JP2004535784A - グリコシル化抵抗性シアノビリン及び関連コンジュゲート、組成物、核酸、ベクター、宿主細胞、非グリコシル化シアノビリンの製造方法及び使用方法 - Google Patents

グリコシル化抵抗性シアノビリン及び関連コンジュゲート、組成物、核酸、ベクター、宿主細胞、非グリコシル化シアノビリンの製造方法及び使用方法 Download PDF

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Abstract

配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む蛋白質又はペプチドをコードする単離精製された核酸分子であって、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は、グリコシル化抵抗性にされた配列番号2のアミノ酸30−32を含み、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は抗ウイルス活性を有する、単離精製された核酸分子、このような単離精製された核酸分子を含むベクター、上記ベクターを含む宿主細胞又は生物、抗ウイルス蛋白質もしくは抗ウイルスペプチドの製造方法、抗ウイルス蛋白質もしくは抗ウイルスペプチドそれ自体、抗ウイルス蛋白質もしくは抗ウイルスペプチドを含むコンジュゲート、並びに、有効量の抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質コンジュゲート又は抗ウイルスペプチドコンジュゲートを含む組成物。更に、宿主のウイルス感染、特に、インフルエンザウイルス感染を予防的又は治療的に阻害する方法が提供される。

Description

【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、インフルエンザウイルス感染を予防的、又は治療的に阻害するためのシアノビリン(cyanovirin)の使用、並びに、グリコシル化抵抗性シアノビリン及び関連コンジュゲート(conjugate)、組成物、核酸、ベクター、宿主細胞、及び製造方法と使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ウイルス治療分野は、レトロウイルス、特にHIVに対する有効な薬剤の必要性に応じて発展してきた。薬剤が抗レトロウイルス活性を示しうる多くの方法が存在する(例えば、DeClercq, Adv. Virus Res. 42,1-55,1993 ; DeClercq, J. Acquir. Immun. Def. Svnd. 4,207-218,1991 ; 及び、 Mitsuya ら, Science249,1533-1544,1990参照)。ウイルスの逆転写酵素を阻害する、AZTなどのヌクレオシド誘導体は、抗HIV療法のための市販の、最初の、臨床的に活性な薬剤の1つであった。一部の患者には非常に有用であるが、AZT及び関連化合物の有用性は、毒性と、完全に十分な治療のための不十分な治療指数によって限定されている。また、HIV感染の真のダイナミックスに関する次なる新事実を考えれば(Coffin, Science 267,483-489,1995; 及び、 Cohen, Science 267,179,1995)、ウイルス複製サイクルで出来るだけ早く作用する薬剤が、感染細胞のウイルスによって誘導される殺害に応答して、体内で産生される、新たに産生され、未感染の免疫細胞への感染を阻害するために必要とされることがますます明らかになってきている。また、感染細胞によって産生される新たな感染性ウイルスを中和又は阻害することは必須である。
【0003】
インフルエンザウイルスによる人々の感染はまた、世界的な、流行性疾患、罹病率、死亡率の主要原因である。有害な経済的結果及びヒトの苦痛は莫大である。このウイルスによる確立された感染の利用できる治療は、最低限に有効であるか、又は無効である;これらの治療では、アマンタタジン、リマンタジン及びノイラミニダーゼ阻害剤を用いる。これらの薬剤のうち、ノイラミニダーゼ阻害剤のみが、通常ヒトに感染するインフルエンザウイルスの多数の株に対し実質的に活性であるが、これらの薬剤はまだ、流行性疾患に対し限定された有用性又は効力しかもたない。
【0004】
現在、インフルエンザウイルス感染に対する唯一の有効な予防的治療は、ワクチン接種である。しかし、薬剤治療と同様に、これは、高度に耐性のウイルス株の出現が生じる、インフルエンザウイルスが遺伝子交換によって急速に変異する傾向によって厳しく制限される。高度に耐性のウイルス株は、感受性集団に急速に感染し、拡がる。事実、可能性ある流行性株が同定され、又は予測されることができ、対応するワクチンが準備でき、十分に早く投与できて、その年の可能性ある流行が未然に防がれ、又は弱められることができるとしても、ワクチン接種戦略は、年毎に有効なだけである。従って、新規な予防的及び治療的介入及び薬剤が、インフルエンザウイルスと闘うのに緊急に必要とされる。
【0005】
インフルエンザウイルスの多様な株、臨床分離株、及びサブタイプに対しブロードな抗インフルエンザウイルス活性を有する新規薬剤は非常に有用であろう。このような薬剤は、変異ウイルスに対し依然として活性のままであることが非常にありそうだからである。ヒトに感染するインフルエンザウイルスの2つの主要なタイプは、インフルエンザA及びBであり、その両方とも、呼吸器と胃腸の苦痛を含みうる重度の急性疾患、並びに他の重度の病理的続発症を引き起こす。最近の臨床分離株を含む、インフルエンザウイルスA及びBの両方の多様な株と分離株に対し抗インフルエンザウイルス活性を有する薬剤は、インフルエンザウイルス感染に感受性の宿主の予防又は治療での使用に特に利点があろう。
【0006】
インフルエンザウイルス感染の主要な伝達様式は、呼吸器性、即ち、インフルエンザ感染個体のせき、くしゃみ、呼吸などを通じて産生されるウイルスが保持されたエアロゾル化粒子の吸入による伝達である。感染性インフルエンザビリオンの伝達はまた、感染人の唾液又は他の身体性分泌物との接触(例えば、故意ではない手と口の接触、キス、タッチングなど)により起こりうる。従って、感受性個体内への感染性インフルエンザビリオンの接触の第1の点は、口咽頭粘膜内の粘膜表面、及び上部と下部の呼吸器管内の粘膜表面である。これらの部位は、個体の最初の感染のウイルス接触の第1の点を含むばかりではなく、感染性インフルエンザウイルス粒子を含む体液の産生と排出(例えば、せき、くしゃみ、唾液伝達などによる)の第1の部位でもある。従って、感染性インフルエンザウイルスの接触、感染、伝達の上記粘膜部位に局所的に、適用又は送達できうる、インフルエンザウイルスAとBの多様な株と分離株に対しブロードスペクトル活性を有する非常に強力な抗インフルエンザウイルス剤の利用性は、感受性の未感染又は感染宿主のどちらにおいても、インフルエンザウイルス感染の治療的及び予防的阻害に非常に利点があろう。
【0007】
この点に関し、単独で、又は現存の抗ウイルス剤と組合せて使用される新規クラスの抗ウイルス剤が、有効な抗ウイルス療法のために必要とされる。新規薬剤はまた、ウイルス感染の予防的阻害にも重要である。必要性の両方の領域において、理想的な新規薬剤は、ウイルスのライフサイクルにおいて出来るだけ早く作用し;出来るだけウイルス特異的であり(即ち、宿主ではなくウイルスに特異的な分子標的を攻撃する);無傷のウイルスを非感染性にし;ウイルス感染細胞の死又は機能不全を防止し;感染細胞からウイルスの更なる産生を防止し;未感染細胞へのウイルス感染の拡がりを防止し;所定のウイルスの株と分離株の可能な限り最も広い範囲に対し非常に強力で活性であり;生理的及び苛烈な環境状態下に分解に抵抗性であり;及び、容易に、そして安価に製造されよう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、宿主のウイルス感染、特にインフルエンザウイルス感染を予防的又は治療的に阻害する方法を提供することである。本発明の別の目的は、グリコシル化抵抗性シアノビリン及び関連コンジュゲート、核酸、ベクター、宿主細胞、及び製造方法と使用方法を提供することである。本発明の、これらの、そして他の目的及び利点、並びに更なる発明の特徴は、本明細書で提供される説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、とりわけ、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む蛋白質又はペプチドをコードする単離精製された核酸分子であって、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は、グリコシル化抵抗性にされた配列番号2のアミノ酸30−32を含み、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は、抗ウイルス活性を有する、単離精製された核酸分子を提供する。更に、このような単離精製された核酸分子を含むベクター、及び上記ベクターを含む宿主細胞又は生物が提供される。
【0010】
従って、本発明はまた、抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドの製造方法であって、宿主細胞又は生物でベクターを発現させることを含む方法を提供する。配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドであって、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は、グリコシル化抵抗性にされた配列番号2のアミノ酸30−32を含み、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は、抗ウイルス活性を有する、抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドもまた、そして、抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチド、及び、ポリエチレングリコール、アルブミン、デキストラン、毒素及び免疫学的試薬からなる群から選択される少なくとも1つのエフェクター成分を含むコンジュゲートも提供される。有効量の、抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質コンジュゲート、又は抗ウイルスペプチドコンジュゲートを含む組成物も提供される。
【0011】
本発明は更に、宿主のウイルス感染、特にインフルエンザウイルス感染を予防的又は治療的に阻害する方法を提供する。本方法は、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む、抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質コンジュゲート又は抗ウイルスペプチドコンジュゲートの有効量を、宿主に投与することを含み、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は、非グリコシル化であり、抗ウイルス活性を有し、それによってウイルス感染は阻害される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明の主要な全体の目的は、抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド及びそれらの誘導体、並びにウイルスに対する予防的及び/又は治療的適用を含む、それらの幅広い医学的使用を提供することである。本発明に至った最初の観察は、抗HIVスクリーンで試験した培養シアノバクテリア(藍藻類)からのある抽出物中の抗ウイルス活性であった。このスクリーンは、1986年に考え出され(国立衛生研究所のM.R.Boydによって)、1988年以降米国国立ガン研究所(NCI)で開発され、操作されたものである(Boyd, in AIDS, Etiology, Diagnosis, Treatment and Prevention, DeVita ら編, Philadelphia: Lippincott, 1988, pp. 305-317参照)。
【0013】
シアノバクテリア(藍藻類)は、抗HIVスクリーニングに特別に選ばれた。それらは、種々の構造的に独特で、生物的に活性な、窒素非含有の、アミノ酸由来の天然産物を産生することが知られていたからである(Faulkner, Nat. Prod. Rep. 11,355-394,1994; 及び、 Glombitza ら, in Algal and Cyanobacterial Biotechnology, Cresswell, R. C., ら 編, 1989, pp. 211-218)。これらの光合成原核生物は、環状及び線状ペプチド(一般的に分子量3kDa未満)の重要な生産者であり、環状及び線状ペプチドは、しばしば、肝毒性又は抗微生物性を示す(Okino ら, Tetrahedron Lett. 34,501-504,1993; Krishnamurthy ら, PNAS USA86,770-774,1989 ; Sivonen ら, Chem. Res. Toxicol. 5,464-469,1992 ; Carter ら, J. Org. Chem. 49,236-241,1984 ; 及び、 Frankmolle ら, J. Antibiot.45,1451-1457,1992)。高分子量シアノバクテリアペプチド及び蛋白質の配列決定研究は一般的に、1次代謝過程に付随するもの、又は、系統発生的マーカーとして役立ちうるものに焦点があたってきた(Suter ら, FEBS Lett. 217,279-282,1987; Rumbeli ら, FEBS Lett. 221,1-2,1987; Swanson ら, J. Biol. Chem. 267,16146-16154,1992; Michalowski ら, Nucleic Acids Res. 18, 2186, 1990; Sherman ら, in The Cyanobacteria, Fay ら編, Elsevier: New York, 1987, pp. 1-33; 及び、 Rogers, in The Cyanobacteria, Fay ら編, Elsevier: New York, 1987, pp. 35-67)。一般的に、抗ウイルス性を有する蛋白質は、シアノバクテリア源とは関連していなかった。
【0014】
本発明に至るシアノバクテリア抽出物は、上記抗HIVスクリーンで、最初に無作為に選択され、やみくもに試験された何千の異なる抽出物の1つであった。これらの抽出物のいくつかは、NCIスクリーンで抗HIV活性を示すことが予備的に測定された(Patterson ら, J. Phycol. 29,125-130,1993)。この群から、上記のように調製され(Patterson, 1993,上記)、NCI 1次スクリーンで異常に高い抗HIV力価とインビトロ「治療指数」を示したNostoc ellipsosporumからの水性抽出物が、詳細な研究のために選択された。HIVに対し非常に活性な均一蛋白質を単離精製するために、特別のバイオアッセイによって導かれる戦略を使用した。
【0015】
バイオアッセイによって導かれる戦略において、分画のための抽出物の最初の選択、適用される全体の化学的単離方法に関する決定、その中の個々の工程の種類は、生物試験データの解釈によって決定される。単離精製方法を導くのに使用される抗HIVスクリーニングアッセイ(例えば、Boyd, 1988, 上記 ; Weislow ら, J. Natl. Cancer Inst.81,577-586,1989)では、HIVの細胞変性効果からヒトTリンパ芽球様細胞の防御の程度を測定する。問題の抽出物の分画は、種々の化学的手段を用い調製され、1次スクリーンでやみくもに試験される。活性分画は更に分離され、生じるサブ分画は、スクリーンで同様にやみくもに試験される。活性化合物、即ち、純粋化合物を示す抗ウイルス分画を得るために、この過程は、必要なだけ多く繰り返される。次いで、それは、詳細な化学的分析と構造解明に供されうる。
【0016】
この戦略を用いて、Nostoc ellipsosporumの水性抽出物は、抗ウイルス蛋白質を含むことが示された。従って、本発明は、シアノビリン−Nと命名したNostoc ellipsosporumから単離精製された抗ウイルス蛋白質、及び「シアノビリン」と命名されるその機能的相同体を提供する。本明細書では、用語「シアノビリン」は、天然シアノビリン、又は任意の関連した、機能的に等価の(即ち、抗ウイルス)蛋白質、ペプチド、又はそれらの誘導体を指すために総称的に用いられる。この文脈において、定義による、関連した、機能的に等価な蛋白質、ペプチド又はそれらの誘導体は、a)天然シアノビリンに含まれる9個の連続アミノ酸の任意のサブ配列と直接的に相同の少なくとも9個のアミノ酸配列を含み、b)ウイルス、特に、インフルエンザウイルス又はレトロウイルス、より詳細には霊長類免疫不全ウイルス、より詳細にはHIV−1、HIV−2、又はSIV、あるいは、1つ以上のウイルス抗原を発現する感染宿主細胞、より詳細には、それぞれのウイルスのgp120などのエンベロープ糖蛋白質と特異的に結合できる。本明細書では、「蛋白質」は、100個以上のアミノ酸を含む配列を指し、「ペプチド」は、100個未満のアミノ酸を含む配列を指す。更に、このような機能的に等価な蛋白質又はその誘導体は、天然シアノビリン、特にシアノビリン−N(配列番号2参照)のアミノ酸配列であって、天然のシアノビリンの一端又は両端から、好ましくは一端のみから、最も好ましくはアミノ末端から1−20個、好ましくは1−10個、より好ましくは1、2、3、4、又は5個、最も好ましくは1又は2個のアミノ酸が除去されているアミノ酸配列を含むことができる。あるいは、機能的に等価な蛋白質又はその誘導体は、天然シアノビリン、特にシアノビリン−N(配列番号2参照)のアミノ酸配列であって、天然のシアノビリンの一端又は両端に、好ましくは一端のみに、最も好ましくはアミノ末端に1−20個、好ましくは1−10個、より好ましくは1、2、3、4、又は5個、最も好ましくは1又は2個のアミノ酸が加えられているアミノ酸配列を含むことができる。
【0017】
好ましくは、蛋白質、ペプチド、又はそれらの誘導体は、Nostoc ellipsosporumからの抗ウイルス蛋白質のアミノ酸配列と実質的に相同なアミノ酸配列を含む。「実質的に相同な」とは、蛋白質、ペプチド、又はそれらの誘導体に、Nostoc ellipsosporumから単離された抗ウイルス蛋白質に特徴的な抗ウイルス活性を与えるのに十分な相同性を意味する。少なくとも約50%相同性、好ましくは少なくとも約75%相同性、最適には少なくとも約90%相同性が存在すべきである。シアノビリンコンジュゲートは、毒素又は免疫学的試薬などの1つ以上の選択されたエフェクター分子と結合したシアノビリンを含む。「免疫学的試薬」は、抗体、免疫グロブリン、及び免疫学的認識要素を指すのに使用されよう。免疫学的認識要素は、ペプチドなどの要素、例えば、組換えシアノビリン−FLAG融合蛋白質のFLAG配列である。それは、免疫学的認識を通じて、それと結合した蛋白質又はペプチドの単離及び/又は精製及び/又は分析を容易にする。シアノビリン融合蛋白質は、シアノビリンが、細胞毒性もしくは免疫学的性質などの所望の性質又はエフェクター機能を有する、或いは融合蛋白質の単離、精製又は分析が容易になるなどの他の所望の性質を有する、1つ以上の他の蛋白質と結合した、シアノビリンコンジュゲートの1タイプである。
【0018】
従って、本発明は、配列番号1の配列を含む核酸分子、配列番号3の配列を含む核酸分子、配列番号2のアミノ酸配列をコードする核酸分子、又は配列番号4のアミノ酸配列をコードする核酸分子によってコードされる単離精製された蛋白質を提供する。好ましくは、上記核酸分子は、望ましくは抗ウイルス活性を有する、配列番号2のアミノ酸配列の少なくとも9個の連続アミノ酸をコードする。配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸がアミノ酸30−32を含むならば、望ましくは、アミノ酸30−32はグリコシル化抵抗性にされているが、まだ抗ウイルス活性を維持する。好ましくは、配列番号2のアミノ酸30−32は、アミノ酸30の欠失又は置換によってグリコシル化抵抗性にされている。好ましくは、アミノ酸30は、アラニン、グルタミン及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。場合によって、アミノ酸51は、欠失又は置換(例えば、グリシンによる置換)されうる。位置51のプロリンの置換又は欠失は、二量体化抵抗性を高めることが期待される;シアノビリンの二量体化は、ある条件下生じることが知られ(Yang ら, J. Molec. Biol., 288,403-412,1999; Bewley ら, JACS, 122,6009-6016 (2000))、そしてフォールディング安定性及び物理化学的分解に対する抵抗性は、シアノビリンの望ましい更なる性質である。このような特徴は、大規模精製単離と、原核及び真核宿主細胞/生物でのシアノビリンの大量生産に望ましい。
【0019】
本発明はまた、Nostoc ellipsosporumからのシアノビリンの獲得方法を提供する。このような方法は、(a)抗ウイルス活性を含むNostoc ellipsosporumの抽出物を同定すること、(b)場合によって、抽出物から高分子量生体高分子を除去すること、(c)抽出物の、抗ウイルスバイオアッセイに導かれる分画を行い、シアノビリンの粗抽出物を得ること、及び(d)逆相HPLCによって粗抽出物を精製し、シアノビリンを得ることを含む(また、実施例1を参照)。より詳細には、本方法は、抽出物から高分子量生体高分子を除去するためのエタノールの使用、及び抽出物の分画化を導くための抗HIVバイオアッセイの使用を含む。
