定のリンカーが、異なる薬理学的特徴および能力に基づいて、他のリンカーよりも好ましい。例えば、立体的に「障害」となるジスルフィド結合を含むリンカーが、好ましいものであり、これは、インビボでのより大きな安定性に起因し、従って、作用部位での結合の前に部分が放出されることが妨げられる。
【0058】
架橋試薬は、2つの異なる分子(例えば、安定化剤および凝固剤)の官能基を一緒に結合する分子架橋を形成するために使用される。しかし、同じアナログのダイマーまたはマルチマーが作製され得るか、または異なるアナログで構成されるヘテロマー複合体が創出され得ることが意図される。段階状に2つの異なる化合物を連結させるために、望ましくないホモポリマー形成を排除するヘテロ二官能性架橋リンカーが使用され得る。
【0059】
【表1】
例示のヘテロ二官能性架橋リンカーは、2つの反応基を含有する:1つは、1級アミン基(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド)と反応し、そして他方は、チオール基(例えば、ピリジルジスルフィド、マレイミド、ハロゲンなど)と反応する。1級アミン反応基を介して、架橋リンカーは、1つのタンパク質様化合物(例えば、選択された抗体またはフラグメント)のリジン残基(1つまたは複数)と反応し得、そしてチオール反応基を介して、すでに第一のタンパク質様化合物に結合されたこの架橋リンカーは、他のタンパク質様化合物(例えば、別の因子)のシステイン残基(遊離スルフヒドリル基)と反応する。
【0060】
血中で妥当な安定性を有する架橋リンカーが用いられることが好ましい。種々の因子を結合体化するために首尾よく用いられ得る多数のタイプのジスルフィド結合含有リンカーが公知である。立体的に障害となるジスルフィド結合を含むリンカーは、より大きなインビボでの安定性を与えることが判明し得、作用部位に達する前に因子(例えば、標的化剤のような)が放出されることが妨げられる。従って、これらのリンカーは、結合剤の1群である。
【0061】
別の架橋試薬は、SMPTであり、これは、隣接するベンゼン環およびメチル基により「立体的に障害」となるジスルフィド結合を含む二官能性架橋リンカーである。ジスルフィド結合の立体障害は、結合を、組織および血液中に存在し得るチオレートアニオン(例えば、グルタチオン)による攻撃から防御する機能を供し、そしてそれにより、標的部位への付着された因子の送達前に結合体を脱カップリングすることを妨げるように助けると考えられる。
【0062】
SMPT架橋剤は、他の多くの公知の架橋剤と同様に、システインのSHまたは一級アミン(例えば、リジンのεアミノ基)のような官能基を架橋させる傾向がある。別の可能な型の架橋剤としては、切断可能なジスルフィド結合を含むヘテロ二官能性光反応性フェニルアジド(例えば、スルホスクシンイミジル−2−(p−アジドサリチルアミド)エチル−1,3’−ジチオプロピオネート)が挙げられる。N−ヒドロキシスクシンイミジル基は、一級アミノ基と反応し、そしてフェニルアジドは、(光分解の際に)任意のアミノ酸残基と非選択的に反応する。
【0063】
ヒンダード架橋剤に加えて、非ヒンダードリンカーもまた、本明細書に従って使用され得る。保護されたジスルフィドを含むとも生じるともみなされない、他の有用な架橋剤としては、SATA、SPDPおよび2−イミノチオランが挙げられる(WawrzynczakおよびThorpe、1987)。このような架橋剤の使用は、当該分野においてよく理解されている。別の実施形態は、可撓性リンカーの使用を包含する。
【0064】
米国特許第4,680,338号は、リガンドと、アミン含有ポリマーおよび/またはタンパク様化合物との結合体を生成するため(特に、キレート剤、薬物、酵素、検出可能な標識などとの抗体結合体を形成するため)に有用な、二官能性リンカーを記載する。米国特許第5,141,648号および同第5,563,250号は、種々のマイルドな条件下で切断可能な不安定結合を含む、切断可能な結合体を開示する。このリンカーは、目的の薬剤がリンカーに直接結合し得、切断が薬剤の放出を生じる点で、特に有用である。好ましい使用としては、遊離アミノ基または遊離スルフヒドリル基をタンパク様分子(例えば、抗体または薬物など)に付加することが挙げられる。
【0065】
米国特許第5,856,456号は、ポリペプチド構成物を接続して、融合タンパク質(例えば、単鎖抗体)を作製する際に使用するための、ペプチドリンカーを提供する。このリンカーは、約50アミノ酸長までであり、荷電アミノ酸(好ましくは、アルギニンまたはリジン)の後ろにプロリンが続くことを少なくとも1つ含み、そしてより大きな安定性および低下した凝集によって特徴付けられる。米国特許第5,880,270号は、種々の免疫診断技術および分離技術において有用な、アミノオキシ含有リンカーを開示する。
【0066】
(D.タンパク様組成物)
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のタンパク様分子を含む、新規なエアロゾル処方物を包含する。本明細書中で使用される場合、「タンパク様分子」「タンパク様組成物」、「タンパク様化合物」、「タンパク様鎖」、「タンパク様配列」または「タンパク様物質」とは、一般に、約200アミノ酸より大きいタンパク質あるいは遺伝子から翻訳された全長内因性配列;約100アミノ酸より大きいポリペプチド;および/または約3〜約100アミノ酸のペプチドをいうが、これらに限定されない。上記の全ての「タンパク様」の用語は、本明細書中において交換可能に使用され得る。
【0067】
特定の実施形態において、少なくとも1つのタンパク様分子の大きさは、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約66、約67、約68、約69、約70、約71、約72、約73、約74、約75、約76、約77、約78、約79、約80、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99、約100、約110、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、約200、約210、約220、約230、約240、約250、約275、約300、約325、約350、約375、約400、約425、約450、約475、約500、約525、約550、約575、約600、約625、約650、約675、約700、約725、約750、約775、約800、約825、約850、約875、約900、約925、約950、約975、約1000、約1100、約1200、約1300、約1400、約1500、約1750、約2000、約2250、約2500、約2750、約3000、約3250、約3500、約3750、約4000、約4250、約4500、約4750、約5000、約6000、約7000、約8000、約9000、約10000またはそれより多くのアミノ分子残基、およびその中で導き出され得る任意の整数、およびその中で導き出され得る任意の範囲のアミノ分子残基を含み得るが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書中で使用される場合、「アミノ分子」とは、当業者に公知であるような、任意のアミノ酸、アミノ酸誘導体またはアミノ酸模倣物をいう。特定の実施形態において、タンパク様分子の残基は連続的であり、アミノ分子残基の配列を中断するいずれの非アミノ分子も存在しない。他の実施形態において、この配列は、1つ以上の非アミノ分子部分を含み得る。特定の実施形態において、タンパク様分子の残基の配列は、1つ以上の非アミノ分子部分によって中断され得る。
【0069】
従って、用語「タンパク様組成物」とは、天然の合成タンパク質における20の一般アミノ酸の少なくとも1つ、または少なくとも1つの改変されたかもしくは通常でないアミノ酸(これには、以下の表2に示されるものが挙げられるが、これらに限定されない)を含むアミノ分子配列を包含する。
【0070】
【表2】
特定の実施形態において、タンパク様組成物は、少なくとも1種のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含有する。さらなる実施形態において、タンパク様組成物は、生体適合性のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含有する。本明細書中において使用される場合、用語「生体適合性」とは、本明細書中に記載される方法および量に従って、所定の生物に適用または投与される場合に、有意な不都合な影響を生じない物質をいう。このような不都合または所望されない影響は、有意な毒性または有害な免疫学的反応のような影響である。好ましい実施形態において、生体適合性のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含む組成物は、一般に、哺乳動物のタンパク質またはペプチド、あるいは合成されたタンパク質またはペプチドであり、それぞれが本質的に、トキシン、病原体および有害な免疫原を含まない。
【0071】
タンパク様組成物は、当業者に公知の任意の技術(標準的な分子生物学的技術によるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの発現、天然の供給源からのタンパク様化合物の単離、あるいはタンパク様物質の化学合成が挙げられる)によって、作製され得る。種々の遺伝子についてのヌクレオチドおよびタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドの配列が、以前に開示されており、そして当業者に公知のコンピュータ化されたデータベースにおいて見出され得る。1つのこのようなデータベースは、National Center for Biotechnology Informationの、GenbankおよびGenPeptデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)である。これらの公知の遺伝子についてのコード領域は、本明細書中に開示される、または当業者に公知であるような技術を使用して、増幅および/または発現され得る。あるいは、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドの、種々の市販の調製物が、当業者に公知である。
【0072】
特定の実施形態において、タンパク様化合物は、精製され得る。一般に、「精製された」とは、分画に供されて種々の他のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを除去されたタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの組成物の特定のものであって、そして例えば、特定のまたは所望のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドについての当業者に公知であるようなタンパク質アッセイによって評価され得る場合に、組成物がその活性を実質的に維持するものをいう。
【0073】
特定の実施形態において、タンパク様組成物は、少なくとも1種の抗体を含有し得る。特定の組織に対する抗体がその組織を結合し得、そして結合後に、その組織への膠のより堅い接着を促進し得ることが、意図される。本明細書中において使用される場合、用語「抗体」とは、広義に、任意の免疫学的結合因子(例えば、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE)をいうことが意図される。一般に、IgGおよび/またはIgMが好ましい。なぜなら、これらは、生理学的状況において最も通常の抗体であり、そして実験室の設定において最も容易に作製されるからである。
【0074】
用語「抗体」は、抗原結合領域を有する任意の抗体様分子をいうために使用され、そしてFab’、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、scFv(単鎖Fv)などのような抗体フラグメントを含む。種々の抗体に基づく構築物およびフラグメントを調製および使用するための技術は、当該分野において周知である。抗体を調製および特徴付けするための手段もまた、当該分野において周知である(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory、1988を参照のこと;本明細書中に参考として援用される)。
【0075】
事実上任意のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを含む成分が、本明細書中に開示される組成物および方法において使用され得ることが意図される。しかし、特定の実施形態において、タンパク様物質が生体適合性かつ/または薬学的に受容可能であることが、好ましい。本発明における使用のために適切なタンパク質およびペプチドは、自己由来のタンパク質またはペプチドであり得るが、本発明は、明らかに、このような自己由来のタンパク質の使用に限定されない。本明細書中において使用される場合、用語「自己由来のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチド」とは、生物由来であるかまたは生物から得られたタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをいう。従って、「自己由来のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチド」は、選択された動物またはヒト被験体への適用が意図される組成物の成分として、使用され得る。特定の局面において、自己由来のタンパク質またはペプチドは、例えば、選択されたドナー由来の生物学的サンプルから調製される。
【0076】
(E.エンドソーム因子)
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、組成物のエンドソーム取込みを改善し、そして/またはエンドソーム分解を減少させる因子を含有する。このような因子としては、塩基または緩衝剤として作用する因子(例えば、クロロキンまたは塩化アンモニウムなど)、エンドソーム膜を破壊する因子(例えば、フソジェニック(fusogenic)ペプチドなど)、あるいはこのような因子の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。フソジェニックペプチドとしては、IIAインフルエンザウイルスタンパク質または不活化されたアデノウイルスカプシドのN末端由来のペプチドが挙げられるが、これらに限定されない(米国特許第6,083,741号および同第5,908,777号、各々は、本明細書中に参考として援用される)。
【0077】
特定の実施形態において、エンドソーム因子は、トランスフェリン、アシアロオロソムコイド、インスリンまたはこれらの組み合わせのアミノ酸配列の全てまたは一部を含み得る(米国特許第5,792,645号および同第5,972,600号、本明細書中に参考として援用される)。
【0078】
(F.標的化因子)
特定の実施形態において、本明細書中に記載されるエアロゾル送達処方物は、細胞小器官、細胞、組織、器官または生物に対する、少なくとも1種の標的化因子を含有し得る。本明細書中に記載されるかまたは当業者に公知の任意の標的化因子が、本発明の組成物および方法において、単独でかまたは他の標的化因子と組み合わせて使用され得ることが、意図される。特定の実施形態において、標的化因子は、例えば、ポリカチオン、核酸、および/または他の組成物成分に結合され得る。
【0079】
特定の細胞、組織、器官および生物に分子を標的化するための種々の因子は、当業者に公知であり、そして本発明の方法および組成物において使用され得る。例えば、特定の実施形態において、標的化因子としては、EGF、トランスフェリン、抗前立腺特異的膜抗原抗体、内皮特異的ペプチドおよび骨特異的リガンドが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0080】
別の非限定的な実施例において、標的化因子は、抗体、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、リンホカイン、レセプタータンパク質(例えば、CD4、CD8またはその可溶性フラグメントなど)、塩基対相補性を介して対応する核酸を結合する核酸、またはそれらの組み合わせを含み得る(米国特許第6,071,533号、本明細書中に参考として援用される)。他の実施形態において、標的化リガンドは、細胞レセプター標的化リガンド、フソジェニックリガンド、核標的化リガンド、またはこれらの組み合わせを含み得る(米国特許第5,908,777号、本明細書中に参考として援用される)。別の非限定的な例において、標的化リガンドは、インテグリンレセプターリガンドを含み得る(米国特許第6,083,741号に記載、本明細書中に参考として援用される)。
【0081】
なおさらに、エアロゾル送達処方物を使用して、薬学的に受容可能な組成物を、標的細胞に、レセプターにより媒介される送達ビヒクルを介して送達し得る。これらは、標的細胞において起こる、レセプターにより媒介されるエンドサイトーシスによる、高分子の選択的取込みを利用する。種々のレセプターの細胞型特異的分布の観点から、この送達法は、本発明に別の程度の特異性を追加する。
【0082】
特定のレセプターにより媒介される核酸標的化ビヒクルは、細胞レセプター特異的リガンドおよび核酸結合因子を含有する。他のものは、送達される核酸が作動可能に結合している細胞レセプター特異的リガンドを含む。いくつかのリガンドが、レセプターにより媒介される核酸移入のために使用されており(WuおよびWu、1987;Wagnerら、1990;Peralesら、1994;Myers,EPO 0273085)、これは、この技術の作動性を確立する。別の哺乳動物細胞型の状況における特異的送達が、記載されている(WuおよびWu、1993;本明細書中に参考として援用される)。本発明の特定の局面において、リガンドは、標的細胞集団において特異的に発現されるレセプターに対応するように、選択される。
【0083】
(II.脂質)
本発明において、脂質処方物が、エアロゾル処方物において使用される。脂質とは、特徴的に水に不溶性であり、そして有機溶媒で抽出可能な物質である。脂質としては、例えば、細胞質中に天然に存在する脂肪の液滴を含む物質、ならびに長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体(例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、およびアルデヒド)を含む当業者に周知のクラスの化合物が挙げられる。もちろん、当業者によって脂質であると理解される、本明細書中に具体的に記載されるもの以外の化合物もまた、本発明の組成物および方法に包含される。
【0084】
脂質は、天然に存在し得るか、または合成(すなわち、人によって設計または生成)であり得る。しかし、脂質は、通常、生物学的物質である。生物学的脂質は、当該分野において周知であり、そして例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質(lysolipid)、グリコスフィンゴリピド、糖脂質、スルファチド、エーテル結合またはエステル結合した脂肪酸を有する脂質、重合性脂質、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0085】
(A.脂質の型)
脂肪は、グリセロールおよび脂肪酸を含み得る。代表的なグリセロールは、三炭素アルコールである。脂肪酸は、一般に、鎖の末端に酸性部分(例えば、カルボン酸)を有する炭素鎖を含む分子である。この炭素鎖は、任意の長さであり得る脂肪酸のものであり得るが、炭素鎖の長さは、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、またはそれより多くの炭素原子、およびその中で導き出され得る任意の範囲の炭素原子であるものが好ましい。しかし、好ましい範囲は、脂肪酸の鎖部分において約14〜約24個の炭素原子であり、約16〜約18個の炭素原子が、特定の実施形態において、特に好ましい。特定の実施形態において、脂肪酸の炭素鎖は、奇数の炭素原子を含み得るが、鎖における偶数の炭素原子が、特定の実施形態において好ましくあり得る。その炭素鎖中に単結合のみを含む脂肪酸は、飽和と称され、一方でその鎖中に少なくとも1つの二重結合を含む脂肪酸は、不飽和と称される。
【0086】
特定の脂肪酸としては、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、アラキジン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、リシノール酸、ツベルクロステリン酸(tuberculosteric acid)、ラクトバシリン酸(lactobacillic acid)が挙げられるがこれらに限定されない。1つ以上の脂肪酸の酸性基は、グリセロールの1つ以上のヒドロキシル基に共有結合で結合される。従って、モノグリセリドは、グリセロールおよび1つの脂肪酸を含み、ジグリセリドは、グリセロールおよび2つの脂肪酸を含み、そしてトリグリセリドは、グリセロールおよび3つの脂肪酸を含む。
【0087】
リン脂質は、一般的に、グリセロール部分またはスフィンゴシン部分のいずれか、イオン性ホスフェート基(両親媒性の化合物を生成するため)、および1つ以上の脂肪酸を含む。リン脂質の型としては、例えば、ホスホグリセリド(phophoglyceride)(ここでホスフェート基は、ジグリセリドのグリセロールの第1の炭素に連結される)およびスフィンゴリン脂質(例えば、スフィンゴミエリン)(ここでホスフェート基は、スフィンゴシンアミノアルコールに対してエステル化される)が挙げられる。スフィンゴリン脂質の別の例は、スルファチドであり、これは、イオン性スルフェート基を含み、この分子を両親媒性にする。リン脂質は、もちろん、さらなる化学基(例えば、ホスフェート基に結合されたアルコール)を含み得る。このようなアルコール基の例としては、セリン、エタノールアミン、コリン、グリセロールおよびイノシトールが挙げられる。従って、特定のホスホグリセリドとしては、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロールまたはホスファチジル(phosphotidyl)イノシトールが挙げられる。他のリン脂質としては、ホスホコリン、ホスファチジン酸またはジアセチルホスフェートが挙げられる。1つの局面において、ホスファチジルコリンは、ジオレオイルホスファチジルコリン(カルジオリピン(cardiolipin)としても知られる)、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、モノミリストイルホスファチジルコリン、モノパルミトイルホスファチジルコリン、モノステアロイルホスファチジルコリン、モノオレオイルホスファチジルコリン、ジブチリル(dibutroyl)ホスファチジルコリン、ジバレロイルホスファチジルコリン、ジカプロイルホスファチジルコリン、ジヘプタノイルホスファチジルコリン、ジカプリロイルホスファチジルコリンまたはジステアロイルホスファチジルコリンを含む。
【0088】
糖脂質は、スフィンゴリン脂質(sphinogophospholipid)と関連するが、ホスフェート基ではなく、スフィンゴシンの1級ヒドロキシル基に結合した炭水化物基を含む。セレブロシドと呼ばれる糖脂質の型は、1級ヒドロキシル基に結合した1つの糖基(例えば、グルコースまたはガラクトース)を含む。糖脂質の別の例は、ガングリオシド(例えば、モノシアロガングリオシド、GM1)であり、これは、約2個、約3個、約4個、約5個、約6個〜約7個またはそのくらいの糖基を含み、分岐鎖にあってもよく、1級ヒドロキシ基に結合される。他の実施形態において、糖脂質は、セラミド(例えば、ラクトシルセラミド)である。
【0089】
ステロイドは、4つのメンバーの環系のフェナントレンの誘導体である。ステロイドは、しばしば細胞、組織および生物において調節機能を有し、そしてこれらとしては、例えば、ホルモン、ならびにプロゲストゲン(progestagen)ファミリー(例えば、プロゲステロン)、グルココルチコイド(glucoricoid)ファミリー(例えば、コルチソル)、ミネラロコルチコイドファミリー(例えば、アルドステロン)、アンドロゲンファミリー(例えば、テストステロン)およびエストロゲンファミリー(例えば、エストロン)の関連化合物が挙げられる。コレステロールは、ステロイドの別の例であり、そして一般的には調節機能よりも構造的機能に役立つ。ビタミンDは、ステロールの別の例であり、そして腸からのカルシウム吸収に関与する。
【0090】
テルペンは、1つ以上の5炭素イソプレン基を含む脂質である。テルペンは、種々の生物学的機能を有し、そして例えば、ビタミンA,補酵素Qおよびカロテノイド(例えば、リコピンおよびβ−カロテン)を含む。
【0091】
(B.カチオン性脂質組成物)
本発明の好ましい脂質は、カチオン性脂質であり、カチオン性脂質および中性脂質の両方を含む脂質組成物もまた企図される。Felgnerらによる1987年の、カチオン性脂質を用いた首尾よいインビトロでのトランスフェクションの最初の記述以来、合成遺伝子送達系の適用において重要な進歩があった。この進歩の1つの局面は、新しいカチオン性脂質の合成である(Wheelerら;1996、Leeら、1996(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。カチオン性リン脂質は、本発明による脂質組成物を調製するために使用され得る。非限定的な例において、ステアリルアミンは正電荷を脂質組成物に与えるために使用され得る。
【0092】
本発明のエアロゾル処方における使用のために好ましいカチオン性脂質としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリン(例えば、ジパルミトイルグリセロ−エチルホスホコリン(DPEPC)、DSEPC、DMEPC、DLEPC、DOEPCまたはパルミトイル−オレイル−EPC)、ジアシル−ジメチルアンモニウムプロパン(例えば、DSDAP、DPDAP、DMDAP、またはDODAP)、ジアシル−トリメチルアンモニウムプロパン(例えば、DSTAP、DPTAP、DMTAP、またはDOTAP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、N−[1−(2,3−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、DOSPA、3−β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル(carbamoly)]コレステロール(DC−Chol)、3−β−[N−(N,N−ジカルボベンズオキシスペルミジン(dicarbobenzoxyspemidine))カルバモイル]コレステロール、または3−β−(N−スペルミン(spemine)カルバモイル)コレステロール。
【0093】
(C.脂質の作製)
脂質は、当業者に公知であるように、天然供給源、市販供給源から得られ得るか、または化学的に合成され得る(例えば、WO90/11092を参照のこと)。例えば、リン脂質は、天然供給源(例えば、卵もしくはダイズのホスファチジルコリン、脳のホスファチジン酸(phosphatidic acid)、脳または植物のホスファチジルイノシトール、心臓カルジオリピンおよび植物または細菌のホスファチジルエタノールアミン)由来であり得る。別の例において、本発明に従う使用に適切な脂質は、市販供給源から得られ得る。特定の実施形態において、クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は、約−20℃で保存され得る。好ましくは、クロロホルムは、唯一の溶媒として使用される。なぜなら、クロロホルムは、メタノールよりも容易にエバポレートされるからである。
【0094】
(D.脂質組成物構造)
脂質に会合する酵素またはポリペプチド(例えば、CPT I)は、脂質を含む溶液中に分散されていても、脂質に溶解されていても、脂質と共に乳化されていても、脂質と混合されていても、脂質に結合されていても、脂質に共有結合されていても、脂質中に懸濁液として含まれていても、それ以外に脂質と会合していてもよい。本発明の脂質会合組成物または脂質/酵素会合組成物は、任意の特定の構造に限定されない。例えば、これらはまた、溶液中に均一に散在し得、恐らく、大きさまたは形態のいずれかにおいて均一でない凝集体を形成し得る。別の例において、これらは、二分子膜構造においてミセルとしてまたは、「崩壊」構造で存在し得る。別の非限定の例において、リポフェクタミン(Gibco BRL)−酵素複合体またはSuperfect(Qiagen)−酵素複合体もまた企図される。
【0095】
特定の実施形態において、脂質組成物は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%またはそれらの導き出せる任意の範囲の、特定の脂質、脂質型または非脂質成分(例えば、薬物、タンパク質、糖、核酸または当業者に公知もしくは本明細書中に開示される他の物質)を含み得る。従って、本発明の脂質組成物は、任意の組み合わせまたは任意の範囲のパーセンテージの、任意の脂質、脂質型または他の成分を含み得る。
【0096】
(E.エマルジョン)
脂質は、エマルジョンに含まれ得る。脂質エマルジョンとは、機械的な撹拌または乳化剤として公知の少量の追加物質による、通常互いに溶解しない2つ以上の液体の、実質的に不変の異質な液体混合物である。脂質エマルジョンを調製するための方法および追加成分を添加する方法は、当該分野において周知である(例えば、Bakerら、1990(本明細書中に参考として援用される))。
【0097】
例えば、1種類以上の脂質が、エタノールまたはクロロホルムまたは任意の適当な他の溶媒に添加され、そして手動または機械的技術によって撹拌される。次いで、この溶媒は、この混合物からエバポレートされ、乾燥グレーズ状の脂質が残る。この脂質は、水性媒体(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)に再溶解され、エマルジョンを生じる。乳化された脂質のより均一なサイズの分配を達成するために、この混合物は、慣用の超音波処理技術を用いて超音波処理され得、さらにミクロな流体化(microfluidization)を用いて(例えば、Microfluidizer、Newton、Massを用いて)乳化され得、そして/または押出し成形機(Lipex Biomembranes、Vancouver、Canada)を用いて高圧下(例えば、600psi)で押し出され得る。
【0098】
(F.ミセル)
脂質は、ミセルに含まれ得、ミセルは、さらに、CPTIのようなタンパク質を含み得る。ミセルとは、一般的に脂質モノレイヤー形態の、脂質化合物のクラスターまたは凝集物であり、当業者に公知の任意のミセル作製プロトコルを用いて調製され得る(例えば、Canfieldら、1990;El−Gorabら、1973;Shinodaら、1963;およびFendlerら、1975(各々、本明細書中に参考として援用される))。例えば、1つ以上の脂質は、代表的に、有機溶媒中の懸濁液を作製され、その溶媒は、エバポレートされ、その脂質は、水性媒体中に再懸濁され、超音波処理され、次いで遠心分離される。
【0099】
(G.リポソーム)
特定の実施形態において、この脂質は、リポソームを含む。「リポソーム」とは、包理された脂質二分子膜または凝集物の作製により形成される種々の単層脂質ビヒクルおよびマルチラメラ脂質ビヒクルを包含する一般的な用語である。タンパク質およびリポソームの組み合わせは、「プロテオリポソーム(proteoliposome)として特徴付けられ得る。従って、リポソーム中のCPT Iは、「プロテオリポソームCPT I」として示され得る。リポソームは、二分子膜膜および内部媒体を有するベシクル構造を有すると特徴付けられ得、この二分子膜膜は、一般的にリン脂質を含み、この内部媒体は、水性組成物を含む。
【0100】
マルチラメラリポソームは、水性媒体により区切られた複数の脂質層を有する。リン脂質を含む脂質が、過剰の水溶液中に懸濁される場合、このマルチラメラリポソームは、自発的に形成される。この脂質成分は、閉構造の形成の前に、自己再配置に供されそして脂質二分子膜の間の水および溶解された溶質を閉じ込める(GhoshおよびBachhawat、1991)。親油性分子または親油性領域を有する分子もまた、脂質二分子膜中に溶解され得るか、またはそれと会合する。
【0101】
特定の局面において、脂質および/またはCPT Iは、例えば、リポソームの水性の内部に包まれ得、リポソームの脂質二分子膜内に散在され得、リポソームおよびCPT Iの両方に会合する結合分子を介してリポソームに結合され得、リポソーム中に閉じ込めら得、リポソームと複合体化し得る、などをし得る。
【0102】
(H.リポソームの作製)
本発明に従い用いられるリポソームは、当業者に知られているような異なる方法によって作製され得る。
【0103】
リポソームは、容器(例えば、ガラス製、洋ナシ型フラスコ)中で、溶媒中の脂質を混合することにより調製され得る。この容器は、予想されるリポソームの懸濁物の容量より10倍多い容量を有するべきである。ロータリーエバポレーターを用いて、この溶媒を、減圧下、約40℃で除去した。この溶媒は、通常、リポソームの所望の容量に依存して、約5分〜約2時間以内で除去される。この組成物は、真空下のデシケーター中でさらに乾燥され得る。この乾燥脂質は、一般的に、時間と共に劣化する傾向に起因して、約1週間後に廃棄される。
【0104】
乾燥脂質は、全ての脂質膜が再懸濁されるまで回転させることによって、滅菌され発熱源を含まない水中の約25〜50mMのリン脂質で水和され得る。次いで、水和したリポソームは、アリコートに分割され、各々バイアルに入れられ、親油化され、そして真空下でシールされる。
【0105】
他の代替的方法において、リポソームは、他の公知の実験室的手順(例えば、Banghamら、1965;Gregoriadis、1979;DeamerおよびUster 1983;SzokaおよびPapahadjopoulos、1978(各々、その関連する部分が、本明細書中に参考として援用される))に従って調節され得る。これらの方法は、これらの夫々が水性物質を閉じ込める能力およびこれらの各々の脂質に対する水性空間の比率において異なる。
【0106】
上記のように調製された乾燥脂質または親油性リポソームは、脱水され得そして阻害性ペプチドの溶液中で再構成され得、そして適切な溶媒(例えば、DPBS)を用いて適切な濃度に希釈され得る。次いで、この混合物は、ボルテックスミキサー中で激しく振盪される。
【0107】
包まれていない追加物質(例えば、ホルモン、薬物、核酸構築物などが挙げられるがこれらに限定されない薬剤)は、29,000×gでの遠心分離により除去され、そしてこのリポソームペレットは、洗浄される。この洗浄されたリポソームは、適当な総リン脂質濃度(例えば、約50〜200mM)で再懸濁される。包まれている追加物質または活性な薬剤の量は、標準法に従い、決定され得る。リポソーム調製物中に包まれている追加物質または活性な薬剤の量の決定の後、このリポソームは、適切な濃度まで希釈され得、そして4℃で使用まで保存され得る。リポソームを含む薬学的組成物は、通常、滅菌の、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤(例えば、水または生理食塩水溶液)を含み得る。
【0108】
リポソームの大きさは、合成の方法に依存して、異なる。本発明におけるリポソームは、種々の大きさであり得る。特定の実施形態において、このリポソームは、小さい(例えば、外径100nm未満、外径90nm未満、外径80nm未満、外径70nm未満、外径60nm未満、または外径50nm未満)。そのようなリポソームの調製において、本明細書中に記載される任意のプロトコルまたは当業者に知られているようなプロトコルが用いられ得る。リポソームの調製のさらなる非限定の例は、以下に記載される:米国特許第4,728,578号、同第4,728,575号、同第4,737,323号、同第4,533,254号、同第4,162,282号、同第4,310,505号、および同第4,921,706号;国際出願PCT/US85/01161およびPCT/US89/05040;英国特許出願GB2193095 A;Mayerら、1986;Hopeら、1985;Mayhewら、1987;Mayhewら、1984;Chengら、1987;およびLiposome Technology、1984(各々、本明細書中に参考として援用される)。
【0109】
水溶液中に懸濁されるリポソームは、一般的に、脂質二分子膜分子の1つ以上の同心の層を有する、球状ベシクルの形態である。各々の層は、式XYにより表される同方向の分子からなり、ここでXは、親水部分であり、そしてYは疎水部分である。水性懸濁液中で、この同心の層は、この親水部分が水層に接触しているままである傾向にあり、かつ疎水部分が自己会合する傾向にあるように配置される。例えば、水層がこのリポソームの内側および外側の両方に存在する場合、この脂質分子は、配置XY−YXの、ラメラとして知られている、二分子膜を形成し得る。1より多い脂質分子の親水部分および疎水部分の脂質の会合が、互いに会合する場合、脂質の凝集物を形成し得る。これらの凝集物の大きさおよび形態は、多くの異なる変数(例えば、溶媒の性質および溶液中の他の化合物の存在)に依存する。
【0110】
脂質処方物の作製は、しばしば、以下の工程の後の、リポソーム混合物の超音波処理または連続的な押し出しにより達成される:(I)逆層エバポレーション(II)脱水−再水和(III)界面活性剤透析(detergent dialysis)および(IV)薄層水和。1つの局面において、特定の実施形態においてリポソームを調製するために企図される方法は、加熱超音波処理(heating sonication)、および減少するポアサイズのフィルターまたは膜を通しての脂質の連続的押し出しであり、これにより、小さく、安定なリポソーム構造の形成を生じる。この調製は、適切かつ均一な大きさのリポソーム/ポリペプチドまたは単独のリポソームを生成し、これらのリポソーム/ポリペプチドまたは単独のリポソームは、構造的に安定であり、そして最大の活性を生じる。そのような技術は、当業者に周知である(例えば、Martin、1990を参照のこと)。当然、リポソーム調製の任意の他の方法は、当業者によって用いられ得、本発明において所望のリポソーム処方物を得ることを可能とする。
【0111】
(I.脂質媒介送達)
インビトロにおける外来DNAの脂質媒介核酸送達および発現は、非常に成功している(NicolauおよびSene,1982;Fraleyら,1979;Nicolauら,1987)。Wongら(1980)は、培養ヒヨコ胚、Hela細胞および肝癌細胞における外来DNAの脂質媒介送達および発現の可能性を実証している。脂質に基づく非ウイルス処方物は、アデノウイルス遺伝子治療の代替を提供する。多くの細胞培養研究が、脂質に基づく非ウイルス遺伝子移入を文書化しているが、脂質に基づく処方物を介した全身性遺伝子送達は限定されている。非ウイルスの脂質に基づく遺伝子送達の主要な限定要因は、非ウイルス送達ビヒクルを含むカチオン性脂質の低い送達効率である。リポソームのインビボ毒性は、インビトロ遺伝子移入の結果とインビボ遺伝子移入の結果との間の矛盾を一部説明する。この矛盾したデータの原因となる別の要因は、血清タンパク質の存在および非存在下での脂質ビヒクル安定性における差異である。脂質ビヒクルと血清タンパク質との間の相互作用は、脂質ビヒクルの安定性特徴に対して劇的な影響を有する(YangおよびHuang,1997)。カチオン性脂質は、負に荷電した血清タンパク質を誘引し、そしてこれに結合する。血清タンパク質と会合する脂質ビヒクルは、溶解するか、またはマクロファージによって取り込まれて、循環中から除去される。現在のインビボ脂質送達方法は、皮下注射、皮内注射、腫瘍内注射、または頭蓋内注射を使用して、循環中のカチオン性脂質と関連する全身性の毒性問題および安定性問題を回避している。脂質ビヒクルと血漿タンパク質との間の相互作用は、インビトロ遺伝子移入の効率(Felgnerら,1987)およびインビボ遺伝子移入の効率(Zhuら,1993;Philipら,1993;Solodinら,1995;Liuら,1995;Thierryら,1995;Tsukamotoら,1995;Aksentijevichら,1996)との間の矛盾の説明となる。
【0112】
(III.エアロゾル送達処方物)
エアロゾルは、ガスおよび個々の粒子(固体形態または液体形態のいずれか)を含む2相系である(Swift,D.L.,1985)。このエアロゾルは、癌および他の肺関連疾患の処置および/または予防のために、気管、咽頭、気管支などに薬学的に受容可能な組成物を送達するために使用され得る。このエアロゾル送達はまた、肺における薬学的薬剤の吸着を介した、血流への薬学的に受容可能な組成物の送達のために使用され得る。これは、胃と比較して、肺の非常に広い表面積からの血液中への迅速な吸着に起因して、有利であり得る。さらに、胃で破壊される薬学的に活性な薬剤は、本発明のエアロゾル送達処方物によって投与され得る。
【0113】
吸入の際に、エアロゾルは、気管を通過し、気管は、気管支ネットワークを構成する小さい管に連続的に17回より多く枝分かれし、最終的に肺胞として公知の小さな肺胞嚢のブドウ状クラスターに達する。気道の各呼吸は、肺胞上皮へと肺組織の深くに分配され、この肺胞上皮の表面積は、成体において約100m2と測定される(これは、おおよそ標準的なテニスコート一面の表面積に等価である)。この広い面積は、5億個の肺胞から作製され、この肺胞から、酸素が広範な毛細血管ネットワークを介して血流へと通過する。肺を介した化合物の送達に対する障壁は、肺上皮として公知の、きっちりと固められた単一細胞の厚い層である。肺において、気道の上皮は、肺胞の上皮と非常に異なる。厚い繊毛のある粘液で覆われた細胞が、気道の表面に並ぶが、上皮細胞層は、きっちりと固められた肺胞上皮に達するまで、肺のより深くへと達するにつれまばらになる。ほとんどのタンパク質吸収は肺胞で生じ、この肺胞において体は、ペプチドおよびタンパク質をトランスサイトーシスとして公知の天然のプロセスによって血流中に吸収する(http://pubs.acs.org/hotartcl/chemtech/97/dec/deep.htm)。
【0114】
本発明の処方物は、適切な方法によって肺に導入される。このエアロゾルは、マウスピース、フェースマスクなどを介してエアロゾルを送達するように設計された医療噴霧器系によって生成され得る。種々の噴霧器が、当該分野で公知である(例えば、米国特許第4,268,460号、米国特許第4,253,468号、米国特許第4,046,146号、米国特許第4,649,911号、米国特許第4,510,929号、米国特許第4,627,432号、米国特許第6,089,228号、および米国特許第6,138,668号(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される)に記載される噴霧器)。
【0115】
エアロゾル処方物は、小さい薬物分子および大きい薬物分子のいずれかをカプセル化するために使用され得る。このエアロゾル処方物はまた、1時間未満、約1時間未満、約2時間未満、約3時間未満、約4時間未満、約5時間未満、約6時間未満、約7時間未満、約8時間未満、約9時間未満、約10時間未満、約11時間未満、約12時間未満、約13時間未満、約14時間未満、約15時間未満、約16時間未満、約17時間未満、約18時間未満、約1日未満、約2日未満、約3日未満、約4日未満、約5日未満、約6日未満、約7日未満、約8日未満、約9日未満、約10日未満、約12日未満、約13日未満、約14日未満、約15日未満、約16日未満、約17日未満、約18日未満、約1ヶ月未満、約2ヶ月未満、約3ヶ月未満、約4ヶ月未満、約5ヶ月未満、約6ヶ月未満、約7ヶ月未満、約8ヶ月未満、約9ヶ月未満、約10ヶ月未満、約11ヶ月未満、約1年未満、約2年未満、約3年未満、約4年未満、またはこれらの中の任意の期間、からの範囲の期間にわたって、カプセル化された薬物の制御された放出のために使用され得る。
【0116】
エアロゾル処方物は、その処方物が、エアロゾル送達と関連する剪断力およびエアロゾル送達および肺への沈着と関連する極度な条件から薬学的組成物を保護し得るように、開発される。
【0117】
薬物を肺の種々の組織に標的化する際に、送達される粒子のサイズが、適切なサイズの範囲を得るために変更されることは、当該分野で公知である。大きい粒子は、一般的に、気道または鼻咽腔に沈着され、一方、小さい粒子は、肺のより深くへ送達される。約10μm、7μm、5μm、2μm、1μm、0.5μm、0.1μm、または0.05μm未満の平均直径を有する小さい粒子が、肺への送達に好ましい。大きい粒子は、肺胞に達しない。気道への送達に関して、約20μm、10μm、または5μm未満の平均直径を有する大きい粒子が、好ましくあり得る。この粒子は、固形または液滴のいずれかを含み得る。噴霧器における懸濁物中の粒子サイズは、好ましくは0.05μmと3.0μmとの間である。
【0118】
患者への送達のための処方物を考慮する場合に重要な考慮事項は、処方物の毒性である。多くのエアロゾル処方物が、DNAを保護するためおよび安定性を増大するために作製されているが、これは、一般的に、高い毒性を有する組成物を導く(Bousiffら、1995;Boussifら、1996)。
【0119】
(IV.ポリカチオンポリマー、カチオン性脂質および他の組成物の組み合わせ)
特定の実施形態において、望ましい組成物は、以下のうちの2つ以上の組み合わせを含むことが意図される:ポリカチオンポリマー、脂質、カチオン性脂質、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、核酸、および薬学的に受容可能な成分。この成分の各々は、他のものと異なる濃度であり得(高い濃度または低い濃度のいずれか)、望ましい組成物は、本明細書中に記載される方法の適用によって生成され得る。
【0120】
従って、本発明の特定の実施形態において、ポリカチオンポリマー、脂質、カチオン性脂質、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、核酸、または薬学的に受容可能な成分のうちの1つの濃度の比率は、他の成分のいずれかと組み合わされ得る。この比率は、約1:1、約1.1:1、約1.2:1、約1.3:1、約1.4:1、約1.5:1、約1.6:1、約1.7:1、約1.8:1、約1.9:1、約2.0:1、約2.1:1、約2.2:1、約2.3:1、約2.4:1、約2.5:1、約2.6:1、約2.7:1、約2.8:1、約2.9:1、約3.0:1、約3.1:1、約3.2:1、約3.3:1、約3.4:1、約3.5:1、約3.6:1、約3.7:1、約3.8:1、約3.9:1、約4.0:1、約4.1:1、約4.2:1、約4.3:1、約4.4:1、約4.5:1、約4.6:1、約4.7:1、約4.8:1、約4.9:1、約5.0:1、約5.1:1、約5.2:1、約5.3:1、約5.4:1、約5.5:1、約5.6:1、約5.7:1、約5.8:1、約5.9:1、約6.0:1、約6.1:1、約6.2:1、約6.3:1、約6.4:1、約6.5:1、約6.6:1、約6.7:1、約6.8:1、約6.9:1、約7.0:1、約7.1:1、約7.2:1、約7.3:1、約7.4:1、約7.5:1、約7.6:1、約7.7:1、約7.8:1、約7.9:1、約8.0:1、約8.1:1、約8.2:1、約8.3:1、約8.4:1、約8.5:1、約8.6:1、約8.7:1、約8.8:1、約8.9:1、約9.0:1、約9.1:1、約9.2:1、約9.3:1、約9.4:1、約9.5:1、約9.6:1、約9.7:1、約9.8:1、約9.9:1、約10.0:1、約10.1:1、約10.2:1、約10:3:1、約10.4:1、約10.5:1、約10.6:1、約10.7:1、約10.8:1、約10.9:1、約11.0:1、約11.1:1、約11.2:1、約11.3:1、約11.4:1、約11.5:1、約11.6:1、約11.:1、約11.8:1、約11.9:1、約12.0:1、約12.2:1、約12.3:1、約12.4:1、約12.5:1、約12.6:1、約12.7:1、約12.8:1、約12.9:1、約13.0:1、約13.1:1、約13.2:1、約13.3:1、約13.4:1、約13.5:1、約13.6:1、約13.7:1、約13.8:1、約13.9:1、約14.0:1、約14.1:1、約14.2:1、約14.3:1、約14.4:1、約14.5:1、約14.6:1、約14.7:1、約14.8:1、約14.9:1、約15.0:1、約15.1:1、約15.2:1、約15.3:1、約15.4:1、約15.5:1、約15.6:1、約15.7:1、約15.8:1、約15.9:1、約16.0:1、約16.1:1、約16.2:1、約16.3:1、約16.4:1、約16.5:1、約16.6:1、約16.7:1、約16.8:1、約16.9:1、約17.0:1、約17.1:1、約17.2:1、約17.3:1、約17.4:1、約17.5:1、約17.6:1、約17.7:1、約17.8:1、約17.9:1、約18.0:1、約18.1:1、約18.2:1、約18.3:1、約18.4:1、約18.5:1、約18.6:1、約18.7:1、約18.8:1、約18.9:1、約19.0:1、約19.1:1、約19.2:1、約19.3:1、約19.4:1、約19.5:1、約19.6:1、約19.7:1、約19.8:1、約19.9:1、約20.0:1、約50:1、約100:1、約500:1、約1,000:1、約5,000:1、約10,000:1、約100,000:1、約1,000,000:1またはこれらより上、およびこれらの中に誘導可能な任意の整数、およびこれらの中に誘導可能な任意の範囲であり得る。このような誘導可能な範囲の非限定的な例において、この濃度比率は、約6.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の非限定的な例において、この濃度比率は、約1:6.0未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約1.4:1〜約6.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約1.4:1〜約5.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約4.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約1.4:1〜約3.5:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約1.4:1〜約3.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約2:1〜約3.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約5.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約4.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約3.5:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約3.0:1未満であり得る。
【0121】
従って、本発明のある実施形態において、他の成分を含有する別の液体培地と組み合わされた、ポリカチオンポリマーまたは核酸のいずれか一方を含有する液体組成物(例えば、溶液、乳濁液、懸濁液など)の容積の比は、約1.4:1、約1.5:1、約1.6:1、約1.7:1、約1.8:1、約1.9:1、約2.0:1、約2.1:1、約2.2:1、約2.3:1、約2.4:1、約2.5:1、約2.6:1、約2.7:1、約2.8:1、約2.9:1、約3.0:1、約3.1:1、約3.2:1、約3.3:1、約3.4:1、約3.5:1、約3.6:1、約3.7:1、約3.8:1、約3.9:1、約4.0:1、約4.1:1、約4.2:1、約4.3:1、約4.4:1、約4.5:1、約4.6:1、約4.7:1、約4.8:1、約4.9:1、約5.0:1、約5.1:1、約5.2:1、約5.3:1、約5.4:1、約5.5:1、約5.6:1、約5.7:1、約5.8:1、約5.9:1、約6.0:1、約6.1:1、約6.2:1、約6.3:1、約6.4:1、約6.5:1、約6.6:1、約6.7:1、約6.8:1、約6.9:1、約7.0:1、約7.1:1、約7.2:1、約7.3:1、約7.4:1、約7.5:1、約7.6:1、約7.7:1、約7.8:1、約7.9:1、約8.0:1、約8.1:1、約8.2:1、約8.3:1、約8.4:1、約8.5:1、約8.6:1、約8.7:1、約8.8:1、約8.9:1、約9.0:1、約9.1:1、約9.2:1、約9.3:1、約9.4:1、約9.5:1、約9.6:1、約9.7:1、約9.8:1、約9.9:1、約10.0:1、約10.1:1、約10.2:1、約10.3:1、約10.4:1、約10.5:1、約10.6:1、約10.7:1、約10.8:1、約10.9:1、約11.0:1、約11.1:1、約11.2:1、約11.3:1、約11.4:1、約11.5:1、約11.6:1、約11.:1、約11.8:1、約11.9:1、約12.0:1、約12.2:1、約12.3:1、約12.4:1、約12.5:1、約12.6:1、約12.7:1、約12.8:1、約12.9:1、約13.0:1、約13.1:1、約13.2:1、約13.3:1、約13.4:1、約13.5:1、約13.6:1、約13.7:1、約13.8:1、約13.9:1、約14.0:1、約14.1:1、約14.2:1、約14.3:1、約14.4:1、約14.5:1、約14.6:1、約14.7:1、約14.8:1、約14.9:1、約15.0:1、約15.1:1、約15.2:1、約15.3:1、約15.4:1、約15.5:1、約15.6:1、約15.7:1、約15.8:1、約15.9:1、約16.0:1、約16.1:1、約16.2:1、約16.3:1、約16.4:1、約16.5:1、約16.6:1、約16.7:1、約16.8:1、約16.9:1、約17.0:1、約17.1:1、約17.2:1、約17.3:1、約17.4:1約17.5:1、約17.6:1、約17.7:1、約17.8:1、約17.9:1、約18.0:1、約18.1:1、約18.2:1、約18.3:1、約18.4:1、約18.5:1、約18.6:1、約18.7:1、約18.8:1、約18.9:1、約19.0:1、約19.1:1、約19.2:1、約19.3:1、約19.4:1、約19.5:1、約19.6:1、約19.7:1、約19.8:1、約19.9:1、約20.0:1、約50:1、約100:1、約500:1、約1,000:1、約5,000:1、約10,000:1、約100,000:1、約1,000,000:1またはより大きな比であり得、そして、この中から誘導可能な任意の整数であり得、そしてこの中から誘導可能な任意の範囲であり得る。このような誘導可能な範囲の非限定的な例において、核酸を含む液体培地の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積の比は、約6.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の非限定的な例において、核酸を含む液体培地の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約1:6.0未満であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約1.4:1〜約6.0:1の間であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約1.4:1〜約5.0:1の間であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約1.4:1〜約4.0:1の間であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約1.4:1〜約3.5:1の間であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約1.4:1〜約3.0:1の間であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約2:1〜約3.0:1の間であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約5.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約4.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約3.5:1未満であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約3.0:1未満であり得る。
【0122】
本発明の他の実施形態において、核酸のアニオン部分と結合したポリカチオンのカチオン部分またはカチオン残基の比(あるいはその逆の比(visa verceは、1:1、約1.1:、約1.2:1、約1.3:1、約1.4:1、約1.5:1、約1.6:1、約1.7:1、約1.8:1、約1.9:1、約2.0:1、約2.1:1、約2.2:1、約2.3:1、約2.4:1、約2.5:1、約2.6:1、約2.7:1、約2.8:1、約2.9:1、約3.0:1、約3.1:1、約3.2:1、約3.3:1、約3.4:1、約3.5:1、約3.6:1、約3.7:1、約3.8:1、約3.9:1、約4.0:1、約4.1:1、約4.2:1、約4.3:1、約4.4:1、約4.5:1、約4.6:1、約4.7:1、約4.8:1、約4.9:1、約5.0:1、約5.1:1、約5.2:1、約5.3:1、約5.4:1、約5.5:1、約5.6:1、約5.7:1、約5.8:1、約5.9:1、約6.0:1、約6.1:1、約6.2:1、約6.3:1、約6.4:1、約6.5:1、約6.6:1、約6.7:1、約6.8:1、約6.9:1、約7.0:1、約7.1:1、約7.2:1、約7.3:1、約7.4:1、約7.5:1、約7.6:1、約7.7:1、約7.8:1、約7.9:1、約8.0:1、約8.1:1、約8.2:1、約8.3:1、約8.4:1、約8.5:1、約8.6:1、約8.7:1、約8.8:1、約8.9:1、約9.0:1、約9.1:1、約9.2:1、約9.3:1、約9.4:1、約9.5:1、約9.6:1、約9.7:1、約9.8:1、約9.9:1、約10.0:1、約10.1:1、約10.2:1、約10:3:1、約10.4:1、約10.5:1、約10.6:1、約10.7:1、約10.8:1、約10.9:1、約11.0:1、約11.1:1、約11.2:1、約11.3:1、約11.4:1、約11.5:1、約11.6:1、約11.:1、約11.8:1、約11.9:1、約12.0:1、約12.2:1、約12.3:1、約12.4:1、約12.5:1、約12.6:1、約12.7:1、約12.8:1、約12.9:1、約13.0:1、約13.1:1、約13.2:1、約13.3:1、約13.4:1、約13.5:1、約13.6:1、約13.7:1、約13.8:1、約13.9:1、約14.0:1、約14.1:1、約14.2:1、約14.3:1、約14.4:1、約14.5:1、約14.6:1、約14.7:1、約14.8:1、約14.9:1、約15.0:1、約15.1:1、約15.2:1、約15.3:1、約15.4:1、約15.5:1、約15.6:1、約15.7:1、約15.8:1、約15.9:1、約16.0:1、約16.1:1、約16.2:1、約16.3:1、約16.4:1、約16.5:1、約16.6:1、約16.7:1、約16.8:1、約16.9:1、約17.0:1、約17.1:1、約17.2:1、約17.3:1、約17.4:1、約17.5:1、約17.6:1、約17.7:1、約17.8:1、約17.9:1、約18.0:1、約18.1:1、約18.2:1、約18.3:1、約18.4:1、約18.5:1、約18.6:1、約18.7:1、約18.8:1、約18.9:1、約19.0:1、約19.1:1、約19.2:1、約19.3:1、約19.4:1、約19.5:1、約19.6:1、約19.7:1、約19.8:1、約19.9:1、約20.0:1、約50:1、約100:1、約500:1、約1,000:1、約5,000:1、約10,000:1、約100,000:1、約1,000,000:1またはより大きい比率であり得、そして、この中から誘導可能な任意の整数であり得、そしてこの中から誘導可能な任意の範囲であり得る。アニオン部分に対するカチオン部分の範囲の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数が、約6.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約1.4:1〜約6.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約1.4:1〜約5.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約1.4:1〜約4.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約1.4:1〜約3.5:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約1.4:1〜約3.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約2:1〜約3.0:1で未満あり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約5.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約4.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約3.5:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約3.0:1未満であり得る。さらなる非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約2.4:1〜2.7:1である。さらなる非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、1.5:1〜6:1である。
【0123】
ポリカチオンポリマー、カチオン性脂質、PEG、PEI、核酸、および薬学適に受容可能な因子を含有する組成物は、本明細書中に記載される方法のいずれかかまたは当業者に公知の任意の方法によって結合され得る。例えば、ポリカチオンポリマーを含有する組成物は、核酸を含有する組成物に加えられ得、核酸を含む組成物は、ポリカチオンを含む組成物に加えられ得、および/または両方の組成物は、互いに加えられ得る。加えられる種々のエアロゾル送達処方物の成分の他の非限定的な例が、本明細書中に記載される。
【0124】
(V.核酸組成物)
本発明のある実施形態は、精製された核酸に関する。ある局面において、精製された核酸は、野生型または変異体の核酸を含む。特定の局面において、核酸は、転写される核酸をコードするかまたは転写される核酸を含む。特定の局面において、核酸は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドをコードする。
【0125】
用語「核酸」は、当該分野で周知である。「核酸」と本明細書中で使用される場合、一般にDNA、RNAあるいは核酸塩基を含むこれらの誘導体またはアナログの分子(すなわち、鎖)のことをいう。核酸塩基は、例えば、天然に存在するプリン塩基またはピリミジン塩基を含み、これらはDNA中(例えば、アデニン「A」、グアニン「G」、チミン「T」またはシトシン「C」が)またはRNA中(例えば、A、G、ウラシル「U」またはCが)に見いだされる。用語「核酸」は、用語「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」の各々を、用語「核酸」の亜族として包含する。用語「オリゴヌクレオチド」は、約8ヌクレオチドと約100ヌクレオチドとの間の長さの分子のことをいう。用語「ポリヌクレオチド」は、約100ヌクレオチドの長さより長い少なくとも1つの分子のことをいう。
【0126】
これらの定義は、一般に一本鎖分子のことをいうが、特定の実施形態においては、一本鎖分子に対して、部分的に、実質的にまたは完全に相補的な付加的なストランドも包含する。従って、核酸は、1つ以上の相補的な鎖を含む二本鎖分子または三本鎖分子、あるいは分子を含む特定の配列の「相補体」を包含し得る。本明細書中で使用される場合、一本鎖核酸は、接頭語「ss」と記され得、二本鎖核酸は、接頭語「ds」そして三本鎖核酸は接頭語「ts」と記される。
【0127】
(A.核酸塩基)
本明細書中で使用される場合、「核酸塩基」とは、複素環塩基のことをいい、例えば、少なくとも1つの天然に存在する核酸(すなわちDNAおよびRNA)中に見出される天然に存在する核酸塩基(すなわち、A、T、G、CまたはU)、ならびにこのような核酸塩基の、天然に存在するかまたは天然には存在しない誘導体およびアナログである。核酸塩基は概して、少なくとも1つの天然に存在する核酸塩基と1つ以上の水素結合(「アニール」または「ハイブリダイズ」)を、天然に存在する核酸塩基対形成と置換され得る様式(例えば、AとTとの間、GとCとの間、および、AとUとの間の水素結合)で形成し得る。
【0128】
「プリン」核酸塩基および/または「ピリミジン」核酸塩基は、天然のプリン核酸塩基および/またはピリミジン核酸塩基、ならびにそれらの誘導体およびアナログを包含し、これには、1つ以上のアルキル部分、カルボキシル部分、アミノ部分、ヒドロキシル部分、ハロゲン(すなわち、フルオロ、クロロ、ブロモ、もしくはヨード)部分、チオール部分、またはアルキルチオ部分のうちの1つ以上によって置換されたプリンまたはピリミジンが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいアルキル(例えば、アルキル、カルボキシアルキルなど)部分は、約1個から、約2個、約3個、約4個、約5個、約6個までの炭素原子から構成される。プリンまたはピリミジンの他の非制限的な例としては、デアザプリン、2,6−ジアミノプリン、5−フルオロウラシル、キサンチン、ヒポキサンチン、8−ブロモグアニン、8−クロログアニン、ブロモチミン、8−アミノグアニン、8−ヒドロキシグアニン、8−メチルグアニン、8−チオグアニン、アザグアニン、2−アミノプリン、5−エチルシトシン、5−メチルシトシン、5−ブロモウラシル、5−エチウラシル、5−ヨードウラシル、5−クロロウラシル、5−プロピルウラシル、チオウラシル、2−メチルアデニン、メチルチオアデニン、N,N−ジメチルアデニン、アザアデニン、8−ブロモアデニン、8−ヒドロキシアデニン、6−ヒドロキシアミノプリン、6−チオプリン、4−(6−アミノヘキシル/シトシン)などが挙げられる。非限定的なプリンおよびピリミジンの誘導体およびアナログの表が、本明細書中の以下に提供される。
【0129】
【表3】
核酸塩基は、本明細書中に記載されるかまたは当業者に公知の任意の化学合成法または天然合成法を使用して、ヌクレオシドまたはヌクレオチドに構成され得る。
【0130】
(B.ヌクレオシド)
本明細書中で使用される場合、「ヌクレオシド」とは、ヌクレオシドリンカー部分に共有結合する核酸塩基を含む個々の化学単位をいう。「核酸塩基リンカー部分」の非制限的な例は、5−炭素原子を含む糖(すなわち、「5−炭素糖」)であり、これには、デオキシリボース、リボース、アラビノース、または5−炭素糖の誘導体もしくはアナログが挙げられる。5−炭素糖の誘導体またはアナログの非限定的な例としては、2’−フルオロ−2’−デオキシリボース、または炭素が糖環の酸素原子の代わりに使用される炭素環式糖が挙げられる。
【0131】
核酸塩基リンカー部分への核酸塩基の異なる型の共有結合が、当該分野において公知である。非限定的な例として、プリンを含むヌクレオシド(すなわち、AまたはG)、または7−デアザプリン核酸塩基は、代表的に、プリンまたは7−デアザプリンの9位を、5−炭素糖の1’位に共有結合する。別の非制限的な例として、ピリミジン核酸塩基を含むヌクレオシド(すなわち、C、T、またはU)は、代表的に、ピリミジンの1位を、5−炭素糖の1’位に共有結合する(KornbergおよびBaker、1992)。
【0132】
(C.ヌクレオチド)
本明細書中で使用される場合、「ヌクレオチド」とは、「骨格部分」をさらに含むヌクレオシドをいう。骨格部分は、一般的に、ヌクレオチドを、ヌクレオチドを含む別の分子、または核酸を形成するための別のヌクレオチドに共有結合する。「骨格部分」は、天然のヌクレオチドにおいて、代表的に、リン部分を含み、これは、5−炭素糖に共有結合する。骨格部分への結合は、代表的に、5−炭素糖の3’位または5’位のいずれかに存在する。しかし、他の型の結合が、特に、ヌクレオチドが、天然の5−炭素糖またはリン部分の誘導体またはアナログを含む場合、当該分野において公知である。
【0133】
(D.核酸アナログ)
核酸は、天然の核酸に存在し得る核酸塩基、核酸塩基リンカー部分および/または骨格部分の誘導体またはアナログから構成され得るか、あるいは全体的にこれらから構成され得る。本明細書中で使用される場合、「誘導体」とは、天然の分子の化学改変形態または変化形態をいうが、一方、用語「模倣物」または「アナログ」とは、天然に存在する分子または部分に構造的に似ているかまたは似ていないが、同様な機能を有する分子をいう。本明細書中で使用される場合、「部分」とは、一般的に、より大きな化学構造または分子構造のより小さな化学成分または分子成分をいう。核酸塩基、ヌクレオシドおよびヌクレオチドアナログまたは誘導体は、当該分野において周知であり、そして記載されている(例えば、本明細書中において、参考として援用される、Scheit、1980を参照のこと)。
【0134】
核酸アナログの非制限的な例は、「ポリエーテル核酸」(本明細書中において参考として援用される、米国特許第5,980,845号に記載される)である。ポリエーテル核酸において、1つ以上の核酸塩基が、ポリエーテル骨格にキラルな炭素原子に連結する。
【0135】
