JP2004535831A - 原料核酸の確率論的に組み合わせられた部分よりなる核酸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、原料核酸の確率論的に組み合わされた部分よりなる核酸の製造方法、並びに該方法を実施するための取扱説明書を含むキットに関する。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は原料核酸の確率論的に組み合わせられた部分よりなる核酸の製造方法並びに該方法を実施するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
本質的に、核酸は蛋白の構造および機能を決定する生物学的情報をもたらし、これにより、最も単純な細菌細胞から極めて複雑な多細胞の生物まで、生命体の全機能を制御する。技術的または医療目的のために利用することのできる新規または変更された性質を有するように蛋白を操作できることは知られている。このような操作は、対応する蛋白をコードする核酸配列を修飾すること、発現系を用いて蛋白を発現させること、十分に強力なスクリーニング方法により蛋白の性質を試験すること、および、最もよい性能を示すものを選択することにより行なうことができる。当然ながら、核酸が機能分子そのものとして作用する場合は、この操作法を同様に使用できる。操作法を反復して行なう場合は、その方法は、新しい機能を発生させ、既存のものを変更する天然の方法と同様に、指向的進化と称される。
【0003】
核酸の修飾は指向的進化における固有の工程である。規則的な突然変異の導入のほかに、配列部分の組み換えは、核酸の修飾のために、並びに、後にスクリーニングおよび選択の操作法に付すことのできる広範なライブラリの作製のために、極めて有効な方法である。配列部分はゲノムのフラグメント、遺伝子クラスター、遺伝子クラスター内の遺伝子変異体、遺伝子の一部、例えばエクソン、または蛋白内のドメインをコードする配列であることができるが、数塩基または1塩基までの極めて短い核酸フラグメントであることもできる。
【0004】
核酸の部分の組み換えは好ましくは相同組み換えにより行なう。相同組み換えは、方向と読み枠を維持しながら種々の原料核酸由来の対応する配列部分の組み合わせである。相同組み換えの主な利点は、非特異的組み換えに伴う非関連配列のバックグラウンドノイズの防止である。
【0005】
実験的には、相同組み換えは、好ましくは個々の酵素機能または定義の混合物または一連の酵素的処理工程を用いてインビトロで行なわれる。
【0006】
WO95/22625に記載された最初のインビトロの方法はPCRに基づいている(Stemmer,Nature 370(1994)389参照)。ここではオーバーラップする遺伝子フラグメントを準備し、その後、別のプライマーを用いることなくPCRにおいて初めのの長さの産物まで組み立てる。即ち、各PCRサイクルにおけるフラグメントの相互のプライミングにより、異なる起源のフラグメントを偶発的に連結して生成分子とすることができる。理論的には、この方法により導入される組み換え事象は得られる核酸配列全体に渡り確率論的に分布する。核酸分子当たりの組み換え事象の数、即ち、組み換え頻度、および、組み換え部位間の平均の距離はフラグメントの長さにより決定される。一方、十分な比率で相互プライミングを可能とするための最小フラグメントサイズは数百塩基対のオーダーである。フラグメントが短くなるほど、フラグメントの効率的なアニーリングの確率が低下する。従って、遺伝子当たりの組み換え事象の数は限定され、そして更に、組み換え部位の最小平均距離が制限される。これらの要因を制御するための手段は無い。
【0007】
別のPCRに基づく方法はWO98/42728(シャオ(Shao)ら.,Nucl.Acids Res.26(1998),681)に記載されている。ここでは、無作為化配列を有するプライマーが用いられており、これによりポリヌクレオチド内の無作為の位置における重合の開始が可能となる。即ち、WO95/22625と同様、相互プライミングにより相互に組み換えることができる短いポリヌクレオチドフラグメントが形成される。この方法では組み換えの頻度と距離を制御することは極めて困難である。更にまた、非特異的なプライマーにより比較的高い固有誤差率が生じ、これが感受性の配列部分および/または長い遺伝子で問題となる。
【0008】
WO98/42728に記載されている別の方法はPCRにおけるプライマー伸長の間に鎖交換を誘発するための変更されたPCRプロトコルを用いている(Zhaoら.,Nat.Biotechnol.16(1998),258)。方法はプライマーを用いた鋳型配列のプライミング、次いで変性と極めて省略されたアニーリングの反復サイクルおよびポリメラーゼ触媒鎖伸長よりなる。各サイクルにおいて、成長中のフラグメントは配列の相補性に基づいて種々の鋳型にアニーリングし、更に伸長することができる。これが完全長配列が形成されるまで反復される。鋳型の交換のために、得られるポリヌクレオチドは異なる親配列に由来する配列情報を含む場合がある。従って、組み換え頻度はPCRサイクルの数により制御され、組み換え部位間の平均距離は重合時間の実際の設定により決定される。速い温度変化を利用することが技術的に制限されているため、組み換え部位間の最小平均距離は100核酸塩基程度になる。
【0009】
WO01/34835はPCRに基づかない相同組み換えのための方法を記載している。この方法は位置選択的な組み換えの可能性に組み換え頻度の制御性を組み合わせている。方法は原料核酸の融解とアニーリングにより形成される2重鎖ヘテロ2本鎖の部分的エキソ核酸分解的1重鎖分解および鋳型指向性1重鎖合成を用いている。分解と再合成の工程を反復の方法で繰り返すことにより、複数の組み換えが行なわれる。従って、サイクル数が組み換え頻度を決定する。方法は、エキソ核酸分解活性を制御することにより位置選択的組み換えを可能にする。組み換え部位間の極めて短い距離は、実際には、原料核酸分子内の百の核酸塩基の範囲内の特定の領域に着目した場合にのみ起こる。原料核酸配列全体に渡って短い平均距離とすることは困難である。
【0010】
PCRに基づかない相同組み換えの別の方法は、WO01/29211に記載されている。その方法は一過性のポリヌクレオチドスカフォールドにアニーリングされた無作為に切断された親DNAのオーダーリング、トリミングおよびジョイニングによる。WO95/22625によれば、発生したフラグメントの最小長さは鋳型への効率的なアニーリングの必要性により制限される。従って、組み換え部位間の最小距離は数百核酸塩基以上になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
即ち、本発明の基礎となる技術的課題は原料核酸の確率論的に組み合わせられた部分よりなる核酸の製造のための方法を提供することである。特に、技術的課題は組み換え部位のターゲティングされた明確な位置決めを可能とするインビトロの相同組み換え方法を提供することである。幾つかの指向性進化実験によれば、制御された状態で相同組み換えを行なうことが必要であることが分かっている。例えば、蛋白モジュールの組み換えはポリヌクレオチド配列の狭い領域への組み換え部位の配置を必要とする。抗体内のCDRの組み換えにはコードされたポリヌクレオチドの特定の部分のターゲティングが必要とされる。現在の組み換え方法にはこれらの要因に関する十分な制御性が無い。従って、ターゲティングおよび指向は、組み換えられる鎖、配列内の位置および組み換え部位間の平均距離に関して可能であるはずである。これを利用して、相同インビトロ組み換えは、現在利用できる方法では達成できない方法で、多くの指向性進化の課題のために必要とされる程度に厳密に機能すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
技術的課題は請求項に特徴付けられた実施形態を提供することにより解決される。即ち本発明は、
(A)修飾された性質を有するポリヌクレオチド分子の製造方法であって、以下の工程:
(1)原料核酸分子の集団を準備すること、ここで該集団の個々の核酸分子は相同および異種のセグメントを有し、その核酸配列内に取りこまれたマーカーヌクレオチドの少なくとも1種を有するものであり、
(2)異種セグメントによる2重鎖を含む工程(1)により準備された原料核酸分子の集団の2重鎖ポリヌクレオチド分子を形成すること(ヘテロ2本鎖)、
(3)工程(2)により生成された2重鎖ヘテロ2本鎖の取りこまれたマーカーヌクレオチドにおいて1重鎖ブレイクを形成すること、;並びに、
(4)工程(3)により形成された1重鎖ブレイクから出発してマーカーヌクレオチドの取りこみを行ないながら、または行なうことなく、鋳型指向性1重鎖合成を行なうこと、
を包含する方法;および、
(B)上記(A)に記載した方法を実施するためのキットであって、該キットは好ましくは、下記の構成要素:
(i)ポリヌクレオチド分子内への取りこみのためのマーカーヌクレオチド;
(ii)取りこまれたマーカーヌクレオチドにおける1重鎖ブレイクを可能にする薬剤;および、
(iii)マーカーヌクレオチドの取りこみを行なうため、および、これらの部位において1重鎖ブレイクを形成するための緩衝液、
の少なくとも1つを含むキット、を提供する。
【0013】
本発明の実施形態(A)の方法において、工程(1)で原料核酸分子が2重鎖である場合は、鎖は相補または部分相補であってよい。更に工程(3)から(4)は逐次的または同時に行なってよい。後に示す図面は本発明の実施形態を更に説明するものである。しかしながら図は本発明を限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記したとおり、本発明の実施形態(A)は修飾された特性を有する核酸、即ち原料核酸の確率論的に組み合わせられた部分よりなるポリヌクレオチドの製造のための方法に関する。該実施形態は本発明の方法の可能な変法を概略的に示している図1を参照することにより更に詳細に説明される。