【0020】
上記方法を用い単離精製されたシアノビリン−N(正確に配列番号2の蛋白質)は、所定の純粋蛋白質のアミノ酸配列を決定するために典型的に使用される通常の方法に供せられた。即ち、シアノビリンは、無傷蛋白質と、エンドプロテイナーゼ消化によって生成した多数の重複ペプチドフラグメントのN−末端エドマン分解によって、初めに配列決定された。アミノ酸分析は、推察された配列と一致した。還元された、HPLC精製シアノビリン−NのESI質量分析は、計算値と一致する分子イオンを示した。Nostoc ellipsosporumからのシアノビリン−Nは、以前に報告された蛋白質又は既知のヌクレオチド配列の転写産物に殆ど、又は全く有意の相同性を有しない101個のアミノ酸の独特配列から成っていた。シアノビリンからの8個以下の連続アミノ酸は、既知蛋白質のアミノ酸配列には見出されなかったし、シアノビリン−Nと13%を超える配列相同性を含む如何なる源からの既知蛋白質はなかった。シアノビリン−Nの化学的推察アミノ酸配列が与えられて、対応する組換えシアノビリン−N(r−シアノビリン−N)を作製し、それを使用して、実際、推察アミノ酸配列がHIVなどのウイルスに対して活性であることを明確に確立した(Boydら,1995, 上記;また、実施例2−5参照)。
【0021】
従って、本発明は、配列番号1の配列を含む単離精製された核酸分子、配列番号3の配列を含む単離精製された核酸分子、配列番号2のアミノ酸配列をコードする単離精製された核酸分子、配列番号4のアミノ酸配列をコードする単離精製された核酸分子及び上記核酸分子の1つ以上に実質的に相同な核酸分子などの、シアノビリンのコード配列を含む単離精製された核酸分子及び合成核酸分子を提供する。「実質的に相同な」ということは、蛋白質、ペプチド又はそれらの誘導体に、Nostoc ellipsosporumから単離された抗ウイルス蛋白質に特徴的な抗ウイルス活性を有する抗ウイルス性にするのに十分な相同性を意味する。少なくとも約50%相同性、好ましくは少なくとも約75%相同性、最適には少なくとも約90%相同性が存在すべきである。
【0022】
本発明の核酸分子は好ましくは、配列番号2のアミノ酸配列の少なくとも9個(好ましくは、少なくとも20個、より好ましくは少なくとも30個、最適には少なくとも50個)の連続アミノ酸をコードする核酸分子を含む。本発明の核酸分子はまた、天然シアノビリン、特にシアノビリン−Nのアミノ酸配列を含む蛋白質をコードする核酸配列を含み、天然のシアノビリンの一端又は両端から、好ましくは一端のみから、最も好ましくはアミノ末端から1−20個、好ましくは1−10個、より好ましくは1、2、3、4、又は5個、最も好ましくは1又は2個のアミノ酸が除去されている。あるいは、核酸分子は、天然シアノビリン、特にシアノビリン−Nのアミノ酸配列(配列番号2参照)を含む蛋白質をコードする核酸配列を含み、天然のシアノビリンの一端又は両端に、好ましくは一端のみに、最も好ましくはアミノ末端に1−20個、好ましくは1−10個、より好ましくは1、2、3、4、又は5個、最も好ましくは1又は2個のアミノ酸が加えられている。好ましくは、単離精製された核酸分子は、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む蛋白質又はペプチドをコードし、望ましくは抗ウイルス活性を有する。少なくとも9個の連続アミノ酸が、配列番号2のアミノ酸30−32を含むならば、望ましくは、アミノ酸30−32はグリコシル化抵抗性にされ、まだ抗ウイルス活性を維持している。好ましくは、配列番号2のアミノ酸30−32は、アミノ酸30の欠失又は置換によってグリコシル化抵抗性にされている。好ましくは、アミノ酸30は、アラニン、グルタミン及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。場合によって、アミノ酸51は、欠失又は置換(例えば、グリシンによる置換)されうる。このような欠失や置換は、下記するように、当業界の技術の範囲内である。
【0023】
本開示によって、部分的シアノビリン−N遺伝子配列は、十分に機能を有する(即ち、抗インフルエンザ性又は抗HIV性などの抗ウイルス性)シアノビリンをコードするのに十分らしいことが、当業者に明白であろう。機能を有するシアノビリンのための最小必須DNAコーディング配列は、例えば、天然シアノビリンを含むサブ配列の合成と評価によって、そして、シアノビリン−N DNAコード配列の部位特異的変異誘発研究によって、当業者によって容易に決定できる。
【0024】
適当なDNAコーディング配列を用いて、組換えシアノビリンは、遺伝子工学技術によって製造できる(一般的背景のために、例えば、Nicholl, in An Introduction to Genetic Engineering, Cambridge University Press: Cambridge, 1994, pp. 1-5 & 127-130, Steinbergら, in Recombinant DNA Technology Concepts and Biomedical Applications, Prentice Hall: Englewood Cliffs, NJ, 1993, pp. 81-124 & 150-162; Sofer in Introduction to Genetic Engineering, Butterworth Heinemann, Stoneham, MA, 1991, pp. 1-21 & 103-126 ; Old ら, in Principles of Gene Manipulation, Blackwell Scientific Publishers: London, 1992, pp. 1-13 & 108221 ; 及び、 Emtage, in Delivery Systems for Peptide Drugs, Davis ら編, Plenum Press: New York, 1986, pp. 23-33を参照)。例えば、シアノビリンをコードしているNostoc ellipsosporum遺伝子又はcDNAは、同定でき、サブクローンできる。次いで、該遺伝子又はcDNAは、適当な発現ベクターに組み込むことができ、適当な蛋白質合成生物に送達されることができ(例えば、E.coli,S.cerevisiae,P.pastoris,又は他の細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、又は哺乳動物細胞)、そこでは、内因性又は外来性プロモーターの支配下に、遺伝子は、適切に転写され、翻訳されることができる。あるいは、発現ベクターは、例えば、大規模生産のために、植物又は動物に投与できる(例えば、Fischer ら, Transgenic Res., 9 (4-5), 279-299,2000 ; Fischer ら, J. Biol. Regul. Homeost. Agents, 14,8392, 2000; de Wilde ら, Plant Molec. Biol., 43,347-359,2000; Houdebine, Transgenic Research, 9,305-320,2000 ; Brink ら, Theriogenology, 53,139-148, 2000; Pollock ら, J. Immun ol. Methods, 231,147-157,1999; Conrad ら, Plant Molec. Biol., 38,101-109,1998; Staub ら, Nature Biotech., 18,333-338,2000; McCormick ら, PNAS USA, 96,703-708,1999; Zeitlin ら, Nature Biotech., 16, 1361-1364 (1998); Tacker ら, Microbes and Infection, 1,777-783,1999; 及び、 Tacket ら, Nature Med., 4 (5), 607-609,1998参照)。このような発現ベクター(ファージベクター、コスミドベクター、ウイルスベクター、及びプラスミドベクターを含むがこれらに限定されない)は、遺伝子導入(例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、微量注入、形質転換など)に適切な試薬及び技術と同様に、当業者に知られている。次いで、組換え的に産生された蛋白質は、当業界公知の標準技術(例えば、クロマトグラフィ、遠心分離、溶解度の差、等電点電気泳動など)を用いて単離精製でき、抗ウイルス活性をアッセイできる。シアノビリンが、植物(上記参考文献及び、また、Methods in Biotechnology. Recombinant Proteins from Plants. Production and Isolation of Clinically Useful Compounds, Cunningham and Porter編, Humana Press: Totowa, New Jersey, 1998参照)などの分離された真核細胞又は真核生物中で組換え的に産生されるのであれば、望ましくは、位置30のN−結合グリコシル化部位(Asn30-Thr31-Ser32)は、例えば、本明細書記載の方法に基づいて、グリコシル化抵抗性にされる。場合によって、アミノ酸51は、欠失又は置換(例えば、グリシンによる置換)されうる。
【0025】
あるいは、天然シアノビリンは、非組換え法によってNostoc ellipsosporumから得ることができ(例えば、実施例1及び上記参照)、通常の技術によって配列決定できる。次いで、該配列を用いて、対応するDNAを合成でき、それは、適当な発現ベクター中にサブクローンでき、所望の蛋白質の大量組換え生産のために、蛋白質産生細胞中に送達されることができる。
【0026】
この点に関し、本発明はまた、DNA配列(例えば、シアノビリンのNostoc ellipsosporum遺伝子配列、シアノビリンをコードするcDNA、シアノビリンをコードする合成DNA配列)を含むベクター、ベクターを含む宿主細胞、及び、シアノビリンを生産するためのこのような宿主細胞の使用方法を提供する。
【0027】
シアノビリンをコードするDNA(単離精製されようと、合成であろうと)又はcDNAは、シアノビリン全体又はその一部をコードしうる。DNA又はcDNAが天然シアノビリンの完全コーディング配列を含まない場合、DNA又はcDNAは、遺伝子融合の一部としてサブクローンできる。転写遺伝子融合において、DNA又はcDNAは、蛋白質の適当な産生を命ずるそれ自身の制御配列を含みよう(例えば、リボソーム結合部位、翻訳開始コドンなど)、そして、転写制御配列(例えば、プロモーター要素及び/又はエンハンサー)は、ベクターによって提供されよう。翻訳遺伝子融合では、転写制御配列、並びに翻訳制御配列の少なくとも幾つか(即ち、翻訳開始コドン)は、ベクターによって提供されよう。翻訳遺伝子融合の場合、キメラ蛋白質が産生されよう。
【0028】
遺伝子はまた、機能を有するシアノビリン成分に加えて混成蛋白質に更なる所望の性質を与える融合成分を含む特定の融合蛋白質のために構築できる。例えば、上記のように、毒素又は免疫学的試薬のための融合配列を加えて、機能を有する蛋白質の精製と分析を容易にできる(例えば、実施例2−5で詳細を記述のFLAG−シアノビリン−N融合蛋白質など)。
【0029】
ウイルス又はウイルス感染細胞(例えば、HIV及び/又はHIV感染細胞、あるいはインフルエンザ及び/又はインフルエンザ感染細胞)に特異的にターゲティングするために、毒素又は免疫学的試薬などのエフェクター蛋白質と結合したシアノビリンを含む融合蛋白質をコードするように、遺伝子は特異的に構築できる。これらの場合に、シアノビリン部分は、中和剤として役立つばかりではなく、HIV又はインフルエンザなどの、所定のウイルスに対してこれらの分子のエフェクター活性を選択的に向けるターゲティング剤としても役立つ。従って、例えば、治療剤は、機能を有するシアノビリンのHIVターゲティング機能もしくはインフルエンザターゲティング機能と、感染性ウイルスを中和すること、及び/又は、HIVもしくはインフルエンザなどの感染性ウイルスを産生する細胞を破壊することを目的とする毒素とを組合せることによって得ることができる。同様に、シアノビリンのウイルスターゲティング機能と、種々の免疫グロブリンサブクラスの多結合価とエフェクター機能を組合せる治療剤を得ることができる。実施例6は、シアノビリンのウイルスターゲティング特性、特にgp120ターゲティング特性を更に説明する。
【0030】
同様の原理が、sCD4のHIV gp120−ターゲティング特性を開発する広範な開発的治療努力の基礎に存在する。例えば、sCD4がシュードモナス(Pseudomonas)の外毒素成分(Chaudhary ら, in The Human Retrovirus, Gallo ら編, Academic Press : San Diego, 1991, pp. 379-387; 及び、 Chaudhary ら, Nature335,369-372, 1988)、又は、ジフテリア毒素成分(Aullo ら, EMBO J. 11, 575-583,1992)、又は、リシンA鎖成分(Till ら, Science 242,1166-1167,1988)と結合しているsCD4−毒素コンジュゲートが製造された。同様に、機能を有するsCD4活性のインビボクリアランスの速度を減少させる試みにおいて、胎盤移行を高める試みにおいて、抗体依存性細胞媒介細胞毒性による食作用飲み込み及び殺害などの、病原体除去の免疫学的機構の標的化補強を生じさせる試みにおいて、HIV感染細胞及びウイルスを殺害及び/又は除去する試みにおいて、sCD4−免疫グロブリンコンジュゲートが製造された(Capon ら, Nature 337,525-531,1989; Traunecker ら, Nature 339,68-70, 1989; 及び、 Langner ら, 1993, 上記)。このようなsCD4−免疫グロブリンコンジュゲート(「イムノアドヘシン」と言われることもある)は、実際、インビボの薬物動力学的性質と分布性、並びにインビトロの抗HIV効果で利点を示したが、臨床結果は失望させるものであった(Schooley ら, 1990, 上記 : Husson ら, 1992, 上記, 及び、 Langner ら, 1993, 上記)。これは、驚くべきではない。実験室株とは反対に、HIVの臨床分離株は、sCD4による結合と中和に非常に耐性であるからである(Orloff ら, 1995,上記, 及び、 Moore ら, 1992, 上記)。それ故、一般的に、ウイルス、例えば、霊長類レトロウイルス、そして、特に、臨床及び実験室株への機能を有するシアノビリンの非常に幅広いなターゲティング特性(Boyd ら, 1995, 上記 : 及び、 Gustafson ら, 1995, 上記)は、毒素、免疫グロブリン及び他の選択されたエフェクター蛋白質と組合せることに特に利点がありうる。
【0031】
ウイルス標的化コンジュゲートは、遺伝子工学技術によって(例えば、Chaudhary ら, 1988,上記参照)、又はターゲティング成分のエフェクター成分との化学結合によって、製造できる。所定のシアノビリンコンジュゲート又は融合蛋白質を構築するために使用される最も容易又は適切な技術は、シアノビリンとの結合のために選択される特定のエフェクター分子の特徴の考慮を基に選択されよう。例えば、選択された非蛋白質性エフェクター分子に関し、遺伝子工学技術よりも化学結合は、所望のシアノビリンコンジュゲートを作製するのに唯一の容易な選択肢でありうる。
【0032】
従って、本発明はまた、シアノビリン融合蛋白質をコードする核酸分子を提供する。特に、本発明は、配列番号3を含む核酸分子及びその実質的に相同な配列を提供する。また、シアノビリン融合蛋白質をコードする核酸配列を含むベクター、及び、上記のように、蛋白質合成生物中でシアノビリン融合蛋白質をコードするベクターの発現によって、シアノビリン融合蛋白質を得る方法を提供する。従って、シアノビリン融合蛋白質も提供される。
【0033】
上記の観点で、本発明は更に、エフェクター蛋白質をコードする第2の核酸に結合した、上記核酸の1つなどのシアノビリンコーディング配列を含む単離精製された核酸分子、即ち、配列番号2のアミノ酸配列をコードする核酸分子、配列番号4のアミノ酸配列をコードする核酸分子、配列番号1の配列を含む核酸分子、又は、配列番号3の配列を含む核酸分子を提供する。第1の核酸は、好ましくは、機能を有するシアノビリンをコードする配列番号2のアミノ酸配列の少なくとも9個の連続アミノ酸をコードする核酸配列を含み、第2の核酸は好ましくは、上記のように、毒素又は免疫学的試薬などのエフェクター蛋白質をコードする。
【0034】
従って、本発明はまた更に、配列番号1の配列を含む核酸分子、配列番号3の配列を含む核酸分子、配列番号2のアミノ酸配列をコードする核酸分子、又は配列番号4のアミノ酸配列をコードする核酸分子(それらのどれも、エフェクター蛋白質をコードする第2の核酸と結合している)によってコードされる単離精製された融合蛋白質を提供する。好ましくは、上記核酸分子は、上記のように、毒素又は免疫学的試薬などのエフェクター分子と結合した、望ましくは、抗ウイルス活性を有する、配列番号2のアミノ酸配列の少なくとも9個の連続アミノ酸をコードする。好ましくは、エフェクター分子は、ウイルス、より好ましくは、HIV又はインフルエンザ、最適にはHIVの糖蛋白質gp120を標的とする。配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸がアミノ酸30−32を含むならば、望ましくは、アミノ酸30−32は、グリコシル化抵抗性にされ、まだ抗ウイルス活性を維持する。好ましくは、配列番号2のアミノ酸30−32は、アミノ酸30の欠失又は置換によってグリコシル化抵抗性にされている。好ましくは、アミノ酸30は、アラニン、グルタミン及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。場合によって、アミノ酸51は、欠失又は置換(例えば、グリシンによる置換)されうる。
【0035】
結合は、上記のように、DNAレベルで、又は化学結合によって生じさせることができる。例えば、本発明のシアノビリン−エフェクター蛋白質コンジュゲートは、(a)所望のエフェクター蛋白質又はペプチドを選択すること;(b)エフェクター蛋白質又はペプチド(例えば、毒素又は免疫学的試薬)のための第2のDNAコーディング配列と結合した、機能を有するシアノビリンをコードする上記核酸配列の1つを含む第1のDNAコーディング配列を含む混成DNAコーディング配列を合成すること;(c)適当な蛋白質合成生物中で混成DNAコーディング配列を発現させること;及び、(d)所望の融合蛋白質又はペプチドを実質的に純粋形態にまで精製すること;によって得ることができる。あるいは、本発明のシアノビリン−エフェクター分子コンジュゲートは、(a)所望のエフェクター分子及びシアノビリンもしくはシアノビリン融合蛋白質を選択すること;(b)シアノビリンもしくはシアノビリン融合蛋白質を、エフェクター分子に化学結合させること;及び、(c)所望のシアノビリン−エフェクター分子コンジュゲートを実質的に純粋形態にまで精製すること;によって得ることができる。
【0036】
抗シアノビリン抗体、あるいは、毒素、免疫学的試薬又は他の機能性試薬などの、同一又は異なりうる、少なくとも1つのエフェクター成分と結合した機能を有するシアノビリン(例えば、配列番号2などの配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドであって、少なくとも9個の連続アミノ酸は、ウイルス、特に、インフルエンザウイルスもしくはHIVなどの感染性ウイルスと結合し、その場合に、シアノビリンはgp120と結合する、抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチド)を含むコンジュゲートは、シアノビリンの独特のウイルスターゲティング、例えば、gp120−ターゲティング特性を開発するために、より一層特異的に設計できる。
【0037】
本発明のコンジュゲートでエフェクター成分として使用できる他の機能性試薬としては、ポリエチレングリコール、デキストラン、アルブミンなどが挙げられ、その意図されたエフェクター機能は、以下の1つ以上を含みうる:コンジュゲートの安定性を改良すること;コンジュゲートの半減期を増大させること;蛋白質分解に対するコンジュゲートの抵抗性を増大させること;コンジュゲートの免疫原性を減少させること;固体支持マトリックス上へ機能を有するシアノビリンを結合させる、又は固定化する手段を提供すること(例えば、Harris, in Poly ethylene Glycol) Chemistry : Biotechnical and Biomedical Applications, Harris編, Plenum Press: New York (1992), pp. 1-14参照)。コンジュゲートは更に、2つ以上のエフェクター分子(各々は、場合によって、異なるエフェクター機能を有しうる。例えば、毒素分子(もしくは免疫学的試薬)及びポリエチレングリコール(もしくはデキストランもしくはアルブミン)など)と結合した、機能を有するシアノビリンを含みうる。本例での、固体支持マトリックス上へ結合した、又は固定化された、機能を有するシアノビリンなどの、機能を有する蛋白質及びペプチドの多様な適用及び使用は、Holmbergら(In Pol (Ethylene Glycol) Chemistry : Biotechnical and Biomedical Applications. Harris編, Plenum Press : New York, 1992, pp. 303-324)による総説中で、ポリ(エチレングリコール)結合蛋白質又はペプチドについてより具体的に例示される。固体支持マトリックスの好適例としては、磁気ビーズ、フロースルーマトリックス、及び、コンドーム、ペッサリー、子宮頚部キャップ、膣リング、もしくはスポンジなどの避妊具を含むマトリックスが挙げられる。