別の非限定的な例は、「ペプチド核酸」であり、これは、「PNA」、「ペプチドベースの核酸アナログ」または「PENAM」として公知であり、米国特許第5,786,461号、同第5,891,625号、同第5,773,571号、同第5,766,855号、同第5,736,336号、同第5,719,262号、同第5,714,331号、同第5,339,082号、およびWO92/20702(これらのそれぞれは、本明細書中において参考として援用される)に記載される。ペプチド核酸は、一般的に、DNAおよびRNAのような分子と比較して、向上した配列特異性、結合特性、および耐酵素消化性を有する(Egholmら、1993;PCT/EP/01219)。ペプチド核酸は、一般的に、核酸塩基部分、5−炭素糖でない核酸塩基リンカー部分、および/またはリン酸骨格部分でない骨格部分を含む1つ以上のヌクレオチドまたはヌクレオシドを含む。PNAについて記載される核酸塩基リンカー部分の例としては、アザ窒素原子、アミド、および/またはウレイドテザー(例えば、米国特許第5,539,082号を参照のこと)が挙げられる。PNAについて記載される骨格部分の例としては、アミノエチルグリシン骨格部分、ポリアミド骨格部分、ポリエチル骨格部分、ポリチオアミド骨格部分、ポリスルフィンアミド骨格部分またはポリスルホンアミド骨格部分が挙げられる。
【0136】
特定の実施形態において、ペプチド核酸のような核酸アナログは、米国特許第5,891,625号に記載されるように、核酸増幅(例えば、PCR)を阻害して、偽陽性を減少し、そして単一塩基変異間を区別するために使用され得る。核酸アナログの他の改変および使用は、当該分野において公知であり、そして本発明によって包含される。非限定的な例として、米国特許第5,786,461号は、分子の溶解性を向上させるために、PNA骨格に結合されるアミノ酸側鎖を有するPNAを記載する。別の例において、PNAの細胞取り込み特性は、親油性基の結合によって増加する。この例は、米国特許第5,766,855号、同第5,719,262号、同第5,714,331号、および同第5,736,336号に記載され、これは、天然の核酸と比較して、配列特異性、溶解性、および/または結合親和性において改善を提供する、天然および非天然の核酸塩基およびアルキルアミン側鎖を含むPNAを記載する。
【0137】
(E.核酸の調製)
核酸は、例えば、化学合成または組換え産生のような当業者に公知の任意の技術によって作製され得る。合成核酸(例えば、合成オリゴヌクレオチド)の非限定的な例としては、ホスホトリエステル、ホスファイトまたはホスホラミダイト化学およびEP266,032(本明細書中において参考として援用される)に記載されるような固相技術を使用するインビトロ化学合成によって、またはFroehlerら、1986および米国特許第5,705,629号(それぞれ、本明細書中において参考として援用される)に記載されるように、デオキシヌクレオシド H−ホスホネート中間体を介して作製される核酸を含む。酵素的に産生された核酸の非限定的な例としては、増幅反応(例えば、PCRTM)によって作製される核酸(例えば、米国特許第4,683,202号および米国特許第4,682,195号(これらの各々は、本明細書中において参考として援用される)または米国特許第5,645,897号(これらは、本明細書中において参考として援用される)に記載されるオリゴヌクレオチドの合成によって作製される核酸が挙げられる。生物学的に産生される核酸の非限定的な例としては、生きた細胞中で産生される(すなわち、複製される)組換え核酸(例えば、細菌中で複製される組換えDNAベクター)が挙げられる(例えば、本明細書中において参考として援用される、Sambrookら、1989を参照のこと)。
【0138】
(ベクター)
用語「ベクター」は、複製され得る細胞中に導入するために核酸配列が挿入され得るキャリア核酸分子をいうために使用される。核酸配列は、「外因性」であり得、これは、この配列が、ベクターが導入される細胞に対して外来であるか、またはその配列が細胞内の配列と相同であるが、その配列が通常見出されない宿主細胞核酸内の位置にあることを意味する。ベクターとしては、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、ならびに人工染色体(例えば、YAC)が挙げられる。当業者は、標準的な組換え技術によってベクターを構築するために十分に備えている(例えば、ともに、本明細書中において参考として援用される、Maniatisら、1988およびAusubelら、1994を参照のこと)。
【0139】
用語「発現ベクター」とは、転写され得るRNAをコードする核酸を含む任意の型の遺伝子構築物をいう。いくつかの場合において、次いで、RNA分子は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。他の場合において、これらの配列は、例えば、アンチセンス分子またはリボザイムの産生において翻訳されない。発現ベクターは、種々の「制御配列」を含み得、この制御配列とは、特定の宿主細胞において作動可能に連結されるコード配列の転写およびおそらく翻訳に必要な核酸配列をいう。転写および翻訳を支配する制御配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターは、他の機能もまた果たし、そして以下に記載される核酸配列を含み得る。
【0140】
(A.プロモーターおよびエンハンサー)
「プロモーター」は、転写の開始および速度を制御する核酸配列の領域である制御配列である。プロモーターは、調節タンパク質および分子(例えば、RNAポリメラーゼおよび他の転写因子)が、核酸配列の特異的な転写を開始するために、結合し得る遺伝子エレメントを含み得る。成句「作動可能に位置する」、「作動可能に連結する」、「制御下」および「転写制御下」とは、プロモーターが、その配列の転写開始および/または発現を制御するために、核酸配列に関して、正しい機能的配置および/または方向であることを意味する。
【0141】
プロモーターは、一般的に、RNA合成のための開始部位を位置付けるために機能する配列を含む。この最も知られた例は、TATAボックスであるが、いくつかのプロモーターにおいて、TATAボックスを欠いている(例えば、哺乳動物末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子に対するプロモーターおよびSV40後期遺伝子に対するプロモーター(開始部位自身を覆う別個のエレメントが、開始の位置を固定するのに役立つ)。さらなるプロモーターエレメントは、転写開始の頻度を調節する。代表的には、これらは、開始部位の30〜110bp上流の領域に配置されるが、多数のプロモーターが、この開始部位の下流にも機能的エレメントを含むことが示された。コード配列をプロモーターの「制御下」におくために、転写読み取り枠の転写開始部位の5’末端を、選択されたプロモーターの「下流」(すなわち、3’側)に位置付ける。「上流」プロモーターは、DNAの転写を刺激し、そしてコードされるRNAの発現を促進する。
【0142】
プロモーターエレメント間の間隔は、しばしば可撓性であり、その結果、エレメントが互いに関連して逆転または移動される場合、プロモーター機能は保存される。tkプロモーターにおいて、プロモーターエレメント間の間隔は、活性の減少が始まる前に、50bp離れるまで増加し得る。プロモーターに依存して、個々のエレメントが、転写を活性化するために協調的または独立的に機能し得ることは明らかである。プロモーターは、「エンハンサー」に結合して使用されても、使用されなくてもよく、これを、核酸配列の転写活性化に関連したシス作動性調節配列という。
【0143】
プロモーターは、コードセグメントおよび/またはエキソンの上流に位置する5’側非コード配列を単離することにより得られ得るような核酸配列と自然に結合するプロモーターであり得る。このようなプロモーターは「内因性」として称され得る。同様に、エンハンサーは、その配列の下流または上流のいずれかに位置される核酸配列と自然に結合するエンハンサーであり得る。あるいは、特定の利点が、組換えプロモーターまたは異種プロモーターの制御下でコード核酸セグメントを配置することによって得られ、このプロモーターを、天然の環境において核酸配列が通常結合しないプロモーターという。組換えエンハンサーまたは異種エンハンサーはまた、その天然環境において、通常、核酸配列に結合しないエンハンサーをいう。このようなプロモーターまたはエンハンサーとしては、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、および他の任意のウイルスまたは真核生物細胞もしくは原核生物細胞から単離されたプロモーターまたはエンハンサー、および「天然に存在しない」プロモーターまたはエンハンサー(すなわち、異なる転写調節領域の異なるエレメントおよび/または発現を変更する変異を含む)が挙げられ得る。例えば、組換えDNA構築において最も一般に使用されるプロモーターとしては、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)プロモーター系、ラクトースおよびトリプトファン(trp)プロモーター系が挙げられる。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列を合成的に生成することに加えて、配列は、本明細書中に開示される組成物と関連して、組換えクローニング技術および/または核酸増幅技術(PCRTMを含む)を用いて生成され得る(米国特許第4,683,202号および同第5,928,906号を参照のこと、これらの各々は本明細書中に参考として援用される)。さらに、核以外の細胞内小器官(例えば、ミトコンドリア、葉緑体など)内の配列の転写および/または発現を指向させる制御配列が、同様に使用され得ることが意図される。
【0144】
必然的に、発現のために選択される細胞内小器官、細胞型、組織、器官または生物におけるDNAセグメントの発現を、効果的に指向させるプロモーターおよび/またはエンハンサーを使用することは重要である。分子生物学分野の当業者は、一般的に、タンパク質発現のためのプロモーター、エンハンサーおよび細胞型の組み合わせの使用を理解する(Sambrookら、1989を参照のこと、本明細書中に参考として援用される)。使用されるプロモーターは、導入したDNAセグメントを高い発現レベルに指向させるために適切な条件下で構成的、組織特異的、誘導可能および/または有用であり得、例えば、組換えタンパク質および/またはペプチドの大規模な生成に有利である。プロモーターは異種または内因性であり得る。
【0145】
さらなる任意のプロモーター/エンハンサーの組み合わせ(例えば、Eukaryotic Promoter Data Base EPDB、http://www.epd.isb−sib.ch/)はまた、発現を駆動させるために使用され得る。T3、T7またはSP6の細胞質発現系の使用は、別の可能な実施形態である。真核生物細胞は、適切な細菌ポリメラーゼが、送達複合体の一部分としてまたはさらなる遺伝子発現構築物として提供される場合、特定の細菌プロモーターからの細胞質転写を支持し得る。
【0146】
表4は、RNAの発現を調節するために、本発明の文脈において使用され得るエレメント/プロモーターの非限定的な例を列挙する。表5は、特定の刺激に対する応答において活性化され得る核酸配列領域である、誘導可能なエレメントの非限定的な例を提供する。
【0147】
【表4】
【0148】
【表5】
組織特異的プロモーターまたはエレメントの同一性、およびそれらの活性を特徴付けるためのアッセイは、同業者に周知である。このような領域の非限定的な例としては、以下が挙げられる:ヒトLIMK2遺伝子(Nomotoら、1999)、ソマトスタチンレセプター2遺伝子(Krausら、1998)、マウス精巣上体レチノイン酸結合遺伝子(Lareyreら、1999)、ヒトCD4(Zhao−Emonetら、1998)、マウスα2(XI)コラーゲン(Tsumakiら、1998)、D1Aドーパミンレセプター遺伝子(Leeら、1997)、インスリン様増殖因子II(Wuら、1997)およびヒト血小板内皮細胞接着分子−1(Almendroら、1996)。
【0149】
(B.開始シグナルおよび内部リボソーム結合部位)
特定の開始シグナルはまた、コード配列の効率的な翻訳のために必要とされ得る。これらのシグナルは、ATG開始コドンまたは隣接配列を含む。外因性の翻訳制御シグナル(ATG開始コドンを含む)は、提供されることが必要であり得る。当業者はこれを容易に決定し得、そして必要なシグナルを提供し得る。開始コドンは、挿入物全体の翻訳を確実にするために所望のコード配列のリーディングフレームで「インフレーム」でなければならないことが周知である。外因性の翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然または合成的のいずれかであり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメントの包含によって増強され得る。
【0150】
本発明の特定の実施形態において、内部リボソーム侵入部位(IRES)エレメントの使用は、多重遺伝子またはポリシストロンのメッセージを作製するために使用される。IRESエレメントは5’側のメチル化Cap依存翻訳のリボソームスキャニングモデルを迂回し、そして内部部位で翻訳を始めることが可能である(PelletierおよびSonenberg、1988)。ピコルナウイルスファミリー(ポリオおよび脳心筋炎)の2つのメンバー由来のIRESエレメント(PelletierおよびSonenberg、1988)および哺乳動物メッセージ由来のIRES(MacejakおよびSarnow、1991)が記載されている。IRESエレメントはオープンリーディングフレームに連結され得る。多様なオープンリーディングフレームが一緒に転写され得(各々IRESにより分離される)、ポリシストロンメッセージを作製する。IRESエレメントにより、各オープンリーディングフレームは効率的な翻訳のためにリボソームにアクセス可能である。多様な核酸は、シグナルプロモーター/エンハンサーを用いて効率的に発現され、単一メッセージを転写し得る(米国特許第5,925,565号および同第5,935,819号を参照のこと、各々は本明細書中に参考として援用される)。
【0151】
(C.マルチクローニング部位)
ベクターは、多様な制限酵素部位を含む核酸領域であるマルチクローニング部位(MCS)を含み得る。任意のMCSは、ベクターを消化するための標準的な組換え技術と併せて使用され得る(例えば、Carbonelliら、1999、Levensonら、1998およびCocea、1997を参照のこと、これらは本明細書中に参考として援用される)。「制限酵素消化」とは、核酸分子の特定位置でのみ機能する酵素を用いて、核酸分子を触媒的に切断することをいう。これらの制限酵素の多くは市販される。このような酵素の使用は、当業者に広く理解される。しばしば、ベクターは線状化されるか、または外因性配列がベクターに連結されることを可能にするために、MCS内を切断する制限酵素を用いてフラグメント化される。「連結する(ligation)」とは、2つの核酸フラグメント間のリン酸ジエステル結合を形成するプロセスいい、これは、互いに隣接していても、隣接していなくてもよい。制限酵素および連結反応に関する技術は、組換え技術の当業者において周知である。
【0152】
(D.スプライシング部位)
転写された真核生物RNA分子の大部分は、RNAスプライシングを受け、一次転写物からイントロンを除去する。ゲノム真核生物配列を含むベクターは、タンパク質発現のための転写物の適切なプロセシングを確実にするために、ドナーおよび/またはアクセプタースプライシング部位を必要とし得る(例えば、Chandlerら、1997を参照のこと、本明細書中に参考として援用される)。
【0153】
(E.終止シグナル)
本発明のベクターまたは構築物は、一般に、少なくとも1つの終止シグナルを含む。「終止シグナル」または「ターミネーター」は、RNAポリメラーゼによるRNA転写の特定の終結に関連するDNA配列から構成される。従って、特定の実施形態において、RNA転写物の生成を終了させる終止シグナルが意図される。ターミネーターは所望のメッセージレベルを達成するためにインビボで必要とされ得る。
【0154】
真核生物系において、ターミネーター領域はまた、ポリアデニル化部位を露出するために、新規の転写物の部位特異的切断を可能にする特定のDNA配列を含み得る。これは、転写物の3’末端に約200A残基(ポリA)のストレッチを付加するために特殊化された内因性ポリメラーゼにシグナルを送る。このポリAテイルで改変されたRNA分子は、より安定、かつより効率的に翻訳されるようである。従って、真核生物に関する他の実施形態において、ターミネーターはRNA切断のためのシグナルを含むことが好ましく、そしてこのターミネーターシグナルは、メッセージのポリアデニル化を促進することがより好ましい。ターミネーターおよび/またはポリアデニル化部位エレメントは、メッセージレベルを増強するように作用し得、そしてカセットから他の配列中への読み込みを最小にし得る。
【0155】
本発明における使用のために企図されたターミネーターとしては、本明細書中に記載されるかまたは当業者に公知の、公知の任意の転写のターミネーターが挙げられる。これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:遺伝子の終止配列(例えば、ウシ成長ホルモンターミネーター)またはウイルス終止配列(例えば、SV40ターミネーター)。特定の実施形態において、終止シグナルは、配列の切断に起因して、転写可能配列または翻訳可能配列を欠如し得る。
【0156】
(F.ポリアデニル化シグナル)
発現(特に真核生物の発現)において、代表的に、ポリアデニル化シグナルは、転写物の適切なポリアデニル化をもたらすポリアデニル化シグナルを含む。これは、ポリアデニル化シグナルの性質は、本発明を首尾よく実施するために決定的であるとは考えられておらず、このような任意の配列が使用され得る。好ましい実施形態は、SV40ポリアデニル化シグナルまたはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルが含まれ、これらは、簡便であり、かつ種々の標的細胞において十分に機能することが公知である。ポリアデニル化は転写物の安定性を増大するか、または細胞質輸送を促進し得る。
【0157】
(G.複製起点)
宿主細胞においてベクターを増殖させるために、ベクターは、1以上の複製起点(しばしば、oriといわれる)を含み得る。複製起点は、複製が開始される特定の核酸配列である。あるいは、宿主細胞が酵母の場合、自立複製配列(ARS)使用され得る。
【0158】
(H.選択マーカーおよびスクリーニングマーカー)
本発明の特定の実施形態において、本発明の核酸構築物を含む細胞は、発現ベクターにマーカーを含めることによりインビトロまたはインビボで同定され得る。このようなマーカーは、細胞に同定可能な変化を付与し、発現ベクターを含む細胞の容易な同定を可能にする。一般に、選択マーカーは、選択を可能にする特性を付与するマーカーである。陽性選択マーカーは、マーカーの存在がその選択を可能にするマーカーである一方、陰性選択マーカーは、その存在がその選択を妨げるマーカーである。陽性選択マーカーの例は、薬物耐性マーカーである。
【0159】
通常、薬物選択マーカーを含めることは、形質転換体のクローニングおよび同定を補助し、例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン(zeocin)およびヒスチジノール(histidinol)に対する耐性を付与する遺伝的構築物は、有用な選択マーカーである。条件の実施に基づいて形質転換体の識別を可能にする表現型を付与するマーカーに加えて、スクリーニングマーカー(例えば、GFP)を含む、他の型のマーカー(その基本は、比色分析である)もまた、意図される。あるいは、スクリーニング酵素(例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT))が利用され得る。当業者はまた、免疫学的マーカーを(おそらくFACS分析と併せて)どのように使用するか分かっている。使用されるマーカーが遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現され得る限り、この使用されるマーカーが重要であるとは考えられない。選択マーカーおよびスクリーニングマーカーのさらなる例は、当業者に周知である。
【0160】
(I.プラスミドベクター)
特定の実施形態において、プラスミドベクターは、宿主細胞を形質転換するために使用することが意図される。一般に、宿主細胞と適合性の種に由来するレプリコンおよび制御配列を含むプラスミドベクターは、これらの宿主とともに使用される。このベクターは、通常、複製部位、ならびに形質転換細胞において表現型選択を提供し得るマーキング配列を有する。非限定的な例において、E.coliは、しばしば、pBR322(E.coli種に由来するプラスミド)の誘導体を使用して形質転換される。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性についての遺伝子を含み、従って、形質転換細胞を同定するための容易な手順を提供する。pBRプラスミドまたは他の微生物プラスミドもしくはファージはまた、例えば、微生物により、それ自体のタンパク質の発現のために使用され得るプロモーターを含むか、またはこのプロモーターを含むように改変されなければならない。
【0161】
さらに、宿主微生物と適合性のレプリコンおよび制御配列を含むファージベクターは、これらの宿主細胞とともに形質転換ベクターとして使用され得る。例えば、ファージλGEMTM−11は、組換えファージベクターを作製する際に利用され得る。この組換えファージベクターは、例えば、E.coli LE392のような宿主細胞を形質転換するために使用され得る。
【0162】
さらに有用なプラスミドベクターとしては、pINベクター(Inouyeら、1985);および後の精製および分離または切断のためにグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)可溶性融合タンパク質を生成する際の使用のためのpGEXベクターが挙げられる。他の適切な融合タンパク質は、β−ガラクトシダーゼ、ユビキチンなどとの融合タンパク質である。
【0163】
発現ベクターを含む細菌宿主細胞(例えば、E.coli)は、任意の多くの適切な倍地(例えば、LB)中で増殖される。特定のベクターにおける組換えタンパク質の発現は、当業者に理解されているように、宿主細胞と、特定のプロモーターに特異的な薬剤とを接触させることにより(例えば、培地にIPTGを添加することにより、またはより高い温度にインキュベーションを切替えることにより)誘導され得る。一般に、2〜24時間、細菌をさらなる期間の間培養した後、この細胞を、遠心分離により回収し、洗浄して、残りの培地が除去される。
【0164】
(VII.核酸送達および細胞の形質転換)
本発明を用いる使用に関して、オルガネラ、細胞、組織もしくは生物の形質転換のために、核酸成分または薬学的に受容可能な薬剤と細胞とを接触させるために適切な方法は、本明細書中に記載されるかまたは当業者に公知であるように、核酸(例えば、DNA)が、オルガネラ、細胞、組織または生物に導入され得る実質的に任意の方法を含むと考えられる。このような方法は、本発明のエアロゾル処方物とともに使用するために適合され得る。
【0165】
(VIII.宿主細胞)
本明細書中で使用される場合、用語「細胞」、「細胞株」および「細胞培養物」は、交換可能に使用され得る。これらの用語の全てがまた、それらの子孫(任意のおよび全ての次世代である)を含む。全ての子孫が意図的な変異または故意でない変異に起因して同一でなくてもよいことが理解される。異種核酸配列を発現する状況において、「宿主細胞」とは、原核生物細胞または真核生物細胞をいい、これは、ベクターを複製しかつ/またはベクターによりコードされた異種核酸を発現し得る、任意の形質転換可能な生物を含む。宿主細胞は、ベクターのレシピエントとして使用され得、かつ使用され続けている。宿主細胞は、「トランスフェクト」され得るかまたは「形質転換」され得、このことは、外来核酸が宿主細胞に移入されるかまたは導入されるプロセスをいう。形質転換細胞は、初代の被験体の細胞およびその子孫を含む。本明細書中で使用される場合、用語「操作された(る)」細胞もしくは宿主細胞および「組換え」細胞もしくは宿主細胞は、外来核酸配列(例えば、ベクター)が導入された細胞をいうことが意図される。従って、組換え細胞は、天然に存在する細胞(これは、組換えにより導入される核酸を含まない)から区別可能である。
【0166】
特定の実施形態において、RNA配列またはタンパク質配列は、同じ宿主細胞において他の選択されたRNA配列またはタンパク質配列と同時に発現され得ることが意図される。同時発現は、宿主細胞を2つ以上の異なる組換えベクターで同時トランスフェクトすることにより達成され得る。あるいは、単一の組換えベクターが、複数の異なるRNAのコード領域を含むように構築され得る。次いで、このベクターは、単一のベクターでトランスフェクトされた宿主細胞において発現され得る。
【0167】
宿主細胞は、所望の結果が、ベクターの複製またはベクターによりコードされる核酸配列の一部もしくは全ての発現であるか否かに依存して、原核生物または真核生物に由来し得る。多くの細胞株および細胞培養物が宿主細胞として利用可能であり、それらは、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(この機関は、生きた培養物および遺伝物質についての保存機関として働く機関である)(www.atcc.org)を通じて入手可能である。
【0168】
組織は、核酸および/またはさらなる薬剤を用いて形質転換されるかまたはこれらと接触される宿主細胞を含み得る。この組織は、生物の一部であってもよいし、生物から分離されていてもよい。特定の実施形態において、組織は、脂肪細胞、肺胞、エナメル芽細胞、軸索、基底細胞、血液(例えば、リンパ球)、血管、骨、骨髄、脳、乳房、軟骨、頸部、結腸、角膜、胚、子宮内膜、内皮、上皮、食道、面(facia)、線維芽細胞、小胞、神経節細胞、グリア細胞、杯細胞、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、筋肉、ニューロン、卵巣、膵臓、末梢血、前立腺、皮膚、小腸、脾臓、幹細胞、胃、精巣、葯、腹水組織、およびそれらの癌全てを含み得るが、これらに限定されない。
【0169】
(IX.遺伝子治療剤)
遺伝子治療は、いまや、種々の従来の治療に代わって、特に癌処置の領域においては、実用的なものになりつつある。ベクター産物の発現を通じた導入遺伝子の長期間の発現および標的細胞の免疫破壊などの制限(これは、遺伝子治療の実行の限界であるといわれている)は、癌細胞の破壊が所望される癌治療における関心事ではない。
【0170】
薬剤(例えば、化学療法剤および放射線療法剤)に対する腫瘍細胞の耐性は、臨床腫瘍学における大きな問題を表している。遺伝子移入療法において、特に、癌の処置に関与する治療において、できるだけ迅速に多くの細胞を殺傷することが重要である。現在の癌研究の1つの目的は、1以上の抗癌剤を遺伝子治療と組み合わせることにより、このような抗癌剤の効力を改善する方法を見出すことである。従って、「併用」療法の使用が有利であり得る。このような併用は、遺伝子治療および放射線療法または化学療法を含み得る。例えば、Rothら(1996)は、DNA損傷薬剤とp53遺伝子治療の併用が、インビボで腫瘍細胞の殺傷の増大をもたらすことを実証した。別の例においては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Hs−tk)遺伝子が、レトロウイルスベクター系により脳腫瘍に送達される場合、抗ウイルス剤であるガンシクロビルに対する感受性を首尾よく誘導した(Culverら、1992)。本発明の状況において、本発明のエアロゾル送達系が遺伝子治療に使用され得ることが意図される。
【0171】
併用療法のなお別の型は、複数遺伝子治療の使用を包含する。この状況において、1より多くの治療遺伝子が標的細胞に移入される。これらの遺伝子は、同じ機能群(例えば、両方が腫瘍サプレッサ、両方がサイトカインなど)に由来してもよいし、別々の機能群(例えば、腫瘍サプレッサおよびサイトカイン)に由来してもよい。標的細胞に対して、治療遺伝子の特定の組み合わせを提示することにより、標的細胞の生理に対するいずれかの遺伝子または両方の遺伝子の効果全体を増大させることが可能であり得る。
【0172】
(A.細胞増殖の誘導因子)
本発明の1つの実施形態において、細胞増殖の特定の誘導因子に方向付けられるアンチセンスmRNAが、細胞増殖の誘導因子の発現を防止するために使用されることが意図される。細胞増殖を誘導するタンパク質は、さらに、機能に依存して種々のカテゴリーに入れられる。これらのタンパク質の全ての共通点は、それらの細胞増殖を調節する能力である。本発明の方法および組成物により標的とされ得る癌遺伝子の表に列挙された非限定的な例は、以下に示される。
【0173】
【表6】
例えば、PDGFの形態(シスオンコジーン)は、分泌増殖因子である。オンコジーンは、まれに増殖因子をコードする遺伝子から生じ、そして現在においては、唯一の公知の天然に存在するオンコジーン増殖因子である。
【0174】
タンパク質FMS、ErbA、ErbBおよびneuは、増殖因子レセプターである。これらのレセプターの変異は、調節機能の欠失を生じる。例えば、Neuレセプタータンパク質の膜貫通ドメインに影響する点変異は、nueオンコジーンを生じる。ErbAオンコジーンは、甲状腺ホルモンに対する細胞内レセプター由来である。改変されたオンコジーンErbAレセプターは、内因性甲状腺ホルモンレセプターと競合すると考えられており、非制御増殖を引き起こす。
【0175】
オンコジーンの最も大きなクラスは、シグナル伝達タンパク質(例えば、Src、AblおよびRas)を含む。タンパク質Srcは、細胞質のタンパク質チロシンキナーゼであり、そしていくつかの場合において、プロトオンコジーンからオンコジーンへのその変換は、527位のチロシン残基での変異を経て生じる。対照的にGTPaseタンパク質rasのプロトオンコジーンからオンコジーンへの変換は、ひとつの例において、その配列において12位のアミノ酸でのバリンからグリシンへの変異から生じ、ras GTPase活性を減少する、。
【0176】
他のタンパク質(例えば、Jun、FosおよびMyc)は、転写因子として核の機能に対するそれらの効果を直接的に発揮するタンパク質である。
【0177】
(B.細胞増殖のインヒビター)
特定の実施形態において、遺伝子構築物を介する細胞増殖のインヒビターの活性化の回復が企図される。腫瘍サプレッサーオンコジーンは、過剰な細胞増殖を阻害するために機能する。これらの遺伝子の不活性化は、それらの阻害性活性を消失させ、非調節増殖を生じる。腫瘍サプレッサーp53、pl6およびC−CAMは、下に記載される。
【0178】
変異p53の高レベルは、化学物質による発癌(chemical carcinogenesis)、紫外線照射および種々のウイルスにより形質転換された多数の細胞において見出されている。p53遺伝子は、広範な種々のヒト腫瘍における変異性不活性化の高頻度の標的であり、そしてもうすでに一般的なヒトの癌において最も高頻度に変異される遺伝子であると実証されている。p53は、ヒトNSCLC(Hollsteinら、1991)の50%超、および他の腫瘍の広範な範囲において変異される。
【0179】
p53遺伝子は、宿主タンパク質(例えば、ラージT抗原およびE1B)と複合体を形成し得る393アミノ酸のリンタンパク質をコードする。このタンパク質は、正常な組織および細胞で見出されるが、形質転換細胞または腫瘍組織との比較によるとわずかな濃度である。
【0180】
野生型p53は、多数の細胞型における重要な増殖調節因子として認識される。ミスセンス変異は、p53遺伝子に対して共通であり、そしてオンコジーンの形質転換能力に必須である。点変異により促された単一の遺伝子の変化は、発癌性のp53を作製し得る。しかし、他のオンコジーンとは異なって、p53の点変異は、少なくとも30の異なるコドンで生じることが公知であり、しばしばこのコドンはホモ接合性に対する減少を生じずに、細胞表現型の変化を生じる優性対立遺伝子を作製する。さらに、これらのドミナントネガティブ対立遺伝子の多くは、生物内で許容され、そして生殖系列において伝播されるようである。種々の変異対立遺伝子は、最小には機能障害から、強くはドミナントネガティブな対立遺伝子を貫入させまでの範囲であるようである(Weinberg,1991)。
【0181】
細胞増殖の別のインヒビターは、p16である。真核生物の細胞周期の主要な遷移は、サイクリン依存性キナーゼまたはCDKにより誘発される。ひとつのCDKであるサイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)は、G1を介する進行を調節する。この酵素の活性化は、後期G1でRbをリン酸化することであり得る。CDK4の活性は、活性化サブユニット(D型サイクリン)および阻害性サブユニット(p16INK4)により制御され、p16INK4は、CDK4特異的に結合するおよびCDK4を阻害するタンパク質として生化学的に特徴付けられており、したがってRbのリン酸化を調節し得る(Serranoら、1993;Serranoら、1995)。p16INK4タンパク質は、CDK4インヒビターであるので(Serrano,1993)、この遺伝子の欠失は、CDK4の活性を増加し得、これはRbタンパク質の過リン酸化を生じる。p16はまた、CDK6の機能を調節することが公知である。
【0182】
p16INK4は、p16B、p19、p21WAF1およびp27KIP1もまた含むCDK阻害性のタンパク質の新しく記載されたクラスに属する。p16INK4遺伝子は、多数の腫瘍型において頻繁的に欠失された染色体領域9p21に位置付けられる。p16INK4遺伝子のホモ接合性欠失およびホモ接合性変異は、ヒト腫瘍細胞株において高頻度である。この証拠は、p16INK4遺伝子が、腫瘍サプレッサー遺伝子であることを示唆する。この解釈は、しかしながら、p16INK4遺伝子の変化の頻度が、培養された細胞株よりも初代培養されていない腫瘍でさらに低いという観察により疑われている(Caldasら、1994;Chengら、1994;Hussussianら、1994;Kambら、1994;Kambら、1994;Okamotoら、1994;Noboriら、1995;Arapら、1995)。プラスミド発現ベクターを用いたトランスフェクションによる野生型p16INK4機能の回復は、いくつかのヒト癌細胞株によるコロニー形成を減少した(Okamoto,1994;Arap,1995)。
【0183】
本発明に従い使用され得る他の遺伝子には、以下が挙げられる:Rb、APC、DCC、NF−1、NF−2、WT−1、MEN−I、MEN−II、zacl、p73、VHL、MMAC1/PTEN、DBCCR−1、FCC、rsk−3、p27、p27/pl6融合体、p21/p27融合体、抗血栓遺伝子(例えば、COX−1、TFPI)、PGS、Dp、E2F、ras、myc、neu、raf、erb、fms、trk、ret、gsp、hst、abl、E1A、p300、血管形成に関与する遺伝子(例えば、VEGF、FGF、トロンボスポンジン、BAI−1、GDAIFまたはこれらのレセプター)およびMCC。
【0184】
(C.プログラム細胞死の調節因子)
特定の実施形態において、アポトーシスを刺激する遺伝構築物は、病変組織または所望されない組織の死を促すために使用されることが企図されている。アポトーシス、すなわちプログラム細胞死は、正常な胚発育、成体組織における恒常性の維持、発癌の抑制のための必須の過程である(Kerrら、1972)。タンパク質のBcl−2ファミリーおよびICE−様プロテアーゼは、他の系におけるアポトーシスの重要な調節因子およびエフェクターであると実証されている。濾胞性リンパ腫に関連して発見されたBcl−2タンパク質は、多様なアポトーシス刺激に応答してアポトーシスの制御および細胞生存の増強において顕著な役割を果たす(Bakhshiら、1985;Clearyら、1986;Tsujimotoら、1985;TsujimotoおよびCroce、1986)。進化的に保存されたBcl−2タンパク質は現在、関連タンパク質のファミリーのメンバーであると認識され、これは死因アゴニスト(death agonist)または死因アンタゴニスト(death antagonist)としてカテゴリー化され得る。
【0185】
この発見の後に、Bcl−2が、種々の刺激により誘発された細胞死を抑制するために作用することが示された。また、現在、共通の構造および配列の相同性を共有するBcl−2細胞死調節タンパク質のファミリーが存在することが明白である。これらの異なるファミリーメンバーは、Bcl−2に対する類似の機能を有すること(例えば、BClXL、Bclw、BclS、Mcl−1、Al、Bfl−1)、またはBcl−2の機能を反作用することおよび細胞死を促進すること(例えば、Bad、Bak、Bax、Bid、Bik、Bim、Bok、Harakiri)のいずれかが示されている。
【0186】
(X.遺伝子ワクチン)
特定の実施形態において、免疫応答は、抗原をコードする核酸を用いて動物をトランスフェクトするかまたは接種することにより促進され得る。次いで、標的動物内に含まれる1つ以上の細胞は、この動物への核酸の投与後にこの核酸によりコードされた配列を発現する。したがって、このワクチンは、免疫プロトコルについて有用な「遺伝子ワクチン」を含み得る。ワクチンはまた、例えば、抗原のペプチド配列またはポリペプチド配列の全てまたは部分をコードする核酸(例えば、cDNAまたはRNA)の形態であり得る。核酸によるインビボでの発現は、例えば、プラスミド型ベクター、ウイルスベクターまたはウイルス/プラスミド構築ベクターによるものであり得る。
【0187】
ワクチンとして有用である薬学的に受容可能な処方物について、薬学的に受容可能な処方物によりコードされた抗原性組成物または薬学的に受容可能な処方物で構成された抗原性組成物は、細胞、組織または動物(例えば、ヒト)において抗原に対する免疫応答を誘導しなければならない。本明細書中で用いる場合、「抗原性組成物」は、抗原(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)、抗原をコードする核酸(例えば、抗原発現ベクター)または抗原を発現する細胞または抗原を提示する細胞を含み得る。他の実施形態において、抗原性組成物は、さらなる免疫賦活性因子またはこのような因子をコードする核酸を含む混合物である。免疫賦活性因子には以下のものが挙げられるがこれらには限定されない:さらなる抗原、免疫調節物質、抗原提示細胞またはアジュバント。他の実施形態において、1つ以上のさらなる因子は、任意の組み合わせで、抗原または免疫賦活性因子に共有結合的に結合される。特定の実施形態において、抗原性組成物は、HLAアンカーモチーフアミノ酸に結合されるかまたはHLAアンカーモチーフアミノ酸を含む。
【0188】
本発明のワクチンは、成分の組成において変動し得る。非限定な例において、抗原をコードする核酸はまた、蛋白性のアジュバンドと共に処方される。もちろん、本明細書中で記載される種々の組成物が、さらなる成分をさらに含み得ることは理解される。別の非限定な例において、ワクチンは、1つ以上のアジュバンドを含み得る。本発明のワクチンおよびその種々の成分は、本明細書中に開示された任意の方法によるかまたは本開示を考慮して、当業者に公知であるように、調製および/または投与され得る。
【0189】
種々の遺伝子に対するヌクレオチドおよびタンパク質、ポリペプチドコード配列およびペプチドコード配列は、これまでに開示されており、そして当業者に公知のコンピューター化されたデータベースで見出され得る。1つのこのようなデータベースは、National Center for Biotechnology Information’s GenbankおよびGenPeptデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)である。これらの公知な遺伝子に対するコード領域は、増幅され、核酸ベクターを産生するための配列と結合され(例えば、連結され)、本明細書中で記載され、細胞、組織、器官または生物に投与されおよび/または本明細書中で開示された技術を使用するかまたは当業者に公知の任意の技術(例えば、Sambrookら、1989)により発現され得る。核酸は、インビトロの発現系において発現され得るが、好ましい実施形態において、この核酸は、インビボでの複製および/または発現のためのベクターを含む。
【0190】
(A.細胞ワクチン抗原)
別の実施形態において、ワクチンは、抗原を発現する細胞を含み得る。この細胞は、培養物、組織、器官または生物から単離され得、そして細胞ワクチンとして動物に投与され得る。したがって、本発明は、「細胞ワクチン」を企図する。この細胞は、抗原をコードする核酸を用いてトランスフェクトされ、抗原のその発現が増強され得る。もちろん、この細胞はまた、1つ以上のさらなるワクチン成分(例えば、免疫調節物質またはアジュバンド)を発現し得る。ワクチンは、細胞の全てまたは一部分を含み得る。
【0191】
特定の実施形態において、本発明の抗原をコードする核酸が、植物、特に食用食物にトランスフェクトされ得、植物物質の全てまたは部分が、ワクチン(例えば、経口ワクチン)を調製するために使用され得ることが企図される。このような方法は、米国特許第5,484,719号、同第5,612,487号、同第5,914,123号、同第5,977,438号および同第6,034,298号(それぞれが参考として本明細書中で援用される)に記載される。
【0192】
(B.さらなるワクチン成分)
本発明の抗原性組成物が1つ以上のさらなる成分と組合わせて、より効果的なワクチンを形成し得ることが、企図される。さらなる成分の非限定的な例示としては、例えば、本発明の抗原性組成物および/またはさらなる成分に対する免疫応答を刺激する、1つ以上のさらなる抗原、免疫調節因子またはアジュバントが挙げられる。
【0193】
(1.免疫調節因子)
例えば、細胞または患者(例えば、動物)の応答を増大させる免疫調節因子がワクチン中に含まれ得ることが、企図される。免疫調節因子は、精製されたタンパク質、免疫調節因子をコードする核酸、および/または免疫調節因子を発現する細胞としてワクチン組成物中に含まれ得る。以下の項は、目的の免疫調節因子の非限定的な例を列挙し、そして免疫調節因子の種々の組合わせが特定の実施形態において使用され得ることが、企図される(例えば、サイトカインおよびケモカイン)。
【0194】
インターロイキン、サイトカイン、インターロイキンもしくはサイトカインをコードする核酸、および/またはこのような化合物を発現する細胞は、可能性のあるワクチン成分として企図される。インターロイキンおよびサイトカインとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:インターロイキン1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−18、β−インターフェロン、α−インターフェロン、γ−インターフェロン、アンギオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、METH−1、METH−2、腫瘍壊死因子、TGFβ、LTおよびこれらの組合わせ。
【0195】
ケモカイン、ケモカインをコードする核酸、および/またはこのような化合物を発現する細胞もまた、ワクチン組成物として使用され得る。ケモカインは、一般に、ケモカイン発現部位に免疫エフェクター細胞を漸増させる化学誘引物質として作用する。例えば、特定のケモカインコード配列をサイトカインコード配列と組合わせて発現させて、処置の部位に他の免疫系成分の漸増を増強するために有利であり得る。このようなケモカインとしては、例えば、RANTES、MCAF、MIP−1α、MIP−1β、IP−10およびこれらの組合わせが挙げられる。当業者は、特定のケモカインがまた化学誘引物質効果を有すること、およびまた用語ケモカインの下で分類され得ることを認識する。
【0196】
特定の実施形態において、抗原性成分は、免疫反応を増強するために、キャリアに化学的に結合され得るか、または免疫原性キャリアペプチドまたはポリペプチドとともに組換え発現され得る(例えば、抗原−キャリア融合ペプチドまたはポリペプチド)。例示的でありかつ好ましい免疫原性キャリアアミノ酸配列としては、B型肝炎表面抗原、キンホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびウシ血清アルブミン(BSA)が挙げられる。他のアルブミン(例えば、オボアルブミン、マウス血清アルブミンまたはウサギ血清アルブミン)はまた、免疫原性キャリアタンパク質として使用され得る。ポリペプチドまたはペプチドを免疫原性キャリアタンパク質に結合体化させるための手段は、当業者で周知であり、そして、例えば、グルタルアルデヒド、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシニミドエステル、カルボジイミドおよびビス−二アゾ化ベンジジンが挙げられる。
【0197】
T細胞免疫をアップレギュレートすることまたはサプレッサー細胞活性をダウンレギュレートすることが示されている生物学的応答調節因子(modifier)(BRM)を同時投与することが好ましくあり得る。このようなBRMとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:シメチジン(CIM;1200mg/d)(Smith/Kline,PA);低用量シクロホスファミド(CYP;300mg/m2)(Johnson/Mead,NJ)、または1つ以上の免疫ヘルパー機能に含まれるタンパク質配列(例えば、B−7)をコードする核酸。
【0198】
(2.アジュバント)
免疫化プロトコルは、数年にわたって応答を刺激するためにアジュバントを使用しており、そしてこのようなアジュバントは、当業者に周知である。いくつかのアジュバントは、抗原が示されるような手段で作用する。例えば、免疫応答は、タンパク質抗原がミョウバンによって沈降される場合に、増大される。抗原の乳状化はまた、抗原提示の間延長する。
【0199】
1つの局面において、アジュバント効果は、リン酸緩衝化生理食塩水中約0.05〜約0.1%溶液で使用される、ミョウバンのような因子の使用によって達成される。あるいは、抗原は、約0.25%溶液として使用される、糖の合成ポリマー(Carbopol(登録商標))との混合物として作製される。アジュバント効果はまた、それぞれ30秒〜2分間にわたる約70〜約101℃の間の範囲の温度で用いる熱処理によってワクチン中の抗原の凝集が生成され得る。ペプシン処理した、アルブミンに対する(Fab)抗体を用いる再活性化による凝集、細菌細胞(例えば、C.parvum)またはエンドトキシンあるいはグラム陰性期間のリポ多糖成分とのそれぞれの混合。ペプシン処理した、アルブミンに対する(Fab)抗体を用いる再活性化による凝集、細菌細胞(例えば、C.parvum)またはエンドトキシンあるいはグラム陽性細菌のリポ多糖成分との混合、生理学的に受容可能な油ビヒクル(例えば、マンニット(mannide)モノオレアート(Aracel A)中でのエマルジョンまたはブロック置換基として使用される過フルオロ炭素(Fluosol−DA(登録商標))の20%溶液を用いるエマルジョンもまた、使用され得る。いくつかのアジュバントは、例えば、細菌より得られる特定の有機分子であり、抗原に対してよりも宿主に対して作用する。例は、ムラミルジペプチド(N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン[MDP])、細菌ペプチドグリカンである。ほとんどのアジュバントと同様に、MDPの効果は、完全には理解されていない。MDPは、マクロファージを刺激するが、B細胞を直接刺激するようである。よって、アジュバントの効果は、抗原特異的ではない。しかし、アジュバントが精製された抗原とともに投与される場合、アジュバントは、抗原に対する応答を選択的に促進するために使用され得る。
【0200】
アジュバントは、未知の抗原に対する免疫の一般的な増強を促進させるために、実験的に使用されている(例えば、米国特許第4,877,611号)。これは、癌の処置に特に意図されている。多くの癌について、免疫系が腫瘍細胞に対する宿主防御に関係するということを強要する証拠が存在するが、ほぼ総数の腫瘍特異的抗原のある画分のみが現在までに同定されたと考えられている。しかし、本発明を使用して、適切なアジュバントの、照射された腫瘍細胞の膜への封入は、突出した抗原の分子同定にもかかわらず抗腫瘍応答を増加するようである。これは、本発明の特に重要かつ時間を節約する特徴である。
【0201】
特定の実施形態において、ヘモシアニンおよびヘモエリトリンはまた、本発明において使用され得る。キンホールリンペット(KLH)由来のヘモシアニンの使用は、特定の実施形態において好ましいが、他の軟体動物ヘモシアニンおよび節足動物ヘモシアニンならびにヘモエリトリンが、使用され得る。
【0202】
種々の多糖アジュバントもまた使用され得る。例えば、マウスの抗体応答に対する、種々の肺炎球菌の(pneumococcal)多糖アジュバントの使用が、記載されている(Yinら、1989)。最適な応答を産生する用量、またはさもなくば抑制を産生しない用量が、示されるように利用されるべきである(Yinら、1989)。多糖のポリアミン多様性(例えば、キチンおよびキトサン(脱アセチル化キチンを含む))は、特に好ましい。
【0203】
アジュバントの別の群は、細菌性ペプチドグリカンのムラミルジペプチド(MDP、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン)群である。ムラミルジペプチド(例えば、アミノ酸誘導体トレオニル−MDP)の誘導体および脂肪酸誘導体MTPPEはまた、意図される。
【0204】
米国特許第4,950,645号は、ムラミルジペプチドの親油性二糖トリペプチド誘導体を記載し、これは、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルグリセロールから形成される人工リポソームにおける使用について記載される。ヒト単球を活性化する際および腫瘍細胞を破壊する際に効果的であるが、一般的な高用量では非毒性である。米国特許第4,950,645号およびPCT特許出願WO91/16347の化合物は、本発明の細胞性キャリアと用いる用途および他の実施形態について意図される。
【0205】
本発明における使用に意図される別のアジュバントは、BCGである。BCG(bacillus Calmette−Guerin、Mycobacteriumの弱毒株)およびBCG細胞壁骨格(CWS)はまた、本発明においてトレハロースジミコレートを伴ってかまたは伴わなわずにアジュバントとして使用され得る。トレハロースジミコレートは、それ自体使用され得る。トレハロースジミコレート投与は、マウスにおけるインフルエンザウイルス感染に対する増大した耐性に相関することが示されている(Azumaら、1988)。トレハロースジミコレートは、米国特許第4,579,945号に記載されるように調製され得る。
【0206】
BCGは、その免疫刺激特性に起因して、重要な臨床ツールである。BCGは、細網−内皮系を刺激するように作用し、ナチュラルキラー細胞を活性化し、そして造血幹細胞の増殖を増加させる。BCGの細胞壁抽出物は、優れた免疫アジュバント活性を有することが証明されている。mycobacteriaに対する分子遺伝的なツールおよび方法は、外因性核酸をBCG内に導入する手段が提供されている(Jacobsら、1987;Hussonら、1990;Martinら、1990)。
【0207】
生BCGは、結核を予防するために広範に使用される、効果的かつ安全なワクチンである。BCGおよび他のmycobacteriaは、かなり効果的なアジュバントであり、そしてmycobacteriaに対する免疫応答は、広範に研究されている。ほぼ20億の免疫化に関して、BCGは、ヒトにおける安全使用の長期記録を有する(Luelmo、1982;Lotteら、1984)。これは、出生時に与えられ得る数少ないワクチンのうちの1つであり、単一投与のみで長期間残存する免疫応答を生じ、そしてBCGワクチン化における経験を有する世界中に分布するネットワークが存在する。BCGワクチンの例示は、TICE(登録商標)BCG(Organon,Inc.,West Orange,NJ)として販売されている。
【0208】
両親媒性かつ表面活性な薬剤(例えば、サポニンおよび誘導体(例えば、QS21(Cambridge Biotech)))は、本発明の免疫原とともに使用するためのアジュバントのさらに別の群を形成する。非イオン性ブロックコポリマー界面活性剤(Rabinovichら、1994;Hunterら、1991)がまた、使用され得る。オリゴヌクレオチドは、別の有用な群のアジュバントである(Yamamotoら、1988)。Quil Aおよびレンチネンは、本発明の特定の実施形態において使用され得る他のアジュバントである。
【0209】
本発明における使用について好ましい1つの群のアジュバントは、弱毒化されたエンドトキシン(例えば、米国特許第4,866,034号の純化され、弱毒化されたエンドトキシン)である。これらの純化され、弱毒化されたエンドトキシンは、哺乳動物におけるアジュバント応答を産生するのに効果的である。もちろん、弱毒化されたエンドトキシンは、複数のアジュバントを含む細胞を調製するために他のアジュバントと組合わせられ得る。例えば、弱毒化されたエンドトキシンとトレハロースジミコレートとの組合わせは、米国特許第4,435,386号に記載されるように、特に意図される。弱毒化されたエンドトキシンとトレハロースジミコレートおよびエンドトキシン糖脂質との組合わせがまた意図され(米国特許第4,505,899号)、米国特許第4,436,727号、同第4,436,728号および同第4,505,900号に記載されるような、弱毒化されたエンドトキシンと細胞壁骨格(CWS)またはCWSおよびトレハロースジミコレートとの組合わせも同様である。弱毒化されたエンドトキシンを含まない、CWSとトレハロースジミコレートとだけの組み合わせはまた、米国特許第4,520,019号に記載されるように、有用であることが想像される。
【0210】
他の実施形態において、本発明は、種々のアジュバントが細胞膜において使用され得、改善された免疫原性組成物を生じることを意図している。一般的に、唯一必要なことは、このアジュバントが、当該細胞の細胞膜に取り込まれ得ることか、この細胞膜と物理的に会合することか、またはこの細胞膜と結合体化することである。当業者は、本発明に従って、細胞性ワクチンに結合体化され得る異なる種類のアジュバントを認識しており、これらとしては、特に、アルキルリゾホスフォリピド(alkyl lysophosphilipid)(ALP);BCG;およびビオチン(ビオチン化誘導体を含む)が挙げられる。使用のために、特に意図される特定のアジュバントは、グラム陰性細胞由来のテイコ酸である。これらとしては、リポテイコ酸(LTA)、リビトールテイコ酸(RTA)およびグリセロールテイコ酸(GTA)が挙げられる。これらの合成対応物の活性形態もまた、本発明とともに使用され得る(Takadaら、1995)。
【0211】
種々のアジュバント(ヒトにおいて通常使用されないものでさえ)が、なお動物において使用され得る(例えば、抗体を産生することまたはその後に活性化T細胞を得ることを必要とする場合)。例えば、非照射腫瘍細胞を使用して起こり得るような、アジュバントまたは細胞のいずれかから生じ得る毒性作用または他の副作用は、このような環境においては無関係である。
【0212】
本発明のいくつかの実施形態において使用するのに好ましいアジュバントの1つの群は、核酸(例えば、DNAまたはRNA)によってコードされ得るものである。このようなアジュバントが、抗原をコードする核酸(例えば、発現ベクター)、または別個のベクターもしくは他の構築物にコードされ得ることが、意図される。アジュバントをコードするこれらの核酸は、例えば、脂質またはリポソームとともに、直接送達され得る。
【0213】
(3.賦形剤、塩および補助物質)
本発明の抗原性組成物は、1種以上のさらなる成分(例えば、賦形剤、塩など)とともに混合され得、これらは、薬学的に受容可能であり、かつ少なくとも1種の活性成分(例えば、抗原)と適合性である。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールおよびそれらの組み合わせである。
【0214】
本発明の抗原性組成物は、中性形態または塩形態として、ワクチン内に処方され得る。薬学的に受容可能な塩は、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基を用いて形成される)、ならびに無機酸(例えば、塩酸またはリン酸のような)、または有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような)により形成されるものを含む。遊離カルボキシル基により形成される塩もまた、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄のような)、および有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン、およびそれらの組み合わせのような)から誘導され得る。
【0215】
さらに、所望の場合、抗原性組成物は、少量の1種以上の補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤のような)、pH緩衝剤などを含有し得、これらは、抗原性組成物またはワクチンの有効性を増強する。
【0216】
(D.ワクチン成分の精製)
いずれかの場合において、ワクチン成分(例えば、タンパク様組成物をコードする核酸)が単離され得、そして/または、化学合成試薬、細胞、もしくは細胞成分から精製され得る。ワクチン成分を製造する方法において、精製は、本明細書中に記載されるかまたは当該分野で周知(例えば、Sambookら、1989)の、任意の適切な技術によって行われる。特定の実施形態において使用するのに好ましいが、本発明の抗原性組成物または他のワクチン成分は、常に、それらの最も精製された状態で提供されることは、一般には必要ではない。実際には、実質的にさほど精製されていないワクチン成分(それにもかかわらず、これは、天然の状態と比較して、所望の化合物に富んでいる)が、特定の実施形態(例えば、タンパク質産物の全回収のような)においてか、または発現タンパク質の活性を維持する際に有用であることが意図される。しかしながら、不活化産物もまた、特定の実施形態において(例えば、抗体産生により抗原性を決定する際に)有用であることが意図される。
【0217】
本発明はまた、精製された(好ましい実施形態において、実質的に精製された)ワクチンまたはワクチン成分を提供する。用語「精製されたワクチン成分」とは、本明細書中で使用される場合、少なくとも1種のワクチン成分(例えば、細胞から単離可能なタンパク様組成物)をいうことが意図され、ここで、この成分は、その天然で入手可能な状態と比較して(例えば、細胞抽出物または化学合成試薬中でのその純度と比較して)、任意の程度まで精製される。このワクチン成分がタンパク様組成物である、特定の局面において、精製されたワクチン成分とはまた、野生型または改変型の、タンパク質、ポリヌクレオチド、または天然に生じる環境から遊離したペプチドをいう。
【0218】
用語「実質的に精製された」が使用される場合、この用語は、特定の化合物(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)が組成物の主要成分を形成する(例えば、組成物中で約50%以上の化合物を構成する)組成物をいう。好ましい実施形態において、実質的に精製されたワクチン成分は、この組成物中の化合物の、約60%より多く、約70%より多く、約80%より多く、約90%より多く、約95%より多く、約99%より多くまたはなおそれより多くを構成する。
【0219】
特定の実施形態において、ワクチン成分は、均一になるまで精製され得る。本発明に適用される場合、「均一になるまで精製された」とは、ワクチン成分が、化合物が実質的に他の化学、生体分子または細胞を含まないレベルの純度を有することを意味する。例えば、精製されたペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、しばしば、十分な程度に、他のタンパク質成分を含んでおらず、その結果、分解配列決定が首尾よく行われ得る。ワクチン成分の精製の程度を定量するための種々の方法が、本発明の開示を考慮して、当業者に公知である。これらは、例えば、画分の特異的なタンパク質活性(例えば、抗原性)を決定する工程、またはゲル電気泳動によって画分内のペプチドの数を評価する工程、を包含する。
【0220】
化学精製、生体分子精製または生物学的精製における使用に適切な種々の技術が、当業者に周知であり、この技術は、本発明のワクチン成分を調製するのに適用可能であり得る。これらとしては、例えば、以下が挙げられる:硫酸アンモニウム、PEG、抗体などを用いるか、または熱変性とその後の遠心分離による、沈殿;分別、クロマトグラフィー手順(分配クロマトグラフィー(例えば、ペーパークロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ガス液体クロマトグラフィーおよびゲルクロマトグラフィー)、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、超臨界流クロマトグラフィーイオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイト、レクチンアフィニティーが挙げられるがこれらに限定されない);等電点電気泳動およびゲル電気泳動(例えば、Sambrookら、1989;およびFreifelder,Physical Biochemistry、第2版、238〜246頁を参照のこと(本明細書中で参考として援用される))。
【0221】
多くのDNAおよびタンパク質が公知であるか(例えば、National Center for Biotechnology Information’s Genbank and GenPeptデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照のこと)、または本明細書中に記載される方法を使用して、同定および増幅され得るので、当業者に公知の組換え発現される核酸またはタンパク様配列のための任意の精製方法を使用し得る。特定の局面において、核酸は、ポリアクリルアミドゲル、および/または塩化セシウム遠心分離勾配によって、あるいは当業者に公知の他の任意の手段(例えば、Sambrookら、1989(本明細書中で参考として援用される))によって、精製され得る。さらなる局面において、タンパク様配列の精製は、配列を融合タンパク質として組換え発現させることによって行われ得る。このような精製方法は、当該分野で慣習的である。これは、以下によって例示される。特定のタンパク質−グルタチオンS−トランスフェラーゼ融合タンパク質の産生、E.coliにおける発現、およびグルタチオン−アガロースによるアフィニティークロマトグラフィーを使用した、均一になるまでの単離、またはタンパク質のN末端もしくはC末端でのポリヒスチジンタグの産生、ならびに、Niアフィニティークロマトグラフィーを使用する、その後の精製。特定の局面において、細胞またはワクチンの他の成分は、フローサイトメトリによって精製され得る。フローサイトメトリは、液体サンプル中の細胞または他の粒子の分離を含み、当該分野で周知である(例えば、米国特許第3,826,364号、同第4,284,412号、同第4,989,977号、同第4,498,766号、同第5,478,222号、同第4,857,451号、同第4,774,189号、同第4,767,206号、同第4,714,682号、同第5,160,974号および同第4,661,913号を参照のこと)。本明細書中に記載されるこれらの任意の技術、ならびに当業者に公知のこれらおよび任意の他の技術の組み合わせを使用して、本発明のワクチンを含有し得る、種々の化学、タンパク様化合物、核酸、細胞性物質および/または細胞を、精製および/またはその純度をアッセイし得る。当該分野で一般的に公知であるように、種々の精製工程を行うための順序は、変更され得るか、または特定の工程は、除外され得てもなお、実質的に精製された抗原または他のワクチン成分を調製するために適切な方法が得られると考えられる。
【0222】
(E.ワクチンの調製)
一旦、産生され、合成され、そして/または精製されると、抗原または他のワクチン成分は、患者に投与するためのワクチンとして、調製され得る。ワクチンの調製は、一般に、以下によって例示されるように、当該分野において十分理解されている:米国特許第4,608,251号、同第4,601,903号、同第4,599,231号、同第4,599,230号、および同第4,596,792号(全てが、本明細書中で参考として援用される)。このような方法を使用して、本発明の開示を考慮して、抗原組成物を活性成分として含有するワクチンを調製し得る。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、薬理学的に受容可能なワクチンを含むように調製される。
【0223】
(F.ワクチンの投与)
ワクチン接種計画および投薬量は、例えば、当業者によって容易に決定され得る因子(例えば、患者の体重および年齢、処置されるべき疾患の型、疾患状態の重篤度、以前の治療介入もしくは併用治療介入、投与の様式など)を考慮して、患者ベースで、患者毎に変更され得る。
【0224】
ワクチンは、投薬処方物と互換可能な様式で、そして治療的に有効でありそして免疫原性であるような量で投与される。例えば、筋肉内経路は、インビボでの短い半減期を有する毒素の場合に好ましくあり得る。投与されるべき量は、処置されるべき被験体に依存し、例えば、抗体を合成する個々の免疫系の能力、および所望される保護の程度が挙げられる。ワクチンの投与量は、投与経路に依存し、そして宿主のサイズによって変更される。投与されるに必要とされる活性成分の正確な量は、開業医の判断に依存する。特定の実施形態において、薬学的組成物は、例えば、少なくとも0.1%の活性な化合物を含む。他の実施形態において、活性な化合物は、例えば、その単位重量の約2%と約75%との間、または約25%と約60%との間、およびそこから推論し得る任意の範囲を含み得る。しかし、適切な投薬量範囲は、例えば、ワクチン化当たり数百μgの活性成分のオーダーであり得る。他の非限定的な例示において、投薬はまた、ワクチン化当たり約1μg/kg/体重、約5μg/kg/体重、約10μg/kg/体重、約50μg/kg/体重、約100μg/kg/体重、約200μg/kg/体重、約350μg/kg/体重、約500μg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg/体重から約1000mg/kg/体重まで、またはそれより多く、およびそこから推論し得る任意の範囲を含み得る。本明細書中に列挙される数から推論し得る範囲の非限定的な例示において、約5mg/kg/体重〜約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重〜約500mg/kg/体重などの範囲が、上記の数に基づいて、投与され得る。最初の投与およびブースター投与(例えば、播種)に適切なレジメンはまた、可変であるが、最初の投与、引き続く播種または他の投与によって類型化される。静脈内送達法および経口送達法と比較して送達効率がより低いので、エアロゾル送達のために投薬量が増加され得ることもまた、理解される。
【0225】
多くの場合において、複数のワクチン投与(通常には、6回のワクチン化を超えない、より通常には、4回のワクチン化を超えない、そして好ましくは、1回以上、通常は少なくとも約3回のワクチン化)を有することが所望される。ワクチン化は、正常には、2〜12週間の間隔、より通常には、3〜5週間の間隔である。1〜5年間(通常には、3年間)の間隔での周期的なブースターは、抗体の保護レベルを維持するために所望される。
【0226】
免疫化の過程は、上清の抗原に対する抗体についてのアッセイによって追跡され得る。アッセイは、慣用的な標識(例えば、放射性核種、酵素、蛍光プローブなど)で標識することによって実施され得る。これらの技術は、周知であり、そして広範な種々の患者において見出され得る(これらの型のアッセイの例示として、例えば、米国特許第3,791,932号、同第4,174,384号および同第3,949,064号)。免疫化に続いて、他の免疫アッセイが実施され得、そして抗原でのチャレンジからの保護アッセイが実施され得る。
【0227】
(G.免疫応答の増強)
本発明は、1つ以上のリンパ球を抗原性組成物と接触させる工程を包含する、被験体における免疫応答を増強させる方法を含む。特定の実施形態において、1つ以上のリンパ球は、動物(例えば、ヒト)に含まれる。他の実施形態において、リンパ球は、動物、または動物の組織(例えば、血液)から単離され得る。特定の好ましい実施形態において、リンパ球は、末梢血リンパ球である。特定の実施形態において、1つ以上のリンパ球は、Tリンパ球またはBリンパ球を含む。特定の好ましい局面において、Tリンパ球は、細胞毒性Tリンパ球である。
【0228】
増強された免疫応答は、活性または陽性な免疫応答であり得る。あるいは、この応答は、養子免疫治療アプローチの一部であり得、ここで、リンパ球は動物(例えば、患者)から得られ、次いで、抗原性組成物を含む組成物でパルスされる。好ましい実施形態において、リンパ球は、同一または異なる動物(例えば、同一または異なるドナー)に投与され得る。
【0229】
(1.細胞毒性Tリンパ球)
特定の実施形態において、Tリンパ球は、本発明の抗原性組成物との接触によって特異的に活性化される。特定の実施形態において、Tリンパ球は、本発明の抗原性組成物と接触されているかまたは接触されていた抗原提示細胞との接触によって活性化される。
【0230】
T細胞は、独特な抗原結合レセプター(T細胞レセプター)をその膜上に発現する。このレセプターは、他の細胞表面上の主要な免疫適合性複合体(MHC)分子に関連する抗原のみを認識し得る。Tヘルパー細胞およびT細胞毒性細胞のような、T細胞のいくつかの集団が存在する。Tヘルパー細胞およびT細胞毒性細胞は、膜結合糖タンパク質であるCD4およびCD8をそれぞれ提示することによって、主に区別される。Tヘルパー細胞は、B細胞、T細胞毒性細胞、マクロファージおよび免疫系の他の細胞の活性化に不可欠である種々のリンホカインを分泌する。対照的に、抗原−MHC複合体を認識するT細胞毒性細胞は、増殖し、そして細胞毒性T細胞(CTL)と呼ばれるエフェクター細胞に分化する。CTLは、細胞溶解を生じる物質を産生することによって抗原を提示する本体の細胞を廃除する。