【0015】
条件に応じて、本発明の方法は異種配列セグメントの偶発的および制御下の双方の新しい組み合わせを可能にする。マーカーヌクレオチドの取りこみの確率を調節することにより、組み換え部位間の平均距離を制御できる。1ヌクレオチドまでの距離が適切な比率のヌクレオチドおよびマーカーヌクレオチドの使用により可能である。これは以前に報告されている方法の何れでも達成困難である。更にまた、サイクル数およびサイクル当たりの平均組み換え距離を調節することにより、組み換え頻度も広範に制御できる。このような組み換え頻度の制御はWO01/34835に記載の方法および鎖交換によるPCRを利用したWO98/42728に記載の方法によっても達成できる。少なくとも部分的にはWO95/22625およびWO01/29211に記載の方法によっても達成される。無作為プライミングを利用しているWO98/42728に記載されている方法は組み換え頻度の調節のための方法は提示していない。
【0016】
相同組み換えのための方法の別の局面は、組み換えるべき原料核酸間の相同性の特定の水準を必要とする点である。WO95/22625、WO98/42728およびWO01/29211に記載された方法は全て、組み換え部位間の短い配列セグメントのアニーリングを利用している。組み換え事象が核酸配列の全体に渡り均一に分布する場合、これは、短い核酸セグメントのアニーリングを可能にするためには原料核酸配列全体が重分な相同性を示す必要があることを意味する。より低い相同性の核酸配列内の領域がこのようなアニーリングを可能とし、従って組み換え反応を妨害する。これとは対照的に、WO01/34835に記載された方法並びに本発明の方法は組み換え過程に付されるヘテロ2本鎖を生成するために完全長核酸配列のアニーリングを用いている。これにより、核酸配列内のむしろ低い相同性の領域も組み換えを妨害せず、全体的により低い相同性も上記方法と比較して忍容される。
【0017】
従って、本発明の方法はこれまで開示された如何なる方法でも達成できなかった利点の組み合わせを特徴とする。
【0018】
本発明の方法による個々のサイクルの結果として得られる産物は半保存性の1重鎖の核酸分子であるが、その理由は、実施形態によるが、より長い、または短い配列のセグメントがマーカーヌクレオチド取りこみ部位の一方において維持されつつ、マーカーヌクレオチド取りこみ部位の他方の配列のセグメントは鋳型鎖の情報とともに新たに合成されているためである。
【0019】
本発明によれば、「マーカーヌクレオチド」という用語はポリヌクレオチドへの取りこみに適し、鋳型指向性重合反応のための分子内開始点を与えるために対応する位置に1重鎖ブレイクを導入するためのマーカーとして使用することのできる如何なる核酸単量体をも指すものとする。好ましくは、マーカーヌクレオチドは化学反応または酵素的処理により特異的に認識されることのできる標準ヌクレオチドの類縁体である。
【0020】
好ましい実施形態においては、上記した工程(1)から(4)を含む1以上のサイクル、即ち少なくとも2、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、最も好ましくは少なくとも50サイクルで終了する。本実施形態において、工程(4)の鋳型指向性1重鎖合成はマーカーヌクレオチドの取りこみとともに行なわれ、これにより各サイクルにおいて次のサイクルのためのマーカーヌクレオチドが取りこまれる。次に、好ましくは、最終サイクルは、それ以上プロセシングされ得るマーカーヌクレオチドを含まない2重鎖を生成するために、マーカーヌクレオチドの取りこみを行なうことなく実施する。
【0021】
本発明の方法のサイクル適用により、種々の原料核酸由来の複数の組み換えられた配列セグメントを含む核酸分子を生成することが可能になる。特に、サイクル適用により数個の異種の配列セグメントを相互に組み合わせることが可能となる。更にまた、サイクルの数により各ポリヌクレオチド鎖の組み換え頻度を制御できる。サイクル適用により、新しい組み合わせの間の平均の距離が各サイクにおけるマーカーヌクレオチドの取りこみの確率により制御可能になる。
【0022】
特に、2連続サイクルの各々における工程(4)による鋳型指向性合成の出発点の間の平均距離が、2連続サイクルの初回の工程(4)におけるマーカーヌクレオチドの取りこみの確率を調節することにより制御される。マーカーヌクレオチドの取りこみの確率は標準ヌクレオチドに対するマーカーヌクレオチドの濃度の比を調節することにより制御することができる。好ましくは、マーカーヌクレオチドの取りこみの確率は、1未満、そして、塩基対内の原料核酸長の逆数より高値であるように選択される。注目すべき点は、ポリヌクレオチド鎖当たりマーカーヌクレオチド1個より多くが取りこまれる場合は常時、鋳型指向性重合の開始点の次に取りこまれるマーカーヌクレオチドのみが組み換え部位間の距離を決定する点である。全ての他のマーカーヌクレオチドは結果に影響せず取り除かれる(図1参照)。
【0023】
好ましい実施形態において、工程(1)により準備される原料核酸分子の集団中の核酸分子は2重鎖であり、マーカーヌクレオチドは両方の鎖における核酸配列内に取りこまれる。ここで、両方の鎖は工程(3)による1重鎖ブレイクの生成のために使用でき、従って、両方の鎖とも、組み換えに付され、同時に、鋳型鎖としても機能する。
【0024】
別の好ましい実施形態においては、工程(1)により準備される原料核酸分子の集団中の核酸分子は2重鎖であり、マーカーヌクレオチドは両方の鎖の一方のみ(マーカー鎖またはセンス鎖)における核酸配列内に取りこまれる。従って、両方の鎖の一方のみが工程(3)による1重鎖ブレイクの生成のために使用可能であり、従って、両方の鎖の一方のみが組み換えに付される。他方の鎖は全工程の間、鋳型としてのみ機能する(鋳型鎖またはアンチセンス鎖)。
【0025】
特に好ましい実施形態においては、マーカー鎖および鋳型鎖よりなる該2重鎖は、取りこまれたマーカーヌクレオチド少なくとも1種を有する1つのプライマー、および、取りこまれたマーカーヌクレオチドを保有しない第2のプライマーを用いてPCRにより生成される。
【0026】
別の特定の好ましい実施形態においては、マーカー鎖および鋳型鎖よりなる該2重鎖は、プライマー1個のみを使用する非対称PCRにより各々が生成される1重鎖2個のアニーリングにより生成され、その際、マーカー鎖は重合工程の間マーカーヌクレオチドの取り込みを伴って生成されるのに対し、鋳型鎖は重合工程の間マーカーヌクレオチドの取りこみを伴うことなく生成される。
【0027】
別の好ましい実施形態においては、工程(1)により準備される原料核酸分子の集団における取りこまれたマーカーヌクレオチドは、5’末端の次に取りこまれ、そして、マーカーヌクレオチドの取りこみ部位および工程(3)による、対応する1重鎖ブレイクにより定義される組み換え部位はサイクル数の増加に従ってポリヌクレオチド分子の3’末端に近づく。
【0028】
別の好ましい実施形態においては、1回より多いサイクルを終了した時点で、マーカーヌクレオチドの取りこみの確率がサイクル毎に変化される。例えば、これは、マーカーヌクレオチドと対応する標準ヌクレオチドの濃度の比を変化させることにより行なうことができる。この様にして、組み換え部位間の距離を位置選択的に制御できるのである。
【0029】
本発明の方法の工程(1)により準備される原料核酸分子の集団は、相同および異種のセグメントよりなるポリヌクレオチド少なくとも2種を含む核酸分子の如何なる集団であることもできる。好ましくは、これらのポリヌクレオチドの2つは各々、相互に比較した場合に、少なくとも相同配列セグメント1つ、および異種配列セグメント2種を有する。「核酸分子の集団」という用語は如何なる種類の核酸、例えば1重鎖DNA、2重鎖DNA、1重鎖RNA、2重鎖RNA、DNAとRNAの2重鎖ハイブリッド、またはこれらの混合物も意味する。原則として、方法はまた同様に構築された人工の重合体に対しても使用してよい。「相同セグメント」という用語は核酸分子2種以上に対し、同一または相補的である、即ち、対応する位置に同じ情報を有するセグメントを指す。「異種セグメント」という用語は、核酸分子2種以上に対し、同一でも相補的でもない、即ち、対応する位置に異なる情報を有するセグメントを指す。核酸分子の「情報」または「遺伝子型」という用語は、核酸分子内の種々の単量体の順序である。異種配列セグメントは好ましくは少なくとも1ヌクレオチドの長さを有するが、より長くてもよい。例えば、異種配列セグメントは2ヌクレオチドまたは3ヌクレオチド、例えばコドンの長さを有してもよい。原則として、異種セグメントの長さに関しては上限はない。しかしなお、異種セグメントの長さは1000ヌクレオチドを越えてはならず、好ましくは500ヌクレオチドより長くなく、更に好ましくは200ヌクレオチドより長くなく、最も好ましくは100ヌクレオチドより長くない。このような長い配列セグメントは例えば、抗体をコードする配列の高頻度可変領域、蛋白のドメイン、遺伝子クラスターの遺伝子、ゲノムの領域などであってよい。好ましくは、異種配列は核酸分子が1塩基で異なる配列セグメントである。しかしながら異種セグメントはまた核酸分子に欠失、重複、挿入、逆位、付加等が存在するか、起こっている事実によるものでもよい。
【0030】
本発明によれば、実施形態(A)の工程(1)により準備される核酸分子は好ましくは少なくとも1個の相同配列セグメントおよび少なくとも2個の異種配列セグメントを有する。しかしながら、より好ましくはそれらは複数の相同および異種セグメントを有する。原則として、相同および異種のセグメントの数には上限は無い。本発明による原料核酸分子の集団は(i)種々の位置に点突然変異1個以上を各々が有する遺伝子変異体、または、(ii)少なくとも部分的にはヘテロ2本鎖を形成するために十分な相同性を与える異なる種から得られる遺伝子相同体、または(iii)抗体遺伝子ライブラリのような無作為化されたカセット1個以上を各々が有する遺伝子変異体よりなってよい。しかしながら、これら列挙したものに本発明は限定されない。