【0038】
実施例6は、シアノビリンの新規なgp120指向効果を示す。更なる洞察が、Esserら(J. Virol., 73,4360-4371,1999)によって報告されている。彼らは、シアノビリンが宿主細胞への無傷HIV−1ビリオンのgp120媒介結合と融合をブロックすることを更に確認した一連の研究を記載した。彼らはまた、シアノビリンがネコ免疫不全ウイルス(FIV)を含む他のウイルスのエンベロープ糖蛋白質媒介感染性を阻害するという更なる確認を、提供した。
【0039】
種々の標的細胞における多様なCD4−指向性免疫不全ウイルス株に対するシアノビリンの抗ウイルス活性の範囲(Boyd ら, 1995, 上記)は驚くべきものである;HIV−1、HIV−2、SIVの全ての試験株は、シアノビリンに同様に感受性であった;臨床分離株と実験室株は、基本的に同じ感受性を示した。慢性感染と未感染のCEM−SS細胞のシアノビリンとの共培養は、ウイルス複製を阻害しなかったが、細胞−細胞融合とウイルス伝達の濃度依存性阻害を引き起こした;HeLa-CD4-LTR-β-ガラクトシダーゼ細胞を用いる結合及び融合阻害アッセイからの同様の結果は、ウイルス−細胞及び/又は細胞−細胞結合のシアノビリン阻害と一致した。
【0040】
本発明のシアノビリン及びそのコンジュゲートの抗ウイルス活性、例えば、抗HIV活性は、一連の相互に関係づけられたインビトロ抗ウイルスアッセイで更に示すことができる(Gulakowski ら, J. Virol. Methods 33,87-100,1991)。それは、ヒトでの抗ウイルス活性を正確に予測する。これらのアッセイでは、ヒト標的細胞でHIVの複製及び/又はHIVの細胞変性効果を防止する化合物の能力を測定する。これらの測定は、インビボでのHIV誘導性疾患の病因と直接的に連関する。実施例5と13に記載し、図8、9、10で示した、シアノビリン又はコンジュゲートの抗ウイルス活性の分析の結果は、ヒトでインビボでこれらの産物の抗ウイルス活性を正確に予測すると考えられ、従って、本発明の有用性を確立する。更に、本発明はまた、シアノビリンとコンジュゲートのex vivoの使用方法を提供するので(例えば、実施例5と13及び図6と7に記載の結果参照)、シアノビリンとそのコンジュゲートの有用性はより一層確かである。
【0041】
本発明のシアノビリンとそのコンジュゲートは、ウイルス、詳細にはレトロウイルス、より詳細には、免疫不全ウイルス、例えば、ヒト免疫不全ウイルス、即ちHIV−1又はHIV−2を阻害することを示すことができる。本発明のシアノビリンとコンジュゲートは、他のレトロウイルス並びに他のウイルスを阻害するのに使用できる(例えば、Principles of Virology : Molecular Biology, Pathogenesis, and Control, Flint ら編, ASM Press: Washington, D. C., 2000, 特に19章参照)。本発明に基づき治療できるウイルスの例として、C型とD型レトロウイルス、HTLV-1, HTLV-2, HIV, FIV, FLV, SIV, MLV, BLV, BIV,ウマ感染性ウイルス、貧血性ウイルス、ラウス肉腫ウイルス(RSV)などのトリ肉腫ウイルス、肝炎A型ウイルス、B型ウイルス、非A型ウイルス、非B型ウイルス、アルボウイルス、水痘ウイルス、ヒトヘルペスウイルス(例えば、HHV−6)、麻疹ウイルス、おたふくかぜウイルス及び風疹ウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。シアノビリンとそのコンジュゲートは、本明細書記載の方法に従ってインフルエンザウイルス感染を予防的及び治療的に阻害するのに使用できる(例えば、Fields Virology, third edition, Fields ら編, Lippincott-Raven Publishers: Philadelphia, PA, 1996, 特に45章参照)。
【0042】
従って、本発明は、宿主のウイルス感染、特にインフルエンザウイルス感染を予防的又は治療的に阻害する方法を提供する。本方法は、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む、抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質コンジュゲート又は抗ウイルスペプチドコンジュゲートの有効量を、宿主に投与することを含み、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は、非グリコシル化であり、抗ウイルス活性を有し、それによってウイルス感染は阻害される。抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドは、Nostoc ellipsosporumから得られるシアノビリン、又は上記の方法に従って組換え的に産生されるシアノビリン由来でありうる。非グリコシル化抗ウイルス蛋白質と抗ウイルスペプチドは原核細胞/生物で製造できる。このような非グリコシル化抗ウイルス蛋白質と抗ウイルスペプチドにおけるアミノ酸51は、欠失又は置換(例えば、グリシンによる置換)されうる。非グリコシル化抗ウイルス蛋白質と抗ウイルスペプチドはまた、グリコシル化部位を含まない、配列番号2のシアノビリンなどのシアノビリンの一部を発現させることによって、又は、本明細書で記載し、例示したように、グリコシル化抵抗性にされたグリコシル化部位を含む配列番号2のシアノビリンなどのシアノビリンの全部又は一部を発現させることによって、真核細胞/生物で製造できる。配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸がアミノ酸30−32を含むならば、望ましくは、アミノ酸30は欠失又は置換されている。アミノ酸30が置換されているならば、好ましくは、アミノ酸30は、アラニン、グルタミン及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸で置換され、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸がアミノ酸51を更に含むならば、場合によって、アミノ酸51は欠失又は置換(例えば、グリシンによる置換)される。ウイルス感染がインフルエンザウイルス感染であるとき、好ましくは、抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質コンジュゲート又は抗ウイルスペプチドコンジュゲートは、宿主に局所的に、好ましくは宿主の呼吸器系に、好ましくはエアロゾルもしくは微粒子粉末として投与される。
【0043】
シアノビリンとそのコンジュゲートは集合的に、蛋白質とペプチドを含み、それ自体、アミド結合の加水分解(例えば、ペプチダーゼによって触媒される)及び必須のジスルフィド結合の開裂又は不活化もしくは非所望のジスルフィド結合の形成に特に感受性である(Carone ら, J. Lab. Clin. Med. 100,114,1982)。必要ならば、シアノビリン又はコンジュゲートの安定性を増大させるために、分子構造を変化させる種々の方法がある(Wunsch, Biopolymers 22,493-505,1983; 及び、 Samanen, in Polymeric Materials in Medication, Gebelein ら編, Plenum Press: New York, 1985, pp. 227-242)。それは、ウイルス、例えば、HIVに対する治療的又は予防的適用のために、シアノビリン又はそのコンジュゲートを含む医薬組成物の製造と使用に必須でありうる。シアノビリン又はそのコンジュゲートの有用な化学修飾の可能な選択肢として以下のもの(Samanen,J.M.,1985,上記から改変)が挙げられるが、それらに限定されない:(a)オレフィン置換、(b)カルボニル置換、(c)D−アミノ酸置換、(d)N−メチル置換、(e)C−メチル置換、(f)C−C’−メチレン挿入、(g)デヒドロアミノ酸挿入、(h)レトロ−インベルソ(retro-inverso)修飾、(i)N末端とC末端の環化、(j)チオメチレン修飾。シアノビリンとそのコンジュゲートはまた、炭水化物とポリオキシエチレン誘導体の共有結合によって修飾されることができる。それは、安定性と蛋白質分解に対する抵抗性を高めることが期待される(Abuchowski ら, in Enzymes as Drugs, Holcenberg ら編, John Wiley: New York, 1981, pp. 367-378)
【0044】
シアノビリンとそのコンジュゲートなどの蛋白質薬剤とペプチド薬剤のための、送達戦略システムと組成物の設計のための、そして、投与経路のための他の重要な一般的考慮(Eppstein, CRC Crit. Rev. Therapeutic Drug Carrier Systems5,99-139,1988; Siddiqui ら, CRC Crit. Rev. Therapeutic Drug Carrier Systems3,195-208,1987) ; Banga ら, Int. J. Pharmaceutics 48,15-50, 1988 ; Sanders, Eur. J. Drug Metab. Pharmacokinetics 15,95-102,1990 ; 及び、 Verhoef, Eur. J. Drug Metab. Pharmacokinetics 15,83-93,1990)もまた適用される。所定のシアノビリン又はそのコンジュゲートのための適切な送達システムは、その特定の性質、特定の臨床適用、及び薬剤作用部位に依存しよう。如何なる蛋白質又はペプチド薬剤に関してのように、シアノビリン又はそのコンジュゲートの経口送達は、主に、胃腸管での不安定性、それからの無傷の、生物活性の薬剤の吸収の乏しさおよび生体利用性の乏しさのために、特別の問題が生じる可能性がある。従って、特に、経口送達の場合(しかし、また、送達の他の経路でも可能性がある)、所定のシアノビリン又はそのコンジュゲートと組合せて、吸収促進剤を使用することが必要であろう。種々の吸収促進剤が研究され、及び/又は経口送達及び他の経路による送達のために蛋白質薬剤とペプチド薬剤と組合せて適用された(Verhoef, 1990, 上記 ; van Hoogdalem, Pharmac. Ther. 44,407-443,1989; Davis, J. Pharm. Pharmacol. 44 (Suppl. 1), 186-190,1992)。非常に普通には、典型的促進剤は、(a)EDTAなどのキレーター、サリチラート、及びコラーゲンのN−アシル誘導体、(b)ラウリルサルフェートやポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテルなどの界面活性剤、(c)グリコレートやタウロコレートなどの胆汁酸塩、及びタウロジヒドロフシデートなどの誘導体、(d)オレイン酸やカプリン酸などの脂肪酸、及び、アシルカルニチン、モノグリセリド、ジグリセリドなどのそれらの誘導体、(e)不飽和環状尿素などの非界面活性剤、(f)サポニン、(g)シクロデキストリン、及び(h)リン脂質、の一般的カテゴリーに入る。
【0045】
シアノビリンとそのコンジュゲートなどの蛋白質薬剤とペプチド薬剤の経口送達を高める他のアプローチとして、胃腸酵素に対する安定性を高めるための、及び/又は、親油性を増大させるための上記化学修飾が挙げられる。あるいは、又は、更に、蛋白質又はペプチド薬剤は、プロテアーゼ及び/又は蛋白質とペプチドの酵素的分解の他の可能性ある源を直接的に阻害する他の薬剤や物質と組合せて投与できる。シアノビリン又はコンジュゲートなどの蛋白質又はペプチド薬剤の胃腸吸収を防止又は遅延させる更に別のアプローチは、腸管で蛋白質分解酵素との接触から蛋白質又はペプチドを防御するように、そして、吸収に好ましい部位に到達したときだけ無傷の蛋白質又はペプチドを放出するように、設計される送達システムに蛋白質又はペプチド薬剤を組み込むことである。この戦略のより特別の例は、易損性薬剤を分解から防御するためと、活性薬剤の放出の延長を生じさせるための両方のために、生分解性マイクロカプセル又はマイクロスフェアを使用することである(Deasy, in Microencapsulation and Related Processes, Swarbrick編, Marcell Dekker, Inc.: New York, 1984, pp. 1-60, 88-89,208-211)。マイクロカプセルはまた、注入後、シアノビリン又はそのコンジュゲートなどの蛋白質薬剤とペプチド薬剤の送達の延長を生じさせる有用な方法を提供できる(Maulding, J. Controlled Release 6, 167-176,1987)。
【0046】
蛋白質又はペプチド薬剤の経口送達の成功の上記の複雑さの可能性を考えれば、シアノビリン又はそのコンジュゲートなどの蛋白質又はペプチド薬剤の送達の多数の他の経路の可能性があることは幸いなことである。これらの経路として、静脈内、動脈内、クモ膜下、槽内、頬、直腸、鼻、肺、経皮、膣、眼などが挙げられる(Eppstein, 1988, 上記 ; Siddiqui ら, 1987, 上記 : Banga ら, 1988, 上記 ; Sanders, 1990, 上記 ; Verhoef, 1990, 上記, Barry, in Delivery Systems for Peptide Drugs, Davis ら編, Plenum Press: New York, 1986, pp. 265-275; 及び、 Patton ら, Adv. Drug Delivery Rev. 8,179-196,1992)。投与又は適用のこれらの経路のいずれもに関しても、又は、実際、投与又は適用の他の任意の経路に関しても、シアノビリン又はそのコンジュゲートなどの蛋白質又はペプチド薬剤は、免疫原性反応を開始させうる。このような状況で、免疫原性基を遮蔽するために、分子を修飾することは必要かもしれない。製剤化及び/又は投与の方法の慎重な選択によって、非所望の免疫応答に対し防御することはまた、可能でありうる。例えば、部位特異的送達、並びに、ポリエチレングリコール、デキストラン、アルブミンなどのいわゆる寛容原の使用又は結合によって免疫系から認識部位を遮蔽することが使用されうる(Abuchowski ら, 1981, 上記 ; Abuchowski ら, J. Biol. Chem. 252, 3578-3581, 1977; Lisi ら, J. Appl. Biochem. 4,19-33,1982; 及び、 Wileman ら, J. Pharm. Pharmacol. 38,264-271,1986)。このような修飾はまた、インビボとex vivoの両方で、安定性と半減期に関する有利な効果を有しうる。
【0047】
シアノビリン又はそのコンジュゲートなどの蛋白質への、ポリエチレングリコール、デキストラン、アルブミンなどの分子の共有結合の方法は、当業者周知であり、文献に広範に記載されている(例えば、Davis ら, In Peptide and Protein Drug Delivery. Lee編, Marcel Dekker: New York, 1991, pp. 831-864参照)。
【0048】
不利な免疫反応を避ける他の戦略としてまた、最初にほんの低投与量の投与による寛容の誘導が挙げられる。とにかく、シアノビリン又はそのコンジュゲートの任意の特定の所望の医学適用又は使用に関して、当業者が、種々の可能な組成物、投与経路、又は適用部位から、利点のあるものを選択できることは、本開示から当業者に明らかであろう。
【0049】
従って、本発明の抗ウイルスシアノビリンとそのコンジュゲートは、例えば、感染した個体の治療方法においても、未感染の個体のウイルス感染、例えば、HIVウイルス感染とインフルエンザウイルス感染に対する予防方法においても、使用のために種々の組成物に製剤化できる。
【0050】
本発明はまた、抗ウイルス有効量などの、単離精製されたシアノビリン、シアノビリンコンジュゲート、マトリックス固定シアノビリン又はマトリックス固定シアノビリンコンジュゲートを含む医薬組成物などの組成物を提供する。組成物は更に、医薬として許容できる担体などの担体を含みうる。組成物は更に、抗ウイルス有効量などの、シアノビリン又はそのコンジュゲート以外の少なくとも1つの更なる抗ウイルス化合物を含みうる。適切な抗ウイルス化合物として、AZT、ddI、ddC、ガンシクロビル、フッ素化ジデオキシヌクレオシド、ネビラピン、R82913、Ro31−8959、BI−RJ−70、アシクロビル、α−インターフェロン、組換えsCD4、ミシェルアミン、カラノリド、ノノキシノール−9、ゴシポールとその誘導体、及びグラミシジンが挙げられる。組成物が、免疫応答を誘導するために使用されるならば、組成物は、免疫応答誘導量のシアノビリン又はそのコンジュゲートを含み、そして、更に、ポリホスファゼン 高分子電解質などの免疫アジュバントを含みうる。組成物、例えば、医薬組成物で使用されるシアノビリンは、天然から単離精製されうるか、遺伝子工学で作製されうる。同様に、シアノビリンコンジュゲートは、遺伝子工学作製又は化学結合されうる。
【0051】
本発明の組成物は、ヒトなどの宿主に投与して、予防方法又は治療方法においてウイルス感染を阻害できる。本発明の組成物は、インフルエンザウイルス又はレトロウイルス(特に、HIV、特に、HIV−1とHIV−2などの免疫不全ウイルス)などのウイルスの増殖又は複製を阻害するのに特に有用である。本組成物は、ウイルスに感染している、又はウイルス感染の危険性のある、ヒトなどの動物の、それぞれ、治療的又は予防的処置に、有用である。本組成物はまた、ヒトなどの動物のウイルス感染を予防又は治療する努力において医学装置、備品、又は、血液などの生物流体を含む流体、血液産物とワクチン製剤、細胞、組織及び器官などの物体又は材料を処理してウイルスを除去又は不活化するために使用できる。このような組成物はまた、ウイルス感染(例えば、HIV感染)の性的伝達を防止するのに有用である。性的伝達は、世界のAIDS症例が罹る主要方法である(Merson, 1993, 上記)。
【0052】
HIVの性的伝達に対し使用される、又は使用することが考えられている可能性ある抗ウイルス剤は、非常に限定されている;このカテゴリーの現在の薬剤として、例えば、ノノキシノール−9(Bird, AIDS 5,791-796,1991)、ゴシポールと誘導体(Polsky ら, Contraception39,579-587,1989 ; Lin, Antimicrob. Agents Chemother. 33, 2149-2151,1989 ; 及び、 Royer, Pharmacol. Res. 24,407-412, I991)、及びグラミシジン(Bourinbair, Life Sci./Pharmacol. Lett. 54, PL5-9, 1994; 及び、 Bourinbair ら, Contraception49,131-137,1994)が挙げられる。本発明に従って、ウイルス感染(例えば、HIV感染)の性的伝達の予防方法としては、単独で、又は、上記の別の抗ウイルス化合物と組合せて、抗ウイルス有効量のシアノビリン及び/又はシアノビリンコンジュゲートによる、膣、直腸、経口、ペニス、又は他の局所処置が挙げられる。。
【0053】
米国国立アレルギー感染症研究所(NIAID)主催の下に研究された抗HIV予防への新規アプローチ(例えば、Painter, USA Today, February 13,1996によって報告されたような)において、乳酸桿菌の生きている培養物の膣座薬注入が900人女性研究で評価されていた。この研究は、インビトロで、特定のH産生乳酸桿菌の抗HIV効果の観察に特に基いたものであった(例えば、1996年2月 11-15日の「AIDSワクチン開発における進歩」ベセスダ、MDにおけるNIAIDがスポンサーのコンフェランスから、Hilierによる刊行アブストラクトを参照)。乳酸桿菌は容易に膣に住み、実際に、大部分の健康女性において主要な細菌集団である(Redondo-Lopez ら, Rev. Infect. Dis. 12,856-872,1990; Reid ら, Clin. Microbiol. Rev.3,335-344,1990; Bruce and Reid, Can. J. Microbiol. 34,339-343,1988 ; reu ら, J. Infect. Dis. 171, 1237-1243, 1995; Hilier ら, Clin. Infect. Dis.16 (Suppl 4), S273-S281 ; Agnew ら, Sex. Transm. Dis. 22,269-273,1995)。乳酸桿菌はまた、口、鼻咽頭、上部と下部の胃腸管、及び直腸などの他の身体空洞の顕著で、非病原性の定住菌である。
【0054】