【0231】
CTL活性は、本明細書中に記載される方法または当業者に公知の方法によって評価され得る。例えば、CTLは、新鮮な、単離された末梢血単核細胞(PBMC)、PBMCより確立されたフィトヘマグルチニン刺激IL−2拡張細胞株(Bernardら、1998)または予め免疫された被験体より単離されたT細胞において評価され得、そして、標準的な4時間の51Cr放出微小毒性(microtoxicity)アッセイを使用して、抗原を含有するアデノウイルスベクターで感染されたDCで6日間再刺激され得る。細胞媒介性の細胞毒性を検出するために開発された別の蛍光アッセイにおいて、使用される蛍光団は、非毒性分子alamarBlue(Nociariら、1998)である。alamarBlueは、ミトコンドリアでの還元が生じるまで蛍光的にクエンチされ(すなわち、低い量子収量)、次いで、alamarBlue蛍光強度の劇的な増加(すなわち、量子収量の増加)を生じる。このアッセイは、極度に感受性で、特異的であり、そして標準的な51Cr放出アッセイより顕著に少数のエフェクター細胞を必要とすることが報告されている。
【0232】
特定の局面において、Tヘルパー細胞応答は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を用いるインビトロまたはインビボでのアッセイによって測定され得る。インビトロアッセイとしては、酵素アッセイ、放射性同位元素アッセイ、発色団(chromaphore)アッセイまたは蛍光アッセイによって放出される特定のサイトカインの測定が挙げられる。インビボアッセイとしては、当業者に公知である、皮膚試験と呼ばれる遅延型高感受性応答が挙げられる。
【0233】
(2.抗原提示細胞)
一般に、用語「抗原提示細胞」は、抗原に対する免疫応答の増強を助けることによって、本発明の目的を達成する任意の細胞(すなわち、免疫系のT細胞アームまたはB細胞アーム)であり得る。このような細胞は、本明細書中および当該分野において開示される方法を使用して、当業者によって規定され得る。当業者によって理解され(例えば、Kuby,1993(本明細書中に参考として援用される))、そして本明細書中の特定の実施形態において使用される場合、クラスII主要免疫適合性分子、または免疫細胞に対する複合体を有する抗原を正常にかまたは選択的に表示または提示する細胞は、「抗原提示細胞」である。特定の局面において、細胞(例えば、APC細胞)は、別の細胞(例えば、所望の抗原を発現する組換え細胞または腫瘍細胞)と融合され得る。2つ以上の細胞の融合物を調製する方法は、当該分野において周知であり、その方法は、例えば、Goding,pp.65−66,71−74 1986;Campbell,pp.75−83,1984;Kohler and Milstein,1975;Kohler and Milstein,1976,Gefter et al.,1977(各々が、本明細書中に参考として援用される)に開示される。いくつかの場合において、抗原提示細胞が抗原を表示または提示する免疫細胞は、CD4+TH細胞である。APC上または他の免疫細胞に発現されるさらなる分子は、免疫応答の増強を助け得るかまたは増強し得る。分泌された分子または可溶性分子(例えば、免疫調節因子およびアジュバント)はまた、抗原に対する免疫応答を助け得るかまたは増強し得る。このような分子は、当業者に周知であり、そして種々の例示が、本明細書中に記載される。
【0234】
(XI.癌処置)
治療組成物は、本発明の処方物を使用して癌を処置するために、細胞、組織または生物に送達され得る。高増殖性疾患の処置に効果的な1つ以上の因子(例えば、抗癌剤)が、使用され得る。「抗癌」剤は、例えば、1つ以上の癌細胞を殺傷すること、1つ以上の癌細胞においてアポトーシスを誘導すること、1つ以上の癌細胞の増殖速度を低減させること、転位の発生または数を低減させること、腫瘍のサイズを低減させること、腫瘍増殖を阻害すること、腫瘍もしくは1つ以上の癌細胞に供給される血液を低減させること、1つ以上の癌細胞もしくは腫瘍に対する免疫応答を促進させること、癌の進行を予防または阻害すること、あるいは、癌を有する被験体の寿命を増加させることによって、被験体において癌を陰性にもたらし得る。抗癌剤としては、例えば、化学療法剤(化学療法)、放射線療法剤(放射線療法)、外科的手順(手術)、免疫療法剤(免疫療法)、遺伝子治療剤(遺伝子治療)、ホルモン治療、他の生物学的因子(生物治療)および/または代替の治療が挙げられる。このような因子は、単独でかまたは他の因子と組合わせた量で、癌細胞を殺傷するかもしくは癌細胞の増殖を阻害するに効果的な量で提供される。
【0235】
本発明によって処置され得る癌としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:肺癌、上気道(主もしくは副)の癌、頭頸部の癌、膀胱癌、腎臓癌、膵臓癌、口腔の癌、喉の癌、咽頭癌、食道癌、脳の癌、肝癌、脾臓の癌、腎臓癌、リンパ節の癌、小腸癌、膵臓癌、血球の癌、結腸癌、胃癌、乳癌、子宮内膜の癌、前立腺癌、精巣癌、卵巣癌、皮膚癌、骨髄の癌および血液の癌。肺癌および上気道の癌が、本発明のエアロゾル処方物によって処置されるに好ましい。これらの肺癌および上気道の癌は、以下の多くの組織学的分類によって規定される:扁平上皮細胞癌(例えば、扁平(squamous)癌);小細胞癌(例えば、燕麦細胞癌)、中間の細胞型の癌、複合燕麦細胞癌;腺癌(例えば、腺房細胞腺癌、乳頭状腺癌、細気管支癌および粘膜形成を伴う固形癌;大細胞癌(例えば、巨大細胞癌および明細胞癌);扁平上皮腺癌(adenosquamous carcinoma);カルチノイド;ならびに気管支腺癌(例えば、腺様嚢胞癌および粘液性類表皮癌)。
【0236】
細胞、組織または生物への抗癌剤の投与は、(必要ならば、毒性を考慮して)エアロゾルを介する化学療法学の投与のための一般的なプロトコルに従い得る。治療サイクルは、必要な場合、反復されることが予想される。特定の実施形態において、さらなる種々の薬剤が、本発明との任意の組合せで適用され得ることが意図される。
【0237】
(A.化学療法剤)
用語「化学療法」は、癌を標的化するような薬物の使用をいう。「化学療法剤」は、癌の処置において投与される化合物または組成物を意味するために使用される。生化学療法として知られる化学療法の1つのサブタイプは、化学療法と生物学的治療との組合せに関する。
【0238】
化学療法剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:5−フルオロウラシル、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトセシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、シクロホスファミド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エストロゲンレセプター結合因子、エトポシド(VP16)、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼインヒビター、ゲムシタビン、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、マイトマイシン、ナベルビン、ニトロソ尿素、プリカマイシン(pliomycin)、プロカルバジン、ラロキシフェン、タモキシフェン、タキソール、テマゾロミド(temazolomide)(DTICの水性形態)、トランスプラチナム(transplatinum)、トポテカン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、ビンクリスチン、または、上記の任意のアナログ、もしくは誘導改変体。これらの薬剤または薬物は、細胞内でのそれらの活性型(例えば、これらが細胞周期に影響するかどうか、およびどの段階で影響するか)によって分類される。あるいは、薬剤は、DNAに直接架橋する能力、DNAにインターカレートする能力、または核酸合成に影響することによって染色体異常および有糸分裂異常を誘導する能力に基づいて特徴付けられ得る。大半の化学療法剤は、以下のカテゴリに分類される:アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、コルチコステロイドホルモン、有糸分裂インヒビター、およびニトロソ尿素、ホルモン剤、雑多剤、およびそれらの任意のアナログまたは誘導改変体。
【0239】
化学療法剤、および投与、投薬などの方法は、当業者に周知であり(例えば、「Physicians Desk Reference」、Goodman&Gilman’s「The Pharmacological Basis of Therapeutics」および「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(関連箇所が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)、そして、本明細書中の開示の観点から本発明と組合せられ得る。投薬におけるいくつかの改変は、処置される被験体の状態に依存して、必然的に生じる。投与の担当者は、いずれにせよ、個々の被験体についての適切な用量を決定する。特定の化学療法剤および用量レジメンの例はまた、本明細書中に記載される。もちろん、本明細書中で記載されるこれらの投薬量および薬剤の全ては、限定するのではなく例示的なものであり、そして、他の用量または薬剤が、特定の患者または適用のために、当業者によって使用され得る。これらの点の中間の任意の投薬量、またはこれらの点から誘導し得る範囲の任意の投薬量はまた、本発明における使用として予想される。
【0240】
アルキル化剤は、癌細胞が増殖しないようにするために、ゲノムDNAと直接相互作用する薬物である。化学療法薬のこのカテゴリは、細胞周期の全期に影響する薬剤を示し、すなわち、これらの薬剤は、期特異的ではない。アルキル化剤は、例えば、以下を処置するために導入され得る:慢性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、多発骨髄腫、ならびに胸部、肺および卵巣の特定の癌。アルカリ化剤としては、以下が挙げられ得るがこれらに限定されない:ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン(ethylenimene)、メチルメラミン、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素またはトリアジン。
【0241】
アルキル化剤としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ブスルファン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド(サイトキサン)、ダカルバジン、イホスファミド、メクロレタミン(マスターゲン)、およびメルファラン。特定の局面において、トログリタザオン(troglitazaone)は、1つ以上の任意のこれらのアルキル化剤と組合せて癌を処置するために使用され得、このうちのいくつかを、以下で議論する。
【0242】
(1.ナイトロジェンマスタード)
ナイトロジェンマスタードは、以下であり得るが、これらに限定されない:メクロレタミン(HN2)(これは、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫に対して使用される);シクロホスファミドおよび/またはイホスファミド(これは、急性リンパ性白血病および慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発骨髄腫、神経芽腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、ウィルムス腫、精巣頸漿液腫および軟部組織漿液腫のような癌の処置で使用される);メルファラン(L−サルコリシン)(これは、多発骨髄腫、乳癌および卵巣癌のような癌を処置するために使用される);およびクロラムブシル(これは、例えば、慢性リンパ性(lymphatic(lymphocytic))白血病、悪性リンパ腫(リンパ肉腫、巨大濾胞性リンパ腫、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫を含む)のような疾患を処置するために使用される)。
【0243】
クロラムブシル(ロイケランとしても知られる)は、ナイトロジェンマスタード型の二官能性のアルキル化剤であり、これは、選択されたヒト腫瘍性疾患に対して活性があることが見出されている。クロラムブシルは、4−[ビス(2−クロルエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸として化学的に公知である。
【0244】
クロラムブシルは、経口投与については錠剤形態で利用可能である。これは、消化管で迅速かつ完全に吸収される。例えば、約0.6mg/kg〜約1.2mg/kgの単回経口用量の後、1時間以内に、血漿クロラムブシルレベルはピークに達し、そして、親薬物の終末半減期は、約1.5時間と推定される。約0.1mg/kg/日〜0.2mg/kg/日、または約36mg/m2/日〜6mg/m2/日、あるいは、約0.4mg/kgが、抗悪性腫瘍処置のために使用され得る。クロラムブシルは、それ自身が治療薬ではないが、臨床的に有用な緩和を生じ得る。
【0245】
シクロホスファミドは、2H−1,3,2−オキサザホスホリン−2−アミン、N,N−ビス(2−クロロエチル)テトラヒドロ−,2−オキシド,一水和物であり;Cytoxan(Mead Johnsonから利用可能);およびNeosar(Adriaから利用可能)と呼ばれる。シクロホスファミドは、ジオキサン溶液中で、N,N−ビス(2−クロロエチル)二塩化ホスホラミダイト([(ClCH2CH2)2N−POCl2])を用いて、3−アミノ−1−プロパノールをトリエチルアミンの触媒影響下で縮合することによって、調製される。この濃縮物は二重であり、そして、ヒドロキシル基およびアミノ基の両方を含み、したがって、環化をもたらす。
【0246】
他のβ−クロロエチルアミノアルキレーターとは異なり、これは、肝酵素によって活性化されるまで、活性エチレンイモニウム形態まで容易に環化されない。したがって、この物質は、消化管で安定であって、非常に寛容性であり、そして、経口経路および非経口経路に有効で、そして、局部的水疱発生、壊死、静脈炎、またはさらなる疼痛を引き起こさない。
【0247】
成人のための適切な経口用量としては、例えば、約1mg/kg/日〜約5mg/kg/日(通常組合せで)(消化管の寛容性に依存する);または、約1mg/kg/日〜約2mg/kg/日が挙げられ;静脈内用量としては、例えば、初期は、約2日〜約5日の期間にわたって、分割用量で約40mg/kg/日〜約50mg/kg/日、もしくは約7日〜約10日毎に、約10mg/kg〜約15mg/kg、もしくは、1週間に2回、約3mg/kg〜約5mg/kg、または1.5mg/kg/日〜約3mg/kg/日が挙げられる。いくつかの局面において、約250mg/kg/日の用量が、抗悪性腫瘍薬として投与され得る。消化管への悪影響に起因して、静脈内経路はローディングが好ましい。維持の間に、約3000/mm3〜4000/mm3の白血球数が、通常所望される。薬物はまた、時には、浸潤によってかまたは体腔へ、筋内投与される。これは、約100mg、約200mgおよび約500mgの注射のための投薬形態、ならびに約25mgおよび約50mgの錠剤形態で利用可能である。
【0248】
メルファラン(アルケランとしても知られる)、L−フェニルアラニンマスタード、フェニルアラニンマスタード、L−PAMまたはL−サルコリシンは、ナイトロジェンマスタードのフェニルアラニン誘導体である。メルファランは、選択的なヒト腫瘍性疾患に対して活性である二官能性のアルキル化剤である。これは、4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−L−フェニルアラニンとして化学的に公知である。
【0249】
メルファランは、化合物の活性L−異性体であり、そして、BergelおよびStockによって、1953年に最初に合成された;D−異性体(メドファランとして知られる)は、特定の動物腫瘍に対してほとんど活性ではなく、そして、染色体に対して影響するために必要な用量は、L−異性体に必要とされる用量よりも多い。ラセミ(DL−)形態は、メルファランまたはサルコリシンとして公知である。メルファランは、水に不溶性であり、そして、約2.1のpKa1を有する。メルファランは、経口投与のために錠剤形態で利用可能であり、そして、多発骨髄腫の処置のために使用されている。有効な証拠によって、多種骨髄腫を有する患者の約3分の1〜2分の1が、この薬物の経口投与に好ましい反応を示すということが示唆される。
【0250】
メルファランは、上皮卵巣癌の処置で使用されている。卵巣癌の処置のために通常使用される1つのレジメンは、単回コースとして、5日間毎日約0.2mg/kgの用量でメルファランを投与することである。コースは、血液寛容性に依存して、約4〜5週間毎に繰り返される(SmithおよびRutledge、1975;Youngら、1978)。あるいは、特定の実施形態において、使用されるメルファランの用量は、約0.05mg/kg/日ほど少量であり得るか、または約3mg/kg/日もしくはそれより多いほど多量であり得る。
【0251】
(2.エチレンイミンおよびメチルメラミン)
エチレニメネンおよび/またはメチルメラミンとしては、ヘキサメチルメラミン(卵巣癌の処置に使用される);およびチオテパ(膀胱癌、乳癌および卵巣癌の処置に使用される)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0252】
(3.スルホン酸アルキル)
スルホン酸アルキルとしては、ブスルファン(慢性顆粒球性白血病の処置に使用される)のような薬物が挙げられるが、これに限定されない。
【0253】
ブスルファン(ミレランとしても知られる)は、二官能性のアルキル化剤である。ブスルファンは、1,4−ブタンジオールジメタンスルホン酸として化学的に公知である。ブスルファンは、経口投与のために錠剤形態として利用可能であり、ここで、例えば、各分割錠は、約2mgのブスルファンならびに不活性成分のステアリン酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムを含む。
【0254】
ブスルファンは、慢性骨髄性(骨髄様性、骨髄球性、顆粒球性)白血病の待機療法のために必要とされる。治療的ではないが、ブスルファンは、顆粒球の全質量を減少し、疾患の症状を軽減し、そして、患者の臨床状態を改善する。以前に非処置の慢性骨髄性白血病を有した成人の約90%が、ブスルファンの使用後に、巨大臓器の退行または安定化を伴う血液学的緩和を得る。ブスルファンは、生存時間およびヘモグロビンレベルの維持に関して、脾臓照射に優れており、そして、巨脾腫を制御するときの照射と等価であることが示されている。
【0255】
(4.ニトロソ尿素)
アルキル化剤のように、ニトロソ尿素は、DNA修復タンパク質を阻害する。これらは、非ホジキンリンパ腫、多発骨髄腫、悪性黒色腫、さらに脳腫瘍を処置するために使用される。ニトロソ尿素としては、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)またはストレプトゾシンが挙げられるが、これらに限定されない。セムスチンは、原発性脳腫瘍、胃癌、または大腸癌のような癌に使用されている。ストレプトゾシン(stroptozocin)は、悪性脾臓インスリノーマ、または悪性カルチノイドのような疾患を処置するために使用されている。ストレプトゾシンは、悪性黒色腫、ホジキン病および軟部組織肉腫のような癌を処置するために使用される。
【0256】
カルムスチン(滅菌カルムスチン)は、特定の腫瘍性疾患の処置で使用されるニトロソ尿素の1つである。これは、1,3ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソ尿素である。これは、分子量214.06を有する凍結乾燥化淡黄色薄片または凝結化塊である。これは、アルコールおよび脂質に非常に可溶性であり、そして、水にはあまり可溶性でない。カルムスチンは、言及したような再形成の後、静脈内注射によって投与される。
【0257】
カルムスチンがDNAおよびRNAをアルキル化するということは一般に合意されているが、これは、他のアルキル化剤(alkylator)と交差耐性ではない。他のニトロソ尿素類と同様に、カルムスチンもまた、タンパク質のアミノ酸のカルバモイル化によって、いくつかの重要な酵素学的プロセスを阻害し得る。
【0258】
カルムスチンは、単独の薬剤として待期療法としてか、または脳腫瘍(例えば、膠芽腫、脳幹神経膠腫、髄芽腫(medullobladyoma)、星状細胞腫、上衣腫、および転移性脳腫瘍)において、他の認可された化学療法剤との確立された組み合わせ治療において示されている。カルムスチンはまた、多発性骨髄腫を処置するために、プレドニゾンとの組み合わせにおいて使用されている。カルムスチンは、多発性骨髄腫または悪性黒色腫のような癌を処置するにおいて使用されている。カルムスチンは、一次療法で処置されたが再発した患者または一次療法に応答できなかった患者において、他の認可された薬物と組み合わせた二次療法として、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫の処置において有用であることが証明されている。
【0259】
滅菌カルムスチンは、凍結乾燥物質の100mg単回用量のバイアルで、一般に入手可能である。以前に処置されていなかった患者において、単独の薬剤としてカルムスチンの推奨される用量は、静脈内で6週間毎に約150mg/m2〜約200mg/m2である。これは、単回用量としてかまたは毎日の注射に分割されて(例えば、2日間連続して約75mg/m2〜約100mg/m2)、与えられ得る。カルムスチンが、他の骨髄抑制薬物と組み合わせて使用される場合または骨髄余量が枯渇している患者において使用される場合、この用量は、然るべく調整されるべきである。初回用量以後の用量は、前回の用量に対する患者の血液学的応答に従って調整されるべきである。当然のことながら、他の用量(例えば、約10mg/m2、約20mg/m2、約30mg/m2、約40mg/m2、約50mg/m2、約60mg/m2、約70mg/m2、約80mg/m2、約90mg/m2〜約100mg/m2)が、本発明において使用され得ることが理解される。
【0260】
ロムスチンは、特定の新生物性疾患の処置において使用されるニトロソ尿素類の1つである。ロムスチンは、1−(2−クロロ−エチル)−3−シクロヘキシル−1ニトロソ尿素類である。ロムスチンは、実験式C9H16ClN3O2および分子量233.71を有する黄色粉末である。ロムスチンは、10%エタノール(約0.05mg/mL)および無水アルコール(約70mg/mL)に可溶性である。ロムスチンは、水(約0.05mg/mL未満)に比較的不溶性である。ロムスチンは、生理的pHで比較的非イオン化される。ロムスチンカプセル中の不活化成分は、ステアリン酸マグネシウムおよびマンニトールである。
【0261】
ロムスチンがDNAおよびRNAをアルキル化するということは一般に合意されているが、これは、他のアルキル化剤(alkylator)と交差耐性ではない。他のニトロソ尿素類と同様に、ロムスチンもまた、タンパク質のアミノ酸のカルバモイル化によって、いくつかの重要な酵素学的プロセスを阻害し得る。
【0262】
ロムスチンは経口的に与えられ得る。約30mg/m2〜100mg/m2の範囲の用量で放射性ロムスチンを経口投与した後、与えられた放射能の約半分が、24時間以内に分解産物の形態で排出された。この代謝産物の血清半減期は、約16時間〜約2日間の範囲である。組織レベルは、静脈内投与から15分後で血漿レベルに匹敵する。
【0263】
ロムスチンは、他の処置様式に加えて単独の薬剤として、または他の認可された化学療法剤との確立された組み合わせ治療において、原発性脳腫瘍および転移性脳腫瘍の両方で、既に適切な外科的手順および/または放射線療法手順を受けた患者において有用であることが示されている。ロムスチンは、小細胞肺癌のような癌を処置するために使用されている。ロムスチンはまた、一次療法で処置されたが再発した患者または一次療法に応答できなかった患者において、他の認可された薬物と組み合わせて、ホジキン病に対する二次療法に有効であることが証明されている。
【0264】
以前に処置されていなかった患者において、単独の薬剤として成体および小児に推奨されるロムスチンの用量は、単回経口用量として6週間毎に約130mg/m2である。易感染性の骨髄機能を有する個体において、この用量は、6週間毎に約100mg/m2まで低減されるべきである。ロムスチンが、他の骨髄抑制薬物と組み合わせて使用される場合、この用量は、然るべく調整されるべきである。他の用量(例えば、約20mg/m2、約30mg/m2、約40mg/m2、約50mg/m2、約60mg/m2、約70mg/m2、約80mg/m2、約90mg/m2、約100mg/m2〜約120mg/m2)が使用され得ることが理解される。
【0265】
トリアジンとしては、悪性黒色腫、ホジキン病、および柔組織の肉腫のような癌の処置に使用される、ダカルバジン(dacabazine)(DTIC;ジメチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミド)のような薬物が挙げられるが、これに限定されない。
【0266】
(B.代謝拮抗物質)
代謝拮抗物質は、DNA合成およびRNA合成を破壊する。アルキル化剤とは異なり、代謝拮抗物質は、S期の間の細胞周期に特異的に影響を及ぼす。代謝拮抗物質は、胸部、卵巣および胃腸管の腫瘍に加えて慢性白血病に対抗するために使用されている。代謝拮抗物質は、葉酸アナログ、ピリミジンアナログおよびプリンアナログ、ならびに関連した阻害性化合物のような種々のカテゴリーに区別され得る。代謝拮抗物質としては、5−フルオロウラシル(5−FU)、シタラビン(Ara−C)、フルダラビン、ゲムシタビン、およびメトトレキサートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0267】
(1.葉酸アナログ)
葉酸アナログとしては、急性リンパ性白血病、絨毛癌、菌状息肉腫、胸部肉腫、頭頸部肉腫、肺肉腫、および骨原性肉腫のような癌の処置において使用されている、メトトレキサート(アメトプテリン)のような化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0268】
(2.ピリミジンアナログ)
ピリミジンアナログとしては、シタラビン(シトシンアラビノシド)、5−フルオロウラシル(フルオロウラシル;5−FU)およびフロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン;FudR)のような化合物が挙げられる。シタラビンは、急性顆粒球性白血病および急性リンパ性白血病のような癌の処置において使用されている。フロクスウリジンおよび5−フルオロウラシルは、胸部、結腸、胃、膵臓、卵巣、頭頸部、膀胱、および局部的な前悪性の皮膚の病変のような癌の処置において使用されている。
【0269】
5−フルオロウラシル(5−FU)は、5−フルオロ−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオンという化学名を有する。その作用機構は、チミジル酸へのデオキシウリジル酸のメチル化反応をブロックすることによると考えられる。従って、5−FUは、デオキシリボ核酸(DNA)の合成に干渉し、そしてより低い程度で、リボ核酸(RNA)の形成を阻害する。DNAおよびRNAは、細胞分裂および細胞増殖に必須であるので、5−FUの作用は、細胞死へと導くチミジン欠損を引き起こすことであると考えられる。従って、5−FUの作用は、転移性の癌の特徴である迅速に分裂する細胞において見出される。
【0270】
(3.プリンアナログおよび関連したインヒビター)
プリンアナログおよび関連した化合物としては、メルカプトプリン(6−メルカプトプリン;6−MP)、チオグアニン(6−チオグアニン;TG)およびペントスタチン(2−デオキシコホルマイシン)が挙げられるが、これらに限定されない。メルカプトプリンは、急性リンパ性白血病、急性顆粒球性白血病、および慢性顆粒球性白血病において使用されている。チオグアニン(thrioguanine)は、急性顆粒球性白血病、急性リンパ性白血病、および慢性リンパ性白血病のような癌の処置において使用されている。ペントスタチンは、ヘアリーセル白血病、菌状息肉腫、および慢性リンパ性白血病のような癌において使用されている。
【0271】
(C.天然物)
天然物は一般的に、天然の供給源からもともと単離され、かつ薬理学的活性を有するとして同定された化合物をいう。このような化合物、それらのアナログおよび誘導体は、当業者に公知の任意の技術によって、天然の供給源から単離され得るか、化学合成され得るか、または組換え生成され得る。天然物は、有糸分裂インヒビター、抗腫瘍抗生物質、酵素および生物学的応答の改変因子のようなカテゴリーを含む。
【0272】
(1.有糸分裂インヒビター)
有糸分裂インヒビターとしては、細胞分裂または有糸分裂のいずれかに必要とされるタンパク質合成を阻害し得る、植物アルカロイドおよび他の天然の因子が挙げられる。これらは、細胞周期中の特定の期の間で機能する。有糸分裂インヒビターとしては、例えば、ドセタキセル、エトポシド(VP16)、テニポシド、パクリタキセル、タキソール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビンが挙げられる。
【0273】
エピポドフィロトキシンは、テニポシドおよびVP16のような化合物を含む。VP16はまた、エトポシドとして公知であり、そして主に、ブレオマイシンおよびシスプラチンと組み合わせて精巣の腫瘍の処置のために、およびシスプラチンと組み合わせて肺の小細胞癌腫に対して、使用される。テニポシドおよびVP16はまた、精巣癌、他の肺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性顆粒球性白血病、急性非リンパ性白血病、胸部の癌腫、および後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連したカポージ肉腫のような癌に対して活性である。
【0274】
VP16は、静脈内投与のための溶液(例えば、20mg/ml)として、および経口用途のための液体充填カプセル(50mg)として、入手可能である。肺の小細胞癌腫について、静脈内用量(組み合わせ療法における)は、約100mg/m2ほどに多量であり得るか、または約2mg/m2ほどに少量であり得、日課的に、約4日間にわたって毎日約35mg/m2から約5日間にわたって毎日約50mg/m2もまた使用されている。経口的に投与される場合、この用量は倍加されるべきである。従って、小細胞肺癌腫に対するこの用量は、約200mg/m2から約250mg/m2ほどに多量であり得る。精巣癌に対する静脈内用量(組み合わせ療法における)は、約5日間にわたって毎日約50mg/m2〜約100mg/m2であるか、または3回の用量について隔日で約100mg/m2である。治療サイクルは通常、約3〜4週間毎に繰り返される。この薬物は、低血圧および気管支痙攣(これは恐らく、この処方物において使用されている溶媒に起因する)を回避するために、注入物として短期間(約30分間〜約60分間)で投与されるべきである。
【0275】
タキソイドは、トネリコ樹木(Taxus brevifolia)の樹皮から単離された関連化合物の1クラスである。タキソイドとしては、ドセタキセルおよびパクリタキセルのような化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0276】
パクリタキセルは、チューブリン(ビンカアルカロイド類によって使用される部位とは異なる部位に)に結合し、そして微小管のアセンブリを促進する。パクリタキセルは、臨床的に評価されつつあり;パクリタキセルは、卵巣の悪性黒色腫および癌腫に対して活性を有する。特定の局面では、最大用量は、約5日間にわたって1日あたり約30mg/m2であるか、または約3週間毎に1回与えられる約210mg/m2から約250mg/m2である。
【0277】
ビンカアルカロイド類は、薬学的活性を有するとして同定された植物アルカロイドの1タイプである。ビンカアルカロイド類としては、ビンブラスチン(VLB)およびビンクリスチンのような化合物が挙げられる。
【0278】
(2.ビンブラスチン)
ビンブラスチンは、癌および前癌を処置するために使用され得る植物アルカロイドの1例である。細胞が、ビンブラスチンと共にインキュベートされる場合、微小管の分解が生じる。
【0279】
予測不可能な吸収が、ビンブラスチンまたはビンクリスチンの経口投与後に報告されている。通常の臨床的用量で、血漿中の各薬剤のピークの濃度は、約0.4mMである。ビンブラスチンおよびビンクリスチンは、血漿タンパク質に結合する。これらは、大量に血小板に凝集され、そして白血球および赤血球により少ない程度で凝集される。
【0280】
静脈内注射後、ビンブラスチンは、血漿からのクリアランスの多面的パターンを有し;分配後、薬剤は、約1時間および20時間の半減期で血漿から消失する。ビンブラスチンは、生物学的に活性な誘導体である脱アセチル化ビンブラスチンへと肝臓中で代謝される。約15%の用量が、尿中でインタクトで検出され、そして約10%が胆汁排泄後に糞便中で回収される。用量は、肝機能不全を有する患者において減少されるべきである。血漿中のビリルビンの濃度が3mg/dl(約50mM)よりも高い場合に、用量において少なくとも50%の減少が示される。0.3mg/kg体重の単回用量後、骨髄抑制(myelosuppression)が、約7日間〜約10日間でその最大限に達する。白血球減少症の中程度のレベル(約3000細胞/mm3)が、達成されない場合、毎週の用量が、約0.05mg/kg体重ずつの増加によって徐々に増加され得る。精巣癌を治療するように設計されたレジメンにおいて、ビンブラスチンは、血球数または毒性に関係なく、約3週間毎に約0.3mg/kgの用量で使用される。
【0281】
ビンブラスチンの重要な臨床的使用は、精巣の転移性腫瘍の治療療法においてブレオマイシンおよびシスプラチンと一緒に使用することである。有益な応答が、種々のリンパ腫(特にホジキン病)において報告されており、ここで、有意な改善が、50〜90%の場合において示され得る。疾患が、アルキル化剤に抵療性である場合、高い比率のリンパ腫におけるビンブラスチンの効果は、減少されない。これは、カポージ肉腫、精巣癌、神経芽腫、およびレテラージーヴェ病(原因不明性組織球増殖)、ならびに女性における乳癌および絨毛癌においてもまた活性である。
【0282】
約0.1mg/kg〜約0.3mg/kgの用量が投与され得るか、または約1.5mg/m2〜約2mg/m2の用量もまた投与され得る。あるいは、約0.1mg/m2、約0.12mg/m2、約0.14mg/m2、約0.15mg/m2、約0.2mg/m2、約0.25mg/m2、約0.5mg/m2、約1.0mg/m2、約1.2mg/m2、約1.4mg/m2、約1.5mg/m2、約2.0mg/m2、約2.5mg/m2、約5.0mg/m2、約6mg/m2、約8mg/m2、約9mg/m2、約10mg/m2から約20mg/m2が、与えられ得る。
【0283】
(3.ビンクリスチン)
ビンクリスチンは、有糸分裂をブロックし、そして分裂中期の停止を生じる。この薬剤の生物学的活性の大半が、チューブリンに特異的に結合するその能力および微小管に重合するタンパク質の能力をブロックするその能力によって説明され得るようである。有糸分裂の器官の微小管の破壊を介して、細胞分裂は、分裂中期において停止される。有糸分裂の間に染色体を正確に分離する能力がないことは、おそらく細胞死の原因となる。
【0284】
正常な骨髄細胞および上皮細胞についてのビンクリスチンの比較的低い毒性は、この薬剤を、抗腫瘍剤の間で通常とは異なるものにし、そしてビンクリスチンはしばしば、他の骨髄抑制剤と組み合わせて含まれる。
【0285】
予想不可能な吸収が、ビンブラスチンまたはビンクリスチンの経口投与後に報告されている。通常の臨床的用量で、血漿における各薬剤のピークの濃度は約0.4mMである。
【0286】
ビンブラスチンおよびビンクリスチンは、血漿タンパク質に結合する。これらは、血小板に大量に凝集され、そして白血球および赤血球により少ない程度で凝集される。ビンクリスチンは、血漿からのクリアランスの多面的パターンを有し;末期の半減期は、約24時間である。この薬剤は、肝臓中で代謝されるが、しかし生物学的に活性な誘導体は、同定されていない。用量は、肝機能障害を有する患者において減少されるべきである。血漿中のビリルビンの濃度が約3mg/dl(約50mM)よりも高い場合、用量において少なくとも50%の減少が示される。
【0287】
硫酸ビンクリスチンは、静脈内注射のための溶液(例えば、1mg/ml)として利用可能である。コルチコステロイドと一緒に使用されるビンクリスチンは、現在小児白血病における寛解を誘導するための選り抜きの処置法であり;これらの薬剤についての最適な用量は、ビンクリスチン(静脈内、約2mg/m2の体表面積、毎週):およびプレドニゾン(経口的、約40mg/m2、毎日)のようである。ホジキン病または非ホジキンリンパ腫を有する成人患者は、通常、複雑なプロトコールの一部としてビンクリスチンを受ける。MOPPレジメンにおいて使用される場合、ビンクリスチンの推奨される用量は、約1.4mg/m2である。高い用量のビンクリスチンは、重篤な神経学的毒性を経験する場合がある成体よりも、白血病を有する小児により耐性のようである。7日毎よりも頻繁な薬剤の投与、またはより高い用量での薬剤投与は、応答の割合において比例的に改善せずに、毒性の症状を増加するようである。ビンクリスチンの静脈内投与の間の管外遊出を避けるために注意されるべきである。ビンクリスチン(およびビンブラスチン)は、比較可能な毒性で静脈内に投与され得る用量をよりも数倍多い用量で腫瘍の動脈血の輸血血液に注入され得る。
【0288】
ビンクリスチンは、ホジキン病および他のリンパ腫において効果的である。ビンクリスチンは、ホジキン病において単独で使用される場合、ビンブラスチンよりもいくらか不利なようであるが、メクロレタミン、プレドニゾン、およびプロカルバジンと共に使用される(いわゆる、MOPPレジメン)場合、ビンクリスチンは、この疾患の進行した段階(IIIおよびIV)のための処置として好ましい。非ホジキンリンパ腫において、ビンクリスチンは、重要な薬剤であり、特にシクロホスファミド、ブレオマイシン、ドキソルビシンおよびプレドニゾンと共に使用される場合に重要な薬剤である。ビンクリスチンは、リンパ性白血病において、ビンブラスチンよりも有用である。有利な応答が、種々の他の新生物(特に、ウィルムス腫、神経芽腫、脳腫瘍、横紋筋肉腫、小細胞肺、および乳癌、膀胱癌、ならびに男性および女性の生殖系の癌)を有する患者において報告されている。
【0289】
ビンクリスチンの用量は、約0.01mg/kg〜約0.03mg/kg含むか、または約0.4mg/m2〜約1.4mg/m2の用量が投与され得るか、または約1.5mg/m2〜約2mg/m2の用量もまた、投与され得る。あるいは、特定の実施形態において、約0.02mg/m2、0.05mg/m2、約0.06mg/m2、約0.07mg/m2、約0.08mg/m2、約0.1mg/m2、約0.12mg/m2、約0.14mg/m2、約0.15mg/m2、約0.2mg/m2、約0.25mg/m2が、持続的な静脈内注入として与えられ得る。
【0290】
(D.抗腫瘍抗生物質)
抗腫瘍抗生物質は、抗菌活性および細胞毒性活性の両方を有する。これらの薬剤はまた、酵素および有糸分裂を化学的に阻害すること、または細胞膜を改変することによって、DNAに干渉する。これらの薬剤は、期特異性ではないので、これらは細胞周期の全ての期において機能する。従って、これらは、種々の癌について広範に使用される。抗腫瘍抗生物質の例としては、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、プリカマイシン(plicamycin)(ミトラマイシン)、およびイダルビシンが挙げられるが、これらに限定されない。新生物の処置のための臨床的設定において広く使用される、これらの化合物は、一般に、静脈内のボーラス注射または経口を介して投与される。
【0291】
(1.ドキソルビシン)
塩酸ドキソルビシン、5,12−ナフタセンジオン、(8s−cis)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−a−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−8−(ヒドロキシアセチル)−1−メトキシ−ヒドロクロリド(ヒドロキシダウノルビシンヒドロクロリド,アドリアマイシン)が、広範な抗腫瘍性スペクトルにおいて使用される。これは、DNAに結合し、そして核酸合成を阻害し、有糸分裂を阻害し、そして染色体異常を促進する。
【0292】
単独で投与され、これは甲状腺腺腫、および原発性肝細胞癌の処置のために第1に選択される薬剤である。これは、卵巣腫瘍、子宮内膜腫瘍および胸部腫瘍、気管支原性の燕麦細胞癌、非小細胞肺癌、胃(stomach)、尿生殖器、甲状腺、胃腺癌(gastric adenocarcinoma)、網膜芽腫、神経芽腫、菌状息肉腫、膵臓癌、前立腺癌、膀胱癌、骨髄腫、散在性細網肉腫、ウィルムス腫瘍、ホジキン病、腎傍の腫瘍、骨原性肉腫、柔組織肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、および急性リンパ性白血病を含む疾患の処置のための31個の第1に選択される組合せの成分である。これは、他の疾患(例えば、島細胞、頸部の癌、精巣癌および副腎皮質の癌)の処置のための代替の薬剤である。これはまた、免疫抑制剤である。
【0293】
ドキソルビシンは、わずかに吸収され、そして好ましくは、静脈内に投与される。この薬物動態学は、多区画である。分配期は、12分間および3.3時間の半減期を有する。排出の半減期は約30時間であり、胆汁中へ約40%〜約50%分泌される。残りの大半は、肝臓において代謝され、一部は活性な代謝産物(ドキソルビシノール)に代謝されるが、数%は、尿中に排泄される。肝機能障害が存在する際、この用量は減少されるべきである。
【0294】
特定の実施形態において、適切な静脈内用量は、成体で、約21日間の間隔で約60mg/m2〜約75mg/m2、または約3週間〜約4週間の間隔で繰り返される2もしくは3日連続した日において各々約25mg/m2〜約30mg/m2、または週に1回、約20mg/m2である。事前の化学療法によって生じた事前の骨髄機能低下もしくは腫瘍性の骨髄浸潤が存在する場合、または薬剤が、他の骨髄造血抑制剤と組み合わされる場合、最小の用量が、高齢の患者において使用されるべきである。この用量は、血清ビリルビンが、約1.2mg/dLと約3mg/dLとの間にある場合、約50%減少されるべきであり、そして約3mg/dLより多い場合、約75%減少されるべきである。生存期間の総用量は、正常な心機能を有する患者において約550mg/m2を超えるべきではなく、そして縦隔の放射線照射を受けている人において約400mg/m2を超えるべきではない。特定の実施形態において、代替の用量は、約4週間毎に繰り返される、3日の連続した日のそれぞれにおいて約30mg/m2の用量を含み得る。例示的な用量は、約10mg/m2、約20mg/m2、約30mg/m2、約50mg/m2、約100mg/m2、約150mg/m2、約175mg/m2、約200mg/m2、約225mg/m2、約250mg/m2、約275mg/m2、約300mg/m2、約350mg/m2、約400mg/m2、約425mg/m2、約450mg/m2、約475mg/m2から約500mg/m2であり得る。
【0295】
(2.ダウノルビシン)
塩酸ダウノルビシン,5,12−ナフタセンジオン,(8S−cis)−8−アセチル−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−a−L−リキソ−ヘキサノピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−10−メトキシ−,ヒドロクロリド;はまた、セルビジンとも称され、そしてWyethから入手可能である。ダウノルビシン(ダウノマイシン;ルビドマイシン)は、DNA中にインターカレートし、DNA−指向性RNAポリメラーゼをブロックし、そしてDNA合成を阻害する。これは、核酸合成に干渉しない用量で、細胞分裂を妨げ得る。
【0296】
他の薬物と組み合わせて、これは、以下のような疾患の第一志望化学療法にしばしば含まれる:例えば、急性顆粒球性白血病、成人の急性骨髄性白血病(寛解の誘導)、急性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病の急性期。経口吸収は、乏しく、好ましくは他の方法(例えば、静脈内)により与えられる。分布の半減期は、45分であり、そして排泄の半減期は19時間である。その活性代謝物であるダウノルビシノールの半減期は、約27時間である。ダウノルビシンは、主に肝臓で代謝され、そしてまた胆汁中に分泌される(約40%)。投薬量は、肝不全または腎不全の際には低減されなければならない。
【0297】
一般的に、適切な静脈内用量は、(塩基当量):成人(60歳未満)、約3週毎もしくは4週毎に約1日、約2日または約3日の間約45mg/m2/日(60歳より高齢の患者には約30mg/m2)、あるいは約3週毎もしくは約4週毎に約3日、約4日、約5日〜約6日の間約0.8mg/kg/日であり;胸部照射があった場合に約450mg/m2だけであることを除いて、生存期間中に約550mg/m2以下が与えられるべきである;小児、年齢が2歳未満でないかまたは体表面が約0.5m未満でなければ、週に1回約25mg/m2、この場合、重量ベースの成人用スケジュールを使用する。(約21.4mgの塩酸塩の塩基当量として)約20mgの注射用投薬形態(塩基当量)が利用可能である。例示的な用量は、約10mg/m2、約20mg/m2、約30mg/m2、約50mg/m2、約100mg/m2、約150mg/m2、約175mg/m2、約200mg/m2、約225mg/m2、約250mg/m2、約275mg/m2、約300mg/m2、約350mg/m2、約400mg/m2、約425mg/m2、約450mg/m2、約475mg/m2〜約500mg/m2であり得る。
【0298】
(3.マイトマイシン)
マイトマイシン(ムタマイシン(mutamycin)および/またはマイトマイシン−Cとしても公知)は、Streptomyces caespitosusのブロスから単離された抗生物質であり、これは、抗腫瘍活性を有することが示されている。この化合物は、熱安定性であり、高い融点を有し、そして有機溶媒に自由に溶解可能である。
【0299】
マイトマイシンは、デオキシリボ核酸(DNA)の合成を選択的に阻害する。グアニンおよびシトシンの含量は、マイトマイシン誘導架橋の程度と相関する。高濃度の薬物では、細胞のRNA合成およびタンパク質合成はまた抑制される。マイトマイシンは、胃、頚部、結腸、胸部、膵臓、膀胱ならびに頭部および頚部のような腫瘍において使用されてきた。
【0300】
ヒトにおいて、マイトマイシンは、静脈内投与後、血清から急速に除去される。30mgのボーラス注射後約50%血清濃度を低減するのに必要な時間は、17分である。30mg、20mg、または10mgの静脈内注射後、最大血清濃度は、それぞれ2.4mg/mL、1.7mg/mL、および0.52mg/mLであった。クリアランスは、主に肝臓での代謝によりもたらされるが、代謝は、他の組織でも起こる。クリアランスの速度は、分解経路の飽和(と考えられる)に起因して、最大血清濃度に逆比例する。約10%のマイトマイシン用量は、尿中に変化されずに排出される。代謝経路は比較的低い用量で飽和するので、尿中に排出される用量の割合は、用量が増加するにつれて増加する。小児において、静脈内投与されたマイトマイシンの排出は同様である。
【0301】
(4.アクチノマイシンD)
アクチノマイシンD(ダクチノマイシン)[50−76−0];C62H86N12O16(1255.43)は、DNA依存性RNAポリメラーゼを阻害する抗腫瘍薬である。これは、しばしば、例えば、絨毛癌、胎児性横紋筋肉腫、精巣腫瘍、カポージ肉腫およびウィルムス腫のような疾患の処置のための第一志望組合せの構成成分である。全身処置に応答しない腫瘍が、局所灌流に応答することもある。ダクチノマイシンは、放射線治療を可能にする。これは、二次的(遠心性)免疫抑制である。
【0302】
特定の具体的な局面において、アクチノマイシンDは、例えば、一次手術、放射線治療、および他の薬物(特にビンクリスチンおよびシクロホスファミド)のような因子と組み合わせて使用される。抗腫瘍活性はまた、ユーイング腫、カポージ肉腫、および軟組織肉腫において示されている。ダクチノマイシンは、絨毛癌の進行した症例を有する女性において有効であり得る。これはまた、転移性精巣癌を有する患者においてクロラムブシルおよびメトトレキサートの組合せにおいて一貫した応答を生じる。応答は、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫を有する患者において観察され得ることがある。ダクチノマイシンはまた、免疫学的応答(特に、腎移植の拒絶)を阻害するためにも使用されている。
【0303】
用量の半分は、インタクトで胆汁に排出され、そして10%は尿中に排出される;半減期は約36時間である。この薬物は、血液脳関門を通過しない。アクチノマイシンDは、凍結乾燥された粉末として供給される(各バイアルに0/5mg)。通常日用量は、約10mg/kg〜約15mg/kgである;これは、約5日間静脈内に与えられる;毒性の発現が無ければ、追加のクールが、約3週間〜約4週間の間隔で与えられ得る。約100mg〜約400mgの毎日の注射が、約10日間〜約14日間小児に与えられた;他のレジメンでは、約3mg/kg〜約6mg/kg(約125mg/kgの総量について)、および約7.5mg/kgの毎週の維持用量が使用された。静脈内注入のチュービング中に薬物を投与することはより安全であるが、皮下反応を回避するために、バイアルから薬物を引き抜くために使用される針の廃棄に注意しながら、直接の静脈内注射が与えられた。例示的な用量は、約100mg/m2、約150mg/m2、約175mg/m2、約200mg/m2、約225mg/m2、約250mg/m2、約275mg/m2、約300mg/m2、約350mg/m2、約400mg/m2、約425mg/m2、約450mg/m2、約475mg/m2〜約500mg/m2であり得る。
【0304】
(5.ブレオマイシン)
ブレオマイシンは、Streptomyces verticillusの系統から単離された細胞毒性糖ペプチド抗生物質の混合物である。ブレオマイシンの作用の正確な機構は未知であるが、利用可能な証拠は、作用の主様式が、DNA合成の阻害であることを示しているようであり、いくつかの証拠は、RNAおよびタンパク質の合成のより低い阻害を示しているようである。
【0305】
マウスにおいて、高濃度のブレオマイシンは、皮膚、肺、腎臓、腹膜、およびリンパで見出される。皮膚および肺の腫瘍細胞は、低濃度が見出される造血組織と対照的に、高濃度のブレオマイシンを有することが見出された。骨髄で見出される低濃度のブレオマイシンは、その組織において見出される高レベルのブレオマイシン分解酵素と関連し得る。
【0306】
約35mL/分より高いクレアチニンクリアランスを有する患者において、ブレオマイシンの血清または血漿の終末排出半減期は、約115分である。約35mL/分未満のクレアチニンクリアランスを有する患者において、血漿または血清の終末排出半減期は、クレアチニンクリアランスが減少するにつれて指数関数的に増加する。ヒトにおいて、約60%〜約70%の投与用量は、活性ブレオマイシンとして尿で回収される。特定の実施形態において、ブレオマイシンは、筋内経路、静脈内経路、または皮下経路で与えられ得る。これは、水に自由に溶解する。アナフィラキシー様反応の可能性のために、リンパ腫の患者は、最初の2回の用量については2単位以下で処置されるべきである。急性反応が起こらなければ、通常の投薬スケジュールに従い得る。
【0307】
好ましい局面において、ブレオマイシンは、待期療法と考えられるべきである。これは、単一の薬剤または他の認可された化学療法剤との証明された組合せのいずれかとして、以下の新生物の取り扱いにおいて有用であることが示された:頭部および頚部(口、舌、扁桃、鼻咽頭、口腔咽頭部、洞、口蓋、唇、頬粘膜、歯肉、喉頭蓋、喉頭)、食道、肺および尿生殖器管、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、皮膚、陰茎、頚部および外陰のような扁平上皮細胞癌。これはまた、リンパ腫および精巣癌の処置において使用される。
【0308】
ホジキン病および精巣腫瘍の改善は、即座であり、2週間以内に示される。この時間までに改善がみられない場合、改善はありそうもない。扁平上皮細胞癌は、より遅く応答し、なんらかの改善が示されるまでに3週間も必要とすることがある。
【0309】
(E.ホルモンおよびアンタゴニスト)
ホルモン治療はまた、本発明と共に使用され得、そして/または任意の他の癌治療もしくは薬剤と組み合わせて使用され得る。ホルモンの使用は、特定の癌(例えば、乳癌、前立腺癌、卵巣癌または頚部癌)の処置において使用されて、テストステロンまたはエストロゲンのような特定のホルモンのレベルを低下させ得るか、あるいはこれらのホルモンの効果をブロックし得る。この処置は、しばしば、処置の選択肢として少なくとも1つの他の癌治療と組み合わせて使用されるか、転移の危険性を低減するために使用される。
【0310】
(1.アドレノコルチコステロイド)
コルチコステロイドホルモンは、いくつかの種類の癌(例えば、非ホジキンリンパ腫、急性および慢性のリンパ性白血病、乳癌、および多発性骨髄腫)を処置する際に有用である。これらのホルモンは多くの非癌状態の処置において使用されてきたが、これらが癌細胞を殺傷するかまたは癌細胞の成長を遅らせるために実行される場合は化学療法薬とみなされる。コルチコステロイドホルモンは、他の化学療法剤の有効性を増加し得、そして結果的に、併用処置において頻繁に使用される。プレドニゾンおよびデキサメタゾンは、コルチコステロイドホルモンの例である。
【0311】
(2.他のホルモンおよびアンタゴニスト)
プロゲスチン(例えば、カプリン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、および酢酸メゲストロール)は、子宮内膜癌および乳癌において使用されてきた。エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール)は、乳癌および前立腺癌のような癌において使用されてきた。抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン)は、乳癌のような癌において使用されてきた。アンドロゲン(例えば、プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン)もまた、乳癌の処置において使用されてきた。抗アンドロゲン(例えば、フルタミド)は、前立腺癌の処置において使用されてきた。ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(例えば、ロイプロリド)は、前立腺癌の処置において使用されてきた。米国特許第4,418,068号(本明細書中に参考として援用される)は、前立腺癌および乳癌のような癌の処置のための抗エストロゲン性および抗アンドロゲン性のベンゾチオフェン類(例えば、6−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)ベンゾイル]ベンゾ[b]チオフェン、ならびにそのエステル、エーテル、および塩)を開示する。
【0312】
(F.種々雑多の因子)
いくつかの化学治療剤は、それらの活性に基づいて、以前のカテゴリーに当てはまらない。これには、白金配位錯体、アンドラセンジオン、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アムサクリン、L−アスパラギナーゼ、およびトレチノインが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、併用治療における使用のための本発明の組成物および方法に含まれることが企図される。
【0313】
(1.白金配位錯体)
白金配位錯体としては、カルボプラチンおよびシスプラチン(cis−DDP)のような化合物が挙げられる。シスプラチンは、癌(例えば、転移性精巣癌および転移性卵巣癌、進行性膀胱癌、頭部もしくは頸部の癌、子宮頸癌、肺癌または他の腫瘍)を処置するために、広く使用されている。シスプラチンは、経口的に吸収されず、従って、他の経路(例えば、静脈内注射、皮下注射、腫瘍内注射または腹腔内注射)を介して送達されなければならない。シスプラチンは、単独でか、または他の因子と共に使用され、特定の実施形態において、3週間毎に5日間、合計3回、約15mg/m2〜約20mg/m2の有効用量が臨床的適用において使用されることが、企図される。用量は、例えば、約0.50mg/m2、約1.0mg/m2、約1.50mg/m2、約1.75mg/m2、約2.0mg/m2、約3.0mg/m2、約4.0mg/m2、約5.0mg/m2、〜約10mg/m2であり得る。
【0314】
(2.他の因子)
ミトキサントロンのようなアントラセンジオンは、急性顆粒球性白血病および乳癌を処置するために使用されてきた。ヒドロキシ尿素のような置換尿素は、慢性顆粒球性白血病、真性赤血球増加症、本態性血小板減少症および悪性黒色腫の処置において使用されてきた。プロカルバジン(N−メチルヒドラジン、MIH)のようなメチルヒドラジン誘導体は、ホジキン病の処置において使用されてきた。ミトーテンのような副腎皮質抑制剤は、副腎皮質癌を処置するために使用され、一方、アミノグルテチミドは、ホジキン病を処置するために使用された。
【0315】
(G.放射線治療剤)
放射線治療剤としては、DNA損傷を引き起こす放射線および波(例えば、γ放射、X線、プロトンビーム照射、UV照射、マイクロ波、電子発光、放射性同位体など)が挙げられる。治療は、上記の形態の放射線を限局性の腫瘍部位に照射することによって、達成され得る。おそらく、これらの因子の全てが、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の構築および維持に対して、広範な損傷DNA、を行うようである。
【0316】
放射線治療剤および投薬方法、投与量などは、当業者に周知であり、本明細書中の開示を考慮して本発明と組み合わせられ得る。例えば、投薬量は、X線範囲について、長期間(3〜4週間)にわたる50〜200レントゲンの一日線量から、2000〜6000レントゲンの単回線量の範囲である。放射線同位体についての投薬量範囲は、広範に変化し、そして同位体の半減期、放射される放射線の強度およびタイプ、ならびに新生物細胞による取込みに依存する。
【0317】
(H.免疫治療剤)
免疫治療剤は、一般に、癌細胞を標的化および破壊する免疫エフェクター細胞および分子の使用に頼る。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のいくつかのマーカーに対して特異的な抗体であり得る。この抗体は単独で、治療のエフェクターとして働き得るか、またはこの抗体は、細胞の殺傷を実際に行う他の細胞を漸増し得る。この抗体はまた、薬物または毒素(例えば、化学治療剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)に結合し得、単に標的化因子として働き得る。このような抗体結合体は、免疫毒素と呼ばれ、当該分野で周知である(米国特許第5,686,072号、米国特許第5,578,706号、米国特許第4,792,447号、米国特許第5,045,451号、米国特許第4,664,911号および米国特許第5,767,072号(各々は本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。あるいは、このエフェクターは、直接的かまたは間接的にかのいずれかで腫瘍細胞標的と相互作用する表面分子を有するリンパ球であり得る。種々のエフェクター細胞としては、細胞障害性T細胞およびNK細胞が挙げられる。
【0318】
免疫治療の1つの局面において、腫瘍細胞は、標的化を受け得る、すなわち、大多数の他の細胞上に存在しないいくつかのマーカーを保有しなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、そしてこれらのうちの任意のものが、本発明の状況において、標的化に適切であり得る。一般的な腫瘍マーカーとしては、癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、非尿系腫瘍関連抗原、胎児抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG−72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲンレセプター、ラミニンレセプター、erb Bおよびp155が挙げられる。
【0319】
(1.免疫刺激因子)
特定の局面において、免疫治療は、免疫刺激分子を、因子として、またはより好ましくは、別の因子(例えば、サイトカイン(例えば、IL−2、IL−4、IL−12、GM−CSF、腫瘍壊死因子;インターフェロンα、βおよびγ;F42Kおよび他のサイトカインアナログ);ケモカイン(例えば、MIP−1、MIP−1β、MCP−1、RANTES、IL−8);または増殖因子(例えば、FLT3リガンド))と共に、使用することである。
【0320】
本発明で使用するために意図される1つの特定のサイトカインは、腫瘍壊死因子である。腫瘍壊死因子(TNF;カケクチン)は、いくつかの種類の癌細胞を殺傷し、サイトカイン産生を活性化し、マクロファージおよび内皮細胞を活性化し、コラーゲンおよびコラゲナーゼの産生を促進し、炎症メディエータでありかつ敗血症ショックのメディエータでもあり、そして異化、熱および睡眠を促進する、糖タンパク質である。いくつかの感染性因子は、TNF産生の刺激によって腫瘍の退行を引き起こす。TNFは、有効用量で単独で使用される得場合、非常に毒性であり得、その結果、最適なレジメンは、おそらく、他の薬物と組み合わせて、より低用量でこのTNFを使用する。その免疫抑制作用は、γ−インターフェロンによって増強され、その結果、この組み合わせは潜在的に危険である。TNFおよびインターフェロンαのハイブリッドはまた、抗癌活性を有することが見出されている。
【0321】
特に意図される別のサイトカインは、インターフェロンαである。インターフェロンαは、毛様細胞性白血病、カポージ肉腫、黒色腫、カルチノイド、腎細胞癌、卵巣癌、膀胱癌、非ホジキンリンパ腫、菌状息肉腫、多発性骨髄腫、および慢性顆粒球性白血病の処置において使用されている。
【0322】
(2.受動免疫治療)
癌の受動免疫治療のための多数の異なるアプローチが、存在する。これらは、以下に広範に分類され得る:抗体のみの注射;毒素または化学治療剤に結合した抗体の注射;放射性同位体に結合した抗体の注射;抗イディオタイプ抗体の注射;および最後に、骨髄中の腫瘍細胞の浄化。
【0323】
好ましくは、ヒトモノクローナル抗体は、患者において、ほとんどかまたは全く副作用を生じないので、受動免疫治療において用いられる。しかし、これらの用途は、それらの不足によりいくらか制限され、そして現在までに病巣内投与のみが行われてきた。例えば、ガングリオシド抗原に対するヒトモノクローナル抗体は、皮膚再発性黒色腫に罹患した患者に秒巣内投与されてきた(IrieおよびMorton、1986)。退行は、病巣内注射の翌日または翌週に、10人の患者のうち6人において観察された。別の研究において、中程度の成功が、2種のヒトモノクローナル抗体の病巣内注射によって達成された(Irieら、1989)。
【0324】
2つの異なる抗原に対する1つより多くのモノクローナル抗体、またはさらには複数の抗原特異性を有する抗体を投与することが、有利であり得る。処置プロトコルはまた、リンホカインまたは他の免疫エンハンサーを投与することを含み得る(Bajorinら、1988)。
【0325】
(3.能動免疫治療)
能動免疫治療において、抗原性のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、または自系もしくは同種の腫瘍細胞の組成物または「ワクチン」が、一般的に、別個の細菌アジュバントと共に投与される(RavindranathおよびMorton、1991;MortonおよびRavindranath、1996;Mortonら、1992;Mitchellら、1990;Mitchellら、1993)。黒色腫免疫治療において、高いIgM応答を惹起する患者は、しばしば、IgM抗体を惹起しないかまたは少ないIgM抗体を惹起する患者よりも長く生存する(Mortonら、1992)。IgM抗体は、しばしば、一過性抗体であり、この規則の例外は、抗ガングリオシド抗体または抗炭水化物抗体であるようである。
【0326】
(4.養子免疫治療法)
養子免疫治療において、患者の循環中のリンパ球、すなわち腫瘍浸潤リンパ球は、インビトロで単離され、リンホカイン(例えば、IL−2)によって活性化されるかまたは腫瘍壊死のための遺伝子で形質導入され、そして再投与される(Rosenbergら、1988;1989)。これを達成するために、動物またはヒト患者に、免疫学的有効量の活性化リンパ球を、本明細書中に記載されるようなアジュバント組込み抗原性(anigenic)ペプチド組成物と共に投与する。この活性化リンパ球は、最も好ましくは、血液サンプルまたは腫瘍サンプルから以前に単離され、インビトロで活性化(または「拡大」)された、この患者自身の細胞である。この形態の免疫治療は、黒色腫および腎癌の退行のいくつかの事例を生じたが、この応答者の割合は、応答しなかった被験体と比較して、小さかった。
【0327】
(I、他の生物学的因子)
他の因子は、処置の治療効果を改善するために本発明と組み合わせて使用され得ることが、企図される。これらのさらなる因子としては、細胞表面レセプターおよびGAP接合部の上方制御に影響する因子、細胞増殖抑制性因子および分化因子、細胞接着のインヒビター、アポトーシス誘導物質に対する過剰増殖性細胞の感受性を増加させる因子、あるいは他の生物学的因子(例えば、高熱(hyperthermia))が挙げられる。
【0328】
細胞表面レセプターまたはそれらのリガンド(例えば、Fas/Fasリガンド、DR4またはDR5/TRAIL)の上方制御は、過剰増殖細胞に対するオートクライン効果またはパラクライン効果の確立により本発明のアポトーシス誘導能力を増強させることが、さらに企図される。GAP接合部の数の上昇による細胞間シグナル伝達の増加は、隣接する過剰増殖細胞集団に対する抗過剰増殖効果を増加させる。
【0329】
他の実施形態において、細胞増殖抑制性因子または分化因子はまた、処置の抗過剰増殖効果を改善するために、本発明と組み合わせて使用され得る。
【0330】
細胞接着のインヒビターは、本発明の効果を改善することが企図される。細胞接着インヒビターの例としては、病巣(focal)接着キナーゼ(FAK)インヒビターおよびロバスタチンがある。アポトーシスに対する過剰増殖細胞の感受性を増加させる他の因子(例えば、抗体c225)は、処置効果を改善するために、本発明と組み合わせて使用され得ることが、さらに企図される。
【0331】
本発明と組み合わせて使用するための別の治療形態および/または他の因子としては、高熱(患者の組織が高温(106°Fまで)に曝される手順)が挙げられる。外部または内部の加熱デバイスは、局所(local)高熱、局所(regional)高熱、または全身高熱の適用に関与し得る。局所(local)高熱は、小領域(例えば、腫瘍)への熱の適用に関与する。熱は、体外のデバイスから腫瘍を標的化して高周波により外的に生成され得る。内部熱は、無菌プローブ(温水で満たされた、薄い、加熱されたワイヤまたは中空管(hollow tube)を含む)、移植されたマイクロ波アンテナ、あるいは高周波電極に関与し得る。
【0332】
患者の器官または四肢は、局所治療のために加熱され、これは、高エネルギーを生ずるデバイス(例えば、磁石)を用いて達成される。あるいは、幾人かの患者の血液が、取り出され、内部加熱される領域内に灌流される前に加熱される。全身加熱はまた、癌が全身にわたって広がった場合に、実施され得る。温水ブランケット、ホットワックス、誘導コイル、および熱チャンバーが、この目的のために使用され得る。
【0333】
(XII、肺疾患および他の疾患の処置)
本発明の処方物および方法によって送達され得る薬学的組成物は、肺に影響を及ぼす種々の疾患を処置するために使用され得る。これらの疾患としては、気道の疾患(喘息、細気管支炎、嚢胞性線維症、気管支拡張症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(喘息性気管支炎、慢性気管支炎(正常な気流を有する)、慢性の閉塞性気管支炎、水疱性疾患、および気腫を含む)、ならびに気道における構造変化(肺の中または外の空気の流れを制限するかまたは妨げるような)によって特徴付けられる他の疾患が挙げられる。本発明のエアロゾル送達処方物を用いて処置され得る他の疾患としては、胸膜または肺を包む膜の疾患(例えば、肺炎および結核のような感染)、ならびに胸膜腔中の空気または流体の蓄積により特徴付けられる他の疾患が挙げられる。なお他の疾患としては、肺に硬直および瘢痕を引き起こす間隙(肺の組織間の空間)の疾患が挙げられ、そしてこれは、薬物、毒物、感染、または放射線によって引き起こされ得る。肺でのガス交換または血液循環の障害はまた、本発明の送達方法を用いて処置され得る。これらの疾患としては、肺水腫、肺動脈塞栓症、呼吸不全、および肺高血圧症が挙げられる(http://www.−4woman.gov/x/faq/lung_disease.htm)。
【0334】
肺系および粘膜の他の領域に影響を及ぼす疾患はまた、本発明の方法によって送達される薬学的組成物を用いて処置され得る。これらの疾患としては、鼻炎、副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、セリアック病、糖尿病および高血圧が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法および処方物は、経口投与により一般に処置される疾患を処置するために使用され得るが、ここで、その治療因子は、消化管経路において容易に破壊され得る。
【0335】
(XIII、血液系を介する疾患の処置)