【0031】
方法の工程(1)により準備される核酸分子の集団における異種セグメントは各々相同セグメントによる介入を受けている。相同セグメントは好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも10、そして最も好ましくは少なくとも20ヌクレオチドの長さを有する。異種セグメントの場合と同様、相同セグメントもまた遥かに長くてもよく、そして、原則として、その長さには上限は無い。好ましくは、その長さは5000ヌクレオチド以下、より好ましくは2000ヌクレオチド以下、最も好ましくは1000ヌクレオチド以下である。
【0032】
本発明の方法の特に好ましい実施形態において、関連の核酸配列は工程(1)により原料核酸分子の集団を準備するために用いられる。この点に関し、「関連の」という用語は相互において相同および異種のセグメントの両方を有するポリヌクレオチドを意味する。関連の核酸分子は原料核酸配列に無作為に点突然変異を導入するための操作法から生じるものであってよい。この点突然変異の導入は固有の誤複写過程のみによって行なうこともできるが、使用するポリメラーゼの非正確さの意図的に増大(例えば単量体の明確な非均衡付加、塩基類縁体の付加、誤りの生じやすいPCR、極めて高いエラー率を有するポリメラーゼによる等)によるか、合成後のポリヌクレオチドの化学的修飾によるか、単量体混合物および/またはヌクレオチド類縁体の少なくとも部分的な適用下のポリヌクレオチドの完全な合成によるか、インビボの誤りの生じやすい修復(例えば高いエラー率を有するウィルス、細菌突然変異株、UV照射下の細菌による等)によるか、上記方法の2種以上の組み合わせにより行なうこともできる。関連の核酸分子はまた別の核酸変異操作、例えば配列セグメントの無作為トランケーション、挿入、欠失または逆位、または、無作為化された配列セグメントの導入に付されている核酸分子であってもよい。関連の核酸分子はまた擬似種の突然変異株の分布の核酸配列であってよい。「擬似種」とは誤った複製およびその後の選択により形成される関連分子の変異体(突然変異株)の動的集団である(WO92/18645)。或いは、関連核酸分子は方法の工程(2)によるヘテロ2本鎖を形成するのに十分な程度の相同性を有する天然の原料から単離された核酸配列であってよい。例えば、進化的に関連する種のゲノムから単離された類似の遺伝子または遺伝子フラグメントを用いることができる。これらの関連核酸分子のいずれも、直接使用してよいか、または、組み換え操作の適用前のスクリーニングおよび/または選択操作、特定の表現型を有する核酸分子を選択する選択および/またはスクリーニング操作に付してよい。「核酸分子の表現型」という用語は核酸分子と核酸分子によりコードされる転写または翻訳の産物の機能および性質の総和を指す。
【0033】
工程(1)による、そして適宜、工程(4)によるマーカーヌクレオチドの取りこみは鋳型指向性ポリメラーゼ反応を用いるか、または、オリゴヌクレオチドの化学合成により行なう。好ましくは、工程(4)によるマーカーヌクレオチドの取りこみは鋳型指向性ポリメラーゼ反応を用いて行なう。
【0034】
方法の工程(4)による該鋳型指向性ポリメラーゼ反応のためには、3’末端から出発してポリヌクレオチド鎖を重合することのできる鋳型指向性ポリヌクレオチド重合活性を有する如何なる酵素も使用できる。最も変異の大きい生物に由来し種々の機能を有する多数のポリメラーゼが既に単離され、報告されている。鋳型および合成されるポリヌクレオチドの種類の点から、DNA依存性DNAポリメラーゼ、RNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)、DNA依存性RNAポリメラーゼおよびRNA依存性RNAポリメラーゼ(レプリカーゼ)で区別されている。温度安定性の点から、非温度安定性(37℃)および安定性ポリメラーゼ(75〜95℃)で区別されている。更にまた、ポリメラーゼは5’−3’−および3’−5’−エキソ核酸分解活性の存在の点で異なっている。
【0035】
鋳型鎖およびマーカー鎖の両方がDNAよりなる場合は、DNA依存性DNAポリメラーゼが好ましく使用される。特に、厳密に、或いは概ね37℃の旨適温度を有するDNAポリメラーゼが用いられる。これらには、例えば、E.coli由来DNAポリメラーゼI、バクテリオファージT7由来のT7DNAポリメラーゼ、および、バクテリオファージT4由来のT4DNAポリメラーゼが包含され、これらは多数の製造元より供給されている。E.coli由来DNAポリメラーゼI(ホロ酵素)は5’−3’ポリメラーゼ活性、3’−5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性および5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有している。酵素はニック翻訳法によるDNAのインビトロ標識のために使用される(J.Mol.Biol.113(1977),237−251)。ホロ酵素とは対照的に、E.coli由来のDNAポリメラーゼIのクレノウ(klenow)断片はT7DNAポリメラーゼおよびT4DNAポリメラーゼのように5’−エキソヌクレアーゼ活性を有していない。従ってこれらの酵素はいわゆるフィリングイン(filling-in)反応のため、または、長鎖の合成のために使用される(Biochemistry 31(1992),8675−8690,Methods Enzymol.29(1974),46−53)。E.coli由来DNAポリメラーゼIのクレノウ断片の3’−エキソ(−)変異体は3’−エキソヌクレアーゼ活性を有していない。この酵素はしばしば、SangerのDNA配列決定のために用いられる(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74(1977),5463−5467)。これらの酵素の外に、本発明の方法で使用できる種々の性質を有する他の37℃DNAポリメラーゼが複数存在する。
【0036】
更にまた熱安定性DNAポリメラーゼを本発明の方法に用いることができる。好ましくは旨適温度75℃であり95℃で十分安定である最も広範に使用されている熱安定性DNAポリメラーゼであるThermus aquaticus由来のTaqDNAポリメラーゼを使用できる。TaqDNAポリメラーゼは種々の製造元より市販されている。TaqDNAポリメラーゼは3’−エキソヌクレアーゼ活性を有さない高度にプロセシング可能なDNAポリメラーゼである。これは標準的なPCRのため、配列決定反応のため、および、突然変異誘発PCRのため頻繁に使用されている(PCR Methods Appl.3(1994),136−140,Methods Mol.Biol.23(1993),109−114)。しかしながら、幾つかの他の熱安定性DNAポリメラーゼも使用できる。Thermus thermophilus HB8由来のTthDNAポリメラーゼおよびThermus flavus由来のTflDNAポリメラーゼは同様の特性を有している。TthDNAポリメラーゼは更に、マンガンイオン存在下で内因性逆転写酵素(RT)活性を有する(Biotechniques 17(1994),1034−1036)。5’−エキソヌクレアーゼ活性は有さないが、3’−エキソヌクレアーゼ活性を有する熱安定性DNAポリメラーゼのうち、多くのものが市販されており、Pyrococcus woesei由来のPwoDNAポリメラーゼ、Thermococcus litoralis由来のTli、VentまたはDeepVentDNAポリメラーゼ、Pyrococcus furiosus由来のPfxまたはPfuDNAポリメラーゼ、Thermus ubiquitous由来のTubDNAポリメラーゼ、Thermotoga maritima由来のTmaまたはUITmaDNAポリメラーゼが挙げられる。3’−プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性を有さないポリメラーゼは可能な限り欠損の無いPCR産物の増幅のために使用される。TaqDNAポリメラーゼのStoffelフラグメントを用いて、Vent−(exo−)DNAポリメラーゼおよびTspDNAポリメラーゼを用いて、5’−および3’−エキソヌクレアーゼ活性のいずれも有さない熱安定性DNAポリメラーゼを使用できる。
【0037】
RNAを鋳型鎖の核酸として、そして、DNAをマーカー鎖の核酸として使用する場合は、RNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)を使用できる。逆転写酵素のうち、好ましくはトリ骨髄芽球症ウィルス由来のAMV逆転写酵素、モロニーマウス白血病ウィルス由来のM−MuLV逆転写酵素、または、ヒト免疫不全ウィルス由来のHIV逆転写酵素を使用する。これらの酵素は全て、種々の製造元より入手できる。HIV逆転写酵素と同様、AMV逆転写酵素も関連のRNase−H活性を有する。この活性はM−MuLV逆転写酵素では顕著に低減している。M−MuLVおよびAMVの逆転写酵素の両方とも3’−エキソヌクレアーゼ活性を有していない。更にまた、熱安定性逆転写酵素も使用できる。そして、内因性逆転写酵素活性を有するThermus thermophilus由来のTth-DNAポリメラーゼが特に好ましい。
【0038】
DNAを鋳型鎖の核酸として、そして、RNAをマーカー鎖の核酸として使用する場合は、DNA依存性RNAポリメラーゼを使用してよい。好ましくは、E.col由来のRNAポリメラーゼ、バクテリオファージSP6を感染させたSalmonella typhimurium LT2由来のSP6−RNAポリメラーゼ、バクテリオファージT3由来のT3−RNAポリメラーゼ、または、バクテリオファージT7由来のT7−RNAポリメラーゼT7が使用される。
【0039】