乳酸桿菌は、所望の外来DNAコーディング配列を組み込むために、利用できる遺伝子工学技術を用いて容易に形質転換されえ、このような乳酸桿菌は、対応する所望の外来蛋白質を発現するように創られうることは、十分に確立している(例えば、Hols ら, Appl.and Environ. Microbiol. 60,1401-1413, 1994参照)。従って、開示の内容において、本発明のDNA配列又はベクターを含み、本発明の蛋白質を発現する生存できる宿主細胞を、インビボで所望の部位への、シアノビリン又はそのコンジュゲートの送達ビヒクルとして直接的に使用できることが当業者に理解されよう。例えば、選択された身体空洞などの所望の部位への、シアノビリン又はそのコンジュゲートのこのような直接的な送達のための好適宿主細胞は、細菌を含みうる。より詳細には、このような宿主細胞は、乳酸桿菌、腸球菌、又はE.coliなどの他の通常の細菌(それらの通常株は、通常、身体空洞に住むことが知られている)の適切に操作された株を含みうる。しかし、より詳細には、このような宿主細胞は、Andreuら(1995,上記)によって記載されたものなどの、乳酸桿菌の1つ以上の選択された非病原性株、特に、上皮細胞への高度な付着(例えば、膣上皮細胞への付着など)を有し、本発明のDNA配列を用いて適切に形質転換されたもの、を含みうる。
【0055】
McGroarty (FEMS Immunol. Med. Microbiol. 6,251-264, 1993)によってレビユーされたように、尿生殖管(特に女性の尿生殖管)の病原性細菌又は酵母感染に対する治療又は予防のために、生きた細菌(特に、通常、天然で存在する細菌、より特定すれば、乳酸桿菌)の「プロバイオティック」、即ち、直接的治療適用は、十分に確立された概念である。最近、HIVの性的伝達を阻害するための、通常のプロバイオティック戦略の使用、特に、生きた乳酸桿菌の使用が、乳酸桿菌のある通常の株による抗ウイルスレベルのH及び/又は乳酸及び/又は他の可能性のある抗ウイルス物質の通常の内因性産生に特に基いて示唆された(例えば、Hilier,1996,上記)。しかし、抗ウイルス物質(より特定すれば、蛋白質、さらに特定すれば、シアノビリン)を発現するために、非哺乳動物細胞(特に、細菌、より特定すれば、乳酸桿菌、さらに特定すれば外来遺伝子(より特定すればシアノビリン遺伝子)で操作された乳酸桿菌)の本発明の使用は、ウイルス(特定すればレトロウイルス、さらに特定すればHIV−1又はHIV−2)による感染を予防するための、動物(特に、ヒト)の処置方法として、今まで、先例はない。
【0056】
「遺伝子工学は、結腸又は他の粘膜表面に、特定の作用又は産物を送達するのに、微生物の使用の可能性を提供する。・・・将来の研究のための他の豊穣な領域としては、種々のバイオ治療剤の作用機構を、活性を高めるために遺伝子工学の適用の可能性によって規定することが挙げられる」とElmerら(JAMA 275,870-876,1996)は最近推察した。Elmerら(1996,上記)は更に用語「プロバイオティック」と「バイオ治療剤」は、インビボで病原体に対し拮抗活性を有する微生物を記載するのに、文献で用いられてきたことを指摘する;それらの筆者らは、「特異的治療特性を有する微生物」を記載するのに、「バイオ治療剤」という用語を、より特別に好む。
【0057】
本開示の観点で、天然には無い、本明細書で提供される微生物の特異的操作株を用いる完全に新規タイプの「プロバイオティック」又は「バイオ治療剤」治療を本発明は教示することを当業者は理解しよう。それにもかかわらず、通常のプロバイオティック又はバイオ治療適用のための、最適の微生物株(特に、細菌株)の選択に関する利用できる教示が、本発明の内容で使用できる。例えば、HIV感染を治療又は予防するための、遺伝子工学、形質転換、シアノビリンもしくはそのコンジュゲートの直接的発現、及び直接的プロバイオティックもしくはバイオ治療適用のための最適乳酸桿菌株の選択は、Elmerら(1996,上記)によって記載されたものなど(典型的には、通常のプロバイオティック又はバイオ治療療法のための、通常の、内因性もしくは「非操作の」細菌株を選択するのに使用されるもの)の、同一又は同様の基準に基くことができる。更に、特に、女性の尿生殖器感染に対する通常のプロバイオティック使用のための最適な乳酸桿菌の選択のための、McGroartyによって教示された推奨と特徴は、本発明に関係する:「・・・プロバイティック製剤への組み込みのために選択される乳酸桿菌は、容易であるべきであり、可能ならば、培養するのに安価で、・・・株は、安定で、凍結乾燥後で生存を維持し、勿論、宿主に非病原性であるべきである。・・・プロバイティック製剤での使用のために選択される乳酸桿菌は、膣上皮に良く付着すべきことが必須である。・・・理想的には、人工的に接種された乳酸桿菌は、膣上皮に付着し、固有の存在微生物と統合され、増殖すべきである。」(McGroarty,1993,上記)。McGroartyの教示は、女性の尿生殖管の病原性細菌又は酵母感染に対するプロバイオティック使用のための「通常の」乳酸桿菌株の選択に特に関するが、特に本発明に包含されるウイルス感染に対する遺伝子工学、並びに「プロバイオティック」もしくは「バイオ治療」適用のための最適な細菌株の選択に、同様の考慮が適用されよう。
【0058】
従って、ウイルス感染(例えば、HIV感染)の性的伝達の予防のための本発明の方法は、抗ウイルス有効量のシアノビリン、シアノビリンコンジュゲート、マトリックス固定シアノビリンもしくはそのコンジュゲート、及び/又はシアノビリンもしくはそのコンジュゲートを発現するように形質転換された生存可能宿主細胞による(単独で、又は1つ以上の他の抗ウイルス化合物(例えば、上記のような)と組合せて)、膣、直腸、経口、ペニス、又は、他の局所の、挿入又は適注治療を含む。
【0059】
本発明の予防的又は治療的処置方法における使用のための組成物は、1種以上のシアノビリン又はそのコンジュゲート(そのどれも、マトリックス固定でありうる)及び、望ましくは、そのための担体(医薬として許容できる担体など)を含む。医薬として許容できる担体は、投与の適切な方法がそうであるように、当業者に周知である。担体の選択は、部分的には、特定のシアノビリンもしくはそのコンジュゲート、並びに、組成物を投与するのに使用される特定の方法によって決定されよう。
【0060】
薬剤の投与の種々の経路が利用でき、2つ以上の経路が特定の薬剤を投与するのに使用できるが、特定の経路は、別の経路よりもより迅速な、より有効な反応を提供しうることを当業者は理解しよう。更に、使用される特定の医薬担体は、部分的には、使用されるシアノビリンもしくはそのコンジュゲート、並びに、選択される投与経路に依存しようことを当業者は理解しよう。従って、本発明の組成物の種々の適切な製剤がある。
【0061】
経口投与に適した製剤は、液体溶液(例えば、希釈剤(例えば、水、生理食塩水、又はフルーツジュース)に溶解した有効量の化合物);カプセル、サッチェ又は錠剤(各々は、固体、顆粒、又は凍結乾燥細胞として、所定量の活性成分を含む);水性液体中の溶液又は懸濁液;及び、水中油型エマルション又は油中水型エマルション;からなりうる。錠剤形態は、1種以上のラクトース、マンニトール、コーンスターチ、ポテトスターチ、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド性二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、並びに、他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、フレーバー剤、及び、医薬として適合性のある担体を含有しうる。経口送達のための適切な製剤はまた、合成及び天然ポリマー性マイクロスフェア、又は、胃腸管内での分解から本発明の薬剤を防御する他の手段中に組み込まれうる(例えば、Wallace ら, Science 260, 912-915, 1993参照)。
【0062】
シアノビリン又はそのコンジュゲートは、単独で、又は他の抗ウイルス化合物と組合せて、吸入により投与するために、エアロゾル製剤又は微粒子粉末製剤に製造できる。これらのエアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧許容噴射剤中に入れることができる。
【0063】
シアノビリン又はそのコンジュゲートは、単独で、又は他の抗ウイルス化合物又は吸収調節剤と組合せて、経皮適用及び吸収のための適切な製剤に製造することができる(Wallaceら,1993,上記)。皮膚を通して本発明の化合物及び/又は組成物の全身的送達を促進及び/又は制御するために、経皮エレクトロポレーション又はイオン導入法も使用できる(例えば、Theiss ら, Meth. Find. Exp. Clin. Pharmacol. 13,353-359,1991参照)。
【0064】
局所投与に適した製剤として、フレーバー(通常、シュークロース及びアカシアもしくはトラガカント)中に活性成分を含むロゼンジ;不活性基剤(例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はシュークロース及びアカシア)中に活性成分を含む香錠;適切な液体担体中に活性成分を含む洗口液;並びに、例えば、本発明のシアノビリンもしくはそのコンジュゲートを直接的に産生するように遺伝子操作された凍結乾燥乳酸桿菌もしくは生きた乳酸桿菌培養物などの活性成分の他に、当業界公知のような担体を含む、クリーム、エマルション、ゲルなど;を挙げることができる。例えば、吸入器の使用などにより、インフルエンザウイルス感染の予防的及び治療的処置のための局所投与が好ましい。
【0065】
直腸投与の製剤は、例えば、ココアバターもしくはサリチラートを含む適切な基剤を含む座薬として提供できる。膣投与に適した製剤は、例えば、本発明のシアノビリンもしくはそのコンジュゲートを直接的に産生するように遺伝子操作された凍結乾燥乳酸桿菌もしくは生きた乳酸桿菌培養物などの活性成分の他に、適切であることが当業界公知であるような担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡状物、又はスプレー製剤として提供できる。同様に、活性成分を、コンドームの被覆として潤滑剤と組合せることができる。実際、好ましくは、活性成分は、コンドーム、ペッサリー、子宮頚部キャップ、膣リング、及びスポンジを含むが、それらに限定されない任意の避妊具に適用される。
【0066】
非経口投与に適した製剤として、水性及び非水性の等張性滅菌注射溶液(それは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び製剤を意図された受容者の血液と等張にする溶質を含みうる)、並びに、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤及び保存剤を含みうる水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、アンプルやバイアルなどの、単位投与量又は多重投与量の密封容器中で提供でき、使用直前に、注射のための滅菌液体担体(例えば、水)の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存できる。即時調製注射溶液と懸濁液は、上記種類の、滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製できる。
【0067】
医療備品もしくは装置、実験室装置及び備品、装置、デバイスなどの無生物物体の殺ウイルス(例えば、HIV)滅菌に適したシアノビリンもしくはシアノビリンコンジュゲートを含む製剤は、上記組成物もしくは製剤の任意のものから、当業者によって適宜、例えば選択又は改変できる。好ましくは、シアノビリンは、組換えDNA技術によって製造される。シアノビリンコンジュゲートは、組換えDNA技術によって、又は、上記のように、エフェクター分子とのシアノビリンの化学結合によって、製造できる。同様に、サンプル(例えば、血液、血液産物、精液、又は他の身体産物(例えば、体液、細胞、組織もしくは器官など)、又は、任意の他の溶液、懸濁液、エマルション、ワクチン製剤(感染性ウイルスの除去におけるものなど)、あるいは、医学的方法で患者に投与できる任意の他の物質など)から、ウイルス(感染性ウイルスなど)のex vivo滅菌もしくは除去に適した製剤は、上記組成物又は製剤の任意のものから、当業者によって適宜、選択又は改変できる。
【0068】
しかし、サンプルから、又は無生物物体上で、ウイルスのex vivo滅菌もしくは除去に適した製剤は、上記組成物又は製剤の任意のものに決して限定されない。例えば、このような製剤もしくは組成物は、サンプルにおける感染性ウイルスとの接触もしくは結合を容易にするために、又は、上記のようなサンプル(例えば、血液、血液成分、又は精液を含む、生物(特に、ヒトなどの哺乳動物)からの体液、細胞、組織又は器官などの身体産物など)から感染性ウイルスの除去を容易にするために、固体支持マトリックスに結合した、機能を有するシアノビリン(配列番号2によってコードされるものなど)、又はその抗ウイルスフラグメント(配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含むフラグメントなど、但し、少なくとも9個の連続アミノ酸は、ウイルスと結合する)、又は、上記のいずれかのコンジュゲートを含みうる。好ましくは、抗ウイルス蛋白質は、配列番号2を含む。また、好ましくは、少なくとも9個の連続アミノ酸は、HIV(特に、感染性HIV)のgp120と結合する。より具体的な例として、このような製剤もしくは組成物は、感染性ウイルスとの接触、結合及び除去を容易にするために、そして、上記のようなサンプル(例えば、体液、細胞、組織又は器官などの身体産物、例えば、血液、血液成分、又は精液)からの磁気補助のウイルス除去を可能とするために、磁気ビーズを含む固体支持マトリックスと結合した(例えば、結合した、又は固定化された)、機能を有するシアノビリン又はそのコンジュゲートを含みうる。あるいは、そして、また好ましくは、固体支持マトリックスは、コンドーム、ペッサリー、子宮頚部キャップ、膣リング又はスポンジなどの避妊具を含む。
【0069】
より一層具体的な例として、このような組成物(例えば、ex vivo用)は、抗シアノビリン抗体又はポリエチレングリコール、アルブミンもしくはデキストランなどの、少なくとも1つのエフェクター成分(同一又は異なりうる)の手段によって、磁気ビーズ又はフロースルーマトリックスなどの固体支持マトリックスに結合した、機能を有する(例えば、gp120−結合、HIV不活化)シアノビリン又はそのコンジュゲートを含みうる。コンジュゲートは更に、免疫学的試薬及び毒素からなる群から選択される少なくとも1つのエフェクター成分(同一又は異なりうる)を含みうる。フロースルーマトリックスは、例えば、アフィニティカラムと同様の形状を有しよう。シアノビリンは、下記の、抗シアノビリン抗体を介し、固体支持マトリックスと共有結合しうる。固体支持マトリックスへの抗体の結合方法は、当業界周知である(例えば、Harlow and Lane. Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory: Cold Spring Harbor, NY, 1988参照)。あるいは、磁気ビーズなどの固体支持マトリックスは、ストレプトアビジンでコートでき、その場合、シアノビリンもしくはそのフラグメント(配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む)又はいずれかのコンジュゲートは、ビオチニル化される。望ましくは、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸は、抗ウイルス活性を有し、好ましくは感染性であるHIVのgp120と結合する。好ましくは、抗ウイルス蛋白質は配列番号2を含む。このような組成物は、例えば、シアノビリン又はそのコンジュゲートをビオチニル化し、次いで、該ビオチニル化蛋白質もしくはペプチドをストレプトアビジンでコートした、磁気ビーズなどの(市販の)固体支持マトリックスと接触させることによって製造できる。磁気ビーズなどのストレプトアビジンでコート された支持マトリックスに、所望の生物活性蛋白質又はペプチドを結合させる手段としてビオチニル化の使用は、当業界周知である。実施例7は具体的に、シアノビリン−Nのビオチニル化とストレプトアビジンでコートされた磁気ビーズへのビオチニル化蛋白質の結合に適用できる方法を記載する。実施例7はまた、本発明にとって非常に重要である別の重要な原則を示す:固体支持マトリックスに結合又は固定化された機能を有するシアノビリン又はそのコンジュゲートを含む任意の所定の製剤又は組成物に関し、製剤又は組成物は、それ自体、機能を有するシアノビリン又はそのコンジュゲートの所望の(即ち、この場合、ウイルス結合(例えば、gp120−結合)及びウイルス不活化(例えば、HIV))特性を保持することが必須である。
【0070】
適切な又は適当な製剤は、手近の特定の適用に基いて、選択、改変又は開発されうることを当業者は理解しよう。
無生物物体もしくは材料、血液もしくは血液産物、又は組織の抗ウイルス処理などのex vivo使用に関し、使用するシアノビリン又はそのコンジュゲートもしくは組成物の量は、存在するウイルス又はウイルス産生細胞が、非感染性にされるか、または破壊されるのに十分であるべきである。例えば、HIVに関し、これは、以下のことを要求しよう:ウイルス及び/又はウイルス産生細胞は、0.1−1000nMの範囲のシアノビリン濃度に曝される。同様の考慮がインビボ適用にも当てはまる。従って、「抗ウイルス有効量」という表現は、所定の適用で抗ウイルス効力に必要な特定のシアノビリン又はそのコンジュゲートもしくは組成物の量を記載するのに、一般的に使用される。
【0071】
上記の観点で、本発明はまた、宿主のウイルス感染を予防的又は治療的に阻害する方法であって、抗ウイルス有効量の上記コンジュゲートを宿主に投与する方法を提供する。抗ウイルス有効量のコンジュゲートの投与で、ウイルス感染は阻害される。
【0072】
本発明は更に、宿主のウイルス感染を予防的又は治療的に阻害する方法であって、抗ウイルス活性を有し、固体支持マトリックスに結合した、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む、単離精製された抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質コンジュゲート又は抗ウイルスペプチドコンジュゲートを含む組成物の抗ウイルス有効量を宿主に投与する方法を提供する。抗ウイルス有効量の組成物の投与で、ウイルス感染は阻害される。好ましくは、固体支持マトリックスは、コンドーム、ペッサリー、子宮頚部キャップ、膣リングもしくはスポンジなどの避妊具である。別の実施態様では、固体支持マトリックスは手術で移植され、後に除去される。
【0073】
インビボ使用に関し、本発明の内容において、動物(特にヒト)に投与されるシアノビリン又はそのコンジュゲートもしくはその組成物の投与量は、合理的時間枠に渡って、個体に予防又は治療応答を生じさせるのに十分であるべきである。インビボで所望の抗ウイルス濃度(例えば、0.1−1000nM)を達成するのに使用される投与量は、使用する特定のシアノビリン又はコンジュゲートの効力、感染個体の疾患状態の程度、並びに、全身投与の場合、感染個体の体重と年齢によって決定されよう。投与量の大きさはまた、使用する特定のシアノビリン又はそのコンジュゲートもしくは組成物が伴いうる有害な副作用の存在によって決定されよう。可能なときはいつでも、有害な副作用を最小に保つことは、常に望ましい。
【0074】