本発明の薬学的組成物のエアロゾル送達は、疾患または癌を処置するために、血流へのエアロゾル送達を介して使用され得ることが、本発明の一局面である。正常な成人における肺の表面領域は、テニスコートのサイズに類似し、そしてこの組織は、非常に吸着性である。血流中への吸着は、時々、皮下注射よりも速い。肺での吸着は迅速であるが、皮下注射ほど効果的ではない傾向がある。例えば、エアロゾル化されたインスリンのバイオアベイラビリティは、注射されたインスリンの10〜15%である(Henry,2000)。従って、注射される量は調整され得るか、または薬学的因子はより効果的な送達のために変化され得る。
【0336】
薬学的組成物のエアロゾル送達は、多くの治療因子について、経口送達の代わりに使用され得、ここで、その因子の効果は、治療因子と消化経路との間の有害な相互作用により減少または破壊される。
【0337】
(XIV、診断用薬)
本発明はまた、診断剤(diagnostic agent)のエアロゾル送達を用いて、インビボで疾患状態(例えば、癌性腫瘍)を画像化する方法に関する。特に、本発明のエアロゾル送達は、診断剤を、肺、血液、または組織に送達するために使用され得る。その粒子は、肺の機能異常、構造異常、腫瘍、閉塞(blockage)、および通気および灌流におけるミスマッチの診断に有用である。この方法は、画像化有効量の診断剤および薬学的に有効なキャリアの被験体への投与、および診断剤の病的組織への結合の検出を含む。用語「インビボ画像化」とは、被験体の体内に位置する病的組織に特異的に結合する、本発明のエアロゾル処方物により送達される治療薬の検出を可能にする任意の方法をいう。「被験体」は、哺乳動物であり、好ましくは、ヒトである。「画像化有効量」は、検出可能に標識された、投与されるモノクローナル抗体、またはそのフラグメントの量が、モノクローナル抗体またはそのフラグメントの病的組織への結合の検出を可能にするに十分である事を、意味する。
【0338】
この診断剤は、エアロゾル処方物中の細孔に捕捉されるか、または重合体物質または脂質物質中に組み込まれた、任意の生体適合性または薬学的に受容可能な薬剤であり得る。生体適合性または薬学的に受容可能な薬剤は、ガス(例えば、アルゴンまたは窒素)、あるいは造影剤(陽子射出断層撮影法、コンピューター補助断層撮影、シングルフォトンエミッションCT、X線、透視検査および磁気共鳴画像法における使用のための市販の薬剤を含む)であり得る。
【0339】
インビボ診断のための放射性核種の選択を考慮するための因子は、核種の半減期が、標的による最大の取り込みの時点でなお検出し得るに十分に長いが、宿主における有害な放射線およびバックグラウンドを最小化するに十分短いことである。理想的には、インビボ画像化に使用される放射線核種は、微粒子放出を欠いているが、140〜2000keVの範囲の非常に多くの光子を生じる(通常のガンマカメラによって容易に検出され得る)。
【0340】
放射線核種は、ポリペプチドに、直接的または間接的に、中間の官能基を使用することによって結合され得る。しばしば金属イオンとして存在する放射性同位元素を抗体へ結合させるために使用される中間の官能基は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。本発明の使用に適する金属イオンの例は、99mTc、123I、111In、131I、97Ru、67Cu、67Ga、125I、68Ga、72As、89Zr、および201Tlである。
【0341】
本発明に従って、診断剤を含むエアロゾル処方物は、当該分野で公知の、いくつかの技術のいずれかにより標識され得る。本発明の方法はまた、インビボでの検出の目的のために常磁性の同位体を使用し得る。磁気共鳴画像法(「MRI」)に特に有用な元素としては、157Gd、55Mn、162Dy、52Crおよび56Feが挙げられる。
【0342】
病的組織と結合する診断剤に関してエアロゾル投与後、十分な時間(例えば、30分〜48時間)が経過した後、治験下での被験体の領域は、定期的な画像(例えば、MRI、SPECT、二次元シンチレーション画像(planar scintillation imaging)および顕現性画像化技術などにより、試験される。的確なプロトコルは、上記に記載されるように、患者に特異的な因子に依存して、そして試験下の身体部位、投与方法およびに標識された標識の型に依存して、必然的に変化する;特定の手順の決定は、当業者には日常的である。次いで、結合した放射性同位元素の分布およびその経時的増加または経時的減少は、観察され、そして記録される。臨床的に正常な個体の研究から得られたデータと比較することにより、病的組織の存在および程度が、決定され得る。
【0343】
(XV.薬学的調製物)
本発明の薬学的調製物は、有効量の1つ以上の薬学的に受容可能な組成物、または複数の組成物およびまたは薬学的に受容可能なキャリア中に溶解または分散したさらなる薬剤を含む。語句「薬学的または薬理学的に受容可能」は、例えば、適切なものとして、ヒトのような動物に投与されるとき、有害な、アレルギー性またはその他の都合の悪い反応を生成しない分子実体および組成物をいう。薬学的組成物の調製は、本願の開示を考慮して、本明細書に参考として援用される、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990により例示されるように、当業者に公知である。さらに、動物(例えば、ヒト)投与には、調製物は、FDA Office of Biological Standardsにより要求される、無菌性、発熱性、一般的安全性および純度標準に合致すべきであることが理解され得る。用量、処方および送達は、Gonda(1990)により記載されるような特定の治療適用のために選択され得る。
【0344】
本明細書で用いられる場合「薬学的に受容可能なキャリア」は、当業者に公知であり得るような、任意かつすべての溶媒、分散媒体、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗細菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬物、薬物安定剤、結合剤、賦形剤、分解剤、潤滑剤、甘味剤、調味剤、色素、などの材料およびそれらの組合せを含む(例えば、本明細書に参考として援用される、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990、1289−1329頁を参照のこと)。活性成分と適合しない任意の従来のキャリアの範囲を除いて、治療または薬学的組成物におけるその使用が予期される。
【0345】
動物患者に投与される本発明の組成物の実際の用量は、体重、症状の重篤度、処置されている疾患の型、以前または同時の治療介入、患者の突発性疾患および投与の経路のような、身体的および生理学的因子により決定され得る。投与を行う担当医は、いずれにしろ、個体被験体のために組成物中の活性成分(単数または複数)の濃度および適切な用量(単数または複数)を決定する。
【0346】
特定の実施形態では、薬学的に受容可能な組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含み得る。その他の実施形態では、活性化合物は、その中に、例えば、約2%〜約75%の間、または約25%〜約60%の間の重量のユニット、および任意の範囲の派生可能な範囲を含み得る。その他の非制限的な例では、用量はまた、その中に、投与あたり、約1μg/kg/体重から、約5μg/kg/体重、約10μg/kg/体重、約50μg/kg/体重、約100μg/kg/体重、約200μg/kg/体重、約350μg/kg/体重、約500μg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約75mg/kg/体重、100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg/体重、約1000mg/kg/体重まで、またはそれより多く、および任意の派生可能な範囲を含み得る。本明細書に列挙された数から派生可能な範囲の非制限的な例は、約5mg/kg/体重〜約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重〜約500mg/kg/体重、などの範囲が、上記の数に基づいて投与され得る。
【0347】
いずれの場合にも、この組成物は、1つ以上の成分の酸化を遅延させるために種々の抗酸化剤を含み得る。さらに、微生物の作用の予防は、パラベン類(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロザルまたはそれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない、種々の抗細菌剤および抗真菌剤のような保存剤によりもたらされ得る。
【0348】
このような組成物またはさらなる薬剤の薬学的に受容可能な組成物または成分は、遊離の塩基、中性または塩形態で処方され得る。薬学的に受容可能な塩は、酸付加塩(例えば、タンパク質組成物の遊離のアミノ基と形成される塩、または例えば、塩酸またはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸またはマンデル酸のような有機酸と形成される塩)を含む。遊離のカルボキシル基と形成される塩もまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化鉄のような無機塩基;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンまたはプロカインのような有機塩基から派生し得る。
【0349】
この組成物は、製造、貯蔵および送達の条件下で安定で、かつ細菌および真菌のような、微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。エンドトキシン汚染が、安全レベルで(例えば、0.5ng/mgタンパク質より少なく)最小に維持されるべきであることが認識される。
【0350】
特定の実施形態では、注射可能な組成物の延長された吸収が、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチンまたはそれらの組合せのような、吸収を遅延させる薬剤の組成物における使用によりもたらされ得る。
【0351】
(XVI.キット)
本明細書に記載の任意の組成物は、キットに含まれ得る。非制限的な例では、ポリカチオンポリマー、カチオン性脂質、PEG、PEI、薬学的に受容可能な組成物および/またはさらなる薬剤が、キット中に含まれ得る。従って、キットは、適切なコンテナ手段中に、本発明の1つ以上の成分を含むエアロゾル処方物および/または本発明のさらなる薬剤を含む。キットはまた、吸入器またはその他の加圧されたエアロゾルキャニスターのような、エアロゾル処方物を送達するための手段を含み得る。
【0352】
キットは、適切にアリコートされた、ポリオチオン性ポリマー、カチオン性脂質、PEG、PEI、薬学的に受容可能な組成物および/または本発明のさらなる薬剤の組成物を、検出アッセイのための標準曲線を調製するために用いられ得るように、標識されるかまたは標識されずに、含み得る。キットの治療成分は、水性媒体中または凍結乾燥形態中のいずれかでパッケージされ得る。キットのコンテナ手段は、一般に、少なくとも1つのバアイル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジまたはその他のコンテナ手段を含み、その中に成分が、配置され得、そして好ましくは、適切にアリコートにされる。キット中に1つ以上の成分が存在する場合、このキットはまた、一般に、第2、第3またはその他のさらなるコンテナを含み、その中にさらなる成分が分離して配置され得る。しかし、成分の種々の組合せは1つのバアイル中に含まれ得る。本発明のキットはまた、代表的には、エアロゾル処方物、エアロゾル処方物の1つ以上の成分、さらなる薬剤を含むための手段、および任意のその他の試薬コンテナを、市販のための閉鎖コンファインメント中に含む。このようなコンテナは、所望のバイアルが保持される射出または吹き出し成型プラスチックコンテナを含み得る。
【0353】
本発明の治療キットは、薬学的に受容可能な組成物および/またはさらなる薬剤を含むキットエアロゾル処方物である。このようなキットは、一般に、適切なコンテナ手段中に、薬学的組成物の薬学的に受容可能な処方物、エアロゾル処方物の成分および/または薬学的に受容可能な処方物中のさらなる薬剤を含む。このキットは、単一のコンテナ手段を有し得るか、および/またはそれは各化合物の別個のコンテナ手段を有し得る。
【0354】
キットの成分が、1つおよび/またはそれより多い液体溶液で提供されるとき、この液体溶液は水性溶液であり、滅菌水性溶液が特に好適である。しかし、キットの成分は、乾燥粉末(単数または複数)として提供され得る。試薬および/または成分が乾燥粉末として提供されるとき、この粉末は、適切な溶媒の添加により再構成され得る。この溶媒もまた別のコンテナ手段中に提供され得ることが予想される。
【0355】
このコンテナ手段は、一般に、少なくとも1つのバアイル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジまたはその他のコンテナ手段を含み、その中に、薬学的組成物の薬学的に受容可能な処方物、エアロゾル処方物の成分および/またはさらなる薬剤の処方物が配置され、好ましくは、適切に配分される。このキットはまた、滅菌された、薬学的に受容可能な緩衝液および/またはその他の希釈剤を含むための第2のコンテナ手段を含み得る。
【0356】
本発明のキットはまた、代表的には、例えば、射出および/吹き出し成形プラスチィクコンテナのような、その中に所望のバイアルが保持される、市販のための閉鎖コンファインメント中のバイアルを含むための手段を含む。
【0357】
コンテナの数および/または型にかかわらず、本発明のキットはまた、動物の身体内にエアロゾル処方物の送達を支援するための器具を含み得るか、および/またはそれとともにパッケージされ得る。このような器具は、吸入器、エアコンプレッサーおよび/または任意のこのような医療的に認可された送達ビヒクルであり得る。
*********************
本明細書に開示および請求項に記載されたすべての組成物および/または方法は、現在の開示を考慮して過度の実験なくしてなされ、および実施され得る。本発明の組成物および方法を、好適な実施形態に関して記載したが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物および/または方法および方法の工程においてまたは工程の順序において改変が適用され得ることは当業者に明らかである。より詳細には、化学的および生理学的の両方で関連する特定の薬剤が、同じまたは類似の結果を達成し得ながら、本明細書に記載の薬剤を置換し得ることは明らかである。当業者に明らかである、すべてのこのような類似の置換および改変は、添付の請求項により規定される本発明の思想、範囲および概念内であるとみなされる。
【0358】
比率が、例えば、2:1として与えられるとき、処方および測定の両方において誤りが生じるので、この比率は、与えられた値のまわりの15%の範囲を包含すると理解される。
【0359】
本明細書中で使用される場合、「a」または「an」は、1以上を意味し得る。特許請求の範囲で使用される際、語句「含む(comprising)」と組み合わせて使用される場合、語句「a」または「an」は、1以上を意味し得る。本明細書中で使用される場合、「別の」は、少なくとも第2番目またはそれ以上を意味し得る。
【0360】
以下の略語が、図面および実施例において使用される:
Z1 プロタミン:PEI:PEG:DPEPC(好ましくは、10:1:5:2の重量比を有する)
Z2 ポリリジン:PEG(好ましくは、10:15の重量比を有する)
Z3 プロタミン:PEG(好ましくは、10:4の重量比を有する)
Z4 ポリリジン:PEI:PEG:DPEPC(好ましくは、10:1:16:2の重量比を有する)
Z5 プロタミン:ポリリジン:PEG(好ましくは、10:7:18の重量比を有する)。
ここで、PEGは、ポリエチレングリコールであり、PEIは、ポリエチレンイミンであり、そしてDPEPCは、ジパルミトイルグリセロエチルホスホコリンである。リポフェクタミンは、Gibco Life Technologiesから購入され、そしてG67リポソーム処方物は、Genzem Coから得た。
【実施例】
【0361】
(XVII.実施例)
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の実施例から明らかとなる。しかし、本発明の好ましい実施形態を示す、詳細な説明および具体的な実施例は、例示によってのみ提供されることが理解されるべきである。なぜならば、本発明の精神および範囲内の種々の変化および改変は、本発明の詳細な説明および実施例から当業者に明らかとなるからである。
【0362】
(実施例1−ホスホリピドは、ヒトの正常な気管支上皮細胞の培地中でPEIの細胞毒性を減少させる)
一般的に、カチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン(PEI))は、ほとんどの脂質ベースのトランスフェクション剤よりも、相対的により高いトランスフェクション効率およびより高い細胞毒性を有する。この毒性を減少させ、そしてカチオン性ポリマーのトランスフェクション効率を増大させるか、または少なくとも維持するために、このカチオン性リン脂質DPEPCを使用して、1:2の重量比でPEIと組み合わせた。簡潔には、DPEPCをクロロホルムに溶解して、そして回転式エバポレーターによりフラスコの壁で薄いフィルムとなるまで乾燥した。この脂質−PEIの組み合わせ(L−PEI)は、リン酸緩衝液(PBS)中で、脂質の薄いフィルムをPEIで水和することによって得た。24時間後、このL−PEIを、0.22μmのサイズの孔を有する膜フィルターを通過させることによって濾過した。PEIのみまたはL−PEIを含む異なる量の懸濁液を、6ウェルプレートで培養したヒトの正常な気管支上皮細胞(HNBE)上に添加した。48時間後、この細胞を収集し、そして生存細胞を、トリパンブルーで染色した後に計数した。コントロールは、処理されていないHNBE細胞であった。図1に示されるデーターは、L−PEIの細胞毒性が、PEIのみの細胞毒性よりも約4倍低いことを示す(ID50 L+PEI:ID50 PEI=3.8:1)。この図中のデーターは、3回の独立した実験からの平均±1つの標準偏差である。
【0363】
(実施例2−脂質−PEIの組み合わせとPEIのトランスフェクション効率)
脂質が、脂質−ポリマーの組み合わせ中においてカチオン性ポリマーのトランスフェクション効率に影響を与えるかどうかを知るために、L−PEIのトランスフェクション効率を、異なる細胞株上で決定し、そして脂質またはPEI単独と比較した。このカチオン性脂質(DPEPCリポソーム)、PEI、およびL−PEI(1:2 w/w)を、グリーン蛍光スタンパク質発現プラスミド(GFP)と共にこれら自体の最適な比率で複合化した。次いで、この3つの処方物を、空気圧縮機および噴霧器(40μgのDNA/ml)により別々にエアロゾルにした。エアロゾルを生成するための空気の流れは、4.0PSIに固定した。このエアロゾルは、10分を越えるように生成させた。このエアロゾル霧を、噴霧器の出口側に連結された管を通して試験管中に凝集させた。10分後に、各処方物からの約80μlの凝集したエアロゾル液体を、滅菌試験管中に集めた。この凝集されたエアロゾル液体(50μl/ウェル)を使用して、6ウェルプレート中で培養した、ヒトの非小細胞の肺癌腫細胞株A549、H322、およびH358をトランスフェクトした。各処方物について最適のトランスフェクション条件を使用した。40時間後に、トランスフェクション効率(トランスフェクション%)を、蛍光顕微鏡によって蛍光細胞の割合を計数することによって決定した。各サンプルは、200個の細胞/視野を越える6箇所のランダム視野を計数した。図2は、本発明のエアロゾル化した脂質−PEIの組み合わせが、PEIを有さない同一の脂質、またはカチオン性脂質を有ないPEIよりも、ヒトの非小細胞の肺癌腫細胞株をより良好にトランスフェクトし得、脂質のみよりもより高いトランスフェクション効率およびPEIのみと同様のトランスフェクション効率を有することを実証する。このデーターは、3回の独立した実験からの平均±1つの標準偏差である。
【0364】
(実施例3−複数のカチオン性ポリマーと組み合わせた脂質のトランスフェクト効率)
非ウイルス性遺伝子送達の効率は、DNAの複合体およびその送達系の特徴に依存する。一方、プラスミドDNAの種々の化学的構造および立体構造は、DNAの複合体および送達系(例えば、DNA−ポリマーまたはDNA−脂質)の不均一形成をもたらす。より効果的な複合体を形成するために、複数のカチオン性ポリマーとエンドサイトーシスで消化される薬剤との組み合わせが必要とされ得る。本発明者は、複数のカチオン性ポリマーおよびリン脂質から構成される処方物を設計した。3種のカチオン性ポリマー(ポリリジン(Pk)、プロタミン(Pro)およびポリエチレンイミン(PEI))のうちの任意の2種を、予備試験によって既知のそれらの最適な比で組み合わせた。これらを、ヒトの非小細胞の肺癌腫細胞株(H322およびH358)中へのGFPのトランスフェクションにおいて、単一のポリマー処方物と比較した。このトランスフェクション手順は、実施例2に記載されるのと同一であった。図3に示されるように、最適のトランスフェクション条件下で、複数のカチオン性ポリマー(例えば、PEI+Pk(Z1と呼ばれる)およびPEI+Pro(Z4と呼ばれる))から構成される処方物は、任意の単一のポリマー処方物よりも有意により高いトランスフェクション効率を有する。このデーターは、3回の独立した実験からの平均±1つの標準偏差である。
【0365】
(実施例4−複数または単一のカチオン性ポリマー処方物のエアロゾル中での安定性)
実施例3は、複数のカチオン性ポリマー処方物が、インビトロにおいてより良好に細胞をトランスフェクトすることを実証した。しかし、これらの処方物が、エアロゾル化後にそれらのトランスフェクション効率を維持するかを試験した。この実施例では、エアロゾル化された処方物の安定性を試験した。嚢胞性線維症を処置するためのエアロゾル遺伝子送達のために臨床試験において現在使用されている最も効果的なリポソーム遺伝子送達系の1つG67、および最も広範に使用されているカチオン性ポリマーPEIを比較として使用した。Z1(複数のカチオン性ポリマーを含む)、Z3(単一のカチオン性ポリマーを含む)、G67(リポソーム形態)またはPEIの処方物を、それぞれ、CMVプロモーターによって駆動されるルシフェラーゼ発現プラスミドと最適な比で複合体化した。Z1−luc、Z3−luc、G67−lucおよびPEI−lucは、それぞれ、プロタミン+PEI−ルシフェラーゼ、プロタミン−ルシフェラーゼ、リポソーム−G67ルシフェラーゼ、またはPEI−ルシフェラーゼの複合体を含む処方物を表す。各複合体を、1.0ml中に40μgのDNAを含むエアロゾルを発生するために、噴霧器中に入れた。エアロゾルを発生するための気流を、4.0PSIに固定した。各々の設計した時点(例えば、2分、4分、6分、8分、10分、12分および20分)において、各処方物から凝縮された約80μlのエアロゾル処方物を、滅菌試験管中に集め、次いでこれを使用して、6ウェルプレート中のH358細胞を、この凝縮液体/ウェル(50μl)でトランスフェクトした。24時間後、各ウェル中の100万個の細胞中のルシフェラーゼ活性を測定した。エアロゾル化していない処方物(またはエアロゾル化 0分)でトランスフェクトされた細胞中のルシフェラーゼ活性を、100%と規定した。図4の結果は、複数のカチオン性ポリマーを含む処方物がエアロゾル化を受け、これにより、試験中の全時点における単一のポリマーまたはリポソーム処方物のトランスフェクション効率よりも、より高いトランスフェクション効率を有することを示す。
【0366】
(実施例5−培養した細胞中に複数のカチオン性ポリマーを含むエアロゾル化効率での機能的遺伝子の送達)
機能的遺伝子をトランスフェクトすることによって、本発明の処方物の遺伝子送達機能を確認するために、野生型p53をプロトタイプ遺伝子として使用して、培養したヒト肺癌腫細胞株に送達した。Z1、Z4(複数のカチオン性ポリマーを含む)、Z2、Z3(単一のカチオン性ポリマーを含む)、またはLf−(リポフェクタミン、市販のカチオン性リポソーム処方物)の処方物を、CMVプロモーターで駆動される野生型p53遺伝子発現プラスミドおよびp21プロモーターで駆動されるルシフェラーゼ発現プラスミド(p53:luc=1:1 mol/mol)と複合体化した。これらの複合体処方物を、噴霧器のレザバ中に、別々に、各40μgのDNA(1.0ml)として入れた。エアロゾルを発生するための気流を、4.0PSIに固定した。この噴霧器の出力パイプを氷上の滅菌試験管に接続し、凝集したエアロゾル化液体を集めた。0分および10分において、各処方物からの約80μlの凝集した液体を集め、次いでこれを使用して、6ウェルプレート中のH358細胞を、この凝集した液体/ウェル(50μl)でトランスフェクトした。24時間後、各ウェル中のルシフェラーゼ活性を測定した(図5A)。エアロゾル前の全ての処方物のトランスフェクション効率が類似していること(差異は、4%未満であった)を見出した。しかし、10分のエアロゾル化後のトランスフェクション効率は、有意に異なる。図5Bにおいて、10分で示される、各処方物に残されたルシフェラーゼ活性の割合は、図5Aに示される同じ実験結果を基に表した。この結果は、複数のカチオン性ポリマーを含む処方物が、エアロゾル化において安定であることを示す。これらは、野生型p53遺伝子をこの細胞にトランスフェクトするための80%を越える能力を保持し得る。従って、トランスフェクトされたp53によって誘導される、有意な量のp21プロモーターで駆動されるルシフェラーゼ遺伝子発現が存在する。しかし、単一のカチオン性ポリマー処方物は、約50%のトランスフェクションの能力を保持し得るのみであり、このリポソーム処方物は、10分のエアロゾル化後にほとんど全てのトランスフェクション機能を失う。
【0367】
別の実験において(図5C)、複数のカチオン性ポリマーを含むエアロゾル化された処方物によって肺癌細胞まで駆動される野生型p53遺伝子のアポトーシス機能を決定した。この実験手順は、上記の手順と同様であった。トランスフェクションの2日後、アポトーシス細胞を、Tunelアッセイによって測定した。コントロールは、処理していない細胞であった。同様の実験を、エアロゾル化処方物を用いたp53遺伝子を複数の癌細胞株(A549、H322、H358、およびH460)にトランスフェクトすることにより繰り返したが、使用した末端アッセイは、生存細胞を計数することであった(図5D)。この結果は、複数のカチオン性ポリマーを含むエアロゾル化処方物が、インビトロで肺癌細胞中に遺伝子を効率的に送達するだけでなく、転写因子、アポトーシス誘導などのp53遺伝子の代表的な機能の発現を増強もすることを示す。これらの機能は、癌遺伝子治療のために使用され得る。この実施例に示されたデーターは、3回の独立した実験からの平均±1つの標準偏差である。
【0368】
(実施例6−マウス中のエアロゾル効率)
エアロゾル投与量を見積もり、エアロゾル投与の効率を増加するためには、動物によって肺に吸い込まれるエアロゾル小滴の量を決定するべきである。全投薬量のうち、マウスの肺に吸い込まれたエアロゾルのパーセントは、「マウス中のエアロゾル効率」として定義され;この効率は、遺伝子トランスフェクション効率を考慮に入れない。実験を、処方物を蛍光色素で標識する工程、標識化エアロゾルをマウスに投与する工程、ならびにマウスの肺における投与量および蛍光色素量を測定する工程によって設計した。簡単に言えば、等しい量の蛍光色素カルセインを、処方物Z1、Z2、Z3およびZ4と混合した。エアロゾル吸入効率を増加するために、ICRマウス(19〜21g)を、YZ拘束ケージと名づけられる、特別に設計された拘束ケージに入れ、次いで、異なる群のマウスに、同じ投薬量の別々に各カルセイン含有処方物のエアロゾルを与えた。エアロゾルの空気流速度を、4.0PSIで固定した。エアロゾルを2分間、6分間、または10分間与えたとき、各群からの5匹のマウスは、投薬を終え、これらの肺を切除し、そしてカルセイン濃度を、即座に、蛍光分光測光計によって定量的に決定した。投薬量を、処方物の初期量および噴霧器のレザバ中の処方物の残存量を測定することによって、決定した。表7の結果は、マウス中のエアロゾル効率が約3%であり、試験された処方物間の違いは、誤差を有意に越えないことを示す。表7に示される各処方物に対する各時点のデータは、5匹のマウスからの、平均±1標準偏差である。
【0369】
【表7】
(実施例7−エアロゾル遺伝子送達後の健康なマウスの肺での遺伝子発現)
インビボ実験を、エアロゾル投与による健康なマウスの肺への遺伝子の送達において、複数のカチオンポリマーを含有する処方物が、単一のカチオンポリマーを含有する処方物より効率的であることを示すために使用された。Z1、Z4(複数のカチオンポリマーを含む)、Z2、およびZ3(単一のカチオンポリマーを含む)は、実施例4に記載される方法を使用して、レポータールシフェラーゼ遺伝子と、複合体を形成した。噴霧器内のDNAの初期量は、1.2mlのPBS中の360μgであった。エアロゾル空気流速度は、4.0PSIであった。雌ICRマウス(19〜21g)を、各3匹のマウスを含む12の処置群に分割した。このマウスを、エアロゾルの受け取りのためにYZ拘束ケージに置いた。各処方物を、6分間または10分間それぞれのエアロゾル投与を受けた2つの群のマウスに与えた。投薬40時間後、マウスの肺を切除し、ホモジネートした。1gの組織あたりのルシフェラーゼ活性を、ルミノメーターで決定した。図6中のデータは、各群の3匹のマウスからの、平均±1標準偏差である。
【0370】
(実施例8−肺癌を有するマウス中の、エアロゾル投与された遺伝子の遺伝子送達効率および組織分布)
複数のカチオンポリマーの機能をさらに確認するために、正常位のヒト肺癌を有するマウスを、エアロゾル投薬を介した処方物の、遺伝子送達効率および組織分布を試験するために使用した。最初の実験において、ヌードマウス(6〜7週齢)に、気管的にヒト非小細胞肺癌細胞株H358(2×106細胞/マウス)を植え付けた。植え付けの7週間後、マウスを、各5匹のマウスを含む3つの群に分割し、エアロゾル投与の前に、YZ拘束ケージ中に拘束した。マウスに、ルシフェラーゼ発現プラスミドと複合体を形成するZ1またはZ4処方物の、10分間のエアロゾル投薬をした(図7A)。噴霧器内での、処方物の初期量は、300μgのルシフェラーゼプラスミドを含む1.2mlであった。投薬24時間後、マウスの器官を切除し、ルシフェラーゼ活性を定量的に決定した。図7Aの結果は、複数のカチオンポリマーを含有する処方物が、エアロゾル投薬を介して、マウスの肺および肺腫瘍内に、レポーター遺伝子を効率的におよび特異的に送達することを示した。遺伝子の発現は、他の組織ではほとんど見られなかった。このデータは、平均±1標準偏差である。
【0371】
別の実験において、複数のカチオンポリマーを含有する処方物は、p21プロモーターによって駆動される、野生型p53遺伝子発現プラスミドまたはルシフェラーゼ発現プラスミドと複合体を形成した(図7B)。懸濁物(1.2ml)を、300μgのCMVプロモーター駆動性p53遺伝子発現プラスミドおよび300μgのp21プロモーター駆動性ルシフェラーゼ遺伝子発現プラスミドを封入するZ1またはZ4を含む、噴霧器レザバに置いた。p53ノックアウトマウス(18〜21g)に、YZ拘束ケージ中で、10分の間隔で6分間のエアロゾル投与を2回行った。投薬24時間後、マウスの器官を切除した。肺および他の器官中のルシフェラーゼレベルを、定量的に決定した。データは、3匹のマウスからの、平均±1標準偏差である。図7Bの結果は、野生型p53遺伝子およびp21プロモーター駆動性ルシフェラーゼ遺伝子の十分量が、マウスの肺に送達されそしてトランスフェクトされるので、転写因子としての発現されたp53の機能がマウス中で検出されたことを示す。
【0372】
(実施例9−正常位のヒト肺癌を有するマウスでの複数のカチオンポリマーおよびp53遺伝子を含有するエアロゾル化された処方物の抗腫瘍活性)
本発明の処方物の適用可能性を試験するために、実験的療法を設計した。ヌードマウス(7週齢、18〜20g)に、気管的に5×106のヒト非小細胞肺癌細胞株H358(図8A)またはH322(図8B)を植え付けた。各腫瘍モデルのマウスを、各5匹のマウスのいくつかの群にランダムに分割した。植え付けの4日後、拘束ケージ中のマウスを、3日の間隔を伴って、Z1−p53およびZ4−p53それぞれの10回のエアロゾル投与で処置した。各投与量は、9μgDNA/マウスに等価であった。エアロゾルG67リポソームp53を与えられたマウスは、図8A中でポジティブコントロールとして使用され、非処置マウスは、ネガティブコントロールとして使用された。各群についての生存率を記録した。インビボ研究は、複数のカチオンポリマーを含む処方物が、複数のエアロゾル投薬を介して肺癌罹患マウスの肺に腫瘍抑制遺伝子を送達することにおける、最高のリポソーム処方物より効率的であることを示す。この機能は、正常位のヒト肺癌を罹患するマウスでの有意な抗腫瘍活性を生じた。図8Aおよび図8Bのデータは、p53を保持する本発明の処方物で処置されたマウスの中間生存率が、G67リポソームp53処置および非処置マウスの生存率より、それぞれ1.7倍および2.3倍高かったことを示す。データは、5匹のマウスからの、平均±1標準偏差である。
【0373】
(実施例10−マウスでの処方物Z1〜Z5の亜急性毒性の決定)
処方物Z1、Z2、Z3、Z4およびZ5の亜急性毒性を、単回の気管内注入の後、ICRマウス中で研究した。5つの異なる投与量レベルを、各処方物に対して使用した。10匹のマウスを、1投与量レベルごとに使用した。最大投与量(100%の動物死亡率を得る)および最小投与量(100%の動物生存率を得る)を、予備的な実験において選択した。動物を、毎日観察し、計量し、そして動物の死亡を記録した。実験を、14日目に終了し、致死量(LD10、LD50、LD90)を、以前に記載されるように計算した(Zouら、1995)。以下の表8に示される結果は、5つの処方物の各々の低い毒性を示す。有効量を、LD10よりも100倍以上低いことが観察された。
【0374】
【表8】
(XVIII 参考文献)
以下の参考文献は、本明細書中で示される例示的な手順または他の詳細に、例示的な手順または他の詳細の捕足を提供する範囲で、本明細書中で参考として具体的に援用される。
【0375】
(参考文献)(p109−p118)
【0376】
【表9】
以下の図面は、本願明細書の一部を形成し、本発明の特定の局面をさらに照明することが含まれる。本発明は、本明細書中に提示された特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つ以上を参照することによって、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0377】
【図1】Trypanブルー染色によって測定された細胞死%として示されたPEI濃度の関数としての、PEIと脂質−PEIとの組み合わせについての細胞毒性。この脂質−PEI組み合わせ(L−PEI)は、ポリエチレンミン(PEI)を含むジパルミトイルグリセロエチルホスホコリン(DPEPC)の脂質薄膜を水和することによって得られた。ヒト正常気管支上皮細胞(HNBE)が、使用された。このデータは、3個の独立した研究からの平均±SDである。
【図2】ヒト非小細胞肺癌細胞株A549、H322、およびH358を使用する、脂質、PEIおよび脂質−PEIの組み合わせのトランスフェクション効率。カチオン性脂質(DPEPCリポソーム)、PEI、および脂質−PEI組み合わせL−PEI(1:2w/w)は、緑色蛍光タンパク質と複合体化された。このデータは、3個の独立した研究からの平均±SDである。
【図3】ヒト非小細胞肺癌細胞株(H322およびH358)へのGFPのトランスフェクションにおける単一(PEI、プロタミンおよびポリリジン)および複数のカチオン性ポリマー処方物のトランスフェクション効率。これらのデータは、3個の独立した研究からの平均±SDである。
【図4】複数のカチオン性ポリマーを含む処方物は、エアロゾル化の間、単一のカチオン性ポリマーの処方物またはリポソーム処方物より、安定である。このデータは、3個の独立した研究からの平均±SDである。
【図5】図5A:Z1、Z2、Z3、Z4およびリポフェクタミン(Lf)含有野生型p53遺伝子発現プラスミドおよびp21プロモーター駆動ルシフェラーゼプラスミドのエアロゾル化処方物。エアロゾル送達の0分後および10分後におけるサンプルについてのルシフェラーゼ活性%。
【0378】
図5B:Z1、Z2、Z3、Z4およびリポフェクタミン(Lf)含有野生型p53遺伝子発現プラスミドおよびp21プロモーター駆動ルシフェラーゼプラスミドのエアロゾル化処方物。エアロゾル送達の10分後に維持するルシフェラーゼ活性%。
【0379】
図5C:Z1、Z2、Z3、Z4およびリポフェクタミン(Lf)含有野生型p53遺伝子発現プラスミドおよびp21プロモーター駆動ルシフェラーゼプラスミドのエアロゾル化処方物。エアロゾル送達の0分後および10分後におけるアポトーシス細胞%。
【0380】
図5D:Z1、Z2、Z3、Z4およびリポフェクタミン(Lf)含有野生型p53遺伝子発現プラスミドおよびp21プロモーター駆動ルシフェラーゼプラスミドのエアロゾル化処方物。複数の癌細胞株(A549、H322、H358、およびH460)の細胞の死滅%。使用される終了アッセイは、計数生細胞であった。このデータは、3個の独立した研究からの平均±SDである。
【図6】マウスの肺におけるエアロゾル投与の6分および10分における、PEI、Z1、Z2、Z3およびZ4処方物についての相対ルシフェラーゼ活性。このデータは、3個の独立した研究からの平均±SDである。
【図7】図7A:同所ヒト肺癌を保有するマウスについての処方物送達の効率。エアロゾル投与を介したルシフェラーゼ発現プラスミドと複合体化した処方物についての、種々のマウス組織へのZ1およびZ4送達の効率。
【0381】
図7B:同所ヒト肺癌を保有するマウスについての処方物送達の効率。種々のマウス組織へのZ1およびZ4送達の効率。図7Bについてのエアロゾル化処方物におけるDNAは、野生型p53遺伝子発現プラスミドおよびp21プロモーター駆動ルシフェラーゼプラスミドであった。このデータは、3個の独立した研究からの平均±SDである。
【図8】図8A:エアロゾル化したZ1−p53、Z4−p53およびLf−p53の投与後の同所ヒト肺癌を保有するマウスの生存%。H358を注射した。
【0382】
図8B:エアロゾル化したZ1−p53、Z4−p53およびLf−p53の投与後の同所ヒト肺癌を保有するマウスの生存%。H322を注射した。このデータは、5個の独立した研究からの平均±SDである。このデータは、5個の独立した研究からの平均±SDである。
【0001】
(発明の背景)
本出願は、2001年2月1日に出願された米国仮特許出願番号第60/266,174号の出願日の利益を主張する。上記参照の開示の全内容は、放棄されずにその全体において本明細書中に参考として詳細に援用される。
【0002】
(A.発明の分野)
本発明は、一般的には、エアロゾル送達の分野に関する。より詳細には、本発明は、遺伝子の効率的な送達のための新しい処方物、またはエアロゾル剪断力による破壊から薬学的に受容可能な薬剤を保護するインビボでの他の薬学的に受容可能な薬剤に関する。本発明はまた、このような組成物の調製の方法、およびこのような組成物で細胞をトランスフェクトする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(B.関連分野の説明)
遺伝子治療の成功は、最小の毒性で標的細胞に遺伝子を選択的かつ効率的に送達し得るベクターまたはビヒクルの開発に大きく依存する。ウイルスは、細胞の形質導入において効率的であり、従って遺伝子治療における送達ビヒクルとして一般的な選択を構成する。
【0004】
ウイルス成分の場合、使用されるウイルス成分は、通常、複製不全のウイルスまたは弱毒化したウイルスである。残念ながら、これらのウイルスゲノムは、なおもウイルスタンパク質(例えば、主要ヘキソンコートタンパク質)を低いレベルで発現し得る(Yangら、1994)。この発現は、免疫原性および毒性による継続的な問題を生じる、免疫応答を誘導するのに十分なレベルで生じる(Yangら、1994)。ベクターそれ自身が免疫原性であること、およびこの免疫応答が、このウイルスに基づく将来の遺伝子治療送達組成物の開発において決して克服され得ないこともまた明らかになっている(Kafriら、1998)。全体的には、このウイルス送達組成物/ベクターは、免疫原性であり、経済的に大量生産することが困難であり、限られた治療的核酸の運搬能力、生成についてヘルパー細胞株に対する連続的な依存性、標的化の欠如を有し、そして安全性および毒性に関する問題により未だ悩まされていることが明らかになっている(Marshall、1999)。
【0005】
ヒトにおけるウイルスの使用に関するこれらの安全性の関心は、非ウイルス送達系を魅力的な選択肢にさせる。非ウイルスベクターは、使用の単純さ、大スケールの生成の容易さおよび特定の免疫応答の欠如に関して、特に適切である。最も一般的に研究された3つの非ウイルス送達組成物成分は、脂質(例えば、リポソーム)(Bendasら、1999)、ポリカチオン(Xuら、1998)、または単純な裸のDNA(Chenら、2000)に関する処方物に基づく。残念ながら、これらの成分を含有する送達組成物は、伝統的に、特にインビボでの低い形質導入効率の反復性の問題を有し;裸のDNAは、最低の形質導入効率を示し、そしてリポソームは、最高の形質導入効率を示す(Bendasら、1999;Xuら、1998;Chenら、2000)。これらの送達組成物が有する他の問題としては、送達処方物の毒性が挙げられる。
【0006】
遺伝子発現は、裸のプラスミドDNAの直接的な組織内注射により達成され得るが、他の投与経路(例えば、気管内注射および静脈内注射ならびにエアロゾル)による遺伝子移入は、一般には、送達ベクターまたはビヒクルの使用を必要とする。
【0007】
1987年に、Felgnerらが、初めて、カチオン性脂質を用いたインビトロトランスフェクションの成功を記載して以来、遺伝子送達系における使用のための合成脂質の適用は、大きく進歩してきた。新しいカチオン性脂質が、合成され(Wheelerら、1996;Leeら、1996)、そしてインビトロおよびインビボでのトランスフェクションのために使用されてきた。
【0008】
カチオン性脂質/DNA複合体(リポプレックス(lipoplex))は、癌および嚢胞性線維症の処置のためのいくつかの臨床試験において使用されてきた(Nabelら、1993;Caplenら、1995)。リポプレックスは、比較的低用量で局所的に送達される場合に、安全であることが証明された。しかし、長期安全性の研究は、実施されていない。さらに、カチオン性脂質媒介性の遺伝子移入が、臨床において標準的に実施され得る前に、脂質ベクターの有効性は、改善される必要がある。脂質送達組成物の分野における進歩にも関わらず、現在の脂質ベクターは、特定の組織に対する遺伝子の活性な標的化において未だに非効率的なままである。
【0009】
ポリカチオンポリマーは、送達組成物の生成および処方の容易さに関して中間の特性に位置する。ポリカチオンポリマーは、イオン性相互作用に起因して核酸と混合される場合、自己アセンブリ特性を有する。培養細胞およびインビボでの細胞に対して核酸を送達するための成分として、合成的なポリカチオンポリエチレンイミン(PEI)を使用する多くの研究が存在している(Bousiffら、1995;Boussifら、1996;Densmoreら、2000;Fronsdalら、2000;Bolettaら、1997;Goulaら、1998;Collら、1999;Kircheisら、1997;Hart、2000;Rudolphら、2000)。
【0010】
薬学的薬剤の送達のためのポリカチオンポリマーの利用は、これらの分子について多数の異なる適用をもたらした。とりわけ1つのグループは、「分子結合体」と称される(CristianoおよびRoth、1995)。分子結合体は、細胞および正に荷電したポリカチオンポリマーに結合されている送達組成物に特異的なタンパク質から構成される。これらの結合体は、DNAに結合して、タンパク質−DNA複合体またはポリプレックス(polyplex)(ポリカチオンの使用に基づく)を形成し、これらは、使用した成分に依存して特定の細胞型に対してDNAを標的化し得る。
【0011】
薬学的薬剤の送達の様式は、薬剤の有効性に関して重要であり得る。送達の1つの様式は、エアロゾルによるものである。エアロゾル化は、体内へ薬学的薬剤を運搬するための迅速かつ有効な手段である。エアロゾル送達は、送達組成物を肺へ直接接触させるために使用され得る。肺において、多くの異なる疾患が、肺の表面上に直接的に薬物を付着(deposit)させるために使用されるエアロゾル送達系の使用を介して首尾よく処置されてきた。
【0012】
肺へのエアロゾル化した治療剤の投与の分野は、公知である。例えば、エアロゾル送達のための複合体の処方およびエアロゾル粒子を形成するための装置は、例えば、米国特許第5,962,429号、同第6,090,925号、同第5,744,166号、同第5,985,309号、および同第5,639,441号に教示される。
【0013】
遺伝子治療におけるエアロゾル送達のためのベクターの処方物としては、カチオン性脂質が挙げられる。エアロゾル遺伝子送達による肺への送達およびトランスフェクションのためのカチオン性脂質ベースの処方物の使用は、例えば、米国特許第5,641,662号および同第5,756,353号に記載されている。エアロゾル処方物の一部としてのカチオン性脂質は、例えば、米国特許第6,086,913号、同第5,981,501号、同第6,106,859号、同第6,008,202号、Striblingら、1992;Crookら、1996;Eastmanら、1997;Chadwickら、1997;McDonaldら、1998;Birchallら、2000およびDensmoreら、2000に教示される。しかし、エアロゾル送達における使用のためのカチオン性脂質ベクターに関していくつかの問題が存在する。1つの問題は、より低いトランスフェクション効率であり、カチオン性脂質処方物の乏しい安定性は、送達ベクターとしての多くのカチオン性脂質の使用を妨げる。
【0014】
エアロゾル送達がしばしば遭遇する問題は、粒子のエアロゾル化が、投与されるべき薬剤の治療的効力の破壊を引き起こすことである。噴霧器の噴射口を介する処方物の押出しにより生じる剪断力は、多くの化合物の活性を減少させるのに十分に大きい。別の問題は、送達される治療剤の低い安定性である。しばしば、これらの薬剤は、肺に入って数分以内に有効性を損失する。
【0015】
送達ベクター処方物における粒子の安定性を増加させる分野において研究がなされてきた。Caponettiら、1999;Leeら、1997は、ポリ−L−リジン(PLL)の使用を教示し、そして粒子の機械的な安定性を増強させるためのアルギナート−PLLマイクロカプセル中にポリエチレングリコール(PEG)を含有する。同様に、米国特許第6,008,202号、Densmoreら、1999;Godbeyら、2000;Vinogradovら、1998;Ogrisら、1999;Eastmanら、1997;およびGautamら、2000は、いくつかのPEIベースの処方物の使用および増加した安定性を教示する。しかし、PEIベースの処方物の使用は、処方物の毒性を増加させ得る。従って、改良された脂質ベースの送達系に対する必要性がなおも存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
従って、本発明に基づいて、細胞、膜、器官または組織へ組成物を投与するための方法が提供される。この方法は、上記組成物を上記細胞、膜、器官または組織と接触させることを包含し、ここで提供される上記組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリカチオンポリマー、ポリエチレンイミン(PEI)およびカチオン性脂質を含有する。この投与は、エアロゾルの形態であり得る。カチオン性脂質は、この組成物の毒性を減少させるのに役立つ任意のカチオン性脂質であり得;リン脂質(例えば、ジパルミトイルグリセロエチルホスホコリン(DPEPC))、他のジアシ(diacy)−ジメチルアンモニウムプロパン(例えば、DSEPC、DMEPC、DLEPC、DOEPC、またはパルミトイル−オレオイル−EPC)、ジアシル−ジメチルアンモニウムプロパン(例えば、DSDAP、DPDAP、DMDAP、またはDODAP)、ジアシル−トリメチルアンモニウムプロパン(例えば、DSTAP、DPTAP、DMTAP、またはDOTAP)が選択される。他のカチオン性脂質としては、例えば、以下が挙げられる:ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、N−[1−(2,3−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、DOSPA、3−β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、3−β−[N−(N,N−ジカルボベンゾキシスペミジン)カルバモイル]コレステロール、または3−β−(N−スペミンカルバモイル)コレステロール。特定のポリカチオンポリマーとしては、以下が挙げられる:プロタミン、ポリ(アミノ酸)(例えば、ポリリジン、ポリヒスチジン、またはポリアルギニン)、または他のカチオン性ポリマー(例えば、ポリ(L−オルニチン)、ポリ(ジメチルアミン)エチルメタシレート、またはポリ(トリメチルアミン)エチルメタシレート)。より詳細には、選択されるポリカチオンポリマーとしては、プロタミンおよびポリリジンである。2つ、3つまたはそれよりも多いカチオン性ポリマーが、本発明の処方物中に組込まれ得る。
【0017】
本発明の1つの局面は、組成物の増加した形質導入効率である。治療剤を用いる本発明の組成物の使用は、上記組成物対上記治療剤の比率が、50以下:1である場合が好ましい。より好ましくは、10:1の比率である。この組成物は、必要ならば、治療剤に比較して、100:1の濃度で使用され得る。
【0018】
特定の実施形態において、組成物が、さらに、核酸、DNA、RNA、タンパク質、ワクチン、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、発現構築物、p53のコード領域、化学薬品、抗生物質、化学療法剤または診断剤を含有することが企図される。この組成物の投与は、気道(例えば、肺、気管または肺胞)におけるどこに対してもなされ得る。
【0019】
特定の実施形態において、本組成物が、例えば、肺癌、肺感染、喘息、気管支炎、気腫、細気管支炎(bronchilitis)、嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺水腫、肺塞栓、呼吸不全、肺高血圧、肺炎または結核を予防または処置するために投与されることが考慮される。本組成物が肺癌を予防または処置するために投与されることが好ましい。
【0020】
本発明のさらなる局面は、上記薬学的組成物の懸濁液において、5〜0.01μmの範囲、またはより好ましくは2〜0.05μmの範囲、またはより好ましくは0.05μmおよび0.2μmの直径の粒子を含む。0.01μmの直径は、種々の適用に対して、理想的であることが見出されてきた。本発明の組成物における粒子の直径の範囲について言及する場合、この粒子の少なくとも80%がこの範囲内に入ることが理解される。所定の範囲より大きい幾つかの粒子または凝集体が、本組成物において、予測される。これら粒子は、乾燥散剤または液体を形成し得る。この好ましいエアロゾル滴の直径は、0.3〜3.0μmである。
【0021】
本発明の別の実施形態は、エアロゾル送達のための組成物を処方するための方法を包含し、この方法は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリカチオンポリマー、ポリエチレンイミン(PEI)およびカチオン性脂質を配合して合わせて、組成物を作製する工程を包含し、ここで、この組成物は、エアロゾルとして投与され得る。上記組成物が安定化剤または共溶媒をさらに含むことは、本発明の1局面である。
【0022】
上記組成物における上記プロタミンに対する上記PEGの比率が、約1:1〜1:5であるか、またはより好ましくは、約1:2であることが、本発明の1局面である。上記組成物における上記ポリリジンに対する上記PEGの比率は、約1:1〜10:1であるか、またはより好ましくは、約3:2である。上記組成物における上記ポリカチオンポリマーに対する上記PEIの比率は、約1:5〜1:20であるか、またはより好ましくは、約1:10である。上記組成物における上記ポリカチオンポリマーに対する上記カチオン性脂質の比率は、約1:2〜1:20であるか、またはより好ましくは、約1:3〜1.20である。上記組成物における上記ポリカチオンポリマーに対する上記DPEPCの比率は、約1:3〜1:20であるか、またはより好ましくは、約1:5である。上記組成物における上記成分、プロタミン、PEG、PEI、およびDPEPCの比率は、約2:1:1:0.4〜50:25:1:10であるか、またはより好ましくは、約10:5:1:2である。上記組成物における上記成分、ポリリジン、PEG、PEI、およびDPEPCの比率は、2:3:1:0.4〜50:80:1:10であるか、またはより好ましくは、約10:16:1:2である。
【0023】
比率について言及する場合、特定の量の誤差が許容されることが理解される。例えば、約2:1の比率は、1.90:1と2.10:1との間の値を含むことが理解される。好ましい比率が以下の特定の成分:ポリリジン、プロタミン、PEG、PEI、およびDPEPCについて与えられるが、他のカチオン性脂質および他のポリカチオンポリマーが使用され得ることが、理解される。これらの組成物についての比率は、本明細書中に記載される情報を与えられれば、過度の実験をすることなく、決定され得る。
【0024】
本発明の別の実施形態は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリカチオンポリマー、ポリエチレンイミン(PEI)およびカチオン性脂質を含むエアロゾル送達のための組成物を提供する。この組成物はまた、さらなる実施形態において、用量を量るための手段を含む、エアロゾルキャニスターを含み得る。
【0025】
本発明のさらなる実施形態は、エアロゾル処方物におけるポリエチレンイミン(PEI)の毒性を低減するための方法を提供し、ここで、ジパルミトイルグリセロエチルホスホコリン(DPEPC)は、上記PEIの毒性を減少するのに十分な量で、上記エアロゾル処方物に添加される。
【0026】
さらなる実施形態は、エアロゾル送達のための組成物を提供し、この組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリカチオンポリマーおよび薬学的活性因子を含み、ここで、エアロゾル化の10分後の上記薬学的活性因子の活性は、上記薬学的活性因子の初期活性の少なくとも50%である。エアロゾル化の10分後の活性は、上記薬学的活性因子の初期活性の少なくとも60%であることが、より好ましい。エアロゾル化の10分後の活性が、上記薬学的活性因子の初期活性の少なくとも70%であることは、なおより好ましい。このポリカチオンポリマーは、プロタミン、ポリリジン、またはポリカチオンポリマーの組み合わせを含み得る。
【0027】
(例示的な実施形態の説明)
本発明は、エアロゾルとして与えられた場合に、遺伝子および他の生物学的産物(例えば、遺伝子、RNA、タンパク質、オリゴヌクレオチド)、化学的因子(例えば、化学療法剤、抗生物質、他の薬物)または診断学的因子(例えば、気体)を、肺へ効率的に送達し得る、脂質/ポリマー処方物に関する。単一のカチオン性ポリマーおよびカチオン性脂質の組み合わせ、またはPEI単独は、エアロゾル投与を介する遺伝子送達に対して、効率的ではない。しかし、エアロゾルとして与えられたPEGおよび複数のカチオン性ポリマーの適切な組み合わせは、肺および肺癌細胞に遺伝子を効率的に送達し得る。特定の量のカチオン性リン脂質の添加は、インビボにおける遺伝子送達効率を増加し得る。特に、本発明は、肺癌、嚢胞性線維症、TB、肺感染および喘息のような肺疾患の処置または予防のために使用され得る。
【0028】
(1.核酸送達組成物)
特定の実施形態において、本発明のエアロゾル送達処方物は、少なくとも1つのポリカチオンポリマー、PEGおよび少なくとも1つの核酸を含む。さらなる実施形態において、送達組成物は、少なくとも1つの追加の因子をさらに含み、この因子として、標的因子(例えば、標的リガンド)、エンドソーム因子、リンカー/カップリング剤、タンパク質様化合物、脂質、薬物、抗がん剤、ワクチン成分、薬学的に受容可能なキャリアまたはこのような因子の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な実施例において、本発明の組成物は、リンカー/カップリング剤に結合したポリカチオンポリマーを含み得、これは、標的因子に結合される。別の非限定的な例において、本発明の組成物は、標的因子を含むリポソームにおいて核酸を含み得る。当然のことながら、エアロゾル送達処方物成分の他の組み合わせは、本明細書中に記載され、そしてさらなる組み合わせは、本明細書の開示から当業者に容易に明らかであり、従って、本発明によって包含される。エアロゾル送達処方物の種々の成分は、手段(共有結合、イオン性相互作用、疎水性相互作用またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)によって互いに結合され得る。
【0029】
特定の実施形態において、エアロゾル送達処方物成分として、複数のカチオン性ポリマー、PEG、PEI、およびカチオン性脂質が挙げられる。核酸は、ポリアクリルアミドゲル上で、塩化セシウム遠心勾配で、または当業者に公知の任意の他の手段によって、精製され得る。例えば、Sambrookら(1989)を参照のこと(本明細書中において、参考として援用され、ここで、アルカリ溶解手順のバリエーションに基づくDNA精製プロトコルが記載される)。
【0030】
(A.ポリマー)
ポリマーまたはポリマーの混合物は、本発明のエアロゾル処方物を調製するために使用され得る。ポリマーは、核酸組成物から水を除去するか、もしくは核酸組成物を脱水するか、または体積排除を引き起こすために使用され得る。ポリマーはまた、結合リガンドおよび/または化学部位の結合の点(例えば、共有結合を介する)として作用する能力の利点を有する。
【0031】
本発明の特定のポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)であり、これはまた、ポリ(オキシエチレン)グリコールとして公知である。PEGは、エチレンオキシドおよび水の縮合ポリマーであり、一般的な化学式HO(CH2CH2O)nHを有する。本発明において、分枝型PEGおよびその誘導体、PEG−アクリレート、および他のPEGコポリマーもまた、企図される。
【0032】
(B.ポリカチオンポリマー)
ポリカチオンポリマーは、核酸(例えば、DNA、RNA、PNAまたはこれらの組み合わせ)と合わせた場合に自己集合し、これらの使用を簡単する利点を有し、市販され、安価であり、そして難しい合成ストラテジーを必要としない。本明細書中に記載される任意のポリカチオンポリマーまたは当業者に公知の任意のポリカチオンポリマーが、本明細書に記載される組成物および方法において使用されることが意図される。
【0033】
ポリカチオンポリマーはまた、例えば、共有結合を介して、結合リガンドおよび/または化学部分の結合の点として作用し得る能力を保有する。最も重要なことは、いくつかのポリカチオンポリマーが、エンドソーム溶解因子としての役割において機能する能力を保有し、従って、細胞の細胞質へのDNAまたは薬学的に受容可能な組成物の通過を増大し得る。多数のカチオン性化学部分(例えば、アミン)は、分子が、エンドソーム溶解を導くエンドソームの酸性化の間に、水素イオンを吸着するためにそのカチオン性部分を使用して、「プロトンスポンジ」として作用することを可能にする。エンドソーム因子として作用し得るポリカチオンポリマーが、本発明の特定の実施形態において好まれる。
【0034】
ポリカチオンポリマーの例は、ポリ(アミノ酸)(ポリリジン、ポリヒスチジンもしくはポリアルギニンが挙げられるが、これらに限定されない)または他のカチオン性ポリマー(例えば、プロタミン、ポリ(L−オルニチン)、ポリ(ジメチルアミン)エチルメタクリレート、もしくはポリ(トリメチルアミン)エチルメタクリレートである。
【0035】
特定の実施形態において、ポリカチオンポリマーは、静電的電荷−電荷相互作用によって核酸を凝縮し得る(Plumら、1990)。例えば、ポリカチオンポリマー(例えば、ポリリジン)によるDNAの中和および小さい(約100nm)トロイド様構造への凝縮は、インビトロでの細胞への核酸のエンドサイトーシスを促進する(本明細書中で参考として援用される、米国特許第5,972,600号)。核酸の負の荷電の中和は、トランスフェクションを補助し得る。細胞表面は、しばしば、負に荷電しているからである(Stevensonら、1989;Lemaitreら、1987)。さらに、ポリカチオンポリマー(例えば、ポリリジン)はまた、細胞膜を不安定化し、そしてさらなる薬剤の結合のための部位として使用され得る(本明細書中で参考として援用される、米国特許第6,071,533号)。
【0036】
特定の実施形態において、個々のポリカチオン鎖中のモノマーの数は、3〜約1000モノマー、ここから導き出される任意の整数、そしてここから導き出せる任意の範囲であり得る。もちろん、種々の局面において、異なる長さのポリカチオン鎖の混合物が使用され得る。他の実施形態において、特定のポリカチオン鎖上のカチオン性部分の数は、3〜約1000モノマー、ここから導き出される任意の整数、そしてここから導き出せる任意の範囲から構成され得る。特定の局面において、カチオン性部分またはカチオン性電荷の数は、核酸、タンパク質性組成物、または本発明の組成物中のアニオン性部分もしくはアニオン性電荷の数と一致するか、あるいは近似する。
【0037】
特定の実施形態において、ポリカチオンポリマーは、ポリアミン(例えば、スペルミジン、スペルミン、ポリアンモニウム分子(例えば、ポリブレン(ヘキサジメトリン(hexadimethrine)ブロマイド))、塩基性ポリアミノ酸(例えば、ポリリジン)、塩基性タンパク質またはこれらの組み合わせである。他のポリカチオンポリマーとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:米国特許第5,656,611号、同第5,354,844号、同第5,462,866号、同第5,462,866号および同第5,494,682号(これらは各々、本明細書中で参考として援用される)に記載されるポリカチオンポリマー。
【0038】
他の実施形態において、このポリカチオンポリマーは、プロタミン、ヒストン、異種ポリペプチド、非ペプチドカチオン(例えば、ポリエチレンイミン)またはこれらの組み合わせである(本明細書中で参考として援用される、米国特許第5,792,645号)。
【0039】
他の実施形態において、ポリカチオンポリマーは、例えば、カチオン化アルブミン、DEAE−デキストラン、ヒストン、ポリブレン、ポリオルニチン、プロタミン、スペルミン、カスケードアミドアミン「樹状」ポリマー、グラミシジンS環状ペプチド、スペルミジン、ポリリジン(例えば、臭化物塩、分子量25,600;Sigma Chemical Corporation St.Louis、Mo)、短い合成カチオン性ペプチド)またはこれらの組み合わせ(本明細書中で各々参考として援用される、米国特許第5,908,777号;HaenslerおよびSzoka、1993)。米国特許第5,260,002号は、本明細書中で意図される種々のポリマーを記載する。
【0040】
本発明の実施形態において、当業者に理解されるように、ポリマーのカチオン性のメンバー(例えば、ゼラチン)が、本発明のポリカチオンポリマーとして使用され得ることが意図される。このようなポリマーとしては、NIH Approved Implantable材料(これには、ポリ酸(例えば、ポリアクリレート(例えば、ナトリウム)、ポリメタクリレートおよびオレフィン無水マレイン酸コポリマー));ポリエステル(例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクタンおよびこれらのポリエステルのコポリマー);ポリオルトエステル(例えば、ポリジオキシアルキルテトラヒドロフランおよびポリ3,9−ビスメチレン−2,4,8,10−テトラアスピロ5,5ウンデカン−コ−1,6ヘキサンジオール);ヒドロゲル(例えば、PEG、ヒドロキシエチルメタクリレート、モノメタクリレートおよびホルムアルデヒドで架橋されたゼラチン);ポリサッカリド(例えば、セルロールおよびデキストラン);ポリペプチド(例えば、ポリグルタミン酸およびグルタミン酸ロイシンコポリマー、ポリアミノトリアゾール/アルキレンアミノトリアゾールコポリマーおよびアルブミンビーズ(すなわち、グルタルアルデヒドで架橋されたアルブミン));アミノ酸ポリマー(例えば、ポリD−リジンHCLまたはポリL−リジンHCL、ポリD−オルニチンHCLまたはポリL−オルニチンHCLおよびポリD−アルギニンまたはポリL−アルギニン);ならびにこれらの組み合わせを含む)が挙げられる。
【0041】
記載される他のポリマーとしては、水溶性ポリマー(例えば、ポリサッカリド(−):デンプン、ゴム、カラゲナン、デキストラン、キサン、硫酸化藻類ポリサッカリド(−)、アルギネート(−)、ヒアルロン酸フィルム(−)、ヘパリン(−)、硫酸コンドロイチン(−)、ポリガラクツロン酸(−)、アルギン酸(−)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(−)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース−ジエチルアミノエチルデキストランコポリマー(−)、寒天、ヒアルロネート(−)、硫酸ヒアルロン酸(−)、硫酸脱アシル化ヒアルロン酸(−)、ヘパリン(−)、ポリグルロネート(ノルマルまたはアセチル化)(−)、ポリマンヌロネート(−)、硫酸コンドロイチン(−)、アスコピラン(ascopyllan)(−)、ペクチン(1,4ポリグラクテロン酸(polyglacteronic acid)から形成される)(−)、硫酸デキストラン(−)、フコイダン(fucoidan)(−)、酸化セルロース(−)、ポリペプチドおよびタンパク質(例えば、疎水性(例えば、ポリフェニルアラニン)、極性(例えば、セリン)、酸性(−)(例えば、アスパラギン酸、コンドロイチン−6−硫酸、ヘパリン、ヒト血清アルブミン、塩基性(+)(例えば、リジン、l−アルギニン、コラーゲン);ポリ核酸(RNA、DNA)(非イオン性)、プラン(pullan)(非イオン性)、セルロース(非イオン性)、藻類ペクチン、修飾セルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(非イオン性、薄いフィルムを形成する)、ヒドロキシプロピルセルロース(非イオン性)、カルボキシメチルセルロース(非イオン性、ゲル/フィルムを形成する)、ジエチルアミノヒドロキシプロピルセルロース(+)、ジエチルアミノエチルセルロース(+)およびキトサン(+)が挙げられる。
【0042】
開示される他のポリマーとしては、合成ポリマー(例えば、非イオン性ポリマー(ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルアルコールフィルム));アニオン性ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリスチレン硫酸ナトリウム、ポリビニルスルホン酸塩、ポリビニル安息香酸塩、ポリビニルオキシプロパンスルホン酸塩、ポリ4−ビニルフェノール塩、ポリビニルスクシンイミド(polyvinylsucciniumidum)酸塩、ナトリウム−2−スルホキシエチルメタクリレート、ナトリウム−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホネートおよびナトリウム−3−アクリルアミド−3−メチルブタノエート);およびカチオン性ポリマー(ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、メタアリーリルオキシエチルトリメチルアンモニウムスルフェート(metharyloxyethyltrimethyl ammonium sulfate)、メタアリーリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(metharylryloxyethyltrimethyl ammoniumchloride)、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリビニルピリジン(血漿置換)、第四級ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン、直線状ポリメチレン−N,N−ジメチルピペリジニウム、ポリビニル4−アルキルピリジニウム、ポリビニルベンゼントリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンジメチルアンモニウムクロライドおよび1,3スルホプロピル−2−ビニルピリジニウム)が挙げられる。カチオン性ポリマーの分子量は、好ましくは、2〜80kDaの間である。懸濁物中の粒子サイズは、好ましくは、直径200nm未満である。
【0043】
(1.ポリエチルアミン)
特定の実施形態において、分枝鎖ポリカチオンポリマーが好ましい。特に好ましい分枝鎖ポリカチオンポリマーは、合成ポリカチオン性ポリエチレンイミン(PEI)である。PEIは、第一級:第二級:第三級アミンが1:2:1の比で配置された多数のアミン基を有し、これらは、プロトンスポンジおよびエンドソーム溶解因子としてのその機能に寄与すると考えられる。
【0044】
(2.デンドリマーポリカチオン)