方法の好ましい実施形態においては、DNAを核酸として使用し、デオキシウリジントリホスフェート(dUTP)をマーカーヌクレオチドとして使用する。ここで、工程(1)による、そして適宜工程(4)によるマーカーヌクレオチドの取りこみは、鋳型指向性ポリメラーゼ反応において4種の標準的なデオキシヌクレオシドトリホスフェート(dNTP;デオキシアデノシントリホスフェート、dATP;デオキシグアノシントリホスフェート、dGTP;デオキシチミジントリホスフェート、dTTP;デオキシシチジントリホスフェート、dCTP;)と組み合わせてdUTPを使用することにより行なわれる。この反応におけるdTTP濃度に対するdUTPの比はマーカーヌクレオチドの取りこみ確率を制御し、これにより組み換え距離を制御するために、広範な範囲から選択できる。厳密な比は、鋳型指向性ポリメラーゼ反応において使用されるポリメラーゼのdTTPとdUTPの識別率、並びに組み換え部位間の所望の平均距離に適合するものでなければならない。上記したポリメラーゼのうちのいくつかに関するdTTPとdUTPの識別率は以下のとおり、即ち、TaqDNAポリメラーゼ(dTTP取りこみのVmax/Km)/(dUTP取りこみのVmax/Km)=1.2;クレノウDNAポリメラーゼ=1.6;VentDNAポリメラーゼ=1.4;MMLV逆転写酵素=6.3である(J.Biol.Chem.275(2000)40266)。一例として、Thermus aquaticus由来のTaqDNAポリメラーゼを使用し、20〜60塩基の範囲の平均距離を望む場合は、dUTPに対するdTTPの濃度の比は、好ましくは、100,000未満、0.001超である。より好ましくは、比は1,000未満、0.1超である。最も好ましくはdUTPに対するdTTPの濃度の比は10の範囲である。
【0040】
別の好ましい実施形態において、使用される核酸はDNAであり、8−オキソ−デオキシグアノシントリホスフェート(8−oxo−dGTP)をマーカーヌクレオチドとして4種の標準dNTPと組み合わせて鋳型指向性ポリメラーゼ反応に用いる。マーカー取りこみの確率、および、ひいては、組み換え部位間の距離は、8−oxo−dGTPとdGTPの適切な濃度比の選択により制御することができる。一例として、Thermus aquaticus由来のTaqDNAポリメラーゼを使用し、20〜60塩基の範囲の平均距離が望まれる場合は、この反応における8−oxo−dGTPのdGTPに対する濃度の比は、好ましくは100,000〜10の範囲で選択される。より好ましくは、濃度の比は10,000〜100の範囲で選択される。最も好ましくは、濃度の比は1000の範囲である。
【0041】
別の好ましい実施形態においては、以下に示す修飾塩基、即ち、3−メチルアデニン、7−メチルアデニン、3−メチルグアニン、7−メチルグアニン、7−ヒドロキシエチルグアニン、7−クロロエチルグアニン、O2−アルキルチミン、O2−アルキルシトシン、5−フルオロウラシル、2,5−アミノ−5−ホルムアミドピリミジン、4,6−ジアミノ−5−ホルムアミドピリミジン、2,6−ジアミノ−4−ヒドロキシ−5−ホルムアミドピリミジン、5−ヒドロキシシトシン、5,6−ジヒドロチミン、5−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロチミン、チミングリコール、ウラシルグリコール、イソジアル尿酸、アロキサン、5,6−ジヒドロウラシル、5−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロウラシル、5−ヒドロキシウラシル、5−ホルミルウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、ヒポキサンチン、1,N6−エテノアデニンまたは3,N4−エテノシトシンの1つを有するマーカーヌクレオチドを鋳型指向性ポリメラーゼ反応において4種の標準dNTPと組み合わせて使用する。ポリメラーゼ反応のためには、これらのマーカーヌクレオチドを取りこむことのできる鋳型指向性ポリヌクレオチド重合活性を有する如何なる酵素も使用できる。
【0042】
別の好ましい実施形態においては、マーカー鎖核酸はDNAであり、4種のリボヌクレオシドトリホスフェート(rNTP)の1個、2個、3個または4個全てを鋳型指向性ポリメラーゼ反応において4種の標準的なdNTPと組み合わせて使用する。この反応におけるrNTPの対応するdNTPに対する濃度の比を用いてマーカー取りこみの確率、そしてこれにより組み換え部位間の距離も制御できる。TaqDNAポリメラーゼに関する識別比dNTP取りこみのVmax/Km)/(rNTP取りこみのVmax/Km)は、dUTP/rUTP=1,500,000、dCTP/rCTP=24,000であり;クレノウDNAポリメラーゼについては、dUTP/rUTP=130,000、dCTP/rCTP=3,100であり;VentDNAポリメラーゼについてはdUTP/rUTP=10,000、dCTP/rCTP=2,000であり;そして、MMLV逆転写酵素については、dUTP/rUTP=21,000、dCTP/rCTP=1,100である(J.Biol.Chem.275,(2000)40266)。一例として、VentDNAポリメラーゼをマーカーヌクレオチドとしてのrCTPと組み合わせて使用し、20〜60核酸塩基の範囲の平均距離を望む場合は、dCTPに対するrCTPの濃度の比は、好ましくは、10,000未満、1超である。より好ましくは、比は1,000未満、10超である。最も好ましくは比は100の範囲である。
【0043】
本発明の方法の工程(2)による2重鎖ヘテロ2本鎖の形成は好ましくは原料核酸分子の相同セグメントのハイブリダイゼーションにより行なわれる。「ヘテロ2本鎖」という用語は相同セグメント少なくとも1つおよび異種セグメント少なくとも2つを有する2重鎖を意味する。異種セグメントを有する核酸配列の集団を使用することにより、集団の配列変異体の相対的頻度に相応する統計学的確率でヘテロ2本鎖が形成される。例えば異種セグメント2個を有する変異体2種の等モル混合物から出発する場合、2つ毎の2重鎖核酸でヘテロ2本鎖が統計学的に生じる。変異体の数が個々の変異体の相対的頻度より遥かに大きい場合は、ヘテロ2本鎖がほぼ排他的に形成される。
【0044】
ヘテロ2本鎖を形成するための原料核酸の相同セグメントのハイブリダイゼーションは、当業者の知る方法に従って行なわれる。好ましい実施形態においては、原料核酸分子は1重鎖であり、ハイブリダイゼーションは該1重鎖を組み合わせ、例えば温度を低下させるか、塩濃度を調節することにより、相同核酸のアニーリングを促進するように反応条件を調節することにより行なわれる。別の好ましい実施形態においては、原料核酸分子は2重鎖であり、ハイブリダイゼーションは適切な条件下、例えば2重鎖の融点より高温で2重鎖を融解することにより行なわれ、そして、例えば2重鎖の融点より低温まで温度を低下させることにより鎖をリアニーリングする。
【0045】
本発明の工程(3)による取りこまれたマーカーヌクレオチドの位置における1重鎖ブレイクの生成は、好ましくは、化学または酵素反応により行なわれる。「ブレイク」という用語は鋳型指向性ポリメラーゼ反応の開始点として機能することのできる核酸鎖におけるニックまたはギャップを意味する。
【0046】
好ましい実施形態においては、1重鎖ブレイクは、1塩基ギャップおよび該ギャップの5’側に遊離の3’−OH残基をもたらす酵素1種以上の作用によりマーカーヌクレオチドを除去することにより行なわれ、その際、遊離の3’−OHは方法の工程(4)に従ってポリメラーゼにより伸長可能となる。
【0047】
特に好ましい実施形態においては、DNAが核酸であり、dUTPをマーカーヌクレオチドとして使用する場合は、取りこまれたマーカーウリジン残基のウラシル塩基をウラシル−DNAグリコシラーゼ(UDG、図2〜4)の作用によりリボースから分離する。種々の種から単離されている種々のUDGが多数報告されている(Rev.Biochem.Tox.9(1988)69;Mutat.Res.460(2000)165)。UDGはウラシルをもたらすDNA塩基シトシンの脱アミノ化により、または、DNA複製の間のウリジンの過った取りこみにより生じる塩基除去経路に関与している。PCRキャリーオーバ防止におけるUDGの使用は報告されている(Gene 93(1990)125)。E.coli由来のUDGは種々の製造元から、操作型および未操作型で市販されている。E.coliUDGは1重鎖または2重鎖のDNAからウラシルを効率的に加水分解するが、dUTPからは加水分解しない。UDGの最小基質はpd(UN)pであることが解かっている(Biochemistry 30(1991)4055)。反応は例えば緩衝液の条件または温度を変化させるか、または、UDGを添加することにより開始され、例えば緩衝液の条件または温度を変化させるか、またはUDG阻害剤を添加することにより停止できる。ウリジン残基を含むDNAからのウラシル塩基の分離により、アピリミジン部位(AP部位)が生じる。
【0048】
別の特に好ましい実施形態においては、DNAが核酸であり、8−oxo−dGTPをマーカーヌクレオチドとして使用する場合は、ホルムアミドピリミジン−DNAグリコシラーゼ(Fpg)を用いてリボースから8−oxo−グアニジン塩基を分離する(EMBO J.6(1987)3177)。反応は例えば緩衝液の条件または温度を変化させるか、または、酵素を添加することにより開始でき、そして、例えば緩衝液の条件または温度を変化させるか、または、阻害剤を添加することにより停止することができる。そのホルムアミドピリミジン−グリコシラーゼ活性のほかに、この蛋白はまた、AP部位において5’−および3’−ホスホジエステル結合の両方をα,β−除去を介して切断するニック形成活性を有している(Biochem.J.262(1989)581)。即ち、8−oxo−GMP残基を有するポリヌクレオチド分子の処理は5’−および3’−末端の両方においてホスフェート基を有する1ヌクレオチドのギャップをもたらす。
【0049】