本発明はまた、サンプルから、感染性ウイルスなどのウイルスの除去方法を提供する。本方法は、サンプルを、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む、単離精製された抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質コンジュゲート又は抗ウイルスペプチドコンジュゲートを含む組成物と接触させることを含む。少なくとも9個の連続アミノ酸は、望ましくは、抗ウイルス活性を有し、ウイルスと結合し、そして抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチド(又は、上記のいずれかのコンジュゲート)は、磁気ビーズなどの固体支持マトリックスに結合している。「結合した」は、固体支持マトリックス中に、又はその上への結合(又はカップリング)及び固定化を指すのに本明細書では使用する。結合の任意の手段が使用できるが、好ましくは、結合は共有結合である。本方法は更に、任意の適切な手段によってサンプルと組成物を分離させることを含み、それによって、感染性ウイルスなどのウイルスはサンプルから除去される。好ましくは、抗ウイルス蛋白質は配列番号2を含む。1実施態様では、抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドは、抗シアノビリン抗体又はポリエチレングリコール、デキストラン及びアルブミンから選択される少なくとも1つのエフェクター成分(同一又は異なりうる)と結合しており、その場合、抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドは、望ましくは、少なくとも1つのエフェクター成分を介して固体支持マトリックスに結合している。抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドは更に、免疫学的試薬及び毒素からなる群から選択される、少なくとも1つのエフェクター成分(同一又は異なりうる)と結合しうる。別の実施態様では、固体支持マトリックスは、ストレプトアビジンでコートされ、抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドはビオチニル化されている。ビオチンを介して、ビオチニル化抗ウイルス蛋白質/抗ウイルスペプチドは、ストレプトアビジンでコートされた固体支持マトリックスに結合する。当業者公知のような他のタイプの手段を用いて、磁気ビーズなどの固体支持マトリックスに、機能を有するシアノビリン(即ち、上述した、抗ウイルス蛋白質又はペプチド又は前記のいずれかのコンジュゲート)を結合でき、その場合、磁石との接触を用いて、サンプルと組成物を分離する。同様に、多孔性表面又は膜を含むマトリックスなどの他のタイプの固体支持マトリックスを使用できる。その上を又はそれを通して、サンプルは流れ、浸出され、それによって、サンプルから感染性ウイルスが選択的に捕捉又は除去される。固体支持マトリックスの選択、固体支持マトリックスへの機能を有するシアノビリンの結合手段、及びサンプルとマトリックス固定シアノビリンの分離手段は、部分的には、サンプル(例えば、体液対組織)と除去されるウイルスに依存しよう。選択された結合分子の使用は、それと結合した機能を有するシアノビリンを含む、所定の状況で特に有利な特性をもちうる、マトリックスに、特定の所望の特性を与えうることが期待される。好ましくは、サンプルは、血液、血液成分、精液、細胞、組織又は器官である。また、好ましくは、サンプルはワクチン製剤であり、その場合、除去されるウイルスは、HIVなどの感染性である。しかし、HIV、特に感染性HIVは、本法に従って、他のサンプルから除去しうる。このような方法はまた、例えば、ウイルス感染の治療において、又は、ウイルス感染の阻害又は予防における血液もしくは血液成分からのウイルスの除去(例えば、輸血のため)において、血液などの体液から、ウイルス又はウイルス感染細胞のリアルタイムex vivo除去に有用である。このような方法はまた、腎臓透析などの透析において、及び、インビトロとインビボの受精のためにドナーから得られる精液からウイルスを除去することにおいて、潜在的な有用性を有する。本方法はまた、組織と器官移植の状況で適用性を有する。
【0075】
例えば、専門家は、固体支持マトリックスに機能を有するシアノビリンを結合させるためにポリ(エチレングリコール)分子を選択するかもしれない。それによって、マトリックス固定シアノビリンを提供し、ビオチニル化/ストレプトアビジン結合などの他の結合方法のために実行できる、又は可能であろうよりも、より長い「鎖」によってマトリックスにシアノビリンは結合する。固体支持マトリックス(例えば、磁気ビーズ、多孔性表面又は膜など)へポリ(エチレングリコール)「鎖」によって結合したシアノビリンは、所定の状況において、及び/又は、特定のウイルスに関して、ウイルスの結合及び/又は不活化を容易にするように、機能を有するシアノビリン上で結合表面、エピトープ、疎水性もしくは疎水性中心などの最適の暴露を可能としうる。好適な固体支持マトリックスは、サンプルと組成物の分離が磁石によって生じるような磁気ビーズである。本方法の好適実施態様では、少なくとも9個の連続アミノ酸は、HIVのgp120に結合し、HIVはサンプルから除去される。
【0076】
要約すると、磁気ビーズなどの固体支持マトリックスに結合したシアノビリンを用いて、サンプル(例えば、感染性と非感染性の両方のウイルスを含むサンプル)から、ウイルス(特に、HIVのような免疫不全ウイルス(例えば、HIV−1又はHIV−2)を含む感染性ウイルス)を除去できる。サンプル中でウイルスを不活化又は破壊する、以前に開示された方法とは対照的に、本発明の方法は、感染性ウイルス(特に、感染性免疫不全ウイルス、例えば、HIV、特にHIV−1又はHIV−2)などのウイルスに不可逆的に結合するシアノビリンを用いる。感染性ウイルス粒子は、該抗ウイルス剤に永久に固定され、宿主細胞に感染できない。本発明の方法は、非感染性ウイルスから感染性ウイルスの分離を可能とし、従って、当業界で現在利用できる他の方法に対し有利である。この点に関し、シアノビリンが、感染性HIVに特徴的なgp120のコンフォメーション又はその一部を認識することが予期せず観察された。従って、感染性ウイルスのみが、シアノビリンによって結合され、非感染性ウイルスはサンプル中に留まる。非感染性ウイルスのプールを産生するために、本発明のマトリックス固定シアノビリンを使用する利点を当業者は理解しよう。本発明の方法をまた使用して、サンプルから、gp120提示細胞(例えば、表面にgp120を有する感染細胞)を除去できる。
【0077】
従って、本発明は更に、上記のように産生された組成物などの、天然起源の非感染性ウイルスを含む組成物を提供する。組成物は更に、担体(例えば、生物的又は医薬として許容できる担体)と免疫アジュバントを含みうる。好ましくは、非感染性ウイルスは、HIVなどの免疫不全ウイルス(例えば、HIV−1又はHIV−2)である。あるいは、及び、また好ましくは、非感染性ウイルスはFIVである。天然起源の非感染性ウイルスのみを含む組成物は、研究及びウイルス感染の予防処置において多数の適用を有する。ウイルス感染の予防処置の点で、組成物から感染性ウイルスの全部を完全に除去する必要性を当業者は理解しよう。所望ならば、イミンもしくはプソラレンなどのウイルス不活化化学物質による、及び/又は圧力もしくは加熱不活化による、非感染性粒子を含む組成物の更なる処置は、組成物の非感染性を更に促進しよう。例えば、免疫応答を誘導するために、ウイルス感染の危険性のある動物に、免疫応答誘導量の本発明の組成物を投与できる。ウイルスが非感染性で天然起源のものであるという点で、このような組成物は、以前に開示された組成物に対し顕著な改良であることを当業者は理解しよう。従って、不注意感染の危険性はなく、感染性ウイルス粒子を含む組成物と比較してより大きい投与量が投与でき、続く免疫応答は、天然起源のウイルスに存在する抗原に確実に向けられよう。天然起源の、非感染性ウイルスを含む組成物は、免疫応答を誘導するのに適した任意の方法で投与できる。好ましくは、ウイルスは、例えば、筋肉内、粘膜、静脈内、皮下、又は局所に投与される。好ましくは、組成物は、gp120を含む天然起源の非感染性ヒト免疫不全ウイルスを含む。
【0078】
所望ならば、天然起源の非感染性ウイルスを含む組成物は、種々の担体、アジュバント、希釈剤又は他の抗ウイルス治療剤と組合せられる。適切な担体としては、例えば、オボアルブミン、アルブミン、グロブリン、ヘモシアニンなどが挙げられる。免疫系を更に刺激するために、大部分の場合、アジュバント又は免疫アジュバントが組み込まれる。任意の生理的に適切なアジュバントが使用できる。本発明の組成物に含まれるのに適したアジュバントとして、例えば、水酸化アルミニウム、硫酸ベリリウム、シリカ、カオリン、カーボン、細菌内毒素、サポニン等が挙げられる。
【0079】
従って、本発明はまた、動物でウイルスへの免疫応答の誘導方法を提供する。本方法は、動物に、免疫応答誘導量の、上記の天然起源の非感染性ウイルスを含む組成物を投与することを含む。
【0080】
動物でウイルスへの免疫応答の誘導のために必要な天然起源の非感染性ウイルスを含む組成物の適当な投与量は、動物の大きさや免疫能力などの多数の因子に依存している。投与する組成物量は、液性及び/又は細胞性免疫応答を誘導するのに十分であるべきである。特定の組成物中の非感染性ウイルス量は、Coulter HIV p24抗原アッセイ(Coulter Corp., Hialeah, FL)などの当業界でルーチンな方法を用いて決定できる。免疫応答が誘導される限り、望ましくは、宿主へ有害な副作用の出現なくして免疫応答が誘導される限り、非感染性ウイルスを含む組成物の任意の適当な投与量が適当である。この点に関し、約10〜約10粒子、好ましくは約10〜約10粒子、最適には約10粒子を含む組成物が、免疫応答を誘導するのに適切である。
【0081】
当業界公知のルーチンな方法を用いて、免疫応答を誘導するための組成物の有効性を当業者は決定できる。例えば、ウイルス抗原刺激−T細胞増殖アッセイを用いることによって、細胞媒介性応答を測定できる。液性免疫応答の存在は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定できる。免疫応答の誘導を評価する多数の他の適切なアッセイがあることを当業者は理解しよう。投与量が、適切な免疫応答を誘導するのに不十分である範囲では、より有効な免疫応答を促進するために、次いで、「追加免疫」投与が投与できる。
【0082】
本発明の抗ウイルス剤又はそのコンジュゲートの投与の点で、投与は、錠剤又はカプセルなどの単位投与形態でありうる。本明細書で使用する用語「単位投与形態」は、ヒトと動物被験体のための単位投与として適した物理的に別個のユニットを指し、各ユニットは、医薬として許容できる希釈剤、担体、又はビヒクルと組合せて所望の効果を生じるのに十分な量として計算された、所定量のシアノビリン又はそのコンジュゲート(単独で、又は他の抗ウイルス剤と組合せて)を含む。
【0083】
本発明の単位投与形態の明細は、使用する特定のシアノビリン又はそのコンジュゲートもしくは組成物、及び達成されるべき効果、並びに、宿主中で、各シアノビリン又はそのコンジュゲートもしくは組成物に付随する薬物動力学に依存する。投与される投与量は、「抗ウイルス有効量」又は個々の患者で「有効レベル」を達成するのに必要な量であるべきである。
【0084】
「有効レベル」は、投与の好適終点として使用されるので、実際の投与量とスケジュールは、薬物動力学、薬物分布及び代謝の個体間差異に依存して変わりうる。「有効レベル」は、例えば、化学化合物と生物薬剤の臨床抗ウイルス活性を予測することが知られるアッセイにおいて、HIVなどのウイルスを阻害する、1種以上のシアノビリン又はそのコンジュゲートの濃度に対応する患者で望まれる血液又は組織レベル(例えば、0.1−1000nM)として、定義される。シアノビリン又はそのコンジュゲートもしくは組成物が、AZT又は他の公知の抗ウイルス化合物あるいはその組合せと組合せて使用されるとき、本発明の薬剤の「有効レベル」はまた、変わりうる。
【0085】
個々の患者で所望の「有効濃度」を達成するために、使用する組成物の正確な処方のための適切な投与量、投与スケジュール、投与方法を、当業者は容易に決定できる。適切な患者サンプル(例えば、血液及び/又は組織)の直接的(例えば、分析的化学分析)又は間接的(例えば、p24又はRTなどの代用指標によって)分析によって、本発明の化合物の「有効濃度」の適切な指標を当業者は容易に決定、使用できる。
【0086】
一部のウイルス感染個体の治療において、「メガ−投与」療法を用いることが望ましいことがありうる。「メガ−投与」療法では、シアノビリン又はそのコンジュゲートの大投与量が投与され、薬剤が作用する時間が許され、次いで、薬剤を不活化するために適切な試薬が個体に投与される。
【0087】
AIDSが起こるものなどのウイルス感染を治療的に処置するために使用するとき、シアノビリン又はそのコンジュゲートと共に、他の医薬を医薬組成物は含みうる。これらの更なる医薬の代表的な例として、抗ウイルス化合物、抗ウイルス剤、免疫調節剤、免疫刺激剤、抗生物質、及び吸収促進剤が挙げられる。例示的な抗ウイルス化合物として、AZT、ddI、ddC、ガンシクロビル、フッ素化ジデオキシヌクレオシド、非ヌクレオシドアナログ化合物(ネビラピン(Shih ら, PNAS 88,9878-9882,1991)など)、TIBO誘導体(R82913(White ら, Antiviral Res. 16,257-266,1991), BI-RJ-70 (Merigan, Am. J. Med. 90 (Suppl. 4A), 8S-17S, 1991),ミシェルアミン(Boyd ら, J. Med. Chem. 37,1740-1745,1994) 及びカラノリド (Kashman ら, J. Med. Chem. 35,2735-2743,1992)など)、ノノキシノール−9、ゴシポールと誘導体、及びグラミシジン(Bourinbair ら, 1994,上記)が挙げられる。例示的な免疫調節剤と免疫刺激剤としては、種々のインターロイキン、sCD4、サイトカイン、抗体製剤、輸血血液及び移入細胞などが挙げられる。例示的な抗生物質としては、抗真菌剤、抗細菌剤、抗Pneumocystitis carnii剤が挙げられる。例示的な吸収促進剤として、胆汁酸塩と他の界面活性剤、サポニン、シクロデキストリン、リン脂質(Davis, 1992, 上記)が挙げられる。
【0088】
他の抗レトロウイルス薬剤、及び特に公知のRT阻害剤(ddC、AZT、ddI、ddAなど)又は他のHIV蛋白質に対して作用する他の阻害剤(抗TAT薬剤など)と共に、シアノビリン又はそのコンジュゲートの投与は、ウイルスライフサイクルの複製段階の大部分又は一部を阻害することが期待される。AIDS又はARS患者で使用されるddCとAZTの投与は刊行されている。ddCのウイルス抑制範囲は一般的に、0.05−1.0μMである。大部分の患者では、約0.005−0.25mg/kg体重の範囲がウイルス抑制的である。経口投与の予備的投与量範囲はやや広く、例えば、2、4、6、8、12時間などの間隔で1回以上の投与で与えられて、例えば、0.001−0.25mg/kgである。現在、8時間毎に与えられて0.01mg ddC/kg体重が好適である。併用治療で与えられるとき、他の抗ウイルス化合物は、例えば、シアノビリン又はそのコンジュゲートと同時に与えることができ、又は、所望のように、投与は時間をずらしてできる。2種の薬剤はまた、組成物中で組合せることができる。各々の投与量は、どちらも単独で用いるときよりも、組合せて使用するとき、より少なくできる。
【0089】
本発明のシアノビリン又はそのコンジュゲートのDNA配列は、所定の動物宿主、特にヒト宿主から予め取り出した哺乳動物細胞にex vivoで挿入できることも、当業者に理解されよう。このような細胞を用いて、宿主に再導入後、インビボで対応するシアノビリン又はコンジュゲートを発現できる。所望の標的細胞と病原体(即ち、ウイルス、より詳細にはレトロウイルス、具体的にはHIVとそのエンベロープ糖蛋白質gp120)の近くに治療有効量の薬剤を送達するというこのような戦略の実現可能性が、sCD4を発現するようにex vivoで操作した細胞を用いた研究で示された(Morgan ら, 1994,上記)。本発明のDNA配列のex vivo挿入の代替として、適当なウイルスベクターの使用などによって、このような配列を、インビボで細胞に直接的に挿入することも可能である。インビボでトランスフェクトされたこのような細胞は、インビボで、直接的に、抗ウイルス量のシアノビリン又はコンジュゲートを産生することが期待される。
【0090】
本開示があれば、シアノビリン又はそのコンジュゲートに対応するDNA配列は、適切な非哺乳動物宿主細胞中に挿入でき、このような宿主細胞は、動物(特にヒト)の所望の身体コンパートメント内で、インビボで、直接的に、治療量又は予防量のシアノビリン又はそのコンジュゲートを発現するであろうことが、更に理解されよう。実施例3は、非哺乳動物細胞(より具体的には細菌細胞)中での形質転換及び抗ウイルス有効量のシアノビリンの発現を示す。実施例10は、非哺乳動物細胞(より具体的には酵母細胞)中での形質転換及びシアノビリンの発現を示す。酵母細胞が形質転換されるならば、望ましくは、シアノビリンは、非グリコシル化であり、又は上記のように、グリコシル化抵抗性にされる。
【0091】
本発明の1好適実施態様では、HIV感染に対する女性によって制御できる予防方法は、膣粘膜及び/又は子宮頚部粘膜及び/又は子宮粘膜上又はその中で直接的に、抗ウイルス有効レベルのシアノビリン又はそのコンジュゲートを長時間産生するために、本発明のコーディング配列で形質転換された乳酸桿菌の永続的な膣内集団の、女性ヒトにおける、膣内投与及び/又は確立を含む。世界保健機構(WHO)と米国国立アレルギー感染症研究所の両方は、緊急のグローバルな優先として、HIVの伝達をブロックするのに適した、女性によって制御できる局所微生物の開発の必要性を指摘したことは価値がある(Lange ら, Lancet 341,1356,1993; Fauci, NIAID News, 4月27日,1995)。本発明の抗ウイルス薬剤と固体支持マトリックスを含む組成物は、この点で特に有用である。固体支持マトリックスが、コンドーム、ペッサリー、子宮頚部キャップ、膣リング、もしくはスポンジなどの避妊具であるとき、特に有用である。
【0092】
本発明はまた、本発明の蛋白質に向けられた抗体を提供する。任意の所定の蛋白質への抗体の利用性は、非常に有利である。それは、種々の定性的及び定量的分析方法、分離精製方法、及び主題の蛋白質に関する他の有用な適用の基礎を提供するからである。従って、本開示と本発明の蛋白質があれば、抗体、特に、本発明の蛋白質に特異的に結合する抗体は、十分に確立された方法を用いて(例えば、Harlow and Lane, in Antibodies. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, 1988, pp. 1-725に詳細に記載の方法など)、調製できる。このような抗体は、ポリクローナルとモノクローナル抗体の両方を含みうる。更に、このような抗体は、得られ、溶液相で用いられ、又は、磁気ビーズ又はフロースルーマトリックスなどの所望の固相マトリックスに結合できる。本発明によって提供されるこのような抗体を手にすれば、十分に確立された方法(例えば、Harlow and Laneによって記載されたもの(1988,上記)など)と共に、このような抗体は、シアノビリン、そのコンジュゲート又はシアノビリンもしくはそのコンジュゲートを産生するように形質転換された宿主細胞の検出、定量又は精製の有用な方法を含むことを、当業者は更に理解しよう。実施例12は更に、シアノビリンと特異的に結合する抗体を示す。
【0093】
マトリックス固定抗シアノビリン抗体はまた、サンプル中のウイルスを除去する方法で用いることができる。好ましくは、抗体は、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドのエピトープと結合する。好ましくは、マトリックスは、磁気ビーズ又はフロースルーマトリックスなどの固体支持マトリックスである。抗シアノビリン抗体が結合する固体支持マトリックスが磁気ビーズを含むならば、抗体−シアノビリン−ウイルスコンプレックスの除去は、磁気を用いて容易に達成できる。
【0094】
上記の観点で、本発明は、サンプルからのウイルスの除去方法を提供する。本方法は、(a)サンプルを、単離精製された抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質コンジュゲート又は抗ウイルスペプチドコンジュゲートを含む組成物と接触させること(ここで、(i)抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドは、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む、及び(ii)少なくとも9個の連続アミノ酸はウイルスと結合する)、及び(b)サンプルを、固体支持マトリックスと結合した抗シアノビリン抗体と接触させ、それによって、抗シアノビリン抗体は、ウイルスが結合した抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチドコンジュゲート又は抗ウイルス蛋白質コンジュゲートと結合すること、及び(c)サンプルから固体支持マトリックスを分離し、それによって、ウイルスをサンプルから除去すること、を含む。好ましくは、抗ウイルス蛋白質は配列番号2を含む。望ましくは、除去されるウイルスは、HIVなどの感染性である。サンプルは、血液、血液成分、細胞、組織、又は器官でありうる。
【0095】
上記方法で使用される抗体は、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む蛋白質又はペプチドと結合する抗体であり、該蛋白質又は該ペプチドは、ウイルスと結合でき、ウイルスを不活化できる。抗体は、固体支持マトリックスにシアノビリンを結合させるための上記と同様の方法を用いて及び同様の考慮をもって、固体支持マトリックスに結合させることができる。例えば、磁気ビーズ又はフロースルーマトリックスなどの固体支持マトリックスに抗シアノビリン抗体を結合させるのに用いられる結合方法と分子は、ビオチン/ストレプトアビジン結合又はポリエチレングリコール、アルブミン又はデキストランなどの分子を介する結合を用いることができる。例えば、磁気ビーズを含む固体支持マトリックスにシアノビリンを結合させるために実施例7で記載したのと同じ方法を基本的に用いて、磁気ビーズに抗シアノビリン抗体を結合できる。また、同様に、このような結合後、マトリックス固定抗シアノビリン抗体は、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む蛋白質又はペプチド(該蛋白質又はペプチドはウイルスと結合でき、ウイルスを不活化できる。)と結合する能力を保持することが示されうる。
【0096】
本発明のシアノビリン、コンジュゲート、宿主細胞、抗体、組成物、及び方法は、以下の実施例において更に説明する。これらの実施例は、本発明を更に説明するのに役立ち、本発明の範囲を限定することを意図されない。
【0097】
実施例
実施例1
本実施例は、培養シアノバクテリア、Nostoc ellipsosporumの水性抽出物からの純粋シアノビリンの、抗HIVバイオアッセイに導かれる単離及び解明の詳細を示す。