特定の実施形態において、ポリカチオンポリマーは、デンドリマーポリカチオンを含む。デンドリマーポリカチオンおよびこれらを調製する方法は、Tomaliaら、1990;PCT/US83/02052;米国特許第6,113,946号、同第4,507,466号;同第4,558,120号、同第4,568,737号、同第4,587,329号、同第4,631,337号、同第4,694,064号、同第4,713,975号、同第4,737,550号、同第4,871,779号および同第4,857,599号に記載され、これらの各々は、本明細書中で参考として援用される。デンドリマーポリカチオンは、一般に、コア分子に結合したオリゴマーおよび/またはポリマー化合物を含む。本明細書中で使用される場合、「結合した」は、例えば、共有結合を意味するような結合を含むが、これに限定されない。
【0045】
デンドリマーポリカチオンにおいて使用するためのオリゴマーおよびポリマーの例としては、ポリアミドアミン(これには、メチルアクリレート、エチレンジアミンまたはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるがこれに限定されない。特定の実施形態において、オリゴマーまたはポリマーは、カチオン性である(すなわち、正に荷電し得る)。他の実施形態において、カチオン性部分は、オリゴマーまたはポリマーに結合される。このようなカチオン性部分としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:グアニジニウム;アゾール(第一級、第二級、第三級もしくは第四級の脂肪族アゾールもしくは芳香族アゾール)、および/またはS、O、グアニジニウムもしくはそれらの組み合わせの置換アゾール;アミド(第一級、第二級、第三級もしくは第四級の脂肪族アミンもしくは芳香族アミン)、および/またはS、O、グアニジニウムもしくはこれらの組み合わせの置換アミド;ならびに、グアニジニウム、アゾールおよび/またはアミドの組み合わせ。オリゴマーまたはポリマーは、カチオン性部分以外の反応性部分を含み得る。このような反応性部分としては、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、スルフヒドリル、アミド、チオエーテルまたはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。カチオン性部分または反応性部分は、オリゴマーもしくはポリマー、またはオリゴマーもしくはポリマーを構成するモノマーの、約1%〜約100%、ここから導き出される任意の整数、そしてここから導き出せる任意の範囲を含み得るか、あるいは約1%〜約100%、ここから導き出される任意の整数、そしてここから導き出せる任意の範囲であり得る。
【0046】
コア分子としては、アンモニア、エチレンジアミン、リジン、オルニチン、ペンタエリスリトール、トリス−(2−アミノエチル)アミン、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。コア分子は、一般に、オリゴマー化合物および/またはポリマー化合物に結合する少なくとも2つの反応性部分を含む。このような反応性部分としては、アミノ、カルボキシハライドマレイミド、カルボキシル、ジチオピリジル(dethiopyridyl)、エステル、ハライド、ヒドロキシル、イミド、イミノ、スルフヒドリルまたはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に受容可能なコア分子、オリゴマーおよび/またはポリマーが、特定の実施形態において好ましい。
【0047】
代表的なデンドリマーポリカチオンは、約2,000〜約1,000,000、ここから導き出される任意の整数、そしてここから導き出せる任意の範囲の平均MWである。代表的なデンドリマーポリカチオンは、約11〜約60Å、ここから導き出される任意の整数、そしてここから導き出せる任意の範囲の流体力学的半径を有する。
【0048】
(3.タンパク質様ポリカチオン)
特定の実施形態では、ポリカチオンポリマーは、カチオン性タンパク質様配列を含む。このようなカチオン性タンパク質様配列は、好ましくは、1つ以上のカチオン性アミノ酸残基、またはカチオン性タンパク質様配列に付着した1つ以上のカチオン性部分を含む。
【0049】
本明細書中で使用される用語「カチオン性タンパク質様配列」は、カチオン性残基の混合物(dおよび/またはlコンフォメーション)および/または付着されたカチオン性部分を含むが、これらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、用語「カチオン性タンパク質様配列」は、dおよび/またはlアイソマーコンフォメーションの1つ以上のアルギニン、ヒスチジン、および/またはリジンを含むアミノ酸鎖を含む。カチオン性タンパク質様配列はまた、大多数の(すなわち、50%を超える)残基が、カチオン性残基、および/またはカチオン性タンパク質様配列の残基に付着したカチオン性部分を含む限り、本明細書中に記載の任意の天然アミノ酸、改変アミノ酸、または非通常アミノ酸を含み得る。1つを超える異なるタイプのアミノ酸残基を含むポリカチオン性タンパク質様配列は、時として、「コポリマー」と呼ばれる。
【0050】
好ましいカチオン性タンパク質様配列としては、ポリ(l−アルギニン酸)、ポリ(d−アルギニン酸)、ポリ(dl−アルギニン酸)、ポリ(l−ヒスチジン酸)、ポリ(d−ヒスチジン酸)、ポリ(dl−ヒスチジン酸)、ポリ(l−リジン)、ポリ(d−リジン)、ポリ(dl−リジン)、上述に列挙したポリアミノ酸とポリエチレングリコールとのコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、およびポリ乳酸、ならびにポリ(2−ヒドロキシエチル 1−グルタミン)、キトサン、カルボキシメチルデキストラン、ヒアルロン酸、ヒト血清アルブミン、および/またはアルギン酸が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本発明のカチオン性タンパク質様配列は、以下の分子量を有する:約1,000、約2,000、約3,000、約4,000、約5,000、約6,000、約7,000、約8,000、約9,000、約10,000、約11,000、約12,000、約13,000、約14,000、約15,000、約16,000、約17,000、約18,000、約19,000、約20,000、約21, 000、約22,000、約23,000、約24,000、約25,000、約26,000、約27,000、約28,000、約29,000、約30,000、約31,000、約32,000、約33,000、約34,000、約35,000、約36,000、約37,000、約38,000、約39,000、約40,000、約41,000、約42,000、約43,000、約44,000、約45,000、約46,000、約47,000、約48,000、約49,000、約50,000、約51,000、約52,000、約53,000、約54,000、約55,000、約56,000、約57,000、約58,000、約59,000、約60,000、約61,000、約62,000、約63,000、約64,000、約65,000、約66,000、約67,000、約68,000、約69,000、約70,000、約71,000、約72,000、約73,000、約74,000、約75,000、約76,000、約77,000、約78,000、約79,000、約80,000、約81,000、約82,000、約83,000、約84,000、約85,000、約86,000、約87,000、約88,000、約89,000、約90,000、約91,000、約92,000、約93,000、約94,000、約95,000、約96,000、約97,000、約98,000、約99,000、約100,000kdまで、およびその中で導き出され得る任意の整数、およびその中で導き出され得る任意の範囲。
【0051】
特定の実施形態では、天然に存在するアミノ酸、非通常アミノ酸、または化学的に改変されたアミノ酸の種々の置換が、同様または他に所望の特徴を有する分子を得るために、カチオン性タンパク質様配列のアミノ酸組成においてなされ得る。例えば、ポリアミノ酸(例えば、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリリジン、あるいはアルギニン、ヒスチジン、および/またはリジンの混合物を含むカチオン性タンパク質様配列)は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、または約25かそこら、およびその中で導き出され得る任意の範囲のアルギニン残基、ヒスチジン残基、またはリジン残基が、それぞれ、本明細書中に記載の天然に存在するアミノ酸、改変アミノ酸、または非通常アミノ酸のいずれかによって置換されており得る。本発明の他の局面では、カチオン性タンパク質様配列(例えば、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリリジン、あるいはこれらの3つのアミノ酸のいくつかまたは全ての混合物を含むアミノ酸鎖)は、大部分の残基が、ヒスチジン、アルギニン、および/またはリジン、あるいは付着されたカチオン性部分を含む限り、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、から約50%かそこら、およびその中で導き出され得る任意の範囲のアルギニン残基、ヒスチジン残基、またはリジン残基が、それぞれ、本明細書中に記載の天然に存在するアミノ酸、改変アミノ酸、または非通常アミノ酸のいずれかによって置換されており得る。
【0052】
ポリアミノ酸への非カチオン性残基および/または部分のこのような置換は、さらなる因子(例えば、標的化因子(例えば、標的化リガンド)、エンドソーム因子、リンカー/カップリング因子、薬物、抗癌剤、またはそれらの組み合わせのような)の付着のための好都合な化学的部分を提供し得る。非限定的な例において、グルタミン酸残基は、因子(例えば、薬物のような)を共有結合付着させるために使用され得る側鎖カルボキシル官能基を含む。もちろん、カチオン性残基はまた、1つ以上のさらなる因子のための付着点として働き得る。このような化学的付着方法は、本明細書中に記載され、そして、当業者に周知である(例えば、Liら、1996;Greenwaldら、1996;Van Heeswijkら、1985;Hoesら、1985;Hiranoら、1979;Katoら、1984;Morimotoら、1984;および米国特許第5,362,831号(これらの各々は、参考として本明細書中に援用される)を参照のこと)。特定の局面では、1つ以上の成分の付着は、因子をエアロゾル処方物に、共有結合によって直接的に付着させることによるものであり得る。他の局面では、付着は、リンカー/カップリング因子によるものであり得る。
【0053】
ポリカチオンポリマーは、送達および処方が比較的容易である。ポリカチオンポリマーは、イオン性相互作用に起因して核酸と混合される場合、自己アセンブリ特性を有する。培養細胞に、およびインビボでの細胞に、核酸を送達するための成分として、合成ポリカチオン性ポリエチレンイミン(PEI)を利用する多くの研究が存在している(Bousiffら、1995;Boussifら、1996)。
【0054】
1つ以上のポリカチオンポリマーは、複数のカチオン性基を有するポリマーとして定義される。ポリカチオンポリマーとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ポリ(アミノ酸)(例えば、ポリリジン);ポリ4級化合物;プロタミン;ポリイミン;ポリビニルアミン;ポリビニルピリジン;ポリメタクリレート;ポリアクリレート;ポリオキセタン(polyoxethanes);ポリチオジエチルアミノメチルエチレン(P(TDAE));ポリヒスチジン;ポリオルニチン;ポリ−p−アミノスチレン;ポリオキセタン(polyoxethanes);コ−ポリメタクリレート;およびポリアミドアミン。ポリカチオンポリマーはまた、ゼラチンまたはアルブミンのカチオン性形態;カチオン性リン脂質;およびカチオン性デンプンを含む。本発明のより好ましいポリカチオンポリマーは、プロタミンおよびポリリジンである。ポリエチレンイミン(polyethyenimine)(PEI)の使用もまた、本発明において好ましい。
【0055】
(C.リンカー/カップリング因子)
所望であれば、目的のエアロゾル送達処方成分(1つまたは複数)が、生物学的に解離可能な結合(biologically−releasable bond)(例えば、選択的に切断可能なリンカーまたはアミノ酸配列)を介して接合され得る。例えば、腫瘍環境内に優先的に位置するかまたは活性な酵素についての切断部位を含むペプチドリンカーが意図される。このようなペプチドリンカーの例示の形態は、ウロキナーゼ、プラスミン、トロンビン、第IXa因子、第Xa因子、またはメタロプロテイナーゼ(metallaproteinase)(例えば、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、またはストロメリシン(stromelysin))により切断されるリンカーである。
【0056】
特定の実施形態では、ポリエチレングリコール(PEG)が、リンカー/カップリング剤として意図される。ポリエチレングリコールは、ポリカチオン/核酸組み合わせをコートし得ることが意図される。これは、細胞−粒子(ポリマー粒子または脂質粒子)の融合および肺気道上の粒子の接着を増強するための因子として働き、ならびに、標的化リガンドのようなさらなる因子についての付着点として働く。特定の実施形態では、例えば、PEGは、電荷(例えば、イオン性相互作用)および/または共有結合により他の核酸送達成分に付着され得る。
【0057】
さらに、部分を結合体化するために首尾よく用いられ得る多数のタイプのジスルフィド結合含有リンカーが公知であるが、一般に、特定のリンカーが、異なる薬理学的特徴および能力に基づいて、他のリンカーよりも好ましい。例えば、立体的に「障害」となるジスルフィド結合を含むリンカーが、好ましいものであり、これは、インビボでのより大きな安定性に起因し、従って、作用部位での結合の前に部分が放出されることが妨げられる。
【0058】
架橋試薬は、2つの異なる分子(例えば、安定化剤および凝固剤)の官能基を一緒に結合する分子架橋を形成するために使用される。しかし、同じアナログのダイマーまたはマルチマーが作製され得るか、または異なるアナログで構成されるヘテロマー複合体が創出され得ることが意図される。段階状に2つの異なる化合物を連結させるために、望ましくないホモポリマー形成を排除するヘテロ二官能性架橋リンカーが使用され得る。
【0059】
【表1】
例示のヘテロ二官能性架橋リンカーは、2つの反応基を含有する:1つは、1級アミン基(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド)と反応し、そして他方は、チオール基(例えば、ピリジルジスルフィド、マレイミド、ハロゲンなど)と反応する。1級アミン反応基を介して、架橋リンカーは、1つのタンパク質様化合物(例えば、選択された抗体またはフラグメント)のリジン残基(1つまたは複数)と反応し得、そしてチオール反応基を介して、すでに第一のタンパク質様化合物に結合されたこの架橋リンカーは、他のタンパク質様化合物(例えば、別の因子)のシステイン残基(遊離スルフヒドリル基)と反応する。
【0060】
血中で妥当な安定性を有する架橋リンカーが用いられることが好ましい。種々の因子を結合体化するために首尾よく用いられ得る多数のタイプのジスルフィド結合含有リンカーが公知である。立体的に障害となるジスルフィド結合を含むリンカーは、より大きなインビボでの安定性を与えることが判明し得、作用部位に達する前に因子(例えば、標的化剤のような)が放出されることが妨げられる。従って、これらのリンカーは、結合剤の1群である。
【0061】
別の架橋試薬は、SMPTであり、これは、隣接するベンゼン環およびメチル基により「立体的に障害」となるジスルフィド結合を含む二官能性架橋リンカーである。ジスルフィド結合の立体障害は、結合を、組織および血液中に存在し得るチオレートアニオン(例えば、グルタチオン)による攻撃から防御する機能を供し、そしてそれにより、標的部位への付着された因子の送達前に結合体を脱カップリングすることを妨げるように助けると考えられる。
【0062】
SMPT架橋剤は、他の多くの公知の架橋剤と同様に、システインのSHまたは一級アミン(例えば、リジンのεアミノ基)のような官能基を架橋させる傾向がある。別の可能な型の架橋剤としては、切断可能なジスルフィド結合を含むヘテロ二官能性光反応性フェニルアジド(例えば、スルホスクシンイミジル−2−(p−アジドサリチルアミド)エチル−1,3’−ジチオプロピオネート)が挙げられる。N−ヒドロキシスクシンイミジル基は、一級アミノ基と反応し、そしてフェニルアジドは、(光分解の際に)任意のアミノ酸残基と非選択的に反応する。
【0063】
ヒンダード架橋剤に加えて、非ヒンダードリンカーもまた、本明細書に従って使用され得る。保護されたジスルフィドを含むとも生じるともみなされない、他の有用な架橋剤としては、SATA、SPDPおよび2−イミノチオランが挙げられる(WawrzynczakおよびThorpe、1987)。このような架橋剤の使用は、当該分野においてよく理解されている。別の実施形態は、可撓性リンカーの使用を包含する。
【0064】
米国特許第4,680,338号は、リガンドと、アミン含有ポリマーおよび/またはタンパク様化合物との結合体を生成するため(特に、キレート剤、薬物、酵素、検出可能な標識などとの抗体結合体を形成するため)に有用な、二官能性リンカーを記載する。米国特許第5,141,648号および同第5,563,250号は、種々のマイルドな条件下で切断可能な不安定結合を含む、切断可能な結合体を開示する。このリンカーは、目的の薬剤がリンカーに直接結合し得、切断が薬剤の放出を生じる点で、特に有用である。好ましい使用としては、遊離アミノ基または遊離スルフヒドリル基をタンパク様分子(例えば、抗体または薬物など)に付加することが挙げられる。
【0065】
米国特許第5,856,456号は、ポリペプチド構成物を接続して、融合タンパク質(例えば、単鎖抗体)を作製する際に使用するための、ペプチドリンカーを提供する。このリンカーは、約50アミノ酸長までであり、荷電アミノ酸(好ましくは、アルギニンまたはリジン)の後ろにプロリンが続くことを少なくとも1つ含み、そしてより大きな安定性および低下した凝集によって特徴付けられる。米国特許第5,880,270号は、種々の免疫診断技術および分離技術において有用な、アミノオキシ含有リンカーを開示する。
【0066】
(D.タンパク様組成物)
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のタンパク様分子を含む、新規なエアロゾル処方物を包含する。本明細書中で使用される場合、「タンパク様分子」「タンパク様組成物」、「タンパク様化合物」、「タンパク様鎖」、「タンパク様配列」または「タンパク様物質」とは、一般に、約200アミノ酸より大きいタンパク質あるいは遺伝子から翻訳された全長内因性配列;約100アミノ酸より大きいポリペプチド;および/または約3〜約100アミノ酸のペプチドをいうが、これらに限定されない。上記の全ての「タンパク様」の用語は、本明細書中において交換可能に使用され得る。
【0067】
特定の実施形態において、少なくとも1つのタンパク様分子の大きさは、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約66、約67、約68、約69、約70、約71、約72、約73、約74、約75、約76、約77、約78、約79、約80、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99、約100、約110、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、約200、約210、約220、約230、約240、約250、約275、約300、約325、約350、約375、約400、約425、約450、約475、約500、約525、約550、約575、約600、約625、約650、約675、約700、約725、約750、約775、約800、約825、約850、約875、約900、約925、約950、約975、約1000、約1100、約1200、約1300、約1400、約1500、約1750、約2000、約2250、約2500、約2750、約3000、約3250、約3500、約3750、約4000、約4250、約4500、約4750、約5000、約6000、約7000、約8000、約9000、約10000またはそれより多くのアミノ分子残基、およびその中で導き出され得る任意の整数、およびその中で導き出され得る任意の範囲のアミノ分子残基を含み得るが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書中で使用される場合、「アミノ分子」とは、当業者に公知であるような、任意のアミノ酸、アミノ酸誘導体またはアミノ酸模倣物をいう。特定の実施形態において、タンパク様分子の残基は連続的であり、アミノ分子残基の配列を中断するいずれの非アミノ分子も存在しない。他の実施形態において、この配列は、1つ以上の非アミノ分子部分を含み得る。特定の実施形態において、タンパク様分子の残基の配列は、1つ以上の非アミノ分子部分によって中断され得る。
【0069】
従って、用語「タンパク様組成物」とは、天然の合成タンパク質における20の一般アミノ酸の少なくとも1つ、または少なくとも1つの改変されたかもしくは通常でないアミノ酸(これには、以下の表2に示されるものが挙げられるが、これらに限定されない)を含むアミノ分子配列を包含する。
【0070】
【表2】
特定の実施形態において、タンパク様組成物は、少なくとも1種のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含有する。さらなる実施形態において、タンパク様組成物は、生体適合性のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含有する。本明細書中において使用される場合、用語「生体適合性」とは、本明細書中に記載される方法および量に従って、所定の生物に適用または投与される場合に、有意な不都合な影響を生じない物質をいう。このような不都合または所望されない影響は、有意な毒性または有害な免疫学的反応のような影響である。好ましい実施形態において、生体適合性のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含む組成物は、一般に、哺乳動物のタンパク質またはペプチド、あるいは合成されたタンパク質またはペプチドであり、それぞれが本質的に、トキシン、病原体および有害な免疫原を含まない。
【0071】
タンパク様組成物は、当業者に公知の任意の技術(標準的な分子生物学的技術によるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの発現、天然の供給源からのタンパク様化合物の単離、あるいはタンパク様物質の化学合成が挙げられる)によって、作製され得る。種々の遺伝子についてのヌクレオチドおよびタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドの配列が、以前に開示されており、そして当業者に公知のコンピュータ化されたデータベースにおいて見出され得る。1つのこのようなデータベースは、National Center for Biotechnology Informationの、GenbankおよびGenPeptデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)である。これらの公知の遺伝子についてのコード領域は、本明細書中に開示される、または当業者に公知であるような技術を使用して、増幅および/または発現され得る。あるいは、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドの、種々の市販の調製物が、当業者に公知である。
【0072】
特定の実施形態において、タンパク様化合物は、精製され得る。一般に、「精製された」とは、分画に供されて種々の他のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを除去されたタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの組成物の特定のものであって、そして例えば、特定のまたは所望のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドについての当業者に公知であるようなタンパク質アッセイによって評価され得る場合に、組成物がその活性を実質的に維持するものをいう。
【0073】
特定の実施形態において、タンパク様組成物は、少なくとも1種の抗体を含有し得る。特定の組織に対する抗体がその組織を結合し得、そして結合後に、その組織への膠のより堅い接着を促進し得ることが、意図される。本明細書中において使用される場合、用語「抗体」とは、広義に、任意の免疫学的結合因子(例えば、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE)をいうことが意図される。一般に、IgGおよび/またはIgMが好ましい。なぜなら、これらは、生理学的状況において最も通常の抗体であり、そして実験室の設定において最も容易に作製されるからである。
【0074】
用語「抗体」は、抗原結合領域を有する任意の抗体様分子をいうために使用され、そしてFab’、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、scFv(単鎖Fv)などのような抗体フラグメントを含む。種々の抗体に基づく構築物およびフラグメントを調製および使用するための技術は、当該分野において周知である。抗体を調製および特徴付けするための手段もまた、当該分野において周知である(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory、1988を参照のこと;本明細書中に参考として援用される)。
【0075】
事実上任意のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを含む成分が、本明細書中に開示される組成物および方法において使用され得ることが意図される。しかし、特定の実施形態において、タンパク様物質が生体適合性かつ/または薬学的に受容可能であることが、好ましい。本発明における使用のために適切なタンパク質およびペプチドは、自己由来のタンパク質またはペプチドであり得るが、本発明は、明らかに、このような自己由来のタンパク質の使用に限定されない。本明細書中において使用される場合、用語「自己由来のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチド」とは、生物由来であるかまたは生物から得られたタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをいう。従って、「自己由来のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチド」は、選択された動物またはヒト被験体への適用が意図される組成物の成分として、使用され得る。特定の局面において、自己由来のタンパク質またはペプチドは、例えば、選択されたドナー由来の生物学的サンプルから調製される。
【0076】
(E.エンドソーム因子)
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、組成物のエンドソーム取込みを改善し、そして/またはエンドソーム分解を減少させる因子を含有する。このような因子としては、塩基または緩衝剤として作用する因子(例えば、クロロキンまたは塩化アンモニウムなど)、エンドソーム膜を破壊する因子(例えば、フソジェニック(fusogenic)ペプチドなど)、あるいはこのような因子の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。フソジェニックペプチドとしては、IIAインフルエンザウイルスタンパク質または不活化されたアデノウイルスカプシドのN末端由来のペプチドが挙げられるが、これらに限定されない(米国特許第6,083,741号および同第5,908,777号、各々は、本明細書中に参考として援用される)。
【0077】
特定の実施形態において、エンドソーム因子は、トランスフェリン、アシアロオロソムコイド、インスリンまたはこれらの組み合わせのアミノ酸配列の全てまたは一部を含み得る(米国特許第5,792,645号および同第5,972,600号、本明細書中に参考として援用される)。
【0078】
(F.標的化因子)
特定の実施形態において、本明細書中に記載されるエアロゾル送達処方物は、細胞小器官、細胞、組織、器官または生物に対する、少なくとも1種の標的化因子を含有し得る。本明細書中に記載されるかまたは当業者に公知の任意の標的化因子が、本発明の組成物および方法において、単独でかまたは他の標的化因子と組み合わせて使用され得ることが、意図される。特定の実施形態において、標的化因子は、例えば、ポリカチオン、核酸、および/または他の組成物成分に結合され得る。
【0079】
特定の細胞、組織、器官および生物に分子を標的化するための種々の因子は、当業者に公知であり、そして本発明の方法および組成物において使用され得る。例えば、特定の実施形態において、標的化因子としては、EGF、トランスフェリン、抗前立腺特異的膜抗原抗体、内皮特異的ペプチドおよび骨特異的リガンドが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0080】
別の非限定的な実施例において、標的化因子は、抗体、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、リンホカイン、レセプタータンパク質(例えば、CD4、CD8またはその可溶性フラグメントなど)、塩基対相補性を介して対応する核酸を結合する核酸、またはそれらの組み合わせを含み得る(米国特許第6,071,533号、本明細書中に参考として援用される)。他の実施形態において、標的化リガンドは、細胞レセプター標的化リガンド、フソジェニックリガンド、核標的化リガンド、またはこれらの組み合わせを含み得る(米国特許第5,908,777号、本明細書中に参考として援用される)。別の非限定的な例において、標的化リガンドは、インテグリンレセプターリガンドを含み得る(米国特許第6,083,741号に記載、本明細書中に参考として援用される)。
【0081】
なおさらに、エアロゾル送達処方物を使用して、薬学的に受容可能な組成物を、標的細胞に、レセプターにより媒介される送達ビヒクルを介して送達し得る。これらは、標的細胞において起こる、レセプターにより媒介されるエンドサイトーシスによる、高分子の選択的取込みを利用する。種々のレセプターの細胞型特異的分布の観点から、この送達法は、本発明に別の程度の特異性を追加する。
【0082】
特定のレセプターにより媒介される核酸標的化ビヒクルは、細胞レセプター特異的リガンドおよび核酸結合因子を含有する。他のものは、送達される核酸が作動可能に結合している細胞レセプター特異的リガンドを含む。いくつかのリガンドが、レセプターにより媒介される核酸移入のために使用されており(WuおよびWu、1987;Wagnerら、1990;Peralesら、1994;Myers,EPO 0273085)、これは、この技術の作動性を確立する。別の哺乳動物細胞型の状況における特異的送達が、記載されている(WuおよびWu、1993;本明細書中に参考として援用される)。本発明の特定の局面において、リガンドは、標的細胞集団において特異的に発現されるレセプターに対応するように、選択される。
【0083】
(II.脂質)
本発明において、脂質処方物が、エアロゾル処方物において使用される。脂質とは、特徴的に水に不溶性であり、そして有機溶媒で抽出可能な物質である。脂質としては、例えば、細胞質中に天然に存在する脂肪の液滴を含む物質、ならびに長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体(例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、およびアルデヒド)を含む当業者に周知のクラスの化合物が挙げられる。もちろん、当業者によって脂質であると理解される、本明細書中に具体的に記載されるもの以外の化合物もまた、本発明の組成物および方法に包含される。
【0084】
脂質は、天然に存在し得るか、または合成(すなわち、人によって設計または生成)であり得る。しかし、脂質は、通常、生物学的物質である。生物学的脂質は、当該分野において周知であり、そして例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質(lysolipid)、グリコスフィンゴリピド、糖脂質、スルファチド、エーテル結合またはエステル結合した脂肪酸を有する脂質、重合性脂質、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0085】
(A.脂質の型)
脂肪は、グリセロールおよび脂肪酸を含み得る。代表的なグリセロールは、三炭素アルコールである。脂肪酸は、一般に、鎖の末端に酸性部分(例えば、カルボン酸)を有する炭素鎖を含む分子である。この炭素鎖は、任意の長さであり得る脂肪酸のものであり得るが、炭素鎖の長さは、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、またはそれより多くの炭素原子、およびその中で導き出され得る任意の範囲の炭素原子であるものが好ましい。しかし、好ましい範囲は、脂肪酸の鎖部分において約14〜約24個の炭素原子であり、約16〜約18個の炭素原子が、特定の実施形態において、特に好ましい。特定の実施形態において、脂肪酸の炭素鎖は、奇数の炭素原子を含み得るが、鎖における偶数の炭素原子が、特定の実施形態において好ましくあり得る。その炭素鎖中に単結合のみを含む脂肪酸は、飽和と称され、一方でその鎖中に少なくとも1つの二重結合を含む脂肪酸は、不飽和と称される。
【0086】
特定の脂肪酸としては、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、アラキジン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、リシノール酸、ツベルクロステリン酸(tuberculosteric acid)、ラクトバシリン酸(lactobacillic acid)が挙げられるがこれらに限定されない。1つ以上の脂肪酸の酸性基は、グリセロールの1つ以上のヒドロキシル基に共有結合で結合される。従って、モノグリセリドは、グリセロールおよび1つの脂肪酸を含み、ジグリセリドは、グリセロールおよび2つの脂肪酸を含み、そしてトリグリセリドは、グリセロールおよび3つの脂肪酸を含む。
【0087】
リン脂質は、一般的に、グリセロール部分またはスフィンゴシン部分のいずれか、イオン性ホスフェート基(両親媒性の化合物を生成するため)、および1つ以上の脂肪酸を含む。リン脂質の型としては、例えば、ホスホグリセリド(phophoglyceride)(ここでホスフェート基は、ジグリセリドのグリセロールの第1の炭素に連結される)およびスフィンゴリン脂質(例えば、スフィンゴミエリン)(ここでホスフェート基は、スフィンゴシンアミノアルコールに対してエステル化される)が挙げられる。スフィンゴリン脂質の別の例は、スルファチドであり、これは、イオン性スルフェート基を含み、この分子を両親媒性にする。リン脂質は、もちろん、さらなる化学基(例えば、ホスフェート基に結合されたアルコール)を含み得る。このようなアルコール基の例としては、セリン、エタノールアミン、コリン、グリセロールおよびイノシトールが挙げられる。従って、特定のホスホグリセリドとしては、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロールまたはホスファチジル(phosphotidyl)イノシトールが挙げられる。他のリン脂質としては、ホスホコリン、ホスファチジン酸またはジアセチルホスフェートが挙げられる。1つの局面において、ホスファチジルコリンは、ジオレオイルホスファチジルコリン(カルジオリピン(cardiolipin)としても知られる)、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、モノミリストイルホスファチジルコリン、モノパルミトイルホスファチジルコリン、モノステアロイルホスファチジルコリン、モノオレオイルホスファチジルコリン、ジブチリル(dibutroyl)ホスファチジルコリン、ジバレロイルホスファチジルコリン、ジカプロイルホスファチジルコリン、ジヘプタノイルホスファチジルコリン、ジカプリロイルホスファチジルコリンまたはジステアロイルホスファチジルコリンを含む。
【0088】
糖脂質は、スフィンゴリン脂質(sphinogophospholipid)と関連するが、ホスフェート基ではなく、スフィンゴシンの1級ヒドロキシル基に結合した炭水化物基を含む。セレブロシドと呼ばれる糖脂質の型は、1級ヒドロキシル基に結合した1つの糖基(例えば、グルコースまたはガラクトース)を含む。糖脂質の別の例は、ガングリオシド(例えば、モノシアロガングリオシド、GM1)であり、これは、約2個、約3個、約4個、約5個、約6個〜約7個またはそのくらいの糖基を含み、分岐鎖にあってもよく、1級ヒドロキシ基に結合される。他の実施形態において、糖脂質は、セラミド(例えば、ラクトシルセラミド)である。
【0089】
ステロイドは、4つのメンバーの環系のフェナントレンの誘導体である。ステロイドは、しばしば細胞、組織および生物において調節機能を有し、そしてこれらとしては、例えば、ホルモン、ならびにプロゲストゲン(progestagen)ファミリー(例えば、プロゲステロン)、グルココルチコイド(glucoricoid)ファミリー(例えば、コルチソル)、ミネラロコルチコイドファミリー(例えば、アルドステロン)、アンドロゲンファミリー(例えば、テストステロン)およびエストロゲンファミリー(例えば、エストロン)の関連化合物が挙げられる。コレステロールは、ステロイドの別の例であり、そして一般的には調節機能よりも構造的機能に役立つ。ビタミンDは、ステロールの別の例であり、そして腸からのカルシウム吸収に関与する。
【0090】
テルペンは、1つ以上の5炭素イソプレン基を含む脂質である。テルペンは、種々の生物学的機能を有し、そして例えば、ビタミンA,補酵素Qおよびカロテノイド(例えば、リコピンおよびβ−カロテン)を含む。
【0091】
(B.カチオン性脂質組成物)
本発明の好ましい脂質は、カチオン性脂質であり、カチオン性脂質および中性脂質の両方を含む脂質組成物もまた企図される。Felgnerらによる1987年の、カチオン性脂質を用いた首尾よいインビトロでのトランスフェクションの最初の記述以来、合成遺伝子送達系の適用において重要な進歩があった。この進歩の1つの局面は、新しいカチオン性脂質の合成である(Wheelerら;1996、Leeら、1996(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。カチオン性リン脂質は、本発明による脂質組成物を調製するために使用され得る。非限定的な例において、ステアリルアミンは正電荷を脂質組成物に与えるために使用され得る。
【0092】
本発明のエアロゾル処方における使用のために好ましいカチオン性脂質としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリン(例えば、ジパルミトイルグリセロ−エチルホスホコリン(DPEPC)、DSEPC、DMEPC、DLEPC、DOEPCまたはパルミトイル−オレイル−EPC)、ジアシル−ジメチルアンモニウムプロパン(例えば、DSDAP、DPDAP、DMDAP、またはDODAP)、ジアシル−トリメチルアンモニウムプロパン(例えば、DSTAP、DPTAP、DMTAP、またはDOTAP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、N−[1−(2,3−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、DOSPA、3−β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル(carbamoly)]コレステロール(DC−Chol)、3−β−[N−(N,N−ジカルボベンズオキシスペルミジン(dicarbobenzoxyspemidine))カルバモイル]コレステロール、または3−β−(N−スペルミン(spemine)カルバモイル)コレステロール。
【0093】
(C.脂質の作製)
脂質は、当業者に公知であるように、天然供給源、市販供給源から得られ得るか、または化学的に合成され得る(例えば、WO90/11092を参照のこと)。例えば、リン脂質は、天然供給源(例えば、卵もしくはダイズのホスファチジルコリン、脳のホスファチジン酸(phosphatidic acid)、脳または植物のホスファチジルイノシトール、心臓カルジオリピンおよび植物または細菌のホスファチジルエタノールアミン)由来であり得る。別の例において、本発明に従う使用に適切な脂質は、市販供給源から得られ得る。特定の実施形態において、クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は、約−20℃で保存され得る。好ましくは、クロロホルムは、唯一の溶媒として使用される。なぜなら、クロロホルムは、メタノールよりも容易にエバポレートされるからである。
【0094】
(D.脂質組成物構造)
脂質に会合する酵素またはポリペプチド(例えば、CPT I)は、脂質を含む溶液中に分散されていても、脂質に溶解されていても、脂質と共に乳化されていても、脂質と混合されていても、脂質に結合されていても、脂質に共有結合されていても、脂質中に懸濁液として含まれていても、それ以外に脂質と会合していてもよい。本発明の脂質会合組成物または脂質/酵素会合組成物は、任意の特定の構造に限定されない。例えば、これらはまた、溶液中に均一に散在し得、恐らく、大きさまたは形態のいずれかにおいて均一でない凝集体を形成し得る。別の例において、これらは、二分子膜構造においてミセルとしてまたは、「崩壊」構造で存在し得る。別の非限定の例において、リポフェクタミン(Gibco BRL)−酵素複合体またはSuperfect(Qiagen)−酵素複合体もまた企図される。
【0095】
特定の実施形態において、脂質組成物は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%またはそれらの導き出せる任意の範囲の、特定の脂質、脂質型または非脂質成分(例えば、薬物、タンパク質、糖、核酸または当業者に公知もしくは本明細書中に開示される他の物質)を含み得る。従って、本発明の脂質組成物は、任意の組み合わせまたは任意の範囲のパーセンテージの、任意の脂質、脂質型または他の成分を含み得る。
【0096】
(E.エマルジョン)
脂質は、エマルジョンに含まれ得る。脂質エマルジョンとは、機械的な撹拌または乳化剤として公知の少量の追加物質による、通常互いに溶解しない2つ以上の液体の、実質的に不変の異質な液体混合物である。脂質エマルジョンを調製するための方法および追加成分を添加する方法は、当該分野において周知である(例えば、Bakerら、1990(本明細書中に参考として援用される))。
【0097】
例えば、1種類以上の脂質が、エタノールまたはクロロホルムまたは任意の適当な他の溶媒に添加され、そして手動または機械的技術によって撹拌される。次いで、この溶媒は、この混合物からエバポレートされ、乾燥グレーズ状の脂質が残る。この脂質は、水性媒体(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)に再溶解され、エマルジョンを生じる。乳化された脂質のより均一なサイズの分配を達成するために、この混合物は、慣用の超音波処理技術を用いて超音波処理され得、さらにミクロな流体化(microfluidization)を用いて(例えば、Microfluidizer、Newton、Massを用いて)乳化され得、そして/または押出し成形機(Lipex Biomembranes、Vancouver、Canada)を用いて高圧下(例えば、600psi)で押し出され得る。
【0098】
(F.ミセル)
脂質は、ミセルに含まれ得、ミセルは、さらに、CPTIのようなタンパク質を含み得る。ミセルとは、一般的に脂質モノレイヤー形態の、脂質化合物のクラスターまたは凝集物であり、当業者に公知の任意のミセル作製プロトコルを用いて調製され得る(例えば、Canfieldら、1990;El−Gorabら、1973;Shinodaら、1963;およびFendlerら、1975(各々、本明細書中に参考として援用される))。例えば、1つ以上の脂質は、代表的に、有機溶媒中の懸濁液を作製され、その溶媒は、エバポレートされ、その脂質は、水性媒体中に再懸濁され、超音波処理され、次いで遠心分離される。
【0099】
(G.リポソーム)
特定の実施形態において、この脂質は、リポソームを含む。「リポソーム」とは、包理された脂質二分子膜または凝集物の作製により形成される種々の単層脂質ビヒクルおよびマルチラメラ脂質ビヒクルを包含する一般的な用語である。タンパク質およびリポソームの組み合わせは、「プロテオリポソーム(proteoliposome)として特徴付けられ得る。従って、リポソーム中のCPT Iは、「プロテオリポソームCPT I」として示され得る。リポソームは、二分子膜膜および内部媒体を有するベシクル構造を有すると特徴付けられ得、この二分子膜膜は、一般的にリン脂質を含み、この内部媒体は、水性組成物を含む。
【0100】
マルチラメラリポソームは、水性媒体により区切られた複数の脂質層を有する。リン脂質を含む脂質が、過剰の水溶液中に懸濁される場合、このマルチラメラリポソームは、自発的に形成される。この脂質成分は、閉構造の形成の前に、自己再配置に供されそして脂質二分子膜の間の水および溶解された溶質を閉じ込める(GhoshおよびBachhawat、1991)。親油性分子または親油性領域を有する分子もまた、脂質二分子膜中に溶解され得るか、またはそれと会合する。
【0101】
特定の局面において、脂質および/またはCPT Iは、例えば、リポソームの水性の内部に包まれ得、リポソームの脂質二分子膜内に散在され得、リポソームおよびCPT Iの両方に会合する結合分子を介してリポソームに結合され得、リポソーム中に閉じ込めら得、リポソームと複合体化し得る、などをし得る。
【0102】
(H.リポソームの作製)
本発明に従い用いられるリポソームは、当業者に知られているような異なる方法によって作製され得る。
【0103】
リポソームは、容器(例えば、ガラス製、洋ナシ型フラスコ)中で、溶媒中の脂質を混合することにより調製され得る。この容器は、予想されるリポソームの懸濁物の容量より10倍多い容量を有するべきである。ロータリーエバポレーターを用いて、この溶媒を、減圧下、約40℃で除去した。この溶媒は、通常、リポソームの所望の容量に依存して、約5分〜約2時間以内で除去される。この組成物は、真空下のデシケーター中でさらに乾燥され得る。この乾燥脂質は、一般的に、時間と共に劣化する傾向に起因して、約1週間後に廃棄される。
【0104】
乾燥脂質は、全ての脂質膜が再懸濁されるまで回転させることによって、滅菌され発熱源を含まない水中の約25〜50mMのリン脂質で水和され得る。次いで、水和したリポソームは、アリコートに分割され、各々バイアルに入れられ、親油化され、そして真空下でシールされる。
【0105】
他の代替的方法において、リポソームは、他の公知の実験室的手順(例えば、Banghamら、1965;Gregoriadis、1979;DeamerおよびUster 1983;SzokaおよびPapahadjopoulos、1978(各々、その関連する部分が、本明細書中に参考として援用される))に従って調節され得る。これらの方法は、これらの夫々が水性物質を閉じ込める能力およびこれらの各々の脂質に対する水性空間の比率において異なる。
【0106】
上記のように調製された乾燥脂質または親油性リポソームは、脱水され得そして阻害性ペプチドの溶液中で再構成され得、そして適切な溶媒(例えば、DPBS)を用いて適切な濃度に希釈され得る。次いで、この混合物は、ボルテックスミキサー中で激しく振盪される。
【0107】
包まれていない追加物質(例えば、ホルモン、薬物、核酸構築物などが挙げられるがこれらに限定されない薬剤)は、29,000×gでの遠心分離により除去され、そしてこのリポソームペレットは、洗浄される。この洗浄されたリポソームは、適当な総リン脂質濃度(例えば、約50〜200mM)で再懸濁される。包まれている追加物質または活性な薬剤の量は、標準法に従い、決定され得る。リポソーム調製物中に包まれている追加物質または活性な薬剤の量の決定の後、このリポソームは、適切な濃度まで希釈され得、そして4℃で使用まで保存され得る。リポソームを含む薬学的組成物は、通常、滅菌の、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤(例えば、水または生理食塩水溶液)を含み得る。
【0108】
リポソームの大きさは、合成の方法に依存して、異なる。本発明におけるリポソームは、種々の大きさであり得る。特定の実施形態において、このリポソームは、小さい(例えば、外径100nm未満、外径90nm未満、外径80nm未満、外径70nm未満、外径60nm未満、または外径50nm未満)。そのようなリポソームの調製において、本明細書中に記載される任意のプロトコルまたは当業者に知られているようなプロトコルが用いられ得る。リポソームの調製のさらなる非限定の例は、以下に記載される:米国特許第4,728,578号、同第4,728,575号、同第4,737,323号、同第4,533,254号、同第4,162,282号、同第4,310,505号、および同第4,921,706号;国際出願PCT/US85/01161およびPCT/US89/05040;英国特許出願GB2193095 A;Mayerら、1986;Hopeら、1985;Mayhewら、1987;Mayhewら、1984;Chengら、1987;およびLiposome Technology、1984(各々、本明細書中に参考として援用される)。
【0109】
水溶液中に懸濁されるリポソームは、一般的に、脂質二分子膜分子の1つ以上の同心の層を有する、球状ベシクルの形態である。各々の層は、式XYにより表される同方向の分子からなり、ここでXは、親水部分であり、そしてYは疎水部分である。水性懸濁液中で、この同心の層は、この親水部分が水層に接触しているままである傾向にあり、かつ疎水部分が自己会合する傾向にあるように配置される。例えば、水層がこのリポソームの内側および外側の両方に存在する場合、この脂質分子は、配置XY−YXの、ラメラとして知られている、二分子膜を形成し得る。1より多い脂質分子の親水部分および疎水部分の脂質の会合が、互いに会合する場合、脂質の凝集物を形成し得る。これらの凝集物の大きさおよび形態は、多くの異なる変数(例えば、溶媒の性質および溶液中の他の化合物の存在)に依存する。
【0110】
脂質処方物の作製は、しばしば、以下の工程の後の、リポソーム混合物の超音波処理または連続的な押し出しにより達成される:(I)逆層エバポレーション(II)脱水−再水和(III)界面活性剤透析(detergent dialysis)および(IV)薄層水和。1つの局面において、特定の実施形態においてリポソームを調製するために企図される方法は、加熱超音波処理(heating sonication)、および減少するポアサイズのフィルターまたは膜を通しての脂質の連続的押し出しであり、これにより、小さく、安定なリポソーム構造の形成を生じる。この調製は、適切かつ均一な大きさのリポソーム/ポリペプチドまたは単独のリポソームを生成し、これらのリポソーム/ポリペプチドまたは単独のリポソームは、構造的に安定であり、そして最大の活性を生じる。そのような技術は、当業者に周知である(例えば、Martin、1990を参照のこと)。当然、リポソーム調製の任意の他の方法は、当業者によって用いられ得、本発明において所望のリポソーム処方物を得ることを可能とする。
【0111】
(I.脂質媒介送達)
インビトロにおける外来DNAの脂質媒介核酸送達および発現は、非常に成功している(NicolauおよびSene,1982;Fraleyら,1979;Nicolauら,1987)。Wongら(1980)は、培養ヒヨコ胚、Hela細胞および肝癌細胞における外来DNAの脂質媒介送達および発現の可能性を実証している。脂質に基づく非ウイルス処方物は、アデノウイルス遺伝子治療の代替を提供する。多くの細胞培養研究が、脂質に基づく非ウイルス遺伝子移入を文書化しているが、脂質に基づく処方物を介した全身性遺伝子送達は限定されている。非ウイルスの脂質に基づく遺伝子送達の主要な限定要因は、非ウイルス送達ビヒクルを含むカチオン性脂質の低い送達効率である。リポソームのインビボ毒性は、インビトロ遺伝子移入の結果とインビボ遺伝子移入の結果との間の矛盾を一部説明する。この矛盾したデータの原因となる別の要因は、血清タンパク質の存在および非存在下での脂質ビヒクル安定性における差異である。脂質ビヒクルと血清タンパク質との間の相互作用は、脂質ビヒクルの安定性特徴に対して劇的な影響を有する(YangおよびHuang,1997)。カチオン性脂質は、負に荷電した血清タンパク質を誘引し、そしてこれに結合する。血清タンパク質と会合する脂質ビヒクルは、溶解するか、またはマクロファージによって取り込まれて、循環中から除去される。現在のインビボ脂質送達方法は、皮下注射、皮内注射、腫瘍内注射、または頭蓋内注射を使用して、循環中のカチオン性脂質と関連する全身性の毒性問題および安定性問題を回避している。脂質ビヒクルと血漿タンパク質との間の相互作用は、インビトロ遺伝子移入の効率(Felgnerら,1987)およびインビボ遺伝子移入の効率(Zhuら,1993;Philipら,1993;Solodinら,1995;Liuら,1995;Thierryら,1995;Tsukamotoら,1995;Aksentijevichら,1996)との間の矛盾の説明となる。
【0112】
(III.エアロゾル送達処方物)
エアロゾルは、ガスおよび個々の粒子(固体形態または液体形態のいずれか)を含む2相系である(Swift,D.L.,1985)。このエアロゾルは、癌および他の肺関連疾患の処置および/または予防のために、気管、咽頭、気管支などに薬学的に受容可能な組成物を送達するために使用され得る。このエアロゾル送達はまた、肺における薬学的薬剤の吸着を介した、血流への薬学的に受容可能な組成物の送達のために使用され得る。これは、胃と比較して、肺の非常に広い表面積からの血液中への迅速な吸着に起因して、有利であり得る。さらに、胃で破壊される薬学的に活性な薬剤は、本発明のエアロゾル送達処方物によって投与され得る。
【0113】
吸入の際に、エアロゾルは、気管を通過し、気管は、気管支ネットワークを構成する小さい管に連続的に17回より多く枝分かれし、最終的に肺胞として公知の小さな肺胞嚢のブドウ状クラスターに達する。気道の各呼吸は、肺胞上皮へと肺組織の深くに分配され、この肺胞上皮の表面積は、成体において約100m2と測定される(これは、おおよそ標準的なテニスコート一面の表面積に等価である)。この広い面積は、5億個の肺胞から作製され、この肺胞から、酸素が広範な毛細血管ネットワークを介して血流へと通過する。肺を介した化合物の送達に対する障壁は、肺上皮として公知の、きっちりと固められた単一細胞の厚い層である。肺において、気道の上皮は、肺胞の上皮と非常に異なる。厚い繊毛のある粘液で覆われた細胞が、気道の表面に並ぶが、上皮細胞層は、きっちりと固められた肺胞上皮に達するまで、肺のより深くへと達するにつれまばらになる。ほとんどのタンパク質吸収は肺胞で生じ、この肺胞において体は、ペプチドおよびタンパク質をトランスサイトーシスとして公知の天然のプロセスによって血流中に吸収する(http://pubs.acs.org/hotartcl/chemtech/97/dec/deep.htm)。
【0114】
本発明の処方物は、適切な方法によって肺に導入される。このエアロゾルは、マウスピース、フェースマスクなどを介してエアロゾルを送達するように設計された医療噴霧器系によって生成され得る。種々の噴霧器が、当該分野で公知である(例えば、米国特許第4,268,460号、米国特許第4,253,468号、米国特許第4,046,146号、米国特許第4,649,911号、米国特許第4,510,929号、米国特許第4,627,432号、米国特許第6,089,228号、および米国特許第6,138,668号(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される)に記載される噴霧器)。
【0115】
エアロゾル処方物は、小さい薬物分子および大きい薬物分子のいずれかをカプセル化するために使用され得る。このエアロゾル処方物はまた、1時間未満、約1時間未満、約2時間未満、約3時間未満、約4時間未満、約5時間未満、約6時間未満、約7時間未満、約8時間未満、約9時間未満、約10時間未満、約11時間未満、約12時間未満、約13時間未満、約14時間未満、約15時間未満、約16時間未満、約17時間未満、約18時間未満、約1日未満、約2日未満、約3日未満、約4日未満、約5日未満、約6日未満、約7日未満、約8日未満、約9日未満、約10日未満、約12日未満、約13日未満、約14日未満、約15日未満、約16日未満、約17日未満、約18日未満、約1ヶ月未満、約2ヶ月未満、約3ヶ月未満、約4ヶ月未満、約5ヶ月未満、約6ヶ月未満、約7ヶ月未満、約8ヶ月未満、約9ヶ月未満、約10ヶ月未満、約11ヶ月未満、約1年未満、約2年未満、約3年未満、約4年未満、またはこれらの中の任意の期間、からの範囲の期間にわたって、カプセル化された薬物の制御された放出のために使用され得る。
【0116】
エアロゾル処方物は、その処方物が、エアロゾル送達と関連する剪断力およびエアロゾル送達および肺への沈着と関連する極度な条件から薬学的組成物を保護し得るように、開発される。
【0117】
薬物を肺の種々の組織に標的化する際に、送達される粒子のサイズが、適切なサイズの範囲を得るために変更されることは、当該分野で公知である。大きい粒子は、一般的に、気道または鼻咽腔に沈着され、一方、小さい粒子は、肺のより深くへ送達される。約10μm、7μm、5μm、2μm、1μm、0.5μm、0.1μm、または0.05μm未満の平均直径を有する小さい粒子が、肺への送達に好ましい。大きい粒子は、肺胞に達しない。気道への送達に関して、約20μm、10μm、または5μm未満の平均直径を有する大きい粒子が、好ましくあり得る。この粒子は、固形または液滴のいずれかを含み得る。噴霧器における懸濁物中の粒子サイズは、好ましくは0.05μmと3.0μmとの間である。
【0118】
患者への送達のための処方物を考慮する場合に重要な考慮事項は、処方物の毒性である。多くのエアロゾル処方物が、DNAを保護するためおよび安定性を増大するために作製されているが、これは、一般的に、高い毒性を有する組成物を導く(Bousiffら、1995;Boussifら、1996)。
【0119】
(IV.ポリカチオンポリマー、カチオン性脂質および他の組成物の組み合わせ)
特定の実施形態において、望ましい組成物は、以下のうちの2つ以上の組み合わせを含むことが意図される:ポリカチオンポリマー、脂質、カチオン性脂質、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、核酸、および薬学的に受容可能な成分。この成分の各々は、他のものと異なる濃度であり得(高い濃度または低い濃度のいずれか)、望ましい組成物は、本明細書中に記載される方法の適用によって生成され得る。
【0120】
従って、本発明の特定の実施形態において、ポリカチオンポリマー、脂質、カチオン性脂質、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、核酸、または薬学的に受容可能な成分のうちの1つの濃度の比率は、他の成分のいずれかと組み合わされ得る。この比率は、約1:1、約1.1:1、約1.2:1、約1.3:1、約1.4:1、約1.5:1、約1.6:1、約1.7:1、約1.8:1、約1.9:1、約2.0:1、約2.1:1、約2.2:1、約2.3:1、約2.4:1、約2.5:1、約2.6:1、約2.7:1、約2.8:1、約2.9:1、約3.0:1、約3.1:1、約3.2:1、約3.3:1、約3.4:1、約3.5:1、約3.6:1、約3.7:1、約3.8:1、約3.9:1、約4.0:1、約4.1:1、約4.2:1、約4.3:1、約4.4:1、約4.5:1、約4.6:1、約4.7:1、約4.8:1、約4.9:1、約5.0:1、約5.1:1、約5.2:1、約5.3:1、約5.4:1、約5.5:1、約5.6:1、約5.7:1、約5.8:1、約5.9:1、約6.0:1、約6.1:1、約6.2:1、約6.3:1、約6.4:1、約6.5:1、約6.6:1、約6.7:1、約6.8:1、約6.9:1、約7.0:1、約7.1:1、約7.2:1、約7.3:1、約7.4:1、約7.5:1、約7.6:1、約7.7:1、約7.8:1、約7.9:1、約8.0:1、約8.1:1、約8.2:1、約8.3:1、約8.4:1、約8.5:1、約8.6:1、約8.7:1、約8.8:1、約8.9:1、約9.0:1、約9.1:1、約9.2:1、約9.3:1、約9.4:1、約9.5:1、約9.6:1、約9.7:1、約9.8:1、約9.9:1、約10.0:1、約10.1:1、約10.2:1、約10:3:1、約10.4:1、約10.5:1、約10.6:1、約10.7:1、約10.8:1、約10.9:1、約11.0:1、約11.1:1、約11.2:1、約11.3:1、約11.4:1、約11.5:1、約11.6:1、約11.:1、約11.8:1、約11.9:1、約12.0:1、約12.2:1、約12.3:1、約12.4:1、約12.5:1、約12.6:1、約12.7:1、約12.8:1、約12.9:1、約13.0:1、約13.1:1、約13.2:1、約13.3:1、約13.4:1、約13.5:1、約13.6:1、約13.7:1、約13.8:1、約13.9:1、約14.0:1、約14.1:1、約14.2:1、約14.3:1、約14.4:1、約14.5:1、約14.6:1、約14.7:1、約14.8:1、約14.9:1、約15.0:1、約15.1:1、約15.2:1、約15.3:1、約15.4:1、約15.5:1、約15.6:1、約15.7:1、約15.8:1、約15.9:1、約16.0:1、約16.1:1、約16.2:1、約16.3:1、約16.4:1、約16.5:1、約16.6:1、約16.7:1、約16.8:1、約16.9:1、約17.0:1、約17.1:1、約17.2:1、約17.3:1、約17.4:1、約17.5:1、約17.6:1、約17.7:1、約17.8:1、約17.9:1、約18.0:1、約18.1:1、約18.2:1、約18.3:1、約18.4:1、約18.5:1、約18.6:1、約18.7:1、約18.8:1、約18.9:1、約19.0:1、約19.1:1、約19.2:1、約19.3:1、約19.4:1、約19.5:1、約19.6:1、約19.7:1、約19.8:1、約19.9:1、約20.0:1、約50:1、約100:1、約500:1、約1,000:1、約5,000:1、約10,000:1、約100,000:1、約1,000,000:1またはこれらより上、およびこれらの中に誘導可能な任意の整数、およびこれらの中に誘導可能な任意の範囲であり得る。このような誘導可能な範囲の非限定的な例において、この濃度比率は、約6.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の非限定的な例において、この濃度比率は、約1:6.0未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約1.4:1〜約6.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約1.4:1〜約5.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約4.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約1.4:1〜約3.5:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約1.4:1〜約3.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約2:1〜約3.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約5.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約4.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約3.5:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の別の非限定的な例において、この濃度比率は、約3.0:1未満であり得る。
【0121】
従って、本発明のある実施形態において、他の成分を含有する別の液体培地と組み合わされた、ポリカチオンポリマーまたは核酸のいずれか一方を含有する液体組成物(例えば、溶液、乳濁液、懸濁液など)の容積の比は、約1.4:1、約1.5:1、約1.6:1、約1.7:1、約1.8:1、約1.9:1、約2.0:1、約2.1:1、約2.2:1、約2.3:1、約2.4:1、約2.5:1、約2.6:1、約2.7:1、約2.8:1、約2.9:1、約3.0:1、約3.1:1、約3.2:1、約3.3:1、約3.4:1、約3.5:1、約3.6:1、約3.7:1、約3.8:1、約3.9:1、約4.0:1、約4.1:1、約4.2:1、約4.3:1、約4.4:1、約4.5:1、約4.6:1、約4.7:1、約4.8:1、約4.9:1、約5.0:1、約5.1:1、約5.2:1、約5.3:1、約5.4:1、約5.5:1、約5.6:1、約5.7:1、約5.8:1、約5.9:1、約6.0:1、約6.1:1、約6.2:1、約6.3:1、約6.4:1、約6.5:1、約6.6:1、約6.7:1、約6.8:1、約6.9:1、約7.0:1、約7.1:1、約7.2:1、約7.3:1、約7.4:1、約7.5:1、約7.6:1、約7.7:1、約7.8:1、約7.9:1、約8.0:1、約8.1:1、約8.2:1、約8.3:1、約8.4:1、約8.5:1、約8.6:1、約8.7:1、約8.8:1、約8.9:1、約9.0:1、約9.1:1、約9.2:1、約9.3:1、約9.4:1、約9.5:1、約9.6:1、約9.7:1、約9.8:1、約9.9:1、約10.0:1、約10.1:1、約10.2:1、約10.3:1、約10.4:1、約10.5:1、約10.6:1、約10.7:1、約10.8:1、約10.9:1、約11.0:1、約11.1:1、約11.2:1、約11.3:1、約11.4:1、約11.5:1、約11.6:1、約11.:1、約11.8:1、約11.9:1、約12.0:1、約12.2:1、約12.3:1、約12.4:1、約12.5:1、約12.6:1、約12.7:1、約12.8:1、約12.9:1、約13.0:1、約13.1:1、約13.2:1、約13.3:1、約13.4:1、約13.5:1、約13.6:1、約13.7:1、約13.8:1、約13.9:1、約14.0:1、約14.1:1、約14.2:1、約14.3:1、約14.4:1、約14.5:1、約14.6:1、約14.7:1、約14.8:1、約14.9:1、約15.0:1、約15.1:1、約15.2:1、約15.3:1、約15.4:1、約15.5:1、約15.6:1、約15.7:1、約15.8:1、約15.9:1、約16.0:1、約16.1:1、約16.2:1、約16.3:1、約16.4:1、約16.5:1、約16.6:1、約16.7:1、約16.8:1、約16.9:1、約17.0:1、約17.1:1、約17.2:1、約17.3:1、約17.4:1約17.5:1、約17.6:1、約17.7:1、約17.8:1、約17.9:1、約18.0:1、約18.1:1、約18.2:1、約18.3:1、約18.4:1、約18.5:1、約18.6:1、約18.7:1、約18.8:1、約18.9:1、約19.0:1、約19.1:1、約19.2:1、約19.3:1、約19.4:1、約19.5:1、約19.6:1、約19.7:1、約19.8:1、約19.9:1、約20.0:1、約50:1、約100:1、約500:1、約1,000:1、約5,000:1、約10,000:1、約100,000:1、約1,000,000:1またはより大きな比であり得、そして、この中から誘導可能な任意の整数であり得、そしてこの中から誘導可能な任意の範囲であり得る。このような誘導可能な範囲の非限定的な例において、核酸を含む液体培地の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積の比は、約6.0:1未満であり得る。このような誘導可能な範囲の非限定的な例において、核酸を含む液体培地の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約1:6.0未満であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約1.4:1〜約6.0:1の間であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約1.4:1〜約5.0:1の間であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約1.4:1〜約4.0:1の間であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約1.4:1〜約3.5:1の間であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約1.4:1〜約3.0:1の間であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約2:1〜約3.0:1の間であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約5.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約4.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約3.5:1未満であり得る。別の非限定的な例において、核酸を含む溶液の容積に対するポリカチオンポリマーを含む液体培地の容積は、約3.0:1未満であり得る。
【0122】