別の特に好ましい実施形態においては、上記した修飾塩基の1つを検出する如何なる別のDNA N−グリコシラーゼも使用される。E.coliアルキル塩基−DNAグリコシラーゼ(alkA遺伝子産物、Mol.Gen.Genet.197(1984)368)は、例えば3−メチルアデノシン、7−メチルアデノシン、3−メチルグアノシン、7−メチルグアノシン、7−ヒドロキシエチルグアノシン、7−クロロエチルグアノシン、O2−アルキルチミジン、O2−アルキルシチジン、ヒポキサントシン、1,N6−エテノアデノシンまたは3,N4−エテノシチジンから塩基を分離する。代替品としてのE.coliエンドヌクレアーゼIII(Biochem.J.242(1987)565)は5−ヒドロキシシチジン、5,6−ジヒドロチミジン、5−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロチミジン、チミジングリコール、ウリジングリコール、アロキサン、5,6−ジヒドロウリジン、5−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロウリジンまたは5−ヒドロキシウリジンから塩基を分離する。エンドヌクレアーゼIIIはそのDNA N−グリコシラーゼ活性の外にβ−除去を介してAP部位の結合を3’−末端で分離するAPリアーゼ活性を有している(Nucl.Acid.Res.16(1988)1135)。即ち、エンドヌクレアーゼIIIに対する上記した基質残基を含む核酸分子の処理は、3’−末端がα,β−不飽和アルデヒド(トランス−4−ヒドロキシ−2−ペンタナール(pentenal)−5−ホスフェート)および5’−末端がホスフェート基となるニックをもたらす。
【0050】
別の好ましい実施形態においては、DNAが核酸であり、rNTPの1つ以上をマーカーヌクレオチドとして使用する場合は、DNA2重鎖に取りこまれているrNMP残基はリボヌクレアーゼHにより認識されることができる(RNaseH、図5)。好ましくは、リボヌクレオチド残基1個以上よりなるDNA鎖中のRNAセグメントの5’−部位で切断するK562ヒト赤白血病細胞由来のRNaseH1を用いる(J.Biol.Chem.266(1991)6472)。この反応により一方で5’−p−rNMP残基、他方で遊離の3’−OH基となるニックが形成される。或いは、他のRNaseH、例えばE.coliRNaseHまたは逆転写酵素のRNaseH活性を用いることができる。反応は例えば緩衝液の条件または温度を変化させるか、または、酵素を添加することにより開始でき、そして、例えば緩衝液の条件または温度を変化させるか、または、阻害剤を添加することにより停止することができる。
【0051】
好ましい実施形態においては、DNA N−グリコシラーゼの作用により生じるAP部位をクラスIIAPエンドヌクレアーゼにより切断する(図2)。特にエンドヌクレアーゼIV(J.Biol.Chem.252(1977)2808)またはエキソヌクレアーゼIII(J.Biol.Chem.239(1964)242)をこの反応のために使用できる。これらの酵素とともにAP部位を有するポリヌクレオチド分子をインキュベートすることにより、加水分解を介して、一方が5’−デオキシリボースホスフェート(dRp)、他方が遊離の3’−OH基となるニックが形成される(Nucl.Acid.Res.18(1990)5069)。
【0052】
特に好ましい実施形態においては、クラスIIAPエンドヌクレアーゼの作用により生じる5’−dRpをデオキシリボースホスファターゼ活性(dRpasen)を示す酵素により切断する。この反応のためには、複数の酵素を使用する。例えば、E.coliエキソヌクレアーゼI(Nucl.Acid.Res.20(1992)4699)、E.coli RecJ蛋白(Nucl.Acid.Res.22,1994,993);E.coliエンドヌクレアーゼIII(Nucl.Acid.Res.17,1989,6269);E.coliホルムアミドピリミジン−DNAグリコシラーゼ(Fpg,J.Biol.Chem.267,1992,14429);E.coliエンドヌクレアーゼVIII(J.Biol.Chem.272,1997,32230);T4エンドヌクレアーゼV(Biochemistry 32,1993,8284);T4DNAリガーゼ(J.Biol.Chem.273,1998,7888);T7DNAリガーゼ(J.Biol.Chem.273,1998,7888)またはDNAポリメラーゼI,T7DNAポリメラーゼおよびMMLV逆転写酵素(J.Biol.Chem.275,2000,12509)が挙げられる。
【0053】
別の好ましい実施形態において、DNA N−グリコシラーゼの作用により生じるAP部位は、クラスIAPエンドヌクレアーゼにより切断される(図3)。この反応のためには、E.coliエンドヌクレアーゼIII(Biochem.J.242,1987,565−573)またはT4エンドヌクレアーゼV(Mutat.Res.459,2000,43−53)を使用することができる。これらの酵素とともにAP部位を含むポリヌクレオチド分子をインキュベートすることにより、β−除去を介して、3’−末端がα,β−不飽和アルデヒド(トランス−4−ヒドロキシ−2−ペンタナール(pentenal)−5−ホスフェート)および5’−末端がホスフェート基となるニックがもたらされる(FEBS Lett.178,1984,223;Nucl.Acid.Res.16,1988,1135)。3’−アルデヒドはエキソヌクレアーゼIIIまたはエンドヌクレアーゼIVのようなクラスIIAPエンドヌクレアーゼにより除去し(Biochem.J.242,1987,565)、遊離の3’−OH基としなければならない。
【0054】
好ましい実施形態においては、DNA N−グリコシラーゼの作用により生じるAP部位は、α,β−除去を介してAP部位で切断するAPリアーゼにより切断される(図4)。E.coliエンドヌクレアーゼVIII(J.Biol.Chem.272,1997,32230)およびE.coliホルムアミドピリミジン−DNAグリコシラーゼ(Fpg,J.Biol.Chem.267,1992,14429)をこの目的のために使用できる。これらの酵素とともにAP部位を有するDNA2重鎖をインキュベートすることによりギャップの一端が3’−ホスフェート残基であり、ギャップの他端が5’−ホスフェート残基となる1ヌクレオチドのギャップがもたらされる。その後、3’−ホスフェート基をクラスIIAPエンドヌクレアーゼ、例えばエキソヌクレアーゼIIIまたはエンドヌクレアーゼIV(J.Biol.Chem.258,1983,15198)によるか、またはT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Biochemistry 16,1977,5120)により除去することにより、遊離の3’−OH基とする。
【0055】
別の好ましい実施形態においては、DNAよりなりrNMP残基を含むマーカー鎖をアルカリ加水分解により切断する。この反応は3’−末端が2’−または3’−rNMP、そして5’−末端がOH基となるニックを形成する。反応はpHを変化させることにより開始および停止することができる。
【0056】
別の好ましい実施形態においては、rNMPを含むDNAポリヌクレオチドのアルカリ加水分解で生じるニックの3’−末端の2’−または3’−rNMPをクラスIIAPエンドヌクレアーゼにより除去する。好ましくは、エキソヌクレアーゼIIIまたはエンドヌクレアーゼIVを使用し、遊離の3’−OH基を得る。
【0057】
工程(4)によれば、上記した反応の1つ以上の結果生じるニックまたはギャップの遊離の3’−OH基を、別のマーカーヌクレオチドの取りこみを伴うか、または伴うことなく、鋳型指向性ポリメラーゼ反応により伸長する。
【0058】
好ましい実施形態においては、1重鎖ブレイクのマーカー鎖3’の残りの部分、特にクラスIIAPエンドヌクレアーゼの作用により生じる5’−dRpを含む鎖を、対応する相補鎖の余剰部に結合させ、これにより鋳型鎖から除去する。次に、何らかの種類のポリメラーゼを用いて鋳型指向性重合により3’−OH基を伸長させることができる。
【0059】
別の好ましい実施形態においては、1重鎖ブレイクのマーカー鎖3’の残りの部分を、強力な鎖置換特性を示すポリメラーゼを用いて鋳型鎖から除去する。好ましくは、VentDNAポリメラーゼまたはクレノウDNAポリメラーゼをこの目的のために使用する。
【0060】
別の好ましい実施形態においては、1重鎖ブレイクのマーカー鎖3’の残りの部分を、5’−エキソヌクレアーゼ活性により鋳型鎖から除去する。この目的のためには、5’−エキソヌクレアーゼ活性を示す如何なるポリメラーゼも使用することができる。好ましくは、TaqDNAポリメラーゼまたはTthDNAポリメラーゼを使用する。或いは、5’−3’エキソヌクレアーゼをいずれかのポリメラーゼと組み合わせて使用することができる。そして、好ましくはラムダエキソヌクレアーゼ(Gene Amplification and Analysis 2,1981,135)またはT7エキソヌクレアーゼ(Nucl.Acid.Res.5,1978,4245)を使用する。
【0061】
本発明の実施形態(B)は本発明の方法の実施形態(A)を実施するための取扱説明書を含むキットに関する。好ましくは、該キットは下記構成要素:
(i)ポリヌクレオチド分子内への取りこみのためのマーカーヌクレオチド;
(ii)取りこまれたマーカーヌクレオチドにおける1重鎖ブレイクを可能にする薬剤;および、
(iii)マーカーヌクレオチドの取りこみを行なうため、および1重鎖ブレイクを形成するための緩衝液、
を含む。
【0062】
キットは更に別の構成要素、例えば下記要素:
(iv)2重鎖ポリヌクレオチドを生成するための緩衝液;
(v)1重鎖ブレイクから出発するポリヌクレオチド鎖の鋳型指向性重合を可能にする薬剤;および、
(vi)重合反応を行なうための緩衝液、
の1つ以上を含んでいてよい。