Weislow ら (1989, 上記)に記載された方法を用いて、単離精製過程をモニターし、操作した。シアノバクテリア培養条件、培地及び分類は、以前に記載した通りであった(Patterson, J. Phycol. 27,530-536, 1991)。要約する。Nostoc ellipsosporumの単藻株の細胞マス(培養Q68D170)を濾取し、凍結乾燥し、MeOH-CH2Cl2(1:1)次いでH20で抽出した。H20抽出物のみがHIV阻害活性を含むことを、バイオアッセイは示した。水性抽出物溶液(30 mg/ml)を、当量のエタノール(EtOH)の添加によって処理した。生じた1:1 H20-EtOH溶液を−20℃に15時間保った。次いで、溶液を遠心分離し、沈殿物を除去した(恐らく、高分子量生体高分子)。生じたHIV阻害上清を蒸発させ、次いで、ワイド−ポアCパッキング(300,BakerBond WP-C4)上の逆相真空−液体クロマトグラフィ(Coll ら, J. Nat. Prod. 49,934-936,1986 ; 及び、Pelletier ら, J. Nat. Prod. 49,892-900,1986)で分画化し、H20中メタノール(MeOH)の濃度を増加させて、溶出した。抗HIV活性は、MeOH-H20 (2:1)で溶出された物質に濃縮された。この分画のSDS-PAGE分析は、相対分子量(Mr)約10kDaの1つの主要な蛋白質バンドを示した。最終精製は、H20中のアセトニトリル濃度を増加するグラジエントによって溶出する、1.9 x 15 cm μBondapak C18 (Waters Associates)カラムでの繰り返した逆相HPLCで達成された。移動相は0.05% (v/v) TFA, pH=2を含んでいた。溶出された蛋白質とペプチドは、迅速スペクトル検出器(Pharmacia LKBモデル 2140)を用い、206、280及び294 nmのUV吸収によって検出した。個々の分画を集め、UVクロマトグラムに基きプールし、凍結乾燥した。プールされたHPLC分画を、還元条件下SDS−PAGE(Laemmli,Nature 227,680-685, 1970)、通常のアミノ酸分析及び抗HIV活性試験に供した。
【0098】
図1Aは、OD 206 nm対時間(分)のグラフであり、28-38% CH3CNからの線形CH3CN/H20グラジエント(0.05% TFAで緩衝化)で溶出された非還元シアノビリンのμBondapak C 18 HPLCクロマトグラムを示す。図1Cは、OD 206 nm対時間(分)のグラフであり、最初にβ−メルカプトエタノールで還元され、次いで同一のHPLC条件で分離したシアノビリンのクロマトグラムを示す。2つのランからのHPLC分画を示したように集めた。各分画の10%アリコートを凍結乾燥し、100 μl 3:1 H20/DMSOに作製し、XTTアッセイで抗HIV活性を評価した。図1Bは、50%防御のための最大希釈対HPLC分画の棒グラフであり、非還元シアノビリンHPLC分画についてのHIV感染の細胞変性効果からの50%防御を与える各分画の最大希釈を示す。還元シアノビリンからのHPLC分画についての対応する抗HIV効果は、図1Dに示す。図1Dは、50%防御の最大希釈対HPLC分画の棒グラフである。選択されたHPLC分画の20%アリコートをSDS−PAGEで分析した。30-50% CH3CNからの線形グラジエントを用いる最初のHPLC分離で、抗HIV活性は、約33% CH3CNで主要なUV吸収ピークと共溶出された。活性ピークに対応する分画をプールし、2つのアリコートに分割した。
【0099】
同様のHPLC条件下だが、28-38% CH3CNの線形グラジエントによる第1のアリコートの再注入は、活性物質を、33.4及び 34.0% CH3CNの2つの近隣の溶出ピークに分離した。(図1Bに示されるように)このHPLCランの間に集めた分画の抗HIV活性プロフィールは、2つのUVピークに対応した(図1Aに示されるように)。個々のピーク下に集めた分画のSDS−PAGEは単一蛋白質バンドのみを示した。
【0100】
オリジナルのHPLC分離からの第2のアリコートを、HPLCへの再注入前にβ−メルカプトエタノールで還元した。同一の28-38%グラジエントを用いると、還元物質は1つの主要なピークを与え(図1Cに示されるように)、それは、そのランにおいて後に36.8% CH3CNで溶出された。抗HIV活性のほんの微量が、還元物質からのHPLC分画で検出された(図1Dに示されるように)。
【0101】
非還元物質の2つの近隣に溶出されるHPLCピーク(図1A)はSDS−PAGE(還元条件下のラン)で唯一の同一バンドを与え、β−メルカプトエタノールによる還元の結果、非還元ピークのどちらよりも、より長い保持時間のHPLCピークを与えた。このことは、ジスルフィドが天然蛋白質に存在していることを示した。2つの活性ピークのアミノ酸分析は、それらはほぼ同一の組成を有することを示した。2つのHPLCピークは、プロリン残基のシス/トランス異性化から生じたか、蛋白質サンプルの微細不均一性から生じたことがありうる(それは、アミノ酸分析でも、配列決定中でも検出されなかった)。2つのHIV阻害ピークとして集めた物質を、更なる分析のために一緒にし、シアノビリン−Nという名前を与えた。
【0102】
実施例2
本実施例は、シアノビリン遺伝子の合成を示す。
シアノビリン−Nの化学的推定アミノ酸配列を、逆翻訳し、DNAコーディング配列を得た。組換えシアノビリン−Nの最初の製造と精製を容易にするために、市販の発現ベクター(pFLAG-1, International Biotechnologies, Inc., New Haven, CTから)[そのための試薬は、アフィニティ精製と検出のために利用できた]を選択した。pFLAG-1への連結のための適当な制限部位と終止コドンをDNA配列に含めた。図2は、合成シアノビリン遺伝子をコードするDNA配列の1例である。このDNA配列設計は、シアノビリン−Nコーディング領域と、「FLAG」オクタペプチドのコドンをシアノビリンのN末端で結合させ、FLAG−シアノビリン融合蛋白質の製造を提供する。
【0103】
このDNA配列の合成のフローチャートを図11に示す。DNA配列は、13個の重複した相補的オリゴヌクレオチドとして合成し、アッセンブルして、二重鎖コーディング配列を形成させた。合成DNAコーディング配列のオリゴヌクレオチド要素は、デュアル−カラム核酸合成機(Model 392, Applied Biosystems Inc., Foster City, CA)を用いて合成した。完成オリゴヌクレオチドは、カラムから切断され、濃水酸化アンモニウム中、56℃で一晩、インキュベーションによって脱保護された。T4ポリヌクレオチドキナーゼ処理前に、33−66マー(mer)を蒸留水に対し、ドロップ透析した。13個のオリゴヌクレオチドを個別にHPLCで精製し、各々10nmolをT4DNAリガーゼで327bp二重鎖DNAに連結した。DNAは、フェノール:クロロホルム抽出、エタノール沈殿、更にエタノール洗浄によって反応緩衝液から回収、精製した。個々のオリゴヌクレオチド調製物をプールし、10分間煮沸し、変性させた。次いで、混合物の温度を70℃に下げ、相補鎖をアニーリングさせた。20分後、チューブを氷上で冷却し、T4DNAリガーゼ2,000ユニットを更なるリガーゼ緩衝液と共に加えた。連結は16℃、一晩行った。DNAを、フェノール:クロロホルム抽出、エタノール沈殿、洗浄によって連結反応混合物から回収、精製した。
【0104】
次いで、精製された二重鎖合成DNAを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の鋳型として用いた。連結反応混合物の精製後得られたDNA溶液1μlを鋳型として用いた。Perkin-Elmer装置を用いて、温度サイクリングを行った。「Vent」熱安定性DNAポリメラーゼ、制限酵素、T4DNAリガーゼ、ポリヌクレオチドキナーゼを、New England Biolabs, Beverly, MAから得た。Ventポリメラーゼは、通常のTaq酵素と較べて、忠実度における優秀性の主張故に、本適用のために選択した。PCR反応産物を、TBE緩衝液中2%アガロース上で走らせた。次いで、327bp構築物をゲルから切り出し、電気溶出で精製した。それは、Hind III制限酵素とXho I制限酵素による消化に比較的耐性であると知見されたので、最初にpCR−Scriptシステム(Stratagene)を用いてクローンした。これらのクローンの1つからのプラスミド調製物の消化は、コーディング配列を与え、次いで、それを、pFLAG−1ベクターのマルチクローニング部位に連結した。
【0105】
E. coliを、pFLAG-構築物で形質転換し、組換えクローンを、プラスミドDNAの制限消化の解析によって同定した。これらの選択されたクローンの1つの配列解析は、4個の塩基が意図したコーディング配列から逸脱していることを示した。これは、蛋白質に含まれる4個のシステイン残基の1つをコードしている3個の塩基の欠失と、先行コドンにおける第3塩基の変化(図2のボックスで示す)を含んでいた。これらの「変異」を正すために(これは恐らく、合成鋳型のPCR増幅中に起こった)、二重鎖「パッチ」を合成した。これは変異に隣接する制限部位に連結させることができた(これらのBst XIとEspl部位も図2に示す)。パッチが適用され、修復はDNA配列解析で確認された。
【0106】
天然シアノビリンをコードしているDNA配列の調製のために、上記FLAG−シアノビリン構築物に部位特異的変異誘発を行って、FLAGオクタペプチドのコドンを除去し、同時にユニークHind III制限部位を除去した。この方法を図3に図示するが、それは、部位特異的変異誘発処置を用いて図2の配列からFLAGオクタペプチドのコドンとHind III制限部位を除去したことを示す。変異誘発オリゴヌクレオチドプライマーを合成したが、それは、Omp分泌ペプチドとシアノビリンのコドンの部分を含んでいたが、FLAGペプチドのコドンを欠いていた。鋳型鎖にDNAヘアピンの創生を伴うこの変異誘発プライマーのアニーリングと、DNAポリメラーゼによる伸張により、FLAGコドン配列とHind III部位の両方を欠く新規プラスミドDNAが作出された(詳細は、図2参照)。Hind IIIによるプラスミドDNAの消化により、「変異」鎖ではなく「野生型」の線状化が生じた。E. coliの形質転換は、環状DNAでより効率的に起こるので、Omp分泌ペプチドの後で直接的に天然シアノビリン−Nの産生を特定化する修正されたコーディング配列を有するクローンが容易に選択できた。DNA配列決定は、意図された配列の存在を証明した。部位特異的変異誘発反応は、Pharmacia Biotech, Inc., Piscataway, NJ.から得た材料(ポリメラーゼ、緩衝液等)を用い行った。
【0107】
実施例3
本実施例は、合成シアノビリン遺伝子の発現を示す。
FLAG−シアノビリン−N融合蛋白質のコーディング配列(DNA配列の詳細に関しては図2参照)を含むpFLAG-1ベクターによってE. coli (DH5α株)を(エレクトロポレーションによって)形質転換した。100μg/mlアンピシリンを有する増殖培地(LB)を含む小規模振盪フラスコ中に、選択したクローンを接種し、37℃でのインキュベーションで増殖させた。次いで、大規模エルレンメイヤーフラスコ(0.5−3.0リットル)に接種し、 OD600単位0.5-0.7の密度まで、増殖させた。次いで、FLAG−シアノビリン−N融合蛋白質の発現をIPTGを最終濃度1.7 mMまで加え、30℃でのインキュベーションを3−6時間続けることによって誘導した。ペリプラズム蛋白質の取得のために、細菌をペレットにし、洗浄し、次いでシュークロース処理により浸透圧ショックをかけ、次いで蒸留水に再懸濁した。ペリプラズム蛋白質は、細菌を沈降させ、次いでワットマンペーパーを通し、水性上清を濾過することにより得た。粗ペリプラズム抽出物は、ウエスタン又はスポット−ブロティングによって、抗HIV活性、及びFLAG−シアノビリン−N融合蛋白質の存在の両方を示した。
【0108】
実施例2に記載の天然シアノビリン−Nの構築物を用いて、FLAG−シアノビリン−N融合蛋白質に関する上記と同様にして細菌を形質転換した。クローニング、増殖、IPTGによる誘導、回収は、同様に行った。粗ペリプラズム抽出物は、バイオアッセイで強い抗HIV活性を示した。合成シアノビリン遺伝子の発現のフローチャートを図12に示す。
【0109】
実施例4
本実施例は、組換えシアノビリン蛋白質の精製を示す。
抗FLAGモノクローナル抗体(International Biotechnologies, Inc., New Haven, CT)に基くアフィニティカラムを用いて、FLAG−シアノビリン−N融合蛋白質を以下の様に精製できた。
実施例3に記載のように調製した、それぞれのペリプラズム抽出物を、アフィニティマトリックスを含む2-20 ml重力カラムにかけ、 CA++ 含有PBSで徹底的に洗浄し、夾雑蛋白質を除去した。抗体へのFLAGペプチドの結合はCa++-依存性であるので、融合蛋白質は、カラムにEDTAを通すことによって溶出できた。カラム分画と洗浄体積を、同じ抗FLAG抗体を用いるスポット−ブロット解析によってモニターした。次いで、融合蛋白質含有分画をプールし、蒸留水に対し徹底的に透析し、凍結乾燥した。
組換え天然シアノビリン−Nの精製に関し、実施例3からの対応するペリプラズム抽出物に、ステップ−グラジエントC逆相、真空−液体クロマトグラフィを行い、3つの分画を得た:(1)100% H20で溶出、(2)MeOH-H20 (2:1)で溶出、(3)100% MeOHで溶出。抗HIV活性は、分画(2)に濃縮された。組換えシアノビリン−Nの精製は、H20(移動相中0.05% TFA, v/v)中のCH3CN濃度を増加するグラジエントで溶出する、1.9x15 cm μBondapak (Waters Associates)C18カラムでのHPLCで行った。280 nmでモニターした1x10 cm (Cohensive Technologies, Inc.) C4カラム上での最終HPLC精製のクロマトグラムは図4に示したが、それは、組換え天然シアノビリンの精製中の典型的HPLCクロマトグラムである。100% H20からH20-CH3CN (7:3)へのグラジエント溶出(5ml/分)は、移動相に0.05% TFA (v/v)を有し、23分で行われた。
【0110】
実施例5
本実施例は、天然及び組換えのシアノビリン−N及びFLAG−シアノビリン−Nの抗HIV活性を示す。
以前に記載されたXTT−テトラゾリウム抗HIVアッセイを用い、最初に純粋蛋白質を抗ウイルス活性につき評価した(Boyd, in AIDS, Etiology, Diagnosis, Treatment and Prevention, 1988, 上記 ; Gustafson ら, J. Med. Chem. 35,1978-1986,1992; Weislow, 1989, 上記 ; 及び、 Gulakowski, 1991, 上記)。全てのアッセイで用いたCEM-SSヒトリンパ球標的細胞系は、フェノールレッド無しのRPMI 1650培地(Gibco, Grand Island, NY)で維持され、5%ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、50 μg/mlゲンタミシンを補充した(完全培地)。
対数増殖細胞をペレットとし、完全培地中2.0x105細胞/mlの濃度で再懸濁した。HIVのハイチ変異株であるHTLV-IIIRF(3.54x106 SFU/ml)を、始終使用した。凍結ウイルスストック溶液を使用直前に融解し、完全培地に再懸濁して1.2x125SFU/mlを得た。抗HIV評価のため、純粋蛋白質の適当量をH20-DMSO (3:1)に溶解し、次いで、完全培地で希釈し、所望の初期濃度とした。全ての連続薬剤希釈、試薬添加、プレートからプレートへの移転は、自動化Biomek 1000 Workstation (Beckman Instruments, Palo Alto, CA)で行った。
【0111】
図5A−5Cは、対照に対する%対濃度(nm)のグラフであり、それは、Nostoc ellipsosporumからの天然シアノビリン(A)、組換え天然シアノビリン(B)、及び組換えFLAG−融合シアノビリン(C)の抗ウイルス活性を示す。培養6日後測定された、HIV−1(黒丸)に感染した CEM-SS細胞に対するそれぞれのシアノビリンの濃度範囲の効果をグラフは示す。データ点は、それぞれの未感染、薬剤非処理の対照値に対する%を示す。3つ全てのシアノビリンは、低ナノモル範囲のEC50を有する強力な抗HIV活性を示し、最高試験濃度で(1.2μMまで)宿主細胞に対する直接的細胞毒性の有意な証拠を示さなかった。
【0112】
純粋シアノビリン−Nの抗HIV活性の更なる実証の一例として、他で詳細に記載された方法(Gulakowski, 1991,上記)を用い、96ウエルマイクロタイタープレートの個々のウエルで、一連の相互関連の抗HIVアッセイを行った。要約すると、方法は次のようであった。シアノビリン溶液を、完全培地中に連続希釈し、96ウエル試験プレートに加えた。未感染CEM-SS細胞を、完全培地50μl中に密度1x104細胞で培養した。次いで、希釈HIV−1を、体積50μlで適当なウエルに加えて、感染多重度0.6を得た。適当な細胞、ウイルス、薬剤対照を各実験に含めた。各々のマイクロタイターウエルの最終体積は200μlであった。4連のウエルを、ウイルス感染細胞に用いた。プレートは、4、5、又は6日、5%CO含有大気中で37℃でインキュベートした。
【0113】
次いで、Biomekを用い、各ウエルから無細胞上清のアリコートを取り出し、記載のように(Gulakowski, 1991,上記)のように、逆転写酵素活性、p24抗原産生、感染性ウイルスの合成の分析をした。次いで、記載されたように(Gulakowski ら, 1991,上記)、XTT(Weislow ら, 1989,上記)、BCECF (Rink ら, J. Cell Biol. 95,189-196,1982)、及びDAPI (McCaffrey ら, In Vitro Cell Develop. Biol. 24,247-252,1988)アッセイを用い、各ウエルの残存内容物で、細胞増殖又は生存率を推定した。グラフ表示とデータの比較を容易にするために、個々の実験アッセイ結果(各々のために少なくとも4連測定)を平均し、平均値を用い、適当な対照に関する%を計算した。これらの計算で用いた平均値の標準誤差の平均は典型的には、それぞれの平均値の10%未満であった。
【0114】
図6A−6Dは、対照に対する%対濃度(nm)のグラフであり、それは、多変数アッセイ様式でのシアノビリンの抗HIV活性を示す。グラフ6A、6B、6Cは、培養6日後で測定された、未感染CEM−SS細胞(白丸)、HIVに感染したCEM−SS細胞(黒丸)に対するシアノビリンの濃度範囲の効果を示す。グラフ6Aは、BCECFアッセイによって評価される、生存CEM−SS細胞の相対的数を示す。グラフ6Bは、それぞれの培養物の相対的DNA含量を示す。グラフ6Cは、XTTアッセイで評価される、生存CEM−SS細胞の相対的数を示す。グラフ6Dは、培養4日後測定された、感染性ウイルス指数又はウイルス複製指数に対するシアノビリンの濃度範囲の効果を示す。これらの指数は、ウイルス逆転写酵素(黒三角)、ウイルスコア蛋白質p24(黒菱)、シンシチウム形成ユニット(黒四角)を含む。グラフ6A、6B、6Cで、データは、未感染、薬剤非処理の、対照値に対する%として表す。グラフ6Dで、データは、感染、薬剤非処理の、対照値に対する%として表す。
図6に示すように、シアノビリン−Nは、インビトロでCEM−SSヒトリンパ芽球様標的細胞に対するHIV−1の細胞変性効果を完全に阻害できた;標的細胞に対する該蛋白質の直接的な細胞毒性は、最高試験濃度で観察されなかった。シアノビリン−Nはまた、同じ阻害有効濃度内で、HIV−1が感染したCEM−SS細胞でRT、p24、SFUの産生を顕著に阻害し、該蛋白質はウイルス複製を止めることを示した。
【0115】
シアノビリンの抗HIV活性は、厳しい環境挑戦に対し非常に回復力に富む。例えば、非緩衝化シアノビリン−N溶液は、活性の喪失なくして、凍結融解サイクルの繰返し、又は、有機溶媒中への溶解(100% DMSO, MeOH, 又は CH3CNまで)に耐えた。シアノビリン−Nは、HIV阻害活性の有意な喪失なくして、界面活性剤(0.1% SDS)、高塩(6MグアニジンHCl)、加熱処理(煮沸、H20中10分)に耐えた。β−メルカプトエタノールによるジスルフィドの還元、次いで、直ぐに、C18HPLC精製は、シアノビリン−Nの細胞保護活性を劇的に減少させた。しかし、還元シアノビリン−Nの溶液は、長期間貯蔵の間に抗HIV阻害活性を回復した。シアノビリン−Nが還元されたが( メルカプトエタノール、6MグアニジンHCl、pH8.0)、C18HPLCに入れずに、代わりに、ただ脱塩され、再構成され、アッセイされたとき、ほぼ完全な活性を保持した。
【0116】
実施例6
本実施例は、HIVウイルスエンベロープgp120が、シアノビリン−Nの主要な分子標的であることを示す。