本発明の他の実施形態において、核酸のアニオン部分と結合したポリカチオンのカチオン部分またはカチオン残基の比(あるいはその逆の比(visa verceは、1:1、約1.1:、約1.2:1、約1.3:1、約1.4:1、約1.5:1、約1.6:1、約1.7:1、約1.8:1、約1.9:1、約2.0:1、約2.1:1、約2.2:1、約2.3:1、約2.4:1、約2.5:1、約2.6:1、約2.7:1、約2.8:1、約2.9:1、約3.0:1、約3.1:1、約3.2:1、約3.3:1、約3.4:1、約3.5:1、約3.6:1、約3.7:1、約3.8:1、約3.9:1、約4.0:1、約4.1:1、約4.2:1、約4.3:1、約4.4:1、約4.5:1、約4.6:1、約4.7:1、約4.8:1、約4.9:1、約5.0:1、約5.1:1、約5.2:1、約5.3:1、約5.4:1、約5.5:1、約5.6:1、約5.7:1、約5.8:1、約5.9:1、約6.0:1、約6.1:1、約6.2:1、約6.3:1、約6.4:1、約6.5:1、約6.6:1、約6.7:1、約6.8:1、約6.9:1、約7.0:1、約7.1:1、約7.2:1、約7.3:1、約7.4:1、約7.5:1、約7.6:1、約7.7:1、約7.8:1、約7.9:1、約8.0:1、約8.1:1、約8.2:1、約8.3:1、約8.4:1、約8.5:1、約8.6:1、約8.7:1、約8.8:1、約8.9:1、約9.0:1、約9.1:1、約9.2:1、約9.3:1、約9.4:1、約9.5:1、約9.6:1、約9.7:1、約9.8:1、約9.9:1、約10.0:1、約10.1:1、約10.2:1、約10:3:1、約10.4:1、約10.5:1、約10.6:1、約10.7:1、約10.8:1、約10.9:1、約11.0:1、約11.1:1、約11.2:1、約11.3:1、約11.4:1、約11.5:1、約11.6:1、約11.:1、約11.8:1、約11.9:1、約12.0:1、約12.2:1、約12.3:1、約12.4:1、約12.5:1、約12.6:1、約12.7:1、約12.8:1、約12.9:1、約13.0:1、約13.1:1、約13.2:1、約13.3:1、約13.4:1、約13.5:1、約13.6:1、約13.7:1、約13.8:1、約13.9:1、約14.0:1、約14.1:1、約14.2:1、約14.3:1、約14.4:1、約14.5:1、約14.6:1、約14.7:1、約14.8:1、約14.9:1、約15.0:1、約15.1:1、約15.2:1、約15.3:1、約15.4:1、約15.5:1、約15.6:1、約15.7:1、約15.8:1、約15.9:1、約16.0:1、約16.1:1、約16.2:1、約16.3:1、約16.4:1、約16.5:1、約16.6:1、約16.7:1、約16.8:1、約16.9:1、約17.0:1、約17.1:1、約17.2:1、約17.3:1、約17.4:1、約17.5:1、約17.6:1、約17.7:1、約17.8:1、約17.9:1、約18.0:1、約18.1:1、約18.2:1、約18.3:1、約18.4:1、約18.5:1、約18.6:1、約18.7:1、約18.8:1、約18.9:1、約19.0:1、約19.1:1、約19.2:1、約19.3:1、約19.4:1、約19.5:1、約19.6:1、約19.7:1、約19.8:1、約19.9:1、約20.0:1、約50:1、約100:1、約500:1、約1,000:1、約5,000:1、約10,000:1、約100,000:1、約1,000,000:1またはより大きい比率であり得、そして、この中から誘導可能な任意の整数であり得、そしてこの中から誘導可能な任意の範囲であり得る。アニオン部分に対するカチオン部分の範囲の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数が、約6.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約1.4:1〜約6.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約1.4:1〜約5.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約1.4:1〜約4.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約1.4:1〜約3.5:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約1.4:1〜約3.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約2:1〜約3.0:1で未満あり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約5.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約4.0:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約3.5:1未満であり得る。別の非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約3.0:1未満であり得る。さらなる非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、約2.4:1〜2.7:1である。さらなる非限定的な例において、アニオン部分に対するカチオン部分の数は、1.5:1〜6:1である。
【0123】
ポリカチオンポリマー、カチオン性脂質、PEG、PEI、核酸、および薬学適に受容可能な因子を含有する組成物は、本明細書中に記載される方法のいずれかかまたは当業者に公知の任意の方法によって結合され得る。例えば、ポリカチオンポリマーを含有する組成物は、核酸を含有する組成物に加えられ得、核酸を含む組成物は、ポリカチオンを含む組成物に加えられ得、および/または両方の組成物は、互いに加えられ得る。加えられる種々のエアロゾル送達処方物の成分の他の非限定的な例が、本明細書中に記載される。
【0124】
(V.核酸組成物)
本発明のある実施形態は、精製された核酸に関する。ある局面において、精製された核酸は、野生型または変異体の核酸を含む。特定の局面において、核酸は、転写される核酸をコードするかまたは転写される核酸を含む。特定の局面において、核酸は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドをコードする。
【0125】
用語「核酸」は、当該分野で周知である。「核酸」と本明細書中で使用される場合、一般にDNA、RNAあるいは核酸塩基を含むこれらの誘導体またはアナログの分子(すなわち、鎖)のことをいう。核酸塩基は、例えば、天然に存在するプリン塩基またはピリミジン塩基を含み、これらはDNA中(例えば、アデニン「A」、グアニン「G」、チミン「T」またはシトシン「C」が)またはRNA中(例えば、A、G、ウラシル「U」またはCが)に見いだされる。用語「核酸」は、用語「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」の各々を、用語「核酸」の亜族として包含する。用語「オリゴヌクレオチド」は、約8ヌクレオチドと約100ヌクレオチドとの間の長さの分子のことをいう。用語「ポリヌクレオチド」は、約100ヌクレオチドの長さより長い少なくとも1つの分子のことをいう。
【0126】
これらの定義は、一般に一本鎖分子のことをいうが、特定の実施形態においては、一本鎖分子に対して、部分的に、実質的にまたは完全に相補的な付加的なストランドも包含する。従って、核酸は、1つ以上の相補的な鎖を含む二本鎖分子または三本鎖分子、あるいは分子を含む特定の配列の「相補体」を包含し得る。本明細書中で使用される場合、一本鎖核酸は、接頭語「ss」と記され得、二本鎖核酸は、接頭語「ds」そして三本鎖核酸は接頭語「ts」と記される。
【0127】
(A.核酸塩基)
本明細書中で使用される場合、「核酸塩基」とは、複素環塩基のことをいい、例えば、少なくとも1つの天然に存在する核酸(すなわちDNAおよびRNA)中に見出される天然に存在する核酸塩基(すなわち、A、T、G、CまたはU)、ならびにこのような核酸塩基の、天然に存在するかまたは天然には存在しない誘導体およびアナログである。核酸塩基は概して、少なくとも1つの天然に存在する核酸塩基と1つ以上の水素結合(「アニール」または「ハイブリダイズ」)を、天然に存在する核酸塩基対形成と置換され得る様式(例えば、AとTとの間、GとCとの間、および、AとUとの間の水素結合)で形成し得る。
【0128】
「プリン」核酸塩基および/または「ピリミジン」核酸塩基は、天然のプリン核酸塩基および/またはピリミジン核酸塩基、ならびにそれらの誘導体およびアナログを包含し、これには、1つ以上のアルキル部分、カルボキシル部分、アミノ部分、ヒドロキシル部分、ハロゲン(すなわち、フルオロ、クロロ、ブロモ、もしくはヨード)部分、チオール部分、またはアルキルチオ部分のうちの1つ以上によって置換されたプリンまたはピリミジンが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいアルキル(例えば、アルキル、カルボキシアルキルなど)部分は、約1個から、約2個、約3個、約4個、約5個、約6個までの炭素原子から構成される。プリンまたはピリミジンの他の非制限的な例としては、デアザプリン、2,6−ジアミノプリン、5−フルオロウラシル、キサンチン、ヒポキサンチン、8−ブロモグアニン、8−クロログアニン、ブロモチミン、8−アミノグアニン、8−ヒドロキシグアニン、8−メチルグアニン、8−チオグアニン、アザグアニン、2−アミノプリン、5−エチルシトシン、5−メチルシトシン、5−ブロモウラシル、5−エチウラシル、5−ヨードウラシル、5−クロロウラシル、5−プロピルウラシル、チオウラシル、2−メチルアデニン、メチルチオアデニン、N,N−ジメチルアデニン、アザアデニン、8−ブロモアデニン、8−ヒドロキシアデニン、6−ヒドロキシアミノプリン、6−チオプリン、4−(6−アミノヘキシル/シトシン)などが挙げられる。非限定的なプリンおよびピリミジンの誘導体およびアナログの表が、本明細書中の以下に提供される。
【0129】
【表3】
核酸塩基は、本明細書中に記載されるかまたは当業者に公知の任意の化学合成法または天然合成法を使用して、ヌクレオシドまたはヌクレオチドに構成され得る。
【0130】
(B.ヌクレオシド)
本明細書中で使用される場合、「ヌクレオシド」とは、ヌクレオシドリンカー部分に共有結合する核酸塩基を含む個々の化学単位をいう。「核酸塩基リンカー部分」の非制限的な例は、5−炭素原子を含む糖(すなわち、「5−炭素糖」)であり、これには、デオキシリボース、リボース、アラビノース、または5−炭素糖の誘導体もしくはアナログが挙げられる。5−炭素糖の誘導体またはアナログの非限定的な例としては、2’−フルオロ−2’−デオキシリボース、または炭素が糖環の酸素原子の代わりに使用される炭素環式糖が挙げられる。
【0131】
核酸塩基リンカー部分への核酸塩基の異なる型の共有結合が、当該分野において公知である。非限定的な例として、プリンを含むヌクレオシド(すなわち、AまたはG)、または7−デアザプリン核酸塩基は、代表的に、プリンまたは7−デアザプリンの9位を、5−炭素糖の1’位に共有結合する。別の非制限的な例として、ピリミジン核酸塩基を含むヌクレオシド(すなわち、C、T、またはU)は、代表的に、ピリミジンの1位を、5−炭素糖の1’位に共有結合する(KornbergおよびBaker、1992)。
【0132】
(C.ヌクレオチド)
本明細書中で使用される場合、「ヌクレオチド」とは、「骨格部分」をさらに含むヌクレオシドをいう。骨格部分は、一般的に、ヌクレオチドを、ヌクレオチドを含む別の分子、または核酸を形成するための別のヌクレオチドに共有結合する。「骨格部分」は、天然のヌクレオチドにおいて、代表的に、リン部分を含み、これは、5−炭素糖に共有結合する。骨格部分への結合は、代表的に、5−炭素糖の3’位または5’位のいずれかに存在する。しかし、他の型の結合が、特に、ヌクレオチドが、天然の5−炭素糖またはリン部分の誘導体またはアナログを含む場合、当該分野において公知である。
【0133】
(D.核酸アナログ)
核酸は、天然の核酸に存在し得る核酸塩基、核酸塩基リンカー部分および/または骨格部分の誘導体またはアナログから構成され得るか、あるいは全体的にこれらから構成され得る。本明細書中で使用される場合、「誘導体」とは、天然の分子の化学改変形態または変化形態をいうが、一方、用語「模倣物」または「アナログ」とは、天然に存在する分子または部分に構造的に似ているかまたは似ていないが、同様な機能を有する分子をいう。本明細書中で使用される場合、「部分」とは、一般的に、より大きな化学構造または分子構造のより小さな化学成分または分子成分をいう。核酸塩基、ヌクレオシドおよびヌクレオチドアナログまたは誘導体は、当該分野において周知であり、そして記載されている(例えば、本明細書中において、参考として援用される、Scheit、1980を参照のこと)。
【0134】
核酸アナログの非制限的な例は、「ポリエーテル核酸」(本明細書中において参考として援用される、米国特許第5,980,845号に記載される)である。ポリエーテル核酸において、1つ以上の核酸塩基が、ポリエーテル骨格にキラルな炭素原子に連結する。
【0135】
別の非限定的な例は、「ペプチド核酸」であり、これは、「PNA」、「ペプチドベースの核酸アナログ」または「PENAM」として公知であり、米国特許第5,786,461号、同第5,891,625号、同第5,773,571号、同第5,766,855号、同第5,736,336号、同第5,719,262号、同第5,714,331号、同第5,339,082号、およびWO92/20702(これらのそれぞれは、本明細書中において参考として援用される)に記載される。ペプチド核酸は、一般的に、DNAおよびRNAのような分子と比較して、向上した配列特異性、結合特性、および耐酵素消化性を有する(Egholmら、1993;PCT/EP/01219)。ペプチド核酸は、一般的に、核酸塩基部分、5−炭素糖でない核酸塩基リンカー部分、および/またはリン酸骨格部分でない骨格部分を含む1つ以上のヌクレオチドまたはヌクレオシドを含む。PNAについて記載される核酸塩基リンカー部分の例としては、アザ窒素原子、アミド、および/またはウレイドテザー(例えば、米国特許第5,539,082号を参照のこと)が挙げられる。PNAについて記載される骨格部分の例としては、アミノエチルグリシン骨格部分、ポリアミド骨格部分、ポリエチル骨格部分、ポリチオアミド骨格部分、ポリスルフィンアミド骨格部分またはポリスルホンアミド骨格部分が挙げられる。
【0136】
特定の実施形態において、ペプチド核酸のような核酸アナログは、米国特許第5,891,625号に記載されるように、核酸増幅(例えば、PCR)を阻害して、偽陽性を減少し、そして単一塩基変異間を区別するために使用され得る。核酸アナログの他の改変および使用は、当該分野において公知であり、そして本発明によって包含される。非限定的な例として、米国特許第5,786,461号は、分子の溶解性を向上させるために、PNA骨格に結合されるアミノ酸側鎖を有するPNAを記載する。別の例において、PNAの細胞取り込み特性は、親油性基の結合によって増加する。この例は、米国特許第5,766,855号、同第5,719,262号、同第5,714,331号、および同第5,736,336号に記載され、これは、天然の核酸と比較して、配列特異性、溶解性、および/または結合親和性において改善を提供する、天然および非天然の核酸塩基およびアルキルアミン側鎖を含むPNAを記載する。
【0137】
(E.核酸の調製)
核酸は、例えば、化学合成または組換え産生のような当業者に公知の任意の技術によって作製され得る。合成核酸(例えば、合成オリゴヌクレオチド)の非限定的な例としては、ホスホトリエステル、ホスファイトまたはホスホラミダイト化学およびEP266,032(本明細書中において参考として援用される)に記載されるような固相技術を使用するインビトロ化学合成によって、またはFroehlerら、1986および米国特許第5,705,629号(それぞれ、本明細書中において参考として援用される)に記載されるように、デオキシヌクレオシド H−ホスホネート中間体を介して作製される核酸を含む。酵素的に産生された核酸の非限定的な例としては、増幅反応(例えば、PCRTM)によって作製される核酸(例えば、米国特許第4,683,202号および米国特許第4,682,195号(これらの各々は、本明細書中において参考として援用される)または米国特許第5,645,897号(これらは、本明細書中において参考として援用される)に記載されるオリゴヌクレオチドの合成によって作製される核酸が挙げられる。生物学的に産生される核酸の非限定的な例としては、生きた細胞中で産生される(すなわち、複製される)組換え核酸(例えば、細菌中で複製される組換えDNAベクター)が挙げられる(例えば、本明細書中において参考として援用される、Sambrookら、1989を参照のこと)。
【0138】
(ベクター)
用語「ベクター」は、複製され得る細胞中に導入するために核酸配列が挿入され得るキャリア核酸分子をいうために使用される。核酸配列は、「外因性」であり得、これは、この配列が、ベクターが導入される細胞に対して外来であるか、またはその配列が細胞内の配列と相同であるが、その配列が通常見出されない宿主細胞核酸内の位置にあることを意味する。ベクターとしては、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、ならびに人工染色体(例えば、YAC)が挙げられる。当業者は、標準的な組換え技術によってベクターを構築するために十分に備えている(例えば、ともに、本明細書中において参考として援用される、Maniatisら、1988およびAusubelら、1994を参照のこと)。
【0139】
用語「発現ベクター」とは、転写され得るRNAをコードする核酸を含む任意の型の遺伝子構築物をいう。いくつかの場合において、次いで、RNA分子は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。他の場合において、これらの配列は、例えば、アンチセンス分子またはリボザイムの産生において翻訳されない。発現ベクターは、種々の「制御配列」を含み得、この制御配列とは、特定の宿主細胞において作動可能に連結されるコード配列の転写およびおそらく翻訳に必要な核酸配列をいう。転写および翻訳を支配する制御配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターは、他の機能もまた果たし、そして以下に記載される核酸配列を含み得る。
【0140】
(A.プロモーターおよびエンハンサー)
「プロモーター」は、転写の開始および速度を制御する核酸配列の領域である制御配列である。プロモーターは、調節タンパク質および分子(例えば、RNAポリメラーゼおよび他の転写因子)が、核酸配列の特異的な転写を開始するために、結合し得る遺伝子エレメントを含み得る。成句「作動可能に位置する」、「作動可能に連結する」、「制御下」および「転写制御下」とは、プロモーターが、その配列の転写開始および/または発現を制御するために、核酸配列に関して、正しい機能的配置および/または方向であることを意味する。
【0141】
プロモーターは、一般的に、RNA合成のための開始部位を位置付けるために機能する配列を含む。この最も知られた例は、TATAボックスであるが、いくつかのプロモーターにおいて、TATAボックスを欠いている(例えば、哺乳動物末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子に対するプロモーターおよびSV40後期遺伝子に対するプロモーター(開始部位自身を覆う別個のエレメントが、開始の位置を固定するのに役立つ)。さらなるプロモーターエレメントは、転写開始の頻度を調節する。代表的には、これらは、開始部位の30〜110bp上流の領域に配置されるが、多数のプロモーターが、この開始部位の下流にも機能的エレメントを含むことが示された。コード配列をプロモーターの「制御下」におくために、転写読み取り枠の転写開始部位の5’末端を、選択されたプロモーターの「下流」(すなわち、3’側)に位置付ける。「上流」プロモーターは、DNAの転写を刺激し、そしてコードされるRNAの発現を促進する。
【0142】
プロモーターエレメント間の間隔は、しばしば可撓性であり、その結果、エレメントが互いに関連して逆転または移動される場合、プロモーター機能は保存される。tkプロモーターにおいて、プロモーターエレメント間の間隔は、活性の減少が始まる前に、50bp離れるまで増加し得る。プロモーターに依存して、個々のエレメントが、転写を活性化するために協調的または独立的に機能し得ることは明らかである。プロモーターは、「エンハンサー」に結合して使用されても、使用されなくてもよく、これを、核酸配列の転写活性化に関連したシス作動性調節配列という。
【0143】
プロモーターは、コードセグメントおよび/またはエキソンの上流に位置する5’側非コード配列を単離することにより得られ得るような核酸配列と自然に結合するプロモーターであり得る。このようなプロモーターは「内因性」として称され得る。同様に、エンハンサーは、その配列の下流または上流のいずれかに位置される核酸配列と自然に結合するエンハンサーであり得る。あるいは、特定の利点が、組換えプロモーターまたは異種プロモーターの制御下でコード核酸セグメントを配置することによって得られ、このプロモーターを、天然の環境において核酸配列が通常結合しないプロモーターという。組換えエンハンサーまたは異種エンハンサーはまた、その天然環境において、通常、核酸配列に結合しないエンハンサーをいう。このようなプロモーターまたはエンハンサーとしては、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、および他の任意のウイルスまたは真核生物細胞もしくは原核生物細胞から単離されたプロモーターまたはエンハンサー、および「天然に存在しない」プロモーターまたはエンハンサー(すなわち、異なる転写調節領域の異なるエレメントおよび/または発現を変更する変異を含む)が挙げられ得る。例えば、組換えDNA構築において最も一般に使用されるプロモーターとしては、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)プロモーター系、ラクトースおよびトリプトファン(trp)プロモーター系が挙げられる。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列を合成的に生成することに加えて、配列は、本明細書中に開示される組成物と関連して、組換えクローニング技術および/または核酸増幅技術(PCRTMを含む)を用いて生成され得る(米国特許第4,683,202号および同第5,928,906号を参照のこと、これらの各々は本明細書中に参考として援用される)。さらに、核以外の細胞内小器官(例えば、ミトコンドリア、葉緑体など)内の配列の転写および/または発現を指向させる制御配列が、同様に使用され得ることが意図される。
【0144】
必然的に、発現のために選択される細胞内小器官、細胞型、組織、器官または生物におけるDNAセグメントの発現を、効果的に指向させるプロモーターおよび/またはエンハンサーを使用することは重要である。分子生物学分野の当業者は、一般的に、タンパク質発現のためのプロモーター、エンハンサーおよび細胞型の組み合わせの使用を理解する(Sambrookら、1989を参照のこと、本明細書中に参考として援用される)。使用されるプロモーターは、導入したDNAセグメントを高い発現レベルに指向させるために適切な条件下で構成的、組織特異的、誘導可能および/または有用であり得、例えば、組換えタンパク質および/またはペプチドの大規模な生成に有利である。プロモーターは異種または内因性であり得る。
【0145】
さらなる任意のプロモーター/エンハンサーの組み合わせ(例えば、Eukaryotic Promoter Data Base EPDB、http://www.epd.isb−sib.ch/)はまた、発現を駆動させるために使用され得る。T3、T7またはSP6の細胞質発現系の使用は、別の可能な実施形態である。真核生物細胞は、適切な細菌ポリメラーゼが、送達複合体の一部分としてまたはさらなる遺伝子発現構築物として提供される場合、特定の細菌プロモーターからの細胞質転写を支持し得る。
【0146】
表4は、RNAの発現を調節するために、本発明の文脈において使用され得るエレメント/プロモーターの非限定的な例を列挙する。表5は、特定の刺激に対する応答において活性化され得る核酸配列領域である、誘導可能なエレメントの非限定的な例を提供する。
【0147】
【表4】
【0148】
【表5】
組織特異的プロモーターまたはエレメントの同一性、およびそれらの活性を特徴付けるためのアッセイは、同業者に周知である。このような領域の非限定的な例としては、以下が挙げられる:ヒトLIMK2遺伝子(Nomotoら、1999)、ソマトスタチンレセプター2遺伝子(Krausら、1998)、マウス精巣上体レチノイン酸結合遺伝子(Lareyreら、1999)、ヒトCD4(Zhao−Emonetら、1998)、マウスα2(XI)コラーゲン(Tsumakiら、1998)、D1Aドーパミンレセプター遺伝子(Leeら、1997)、インスリン様増殖因子II(Wuら、1997)およびヒト血小板内皮細胞接着分子−1(Almendroら、1996)。
【0149】
(B.開始シグナルおよび内部リボソーム結合部位)
特定の開始シグナルはまた、コード配列の効率的な翻訳のために必要とされ得る。これらのシグナルは、ATG開始コドンまたは隣接配列を含む。外因性の翻訳制御シグナル(ATG開始コドンを含む)は、提供されることが必要であり得る。当業者はこれを容易に決定し得、そして必要なシグナルを提供し得る。開始コドンは、挿入物全体の翻訳を確実にするために所望のコード配列のリーディングフレームで「インフレーム」でなければならないことが周知である。外因性の翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然または合成的のいずれかであり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメントの包含によって増強され得る。
【0150】
本発明の特定の実施形態において、内部リボソーム侵入部位(IRES)エレメントの使用は、多重遺伝子またはポリシストロンのメッセージを作製するために使用される。IRESエレメントは5’側のメチル化Cap依存翻訳のリボソームスキャニングモデルを迂回し、そして内部部位で翻訳を始めることが可能である(PelletierおよびSonenberg、1988)。ピコルナウイルスファミリー(ポリオおよび脳心筋炎)の2つのメンバー由来のIRESエレメント(PelletierおよびSonenberg、1988)および哺乳動物メッセージ由来のIRES(MacejakおよびSarnow、1991)が記載されている。IRESエレメントはオープンリーディングフレームに連結され得る。多様なオープンリーディングフレームが一緒に転写され得(各々IRESにより分離される)、ポリシストロンメッセージを作製する。IRESエレメントにより、各オープンリーディングフレームは効率的な翻訳のためにリボソームにアクセス可能である。多様な核酸は、シグナルプロモーター/エンハンサーを用いて効率的に発現され、単一メッセージを転写し得る(米国特許第5,925,565号および同第5,935,819号を参照のこと、各々は本明細書中に参考として援用される)。
【0151】
(C.マルチクローニング部位)
ベクターは、多様な制限酵素部位を含む核酸領域であるマルチクローニング部位(MCS)を含み得る。任意のMCSは、ベクターを消化するための標準的な組換え技術と併せて使用され得る(例えば、Carbonelliら、1999、Levensonら、1998およびCocea、1997を参照のこと、これらは本明細書中に参考として援用される)。「制限酵素消化」とは、核酸分子の特定位置でのみ機能する酵素を用いて、核酸分子を触媒的に切断することをいう。これらの制限酵素の多くは市販される。このような酵素の使用は、当業者に広く理解される。しばしば、ベクターは線状化されるか、または外因性配列がベクターに連結されることを可能にするために、MCS内を切断する制限酵素を用いてフラグメント化される。「連結する(ligation)」とは、2つの核酸フラグメント間のリン酸ジエステル結合を形成するプロセスいい、これは、互いに隣接していても、隣接していなくてもよい。制限酵素および連結反応に関する技術は、組換え技術の当業者において周知である。
【0152】
(D.スプライシング部位)
転写された真核生物RNA分子の大部分は、RNAスプライシングを受け、一次転写物からイントロンを除去する。ゲノム真核生物配列を含むベクターは、タンパク質発現のための転写物の適切なプロセシングを確実にするために、ドナーおよび/またはアクセプタースプライシング部位を必要とし得る(例えば、Chandlerら、1997を参照のこと、本明細書中に参考として援用される)。
【0153】
(E.終止シグナル)
本発明のベクターまたは構築物は、一般に、少なくとも1つの終止シグナルを含む。「終止シグナル」または「ターミネーター」は、RNAポリメラーゼによるRNA転写の特定の終結に関連するDNA配列から構成される。従って、特定の実施形態において、RNA転写物の生成を終了させる終止シグナルが意図される。ターミネーターは所望のメッセージレベルを達成するためにインビボで必要とされ得る。
【0154】
真核生物系において、ターミネーター領域はまた、ポリアデニル化部位を露出するために、新規の転写物の部位特異的切断を可能にする特定のDNA配列を含み得る。これは、転写物の3’末端に約200A残基(ポリA)のストレッチを付加するために特殊化された内因性ポリメラーゼにシグナルを送る。このポリAテイルで改変されたRNA分子は、より安定、かつより効率的に翻訳されるようである。従って、真核生物に関する他の実施形態において、ターミネーターはRNA切断のためのシグナルを含むことが好ましく、そしてこのターミネーターシグナルは、メッセージのポリアデニル化を促進することがより好ましい。ターミネーターおよび/またはポリアデニル化部位エレメントは、メッセージレベルを増強するように作用し得、そしてカセットから他の配列中への読み込みを最小にし得る。
【0155】
本発明における使用のために企図されたターミネーターとしては、本明細書中に記載されるかまたは当業者に公知の、公知の任意の転写のターミネーターが挙げられる。これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:遺伝子の終止配列(例えば、ウシ成長ホルモンターミネーター)またはウイルス終止配列(例えば、SV40ターミネーター)。特定の実施形態において、終止シグナルは、配列の切断に起因して、転写可能配列または翻訳可能配列を欠如し得る。
【0156】
(F.ポリアデニル化シグナル)
発現(特に真核生物の発現)において、代表的に、ポリアデニル化シグナルは、転写物の適切なポリアデニル化をもたらすポリアデニル化シグナルを含む。これは、ポリアデニル化シグナルの性質は、本発明を首尾よく実施するために決定的であるとは考えられておらず、このような任意の配列が使用され得る。好ましい実施形態は、SV40ポリアデニル化シグナルまたはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルが含まれ、これらは、簡便であり、かつ種々の標的細胞において十分に機能することが公知である。ポリアデニル化は転写物の安定性を増大するか、または細胞質輸送を促進し得る。
【0157】
(G.複製起点)
宿主細胞においてベクターを増殖させるために、ベクターは、1以上の複製起点(しばしば、oriといわれる)を含み得る。複製起点は、複製が開始される特定の核酸配列である。あるいは、宿主細胞が酵母の場合、自立複製配列(ARS)使用され得る。
【0158】
(H.選択マーカーおよびスクリーニングマーカー)
本発明の特定の実施形態において、本発明の核酸構築物を含む細胞は、発現ベクターにマーカーを含めることによりインビトロまたはインビボで同定され得る。このようなマーカーは、細胞に同定可能な変化を付与し、発現ベクターを含む細胞の容易な同定を可能にする。一般に、選択マーカーは、選択を可能にする特性を付与するマーカーである。陽性選択マーカーは、マーカーの存在がその選択を可能にするマーカーである一方、陰性選択マーカーは、その存在がその選択を妨げるマーカーである。陽性選択マーカーの例は、薬物耐性マーカーである。
【0159】
通常、薬物選択マーカーを含めることは、形質転換体のクローニングおよび同定を補助し、例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン(zeocin)およびヒスチジノール(histidinol)に対する耐性を付与する遺伝的構築物は、有用な選択マーカーである。条件の実施に基づいて形質転換体の識別を可能にする表現型を付与するマーカーに加えて、スクリーニングマーカー(例えば、GFP)を含む、他の型のマーカー(その基本は、比色分析である)もまた、意図される。あるいは、スクリーニング酵素(例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT))が利用され得る。当業者はまた、免疫学的マーカーを(おそらくFACS分析と併せて)どのように使用するか分かっている。使用されるマーカーが遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現され得る限り、この使用されるマーカーが重要であるとは考えられない。選択マーカーおよびスクリーニングマーカーのさらなる例は、当業者に周知である。
【0160】
(I.プラスミドベクター)
特定の実施形態において、プラスミドベクターは、宿主細胞を形質転換するために使用することが意図される。一般に、宿主細胞と適合性の種に由来するレプリコンおよび制御配列を含むプラスミドベクターは、これらの宿主とともに使用される。このベクターは、通常、複製部位、ならびに形質転換細胞において表現型選択を提供し得るマーキング配列を有する。非限定的な例において、E.coliは、しばしば、pBR322(E.coli種に由来するプラスミド)の誘導体を使用して形質転換される。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性についての遺伝子を含み、従って、形質転換細胞を同定するための容易な手順を提供する。pBRプラスミドまたは他の微生物プラスミドもしくはファージはまた、例えば、微生物により、それ自体のタンパク質の発現のために使用され得るプロモーターを含むか、またはこのプロモーターを含むように改変されなければならない。
【0161】
さらに、宿主微生物と適合性のレプリコンおよび制御配列を含むファージベクターは、これらの宿主細胞とともに形質転換ベクターとして使用され得る。例えば、ファージλGEMTM−11は、組換えファージベクターを作製する際に利用され得る。この組換えファージベクターは、例えば、E.coli LE392のような宿主細胞を形質転換するために使用され得る。
【0162】
さらに有用なプラスミドベクターとしては、pINベクター(Inouyeら、1985);および後の精製および分離または切断のためにグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)可溶性融合タンパク質を生成する際の使用のためのpGEXベクターが挙げられる。他の適切な融合タンパク質は、β−ガラクトシダーゼ、ユビキチンなどとの融合タンパク質である。
【0163】
発現ベクターを含む細菌宿主細胞(例えば、E.coli)は、任意の多くの適切な倍地(例えば、LB)中で増殖される。特定のベクターにおける組換えタンパク質の発現は、当業者に理解されているように、宿主細胞と、特定のプロモーターに特異的な薬剤とを接触させることにより(例えば、培地にIPTGを添加することにより、またはより高い温度にインキュベーションを切替えることにより)誘導され得る。一般に、2〜24時間、細菌をさらなる期間の間培養した後、この細胞を、遠心分離により回収し、洗浄して、残りの培地が除去される。
【0164】
(VII.核酸送達および細胞の形質転換)
本発明を用いる使用に関して、オルガネラ、細胞、組織もしくは生物の形質転換のために、核酸成分または薬学的に受容可能な薬剤と細胞とを接触させるために適切な方法は、本明細書中に記載されるかまたは当業者に公知であるように、核酸(例えば、DNA)が、オルガネラ、細胞、組織または生物に導入され得る実質的に任意の方法を含むと考えられる。このような方法は、本発明のエアロゾル処方物とともに使用するために適合され得る。
【0165】
(VIII.宿主細胞)
本明細書中で使用される場合、用語「細胞」、「細胞株」および「細胞培養物」は、交換可能に使用され得る。これらの用語の全てがまた、それらの子孫(任意のおよび全ての次世代である)を含む。全ての子孫が意図的な変異または故意でない変異に起因して同一でなくてもよいことが理解される。異種核酸配列を発現する状況において、「宿主細胞」とは、原核生物細胞または真核生物細胞をいい、これは、ベクターを複製しかつ/またはベクターによりコードされた異種核酸を発現し得る、任意の形質転換可能な生物を含む。宿主細胞は、ベクターのレシピエントとして使用され得、かつ使用され続けている。宿主細胞は、「トランスフェクト」され得るかまたは「形質転換」され得、このことは、外来核酸が宿主細胞に移入されるかまたは導入されるプロセスをいう。形質転換細胞は、初代の被験体の細胞およびその子孫を含む。本明細書中で使用される場合、用語「操作された(る)」細胞もしくは宿主細胞および「組換え」細胞もしくは宿主細胞は、外来核酸配列(例えば、ベクター)が導入された細胞をいうことが意図される。従って、組換え細胞は、天然に存在する細胞(これは、組換えにより導入される核酸を含まない)から区別可能である。
【0166】
特定の実施形態において、RNA配列またはタンパク質配列は、同じ宿主細胞において他の選択されたRNA配列またはタンパク質配列と同時に発現され得ることが意図される。同時発現は、宿主細胞を2つ以上の異なる組換えベクターで同時トランスフェクトすることにより達成され得る。あるいは、単一の組換えベクターが、複数の異なるRNAのコード領域を含むように構築され得る。次いで、このベクターは、単一のベクターでトランスフェクトされた宿主細胞において発現され得る。
【0167】
宿主細胞は、所望の結果が、ベクターの複製またはベクターによりコードされる核酸配列の一部もしくは全ての発現であるか否かに依存して、原核生物または真核生物に由来し得る。多くの細胞株および細胞培養物が宿主細胞として利用可能であり、それらは、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(この機関は、生きた培養物および遺伝物質についての保存機関として働く機関である)(www.atcc.org)を通じて入手可能である。
【0168】
組織は、核酸および/またはさらなる薬剤を用いて形質転換されるかまたはこれらと接触される宿主細胞を含み得る。この組織は、生物の一部であってもよいし、生物から分離されていてもよい。特定の実施形態において、組織は、脂肪細胞、肺胞、エナメル芽細胞、軸索、基底細胞、血液(例えば、リンパ球)、血管、骨、骨髄、脳、乳房、軟骨、頸部、結腸、角膜、胚、子宮内膜、内皮、上皮、食道、面(facia)、線維芽細胞、小胞、神経節細胞、グリア細胞、杯細胞、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、筋肉、ニューロン、卵巣、膵臓、末梢血、前立腺、皮膚、小腸、脾臓、幹細胞、胃、精巣、葯、腹水組織、およびそれらの癌全てを含み得るが、これらに限定されない。
【0169】
(IX.遺伝子治療剤)
遺伝子治療は、いまや、種々の従来の治療に代わって、特に癌処置の領域においては、実用的なものになりつつある。ベクター産物の発現を通じた導入遺伝子の長期間の発現および標的細胞の免疫破壊などの制限(これは、遺伝子治療の実行の限界であるといわれている)は、癌細胞の破壊が所望される癌治療における関心事ではない。
【0170】
薬剤(例えば、化学療法剤および放射線療法剤)に対する腫瘍細胞の耐性は、臨床腫瘍学における大きな問題を表している。遺伝子移入療法において、特に、癌の処置に関与する治療において、できるだけ迅速に多くの細胞を殺傷することが重要である。現在の癌研究の1つの目的は、1以上の抗癌剤を遺伝子治療と組み合わせることにより、このような抗癌剤の効力を改善する方法を見出すことである。従って、「併用」療法の使用が有利であり得る。このような併用は、遺伝子治療および放射線療法または化学療法を含み得る。例えば、Rothら(1996)は、DNA損傷薬剤とp53遺伝子治療の併用が、インビボで腫瘍細胞の殺傷の増大をもたらすことを実証した。別の例においては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Hs−tk)遺伝子が、レトロウイルスベクター系により脳腫瘍に送達される場合、抗ウイルス剤であるガンシクロビルに対する感受性を首尾よく誘導した(Culverら、1992)。本発明の状況において、本発明のエアロゾル送達系が遺伝子治療に使用され得ることが意図される。
【0171】
併用療法のなお別の型は、複数遺伝子治療の使用を包含する。この状況において、1より多くの治療遺伝子が標的細胞に移入される。これらの遺伝子は、同じ機能群(例えば、両方が腫瘍サプレッサ、両方がサイトカインなど)に由来してもよいし、別々の機能群(例えば、腫瘍サプレッサおよびサイトカイン)に由来してもよい。標的細胞に対して、治療遺伝子の特定の組み合わせを提示することにより、標的細胞の生理に対するいずれかの遺伝子または両方の遺伝子の効果全体を増大させることが可能であり得る。
【0172】
(A.細胞増殖の誘導因子)
本発明の1つの実施形態において、細胞増殖の特定の誘導因子に方向付けられるアンチセンスmRNAが、細胞増殖の誘導因子の発現を防止するために使用されることが意図される。細胞増殖を誘導するタンパク質は、さらに、機能に依存して種々のカテゴリーに入れられる。これらのタンパク質の全ての共通点は、それらの細胞増殖を調節する能力である。本発明の方法および組成物により標的とされ得る癌遺伝子の表に列挙された非限定的な例は、以下に示される。
【0173】
【表6】
例えば、PDGFの形態(シスオンコジーン)は、分泌増殖因子である。オンコジーンは、まれに増殖因子をコードする遺伝子から生じ、そして現在においては、唯一の公知の天然に存在するオンコジーン増殖因子である。
【0174】
タンパク質FMS、ErbA、ErbBおよびneuは、増殖因子レセプターである。これらのレセプターの変異は、調節機能の欠失を生じる。例えば、Neuレセプタータンパク質の膜貫通ドメインに影響する点変異は、nueオンコジーンを生じる。ErbAオンコジーンは、甲状腺ホルモンに対する細胞内レセプター由来である。改変されたオンコジーンErbAレセプターは、内因性甲状腺ホルモンレセプターと競合すると考えられており、非制御増殖を引き起こす。
【0175】
オンコジーンの最も大きなクラスは、シグナル伝達タンパク質(例えば、Src、AblおよびRas)を含む。タンパク質Srcは、細胞質のタンパク質チロシンキナーゼであり、そしていくつかの場合において、プロトオンコジーンからオンコジーンへのその変換は、527位のチロシン残基での変異を経て生じる。対照的にGTPaseタンパク質rasのプロトオンコジーンからオンコジーンへの変換は、ひとつの例において、その配列において12位のアミノ酸でのバリンからグリシンへの変異から生じ、ras GTPase活性を減少する、。
【0176】
他のタンパク質(例えば、Jun、FosおよびMyc)は、転写因子として核の機能に対するそれらの効果を直接的に発揮するタンパク質である。
【0177】
(B.細胞増殖のインヒビター)
特定の実施形態において、遺伝子構築物を介する細胞増殖のインヒビターの活性化の回復が企図される。腫瘍サプレッサーオンコジーンは、過剰な細胞増殖を阻害するために機能する。これらの遺伝子の不活性化は、それらの阻害性活性を消失させ、非調節増殖を生じる。腫瘍サプレッサーp53、pl6およびC−CAMは、下に記載される。
【0178】
変異p53の高レベルは、化学物質による発癌(chemical carcinogenesis)、紫外線照射および種々のウイルスにより形質転換された多数の細胞において見出されている。p53遺伝子は、広範な種々のヒト腫瘍における変異性不活性化の高頻度の標的であり、そしてもうすでに一般的なヒトの癌において最も高頻度に変異される遺伝子であると実証されている。p53は、ヒトNSCLC(Hollsteinら、1991)の50%超、および他の腫瘍の広範な範囲において変異される。
【0179】
p53遺伝子は、宿主タンパク質(例えば、ラージT抗原およびE1B)と複合体を形成し得る393アミノ酸のリンタンパク質をコードする。このタンパク質は、正常な組織および細胞で見出されるが、形質転換細胞または腫瘍組織との比較によるとわずかな濃度である。
【0180】
野生型p53は、多数の細胞型における重要な増殖調節因子として認識される。ミスセンス変異は、p53遺伝子に対して共通であり、そしてオンコジーンの形質転換能力に必須である。点変異により促された単一の遺伝子の変化は、発癌性のp53を作製し得る。しかし、他のオンコジーンとは異なって、p53の点変異は、少なくとも30の異なるコドンで生じることが公知であり、しばしばこのコドンはホモ接合性に対する減少を生じずに、細胞表現型の変化を生じる優性対立遺伝子を作製する。さらに、これらのドミナントネガティブ対立遺伝子の多くは、生物内で許容され、そして生殖系列において伝播されるようである。種々の変異対立遺伝子は、最小には機能障害から、強くはドミナントネガティブな対立遺伝子を貫入させまでの範囲であるようである(Weinberg,1991)。
【0181】
細胞増殖の別のインヒビターは、p16である。真核生物の細胞周期の主要な遷移は、サイクリン依存性キナーゼまたはCDKにより誘発される。ひとつのCDKであるサイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)は、G1を介する進行を調節する。この酵素の活性化は、後期G1でRbをリン酸化することであり得る。CDK4の活性は、活性化サブユニット(D型サイクリン)および阻害性サブユニット(p16INK4)により制御され、p16INK4は、CDK4特異的に結合するおよびCDK4を阻害するタンパク質として生化学的に特徴付けられており、したがってRbのリン酸化を調節し得る(Serranoら、1993;Serranoら、1995)。p16INK4タンパク質は、CDK4インヒビターであるので(Serrano,1993)、この遺伝子の欠失は、CDK4の活性を増加し得、これはRbタンパク質の過リン酸化を生じる。p16はまた、CDK6の機能を調節することが公知である。
【0182】
p16INK4は、p16B、p19、p21WAF1およびp27KIP1もまた含むCDK阻害性のタンパク質の新しく記載されたクラスに属する。p16INK4遺伝子は、多数の腫瘍型において頻繁的に欠失された染色体領域9p21に位置付けられる。p16INK4遺伝子のホモ接合性欠失およびホモ接合性変異は、ヒト腫瘍細胞株において高頻度である。この証拠は、p16INK4遺伝子が、腫瘍サプレッサー遺伝子であることを示唆する。この解釈は、しかしながら、p16INK4遺伝子の変化の頻度が、培養された細胞株よりも初代培養されていない腫瘍でさらに低いという観察により疑われている(Caldasら、1994;Chengら、1994;Hussussianら、1994;Kambら、1994;Kambら、1994;Okamotoら、1994;Noboriら、1995;Arapら、1995)。プラスミド発現ベクターを用いたトランスフェクションによる野生型p16INK4機能の回復は、いくつかのヒト癌細胞株によるコロニー形成を減少した(Okamoto,1994;Arap,1995)。
【0183】
本発明に従い使用され得る他の遺伝子には、以下が挙げられる:Rb、APC、DCC、NF−1、NF−2、WT−1、MEN−I、MEN−II、zacl、p73、VHL、MMAC1/PTEN、DBCCR−1、FCC、rsk−3、p27、p27/pl6融合体、p21/p27融合体、抗血栓遺伝子(例えば、COX−1、TFPI)、PGS、Dp、E2F、ras、myc、neu、raf、erb、fms、trk、ret、gsp、hst、abl、E1A、p300、血管形成に関与する遺伝子(例えば、VEGF、FGF、トロンボスポンジン、BAI−1、GDAIFまたはこれらのレセプター)およびMCC。
【0184】
(C.プログラム細胞死の調節因子)
特定の実施形態において、アポトーシスを刺激する遺伝構築物は、病変組織または所望されない組織の死を促すために使用されることが企図されている。アポトーシス、すなわちプログラム細胞死は、正常な胚発育、成体組織における恒常性の維持、発癌の抑制のための必須の過程である(Kerrら、1972)。タンパク質のBcl−2ファミリーおよびICE−様プロテアーゼは、他の系におけるアポトーシスの重要な調節因子およびエフェクターであると実証されている。濾胞性リンパ腫に関連して発見されたBcl−2タンパク質は、多様なアポトーシス刺激に応答してアポトーシスの制御および細胞生存の増強において顕著な役割を果たす(Bakhshiら、1985;Clearyら、1986;Tsujimotoら、1985;TsujimotoおよびCroce、1986)。進化的に保存されたBcl−2タンパク質は現在、関連タンパク質のファミリーのメンバーであると認識され、これは死因アゴニスト(death agonist)または死因アンタゴニスト(death antagonist)としてカテゴリー化され得る。
【0185】
この発見の後に、Bcl−2が、種々の刺激により誘発された細胞死を抑制するために作用することが示された。また、現在、共通の構造および配列の相同性を共有するBcl−2細胞死調節タンパク質のファミリーが存在することが明白である。これらの異なるファミリーメンバーは、Bcl−2に対する類似の機能を有すること(例えば、BClXL、Bclw、BclS、Mcl−1、Al、Bfl−1)、またはBcl−2の機能を反作用することおよび細胞死を促進すること(例えば、Bad、Bak、Bax、Bid、Bik、Bim、Bok、Harakiri)のいずれかが示されている。
【0186】
(X.遺伝子ワクチン)
特定の実施形態において、免疫応答は、抗原をコードする核酸を用いて動物をトランスフェクトするかまたは接種することにより促進され得る。次いで、標的動物内に含まれる1つ以上の細胞は、この動物への核酸の投与後にこの核酸によりコードされた配列を発現する。したがって、このワクチンは、免疫プロトコルについて有用な「遺伝子ワクチン」を含み得る。ワクチンはまた、例えば、抗原のペプチド配列またはポリペプチド配列の全てまたは部分をコードする核酸(例えば、cDNAまたはRNA)の形態であり得る。核酸によるインビボでの発現は、例えば、プラスミド型ベクター、ウイルスベクターまたはウイルス/プラスミド構築ベクターによるものであり得る。
【0187】
ワクチンとして有用である薬学的に受容可能な処方物について、薬学的に受容可能な処方物によりコードされた抗原性組成物または薬学的に受容可能な処方物で構成された抗原性組成物は、細胞、組織または動物(例えば、ヒト)において抗原に対する免疫応答を誘導しなければならない。本明細書中で用いる場合、「抗原性組成物」は、抗原(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)、抗原をコードする核酸(例えば、抗原発現ベクター)または抗原を発現する細胞または抗原を提示する細胞を含み得る。他の実施形態において、抗原性組成物は、さらなる免疫賦活性因子またはこのような因子をコードする核酸を含む混合物である。免疫賦活性因子には以下のものが挙げられるがこれらには限定されない:さらなる抗原、免疫調節物質、抗原提示細胞またはアジュバント。他の実施形態において、1つ以上のさらなる因子は、任意の組み合わせで、抗原または免疫賦活性因子に共有結合的に結合される。特定の実施形態において、抗原性組成物は、HLAアンカーモチーフアミノ酸に結合されるかまたはHLAアンカーモチーフアミノ酸を含む。
【0188】
本発明のワクチンは、成分の組成において変動し得る。非限定な例において、抗原をコードする核酸はまた、蛋白性のアジュバンドと共に処方される。もちろん、本明細書中で記載される種々の組成物が、さらなる成分をさらに含み得ることは理解される。別の非限定な例において、ワクチンは、1つ以上のアジュバンドを含み得る。本発明のワクチンおよびその種々の成分は、本明細書中に開示された任意の方法によるかまたは本開示を考慮して、当業者に公知であるように、調製および/または投与され得る。
【0189】
種々の遺伝子に対するヌクレオチドおよびタンパク質、ポリペプチドコード配列およびペプチドコード配列は、これまでに開示されており、そして当業者に公知のコンピューター化されたデータベースで見出され得る。1つのこのようなデータベースは、National Center for Biotechnology Information’s GenbankおよびGenPeptデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)である。これらの公知な遺伝子に対するコード領域は、増幅され、核酸ベクターを産生するための配列と結合され(例えば、連結され)、本明細書中で記載され、細胞、組織、器官または生物に投与されおよび/または本明細書中で開示された技術を使用するかまたは当業者に公知の任意の技術(例えば、Sambrookら、1989)により発現され得る。核酸は、インビトロの発現系において発現され得るが、好ましい実施形態において、この核酸は、インビボでの複製および/または発現のためのベクターを含む。
【0190】
(A.細胞ワクチン抗原)
別の実施形態において、ワクチンは、抗原を発現する細胞を含み得る。この細胞は、培養物、組織、器官または生物から単離され得、そして細胞ワクチンとして動物に投与され得る。したがって、本発明は、「細胞ワクチン」を企図する。この細胞は、抗原をコードする核酸を用いてトランスフェクトされ、抗原のその発現が増強され得る。もちろん、この細胞はまた、1つ以上のさらなるワクチン成分(例えば、免疫調節物質またはアジュバンド)を発現し得る。ワクチンは、細胞の全てまたは一部分を含み得る。
【0191】
特定の実施形態において、本発明の抗原をコードする核酸が、植物、特に食用食物にトランスフェクトされ得、植物物質の全てまたは部分が、ワクチン(例えば、経口ワクチン)を調製するために使用され得ることが企図される。このような方法は、米国特許第5,484,719号、同第5,612,487号、同第5,914,123号、同第5,977,438号および同第6,034,298号(それぞれが参考として本明細書中で援用される)に記載される。
【0192】
(B.さらなるワクチン成分)
本発明の抗原性組成物が1つ以上のさらなる成分と組合わせて、より効果的なワクチンを形成し得ることが、企図される。さらなる成分の非限定的な例示としては、例えば、本発明の抗原性組成物および/またはさらなる成分に対する免疫応答を刺激する、1つ以上のさらなる抗原、免疫調節因子またはアジュバントが挙げられる。
【0193】
(1.免疫調節因子)
例えば、細胞または患者(例えば、動物)の応答を増大させる免疫調節因子がワクチン中に含まれ得ることが、企図される。免疫調節因子は、精製されたタンパク質、免疫調節因子をコードする核酸、および/または免疫調節因子を発現する細胞としてワクチン組成物中に含まれ得る。以下の項は、目的の免疫調節因子の非限定的な例を列挙し、そして免疫調節因子の種々の組合わせが特定の実施形態において使用され得ることが、企図される(例えば、サイトカインおよびケモカイン)。
【0194】
インターロイキン、サイトカイン、インターロイキンもしくはサイトカインをコードする核酸、および/またはこのような化合物を発現する細胞は、可能性のあるワクチン成分として企図される。インターロイキンおよびサイトカインとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:インターロイキン1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−18、β−インターフェロン、α−インターフェロン、γ−インターフェロン、アンギオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、METH−1、METH−2、腫瘍壊死因子、TGFβ、LTおよびこれらの組合わせ。
【0195】
ケモカイン、ケモカインをコードする核酸、および/またはこのような化合物を発現する細胞もまた、ワクチン組成物として使用され得る。ケモカインは、一般に、ケモカイン発現部位に免疫エフェクター細胞を漸増させる化学誘引物質として作用する。例えば、特定のケモカインコード配列をサイトカインコード配列と組合わせて発現させて、処置の部位に他の免疫系成分の漸増を増強するために有利であり得る。このようなケモカインとしては、例えば、RANTES、MCAF、MIP−1α、MIP−1β、IP−10およびこれらの組合わせが挙げられる。当業者は、特定のケモカインがまた化学誘引物質効果を有すること、およびまた用語ケモカインの下で分類され得ることを認識する。
【0196】
特定の実施形態において、抗原性成分は、免疫反応を増強するために、キャリアに化学的に結合され得るか、または免疫原性キャリアペプチドまたはポリペプチドとともに組換え発現され得る(例えば、抗原−キャリア融合ペプチドまたはポリペプチド)。例示的でありかつ好ましい免疫原性キャリアアミノ酸配列としては、B型肝炎表面抗原、キンホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびウシ血清アルブミン(BSA)が挙げられる。他のアルブミン(例えば、オボアルブミン、マウス血清アルブミンまたはウサギ血清アルブミン)はまた、免疫原性キャリアタンパク質として使用され得る。ポリペプチドまたはペプチドを免疫原性キャリアタンパク質に結合体化させるための手段は、当業者で周知であり、そして、例えば、グルタルアルデヒド、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシニミドエステル、カルボジイミドおよびビス−二アゾ化ベンジジンが挙げられる。
【0197】
T細胞免疫をアップレギュレートすることまたはサプレッサー細胞活性をダウンレギュレートすることが示されている生物学的応答調節因子(modifier)(BRM)を同時投与することが好ましくあり得る。このようなBRMとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:シメチジン(CIM;1200mg/d)(Smith/Kline,PA);低用量シクロホスファミド(CYP;300mg/m2)(Johnson/Mead,NJ)、または1つ以上の免疫ヘルパー機能に含まれるタンパク質配列(例えば、B−7)をコードする核酸。
【0198】
(2.アジュバント)
免疫化プロトコルは、数年にわたって応答を刺激するためにアジュバントを使用しており、そしてこのようなアジュバントは、当業者に周知である。いくつかのアジュバントは、抗原が示されるような手段で作用する。例えば、免疫応答は、タンパク質抗原がミョウバンによって沈降される場合に、増大される。抗原の乳状化はまた、抗原提示の間延長する。
【0199】
1つの局面において、アジュバント効果は、リン酸緩衝化生理食塩水中約0.05〜約0.1%溶液で使用される、ミョウバンのような因子の使用によって達成される。あるいは、抗原は、約0.25%溶液として使用される、糖の合成ポリマー(Carbopol(登録商標))との混合物として作製される。アジュバント効果はまた、それぞれ30秒〜2分間にわたる約70〜約101℃の間の範囲の温度で用いる熱処理によってワクチン中の抗原の凝集が生成され得る。ペプシン処理した、アルブミンに対する(Fab)抗体を用いる再活性化による凝集、細菌細胞(例えば、C.parvum)またはエンドトキシンあるいはグラム陰性期間のリポ多糖成分とのそれぞれの混合。ペプシン処理した、アルブミンに対する(Fab)抗体を用いる再活性化による凝集、細菌細胞(例えば、C.parvum)またはエンドトキシンあるいはグラム陽性細菌のリポ多糖成分との混合、生理学的に受容可能な油ビヒクル(例えば、マンニット(mannide)モノオレアート(Aracel A)中でのエマルジョンまたはブロック置換基として使用される過フルオロ炭素(Fluosol−DA(登録商標))の20%溶液を用いるエマルジョンもまた、使用され得る。いくつかのアジュバントは、例えば、細菌より得られる特定の有機分子であり、抗原に対してよりも宿主に対して作用する。例は、ムラミルジペプチド(N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン[MDP])、細菌ペプチドグリカンである。ほとんどのアジュバントと同様に、MDPの効果は、完全には理解されていない。MDPは、マクロファージを刺激するが、B細胞を直接刺激するようである。よって、アジュバントの効果は、抗原特異的ではない。しかし、アジュバントが精製された抗原とともに投与される場合、アジュバントは、抗原に対する応答を選択的に促進するために使用され得る。
【0200】
アジュバントは、未知の抗原に対する免疫の一般的な増強を促進させるために、実験的に使用されている(例えば、米国特許第4,877,611号)。これは、癌の処置に特に意図されている。多くの癌について、免疫系が腫瘍細胞に対する宿主防御に関係するということを強要する証拠が存在するが、ほぼ総数の腫瘍特異的抗原のある画分のみが現在までに同定されたと考えられている。しかし、本発明を使用して、適切なアジュバントの、照射された腫瘍細胞の膜への封入は、突出した抗原の分子同定にもかかわらず抗腫瘍応答を増加するようである。これは、本発明の特に重要かつ時間を節約する特徴である。
【0201】
特定の実施形態において、ヘモシアニンおよびヘモエリトリンはまた、本発明において使用され得る。キンホールリンペット(KLH)由来のヘモシアニンの使用は、特定の実施形態において好ましいが、他の軟体動物ヘモシアニンおよび節足動物ヘモシアニンならびにヘモエリトリンが、使用され得る。
【0202】
種々の多糖アジュバントもまた使用され得る。例えば、マウスの抗体応答に対する、種々の肺炎球菌の(pneumococcal)多糖アジュバントの使用が、記載されている(Yinら、1989)。最適な応答を産生する用量、またはさもなくば抑制を産生しない用量が、示されるように利用されるべきである(Yinら、1989)。多糖のポリアミン多様性(例えば、キチンおよびキトサン(脱アセチル化キチンを含む))は、特に好ましい。
【0203】
アジュバントの別の群は、細菌性ペプチドグリカンのムラミルジペプチド(MDP、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン)群である。ムラミルジペプチド(例えば、アミノ酸誘導体トレオニル−MDP)の誘導体および脂肪酸誘導体MTPPEはまた、意図される。
【0204】
米国特許第4,950,645号は、ムラミルジペプチドの親油性二糖トリペプチド誘導体を記載し、これは、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルグリセロールから形成される人工リポソームにおける使用について記載される。ヒト単球を活性化する際および腫瘍細胞を破壊する際に効果的であるが、一般的な高用量では非毒性である。米国特許第4,950,645号およびPCT特許出願WO91/16347の化合物は、本発明の細胞性キャリアと用いる用途および他の実施形態について意図される。
【0205】
本発明における使用に意図される別のアジュバントは、BCGである。BCG(bacillus Calmette−Guerin、Mycobacteriumの弱毒株)およびBCG細胞壁骨格(CWS)はまた、本発明においてトレハロースジミコレートを伴ってかまたは伴わなわずにアジュバントとして使用され得る。トレハロースジミコレートは、それ自体使用され得る。トレハロースジミコレート投与は、マウスにおけるインフルエンザウイルス感染に対する増大した耐性に相関することが示されている(Azumaら、1988)。トレハロースジミコレートは、米国特許第4,579,945号に記載されるように調製され得る。
【0206】
BCGは、その免疫刺激特性に起因して、重要な臨床ツールである。BCGは、細網−内皮系を刺激するように作用し、ナチュラルキラー細胞を活性化し、そして造血幹細胞の増殖を増加させる。BCGの細胞壁抽出物は、優れた免疫アジュバント活性を有することが証明されている。mycobacteriaに対する分子遺伝的なツールおよび方法は、外因性核酸をBCG内に導入する手段が提供されている(Jacobsら、1987;Hussonら、1990;Martinら、1990)。
【0207】
生BCGは、結核を予防するために広範に使用される、効果的かつ安全なワクチンである。BCGおよび他のmycobacteriaは、かなり効果的なアジュバントであり、そしてmycobacteriaに対する免疫応答は、広範に研究されている。ほぼ20億の免疫化に関して、BCGは、ヒトにおける安全使用の長期記録を有する(Luelmo、1982;Lotteら、1984)。これは、出生時に与えられ得る数少ないワクチンのうちの1つであり、単一投与のみで長期間残存する免疫応答を生じ、そしてBCGワクチン化における経験を有する世界中に分布するネットワークが存在する。BCGワクチンの例示は、TICE(登録商標)BCG(Organon,Inc.,West Orange,NJ)として販売されている。
【0208】
両親媒性かつ表面活性な薬剤(例えば、サポニンおよび誘導体(例えば、QS21(Cambridge Biotech)))は、本発明の免疫原とともに使用するためのアジュバントのさらに別の群を形成する。非イオン性ブロックコポリマー界面活性剤(Rabinovichら、1994;Hunterら、1991)がまた、使用され得る。オリゴヌクレオチドは、別の有用な群のアジュバントである(Yamamotoら、1988)。Quil Aおよびレンチネンは、本発明の特定の実施形態において使用され得る他のアジュバントである。
【0209】
本発明における使用について好ましい1つの群のアジュバントは、弱毒化されたエンドトキシン(例えば、米国特許第4,866,034号の純化され、弱毒化されたエンドトキシン)である。これらの純化され、弱毒化されたエンドトキシンは、哺乳動物におけるアジュバント応答を産生するのに効果的である。もちろん、弱毒化されたエンドトキシンは、複数のアジュバントを含む細胞を調製するために他のアジュバントと組合わせられ得る。例えば、弱毒化されたエンドトキシンとトレハロースジミコレートとの組合わせは、米国特許第4,435,386号に記載されるように、特に意図される。弱毒化されたエンドトキシンとトレハロースジミコレートおよびエンドトキシン糖脂質との組合わせがまた意図され(米国特許第4,505,899号)、米国特許第4,436,727号、同第4,436,728号および同第4,505,900号に記載されるような、弱毒化されたエンドトキシンと細胞壁骨格(CWS)またはCWSおよびトレハロースジミコレートとの組合わせも同様である。弱毒化されたエンドトキシンを含まない、CWSとトレハロースジミコレートとだけの組み合わせはまた、米国特許第4,520,019号に記載されるように、有用であることが想像される。
【0210】
他の実施形態において、本発明は、種々のアジュバントが細胞膜において使用され得、改善された免疫原性組成物を生じることを意図している。一般的に、唯一必要なことは、このアジュバントが、当該細胞の細胞膜に取り込まれ得ることか、この細胞膜と物理的に会合することか、またはこの細胞膜と結合体化することである。当業者は、本発明に従って、細胞性ワクチンに結合体化され得る異なる種類のアジュバントを認識しており、これらとしては、特に、アルキルリゾホスフォリピド(alkyl lysophosphilipid)(ALP);BCG;およびビオチン(ビオチン化誘導体を含む)が挙げられる。使用のために、特に意図される特定のアジュバントは、グラム陰性細胞由来のテイコ酸である。これらとしては、リポテイコ酸(LTA)、リビトールテイコ酸(RTA)およびグリセロールテイコ酸(GTA)が挙げられる。これらの合成対応物の活性形態もまた、本発明とともに使用され得る(Takadaら、1995)。
【0211】
種々のアジュバント(ヒトにおいて通常使用されないものでさえ)が、なお動物において使用され得る(例えば、抗体を産生することまたはその後に活性化T細胞を得ることを必要とする場合)。例えば、非照射腫瘍細胞を使用して起こり得るような、アジュバントまたは細胞のいずれかから生じ得る毒性作用または他の副作用は、このような環境においては無関係である。
【0212】
本発明のいくつかの実施形態において使用するのに好ましいアジュバントの1つの群は、核酸(例えば、DNAまたはRNA)によってコードされ得るものである。このようなアジュバントが、抗原をコードする核酸(例えば、発現ベクター)、または別個のベクターもしくは他の構築物にコードされ得ることが、意図される。アジュバントをコードするこれらの核酸は、例えば、脂質またはリポソームとともに、直接送達され得る。
【0213】
(3.賦形剤、塩および補助物質)
本発明の抗原性組成物は、1種以上のさらなる成分(例えば、賦形剤、塩など)とともに混合され得、これらは、薬学的に受容可能であり、かつ少なくとも1種の活性成分(例えば、抗原)と適合性である。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールおよびそれらの組み合わせである。
【0214】
本発明の抗原性組成物は、中性形態または塩形態として、ワクチン内に処方され得る。薬学的に受容可能な塩は、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基を用いて形成される)、ならびに無機酸(例えば、塩酸またはリン酸のような)、または有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような)により形成されるものを含む。遊離カルボキシル基により形成される塩もまた、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄のような)、および有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン、およびそれらの組み合わせのような)から誘導され得る。