【0063】
本発明を以下の実施例により更に説明するが、これにより本発明は限定されない。
【実施例1】
【0064】
無作為に分布した遺伝子当りの1組み換え事象の生成
1.組み換えるべき部分相同および異種の遺伝子を準備する。一端でEcoRI制限部位および他端でHindIII制限部位を導入するPCRにより遺伝子を増幅する。
【0065】
2.PCR産物1μgおよびpUC18ベクター1μgをEcoRI反応緩衝液(100mMTris−HCl,pH7.5;50mM NaCl;10mM MgCl2;0.025%(v/v)Triton(登録商標)X−100)中1UのEcoRI(例えばNEB)および1UのHindIII(例えばNEB)とともに2時間37℃でインキュベートする。65℃で20分間酵素を熱不活性化する。分解産物を例えばQiaQuick(Qiagen)で精製する。
【0066】
3.200fmolベクター、600fmolインサート、1μlの10Xライゲーション緩衝液(500mM Tris−HCl,pH7.5;100mM MgCl2;100mMDTT;10mMATP,250μg/ml BSA)、5Weiss単位のT4DNAリガーゼ(例えばNEB)を水で10μlとしたものを用いてpUC18ベクターにPCR産物を連結する。室温で1時間インキュベートし、65℃で10分間酵素を熱不活性化する。E.coliXL1−Blueを例えばエレクトロポレーションにより連結されたベクターで形質転換する。例えばQiagen Mini Plasmid Prepキットを用いて陽性クローンからプラスミドを調製する。
【0067】
4.下記プライマー:
pUC−left:5’−CCAGTCACGACGTTGTAAAACG−3’(配列番号1);
pUC−right:5’−TAACAATTTCACACAGGAAACAGC−3’(配列番号2)
を用いたPCRによる挿入遺伝子の増幅は、10μl 10XPCR緩衝液(200mM Tris−HCl,Ph8.75;100mM KCl;100mM(NH42SO4;20mM MgCl2;1%(v/v)Triton(登録商標)X−100;1mg/mlBSA)、10fmol鋳型ベクター、100pmolpUC−left、100pmolpUC−right、200μMdNTPs、2U Pfu DNAポリメラーゼ(例えばStratagene)を混合して水で100μlとし、そして次のサイクルプロトコル、即ち1’94℃;1’94℃、1’50℃、1.5’72℃よりなる30サイクル;2’72℃を用いて行う。PCR産物を例えばQiaQuick(登録商標)で精製する。
【0068】
5.10μlの10XPCR緩衝液(100mM Tris−HCl,pH8.3;500mM KCl;15mM MgCl2;0.01%(w/v)ゲランチン(gelantin))、1pmol鋳型DNA、100pmolpUC−left、100pmolpUC−right(3’−NH2修飾)、200μMdNTP、上記したdUTP濃度のいずれか、2U Taq DNAポリメラーゼ(例えばApplied Biosystems)を混合して水で100μlとし、そして次のサイクルプロトコル、即ち1’94℃;1’94℃、1’50℃、1.5’72℃よりなる30サイクルを用いることにより、添加するdUTPの濃度を変化(例えば0.2μM;1μM;5μM;25μM;100μM dUTP)させながら鋳型として混合PCR産物を用いて一連の非対称PCRを行う。PCR産物を例えばQiaQuick(登録商標)(Qiagen)で精製し、マーカー鎖としてPCR産物をプールする。
【0069】
10μlの10XPCR緩衝液(100mM Tris−HCl,pH8.3;500mM KCl;15mM MgCl2;0.01%(w/v)ゲランチン(gelantin))、1pmol鋳型DNA、100pmolブロックpUC−left(3’−NH2修飾)、100pmolpUC−right、200μMdNTP、2U Taq DNAポリメラーゼ(例えばApplied Biosystems)を混合して水で100μlとし、そして次のサイクルプロトコル、即ち1’94℃;1’94℃、1’50℃、1.5’72℃よりなる30サイクルを用いることにより、鋳型(アンチセンス鎖)として混合PCR産物を用いて非対称PCRを行う。PCR産物を例えばQiaQuick(登録商標)(Qiagen)で精製し、鋳型鎖としてPCR産物をプールする。
【0070】
6.100mMNaCl中でセンス鎖2pmol(取りこまれたdU’を有する)およびアンチセンス鎖2pmolをアニーリングする(2’95℃、95℃→50℃、0.04℃/s)。アニーリングされた2重鎖DNAを例えばQiaQuick(登録商標)キットを用いて精製する。
【0071】
7.20μlUDG緩衝液(20mMTris−HCl、pH8.0;1mM EDTA;1mM DTT)中37℃で1時間1U UDG(例えばNEB)および2UエンドヌクレアーゼIV(例えばEpicentre)とともにアニーリングされた2重鎖DNA2pmolをインキュベートする。Vent緩衝液(20mMTris−HCl、pH8.8;10mM KCl;10mM(NH42SO4;2mM MgSO4;0.1%(v/v)Triton(登録商標)X−100)80μl、200μM dNTPおよび2U Vent(exo−)DNAポリメラーゼ(NEB)を添加する。72℃で5分間インキュベートする。QiaQuick(登録商標)(Qiagen)を用いてDNAを精製する。
【0072】
8.37℃で2時間、EcoRI反応緩衝液(100mM Tris−HCl,pH7
.5;50mM NaCl;10mM MgCl2;0.025%(v/v)Triton(登録商標)X−100)中、1U EcoRI(例えばNEB)および1U HindIII(例えばNEB)と共に生成物とpUC18ベクター1μgをインキュベートする。65℃で20分間酵素を熱不活性化する。切断産物を例えばQiaQuick(登録商標)−キットを用いて精製する。
【0073】
9.200fmolベクター、600fmolインサート、1μLの10X ライゲーション緩衝液(500mM Tris−HCl,pH7.5;100mM MgCl2;100mMDTT;10mMATP,250μg/ml BSA)、5Weiss単位のT4DNAリガーゼ(例えばNEB)を水で10μlとしたものを用いてpUC18ベクターに産物を連結する。室温で1時間インキュベートし、65℃で10分間酵素を熱不活性化する。E.coli XL1−Blueを連結したベクターで形質転換する。
【実施例2】
【0074】
遺伝子当たり1組み換え事象超の生成
工程1〜4は実施例1参照。
【0075】
5.10μlの10XPCR緩衝液(100mM Tris−HCl,pH8.3;500mM KCl;15mM MgCl2;0.01%(w/v)ゲランチン(gelantin))、1pmol鋳型DNA、100pmolpUC−left、100pmolロックpUC−right(3’−NH2修飾)、200μMdNTP、2μMdUTP、2U TaqDNAポリメラーゼ(例えばApplied Biosystems)を混合して水で100μlとし、そして次のサイクルプロトコル、即ち1’94℃;1’94℃、1’50℃、1.5’72℃よりなる30サイクルを用いることにより、鋳型として混合PCR産物を用いて非対称PCRを行う。PCR産物を例えばQiaQuick(登録商標)(Qiagen)によりマーカー鎖として精製する。
【0076】
10μlの10xPCR緩衝液(100mM Tris−HCl,pH8.3;500mM KCl;15mM MgCl2;0.01%(w/v)ゲランチン(gelantin))、1pmol鋳型DNA、100pmolブッロクpUC−left(3’−NH2修飾)、100pmolpUC−right、200μMdNTP、2U TaqDNAポリメラーゼ(例えばApplied Biosystems)を混合して水で100μlとし、そして次のサイクルプロトコル、即ち1’94℃;1’94℃、1’50℃、1.5’72℃よりなる30サイクルを用いることにより、鋳型として混合PCR産物を用いて非対称PCRを行う。PCR産物を例えばQiaQuick(登録商標)(Qiagen)により鋳型鎖として精製する。
【0077】
6.100mMNaCl中マーカー鎖(組みこまれたdU’を有する)2pmolおよび鋳型鎖2pmolをアニーリングする(2’95℃、95℃→50℃、0.04℃/s)。アニーリングされた2重鎖DNAを例えばQiaQuick(登録商標)−キット(Qiagen)を用いて精製する。
【0078】
7.20μlUDG緩衝液(20mMTris−HCl、pH8.0;1mM EDTA;1mM DTT)中37℃で1時間1U UDG(例えばNEB)および2UエンドヌクレアーゼIV(例えばEpicentre)とともにアニーリングされた2重鎖DNA2pmolをインキュベートする。UGI(ウラシルグリコシラーゼ阻害剤、例えばNEB)2Uを添加する。Vent緩衝液(20mMTris−HCl、pH8.8;10mM KCl;10mM(NH42SO4;2mM MgSO4;0.1%(v/v)Triton(登録商標)X−100)80μl、200μM dNTP、2μM dUTPおよび2U Vent(exo−)DNAポリメラーゼ(NEB)を添加する。72℃で5分間インキュベートする。DNAを精製する(例えばQiaQuick(登録商標)を用いる)。
【0079】
8.100mMNaCl中種々の鎖をリアニーリングする(2’95℃、95℃→50℃、0.04℃/s)。
【0080】
9.工程7および8を数回反復する(サイクル数はbp/100において遺伝子長と等しくなければならない)。
【0081】
10.産物およびpUC18ベクター1μgをEcoRI反応緩衝液(100mMTris−HCl,pH7.5;50mM NaCl;10mM MgCl2;0.025%(v/v)Triton(登録商標)X−100)中1UのEcoRI(例えばNEB)および1UのHindIII(例えばNEB)とともに2時間37℃でインキュベートする。65℃で20分間酵素を熱不活性化する。分解産物を例えばQiaQuick(登録商標)−キットで精製する。