XTT−テトラゾリウムアッセイ(Weislow ら, 1989,上記)を用いる最初の実験は、以下のことを示した:シアノビリン(10nM、1時間)でプレインキュベートされ、次いで、シアノビリン−N非含有になるように遠心分離された宿主細胞は、HIV感染に通常の感受性を保持する;対照的に、同様に前処理され、次いで、シアノビリン−Nの非阻害濃度を与えるように希釈された濃縮ウイルスの感染性は本質的に無くなる。このことは、以下のことを示す:シアノビリン−Nは、ウイルスそれ自体に直接作用している、即ち、それが宿主細胞に入ることができる前にさえ、直接的「抗ウイルス」剤として作用し、ウイルス感染を防止する。このことは更に、XTT−テトラゾリウムアッセイ(Weislow ら, 1989,上記)を同様に用いる添加時間実験で確認されたが、その示したところによれば、最大抗ウイルス活性を与えるために、図7に示すように、ウイルスの添加前、又は添加後出来るだけ早く、シアノビリン−Nを細胞に加える必要がある。図7は、未感染対照に対する%対添加時間(時間)のグラフであり、それは、シアノビリンの添加時間研究の結果を示し、HIV−1RFに感染したCEM−SS細胞における抗HIV活性を示す。シアノビリン(黒丸)又はddC(黒四角)(それぞれ、10nM、5μM濃度)の導入は、最初のインキュベーション後、種々の時間遅延して行われ、次いで、6日インキュベーション、次いで細胞生存率(線グラフ)とRT(白棒、挿入図)のアッセイが行われた。点は、少なくとも3連の測定の平均(±S.D.)を示す。逆転写酵素阻害剤ddCとは顕著に対照的に、シアノビリン−Nの添加がほんの3時間遅れると、抗ウイルス活性が殆ど、又は全く生じなかった(図7)。上記結果の示唆によると、シアノビリン−Nは、ウイルスと細胞との最初の相互作用の妨害によって、HIV感染性を阻害する;従って、このことは、シアノビリン−Nとウイルスgp120の直接的相互作用を含むらしい。このことは、限外濾過実験とドット−ブロットアッセイによって確認された。
【0117】
50kDaカットオフ限外濾過膜を通るシアノビリン−Nの通過の阻害によって評価されるように、可溶性gp120とシアノビリン−Nが直接的に結合できるかどうかを決定するために、限外濾過実験を行った。PBS中のシアノビリン(30μg)溶液を、種々の濃度のgp120と、37℃で1時間処理し、次いで、50kDaカットオフ遠心分離限外濾過膜(Amicon)を通し濾過した。PBSで3回洗浄後、濾液を3kDa限外濾過膜で脱塩した;保持物を凍結乾燥し、100μl HOに再構成し、抗HIV活性をアッセイした。
図8は、OD (450 nm)対シアノビリン濃度(μg/ml)のグラフであり、gp120をシアノビリンの主要分子標的として規定するシアノビリン/gp120相互作用を示す。遊離シアノビリン−Nは容易に溶出されたが、それは、濾液におけるシアノビリン−N生物活性の完全な回収によって示された。対照的に、gp120で処理されたシアノビリン−N溶液からの濾液は、濾液の生物活性の濃度依存性喪失を示した;更に、50kDaフィルター保持物は完全に不活性であり、シアノビリン−Nと可溶性gp120は直接的に相互作用し、無傷ウイルスのgp120に結合できないコンプレックスを形成することを示した。
PVDF膜ドット−ブロットアッセイにおいて、シアノビリン−Nとgpl20との直接的相互作用の更なる証拠があった。PVDF膜に、5μg CD4 (CD)、10μgアプロチニン(AP)、10μgウシグロブリン(BG)、及びシアノビリンの減少していく量;6μg [1], 3 μg [2], 1. 5μg [3], 0.75 μg [4], 0.38 μg [5], 0.19 μg [6], 0. 09 μg [7], 及び 0.05 μg [8]をスポットし、次いで、PBSTで洗浄し、製造業者の推奨に従い可視化した。シアノビリンとgp120−HRPコンジュゲート(Invitrogen)の結合のドットブロットによると、シアノビリン−Nは特異的にgp120の西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(gpl20-HRP) と濃度依存性様式で結合したことが示された。
【0118】
実施例7
本実施例は、固体支持マトリックスと結合した、機能を有するシアノビリンを含む本発明の組成物の製造と生物活性を示す。
E. coliで産生された組換えCV-N (rCV-N)を、ウシ胎仔血清中に加えられた1次分離株(HIV-1/UG/021/92)の100 TCID50のインビトロ不活化に関して、0.05μg又は0.5μgのビオチニル化CV-N (bCV-N)と比較した。104個のストレプトアビジンコート−磁気ガラスビーズのアリコートを、室温で60分間、0. 5 μg bCV-Nと反応させ、洗浄し、遊離のbCV-Nを除去した。ビーズへのbCV-Nの結合は、ビーズのフローサイトメトリー解析でのFITCラベル−ヤギ抗ウサギIgGを用いて、CV-Nに対するポリクローナルウサギ抗体で検出した。ビーズ結合固着CV-N (sCV-N)と未結合対照ビーズを、HIVの100 TCID50に対する抗ウイルス活性につき試験した。37℃で90分間のインキュベーション後、ウイルス上清を、PHA刺激−ヒトPMBCで7日間培養し、p24抗原の合成を評価した。
0.5μgで、rCV-Nと bCV-Nの両方は、HIVの100 TCID50を不活化するのに等しく有効であった;しかし、0.05μgで、それらは、100 TCID50を不活化するのに40%だけ有効であった。ビーズ結合sCV-NはHIVの100 TCID50を完全に不活化したが、少数の非感染性HIVは、RT-PCRで評価して、sCV-Nに結合したままであるようであった。従って、マトリックス固定−シアノビリンは、サンプル中で非感染性ウイルスから感染性ウイルスを除去する実際的で有効な手段を提供する。
【0119】
実施例8
本実施例は、ヒト及び非ヒトの霊長類免疫不全レトロウイルスの多様な実験室改変株及び臨床株に対する非常に幅広い範囲の抗レトロウイルス活性を更に示す。下記の表1は、多様な宿主細胞における広い範囲のウイルス株に対し試験されたシアノビリン−N及びsCD4の抗免疫不全ウイルス活性の比較範囲を示す。HIVの実験室改変株と臨床分離株の両方に対するシアノビリン−Nの同様の力価は特に注目すべきである。これは、臨床分離株に対しsCD4の活性の欠如と鋭い対照をなした。
EC50値(表1)は、試験薬剤の8つの希釈からの濃度−応答曲線から決定された(濃度当り3連ウエルの平均);G910-6はAZT耐性株である;A17はピリジノン耐性株である;HIV-1 Ba-Lは、上清逆転写酵素活性によってヒト末梢血液マクロファージ(PBM)で試験された。全ての他のアッセイは、XTT−テトラゾリウム(Gulakowski ら, 1991,上記)を用いた。ウイルス株、細胞系、臨床分離株、アッセイ方法の更なる詳細は、刊行されている(Buckheit ら, AIDS Res. Hum. Retrovir. 10,1497-1506,1994; Buckheit ら, Antiviral Res.25,43-56,1994; 及び、それらの中に含まれる参考文献)。表1で、N.D.=決定せず。
【0120】
【表1】
Figure 2004535784
【0121】
実施例9
本実施例は更に、HIV感染細胞を選択的に標的とし、殺すシアノビリン−毒素蛋白質コンジュゲートを提供する、コンジュゲートDNAコーディング配列の構築及びその発現を示す。より具体的には、本実施例は、ウイルスgp120発現−宿主細胞を選択的に殺すシアノビリン/シュードモナス外毒素のコンジュゲートDNAコーディング配列の構築及び発現を示す。
FLAG−シアノビリン−NをコードするDNA配列(配列番号3)とシュードモナス外毒素の PE38フラグメントをコードするDNA配列(Kreitman ら, Blood 83,426-434,1994)を、 pFLAG-1発現ベクターで一緒にした。標準的組換えDNA方法を用いて、PE38コーディング配列を、プラスミドから切り出し、改変し、FLAG−シアノビリン−Nコーディング配列のC末端に連結させた。この構築物は、図9に模式的に示す。この構築物によるE. coliの形質転換、クローンの選択、IPTGによる遺伝子発現の誘導により、予期された分子量と、抗FLAG抗体を用いるウエスタン−ブロット解析での免疫反応性を有するコンジュゲート蛋白質が産生された。キメラ分子は、FLAG−アフィニティクロマトグラフィで精製され(例えば、実施例4におけるように)、HIVに感染したヒトリンパ芽球様細胞(H9/IIIB細胞)及び未感染等価物(H9及び CEM-SS細胞)に対する毒性が評価された。細胞は、96ウエルマイクロタイタープレートで培養され、種々の濃度のコンジュゲート蛋白質(PPEと命名)に曝された。3日後、XTTアッセイ(Gulakowski ら, 1991, 上記)を用いて生存率を評価した。図10はこの試験の結果を示す。予期されるように、細胞表面gp120を発現している感染H9/IIIB細胞は、未感染H9又はCEM-SS細胞よりも、PPEの毒性効果に劇的に感受性であった。濃度−効果曲線から決定されたIC50値は、H9と CEM-SSのそれぞれ0.48 nMと 0.42 nMに比較して、H9/IIIBでは0.014 nMであった。
【0122】
実施例10
本実施例は、その中でシアノビリンを発現させるための哺乳動物細胞の形質転換を示す。
哺乳動物細胞でのシアノビリンの発現の実証に適した遺伝子構築物を、pFLAG CMV-1発現ベクター(IBI-Kodak, Rochester, NY)中にFLAG−シアノビリン−NをコードするDNA配列を連結させることによって調製した。標準的組換えDNA方法を用いて、FLAG−シアノビリン−Nコーディング配列(配列番号3)を、前に構築したプラスミドから切り出し、pFLAG CMV-1ベクターに連結した。アフリカミドリサル細胞(the American Type Culture Collection, Rockville, MDから得たCOS-7細胞)を、DEAEデキストラン溶液中で構築物に曝すことによって形質転換した。FLAG−シアノビリン−Nの発現を評価するために、72時間後、細胞を溶解し、PAGEとウエスタンブロット解析を行った。抗FLAG免疫反応性物質は、形質転換COS−7細胞で容易に検出されたが、見かけの分子量は、E. coliで産生された天然組換えFLAG−シアノビリン−Nよりも実質的に大きかった。次いで、実施例11と同様に行った消化物の診断的解析は、この増加した分子量がFLAG−シアノビリン−Nの翻訳後修飾(N−結合オリゴ糖)によるものであることを示した。
【0123】
実施例11
本実施例は、非哺乳動物、より具体的には酵母細胞における形質転換とシアノビリン−Nの発現を示す。
Pichia pastorisにおけるシアノビリンの発現の実証に適した遺伝子構築物は、pPIC9発現ベクター(Invitrogen Corporation, San Diego, CA)にシアノビリン−NをコードするDNA配列を連結することによって調製した。シアノビリン−Nコーディング配列(配列番号1)を、標準的DNA方法を用いて、前に構築されたプラスミドから切り出し、該ベクターに連結した。酵母細胞をエレクトロポレーションで形質転換し、クローンをキャラクタリゼーションのために選択した。幾つかのクローンは、抗シアノビリン−Nポリクローナル抗体(例えば、実施例12参照)と反応性である物質を発現し、培養培地に分泌することが知見された。
実施例10で記載した哺乳動物型の観察と同様に、PAGEとウエスタンブロット解析における酵母由来産物の見かけの分子量の増大は、シアノビリン−Nの翻訳後修飾がこの発現システムで起こっていることを示唆した。
この修飾を更に明確にするために、2つのクローンからの分泌産物を、ペプチド−N4−(N−アセチル−β−グルコサミニル)アスパラギンアミダーゼで消化した。New England Biolabs (Beverly, MA)から得たこの酵素は、アスパラギン残基に結合したオリゴ糖を特異的に切断する。この処理によって、産物の見かけの分子量は、E. coliで発現した天然組換えシアノビリン−Nと等しいそれまで減少した。シアノビリンのアミノ酸配列の検討により、N−結合修飾の唯一の認識モチーフ(位置30に存在するアスパラギンへの結合)が示された。
これをグリコシル化部位として更に確立するために、この位置に変異を導入してアスパラギン残基をグルタミンに変化させた(N30Q)。この変異型の発現により、天然組換えFLAG−シアノビリン−Nの分子量と一致する分子量の免疫反応性物質が産生された。
【0124】
実施例12
本実施例は、シアノビリンに特異的に結合する抗体を更に示す。
2月齢のニュージーランド白ウサギ (1.8-2.2 kg)3羽に、以下のように免疫化プロトコルを施した:シアノビリン−N合計100μgを、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)とフロイント不完全アジュバントの1:1懸濁液100μlに溶解し、各後脚の2部位に筋肉内注射によって投与した;最初の注射から8−16月、ウサギ当りシアノビリン−N50μgの最後の追加免疫を、PBSとフロイント不完全アジュバントの1:1懸濁液1000μlに溶解し、腹腔内注射によって投与した;42、70、98、122日に、血液10mlを各ウサギの耳静脈から取り出した;最後の腹腔内追加免疫の14日後、ウサギを殺し、出血させた。上記ウサギから生じた免疫血清のIgG分画を、Goudswaardら の方法(Scand. J. Immunol. 8,21-28,1978)により、プロテイン−Aセファロースアフィニティクロマトグラフィによって単離した。シアノビリン−Nに対するこのポリクローナル抗体調製物の反応性は、ウサギIgG分画の1:1000〜1:5000希釈を用いてウエスタンブロットにより測定した。
【0125】
上記方法により調製した抗体は、本発明の蛋白質に特異的に結合した。シアノビリン−Nを産生するように設計されたE. coli DH5α株からの細胞全体溶解物のSDS−PAGEは、18%ポリアクリルアミド分離ゲルと、Laemmeli (Nature227,680-685,1970)の標準不連続緩衝液システムを用いて行った。蛋白質は、クーマシーブリリアントブルーによる染色で可視化した。ウエスタンブロット解析のために、蛋白質は、SDS−PAGEゲルからニトロセルロース膜に電気溶出した。膜の非特異的結合部位は、ウシ血清アルブミン(BSA)の1%溶液中での洗浄によってブロックした。次いで、膜を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で1:3000に希釈した上記ウサギ抗シアノビリン−N免疫血清からのIgG分画の溶液中でインキュベートした。次いで、膜を、1:10000に希釈したヤギ−抗ウサギ−ペルオキシダーゼコンジュゲート(Sigma) を含有する2次抗体溶液中でインキュベートした。結合2次抗体コンプレックスを、化学発光基質中で膜をインキュベートすることによって可視化し、次いで、X線フィルムにそれを暴露した。
当業者は更に以下のことを理解しよう:十分に確立されたルーチンの方法(例えば、Harlow and Lane, 1988, 上記、参照)によってと同様に、本発明の蛋白質を抗原として用いてモノクローナル抗体は調製でき、このような、生じるモノクローナル抗体は同様に、本発明の蛋白質と特異的に結合する抗体であることを示すことができる。
【0126】
実施例13
本実施例は、グリコシル化抵抗性シアノビリンを含む、シアノビリンの抗インフルエンザウイルス活性を示す。
これらのアッセイで使用する宿主細胞とインフルエンザウイルスストックは、the Southern Research Institute-Frederick (SoRI-Frederick, Frederick, Maryland)でルーチンに得ることができる。MDCK細胞を全アッセイで用いた。アッセイで使用したそれらのインフルエンザウイルス株と分離株には、以下のものが含まれた: A/シドニー/5/97 (H3N2);A/ビクトリア/3/75 (H3N2) ; A/ペキン/262/95 (HlNl) ; A/Mem/2/99 (H3N2); A/Mem/8/99 (HlNl) ; B/HK/5/72 ; B/ヤマナシ/166/98 ; 及び、 B/Mem/3/99。
各ウイルスの典型的抗ウイルスアッセイは以下のようであった。ウイルスの前処理アリコートをフリーザー(−80℃)から取り出し、融解させた。体積100μlで各ウエルに加えたウイルス量が感染後3−7日(ウイルスに依存する)で細胞を完全に殺すための所定量であるように、ウイルスを組織培養培地で希釈した。シアノビリン−N(配列番号2)ストック溶液は、所望の高濃度まで培地中に希釈し、次いで、0.5log10増量で、培地で更に希釈した。
細胞のプレーティングの翌日、プレートをインキュベーターから取り出し、培地を除去し、捨てた。感染培地は、0.3% BSA、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、0.1 mM非必須アミノ酸、0.1 mMピルビン酸ナトリウム、2 mM L-グルタミン、2.0μg/mlTPCK処理(N−トシル−L−フェニルアラニンケトン)トリプシンを補充したDMEM(ダルベッコ最小必須培地)であった。薬剤希釈(6−12希釈)は培地でなされ、ウエル当り体積100μlで96ウエルマイクロタイタープレートの適当なウエルに加えた。各希釈は3連で設定した。適当に希釈されたウイルスを含有する感染培地を、マイクロタイタープレートの適当なウエルに加えた。各プレートは、細胞対照ウエル(細胞のみ)、ウイルス対照ウエル(細胞+ウイルス)、薬剤毒性対照ウエル(細胞+薬剤のみ)、薬剤比色対照ウエル(薬剤のみ)、並びに実験ウエル(薬剤+細胞+ウイルス)を含んでいた。
【0127】
5% COインキュベーター中37℃でのインキュベーションの7日後、試験プレートを、Celltiter 96試薬による染色によって分析した。試薬20μlをプレートの各ウエルに加え、プレートを、37℃で4時間再インキュベートした。Celltiter 96試薬は新規テトラゾリウム(MTS)化合物と電子共役試薬フェナジンエトサルフェート(PES)を含む。MTS−テトラゾリウムは細胞によって着色ホルマザン産物に生体還元されるが、ホルマザン産物は組織培養培地に可溶である。この変換は、代謝活性細胞中の脱水素酵素によって産生されるNADPHとNADHによって媒介される。MTSの細胞還元によって産生する可溶性ホルマザンの量は、吸光度490nmで測定した。490nm吸光度の量によって測定されるホルマザン量は、培養物中の生細胞数に直接的に比例し、試験物質によるウイルス誘導−細胞殺害の阻害の迅速定量的解析を可能とする。IC50(ウイルス複製の50%阻害)、TC50(細胞生存率の50%減少)及び対応する治療指数(TI:TC50/IC50)はルーチンに計算した。インフルエンザウイルスAとBの多様な株と分離株に対するシアノビリン−N(配列番号2)の典型的な一連の試験の結果を下記する。示すように、シアノビリン−Nは、強力な、ブロード−スペクトルの抗インフルエンザウイルス活性を有する。例えば、シアノビリン−Nは、著名なヒトサブタイプの代表であるH1N1とH3N2、及びインフルエンザAとBの最近の臨床分離株と実験室株を含む、多数のウイルスサブタイプを強力に阻害した。
【0128】
【表2】
Figure 2004535784
【0129】
抗インフルエンザウイルス試験をまた、配列番号2に相同なシアノビリンを含む、例示的なグリコシル化抵抗性で、機能を有するシアノビリン(位置30のアミノ酸は、アスパラギンの代わりに、アラニン、グルタミン又はバリンである。該シアノビリンは、N30A、N30Q、及びN30Vとして下に同定される。)に関して行った。抗インフルエンザウイルス試験を同様に、配列番号2に相同な更なる例示的なグリコシル化抵抗性、機能を有するシアノビリン(位置30のアミノ酸は、アスパラギンの代わりに、アラニン、グルタミン又はバリンであり、各場合に、位置51のアミノ酸は、プロリンの代わりにグリシンである。該シアノビリンは、それぞれ、N30A/P51G, N30Q/P51G及び N30V/P51Gとして下に同定される。)に関して行った。上記の6種の例示的なグリコシル化抵抗性、機能を有するシアノビリンの構築と発現は、実施例14に記載されている。試験結果は以下のようであった。
【0130】
【表3】
Figure 2004535784
【0131】
実施例14
本実施例は、分離された真核細胞又は真核生物での発現のためのグリコシル化抵抗性シアノビリンを含むベクターの構築を記載する。
当業者周知のルーチンの方法を用いて、潜在性N−グリコシル化部位[アスパラギン−X−セリン(又はトレオニン)、ここで、Xはプロリン又はアスパラギン酸を除く任意のアミノ酸である;具体的には、アスパラギン30−トレオニン31−セリン32]を欠く例示的な変異シアノビリン蛋白質をコードする核酸を組み込むベクターを構築し、発現させた。位置30で、Ala、Gln又はValでAsnを置換するために、シアノビリンの天然型(配列番号2)をコードする、以前に記載された(Mori ら, Prot. Exp. Purif. 12,223-228,1998) pET (CV-N)プラスミドから出発し、製造業者の指示に従い、Stratagene (La Jolla, CA)からのQuikChange(登録商標)部位特異的変異誘発キットを、適当な特異的オリゴDNAプライマーセットと共に用いた。生じたベクターpET (Asn30Ala), pET(Asn30Gln), 及び pET (Asn30Val)のDNA配列を確認し、構築物を用いて、E. coli BL21 (DE3) (Novagen, Madison, WI)を形質転換した。組換え変異蛋白質を1.0 mM IPTGでルーチンに誘導し、以前に記載された一連の標準的逆相クロマトグラフィ技術(Boyd ら, Antimicrob. Agents Chemother. 41,1521-1530, 1997 ; Mori ら, 1998, 上記)を用い、ペリプラズム分画から精製した。精製蛋白質のルーチンなエレクトロスプレーイオン化質量分析によって、導かれたアミノ酸配列の計算値と一致した分子イオン、及び純度少なくとも95%が確認された。各組換え蛋白質の標準的アミノ酸分析の結果は、配列と一致し、蛋白質濃度を提供した。ルーチンで通常の方法を用い、SDS−PAGE分析と免疫ブロティングを同様に行った。