【0215】
さらに、所望の場合、抗原性組成物は、少量の1種以上の補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤のような)、pH緩衝剤などを含有し得、これらは、抗原性組成物またはワクチンの有効性を増強する。
【0216】
(D.ワクチン成分の精製)
いずれかの場合において、ワクチン成分(例えば、タンパク様組成物をコードする核酸)が単離され得、そして/または、化学合成試薬、細胞、もしくは細胞成分から精製され得る。ワクチン成分を製造する方法において、精製は、本明細書中に記載されるかまたは当該分野で周知(例えば、Sambookら、1989)の、任意の適切な技術によって行われる。特定の実施形態において使用するのに好ましいが、本発明の抗原性組成物または他のワクチン成分は、常に、それらの最も精製された状態で提供されることは、一般には必要ではない。実際には、実質的にさほど精製されていないワクチン成分(それにもかかわらず、これは、天然の状態と比較して、所望の化合物に富んでいる)が、特定の実施形態(例えば、タンパク質産物の全回収のような)においてか、または発現タンパク質の活性を維持する際に有用であることが意図される。しかしながら、不活化産物もまた、特定の実施形態において(例えば、抗体産生により抗原性を決定する際に)有用であることが意図される。
【0217】
本発明はまた、精製された(好ましい実施形態において、実質的に精製された)ワクチンまたはワクチン成分を提供する。用語「精製されたワクチン成分」とは、本明細書中で使用される場合、少なくとも1種のワクチン成分(例えば、細胞から単離可能なタンパク様組成物)をいうことが意図され、ここで、この成分は、その天然で入手可能な状態と比較して(例えば、細胞抽出物または化学合成試薬中でのその純度と比較して)、任意の程度まで精製される。このワクチン成分がタンパク様組成物である、特定の局面において、精製されたワクチン成分とはまた、野生型または改変型の、タンパク質、ポリヌクレオチド、または天然に生じる環境から遊離したペプチドをいう。
【0218】
用語「実質的に精製された」が使用される場合、この用語は、特定の化合物(例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)が組成物の主要成分を形成する(例えば、組成物中で約50%以上の化合物を構成する)組成物をいう。好ましい実施形態において、実質的に精製されたワクチン成分は、この組成物中の化合物の、約60%より多く、約70%より多く、約80%より多く、約90%より多く、約95%より多く、約99%より多くまたはなおそれより多くを構成する。
【0219】
特定の実施形態において、ワクチン成分は、均一になるまで精製され得る。本発明に適用される場合、「均一になるまで精製された」とは、ワクチン成分が、化合物が実質的に他の化学、生体分子または細胞を含まないレベルの純度を有することを意味する。例えば、精製されたペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、しばしば、十分な程度に、他のタンパク質成分を含んでおらず、その結果、分解配列決定が首尾よく行われ得る。ワクチン成分の精製の程度を定量するための種々の方法が、本発明の開示を考慮して、当業者に公知である。これらは、例えば、画分の特異的なタンパク質活性(例えば、抗原性)を決定する工程、またはゲル電気泳動によって画分内のペプチドの数を評価する工程、を包含する。
【0220】
化学精製、生体分子精製または生物学的精製における使用に適切な種々の技術が、当業者に周知であり、この技術は、本発明のワクチン成分を調製するのに適用可能であり得る。これらとしては、例えば、以下が挙げられる:硫酸アンモニウム、PEG、抗体などを用いるか、または熱変性とその後の遠心分離による、沈殿;分別、クロマトグラフィー手順(分配クロマトグラフィー(例えば、ペーパークロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ガス液体クロマトグラフィーおよびゲルクロマトグラフィー)、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、超臨界流クロマトグラフィーイオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイト、レクチンアフィニティーが挙げられるがこれらに限定されない);等電点電気泳動およびゲル電気泳動(例えば、Sambrookら、1989;およびFreifelder,Physical Biochemistry、第2版、238〜246頁を参照のこと(本明細書中で参考として援用される))。
【0221】
多くのDNAおよびタンパク質が公知であるか(例えば、National Center for Biotechnology Information’s Genbank and GenPeptデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照のこと)、または本明細書中に記載される方法を使用して、同定および増幅され得るので、当業者に公知の組換え発現される核酸またはタンパク様配列のための任意の精製方法を使用し得る。特定の局面において、核酸は、ポリアクリルアミドゲル、および/または塩化セシウム遠心分離勾配によって、あるいは当業者に公知の他の任意の手段(例えば、Sambrookら、1989(本明細書中で参考として援用される))によって、精製され得る。さらなる局面において、タンパク様配列の精製は、配列を融合タンパク質として組換え発現させることによって行われ得る。このような精製方法は、当該分野で慣習的である。これは、以下によって例示される。特定のタンパク質−グルタチオンS−トランスフェラーゼ融合タンパク質の産生、E.coliにおける発現、およびグルタチオン−アガロースによるアフィニティークロマトグラフィーを使用した、均一になるまでの単離、またはタンパク質のN末端もしくはC末端でのポリヒスチジンタグの産生、ならびに、Niアフィニティークロマトグラフィーを使用する、その後の精製。特定の局面において、細胞またはワクチンの他の成分は、フローサイトメトリによって精製され得る。フローサイトメトリは、液体サンプル中の細胞または他の粒子の分離を含み、当該分野で周知である(例えば、米国特許第3,826,364号、同第4,284,412号、同第4,989,977号、同第4,498,766号、同第5,478,222号、同第4,857,451号、同第4,774,189号、同第4,767,206号、同第4,714,682号、同第5,160,974号および同第4,661,913号を参照のこと)。本明細書中に記載されるこれらの任意の技術、ならびに当業者に公知のこれらおよび任意の他の技術の組み合わせを使用して、本発明のワクチンを含有し得る、種々の化学、タンパク様化合物、核酸、細胞性物質および/または細胞を、精製および/またはその純度をアッセイし得る。当該分野で一般的に公知であるように、種々の精製工程を行うための順序は、変更され得るか、または特定の工程は、除外され得てもなお、実質的に精製された抗原または他のワクチン成分を調製するために適切な方法が得られると考えられる。
【0222】
(E.ワクチンの調製)
一旦、産生され、合成され、そして/または精製されると、抗原または他のワクチン成分は、患者に投与するためのワクチンとして、調製され得る。ワクチンの調製は、一般に、以下によって例示されるように、当該分野において十分理解されている:米国特許第4,608,251号、同第4,601,903号、同第4,599,231号、同第4,599,230号、および同第4,596,792号(全てが、本明細書中で参考として援用される)。このような方法を使用して、本発明の開示を考慮して、抗原組成物を活性成分として含有するワクチンを調製し得る。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、薬理学的に受容可能なワクチンを含むように調製される。
【0223】
(F.ワクチンの投与)
ワクチン接種計画および投薬量は、例えば、当業者によって容易に決定され得る因子(例えば、患者の体重および年齢、処置されるべき疾患の型、疾患状態の重篤度、以前の治療介入もしくは併用治療介入、投与の様式など)を考慮して、患者ベースで、患者毎に変更され得る。
【0224】
ワクチンは、投薬処方物と互換可能な様式で、そして治療的に有効でありそして免疫原性であるような量で投与される。例えば、筋肉内経路は、インビボでの短い半減期を有する毒素の場合に好ましくあり得る。投与されるべき量は、処置されるべき被験体に依存し、例えば、抗体を合成する個々の免疫系の能力、および所望される保護の程度が挙げられる。ワクチンの投与量は、投与経路に依存し、そして宿主のサイズによって変更される。投与されるに必要とされる活性成分の正確な量は、開業医の判断に依存する。特定の実施形態において、薬学的組成物は、例えば、少なくとも0.1%の活性な化合物を含む。他の実施形態において、活性な化合物は、例えば、その単位重量の約2%と約75%との間、または約25%と約60%との間、およびそこから推論し得る任意の範囲を含み得る。しかし、適切な投薬量範囲は、例えば、ワクチン化当たり数百μgの活性成分のオーダーであり得る。他の非限定的な例示において、投薬はまた、ワクチン化当たり約1μg/kg/体重、約5μg/kg/体重、約10μg/kg/体重、約50μg/kg/体重、約100μg/kg/体重、約200μg/kg/体重、約350μg/kg/体重、約500μg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg/体重から約1000mg/kg/体重まで、またはそれより多く、およびそこから推論し得る任意の範囲を含み得る。本明細書中に列挙される数から推論し得る範囲の非限定的な例示において、約5mg/kg/体重〜約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重〜約500mg/kg/体重などの範囲が、上記の数に基づいて、投与され得る。最初の投与およびブースター投与(例えば、播種)に適切なレジメンはまた、可変であるが、最初の投与、引き続く播種または他の投与によって類型化される。静脈内送達法および経口送達法と比較して送達効率がより低いので、エアロゾル送達のために投薬量が増加され得ることもまた、理解される。
【0225】
多くの場合において、複数のワクチン投与(通常には、6回のワクチン化を超えない、より通常には、4回のワクチン化を超えない、そして好ましくは、1回以上、通常は少なくとも約3回のワクチン化)を有することが所望される。ワクチン化は、正常には、2〜12週間の間隔、より通常には、3〜5週間の間隔である。1〜5年間(通常には、3年間)の間隔での周期的なブースターは、抗体の保護レベルを維持するために所望される。
【0226】
免疫化の過程は、上清の抗原に対する抗体についてのアッセイによって追跡され得る。アッセイは、慣用的な標識(例えば、放射性核種、酵素、蛍光プローブなど)で標識することによって実施され得る。これらの技術は、周知であり、そして広範な種々の患者において見出され得る(これらの型のアッセイの例示として、例えば、米国特許第3,791,932号、同第4,174,384号および同第3,949,064号)。免疫化に続いて、他の免疫アッセイが実施され得、そして抗原でのチャレンジからの保護アッセイが実施され得る。
【0227】
(G.免疫応答の増強)
本発明は、1つ以上のリンパ球を抗原性組成物と接触させる工程を包含する、被験体における免疫応答を増強させる方法を含む。特定の実施形態において、1つ以上のリンパ球は、動物(例えば、ヒト)に含まれる。他の実施形態において、リンパ球は、動物、または動物の組織(例えば、血液)から単離され得る。特定の好ましい実施形態において、リンパ球は、末梢血リンパ球である。特定の実施形態において、1つ以上のリンパ球は、Tリンパ球またはBリンパ球を含む。特定の好ましい局面において、Tリンパ球は、細胞毒性Tリンパ球である。
【0228】
増強された免疫応答は、活性または陽性な免疫応答であり得る。あるいは、この応答は、養子免疫治療アプローチの一部であり得、ここで、リンパ球は動物(例えば、患者)から得られ、次いで、抗原性組成物を含む組成物でパルスされる。好ましい実施形態において、リンパ球は、同一または異なる動物(例えば、同一または異なるドナー)に投与され得る。
【0229】
(1.細胞毒性Tリンパ球)
特定の実施形態において、Tリンパ球は、本発明の抗原性組成物との接触によって特異的に活性化される。特定の実施形態において、Tリンパ球は、本発明の抗原性組成物と接触されているかまたは接触されていた抗原提示細胞との接触によって活性化される。
【0230】
T細胞は、独特な抗原結合レセプター(T細胞レセプター)をその膜上に発現する。このレセプターは、他の細胞表面上の主要な免疫適合性複合体(MHC)分子に関連する抗原のみを認識し得る。Tヘルパー細胞およびT細胞毒性細胞のような、T細胞のいくつかの集団が存在する。Tヘルパー細胞およびT細胞毒性細胞は、膜結合糖タンパク質であるCD4およびCD8をそれぞれ提示することによって、主に区別される。Tヘルパー細胞は、B細胞、T細胞毒性細胞、マクロファージおよび免疫系の他の細胞の活性化に不可欠である種々のリンホカインを分泌する。対照的に、抗原−MHC複合体を認識するT細胞毒性細胞は、増殖し、そして細胞毒性T細胞(CTL)と呼ばれるエフェクター細胞に分化する。CTLは、細胞溶解を生じる物質を産生することによって抗原を提示する本体の細胞を廃除する。
【0231】
CTL活性は、本明細書中に記載される方法または当業者に公知の方法によって評価され得る。例えば、CTLは、新鮮な、単離された末梢血単核細胞(PBMC)、PBMCより確立されたフィトヘマグルチニン刺激IL−2拡張細胞株(Bernardら、1998)または予め免疫された被験体より単離されたT細胞において評価され得、そして、標準的な4時間の51Cr放出微小毒性(microtoxicity)アッセイを使用して、抗原を含有するアデノウイルスベクターで感染されたDCで6日間再刺激され得る。細胞媒介性の細胞毒性を検出するために開発された別の蛍光アッセイにおいて、使用される蛍光団は、非毒性分子alamarBlue(Nociariら、1998)である。alamarBlueは、ミトコンドリアでの還元が生じるまで蛍光的にクエンチされ(すなわち、低い量子収量)、次いで、alamarBlue蛍光強度の劇的な増加(すなわち、量子収量の増加)を生じる。このアッセイは、極度に感受性で、特異的であり、そして標準的な51Cr放出アッセイより顕著に少数のエフェクター細胞を必要とすることが報告されている。
【0232】
特定の局面において、Tヘルパー細胞応答は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を用いるインビトロまたはインビボでのアッセイによって測定され得る。インビトロアッセイとしては、酵素アッセイ、放射性同位元素アッセイ、発色団(chromaphore)アッセイまたは蛍光アッセイによって放出される特定のサイトカインの測定が挙げられる。インビボアッセイとしては、当業者に公知である、皮膚試験と呼ばれる遅延型高感受性応答が挙げられる。
【0233】
(2.抗原提示細胞)
一般に、用語「抗原提示細胞」は、抗原に対する免疫応答の増強を助けることによって、本発明の目的を達成する任意の細胞(すなわち、免疫系のT細胞アームまたはB細胞アーム)であり得る。このような細胞は、本明細書中および当該分野において開示される方法を使用して、当業者によって規定され得る。当業者によって理解され(例えば、Kuby,1993(本明細書中に参考として援用される))、そして本明細書中の特定の実施形態において使用される場合、クラスII主要免疫適合性分子、または免疫細胞に対する複合体を有する抗原を正常にかまたは選択的に表示または提示する細胞は、「抗原提示細胞」である。特定の局面において、細胞(例えば、APC細胞)は、別の細胞(例えば、所望の抗原を発現する組換え細胞または腫瘍細胞)と融合され得る。2つ以上の細胞の融合物を調製する方法は、当該分野において周知であり、その方法は、例えば、Goding,pp.65−66,71−74 1986;Campbell,pp.75−83,1984;Kohler and Milstein,1975;Kohler and Milstein,1976,Gefter et al.,1977(各々が、本明細書中に参考として援用される)に開示される。いくつかの場合において、抗原提示細胞が抗原を表示または提示する免疫細胞は、CD4+TH細胞である。APC上または他の免疫細胞に発現されるさらなる分子は、免疫応答の増強を助け得るかまたは増強し得る。分泌された分子または可溶性分子(例えば、免疫調節因子およびアジュバント)はまた、抗原に対する免疫応答を助け得るかまたは増強し得る。このような分子は、当業者に周知であり、そして種々の例示が、本明細書中に記載される。
【0234】
(XI.癌処置)
治療組成物は、本発明の処方物を使用して癌を処置するために、細胞、組織または生物に送達され得る。高増殖性疾患の処置に効果的な1つ以上の因子(例えば、抗癌剤)が、使用され得る。「抗癌」剤は、例えば、1つ以上の癌細胞を殺傷すること、1つ以上の癌細胞においてアポトーシスを誘導すること、1つ以上の癌細胞の増殖速度を低減させること、転位の発生または数を低減させること、腫瘍のサイズを低減させること、腫瘍増殖を阻害すること、腫瘍もしくは1つ以上の癌細胞に供給される血液を低減させること、1つ以上の癌細胞もしくは腫瘍に対する免疫応答を促進させること、癌の進行を予防または阻害すること、あるいは、癌を有する被験体の寿命を増加させることによって、被験体において癌を陰性にもたらし得る。抗癌剤としては、例えば、化学療法剤(化学療法)、放射線療法剤(放射線療法)、外科的手順(手術)、免疫療法剤(免疫療法)、遺伝子治療剤(遺伝子治療)、ホルモン治療、他の生物学的因子(生物治療)および/または代替の治療が挙げられる。このような因子は、単独でかまたは他の因子と組合わせた量で、癌細胞を殺傷するかもしくは癌細胞の増殖を阻害するに効果的な量で提供される。
【0235】
本発明によって処置され得る癌としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:肺癌、上気道(主もしくは副)の癌、頭頸部の癌、膀胱癌、腎臓癌、膵臓癌、口腔の癌、喉の癌、咽頭癌、食道癌、脳の癌、肝癌、脾臓の癌、腎臓癌、リンパ節の癌、小腸癌、膵臓癌、血球の癌、結腸癌、胃癌、乳癌、子宮内膜の癌、前立腺癌、精巣癌、卵巣癌、皮膚癌、骨髄の癌および血液の癌。肺癌および上気道の癌が、本発明のエアロゾル処方物によって処置されるに好ましい。これらの肺癌および上気道の癌は、以下の多くの組織学的分類によって規定される:扁平上皮細胞癌(例えば、扁平(squamous)癌);小細胞癌(例えば、燕麦細胞癌)、中間の細胞型の癌、複合燕麦細胞癌;腺癌(例えば、腺房細胞腺癌、乳頭状腺癌、細気管支癌および粘膜形成を伴う固形癌;大細胞癌(例えば、巨大細胞癌および明細胞癌);扁平上皮腺癌(adenosquamous carcinoma);カルチノイド;ならびに気管支腺癌(例えば、腺様嚢胞癌および粘液性類表皮癌)。
【0236】
細胞、組織または生物への抗癌剤の投与は、(必要ならば、毒性を考慮して)エアロゾルを介する化学療法学の投与のための一般的なプロトコルに従い得る。治療サイクルは、必要な場合、反復されることが予想される。特定の実施形態において、さらなる種々の薬剤が、本発明との任意の組合せで適用され得ることが意図される。
【0237】
(A.化学療法剤)
用語「化学療法」は、癌を標的化するような薬物の使用をいう。「化学療法剤」は、癌の処置において投与される化合物または組成物を意味するために使用される。生化学療法として知られる化学療法の1つのサブタイプは、化学療法と生物学的治療との組合せに関する。
【0238】
化学療法剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:5−フルオロウラシル、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトセシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、シクロホスファミド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エストロゲンレセプター結合因子、エトポシド(VP16)、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼインヒビター、ゲムシタビン、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、マイトマイシン、ナベルビン、ニトロソ尿素、プリカマイシン(pliomycin)、プロカルバジン、ラロキシフェン、タモキシフェン、タキソール、テマゾロミド(temazolomide)(DTICの水性形態)、トランスプラチナム(transplatinum)、トポテカン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、ビンクリスチン、または、上記の任意のアナログ、もしくは誘導改変体。これらの薬剤または薬物は、細胞内でのそれらの活性型(例えば、これらが細胞周期に影響するかどうか、およびどの段階で影響するか)によって分類される。あるいは、薬剤は、DNAに直接架橋する能力、DNAにインターカレートする能力、または核酸合成に影響することによって染色体異常および有糸分裂異常を誘導する能力に基づいて特徴付けられ得る。大半の化学療法剤は、以下のカテゴリに分類される:アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、コルチコステロイドホルモン、有糸分裂インヒビター、およびニトロソ尿素、ホルモン剤、雑多剤、およびそれらの任意のアナログまたは誘導改変体。
【0239】
化学療法剤、および投与、投薬などの方法は、当業者に周知であり(例えば、「Physicians Desk Reference」、Goodman&Gilman’s「The Pharmacological Basis of Therapeutics」および「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(関連箇所が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)、そして、本明細書中の開示の観点から本発明と組合せられ得る。投薬におけるいくつかの改変は、処置される被験体の状態に依存して、必然的に生じる。投与の担当者は、いずれにせよ、個々の被験体についての適切な用量を決定する。特定の化学療法剤および用量レジメンの例はまた、本明細書中に記載される。もちろん、本明細書中で記載されるこれらの投薬量および薬剤の全ては、限定するのではなく例示的なものであり、そして、他の用量または薬剤が、特定の患者または適用のために、当業者によって使用され得る。これらの点の中間の任意の投薬量、またはこれらの点から誘導し得る範囲の任意の投薬量はまた、本発明における使用として予想される。
【0240】
アルキル化剤は、癌細胞が増殖しないようにするために、ゲノムDNAと直接相互作用する薬物である。化学療法薬のこのカテゴリは、細胞周期の全期に影響する薬剤を示し、すなわち、これらの薬剤は、期特異的ではない。アルキル化剤は、例えば、以下を処置するために導入され得る:慢性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、多発骨髄腫、ならびに胸部、肺および卵巣の特定の癌。アルカリ化剤としては、以下が挙げられ得るがこれらに限定されない:ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン(ethylenimene)、メチルメラミン、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素またはトリアジン。
【0241】
アルキル化剤としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ブスルファン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド(サイトキサン)、ダカルバジン、イホスファミド、メクロレタミン(マスターゲン)、およびメルファラン。特定の局面において、トログリタザオン(troglitazaone)は、1つ以上の任意のこれらのアルキル化剤と組合せて癌を処置するために使用され得、このうちのいくつかを、以下で議論する。
【0242】
(1.ナイトロジェンマスタード)
ナイトロジェンマスタードは、以下であり得るが、これらに限定されない:メクロレタミン(HN2)(これは、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫に対して使用される);シクロホスファミドおよび/またはイホスファミド(これは、急性リンパ性白血病および慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発骨髄腫、神経芽腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、ウィルムス腫、精巣頸漿液腫および軟部組織漿液腫のような癌の処置で使用される);メルファラン(L−サルコリシン)(これは、多発骨髄腫、乳癌および卵巣癌のような癌を処置するために使用される);およびクロラムブシル(これは、例えば、慢性リンパ性(lymphatic(lymphocytic))白血病、悪性リンパ腫(リンパ肉腫、巨大濾胞性リンパ腫、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫を含む)のような疾患を処置するために使用される)。
【0243】
クロラムブシル(ロイケランとしても知られる)は、ナイトロジェンマスタード型の二官能性のアルキル化剤であり、これは、選択されたヒト腫瘍性疾患に対して活性があることが見出されている。クロラムブシルは、4−[ビス(2−クロルエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸として化学的に公知である。
【0244】
クロラムブシルは、経口投与については錠剤形態で利用可能である。これは、消化管で迅速かつ完全に吸収される。例えば、約0.6mg/kg〜約1.2mg/kgの単回経口用量の後、1時間以内に、血漿クロラムブシルレベルはピークに達し、そして、親薬物の終末半減期は、約1.5時間と推定される。約0.1mg/kg/日〜0.2mg/kg/日、または約36mg/m2/日〜6mg/m2/日、あるいは、約0.4mg/kgが、抗悪性腫瘍処置のために使用され得る。クロラムブシルは、それ自身が治療薬ではないが、臨床的に有用な緩和を生じ得る。
【0245】
シクロホスファミドは、2H−1,3,2−オキサザホスホリン−2−アミン、N,N−ビス(2−クロロエチル)テトラヒドロ−,2−オキシド,一水和物であり;Cytoxan(Mead Johnsonから利用可能);およびNeosar(Adriaから利用可能)と呼ばれる。シクロホスファミドは、ジオキサン溶液中で、N,N−ビス(2−クロロエチル)二塩化ホスホラミダイト([(ClCH2CH2)2N−POCl2])を用いて、3−アミノ−1−プロパノールをトリエチルアミンの触媒影響下で縮合することによって、調製される。この濃縮物は二重であり、そして、ヒドロキシル基およびアミノ基の両方を含み、したがって、環化をもたらす。
【0246】
他のβ−クロロエチルアミノアルキレーターとは異なり、これは、肝酵素によって活性化されるまで、活性エチレンイモニウム形態まで容易に環化されない。したがって、この物質は、消化管で安定であって、非常に寛容性であり、そして、経口経路および非経口経路に有効で、そして、局部的水疱発生、壊死、静脈炎、またはさらなる疼痛を引き起こさない。
【0247】
成人のための適切な経口用量としては、例えば、約1mg/kg/日〜約5mg/kg/日(通常組合せで)(消化管の寛容性に依存する);または、約1mg/kg/日〜約2mg/kg/日が挙げられ;静脈内用量としては、例えば、初期は、約2日〜約5日の期間にわたって、分割用量で約40mg/kg/日〜約50mg/kg/日、もしくは約7日〜約10日毎に、約10mg/kg〜約15mg/kg、もしくは、1週間に2回、約3mg/kg〜約5mg/kg、または1.5mg/kg/日〜約3mg/kg/日が挙げられる。いくつかの局面において、約250mg/kg/日の用量が、抗悪性腫瘍薬として投与され得る。消化管への悪影響に起因して、静脈内経路はローディングが好ましい。維持の間に、約3000/mm3〜4000/mm3の白血球数が、通常所望される。薬物はまた、時には、浸潤によってかまたは体腔へ、筋内投与される。これは、約100mg、約200mgおよび約500mgの注射のための投薬形態、ならびに約25mgおよび約50mgの錠剤形態で利用可能である。
【0248】
メルファラン(アルケランとしても知られる)、L−フェニルアラニンマスタード、フェニルアラニンマスタード、L−PAMまたはL−サルコリシンは、ナイトロジェンマスタードのフェニルアラニン誘導体である。メルファランは、選択的なヒト腫瘍性疾患に対して活性である二官能性のアルキル化剤である。これは、4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−L−フェニルアラニンとして化学的に公知である。
【0249】
メルファランは、化合物の活性L−異性体であり、そして、BergelおよびStockによって、1953年に最初に合成された;D−異性体(メドファランとして知られる)は、特定の動物腫瘍に対してほとんど活性ではなく、そして、染色体に対して影響するために必要な用量は、L−異性体に必要とされる用量よりも多い。ラセミ(DL−)形態は、メルファランまたはサルコリシンとして公知である。メルファランは、水に不溶性であり、そして、約2.1のpKa1を有する。メルファランは、経口投与のために錠剤形態で利用可能であり、そして、多発骨髄腫の処置のために使用されている。有効な証拠によって、多種骨髄腫を有する患者の約3分の1〜2分の1が、この薬物の経口投与に好ましい反応を示すということが示唆される。
【0250】
メルファランは、上皮卵巣癌の処置で使用されている。卵巣癌の処置のために通常使用される1つのレジメンは、単回コースとして、5日間毎日約0.2mg/kgの用量でメルファランを投与することである。コースは、血液寛容性に依存して、約4〜5週間毎に繰り返される(SmithおよびRutledge、1975;Youngら、1978)。あるいは、特定の実施形態において、使用されるメルファランの用量は、約0.05mg/kg/日ほど少量であり得るか、または約3mg/kg/日もしくはそれより多いほど多量であり得る。
【0251】
(2.エチレンイミンおよびメチルメラミン)
エチレニメネンおよび/またはメチルメラミンとしては、ヘキサメチルメラミン(卵巣癌の処置に使用される);およびチオテパ(膀胱癌、乳癌および卵巣癌の処置に使用される)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0252】
(3.スルホン酸アルキル)
スルホン酸アルキルとしては、ブスルファン(慢性顆粒球性白血病の処置に使用される)のような薬物が挙げられるが、これに限定されない。
【0253】
ブスルファン(ミレランとしても知られる)は、二官能性のアルキル化剤である。ブスルファンは、1,4−ブタンジオールジメタンスルホン酸として化学的に公知である。ブスルファンは、経口投与のために錠剤形態として利用可能であり、ここで、例えば、各分割錠は、約2mgのブスルファンならびに不活性成分のステアリン酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムを含む。
【0254】
ブスルファンは、慢性骨髄性(骨髄様性、骨髄球性、顆粒球性)白血病の待機療法のために必要とされる。治療的ではないが、ブスルファンは、顆粒球の全質量を減少し、疾患の症状を軽減し、そして、患者の臨床状態を改善する。以前に非処置の慢性骨髄性白血病を有した成人の約90%が、ブスルファンの使用後に、巨大臓器の退行または安定化を伴う血液学的緩和を得る。ブスルファンは、生存時間およびヘモグロビンレベルの維持に関して、脾臓照射に優れており、そして、巨脾腫を制御するときの照射と等価であることが示されている。
【0255】
(4.ニトロソ尿素)
アルキル化剤のように、ニトロソ尿素は、DNA修復タンパク質を阻害する。これらは、非ホジキンリンパ腫、多発骨髄腫、悪性黒色腫、さらに脳腫瘍を処置するために使用される。ニトロソ尿素としては、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)またはストレプトゾシンが挙げられるが、これらに限定されない。セムスチンは、原発性脳腫瘍、胃癌、または大腸癌のような癌に使用されている。ストレプトゾシン(stroptozocin)は、悪性脾臓インスリノーマ、または悪性カルチノイドのような疾患を処置するために使用されている。ストレプトゾシンは、悪性黒色腫、ホジキン病および軟部組織肉腫のような癌を処置するために使用される。
【0256】
カルムスチン(滅菌カルムスチン)は、特定の腫瘍性疾患の処置で使用されるニトロソ尿素の1つである。これは、1,3ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソ尿素である。これは、分子量214.06を有する凍結乾燥化淡黄色薄片または凝結化塊である。これは、アルコールおよび脂質に非常に可溶性であり、そして、水にはあまり可溶性でない。カルムスチンは、言及したような再形成の後、静脈内注射によって投与される。
【0257】
カルムスチンがDNAおよびRNAをアルキル化するということは一般に合意されているが、これは、他のアルキル化剤(alkylator)と交差耐性ではない。他のニトロソ尿素類と同様に、カルムスチンもまた、タンパク質のアミノ酸のカルバモイル化によって、いくつかの重要な酵素学的プロセスを阻害し得る。
【0258】
カルムスチンは、単独の薬剤として待期療法としてか、または脳腫瘍(例えば、膠芽腫、脳幹神経膠腫、髄芽腫(medullobladyoma)、星状細胞腫、上衣腫、および転移性脳腫瘍)において、他の認可された化学療法剤との確立された組み合わせ治療において示されている。カルムスチンはまた、多発性骨髄腫を処置するために、プレドニゾンとの組み合わせにおいて使用されている。カルムスチンは、多発性骨髄腫または悪性黒色腫のような癌を処置するにおいて使用されている。カルムスチンは、一次療法で処置されたが再発した患者または一次療法に応答できなかった患者において、他の認可された薬物と組み合わせた二次療法として、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫の処置において有用であることが証明されている。
【0259】
滅菌カルムスチンは、凍結乾燥物質の100mg単回用量のバイアルで、一般に入手可能である。以前に処置されていなかった患者において、単独の薬剤としてカルムスチンの推奨される用量は、静脈内で6週間毎に約150mg/m2〜約200mg/m2である。これは、単回用量としてかまたは毎日の注射に分割されて(例えば、2日間連続して約75mg/m2〜約100mg/m2)、与えられ得る。カルムスチンが、他の骨髄抑制薬物と組み合わせて使用される場合または骨髄余量が枯渇している患者において使用される場合、この用量は、然るべく調整されるべきである。初回用量以後の用量は、前回の用量に対する患者の血液学的応答に従って調整されるべきである。当然のことながら、他の用量(例えば、約10mg/m2、約20mg/m2、約30mg/m2、約40mg/m2、約50mg/m2、約60mg/m2、約70mg/m2、約80mg/m2、約90mg/m2〜約100mg/m2)が、本発明において使用され得ることが理解される。
【0260】
ロムスチンは、特定の新生物性疾患の処置において使用されるニトロソ尿素類の1つである。ロムスチンは、1−(2−クロロ−エチル)−3−シクロヘキシル−1ニトロソ尿素類である。ロムスチンは、実験式C9H16ClN3O2および分子量233.71を有する黄色粉末である。ロムスチンは、10%エタノール(約0.05mg/mL)および無水アルコール(約70mg/mL)に可溶性である。ロムスチンは、水(約0.05mg/mL未満)に比較的不溶性である。ロムスチンは、生理的pHで比較的非イオン化される。ロムスチンカプセル中の不活化成分は、ステアリン酸マグネシウムおよびマンニトールである。
【0261】
ロムスチンがDNAおよびRNAをアルキル化するということは一般に合意されているが、これは、他のアルキル化剤(alkylator)と交差耐性ではない。他のニトロソ尿素類と同様に、ロムスチンもまた、タンパク質のアミノ酸のカルバモイル化によって、いくつかの重要な酵素学的プロセスを阻害し得る。
【0262】
ロムスチンは経口的に与えられ得る。約30mg/m2〜100mg/m2の範囲の用量で放射性ロムスチンを経口投与した後、与えられた放射能の約半分が、24時間以内に分解産物の形態で排出された。この代謝産物の血清半減期は、約16時間〜約2日間の範囲である。組織レベルは、静脈内投与から15分後で血漿レベルに匹敵する。
【0263】
ロムスチンは、他の処置様式に加えて単独の薬剤として、または他の認可された化学療法剤との確立された組み合わせ治療において、原発性脳腫瘍および転移性脳腫瘍の両方で、既に適切な外科的手順および/または放射線療法手順を受けた患者において有用であることが示されている。ロムスチンは、小細胞肺癌のような癌を処置するために使用されている。ロムスチンはまた、一次療法で処置されたが再発した患者または一次療法に応答できなかった患者において、他の認可された薬物と組み合わせて、ホジキン病に対する二次療法に有効であることが証明されている。
【0264】
以前に処置されていなかった患者において、単独の薬剤として成体および小児に推奨されるロムスチンの用量は、単回経口用量として6週間毎に約130mg/m2である。易感染性の骨髄機能を有する個体において、この用量は、6週間毎に約100mg/m2まで低減されるべきである。ロムスチンが、他の骨髄抑制薬物と組み合わせて使用される場合、この用量は、然るべく調整されるべきである。他の用量(例えば、約20mg/m2、約30mg/m2、約40mg/m2、約50mg/m2、約60mg/m2、約70mg/m2、約80mg/m2、約90mg/m2、約100mg/m2〜約120mg/m2)が使用され得ることが理解される。
【0265】
トリアジンとしては、悪性黒色腫、ホジキン病、および柔組織の肉腫のような癌の処置に使用される、ダカルバジン(dacabazine)(DTIC;ジメチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミド)のような薬物が挙げられるが、これに限定されない。
【0266】
(B.代謝拮抗物質)
代謝拮抗物質は、DNA合成およびRNA合成を破壊する。アルキル化剤とは異なり、代謝拮抗物質は、S期の間の細胞周期に特異的に影響を及ぼす。代謝拮抗物質は、胸部、卵巣および胃腸管の腫瘍に加えて慢性白血病に対抗するために使用されている。代謝拮抗物質は、葉酸アナログ、ピリミジンアナログおよびプリンアナログ、ならびに関連した阻害性化合物のような種々のカテゴリーに区別され得る。代謝拮抗物質としては、5−フルオロウラシル(5−FU)、シタラビン(Ara−C)、フルダラビン、ゲムシタビン、およびメトトレキサートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0267】
(1.葉酸アナログ)
葉酸アナログとしては、急性リンパ性白血病、絨毛癌、菌状息肉腫、胸部肉腫、頭頸部肉腫、肺肉腫、および骨原性肉腫のような癌の処置において使用されている、メトトレキサート(アメトプテリン)のような化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0268】
(2.ピリミジンアナログ)
ピリミジンアナログとしては、シタラビン(シトシンアラビノシド)、5−フルオロウラシル(フルオロウラシル;5−FU)およびフロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン;FudR)のような化合物が挙げられる。シタラビンは、急性顆粒球性白血病および急性リンパ性白血病のような癌の処置において使用されている。フロクスウリジンおよび5−フルオロウラシルは、胸部、結腸、胃、膵臓、卵巣、頭頸部、膀胱、および局部的な前悪性の皮膚の病変のような癌の処置において使用されている。
【0269】
5−フルオロウラシル(5−FU)は、5−フルオロ−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオンという化学名を有する。その作用機構は、チミジル酸へのデオキシウリジル酸のメチル化反応をブロックすることによると考えられる。従って、5−FUは、デオキシリボ核酸(DNA)の合成に干渉し、そしてより低い程度で、リボ核酸(RNA)の形成を阻害する。DNAおよびRNAは、細胞分裂および細胞増殖に必須であるので、5−FUの作用は、細胞死へと導くチミジン欠損を引き起こすことであると考えられる。従って、5−FUの作用は、転移性の癌の特徴である迅速に分裂する細胞において見出される。
【0270】
(3.プリンアナログおよび関連したインヒビター)
プリンアナログおよび関連した化合物としては、メルカプトプリン(6−メルカプトプリン;6−MP)、チオグアニン(6−チオグアニン;TG)およびペントスタチン(2−デオキシコホルマイシン)が挙げられるが、これらに限定されない。メルカプトプリンは、急性リンパ性白血病、急性顆粒球性白血病、および慢性顆粒球性白血病において使用されている。チオグアニン(thrioguanine)は、急性顆粒球性白血病、急性リンパ性白血病、および慢性リンパ性白血病のような癌の処置において使用されている。ペントスタチンは、ヘアリーセル白血病、菌状息肉腫、および慢性リンパ性白血病のような癌において使用されている。
【0271】
(C.天然物)
天然物は一般的に、天然の供給源からもともと単離され、かつ薬理学的活性を有するとして同定された化合物をいう。このような化合物、それらのアナログおよび誘導体は、当業者に公知の任意の技術によって、天然の供給源から単離され得るか、化学合成され得るか、または組換え生成され得る。天然物は、有糸分裂インヒビター、抗腫瘍抗生物質、酵素および生物学的応答の改変因子のようなカテゴリーを含む。
【0272】
(1.有糸分裂インヒビター)
有糸分裂インヒビターとしては、細胞分裂または有糸分裂のいずれかに必要とされるタンパク質合成を阻害し得る、植物アルカロイドおよび他の天然の因子が挙げられる。これらは、細胞周期中の特定の期の間で機能する。有糸分裂インヒビターとしては、例えば、ドセタキセル、エトポシド(VP16)、テニポシド、パクリタキセル、タキソール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビンが挙げられる。
【0273】
エピポドフィロトキシンは、テニポシドおよびVP16のような化合物を含む。VP16はまた、エトポシドとして公知であり、そして主に、ブレオマイシンおよびシスプラチンと組み合わせて精巣の腫瘍の処置のために、およびシスプラチンと組み合わせて肺の小細胞癌腫に対して、使用される。テニポシドおよびVP16はまた、精巣癌、他の肺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性顆粒球性白血病、急性非リンパ性白血病、胸部の癌腫、および後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連したカポージ肉腫のような癌に対して活性である。
【0274】
VP16は、静脈内投与のための溶液(例えば、20mg/ml)として、および経口用途のための液体充填カプセル(50mg)として、入手可能である。肺の小細胞癌腫について、静脈内用量(組み合わせ療法における)は、約100mg/m2ほどに多量であり得るか、または約2mg/m2ほどに少量であり得、日課的に、約4日間にわたって毎日約35mg/m2から約5日間にわたって毎日約50mg/m2もまた使用されている。経口的に投与される場合、この用量は倍加されるべきである。従って、小細胞肺癌腫に対するこの用量は、約200mg/m2から約250mg/m2ほどに多量であり得る。精巣癌に対する静脈内用量(組み合わせ療法における)は、約5日間にわたって毎日約50mg/m2〜約100mg/m2であるか、または3回の用量について隔日で約100mg/m2である。治療サイクルは通常、約3〜4週間毎に繰り返される。この薬物は、低血圧および気管支痙攣(これは恐らく、この処方物において使用されている溶媒に起因する)を回避するために、注入物として短期間(約30分間〜約60分間)で投与されるべきである。
【0275】
タキソイドは、トネリコ樹木(Taxus brevifolia)の樹皮から単離された関連化合物の1クラスである。タキソイドとしては、ドセタキセルおよびパクリタキセルのような化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0276】
パクリタキセルは、チューブリン(ビンカアルカロイド類によって使用される部位とは異なる部位に)に結合し、そして微小管のアセンブリを促進する。パクリタキセルは、臨床的に評価されつつあり;パクリタキセルは、卵巣の悪性黒色腫および癌腫に対して活性を有する。特定の局面では、最大用量は、約5日間にわたって1日あたり約30mg/m2であるか、または約3週間毎に1回与えられる約210mg/m2から約250mg/m2である。
【0277】
ビンカアルカロイド類は、薬学的活性を有するとして同定された植物アルカロイドの1タイプである。ビンカアルカロイド類としては、ビンブラスチン(VLB)およびビンクリスチンのような化合物が挙げられる。
【0278】
(2.ビンブラスチン)
ビンブラスチンは、癌および前癌を処置するために使用され得る植物アルカロイドの1例である。細胞が、ビンブラスチンと共にインキュベートされる場合、微小管の分解が生じる。
【0279】
予測不可能な吸収が、ビンブラスチンまたはビンクリスチンの経口投与後に報告されている。通常の臨床的用量で、血漿中の各薬剤のピークの濃度は、約0.4mMである。ビンブラスチンおよびビンクリスチンは、血漿タンパク質に結合する。これらは、大量に血小板に凝集され、そして白血球および赤血球により少ない程度で凝集される。
【0280】
静脈内注射後、ビンブラスチンは、血漿からのクリアランスの多面的パターンを有し;分配後、薬剤は、約1時間および20時間の半減期で血漿から消失する。ビンブラスチンは、生物学的に活性な誘導体である脱アセチル化ビンブラスチンへと肝臓中で代謝される。約15%の用量が、尿中でインタクトで検出され、そして約10%が胆汁排泄後に糞便中で回収される。用量は、肝機能不全を有する患者において減少されるべきである。血漿中のビリルビンの濃度が3mg/dl(約50mM)よりも高い場合に、用量において少なくとも50%の減少が示される。0.3mg/kg体重の単回用量後、骨髄抑制(myelosuppression)が、約7日間〜約10日間でその最大限に達する。白血球減少症の中程度のレベル(約3000細胞/mm3)が、達成されない場合、毎週の用量が、約0.05mg/kg体重ずつの増加によって徐々に増加され得る。精巣癌を治療するように設計されたレジメンにおいて、ビンブラスチンは、血球数または毒性に関係なく、約3週間毎に約0.3mg/kgの用量で使用される。
【0281】
ビンブラスチンの重要な臨床的使用は、精巣の転移性腫瘍の治療療法においてブレオマイシンおよびシスプラチンと一緒に使用することである。有益な応答が、種々のリンパ腫(特にホジキン病)において報告されており、ここで、有意な改善が、50〜90%の場合において示され得る。疾患が、アルキル化剤に抵療性である場合、高い比率のリンパ腫におけるビンブラスチンの効果は、減少されない。これは、カポージ肉腫、精巣癌、神経芽腫、およびレテラージーヴェ病(原因不明性組織球増殖)、ならびに女性における乳癌および絨毛癌においてもまた活性である。
【0282】
約0.1mg/kg〜約0.3mg/kgの用量が投与され得るか、または約1.5mg/m2〜約2mg/m2の用量もまた投与され得る。あるいは、約0.1mg/m2、約0.12mg/m2、約0.14mg/m2、約0.15mg/m2、約0.2mg/m2、約0.25mg/m2、約0.5mg/m2、約1.0mg/m2、約1.2mg/m2、約1.4mg/m2、約1.5mg/m2、約2.0mg/m2、約2.5mg/m2、約5.0mg/m2、約6mg/m2、約8mg/m2、約9mg/m2、約10mg/m2から約20mg/m2が、与えられ得る。
【0283】
(3.ビンクリスチン)
ビンクリスチンは、有糸分裂をブロックし、そして分裂中期の停止を生じる。この薬剤の生物学的活性の大半が、チューブリンに特異的に結合するその能力および微小管に重合するタンパク質の能力をブロックするその能力によって説明され得るようである。有糸分裂の器官の微小管の破壊を介して、細胞分裂は、分裂中期において停止される。有糸分裂の間に染色体を正確に分離する能力がないことは、おそらく細胞死の原因となる。
【0284】
正常な骨髄細胞および上皮細胞についてのビンクリスチンの比較的低い毒性は、この薬剤を、抗腫瘍剤の間で通常とは異なるものにし、そしてビンクリスチンはしばしば、他の骨髄抑制剤と組み合わせて含まれる。
【0285】
予想不可能な吸収が、ビンブラスチンまたはビンクリスチンの経口投与後に報告されている。通常の臨床的用量で、血漿における各薬剤のピークの濃度は約0.4mMである。
【0286】
ビンブラスチンおよびビンクリスチンは、血漿タンパク質に結合する。これらは、血小板に大量に凝集され、そして白血球および赤血球により少ない程度で凝集される。ビンクリスチンは、血漿からのクリアランスの多面的パターンを有し;末期の半減期は、約24時間である。この薬剤は、肝臓中で代謝されるが、しかし生物学的に活性な誘導体は、同定されていない。用量は、肝機能障害を有する患者において減少されるべきである。血漿中のビリルビンの濃度が約3mg/dl(約50mM)よりも高い場合、用量において少なくとも50%の減少が示される。
【0287】
硫酸ビンクリスチンは、静脈内注射のための溶液(例えば、1mg/ml)として利用可能である。コルチコステロイドと一緒に使用されるビンクリスチンは、現在小児白血病における寛解を誘導するための選り抜きの処置法であり;これらの薬剤についての最適な用量は、ビンクリスチン(静脈内、約2mg/m2の体表面積、毎週):およびプレドニゾン(経口的、約40mg/m2、毎日)のようである。ホジキン病または非ホジキンリンパ腫を有する成人患者は、通常、複雑なプロトコールの一部としてビンクリスチンを受ける。MOPPレジメンにおいて使用される場合、ビンクリスチンの推奨される用量は、約1.4mg/m2である。高い用量のビンクリスチンは、重篤な神経学的毒性を経験する場合がある成体よりも、白血病を有する小児により耐性のようである。7日毎よりも頻繁な薬剤の投与、またはより高い用量での薬剤投与は、応答の割合において比例的に改善せずに、毒性の症状を増加するようである。ビンクリスチンの静脈内投与の間の管外遊出を避けるために注意されるべきである。ビンクリスチン(およびビンブラスチン)は、比較可能な毒性で静脈内に投与され得る用量をよりも数倍多い用量で腫瘍の動脈血の輸血血液に注入され得る。
【0288】
ビンクリスチンは、ホジキン病および他のリンパ腫において効果的である。ビンクリスチンは、ホジキン病において単独で使用される場合、ビンブラスチンよりもいくらか不利なようであるが、メクロレタミン、プレドニゾン、およびプロカルバジンと共に使用される(いわゆる、MOPPレジメン)場合、ビンクリスチンは、この疾患の進行した段階(IIIおよびIV)のための処置として好ましい。非ホジキンリンパ腫において、ビンクリスチンは、重要な薬剤であり、特にシクロホスファミド、ブレオマイシン、ドキソルビシンおよびプレドニゾンと共に使用される場合に重要な薬剤である。ビンクリスチンは、リンパ性白血病において、ビンブラスチンよりも有用である。有利な応答が、種々の他の新生物(特に、ウィルムス腫、神経芽腫、脳腫瘍、横紋筋肉腫、小細胞肺、および乳癌、膀胱癌、ならびに男性および女性の生殖系の癌)を有する患者において報告されている。
【0289】
ビンクリスチンの用量は、約0.01mg/kg〜約0.03mg/kg含むか、または約0.4mg/m2〜約1.4mg/m2の用量が投与され得るか、または約1.5mg/m2〜約2mg/m2の用量もまた、投与され得る。あるいは、特定の実施形態において、約0.02mg/m2、0.05mg/m2、約0.06mg/m2、約0.07mg/m2、約0.08mg/m2、約0.1mg/m2、約0.12mg/m2、約0.14mg/m2、約0.15mg/m2、約0.2mg/m2、約0.25mg/m2が、持続的な静脈内注入として与えられ得る。
【0290】
(D.抗腫瘍抗生物質)
抗腫瘍抗生物質は、抗菌活性および細胞毒性活性の両方を有する。これらの薬剤はまた、酵素および有糸分裂を化学的に阻害すること、または細胞膜を改変することによって、DNAに干渉する。これらの薬剤は、期特異性ではないので、これらは細胞周期の全ての期において機能する。従って、これらは、種々の癌について広範に使用される。抗腫瘍抗生物質の例としては、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、プリカマイシン(plicamycin)(ミトラマイシン)、およびイダルビシンが挙げられるが、これらに限定されない。新生物の処置のための臨床的設定において広く使用される、これらの化合物は、一般に、静脈内のボーラス注射または経口を介して投与される。
【0291】
(1.ドキソルビシン)
塩酸ドキソルビシン、5,12−ナフタセンジオン、(8s−cis)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−a−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−8−(ヒドロキシアセチル)−1−メトキシ−ヒドロクロリド(ヒドロキシダウノルビシンヒドロクロリド,アドリアマイシン)が、広範な抗腫瘍性スペクトルにおいて使用される。これは、DNAに結合し、そして核酸合成を阻害し、有糸分裂を阻害し、そして染色体異常を促進する。
【0292】
単独で投与され、これは甲状腺腺腫、および原発性肝細胞癌の処置のために第1に選択される薬剤である。これは、卵巣腫瘍、子宮内膜腫瘍および胸部腫瘍、気管支原性の燕麦細胞癌、非小細胞肺癌、胃(stomach)、尿生殖器、甲状腺、胃腺癌(gastric adenocarcinoma)、網膜芽腫、神経芽腫、菌状息肉腫、膵臓癌、前立腺癌、膀胱癌、骨髄腫、散在性細網肉腫、ウィルムス腫瘍、ホジキン病、腎傍の腫瘍、骨原性肉腫、柔組織肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、および急性リンパ性白血病を含む疾患の処置のための31個の第1に選択される組合せの成分である。これは、他の疾患(例えば、島細胞、頸部の癌、精巣癌および副腎皮質の癌)の処置のための代替の薬剤である。これはまた、免疫抑制剤である。
【0293】
ドキソルビシンは、わずかに吸収され、そして好ましくは、静脈内に投与される。この薬物動態学は、多区画である。分配期は、12分間および3.3時間の半減期を有する。排出の半減期は約30時間であり、胆汁中へ約40%〜約50%分泌される。残りの大半は、肝臓において代謝され、一部は活性な代謝産物(ドキソルビシノール)に代謝されるが、数%は、尿中に排泄される。肝機能障害が存在する際、この用量は減少されるべきである。
【0294】
特定の実施形態において、適切な静脈内用量は、成体で、約21日間の間隔で約60mg/m2〜約75mg/m2、または約3週間〜約4週間の間隔で繰り返される2もしくは3日連続した日において各々約25mg/m2〜約30mg/m2、または週に1回、約20mg/m2である。事前の化学療法によって生じた事前の骨髄機能低下もしくは腫瘍性の骨髄浸潤が存在する場合、または薬剤が、他の骨髄造血抑制剤と組み合わされる場合、最小の用量が、高齢の患者において使用されるべきである。この用量は、血清ビリルビンが、約1.2mg/dLと約3mg/dLとの間にある場合、約50%減少されるべきであり、そして約3mg/dLより多い場合、約75%減少されるべきである。生存期間の総用量は、正常な心機能を有する患者において約550mg/m2を超えるべきではなく、そして縦隔の放射線照射を受けている人において約400mg/m2を超えるべきではない。特定の実施形態において、代替の用量は、約4週間毎に繰り返される、3日の連続した日のそれぞれにおいて約30mg/m2の用量を含み得る。例示的な用量は、約10mg/m2、約20mg/m2、約30mg/m2、約50mg/m2、約100mg/m2、約150mg/m2、約175mg/m2、約200mg/m2、約225mg/m2、約250mg/m2、約275mg/m2、約300mg/m2、約350mg/m2、約400mg/m2、約425mg/m2、約450mg/m2、約475mg/m2から約500mg/m2であり得る。
【0295】
(2.ダウノルビシン)
塩酸ダウノルビシン,5,12−ナフタセンジオン,(8S−cis)−8−アセチル−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−a−L−リキソ−ヘキサノピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−10−メトキシ−,ヒドロクロリド;はまた、セルビジンとも称され、そしてWyethから入手可能である。ダウノルビシン(ダウノマイシン;ルビドマイシン)は、DNA中にインターカレートし、DNA−指向性RNAポリメラーゼをブロックし、そしてDNA合成を阻害する。これは、核酸合成に干渉しない用量で、細胞分裂を妨げ得る。
【0296】
他の薬物と組み合わせて、これは、以下のような疾患の第一志望化学療法にしばしば含まれる:例えば、急性顆粒球性白血病、成人の急性骨髄性白血病(寛解の誘導)、急性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病の急性期。経口吸収は、乏しく、好ましくは他の方法(例えば、静脈内)により与えられる。分布の半減期は、45分であり、そして排泄の半減期は19時間である。その活性代謝物であるダウノルビシノールの半減期は、約27時間である。ダウノルビシンは、主に肝臓で代謝され、そしてまた胆汁中に分泌される(約40%)。投薬量は、肝不全または腎不全の際には低減されなければならない。
【0297】
一般的に、適切な静脈内用量は、(塩基当量):成人(60歳未満)、約3週毎もしくは4週毎に約1日、約2日または約3日の間約45mg/m2/日(60歳より高齢の患者には約30mg/m2)、あるいは約3週毎もしくは約4週毎に約3日、約4日、約5日〜約6日の間約0.8mg/kg/日であり;胸部照射があった場合に約450mg/m2だけであることを除いて、生存期間中に約550mg/m2以下が与えられるべきである;小児、年齢が2歳未満でないかまたは体表面が約0.5m未満でなければ、週に1回約25mg/m2、この場合、重量ベースの成人用スケジュールを使用する。(約21.4mgの塩酸塩の塩基当量として)約20mgの注射用投薬形態(塩基当量)が利用可能である。例示的な用量は、約10mg/m2、約20mg/m2、約30mg/m2、約50mg/m2、約100mg/m2、約150mg/m2、約175mg/m2、約200mg/m2、約225mg/m2、約250mg/m2、約275mg/m2、約300mg/m2、約350mg/m2、約400mg/m2、約425mg/m2、約450mg/m2、約475mg/m2〜約500mg/m2であり得る。
【0298】
(3.マイトマイシン)
マイトマイシン(ムタマイシン(mutamycin)および/またはマイトマイシン−Cとしても公知)は、Streptomyces caespitosusのブロスから単離された抗生物質であり、これは、抗腫瘍活性を有することが示されている。この化合物は、熱安定性であり、高い融点を有し、そして有機溶媒に自由に溶解可能である。
【0299】
マイトマイシンは、デオキシリボ核酸(DNA)の合成を選択的に阻害する。グアニンおよびシトシンの含量は、マイトマイシン誘導架橋の程度と相関する。高濃度の薬物では、細胞のRNA合成およびタンパク質合成はまた抑制される。マイトマイシンは、胃、頚部、結腸、胸部、膵臓、膀胱ならびに頭部および頚部のような腫瘍において使用されてきた。
【0300】
ヒトにおいて、マイトマイシンは、静脈内投与後、血清から急速に除去される。30mgのボーラス注射後約50%血清濃度を低減するのに必要な時間は、17分である。30mg、20mg、または10mgの静脈内注射後、最大血清濃度は、それぞれ2.4mg/mL、1.7mg/mL、および0.52mg/mLであった。クリアランスは、主に肝臓での代謝によりもたらされるが、代謝は、他の組織でも起こる。クリアランスの速度は、分解経路の飽和(と考えられる)に起因して、最大血清濃度に逆比例する。約10%のマイトマイシン用量は、尿中に変化されずに排出される。代謝経路は比較的低い用量で飽和するので、尿中に排出される用量の割合は、用量が増加するにつれて増加する。小児において、静脈内投与されたマイトマイシンの排出は同様である。
【0301】
(4.アクチノマイシンD)
アクチノマイシンD(ダクチノマイシン)[50−76−0];C62H86N12O16(1255.43)は、DNA依存性RNAポリメラーゼを阻害する抗腫瘍薬である。これは、しばしば、例えば、絨毛癌、胎児性横紋筋肉腫、精巣腫瘍、カポージ肉腫およびウィルムス腫のような疾患の処置のための第一志望組合せの構成成分である。全身処置に応答しない腫瘍が、局所灌流に応答することもある。ダクチノマイシンは、放射線治療を可能にする。これは、二次的(遠心性)免疫抑制である。
【0302】
特定の具体的な局面において、アクチノマイシンDは、例えば、一次手術、放射線治療、および他の薬物(特にビンクリスチンおよびシクロホスファミド)のような因子と組み合わせて使用される。抗腫瘍活性はまた、ユーイング腫、カポージ肉腫、および軟組織肉腫において示されている。ダクチノマイシンは、絨毛癌の進行した症例を有する女性において有効であり得る。これはまた、転移性精巣癌を有する患者においてクロラムブシルおよびメトトレキサートの組合せにおいて一貫した応答を生じる。応答は、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫を有する患者において観察され得ることがある。ダクチノマイシンはまた、免疫学的応答(特に、腎移植の拒絶)を阻害するためにも使用されている。
【0303】
用量の半分は、インタクトで胆汁に排出され、そして10%は尿中に排出される;半減期は約36時間である。この薬物は、血液脳関門を通過しない。アクチノマイシンDは、凍結乾燥された粉末として供給される(各バイアルに0/5mg)。通常日用量は、約10mg/kg〜約15mg/kgである;これは、約5日間静脈内に与えられる;毒性の発現が無ければ、追加のクールが、約3週間〜約4週間の間隔で与えられ得る。約100mg〜約400mgの毎日の注射が、約10日間〜約14日間小児に与えられた;他のレジメンでは、約3mg/kg〜約6mg/kg(約125mg/kgの総量について)、および約7.5mg/kgの毎週の維持用量が使用された。静脈内注入のチュービング中に薬物を投与することはより安全であるが、皮下反応を回避するために、バイアルから薬物を引き抜くために使用される針の廃棄に注意しながら、直接の静脈内注射が与えられた。例示的な用量は、約100mg/m2、約150mg/m2、約175mg/m2、約200mg/m2、約225mg/m2、約250mg/m2、約275mg/m2、約300mg/m2、約350mg/m2、約400mg/m2、約425mg/m2、約450mg/m2、約475mg/m2〜約500mg/m2であり得る。
【0304】
(5.ブレオマイシン)
ブレオマイシンは、Streptomyces verticillusの系統から単離された細胞毒性糖ペプチド抗生物質の混合物である。ブレオマイシンの作用の正確な機構は未知であるが、利用可能な証拠は、作用の主様式が、DNA合成の阻害であることを示しているようであり、いくつかの証拠は、RNAおよびタンパク質の合成のより低い阻害を示しているようである。
【0305】
マウスにおいて、高濃度のブレオマイシンは、皮膚、肺、腎臓、腹膜、およびリンパで見出される。皮膚および肺の腫瘍細胞は、低濃度が見出される造血組織と対照的に、高濃度のブレオマイシンを有することが見出された。骨髄で見出される低濃度のブレオマイシンは、その組織において見出される高レベルのブレオマイシン分解酵素と関連し得る。
【0306】
約35mL/分より高いクレアチニンクリアランスを有する患者において、ブレオマイシンの血清または血漿の終末排出半減期は、約115分である。約35mL/分未満のクレアチニンクリアランスを有する患者において、血漿または血清の終末排出半減期は、クレアチニンクリアランスが減少するにつれて指数関数的に増加する。ヒトにおいて、約60%〜約70%の投与用量は、活性ブレオマイシンとして尿で回収される。特定の実施形態において、ブレオマイシンは、筋内経路、静脈内経路、または皮下経路で与えられ得る。これは、水に自由に溶解する。アナフィラキシー様反応の可能性のために、リンパ腫の患者は、最初の2回の用量については2単位以下で処置されるべきである。急性反応が起こらなければ、通常の投薬スケジュールに従い得る。
【0307】
好ましい局面において、ブレオマイシンは、待期療法と考えられるべきである。これは、単一の薬剤または他の認可された化学療法剤との証明された組合せのいずれかとして、以下の新生物の取り扱いにおいて有用であることが示された:頭部および頚部(口、舌、扁桃、鼻咽頭、口腔咽頭部、洞、口蓋、唇、頬粘膜、歯肉、喉頭蓋、喉頭)、食道、肺および尿生殖器管、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、皮膚、陰茎、頚部および外陰のような扁平上皮細胞癌。これはまた、リンパ腫および精巣癌の処置において使用される。
【0308】
ホジキン病および精巣腫瘍の改善は、即座であり、2週間以内に示される。この時間までに改善がみられない場合、改善はありそうもない。扁平上皮細胞癌は、より遅く応答し、なんらかの改善が示されるまでに3週間も必要とすることがある。
【0309】
(E.ホルモンおよびアンタゴニスト)
ホルモン治療はまた、本発明と共に使用され得、そして/または任意の他の癌治療もしくは薬剤と組み合わせて使用され得る。ホルモンの使用は、特定の癌(例えば、乳癌、前立腺癌、卵巣癌または頚部癌)の処置において使用されて、テストステロンまたはエストロゲンのような特定のホルモンのレベルを低下させ得るか、あるいはこれらのホルモンの効果をブロックし得る。この処置は、しばしば、処置の選択肢として少なくとも1つの他の癌治療と組み合わせて使用されるか、転移の危険性を低減するために使用される。
【0310】
(1.アドレノコルチコステロイド)
コルチコステロイドホルモンは、いくつかの種類の癌(例えば、非ホジキンリンパ腫、急性および慢性のリンパ性白血病、乳癌、および多発性骨髄腫)を処置する際に有用である。これらのホルモンは多くの非癌状態の処置において使用されてきたが、これらが癌細胞を殺傷するかまたは癌細胞の成長を遅らせるために実行される場合は化学療法薬とみなされる。コルチコステロイドホルモンは、他の化学療法剤の有効性を増加し得、そして結果的に、併用処置において頻繁に使用される。プレドニゾンおよびデキサメタゾンは、コルチコステロイドホルモンの例である。
【0311】
(2.他のホルモンおよびアンタゴニスト)
プロゲスチン(例えば、カプリン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、および酢酸メゲストロール)は、子宮内膜癌および乳癌において使用されてきた。エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール)は、乳癌および前立腺癌のような癌において使用されてきた。抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン)は、乳癌のような癌において使用されてきた。アンドロゲン(例えば、プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン)もまた、乳癌の処置において使用されてきた。抗アンドロゲン(例えば、フルタミド)は、前立腺癌の処置において使用されてきた。ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(例えば、ロイプロリド)は、前立腺癌の処置において使用されてきた。米国特許第4,418,068号(本明細書中に参考として援用される)は、前立腺癌および乳癌のような癌の処置のための抗エストロゲン性および抗アンドロゲン性のベンゾチオフェン類(例えば、6−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−[4−(2−ピペリジノエトキシ)ベンゾイル]ベンゾ[b]チオフェン、ならびにそのエステル、エーテル、および塩)を開示する。
【0312】
(F.種々雑多の因子)
いくつかの化学治療剤は、それらの活性に基づいて、以前のカテゴリーに当てはまらない。これには、白金配位錯体、アンドラセンジオン、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アムサクリン、L−アスパラギナーゼ、およびトレチノインが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、併用治療における使用のための本発明の組成物および方法に含まれることが企図される。
【0313】
(1.白金配位錯体)
白金配位錯体としては、カルボプラチンおよびシスプラチン(cis−DDP)のような化合物が挙げられる。シスプラチンは、癌(例えば、転移性精巣癌および転移性卵巣癌、進行性膀胱癌、頭部もしくは頸部の癌、子宮頸癌、肺癌または他の腫瘍)を処置するために、広く使用されている。シスプラチンは、経口的に吸収されず、従って、他の経路(例えば、静脈内注射、皮下注射、腫瘍内注射または腹腔内注射)を介して送達されなければならない。シスプラチンは、単独でか、または他の因子と共に使用され、特定の実施形態において、3週間毎に5日間、合計3回、約15mg/m2〜約20mg/m2の有効用量が臨床的適用において使用されることが、企図される。用量は、例えば、約0.50mg/m2、約1.0mg/m2、約1.50mg/m2、約1.75mg/m2、約2.0mg/m2、約3.0mg/m2、約4.0mg/m2、約5.0mg/m2、〜約10mg/m2であり得る。