【0082】
11.200fmolベクター、600fmolインサート、1μlの10Xライゲーション緩衝液(500mM Tris−HCl,pH7.5;100mM MgCl2;100mMDTT;10mMATP,250μg/mlBSA)、5Weiss単位のT4DNAリガーゼ(例えばNEB)を水で10μlとしたものを用いてpUC18ベクターに産物を連結する。室温で1時間インキュベートした後、65℃で10分間酵素を熱不活性化する。E.coliXL1−Blueを連結されたベクターで形質転換する。
【実施例3】
【0083】
無作為に組み換えられたサブチリシン遺伝子の発生
4種の部分相同および部分異種のサブチリシン遺伝子を以下に記載する本発明の方法に従って組み換えた。4種の遺伝子は野生型および3種の突然変異株である変異体15、変異体21および変異体22であり、B.subtilis由来のサブチリシンEをコードする遺伝子aprEに由来する(図7およびaprEコードサブチリシンE蛋白アミノ酸配列を示す配列番号5を参照)。
【0084】
1.4種の部分相同および部分異種の遺伝子の各々を以下のプライマー:
プライマーHL:5’−CGTTGCATATGTGGAAGAAGATC−3’(配列番号3)
プライマーHR:5’−GAAGCAGGTATGGAGGAAC−3’(配列番号4)
を用いてPCR増幅した。
【0085】
PCRは、10μlの10xPCR緩衝液(200mM Tris−HCl,pH8.8;100mM KCl;100mM(NH42SO4;25mM MgSO4;1%(v/v)Triton(登録商標)X−100;1mg/mlBSA)、10fmol鋳型、100pmolプライマーHL、100pmolプライマーHR、200μMdNTP、2.5U TaqDNAポリメラーゼ(MBI Fermentas)を混合して水で100μlとし、そして次の熱サイクルプロトコル、即ち1’94℃;1’94℃、1’55℃、1.5’72℃よりなる30サイクル;2’72℃を用いることにより、行なった。PCR産物はQiaQuick(登録商標)PCR精製キット(Qiagen,Hilden,ドイツ)により精製した。
【0086】
2.第2のPCRにおいては、4種の遺伝子の各々を工程1と同じプライマーを用いてマーカーヌクレオチドの取りこみ下にPCR増幅した。PCRは、dTTPが減量されdUTPで補充されdUTP/dTTPの比が1:40となっているdNTP混合物200μMを10μlの10xPCR緩衝液(750mM Tris−HCl,pH8.8;200mM(NH42SO4;25mM MgCl2;0.1%(v/v)Tween(登録商標)20);2.5U TaqDNAポリメラーゼ(MBI Fermentas)と混合し、水で100μLとし、そして以下の熱サイクルプロトコル、即ち、1’94℃;1’94℃、1’52℃、1.5’72℃よりなる25サイクルを用いることにより行なった。PCR産物はQiaQuick(登録商標)PCR精製キット(Qiagen,Hilden,ドイツ)により精製した。
【0087】
3.工程2のPCR産物(マーカー取りこみ)の各々0.5μg(約1pmol)および工程1のPCR産物(マーカー非含有)の各々0.5μg(約1pmol)を100mMNaCl中で混合することによりマーカー取りこみポリヌクレオチドのマーカー非含有ポリヌクレオチドに対する比率1:1の混合物を調製した。94℃で2分間加熱し0.04℃/sの速度で50℃まで冷却することによりヘテロ2本鎖分子を形成した。同様にして、工程2および1のPCR産物の対応する量を混合してマーカー取りこみポリヌクレオチドのマーカー非含有ポリヌクレオチドに対する比率が1:3および1:9の混合物を調製し、同じプロトコルでヘテロ2本鎖分子を形成した。
【0088】
4.各ヘテロ2本鎖分子混合物2μg(約3.8pmol)を20μlの1xUDG緩衝液(20mMTris−HCl、pH8.0;1mM EDTA;1mM DTT)中、1U UDG(NEB)とともに37℃で30分間インキュベートした。2UエンドヌクレアーゼIV(Epicentre)を添加し、反応容量を1xUDG緩衝液で20μlまで増加し、混合物を37℃で更に30分間インキュベートした。次に80μLTaq緩衝液(750mM Tris−HCl,pH8.8;200mM(NH42SO4;0.1%Tween20)、200μMdNTPおよび2.5U TaqDNAポリメラーゼ(MBI Fermentas)を添加し、混合物を72℃で更に5分間インキュベートした。産物をQiaQuick(登録商標)PCR精製キット(Qiagen,Hilden,ドイツ)により精製した。
【0089】
5.ポリヌクレオチドを100mMNaClに再懸濁し、再度、94℃で2分間加熱を通じて鎖を溶解し、0.04℃/sの速度で50℃まで冷却することによりヘテロ2本鎖分子を形成した。
【0090】
6.工程4および5を2回反復した。
【0091】
7.最後に、ヘテロ2本鎖を分離するために、20pmolのプライマーMLおよびプライマーMRを各混合物に添加し、サイクルプロトコル1’94℃、1’52℃、1.5’72℃を用いた3サイクルのPCRを行なった。組み換えられたポリヌクレオチドはQiaQuick(登録商標)PCR精製キット(Qiagen,Hilden,ドイツ)を用いて精製した。
【0092】
8.次に、組み換えられたポリヌクレオチドをベクターpBVP43(図7参照)に、p43プロモーターの後方で連結し、その際、ベクターは以下のとおり構築した。即ち、pUC19(ATCC37254)由来のpMB1オリジン(origin)をPCR増幅(位置763−1601)し、pUB110(ATCC37015)のPvuII部位に導入した。このベクターからSapIおよびBglIIの間のフラグメントを除去した。次に、B.subtilisのcdd遺伝子由来のP43プロモーターを含むインサート、B.subtilisのサブチリシンE遺伝子由来のシグナル配列およびターミネーター、ならびに、シグナル配列およびターミネーターとの間の短いマルチクローニングサイトをユニークなSphI部位に導入することにより、ベクターpBVP43エンプティーを形成した。シグナル配列を有さない野生型のサブチリシンE遺伝子(配列番号5の蛋白をコードし、Bacillus subtilis菌株168(DSM#402)のゲノムより誘導される)並びに他のサブチリシン変異体をマルチクローニングサイトにシグナル配列とともにインフレームに導入し、ベクターpBVP43を形成した。
【0093】
9.次に、組み換えられたポリヌクレオチドをベクターpBVP43(図7参照)に、p43プロモーターの後方で連結した。ライゲーションは、300fmolベクター、1500fmolインサート、2μlの10Xライゲーション緩衝液(500mM Tris−HCl,pH7.5;100mM MgCl2;100mMDTT;10mMATP,250μg/ml BSA)、5Weiss単位のT4DNAリガーゼ(MBI Fermentas)を水で20μlとしたものを用い、室温で2時間インキュベートし、その後65℃で10分間熱不活性化し、エタノール沈殿することにより行なった。次にライゲーション混合物でエレクトロコンピテントなE.coliXL1−Blueを形質転換した。
【0094】
10.単離したクローンを配列決定することにより、組み換え体の数と組み換え事象の頻度を調べた。
【0095】
代表的なセットのクローンの配列決定分析の結果は図8に示すとおりであり、これは、野生型サブチリシンとその3種の突然変異体の出発原料のアミノ酸残基と本発明の方法を使用することにより得られた組み換え体のものを比較したものである。アミノ酸は以下の表Iに示すとおり略記される。
【0096】
全体として、26クローン中17が組み換えられ、組み換え体65%に相当した。遺伝子当たりの組み換え事象の平均数はクローン全体で約1.2であった。
【0097】
図9に示すとおり、マーカー非含有PCR産物のマーカー取りこみPCR産物に対する比が1:1および1:3のものは、約75%の組み換え体を示し(図9B);1:3混合物の組み換え体は、1:1混合物と比較して平均で1.50の組み換え事象を有していた(図9A)。
【0098】
表I:アミノ酸の略記法
【表1】
Figure 2004535831
【0099】
Figure 2004535831
Figure 2004535831

【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は本発明の方法の概略図である。
【図2】図2はマーカーヌクレオチドとしてdUMPを使用し、マーカーヌクレオチドにおける1重鎖ブレイクの導入のためにUDG、クラスII APエンドヌクレアーゼおよびdRPaseを用いる方法の原理を説明するものである。
【図3】図3はマーカーヌクレオチドとしてdUMPを使用し、マーカーヌクレオチドにおける1重鎖ブレイクの導入のためにUDG、クラスI APエンドヌクレアーゼおよびクラスII APエンドヌクレアーゼを用いる方法の原理を説明するものである。
【図4】図4はマーカーヌクレオチドとしてdUMPを使用し、マーカーヌクレオチドにおける1重鎖ブレイクの導入のためにUDG、EndoVIIIまたはFpg、およびクラスII APエンドヌクレアーゼまたはT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いる方法の原理を説明するものである。
【図5】図5はマーカーヌクレオチドとしてrNMPを使用し、マーカーヌクレオチドにおける1重鎖ブレイクの導入のためにRNaseHを用いる方法の原理を説明するものである。
【図6】図6は3サイクルを用いる本発明の方法の概略図である。
【図7】図7はP43プロモーターの後方に挿入されたサブチリシン遺伝子を有する実験部の実施例3において使用したシャトルベクターpBV43のプラスミドマップを示す。