【0132】
アミノ酸の多数の異なる変化又は変化の組合せは、所定の蛋白質の潜在性N−グリコシル化部位(例えば、配列番号2の Asn30-Thr31-Ser32)を除去するように作出できるが、機能を有する蛋白質の3次構造を撹乱しそうもない保存的変化が好ましい。評価のために選択された変異は恣意的でありえ、又は、天然蛋白質構造の何らかの考慮に基きうる。しかし、結局、潜在性グリコシル化部位の任意の変異のインパクトの極めて重要な決定は、変異蛋白質が、a)事実、グリコシル化抵抗性であるかどうか、及びb)事実、「機能を有する」であるかどうか、即ち、事実、所望の生物活性、即ち、抗ウイルス活性を保持するかどうか、である。
従って、本実証のために、コーディング配列とベクターを最初に、3つの代表的変異体(配列番号2の位置30のアスパラギンが、アラニン、グルタミン又はバリンで置換された)に関し構築し、発現させた。上記方法と参考文献により発現し、精製されたこれら3種の変異蛋白質(実施例13で、それぞれ、N30A, N30Q及び N30Vと同定された)は、高純度と期待された分子量を示し、全てが抗シアノビリン抗体と適切に免疫反応性であった。本明細書記載の方法を用いて、選択された代表的インフルエンザA及びBウイルスに対する3種の変異蛋白質の試験により、これらの変異体は、天然シアノビリン−N(配列番号2)とは区別できない抗インフルエンザウイルス活性を有することが確認された(実施例13参照)。
【0133】
更なる確認として、上記3つのグリコシル化抵抗性変異の配列を含み、各場合に、位置51のプロリンが代わりにグリシンである更なる変異を含む3種の更なる変異体(実施例13で、それぞれ、N30A/P51G及び N30Q/P51Gと同定された)に関し、DNAコーディング配列と対応するベクターを、上記のように構築し、発現させた。本明細書記載の代表的インフルエンザウイルスに対し、位置30のアミノ酸がアラニン、グルタミン又はバリンであり、位置51のアミノ酸がグリシンである、配列番号2の相同体であるこれらの変異体の試験は、天然シアノビリン−N(配列番号2)と同等の強力な抗インフルエンザウイルス活性を示した(実施例13参照)
最後の実証として、位置30のアミノ酸がアラニン、グルタミン又はバリンであり、場合によって、位置51のアミノ酸がグリシンであった、配列番号2の相同体を含む上記変異体の任意のもののグリコシル化抵抗性は、同様にルーチンな方法を用い、酵母で発現でき、本明細書記載の選択されたインフルエンザウイルスに対し試験できる。これらの酵母発現−変異体は、対照の細菌発現−シアノビリン−Nと同等のインフルエンザウイルスに対する効力があることを示すことができる。
【0134】
本明細書引用の全ての参考文献は、引用によりその内容の全部が本明細書に含まれるものである。
本発明を、好適実施態様を強調して説明したが、好適化合物や好適方法のバリエーションを用いることができ、本発明は、本明細書に具体的に記載した以外に実施できることが意図されていることは、当業者に明白であろう。従って、本発明は、以下のクレームによって規定される本発明の思想と範囲内に包含される全ての改変を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1A】図1Aは、OD (206 nm)対時間(分)のグラフであり、非還元シアノビリンのHPLCクロマトグラムを表す。
【図1B】図1Bは、50%防御のための最大希釈対HPLC分画の棒グラフであり、非還元シアノビリンHPLC分画についてのHIV感染の細胞変性効果からの50%防御を与える各HPLC分画の最大希釈を示す。
【図1C】図1Cは、OD (206 nm)対時間(分)のグラフであり、還元シアノビリンのHPLCクロマトグラムを表す。
【図1D】図1Dは、50%防御のための最大希釈対HPLC希釈の棒グラフであり、還元シアノビリンHPLC分画についてのHIV感染の細胞変性効果からの50%防御を与える各分画の最大希釈を示す。
【図2】図2は、合成シアノビリン遺伝子をコードするDNA配列(配列番号1−4)の1例を示す。
【図3】図3は、図2の配列から、FLAGオクタペプチドとHind III制限部位のコドンを除去するのに使用される部位特異的変異誘発戦略を示す。
【図4】図4は、組換え天然シアノビリンの精製中の典型的HPLCクロマトグラムを示す。
【図5A】図5Aは、対照に対する%対濃度(nM)のグラフであり、Nostoc ellipsosporumからの天然シアノビリンの抗ウイルス活性を示す。
【図5B】図5Bは、対照に対する%対濃度(nM)のグラフであり、組換えシアノビリンの抗ウイルス活性を示す。
【図5C】図5Cは、対照に対する%対濃度(nM)のグラフであり、組換えFLAG−融合シアノビリンの抗ウイルス活性を示す。
【図6A】図6Aは、対照に対する%対濃度(nM)のグラフであり、BCECFアッセイで、HIV−1に感染した生存CEM−SS細胞の相対数を表す。
【図6B】図6Bは、対照に対する%対濃度(nM)のグラフであり、HIV−1に感染したCEM−SS細胞培養物の相対的DNA含量を表す。
【図6C】図6Cは、対照に対する%対濃度(nM)のグラフであり、XTTアッセイで、HIV−1に感染した生存CEM−SS細胞の相対数を表す。
【図6D】図6Dは、対照に対する%対濃度(nM)のグラフであり、感染性ウイルス又はウイルス複製の指数に対するシアノビリンの濃度範囲の効果を示す。
【図7】図7は、未感染対照に対する%対添加時間(時間)のグラフであり、シアノビリンの添加時間研究の結果を示し、HIV−1RFに感染したCEM−SS細胞における抗HIV活性を示す。
【図8】図8は、OD(450nm)対シアノビリン濃度(μg/ml)のグラフであり、シアノビリンの主要分子標的としてgp120を規定するシアノビリン/gp120相互作用を示す。
【図9】図9は、シュードモナス外毒素コーディング配列と結合したFLAG−シアノビリン−Nコーディング配列を含むDNAコーディング配列を模式的に示す。
【図10】図10は、OD (450 nM)対PPE濃度(nM)のグラフであり、FLAG−シアノビリン−N/シュードモナス外毒素蛋白質コンジュゲート(PPE)による、ウイルスgp120発現(H9/IIIB)細胞の選択的殺害を示す。
【図11】図11は、シアノビリン遺伝子の合成のフローチャートである。
【図12】図12は、合成シアノビリンの発現のフローチャートである。

Claims (56)

  1. 配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む蛋白質又はペプチドをコードする単離精製された核酸分子であって、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は、グリコシル化抵抗性にされた配列番号2のアミノ酸30−32を含み、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は抗ウイルス活性を有する、単離精製された核酸分子。
  2. 配列番号2のアミノ酸30−32が、アミノ酸30の欠失又は置換によってグリコシル化抵抗性にされている、請求項1に記載の単離精製された核酸分子。
  3. アミノ酸30がアラニン、グルタミン及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸で置換され、配列番号2の上記少なくとも9個の連続アミノ酸が更にアミノ酸51を含むならば、場合によって、アミノ酸51は欠失又は置換されている、請求項2に記載の単離精製された核酸分子。
  4. アミノ酸51がグリシンによって置換されている、請求項3に記載の単離精製された核酸分子。
  5. 請求項1に記載の単離精製された核酸分子を含むベクター。
  6. 請求項2に記載の単離精製された核酸分子を含むベクター。
  7. 請求項3に記載の単離精製された核酸分子を含むベクター。
  8. 請求項4に記載の単離精製された核酸分子を含むベクター。
  9. 請求項5に記載のベクターを含む宿主細胞又は生物。
  10. 請求項6に記載のベクターを含む宿主細胞又は生物。
  11. 請求項7に記載のベクターを含む宿主細胞又は生物。
  12. 請求項8に記載のベクターを含む宿主細胞又は生物。
  13. 抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドの製造方法であって、宿主細胞又は生物中で請求項5に記載のベクターを発現させることを含む方法。
  14. 抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドの製造方法であって、宿主細胞又は生物中で請求項6に記載のベクターを発現させることを含む方法。
  15. 抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドの製造方法であって、宿主細胞又は生物中で請求項7に記載のベクターを発現させることを含む方法。
  16. 抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドの製造方法であって、宿主細胞又は生物中で請求項8に記載のベクターを発現させることを含む方法。
  17. 配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドであって、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は、グリコシル化抵抗性にされた配列番号2のアミノ酸30−32を含み、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は、抗ウイルス活性を有する、抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチド。
  18. 配列番号2のアミノ酸30−32が、アミノ酸30の欠失又は置換によってグリコシル化抵抗性にされている、請求項17に記載の抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチド。
  19. アミノ酸30がアラニン、グルタミン及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸で置換され、配列番号2の上記少なくとも9個の連続アミノ酸が更にアミノ酸51を含むならば、場合によって、アミノ酸51は欠失又は置換されている、請求項18に記載の抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチド。
  20. アミノ酸51がグリシンによって置換されている、請求項19に記載の抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチド。
  21. 請求項17に記載の抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドと、ポリエチレングリコール、アルブミン、デキストラン、毒素及び免疫学的試薬からなる群から選択される少なくとも1つのエフェクター成分を含むコンジュゲート。
  22. 請求項18に記載の抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドと、ポリエチレングリコール、アルブミン、デキストラン、毒素及び免疫学的試薬からなる群から選択される少なくとも1つのエフェクター成分を含むコンジュゲート。
  23. 請求項19に記載の抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドと、ポリエチレングリコール、アルブミン、デキストラン、毒素及び免疫学的試薬からなる群から選択される少なくとも1つのエフェクター成分を含むコンジュゲート。
  24. 請求項20に記載の抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドと、ポリエチレングリコール、アルブミン、デキストラン、毒素及び免疫学的試薬からなる群から選択される少なくとも1つのエフェクター成分を含むコンジュゲート。
  25. 有効量の、請求項17に記載の抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドを含む組成物。
  26. 有効量の、請求項18に記載の抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドを含む組成物。
  27. 有効量の、請求項19に記載の抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドを含む組成物。
  28. 有効量の、請求項20に記載の抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドを含む組成物。
  29. 有効量の、請求項21に記載のコンジュゲートを含む組成物。
  30. 有効量の、請求項22に記載のコンジュゲートを含む組成物。
  31. 有効量の、請求項23に記載のコンジュゲートを含む組成物。
  32. 有効量の、請求項24に記載のコンジュゲートを含む組成物。
  33. 宿主のウイルス感染を予防的又は治療的に阻害する方法であって、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む、抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質コンジュゲート又は抗ウイルスペプチドコンジュゲートの有効量を、宿主に投与することを含む方法であって、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は、非グリコシル化であり、抗ウイルス活性を有し、それによってウイルス感染は阻害される、方法。
  34. 配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸がアミノ酸30−32を含み、アミノ酸30は欠失又は置換されている、請求項33に記載の方法。
  35. アミノ酸30がアラニン、グルタミン及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸で置換され、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸が、更にアミノ酸51を含むならば、場合によって、アミノ酸51は欠失又は置換されている、請求項34に記載の方法。
  36. アミノ酸51がグリシンによって置換されている、請求項35に記載の方法。
  37. ウイルス感染がインフルエンザウイルス感染である、請求項33に記載の方法。
  38. 抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質コンジュゲート又は抗ウイルスペプチドコンジュゲートが宿主に局所的に投与される、請求項37に記載の方法。
  39. 抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質コンジュゲート又は抗ウイルスペプチドコンジュゲートが局所的に呼吸器系に投与される、請求項38に記載の方法。
  40. 抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質コンジュゲート又は抗ウイルスペプチドコンジュゲートがエアロゾル又は微粒子粉末として投与される、請求項39に記載の方法。
  41. 宿主のインフルエンザウイルス感染を予防的又は治療的に阻害する方法であって、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む、抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質コンジュゲート又は抗ウイルスペプチドコンジュゲートの有効量を宿主に投与することを含む方法であって、少なくとも9個の連続アミノ酸は非グリコシル化であり、抗ウイルス活性を有し、それによってインフルエンザウイルス感染は阻害される、方法。
  42. 配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸がアミノ酸30−32を含み、アミノ酸30は欠失又は置換されている、請求項41に記載の方法。
  43. アミノ酸30がアラニン、グルタミン及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸で置換され、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸が、更にアミノ酸51を含むならば、場合によって、アミノ酸51は欠失又は置換されている、請求項42に記載の方法。
  44. アミノ酸51がグリシンによって置換されている、請求項43に記載の方法。
  45. 抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質コンジュゲート又は抗ウイルスペプチドコンジュゲートが宿主に局所的に投与される、請求項41に記載の方法。
  46. 抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質コンジュゲート又は抗ウイルスペプチドコンジュゲートが局所的に呼吸器系に投与される、請求項45に記載の方法。
  47. 抗ウイルス蛋白質、抗ウイルスペプチド、抗ウイルス蛋白質コンジュゲート又は抗ウイルスペプチドコンジュゲートがエアロゾル又は微粒子粉末として投与される、請求項46に記載の方法。
  48. 動物のウイルス感染の阻害方法であって、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドをコードする核酸分子によって、宿主細胞をインビボで形質転換し(但し、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は、グリコシル化抵抗性にされた配列番号2のアミノ酸30−32を含み、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は、抗ウイルス活性を有する)、上記核酸分子によってコードされた抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドをインビボで発現させ、それによって、抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドの発現が抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドによって阻害されうるウイルスによる動物の感染を阻害することを含む方法。
  49. 核酸分子が、配列番号2のアミノ酸30−32がアミノ酸30の欠失又は置換によってグリコシル化抵抗性にされているアミノ酸配列をコードする、請求項48に記載の方法。
  50. アミノ酸30がアラニン、グルタミン及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸で置換され、配列番号2の上記少なくとも9個の連続アミノ酸が更にアミノ酸51を含むならば、場合によって、アミノ酸51は欠失又は置換されている、請求項49に記載の方法。
  51. アミノ酸51がグリシンによって置換されている、請求項50に記載の方法。
  52. 動物のウイルス感染の阻害方法であって、配列番号2の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドをコードする核酸分子によって、宿主細胞を形質転換し(但し、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は、グリコシル化抵抗性にされた配列番号2のアミノ酸30−32を含み、上記少なくとも9個の連続アミノ酸は、抗ウイルス活性を有する)、上記形質転換された宿主細胞を、上記動物中又はその上に置き、上記動物中又はその上で、核酸分子によってコードされる抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドを発現させ、それによって、抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドの発現が抗ウイルス蛋白質又は抗ウイルスペプチドによって阻害されうるウイルスによる動物の感染を阻害することを含む方法。
  53. 宿主細胞が自己又は同種の哺乳動物細胞である、請求項52に記載の方法。
  54. 核酸分子が、配列番号2のアミノ酸30−32がアミノ酸30の欠失又は置換によってグリコシル化抵抗性にされているアミノ酸配列をコードする、請求項52に記載の方法。
  55. アミノ酸30がアラニン、グルタミン及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸で置換され、配列番号2の上記少なくとも9個の連続アミノ酸が更にアミノ酸51を含むならば、場合によって、アミノ酸51は欠失又は置換されている、請求項54に記載の方法。
  56. アミノ酸51がグリシンによって置換されている、請求項55に記載の方法。
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