【0314】
(2.他の因子)
ミトキサントロンのようなアントラセンジオンは、急性顆粒球性白血病および乳癌を処置するために使用されてきた。ヒドロキシ尿素のような置換尿素は、慢性顆粒球性白血病、真性赤血球増加症、本態性血小板減少症および悪性黒色腫の処置において使用されてきた。プロカルバジン(N−メチルヒドラジン、MIH)のようなメチルヒドラジン誘導体は、ホジキン病の処置において使用されてきた。ミトーテンのような副腎皮質抑制剤は、副腎皮質癌を処置するために使用され、一方、アミノグルテチミドは、ホジキン病を処置するために使用された。
【0315】
(G.放射線治療剤)
放射線治療剤としては、DNA損傷を引き起こす放射線および波(例えば、γ放射、X線、プロトンビーム照射、UV照射、マイクロ波、電子発光、放射性同位体など)が挙げられる。治療は、上記の形態の放射線を限局性の腫瘍部位に照射することによって、達成され得る。おそらく、これらの因子の全てが、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の構築および維持に対して、広範な損傷DNA、を行うようである。
【0316】
放射線治療剤および投薬方法、投与量などは、当業者に周知であり、本明細書中の開示を考慮して本発明と組み合わせられ得る。例えば、投薬量は、X線範囲について、長期間(3〜4週間)にわたる50〜200レントゲンの一日線量から、2000〜6000レントゲンの単回線量の範囲である。放射線同位体についての投薬量範囲は、広範に変化し、そして同位体の半減期、放射される放射線の強度およびタイプ、ならびに新生物細胞による取込みに依存する。
【0317】
(H.免疫治療剤)
免疫治療剤は、一般に、癌細胞を標的化および破壊する免疫エフェクター細胞および分子の使用に頼る。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のいくつかのマーカーに対して特異的な抗体であり得る。この抗体は単独で、治療のエフェクターとして働き得るか、またはこの抗体は、細胞の殺傷を実際に行う他の細胞を漸増し得る。この抗体はまた、薬物または毒素(例えば、化学治療剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)に結合し得、単に標的化因子として働き得る。このような抗体結合体は、免疫毒素と呼ばれ、当該分野で周知である(米国特許第5,686,072号、米国特許第5,578,706号、米国特許第4,792,447号、米国特許第5,045,451号、米国特許第4,664,911号および米国特許第5,767,072号(各々は本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。あるいは、このエフェクターは、直接的かまたは間接的にかのいずれかで腫瘍細胞標的と相互作用する表面分子を有するリンパ球であり得る。種々のエフェクター細胞としては、細胞障害性T細胞およびNK細胞が挙げられる。
【0318】
免疫治療の1つの局面において、腫瘍細胞は、標的化を受け得る、すなわち、大多数の他の細胞上に存在しないいくつかのマーカーを保有しなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、そしてこれらのうちの任意のものが、本発明の状況において、標的化に適切であり得る。一般的な腫瘍マーカーとしては、癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、非尿系腫瘍関連抗原、胎児抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG−72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲンレセプター、ラミニンレセプター、erb Bおよびp155が挙げられる。
【0319】
(1.免疫刺激因子)
特定の局面において、免疫治療は、免疫刺激分子を、因子として、またはより好ましくは、別の因子(例えば、サイトカイン(例えば、IL−2、IL−4、IL−12、GM−CSF、腫瘍壊死因子;インターフェロンα、βおよびγ;F42Kおよび他のサイトカインアナログ);ケモカイン(例えば、MIP−1、MIP−1β、MCP−1、RANTES、IL−8);または増殖因子(例えば、FLT3リガンド))と共に、使用することである。
【0320】
本発明で使用するために意図される1つの特定のサイトカインは、腫瘍壊死因子である。腫瘍壊死因子(TNF;カケクチン)は、いくつかの種類の癌細胞を殺傷し、サイトカイン産生を活性化し、マクロファージおよび内皮細胞を活性化し、コラーゲンおよびコラゲナーゼの産生を促進し、炎症メディエータでありかつ敗血症ショックのメディエータでもあり、そして異化、熱および睡眠を促進する、糖タンパク質である。いくつかの感染性因子は、TNF産生の刺激によって腫瘍の退行を引き起こす。TNFは、有効用量で単独で使用される得場合、非常に毒性であり得、その結果、最適なレジメンは、おそらく、他の薬物と組み合わせて、より低用量でこのTNFを使用する。その免疫抑制作用は、γ−インターフェロンによって増強され、その結果、この組み合わせは潜在的に危険である。TNFおよびインターフェロンαのハイブリッドはまた、抗癌活性を有することが見出されている。
【0321】
特に意図される別のサイトカインは、インターフェロンαである。インターフェロンαは、毛様細胞性白血病、カポージ肉腫、黒色腫、カルチノイド、腎細胞癌、卵巣癌、膀胱癌、非ホジキンリンパ腫、菌状息肉腫、多発性骨髄腫、および慢性顆粒球性白血病の処置において使用されている。
【0322】
(2.受動免疫治療)
癌の受動免疫治療のための多数の異なるアプローチが、存在する。これらは、以下に広範に分類され得る:抗体のみの注射;毒素または化学治療剤に結合した抗体の注射;放射性同位体に結合した抗体の注射;抗イディオタイプ抗体の注射;および最後に、骨髄中の腫瘍細胞の浄化。
【0323】
好ましくは、ヒトモノクローナル抗体は、患者において、ほとんどかまたは全く副作用を生じないので、受動免疫治療において用いられる。しかし、これらの用途は、それらの不足によりいくらか制限され、そして現在までに病巣内投与のみが行われてきた。例えば、ガングリオシド抗原に対するヒトモノクローナル抗体は、皮膚再発性黒色腫に罹患した患者に秒巣内投与されてきた(IrieおよびMorton、1986)。退行は、病巣内注射の翌日または翌週に、10人の患者のうち6人において観察された。別の研究において、中程度の成功が、2種のヒトモノクローナル抗体の病巣内注射によって達成された(Irieら、1989)。
【0324】
2つの異なる抗原に対する1つより多くのモノクローナル抗体、またはさらには複数の抗原特異性を有する抗体を投与することが、有利であり得る。処置プロトコルはまた、リンホカインまたは他の免疫エンハンサーを投与することを含み得る(Bajorinら、1988)。
【0325】
(3.能動免疫治療)
能動免疫治療において、抗原性のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、または自系もしくは同種の腫瘍細胞の組成物または「ワクチン」が、一般的に、別個の細菌アジュバントと共に投与される(RavindranathおよびMorton、1991;MortonおよびRavindranath、1996;Mortonら、1992;Mitchellら、1990;Mitchellら、1993)。黒色腫免疫治療において、高いIgM応答を惹起する患者は、しばしば、IgM抗体を惹起しないかまたは少ないIgM抗体を惹起する患者よりも長く生存する(Mortonら、1992)。IgM抗体は、しばしば、一過性抗体であり、この規則の例外は、抗ガングリオシド抗体または抗炭水化物抗体であるようである。
【0326】
(4.養子免疫治療法)
養子免疫治療において、患者の循環中のリンパ球、すなわち腫瘍浸潤リンパ球は、インビトロで単離され、リンホカイン(例えば、IL−2)によって活性化されるかまたは腫瘍壊死のための遺伝子で形質導入され、そして再投与される(Rosenbergら、1988;1989)。これを達成するために、動物またはヒト患者に、免疫学的有効量の活性化リンパ球を、本明細書中に記載されるようなアジュバント組込み抗原性(anigenic)ペプチド組成物と共に投与する。この活性化リンパ球は、最も好ましくは、血液サンプルまたは腫瘍サンプルから以前に単離され、インビトロで活性化(または「拡大」)された、この患者自身の細胞である。この形態の免疫治療は、黒色腫および腎癌の退行のいくつかの事例を生じたが、この応答者の割合は、応答しなかった被験体と比較して、小さかった。
【0327】
(I、他の生物学的因子)
他の因子は、処置の治療効果を改善するために本発明と組み合わせて使用され得ることが、企図される。これらのさらなる因子としては、細胞表面レセプターおよびGAP接合部の上方制御に影響する因子、細胞増殖抑制性因子および分化因子、細胞接着のインヒビター、アポトーシス誘導物質に対する過剰増殖性細胞の感受性を増加させる因子、あるいは他の生物学的因子(例えば、高熱(hyperthermia))が挙げられる。
【0328】
細胞表面レセプターまたはそれらのリガンド(例えば、Fas/Fasリガンド、DR4またはDR5/TRAIL)の上方制御は、過剰増殖細胞に対するオートクライン効果またはパラクライン効果の確立により本発明のアポトーシス誘導能力を増強させることが、さらに企図される。GAP接合部の数の上昇による細胞間シグナル伝達の増加は、隣接する過剰増殖細胞集団に対する抗過剰増殖効果を増加させる。
【0329】
他の実施形態において、細胞増殖抑制性因子または分化因子はまた、処置の抗過剰増殖効果を改善するために、本発明と組み合わせて使用され得る。
【0330】
細胞接着のインヒビターは、本発明の効果を改善することが企図される。細胞接着インヒビターの例としては、病巣(focal)接着キナーゼ(FAK)インヒビターおよびロバスタチンがある。アポトーシスに対する過剰増殖細胞の感受性を増加させる他の因子(例えば、抗体c225)は、処置効果を改善するために、本発明と組み合わせて使用され得ることが、さらに企図される。
【0331】
本発明と組み合わせて使用するための別の治療形態および/または他の因子としては、高熱(患者の組織が高温(106°Fまで)に曝される手順)が挙げられる。外部または内部の加熱デバイスは、局所(local)高熱、局所(regional)高熱、または全身高熱の適用に関与し得る。局所(local)高熱は、小領域(例えば、腫瘍)への熱の適用に関与する。熱は、体外のデバイスから腫瘍を標的化して高周波により外的に生成され得る。内部熱は、無菌プローブ(温水で満たされた、薄い、加熱されたワイヤまたは中空管(hollow tube)を含む)、移植されたマイクロ波アンテナ、あるいは高周波電極に関与し得る。
【0332】
患者の器官または四肢は、局所治療のために加熱され、これは、高エネルギーを生ずるデバイス(例えば、磁石)を用いて達成される。あるいは、幾人かの患者の血液が、取り出され、内部加熱される領域内に灌流される前に加熱される。全身加熱はまた、癌が全身にわたって広がった場合に、実施され得る。温水ブランケット、ホットワックス、誘導コイル、および熱チャンバーが、この目的のために使用され得る。
【0333】
(XII、肺疾患および他の疾患の処置)
本発明の処方物および方法によって送達され得る薬学的組成物は、肺に影響を及ぼす種々の疾患を処置するために使用され得る。これらの疾患としては、気道の疾患(喘息、細気管支炎、嚢胞性線維症、気管支拡張症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(喘息性気管支炎、慢性気管支炎(正常な気流を有する)、慢性の閉塞性気管支炎、水疱性疾患、および気腫を含む)、ならびに気道における構造変化(肺の中または外の空気の流れを制限するかまたは妨げるような)によって特徴付けられる他の疾患が挙げられる。本発明のエアロゾル送達処方物を用いて処置され得る他の疾患としては、胸膜または肺を包む膜の疾患(例えば、肺炎および結核のような感染)、ならびに胸膜腔中の空気または流体の蓄積により特徴付けられる他の疾患が挙げられる。なお他の疾患としては、肺に硬直および瘢痕を引き起こす間隙(肺の組織間の空間)の疾患が挙げられ、そしてこれは、薬物、毒物、感染、または放射線によって引き起こされ得る。肺でのガス交換または血液循環の障害はまた、本発明の送達方法を用いて処置され得る。これらの疾患としては、肺水腫、肺動脈塞栓症、呼吸不全、および肺高血圧症が挙げられる(http://www.−4woman.gov/x/faq/lung_disease.htm)。
【0334】
肺系および粘膜の他の領域に影響を及ぼす疾患はまた、本発明の方法によって送達される薬学的組成物を用いて処置され得る。これらの疾患としては、鼻炎、副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、セリアック病、糖尿病および高血圧が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法および処方物は、経口投与により一般に処置される疾患を処置するために使用され得るが、ここで、その治療因子は、消化管経路において容易に破壊され得る。
【0335】
(XIII、血液系を介する疾患の処置)
本発明の薬学的組成物のエアロゾル送達は、疾患または癌を処置するために、血流へのエアロゾル送達を介して使用され得ることが、本発明の一局面である。正常な成人における肺の表面領域は、テニスコートのサイズに類似し、そしてこの組織は、非常に吸着性である。血流中への吸着は、時々、皮下注射よりも速い。肺での吸着は迅速であるが、皮下注射ほど効果的ではない傾向がある。例えば、エアロゾル化されたインスリンのバイオアベイラビリティは、注射されたインスリンの10〜15%である(Henry,2000)。従って、注射される量は調整され得るか、または薬学的因子はより効果的な送達のために変化され得る。
【0336】
薬学的組成物のエアロゾル送達は、多くの治療因子について、経口送達の代わりに使用され得、ここで、その因子の効果は、治療因子と消化経路との間の有害な相互作用により減少または破壊される。
【0337】
(XIV、診断用薬)
本発明はまた、診断剤(diagnostic agent)のエアロゾル送達を用いて、インビボで疾患状態(例えば、癌性腫瘍)を画像化する方法に関する。特に、本発明のエアロゾル送達は、診断剤を、肺、血液、または組織に送達するために使用され得る。その粒子は、肺の機能異常、構造異常、腫瘍、閉塞(blockage)、および通気および灌流におけるミスマッチの診断に有用である。この方法は、画像化有効量の診断剤および薬学的に有効なキャリアの被験体への投与、および診断剤の病的組織への結合の検出を含む。用語「インビボ画像化」とは、被験体の体内に位置する病的組織に特異的に結合する、本発明のエアロゾル処方物により送達される治療薬の検出を可能にする任意の方法をいう。「被験体」は、哺乳動物であり、好ましくは、ヒトである。「画像化有効量」は、検出可能に標識された、投与されるモノクローナル抗体、またはそのフラグメントの量が、モノクローナル抗体またはそのフラグメントの病的組織への結合の検出を可能にするに十分である事を、意味する。
【0338】
この診断剤は、エアロゾル処方物中の細孔に捕捉されるか、または重合体物質または脂質物質中に組み込まれた、任意の生体適合性または薬学的に受容可能な薬剤であり得る。生体適合性または薬学的に受容可能な薬剤は、ガス(例えば、アルゴンまたは窒素)、あるいは造影剤(陽子射出断層撮影法、コンピューター補助断層撮影、シングルフォトンエミッションCT、X線、透視検査および磁気共鳴画像法における使用のための市販の薬剤を含む)であり得る。
【0339】
インビボ診断のための放射性核種の選択を考慮するための因子は、核種の半減期が、標的による最大の取り込みの時点でなお検出し得るに十分に長いが、宿主における有害な放射線およびバックグラウンドを最小化するに十分短いことである。理想的には、インビボ画像化に使用される放射線核種は、微粒子放出を欠いているが、140〜2000keVの範囲の非常に多くの光子を生じる(通常のガンマカメラによって容易に検出され得る)。
【0340】
放射線核種は、ポリペプチドに、直接的または間接的に、中間の官能基を使用することによって結合され得る。しばしば金属イオンとして存在する放射性同位元素を抗体へ結合させるために使用される中間の官能基は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。本発明の使用に適する金属イオンの例は、99mTc、123I、111In、131I、97Ru、67Cu、67Ga、125I、68Ga、72As、89Zr、および201Tlである。
【0341】
本発明に従って、診断剤を含むエアロゾル処方物は、当該分野で公知の、いくつかの技術のいずれかにより標識され得る。本発明の方法はまた、インビボでの検出の目的のために常磁性の同位体を使用し得る。磁気共鳴画像法(「MRI」)に特に有用な元素としては、157Gd、55Mn、162Dy、52Crおよび56Feが挙げられる。
【0342】
病的組織と結合する診断剤に関してエアロゾル投与後、十分な時間(例えば、30分〜48時間)が経過した後、治験下での被験体の領域は、定期的な画像(例えば、MRI、SPECT、二次元シンチレーション画像(planar scintillation imaging)および顕現性画像化技術などにより、試験される。的確なプロトコルは、上記に記載されるように、患者に特異的な因子に依存して、そして試験下の身体部位、投与方法およびに標識された標識の型に依存して、必然的に変化する;特定の手順の決定は、当業者には日常的である。次いで、結合した放射性同位元素の分布およびその経時的増加または経時的減少は、観察され、そして記録される。臨床的に正常な個体の研究から得られたデータと比較することにより、病的組織の存在および程度が、決定され得る。
【0343】
(XV.薬学的調製物)
本発明の薬学的調製物は、有効量の1つ以上の薬学的に受容可能な組成物、または複数の組成物およびまたは薬学的に受容可能なキャリア中に溶解または分散したさらなる薬剤を含む。語句「薬学的または薬理学的に受容可能」は、例えば、適切なものとして、ヒトのような動物に投与されるとき、有害な、アレルギー性またはその他の都合の悪い反応を生成しない分子実体および組成物をいう。薬学的組成物の調製は、本願の開示を考慮して、本明細書に参考として援用される、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990により例示されるように、当業者に公知である。さらに、動物(例えば、ヒト)投与には、調製物は、FDA Office of Biological Standardsにより要求される、無菌性、発熱性、一般的安全性および純度標準に合致すべきであることが理解され得る。用量、処方および送達は、Gonda(1990)により記載されるような特定の治療適用のために選択され得る。
【0344】
本明細書で用いられる場合「薬学的に受容可能なキャリア」は、当業者に公知であり得るような、任意かつすべての溶媒、分散媒体、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗細菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬物、薬物安定剤、結合剤、賦形剤、分解剤、潤滑剤、甘味剤、調味剤、色素、などの材料およびそれらの組合せを含む(例えば、本明細書に参考として援用される、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990、1289−1329頁を参照のこと)。活性成分と適合しない任意の従来のキャリアの範囲を除いて、治療または薬学的組成物におけるその使用が予期される。
【0345】
動物患者に投与される本発明の組成物の実際の用量は、体重、症状の重篤度、処置されている疾患の型、以前または同時の治療介入、患者の突発性疾患および投与の経路のような、身体的および生理学的因子により決定され得る。投与を行う担当医は、いずれにしろ、個体被験体のために組成物中の活性成分(単数または複数)の濃度および適切な用量(単数または複数)を決定する。
【0346】
特定の実施形態では、薬学的に受容可能な組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含み得る。その他の実施形態では、活性化合物は、その中に、例えば、約2%〜約75%の間、または約25%〜約60%の間の重量のユニット、および任意の範囲の派生可能な範囲を含み得る。その他の非制限的な例では、用量はまた、その中に、投与あたり、約1μg/kg/体重から、約5μg/kg/体重、約10μg/kg/体重、約50μg/kg/体重、約100μg/kg/体重、約200μg/kg/体重、約350μg/kg/体重、約500μg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約75mg/kg/体重、100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg/体重、約1000mg/kg/体重まで、またはそれより多く、および任意の派生可能な範囲を含み得る。本明細書に列挙された数から派生可能な範囲の非制限的な例は、約5mg/kg/体重〜約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重〜約500mg/kg/体重、などの範囲が、上記の数に基づいて投与され得る。
【0347】
いずれの場合にも、この組成物は、1つ以上の成分の酸化を遅延させるために種々の抗酸化剤を含み得る。さらに、微生物の作用の予防は、パラベン類(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロザルまたはそれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない、種々の抗細菌剤および抗真菌剤のような保存剤によりもたらされ得る。
【0348】
このような組成物またはさらなる薬剤の薬学的に受容可能な組成物または成分は、遊離の塩基、中性または塩形態で処方され得る。薬学的に受容可能な塩は、酸付加塩(例えば、タンパク質組成物の遊離のアミノ基と形成される塩、または例えば、塩酸またはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸またはマンデル酸のような有機酸と形成される塩)を含む。遊離のカルボキシル基と形成される塩もまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化鉄のような無機塩基;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンまたはプロカインのような有機塩基から派生し得る。
【0349】
この組成物は、製造、貯蔵および送達の条件下で安定で、かつ細菌および真菌のような、微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。エンドトキシン汚染が、安全レベルで(例えば、0.5ng/mgタンパク質より少なく)最小に維持されるべきであることが認識される。
【0350】
特定の実施形態では、注射可能な組成物の延長された吸収が、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチンまたはそれらの組合せのような、吸収を遅延させる薬剤の組成物における使用によりもたらされ得る。
【0351】
(XVI.キット)
本明細書に記載の任意の組成物は、キットに含まれ得る。非制限的な例では、ポリカチオンポリマー、カチオン性脂質、PEG、PEI、薬学的に受容可能な組成物および/またはさらなる薬剤が、キット中に含まれ得る。従って、キットは、適切なコンテナ手段中に、本発明の1つ以上の成分を含むエアロゾル処方物および/または本発明のさらなる薬剤を含む。キットはまた、吸入器またはその他の加圧されたエアロゾルキャニスターのような、エアロゾル処方物を送達するための手段を含み得る。
【0352】
キットは、適切にアリコートされた、ポリオチオン性ポリマー、カチオン性脂質、PEG、PEI、薬学的に受容可能な組成物および/または本発明のさらなる薬剤の組成物を、検出アッセイのための標準曲線を調製するために用いられ得るように、標識されるかまたは標識されずに、含み得る。キットの治療成分は、水性媒体中または凍結乾燥形態中のいずれかでパッケージされ得る。キットのコンテナ手段は、一般に、少なくとも1つのバアイル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジまたはその他のコンテナ手段を含み、その中に成分が、配置され得、そして好ましくは、適切にアリコートにされる。キット中に1つ以上の成分が存在する場合、このキットはまた、一般に、第2、第3またはその他のさらなるコンテナを含み、その中にさらなる成分が分離して配置され得る。しかし、成分の種々の組合せは1つのバアイル中に含まれ得る。本発明のキットはまた、代表的には、エアロゾル処方物、エアロゾル処方物の1つ以上の成分、さらなる薬剤を含むための手段、および任意のその他の試薬コンテナを、市販のための閉鎖コンファインメント中に含む。このようなコンテナは、所望のバイアルが保持される射出または吹き出し成型プラスチックコンテナを含み得る。
【0353】
本発明の治療キットは、薬学的に受容可能な組成物および/またはさらなる薬剤を含むキットエアロゾル処方物である。このようなキットは、一般に、適切なコンテナ手段中に、薬学的組成物の薬学的に受容可能な処方物、エアロゾル処方物の成分および/または薬学的に受容可能な処方物中のさらなる薬剤を含む。このキットは、単一のコンテナ手段を有し得るか、および/またはそれは各化合物の別個のコンテナ手段を有し得る。
【0354】
キットの成分が、1つおよび/またはそれより多い液体溶液で提供されるとき、この液体溶液は水性溶液であり、滅菌水性溶液が特に好適である。しかし、キットの成分は、乾燥粉末(単数または複数)として提供され得る。試薬および/または成分が乾燥粉末として提供されるとき、この粉末は、適切な溶媒の添加により再構成され得る。この溶媒もまた別のコンテナ手段中に提供され得ることが予想される。
【0355】
このコンテナ手段は、一般に、少なくとも1つのバアイル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジまたはその他のコンテナ手段を含み、その中に、薬学的組成物の薬学的に受容可能な処方物、エアロゾル処方物の成分および/またはさらなる薬剤の処方物が配置され、好ましくは、適切に配分される。このキットはまた、滅菌された、薬学的に受容可能な緩衝液および/またはその他の希釈剤を含むための第2のコンテナ手段を含み得る。
【0356】
本発明のキットはまた、代表的には、例えば、射出および/吹き出し成形プラスチィクコンテナのような、その中に所望のバイアルが保持される、市販のための閉鎖コンファインメント中のバイアルを含むための手段を含む。
【0357】
コンテナの数および/または型にかかわらず、本発明のキットはまた、動物の身体内にエアロゾル処方物の送達を支援するための器具を含み得るか、および/またはそれとともにパッケージされ得る。このような器具は、吸入器、エアコンプレッサーおよび/または任意のこのような医療的に認可された送達ビヒクルであり得る。
*********************
本明細書に開示および請求項に記載されたすべての組成物および/または方法は、現在の開示を考慮して過度の実験なくしてなされ、および実施され得る。本発明の組成物および方法を、好適な実施形態に関して記載したが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物および/または方法および方法の工程においてまたは工程の順序において改変が適用され得ることは当業者に明らかである。より詳細には、化学的および生理学的の両方で関連する特定の薬剤が、同じまたは類似の結果を達成し得ながら、本明細書に記載の薬剤を置換し得ることは明らかである。当業者に明らかである、すべてのこのような類似の置換および改変は、添付の請求項により規定される本発明の思想、範囲および概念内であるとみなされる。
【0358】
比率が、例えば、2:1として与えられるとき、処方および測定の両方において誤りが生じるので、この比率は、与えられた値のまわりの15%の範囲を包含すると理解される。
【0359】
本明細書中で使用される場合、「a」または「an」は、1以上を意味し得る。特許請求の範囲で使用される際、語句「含む(comprising)」と組み合わせて使用される場合、語句「a」または「an」は、1以上を意味し得る。本明細書中で使用される場合、「別の」は、少なくとも第2番目またはそれ以上を意味し得る。
【0360】
以下の略語が、図面および実施例において使用される:
Z1 プロタミン:PEI:PEG:DPEPC(好ましくは、10:1:5:2の重量比を有する)
Z2 ポリリジン:PEG(好ましくは、10:15の重量比を有する)
Z3 プロタミン:PEG(好ましくは、10:4の重量比を有する)
Z4 ポリリジン:PEI:PEG:DPEPC(好ましくは、10:1:16:2の重量比を有する)
Z5 プロタミン:ポリリジン:PEG(好ましくは、10:7:18の重量比を有する)。
ここで、PEGは、ポリエチレングリコールであり、PEIは、ポリエチレンイミンであり、そしてDPEPCは、ジパルミトイルグリセロエチルホスホコリンである。リポフェクタミンは、Gibco Life Technologiesから購入され、そしてG67リポソーム処方物は、Genzem Coから得た。
【実施例】
【0361】
(XVII.実施例)
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の実施例から明らかとなる。しかし、本発明の好ましい実施形態を示す、詳細な説明および具体的な実施例は、例示によってのみ提供されることが理解されるべきである。なぜならば、本発明の精神および範囲内の種々の変化および改変は、本発明の詳細な説明および実施例から当業者に明らかとなるからである。
【0362】
(実施例1−ホスホリピドは、ヒトの正常な気管支上皮細胞の培地中でPEIの細胞毒性を減少させる)
一般的に、カチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン(PEI))は、ほとんどの脂質ベースのトランスフェクション剤よりも、相対的により高いトランスフェクション効率およびより高い細胞毒性を有する。この毒性を減少させ、そしてカチオン性ポリマーのトランスフェクション効率を増大させるか、または少なくとも維持するために、このカチオン性リン脂質DPEPCを使用して、1:2の重量比でPEIと組み合わせた。簡潔には、DPEPCをクロロホルムに溶解して、そして回転式エバポレーターによりフラスコの壁で薄いフィルムとなるまで乾燥した。この脂質−PEIの組み合わせ(L−PEI)は、リン酸緩衝液(PBS)中で、脂質の薄いフィルムをPEIで水和することによって得た。24時間後、このL−PEIを、0.22μmのサイズの孔を有する膜フィルターを通過させることによって濾過した。PEIのみまたはL−PEIを含む異なる量の懸濁液を、6ウェルプレートで培養したヒトの正常な気管支上皮細胞(HNBE)上に添加した。48時間後、この細胞を収集し、そして生存細胞を、トリパンブルーで染色した後に計数した。コントロールは、処理されていないHNBE細胞であった。図1に示されるデーターは、L−PEIの細胞毒性が、PEIのみの細胞毒性よりも約4倍低いことを示す(ID50 L+PEI:ID50 PEI=3.8:1)。この図中のデーターは、3回の独立した実験からの平均±1つの標準偏差である。
【0363】
(実施例2−脂質−PEIの組み合わせとPEIのトランスフェクション効率)
脂質が、脂質−ポリマーの組み合わせ中においてカチオン性ポリマーのトランスフェクション効率に影響を与えるかどうかを知るために、L−PEIのトランスフェクション効率を、異なる細胞株上で決定し、そして脂質またはPEI単独と比較した。このカチオン性脂質(DPEPCリポソーム)、PEI、およびL−PEI(1:2 w/w)を、グリーン蛍光スタンパク質発現プラスミド(GFP)と共にこれら自体の最適な比率で複合化した。次いで、この3つの処方物を、空気圧縮機および噴霧器(40μgのDNA/ml)により別々にエアロゾルにした。エアロゾルを生成するための空気の流れは、4.0PSIに固定した。このエアロゾルは、10分を越えるように生成させた。このエアロゾル霧を、噴霧器の出口側に連結された管を通して試験管中に凝集させた。10分後に、各処方物からの約80μlの凝集したエアロゾル液体を、滅菌試験管中に集めた。この凝集されたエアロゾル液体(50μl/ウェル)を使用して、6ウェルプレート中で培養した、ヒトの非小細胞の肺癌腫細胞株A549、H322、およびH358をトランスフェクトした。各処方物について最適のトランスフェクション条件を使用した。40時間後に、トランスフェクション効率(トランスフェクション%)を、蛍光顕微鏡によって蛍光細胞の割合を計数することによって決定した。各サンプルは、200個の細胞/視野を越える6箇所のランダム視野を計数した。図2は、本発明のエアロゾル化した脂質−PEIの組み合わせが、PEIを有さない同一の脂質、またはカチオン性脂質を有ないPEIよりも、ヒトの非小細胞の肺癌腫細胞株をより良好にトランスフェクトし得、脂質のみよりもより高いトランスフェクション効率およびPEIのみと同様のトランスフェクション効率を有することを実証する。このデーターは、3回の独立した実験からの平均±1つの標準偏差である。
【0364】
(実施例3−複数のカチオン性ポリマーと組み合わせた脂質のトランスフェクト効率)
非ウイルス性遺伝子送達の効率は、DNAの複合体およびその送達系の特徴に依存する。一方、プラスミドDNAの種々の化学的構造および立体構造は、DNAの複合体および送達系(例えば、DNA−ポリマーまたはDNA−脂質)の不均一形成をもたらす。より効果的な複合体を形成するために、複数のカチオン性ポリマーとエンドサイトーシスで消化される薬剤との組み合わせが必要とされ得る。本発明者は、複数のカチオン性ポリマーおよびリン脂質から構成される処方物を設計した。3種のカチオン性ポリマー(ポリリジン(Pk)、プロタミン(Pro)およびポリエチレンイミン(PEI))のうちの任意の2種を、予備試験によって既知のそれらの最適な比で組み合わせた。これらを、ヒトの非小細胞の肺癌腫細胞株(H322およびH358)中へのGFPのトランスフェクションにおいて、単一のポリマー処方物と比較した。このトランスフェクション手順は、実施例2に記載されるのと同一であった。図3に示されるように、最適のトランスフェクション条件下で、複数のカチオン性ポリマー(例えば、PEI+Pk(Z1と呼ばれる)およびPEI+Pro(Z4と呼ばれる))から構成される処方物は、任意の単一のポリマー処方物よりも有意により高いトランスフェクション効率を有する。このデーターは、3回の独立した実験からの平均±1つの標準偏差である。
【0365】
(実施例4−複数または単一のカチオン性ポリマー処方物のエアロゾル中での安定性)
実施例3は、複数のカチオン性ポリマー処方物が、インビトロにおいてより良好に細胞をトランスフェクトすることを実証した。しかし、これらの処方物が、エアロゾル化後にそれらのトランスフェクション効率を維持するかを試験した。この実施例では、エアロゾル化された処方物の安定性を試験した。嚢胞性線維症を処置するためのエアロゾル遺伝子送達のために臨床試験において現在使用されている最も効果的なリポソーム遺伝子送達系の1つG67、および最も広範に使用されているカチオン性ポリマーPEIを比較として使用した。Z1(複数のカチオン性ポリマーを含む)、Z3(単一のカチオン性ポリマーを含む)、G67(リポソーム形態)またはPEIの処方物を、それぞれ、CMVプロモーターによって駆動されるルシフェラーゼ発現プラスミドと最適な比で複合体化した。Z1−luc、Z3−luc、G67−lucおよびPEI−lucは、それぞれ、プロタミン+PEI−ルシフェラーゼ、プロタミン−ルシフェラーゼ、リポソーム−G67ルシフェラーゼ、またはPEI−ルシフェラーゼの複合体を含む処方物を表す。各複合体を、1.0ml中に40μgのDNAを含むエアロゾルを発生するために、噴霧器中に入れた。エアロゾルを発生するための気流を、4.0PSIに固定した。各々の設計した時点(例えば、2分、4分、6分、8分、10分、12分および20分)において、各処方物から凝縮された約80μlのエアロゾル処方物を、滅菌試験管中に集め、次いでこれを使用して、6ウェルプレート中のH358細胞を、この凝縮液体/ウェル(50μl)でトランスフェクトした。24時間後、各ウェル中の100万個の細胞中のルシフェラーゼ活性を測定した。エアロゾル化していない処方物(またはエアロゾル化 0分)でトランスフェクトされた細胞中のルシフェラーゼ活性を、100%と規定した。図4の結果は、複数のカチオン性ポリマーを含む処方物がエアロゾル化を受け、これにより、試験中の全時点における単一のポリマーまたはリポソーム処方物のトランスフェクション効率よりも、より高いトランスフェクション効率を有することを示す。
【0366】
(実施例5−培養した細胞中に複数のカチオン性ポリマーを含むエアロゾル化効率での機能的遺伝子の送達)
機能的遺伝子をトランスフェクトすることによって、本発明の処方物の遺伝子送達機能を確認するために、野生型p53をプロトタイプ遺伝子として使用して、培養したヒト肺癌腫細胞株に送達した。Z1、Z4(複数のカチオン性ポリマーを含む)、Z2、Z3(単一のカチオン性ポリマーを含む)、またはLf−(リポフェクタミン、市販のカチオン性リポソーム処方物)の処方物を、CMVプロモーターで駆動される野生型p53遺伝子発現プラスミドおよびp21プロモーターで駆動されるルシフェラーゼ発現プラスミド(p53:luc=1:1 mol/mol)と複合体化した。これらの複合体処方物を、噴霧器のレザバ中に、別々に、各40μgのDNA(1.0ml)として入れた。エアロゾルを発生するための気流を、4.0PSIに固定した。この噴霧器の出力パイプを氷上の滅菌試験管に接続し、凝集したエアロゾル化液体を集めた。0分および10分において、各処方物からの約80μlの凝集した液体を集め、次いでこれを使用して、6ウェルプレート中のH358細胞を、この凝集した液体/ウェル(50μl)でトランスフェクトした。24時間後、各ウェル中のルシフェラーゼ活性を測定した(図5A)。エアロゾル前の全ての処方物のトランスフェクション効率が類似していること(差異は、4%未満であった)を見出した。しかし、10分のエアロゾル化後のトランスフェクション効率は、有意に異なる。図5Bにおいて、10分で示される、各処方物に残されたルシフェラーゼ活性の割合は、図5Aに示される同じ実験結果を基に表した。この結果は、複数のカチオン性ポリマーを含む処方物が、エアロゾル化において安定であることを示す。これらは、野生型p53遺伝子をこの細胞にトランスフェクトするための80%を越える能力を保持し得る。従って、トランスフェクトされたp53によって誘導される、有意な量のp21プロモーターで駆動されるルシフェラーゼ遺伝子発現が存在する。しかし、単一のカチオン性ポリマー処方物は、約50%のトランスフェクションの能力を保持し得るのみであり、このリポソーム処方物は、10分のエアロゾル化後にほとんど全てのトランスフェクション機能を失う。
【0367】
別の実験において(図5C)、複数のカチオン性ポリマーを含むエアロゾル化された処方物によって肺癌細胞まで駆動される野生型p53遺伝子のアポトーシス機能を決定した。この実験手順は、上記の手順と同様であった。トランスフェクションの2日後、アポトーシス細胞を、Tunelアッセイによって測定した。コントロールは、処理していない細胞であった。同様の実験を、エアロゾル化処方物を用いたp53遺伝子を複数の癌細胞株(A549、H322、H358、およびH460)にトランスフェクトすることにより繰り返したが、使用した末端アッセイは、生存細胞を計数することであった(図5D)。この結果は、複数のカチオン性ポリマーを含むエアロゾル化処方物が、インビトロで肺癌細胞中に遺伝子を効率的に送達するだけでなく、転写因子、アポトーシス誘導などのp53遺伝子の代表的な機能の発現を増強もすることを示す。これらの機能は、癌遺伝子治療のために使用され得る。この実施例に示されたデーターは、3回の独立した実験からの平均±1つの標準偏差である。
【0368】
(実施例6−マウス中のエアロゾル効率)
エアロゾル投与量を見積もり、エアロゾル投与の効率を増加するためには、動物によって肺に吸い込まれるエアロゾル小滴の量を決定するべきである。全投薬量のうち、マウスの肺に吸い込まれたエアロゾルのパーセントは、「マウス中のエアロゾル効率」として定義され;この効率は、遺伝子トランスフェクション効率を考慮に入れない。実験を、処方物を蛍光色素で標識する工程、標識化エアロゾルをマウスに投与する工程、ならびにマウスの肺における投与量および蛍光色素量を測定する工程によって設計した。簡単に言えば、等しい量の蛍光色素カルセインを、処方物Z1、Z2、Z3およびZ4と混合した。エアロゾル吸入効率を増加するために、ICRマウス(19〜21g)を、YZ拘束ケージと名づけられる、特別に設計された拘束ケージに入れ、次いで、異なる群のマウスに、同じ投薬量の別々に各カルセイン含有処方物のエアロゾルを与えた。エアロゾルの空気流速度を、4.0PSIで固定した。エアロゾルを2分間、6分間、または10分間与えたとき、各群からの5匹のマウスは、投薬を終え、これらの肺を切除し、そしてカルセイン濃度を、即座に、蛍光分光測光計によって定量的に決定した。投薬量を、処方物の初期量および噴霧器のレザバ中の処方物の残存量を測定することによって、決定した。表7の結果は、マウス中のエアロゾル効率が約3%であり、試験された処方物間の違いは、誤差を有意に越えないことを示す。表7に示される各処方物に対する各時点のデータは、5匹のマウスからの、平均±1標準偏差である。
【0369】
【表7】
(実施例7−エアロゾル遺伝子送達後の健康なマウスの肺での遺伝子発現)
インビボ実験を、エアロゾル投与による健康なマウスの肺への遺伝子の送達において、複数のカチオンポリマーを含有する処方物が、単一のカチオンポリマーを含有する処方物より効率的であることを示すために使用された。Z1、Z4(複数のカチオンポリマーを含む)、Z2、およびZ3(単一のカチオンポリマーを含む)は、実施例4に記載される方法を使用して、レポータールシフェラーゼ遺伝子と、複合体を形成した。噴霧器内のDNAの初期量は、1.2mlのPBS中の360μgであった。エアロゾル空気流速度は、4.0PSIであった。雌ICRマウス(19〜21g)を、各3匹のマウスを含む12の処置群に分割した。このマウスを、エアロゾルの受け取りのためにYZ拘束ケージに置いた。各処方物を、6分間または10分間それぞれのエアロゾル投与を受けた2つの群のマウスに与えた。投薬40時間後、マウスの肺を切除し、ホモジネートした。1gの組織あたりのルシフェラーゼ活性を、ルミノメーターで決定した。図6中のデータは、各群の3匹のマウスからの、平均±1標準偏差である。
【0370】
(実施例8−肺癌を有するマウス中の、エアロゾル投与された遺伝子の遺伝子送達効率および組織分布)
複数のカチオンポリマーの機能をさらに確認するために、正常位のヒト肺癌を有するマウスを、エアロゾル投薬を介した処方物の、遺伝子送達効率および組織分布を試験するために使用した。最初の実験において、ヌードマウス(6〜7週齢)に、気管的にヒト非小細胞肺癌細胞株H358(2×106細胞/マウス)を植え付けた。植え付けの7週間後、マウスを、各5匹のマウスを含む3つの群に分割し、エアロゾル投与の前に、YZ拘束ケージ中に拘束した。マウスに、ルシフェラーゼ発現プラスミドと複合体を形成するZ1またはZ4処方物の、10分間のエアロゾル投薬をした(図7A)。噴霧器内での、処方物の初期量は、300μgのルシフェラーゼプラスミドを含む1.2mlであった。投薬24時間後、マウスの器官を切除し、ルシフェラーゼ活性を定量的に決定した。図7Aの結果は、複数のカチオンポリマーを含有する処方物が、エアロゾル投薬を介して、マウスの肺および肺腫瘍内に、レポーター遺伝子を効率的におよび特異的に送達することを示した。遺伝子の発現は、他の組織ではほとんど見られなかった。このデータは、平均±1標準偏差である。
【0371】
別の実験において、複数のカチオンポリマーを含有する処方物は、p21プロモーターによって駆動される、野生型p53遺伝子発現プラスミドまたはルシフェラーゼ発現プラスミドと複合体を形成した(図7B)。懸濁物(1.2ml)を、300μgのCMVプロモーター駆動性p53遺伝子発現プラスミドおよび300μgのp21プロモーター駆動性ルシフェラーゼ遺伝子発現プラスミドを封入するZ1またはZ4を含む、噴霧器レザバに置いた。p53ノックアウトマウス(18〜21g)に、YZ拘束ケージ中で、10分の間隔で6分間のエアロゾル投与を2回行った。投薬24時間後、マウスの器官を切除した。肺および他の器官中のルシフェラーゼレベルを、定量的に決定した。データは、3匹のマウスからの、平均±1標準偏差である。図7Bの結果は、野生型p53遺伝子およびp21プロモーター駆動性ルシフェラーゼ遺伝子の十分量が、マウスの肺に送達されそしてトランスフェクトされるので、転写因子としての発現されたp53の機能がマウス中で検出されたことを示す。
【0372】
(実施例9−正常位のヒト肺癌を有するマウスでの複数のカチオンポリマーおよびp53遺伝子を含有するエアロゾル化された処方物の抗腫瘍活性)
本発明の処方物の適用可能性を試験するために、実験的療法を設計した。ヌードマウス(7週齢、18〜20g)に、気管的に5×106のヒト非小細胞肺癌細胞株H358(図8A)またはH322(図8B)を植え付けた。各腫瘍モデルのマウスを、各5匹のマウスのいくつかの群にランダムに分割した。植え付けの4日後、拘束ケージ中のマウスを、3日の間隔を伴って、Z1−p53およびZ4−p53それぞれの10回のエアロゾル投与で処置した。各投与量は、9μgDNA/マウスに等価であった。エアロゾルG67リポソームp53を与えられたマウスは、図8A中でポジティブコントロールとして使用され、非処置マウスは、ネガティブコントロールとして使用された。各群についての生存率を記録した。インビボ研究は、複数のカチオンポリマーを含む処方物が、複数のエアロゾル投薬を介して肺癌罹患マウスの肺に腫瘍抑制遺伝子を送達することにおける、最高のリポソーム処方物より効率的であることを示す。この機能は、正常位のヒト肺癌を罹患するマウスでの有意な抗腫瘍活性を生じた。図8Aおよび図8Bのデータは、p53を保持する本発明の処方物で処置されたマウスの中間生存率が、G67リポソームp53処置および非処置マウスの生存率より、それぞれ1.7倍および2.3倍高かったことを示す。データは、5匹のマウスからの、平均±1標準偏差である。
【0373】
(実施例10−マウスでの処方物Z1〜Z5の亜急性毒性の決定)
処方物Z1、Z2、Z3、Z4およびZ5の亜急性毒性を、単回の気管内注入の後、ICRマウス中で研究した。5つの異なる投与量レベルを、各処方物に対して使用した。10匹のマウスを、1投与量レベルごとに使用した。最大投与量(100%の動物死亡率を得る)および最小投与量(100%の動物生存率を得る)を、予備的な実験において選択した。動物を、毎日観察し、計量し、そして動物の死亡を記録した。実験を、14日目に終了し、致死量(LD10、LD50、LD90)を、以前に記載されるように計算した(Zouら、1995)。以下の表8に示される結果は、5つの処方物の各々の低い毒性を示す。有効量を、LD10よりも100倍以上低いことが観察された。
【0374】
【表8】
(XVIII 参考文献)
以下の参考文献は、本明細書中で示される例示的な手順または他の詳細に、例示的な手順または他の詳細の捕足を提供する範囲で、本明細書中で参考として具体的に援用される。
【0375】
(参考文献)(p109−p118)
【0376】
【表9】
以下の図面は、本願明細書の一部を形成し、本発明の特定の局面をさらに照明することが含まれる。本発明は、本明細書中に提示された特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つ以上を参照することによって、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0377】
【図1】Trypanブルー染色によって測定された細胞死%として示されたPEI濃度の関数としての、PEIと脂質−PEIとの組み合わせについての細胞毒性。この脂質−PEI組み合わせ(L−PEI)は、ポリエチレンミン(PEI)を含むジパルミトイルグリセロエチルホスホコリン(DPEPC)の脂質薄膜を水和することによって得られた。ヒト正常気管支上皮細胞(HNBE)が、使用された。このデータは、3個の独立した研究からの平均±SDである。
【図2】ヒト非小細胞肺癌細胞株A549、H322、およびH358を使用する、脂質、PEIおよび脂質−PEIの組み合わせのトランスフェクション効率。カチオン性脂質(DPEPCリポソーム)、PEI、および脂質−PEI組み合わせL−PEI(1:2w/w)は、緑色蛍光タンパク質と複合体化された。このデータは、3個の独立した研究からの平均±SDである。
【図3】ヒト非小細胞肺癌細胞株(H322およびH358)へのGFPのトランスフェクションにおける単一(PEI、プロタミンおよびポリリジン)および複数のカチオン性ポリマー処方物のトランスフェクション効率。これらのデータは、3個の独立した研究からの平均±SDである。
【図4】複数のカチオン性ポリマーを含む処方物は、エアロゾル化の間、単一のカチオン性ポリマーの処方物またはリポソーム処方物より、安定である。このデータは、3個の独立した研究からの平均±SDである。
【図5】図5A:Z1、Z2、Z3、Z4およびリポフェクタミン(Lf)含有野生型p53遺伝子発現プラスミドおよびp21プロモーター駆動ルシフェラーゼプラスミドのエアロゾル化処方物。エアロゾル送達の0分後および10分後におけるサンプルについてのルシフェラーゼ活性%。
【0378】
図5B:Z1、Z2、Z3、Z4およびリポフェクタミン(Lf)含有野生型p53遺伝子発現プラスミドおよびp21プロモーター駆動ルシフェラーゼプラスミドのエアロゾル化処方物。エアロゾル送達の10分後に維持するルシフェラーゼ活性%。
【0379】
図5C:Z1、Z2、Z3、Z4およびリポフェクタミン(Lf)含有野生型p53遺伝子発現プラスミドおよびp21プロモーター駆動ルシフェラーゼプラスミドのエアロゾル化処方物。エアロゾル送達の0分後および10分後におけるアポトーシス細胞%。
【0380】
図5D:Z1、Z2、Z3、Z4およびリポフェクタミン(Lf)含有野生型p53遺伝子発現プラスミドおよびp21プロモーター駆動ルシフェラーゼプラスミドのエアロゾル化処方物。複数の癌細胞株(A549、H322、H358、およびH460)の細胞の死滅%。使用される終了アッセイは、計数生細胞であった。このデータは、3個の独立した研究からの平均±SDである。
【図6】マウスの肺におけるエアロゾル投与の6分および10分における、PEI、Z1、Z2、Z3およびZ4処方物についての相対ルシフェラーゼ活性。このデータは、3個の独立した研究からの平均±SDである。
【図7】図7A:同所ヒト肺癌を保有するマウスについての処方物送達の効率。エアロゾル投与を介したルシフェラーゼ発現プラスミドと複合体化した処方物についての、種々のマウス組織へのZ1およびZ4送達の効率。
【0381】
図7B:同所ヒト肺癌を保有するマウスについての処方物送達の効率。種々のマウス組織へのZ1およびZ4送達の効率。図7Bについてのエアロゾル化処方物におけるDNAは、野生型p53遺伝子発現プラスミドおよびp21プロモーター駆動ルシフェラーゼプラスミドであった。このデータは、3個の独立した研究からの平均±SDである。
【図8】図8A:エアロゾル化したZ1−p53、Z4−p53およびLf−p53の投与後の同所ヒト肺癌を保有するマウスの生存%。H358を注射した。
【0382】
図8B:エアロゾル化したZ1−p53、Z4−p53およびLf−p53の投与後の同所ヒト肺癌を保有するマウスの生存%。H322を注射した。このデータは、5個の独立した研究からの平均±SDである。このデータは、5個の独立した研究からの平均±SDである。
Claims (126)
- 細胞、膜、器官または組織に組成物を投与する方法であって、該方法は、該組成物を該細胞、該膜、該器官または該組織に接触させる工程を包含し、ここで、該組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリカチオンポリマー、ポリエチレンイミン(PEI)およびカチオン性脂質を含む、方法。
- 前記投与が、エアロゾルとして生じる、請求項1に記載の方法。
- 前記カチオン性脂質が、ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンである、請求項1に記載の方法。
- 前記ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンが、ジパルミトイル−グリセロエチルホスホコリン(DPEPC)である、請求項3に記載の方法。
- 請求項1に記載の方法であって、前記カチオン性脂質が、ジアシル−ジメチルアンモニウムプロパン、ジアシル−トリメチルアンモニウムプロパンジメチルジオクタデシルアンモニウム、N−[1−(2,3−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、DOSPA、3−β−[N−(N’,N’−ジメチル−アミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、3−β−[N−(N,N−ジカルボベンズオキシ−スペミジン)カルバモイル]コレステロール、および3−β−(N−スペミンカルバモイル)コレステロールからなる群より選択される、方法。
- 前記ポリカチオンポリマーが、ポリリジンを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記カチオン性脂質が、ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンである、請求項6に記載の方法。
- 前記ポリカチオンポリマーが、プロタミンを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記カチオン性脂質が、ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンである、請求項8に記載の方法。
- 前記ポリカチオンポリマーが、ポリリジンを含む、請求項8に記載の方法。
- 前記カチオン性脂質が、ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンである、請求項10に記載の方法。
- 前記ポリカチオンポリマーが、ポリリジンを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記カチオン性脂質が、ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンである、請求項12に記載の方法。
- 請求項1に記載の方法であって、治療剤をさらに含み、ここで、前記組成物対該治療剤の比率が、約50以下:1である、方法。
- 請求項14に記載の方法であって、治療剤をさらに含み、ここで、前記組成物対該治療剤の比率が、約10以下:1である、方法。
- 前記組成物が、核酸をさらに含む、請求項1に記載の方法。
- 前記組成物が、DNAをさらに含む、請求項16に記載の方法。
- 前記組成物が、RNAをさらに含む、請求項16に記載の方法。
- 前記組成物が、タンパク質をさらに含む、請求項1に記載の方法。
- 前記組成物が、ワクチンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
- 前記組成物が、オリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項1に記載の方法。
- 前記組成物が、アンチセンスオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項21に記載の方法。
- 前記組成物が、発現構築物をさらに含む、請求項16に記載の方法。
- 前記組成物が、p53のコード領域をさらに含む、請求項23に記載の方法。
- 前記組成物が、化学薬品をさらに含む、請求項1に記載の方法。
- 前記組成物が、抗生物質をさらに含む、請求項25に記載の方法。
- 前記組成物が、化学療法剤をさらに含む、請求項25に記載の方法。
- 前記組成物が、診断剤をさらに含む、請求項25に記載の方法。
- 前記投与が、肺に対する投与である、請求項1に記載の方法。
- 前記投与が、気管に対する投与である、請求項1に記載の方法。
- 前記投与が、肺胞に対する投与である、請求項29に記載の方法。
- 請求項29に記載の方法であって、前記組成物が、肺癌、肺感染、喘息、気管支炎、気腫、気管支梢炎、嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺水腫、肺動脈塞栓症、呼吸器不全、肺高血圧症、肺炎または結核を予防または処置するために投与される、方法。
- 前記組成物が、肺癌を予防または処置するために投与される、請求項32に記載の方法。
- 前記薬学的組成物の粒子の直径が、5.0μmと0.05μmとの間である、請求項1に記載の方法。
- 前記薬学的組成物の粒子の直径が、0.05μmと0.2μmとの間である、請求項34に記載の方法。
- 前記組成物が、乾燥粉末を形成する、請求項1に記載の方法。
- 前記組成物が、液体を形成する、請求項1に記載の方法。
- エアロゾル送達のための組成物を処方する方法であって、該方法は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリカチオンポリマー、ポリエチレンイミン(PEI)およびカチオン性脂質を合わせて、組成物を作製する工程を包含し、ここで、該組成物は、エアロゾルとして投与され得る、方法。
- 前記カチオン性脂質が、ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンである、請求項38に記載の方法。
- 前記ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンが、ジパルミトイル−グリセロエチルホスホコリン(DPEPC)である、請求項39に記載の方法。
- 請求項38に記載の方法であって、前記カチオン性脂質が、ジアシル−ジメチルアンモニウムプロパン、ジアシル−トリメチルアンモニウムプロパンジメチルジオクタデシルアンモニウム、N−[1−(2,3−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、DOSPA、3−β−[N−(N’,N’−ジメチル−アミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、3−β−[N−(N,N−ジカルボベンズオキシ−スペミジン)カルバモイル]コレステロール、および3−β−(N−スペミンカルバモイル)コレステロールからなる群より選択される、方法。
- 前記ポリカチオンポリマーが、プロタミンを含む、請求項38に記載の方法。
- 前記カチオン性脂質が、ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンである、請求項42に記載の方法。
- 前記ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンは、ジパルミトイル−グリセロエチルホスホコリン(DPEPC)である、請求項43に記載の方法。
- 前記ポリカチオンポリマーが、ポリリジンを含む、請求項38に記載の方法。
- 前記カチオン性脂質が、ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンである、請求項45に記載の方法。
- 前記ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンは、ジパルミトイル−グリセロエチルホスホコリン(DPEPC)である、請求項46に記載の方法。
- 前記組成物が、安定化剤をさらに含む、請求項38に記載の方法。
- 前記組成物が、共溶媒をさらに含む、請求項38に記載の方法。
- 前記組成物が、核酸をさらに含む、請求項38に記載の方法。
- 前記組成物が、DNAをさらに含む、請求項50に記載の方法。
- 前記組成物が、RNAをさらに含む、請求項50に記載の方法。
- 前記組成物が、タンパク質をさらに含む、請求項38に記載の方法。
- 前記組成物が、ワクチンをさらに含む、請求項38に記載の方法。
- 前記組成物が、オリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項38に記載の方法。
- 前記組成物が、アンチセンスオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項55に記載の方法。
- 前記組成物が、発現構築物をさらに含む、請求項50に記載の方法。
- 前記組成物が、p53のコード領域をさらに含む、請求項57に記載の方法。
- 前記組成物が、化学薬品をさらに含む、請求項38に記載の方法。
- 前記組成物が抗生物質をさらに含む、請求項59に記載の方法。
- 前記組成物が化学療法剤をさらに含む、請求項59に記載の方法。
- 前記組成物が診断剤をさらに含む、請求項59に記載の方法。
- 前記組成物における前記PEG対前記プロタミンの比が、約1:1〜1:5である、請求項42に記載の方法。
- 前記組成物における前記PEG対前記プロタミンの比が、約1:2である、請求項63に記載の方法。
- 前記組成物における前記PEG対前記ポリリジンの比が、約1:1〜10:1である、請求項45に記載の方法。
- 前記組成物における前記PEG対前記ポリリジンの比が、約3:2である、請求項65に記載の方法。
- 前記組成物における前記PEI対前記ポリカチオンポリマーの比が、約1:5〜1:20である、請求項38に記載の方法。
- 前記組成物における前記PEI対前記ポリカチオンポリマーの比が、約1:10である、請求項67に記載の方法。
- 前記組成物における前記カチオン性脂質対前記ポリカチオンポリマーの比が、約1:2〜1:20である、請求項38に記載の方法。
- 前記組成物における前記DPEPC対前記ポリカチオンポリマーの比が、約1:3〜1:20である、請求項40に記載の方法。
- 前記組成物における前記DPEPC対前記ポリカチオンポリマーの比が、約1:5である、請求項70に記載の方法。
- 前記組成物における前記成分のプロタミン、PEG、PEI、およびDPEPCの比が、約2:1:1:0.4〜50:25:1:10である、請求項44に記載の方法。
- 前記組成物における前記成分のプロタミン、PEG、PEI、およびDPEPCの比が、約10:5:1:2である、請求項72に記載の方法。
- 前記組成物における前記成分のポリリジン、PEG、PEI、およびDPEPCの比が、約2:3:1:0.4〜50:80:1:10である、請求項47に記載の方法。
- 前記組成物における前記成分のポリリジン、PEG、PEI、およびDPEPCの比が、約10:16:1:2である、請求項74に記載の方法。
- 前記組成物における前記粒子の直径が、10μmと0.05μmとの間である、請求項38に記載の方法。
- 前記組成物における前記粒子の直径が、0.05μmと0.2μmとの間である、請求項76に記載の方法。
- 前記組成物が乾燥粉末として処方される、請求項38に記載の方法。
- 前記組成物が液体として処方される、請求項38に記載の方法。
- ポリエチレングリコール(PEG)、ポリカチオンポリマー、ポリエチレンイミン(PEI)、およびカチオン性脂質を含む、エアロゾル送達用組成物。
- 前記カチオン性脂質が、ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンである、請求項80に記載の組成物。
- 前記ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンが、ジパルミトイルグリセロエチルホスホコリン(DPEPC)である、請求項81に記載の組成物。
- 前記カチオン性脂質が、ジアシル−ジメチルアンモニウムプロパン、ジアシル−トリメチルアンモニウムプロパンジメチルジオクタデシルアンモニウム、N−[1−(2,3−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、DOSPA、3−β−[N−(N’,N’−ジメチル−アミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、3−β−[N−(N,N−ジカルボベンズオキシスペミジン)カルバモイル]コレステロール、および3−β−(N−スペミンカルバモイル)コレステロールからなる群より選択される、請求項80に記載の組成物。
- 前記ポリカチオンポリマーがプロタミンを含む、請求項80に記載の組成物。
- 前記カチオン性脂質が、ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンを含む、請求項84に記載の組成物。
- 前記ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンが、ジパルミトイルグリセロエチルホスホコリン(DPEPC)である、請求項85に記載の組成物。
- 前記ポリカチオンポリマーがポリリジンを含む、請求項80に記載の組成物。
- 前記カチオン性脂質が、ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンを含む、請求項87に記載の組成物。
- 前記ジアシル−グリセロ−エチルホスホコリンが、ジパルミトイルグリセロエチルホスホコリン(DPEPC)である、請求項88に記載の組成物。
- 治療剤をさらに含み、前記組成物対該治療剤の比が、50以下:1である、請求項80に記載の組成物。
- 治療剤をさらに含み、前記組成物対該治療剤の比が、10以下:1である、請求項90に記載の組成物。
- 前記組成物が核酸をさらに含む、請求項80に記載の組成物。
- 前記組成物がDNAをさらに含む、請求項92に記載の組成物。
- 前記組成物がRNAをさらに含む、請求項92に記載の組成物。
- 前記組成物がタンパク質をさらに含む、請求項80に記載の組成物。
- 前記組成物がワクチンをさらに含む、請求項80に記載の組成物。
- 前記組成物がオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項80に記載の組成物。
- 前記組成物がアンチセンスオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項97に記載の組成物。
- 前記組成物が発現構築物をさらに含む、請求項92に記載の組成物。
- 前記組成物がp53のコード領域をさらに含む、請求項99に記載の組成物。
- 前記組成物が化学薬品をさらに含む、請求項80に記載の組成物。
- 前記組成物が抗生物質をさらに含む、請求項101に記載の組成物。
- 前記組成物が化学療法剤をさらに含む、請求項101に記載の組成物。
- 前記組成物が診断剤をさらに含む、請求項101に記載の組成物。
- 前記組成物における前記PEG対前記プロタミンの比が、約1:1〜1:5である、請求項84に記載の組成物。
- 前記組成物における前記PEG対前記プロタミンの比が、約1:2である、請求項105に記載の組成物。
- 前記組成物における前記PEG対前記ポリリジンの比が、約1:1〜10:1である、請求項87に記載の組成物。
- 前記組成物における前記PEG対前記ポリリジンの比が、約3:2である、請求項107に記載の組成物。
- 前記組成物における前記PEI対前記ポリカチオンポリマーの比が、約1:5〜1:20である、請求項80に記載の組成物。
- 前記組成物における前記PEI対前記ポリカチオンポリマーの比が、約1:10である、請求項109に記載の組成物。
- 前記組成物における前記カチオン性脂質対前記ポリカチオンポリマーの比が、約1:2〜1:20である、請求項80に記載の組成物。
- 前記組成物における前記DPEPC対前記ポリカチオンポリマーの比が、約1:3〜1:20である、請求項82に記載の組成物。
- 前記組成物における前記DPEPC対前記ポリカチオンポリマーの比が、約1:5である、請求項112に記載の組成物。
- 前記組成物における前記成分のプロタミン、PEG、PEI、およびDPEPCの比が、約2:1:1:0.4〜50:25:1:10である、請求項86に記載の組成物。
- 前記組成物における前記成分のプロタミン、PEG、PEI、およびDPEPCの比が、約10:5:1:2である、請求項114に記載の組成物。
- 前記組成物における前記成分のポリリジン、PEG、PEI、およびDPEPCの比が、約2:3:1:0.4〜50:80:1:10である、請求項90に記載の組成物。
- 前記組成物における前記成分のポリリジン、PEG、PEI、およびDPEPCの比が、約10:16:1:2である、請求項116に記載の組成物。
- エアロゾルキャニスターをさらに含む、請求項80に記載の組成物。
- 前記エアロゾルキャニスターが、投薬量を計測するための手段を備える、請求項80に記載の組成物。
- エアロゾル処方物中のポリエチレンイミン(PEI)の毒性を低減する方法であって、ジパルミトイルグリセロエチルホスホコリン(DPEPC)が、該PEIの毒性を低減するのに十分な量で該エアロゾル処方物に添加される、方法。
- ポリエチレングリコール(PEG)、ポリカチオンポリマー、および薬学的に活性な薬剤を含むエアロゾル送達用組成物であって、エアロゾル化の10分後の該薬学的に活性な薬剤の活性が、該薬学的に活性な薬剤の初期活性の少なくとも50%である、組成物。
- エアロゾル化の10分後の前記活性が、前記薬学的に活性な薬剤の初期活性の少なくとも60%である、請求項121に記載の組成物。
- エアロゾル化の10分後の前記活性が、前記薬学的に活性な薬剤の初期活性の少なくとも70%である、請求項122に記載の組成物。
- ポリリジンをさらに含む、請求項121に記載の組成物。
- プロタミンをさらに含む、請求項121に記載の組成物。
- ポリリジンおよびプロタミンをさらに含む、請求項121に記載の組成物。
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