【図8】図8は実施例3に記載した本発明の方法により得られた組み換え体の代表的セットにおいて観察される突然変異を示す。突然変異はサブチリシンの野生型アミノ酸配列(配列番号5)を有する変異体と比較した場合のアミノ酸配列の相違として定義する。アミノ酸は表1に示す1文字コードに従って略記する。例えば「E160D」とは野生型アミノ酸配列の160位のグルタミン酸(Eと略記)がアスパラギン酸(Dと略記)により置きかえられていることを示す。
【図9】図9は実施例3に記載したバチルス・サブチルス由来のサブチリシン遺伝子の4種の変異体を用いて3ラウンドの本発明の方法を実施した場合の結果を示す。(A)遺伝子当たりの組み換え事象の平均数;(B)得られた集団内の組み換え体の割合。Nは配列分析により調べた各実験におけるクローンの数である。1:1、1:3および1:9とは、方法において使用した、dUTP含有鎖の濃度に対する非dUTP含有鎖の濃度の種々の比を示す。

Claims (14)

  1. 修飾された性質を有するポリヌクレオチド分子の製造方法であって、以下の工程:
    (1)原料核酸分子の集団を準備すること、ここで該集団の個々の核酸分子は相同および異種のセグメントを有し、その核酸配列内に取りこまれたマーカーヌクレオチドの少なくとも1種を有するものであり、
    (2)異種セグメントによる2重鎖を含む工程(1)により準備された原料核酸分子の集団の2重鎖ポリヌクレオチド分子を形成すること(ヘテロ2本鎖)、
    (3)工程(2)により生成された2重鎖ヘテロ2本鎖の取りこまれたマーカーヌクレオチドにおいて1重鎖ブレイクを形成すること;並びに、
    (4)工程(3)により形成された1重鎖ブレイクから出発してマーカーヌクレオチドの取りこみを行ないながら、または行なうことなく、鋳型指向性1重鎖合成を行なうこと、
    を包含する、製造方法。
  2. (i)上記した工程(2)から(4)を含む1サイクル以上、好ましくは少なくとも2サイクル、より好ましくは少なくとも10、最も好ましくは少なくとも20サイクル行ない;および/または、
    (ii)最終サイクルを除く全サイクルにおいて、新しいマーカーヌクレオチドの取りこみを行ないながら工程(4)を行ない;および/または、
    (iii)工程(3)および(4)を逐次的または同時に行う、請求項1に記載の方法。
  3. (i)相同セグメントが少なくとも5、好ましくは少なくとも10そしてより好ましくは少なくとも20ヌクレオチド、および/または、5000ヌクレオチド以下、好ましくは2000ヌクレオチド以下、より好ましくは1000ヌクレオチド以下の長さを有し;および/または、
    (ii)相同セグメントが異種セグメントによりフランキングされている(flanked)、請求項1または2に記載の方法。
  4. (i)工程(1)による核酸分子へのマーカーヌクレオチドの取りこみが鋳型指向性ポリメラーゼ反応の使用によるか、または、オリゴヌクレオチドの化学合成により行なわれ;および/または、
    (ii)工程(2)による2重鎖ヘテロ2本鎖ポリヌクレオチドの生成が相補ポリヌクレオチドの相同セグメントのハイブリダイゼーションにより行なわれ;および/または、
    (iii)工程(3)において取りこまれたマーカーヌクレオチドの位置における1重鎖ブレイクが酵素的反応の使用により得られるニックまたはギャップであり;および/または、
    (iv)工程(4)の鋳型指向性1重鎖合成がポリメラーゼを利用する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 工程(2)から(4)を含む1以上のサイクルが行なわれ、2連続サイクルの各々における工程(4)による鋳型指向性合成の出発点の間の平均距離が、2連続サイクルの初回の工程(4)におけるマーカーヌクレオチドの取りこみの確率を調節することにより制御される、請求項1から4に記載の方法。
  6. マーカーヌクレオチドの取りこみの確率がマーカーヌクレオチドの標準ヌクレオチドに対する濃度の比を調節することにより制御され;および/または、マーカーヌクレオチドの取りこみの確率が好ましくは1未満であり、そして塩基対内の原料核酸長の逆数より高値であり;および/または、マーカーヌクレオチドの取りこみの確率がサイクルごとに変わる、請求項5に記載の方法。
  7. 核酸分子がDNA分子であり、鋳型指向性ポリメラーゼ反応においてデオキシウリジントリホスフェート(dUTP)をマーカーヌクレオチドとして4種の標準デオキシヌクレオシドトリホスフェートと組み合わせて使用し;および/または取りこまれたマーカーウリジン残基のウラシル塩基がウラシル−DNAグリコシラーゼを用いてリボースから分離される、請求項4から6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 核酸分子がDNA分子であり、鋳型指向性ポリメラーゼ反応において8−オキソ−デオキシグアノシン(doxyguanosine)トリホスフェート(8−oxo−dGTP)をマーカーヌクレオチドとして4種の標準デオキシヌクレオシドトリホスフェートと組み合わせて使用し;および/または取りこまれた8−oxo−GMP残基の8−oxo−グアニン塩基がホルムアミドピリミジン−DNAグリコシラーゼを用いてリボースから分離される、請求項4から6のいずれか1項に記載の方法。
  9. 核酸分子がDNA分子であり、鋳型指向性ポリメラーゼ反応において以下の修飾された塩基:即ち、3−メチルアデニン、7−メチルアデニン、3−メチルグアニン、7−メチルグアニン、7−ヒドロキシエチルグアニン、7−クロロエチルグアニン、O2−アルキルチミン、O2−アルキルシトシン、5−フルオロウラシル、2,5−アミノ−5−ホルムアミドピリミジン、4,6−ジアミノ−5−ホルムアミドピリミジン、2,6−ジアミノ−4−ヒドロキシ−5−ホルムアミドピリミジン、5−ヒドロキシシトシン、5,6−ジヒドロチミン、5−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロチミン、チミングリコール、ウラシルグリコール、イソジアル尿酸、アロキサン、5,6−ジヒドロウラシル、5−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロウラシル、5−ヒドロキシウラシル、5−ホルミルウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、ヒポキサンチン、1,N6−エテノアデニンまたは3,N4−エテノシトシンを有するマーカーヌクレオチドを4つの標準dNTPと組み合わせて使用し;および/または、上記した修飾塩基の1つを検出するDNA N−グリコシラーゼ、好ましくはE.coliエンドヌクレアーゼIIIまたはアルキル塩基DNAグリコシラーゼを使用する、請求項4から6のいずれか1項に記載の方法。
  10. 核酸分子がDNA分子であり、鋳型指向性ポリメラーゼ反応において4種の標準dNTPと組み合わせてマーカーヌクレオチドとしてリボヌクレオシドトリホスフェート(rNTP)1、2、3種または4種全てを鋳型指向性ポリメラーゼ反応において使用し;および/またはDNAポリヌクレオチド内に取りこまれたrNMP残基が特異的リボヌクレアーゼH、好ましくはヒトRNaseH1により認識される、請求項4から6のいずれか1項に記載の方法。
  11. 核酸分子がDNA分子であり、リボヌクレオシドモノホスフェート(rNMP)のいずれかまたは4つのすべてをマーカーヌクレオチドとして使用し、そして、マーカー鎖がrNMP残基においてアルカリ加水分解により切断され、および/または、アルカリ加水分解により生じるニックの3’−末端における2’−または3’−rNMPがクラスII APエンドヌクレアーゼにより、好ましくは、エキソヌクレアーゼIIIまたはエンドヌクレアーゼIVにより除去される、請求項4から6のいずれか1項に記載の方法。
  12. 工程(4)において、酵素反応の結果として生じるニックまたはギャップにおける3’OH−基が、さらなるマーカーヌクレオチドの取りこみを行ないながら、または行なうことなく、鋳型指向性ポリメラーゼ反応により伸長され、好ましくは、
    (i)クラスII APエンドヌクレアーゼの作用の結果として生じる5’−dRp基を含む鎖が対応する鋳型鎖の余剰部に結合し、3’−基が鋳型指向性ポリメラーゼにより伸長され;および/または、
    (ii)ニックの3’OH−基が強力な鎖置換特性を示すポリメラーゼを用いて鋳型指向性に伸張され;および/または、
    (iii)ニックまたはギャップの3’OH−基が5’3’−エキソヌクレアーゼ活性を示す鋳型指向性ポリメラーゼにより、または、別の5’3’−エキソヌクレアーゼと共同して他の鋳型指向性ポリメラーゼを用いて伸長される、請求項4から11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 鋳型指向性1重鎖合成が行なわれる工程(4)における鋳型鎖がRNA分子であり、これによりRNA依存性DNAポリメラーゼ、好ましくはトリ骨髄芽球症ウィルス由来のAMV逆転写酵素、ヒト免疫不全ウィルス由来のHIV逆転写酵素、または、モロニーマウス白血病ウィルス由来のMMLV逆転写酵素を鋳型指向性1重鎖合成のために用いる、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
  14. 請求項1から13のいずれか1項に記載の方法を実施するためのキットであって、好ましくは、以下の構成要素:
    (i)ポリヌクレオチド分子内への取りこみのためのマーカーヌクレオチド;
    (ii)取りこまれたマーカーヌクレオチドにおける1重鎖ブレイクを可能にする薬剤;および、
    (iii)マーカーヌクレオチドの取りこみを行なうための、および、これらの部位において1重鎖ブレイクを形成するための緩衝液、
    を含むキット。
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